説明

FRP成形物の継手構造および継手接合方法

【課題】FRP成形物を船殻に使用しても、水流抵抗の増加や美観の悪化を回避できるようにする。
【解決手段】心材2を中にしてその両外側に繊維強化材3a,3bを積層し、この積層物の継手部となる端縁部に、この継手部の第1の心材となる金属板4の一端側4aをその板厚中心面が積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させてこれらが一体化されたFRP成形物1を、金属板4を介して隣接FRP成形物間で連結接合する際に、互いの金属板4,4の露出部4b,4bの先端を突合せ溶接するとともに、これら金属板4,4の前記埋込部を、それぞれボルト・ナット6,7により両FRP成形物1,1の本体側に補助的に固定し、更にこれら補助的固定部および突合せ溶接部8を含む継手部全域に両FRP成形物1,1の本体部の表面と面一となるように第2の心材9を付加し、外側より繊維強化材11a,11bで挟み、樹脂含浸して一体化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP成形物相互を接合する際の継手構造と接合方法に係り、より詳しくは、比較的大型の舟艇の船殻をFRP成形物で構成することを可能とするFRP成形物の継手構造および継手接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FRP成形物の継手となる端縁部に金属板の一端側を埋め込み、あるいは挟み込んでボルト・ナットによりFRP成形物の本体側に固定することで、FRP成形物の継手部を金属から構成し、これによってFRP成形物相互あるいはFRP成形物と金属構造物との接合を溶接によって行えるようにしたものが、本出願人により既に提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−205758号公報(図2、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなものにあっては、例えばプラント装置や舟艇内の各構造部分へのFRP成形物の使用が可能となり、その用途を広げることができる。しかしながら、従来はFRP成形物の継手部や継手となる金属板のFRP成形物本体への固定部(特にボルト・ナット)が露出されて凹凸状態にあり、FRP成形物の本体部の表面と面一となっていないため、このような継手部を有するFRP成形物を船殻に使用した場合、前記凹凸により水流抵抗が増加するだけでなく、美観の悪化も避けられない。
【0005】
本発明の技術的課題は、FRP成形物を船殻に使用しても、水流抵抗の増加や美観の悪化を回避できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るFRP成形物の継手構造は、心材を中にしてその両外側に繊維強化材を積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に、この継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させてこれらが一体化されたFRP成形物を、前記金属板を介して隣接FRP成形物間で連結接合してなる継手構造であって、前記継手構造は、隣接するFRP成形物間で前記金属板の露出部の先端が突合せ溶接されているとともに、これら金属板の前記埋込部が、それぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定されており、更にこれら補助的固定部および前記突合せ溶接部を含む継手部全域が、両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加されてその外側より繊維強化材で挟まれ、樹脂含浸して一体化されてなるものである。
【0007】
また、このFRP成形物の継手接合方法は、心材を中にして繊維強化材と心材とを積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部にこの継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を得る工程と、接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端を対向させ、突合せ溶接する工程と、これら金属板の前記埋込部をそれぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定する工程と、これら金属板の前記補助的固定部と前記突合せ溶接部を含む継手部全域が両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加する工程と、継手部に付加した第2の心材を外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸させて一体化する工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
本発明に係るFRP成形物の継手構造は、心材を中にしてその両外側に繊維強化材を積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部にこの継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させてこれらが一体化されたFRP成形物を、前記金属板を介して隣接FRP成形物間で連結接合してなる継手構造であって、前記継手構造は、隣接するFRP成形物間で前記金属板の露出部の先端が、別体からなる目違い修正用金属板を介して対向し、この目違い修正用金属板の両端にそれぞれ突合せ溶接されているとともに、両金属板の前記埋込部が、それぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定されており、更にこれら補助的固定部と両突合せ溶接部および目違い修正用金属板を含む継手部全域が、両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加されてその外側より繊維強化材で挟まれ、樹脂含浸して一体化されてなるものである。
【0009】
また、このFRP成形物の継手接合方法は、心材を中にして繊維強化材と心材とを積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に、この継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を得る工程と、接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端を別体からなる目違い修正用金属板を介して対向配置する工程と、目違い修正用金属板の両端に、接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端をそれぞれ突合せ溶接する工程と、これら金属板の前記埋込部をそれぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定する工程と、これら金属板の前記補助的固定部と両突合せ溶接部および目違い修正用金属板を含む継手部全域が両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加する工程と、継手部に付加した第2の心材を外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸させて一体化する工程と、を有することを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記FRP成形物の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部に形成されているとともに、前記補助的固定部から前記テーパ部の直前までを覆うように金属製の当て板が前記継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板が、前記金属板の前記埋込部と共にそれぞれ前記ボルト・ナットによって前記FRP成形物の本体側に補助的に固定されてなるものである。
【0011】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記FRP成形物の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部に形成されているとともに、前記補助的固定部から前記テーパ部までを覆うように金属製の当て板が前記継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板が、前記金属板の前記埋込部と共にそれぞれ前記ボルト・ナットによって前記FRP成形物の本体側に補助的に固定されてなるものである。
【0012】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記金属板の一端側の埋め込み部は、その末端が前記テーパ部の先端部にかかるように配置され、少なくとも前記積層物の表皮となる前記繊維強化材における前記テーパ部の内面と前記金属板の埋め込み部の末端部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間が第1の心材端部補強材で埋められてなるものである。
【0013】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記第1の心材端部補強材は、前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状に形成され、この断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間が埋められてなるものである。
【0014】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記第1の心材端部補強材は、先端に前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状の勘合部を有し、その断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間が埋められているとともに、前記勘合部の断面コ字状の両肩部から後方へ前記テーパ部に沿って末広がり状に延出する後方片部が設けられてなるものである。
【0015】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記テーパ部における前記第1の心材端部補強材の後方空間は、前記積層物の心材または該心材よりも高い剛性、強度をもった第2の心材端部補強材で埋められているとともに、前記積層物の心材または第2の心材端部補強材の先端に前記第1の心材端部補強材が接着されてなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のFRP成形物の継手構造においては、継手部の第1の心材となる両金属板の埋込部を、それぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定し、更にこれら補助的固定部および突合せ溶接部を含む継手部全域が、両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加してその外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸して一体化しているので、継手部の結合強度が向上するとともに、継手部の表面へのボルト頭やナットの突出(露出)を防止することができる。このため、本発明に係るFRP成形物を比較的大型の舟艇の船殻に適用することも可能となり、その場合には水流抵抗増加、美観の悪化などを防止することができる。
【0017】
また、連結接合部を三次元的に塑性変形させることができる金属板から構成して、隣接するFRP成形物間で金属板の露出部先端を突合せ溶接しているので、接合箇所の目違いに対する修正が可能となる。その際、両金属板の露出部の先端間に別体からなる目違い修正用金属板を介在させて、これら金属板の露出部の先端を目違い修正用金属板の両端にそれぞれ突合せ溶接することで、接合箇所の三次元的な目違いに対する修正が容易となる。
【0018】
また、FRP成形物の本体部の継手側端縁部を、先端が金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部に形成するとともに、前記補助的固定部から前記テーパ部までを覆うように金属製の当て板を継手部の両面に添設して接着し、これら当て板を、前記金属板の埋込部と共にそれぞれボルト・ナットによってFRP成形物の本体側に補助的に固定しているので、FRP成形物に引張や圧縮などの面内荷重が負荷された時に、FRP成形物に生ずる応力を当て板にも分担させることができる。このため、FRP成形物内の応力が減少し、例えば圧縮荷重が加わった際には、FRP成形物の板厚方向変形を抑制することができて、特に継手部の心材テーパの開始部分で生じ易い心材と表皮材である繊維強化材との境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。このような耐荷重性能は、前記のように当て板を継手部の両面に接着することで、更に高めることができる。
【0019】
また、金属板の一端側の埋め込み部を、その末端が前記テーパ部の先端部にかかるように配置し、少なくとも積層物の表皮となる繊維強化材における前記テーパ部の内面と前記金属板の埋め込み部の末端部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間を第1の心材端部補強材で埋めるようにしているので、引張荷重が加わった際に、FRP成形物1Aの表皮形状が凹となる部分、つまり心材テーパの先端部分から平行に移行する箇所で生じ易い心材と表皮材である繊維強化材との境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。
【0020】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記第1の心材端部補強材は、前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状に形成され、この断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間が埋められるようにしているので、第1の心材端部補強材によって金属板の埋め込み部の心出しを行うことができ、製作時の目違いを防止することができる。
【0021】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記第1の心材端部補強材は、先端に前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状の勘合部を有し、その断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間を埋めるとともに、前記勘合部の断面コ字状の両肩部から後方へ前記テーパ部に沿って末広がり状に延出する後方片部を設けているので、第1の心材端部補強材によって金属板の埋め込み部の心出しと、積層物端縁部のテーパ部の成形および保持を容易に行うことができる。
【0022】
また、本発明に係るFRP成形物の継手構造において、前記テーパ部における前記第1の心材端部補強材の後方空間を、前記積層物の心材またはこの心材よりも高い剛性、強度をもった第2の心材端部補強材で埋め、積層物の心材または第2の心材端部補強材の先端に第1の心材端部補強材を接着するようにしているので、耐荷重性能を一層向上させることができる。
【0023】
本発明のFRP成形物の継手接合方法においては、継手部の第1の心材となる接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端を突合せ溶接し、これら金属板の埋込部をそれぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定した後、これら金属板の前記補助的固定部と前記突合せ溶接部を含む継手部全域がこれら両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加し、継手部に付加した第2の心材を外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸させて一体化する手順を践むので、継手部が完全に固定されている状態下で、継手部への第2の心材の付加作業、繊維強化材の積層作業、樹脂含浸作業が行われる。このため、FRP成形物相互の継手接合作業が容易となる。
【0024】
また、連結接合部が継手部の第1の心材となる三次元的に塑性変形可能な金属板から構成されているので、接合箇所に目違いが生じておれば、溶接前に金属板を塑性変形させて修正することができる。このため、溶接後に溶接部にスプリングバックのような力が作用せず、信頼性の確保が容易となる。更に、両金属板の露出部の先端間に別体からなる目違い修正用金属板を介在させ、これら金属板の露出部の先端を目違い修正用金属板の両端にそれぞれ突合せ溶接することで、目違いの修正を目違い修正用金属板部分で行わせることができて、両側の金属板への負担(目違い修正のための折り曲げ負荷やこれが埋込部へ与える影響など)を無くする、あるいは軽減することができて、信頼性をより向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
実施の形態1.
以下、図示実施形態に基づき本発明を説明する。
図1は本発明の実施の形態1に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図、図2はその継手接合方法を示す工程図である。
【0026】
本実施形態に係るFRP成形物1は、その本体部が例えばシート状の心材2を中にしてその両外側にFRP表皮材となる同じくシート状の繊維強化材3a,3bを積層して構成され、またこの積層物の継手となる端縁部(ここでは心材2が無く繊維強化材3a,3bのみが積層されている部分)に、継手部5の第1の心材となる金属板(例えばSUS)4の一端側4aがその板厚中心面を前記積層物すなわち本体部の板厚中心面と一致させて埋め込まれており、樹脂含浸させ、硬化させて一体化されている。また、FRP成形物1の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部10に形成されている。
【0027】
継手部5は、隣接するFRP成形物1,1間で金属板4,4の露出部4b,4bの先端が突合せ溶接されているとともに、これら金属板4,4の埋込部である一端側4a,4aが、それぞれボルト6及びナット7により、両FRP成形物1,1の本体側、ここでは繊維強化材3a,3bのみが積層されている端縁部に、補助的に固定されており、更にこれらボルト6及びナット7による補助的固定部と突合せ溶接部8とを含む継手部全域が、両FRP成形物1,1の本体部の表面と面一となるように第2の心材となる心材9を付加されてその外側より繊維強化材11a,11bで挟まれ、樹脂含浸され、硬化されて板状に一体化されている。
【0028】
これを更に詳述すると、本体部の心材2は、ここではポリウレタン等の心形成材に樹脂を含浸させたものを使用しているが、ポリウレタンの他に、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコン、ポリ塩化ビニルの発泡体やバルサなどの軽量材等の使用も可能である。また、継手部5の第2の心材9は、ここでは突出するボルト6及びナット7部分はパテで成形しながら発泡剤を充填して構成しているが、発泡剤に代えて本体部の心材2と同様の材料を使用することも可能である。
【0029】
繊維強化材3a,3bとしては、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等の織物やマット等、使用可能である。
【0030】
注入する樹脂は、成形物のマトリックス樹脂となるものであり、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が使用可能である。
【0031】
次に、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法について図2を用いて説明する。まず、心材2を中にして繊維強化材3a,3bと心材2とを積層し、この積層物の継手部5となる端縁部に、この継手部5の第1の心材となる金属板4の一端側4aをその板厚中心面が前記積層物すなわち本体部の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させてこれらが一体化されたFRP成形物(例えばFRP船殻ブロック)1を得る(a)。次いで、接続すべきFRP成形物1,1相互の金属板4,4の露出部4b,4bの先端を対向させ(b)、突合せ溶接する(c)。次に、これら金属板4,4の埋込部すなわち一端側4a,4aを、それぞれボルト6及びナット7により両FRP成形物1,1の本体側(ここでは繊維強化材3a,3bのみが積層されている端縁部)に補助的に固定する(d)。その後、これら金属板4,4のボルト6及びナット7による補助的固定部と突合せ溶接部8とを含む継手部全域に、これら両FRP成形物1,1の本体部(心材2入りの部分)の表面と面一となるように第2の心材9を付加し(e)、さらに心材9を外側より繊維強化材11a,11bで挟み、樹脂含浸させて一体化する(f)。
【0032】
このように、本実施形態によれば、連結接合すべきFRP成形物1,1間で継手部5の第1の心材となる金属板4,4の露出部4b,4bの先端を突合せ溶接するとともに、両金属板4,4の埋込部すなわち一端側4a,4aを、それぞれボルト・ナット6,7により両FRP成形物1,1の本体側に補助的に固定し、これら補助的固定部および突合せ溶接部8を含む継手部全域を、両FRP成形物1,1の本体部の表面と面一となるように第2の心材9を付加してその外側より繊維強化材11a,11bで挟み、樹脂含浸して一体化しているので、継手部5の結合強度を上げることができ、かつ継手部5の表面へのボルト頭やナットの突出(露出)を防止することができる。このため、FRP成形物1を比較的大型の舟艇の船殻ブロックに適用することも可能となり、その場合には水流抵抗増加、美観の悪化などを防止することができる。
【0033】
また、連結接合部を三次元的に塑性変形させることができる金属板4,4から構成してので、接合箇所に目違いが生じておれば、隣接するFRP成形物1,1間で金属板4,4の露出部4b,4bの先端を突合せ溶接する前に金属板4,4を塑性変形させて修正することができる。このため、溶接後に溶接部にスプリングバックのような力が作用せず、信頼性の確保が容易となる。
【0034】
また、連結接合部を突合せ溶接およびボルト・ナット6,7により固定してから、連結接合部における第2の心材9や表皮となる繊維強化材11a,11bの積層作業および樹脂含浸作業を行うので、FRP成形物1,1相互の継手接合作業が容易となる。
【0035】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図、図4はその継手接合方法を示す工程図であり、各図中、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。
【0036】
本実施形態に係るFRP成形物1そのものは、前述の第1実施形態のものと同一構成を有している。すなわち、FRP成形物1は、その本体部がシート状の心材2を中にしてその両外側にFRP表皮材となる同じくシート状の繊維強化材3a,3bを積層して構成され、またこの積層物の継手となる端縁部(ここでも心材2が無く繊維強化材3a,3bのみが積層されている部分)に、継手部5の第1の心材となる金属板(例えばSUS)4の一端側4aがその板厚中心面を前記積層物すなわち本体部の板厚中心面と一致させて埋め込まれており、樹脂含浸させ、硬化させて一体化されている。また、FRP成形物1の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部10に形成されている。
【0037】
継手部50は、隣接するFRP成形物1,1間で金属板4,4の露出部4b,4bの先端が別体からなる目違い修正用金属板40を介して対向し、この目違い修正用金属板40の両端にそれぞれ突合せ溶接(溶接部8a,8b)されているとともに、両側の金属板4,4の埋込部である一端側4a,4aが、それぞれボルト6及びナット7により、両FRP成形物1,1の本体側すなわち繊維強化材3a,3bのみが積層されている端縁部に、補助的に固定されており、更にこれらボルト6及びナット7による補助的固定部と両突合せ溶接部8a,8bとを含む継手部全域が、両FRP成形物1,1の本体部の表面と面一となるように第2の心材となる心材9を付加されてその外側より繊維強化材11a,11bで挟まれ、樹脂含浸され、硬化されて板状に一体化されている。
【0038】
次に、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法について図4を用いて説明する。まず、心材2を中にして繊維強化材3a,3bと心材2とを積層し、この積層物の継手部5となる端縁部に、この継手部5の第1の心材となる金属板4の一端側4aをその板厚中心面が前記積層物すなわち本体部の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させてこれらが一体化されたFRP成形物(例えばFRP船殻ブロック)1を得る(a)。次いで、接続すべきFRP成形物1,1相互の金属板4,4の露出部4b,4bの先端を別体からなる目違い修正用金属板40を介して対向させ(b)、目違い修正用金属板40の両端にそれぞれ突合せ溶接する(c)。次に、両側の金属板4,4の埋込部すなわち一端側4a,4aを、それぞれボルト6及びナット7により両FRP成形物1,1の本体側(繊維強化材3a,3bのみが積層されている端縁部)に補助的に固定する(d)。その後、これら金属板4,4のボルト6及びナット7による補助的固定部と両突合せ溶接部8a,8bとを含む継手部全域に、これら両FRP成形物1,1の本体部(心材2入りの部分)の表面と面一となるように第2の心材9を付加し(e)、さらに心材9を外側より繊維強化材11a,11bで挟み、樹脂含浸させて一体化する(f)。
【0039】
このように、本実施形態によれば、連結接合部を三次元的に塑性変形させることができる金属板4,4から構成するとともに、両金属板4,4の露出部4b,4bの先端間に同じく三次元的に塑性変形させることができる別体からなる目違い修正用金属板40を介在させ、金属板4,4の露出部4b,4bの先端を目違い修正用金属板40の両端にそれぞれ突合せ溶接するようにしているので、前述の第1実施形態の持つ作用、効果に加え、目違いの修正を目違い修正用金属板40部分で行わせることができて、両側の金属板4,4への負担(目違い修正のための折り曲げ負荷やこれが埋込部へ与える影響など)を無くする、あるいは軽減することができて、信頼性をより向上させることができるという利点を有する。
【0040】
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図、図6はFRP成形物に圧縮荷重が加わった場合の応力集中部の説明図、図7はFRP成形物に引張荷重が加わった場合の応力集中部の説明図であり、各図中、前述の第1実施形態のものと同一部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法については、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できる。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでは主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0041】
本実施形態に係るFRP成形物1Aは、そのボルト6及びナット7による補助的固定部からその本体部の継手側端縁部のテーパ部10、さらにテーパ部10から本体部の直線部への変更点部分10aまでを覆うように金属製の当て板61,62が継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板61,62が、金属板4の埋込部である一端側4aと共にそれぞれ前記ボルト・ナット6,7によって本体側に補助的に固定されるようになっている。すなわち、各当て板61,62は、ボルト締結の際の面圧を分散するストレート部61a,62aと、テーパ部10を覆うようにストレート部61a,62aの一端側に折曲形成されて、テーパ部10の板厚方向変形を抑制する第1ナックル部61b,62bと、変更点部分10aを覆うように折曲形成されて、変更点部分10aの板厚方向変形を抑制する第2ナックル部61c,62cとから構成されている。
【0042】
また、金属板4の埋め込み部の末端4cがテーパ部10の先端部にかかるようにテーパ部10内に挿入配置され、積層物の表皮となる繊維強化材3a,3bにおけるテーパ部10の内面と金属板4の埋め込み部の末端部の両面すなわち金属板4のテーパ部10内挿入部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72が充填されている。それ以外の構成は、前述の第1実施形態のものと同様である。
【0043】
図6及び図7のように当て板60a,60bがボルト締結の際の面圧を分散する機能しか持たない短尺のストレート部のみから形成され、金属板4の埋め込み部の末端4cがテーパ部10内に挿入されていない、つまりテーパ部10の先端部にくさび状空間が形成されておらず、心材端部補強が施されていない場合、図6のように圧縮荷重が加わると、FRP成形物1Aの本体部の端部すなわち心材テーパの開始部分Aでは、圧縮力の一部(分力)はテーパ部10の表皮すなわち繊維強化材3a,3bを剥離させようとする力として働く。また、図7のように引張荷重下では、張力は表皮が直線となるように作用するため、FRP成形物1Aの表皮形状が凹となる部分、つまり心材テーパの先端部分から平行に移行する部分Bでは、表皮すなわち繊維強化材3a,3bを金属板4から剥離させようとする力として働く。
【0044】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、FRP成形物1Aのボルト6及びナット7による補助的固定部からその本体部の継手側端縁部のテーパ部10、さらにテーパ部10から本体部の直線部への変更点部分10aまでを覆うように金属製の当て板61,62が継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板61,62が、金属板4の埋込部である一端側4aと共にそれぞれ前記ボルト・ナット6,7によって本体側に補助的に固定されるようになっているので、FRP成形物1Aに圧縮や引張などの面内荷重が負荷された時に、FRP成形物1Aに生ずる応力を当て板61,62にも分担させることができる。このため、圧縮荷重が加わった際にFRP成形物1Aの本体部の端部すなわち心材テーパの開始部分Aに生ずる応力の局部集中を当て板61,62によって緩和させることができるとともに、FRP成形物1Aの板厚方向変形を抑制することができ、心材テーパの開始部分Aにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。このような耐荷重性能は、前記のように当て板61,62を継手部の両面に接着することで、より高まることは言うまでもない。
【0045】
また、金属板4の埋め込み部の末端4cがテーパ部10の先端部にかかるようにテーパ部10内に挿入配置され、積層物の表皮となる繊維強化材3a,3bにおけるテーパ部10の内面と金属板4の埋め込み部の末端部の両面すなわち金属板4のテーパ部10内挿入部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72を充填するようにしているので、引張荷重が加わった際に表皮が直線になろうとする性質によって継手部の凹部となる部分、つまり心材テーパの先端部分から平行に移行する部分Bに生ずる応力の局部集中を第1の心材端部補強材71,72によって緩和させることができ、部分Bにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。さらに、部分Bに生ずる応力の局部集中を当て板61,62によっても緩和させることができるため、部分Bにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度をより向上させることができる。
【0046】
実施の形態4.
図8は本発明の実施の形態4に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図であり、図中、前述の第3実施形態のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法についても、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できる。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでも主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0047】
本実施形態に係るFRP成形物1Bは、第1の心材端部補強材73に金属板4の埋め込み部の心出しと、継手側端縁部のテーパ部10の成形および保持機能を持たせたものである。
【0048】
これを更に詳述すると、第1の心材端部補強材73は、アルミからなり、先端に金属板4の埋め込み部の末端4cが勘合可能な断面コ字状の勘合部73eを有し、その断面コ字状の両端片部73a,73bが前述のくさび状空間(図5のパテ充填部)に差し込まれているとともに、勘合部73eの断面コ字状の両肩部から後方へテーパ部10に沿って末広がり状に延出する後方片部73c,73dが設けられてなるものである。それ以外の構成は、前述の第3実施形態のものと同様である。
【0049】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、第1の心材端部補強材73がアルミからなり、先端に前記金属板4の埋め込み部の末端4cが勘合可能な断面コ字状の勘合部73eを有し、その断面コ字状の両端片部73a,73bによりくさび状空間を埋めるとともに、勘合部73eの断面コ字状の両肩部から後方へテーパ部10に沿って末広がり状に延出する後方片部73c,73dを設けているので、当て板61,62による応力緩和効果に加え、第1の心材端部補強材73によって金属板4の埋め込み部の心出しを行うことができ、製作時の目違いを防止することができるとともに、積層物端縁部のテーパ部10の成形および保持を容易に行うことができる。
【0050】
実施の形態5.
図9は本発明の実施の形態5に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図であり、図中、前述の第3実施形態のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法についても、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できる。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでも主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0051】
本実施形態に係るFRP成形物1Cは、前述の第3実施形態のものと同様に、くさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72を充填するとともに、テーパ部10における第1の心材端部補強材71,72の後方空間を、本体部の心材2よりも高い剛性、強度を持つ例えば木材からなる第2の心材端部補強材74で埋め、第2の心材端部補強材74の先端に第1の心材端部補強材71,72を接着するようにしたものである。それ以外の構成は、前述の第3実施形態のものと同様である。
【0052】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、くさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72を充填するとともに、テーパ部10における第1の心材端部補強材71,72の後方空間を、本体部の心材2よりも高い剛性、強度を持つ例えば木材からなる第2の心材端部補強材74で埋め、第2の心材端部補強材74の先端に第1の心材端部補強材71,72を接着するようにしているので、当て板61,62による応力緩和効果に加え、圧縮や引張に対する耐荷重性能を一層向上させることができる。
【0053】
なお、本実施形態で説明した、第1の心材端部補強材の後方空間を、本体部の心材2よりも高い剛性、強度を持つ例えば木材からなる第2の心材端部補強材で埋め、第2の心材端部補強材の先端に第1の心材端部補強材を接着することについては、前述の第3及び第4実施形態にも適用可能であることは言うまでもない。
【0054】
実施の形態6.
図10は本発明の実施の形態6に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図であり、図中、前述の第4及び第5実施形態のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法についても、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できるた。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでも主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0055】
本実施形態に係るFRP成形物1Dは、第1の心材端部補強材75が、金属板4の埋め込み部の末端4cが勘合可能な断面コ字状のアルミから形成され、その断面コ字状の両端片部75a,75bが前述のくさび状空間(図9のパテ充填部)に差し込まれている。また、テーパ部10における第1の心材端部補強材75の後方空間が、本体部の心材2よりも高い剛性、強度を持つ例えば木材からなる第2の心材端部補強材74で埋められ、第2の心材端部補強材74の先端に第1の心材端部補強材75が接着されている。それ以外の構成は、前述の第4および第5実施形態のものと同様である。
【0056】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、第1の心材端部補強材75を金属板4の埋め込み部の末端4cが勘合可能な断面コ字状のアルミから形成し、その断面コ字状の両端片部75a,75bによりくさび状空間が埋められるようにしているので、当て板61,62による応力緩和効果に加え、第1の心材端部補強材75によって金属板4の埋め込み部の心出しを行うことができ、製作時の目違いを防止することができる。
【0057】
また、テーパ部10における第1の心材端部補強材75の後方空間を、本体部の心材2よりも高い剛性、強度を持つ例えば木材からなる第2の心材端部補強材74で埋め、第2の心材端部補強材74の先端に第1の心材端部補強材75を接着しているので、圧縮や引張に対する耐荷重性能を一層向上させることができる。
【0058】
実施の形態7.
図11は本発明の実施の形態7に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図であり、図中、前述の第3実施形態のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法についても、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できる。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでも主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0059】
本実施形態に係るFRP成形物1Eは、継手部の両面に添設されて接着される金属製の当て板63,64が、ボルト6及びナット7による補助的固定部を覆うストレート部63a,64aのみから形成されているが、前述の応力集中部の説明のために用いた図6、図7のものとは異なり、その基端側(FRP成形物本体側)63b,64bは、テーパ部10の直前まで延出して設けられている。
【0060】
また、金属板4の埋め込み部の末端4cが、前述の第3乃至第6実施形態と同様にテーパ部10の先端部にかかるようにテーパ部10内に挿入配置され、積層物の表皮となる繊維強化材3a,3bにおけるテーパ部10の内面と金属板4の埋め込み部の末端部の両面すなわち金属板4のテーパ部10内挿入部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72が充填されている。それ以外の構成は、前述の第3実施形態のものと同様である。
【0061】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、当て板63,64を、FRP成形物1Eのボルト6及びナット7による補助的固定部からその本体部の継手側端縁部のテーパ部10の直前まで延出して設けているので、引張荷重を受けた際の応力をFRP成形物1Eに生ずる応力を当て板63,64に分担させることができる。さらに、金属板4の埋め込み部の末端4cをテーパ部10内に挿入配置することによって金属板4と表皮材である繊維強化材3a,3bとの間に形成されるくさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72を充填するようにしているので、引張荷重が加わった際に心材テーパの先端部分から平行に移行する部分B(図7参照)に生ずる応力の局部集中を第1の心材端部補強材71,72によっても緩和させることができる。このため、部分Bにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。
【0062】
また、当て板63,64は、ナックル部を全く形成する必要がなく、ストレート板から構成できるので、製作が極めて容易である。
【0063】
なお、本実施形態においても前述の第5及び第6実施形態で説明した第2の心材端部補強材74を適用できることは言うまでもない。
【0064】
また、本実施形態においても前述の第4実施形態で説明したアルミ製の第1の心材端部補強材73や、前述の第6実施形態で説明した断面コ字状のアルミから形成される第1の心材端部補強材75を適用できることは言うまでもない。
【0065】
実施の形態8.
図12は本発明の実施の形態8に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図であり、図中、前述の第3実施形態のものに相当する部分には同一符号を付してある。なお、本実施形態に係るFRP成形物の継手接合方法についても、前述の第1実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を直接突合せ溶接する接合方法や、前述の第2実施形態のように継手部の第1の心材となる金属板相互を目違い修正用金属板を介して突合せ溶接する接合方法の何れも採用可能であり、その説明を適用できる。このため、継手接合方法についての説明は省略し、ここでも主にFRP成形物の継手構造について説明する。
【0066】
本実施形態に係るFRP成形物1Fは、継手部の両面に添設されて接着される金属製の当て板65,66が、そのボルト6及びナット7による補助的固定部からその本体部の継手側端縁部のテーパ部10までを覆うように形成されている。すなわち、各当て板65,66は、ボルト締結の際の面圧を分散するストレート部65a,66aと、テーパ部10を覆うようにストレート部65a,66aの一端側に折曲形成されて、テーパ部10の板厚方向変形を抑制する第1ナックル部65b,66bとから構成されている。つまり、前述の第3実施形態のものとは、第2ナックル部が設けられていない点で異なっている。それ以外の構成は、全て前述の第3実施形態のものと同一である。
【0067】
本実施形態のFRP成形物の継手構造においては、当て板65,66を、FRP成形物1Fのボルト6及びナット7による補助的固定部からその本体部の継手側端縁部のテーパ部10のまでを覆うように金属製の当て板65,66が継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板65,66が、金属板4の埋込部である一端側4aと共にそれぞれ前記ボルト・ナット6,7によって本体側に補助的に固定されるようになっているので、FRP成形物1Fに圧縮や引張などの面内荷重が負荷された時に、FRP成形物1Aに生ずる応力を当て板61,62にも分担させることができる。このため、圧縮荷重が加わった際にFRP成形物1Fの本体部の端部すなわち心材テーパの開始部分A(図6参照)に生ずる応力の局部集中を当て板65,66によって緩和させることができるとともに、FRP成形物1Fの板厚方向変形を抑制することができ、心材テーパの開始部分Aにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。
【0068】
また、前述の第3実施形態のものと同様に、金属板4の埋め込み部の末端4cをテーパ部10内に挿入配置することによって金属板4と表皮材である繊維強化材3a,3bとの間に形成されるくさび状空間に、パテからなる第1の心材端部補強材71,72を充填するように構成しているので、引張荷重が加わった際に心材テーパの先端部分から平行に移行する部分B(図7参照)に生ずる応力の局部集中を第1の心材端部補強材71,72によっても緩和させることができる。このため、部分Bにおける心材2と表皮材である繊維強化材3a,3bとの境界面での剥離に対する強度を向上させることができる。
【0069】
また、当て板65,66は、ナックル部が第1ナックル部65b,66bのみとなり、第2ナックル部を形成する必要がないので、その分、製作が容易である。
【0070】
なお、本実施形態においても前述の第5及び第6実施形態で説明した第2の心材端部補強材を適用できることは言うまでもない。
【0071】
また、本実施形態においても前述の第4実施形態で説明したアルミ製の第1の心材端部補強材73や、前述の第6実施形態で説明した断面コ字状のアルミから形成される第1の心材端部補強材75を適用できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係るFRP成形物の継手接合方法を示す工程図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態2に係るFRP成形物の継手接合方法を示す工程図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図6】FRP成形物に圧縮荷重が加わった場合の応力集中部の説明図である。
【図7】FRP成形物に引張荷重が加わった場合の応力集中部の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態4に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図9】本発明の実施の形態5に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図10】本発明の実施の形態6に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態7に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【図12】本発明の実施の形態8に係るFRP成形物の継手構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F FRP成形物
2,9 心材
3a,3b,11a,11b 繊維強化材
4 金属板(継手部の第1の心材)
4a 金属板の一端側(金属板の埋込部)
4b 金属板の露出部
4c 金属板の埋め込み部の末端
5,50 継手部
6 ボルト
7 ナット
8,8a,8b 突合せ溶接部
9 心材(第2の心材)
10 テーパ部
40 目違い修正用金属板
61,62,63,64,65,66 金属製の当て板
71,72,73,75 第1の心材端部補強材
73a,73b,75a,75b 断面コ字状の両端片部
73c,73d 後方片部
73e 断面コ字状の勘合部
74 第2の心材端部補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心材を中にしてその両外側に繊維強化材を積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に、該継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を、前記金属板を介して隣接FRP成形物間で連結接合してなる継手構造であって、
前記継手構造は、隣接するFRP成形物間で前記金属板の露出部の先端が突合せ溶接されているとともに、これら金属板の前記埋込部が、それぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定されており、更にこれら補助的固定部および前記突合せ溶接部を含む継手部全域が、両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加されてその外側より繊維強化材で挟まれ、樹脂含浸して一体化されてなることを特徴とするFRP成形物の継手構造。
【請求項2】
心材を中にしてその両外側に繊維強化材を積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に該継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を、前記金属板を介して隣接FRP成形物間で連結接合してなる継手構造であって、
前記継手構造は、隣接するFRP成形物間で前記金属板の露出部の先端が、別体からなる目違い修正用金属板を介して対向し、この目違い修正用金属板の両端にそれぞれ突合せ溶接されているとともに、両金属板の前記埋込部が、それぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定されており、更にこれら補助的固定部と両前記突合せ溶接部および前記目違い修正用金属板を含む継手部全域が、両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加されてその外側より繊維強化材で挟まれ、樹脂含浸して一体化されてなることを特徴とするFRP成形物の継手構造。
【請求項3】
前記FRP成形物の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部に形成されているとともに、前記補助的固定部から前記テーパ部の直前までを覆うように金属製の当て板が前記継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板が、前記金属板の前記埋込部と共にそれぞれ前記ボルト・ナットによって前記FRP成形物の本体側に補助的に固定されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項4】
前記FRP成形物の本体部の継手側端縁部は、先端が前記金属板に向けて間隔が縮小するテーパ部に形成されているとともに、前記補助的固定部から前記テーパ部までを覆うように金属製の当て板が前記継手部の両面に添設されて接着され、これら当て板が、前記金属板の前記埋込部と共にそれぞれ前記ボルト・ナットによって前記FRP成形物の本体側に補助的に固定されてなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項5】
前記金属板の一端側の埋め込み部は、その末端が前記テーパ部の先端部にかかるように配置され、少なくとも前記積層物の表皮となる前記繊維強化材における前記テーパ部の内面と前記金属板の埋め込み部の末端部の両面との間にそれぞれ形成されるくさび状空間が第1の心材端部補強材で埋められていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項6】
前記第1の心材端部補強材は、前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状に形成され、該断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間が埋められてなることを特徴とする請求項5記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項7】
前記第1の心材端部補強材は、先端に前記金属板の埋め込み部の末端部が勘合可能な断面コ字状の勘合部を有し、該断面コ字状の両端片部により前記くさび状空間が埋められているとともに、該勘合部の断面コ字状の両肩部から後方へ前記テーパ部に沿って末広がり状に延出する後方片部が設けられていることを特徴とする請求項5記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項8】
前記テーパ部における前記第1の心材端部補強材の後方空間は、前記積層物の心材または該心材よりも高い剛性、強度をもった第2の心材端部補強材で埋められているとともに、前記積層物の心材または第2の心材端部補強材の先端に前記第1の心材端部補強材が接着されてなることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれかに記載のFRP成形物の継手構造。
【請求項9】
心材を中にして繊維強化材と心材とを積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に、該継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を得る工程と、
接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端を対向させ、突合せ溶接する工程と、
これら金属板の前記埋込部をそれぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定する工程と、
これら金属板の前記補助的固定部と前記突合せ溶接部を含む継手部全域が両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加する工程と、
継手部に付加した第2の心材を外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸させて一体化する工程と、
を有することを特徴とするFRP成形物の継手接合方法。
【請求項10】
心材を中にして繊維強化材と心材とを積層し、またこの積層物の継手部となる端縁部に、該継手部の第1の心材となる金属板の一端側をその板厚中心面が前記積層物の板厚中心面と一致するように埋め込み、樹脂含浸させて、これらが一体化されたFRP成形物を得る工程と、
接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端を別体からなる目違い修正用金属板を介して対向配置する工程と、
目違い修正用金属板の両端に、接続すべきFRP成形物相互の金属板の露出部先端をそれぞれ突合せ溶接する工程と、
これら金属板の前記埋込部をそれぞれボルト・ナットにより両FRP成形物の本体側に補助的に固定する工程と、
これら金属板の前記補助的固定部と両前記突合せ溶接部および前記目違い修正用金属板を含む継手部全域が両FRP成形物の本体部の表面と面一となるように第2の心材を付加する工程と、
継手部に付加した第2の心材を外側より繊維強化材で挟み、樹脂含浸させて一体化する工程と、
を有することを特徴とするFRP成形物の継手接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−44347(P2008−44347A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122229(P2007−122229)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【Fターム(参考)】