説明

Fc−インターフェロン−β融合タンパク質

Fc-インターフェロン-β(Fc-IFN-β)融合タンパク質及びそれらをコードしている核酸分子が明らかにされている。Fc-IFN-β融合タンパク質は、増強された生物学的活性、延長された循環血中半減期及びより大きい溶解度を実現するように変化された、インターフェロン-β(IFN-β)タンパク質の変種を含む。同じくこの融合タンパク質の作製法、並びにインターフェロン-βの投与により緩和される疾患及び状態を治療するためのこのx融合タンパク質及び/又は核酸分子の使用法も明らかにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、Fc-融合タンパク質に関する。より詳細に述べると、本発明は、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質及びそれらの変形の高-レベル発現及び分泌、並びにそのようなタンパク質の作製及び使用の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インターフェロンは、ウイルス、マイトジェン及びサイトカインを含む様々な刺激に反応してほとんどの動物細胞により分泌される1本鎖ポリペプチドである。インターフェロンは、細胞機能の調節に参加し、並びに抗増殖作用、抗ウイルス作用及び免疫変調作用を媒介する。従って、これらは治療上非常に興味深い。未変性のインターフェロンは、それらが主に由来する細胞型を基に、3群、すなわち、インターフェロン-α(白血球由来)、インターフェロン-β(線維芽細胞由来)、インターフェロン-γ(免疫細胞由来)に分けられる。インターフェロン-β(IFN-β)は、様々な生物学的活性及び免疫学的活性を示し、結果として免疫療法、抗腫瘍療法、抗癌療法及び抗ウイルス療法への適用の可能性がある。野生型及び組換え型の両方のIFN-βの抗癌特性及び抗ウイルス特性を基に、多くの研究及び臨床試験がこれまで行われ、現在も行われている。多発性硬化症の治療において組換えIFN-βを使用する臨床試験も行われた。
【0003】
未変性のIFN-βを含む、ほとんどのサイトカインは、比較的短い循環血中半減期を有する。結果的に、IFN-βを治療薬として有効にするために、これは大量で多頻回投与で患者へ投与されなければならない;しかしこのことは、毒性のある副作用へ繋がることが多い。従って、未変性のサイトカインと比べ延長された循環血中半減期を有するIFN-βの形を作製することは非常に望ましい。更に生産目的で、大量の発現及び精製が容易であるIFN-βの型を作製することは有用である。
【0004】
ヒトIFN-β(huIFN-β)は、166個のアミノ酸の糖タンパク質であり、及び4個のヘリックス-バンドル構造を有する。組換えhuIFN-βは、原核細胞又は哺乳類のいずれかの発現システムにおける治療薬としての使用のために通常作製される。しかしhuIFN-βのような哺乳類環境において通常分泌されるタンパク質が、原核細胞において産生される場合は、原核細胞発現のタンパク質フォールディング及び可能性のある翻訳後修飾に対する作用に対処する必要がある。例えば哺乳類細胞において、細胞外環境に運命付けられたほとんどのタンパク質は、小胞体(ER)の酸化環境においてフォールディングされ、これはジスルフィド結合の正確な形成を促進する。対照的に、原核細胞の細胞質ゾルの還元環境は、システイン結合の形成を妨害する。加えて原核細胞システムにおいて発現されたタンパク質は、N-連結したグリコシル化などの、いくつかの翻訳後修飾を欠いており、これは恐らくタンパク質の正確なフォールディングを助け、フォールディングされたタンパク質の安定性を増加し、及び投与されたタンパク質の免疫原性を減少するであろう。
【0005】
例えば野生型IFN-βが、原核細胞発現システムにおいて発現される場合に、これは、適切にフォールディングされず、凝集体を形成する。このこととは、成熟型IFN-βタンパク質の位置17の遊離のシステインの、例えばセリンへの変異により克服することができる。位置17のこのシステインは、ジスルフィド結合に関与しない。例えば米国特許第4,737,462号を参照のこと。対照的に、無傷の野生型IFN-βが、その環境はIFN-βタンパク質の正確なフォールディングに適している真核細胞発現システムにおいて産生される場合、不適切なフォールディング及び凝集は認められない。IFN-βタンパク質は、真核細胞発現システムにおいて発現される場合には、適切にフォールディングし、及び凝集しないように見えるので、このことは、グリコシル化が、IFN-βタンパク質の適切なフォールディングにおいて重要な役割を果たすことを示唆している。真核細胞発現システムにおいて産生された組換えIFN-βはグリコシル化を受けるが、これは未変性のIFN-βの正確なグリコシル化パターンは有さないことがある。例えば米国特許第5,795,779号参照。IFN-βのグリコシル化はその生物学的活性には必須であるようには見えないが、バイオアッセイにおけるグリコシル化されたIFN-βの特異的活性は、非グリコシル化型のそれよりも大きい。実際哺乳類発現システムのような、真核細胞発現システムにおいて産生されたIFN-βは、実質的に凝集されないが、グリカン部分が除去された場合には、凝集体を形成する。従ってIFN-βのグリコシル化型の生物物理的特性は、非グリコシル化型よりも、未変性のタンパク質の特性に類似しているので、IFN-βのグリコシル化型が治療的使用には望ましい。
【0006】
加えてFc-X融合タンパク質(“イムノフシン(immunofusin)”)を作製するための関心のあるタンパク質“X”の免疫グロブリンFcドメイン“Fc”への連結は、一般にタンパク質生産を著しく増加する作用を有することがわかっている。これは、ひとつには、通常発現カセットと称される融合タンパク質のFc部分が、この融合タンパク質の効率的分泌のためにデザインされているため、並びにひとつには、タンパク質は、通常分泌に対して活性がある哺乳類細胞から産生され及び分泌されるために生じると考えられる。更なるFc-X融合タンパク質を作製する利点は、得られるイムノフシンは、関心のある遊離のタンパク質と比べ、増大した循環血中半減期を示すことであり、これは著しい治療的利点となり得る。
従って、当該技術分野において、IFN-β部分に融合されたFc部分を含む、生物学的に活性のあるイムノフシンが、未変性のIFN-βのものに類似している生物物理特性を有するように最適化される必要性が存在する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、可溶性の生物学的に活性のあるFc-IFN-β融合タンパク質及びそられの変種(Fc-IFN-βsol)を発現する方法及び組成物を提供する。本発明のFc-IFN-βsol融合タンパク質は、増加した溶解度、延長された循環血中半減期、増強された生物学的活性及び低下した免疫原性のような、未変化のFc-IFN-βタンパク質に勝る改善された生物学的特性を明らかにしている。
【0008】
IFN-βの循環血中半減期を改善するために、本発明は、免疫グロブリンFc領域及び免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端へ連結されたIFN-βタンパク質を含むFc-IFN-β融合タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。フォールディングを改善し及び凝集を減少させるために、IFN-βタンパク質は、未変性の成熟型インターフェロン-βに相当する位置17、50、57、130、131、136及び140の少なくともひとつに、アミノ酸変化を含む。アミノ酸の変化は、欠失、置換又は修飾であることができる。ひとつの態様において、アミノ酸変化は、位置17のシステインの代わりに、セリン、アラニン、バリン又はメチオニンのいずれかを置換する。別の態様において、アミノ酸変化は、位置50のフェニルアラニンの代わりに、ヒスチジンを置換する。更に別の態様において、アミノ酸変化は、位置57のロイシンの代わりに、アラニンを置換し、更なる態様において、アミノ酸変化は、位置130のロイシンの代わりに、アラニンを置換する。更なる態様は、位置131のヒスチジンの代わりに、アラニンを置換するアミノ酸変化を可能にし、並びに追加の態様は、位置136のリシンの代わりに、アラニンの置換を企図している。更に別の態様において、アミノ酸変化は、位置140のヒスチジンの代わりに、アラニン又はトレオニンを置換する。
【0009】
免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンヒンジ領域及び免疫グロブリン重鎖定常領域を含むことができる。ひとつの態様において、Fc領域は、IgG4に由来し、別においてIgG1に由来し、更に別においてIgG2に由来する。別の態様において、Fc領域は、IgG4に由来するが、IgG1由来のヒンジ領域を含む。更に別の態様において、Fc領域はIgG2に由来するが、IgG1由来のヒンジ領域を含む。Fc領域がCH3ドメインを含む場合、免疫グロブリンFc領域のC-末端のリシンは、アラニン残基により交換され得る。更なる態様において、ヒンジ領域のシステイン残基は変異される。
【0010】
本発明は、Fc部分及びIFN-β部分を連結し、本発明の融合タンパク質を作出する様々な方法を提供する。例えばひとつの態様において、免疫グロブリンFc領域及びインターフェロン-βタンパク質は、互いにペプチド結合により融合される。別の態様において、免疫グロブリンFc領域及びインターフェロン-βタンパク質は、ペプチドリンカー配列により連結され、タンパク質フォールディングを促進する。このリンカー配列は、グリシン及びセリン残基で構成されることが好ましい。例えばひとつの態様において、このペプチドリンカー配列は、Gly4SerGly4SerGly3SerGly (配列番号:1)である。
【0011】
ひとつの態様において、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質は、フォールディングを改善し及び凝集を減少させるために、位置17、50、131、及び140にアミノ酸変化を含む。ひとつの具体的態様において、アミノ酸変化は、位置17のシステインの代わりに置換されたセリン、位置50のフェニルアラニンの代わりに置換されたヒスチジン、位置131のヒスチジンの代わりに置換されたアラニン、及び位置140のヒスチジンの代わりに置換されたトレオニン又はアラニンである。ある態様において、Fc領域は、IgG1、IgG2、又はIgG4を含む。この融合タンパク質は、インターフェロン-βタンパク質及び免疫グロブリンFc領域を連結するポリペプチドリンカー配列も含む。ひとつの態様において、ヒンジ領域のシステイン残基は変異されている。
【0012】
別の態様において、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質は、位置17、57、131、及び140にアミノ酸変化を含み、これは発現された融合タンパク質のフォールディングを改善し及び凝集を減少させる。ひとつの具体的態様において、アミノ酸変化は、位置17のシステインの代わりに置換されたセリン、位置57のロイシンの代わりに置換されたアラニン、位置131のヒスチジンの代わりに置換されたアラニン、及び位置140のヒスチジンの代わりに置換されたトレオニン又はアラニンである。ある態様において、Fc領域は、IgG1、IgG2、又はIgG4を含む。別の態様において、融合タンパク質は、インターフェロン-βタンパク質及び免疫グロブリンFc領域を連結するポリペプチドリンカー配列も含むことができる。更なる態様において、ヒンジ領域のシステイン残基は変異されている。
【0013】
本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする方法及び発現する方法も提供する。例えば本発明のひとつの局面は、前述のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかをコードしている核酸分子に関し、別の局面において、本発明は、前述のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかをコードしている核酸を含む細胞に関する。更なる局面において、本発明の核酸分子は、複製可能な発現ベクターへ機能的会合で組込むことができ、これは次に免疫グロブリンFc-IFN-βsol融合タンパク質を産生することにコンピテントである哺乳類宿主細胞へ、例えば形質移入により導入することができる。このベクターは、前述のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつをコードしている核酸分子を含む。本発明は、哺乳類細胞を形質移入するための複製可能な発現ベクターも包含している。このベクターは、前述のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつをコードしている核酸分子を含む。
【0014】
別の局面において、本発明は、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質を安定化する方法に関する。ひとつの態様において、この方法は、前述のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかを作製する工程を含む。更なる態様において、安定化は、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の循環血中半減期を、未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増大することを含む。更に別の態様において、安定化は、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の凝集を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて減少させることを含む一方で、更なる態様において、安定化は、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の生物学的活性を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増加することを含む。
【0015】
本発明の更なる局面は、インターフェロン-βの投与により緩和される状態に関して患者を治療する方法に関連している。ひとつの態様において、任意の前述のインターフェロン-β融合タンパク質の有効量を、その状態を有する哺乳類へ投与することを含む。別の態様において、この方法は、任意の前述のインターフェロン-β融合タンパク質をコードしている核酸を、その状態を有する哺乳類へ投与することを含み、更に別の態様において、この方法は、任意の前述のインターフェロン-β融合タンパク質をコードしている細胞を、その状態を有する哺乳類へ投与することを含む。
【0016】
まとめると、本発明は以下の主題に関連している:
(i)免疫グロブリンFc領域;及び
(ii)ペプチド結合又はペプチドリンカー配列により、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端へ連結された、インターフェロン-βタンパク質;を含むFc-インターフェロン-β融合タンパク質であり、
ここでインターフェロン-βタンパク質は、未変性の成熟型インターフェロン-βに対応する位置17、50、57、130、131、136及び140の少なくともひとつに、アミノ酸変化を含む。
・アミノ酸変化が置換である、対応する融合タンパク質。
・以下からなる群より選択される、インターフェロン-βタンパク質内にアミノ酸置換を有する、対応する融合タンパク質:C17S、C17A、C17V、C17M;F50H、L57A、L130A、H131A、K136A、H140A、H140T。
・17及び50及び131及び140、又は
17及び57及び131及び140の位置で、インターフェロン-βタンパク質内にアミノ酸置換を有する、対応する融合タンパク質。
・インターフェロン-βタンパク質内に、C17S及びF50H及びH131A及びH140TもしくはA、又はC17S及びL57A及びH131A及びH140TもしくはAのアミノ酸置換を有する、対応する融合タンパク質:
・免疫グロブリンFc領域が、免疫グロブリンヒンジ領域及び免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、対応する融合タンパク質。
・免疫グロブリンFc領域が、IgG4、IgG2又はIgG1に由来する、対応する融合タンパク質。
・免疫グロブリンFc領域が、IgG4に由来し、更にIgG1に由来した免疫グロブリンヒンジ領域を含む、対応する融合タンパク質。
・ヒンジ領域のシステイン残基が変異されている、対応する融合タンパク質。
・免疫グロブリンFc領域が、IgG1に由来し、及びアラニン残基が、免疫グロブリンFc領域のC-末端リシンの代わりに置換されている、対応する融合タンパク質。
・免疫グロブリンFc領域が、IgG2に由来し、更にIgG1に由来した免疫グロブリンヒンジ領域を含む、対応する融合タンパク質。
・ヒンジ領域のシステイン残基が変異されている、対応する融合タンパク質。
・更にアラニン残基が、免疫グロブリンFc領域のC-末端リシンの代わりに置換されている、対応する融合タンパク質。
・ペプチドリンカー配列が、Gly4SerGly4SerGly3SerGlyである、対応する融合タンパク質。
・前記Fc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつをコードしている核酸分子。
・ベクターが、先に列記されたようなFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつをコードしている核酸分子を含む、哺乳類細胞を形質移入する複製可能な発現ベクター。
・対応する核酸分子を含む細胞。
・Fc-インターフェロン-β融合体が、先に特定したFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつを含む、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質を作製する工程を含む、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質を安定化する方法。
・安定化が以下の工程を含む、対応する方法:
(i)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の循環血中半減期を、未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増大する工程、又は
(ii)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の凝集を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて減少させる工程、又は
(iii)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の生物学的活性を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増加する工程。
・インターフェロン-βの投与により緩和されるような患者の状態を治療するための医薬品の製造のための、対応するFc-インターフェロン-β融合タンパク質の使用。
【0017】
前述の及びその他の本発明の目的、特徴及び利点は、以下の説明、図面及び「特許請求の範囲」から明らかであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(発明の詳細な説明)
IFN-βは、抗増殖作用、抗ウイルス作用及び免疫変調作用を媒介し、並びにIFN-β投与による多発性硬化症の治療におけるその有用性に加え、多くの他の状態が緩和されることが予想される。例えば急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、基底細胞癌、子宮頚部形成異常及び骨肉腫などの様々な悪性疾患の治療としてのその有用性が、現在評価されている。IFN-βは、ウイルス性肝炎、帯状疱疹及び性器ヘルペス、乳頭腫ウイルス、ウイルス性脳炎、並びにサイトメガロウイルス肺炎を含む、様々なウイルス感染症に対する、治療的物質としても試験されている。
しかし患者へ投与される場合、組換え成熟型IFN-βは、短い循環血中半減期を有し、このことはこれを治療で使用する上で最適ではないものとしている。従って当該技術分野において、改善された血清半減期を含む、改善された薬物動態特性を伴うIFN-βの変種を作出する必要性が存在する。
【0019】
当該技術分野において公知の小型タンパク質の半減期を延長するひとつの方法は、これらを免疫グロブリンFc領域に連結することに関する。Fc領域がリガンドのN-末端に配置されている融合体(「イムノフシン」又は「Fc-X」融合体と称される、ここでXはIFN-βのようなリガンドである)は、多くの有用な特性を有している(Loら、米国特許第5,726,044号及び第5,541,087号;Loら、Protein Engineering, 11: 495 (1998))。例えば、レプチンがマウスへFc-レプチン融合分子として投与される場合(例えば、PCT国際公開公報第00/40615号参照)、レプチンの循環血中半減期は、約18分間から8時間以上に増大する。同様にマウスにおけるIL-2の半減期は、Fc-IL2融合タンパク質として投与される場合には、数分間から数時間へ増大される。
【0020】
Fc-X融合タンパク質の別の有用な特性は、Fc部分は一般に著しくタンパク質産生を増加する作用を有することである。これは、ひとつには、通常発現カセットと称される融合タンパク質のFc部分は、融合タンパク質の効率的分泌のためにデザインされているためであり、及びひとつには、この融合タンパク質は、天然に免疫グロブリンを発現している宿主哺乳類細胞内で生成されそこから分泌することができ、その結果この融合タンパク質は容易に宿主細胞から分泌されるために生じると考えられる。原核細胞発現システムにおいてこれらの融合タンパク質を作出することは可能であるが、真核細胞発現システムが好ましく、哺乳類発現システムが最も好ましい。
【0021】
驚くべきことに、未変化のFc-IFN-βイムノフシンが真核細胞発現システムにおいて作出される場合に、これは発現が不良であり、ミスフォールディングされ、かつ実質的に凝集されることがわかった。対照的に真核細胞発現システムにおいて作出された組換えIFN-βタンパク質は、可溶性であり及び98%単量体である(Runkelら、Pharmaceutical Research, 15:641 (1998))。従ってIFN-β部分がFcドメインに先立つ融合タンパク質としてIFN-βが作出された場合に凝集が認められないので、IFN-β部分のN-末端へのFc部分の配置が、融合タンパク質の正確にフォールディングする能力に影響したように見える(米国特許第5,908,626号参照)。従って当該技術分野において、正確にフォールディングしかつ実質的に凝集しないFc-IFN-β融合タンパク質を作製する必要性が存在する。
【0022】
結果的に本発明は、(i)免疫グロブリンFc-IFN-βsol融合タンパク質の効率的産生を促進する、核酸配列;(ii)様々な哺乳類宿主細胞における免疫グロブリンFc-IFN-βsol融合タンパク質の迅速かつ効率的産生及び分泌のための、核酸構築体;並びに、(iii)免疫グロブリンFc-IFN-βsol融合タンパク質の組換え変種の産生、分泌、及び精製の方法;を提供する。
【0023】
特に本発明は、免疫グロブリンFc領域及びIFN-βsolタンパク質を含むポリペプチドを5’から3’方向に連続してコードしている核酸分子、例えば、DNA又はRNA分子を提供する。
本発明の核酸分子は、その後例えば形質移入により、免疫グロブリンFc-IFN-βsol融合タンパク質の作製にコンピテントである哺乳類宿主細胞へ導入することができる、複製可能な発現ベクターへ機能的に会合するように組込むことができる。
【0024】
本発明は、Fc-IFN-β融合タンパク質を安定化する方法も提供する。IL-2(huFc-IL2)のような4個と多くのヘリックスバンドルタンパク質を含む多くのタンパク質がFc融合体としてうまく作出されかつ精製されているが、IFN-βが4-ヘリックスバンドルタンパク質のクラスに属するFc-IFN-β融合タンパク質は、そのタンパク質内の異常なジスルフィド結合の存在のために、少なくとも部分的に凝集体を形成する(「共有凝集」)ことがわかっている。加えて、Fc-IFN-βタンパク質は、更に非-共有的相互作用を通じて、凝集体を形成すること(「非-共有凝集」)がわかっている。
【0025】
本発明は、Fc-IFN-βsol融合タンパク質を作製する工程を含む、Fc-IFN-β融合タンパク質を安定化する方法を提供することにより、凝集を軽減し、ここで融合タンパク質は、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端に連結された、1個又は複数のアミノ酸変化を有するIFN-βタンパク質を含む。本発明の態様において、安定化は、Fc-IFN-βsol融合タンパク質の溶解度を、未変化のFc-IFN-β融合タンパク質と比べ上昇し、Fc-IFN-βsol融合タンパク質の循環血中半減期を、未変化のFc-IFN-β融合タンパク質と比べ増大し、及び/又はFc-IFN-βsol融合タンパク質の生物学的活性を、未変化のFc-IFN-β融合タンパク質と比べ増強することを含む。増加した安定性は、ひとつには融合タンパク質内の異常なジスルフィド結合の排除により、及びひとつには融合タンパク質の非-共有凝集の量の低下により、実現される。
【0026】
本発明は同じく、本発明の方法で生成されたIFN-β及び/又は本発明のFc-IFN-βsol融合タンパク質を有効量、哺乳類へ投与することにより、IFN-β、それらの生体活性断片又は活性変種により緩和された状態を治療する方法を提供する。本発明は、その状態を有する哺乳類へ、本発明の核酸、例えば「裸のDNA」又は本発明のDNAもしくはRNAを含むベクターを投与することにより、IFN-β又はそれらの活性変種により緩和された状態を治療する方法も提供する。
【0027】
(IFN-β部分)
本発明は、免疫グロブリンFc領域のC-末端に連結された変化されたIFN-βタンパク質を含む融合タンパク質、及びそのようなタンパク質をコードしている核酸分子を提供する。IFN-β部分は、融合タンパク質のタンパク質フォールディング特性を改善し、凝集を低下し、及びタンパク質発現を改善するために、IFN-β部分及びFc-IFN-β構築体のアミノ酸構造に1個又は複数の変異を含むことができる。例えば可溶性融合タンパク質Fc-IFN-βsolのIFN-β部分は、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端に連結した未変性の成熟型IFN-βのシステインに対応している位置17に、変化を含むことができる。未変性の成熟型ヒトIFN-βのアミノ酸配列は、図3に示されている。IFN-βタンパク質の位置17のアミノ酸変化は、当該技術分野において公知の方法による、アミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸修飾により作製することができる。IFN-β部分への好ましい変化は、位置17のシステインの代わりのセリン(C17S)、バリン(C17V)、アラニン(C17A)又はメチオニン(C17M)のいずれかの置換を含む。C17S変異を含む可溶性ヒトFc-IFN-β融合タンパク質(huFc-IFN-βsol(C17S))のアミノ酸配列の例は、図5(配列番号:4)に示し、C17S変異を含むIFN-β部分のアミノ酸配列は、図4(配列番号:3)に示している。本発明は、huFc-IFN-βsol(C17V)、huFc-IFN-βsol(C17A)及びhuFc-IFN-βsol(C17M)融合タンパク質構築体も含む。
【0028】
本発明は、成熟型IFN-β部分の位置17の変化に加え、他の変化された残基を伴うFc-IFN-β融合タンパク質を提供する。例えば、IFN-β部分は、未変性の成熟型IFN-βタンパク質のシステイン、フェニルアラニン、リシン、ロイシン、ヒスチジン、リシン、及びヒスチジンへ、各々対応する、位置17、50、57、130、131、136、及び140の1個又は複数で変化することができる。IFN-β部分は、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端へ連結される。位置17、50、57、130、131、136、及び140の1個又は複数でのアミノ酸構造の変化は、アミノ酸置換、アミノ酸欠失又はアミノ酸修飾を含むことができ、並びに当該技術分野において公知の方法により作製することができる。これらの残基で導入された変化は、非-共有凝集の要因(cause)を軽減すると考えられる。ひとつの態様において、位置50のフェニルアラニンは、ヒスチジンにより交換される(F50H)。別の態様において、位置57のロイシンは、アラニンにより交換される(L57A)。更なる態様において、位置131のヒスチジンは、アラニンにより交換され(H131A)、更に別の態様において、140のヒスチジンは、アラニン(H140A)又はトレオニン(H140T)のいずれかにより交換される。別の態様において、位置130のロイシンは、アラニンにより交換され(L130A)、更に別の態様において、残基136のリシンは、アラニンにより交換される(K136A)。あるアミノ酸置換が、本明細書において列挙されているが、本発明は、これらの列挙された変化に限定されるものではない。融合タンパク質に適した特性を付与することが可能な任意の適当なアミノ酸を、IFN-β部分の位置17、50、57、130、131、136及び/又は140の当初のアミノ酸残基の代わりに置換することができる。
【0029】
本発明は、本明細書において明らかにされたような、位置17、50、57、130、131、136及び/又は140へ変化の1、2、3、4、5、6又は7個の組合せを有する、Fc-IFN-βsol融合タンパク質のIFN-β部分を企図している。例えばひとつの態様におけるFc-IFN-βsolは、任意にC17変化と組合わせた、IFN-βの成熟型のF50、H131及びH140の1個又は複数でのアミノ酸変化を含む。別の態様において、Fc-IFN-βsol融合タンパク質のIFN-β部分は、任意にC17変化と組合わせた、IFN-βの成熟型のL57、H131及びH140の1個又は複数のアミノ酸変化を含む。別の態様において、Fc-IFN-βsol融合タンパク質のIFN-β部分は、C17S、F50H、H131A、及び/又はH140Aの変化を含む。図8-11は、これらの変異の様々な組合せを組込んでいるFc-IFN-βsol融合タンパク質の態様の例証的アミノ酸配列を示す。更に別の態様において、Fc-IFN-βsol融合タンパク質のIFN-β部分は、変化C17S、F50H、H131A、及び/又はH140Tを含む。更に別の態様において、Fc-IFN-βsol融合タンパク質のIFN-β部分は、変化C17S、L57A、H131A、及び/又はH140Aを含み、更なる態様において、融合タンパク質は、変化C17S、L57A、H131A、及び/又はH140Tを含む。Fc領域は好ましくはヒトFc領域である。
【0030】
本発明の別の態様は、成熟型ヒトIFN-βタンパク質配列中に少なくとも1個のコドン置換を伴う、Fc-IFN-βsol変種をコードしている核酸配列を含む。ひとつの態様において、コドン置換は、成熟型ヒトIFN-β配列の位置17に対応するシステインを、セリンと交換する(C17S)。哺乳類細胞培養システムにおいて適当なプラスミド上に含まれたこのヌクレオチド配列の発現は、融合タンパク質huFc-huIFN-βsol(C17S)の効率的産生を生じた。別の態様において、コドン置換は、位置17のシステインを、アラニン、バリン又はメチオニンのいずれかと交換する。同様に哺乳類細胞培養システムにおいて適当なプラスミド上に含まれたこれらのヌクレオチド配列のいずれかからの発現は、融合タンパク質huFc-huIFN-βsol(C17A)、huFc-huIFN-βsol(C17V)、又はhuFc-huIFN-βsol(C17M)の効率的産生を生じるであろう。ひとつの態様において、ヒンジから始まる代表的Fc-IFN-βsol融合タンパク質であるhuFcγ4h-IFN-βsol(C17S)をコードしている核酸配列は、図14(配列番号:13)に明らかにされている。本発明は、位置17、50、57、130、131、136及び/又は140の1個又は複数でのアミノ酸を交換するコドン置換を伴う、Fc-IFN-βsol変種をコードしている核酸配列も含む。本発明の変化されたコドンを組込んでいる核酸は、当該技術分野において公知の方法を用い作製することができる。
【0031】
Fc-IFN-βsol融合タンパク質の免疫グロブリンFc領域及びIFN-β部分は、様々な方法で互いに連結することができる。Fc部分のC-末端は、IFN-β部分のN-末端へ、ペプチド結合を介して直接連結されてもよい一方で、本発明は更に、Fc部分及びIFN-β部分がリンカーペプチドを介して結合されることも含む。リンカーペプチドは、Fc部分のC-末端と成熟型IFN-β部分のN-末端の間に位置する。本発明は同じく、リンカーペプチドをコードしている核酸配列も含む。リンカーペプチドは、セリン及びグリシン残基で構成されることが好ましい。ひとつの態様において、リンカーは、アミノ酸配列Gly4SerGly4SerGly3SerGly(配列番号:1)を有するが、更に別の態様において、Fc-IFN-βsolをコードしている核酸は、リンカーペプチドGly4SerGly4SerGly3SerGly(配列番号:1)をコードしている核酸配列を含む。本発明のFc-リンカー-IFN-βsolアミノ酸配列のいくつかの例を、図6-11に示し、本発明のFc-リンカー-IFN-βsol核酸配列のいくつかの例を、図14-16に示している。例えばひとつの態様において、Fc-リンカー-IFN-βsolタンパク質は、huFcγ4-リンカー-IFN-βsol(C17S)であり、ここでFc領域は、IgG4 Fc領域であり、及びリンカーは、Gly4SerGly4SerGly3SerGly(配列番号:1)である。先に考察されたもののような、Fc-IFN-βsol及びFc-リンカー-IFN-βsolヌクレオチド配列からの本発明の融合タンパク質の発現は、哺乳類細胞培養システムにおいて適当なプラスミド上に含まれる場合、Fc-IFN-βsol及びFc-リンカー-IFN-βsol融合タンパク質の効率的産生を生じるであろう。
【0032】
前述のように、本発明のFc-IFN-βsol融合タンパク質は、未変化のFc-IFN-β融合タンパク質に勝る、改善された生物学的特性を明らかにしている。例えば、ヒトFcγ4h-IFN-βsol(C17S)は、親の融合タンパク質Fcγ4-IFN-βsol及びFcγ4h-IFN-βsolとは異なり、及びこれらよりもより改善されたフォールディング特性を示すことがわかった。特に図2に明らかにされたように、哺乳類組織培養細胞において発現される場合、非-還元的SDS-PAGEゲル分析により確認されるような、ヒトFcγ4h-IFN-βsol(C17S)融合タンパク質3、4の単独種が優先的に認められることがわかった。これらの種は、正確にフォールディングされたFcγ4-IFN-βsol融合タンパク質3、4に相当していた。対照的に、親分子Fcγ4-IFN-βsol 1及びFcγ4h-IFN-βsol 2に関して、非-還元的SDS-PAGEゲル1、2上の高分子量タンパク質の分解されないテールにより証明されるような、多くの高分子量種が認められた。還元的SDS-PAGEゲルシステム上で、ヒトFcγ4-IFN-βsol 5及びヒトFcγ4h-IFN-βsol 6の両方について、このテールは、1本のバンドへ著しい程度に分解され、このことは凝集が、共有ジスルフィド結合の存在により大きく駆動されたことを示唆している。従って、単独の点変異C17SのヒトFcγ4h-IFN-βsol融合タンパク質7への導入は、タンパク質7の適切なフォールディングを回復した。
【0033】
更に、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により、親分子の凝集されないタンパク質は得られなかったにもかかわらず、Fc-IFN-βsol(C17S)の少なくとも10%は、プロテインAによる精製後に凝集しなかったことがわかった。従って単独の点変異C17SのFc-IFN-βsol融合タンパク質への導入は、凝集されない物質の生成を促進した。更にFc領域とIFN-β部分の接合部へのリンカーペプチドの導入により、凝集されない物質の収量は、リンカーを伴わないFc-IFN-βsol(C17S)の約2倍に増加した。図19-1から19-3に示されたように、哺乳類細胞培養システムにおいて適当なプラスミド上に含まれた、例えばリンカーがGly4SerGly4SerGly3SerGly(配列番号:1)である融合タンパク質Fc-リンカー-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)をコードしているヌクレオチド配列からの発現は、融合タンパク質Fc-リンカー-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)の効率的産生を生じる。この融合タンパク質生成物は、分析的SECにより評価された場合に、プロテインAによる精製後に、約50%の凝集されない物質を含み、これはこのIFN-βに単独の点変異を含むFc-IFN-βsolタンパク質、Fc-リンカー-IFN-βsol(C17S)により得られた結果を上回るかなりの更なる改善を示していることがわかった。同様の発現特性の更なる増加が、Fc-IFN-βsol タンパク質Fc-リンカー-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140T)において認められた。
【0034】
前述のように、本発明は、免疫グロブリンFc領域、及びここではIFN-β又はそれらの変種と称される少なくとも1種の標的タンパク質を含む融合タンパク質をコードしている核酸配列及びこれを規定するアミノ酸配列を提供する。本発明を具体化しているタンパク質構築体の3種の例証的態様を、図1A-1Cに図示した。二量体構築体が好ましいので、全て、隣接サブユニットのシステイン間のジスルフィド結合の対により架橋した二量体として表した。これらの図において、ジスルフィド結合11、12は、ふたつの免疫グロブリン重鎖Fc領域1、1’を、各重鎖内の免疫グロブリンヒンジ領域を介して互いに連結し、その結果これらの分子の天然の形を特徴付けるように示している。Fcのヒンジ領域を含む構築体は好ましく、治療的物質として有望であることが示されているが、本発明は、望ましいならば他の位置での架橋を選択しても良いことを企図している。更にいくつかの状況下で、本発明の実践に有用な二量体又は多量体は、例えば疎水性相互作用のような、非-共有的会合により生成される。ホモ二量体構築体は、本発明の重要な態様であるので、これらの図はこのような構築体を図示している。しかし、本発明の実践においてヘテロ二量体構造も有用であることは明らかであろう。
【0035】
図1Aは、本明細書に説明された原理(例えば実施例1参照)に従い作出される「単位二量体」とも称される、二量体構築体を例示している。ホモ二量体の各単量体は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む、免疫グロブリンFc領域1を含む。IFN-βsol 2は、Fc領域のC末端へ直接、すなわちポリペプチド結合により結合している。Fc領域は、ポリペプチドリンカーを介してIFN-βsolタンパク質へ結合することができる(示さず)ことは理解されるはずである。
【0036】
図1B及び1Cは、標的タンパク質として、縦列に配列され及びリンカーにより連結された複数のIFN-βタンパク質を含む、本発明のタンパク質構築体を示している。図1Bにおいて、標的タンパク質は、完全長IFN-β2、グリシン及びセリン残基で作製されたポリペプチドリンカー4、並びにIFN-βの活性変種3を含む。この構築体は、式Fc-X-Xにより示され、ここでXは、異なる標的タンパク質を表している。図1Cは、最もC-末端側のタンパク質ドメインは、IFN-β2の第二の完全長コピーを含む点が、図1Bの構築体とは異なる。この構築体は、式Fc-X-Xにより示すことができ、ここでXは、同じ標的タンパク質を表している。図1A-1Cは、Fc-X構築体(Xは標的タンパク質である)を表しているが、本発明の有用なタンパク質は、式X-Fc-Xによっても示される(Xは同じ又は異なる標的タンパク質を表してよい)ことも企図されている。
【0037】
図1B及び1Cに示されたように、融合タンパク質は、第二の標的タンパク質(Fc-X-X)を含むことができる。例えば、第一のIFN-β標的タンパク質を有する融合タンパク質に加え、この融合タンパク質は、第二の成熟型完全長IFN-β又は活性IFN-βsol変種又はそれらの生体活性断片も含むことができる。ひとつの局面において、活性変種は、IFN-β部分の1個又は複数のアミノ酸残基が、別のアミノ酸残基で置換されている変種である。いくつかのIFN-β置換変種がこれまでに考察されている。例えば、未変性の成熟型IFN-βに相当する位置17のシステインは、セリン、バリン、アラニン又はメチオニンと交換することができる。この種の構築体において、第一及び第二のタンパク質は、例えば図1Cのように、同じタンパク質であるか、又はこれらは例えば図1Bのように、異なるタンパク質であることができる。第一及び第二のタンパク質は、直接又はポリペプチドリンカーによるかのいずれかにより、互いに連結することができる。あるいは、両方のタンパク質は、直接又はポリペプチドリンカーを介してのいずれかで、免疫グロブリンFc領域へ連結することができる。更なる態様において、第一のタンパク質は、免疫グロブリンFc領域のN-末端へ結合し、及び第二のタンパク質は、免疫グロブリンFc領域のC-末端へ結合することができる。
【0038】
ひとつの態様において、ふたつの融合タンパク質を連結し、二量体を形成してもよい。ふたつの融合タンパク質は、共有的、例えばジスルフィド結合、ポリペプチド結合もしくは架橋剤によるか、又は非-共有的に会合され、二量体タンパク質を生成することができる。好ましい態様において、ふたつの融合タンパク質は、各鎖の免疫グロブリンFc領域内に配置された免疫グロブリンヒンジ領域内に好ましくは位置したシステイン残基を介した、少なくとも1個及びより好ましくは2個の鎖内ジスルフィド結合により、共有的に会合される。
【0039】
本発明の他の態様は、IFN-β融合タンパク質の多価及び多量体型、並びにそれらの組合せを含む。
本明細書において使用される用語「多価」は、2個又はそれよりも多い生物学的活性セグメントを組込んでいる組換え分子を意味する。多価分子を形成するタンパク質断片は、構成的部分に結合しているポリペプチドリンカーを介して連結することができ、各々独立して機能することができる。
【0040】
本明細書において使用される用語「二価」は、Fc-Xの形状を有する多価組換え分子を意味し、ここでXはIFN-βタンパク質である。これらふたつのタンパク質は、ペプチドリンカーを介して連結されてもよい。示された型の構築体は、タンパク質とその受容体の間の見かけの結合親和性を増大することができる。
本明細書において使用される用語「多量体的」は、共有的、例えばジスルフィド結合などの共有相互作用によるか、又は非-共有的、例えば疎水性相互作用によるような、2種又はそれよりも多いポリペプチド鎖の安定した会合を意味する。用語多量体は、サブユニットが同じであるホモ多量体に加え、サブユニットが異なるヘテロ多量体を包含することが意図されている。
【0041】
本明細書において使用される用語「二量体的」は、共有又は非-共有相互作用を介して、2個のポリペプチド鎖が安定して会合されている、特定の多量体分子を意味する。このような構築体は、概略的に図1Aに示されている。少なくともヒンジ領域の一部、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む免疫グロブリンFc領域は、典型的には二量体を形成することは理解されるはずである。多くのタンパク質リガンドが、それらの受容体へ二量体として結合することが知られている。タンパク質リガンドXが自然に二量体化する場合は二量体化工程は濃度に依存するので、Fc-X分子のX部分は、はるかに多い程度に二量体化するであろう。Fcにより結合される2個のX部分の物理的近接性は、分子内プロセスにおける二量体化を生じ、二量体にとって好ましい平衡に大きくシフトし、及び受容体へのその結合を増強するであろう。
【0042】
本明細書において使用される用語「ポリペプチドリンカー」は、事実上自然には互いに連結しない2個のタンパク質を互いに連結することができるポリペプチド配列を意味すると理解される。ポリペプチドリンカーは、好ましくはアラニン、グリシン及びセリン又はそのようなアミノ酸の組合せのような、複数のアミノ酸を含む。好ましくはポリペプチドリンカーは、長さが約10〜15残基である連続するグリシン及びセリンペプチドを含む。例えば米国特許第5,258,698号及び第5,908,626号を参照のこと。好ましい本発明のリンカーポリペプチドは、Gly4SerGly4SerGly3SerGly(配列番号:1)である。しかし、最適リンカー長さ及びアミノ酸組成は、当業者に周知の方法により慣習的実験で決定することができることが企図されている。
【0043】
本明細書において使用される用語「インターフェロン-β又はIFN-β」は、単に完全長成熟型インターフェロン-β、例えばヒトIFN-βのみではなく、それらのホモログ、変種及び生体活性断片もしくは部分も意味すると理解される。IFN-βの公知の配列は、GenBankに見ることができる。用語「インターフェロン-β」又は「IFN-β」は、天然のIFN-β及びIFN-β-様タンパク質、部分及び分子に加え、組換えにより作出されたもしくは人工的に合成されたIFN-βも含む。
【0044】
用語「生体活性断片」又は部分は、実施例6及び7に説明されたような、抗ウイルス活性アッセイ又は細胞増殖阻害アッセイを使用し決定される、配列番号:2の鋳型ヒトIFN-βタンパク質の生物学的活性の少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、最も好ましくは少なくとも20%及び最適には少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%を有する任意のIFN-βタンパク質断片を意味する。用語「変種」は、種及びアレル変種に加え、配列番号:2に開示された成熟型ヒトIFN-βタンパク質と少なくとも70%の類似度又は60%の一致度、より好ましくは少なくとも75%の類似度又は65%の一致度、最も好ましくは少なくとも80%の類似度又は70%の一致度がある、他の天然の変種、又は例えば遺伝子工学プロトコールにより作製された非天然の変種を含む。
【0045】
候補ポリペプチドが参照ポリペプチドと必要な%類似度又は一致度を有するかどうかを決定するために、Smith及びWatermanの論文(J. MOL. BIOL., 147:195-197 (1981))に説明された動的計画法アルゴリズムを、Henikoff及びHenikoffの論文(“Amino acid substitution matrices from protein blocks”, PROC. NATL. ACAD. SCI. USA 89:10915-10919 (1992))の図2に説明されたBLOSUM62置換マトリックスと組合せて使用し、候補アミノ酸配列及び参照アミノ酸配列を最初に並置する。本発明に関して、ギャップ挿入ペナルティの適値は-12であり、ギャップ伸長ペナルティの適値は-4である。GCGプログラムスイート(Oxford Molecular Group, オックスフォード, 英国)のような、Smith-Watermanアルゴリズム及びBLOSUM62マトリックスを使用するアライメントを実行するコンピュータプログラムは市販されており、当業者により広範に使用されている。
【0046】
候補配列及び参照配列の間のアラインメントが一旦作製されたならば、%類似度スコアが算出される。各配列の個々のアミノ酸は、互いにそれらの類似性に従い逐次比較される。ふたつの並置されたアミノ酸に対応するBLOSUM62マトリクスの値がゼロ又は負の値である場合は、ペアワイズ類似度スコアは0であり;そうでない場合のペアワイズ類似度スコアは、1.0である。生の類似度スコアは、並置されたアミノ酸のペアワイズ類似度スコアの総和である。次に生スコアを、これを、より小さい候補配列又は参照配列のアミノ酸の数で除算することにより、正規化する。正規化された生スコアは、%類似度である。あるいは、%一致度を計算するために、各配列の並置されたアミノ酸を再度逐次的に比較する。アミノ酸が同一でない場合は、ペアワイズ一致度スコアは0であり;そうでない場合のペアワイズ一致度スコアは、1.0である。生の一致度スコアは、同一の並置されたアミノ酸の総和である。次に生スコアを、これを、より小さい候補配列又は参照配列のアミノ酸の数で除算することにより、正規化する。正規化された生スコアは、%一致度である。挿入及び欠失は、%類似度及び一致度の算出を目的とする場合は無視される。従ってギャップペナルティは最初のアラインメントにおいては有用であるが、これはこの計算では使用されない。
【0047】
変種は、IFN-β-様活性を有する他のIFN-β変異体タンパク質も含む。種及びアレル変種は、ヒト及びマウスIFN-β配列を含むが、これらに限定されるものではない。ヒト及びマウス成熟型IFN-βタンパク質は、各々、配列番号:2及び11、並びに図3及び12に示されている。
更にIFN-β配列は、配列番号:2に示したコンセンサス配列の一部又は全てを含むことができ、ここでIFN-βは、実施例6及び7の抗ウイルス活性アッセイ又は細胞増殖阻害アッセイを用いて決定された、配列番号:2の成熟型ヒトIFN-βの生物学的活性を、少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも20%、30%、又は40%、最も好ましくは少なくとも50%、及び最適には60%、70%、80%、90%又は100%を有する。
【0048】
IFN-βの三次元構造は、X-線結晶解析により解明されている(Karpusasら、PNAS 94: 11813 (1997))。結晶化された状態で、IFN-β分子は、二量体境界面に亜鉛イオンを伴う二量体であるが、IFN-βが活性を有するためには、二量体であることは不要であると考えられる。構造的にIFN-βは、C-Dループ内に形成されている、古典的4個のヘリックスバンドルタンパク質に関して追加のα-ヘリックスセグメントを含み、その結果ヘリックスA、B、C及びEにより、限界(canonical)バンドル構造が形成される。興味深いことに、この構造は、ヘリックスCの出発点のアミノ酸N80にカップリングされ及びタンパク質の一部に沿って並べられた、グリカン部分の一部も明らかにしており、これは恐らく表面に露出したいくつかの疎水性アミノ酸残基を溶媒から遮蔽しているであろう。IFN-βのグリコシル化が、この分子の溶解度及び安定性に重要であることも示されており、このことは、グリコシル化されないIFN-β分子の凝集する傾向を説明する。ヘリックスAの位置17の遊離のシステインは、表面の近傍に現れるが、覆い隠されており、理論に結び付けることは意図しないが、スクランブル化されたジスルフィド結合は、次にこのタンパク質の正確なグリコシル化を妨害することが可能である。
【0049】
リガンドの二量体化は、リガンドとその受容体の間の見かけの結合親和性を増加することができる。例えば、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質のひとつのインターフェロン-β部分は、ある親和力により細胞上の受容体へ結合することができる場合、同じFc-インターフェロン-β融合タンパク質の第二のインターフェロン-β部分ははるかに高い結合力(見かけの親和力)で同じ細胞上の第二の受容体に結合してもよい。このことは、第一のインターフェロン-β部分が既に結合した後の、第二のインターフェロン-β部分の受容体への物理的近接性のために生じるであろう。抗原へ結合する抗体の場合、見かけの親和力は、少なくとも10000倍、すなわち104倍増加することができる。各タンパク質サブユニット、すなわち“X”は、それ自身の独立した機能を有し、その結果多価分子において、これらのタンパク質サブユニットの機能は、相加的又は相乗的であることができる。従って通常二量体のFc分子のインターフェロン-βへの融合体は、インターフェロン-βの活性を増大することができる。従って図1Aに示された型の構築体は、インターフェロン-βとその受容体の間の見かけの結合親和力を増大することができる。
【0050】
(Fc部分)
本明細書に明らかにされたIFN-β融合タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域を伴う融合タンパク質として説明される。公知のように、各免疫グロブリン重鎖定常領域は、4又は5個のドメインを含む。これらのドメインは、順番に以下のように命名されている:CH1-ヒンジ-CH2-CH3(-CH4)。重鎖ドメインのDNA配列は、免疫グロブリンクラス間で交差-相同性を有し、例えばIgGのCH2ドメインはIgA及びIgDのCH2ドメインと、並びにIgM及びIgEのCH3ドメインと相同である。
【0051】
本明細書において使用される用語「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリン鎖定常領域の、好ましくは免疫グロブリン重鎖定常領域又はそれらの一部のカルボキシ-末端部分を意味すると理解される。例えば免疫グロブリンFc領域は、1)CH2ドメイン、2)CH3ドメイン、3)CH4ドメイン、4)CH2ドメイン及びCH3ドメイン、5)CH2ドメイン及びCH4ドメイン、6)CH3ドメイン及びCH4ドメイン、又は7)免疫グロブリンヒンジ領域及び/又はCH2ドメイン及び/又はCH3ドメイン及び/又はCH4ドメインの組合せを含む。ひとつの態様において、免疫グロブリンFc領域は、少なくとも免疫グロブリンヒンジ領域を含むが、別の態様において免疫グロブリンFc領域は、少なくとも1個の免疫グロブリン定常重鎖領域、例えばCH2ドメイン又はCH3ドメインを含み、Fc領域を作製するために使用された免疫グロブリンの種類に応じて、任意にCH4ドメインを含む。別の態様において、Fc領域は、ヒンジ領域、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、好ましくはCH1ドメインを欠いているが、別の態様において、Fc領域は、ヒンジ領域及びCH2ドメインを含む。更に別の態様において、Fc領域は、ヒンジ領域及びCH3ドメインを含む。更なる態様において、Fc領域は、Fc防御受容体FcRpとの機能的結合部位を含む。FcRpとの結合部位は、CH2及びCH3両ドメイン内のアミノ酸を含み、Fc-FcRp相互作用は、Fc融合タンパク質の延長された血清半減期に大きく貢献している。
【0052】
免疫グロブリンFc領域及び成分の定常重鎖ドメインは、任意の免疫グロブリンクラスに由来してよいが、本発明のFc-IFN-β融合タンパク質の免疫グロブリンの好ましいクラスは、IgG(Igγ)(γサブクラス1、2、3又は4)である。ヒトFcγ1のヌクレオチド及びアミノ酸配列は、配列番号:78及び79に示している。免疫グロブリンの他のクラスIgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)及びIgM(Igμ)も使用することができる。適当な免疫グロブリン重鎖定常領域の選択は、米国特許第5,541,087号及び第5,726,044号に詳細に説明されている。特定の結果を実現するためのある免疫グロブリンクラス及びサブクラスからの特定の免疫グロブリン重鎖定常領域配列の選択は、当業者の技術レベル(level)内であると考えられる。免疫グロブリンFc領域をコーディングDNA構築体の部分は、好ましくは、ヒンジドメインの少なくとも一部を、及び好ましくはFcγのCH3ドメイン又はIgA、IgD、IgEもしくはIgMの相同ドメインの少なくとも一部を含む。
【0053】
IFN-β変種を含む融合タンパク質の作出に使用されるFc領域は、この分子の特定の適用に適合することができることが企図されている。ひとつの態様において、Fc領域は、免疫グロブリンγ1アイソタイプ又はそれらの変種に由来している。Fc領域配列としてのヒトFcγ1の使用には、いくつかの利点がある。例えば免疫グロブリンγ1アイソタイプ由来のFc領域は、この融合タンパク質が肝臓を標的とすることが望ましい場合に使用される。加えてFc融合タンパク質が、生物医薬品として使用される場合、Fcγ1ドメインは、融合タンパク質へエフェクター機能活性をもたらすことができる。エフェクター機能活性は、胎盤通過及び増加した血清半減期のような、生物学的活性を含む。免疫グロブリンFc領域は、抗-Fc ELISAによる検出、及び黄色ブドウ球菌のプロテインA(“プロテインA”)への結合を介した精製も提供する。しかしある適用において、免疫グロブリンFc領域から、Fc受容体結合及び/又は補体結合のような、特異的エフェクター機能を欠失することが望ましいであろう。免疫グロブリンγ1由来のFc領域が使用される場合、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ末端のリシンは、典型的にはアラニンと交換される。これは、Fc-IFN-βsol融合タンパク質の循環血中半減期を改善する。
【0054】
Fc-IFN-βsol融合タンパク質の他の態様は、異なる免疫グロブリンγアイソタイプ、すなわちγ2、γ3、もしくはγ4、又はそれらの変種由来のFc領域を使用する。Fc領域は、Fc領域それ自身よりも、異なる免疫グロブリンアイソタイプ由来のヒンジ領域を含むことができる。例えばFc-IFN-βsol融合タンパク質の一部の態様は、免疫グロブリンγ1又はそれらの変種由来のヒンジ領域を含む。例えば免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンγ2アイソタイプに由来することができ、及び免疫グロブリンγ1アイソタイプ又はそれらの変種由来のヒンジ領域を含む。ひとつの態様において、γ1ヒンジのシステイン残基は修飾される。更なる態様において、γ1ヒンジの第一のシステインが修飾される。更に別の態様において、セリンが、γ1ヒンジの第一のシステインの代わりに置換される。免疫グロブリンγ2アイソタイプは、エフェクター機能の媒介において無効であり、及び非常に低下されたFcγ受容体(FcγR)への結合を示すので、IFN-β融合体変種のこの特定の形状は、遊離のIFN-β分子の生物学的活性をより密接に模倣し、加えて哺乳類へ投与された場合に、最も増強された循環血中半減期を有することが予想される。正にγ1のように、Fc-IFN-βsol融合タンパク質の循環血中半減期を改善するために、Fc領域のカルボキシ-末端のリシンはアラニンへ変異されることが好ましい。
【0055】
先に説明したように、本発明のFc-IFN-βsol融合タンパク質のFc領域は、免疫グロブリンγ4アイソタイプに由来することができる。本発明の一部の態様において、免疫グロブリンγ4アイソタイプは、免疫グロブリンγ1アイソタイプ又はそれらの変種由来のヒンジ領域を含むように修飾される。ひとつの態様において、γ1ヒンジのシステイン残基が修飾される。更なる態様において、γ1ヒンジの第一のシステインが修飾される。更に別の態様において、セリンは、γ1ヒンジの第一のシステインの代わりに置換される。免疫グロブリンγ2アイソタイプのように、免疫グロブリンγ4アイソタイプも、FcγRに対しより低い親和性を示し、その結果免疫エフェクター機能の低下において同様の利点をもたらす。γ1、2、3又は4由来のFc領域が使用される場合、免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端のリシンは典型的には、アラニンと交換される。免疫グロブリンγ4は、Fc-IFN-βsol融合タンパク質の作製において好ましいFc領域であり、ここでIFN-β部分は、位置17、50、57、130、131、136及び/又は140のアミノ酸残基の1種又は複数の変化を含む。免疫グロブリンγ1由来のヒンジ領域を含むように修飾された免疫グロブリンγ4アイソタイプのFc領域を含む、本発明のFc-IFN-βsol融合タンパク質のアミノ酸配列の例は、図5(配列番号:4)に示されている。
【0056】
適用に応じて、ヒト以外の種、例えばマウス又はラット由来の定常領域遺伝子が使用されてもよい。DNA構築体の融合体パートナーとして使用される免疫グロブリンFc領域は、任意の哺乳類種に由来することができる。宿主細胞又は動物においてFc領域に対する免疫応答を誘起することが望ましくない場合は、Fc領域は、宿主細胞又は動物と同じ種に由来することができる。例えば、宿主動物又は細胞がヒトである場合は、ヒト免疫グロブリンFc領域を使用することができ;同様に、宿主動物又は細胞がマウスである場合は、マウス免疫グロブリンFc領域を使用することができる。
【0057】
本発明の実践において有用なヒト免疫グロブリンFc領域をコードしている核酸配列、及び規定しているアミノ酸配列は、各々、配列番号:78及び配列番号:79に示されている。しかし、本発明の実践において有用な他の免疫グロブリンFc領域配列も、例えば、Genbank及び/又はEMBLデータベースに明らかにされたようなFc領域配列を含む重鎖定常領域のヌクレオチド配列によりコードされたされたものにより認められることが企図されており、例えばAF045536.1(カニクイザル(Macaca fuscicularis)、ヌクレオチド配列配列番号:20;アミノ酸配列配列番号:21)、AF045537.1(アカゲザル(Macaca mulatta)、ヌクレオチド配列配列番号:22;アミノ酸配列配列番号:23)、AB016710(ネコ(Felis catus)、ヌクレオチド配列配列番号:24;アミノ酸配列配列番号:25)、K00752(ウサギ(Oryctolagus cuniculus)、ヌクレオチド配列配列番号:26;アミノ酸配列配列番号:27)、U03780(イノシシ(Sus scrofa)、ヌクレオチド配列配列番号:28;アミノ酸配列配列番号:29)、Z48947(ヒトコブラクダ(Camelus dromedaries)、ヌクレオチド配列配列番号:30)、(ウシ(Bos taurus)、ヌクレオチド配列配列番号:31;アミノ酸配列配列番号:32)、L07789(アメリカミンク(Mustela vison)、ヌクレオチド配列配列番号:33;アミノ酸配列配列番号:34)、X69797(ヒツジ(Ovis aries)、ヌクレオチド配列配列番号:35;アミノ酸配列配列番号:36)、U17166(タビキヌゲネズミ(Cricetulus migratorius)、ヌクレオチド配列配列番号:37;アミノ酸配列配列番号:38)、X07189(ラット(Rattus rattus)、ヌクレオチド配列配列番号:39;アミノ酸配列配列番号:40)、AF157619.1(フクロギツネ(Trichosurus vulpecula)、ヌクレオチド配列配列番号:41;アミノ酸配列配列番号:42)、又はAF035195(ハイイロジネズミオポッサム(Monodelphis domestica)、ヌクレオチド配列配列番号:43;アミノ酸配列配列番号:44)がある。
【0058】
更に、免疫グロブリン重鎖定常領域内のアミノ酸の置換又は欠失は、本発明の実践において有用であることが企図されている。一例は、Fc受容体への低下した親和性を伴うFc変種を作製するために、上流(upper)CH2領域中にアミノ酸置換の導入を含むことができる(Coleら、J. Immunol. 159:3613 (1997))。当業者は、このような構築体を、周知の分子生物学技術を用いて調製することができる。
本発明は、本発明の実践において有用なFc融合タンパク質の作出のために、通常の組換えDNA法を有効に使うことは理解される。Fc融合体構築体は、好ましくはDNAレベルで作製され、得られるDNAは発現ベクターへ組込まれ、発現され、本発明の融合タンパク質を作出する。
【0059】
本明細書において使用される用語「ベクター」は、宿主細胞へ組込まれ、及び宿主細胞ゲノムと組換えもしくは一体化されるか、又はエピソームのように自律的に複製するために、コンピテントなヌクレオチド配列を含む任意の核酸を意味することが理解される。このようなベクターは、線状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどを含む。ウイルスベクターの非限定的例は、レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスを含む。本明細書において使用される用語標的タンパク質の「遺伝子発現」又は「発現」は、DNA配列の転写、mRNA転写産物の翻訳、及びFc融合タンパク質産物の分泌を意味すると理解される。
【0060】
有用な発現ベクターは、pdCs(Loら、Protein Engineering, 11:495 (1988))であり、これはFc-X遺伝子の転写は、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサー/プロモーター及びSV40ポリアデニル化シグナルを使用する。使用されるヒトサイトメガロウイルスのエンハンサー及びプロモーター配列は、Boshartらの論文(Cell, 41:521 (1985))に提供された配列のヌクレオチド-601から+7に由来した。このベクターは、選択マーカーとして、変異体ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子も含む(Simonsen及びLevinson, Proc. Nat. Acad. Sci. USA, 80:2495 (1983))。
【0061】
適当な宿主細胞は、本発明のDNA配列で形質転換又は形質移入し、標的タンパク質の発現及び/又は分泌に利用することができる。現在本発明において使用するのに好ましい宿主細胞は、不死化されたハイブリドーマ細胞、NS/0骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、及びCOS細胞を含む。
哺乳類細胞における融合タンパク質の高レベル発現を生じるためのひとつの発現システムは、5’から3’方向に、シグナル配列及び免疫グロブリンFc領域を含む分泌カセット、並びにIFN-βのような標的タンパク質をコーディングDNA構築体である。いくつかの標的タンパク質が、このようなシステムにおいてうまく発現されており、例えば、IL2、CD26、Tat、Rev、OSF-2、βIG-H3、IgE受容体、PSMA、及びgp120を含む。これらの発現構築体は、Loらの米国特許第5,541,087号及び第5,726,044号に開示されている。
【0062】
本発明の融合タンパク質は、発現された場合に、シグナル配列を含んでも含まなくともよい。本明細書において使用される用語「シグナル配列」は、IFN-β融合プロテインの分泌を指示し、その後宿主細胞において翻訳後切断されるセグメントを意味すると理解される。本発明のシグナル配列は、小胞体膜を超えたタンパク質輸送を開始するアミノ酸配列をコードしているポリヌクレオチドである。本発明において有用なシグナル配列は、抗体軽鎖シグナル配列、例えば抗体14.18(Gilliesら、J. Immunol. Meth.、125:191 (1989))、抗体重鎖シグナル配列、例えばMOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakanoら、Nature、286:5774 (1980))、及び当該技術分野において公知のいずれか他のシグナル配列(例えば、Watson、Nucleic Acids Research、12:5145 (1984)参照)を含む。
【0063】
シグナル配列は、当該技術分野においてよく特徴付けられており、典型的には16〜30個のアミノ酸残基を含み、より多く又はより少ないアミノ酸残基を含んでもよいことが知られている。典型的シグナルペプチドは、3つの領域からなる:塩基性N-末端領域、中央部の疎水性領域、及びより極性のあるC-末端領域。中央の疎水性領域は、新生ポリペプチドの輸送時に、膜の脂質二重層を超えてシグナルペプチドを係留する、4〜12個の疎水性残基を含む。開始後、シグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼとして公知の細胞酵素により、小胞体腔内で切断される。シグナルペプチドの可能性のある切断部位は、一般に「(-3, -1)ルール」に従う。従って典型的シグナルペプチドは、位置-1及び-3に小型の中性のアミノ酸残基を有し、この領域にはプロリン残基を欠いている。シグナルペプチダーゼは、そのようなシグナルペプチドを、-1及び+1アミノ酸の間で切断するであろう。従ってシグナル配列は、分泌時に融合タンパク質をアミノ-末端から切断することができる。このことは、免疫グロブリンFc領域及び標的タンパク質からなるFc融合タンパク質の分泌を生じる。シグナルペプチド配列の詳細な考察は、von Heijneの論文(Nucleic Acids Res.、14:4683 (1986))に示されている。
【0064】
当業者に明らかなように、特定のシグナル配列の分泌カセットにおける使用に関する適合には、いくつかの慣習的実験が必要である。このような実験は、シグナル配列のFc融合タンパク質の分泌を指示する能力の決定、更にはFc融合タンパク質の効率的分泌を実現するために使用される配列の最適な形状、ゲノム又はcDNAの決定を含むであろう。加えて当業者は、先に説明された、von Heijneにより提示されたルールに従い合成シグナルペプチドを作製し、並びに慣習的実験によりそのような合成シグナル配列の効力を試験することが可能である。シグナル配列は、「シグナルペプチド」、「リーダー配列」、又は「リーダーペプチド」とも称される。
【0065】
シグナル配列及び免疫グロブリンFc領域の融合体は、本明細書において時には分泌カセットと称される。本発明の実践において有用な分泌カセットの例は、5'から3'方向へ、免疫グロブリン軽鎖遺伝子のシグナル配列、及びヒト免疫グロブリンγ1遺伝子のFcγ1領域をコードしているポリヌクレオチドである。免疫グロブリンFcγ1遺伝子のFcγ1領域は、好ましくは、免疫グロブリンヒンジドメインの少なくとも一部及び少なくともCH3ドメイン、又はより好ましくはヒンジドメインの少なくとも一部、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含む。本明細書において使用される免疫グロブリンヒンジ領域の「一部」は、鎖内ジスルフィド結合を形成することが可能である少なくとも1個、好ましくは2個のシステイン残基を含む免疫グロブリンヒンジの一部を意味すると理解される。分泌カセットをコーディングDNAは、そのゲノム形状又はそのcDNA形状内に存在することができる。ある状況下で、ヒト免疫グロブリンFcγ2重鎖配列からのFc領域を作製することは利点であることがある。ヒト免疫グロブリンγ1及びγ2配列を基にしたFc融合体はマウスにおいて同様に挙動するが、これらのγ2配列を基にしたFc融合体は、ヒトにおいて優れた薬物動態を示すことができる。
【0066】
別の態様において、DNA配列は、分泌カセットと標的タンパク質の間に配置されたタンパク質分解性切断部位をコードしている。この切断部位は、コードされた融合タンパク質のタンパク質分解性切断を、従ってFcドメインの標的タンパク質からの分離を提供する。本明細書において使用される「タンパク質分解性切断部位」は、タンパク質分解性酵素又は他のタンパク質分解性切断剤により優先的に切断されるアミノ酸配列を意味すると理解される。有用なタンパク質分解性部位は、トリプシン、プラスミン又はエンテロキナーゼKなどのタンパク質分解性酵素により認識されるアミノ酸配列を含む。多くの切断部位/切断剤の対が公知である(例えば米国特許第5,726,044号参照)。
【0067】
更に、定常領域ドメインの1個又は複数のアミノ酸残基が置換又は欠失されているこれらの定常領域の構築体の置換又は欠失も、有用であろう。一例は、Fc受容体への親和性の低いFc変種を作出するための、上流CH2領域へのアミノ酸置換の導入である(Coleら、J. Immunol.、159: 3613 (1997))。当業者は、このような構築体を、公知の分子生物学技術を用い調製することができる。
【0068】
本明細書において明らかにされた融合構築体は、高レベルのFc-IFN-βsolを生じた。初代クローンは、約100μg/mLの変化されたFc-IFN-βsolを生成し、これはプロテインAアフィニティクロマトグラフィーにより均質に精製された。時には発現レベルは、継代により数倍に増大することができる。前述のように、位置17にセリン、アラニン、バリン又はメチオニンと交換されるシステインを伴うIFN-βがFc融合体分子として発現される場合、高レベルの発現が得られ、その理由は恐らく、IFN-βsolタンパク質の位置17でのアミノ酸置換が、タンパク質内の異常なジスルフィド結合の形成を防ぎ、並びにFc領域が担体として作用し、ポリペプチドが正確にフォールディングし及び効率的に分泌されることを補助するためであろうということがわかった。同様に変異C17Sを含む本発明の他のFc-IFN-βsol融合タンパク質、例えばFc-(リンカー)-IFN-βsol (C17S、F50H、H131A、H140A)及びFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140T)などは、同等に良好に発現される。更にFc領域は、グリコシル化され、及び生理的pHで高度に帯電される。従ってFc領域は、疎水性タンパク質を可溶化することができる。
【0069】
Fc-IFN-βsolタンパク質は、高レベルの発現に加え、細胞ベースの抗ウイルスアッセイ(実施例6)で測定された場合に、親(未修飾の)Fc-IFN-β融合プロテインよりもより大きい生体活性を示し、並びにR&D Systems(ミネアポリス、MN)から入手されるIFN-βの市販の調製物の生体活性と同等であった。
変化されたFc-IFN-β融合タンパク質は、高レベルの発現に加え、未変化のFc-IFN-β融合タンパク質と比べてより長い血清半減期を示した。例えば変異C17Sを含むFc-IFN-βsolの循環血中半減期は、親Fc-IFN-β融合タンパク質のそれよりも著しく大きいことがわかっている(実施例8参照)。
【0070】
本発明の融合タンパク質は、いくつかの重要な臨床的恩典も提供する。実施例6及び7の生物学的アッセイの試験において明らかにされたように、変化されたFc-IFN-βsolの生物学的活性は、未変化のFc-IFN-βのそれよりも著しく高い。
別の本発明の態様は、様々な構造的立体配置、例えば二価又は多価の構築体、二量体又は多量体の構築体、及びそれらの組合せを有する構築体を提供する。本発明の分子のこのような機能的形状は、動物モデルにおいて調べられた、IFN-β並びに他の抗ウイルスタンパク質及び抗癌タンパク質の相乗作用を可能にする。
【0071】
本発明の重要な局面は、様々なIFN-βタンパク質及びコーディングDNAの配列及び特性が極めて類似していることである。Fc-X融合体の状況において、IFN-βタンパク質及びコーディングDNAの特性は、本質的に同一であり、その結果一般的技術セットを用いて、任意のFc-IFN-βDNA融合体を作製し、この融合体を発現し、融合プロテインを精製し、この融合タンパク質を治療目的で投与することができる。
【0072】
本発明は、非-ヒト種のIFN-βをFc融合タンパク質として作製する方法を提供する。タンパク質薬物の効能及び毒性の試験は、ヒトで試験する前に、動物モデルシステムで行われなければならないので、非-ヒトIFN-β融合タンパク質は、IFN-βの前臨床試験において有用である。ヒトタンパク質は免疫応答を誘起し、及び/又は試験結果を歪曲する異なる薬物動態を示すことがあるので、ヒトタンパク質は、マウスモデルにおいては作用しないことがある。従って、マウスモデルにおいて試験するためには、同等のマウスタンパク質が、ヒトタンパク質の最良の代理品である。
【0073】
本発明は、本発明のDNA、RNA又はタンパク質をそのような状態を有する哺乳類へ投与することにより、様々な癌、ウイルス性疾患、他の疾患、それらに関連した状態及び原因を治療する方法を提供する。関連した状態は、多発性硬化症;様々な悪性疾患、例えば急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、ホジキン病、基底細胞癌、子宮頚部形成異常及び骨肉腫;様々なウイルス感染症、例えばウイルス性肝炎、帯状疱疹及び性器ヘルペス、乳頭腫ウイルス、ウイルス性脳炎、並びにサイトメガロウイルス肺炎などを含むが、これらに限定されるものではない。
【0074】
免疫応答の変調においてIFN-βにより果たされる広範な役割の点で、本発明は、IFN-βの投与により緩和された状態を治療する方法も提供する。これらの方法は、本発明の組成物を有効量、ウイルス感染症又は癌に直接関連した又は関連していない状態を有する哺乳類へ投与することを含む。例えばFc-IFN-βsol融合タンパク質をコーディングDNA又はRNAのような核酸は、対象、好ましくは哺乳類へ治療的物質として投与することができる。加えてFc-IFN-βsol融合タンパク質をコードしている核酸を含有する細胞は、対象、好ましくは哺乳類へ、治療的物質として投与することができる。更にFc-IFN-βsolタンパク質は、対象、好ましくは哺乳類へ、治療的物質として投与することができる。
【0075】
本発明のタンパク質は、単に治療的物質として有用なだけではなく、当業者はこれらのタンパク質が診断用途の抗体の作製においても有用であることも認める。同様に例えばそのような用途のためのベクター又は他の送達システム中の、DNA又はRNAの適切な投与は、本発明の使用法に含まれる。
【0076】
本発明の組成物は、特定の分子と適合性のある任意の経路で投与することができる。本発明の組成物は、直接(例えば、組織部位への注射、移植又は外用投与のように局所的に)又は全身的(例えば、非経口又は経口的に)に、任意の適当な手段により、動物へ提供され得ることが企図されている。この組成物が、静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内、頬内、直腸内、膣内、眼窩内、脳内、頭蓋内、脊椎内、心室内、髄腔内、槽内、嚢内、鼻腔内又はエアゾール投与によるなど非経口的に提供される場合、この組成物は、好ましくは水性部分又は生理的に相溶性のある液体懸濁液もしくは溶液を含む。従って担体又はビヒクルは、生理的に許容され、その結果所望の組成物の患者への送達に加え、他方で患者の電解質及び/又は容積の平衡へ有害に作用しない。従ってこの物質の液体媒体は、通常の生理食塩水を含むことができる。
【0077】
本発明のDNA構築体(又は遺伝子構築体)も、IFN-β又はそれらの融合タンパク質構築体をコードしている核酸を送達するための、遺伝子治療プロトコールの一部として使用することができる。本発明は、IFN-βの機能を再構成するか又は補充するために、特定の細胞型におけるIFN-β又はそれらの融合タンパク質構築体のin vivo形質移入及び発現のための発現ベクターを特徴としている。IFN-β、又はそれらの融合タンパク質構築体の発現構築体は、任意の生物学的に有効な担体中で、例えばin vivoにおいてIFN-β遺伝子又はそれらの融合タンパク質構築体を細胞へ効率的に送達することが可能である任意の製剤又は組成物中で投与することができる。方法は、組換えレトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、及び単純ヘルペスウイルス-1を含むウイルスベクター、又は組換え細菌もしくは真核プラスミド内の対象遺伝子の挿入を含む。本発明の融合タンパク質をコードしている核酸の1回投与当たりの好ましい用量は、1μg/m2〜100mg/m2、より好ましくは20μg/m2〜10mg/m2、最も好ましくは400μg/m2〜4mg/m2の範囲である。適した用量及び投与様式は、十分に当業者の技術レベル内である慣習的実験により決定されることが企図される。
【0078】
1回投与当たりの融合タンパク質の好ましい用量は、0.1mg/m2〜100mg/m2、より好ましくは1mg/m2〜20mg/m2、最も好ましくは2mg/m2〜6mg/m2の範囲である。しかし適量は、治療される疾患及び副作用の存在によっても左右されることが企図される。しかし適量は慣習的実験により決定することができる。融合タンパク質の投与は、定期的なボーラス注射によるか、又は体外貯蔵庫(例えば静脈内点滴用バッグから)又は内部(例えば生分解性インプラントから)からの連続静脈内もしくは腹腔内注射よることができる。更に、本発明の融合タンパク質は、複数の異なる生物学的活性分子と一緒に、意図されたレシピエントに投与することができることが企図されている。しかし、融合タンパク質及びその他の分子、投与様式、用量の最適な組合せは、十分当業者の技術レベル内の慣習的な実験により決定することができる。
本発明は以下の非限定的実施例により更に例示される。
【実施例】
【0079】
(実施例1. huFc-huインターフェロン-β(huFc-IFN-β)及びhuFc-IFN-βsol変異体のクローニング)
ヒトインターフェロン-β(IFN-β)cDNAは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)(ATCC番号31903)に注文した。この成熟型の配列を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により増幅した。増幅反応において使用したフォワードプライマーは、5’ C CCG GGT ATG AGC TAC AAC TTG CTT (配列番号:45)であり、ここで配列CCCGGGTは、リシンコドンを含まないCH3カルボキシ末端、更に制限エンドヌクレアーゼ部位SmaI CCCGGG (Loら、Protein Engineering 11:495(1998))をコードし、並びに下線(bold)の配列は、成熟型IFN-βコード配列のN-末端をコードしている。この反応のリバースプライマーは、5’ CTC GAG TCA GTT TCG GAG GTA ACC TGT (配列番号:46)であり、ここでTCAは、翻訳停止コドンのアンチコドンであり、及びCTCGAGは制限部位Xho Iである。増幅された450bp PCR産物を、pCRIIベクター(Invitrogen)へクローニングし、その配列を証明した。
【0080】
完全に正確な成熟型IFN-β配列を伴うSmaI-XhoI制限断片を使用し、発現ベクターpdCs-huFcへクローニングし、その結果成熟型IFN-βのコード配列を、Fcコード配列の3’-末端へインフレームで融合した。発現プラスミドpdCs-huFc-IFN-βを、Loらの論文(Protein Engineering 11:495 (1998))に従い、成熟型IFN-βcDNAを含むSmaI-XhoI制限断片の、pdCs-huFcベクターのSmaI-XhoI制限断片へのライゲーションにより構築した。huFc DNAは、発現された場合に、修飾されたγ1ヒンジ配列を伴うヒト免疫グロブリンγ4の Fc断片を生じる配列に相当している。このアミノ酸配列は、配列番号:77で示されている。
【0081】
更に異なるアイソタイプ又は他の変化を含むFc部分に融合されたIFN-βを含む融合タンパク質を作製するために、同じクローニング戦略を使用し、他方でpdCs-huFcベクターの適当な型に置き換えた。従ってIFN-βのSmaI-XhoI制限断片は、γ4-由来のヒンジ領域を伴う免疫グロブリンγ4アイソタイプ、又は免疫グロブリンγ1アイソタイプ、又は免疫グロブリンγ2アイソタイプ、又は変化された免疫グロブリンγ1-由来のヒンジ領域を伴う免疫グロブリンγ2アイソタイプのいずれかをコードしている、SmaI及びXhoIで消化されたpdCS-huFcベクターへ挿入された。SmaIクローニング部位の免疫グロブリンγ4アイソタイプをコードしているベクターへの導入は、Fc部分の発現されたタンパク質においてサイレント変異を生じないので、SmaI部位の周囲の核酸配列によりコードされたこのタンパク質配列は、LSLSPG(配列番号:53)であった。変異がサイレントであるならば、この配列は、LSLSLGを示す(例えば、図7参照、残基101-106又は配列番号:76)。
【0082】
システイン17のセリンへの(C17S)変異を、相補的突然変異誘発性プライマーを用い、オーバーラップPCR法により(Daughertyら、Nucleic Acids Res.19:2471(1991))、IFN-βヌクレオチド配列へ導入した。フォワードプライマー配列は:5’ AGA AGC AGC AAT TTT CAG AGT CAG AAG CTC CTG TGG CA (配列番号:47)であり、ここで下線を付けたヌクレオチドは、導入された点変異(TGTからAGT)を示している。従って、リバースプライマーは:5’ TG CCA CAG GAG CTT CTG ACT CTG AAA ATT GCT GCT TCT (配列番号:48)である。オーバーラップPCR法により作製されたPCR断片を、pCRIIベクターへライゲーションし、この配列を証明し、SmaI-XhoI断片を先に説明されたpdCs-huFc発現ベクターのいずれかへライゲーションした。アミノ酸配列は、配列番号:3として示した。変異を伴うマウスの対応物の配列は、配列番号:12に示した。
【0083】
先に考察したように、位置17のシステインは、修飾されたγ1ヒンジ配列を伴う免疫グロブリンγ4を含むFc部分を有するFc-IFN-βsolタンパク質のセリンへ変異される。そのアミノ酸配列は、配列番号:4として示した。
【0084】
huFc部分とIFN-β部分の間に柔軟なリンカー配列を導入するために、配列5’ G GGT GCA GGG GGC GGG GGC AGC GGG GGC GGA GGA TCC GGC GGG GGC TC 3’(配列番号:49)の合成オリゴヌクレオチド二重鎖を作製した。この平滑-末端の2本鎖二重鎖を、発現ベクターpdCs-huFc-IFN-βの独自のSmaI部位へライゲーションにより挿入した。得られたベクターpdCs-huFc-(GSリンカー)-IFN-β内の平滑-末端二重鎖の方向(orientation)は、配列決定により確認した。結果的に、アミノ酸配列GAGGGGSGGGGSGGGS(配列番号:50)が、SmaI部位を含むC CCG GGT (配列番号:51)配列によりコードされた、プロリン残基(コドンCCG)とグリシン残基(コドンGGT)の間に付加された。Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まるhuFc-(GS リンカー)IFN-βのアミノ酸配列は、図6(配列番号:5)に示す。本発明の免疫グロブリンγ4構築体を伴うこのリンカーを使用する場合、免疫グロブリンγ4のC-末端アミノ酸配列LSLSPG(配列番号:52)は、免疫グロブリンγ1、γ2又はγ3のC-末端配列LSLSPGA(配列番号:53)に存在するアラニン残基を欠いていることに注意することは重要である。先に説明したように、このアラニンは、未変性のリシン残基の変異の結果である。リンカーが、γ1、γ2又はγ3構築体に挿入された場合、末端のグリシン及びアラニン残基は、リンカーのグリシン及びアラニンにより同じように置換される。従ってリンカーが免疫グロブリンγ4Fc-IFN-βへ挿入された場合、アミノ酸配列は、C-末端グリシンがグリシン及びアラニンにより交換される場合に、追加のアラニン残基を得る。このことは、例えば図5の残基226-231(配列番号:4)と、図6の残基101で始まるもの(配列番号:5)とを比較することにより例示される。
【0085】
更にIFN-β部分に変異を含むFc-IFN-βsolタンパク質変種を、作出することができる。例えば、C17は、別のアミノ酸、例えばアラニンに変化することができる。C17A変異を導入するために、以下の突然変異誘発性オリゴヌクレオチドが使用される:フォワードプライマーは、5’AGA AGC AGC AAT TTT CAG GCT CAG AAG CTC CTG TGG CA 3’(配列番号:54)であり、リバースプライマーは、5’ TG CCA CAG GAG CTT CTG AGC CTG AAA ATT GCT GCT TCT 3’(配列番号:55)であり、ここで下線を付けたヌクレオチドは、導入された変異を示している。
Fc-IFN-βsolの更なる変異は、オーバーラップPCRにより、IFN-β部分に導入される。好ましい本発明のIFN-β融合タンパク質であるFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)及びFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)は、本明細書に先に説明された方法を用い、鋳型Fcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S)から出発することにより、作製される。
【0086】
H131A変異をFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)鋳型へ導入するために、第一の核酸断片が、制限エンドヌクレアーゼXmaI部位を組込む、フォワードプライマー配列5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:56)、及びGGCがH131A変異を表している、リバースプライマー配列5’ CTT GGC CTT CAG GTA GGC CAG AAT CCT CCC ATA ATA TC (配列番号:57)を用いるPCRにより作製される。この融合タンパク質の第二断片はGGCはH131A変異を表している、フォワードプライマー配列5’GAT ATT ATG GGA GGA TTC TGG CCT ACC TGA AGG CCA AG (配列番号:58)、及びBamHI制限部位を組込む、リバースプライマー配列5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:59)を使用するPCRにより作製される。これらの反応から得た生成物は、標準法に従い電気泳動ゲル上で精製した。ゲルで精製した断片に次に、XmaI制限部位を組込む、フォワードプライマー配列5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:60)、及びBamHI制限部位を組込む、リバースプライマー配列5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:61)を使用するPCRを施した。これは、Fcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、H131A)をコードしている核酸を生じる。
【0087】
次に、制限エンドヌクレアーゼXmaI部位を組込む、フォワードプライマー配列5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:62)、及びGGCはH140A変異を表している、リバースプライマー配列5’ GGT CCA GGC ACA GGC ACT GTA CTC CTT GGC (配列番号:63)を使用し、第一断片を作製するよう、Fcγh-リンカー-IFN-βsol(C17S、H131A)へPCRを施すことにより、H140A変異が導入される。この融合タンパク質の第二断片は、GCCはH140A変異を表している、フォワードプライマー配列5’ GGC AAG GAG TAC AGT GCC TGT GCC TGG ACC (配列番号:64)を用いるPCRにより作製される。このリバースプライマー配列は、5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:65)であり、これはBamHI制限部位を組込む。これらの反応から得られる生成物は、標準法に従い電気泳動ゲル上で精製した。ゲルで精製した断片に次に、XmaI制限部位を組込む、フォワードプライマー配列5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:66)、及びBamHI制限部位を組込む、リバースプライマー配列5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:67)を用いるPCRを施す。これは、Fcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、H131A、H140A)をコードしている核酸を生じる。あるいはこのプロセスは、適当なプライマーを、トレオニンコドンACCを発現するように修飾することにより、代わりに本発明のH140T変異を挿入することができる。
【0088】
最後に、F50H変異又はL57A変異のいずれかを、先の工程で調製された鋳型である、鋳型Fcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、H131A、H140A)へ導入するために、第一の核酸断片は、制限エンドヌクレアーゼXmaI部位を組込む、フォワードプライマー5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:68)、及びGGCはL57A変異を作製するコドンを表している、リバースプライマー配列5’ GAG CAT CTC ATA GAT GGT GGC TGC GGC GTC CT C (配列番号:69)、又はATGはF50H変異を作製するコドンを表している、リバースプライマー配列5’ GTC CTC CTT CTG ATG CTG CTG CAG CTG (配列番号:70)のいずれかを使用する、PCRにより作製される。L57A変異のための融合タンパク質の第二断片を作製するために、この鋳型に、GCCはL57A変異を表している、フォワードプライマー配列5’ GAG GAC GCC GCA GCC ACC ATC TAT GAG ATG CTC (配列番号:71)を用いるPCRが施される。F50H変異を導入するための融合タンパク質の第二断片を作製するために、この鋳型に、CATはF50H変異を表している、フォワードプライマー配列5’ CAG CTG CAG CAG CAT CAG AAG GAG GAC (配列番号:72)を用いるPCRが施される。いずれかの変異の第二断片の作製のためのリバースプライマーは、BamHI制限部位を組込む、5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:73)である。これらの反応から得られる生成物は、標準法に従い電気泳動ゲル上で精製した。ゲルで精製した断片を次に、PCRに使用し、Fcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)又はFcγ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)をコードしている核酸を作製した。この反応のフォワード及びリバースプライマーは、各々、5’CTC CCT GTC CCC GGG TGC AGG GGG (配列番号:74)及び5’ CTT ATC ATG TCT GGA TCC CTC GAG (配列番号:75)であり、先の工程のように使用した。
【0089】
(実施例2. Fc-IFN-β融合タンパク質の形質移入及び発現)
タンパク質発現の迅速な分析のために、プラスミドpdCs-huFc-IFN-β、pdCs-huFc-IFN-βsol(C17S)又はhuIFN-βを含む他のhuFc融合タンパク質変種を、ヒト胚性腎HEK293細胞(ATCC# CRL-1573)へ、リポフェクタミン(Invitrogen)を使用する、一過性形質移入により導入した。
【0090】
安定して形質移入された、huFc-IFN-βsol(C17S)を発現するクローンを得るために、例えば適当なプラスミドDNAを、マウス骨髄腫NS/0細胞へ電気穿孔により導入した。NS/0細胞は、10%熱で失活したウシ胎仔血清、2mMグルタミン及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充した、ダルベッコ変法イーグル培地において増殖した。約5x106個の細胞をPBSで1回洗浄し、0.5mlのPBS中に再懸濁した。次に線状化されたプラスミドDNAの10μgを、氷上のGene Pulserキュベット(電極ギャップ0.4cm、BioRad)中で細胞と共に、10分間インキュベーションした。Gene Pulser(BioRad、ハーキュラス、CA)を用い、0.25V及び500μFに設定し、電気穿孔を行った。細胞は、氷上で10分間回収し、その後増殖培地に再懸濁し、2個の96ウェルプレートへ播種した。安定して形質移入されたクローンを、形質移入後2日目に増殖培地に添加した100nMメトトレキセート(MTX)存在下での、それらの増殖により選択した。これらの細胞は、3日毎に2〜3回以上補充し(fed)、MTX-耐性クローンが2〜3週間で出現した。クローンの上清を、抗-Fc ELISAによりアッセイし、高生産株を同定した。高生産性クローンを単離し、100nM MTXを含有する増殖培地で増殖した。典型的に使用される増殖培地は、H-SFM又はCD培地(Life Technologies)であった。
【0091】
あるいは、huFc-IFN-βsol融合タンパク質を安定して発現しているクローンは、ヒト胚性腎HEK293細胞において、前述の方法に類似した方法による、メトトレキセート選択により入手した。HEK293クローンは、10%FBSを補充したDMEMで維持した。
【0092】
(実施例3. 細胞上清由来のhuFc-IFN-β融合タンパク質の特徴決定)
更なる分析のために、huFc-IFN-β融合タンパク質を引き続き培地から捕獲した。ゲル電気泳動による慣習的特徴決定のために、培地へ分泌されたhuFc-IFN-β融合タンパク質を、プロテインAセファロースビーズ(Repligen、ケンブリッジ、MA)で捕獲し、その後β-メルカプトエタノールのような還元剤を含む又は含まないタンパク質試料緩衝液中でこの試料を煮沸することにより溶離した。試料は、SDS-PAGEにより分析し、タンパク質バンドをクマシー染色により視覚化した。
【0093】
免疫グロブリンγ4アイソタイプを含むhuFc-IFN-βタンパク質をSDS-PAGEにより分析し、このタンパク質は、均質な種として哺乳類組織培養細胞において発現されないことがわかった。図2に示されたように、非還元的条件下では、huFc-IFN-βを表す100kDaの大きいバンドに加え、複数の他のバンド、更には高分子量タンパク質の分解されない痕跡が明確に認められた。これらの結果は、Fc融合タンパク質として発現された場合に、野生型IFN-βは、凝集体を形成したことを示している。この知見は、未修飾のIFN-βで一般に認められるものとは対照的であり;野生型配列が発現ベクターへクローニングされ、及び哺乳類細胞培養物中に分泌される場合は、サイズ排除クロマトグラフィーにより、98%が単量体であることがわかった(Runkelら、Pharmaceutical Research, 15:641 (1998))。この結果は更に、IFN-βはIFN-β-Fcの形の融合タンパク質として作出することができるという事実を考慮すると、予想外であった。例えば米国特許第5,908,626号を参照のこと。
【0094】
huFc-IFN-βの予想された50kDaバンドと追加バンドが還元的SDS-PAGEシステムにおいて残存したので、これらの凝集体の一部は、還元剤に対し安定していた。しかし異常な移動を示す物質の量は、非常に減少した。この結果は、著しい凝集の程度は、交差したジスルフィド結合形成に起因したことを示唆している。
【0095】
免疫グロブリンγ1由来のものを伴うヒンジ領域の置換を含んだFc-IFN-β変種を、分析した。これは免疫グロブリンγ4ヒンジ領域のように4個のジスルフィド結合を含まないが、この置換は、この融合プロテインの挙動に影響を及ぼさないことがわかった。同様に、融合構築体中の免疫グロブリンγ1由来のFcアイソタイプの使用も、同じく作用を有さなかった。従ってこの凝集はFc部分の存在によるもののように見えるが、この凝集は、Fc部分の変化によっては軽減されないであろう。
【0096】
IFN-βがFcのN-末端の領域へ融合される場合、リンカー配列の導入が有用であることが報告されている。例えば米国特許第5,908,626号を参照のこと。変化されたヒンジ領域又は変化されたFc領域のいずれかを伴うFc-IFN-β融合タンパク質と同様に、Fc領域をIFN-β部分から隔てているGly-Serリンカー領域を含むFc-IFN-β融合タンパク質も、前述と同じ結果を生じる。
【0097】
対照的に、huFc-IFN-β(C17S)のSDS-PAGE分析は、このタンパク質は、実質的に凝集されないことを明らかにした。非-還元的条件下で、huFc-IFN-β(C17S)に対応する100kDaのバンドは、事実上ゲル上にただひとつの目視できるバンドを表した。更に還元的条件下でも、恐らく露出された疎水性パッチ(patch)の相互作用のために、凝集された融合タンパク質を表すより顕著なバンドは存在しなかった。従って成熟型IFN-β配列の位置17でのシステイン置換の導入は、この融合タンパク質の正確なフォールディングを促進した。この結果は、ふたつの点で驚くべきことであった:ひとつは、Fc-Xタンパク質の“X”部分内の遊離のシステインの存在は、Fc-IL2のような、他の融合タンパク質における問題点を示さず;並びに、IFN-β中の遊離のシステインの存在は、遊離のタンパク質の場合、又はIFN-β-Fcタンパク質が、哺乳類発現システムにおいて発現された場合のいずれかの問題点を示さない。
【0098】
(実施例4: ELISA手法)
MTX-耐性クローンの上清及び他の被験試料中のヒトFc-含有タンパク質生成物の濃度は、抗-huFc ELISAにより決定した。以下に詳細に説明される標準の手法に、本質的に従った。
(A. プレートコーティング)
ELISAプレートは、96-ウェルプレート(Nunc-Immuno Plate Maxisorp)中100μL/ウェルとなるよう、PBSを溶媒とする5μg/mLのAffiniPureヤギ抗-ヒトIgG(H+L) (Jackson Immuno Research Laboratories、ウェストグローブ、PA)でコーティングした。コーティングプレートを覆い、4℃で一晩インキュベーションした。その後プレートを、PBSを溶媒とする0.05%Tween(Tween 20)で4回洗浄し、次に200μL/ウェルとなるよう、PBS中の1%BSA/1%ヤギ血清でブロックした。ブロック用緩衝液と共に37℃で2時間インキュベーションした後、プレートを、PBSを溶媒とする0.05%Tweenで4回洗浄し、ペーパータオル上で乾燥した。
【0099】
(B. 被験試料及び二次抗体とのインキュベーション)
被験試料は、試料緩衝液(PBS中1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%Tween)で、適宜希釈した。標準曲線を、濃度のわかっているキメラ抗体(ヒトFcとの)を用いて作製した。標準曲線を作製するために、試料緩衝液中で連続希釈を行い、125ng/mL〜3.9ng/mLの範囲の標準曲線を作製した。希釈した試料及び標準を、100μL/ウェルでプレートへ添加し、このプレートを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートをPBS中の0.05%Tweenで8回洗浄した。その後各ウェルへ、試料緩衝液中に約1:120,000で希釈した、二次抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ-複合抗-ヒトIgG(Jackson Immuno Research)100μLを添加した。二次抗体の正確な希釈は、HRP-複合抗-ヒトIgGの各ロットについて決定した。37℃で2時間のインキュベーション後、プレートをPBS中の0.05%Tweenで8回洗浄した。
【0100】
(C. 呈色)
基質溶液を、プレートへ100μL/ウェルで添加した。基質溶液を、OPD(o-フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)、(1錠))30mgを、新たに添加した過酸化水素0.03%を含有する、0.025Mクエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液(pH5)15mLへ溶解することにより調製した。暗所室温で30分間かけて、呈色させた。この呈色時間は、コーティングプレート、二次抗体などのロット毎の変動に応じて変更した。4N硫酸の100μL/ウェルでの添加により、反応を停止した。プレートを、490及び650nmの両方に設定し、650nmのバックグラウンドODを490nmのODから減算するようにプログラムしたプレートリーダーで測定した。
【0101】
(実施例 5. huFc-IFN-βタンパク質の精製及び分析)
Fc-含有融合タンパク質の標準精製は、Fcタンパク質部分のプロテインAへの親和性を基に行った。簡単に述べると、融合タンパク質を含有する細胞上清(野生型又は変異型タンパク質で形質移入した細胞由来)を、予め-平衡化した(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、中性pH)プロテインA セファロースファストフローカラムへ装荷し、このカラムを緩衝液(50mMリン酸ナトリウム、150mM NaCl、中性pH)で十分に洗浄した。結合したタンパク質を、低pHの先と同じ緩衝液(pH2.5)で溶出し、任意に1M Tris塩基(pH11)溶液へ直接溶出することにより、画分を迅速に中和した。
【0102】
プロテインAセファロース-精製したhuFc-IFN-β及びhuFc-IFN-βsol融合タンパク質を、分析的サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析し、クロマトグラフピークの曲線下面積を計算することにより、非-凝集物質の割合(%)を定量した。融合タンパク質の強度及び純度は、SDS-PAGE電気泳動により証明した。
【0103】
【表1】

【0104】
第二の精製工程において、Fc-IFN-βsol融合タンパク質を含有する中和したプロテインA セファロース溶出液を、分取SECカラムに装加し、ピーク画分を収集し、少なくとも90%の非-凝集物質からなるFc-IFN-βsolタンパク質調製物を得た。Fc-γ4h-リンカー-IFN-β(C17S)の精製された生成物の収率は約10%であったのに対し、Fc-γ4h-リンカー-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140T)についての収率は約75%であった。この結果は、IFN-β部分における変異C17Sの、例えばL57A、H131A及びH140Tとの組合せは、Fc-IFN-β融合タンパク質の溶解度特性を著しく促進することを示している。
【0105】
(実施例6. 抗ウイルス活性の測定)
細胞培養物中のウイルス複製は、細胞変性効果(CPE)として公知の作用である細胞毒性を生じることが多い。インターフェロンは、ウイルス複製を阻害し、及び細胞をCPEから保護することができる。IFN-βの抗ウイルス活性は、M.J. Clemens、A.G. Morris、及びA.J.H. Gearinの編集の「Lymphokines and Interferons: A Practical Approach」(I.R.L. Press, Oxford, 1987)に説明されたような、細胞変性効果低下(CPER)により定量することができる。精製されたhuFc-IFN-β及びhuFc-IFN-βsolの抗ウイルス活性は、前記参考文献に記されたCPERプロトコールに従い、ヒト上皮肺癌株A549(ATCC # CCL-185)及び脳心筋炎ウイルス(EMCV;ATCC # VR 129B)を用い、市販のhuIFN-β標準(R&D Systems)又はBetaferon(Serono)に対し比較した。有効投与量(ED50)は、非感染対照細胞と比較して決定された50%CPERにつながる(すなわち細胞の50%が溶解から保護される)タンパク質の量として設定した。ED50値は、少なくとも3回の個別の実験の平均であった。50%CPERは、huFc-IFN-βについて50pg/ml、huFc-IFN-βsol(C17S)について70pg/ml、huFc-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)について14pg/ml、及びhuFc-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140T)について17pg/mlであることがわかった。融合タンパク質中のIFN-β量に対して標準化されたこれらの値は、市販の標準品又はBetaferonに関するED50である、各々90pg/ml又は40pg/mlとよく相関した。従ってIFN-β融合タンパク質は、CPERアッセイにおいて実質的抗ウイルス活性を保持し、huFc-IFN-βsol融合タンパク質は、遊離のhuIFN-βのED50とほぼ同等のED50を有していた。
【0106】
(実施例7: 細胞増殖阻害アッセイ)
更に精製されたFc-IFN-β融合タンパク質の活性を、細胞増殖阻害アッセイにおいて決定した。バーキットリンパ腫患者由来のBリンパ芽球株であるDaudi細胞(ATCC # CCL-123)の増殖は、IFN-βにより通常阻害される。従って、融合タンパク質huFc-IFN-β及びhuFc-IFN-βsol(C17S)のDaudi細胞に対する抗増殖作用を、市販のヒト標準(Calbiochem)に対し比較した。これらの各タンパク質に対しアッセイを設定するために、ほぼ1000倍の濃度範囲を対象とする連続希釈物を、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI培地において調製し、試料100μlを、96ウェルプレートのウェル中に等分した。増殖相のDaudi細胞を洗浄し、10%ウシ胎仔血清を補充したRPMI培地中に、2x105個細胞/mlで再懸濁し、細胞100μlを、IFN-β希釈液を含有する各ウェルに等分した。更に対照ウェルは、未処理の細胞又は培地単独のいずれかを含んだ。更に72時間インキュベーション後、増殖をミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性により、電子供与体PMS(Sigma # P 5812)の存在下で発色酵素基質MTS(Promega # G5421)を用いて測定した。活性曲線から決定したED50値は、市販のIFN-βタンパク質に加え各融合タンパク質について約3ng/ml〜3.5ng/mlであることがわかった。従ってIFN-β融合タンパク質は、Daudi細胞増殖の阻害に関して、遊離のIFN-βと同程度に有効であった。
【0107】
(実施例8. huFc-IFN-βタンパク質の薬物動態)
huFc-IFN-β及びhuFc-IFN-βsol融合タンパク質の薬物動態を、4匹のBalb/cマウス群において、各タンパク質について決定した。融合タンパク質25mgを、各マウスの尾静脈に注射した。注射直後(すなわちt=0分)、及び注射後30分、1時間、2時間、4時間、8時間及び24時間の眼窩後方採血により、血液を得た。血液試料を、凝血を防ぐためにヘパリンを入れたチューブに採取した。エッペンドルフ高速遠心分離器により、12,500gで4分間遠心することにより、細胞を分離した。血漿中のFc-huIFN-β又はhuFc-IFN-βsolのいずれかの濃度を、抗-huFc ELISA及び抗-huFc抗体を使用するウェスタンブロット分析により測定した。あるいは、IFN-β ELISAを使用した。循環血中融合タンパク質の完全性は、抗-huFc抗体又は抗-IFN-β抗体でプロービングした血清のイムノブロットにより確認した。huFc-IFN-βsolの循環血中半減期は、huFc-IFN-βのそれよりも大きく、遊離のIFN-βのそれの少なくとも5倍であることがわかった。
【0108】
更に、Fc-IFN-βsolの特異的作用は、IFN-βの投与がその状態を緩和することがわかっている、多発性硬化症のような状態及び疾患の治療において、より顕著であることが企図されている。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1A-1Cは、本発明に従い構築されたFc-IFN-βsol融合タンパク質の限定されない例の略図である。
【図2】図2は、還元及び非還元の両方の化学環境における、HuFc-γ4-IFN-β及びC17S変異を伴わないHuFc-γ4h-IFN-β融合タンパク質及びHuFc-γ4h-IFN-β(C17S)融合タンパク質の移動パターンを示す、SDS-PAGEゲルの写真である。
【図3】図3は、成熟型IFN-βのアミノ酸配列(配列番号:2)である。
【図4】図4は、成熟型ヒトIFN-β(C17S)のアミノ酸配列(配列番号:3)である。
【図5】図5は、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプのヒトFc-IFN-βsol(C17S)のアミノ酸配列である(Fcγ4h-IFN-βsol)(配列番号:4)。
【図6】図6は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βのアミノ酸配列である(配列番号:5)。
【図7】図7は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)のアミノ酸配列である(配列番号:6)。
【図8】図8は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140T)のアミノ酸配列である(配列番号:7)。
【図9】図9は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)のアミノ酸配列である(配列番号:8)。
【図10】図10は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50A、H131A、H140A)のアミノ酸配列である(配列番号:9)。
【図11】図11は、Fcγ4アイソタイプのCH3ドメインで始まる、ヒトFc-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50A、H131A、H140T)のアミノ酸配列である(配列番号:10)。
【図12】図12は、成熟型マウスIFN-βのアミノ酸配列である(配列番号:11)。
【図13】図13は、成熟型マウスIFN-β(C17S)のアミノ酸配列である(配列番号:12)。
【図14】図14は、ヒンジ領域から始まる、融合タンパク質の態様huFcγ4h-IFN-βsol(C17S)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)をコードしている核酸配列である(配列番号:13)。
【図15−1】図15-1は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:14)。
【図15−2】図15-2は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:14)。
【図15−3】図15-3は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:14)。
【図16】図16は、ヒンジ領域から始まる、融合タンパク質態様HuFc-γ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)をコードしている核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:15)。
【図17−1】図17-1は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:16)。
【図17−2】図17-2は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:16)。
【図17−3】図17-3は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:16)。
【図18】図18は、ヒンジから始まる、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、L57A、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)の核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:17)。
【図19−1】図19-1は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:18)。
【図19−2】図19-2は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:18)。
【図19−3】図19-3は、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)を含むpdCsベクターの線状核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:18)。
【図20】図20は、ヒンジから始まる、huFcγ4h-(リンカー)-IFN-βsol(C17S、F50H、H131A、H140A)(γ1ヒンジの第一のシステインがセリンで交換されている、修飾されたγ1ヒンジを伴うγ4アイソタイプ)の核酸配列であり、ここでFc領域及びIFN-β部分はリンカーポリペプチドを介して結合されているものを示す(配列番号:19)。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)免疫グロブリンFc領域;及び
(ii)ペプチド結合又はペプチドリンカー配列により免疫グロブリンFc領域のカルボキシ-末端へ連結された、インターフェロン-βタンパク質を含む;Fc-インターフェロン-β融合タンパク質であり、
ここでインターフェロン-βタンパク質は、未変性の成熟型インターフェロン-βに相当する位置17、50、57、130、131、136及び140の少なくとも1個にアミノ酸変化を含む、融合タンパク質。
【請求項2】
アミノ酸変化が、置換である、請求項1記載の融合タンパク質。
【請求項3】
C17S、C17A、C17V、C17M;
F50H、
L57A、
L130A、
H131A、
K136A、
H140A、H140Tからなる群より選択される、インターフェロン-βタンパク質内のアミノ酸置換を有する、請求項2記載の融合タンパク質。
【請求項4】
インターフェロン-βタンパク質内の17及び50及び131及び140、又は
17及び57及び131及び140の位置にアミノ酸置換を有する、請求項2記載の融合タンパク質。
【請求項5】
インターフェロン-βタンパク質内に、C17S及びF50H及びH131A及びH140TもしくはA、又はC17S及びL57A及びH131A及びH140TもしくはAのアミノ酸置換を有する、請求項4記載の融合タンパク質。
【請求項6】
免疫グロブリンFc領域が、免疫グロブリンヒンジ領域及び免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項7】
免疫グロブリンFc領域が、IgG4、IgG2又はIgG1に由来する、請求項1〜6のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項8】
免疫グロブリンFc領域が、IgG4に由来し、更にはIgG1由来の免疫グロブリンヒンジ領域を含む、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項9】
ヒンジ領域のシステイン残基が、変異されている、請求項8記載の融合タンパク質。
【請求項10】
免疫グロブリンFc領域が、IgG1に由来し、及びアラニン残基が、免疫グロブリンFc領域のC-末端のリシンの代わりに置換されている、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項11】
免疫グロブリンFc領域が、IgG2に由来し、更にIgG1由来の免疫グロブリンヒンジ領域を含む、請求項7記載の融合タンパク質。
【請求項12】
ヒンジ領域のシステイン残基が変異されている、請求項11記載の融合タンパク質。
【請求項13】
更にアラニン残基が、免疫グロブリンFc領域のC-末端のリシンの代わりに置換されている、請求項11又は12記載の融合タンパク質。
【請求項14】
ペプチドリンカー配列が、Gly4SerGly4SerGly3SerGlyである、請求項1〜13のいずれか1項記載の融合タンパク質。
【請求項15】
請求項1〜14のFc-インターフェロン-β融合タンパク質いずれかひとつをコードしている核酸分子。
【請求項16】
哺乳類細胞を形質移入するための複製可能な発現ベクターであり、請求項1〜14のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつをコードしている核酸分子を含む、ベクター。
【請求項17】
請求項15又は16記載の核酸分子を含む細胞。
【請求項18】
Fc-インターフェロン-β融合タンパク質を作製する工程を含む、Fc-インターフェロン-β融合タンパク質を安定化する方法であり、ここでFc-インターフェロン-β融合体が、請求項1〜14記載のFc-インターフェロン-β融合タンパク質のいずれかひとつを含む、方法。
【請求項19】
安定化が:
(i)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の循環血中半減期を、未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増大する工程、又は
(ii)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の凝集を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて減少させる工程、又は
(iii)Fc-インターフェロン-β融合タンパク質の生物学的活性を未変化のFc-インターフェロン-β融合タンパク質と比べて増大する工程;を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
インターフェロン-βを投与することにより緩和される、患者の状態を治療するための医薬品の製造のための、請求項1〜14のいずれか1項記載のFc-インターフェロン-β融合タンパク質の使用。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図15−3】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図19−3】
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【図20】
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【公表番号】特表2008−508862(P2008−508862A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517216(P2007−517216)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006925
【国際公開番号】WO2006/000448
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】