説明

Gタンパク質共役受容体および関連組成物を使用するスクリーニング方法

本発明は、Gタンパク質に結合していないときのGPCR(副甲状腺ホルモン受容体など)に対する受容体アゴニストの親和性が、その薬物動態特性とは無関係に、アゴニストが有効である時間の長さと相関するという発見に基づく、GPCRに関するスクリーニング方法を提供する。本発明はまた、PTHおよびPTHrP由来のポリペプチドを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府が助成する研究についての言明
本発明は、国立衛生研究所によって付与された助成金DK 11794の下に合衆国政府の援助を得て為された。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、持続的活性または短命活性を有する、Gタンパク質共役受容体(GPCR)のアゴニストについてのスクリーニング方法に関する。より具体的には、本発明は、副甲状腺(PTH)受容体(PTHR)に対してPTH(1〜34)よりも持続的または短命の活性を有するPTHホルモンまたはPTH関連タンパク質(PTHrP)のリガンド類似体に関する。本発明はまた、本発明の方法を用いて同定されるPTHRリガンドおよび疾患の治療におけるそのようなリガンドの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
GPCRは、アゴニストによる活性化に応答して、Gタンパク質を活性化させ、その後環状AMP/タンパク質キナーゼAカスケードなどの少なくとも1つのシグナル伝達カスケードの活性化を生じさせる、膜受容体の大きな群である。受容体のこの大きな群は、細菌からヒトに及ぶ生物において認められ、たとえばホルモン、神経、および嗅覚のシグナル伝達に関与する。
【0004】
副甲状腺ホルモン受容体(PTHR)は、PTHおよびPTH関連タンパク質(PTHrP)の両方に対する内因性受容体であるが、各々のリガンドは異なる生物学的機能を有する。PTHはカルシウムおよびリン酸ホメオスタシスを調節し、骨および腎臓内の標的細胞に対する腺分泌性内分泌ホルモンとして働く。PTHはまた、主として腎臓の近位尿細管(PT)細胞内に位置するナトリウム依存性リン酸輸送体(NaPi-IIaおよびNaPi-IIc)へのその作用を介して、無機リン酸(Pi)の再吸収を抑える。PTHrPは、組織の発生における細胞増殖および分化プログラムを調節し、組織原基においてパラクリン的に分泌され、機能する(Kronenberg, H.M. Ann. N. Y. Acad. Sci. 1068: 1-13 (2006)(非特許文献1))。
【0005】
PTHとPTHrPは、アミノ末端(残基1〜14)のシグナル伝達ドメインにおいて最も相同であり(8アミノ酸の同一性)、それらの14〜34結合ドメインでは中等度の相同性(3アミノ酸の同一性)を示す。PTHおよびPTHrPの完全に活性な部分(残基1〜34)はおおむね同じ機構を介してPTHRと相互作用すると一般的に推測されてきた(Caulfield et al., Endocrinology 127:83-87(1990)(非特許文献2); Abou-Samra et al., Endocrinology 125:2215-2217(1989)(非特許文献3))。この機構は、2つの主要な要素:リガンドのカルボキシ末端結合ドメインと、受容体のアミノ末端細胞外(N)ドメインとの間の相互作用、ならびにリガンドのアミノ末端シグナル伝達ドメインと、細胞内ループおよび7つの膜貫通ヘリックスを含む受容体の膜近傍(J)領域との間の相互作用からなると考えられる(Hoare et al., J. Biol. Chem 276:7741-7753(2001)(非特許文献4); Castro et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 16084-16089(2005)(非特許文献5); Witelsberger et al., Biochemistry 45:2027-2034 (2006)(非特許文献6); Shimizu et al., J. Biol. Chem. 280: 1797-1807(2005)(非特許文献7); Gensure et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 328:666-678(2005)(非特許文献8))。しかし、2つのリガンドによって利用される結合の正確な機構がどの程度異なるかは決定されないままである。
【0006】
ヒトにおいて、PTH(1〜34)は強力な骨同化作用を有し、骨塩量密度と骨強度の顕著な上昇を誘導する。実際に、組換えヒトPTH(1〜34)は、現在、骨粗しょう症のための最も有効な治療の1つとみなされている(Tashjian and Gagel, J. Bone Miner. Res 21:354-365 (2006)(非特許文献9))。重要な点として、hPTH(l〜34)は、その骨形成作用を実現させるために律動方式(たとえば1日1回の皮下注射)で投与しなければならない。持続注入ポンプ方式のようなより長期的な投与により、PTH(1〜34)は、骨芽細胞によって媒介される骨形成応答と比較して、破骨細胞によって媒介される骨吸収応答のより大きな活性化のゆえに、骨に対して正味の異化作用を及ぼす。従って、骨内のPTH受容体がPTHリガンドに暴露される期間は、そのリガンドによって達成される全体的骨形成応答、そしてそれゆえ、骨粗しょう症のための治療としてのその有効性の鍵となる決定因子である。
【0007】
臨床試験は、PTHrP(1〜36)もまたヒトにおける骨塩量密度を高めることができ、より高い用量が必要ではあるが、PTH(1〜34)とほぼ同じ程度に骨密度を増加させ得ることを示した(Horwitz et al., J. Endocrinol. Metab. 88:569-575(2003)(非特許文献10)。重要な点として、そのような高用量であっても、PTHrP(1〜36)は、等しい用量のPTH(1〜34)において予想される有害な骨吸収および高カルシウム血性応答を刺激しなかった(Horwitz et al., J. Endocrinol. Metab. 88:569-575(2003)(非特許文献10); Horwitz et al., J. Bone Miner. Res. 20: 1792-1803(2005)(非特許文献11); Horwitz et al., Osteoporosis Int. 17:225-230(2006)(非特許文献12))。2つのペプチドの生物活性の相違は単に薬物動態の相違によるものではない。定常状態注入法を用いた2つのペプチドの直接比較は、PTHrP(1〜36)が、l,25-(OH)2ビタミンD3の腎合成を刺激することに関して明らかにPTH(1〜34)より有効でないことを示した(Horwitz et al., J. Bone. Mineral. Research. 20: 1792-1803(2005)(非特許文献11))。
【0008】
骨粗しょう症に加えて、hPTH(1〜34)は、PTH欠損の状態、すなわち副甲状腺機能低下症を治療するうえでも有効であることが示された。それゆえ、PTH(1〜34)は、カルシトリオール療法に対する安全で有効な代替治療であり、副甲状腺機能低下症を有する患者において高カルシウム尿症を伴わずに正常な血清中カルシウムレベルを維持できることが示された(Winer et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 88:4214-4220(2003)(非特許文献13))。このペプチドは少なくとも1日2回注射しなければならず、著者らは、この疾患における長時間作用性PTH(1〜34)類似体の必要性を認識した(Winer et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 88:4214-4220(2003)(非特許文献13))。
【0009】
それゆえ、PTH受容体に対してPTH(1〜34)よりも長命または短命の作用を及ぼすPTHまたはPTHrP類似体への当技術分野における需要が存在する。また、短時間作用を有するPTHペプチドと長時間作用を有するPTHペプチドを識別することを可能にするアッセイへの需要も存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Kronenberg, H.M. Ann. N. Y. Acad. Sci. 1068: 1-13 (2006)
【非特許文献2】Caulfield et al., Endocrinology 127:83-87(1990)
【非特許文献3】Abou-Samra et al., Endocrinology 125:2215-2217(1989)
【非特許文献4】Hoare et al., J. Biol. Chem 276:7741-7753(2001)
【非特許文献5】Castro et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 102: 16084-16089(2005)
【非特許文献6】Witelsberger et al., Biochemistry 45:2027-2034 (2006)
【非特許文献7】Shimizu et al., J. Biol. Chem. 280: 1797-1807(2005)
【非特許文献8】Gensure et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 328:666-678(2005)
【非特許文献9】Tashjian and Gagel, J. Bone Miner. Res 21:354-365 (2006)
【非特許文献10】Horwitz et al., J. Endocrinol. Metab. 88:569-575(2003)
【非特許文献11】Horwitz et al., J. Bone Miner. Res. 20: 1792-1803(2005)
【非特許文献12】Horwitz et al., Osteoporosis Int. 17:225-230(2006)
【非特許文献13】Winer et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 88:4214-4220(2003)
【発明の概要】
【0011】
古典的なGPCR理論によると、Gタンパク質共役受容体の2つの形態:Gタンパク質に結合する形態(RG)とGタンパク質に結合しない形態(R)を区別することができる。GPCRシグナル伝達は、Gタンパク質が受容体によって直接活性化されることを必要とし、すなわちRG状態が形成されねばならず、このRG形成はアゴニストリガンドの結合によって誘導され得る。アゴニストリガンドの結合はRG状態を誘導または安定化し、そして相互的に、RG状態はアゴニストの高親和性結合を安定化する。GTP、またはGTPγSなどの非加水分解性GTP類似体に結合したとき、受容体共役Gタンパク質は受容体から解離して、受容体を低親和性状態に復帰させる。現在、PTHRのような一部のGPCRは、GTPγSの存在下でも、そしてそれゆえ受容体がおそらくGタンパク質によって結合されていないときでも、高い親和性で特定のアゴニストリガンドに結合することができる新規状態(R0)を形成できることが認識されている。一般に、細胞中におけるRG、R、またはR0状態にあるGPCRの比率は、細胞型および状態に依存して異なり得る。これらの理由から、GPCRへのリガンドの結合を評価することについてのこれまでの研究は、一般にRG、R、またはR0状態を明確に区別していなかった。本発明者らは、例示的GPCRであるPTH受容体を検討して、RG状態に加えてR0状態に高親和性で結合するリガンドは、より低い親和性でR0に結合するリガンドよりも長い活性半減期を有すること、およびこの持続的な活性は、インビボでのリガンドのバイオアベイラビリティまたは薬物動態に依存しないことを発見した。それに対応して、短い作用期間を有するアゴニストは、受容体のR0形態に対してより低い親和性を有する。この発見に基づき、本発明は、長時間作用性または短時間作用性GPCRアゴニストの同定のための方法、および本発明の方法を用いて同定されるペプチドアゴニストを提供する。
【0012】
第1の局面では、本発明は、候補化合物がGタンパク質共役受容体(GPCR)の長時間作用性アゴニストであるかどうかを決定するための方法を提供する。この方法は、(a)RG形態であるGPCRを化合物と接触させる工程、(b)RG形態のGPCRに対する化合物の親和性を測定する工程、(c)R0形態であるGPCRを化合物と接触させる工程、および(d)R0形態のGPCRに対する化合物の親和性を測定し、(i)RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも1%(たとえば5、10、25、30、50、60、75、90、100、125、150、200、150、300、400、500、750、または1000%)の親和性を有し、且つ(ii)R0形態のGPCRに対して内因性アゴニストよりも高い親和性(たとえば1、5、10、25、50、100、200、500、1000、2000、5000、または10,000%高い)を有する化合物を、GPCRの長時間作用性アゴニストとして同定する工程を含む。前記方法は、(e)候補化合物を動物に投与する工程、および(f)化合物に対する動物の少なくとも1つの生理的応答を測定する工程をさらに含み得る。受容体はヒト受容体であり得る。GPCRは、セクレチンファミリーの受容体(たとえば、ヒトPTH/PTHrP受容体などのPTH/PTHrP受容体)であり得る。受容体がカルシウムホメオスタシスまたは輸送に関与するとき、測定工程(b)または(f)は、細胞内または血中カルシウムレベルを測定することによって実施し得る。任意のGPCRに関して、親和性を測定する工程(b)または工程(d)は、競合結合アッセイを用いて実施し得る。競合結合アッセイは、RG形態のGPCRに特異的であるまたはR0形態のGPCRに特異的であるリガンドを使用し得る。測定工程(b)は、遅延型(delayed)cAMPアッセイ(たとえば本明細書で述べるような)を用いて実施し得る。R0形態のGPCRは、非加水分解性ヌクレオチド類似体(たとえばGTPγS)を用いて富化し得る。RG形態のGPCRは、ドミナントネガティブGタンパク質を用いて富化し得る。受容体は、細胞上または膜内に存在し得る。候補化合物は、ペプチドを含み得るかまたは化学物質ライブラリーもしくは天然産物ライブラリー由来であり得る。
【0013】
もう1つの局面では、本発明はまた、本発明は、候補化合物がGタンパク質共役受容体(GPCR)の短時間作用性アゴニストであるかどうかを決定するための方法を特徴とする。この方法は、(a)RG形態であるGPCRを化合物と接触させる工程、(b)RG形態のGPCRに対する化合物の親和性を測定する工程、(c)R0形態であるGPCRを化合物と接触させる工程、および(d)R0形態のGPCRに対する化合物の親和性を測定し、(i)RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも1%(たとえば5、10、25、30、50、60、75、90、100、125、150、200、150、300、400、500、750、または1000%)の親和性を有し、且つ(ii)R0形態のGPCRに対して内因性アゴニストよりも低い親和性(たとえば99、95、90、85、75、65、55、50、40、30、25、15、10、5、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、または0.0001%)を有する化合物を、GPCRの短時間作用性アゴニストとして同定する工程を含む。受容体はヒト受容体であり得る。前記方法は、(e)候補化合物を動物に投与する工程、および(f)化合物に対する動物の少なくとも1つの生理的応答を測定する工程をさらに含み得る。GPCRは、セクレチンファミリーの受容体(たとえば、ヒトPTH/PTHrP受容体などのPTH/PTHrP受容体)であり得る。受容体がカルシウムホメオスタシスまたは輸送に関与するとき、測定工程(b)は、細胞内カルシウムレベルを測定することによって実施し得る。任意のGPCRに関して、測定工程(b)または工程(d)は、競合結合アッセイ(たとえば、RG形態のGPCRに特異的であるまたはR0形態のGPCRに特異的であるリガンドを使用して)を用いて実施される。測定工程(b)は、遅延型cAMPアッセイを用いて実施し得る。ある種の態様では、R0形態のGPCRは、非加水分解性ヌクレオチド類似体(たとえばGTPγS)を用いて富化し得る。RG形態のGPCRは、ドミナントネガティブGタンパク質を用いて富化し得る。受容体は、細胞上または膜内に存在し得る。候補化合物は、ペプチドを含み得るかまたは化学物質ライブラリーもしくは天然産物ライブラリー由来であり得る。
【0014】
もう1つの局面では、本発明は、PTH R0に対する低い親和性(たとえば、且つRGに対する高い親和性)を有するポリペプチドを特徴とする。このポリペプチドは、短時間作用性アゴニストであり得るかまたはRG選択的であり得る。このポリペプチドは、野生型PTHまたはPTHrP配列と比較して1またはそれ以上(たとえば2、3、4、5、6、7、8)のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾されたアミノ酸配列を有し得る。このポリペプチドは、5位にヒスチジンまたは20、23、24、もしくは28位にアラニンを有し得る。このポリペプチドは、

またはそのフラグメントであり得る。このポリペプチドは、図26Bの表においてRG選択的と同定されるもののいずれかからなる群より選択され得る。このポリペプチドは、薬学的投与(たとえば本明細書で述べるような)のために製剤され得るかまたは精製され得る。
【0015】
本発明はまた、前記局面のポリペプチド、RG選択的ポリペプチド(たとえば本明細書で述べるもの)、長時間作用性アゴニストであると本明細書で述べるポリペプチド、もしくは本明細書で述べる任意のポリペプチド、またはそれらの薬学的に許容される形態を、骨粗しょう症を治療するのに十分な量でその必要のある対象に投与する工程を含む、対象において骨粗しょう症を治療するための方法を特徴とする。本発明はまた、対象において骨折修復、骨軟化症、関節炎、血小板減少症、副甲状腺機能低下症もしくは高リン血症を治療するまたは幹細胞動員を高めるための方法であって、前記局面のポリペプチドもしくは本明細書で述べる任意のポリペプチド、またはそれらの薬学的に許容される形態を、前記疾患または状態を治療するまたは幹細胞動員を高めるのに十分な量で対象に投与する工程を含む方法を特徴とする。ポリペプチドまたはその薬学的に許容される形態は、皮下的、静脈内、鼻腔内、経肺的、経皮的、または経口的に投与され得る。
【0016】
もう1つの局面では、本発明は、PTH受容体に結合し、PTH受容体のR0形態に高い親和性を有するポリペプチド(PTH類似体またはPTH誘導体)を特徴とする。このポリペプチドは、野生型PTHまたはPTHrP配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾されたアミノ酸配列を有し得る。このポリペプチドはまた、19位にアルギニンまたは5位にイソロイシンを有し得る。このポリペプチドは、

であり得る。このポリペプチドは、図26Bのデータに基づき、2.9nMもしくは7.9nMまたはそれ以下のIC50を有する図26BのペプチドのいずれかおよびI5-hPTHrP(l〜36)(#1208)からなる群より選択され得る。このポリペプチドは、薬学的投与(たとえば本明細書で述べるような)のために製剤され得るかまたは精製され得る。
【0017】
本発明はまた、対象において副甲状腺機能低下症、高リン血症、腫瘍状石灰沈着症、および骨粗しょう症からなる群より選択される疾患または状態を治療するための方法であって、前記局面のポリペプチド、本明細書で述べるR0選択的ポリペプチド、長時間作用性アゴニストであると本明細書で述べるポリペプチド、もしくは本明細書で述べる任意のポリペプチド、またはそれらの薬学的に許容される形態を、前記疾患または状態を治療するのに十分な量でその必要のある対象に投与することによる方法を特徴とする。本発明はまた、骨折修復を必要とする、または骨軟化症、関節炎、血小板減少症を有する、または幹細胞動員を必要とする対象を治療するための方法であって、前記局面のポリペプチドもしくは本明細書で述べる任意のポリペプチド、またはそれらの薬学的に許容される形態を、骨折を修復する、疾患を治療する、または幹細胞を動員するのに十分な量で対象に投与する工程を含む方法を特徴とする。ポリペプチドまたはその薬学的組成物は、皮下的、静脈内、鼻腔内、経肺的、経皮的、および経口的に投与され得る。
【0018】
本発明はまた、野生型PTHまたはPTHrP配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾されたアミノ酸配列を有するPTHまたはPTHrPポリペプチドを特徴とする。このポリペプチドは、19位にアルギニンまたは5位にイソロイシンを有し得る。このポリペプチドは、

からなる群より選択され得る。このポリペプチドは、5位にヒスチジンを有し得る。このポリペプチドは、以下の式Ala1,Aib3[M]PTH(1〜28)、Ala23PTH、およびIle5-PTHrPの1つによって表され得る。このポリペプチドは、

からなる群より選択され得る。このポリペプチドは、任意の治療方法または任意の組成物(たとえば本明細書で述べる薬学的組成物)において使用され得る。
【0019】
もう1つの局面では、本発明は、
式中、
X1が、Ser、Ala、Gly、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;
X2が、Ser、Ala、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;
X3が、Asn、Ala、Glu、Val、Asp、もしくはGlnであり;
X4が、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、Leu、もしくはHarであり;
X5が、Gly、His、Arg、Ala、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;
X6が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、Arg、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;且つ
X7が、Arg、Leu、Phe、Trp、His、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)である、

を有するアミノ酸配列、または前記式によって定義されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、またはアミノ酸1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含有するそのフラグメントを含むポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。αヘリックス安定化残基は、たとえば、(2-アミノイソ酪酸)、ACPC(1-アミノシクロプロピルカルボン酸)、DEG(ジエチルグリシン)、または1-アミノシクロペンタンカルボン酸などのコードされないアミノ酸であり得る。ある種の態様では、アミノ酸配列は、対応する野生型PTH配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、または8個の置換を有する。ある種の態様では、ポリペプチドは、X1にAla、Gly、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib); X2にAlaもしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib); X3にAla、GIu、Val、Asp、もしくはGln;X4にVal、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、もしくはHar; X5にHis、Arg、Ala、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib);X6に Gln、Leu、His、Trp、Ala、Arg、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib); X7にArg、Leu、Phe、Trp、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib);またはそれらの組合せを含む。これらの態様のいずれにおいても、ポリペプチドは、100、50、36、34、30、25、または20アミノ酸長より短いアミノ酸配列(たとえば10〜14アミノ酸)を有し得る。ある種の態様では、ポリペプチドは、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、または10アミノ酸長である。ポリペプチドは、薬学的に許容される担体を含む組成物の部分であってもよい。
【0020】
もう1つの局面では、本発明は、
式中、
X1が、Ser、Ala、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;
X2が、Ser、Ala、もしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib)であり;
X3が、IleもしくはHisであり;
X4が、Asn、Glu、Val、Asp、もしくはGlnであり;
X5が、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、Leu、もしくはHarであり;
X6が、Gly、His、Arg、もしくはAlaであり;
X7が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArgであり;
X8が、Arg、Leu、Phe、Trp、His、もしくはSerであり;
X9が、ArgもしくはAlaであり;
X10が、Trp、Ala、もしくはPheであり;
X11が、LeuもしくはAlaであり;且つ
X12が、LeuもしくはAlaである、

のアミノ酸配列、または前記式によって定義されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列であって、X3位のHis、X9位のAla、X10位のAla、X11位のAla、およびX12位のAlaからなる群より選択されるアミノ酸の少なくとも1つを含むアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、もしくは1〜27を含むそのフラグメントを含むポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。このポリペプチドは、PTH受容体のR0形態に低い親和性で結合し得る(たとえば、PTH受容体のRG形態に高い親和性で結合し得る)。このポリペプチドは、RG選択的または受容体の短時間作用性アゴニストであり得る。このポリペプチドは、対応する野生型配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の置換を含み得る。ある種の態様では、このポリペプチドは、X1にAlaもしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib); X2にAlaもしくはαヘリックス安定化残基(たとえばAib); X3にHis;X4にGlu、Val、Asp、もしくはGln; X5にVal、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、もしくはHar;X6にHis、Arg、もしくはAla; X7にGln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArg; X8にArg、Leu、Phe、Trp、もしくはSer;X9にAla;X10にAlaもしくはPhe;X11にAla;X12にAla;またはそれらの組合せを含む。このポリペプチドは、100、75、60、50、40、36、34、33、32、31、30、29、または28アミノ酸長より短くてもよい。このポリペプチドは、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸長(たとえば24〜28アミノ酸長)であり得る。ある種の態様では、X9、X10、X11、またはX12の少なくとも1つ(たとえば2、3、または4)はアラニンである。
【0021】
もう1つの局面では、本発明は、
式中、
X1が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X2が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X3が、Asn、Glu、Val、AspもしくはGlnであり;
X4が、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、もしくはLeuであり;
X5が、Gly、His、ArgもしくはAlaであり;
X6が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArgであり;且つ
X7が、Arg、Leu、Phe、Trp、His、もしくはSerである、

のアミノ酸配列、または前記式によって定義されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、もしくは1〜27を含有するそのフラグメントを含むポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。このポリペプチドは、R0選択的もしくは長時間作用性PTHアゴニストであり得る。このアミノ酸配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の置換を含み得る(たとえば、野生型PTH配列と比較して前述した位置のいずれかで)。ある種の態様では、このポリペプチドは、X1にAlaもしくはAib; X2にAlaもしくはAib; X3にGlu、Val、Asp、もしくはGln; X4にVal、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、もしくはArg;X5にHis、Arg、もしくはAla; X6にGln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArg; X7にArg、Leu、Phe、Trp、もしくはSer;またはそれらの組合せを含む。このポリペプチドは、100、75、60、50、40、36、34、33、32、31、30、29、または28アミノ酸長より短くてもよい。このポリペプチドは、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸長(たとえば24〜28アミノ酸長)であり得る。このポリペプチドは、薬学的に許容される担体と共に組成物中に存在し得る。
【0022】
もう1つの局面では、本発明は、
式中、
Xlが、Leu、Ala、Ser、Met、Phe、もしくはGluであり;
X2が、Phe、Ala、Ser、Leu、Asn、Trp、Glu、もしくはLysであり;
X3が、His、Leu、Arg、Lys、Trp、Ile、もしくはPheであり;
X4が、His、Ala、Ser、Asn、Lys、もしくはArgであり;
X5が、Ala、Gly、Ser、Asn、Gln、Trp、Glu、もしくはLysであり;
X6が、Glu、Gly、Ser、Leu、Asn、Asp、Lys、もしくはAlaであり;
X7が、Ile、Leu、Val、Lys、もしくはAlaであり;
X8が、His、もしくはAlaであり;
X9が、Thr、Asn、もしくはAlaであり;且つ
X10が、Ala もしくはPheである、

を有するアミノ酸配列、または前記式によって定義されるポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、1〜27、1〜28、1〜29、1〜30、1〜31、1〜32、1〜33、1〜34、もしくは1〜35を含有するそのフラグメントを含み、対応する野生型PTHrP配列またはそのフラグメントと比較して少なくとも1つのアミノ酸の置換を含むポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩を特徴とする。このポリペプチドは、PTH受容体のR0形態に低い親和性で結合し得る(たとえば、PTH受容体のRG形態に高い親和性で結合し得る)。このポリペプチドは、RG選択的またはPTH受容体の短時間作用性アゴニストであり得る。このポリペプチドは、対応する野生型PTHrP配列と比較して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の置換を含み得る。ある種の態様では、このポリペプチドは、X1にAla、Ser、Met、Phe、もしくはGlu;X2にAla、Ser、Leu、Asn、Trp、Glu、もしくはLys;X3にLeu、Arg、Lys、Trp、Ile、もしくはPhe;X4にAla、Ser、Asn、Lys、もしくはArg;X5にGly、Ser、Asn、Gln、Trp、Glu、もしくはLys;X6にGly、Ser、Leu、Asn、Asp、Lys、もしくはAla;X7にLeu、Val、Lys、もしくはAla;X8にAla;X9にAsnもしくはAla;X10にPhe;またはそれらの組合せを有する。特定の態様では、このポリペプチドは、X1にAlaもしくはGlu、X2にAla、X3にLeu、X4にLys、またはそれらの組合せを有する。このポリペプチドは、100、75、60、50、40、36、34、33、32、31、30、29、または28アミノ酸長より短くてもよい。このポリペプチドは、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、または40アミノ酸長(たとえば28〜36アミノ酸長)であり得る。このポリペプチドは、遊離ヒドロキシルを有していてもよく、またはそのC末端でアミド化されていてもよい。このポリペプチドは、表1のアミノ酸配列から選択される配列を含み得るか、またはそのような配列と実質的に同一であり得る。このポリペプチドは、薬学的に許容される担体と共に組成物中に存在し得る。
【0023】
(表1)

【0024】
もう1つの局面では、本発明は、N末端がかさ高い残基(たとえばTrp)で置換されている、PTHまたはPTHrPポリペプチド(たとえば前記局面のいずれか、または本明細書で述べる)を特徴とする。そのようなポリペプチドは、Trp1-PTH(1〜34)、Trp1-M-PTH(1〜34)、およびTrp1-PTHrP(1〜36)、または前記配列のアミノ酸1〜10、1〜11、1〜12、1〜13、1〜14、1〜15、1〜16、1〜17、1〜18、1〜19、1〜20、1〜21、1〜22、1〜23、1〜24、1〜25、1〜26、1〜27、1〜28、1〜29、1〜30、1〜31、1〜32、1〜33、1〜34、もしくは1〜35を含有するそのフラグメントを含む。このポリペプチドは、かさ高い残基置換を欠くポリペプチドと比較して、PTH受容体において低い(たとえば少なくとも1、5、10、25、50、75、90、95、99、99.5、99.9、99.95、または99.99%低い)PLCシグナル伝達活性を有し得る。他のかさ高い残基は、Phe、Tyr、およびp-ベンゾイルフェニルアラニン(Bpa)を包含する。ある種の態様では、このポリペプチドは、MまたはMc修飾(式中、Mは[Ala1、12、Aib3、Gln10、ホモアルギニン11、Trp14、Arg19]を表し、McはAla1、3、12、Gln10、Arg11、Trp14、Arg19 PTH配列を表す)に示す突然変異のいずれか1つ(たとえば2、3、4、5、6、もしくは7)、またはそれらの組合せを含む。ハイブリッドペプチドは、5位の置換(たとえば5位のヒスチジン)をさらに含み得る。例示的なポリペプチドは、Trp1-PTH(1〜28)およびTrp1-M-PTH(1〜28)を含む。
【0025】
本発明のもう1つの局面では、本発明は、ハイブリッドPTH/PTHrPポリペプチドまたはハイブリッドPTH/PTHrPポリペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドを特徴とする。このポリペプチドは、式PTH(1〜X)/PTHrP(Y〜36)(式中、Xは、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、または34であり、Y=X+1である)によって表され得る。ある種の態様では、このハイブリッドポリペプチドは、MまたはMc修飾(式中、Mは[Ala1、12、Aib3、Gln10、ホモアルギニン11、Trp14、Arg19]を表し、McはAla1、3、12、Gln10、Arg11、Trp14、Arg19 PTH配列を表す)に示す突然変異のいずれか1つ(たとえば2、3、4、5、6、もしくは7)、またはそれらの任意の組合せを含む。ハイブリッドペプチドは、5位の置換(たとえば5位のヒスチジン)をさらに含み得る。
【0026】
前述したポリペプチドのいずれにおいても、ポリペプチドは生物活性であり得る、たとえば、RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも1%(たとえば5、10、25、30、50、60、75、90、100、125、150、200、150、300、400、500、750、または1000%)の親和性を有し、R0形態に対して、対照(たとえばGPCRに対する内因性リガンド)と比較してより低い親和性(たとえば99、95、90、85、75、65、55、50、40、30、25、15、10、5、1、0.5、0.1、0.05、0.01、0.005、0.001、0.0005、または0.0001%)を有し得る。他の態様では、ポリペプチドは、RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも1%(たとえば5、10、25、30、50、60、75、90、100、125、150、200、150、300、400、500、750、または1000%)の親和性を有し、且つ(ii)R0形態のGPCRに対して内因性アゴニストよりも高い親和性(たとえば1、5、10、25、50、100、200、500、1000、2000、5000、または10,000%高い)を有するか、またはGPCRの長時間作用性アゴニストとして同定される。前記局面では、ポリペプチドは、RG選択的、R0選択的、短時間作用性アゴニスト、または長時間作用性アゴニストであり得る。ある種の態様では、ポリペプチドは修飾されていてもよい(たとえば、N末端でアセチル化され得る、C末端でアミド化され得る、または本明細書で述べる修飾のいずれかを含み得る)。
【0027】
本発明はまた、本明細書で述べるポリペプチド(たとえば前述したもの)をコードする配列を含む核酸を特徴とする。核酸は、プロモーターおよび/またはベクターの一部に機能的に連結され得る。本発明はまた、このベクターを含む細胞(たとえば、細菌細胞などの原核細胞、または酵母もしくは哺乳動物細胞、たとえばヒト細胞などの真核細胞)を特徴とする。本発明はまた、前記核酸の発現を誘導する条件下で細胞を増殖させることによってポリペプチドを作製し、任意で前記ポリペプチドを精製する方法を特徴とする。
【0028】
「GPCR」とは、Gタンパク質共役受容体またはその機能的フラグメントを含む任意のポリペプチドを意味する。望ましくは、GPCRは、天然のGPCRと少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、または100%の配列同一性を有する。例示的なGPCRを本明細書で述べる。
【0029】
GPCRの「RG形態」とは、Gタンパク質結合受容体の立体配座を意味する。RG形態のGPCRは、たとえば、GPCRのGタンパク質結合の増加によって誘導され得る。本発明のアッセイでは、RG形態に対する親和性を測定したとき、受容体の少なくとも1%、5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%、または99%がRG形態である。
【0030】
GPCRの「R0形態」とは、GPCRがGタンパク質に結合していないときに生じるが、受容体の少なくとも一部のリガンドには結合することができる受容体の立体配座を意味する。R0形態のGPCRは、RGと比較して、たとえば、GPCRへのGタンパク質の結合を妨げるまたは低減することによって促進され得る。本発明のアッセイでは、R0形態に対する親和性を測定したとき、受容体の少なくとも0.1%、1%、5%、10%、25%、50%、75%、90%、95%、または99%がR0形態であり得る。
【0031】
「親和性」とは、化合物が標的受容体と相互作用する能力を意味する。本発明のアッセイおよびポリペプチドでは、親和性は、結合(たとえば競合結合アッセイもしくはFRET)によって直接測定され得るか、または活性アッセイ(たとえばcAMPシグナル伝達もしくは細胞内カルシウムの変化)を介して間接的に測定され得る。望ましくは、化合物は、GPCRのRG形態またはR0形態に対するEC50によって測定して、受容体に対して少なくとも10μmol、1μmol、500nmol、100nmol、50nmol、25nmol、10nmol、5nmol、1nmol、500pmol、200pmol、100pmol、50pmol、25pmol、10pmol、または1pmolの親和性を有する。
【0032】
「長時間作用性アゴニスト」とは、その活性(たとえばインビボまたはインビトロで測定される)が、同じ受容体に対する内因性アゴニストと比較して少なくとも5%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、500%、1000%、または5000%長い半減期を有するアゴニストを意味する。
【0033】
「短時間作用性アゴニスト」とは、その活性(たとえば本明細書で述べるアッセイを用いてインビボまたはインビトロで測定される)が、同じ受容体に対する内因性アゴニストと比較して95%、90%、75%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、または1%未満である半減期を有するアゴニストを意味する。
【0034】
「RG選択的アゴニスト」とは、対照アゴニスト(たとえば内因性アゴニスト)と比較して、受容体のR0形態に比べて受容体のRG形態に高い結合を示すアゴニストである。受容体選択性は、各々の受容体形態の間の結合定数の比、たとえばR0/RG比として表すことができ、この比率の上昇はRG形態へのより強い結合を指し示す。図26Aおよび26Bに示すように、COS-7細胞膜上で発現されるヒトPTH受容体に結合するとき、PTH(1〜34)のR0/RG比は67であり、相対的によりRG選択的なPTHrP(1〜36)は260である。RG選択的アゴニストは、この系において少なくとも100、150、200、250、300、400、500、1000、2000、3000、5000、7000、10,000、15,000、20,000、または50,000のR0/RG比を有し得る。前記R0/RG比は、対照アゴニストの少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、25、50、75、または100倍であり得る。
【0035】
「R0選択的アゴニスト」とは、対照アゴニスト(たとえば内因性アゴニスト)と比較して、受容体のR0形態に比べて受容体のRG形態に低い結合を示すアゴニストである。受容体選択性は、各々の受容体形態の間の結合定数の比、たとえばR0/RG比として表すことができ、この比率の低下はR0形態へのより強い結合を指し示す。図26Aおよび26Bに示すように、COS-7細胞膜上で発現されるヒトPTH受容体に結合するとき、PTH(1〜34)のR0/RG比は67であり、相対的によりRG選択的なPTHrP(1〜36)は260である。R0選択的アゴニストは、この系において60、50、40、30、25、20、25、10、5、2、1、0未満のR0/RG比を有し得る。前記R0/RG比は、それゆえ、対照アゴニストの0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.08、0.05、0.03、0.01、0.008、0.005、0.003、または0.001倍未満であり得る。
【0036】
GPCRの「内因性アゴニスト」とは、生物によって産生される化合物、またはその化合物の合成表現型模写、すなわち内因性アゴニストと同じ薬理活性を有する化合物を意味する。たとえば、天然PTHペプチドは1〜84、PTHrPは約1〜140アミノ酸である;これらのリガンドの表現型模写は、それぞれPTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)を含む。内因性アゴニストは、GPCRの正常な生理的活性化に関与する、またはGPCRの正常な生理的活性化を調節する。一部のGPCRは複数の内因性アゴニストを有する(たとえば、PTHRに対する内因性アゴニストはPTHおよびPTHrPを含む);本発明の目的のため、候補化合物が短時間作用性であるかまたは長時間作用性であるかを決定するために、任意の内因性アゴニストを使用し得る。
【0037】
「ペプチド」または「ポリペプチド」とは、少なくとも4、6、10、25、50、100、150、200、500、または1000アミノ酸のアミノ酸鎖を意味する。
【0038】
ポリペプチドの「フラグメント」とは、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、または35アミノ酸長の配列の一部を意味する。
【0039】
「対象」とは、ヒトまたは非ヒト動物(たとえば哺乳動物)のいずれかを意味する。
【0040】
「治療するのに十分な量」とは、疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減する、予防する、または排除するのに十分な量を意味する。
【0041】
「精製ポリペプチド」または「単離ポリペプチド」とは、他の成分から分離されたポリペプチドを意味する。典型的には、ポリペプチドは、他の成分を少なくとも30重量%含まないとき、実質的に純粋である。ある種の態様では、調製物は、他の成分を重量比で少なくとも50%、60%、75%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%含まない。精製ポリペプチドは、たとえば、天然供給源からの抽出によって;そのようなポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドの発現によって;または前記ポリペプチドを化学合成することによって入手し得る。純度は、任意の適切な方法によって、たとえばカラムクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、またはHPLC分析によって測定することができる。
【0042】
「生物学的に活性」とは、化合物または組成物(たとえば本明細書で述べるポリペプチド)が、細胞または動物(たとえばヒトまたは非ヒト哺乳動物)に投与されたとき少なくとも1つの生物学的に有意な作用を及ぼすことを意味する。PTH、PTHrP、およびその類似体(たとえば本明細書で述べるもの)の生物活性は、受容体結合、cAMPもしくはIP3産生、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、ホスホリパーゼC、ホスホリパーゼD、およびホスホリパーゼA2の活性化、細胞内、血漿中、または尿中のカルシウムまたはリン酸レベルの変化(たとえば上昇または低下)、ならびにインビボまたはインビトロでの骨代謝または異化作用の変化を含む。本発明の生物活性ペプチド(たとえば本明細書で述べる任意のペプチド)は、たとえば、適切な対照(たとえば野生型ペプチドまたはPTH(1〜34)もしくはPTHrP(1〜36)などのその表現型模写)と比較して任意の生物活性の上昇(たとえば少なくとも5%、10%、25%、50%、100%、500%、1000%、10,000%)または低下(たとえば95%、90%、75%、50%、25%、10%、5%、1%、0.1%、0.01%、または0.001%)を示す。
【0043】
「実質的に同一」とは、たとえば以下で述べる方法を用いて、最適に整列したとき、第二の核酸またはアミノ酸配列、たとえばPTHもしくはPTHrP配列またはそのフラグメントと少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の配列同一性を共有する核酸配列またはアミノ酸配列を意味する。「実質的同一性」は、完全長配列、エピトープまたは免疫原性ペプチド、機能的ドメイン、コードおよび/または調節配列、エクソン、イントロン、プロモーター、およびゲノム配列などの、配列の様々な型および長さを指すために使用され得る。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間の同一性パーセントは、当技術分野の技術範囲内の様々な方法で、たとえばSmith Waterman Alignment(Smith et al., J. Mol. Biol. 147:195-7(1981)); GeneMatcher Plus(商標)、Schwarz and Dayhof(1979)Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhof, M. O., Ed pp 353-358に組み込まれている「Best Fit」(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482-489(1981)); BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool;(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215: 403-10(1990))、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウエアを使用して決定される。加えて、当業者は、比較する配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメータを決定することができる。一般に、タンパク質に関しては、比較配列の長さは、少なくとも6または8アミノ酸、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、40、50、60、70、80、90、100、125、150、200、250、300、350、400、または500アミノ酸またはそれ以上からタンパク質の全長までである。核酸に関しては、比較配列の長さは、一般に少なくとも18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、48、51、54、57、60、63、66、69、72、75、78、81、84、87、90、93、96、99、102、105、108、111、125、150、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、800、900、1000、1100、1200、または少なくとも1500ヌクレオチドまたはそれ以上から核酸分子の全長までである。配列同一性を決定するためにDNA配列をRNA配列に対して比較するとき、チミンヌクレオチドがウラシルヌクレオチドと等価であることは理解される。保存的置換は、典型的には以下の群の中での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0044】
「かさ高いアミノ酸」とは、100Daを超える(たとえば125、150、175、200、225、250、300、または400を超える)分子量を有する任意のアミノ酸を意味する。各々のコードアミノ酸の分子量は以下のとおりである。

【0045】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1A〜1Cは、ヒトPTH受容体(PTHR)からのPTHおよびPTHrP類似体の解離およびGTPγSの作用を示すグラフである。放射性リガンド125I-[Nle8,21, Tyr34]rPTH(1〜34)NH2(図1A)、125I-[Tyr36]PTHrP(1〜36)NH2(図1B)、および125I-[Ile5, Tyr36]PTHrP(1〜36)NH2(図1C)を、HKRK-B7細胞から調製した膜内のヒトPTHRに90分間前結合させた;次に、単独で(黒い丸)またはGTPγSと共に(5×10-5M、白い丸)添加した、過剰の非標識類似体(5×10-7M)の添加によって解離を開始させた(t=0)。各々の時点で、反応チューブからアリコートを取り、結合放射能を遊離放射能から分離するため直ちに96穴真空ろ過プレートを使用した急速真空ろ過に供した。プレインキュベーションおよび解離相の間、非標識リガンド(5×10-7M)を含むチューブにおいて非特異的結合を測定した。各時点での特異的結合放射能(SB)を、次に、t=0で認められた特異的結合のパーセントとして表した。4つ(図1A)、5つ(図1B)、または3つ(図1C)の実験からの集合データを示す。曲線は、2相(図1Aおよび1B)または単相(図1C)の指数減衰式を用いてデータに適合させた。
【図2】図2Aおよび2Bは、ヒトおよびラットPTHRへのPTHおよびPTHrP類似体結合のGTPγS感受性を示すグラフである。HKRK-B7(図2A)またはROS 17/2.8細胞(図2B)から調製した膜内のPTHRへの放射性リガンド類似体の結合を、様々な濃度のGTPγSの不在下または存在下で平衡に近い条件下で評価した。データは、GTPγS不在下で特異的に結合した(SB)放射能のパーセントとして表している。図2Aのデータは、各々2回ずつ実施した、3つ(PTH(1〜34))または5つ(PTHrP(1〜36)類似体)の実験からの平均値(±s.e.m.)であり、図2Bのデータは6つの実験からの平均値である。試験した放射性リガンドは、125I-[Nle8,21, Tyr34]PTH(1〜34)NH2;[Tyr36]PTHrP(1〜36)NH2;[Ile5, Tyr36]PTHrP(1〜36)NH2および[Aib1,3, Nle8, Gln10, Har11, Ala12, Trp14, Tyr15]hPTH(1〜15)NH2であった。
【図3】図3A〜3Dは、hPTHRのGタンパク質共役および非Gタンパク質共役立体配座へのPTHおよびPTHrP類似体の結合を示すグラフである。Gタンパク質共役PTHR立体配座(RG)および非Gタンパク質共役PTHR立体配座(R0)への非標識PTHおよびPTHrP類似体の結合を、一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞から調製した膜を使用する競合法によって評価した。RGへの結合を評価するため、細胞をhPTHRおよびネガティブドミナントGαサブユニット(GαND)で共トランスフェクトし、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)NH2をトレーサ放射性リガンドとして使用した。R0への結合を評価するため、細胞をhPTHR単独でトランスフェクトし、125I-[Nle8,21,Tyr34]rPTH(1〜34)NH2をトレーサ放射性リガンドとして使用して、GTPγSの存在下で結合反応を実施した。使用した非標識リガンドは、[Nle8,21, Tyr34]rPTH(1〜34)NH2(図3A);[Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2(図3B);[His5, Nle8,21, Tyr34]rPTH(1〜34)NH2(図3C);および[Ile5, Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2(図3D)であった。各々のリガンドは比較的高い親和性でRGに結合するが、PTHrP(1〜36)、およびHis5-PTH(1〜34)は、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)よりもかなり低い親和性でR0に結合し、それゆえより強いRG選択性を示す。データは、各々2回ずつ実施した3〜7つの実験の平均値(±s.e.m.)である(表5も参照のこと)。
【図4】図4A〜4Dは、HEK-293細胞中のPTHRへのリガンド結合の蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)分析を示すグラフである。第3細胞内ループにシアン蛍光タンパク質(CFP)およびカルボキシ末端尾部に黄色蛍光タンパク質(YFP)を含むPTHR構築物で安定にトランスフェクトしたHEK-293細胞(PTHR-cam)を、PTHRへのリガンド結合およびPTHRからの解離の動態を評価するために使用した。PTHR-camを用いて、紫外光(λexc=436nm)によるCFPの励起はYFPへの分子内FRETを生じさせ、これは、YFP(λemm=535nm)からの発光増加およびCFP(λemm=480nm)からの発光減少として観察できる。このFRETシグナルは基底状態の受容体で生じ、アゴニスト結合時には減少する。各々のパネルにおいて、トレースは、緩衝液単独またはPTHペプチドリガンドを含む緩衝液で灌流した細胞において経時的に得られた蛍光シグナルの比率(チャネルスピルオーバー(channel spill-over)に対して基準化した、FYFP(535)/FCFP(480))を示す(ペプチド添加の時点を各トレースの上部の黒い棒で示す)。使用したリガンドは、hPTH(1〜34)(図4A);[Aib1,3, Gln10, Har11, Ala12, Trp14]rPTH(1〜14)NH2(図4B);[Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2(図4C);および[Ile5, Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2(図4D)であった。PTHrP(1〜36)によって誘導されるFRETシグナルの開始は、その他の3つの類似体によって誘導されるものより遅かった。PTH(1〜14)およびPTHrP(1〜36)類似体によって誘導されるシグナルはリガンド除去後に減衰したが、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)類似体によって誘導されるシグナルは安定なままであった。データは1つの実験からであり、少なくとも3つの他の実験で同じ結果を得た。
【図5】図5Aおよび5Bは、ヒトPTHRを安定に発現する細胞においてPTHおよびPTHrP類似体によって誘導されるcAMPシグナル伝達応答の期間を示すグラフである。HKRK-B7細胞(950,000hPTHR/細胞)においてPTHrP(1〜36)またはIle5-PTHrP(1〜36)によって誘導されるcAMP応答の期間を経時変化実験によって評価した(図5A)。細胞を緩衝液単独(基礎)またはリガンド(100nM)を含む緩衝液のいずれかで10分間前処理し、t=0の時点で細胞を洗浄し、示されている時間緩衝液中でインキュベートして(ウォッシュアウト期)、3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)で5分間処理し、その後細胞内cAMPに関して評価した。同時にペプチドおよびIBMXと共に細胞をインキュベートし、ウォッシュアウト期を置かずに評価した各々のペプチドに対する最大応答は、PTHrP(1〜36)およびIle5-PTHrP(1〜36)に関してそれぞれ185116および198118pmol/ウェルであった。リガンドなしでIBMXによって処理した細胞におけるcAMPレベルは2.0±0.3pmol/ウェルであった。データは、各々2回ずつ実施した3つの実験の平均値(±s.e.m.)である。これらの実験では、PTH(1〜34)も分析し、各時点で、PTHrP(1〜36)によって誘導されるものと差がない応答を誘導した。類似体を、リガンドのウォッシュアウトの60分後の単一時点でHKRK-B64細胞(90,000hPTHR/細胞)において同様に評価した(図5B)。各々のペプチドについて、データは、リガンドとIBMXで同時に10分間処理し、ウォッシュアウト期を省いた細胞において生じた、最大cAMP応答(横のパネルに示している)のパーセンタイルとして表している。データは、各々3回ずつ実施した4つの実験の平均値(±s.e.m.)である。アスタリスクは、ペアになった応答(paired responses)の統計解析:PTHrP(l〜36)対 Ile5-PTHrP(l〜36)(図5A)を示すか、または括弧で示されている通りである(図5B):、P≦0.05;**、P≦0.003。
【図6】図6A〜6Dは、hPTHRのGタンパク質共役および非Gタンパク質共役立体配座へのPTHおよびPTHrP類似体の結合を示すグラフである。結合反応は、図3A〜3Dに関して前述したように実施した。使用した非標識リガンドは、hPTH(1〜34)NH2(図6A);[Aib1,3, Nle8, Gln10, Har11, Ala12, Trp14, Tyr15]rPTH(1〜15)NH2(図6B);[His5]hPTH(1〜34)NH2(図6C);hPTHrP(1〜36)NH2(図6D)であった。データは、各々2回ずつ実施した3つまたは5つの実験の平均値(±s.e.m.)である(表6)。
【図7】図7Aおよび7Bは、類似体のシグナル伝達能の用量反応分析を示す。cAMP形成を刺激するPTHおよびPTHrPリガンドの能力をHKRK-B64細胞において評価した(図7A)。細胞を、室温にてIBMXの存在下で様々な濃度のリガンドで30分間処理した。リガンドがイノシトールリン酸(IP)の産生を刺激する能力を、hPTHRで一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において評価した(図7B)。細胞を室温にて様々な濃度のリガンドで30分間処理した。使用したリガンドは、[Nle8,21, Tyr34]rPTH(1〜34)NH2;[His5, Nle8,21, Tyr34]rPTH(1〜34)NH2;[Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2および[Ile5, Tyr36]hPTHrP(1〜36)NH2であった。データは、各々2回ずつ実施した4つ(図7A)または5つ(図7B)の実験の平均値(±s.e.m.)である。EC50およびEmax値を表6に報告しており、H5-PTH(l〜34)およびPTH(1〜34)類似体についてのcAMP EC50値(P=0.02)を除き、ペプチドの間で有意な差はなかった。
【図8】ラット細胞におけるcAMPの用量反応を示すグラフである。ラット骨芽細胞をhPTH(1〜28)NH2; Ala1,12, Aib3, Gln10, Har11, Trp14, Arg19-hPTH(1〜28)NH2;hPTH(1〜34)NH2、またはr(ラット)PTH(1〜34)NH2で処理した。その結果形成された細胞内cAMPを放射免疫検定法によって定量した。EC50値をグラフの下に列記している。曲線の当てはめは非線形回帰分析によって得た。
【図9】図9A〜9Dは、PTH類似体で処置したマウスにおけるインビボでの血漿中のcAMPレベルを示すグラフである。野生型マウスに、ビヒクル(0.9% NaCl/0.05% Tween-20)、または10〜1,000nmolペプチド/kg体重の用量レベルのPTHペプチドを含むビヒクルを皮下注射し、注射後、示されている時点で、尾静脈から血液を採取し、生じた血漿中のcAMPの量を放射免疫検定法によって定量した。各々の曲線は、グラフの凡例に示されているように、規定された濃度のペプチドに対応する。血漿中のcAMP濃度をピコモル/μl血漿としてプロットしている。データは、50nmol/kgで、Ala1,12, Aib3, Gln10, Har11, Trp14, Arg19-hPTH(1〜28)NH2(Aib-50、図9A);およびhPTH(1〜34)NH2((1〜34)-50、図9B)は血漿中cAMP濃度の同等の上昇を生じさせるが、同じ上昇を達成するには1,000nmol/kgのhPTH(l〜28)NH2が必要であることを示す((1〜28)-1000、図9C、図9Dも参照されたい)。
【図10】図10Aおよび10Bは、PTH類似体で処置したマウスにおけるインビボでの血漿中リン酸レベルおよび血清中イオン化カルシウムレベルを示すグラフである。野生型マウスに、ビヒクル(0.9% NaCl/0.05% Tween-20)、またはAla1,12, Aib3, Gln10, Har11, Trp14, Arg19-hPTH(1〜28)NH2を含むビヒクル、または50nmol/kg体重の用量レベルのhPTH(l〜34)NH2、または1,000nmol/kg体重の用量レベルのhPTH(l〜28)NH2を皮下注射し、示されている時点で血漿中リン酸(図10A)および血清中イオン化カルシウム(図10B)の濃度を測定した。血清中イオン化カルシウム濃度は、Chiron Diagnostics Model 634Ca++/pH分析器を用いて測定した。Aのデータは、各々の注射条件について6匹のマウスを使用した(n=6)1つの実験の平均値(±s.e.m.)である;他の3つの実験においても同様の結果を得た。Bのデータは、各注射条件について3匹のマウスを使用して(n=3)それぞれ実施した、2つの実験の平均値(±s.e.m.)である。
【図11】PTH(1〜34)、PTHrP(1〜36)および長時間作用性PTH(1〜28)類似体、Ala1,12, Aib3, Gln10, Har11, Trp14, Arg19-hPTH(1〜28)NH2についてのフクロネズミ腎細胞におけるリン酸取込みの阻害の経時変化を示すグラフである。各時点のデータを、ビヒクル単独で同じ時間処理した細胞の溶解産物における32P放射能の量のパーセンタイルとしてプロットしている;これらの対照のレベルは、5,864±338cpm(12時間目)から3,429±224cpm(0時間目)の範囲であった。データは、各々2回ずつ実施した2つの実験の平均値(±s.e.m.)である。
【図12】正常ラットにおけるPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の薬物動態プロフィールを示す。ペプチドの血漿中濃度を放射免疫検定法(RIA)によって測定した。PTHrP(1〜36)におけるHis5→Ile置換は、薬物動態プロフィールを有意に変化させなかった。
【図13】図13A〜13Cは、正常ラットにおけるPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の作用を示す一組のグラフである。図13Aは、正常ラットにおけるPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の一過性血中カルシウム上昇作用を示す。R0に対する親和性を9倍上昇させた(挿入された表参照)、PTHrP(1〜36)におけるHis5→Ile置換は、より持続的な血中カルシウム上昇作用を生じさせた。図13Bおよび13Cは、これらのリガンドの各々で処理した細胞における遅延(60分目;図13B)および最大(図13C)cAMP応答を示す。
【図14】図14A〜14Cは、Mc-PTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)(Mc=Ala1,3,12, Gln10, Arg11, Trp14, Arg19)についてのTPTXラットにおける持続的な血中カルシウム上昇作用(図14A)およびROS 17/2.8細胞における持続的なcAMPシグナル伝達(図14Bおよび14C)を示すグラフである。図14Bおよび14Cは、hPTH(1〜34)またはMc-hPTH(1〜14)/PTHrP(15-36)で処理した細胞における遅延(60分目;図14B)および最大(図14C)cAMP応答を示す。挿入された表は、インビトロで測定した、R0およびRG受容体立体配座の類似体に対する結合親和性を示す。
【図15】図15Aおよび15Bは、正常ラットにおける修飾されたPTH/PTHrPハイブリッドの一過性血中カルシウム上昇作用を示すグラフである。持続的な血中カルシウム上昇作用がMc-PTH(1〜11)/PTHrP(15〜36)およびMc-PTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)に関して認められる。挿入された表は、インビトロで測定した、R0およびRG受容体立体配座の類似体に対する結合親和性を示す。
【図16】図16A〜16Cは、正常ラットにおける、Ile5→HisおよびArg19→Glu置換を含むまたは含まないMc修飾PTH(1〜34)類似体の血中カルシウム上昇作用(図16A)およびROS 17/2.8細胞における遅延および最大cAMP応答(図16Bおよび16C)を示すグラフである。挿入された表は、インビトロで測定した、R0およびRG受容体立体配座の類似体に対する結合親和性を示す。Ile5→HisおよびArg19→Glu置換は、R0に対する親和性を低下させ、インビトロでのcAMPシグナル伝達の期間およびインビボでの血中カルシウム上昇作用を低下させる。
【図17】図17A〜17Cは、正常ラットにおけるIle5→HisおよびArg19→Glu置換を含まないMc修飾PTH(1〜34)/PTHrP(1〜36)類似体の一過性の血中カルシウム上昇作用ならびにROS 17/2.8細胞における遅延および最大cAMP応答(図17Bおよび17C)を示すグラフである。挿入された表は、インビトロで測定した、R0およびRG受容体立体配座の類似体に対する結合親和性を示す。Ile5→HisおよびArg19→Glu置換は、R0に対する親和性を低下させ、インビトロでのcAMPシグナル伝達の期間およびインビボでの血中カルシウム上昇作用を低下させる。
【図18】図18Aおよび18Bは、正常ラット(図18A)およびROS 17/2.8細胞(図18B)におけるTrp23→Ala置換を含むまたは含まないE19, Mc修飾PTH(1〜34)類似体の血中カルシウム上昇作用およびcAMP作用を示すグラフである。挿入された表は、インビトロで測定した、R0およびRG受容体立体配座の類似体に対する結合親和性を示す。Trp23→Ala置換は、R0に対する[E19, Mc]PTH(1〜34)の結合親和性を10倍低下させ、細胞におけるcAMPシグナル伝達の期間を低下させ、そしてインビボでのこのペプチドの高カルシウム血作用を低下させた。
【図19】図19Aおよび19Bは、ヒトPTH1受容体を発現する細胞における天然PTH/PTHrPハイブリッド類似体のcAMPシグナル伝達を示すグラフである。類似体は、急性用量反応アッセイにおいて同様の効力を示す。
【図20】図20Aおよび20Bは、ヒトPTH1受容体に関するMc修飾PTH/PTHrPハイブリッド類似体のcAMPシグナル伝達を示すグラフである。類似体は、急性用量反応アッセイにおいて同様の効力を示す。
【図21】図21Aおよび21Bは、hPTH(1〜34)NH2、hPTH(1〜28)NH2および[A1, Aib3, M]-PTH(1〜28)NH2([A1,12, Aib3, Q10, ホモアルギニン11, W14, R19]hPTH(1〜28)NH2)の、ROS 17/2.8細胞における急性(図21A)および遅延(図21B)cAMP分析を示すグラフである。図21Aでは、細胞をIBMXの存在下でペプチドと共に10分間インキュベートし、cAMPを測定した。EC50値は、それぞれ0.32、7.6、および0.33nMであった。図21Bでは、細胞を10-7MのhPTH(1〜34)、[A1,Aib3,M]-PTH(1〜28)、または10-6MのhPTH(1〜28)で10分間処理し、3回洗浄して、単独の緩衝液中で、示されている時間インキュベートし、最後に5分間IBMXで処理して、その後cAMPを測定した。図21Bのデータは、細胞をIBMXの存在下でリガンドと共に10分間インキュベートすることによって測定した(リガンドのウォッシュアウトなし)、各々のリガンドについて認められた最大応答のパーセントとして表している。これらの値は、それぞれ67±6;;68±3;および71±1pmol/ウェルであった。基礎(ビヒクル)cAMP値は3.7±0.4pmol/ウェルであった。
【図22】図22A〜22Cは、活性読み出しのためにPTHRでトランスフェクトした(図22Aおよび22C)COS-7細胞を用いたバイオアッセイ手順によって評価した、マウスに注射したPTHリガンドの薬物動態分析を示すグラフである。pCDNA1ベクターでトランスフェクトしたCOS-7細胞を対照として用いた(図22B)。マウスにビヒクル、hPTH(1〜34)(50nmol/kg)、hPTH(1〜28)(1,000nmol/kg)、または[A1,Aib3,M]-PTH(1〜28)(50nmol/kg)を注射し、注射後、示されている時点で尾静脈から血液を採取して、EDTAおよびプロテイナーゼ阻害剤の存在下で血漿を調製し、血漿を50倍希釈して、希釈した試料45μlを96穴プレート中のCOS細胞に適用した。次に、15分間のインキュベーション後、COS細胞における細胞内cAMPを測定した。各々のトレースは、同じ処置を行った6匹のマウスからのデータ(平均+SE)を示す。
【図23】マウスにおける血中イオン化カルシウムの変化を示すグラフである。注射後の各時点での、hPTH(1〜34)(50nmol/kg)、hPTH(1〜28)(1,000nmol/kg)、または[A1,Aib3,M]-PTH(1〜28)(50nmol/kg)で処置したマウスにおける血中イオン化カルシウム(iCa++)の変化を示す(図22A〜22Cの試験と同時に実施した試験)。データは、注射前(プレ)に各々のマウスから採取した血液中のiCa++に対して基準化している。各々のトレースは、同じ処置を行った6匹のマウスからのデータ(平均+SE)を示す。
【図24】図24Aおよび24Bは、PTHリガンドによる長期処置後のマウスにおける骨形成および骨吸収マーカーの変化を示すグラフである。hPTH(1〜34)(50nmol/kg)、および[A1,Aib3,M]-PTH(1〜28)(50nmol/kg)で処置したマウスにおける骨形成マーカーであるオステオカルシン(図24A)および骨吸収マーカーであるコラーゲンI型C末端フラグメント(CTX)(図24B)の血清中レベルを示す。マーカーは、Mouse Osteocalcin EIAキット(Biomedical Technologies)およびRatLaps CTX ELISA(Nordic Bioscience)キットを用いて測定した。各々のトレースは、同じ処置を行った6匹のマウスからのデータ(平均+SE)を示す。
【図25】HKRK-B7細胞中のヒトPTH受容体へのPTH/PTHrPハイブリッド類似体のcAMPシグナル伝達能を示す表である。
【図26】図26Aは、COS-7細胞膜において発現されるヒトPTH受容体とのPTH/PTHrP類似体のR0およびRG結合の競合分析を示す表である。図26Bは、R0結合値によって分類した、図26Aと同じデータを示す表である。
【図27】図27A〜27Dは、PTHrP(1〜28)のアラニンスキャンおよび型置換を示すグラフである。PTHrP(1〜28)の15〜28領域内のアラニン置換のcAMP活性への影響を、尿細管LLCPK 1-B64細胞(図27A)およびROS 17/2.8(図27B)細胞において検査した。18、22、25および26位のアラニン置換は、少なくとも1つの細胞型における活性を上昇させた。これらの位置を様々なタイプのアミノ酸にさらに置換し、cAMP活性をLLCPK 1-B64細胞(図27C)またはSaOS-2細胞(図27D)において分析した。細胞を、IBMXの存在下で室温にて30分間、3×10-9Mの類似体で処理した。各々の類似体に対する応答を親(天然)PTHrP(1〜28)ペプチドに対する応答に基準化した。
【図28】図28Aおよび28Bは、PTHrP(1〜28)骨格内に置換を有するペプチドによるインビトロ(図28A)およびインビボ(図28B)でのcAMP活性を示すグラフである。SaOS細胞における代表的な修飾PTHrP(1〜28)類似体のcAMP活性の用量反応曲線を図28Aに示す。図28Bは、ビヒクル、PTHrP(1〜36)、PTHrP(1〜28)、A18, 22, L25, K26(AALK)-PTHrP(1〜28)またはE18, A22, L25, K26(EALK)-PTHrP(1〜28)(n=3)を静脈内注射したC57BL/6マウス(3ヶ月齢、雄性)からの、インビボでのcAMP誘導を示す。注射の10分後に血液を採取し、cAMPの血漿中レベルをRIAによって測定した。
【図29】図29Aおよび29Bは、マウスにおける血漿中cAMPおよびカルシウムへのR0およびRG選択的PTH類似体の作用を示すグラフである。図29Aおよび29Bは、ビヒクル、rPTH(1〜34)、M-PTH(1〜34)(M=A1, Aib3, Q10, Har11, A12, W14, R19)、またはE18, A22, L25, K26(EALK)-PTHrP(1〜30)(5nmol/kg;cAMPについてはn=7、カルシウムについてはn=4)のいずれかを静脈内投与したマウス(C57BL/6、雄性、3ヶ月齢)における血漿中cAMP濃度を示す。図29Bは、同じペプチドで処置したマウスにおけるイオン化カルシウムレベルを示す。カルシウム実験では、注射の前、注射の1、2、4および6時間後に血液を採取し、Ca++/pH分析器を用いてイオン化カルシウムを測定した。
【図30】図30A〜30Fは、マウスにおける血漿骨マーカーへのPTH類似体の作用を示すグラフである。マウス(C57BL/6、雄性、3ヶ月齢)に、ビヒクル、rPTH(l〜34)、M-PTH(1〜34)、または(EALK)-PTHrP(1〜30)(5nmol/kg;n=7群)のいずれかを14日間毎日静脈内注射した。骨代謝回転のマーカー(PINP、CTXおよびオステオカルシン)を6日目(それぞれ図3OA、3OC、および3OE)ならびに13日目(それぞれ図30B、30D、および30F)に血液中でELISAによって評価した。
【図31】マウスにおける海綿骨構造および皮質骨構造への2週間毎日実施したR0およびRGリガンドによる処置の影響を示す一連の画像である。マウス(C57BL/6、雄性、3ヶ月齢)を、ビヒクル、rPTH(1〜34)、M-PTH(1〜34)、またはE18, A22, L25, K26(EALK)-PTHrP(1〜30)(5nmol/kg;n=7群)のいずれかで14日間毎日処置し(静脈内)、大腿骨をμCTによって分析した。
【図32】図32Aおよび32Bは、MC3T3-E1細胞においてEALK-PTHrP(1〜31)の29〜31領域(図32A)およびEALK-PTHrP(1〜34)の29〜33領域(図32B)内のアミノ酸置換がcAMP活性の誘導に及ぼす影響を示すグラフである。
【図33】TPTXラットにおけるゼロ時間目から24時間目までのPTH(1〜34)およびM-PTH(l〜14)/PTHrP(15〜36)(SP-PTH)の血中カルシウム上昇作用を示すグラフである。
【図34】TPTXラットにおけるSP-PTHまたはPTH(1〜34)の単回注射後0〜6時間目の尿中カルシウムを示すグラフである。
【図35】TPTXラットにおけるPTH(1〜34)およびSP-PTHの血中リン低下作用を示すグラフである。
【図36】TPTXラットにおけるSP-PTHまたはPTH(1〜34)の単回注射後0〜6時間目の尿中リンを示すグラフである。
【図37】Mc-PTH(1〜34)、[A1,3, A23, Q10, R11]-hPTH(1〜34)、[A1,3, A23]-hPTH(1〜34)、および[A18, A22, L25, K26]-PTHrP(1〜28)についてのcAMPシグナル伝達能の用量反応分析を示すグラフである。比較のため、hPTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)も示している。これらのペプチドがcAMP形成を刺激する能力を、HKRK-B7細胞におけるヒトPTH1受容体に関して評価した。これらのPTH類似体はhPTH(1〜34)と同等のcAMPシグナル伝達を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
詳細な説明
本発明者らは、(i)GPCRリガンドが、Gタンパク質に共役していないとき(R0状態)のGPCRに結合する能力と(ii)リガンドが受容体を活性化する時間の長さとの間の相関を発見した。特に、PTHまたはPTHrPと比較して、リガンドが、Gタンパク質に共役していない(R0形態)例示的なGPCRであるPTH/PTHrP受容体(PTHR)とインビトロで相互作用する能力の高さは、インビボでより持続的な作用を及ぼすその能力と密接に相関する。逆もまた当てはまり、すなわちGPCRのGタンパク質共役形態(RG形態)に選択的なリガンドは、天然リガンドに比べてより短い作用期間を有する。この発見は、化合物がGPCRに対して長時間作用性のインビボ活性または短時間作用性のインビボ活性のいずれを有するかを決定する新規手段のための基礎を提供する。これに基づき、本明細書で述べる方法を用いて治療的に望ましい特性を有するリガンド(たとえば長時間作用性または短時間作用性リガンド)を同定することができる。長時間作用性または短時間作用性活性を有する例示的なリガンドを本明細書で述べる。
【0048】
治療する疾患に依存して、長時間作用性または短時間作用性治療が望ましい。ヒトに注射したPTHrP(1〜36)を用いた最近の試験は、骨塩量密度が、骨粗しょう症のための標準治療であるPTH(1〜34)とほぼ同じ程度に増加するが、等しい用量のPTH(1〜34)に関して予想される骨吸収応答を誘導しないことを示す(Horwitz et al., J. Endocrinol. Metab. 88:569-575(2003))。急性安全性試験により、PTHrP(1〜36)が、血中カルシウム上昇作用を生じさせることなくPTH(1〜34)の通常用量のほぼ20倍高い用量で投与できることが示されたので、このグループからの関連する試験は、その相違が単に薬物動態だけに基づく可能性は低いことを示唆する(Horwitz et al., Osteoporosis Int. 17:225-230(2006))。PTHrP(1〜36)およびPTH(1〜34)はいずれもPTHRのRG形態に対して同様の受容体結合を示すが、PTHrPがPTHと比較してPTHRのR0形態により弱く結合し、対応してインビボでより短い活性を示すという本発明者らの発見は、その相違を説明することができる。従って、本発明者らは、PTHRのRG選択的(すなわち比較的低いR0親和性を有する)リガンドは骨粗しょう症の治療のために有用であると考える。
【0049】
他の状況では、より長い作用性リガンドが望ましい可能性がある。たとえば、PTHrPは、l,25,(OH)2ビタミンDの腎産生を刺激するうえでPTH(1〜34)ほど有効ではなく(Horwitz et al., J. Bone Mineral. Res. 20:1792-1803(2005))、長時間作用性PTHRシグナル伝達が望ましい疾患を治療するときにはPTH(1〜34)がより効果的であり得ることを示唆する。そのような疾患は、カルシウム感知受容体における突然変異を活性化することによって引き起こされる副甲状腺機能低下症の特定形態を包含する。現在、この疾患を治療するにはPTH(1〜34)の1日2回の注射が必要である(Winer et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 88:4214-4220(2003))。本発明のスクリーニング方法を使用することにより、そのような疾患の治療において極めて有用であることが証明でき、薬剤のより低い頻度での投与を可能にし得る、より長期作用性のPTHRリガンドを同定することが可能となる。
【0050】
PTH(1〜34)は、R0に安定に結合する能力がより高いことにより、標的骨および腎細胞においてPTHrPよりも累積的により大きなシグナル伝達応答を誘導することができると考えられ、R0選択性のこの相違は、次に、破骨細胞による骨吸収を刺激することに関与する因子(RANKリガンド)の骨芽細胞における誘導、および近位尿細管細胞における1-α-ヒドロキシラーゼmRNA合成の刺激などの、生物学的応答の相違を導く。これらの考察によれば、特に高い選択性でRG(R0と比較して)PTHR立体配座に結合するリガンドは、骨形成応答を刺激するうえで極めて有効であり、それゆえ骨粗しょう症を治療するために有用であり得る。
【0051】
従って、2つのリガンドは異なる受容体立体配座を選択的に安定化する。現在、所与の受容体に対する構造的に多様なリガンドが、異なる受容体立体配座に対して変化した選択性を示し、それゆえ異なる生物学的作用を生じさせる能力に関して、GPCRの分野で多くの議論が為されている(Kenakin, T. Sci STKE 342:pe29(2006))。本明細書で実施する動的および平衡結合アッセイの結果は、PTH(1〜34)とPTHrP(1〜36)は同様の親和性でGタンパク質共役PTHR立体配座であるRGに結合するが、PTH(1〜34)は非Gタンパク質共役立体配座であるR0に結合する能力がより大きいことを示唆し、前記R0立体配座は、GTPγS(5,14)の存在下でPTHrP(1〜36)よりも高い親和性でリガンドに結合する能力を有する受容体立体配座と定義される。
【0052】
本明細書で示す遅延型cAMPアッセイは、異なるPTHR立体配座に対する選択性の変化が、PTHR発現細胞におけるシグナル伝達応答の変化を導き得ることを明らかにする。それゆえ、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)は、PTHR発現細胞においてより持続的で、累積的により大きなcAMPシグナル伝達応答を誘導した。R0を安定化する能力もまたPTHrP(1〜36)よりも大きい、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)は、LR0複合体とヘテロ三量体Gタンパク質との最終的な共役(LR0-LRG)および対応するシグナル伝達カスケードの活性化によってより持続的なシグナル伝達応答を導くことができる。安定なLR0結合のもう1つの潜在的な機構的結果は、それによってLR0複合体がGタンパク質共役、活性化および放出の連続的なサイクル後に保存される、多回の(触媒的)Gタンパク質活性化を許容し得ることである(Rodbel, M. Adv. Enzyme Regul, 37: 427-435 (1997); Heck and Hofmann, J. Biol. Chem. 276: 10000-10009(2001))。
【0053】
PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)リガンドを、単一時点で細胞において実施した従来の用量反応的なcAMPおよびイノシトールリン酸刺激アッセイで評価したとき、PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)リガンドがcAMPおよびイノシトールリン酸の応答を刺激する効力の差は、たとえあったとしてもほとんど検出されなかった(図7)。これらの結果は、2つのリガンドが同じかまたは類似の機構を介してPTHRと相互作用するという見解と一致する。したがって、時間遅延型cAMPアッセイにより、経時的な累積シグナル放出量の差として明らかな、2つのリガンドの第二メッセンジャーシグナル伝達特性におけるこれまで認識されていなかった相違が同定された。アゴニストによって活性化されたPTHRが、受容体のリン酸化、β-アレスチン動員、および受容体のインターナリゼーションに関与する脱感作過程に供されることは公知であるが(Biselo, A. et al., (2002); Tawfeek et al., Mol. Endocrinol. (2002); Castro et al., Endocrinology 143:3854-3865 (2002); Chauvin et al., Mol. Endocrinol. 16:2720-2732 (2002))、R0立体配座の受容体は、実際は、少なくともGタンパク質共役に関しては機能的に不活性であるので、そのような過程がR0立体配座の受容体に関して機能するとは予想されない。それにもかかわらず、図5の本発明者らの遅延型cAMPアッセイにおいて認められる作用が、ある程度まで、そのような受容体脱感作機構へのリガンドの示差的作用に関与する可能性は排除できない。
【0054】
一般に、安定なLR0結合能力は、標的受容体に比べて、低レベルのコグネイトヘテロ三量体Gタンパク質を発現する標的細胞におけるリガンドのシグナル伝達能を促進し得るまたは上昇させ得る。また、おそらくリガンド-受容体複合体に対して一次Gタンパク質よりも低い親和性を有する「二次」Gタンパク質への共役も促進し得る。PTHRに関しては、これは、各々がPTH(1〜34)に応答してPTHRによって活性化されることが示されている、Gαq/11、Gαi/0、Gα12/13への共役を含み得る。PTHrPは、R0に結合し(図3A〜3D)、遅延型cAMPシグナル伝達を活性化する(図5Aおよび5B)少なくともいくらかの能力を有するが、その結合はPTH(1〜34)の結合を下回る。実際、安定なLR0複合体を形成するある種の能力はクラスBのGPCRの内在特性であると考えられ、というのは、カルシトニン(Hilton et al., J. Endocrinol. 166:213-226(2002))、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(Hoare et al., Peptides 24: 1881-1897(2003))およびグルカゴン(Post et al., J. Biol. Chem. 267:25776-25785 (1992))に対する受容体を含む、これらのいくつかが、非加水分解性グアニンヌクレオチド類似体の存在下でそれらのコグネイトペプチドリガンドと安定な複合体を形成することが示されているからである。
【0055】
本明細書で述べる知見はまた、通常の生理学においてPTHおよびPTHrPが機能する機構にも関連し得る。PTHは、内分泌性ホルモンとして、その分泌部位(上皮小体)から遠位の標的細胞(骨および腎臓内の)に作用する。血清中のPTHの濃度は、Ca++レベルが変動すると共にわずかに変化するが、一般に、PTHがその受容体に結合する親和性を大きく下回る、低いピコモル範囲内にとどまる。共役していないR0立体配座の受容体にも安定に結合するPTHの能力は、リガンドの濃度のごくわずかな上昇に対しても確実に応答するのを助ける進化的適応であり得る。これに対し、PTHrPは、パラクリン因子として、それが産生される同じ組織内の細胞(たとえば発育中の長骨の成長板軟骨細胞)に作用する。そのような組織におけるPTHrPの濃度は直接には定量されていないが、分化細胞の区域にわたる、産生部位の近くで高い勾配を形成すると考えられる(Chen et al., J. Bone Miner. Res. 21:1 13-123(2006))。これらの細胞で起こる分化事象を制御するうえでのその役割に対する適応として、PTHrPは、比較的短命でより容易に時間制御されるシグナル伝達応答を誘導するために、一過性にのみ受容体と結合するように進化した可能性がある。
【0056】
Gタンパク質共役受容体
本発明は、任意のGタンパク質共役受容体を使用することができる。長時間作用性および短命のリガンドを本明細書で述べるように検定し、有用な治療候補物質を同定し得る。数百ものそのような受容体が当技術分野において公知である;たとえば、参照により本明細書に組み入れられる、Fredriksson et al., Mol. Pharmacol. 63: 1256-1272, 2003を参照されたい。この参考文献は、配列相同性と機能に基づいてヒトGPCRを特徴づけた。ヒトGPCRは5つのクラスに分類することができる:セクレチン、ロドプシン、グルタミン酸、frizzled/Tas2、および接着。あるいは、受容体はそれらのリガンドによって、たとえばペプチドホルモンまたは低分子(たとえば生体アミン)に分類し得る。他の分類スキームはA〜F分類を含み、クラスAはロドプシンに関連する受容体およびアドレナリン作用性受容体であり、クラスBはカルシトニンおよび副甲状腺ホルモン受容体に関連する受容体、クラスCは代謝調節型受容体に関連する受容体、そしてクラスD〜Fは真菌および古細菌において認められる受容体である。
【0057】
Fredriksson分類を用いて、セクレチン受容体は4つの主要な亜群を有する:CRHR/CALCRL、PTHR、GLPR/GCGR/GIPRおよびセクレチンと他の4つの受容体を含む亜群。セクレチン受容体は、PTHR、ならびにカルシトニン受容体(CALCR)、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン受容体(CRHR)、グルカゴン受容体(GCGR)、胃抑制ポリペプチド受容体(GIPR)、グルカゴン様ペプチド受容体(GLPR)、成長ホルモン放出ホルモン受容体(GHRHR)、下垂体アデニリルシクラーゼ活性化タンパク質(PACAP)、セクレチン受容体(SCTR)、および血管作用性小腸ペプチド受容体(VIPR)を包含する。
【0058】
接着受容体は、EGF様反復配列、ムチン様領域、および保存されたシステインリッチモチーフなどの、N末端に接着様モチーフを有する1または複数の機能的ドメインと融合したGPCR様の膜貫通領域を特徴とする。このファミリーの成員は、CELSR(EGF LAG 7回貫通G型受容体)、脳特異的血管新生阻害性受容体(BAI)、レクトメジン(lectomedin)受容体(LEC)およびEGF様モジュール含有受容体(EMR)を包含する。他の受容体は、CD97抗原受容体(CD97)およびEGF-TMVII-ラトロフィリン関連受容体(ETL)を含む。これらの受容体はまた、HE6(TMVIILN2)およびGPR56(TMVIIXNlまたはTMVIILN4)、ならびにGPR97およびGPR110〜GPR116と命名された、GPR56およびHE6に関連する最近発見された受容体の群を包含する。
【0059】
グルタミン酸受容体は、8つの代謝型グルタミン酸受容体(GRM)、2つのGABA受容体(たとえば、2つのスプライス変異体、aおよびbを有するGAB-AbR1、ならびにGAB-AbR2)、単一カルシウム感知受容体(CASR)、および味覚受容体と考えられている5つの受容体(TAS1)からなる。
【0060】
他のGPCRは、オピオイド受容体、ムスカリン様受容体、ドーパミン受容体、アドレナリン作用性受容体、cAMP受容体、オプシン受容体、アンギオテンシン受容体、セロトニン受容体、チロトロピン受容体、ゴナドトロピン受容体、サブスタンスK、サブスタンスPおよびサブスタンスR受容体、ならびにメラノコルチン受容体、代謝型グルタミン酸受容体を包含する。
【0061】
最大の群はロドプシン受容体ファミリーであり、このファミリーは少なくとも701のヒト受容体を含み、そのうち241は非嗅覚受容体である。この群の受容体は、様々なアセチルコリン(ムスカリン様)受容体、アドレナリン作用性受容体、ドーパミン受容体、ヒスタミン受容体、セロトニン受容体、およびオクトパミン受容体;ペプチド受容体、たとえばアンギオテンシン、ボンベシン、ブラジキニン、エンドセリン、インターロイキン8、ケモカイン、メラノコルチン、神経ペプチドY、ニューロテンシン、オピオイド、ソマトスタチン、タキキニン、トロンビン、バソプレッシン、ガラニン、プロテイナーゼ活性化受容体、オレキシン、およびケモカイン/走化性因子受容体;タンパク質ホルモン受容体、たとえばFSH、ルトロピン-絨毛性性腺刺激ホルモン、およびチロトロピン受容体;ロドプシン受容体;嗅覚受容体;プロスタノイド受容体;アデノシンおよびプリン受容体を含む、ヌクレオチド様受容体;カンナビス受容体;血小板活性化因子受容体;性腺刺激ホルモン放出ホルモン受容体;メラトニン受容体、リゾスフィンゴ脂質およびLPA(EDG)受容体、ならびに様々なオーファン受容体を包含する。
【0062】
候補化合物
任意のタイプまたは供給源の化合物を本発明のスクリーニング方法において使用し得る。たとえば、天然に存在する化学物質(たとえば化学物質ライブラリーからの)、ペプチド、修飾ペプチドホルモン、抗体、ナノボディ、キメラペプチド、および内因性リガンド(たとえばペプチドリガンド)のフラグメントは、すべて本発明において使用し得る。化合物の天然ライブラリー、または設計されたリガンド(たとえばPTH配列に基づくリガンド)などのランダムスクリーニングを含むアプローチは、本発明のスクリーニング方法において使用し得る。一部の態様では、抗体またはナノボディは、当技術分野において公知の方法を用いてGPCRに対してまたはGPCRのリガンド結合フラグメントに対して作製できる。
【0063】
修飾された受容体アゴニスト
新しい受容体アゴニストの同定のための1つの戦略は、既存アゴニストの修飾である。ペプチドホルモンは、点突然変異、トランケーション、挿入、およびキメラペプチドの作製によって修飾できる。たとえばPTH受容体を使用して、多くの修飾PTHおよびPTHrP配列が当技術分野において公知である。ペプチドは、当技術分野において公知のように、組換えまたは合成のいずれかによって作製できる。たとえば、様々なPTH配列、ならびに本明細書で述べるもののいずれかを記述する、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第7,057,012号、同第7,022,815号、同第6,417,333号、同第6,495,662号を参照されたい。これらの配列はキメラペプチドを含み得る。1つの特定例では、任意のアゴニストを抗体または抗体フラグメント(Fcフラグメントなど)に融合して、候補治療薬を生成し得る。
【0064】
抗体およびナノボディ
GPCRに結合する抗体またはナノボディも本発明の方法において使用でき、当技術分野で公知の任意の方法を用いてGPCRまたはそのフラグメント(たとえばGPCRのリガンド結合部分)に対して惹起することができる。一例では、GPCRまたはそのフラグメントに対するIgGを、精製タンパク質を使用してニュージーランド白色ウサギにおいて作製することができる。初回免疫プロトコールは、精製タンパク質10〜20μgの初回筋肉内注射からなり、21日後に追加免疫を実施する。抗体が検出されないかまたはわずかしか検出されない場合は、さらなる追加免疫および/またはアジュバントの添加を使用し得る。抗体は、記述されているもの(Siber et al., J. Infect. Dis. 152:954-964, 1985; Warren et al., J. Infect. Dis. 163: 1256-1266, 1991)と同様にして、ELISAによって定量し得る。IgGは、たとえば50%硫酸アンモニウム中での沈殿とそれに続くプロテインGセファロース4B(Pharmacia)でのアフィニティクロマトグラフィによって、ウサギ抗血清から精製し得る。GPCRに対するモノクローナル抗体はハイブリドーマ技術を用いて作製できる。ナノボディは、ナノボディを産生する動物(たとえばラクダまたはラマ)の免疫によって作製でき、次にそれを標準的手法を用いて精製することができる。これらの抗体またはナノボディを、長命作用または短時間作用を生じさせるアゴニスト分子に関して本明細書で述べたようにスクリーニングする。
【0065】
試験化合物および抽出物
一般に、GPCR(たとえばPTHR)に結合することができる化合物は、天然産物または合成(もしくは半合成)抽出物の大きなライブラリーからまたは化学物質ライブラリーから、当技術分野において公知の方法に従って同定される。薬剤発見および開発の分野の当業者は、試験抽出物または化合物の詳細な起源が本発明のスクリーニング手順にとって重要ではないことを理解する。従って、実質的に任意の数の化学的抽出物または化合物を本明細書で述べる方法を用いてスクリーニングすることができる。そのような抽出物または化合物の例は、植物、真菌、原核生物または動物に基づく抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、ならびに既存の化合物の修飾物を含むが、それらに限定されるわけではない。また、サッカリド、脂質、ペプチド、およびポリヌクレオチドに基づく化合物を含むが、それらに限定されるわけではない、任意の数の化学的化合物のランダム合成または指向性合成(たとえば半合成または全合成)を実施するためにも数多くの方法が使用可能である。合成化合物ライブラリーは市販されている。あるいは、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーも市販されている。加えて、天然および合成的に生産されるライブラリーは、所望する場合、当技術分野において公知の方法に従って、たとえば標準的な抽出および分画方法によって作製される。さらに、所望する場合は、任意のライブラリーまたは化合物が、標準化学的、物理的、または生化学的方法を用いて容易に修飾される。
【0066】
加えて、薬剤発見および開発の当業者は、重複排除(dereplication)(たとえば分類学的重複排除、生物学的重複排除、および化学的重複排除、もしくはそれらの任意の組合せ)のための方法、または代謝障害を治療するうえでのそれらの活性が既知である物質の複製物または反復物の排除のための方法を、可能な限り用いるべきであることを容易に理解する。
【0067】
粗抽出物がRG状態のGPCRに結合することが認められ、且つ受容体がR0状態であるときに内因性リガンドと比較して結合の変化(たとえばより高い親和性またはより低い親和性)を示すときは、認められた作用の原因である化学成分を単離するために陽性リード抽出物のさらなる分画が必要である。それゆえ、抽出、分画、および精製工程の目標は、代謝障害(たとえば糖尿病および肥満)を治療するうえで有用であり得る活性を有する、粗抽出物中の化学的実体の特徴づけと同定である。そのような不均一抽出物の分画と精製の方法は当技術分野において公知である。所望する場合は、本発明のスクリーニング方法において有用な作用物質であることを示す化合物は、当技術分野において公知の方法に従って化学修飾される。
【0068】
そのような試験化合物は、天然または合成の化学的化合物(低分子を含む)、ならびにアミノ酸または核酸アプタマーを含む。これらの化合物のいずれもが、合成または修飾アミノ酸または核酸を含み得る。
【0069】
受容体と候補化合物の接触
本発明のスクリーニング方法では、候補化合物をGPCRと接触させる。この受容体は、細胞上(たとえば生物内)または膜調製物中に存在し得る。あるいは、受容体は機能的形態で単離され得る(Shimada et al., J. Biol. Chem. 277:31,774-31780, 2002)。
【0070】
対象となるGPCR(たとえばPTHR)を天然に発現するまたは組換えによってこの受容体を発現する細胞が、本発明の方法において使用できる。あるいは、または加えて、GPCRをコードする組換え遺伝子を発現するように細胞をトランスフェクトすることができる(たとえば当技術分野において公知の任意の方法を使用して)。特定のGPCRを発現する細胞も、たとえばMillipore(ChemiScreen(商標)細胞系)から、市販のものを入手できる。
【0071】
他の態様では、受容体は、対象となるGPCRを含有する膜調製物(たとえば無細胞)中に存在する。そのような調製物は市販されている;たとえばMilliporeから入手可能なChemiSCREEN(商標)受容体調製物を参照されたい。膜調製物はまた、当技術分野において公知の方法を用いて作製できる(たとえばMills et al., J. Biol. Chem. 263: 13-16, 1988を参照されたい)。
【0072】
精製された受容体成分を使用する場合は、候補化合物をインビトロで受容体または受容体複合体と接触させる。
【0073】
アッセイの読み出し-リガンドの結合または活性の測定
リガンドの結合またはリガンドの活性を分析するための任意の方法を、本発明の方法において使用し得る;個々の読み出し値は重要ではない。一部の態様では、GPCRへのリガンドの結合は、非標識化合物による放射性標識リガンドの置換、および非標識化合物による処理の前後に細胞または膜調製物の放射能を測定することによって測定される。一般に、このアプローチは、膜と放射性リガンドをインキュベートして複合体を形成させる段階を含む。解離相は、過剰の非標識化合物の添加によって開始され得る。添加の直前(t=0)、およびその後の連続的な時点で、アリコートを採取し、直ちに真空ろ過によって処理することができる。非特異的結合は、プレインキュベーションおよび解離相の両方で、非標識化合物を含む並行反応チューブにおいて測定される。各時点での特異的に結合した放射能は、t=0で特異的に結合した放射能のパーセントとして算定できる。そのような解離法は、大規模スクリーニング(たとえば候補化合物のライブラリー)にも十分に適する。
【0074】
以下の実施例1で述べるように、FRETなどの他の方法も、受容体へのリガンド結合を測定するために使用できる。1つの適用では、リガンド結合が、FRETシグナルの変化によって検出できる受容体の立体配座変化を生じさせるように、2つの蛍光分子を受容体に結合する。FRETはリガンド結合のリアルタイム測定を可能にし、それゆえ本発明のアッセイにおいて有用である。
【0075】
他の読み出しは、受容体のRG形態への化合物の結合を間接的に測定する、本明細書で述べる遅延型cAMP活性アッセイを含む、cAMP活性の測定を包含する。細胞内cAMPレベルは、たとえばShimizu et al. (J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001))によって述べられている、放射免疫検定法を用いて測定できる。簡単に説明すると、この方法は、結合緩衝液(HClでpH7.7に調整した、50mM Tris-HCl、100mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、5% 熱不活性化ウマ血清、0.5%ウシ胎仔血清)0.5mlで洗浄し、cAMPアッセイ緩衝液(2mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン、1mg/mlウシ血清アルブミン、35mM Hepes-NaOH、pH7.4を含むダルベッコ改変イーグル培地)200μlおよび様々な量の候補化合物を含む結合緩衝液100μl(最終容量=300μl)で処理する、候補化合物による処理を含む。次に、室温で30〜60分間のインキュベーション後、培地を取り出すことができる。その後細胞を凍結し、50mM HCl 0.5mlで溶解して、再凍結する(-80℃で)ことができる。希釈した溶解産物のcAMP含量を放射免疫検定法によって測定することができる。EC50反応値は、非線形回帰を用いて算定できる。
【0076】
GPCR活性に影響を及ぼす任意の適切な生理的変化を、GPCR活性への試験化合物の影響を評価するために使用できる。無傷細胞または動物を使用して機能的結果を測定するとき、伝達物質放出、ホルモン放出、公知の遺伝的マーカーおよび特徴づけられていない遺伝的マーカーの両方に対する転写変化(たとえばノーザンブロット法)、細胞増殖またはpH変化などの細胞代謝の変化、ならびにCa++、IP3、またはcAMPなどの細胞内第二メッセンジャーの変化などの様々な作用も測定できる。
【0077】
1つの態様では、免疫測定法を用いて細胞内cAMPの変化を測定することができる。Offermanns and Simon, J. Biol. Chem. 270: 15175-15180 (1995)に述べられている方法を、cAMPのレベルを測定するために使用し得る。参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第4,115,538号に述べられているcAMPを測定するためのアッセイキットも使用できる。使用し得る他のアッセイは、血清中/尿中カルシウム、リン酸、および骨代謝回転のマーカー(たとえばデオキシピリジノリン(deoxypridonoline)架橋物質)のインビボでの変化、尿中の変化と相反する血清中での低下を測定する工程を含む。
【0078】
R0またはRG結合の測定
本発明の方法は、候補化合物の、GPCR(たとえばPTHR)のRGまたはR0形態への結合を測定する工程を含む。それゆえ、アッセイの読み出しにより、受容体の各々の形態に対する化合物の親和性を区別することができる。1つの可能なアプローチは、1つの受容体立体配座が促進される系または条件を使用することである。R0は、たとえばそのGタンパク質からのGPCRの強制解離によってまたはGタンパク質を欠く系を使用することによって促進され得る。Gタンパク質からのGPCRの解離が達成できる1つの方法は、Gタンパク質がそのGPCRに結合するのを妨げる化合物で処理することによる。そのような化合物は、GTPγSを含む、非加水分解性ヌクレオチド類似体などのヌクレオチド類似体を包含する。GTPγSはGタンパク質に結合するが加水分解することができないので、Gタンパク質はGPCRに対して自らを再利用することができない。それゆえ、候補化合物を添加する前に細胞または細胞膜をGTPγSと接触させることにより、GPCRのR0状態が高度に促進される系を生成することが可能である。
【0079】
RG形態のGPCRを安定化するために、ドミナントネガティブGタンパク質が利用できる。これらのタンパク質はGPCRに安定に結合し、それゆえRG立体配座を富化させる。
【0080】
R0とRGの比率を調節するための他のアプローチは、1またはそれ以上のGタンパク質の発現が下方調節されたまたは排除された動物に由来する細胞を使用する工程を含む。遺伝子ノックアウト技術は当技術分野において周知であり、特定のGタンパク質を標的するために使用できる(たとえばDean et al., Mol. Endocrinol. 20:931-943 (2006)を参照されたい)。他の態様では、RNAi手法(たとえば細胞へのsiRNAの投与)がGタンパク質の「ノックダウン」発現のために使用でき、それによって受容体のR0状態が促進される。あるいは、細胞において適切な1または複数のGタンパク質を過剰発現させることによってRG形態を促進することが可能であり得る。
【0081】
化合物がR0またはRG状態のいずれかに結合する能力を測定するための2番目のアプローチは、特定の状態に選択的であることが公知のリガンドの置換を含む。PTH受容体の場合、以前の研究で、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)がRG状態に対して選択的であることが示された。そのようなリガンドの候補化合物によるリガンド置換を測定することにより、アッセイにおいて受容体がRG およびR0の両方の状態で存在する場合でも、その状態への化合物の結合を特異的に測定することができる。
【0082】
本発明の方法において同定される化合物は、典型的には、長時間作用性または短命アゴニストのいずれかに対する内因性受容体の活性の少なくとも5%(たとえば少なくとも10%、20%、50%、100%、500%、1000%、10,000%)の活性で受容体のRG形態に結合する。たとえば、ヒトPTHは約0.13nmolのEC50でヒトPTHRに結合する。それゆえ望ましい化合物は、典型的にはこの親和性の少なくとも10%、すなわち少なくとも1.3nmolのEC50でhPTHRに結合する。
【0083】
本発明の方法を用いて同定されるリガンド
本明細書で述べるスクリーニング方法を用いて、本発明者らは、短時間作用性リガンドまたは長時間作用性リガンドのいずれかであるそれらの相対的R0/RG選択性に基づいて選択したいずれかのクラスのペプチドの種々の組合せ(PTH/PTHrPハイブリッド)を示す、例示的なGPCRであるPTH受容体に対する様々なリガンドを同定した(図26Aおよび26B)。スクリーニングアッセイの結果に基づき、本発明者らは、次に、リガンドの生物活性の決定におけるR0/RG選択性の重要性という概念の証拠を明らかにするため、これらのペプチドをインビトロおよびインビボでの活性に関して試験した。
【0084】
同定されたペプチドは、R0/RG選択性がインビボでの生物活性を決定するという、PTH受容体および他のGPCRについての概念の証拠である。これらのペプチドは、異なる5つのクラスを含む。最初のクラスは、PTHrPを、高いR0選択性と持続的な作用を有する形態に転換する類似体であるIle5-PTHrPに代表される。2番目のクラスは、PTHrP(12〜36)と組み合わせたMPTH(1〜11)、またはPTHrP(15〜36)と組み合わせたMPTH(1〜14)から構成される、高いR0/RG選択性を有するハイブリッドペプチドを含む。これらのペプチドはインビボで非常に持続的な生物活性を有する。3番目のタイプは、その低いR0親和性のゆえにより短い作用の生物活性を示す、[His5,Arg19]PTHである。4番目のクラスの化合物は、強力なR0活性化作用、ならびに、高いリン酸貯留に関連する疾患の治療において望ましい性質である、尿中リン酸排泄を促進する顕著な活性を有する、Ala1,Aib3,-M-PTH(1〜28)によって例示される。5番目のクラスは、はるかに低いR0親和性を有し、それゆえ骨粗しょう症の治療のためにより望ましい、Ala23-PTHに代表される。
【0085】
PTH受容体リガンドに関して、本発明者らは、様々なR0およびRG結合親和性ならびに様々なR0/RG選択性を有するリガンドを同定した。R0親和性によって分類した例示的なペプチドを図26Bに示す。受容体のR0形態に対する親和性は、少なくとも2000、1000、750、500、250、150、100、90、75、50、40、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.2、0.1、または0.05nmolであり得る。受容体のRG形態に対する親和性は、少なくとも100、50、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2.5、2、1.75、1.5、.125、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.25、0.2、0.15、0.1、0.075、0.05、0.025nmolであり得る。R0/RGの選択性は(より高い値がより大きなRG選択性を示す)、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、8、10、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、200、250、400、500、750、1000、1250、1500、2000、2500、または5000であり得る。本発明のリガンドは、本明細書で述べるRGもしくはR0親和性のいずれか、またはそれらの任意の組合せを有し得る。
【0086】
RGおよびR0選択的リガンド
本明細書で述べるスクリーニング方法を使用して、本発明者らは新しいRG選択的およびR0選択的リガンドを開発した。一例では、本発明者らは、PTHrPがPTHと比較してより大きな選択性でRG受容体立体配座に結合するので、PTHrP(1〜28)を出発点として使用した。表2は、特定の類似体のインビトロ活性を要約する;さらなる類似体を表3に示す。これらの類似体に関するより詳細な情報は下記の実施例3で述べる。これらの類似体、A(E)18、A22、(L25)、K26-PTHrP(l〜28)または(1〜30)は、PTHrP(1〜36)と比較して、一般にcAMP産生についての高い潜在能を示し、比較的高い選択性でRG立体配座に結合する(表2)。
【0087】
(表2)代表的PTHrP類似体のインビトロ活性

【0088】
さらなるペプチドおよびそのようなペプチドについての結合/活性データを以下の表3に示す。
【0089】
(表3)PTHrP類似体の結合/活性



【0090】
本発明者らはまた、ペプチド

を作製した。ヒトPTH1受容体へのこれらのペプチドのR0およびRGの結合を以下の表4に示す。
【0091】
(表4)例示的ペプチドのRGおよびR0の結合

Mc=A1、3、12、Q10、R11、W14、R19
【0092】
ポリペプチドの修飾
本明細書で述べるポリペプチドのいずれもが、N末端修飾またはC末端修飾などの1またはそれ以上の修飾を含み得る。修飾は、アセチル化、アシル化、ADPリボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有結合架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、γカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などの、タンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介性付加、およびユビキチン化を包含する。たとえば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York, 1993 and Wold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, pgs. 1-12 in Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York, 1983; Seifter et al, Methods Enzymol 182:626 646 (1990)and Rattan et al, Ann NY Acad Sci 663A & 62 (1992)を参照されたい。
【0093】
本発明のポリペプチドのいずれもが、異種配列(融合パートナー)をさらに含んでもよく、それによって融合タンパク質を形成し得る。融合タンパク質は、精製タグまたは検出タグ、たとえば緑色蛍光タンパク質、赤血球凝集素、またはアルカリホスファターゼなどの直接または間接的に検出し得るタンパク質、DNA結合ドメイン(たとえばGAL4またはLexA)、遺伝子活性化ドメイン(たとえばGAL4またはVP16)、精製タグ、または分泌シグナルペプチド(たとえばプレプロトリプシンシグナル配列)などの融合パートナーを含み得る。他の態様において、融合パートナーはc-myc、ポリヒスチジン、またはFLAGのようなタグであり得る。各々の融合パートナーは、1またはそれ以上のドメイン、たとえばプレプロトリプシンシグナル配列およびFLAGタグを含み得る。別の場合には、融合パートナーはFcタンパク質(たとえばマウスFcまたはヒトFc)である。
【0094】
疾患の治療の方法
PTH機能不全、またはカルシウムもしくはリン酸不均衡に関連する任意の疾患を、図26Aおよび26Bに示すもの、表1に示すもの、または本発明の方法を用いて同定されるものを含む、本明細書で述べるペプチドのいずれかで治療することができる。これらのペプチドは、骨粗しょう症、骨折修復、骨軟化症、関節炎、血小板減少症、副甲状腺機能低下症もしくは高リン血症を治療するために使用し得るか、または対象において幹細胞動員を高めるために使用し得る。任意の投与方式(たとえば経口的、静脈内、筋肉内、眼科的、局所的、経皮的、皮下的、および経直腸的)が本発明の治療方法において使用できる。医師が、一部には患者の大きさ、疾患または状態の重症度、および治療する特定疾患または状態に依存する、治療される患者のための適切な用量を決定する。
【0095】
薬学的組成物の製剤
本明細書で述べる(たとえばPTH由来のペプチド)または本発明の方法を用いて同定される任意の化合物の投与は、対象の疾患状態を治療する化合物の濃度を生じさせる任意の適切な手段によって実施され得る。化合物は、任意の適切な担体物質中に任意の適切な量で含有され得、一般に組成物の総重量の1〜95重量%の量で存在する。組成物は、経口的、非経口的(たとえば静脈内または筋肉内)、経直腸、経皮、経鼻、経膣、吸入、皮膚(パッチ)、眼科的、または頭蓋内投与経路に適した投与形態で提供され得る。それゆえ、組成物は、たとえば錠剤、アンプル、カプセル、丸剤、粉末、顆粒、懸濁液、乳剤、溶液、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏、クリーム、硬膏、水薬、浸透圧送達装置、坐剤、浣腸、注射剤、植込錠、噴霧剤、またはエアロゾルの形態であり得る。薬学的組成物は従来の薬学的慣例に従って製剤し得る(たとえば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, 2000, ed. A.R. Gennaro, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology, eds. J. Swarbrick and J. C. Boylan, 1988-1999, Marcel Dekker, New Yorkを参照されたい)。
【0096】
薬学的組成物は、投与後直ちにまたはあらかじめ定められた任意の時点で、または投与から一定期間後に活性化合物を放出するように製剤され得る。後者のタイプの組成物は、一般に制御放出製剤として知られ、それらは、(i)長期間にわたって体内で本発明の作用物質の実質的に一定な濃度を生じさせる製剤;(ii)あらかじめ定められた遅延時間後に、長期間にわたって体内で本発明の作用物質の実質的に一定な濃度を生じさせる製剤;(iii)作用物質の血漿中レベルの変動に関連する望ましくない副作用を最小限に抑えつつ、体内で作用物質の比較的一定な有効レベルを維持することにより、あらかじめ定められた期間中、作用物質の作用を持続する製剤(鋸歯状動態パターン(sawtooth kinetic pattern));(iv)作用物質の作用を局在化する、たとえば疾患組織もしくは器官に隣接してまたは疾患組織もしくは器官内に制御放出組成物を空間的に位置づける、製剤;(v)投与の便利さを達成する、たとえば週に1回または2週間に1回組成物を投与することを達成する製剤;ならびに(vi)化合物を特定の標的細胞型に送達する担体または化学的誘導体を使用することによって作用物質の作用を標的化する製剤を含む。制御放出製剤の形態の化合物の投与は、胃腸管における狭い吸収領域または比較的短い生物学的半減期を有する化合物に関して特に好ましい。
【0097】
対象となる化合物の放出速度が代謝速度を上回る制御放出を得るために、多くの戦略のいずれかを実施することができる。一例では、制御放出は、たとえば様々なタイプの制御放出組成物およびコーティングを含む、様々な製剤パラメータおよび成分の適切な選択によって得られる。それゆえ、化合物は、適切な賦形剤と共に、投与後に制御された方法で化合物を放出する薬学的組成物へと製剤される。例としては、単一または複数単位の錠剤またはカプセル組成物、油性溶液、懸濁液、乳剤、マイクロカプセル、分子複合体、マイクロスフェア、ナノ粒子、パッチ、およびリポソームが含まれる。
【0098】
非経口的組成物
本明細書で述べるまたは本発明の方法を用いて同定される化合物を含有する組成物は、投与形態、製剤中での注射、注入、もしくは植込み(皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内等)によって、または従来の非毒性の薬学的に許容される担体およびアジュバントを含有する適切な送達装置または植込錠を介して、非経口的に投与され得る。そのような組成物の製剤および製造は薬学的製剤の当業者に周知である。
【0099】
非経口投与用の組成物は、単位投与形態(たとえば単回用量のアンプル)として、または数回分の用量を含み、適切な防腐剤が添加されていてもよい(下記参照)バイアル中で提供され得る。組成物は、溶液、懸濁液、乳剤、注入装置、または植込みのための送達装置の形態であり得るか、または使用の前に水または別の適切なビヒクルで再構成される乾燥粉末として提供されてもよい。活性物質とは別に、組成物は、非経口的に許容される適切な担体および/または賦形剤を含み得る。活性物質は、制御放出のためにマイクロスフェア、マイクロカプセル、ナノ粒子、リポソーム等に組み込まれ得る。さらに、組成物は、懸濁化剤、可溶化剤、安定剤、pH調整剤、張度調整剤、および/または分散剤を含み得る。
【0100】
前記で指摘したように、本発明による薬学的組成物は無菌注射に適する形態であり得る。そのような組成物を調製するために、適切な活性物質を非経口的に許容される液体ビヒクルに溶解または懸濁する。使用し得る許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、適切な量の塩酸、水酸化ナトリウムまたは適切な緩衝液の添加によって適切なpHに調整された水、1,3-ブタンジオール、リンガー液、デキストロース溶液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。水性製剤はまた、1またはそれ以上の防腐剤(たとえばメチル、エチル、またはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)を含み得る。化合物の1つが水に難溶性であるかまたはわずかに可溶性である場合は、溶解促進剤もしくは可溶化剤を添加することができるか、または溶媒が10〜60重量%のプロピレングリコール等を含み得る。
【0101】
以下の実施例は、本発明を限定するのではなく、本発明を例示することが意図されている。
【0102】
実施例1:短命および長時間作用性PTHペプチドの同定
競合結合アッセイを用いたリガンドの特徴づけ。PTHRリガンドを同定するため、最初に、PTHおよびPTHrP放射性リガンド類似体とHKRK-B7細胞から調製された膜において発現されるヒトPTHRとの間で形成される複合体の安定性を検討するために動的解離実験を実施した。各々の放射性リガンドについて、ヘテロ三量体Gタンパク質から受容体を機能的に脱共役することの影響を評価するため、GTPγSの存在下と不在下で解離を検討した(図1A〜1C)。125I-PTH(1〜34)および125I-PTHrP(1〜36)(それぞれ図1Aおよび1B)に関して、GTPγSの不在下と存在下(それぞれ黒い記号と白い記号)の両方での解離データは、単相減衰式よりも二相減衰式により良く適合した。125I-PTH(1〜34)に関してGTPγSの不在下では、複合体の17%が不安定であり、速やかに減衰したが(t1/2<1分間)、残りの83%は安定であり、緩徐に減衰した(t1/2〜4時間)。GTPγSの添加後、急速で不安定な成分が21%に増加し、複合体の77%は安定なままであった(t1/2〜2時間)(図1A)。125I-PTH(1〜34)に関するこれらの知見は、この放射性リガンドに関して実施された以前の解離試験と厳密に一致し、非Gタンパク質共役PTHR立体配座(R0)に高い親和性で結合するPTH(1〜34)の能力を強調する(Shimizu et al., J. Biol. Chem. 280:1797-807 (2005); Dean et al., Mol. Endocrinol. 20:931-43 (2006))。125I-PTHrP(1〜36)とPTHRとの間で形成された複合体は、やはり主としてGTPγSの不在下で安定であった(68%がt1/2約3時間で減衰した)。これに対し、複合体の大部分がGTPγSの添加後に不安定となった(72%がt1/2約1分間で減衰した;図1B)。GTPγSの添加によって誘導されたPTHRからの125I-PTHrP(1〜36)のこの速やかな解離は、以前に125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)に関して認められたものに酷似する(Dean et al., Mol. Endocrinol. 20:931-43 (2006));これらの放射性リガンドの各々は、それゆえ、主としてGタンパク質共役立体配座(RG)のPTHRに結合すると思われる。
【0103】
次に、前記解離試験において2つのリガンドに関して認められた機能的相違の基礎となるPTH(1〜34)とPTHrP(1〜36)における構造的相違を同定した。PTHとPTHrPにおける5位の異なる残基(それぞれIleとHis)が、これらのリガンドが受容体に結合する親和性を決定するうえで重要な役割を果たすことが示された(Shimizu et al., J. Biol. Chem. 280: 1797-807 (2005); Gardella et al., J. Biol. Chem. 270:6584-6588 (1995))and subtype selectivity (Gardella et al., J. Biol. Chem. 271: 19888-19893 (1996); Behar et al., Endocrinology 137:4217-4224 (1996))。125I-Ile5-PTHrP(1〜36)の受容体解離特性を、この場合もやはりGTPγSの不在下と存在下で、検討した。この放射性リガンドは、GTPγSの存在下および不在下のいずれにおいても、各々の場合に単相の動態で、受容体から緩徐に解離した(t1/2>2時間;図1C)。それゆえ、His5のIle置換は、PTHrPがGタンパク質共役PTHR、特に非Gタンパク質共役状態のPTHRに結合する安定性を顕著に高めた。
【0104】
平衡結合へのGTPγSの影響。平衡に近い条件下でのこれらの放射性リガンドのPTHRへの結合に対するGTPγSの影響を、GTPγSの不在下または様々な濃度のGTPγSの存在下で細胞膜と共に90分間インキュベートすることによって評価した。HKRK-B7細胞から調製した膜への125I-PTH(1〜34)および125I-Ile5-PTHrP(1〜36)の結合は、概してGTPγSによって影響されなかったが(1×10-4M GTPγSで<約20%阻害)、125I-PTHrP(1〜36)の結合はGTPγSによって強力に阻害された(1×10-7M GTPγSで約70%阻害;IC50=1×10-9M;図2A)。ラットPTHRへの結合を評価するため、ラットPTHRを内因性に発現する、ラット骨芽細胞系ROS 17/2.8から調製した膜を使用して並行試験を実施した。HKRK-B7細胞膜中のヒトPTHRと同じく、ラットPTHRへの125I-Ile5-PTHrP(1〜36)の結合も、同様に概してGTPγSに無反応であった(図2B)。結合の大部分はヌクレオチド類似体に抵抗性であったが、ラットPTHRへの125I-PTH(1〜34)の結合はヒトPTHRへのその結合よりもGTPγSに感受性であると思われた(図2A対2B)。ヒトPTHRに関して、GTPγSは、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)の結合と同程度にヌクレオチド類似体に感受性であった、ラットPTHRへの125I-PTHrP(1〜36)の結合を強力に阻害した(図2B)。それゆえ、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)は、PTHrP(1〜36)または[Aib1,3,M]PTH(1〜15)よりも強力にPTHRの非Gタンパク質共役立体配座(R0)に結合する。これに対し、後の2つのペプチド、すなわちPTHrP(1〜36)および[Aib1,3,M]PTH(1〜15)は、Gタンパク質共役立体配座、RGに選択的に結合する。
【0105】
次に、PTHおよびPTHrPリガンドがPTHRのRGおよびR0受容体立体配座に結合する相対的親和性を分析するために競合的方法を使用した。RGへの結合を評価するため、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)は、主としてRGに結合するのでこのペプチドをトレーサ放射性リガンドとして使用した。hPTHRと、以前に述べられているように(Dean et al., Mol. Endocrinol. 20:931-943 (2006); Berlot, C.H., J. Biol. Chem.277:21080-21085 (2002); Dean et al., J. Biol. Chem. 281:32485-32495(2006))、RおよびR0に関連するRGに富むネガティブドミナントGαSサブユニット(GαSND)とで共トランスフェクトしたCOS-7細胞から膜を調製した。R0への結合を評価するため、125I-PTH(1〜34)を放射性リガンド(主としてR0に結合する)として使用した。hPTHR単独でトランスフェクトしたCOS-7細胞から膜を調製した。受容体-ヘテロ三量体Gタンパク質複合体を機能的に脱共役し、それによってRGに比べてR0(およびR)立体配座を富化するために、GTPγS(1×10-5)を結合反応物に添加した。次に、リガンドの各々がR0とRG PTHR立体配座に結合した選択性を評価するため、いくつかの非標識PTHおよびPTHrPリガンドに関して得られた相対的な見かけ上の親和性を、これら2つのアッセイにおいて比較した。
【0106】
PTH(1〜34)は、RG立体配座に対するよりも5倍弱い親和性でR0立体配座に結合した(IC50=4.2nM 対0.86nM、P=0.0002;図3A、表5)。PTHrP(l〜36)は、RG に対するよりも66倍弱い親和性でR0に結合したので、より高い選択性を示した(P=0.04;図3B;表5)。それゆえそのRGに対する選択性(対R0)は、PTH(1〜34)の選択性よりも13倍高かった。リガンド内の残基5の相互交換は、立体配座選択性のこのパターンを逆転させた;すなわち、His5-PTH(1〜34)はRGに対するよりも750倍弱い親和性でR0に結合し、Ile5-PTHrP(1〜36)はRGに対するよりも3倍だけ弱い親和性でR0に結合した(P<0.002;図3Cおよび3D;表5)。
【0107】
(表5)ヒトPTH受容体のRGおよびR0立体配座への競合結合

【0108】
Ile5→His置換も、本発明者らの対照PTH(1〜34)類似体のメチオニン8,21→ノルロイシンおよびPhe34→Tyr34置換を欠くヒトPTH(1〜34)およびラットPTH(1〜34)ペプチドにおいて、RGに対する親和性を大きく変化させずにR0に対する親和性を強力に低下させた(図6A、6B、6D、および6Eならびに表4)。それゆえ、PTH(1〜34)はPTHrP(1〜36)よりも高い親和性でR0に結合するが、PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)の両方がRG PTHR立体配座に高い親和性で結合する。リガンド内の残基5は、R0とRG立体配座に結合するリガンドの能力を調節するうえで重要な役割を果たす。加えて、PTH(1〜34)の15位のカルボキシ末端側残基は、R0には弱くだけ結合するがRGに対する強い親和性を維持する、[Aib1,3,M]PTH(1〜15)によって示されるように、R0に強力に結合するリガンドの能力に寄与する(図6Cおよび表4)。
【0109】
PTHR活性化の直接記録。蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アプローチは、PTHRに対するリガンド結合および受容体活性化の過程を、リアルタイムでおよび無傷細胞において評価するために近年使用されている。それゆえ、このアプローチを、PTHおよびPTHrPリガンドがPTHRと相互作用する経時変化を比較するための独立した手段として使用した。使用したアプローチは、ヒトPTHR構築物、PTHR-CFPIC3/YFPCT(以前はPTHR-camと呼ばれた)において生じる分子内FRETシグナルを利用する。この構築物は、第3細胞内ループにシアン蛍光タンパク質(CFP)およびカルボキシ末端尾部に黄色蛍光タンパク質(YFP)を含む。FRETシグナルは基底状態のPTHR-CFPIC3/YFPCTによって生成され、このシグナルは、おそらく活性化したときに起こる立体配座変化のために、アゴニスト結合時には減少する。
【0110】
hPTH(1〜34)は、PTHR-CFPIC3/YFPCTを発現する細胞によって生成されるFRETシグナルの速やかな(t1/2=0.7秒間)減少(約13%)を誘導した(図4A)。リガンド適用の15秒間、ならびにリガンド含有緩衝液をリガンド不含緩衝液に交換した後少なくとも60秒間、FRETシグナルは抑制されたままであった(リガンド適用時点を図4A〜4Cのグラフの上部に黒い水平な線で示す)。hPTH(1〜34)に関して得られたFRET応答プロフィールは、これまでのFRET試験(Vilardaga et al., Nat. Biotechnol. 21:807-812 (2003))でこのリガンドについて認められたプロフィールを再現する。アミノ末端ペプチド、[Aib1,3,M]PTH(1〜14)は、hPTH(1〜34)によって生じるよりもわずかに速い反応速度(t1/2=0.5秒間)とより小さな程度(約5%)でFRET応答を誘導した(図4B)。さらに、[Aib1,3,M]PTH(1〜15)によって生じるFRET応答は、緩衝液をリガンド不含のものに交換した直後に減衰し始めた(図4B)。PTHrP(1〜36)は比較的緩徐なFRET応答を誘導し(t1/2=約2〜5秒間)、シグナルは、リガンド不含緩衝液に交換した直後に減衰を始めた(図4C)。Ile5置換リガンド、Ile5-PTHrP(1〜36)は、応答が速やかであり(t1/2=0.5〜0.7秒間)、リガンド除去後も安定であったという点で、PTH(1〜34)のものに著しく類似するFRETシグナルを誘導した(図4D)。分光学的アプローチによって導き出されるこれらの反応速度論的データは、前記の結合放射性リガンド解離アッセイで得られたものと完全に一致し、それゆえPTH(1〜34)とPTHrP(1〜36)が主にPTHRの異なる立体配座に結合することを示す。それらはまた、この立体配座選択性に寄与するうえでのリガンド内の残基5の重要な役割を確認する。
【0111】
HKRK-B7細胞におけるcAMP測定。LR0複合体がLRG複合体に異性化することができるならば、R0へのリガンドの安定な結合の潜在的結果は、そのリガンドによって誘導されるシグナル伝達応答を、R0を不十分にしか安定化しないリガンドと比べて延長させることである。この可能性を調べるため、PTHR発現細胞において持続的なcAMP応答を生じさせるPTHおよびPTHrPのリガンドの能力を評価した。そこで、細胞をリガンドで10分間処理し、非結合リガンドを除去するために洗浄した。洗浄後様々な時点で、IBMXを5分間適用し、生じた細胞内cAMPを測定した。このアプローチを使用すると、最後の5分間のIBMXインキュベーション期に生成されたcAMPだけが測定可能である。図5Aの実験は、HKRK-B7細胞においてPTHrP(1〜36)とIle5-PTHrP(1〜36)によって生じるcAMP応答の経時変化を比較する。ウォッシュアウト工程の直後に、いずれかのリガンドで処理した細胞はほぼ同じ量のcAMPを生成し、その量は未処理細胞における基礎cAMPレベルを約100倍上回った。ウォッシュアウト工程の2時間後、Ile5-PTHrP(1〜36)で処理した細胞は、リガンドのウォッシュアウト直後に見られたシグナル伝達能の約50%のcAMPシグナル伝達能を維持した(図5A)。これに対し、2時間目のPTHrP(1〜36)で処理した細胞のシグナル伝達能は初期応答の約19%であり、それゆえIle5-PTHrP(1〜36)に関して2時間目に認められた応答よりも約65%低かった(P≦0.003)。PTH(1〜34)は、各々の時点でIle5-PTHrP(1〜36)によって生成されたものとほぼ同じ応答を生じた(P≧0.05、データは示していない)。それゆえ、PTH(1〜34)とIle5-PTHrP(1〜36)によって誘導されるcAMPシグナル伝達応答は、PTHrP(1〜36)の場合よりも約2倍緩徐に減衰した(t1/2=約2時間対約1時間)。PTHとPTHrPの類似体に関して認められたcAMPシグナル伝達能の期間のこれらの相違は、対応する放射性リガンドがGTPγSの存在下でPTHRから解離する速度において認められた相違に匹敵する(図1A〜1C)。
【0112】
HKRK-B64細胞におけるcAMP測定。リガンドが持続的な(または遅延型)cAMPシグナル伝達応答を生じさせる能力を、HKRK-B7細胞(950,000/細胞)よりも生理的なレベルでhPTHRを発現するHKRK-B64細胞(90,000/細胞)においてさらに検討した。経時変化実験は、リガンドが誘導するシグナル伝達応答の期間の相違が、リガンドウォッシュアウト後60分目のこれらの細胞において最もよく解明されることを示した(データは示していない)。これらの実験では、同時にリガンドおよびIBMXと共に細胞を10分間インキュベートすることによって(ウォッシュアウト期なし)各々のペプチドに対する最大応答を測定した;次に、リガンドウォッシュアウト後60分目に認められたcAMP応答を、対応する最大応答のパーセンタイルとして表した。
【0113】
HKRK-B7細胞において、PTH(1〜34)およびIle5-PTHrP(1〜36)は、ウォッシュアウト後60分目にそれぞれHKRK-B64細胞における対応する最大応答の47%および40%のcAMP応答を生じた(図5B)。類似体His5-PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)は、60分目にそれらの最大応答の34%と19%の応答を生じた。2時間目に[Aib1,3,M]PTH(1〜15)によって誘導された応答はその最大応答の23%であり、それゆえPTHrP(1〜36)の応答と同等であった(P=0.7)。急性用量反応シグナル伝達アッセイにおいて評価したとき、同じかまたは同等の活性を示す異なるPTHおよびPTHrPリガンド類似体は(図7;表6)、おそらく受容体と安定な複合体を形成するリガンドの能力による可能性が高い、定量的に異なる累積シグナル伝達応答を細胞において生じさせ得る。
【0114】
(表6)PTHおよびPTHrPリガンドのcAMPおよびIPシグナル伝達特性

a データは4つの実験からの平均値(±s.e.m.)である;
b 基礎cAMP(減算していない)は5.2±0.9pmol/ウェルであった。
c データは5つの実験からの平均値(±s.e.m.)である;
d 基礎IP値(減算していない)は330±8cpm/ウェルであった。
e P対[Nle8,21,Tyr34]rPTH(1〜34)NH2=0.02。
【0115】
ラット骨芽細胞におけるcAMP測定。cAMPシグナル伝達応答を生じさせる特定リガンドの能力を、ラット骨芽細胞(ROS17/2.8細胞系;図8)を使用してインビトロでさらに検討した。ROS17/2.8細胞を、IBMXの存在下で室温で10分間、

で処理し、その結果形成された細胞内cAMPを放射免疫検定法によって定量した。様々なペプチドについてのEC50値は、hPTH(1〜28)NH2については7.39nM;

については0.37nM;hPTH(1〜34)NH2については0.31nM;そしてr(ラット)PTH(1〜34)NH2については0.021nMであった。
【0116】
インビボでのマウスにおけるcAMPの血漿測定。野生型マウスに、ビヒクル(0.9% NaCl/0.05% Tween-20)、または10〜1000nmol/kg体重の範囲の濃度を達成するためのPTHペプチドを含有するビヒクルを皮下注射した。注射後、示されている時点で、尾静脈から血液を採取し、得られた血漿中のcAMPの量を放射免疫検定法によって定量した(図9A〜9D)。
【0117】
マウスを、血漿中リン酸および血清中イオン化カルシウム濃度の変化に関してさらに分析した。野生型マウスに、ビヒクル(0.9% NaCl/0.05% Tween-20)、または50nmol/kg体重の用量の

を含有するビヒクルを皮下注射した。注射後、示されている時点で、尾静脈から血液を採取し、血漿中リン酸(図10A)および血清中イオン化カルシウム(図10B)の濃度を測定した。血清中イオン化カルシウム濃度は、Chiron Diagnostics Model 634 Ca++/pH分析器を用いて測定した。血漿中リン酸濃度は、Phosphorous Liqui-UVアッセイキット(StanBio Laboratory, Boerne, TX)を用いて測定した。2つのペプチドは、血清中カルシウムの類似の最大上昇および血漿中リン酸の類似の最大低下を生じさせたが、

に対する応答はhPTH(1〜34)NH2に対する応答よりも持続的であった。
【0118】
フクロネズミ腎細胞におけるリン酸取込みの阻害。リン酸取込みの阻害を、近位尿細管に由来するフクロネズミ腎(OK)細胞系を用いて評価した。これらの細胞は、PTH受容体リガンドによって調節されるナトリウム依存性リン酸輸送機能を媒介する。それゆえ、OK細胞をPTH(1〜34)で処理することは、それらの培地からのリン酸の取込みを阻害する。
【0119】
A1,Aib3,M-PTH(1〜28)への細胞の短時間(10分間)の暴露は、リン酸取込みに対する劇的に長い阻害作用を生じさせるが、PTH(1〜34)およびhPTHrP(1〜36)ペプチドははるかに短期間のリン酸取込み阻害を示す(図11)。
【0120】
正常ラットにおけるPTHRリガンドの薬物動態および血中カルシウム上昇作用。静脈注射したPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の薬物動態プロフィールを正常ラットにおいて検討した(図12)。PTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の両方が循環中から速やかに消失し、[I5]-PTHrP(1〜36)の薬物動態プロフィールはPTHrP(1〜36)のものと同等であった。
【0121】
本発明者らはまた、正常ラットにおいて静脈内注射したPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の血中カルシウム上昇作用も測定した(図13)。20および80nmol/kgのPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)は、1時間目に血中イオン化カルシウムレベルを同じ程度に上昇させた。血中イオン化カルシウムレベルは、PTHrP(1〜36)の注射後2時間目には低下したが、[I5]-PTHrP(1〜36)の注射後2時間目には高レベルで維持されていた。従って、[I5]-PTHrP(1〜36)とPTHrP(1〜36)は同等の薬物動態プロフィールを示すが(図12)、[I5]-PTHrP(1〜36)はR0PTHR立体配座に対してより高い結合親和性を示した(図3および6)。それゆえ、インビボで認められた[I5]-PTHrP(1〜36)の持続的な血中カルシウム上昇作用は、その高いR0結合親和性によって最もよく説明できる。
【0122】
ヒトPTH受容体によるPTHまたはPTHrP類似体のインビトロおよびインビボスクリーニング。本発明者らは、未変性PTH-PTHrPハイブリッド類似体、および[A1,3,12,Q10,R11,W14](M修飾)PTH-PTHrPハイブリッド類似体を設計し、合成して、hPTH受容体を発現するHKRK-B7細胞におけるそれらのcAMPシグナル伝達能を試験した。未変性およびM修飾PTH-PTHrPハイブリッド類似体の各々が、hPTH(1〜34)に匹敵するcAMPシグナル伝達活性を示した(図25)。本発明者らは、COS-7細胞膜においてヒトPTH受容体のR0およびRG状態に対する未変性またはM修飾PTHおよびPTHrPハイブリッド類似体の親和性を評価した(図26Aおよび26B)。
【0123】
正常およびTPTXラットにおけるPTHおよびPTHrP類似体の高カルシウム血作用。未変性およびM修飾PTH-PTHrPハイブリッド類似体の一過性の血中カルシウム上昇作用を、PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)を対照として使用して、正常およびTPTXラットにおいて評価した(図13A、14A、15A、15B、16A、17A、および18A)。I5-PTHrP(1〜36)、MPTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)、PTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)、PTH(1〜18)/PTHrP(19〜36)、M-PTH(1〜34)はPTH(1〜34)よりも高い血中カルシウム上昇作用を示した;これに対し、PTH(1〜22)/PTHrP(23〜36)およびPTH(1〜26)/PTHrP(27〜36)は、PTH(1〜34)またはPTHrP(1〜36)対照ペプチドよりも弱い血中カルシウム上昇作用を示した。ラットPTHRへの結合もインビトロで測定した。インビトロで示される結合データからのR0/RG選択性と、インビボでの高カルシウム血作用ならびにインビトロでの遅延型cAMP応答の両方との間の相関を明らかに示す、遅延型cAMPアッセイを使用して、シグナル伝達作用の長さを確認した(図13B〜13C、14B〜14C、15B、16B〜16C、17B〜17C、および18B)。これらのペプチドすべてのcAMPシグナル伝達は実質的に異ならなかった(図19A、19B、20Aおよび20B)。
【0124】
実験材料および方法
前記実験を実施するために以下の実験材料および方法を使用した。
【0125】
ペプチド。図1〜3および5〜11で使用したペプチドは、Shimizu et al., J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001)に述べられているように、M.G.H. Biopolymer Core facilityによって合成された。これらのペプチドは、

を含む。FRET分析(図4)において使用した hPTH(1〜34)COOHペプチド(遊離カルボキシル)はBachem California (Torrance, CA)より購入した。ラット試験は、American Peptide Company, Inc. (California, USA)によって合成されたヒトPTHrP(1〜36)を使用した。ヒトPTH(1〜34)はPeptide Institute Inc (Osaka, Japan)より購入した。PTHまたはPTHrP類似体はSigma Aldrich Japan (Tokyo, Japan)によって合成された。ラット試験で使用したペプチドは、10mM酢酸中1mMで溶解し、-80℃の冷凍庫で保存した。
【0126】
図12〜16で使用したペプチドは、American Peptide Company, Inc., California, USA(hPTHrP(1〜36)COOH)、Peptide Institute Inc., Osaka, Japan(hPTH(1〜34)COOH)、またはSigma-Aldrich Japan, Tokyo, Japan(PTH/PTHrPハイブリッド類似体)のいずれかより購入した。すべてのペプチドを、0.1mM〜4mMのペプチド濃度になるように10mM酢酸に溶解し、-80℃で保存した。ペプチドの純度と品質は、分析用高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、マトリックス支援レーザ脱離/イオン化(MALDI)質量分析法によって確認した。放射性標識ペプチド変異体は、Na125I (比活性:2,200Ci/mmol、Perkin Elmer/NEN Life Science Products, Boston, MA)を用いて酸化的クロラミンT法によって作製し、逆相HPLCによって精製した。
【0127】
細胞培養。10%ウシ胎仔血清(HyClone, Logan UT)、100単位/mlのペニシリンG、および100μg/mlの硫酸ストレプトマイシン(Invitrogen Corp. Carlsbad, CA)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、5%CO2を含む加湿雰囲気中37℃で細胞を培養した。使用したPTHR発現細胞系は、HKRK-B7、HKRK-B64、ROS 17/2.8、およびHEK-PTHR-camであった。HKRK-B7およびHKRK-B64系統は、ヒトPTHRをコードするプラスミドDNA(pCDNA1ベクター、Invitrogen Corp.)による安定なトランスフェクションを介して、ブタ腎細胞系、LLC-PKlから誘導され、それぞれおおよそ950,000および90,000PTH結合部位/細胞の表面密度でPTHRを発現する(Takasu et al., J. Bone Miner. Res. 14:11-20 (1999))。ROS 17/2.8細胞はラット骨肉腫細胞であり(Majeska et al., Endocrinology 107: 1494-1503 (1980))、おおよそ70,000PTH結合部位/細胞の表面密度で内因性ラットPTHRを発現する(Yamamoto, I. et al., Endocrinology 122: 1208-1217 (1988))。HEK-PTHR-cam 細胞は、安定なDNAトランスフェクションによってHEK-293細胞から誘導され、第3細胞内ループ内のGly395に挿入されたシアン蛍光タンパク質(CFP)およびカルボキシ末端尾部に挿入された黄色蛍光タンパク質(YFP)を含有するヒトPTHR誘導体(PTHR-cam)を発現する(Vilardaga et al, Nat. Biotechnol. 21:807-812 (2003))。細胞をT75フラスコ中で増殖させ、無傷細胞に関するアッセイのために24穴プレートに、膜調製のために6穴プレートに、またはFRET試験のためにカバーガラス上に分けた。COS-7細胞を、Fugene-6 (Roche Diagnostics, Indianapolis IN)およびPTHRをコードするCsClで精製したプラスミドDNA(3μl Fugene、1μg DNA/ウェル)を用いて6穴プレートにおいて一過性にトランスフェクトするか、またはPTHRをコードするプラスミドとネガティブドミナントGαSサブユニット、GαSND(6μl Fugene、各々1μg DNA/ウェル)で共トランスフェクトした。このGαSNDサブユニットは、野生型GαSよりも効率的に、しかし非生産的に受容体に結合し(Berlot, C. H. J. Biol. Chem. 277:21080-21085 (2002))、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)NH2放射性リガンドと細胞膜内のPTHRとの結合を高めることが見出された(以下を参照されたい)(Dean, T. et al., J. Biol. Chem. (2006))。
【0128】
結合試験。記述されているように(Dean et al., Mol Endocrinol 20(4):931-43 (2006))細胞膜を使用して結合試験を実施した。簡単に述べると、反応物を、膜アッセイ緩衝液(20mM HEPES、pH7.4、0.1M NaCl、3mM MgSO4、20%グリセロール、3mg/mlウシ血清アルブミン、プロテアーゼ阻害剤カクテル―最終濃度:1mM AEBSF、0.8μM アプロトニン、20μMロイペプチン、40μMベスタチン、15μMペプスタチンA、14μM E-64―Sigma-Aldrich Inc., St. Louis, MO)中で室温にてインキュベートした。反応物は、20〜100μg/mLの総膜タンパク質濃度、および約150,000cpm/mlの総放射能濃度を含んだ。非標識ペプチドリガンドおよび/またはGTPγS(Sigma-Aldrich Inc. St. Louis, MO)を、示されているように反応物に添加した。反応の終了時に、96穴真空ろ過プレートと真空ろ過装置(Durapore HV、0.65μMフィルタを伴う Multi-Screenシステム;Millipore Corp., Milford, MA)を用いた真空ろ過によって結合放射性リガンドと遊離放射性リガンドを分離した;次に空気乾燥したフィルタをプレートから分離し、γカウンタを用いてγ放射能を計数した。
【0129】
放射性リガンドの解離。これらの試験を、15mLの丸底ポリスチレン製スナップキャップチューブ(Falcon)においてバルク反応として実施した(総反応容量=5.0ml)。複合体を形成させるために膜と放射性リガンドを90分間プレインキュベートした;次に、GTPγS(5×10-5M)と共にまたはGTPγSなしで、過剰の、放射性リガンドの非標識類似体(5×10-7Mの最終濃度)の添加によって解離相を開始させた。この添加の直前(t=0)、およびその後連続的な時点で、0.2mlのアリコート(〜30,000cpm)を採取し、直ちに前述したように真空ろ過によって処理した。プレインキュベーションと解離相の両方において、放射性リガンドの非標識類似体(5×10-7M)を含む並行反応チューブで非特異的結合を測定した。各時点で特異的に結合した放射能を、t=0で特異的に結合した放射能のパーセントとして算定した。
【0130】
平衡競合結合およびGTPγS阻害。125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)放射性リガンドに関して実施した結合反応物を収集し、96穴Multi-Screen真空ろ過プレートのウェル中でインキュベートした。膜、トレーサ放射性リガンド、および様々な濃度の非標識リガンドおよび/またはGTPγSを90分間ウェル中でインキュベートし、その後反応プレートを急速真空ろ過によって処理して、前述したように遊離放射性リガンドから結合放射性リガンドを分離した。125I-PTH(1〜34)放射性リガンドに関して実施した結合反応物を収集し、96穴ポリスチレン製マイクロタイタプレート(Falcon、総反応容量=230μl)中でインキュベートして、インキュベーション終了時に96穴Multi-Screen真空ろ過プレートのウェルに移し、前述したように処理した。この転移操作は、Multi-Screenろ過膜への放射性リガンドの非特異的結合を最小限に抑えるために125I-PTH(1〜34)含有反応物に関して実施した。両方の放射性リガンドに関して、飽和濃度の、放射性リガンドの非標識類似体を含有する反応物において非特異的結合を測定した。特異的に結合した放射能を、競合リガンドまたはGTPγSの不在下で特異的に結合した放射能のパーセントとして算定した。
【0131】
様々な非標識ペプチドリガンドの非Gタンパク質共役およびGタンパク質共役PTHR立体配座(それぞれR0およびRG)に結合する能力を評価するため、一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞から以下のアッセイ条件で膜を調製した。R0への結合を評価するため、PTHRでトランスフェクトした細胞から膜を調製し、トレーサ放射性リガンドとしての125I-PTH(1〜34)、およびGTPγS(1×10-5M)を結合反応物に添加した。この結合形式は、125I-PTH(1〜34)が主としてPTHRのR0立体配座に結合し、GTPγSの存在により、この立体配座がRGに比べて膜内で富化されるという前提に基づく(Hoare et al., J. Biol. Chem. 276:7741-53 (2001); Dean et al., Mol Endocrinol (2006))。RGへの結合を評価するため、PTHRとネガティブドミナントGαSサブユニット(GαSND)で共トランスフェクトした細胞から調製した膜を使用し、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)をトレーサ放射性リガンドとして使用した。この結合形式は、125I-[Aib1,3,M]PTH(1〜15)が主としてPTHRのRG立体配座に結合し、GαSNDの存在により、この立体配座がRまたはR0に比べて膜内で富化されるという前提に基づく(Hoare, S. J. Biol. Chem. (2001); Berlot, C. H. J. Biol. Chem. (2002); Dean, T. et al., J Biol. Chem. (2006))。膜調製物中に存在する任意の低親和性PTHR立体配座(R)への結合の分析は、反応物中の低濃度(約25pM)のトレーサ放射性リガンドによって妨げられる。
【0132】
蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)。HEK-PTHR-CFPIC3/YFPCT を安定に発現するHEK-293細胞(以前はHEK-PTHR-Cam細胞と呼ばれた)(Vilardaga et al., Nat. Biotechnol. 21:807-812 (2003))をカバーガラス上で増殖させ、前述したようにFRET分析用に処理した。これらの細胞に関して、紫外光(λmax.ex.=436nm;λmax.em.=480nm)による PTHR-CFPIC3/YFPCT 中のCFP(供与体)の励起は、YFP(受容体)への分子内FRETを生じさせ、そのYFPからの発光(λmax.ex.=480nm;λmax.em.=535nm)をもたらした。このFRET応答は、480nmでのCFP発光の強度低下、および535nmでのYFP発光の強度上昇として観察できる。FRETシグナルは基底状態の受容体においてPTHR-CFPIC3/YFPCT によって生成され、アゴニストの結合時には減少する。PTHリガンドを細胞に添加し、コンピュータ支援、電磁弁制御、高速灌流装置(rapid superfusion device)(ALA Scientific Instruments, Westbury, NY)を用いて細胞から洗浄した;溶液交換時間は5ms〜10msであった。100倍の対物レンズおよび二重発光測光システム(Til Photonics)を備え、アバランシェ光ダイオード検出システムおよびアナログ-デジタル変換器(Axon Instruments)に接続されたZeiss倒立顕微鏡を使用して蛍光を観測した。436nmでの励起時に検出されたFRETシグナルを、基準化したFRET比:FYFP(535nm)/FCFP(480nm)(式中、FYFP(535nm)は、YFPチャネルへのCFPシグナルのスピルオーバーに関して補正した、535nmでの発光であり、FCFP(480nm)は、CFPチャネルへのYFP発光のスピルオーバー(極小)に関して補正した、480nmでの発光である)として算定した。光退色による蛍光発光の変化を差し引いた。
【0133】
細胞内cAMPの刺激。リガンドによる細胞の処理後、細胞内cAMPレベルを、記述されているように(Shimizu et al., J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001))放射免疫検定法によって測定した。リガンドへの短時間の暴露後に細胞において遅延型cAMP応答を生じさせるリガンドの能力を以下のように評価した。24穴プレート中の細胞を結合緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.7、100mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、5%熱不活性化ウマ血清、0.5%熱不活性化ウシ胎仔血清)中で洗浄し、次にペプチドリガンド(1×10-7または3×10-7M)を含むまたは含まない結合緩衝液中で室温にて10分間インキュベートした;その後緩衝液を除去し、細胞を結合緩衝液で3回洗浄して、結合緩衝液中で様々な時間(1〜120分間)さらにインキュベートした;次に緩衝液を、IBMX(2mM)を含む結合緩衝液に交換し、さらに5分間のインキュベーション後、細胞内cAMPを定量した。以前にPTH受容体に関して使用された(Tawfeek, H., and Abou-Samra, A., J. Bone Miner. Res. 14:SU444 (1999); Biselo et al., J. Biol. Chem. 277:38524-38530 (2002))このアプローチにより、IBMXを含む最後の段階のインキュベーションの間に生成されたcAMPだけが測定可能である。というのは、IBMX添加前に生成されたcAMPは細胞ホスホジエステラーゼによって分解されるからである。
【0134】
図14のcAMP実験では、HKRK-B7を1×105細胞/穴で96穴プレートに播種し、一晩インキュベートした。その翌日、細胞を結合緩衝液(50mM Tris-HCl、pH7.7、100mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、5%熱不活性化ウマ血清、0.5%熱不活性化ウシ胎仔血清)200μlで1回洗浄し、続いて氷上でcAMPアッセイ緩衝液(DMEM、2mM IBMX、1mg/mlウシ血清アルブミン、35mM Hepes-NaOH、pH7.4)100μlを添加した。次に、様々な量のヒトPTH(1〜34)、ヒトPTHrP(1〜36)、またはPTH類似体(最終容量=150μl)を含む結合緩衝液50μlを各々のウェルに添加し、37℃の水浴中に入れて、15分間インキュベートした。培地を除去した後、プレートを粉末ドライアイス上に置いて細胞を凍結させ、その後ドライアイスから取り出した。細胞を50mM HCl 50μlで解凍し、再びドライアイス上で凍結させた。細胞内cAMPのレベルを、市販されているcAMP EIAキット(Biotrack cAMP EIA system, GE Healthcare)で測定した。
【0135】
イノシトールリン酸の刺激。細胞内イノシトールリン酸(IP)の刺激を、3H-ミオ-D-イノシトール(2μCi/ml)であらかじめ標識した(16時間)、一過性にトランスフェクトしたCOS-7細胞において測定した。細胞を、ウシ胎仔血清(10%)およびLiCl(30mM)を含むDMEM中で30分間、リガンドで処理した;細胞を氷冷トリクロロ酢酸(5%)で溶解し、記述されているように(Shimizu et al., J. Biol. Chem. 276:49003-49012 (2001))、イオン交換ろ過によって酸溶解産物からIPを抽出した。
【0136】
OK細胞法。細胞を、培地(ビヒクル)またはペプチドリガンド(1×10-7M)を含む培地により37℃で10分間処理した;次に(t=0)、細胞を培地で3回洗浄し、単独で37℃にて様々な時間インキュベートした。各時点で、32PO4を培地に添加し、5分間のインキュベーション後、細胞を洗浄し、溶解して、溶解産物を液体シンチレーション計数によって32Pβ放射能に関して計測した。これらの実験の結果を図11に示しており、ビヒクル単独で同じ時間処理した細胞の溶解産物中の32P放射能の量のパーセンタイルとしてプロットしている。
【0137】
インビトロ結合およびシグナル伝達アッセイに関するデータ計算。データを、Microsoft ExcelおよびGraphPad Prism 4.0ソフトウエアパッケージを使用して曲線適合およびパラメータ決定のために処理した。解離の経時変化データは、F検定解析が、単一指数関数式がより良好な適合を与える(Pα>0.02)ことを示したときを除き、二重指数関数減衰式を用いて解析した。平衡結合、cAMPおよびIP用量反応アッセイからのデータは、可変勾配によるS字形用量反応式を用いて解析した。この解析から、データに関する曲線ならびにEC50、IC50(最大作用の半分の作用を生じさせるリガンドの濃度)およびEmax(リガンドによって得られる最大応答)の値が得られた。一対のデータセットを、2つのセットについて不均等分散と仮定したスチューデントt検定(両側)を用いて統計的に比較した。
【0138】
正常ラットにおけるPTHrP(1〜36)およびI5-PTHrP(1〜36)の薬物動態分析。保存溶液中のヒトPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の濃度を、25mmol/Lリン酸-クエン酸緩衝液/100mmol/L NaCl/0.05% Tween 80 (pH.5.0)(PC緩衝液)で希釈することによって調整した。両方のペプチドを投与の直前に氷上に置いた。
【0139】
8週齢の雌性 SD-IGSラット(Charles River Japan, Inc.)の体重を測定した。ラットに10nmol/1ml/kgの用量のヒトPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)を静脈内投与した。ペプチドを、各々のペプチド用量および/または時点について3匹のラットの群に投与した。投与後2.5、5、7.5、10、15、30、60、120分目に、ラット血漿中のヒトPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)の濃度の経時変化を観測するため、尾静脈からEDTA(最終0.2%)およびアプロチニン(最終0.6TIU/ml)を含むチューブに血液を採取した。試料を遠心分離して血漿を収集し、ヒトPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)レベルに関して検定するときまで-80℃で保存した。
【0140】
ヒトPTHrP(1〜36)および[I5]-PTHrP(1〜36)レベルを、PTH-RP 1〜34(ヒト、ラット)Enzyme Immunoassayキット(Peninsula Laboratories Inc.)を用いてEIA分析によって測定した。[I5]-PTHrP(1〜36)はPTHrP EIAキットと交差反応し、[I5]-PTHrP(1〜36)を血漿中の[I5]-PTHrP(1〜36)のレベルの測定のための基準として使用した。
【0141】
正常ラットにおけるヒトPTH(1〜34)、PTHrP(1〜36)およびPTHまたはPTHrP類似体の高カルシウム血作用。ヒトPTH(1〜34)、PTHrP(1〜36)、およびPTHまたはPTHrP類似体を、正常ラットにおける高カルシウム血作用に関して以下のように試験した。保存溶液中のペプチドの濃度を、25mmol/Lリン酸-クエン酸緩衝液/100mmol/L NaCl/0.05% Tween 80 (pH.5.0)(PC緩衝液)で希釈することによって調整した。すべてのペプチドを投与の直前に氷上に置いた。
【0142】
8週齢の雌性 SD-IGSラット(Charles River Japan, Inc.)の体重を測定した。血液を尾静脈からヘパリン化毛細管に採集し、Ca++/pH分析器(Model 634/Bayer Medical Ltd.)を用いて血中イオン化カルシウムおよびpHの基線レベルを測定し、各々の試料についてpH7.4でのイオン化カルシウムの補正したレベルを得た。ラットに各々のペプチドを1ml/kgの用量で静脈内投与した。ペプチドを、各々6匹のラットの群にそれぞれ投与した。投与後1、2、4、または6時間目に、補正した血中イオン化カルシウムレベルの経時変化を観測するために尾静脈から血液を採集した。ビヒクルと比較した、補正イオン化カルシウムレベルの経時変化を平均値±標準誤差として表す。
【0143】
統計解析。統計解析は、SASソフトウエアを使用して、分散分析(ANOVA)によって実施した。差の有意性は、スチューデントt検定またはダネットの多重比較検定を用いて決定した。P<0.05を統計的に有意とみなした。
【0144】
甲状腺上皮小体切除ラットにおける[A1,3,12,Q10,R11,W14]-hPTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)(MPTH14)の血中カルシウム上昇作用。5週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットをCharles River Laboratories Japan, Inc. (Kanagawa, Japan)より入手し、20〜26℃、湿度35〜75%の標準実験室条件下で1週間順化させた。ラットには、水道水ならびに1.1%カルシウム、1.0%リン酸および250IU/100gのビタミンD3を含む標準げっ歯動物飼料(CE-2)(Clea Japan, Inc., Shizuoka, Japan)を自由に摂取させた。
【0145】
6週齢のラットに甲状腺上皮小体切除術(TPTX)を実施した。使用するためのTPTXラットは、手術後24時間目または72時間目に尾静脈血から採取した試料中の、電極法を用いた血清中イオン化カルシウム(iCa)レベル(<1.0mM)に基づいて選択した。TPTXラットを、手術後48時間目のiCaレベルに基づき5匹の動物の6つの群に分けた。TPTX-ビヒクル群には、ビヒクル単独(10mM酢酸溶液)を1mg/kg体重の用量で尾静脈に静脈内投与した。ヒト副甲状腺ホルモン(1〜34)(hPTH(1〜34))およびM-PTH(1〜14)/rP(15〜36)(MPTH14)を、それぞれ1.25、5、20nmol/kg(3群)および1.25、5nmol/kg(2群)の用量でTPTXラットに静脈内注射した。
【0146】
各々の注射後1、2、4、6、および24時間目にiCaを検出するために尾静脈から血液を採取した。イオン化カルシウムレベルを、自動分析器(M-634、Chiba Corning Diagnostics Co. Ltd., Tokyo, Japan)を用いて電極法によって測定した。
【0147】
マウス試験。野生型マウスに、ビヒクル(0.9% NaCl/0.05% Tween-20)、または10〜1000nmol/kg体重の用量レベルでPTHペプチドを含有するビヒクルを皮下注射した。注射後、示されている時点で、尾静脈から血液を採取し、生じた血漿中のcAMPの量を放射免疫検定法によって定量した。血清中のイオン化カルシウムを前記のように測定し、リン酸を紫外分光キットアッセイによって測定した。
【0148】
動物試験についての統計解析。データを平均値±標準誤差(SE)として表す。統計的有意性は、SAS(Ver.5.00.010720、SAS Institute Japan, Tokyo, Japan)を使用して決定した。<0.05のp値を統計的に有意とみなした。ダネットの多重比較検定によりTPTX-ビヒクルレベルに対してP<0.05、**P<0.01、***P<0.001。
【0149】
実施例2:PTHおよびPTHrPにおけるアラニン置換の特徴づけ
前記に示すように、PTH(1〜34)は、RG立体配座の傾向を有するPTHrP(1〜36)に比べてR0受容体立体配座に結合するより大きな能力を有する。この示差的結合と立体配座選択性の分子基盤を調べるため、本発明者らは、PTHおよびPTHrPペプチドのN末端およびC末端領域における置換がPTHRとリガンドの相互作用に及ぼす影響を比較した。1、3、10、11、12および14位のアラニン置換がcAMP活性を上昇させるPTH(1〜14)の場合と異なり、PTHrP(1〜14)における各々のアラニン置換はPTHRを発現する細胞において活性を消失させた。それゆえ、PTHとPTHrPの(1〜14)領域は、異なる方法でPTHRの膜近傍(J)領域と相互作用する。PTHrP(1〜14)およびPTHrP(1〜36)の両方が、細胞外N末端(N)ドメインを欠くPTHR(delNT)を発現する細胞において、それらのそれぞれのPTH(1〜14)およびPTH(1〜34)対応物と比較してcAMP活性がはるかに低かった。PTHrP(1〜36)の活性は、それゆえ、PTH(1〜34)活性よりも、C末端リガンド領域とPTHR Nドメインの間の相互作用により大きく依存する。本発明者らは、それゆえ、実施例3で述べるように、PTHrP配列のC末端領域を検討した。
【0150】
実施例3:PTH(1〜28)およびPTHrP(1〜28)におけるC末端置換
アラニンスキャンおよび型置換戦略を使用して、本発明者らは、RG受容体立体配座に対して天然PTHrP(1〜28)配列よりもはるかに大きな選択性を有するペプチドを作製することができた。本発明者らは、PTHrP配列のC末端領域に研究の焦点を合わせ、したがってPTH(1〜28)(データは示していない)およびPTHrP(1〜28)の15〜28領域のアラニンスキャンを実施した。PTH(1〜28)およびPTHrP(1〜28)のC末端領域のアラニンスキャン分析は、各々のペプチドに関して、PTHにおいてコアNドメイン結合モチーフを形成することが公知の、Arg20、Trp/Phe23、Leu24、およびLeu/Ile28位置での強力な活性低下を明らかにした。各々の骨格においていくつかの、しかし異なる位置で、活性の増強が認められた:PTHrP(1〜28)におけるLeu18、Phe22、およびHis26ならびにPTH(1〜28)におけるAsn16、Glu19、およびAla22。PTH内の16、19、および22位のアラニン置換はdelNT(N末端リガンド結合ドメインを欠くPTH受容体)への結合を上昇させ、一方PTHrP内の18、22、26位のアラニン置換はdelNTへの結合を低下させた。PTHの16、19、および22位のアラニン置換の増強作用は、それゆえ、PTHR Jドメインによって媒介されるが、PTHrPの18、22、26位のアラニン置換はPTHR Nドメインを必要とする。PTHrP(1〜28)内の16、19、22、ならびに25位(アラニン置換に対して中立(neutral to Ala substitution))のさらなる型置換分析は、PTH(1〜34)よりも大きく、任意のPTHまたはPTHrPペプチドについて認められた中で最も高いcAMP潜在能およびRG結合親和性を示す類似体、[Ala18,22,Leu25,.Lys26]-PTHrP(1〜28)を生じさせた。このスキャンは、18、22、25、および26位のアラニン置換の各々が、ヒトおよびラットPTHR発現細胞におけるcAMP活性を増強することを明らかにした(図27Aおよび27B)。アラニンスキャン後、これらの位置を個別に様々なアミノ酸でさらに置換した:そのうちの一部はcAMP活性を上昇させることが認められた(図27Cおよび27D)。本発明者らは、次に、これらの突然変異を様々な取合せで組み合わせて、本明細書で述べる、顕著に高い活性を有する多くのPTHrP類似体を得た。
【0151】
実施例4:例示的な置換PTHrP(1〜28)ペプチドの特徴づけ

を使用して、SaOS細胞におけるcAMP産生についての用量反応曲線を作成した(図28A)。親PTHrP(1〜28)と比較して、cAMP誘導活性の顕著な増強がA(E)18,22,L25、K26-PTHrP(1〜28)(AALKまたはEALK)に関して認められた。
【0152】
これらの増強作用は、C57BL/6マウス(3ヶ月齢、雄性)にビヒクル、PTHrP(1〜36)、PTHrP(1〜28)、AALK-PTHrP(1〜28)、またはEALK-PTHrP(1〜28)(n=3)のいずれかを静脈内注射することによって、インビボ試験で確認された(図28B)。注射の10分後に血液を採取し、cAMPの血漿中レベルをRIAによって測定した。野生型PTHrP(1〜28)と比較して、顕著な増強がAALK-PTHrP(1〜28)およびEALK-PTHrP(1〜28)に関するマウスアッセイにおいても認められた。これらのアッセイにおけるPTHrP(1〜36)ペプチドのより大きな見かけ上の潜在能は、より長いペプチドは血液からより緩徐にクリアランスされることを反映し得る。
【0153】
実施例5:RG選択的ペプチド、EALK-PTHrP(1〜30)の特徴づけ
本発明者らはまた、cAMP産生におけるEALK-PTHrP(1〜30)ペプチドの作用を特徴づけた。3ヶ月齢の雄性C57BL/6マウスに、ビヒクル、

のいずれかを静脈内注射した。cAMP実験(図29A)では、注射の10分後に血液を採取し、cAMPの血漿中レベルをRIAによって測定した。カルシウム実験(図29B)では、注射の前および注射の1、2、4、および6時間後に血液を採取した。Ca++/pH分析器を用いてイオン化カルシウムを測定した。これらのリガンドはほぼ同じレベルの血漿中cAMPを誘導したが、R0選択的リガンド、M-PTH(1〜34)は、PTH(1〜34)よりも顕著に強固でより持続的なイオン化カルシウム応答を誘導した。これに対し、RG選択的リガンド、EALK-PTHrP(1〜30)は、PTH(1〜34)よりも低くはないにしても、同様のイオン化カルシウム応答を誘導した。
【0154】
マウスに、rPTH(1〜34)、M-PTH(1〜34)、またはEALK-PTHrP(1〜30)による5nmol/kgの静脈内処置を毎日14日間行う、2組目の実験を実施した。血液試料を6日目と13日目に採取し、骨代謝回転のマーカー(PINP、オステオカルシンおよびCTX)をELISAによって評価した。R0選択的リガンド、M-PTH(1〜34)は、早くも6日目に、骨形成(PINP、図30Aおよび30B;オステオカルシン、図30D)および骨吸収(CTX、図30Eおよび30F)の両方のマーカーの上昇を強力に誘導した。これに対し、RG選択的リガンド、EALK-PTHrP(1〜30)は、6日目に明らかであったように、骨形成マーカーを上昇させたが、吸収マーカーへの作用は比較的小さかった(図30A、30C、および30E)。分析した用量および時間条件下で、PTH(1〜34)は骨マーカーにごくわずかな作用しか及ぼさなかった。
【0155】
骨マーカーへの作用と一致して、M-PTH(1〜34)は海綿骨を強固に増加させたが、その激しい高カルシウム血作用(図29B)と一致して、同時に皮質骨を検出可能に減少させた(図31)。これに対し、EALK-PTHrP(1〜30)は、激しい高カルシウム血作用を誘導することなく皮質骨の厚さを増大させ、これは遠位大腿骨において有意であった(図30および表xx)。これらの知見は、異なるR0/RG選択性を有する修飾リガンドが骨代謝に示差的作用を及ぼすことを明らかにする。前記知見はまた、EALK-PTHrP(1〜30)などのRG選択的類似体が骨吸収に比べて骨形成を選択的に刺激し、血中カルシウムレベルには最小限の影響しか与えずに皮質骨に有益な作用を及ぼすことを示す。M-PTH(1〜34)は、遠位大腿骨骨幹端で海綿骨を大きく増加させるが、骨内膜表面の侵食によって示されるように、大腿骨中央部の骨幹における皮質骨吸収を誘導した。
【0156】
表7は、前記ペプチドの2週間にわたる毎日の処置後の骨構造パラメータの定量化を示す。前述したように、マウスをビヒクル、rPTH(1〜34)、M-PTH(1〜34)、またはEALK-PTHrP(1〜30)のいずれかで14日間毎日静脈内処置した。すべての類似体が大腿骨と腰椎の両方で骨塩量密度を有意に上昇させた。皮質壁の厚さは、M-PTH(1〜34)に関して遠位および中央大腿骨領域の両方で有意に低かった。これに対し、EALK-PTHrP(1〜30)は、遠位大腿骨において有意に、皮質骨の厚さを増大させた。
【0157】
(表7)マウスにおける2週間の毎日の処置後の骨構造パラメータ

【0158】
実施例6:EALK-PTHrPペプチドの最適化
EALK-PTHrPペプチドの活性を最適化するため、本発明者らは、29〜33領域内に置換を有するEALK-PTHrP(1〜30)およびPTHrP(1〜34)変異体を作製した。1〜30骨格において、Gly、Ser、Leu、Asn、Gln、Tip、Glu、およびLysを29位で置換した;Gly、Ser、Leu、Asn、Asp、Trp、およびLysを30位で置換した;そしてSer、Leu、Asn、Val、Trp、Glu、およびLysを31位で置換した。EALK-PTHrP(1〜34)において、30〜33領域をアラニンで置換するか、またはC末端の6アミノ酸をPTH(1〜34)の対応する領域で置換した。PTHrP(1〜30)骨格と比較して、これらのより長いペプチドの予測される利点は、より緩徐なクリアランスのゆえに循環中でより長い半減期を有することである。したがって、C末端置換は、鎖の長さを追加するために設計されたが、未変性PTHrP(29〜34)領域を組み込んだときに起こるR0結合親和性上昇を回避するためでもあった。これらのペプチドをMC3T3-E1細胞におけるcAMP活性に関して試験した。図32Aおよび32Bに示すように、これらのペプチドのいくつかは、非置換C末端配列よりも大きな活性を示した。
【0159】
実施例7:腎リン酸輸送におけるTrp1-M-PTHの特徴づけ
PTHリガンドが腎リン酸輸送を調節するシグナル伝達機構をさらに解明するのを助けるため、本発明者らは、PLC/PKCシグナル伝達を欠くが、依然として強力なcAMP/PKAシグナル伝達活性を保持するM-PTH(1〜28)の誘導体を開発した。そのようなペプチドは、近位尿細管(PT)細胞におけるPi輸送体であるNaPi-IIaおよびNaPi-IIcの機能と表面発現を調節するうえでのPKAおよびPKCシグナル伝達経路の相対的役割の検討を可能にする。cAMPおよびIP3シグナル伝達経路に対する強力なアゴニストである、類似体M-PTH(1〜28)(M=Ala1,Aib3,Gln10,Har11,Ala12,Trp14,Arg19)は、マウスに注射したとき、持続的な血中リン酸低下作用および血中カルシウム上昇作用を誘導する。前記類似体はまた、注射されたマウスの腎PT細胞の刷子縁膜および細胞質画分におけるNaPi-IIaの免疫反応性の持続的な低下を誘導した。
【0160】
PLCシグナル伝達を妨害するため、本発明者らは、Bisello and colleagues (J Biol Chem 277:38524-30, 2002)の知見に従って、M-PTH(1〜28)の1位のアラニンをトリプトファンで置換した。Biselloらの前記知見は、この位置におけるそのようなかさ高い置換がPLCシグナル伝達を選択的に妨害することを示した。ラットPTHRで一過性にトランスフェクトしたHEK-293細胞において、Trp1-M-PTH(1〜28)は、cAMP形成を刺激することに関してM-PTH(1〜28)とほぼ同程度に強力であったが、IP3形成を刺激することに関しては親ペプチドより少なくとも100倍効力が低かった。Trp1-M-PTH(1〜28)は、MPTH(1〜28)に関して認められたように、リガンドのウォッシュアウト後、MC3T3-E1細胞において持続的なcAMP応答を生じさせる能力を保持した。マウスに注射したとき(20nmol/kg)、Trp1-M-PTH(1〜28)は、M-PTH(1〜28)と同様に、PTH(1〜34)の作用と比較して、血漿中リン酸レベルの持続的な抑制を誘導した:各々の類似体について2時間目に最大抑制;PTH(1〜34)に関しては4時間目に、M-PTH(1〜28)およびTrp1-M-PTH(1〜28)に関しては6時間目にビヒクル対照レベルに回復。腎PT細胞の頂端および細胞質NaPi-IIa染色は、各々のペプチドで処置したマウスにおいて2時間目に低下したが、PTH(1〜34)に関しては6時間目に染色がビヒクル対照レベルに回復し、M-PTH(1〜28)またはTrp1-M-PTH(1〜28)で処置したマウスでは染色は少なくとも6時間低いままであった。腎PT細胞におけるNaPi-IIcの免疫染色は、M-PTH(1〜28)で処置したマウスでは4〜6時間にわたって低かったが、Trp1-M-PTH(1〜28)またはPTH(1〜34)で処置したマウスでは不変のままであった。M-PTH(1〜28)は、NaPi-IIc輸送体およびラットPTHRを発現するようにウイルスによって形質導入した初期継代LLC-PK1細胞(NHERF-1/エズリン陽性)において32P取込みを阻害したが(Mahon, Am J Physiol Renal Physiol. 294:F667-75 (2008))、Trp1-M-PTH(1〜28)はこの作用を阻害することができなかった。前記知見は、腎Pi輸送のPTHRを介した調節が、1つの構成要素として、NaPi-IIaの下方調節のcAMP/PKA依存性制御を含み、そしてもう1つ別の、おそらくより緩慢で重要ではない構成要素として、NaPi-IIc下方調節のPLC依存性制御を含むことを示唆する。
【0161】
実施例8:TPTXラットにおける血清中および尿中カルシウムおよびリン酸に関するM-PTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)の特徴づけ
本発明者らはまた、血清中および尿中のカルシウムおよびリン酸へのM-PTH(1〜14)/PTHrP(15〜36)ハイブリッドペプチド(SP-PTH)の作用も検討した。甲状腺上皮小体切除(TPTX)ラットへの1.25nmol/kgのPTH(1〜34)の単回静脈内注射は、1時間目に血清中カルシウム(sCa)レベルを一過性に上昇させ、血清中リン(sPi)レベルを低下させたが、正常範囲までではなく、レベルは6時間目までに注射前の状態にもどった(それぞれ図33および35)。PTH(1〜34)は、0〜6時間目にわたって尿中カルシウム(図34)または尿中リン酸レベル(図36)を変化させなかった。これに対し、1.25nmol/kgのSP-PTHの投与は、6時間以内にsCaを正常レベルに上昇させ、sPiを正常レベルに低下させて、これらのレベルは24時間維持された。SP-PTHは、0〜6時間目まで尿中カルシウムを低下させ、尿中リン酸レベルを上昇させた。これらの結果は、SP-PTHが高カルシウム尿症を引き起こさずにTPTXラットにおいて低カルシウム血症を正常化できることを示し、それゆえ、このペプチドが腎合併症の高い危険度を伴わずに副甲状腺機能低下症を治療するために使用できることを示唆する。
【0162】
実施例9:PTHまたはPTHrP類似体を使用したcAMP刺激
ヒトPTH1受容体を9.5×105/細胞のレベルで過剰発現するLLC-PK1細胞であるHKRK-BをcAMPシグナル伝達アッセイにおいて使用した。10%胎仔ウシ血清(Hyclone)、100単位/mlのペニシリンG、および100μg/mlの硫酸ストレプトマイシン(Invitrogen Corp)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において、5%CO2を含む加湿雰囲気中37℃で細胞を培養した。ヒトPTHrP(1〜36)はAmerican Peptide Company, Inc. (California, USA)によって合成され、ヒトPTH(1〜34)はPeptide Institute Inc. (Osaka, Japan)より購入し、PTHまたはPTHrP類似体、

はSigma Aldrich Japan (Tokyo, Japan)によって合成された。すべてのペプチドを10mM酢酸中1mMで溶解し、-80℃で保存した。cAMP刺激アッセイを、HKRK-B7細胞に関して前述したように実施した。PTH(1〜34)およびPTHrP(1〜36)を対照として使用した。細胞をIBMXの存在下で37℃にて様々な濃度のリガンドで15分間処理した。EC50およびEmax値を表8において報告する。C末端修飾を有するすべてのM修飾PTH類似体は、hPTH(1〜34)に匹敵するcAMPシグナル伝達を示す(図37)。
【0163】
(表8)

【0164】
実施例10:骨粗しょう症の治療のための短時間作用性PTHペプチドの使用
前述したもののような短時間作用性ペプチドは、骨粗しょう症を有する患者に投与される。一般に、間欠的静脈内/筋肉内または皮下注射による骨粗しょう症の治療の場合、与えられる用量は100〜1200単位(μg)/日の範囲内である。
【0165】
これらの化合物および組成物の投与のための正確な用量およびレジメンは、治療される個々の対象の必要性、治療の種類、苦痛または必要性の程度、そして言うまでもなく、医師の判断に必然的に依存する。一般に、非経口投与は、吸収により大きく依存する他の投与方法よりも低い用量しか必要としない。
【0166】
実施例11:PTH欠損の治療のための長時間作用性PTHペプチドの使用
前述したもののような長時間作用性ペプチドは、PTH欠損に関連する疾患を有する患者に投与される。これらの疾患の例は、腫瘍状石灰症に関連する高リン血症、早期慢性腎疾患および副甲状腺機能低下症を含む。投与されるペプチドの1日用量は適応症に依存する。一般に、毎日の静脈内/筋肉内または皮下注射の場合、好ましくは300〜2400単位(μg)/日である。
【0167】
これらの化合物および組成物の投与のための正確な用量およびレジメンは、治療される個々の対象の必要性、治療の種類、苦痛または必要性の程度、そして言うまでもなく、医師の判断に必然的に依存する。一般に、非経口投与は、吸収により大きく依存する他の投与方法よりも低い用量しか必要としない。
【0168】
他の態様
本明細書において言及されるすべての特許、特許出願、および出版物は、各々独立した特許、特許出願、または出版物が、参照により本明細書に組み入れられることが具体的且つ個別に示されているのと同じように、参照により本明細書に組み入れられる。それぞれ2007年8月1日、2007年8月2日、および2007年8月6日出願の米国特許仮出願第60/963,117号、同第60/963,082号、および同第60/963,867号は、参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
候補化合物がGタンパク質共役受容体(GPCR)の長時間作用性アゴニストであるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)RG形態であるGPCRを前記化合物と接触させる工程;
(b)RG形態のGPCRに対する前記化合物の親和性を測定する工程;
(c)R0形態であるGPCRを前記化合物と接触させる工程;および
(d)R0形態のGPCRに対する前記化合物の親和性を測定し、(i)RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも10%の親和性を有する化合物、および(ii)R0形態のGPCRに対して前記内因性アゴニストよりも高い親和性を有する化合物を、GPCRの長時間作用性アゴニストとして同定する工程。
【請求項2】
(e)候補化合物を動物に投与する工程、および
(f)前記化合物に対する前記動物の少なくとも1つの生理的応答を測定する工程
をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
受容体がヒト受容体である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
GPCRがセクレチンファミリーの受容体である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
受容体がPTH/PTHrP受容体である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
PTH/PTHrP受容体がヒト受容体である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
測定する工程(b)を、細胞内または血中カルシウムレベルを測定することによって実施する、請求項5記載の方法。
【請求項8】
測定する工程(b)または工程(d)を、競合結合アッセイを用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項9】
競合結合アッセイが、RG形態のGPCRに特異的であるかまたはR0形態のGPCRに特異的であるリガンドを使用する、請求項8記載の方法。
【請求項10】
測定する工程(b)を遅延型(delayed)cAMPアッセイを用いて実施する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
R0形態のGPCRを、非加水分解性ヌクレオチド類似体を用いて富化する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
ヌクレオチド類似体がGTPγSである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
RG形態のGPCRを、ドミナントネガティブGタンパク質を用いて富化する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
受容体が細胞上または膜内に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
候補化合物がペプチドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
候補化合物が化学物質ライブラリーまたは天然産物ライブラリー由来である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
候補化合物がGタンパク質共役受容体(GPCR)の短時間作用性アゴニストであるかどうかを決定するための方法であって、以下の工程を含む方法:
(a)RG形態であるGPCRを前記化合物と接触させる工程;
(b)RG形態のGPCRに対する前記化合物の親和性を測定する工程;
(c)R0形態であるGPCRを前記化合物と接触させる工程;および
(d)R0形態のGPCRに対する前記化合物の親和性を測定し、(i)RG形態のGPCRに対して、GPCRに対する内因性アゴニストの少なくとも10%の親和性を有し、且つ(ii)R0形態のGPCRに対して前記内因性アゴニストよりも低い親和性を有する化合物を、GPCRの短時間作用性アゴニストとして同定する工程。
【請求項18】
受容体がヒト受容体である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
(e)候補化合物を動物に投与する工程、および
(f)前記化合物に対する前記動物の少なくとも1つの生理的応答を測定する工程
をさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項20】
GPCRがセクレチンファミリーの受容体である、請求項16記載の方法。
【請求項21】
受容体がPTH/PTHrP受容体である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
PTH/PTHrP受容体がヒト受容体である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
測定する工程(b)を、細胞内または血中カルシウムレベルを測定することによって実施する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
測定する工程(b)または工程(d)を、競合結合アッセイを用いて実施する、請求項17記載の方法。
【請求項25】
競合結合アッセイが、RG形態のGPCRに特異的であるまたはR0形態のGPCRに特異的であるリガンドを使用する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
測定する工程(b)を遅延型cAMPアッセイを用いて実施する、請求項17記載の方法。
【請求項27】
R0形態のGPCRを、非加水分解性ヌクレオチド類似体を用いて富化する、請求項17記載の方法。
【請求項28】
ヌクレオチド類似体がGTPγSである、請求項11記載の方法。
【請求項29】
RG形態のGPCRを、ドミナントネガティブGタンパク質を用いて富化する、請求項17記載の方法。
【請求項30】
受容体が細胞上または膜内に存在する、請求項17記載の方法。
【請求項31】
候補化合物がペプチドを含む、請求項17記載の方法。
【請求項32】
候補化合物が化学物質ライブラリーまたは天然産物ライブラリー由来である、請求項17記載の方法。
【請求項33】
PTH RGに対して親和性を有し、且つPTH R0に対して低い親和性を有するポリペプチド。
【請求項34】
野生型PTHまたはPTHrP配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失、および/または付加によって修飾されたアミノ酸配列を有する、請求項33記載のポリペプチド。
【請求項35】
アミノ酸が、5位にヒスチジンを有するまたは23位にアラニンを有する、請求項34記載のポリペプチド。
【請求項36】
以下の式Ala23PTH、His5-PTH、およびHis5-PTHrPによって表されるペプチド、またはそのフラグメント中に、野生型配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項33記載のポリペプチド。
【請求項37】
アミノ酸配列が、野生型PTHと比較してPTHRのアミノ末端細胞外ドメインに対してより低い親和性を有する、請求項34記載のポリペプチド。
【請求項38】
アミノ酸配列が、PTHまたはPTHrP配列の20位のアラニン、23位のアラニン、24位のアラニン、および28位のアラニンからなる群より選択される少なくとも1つの置換を含む、請求項37記載のポリペプチド。
【請求項39】
図26Bの表においてRG選択的と同定されるもののいずれかからなる群より選択される、請求項33記載のポリペプチド。
【請求項40】
式中、
X1が、Ser、Ala、Gly、もしくはAibであり;
X2が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X3が、Ala、Asn、Glu、Val、Asp、もしくはGlnであり;
X4が、Leu、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、もしくはHarであり;
X5が、Gly、His、Arg、Ala、もしくはAibであり;
X6が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、Arg、もしくはAibであり;且つ
X7が、His、Arg、Leu、Phe、Trp、もしくはAibである、アミノ酸配列:

またはアミノ酸1〜10、1〜11、1〜12、もしくは1〜13を含むそのフラグメントを含む、請求項34もしくは37記載のポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項41】
20アミノ酸長より短いアミノ酸配列を有する、請求項40記載のポリペプチド。
【請求項42】
アミノ酸配列が10〜14アミノ酸長である、請求項41記載のポリペプチド。
【請求項43】
本質的に前記アミノ酸配列、またはそのフラグメントからなる、請求項40記載のポリペプチド。
【請求項44】
前記アミノ酸配列、またはそのフラグメントからなる、請求項43記載のポリペプチド。
【請求項45】
式中、
X1が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X2が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X3が、IleもしくはHisであり;
X4が、Asn、Glu、Val、Asp、Glu、もしくはGlnであり;
X5が、Leu、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、Arg、もしくはHarであり;
X6が、Gly、His、Arg、もしくはAlaであり;
X7が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArgであり;
X8が、His、Arg、Leu、Phe、もしくはTrpであり;
X9が、ArgもしくはAlaであり;
X10が、Trp、Phe、もしくはAlaであり;
X11が、LeuもしくはAlaであり;且つ
X12が、LeuもしくはAlaである、アミノ酸配列:

または該アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、もしくは1〜27を含むそのフラグメントを含むポリペプチドであって、該アミノ酸配列が、X3位のHis、X9位のAla、X10位のAla、X11位のAla、およびX12位のAlaからなる群より選択されるアミノ酸の少なくとも1つを含む、請求項33記載のポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項46】
50アミノ酸長より短い、請求項45記載のポリペプチド。
【請求項47】
24〜28アミノ酸長である、請求項46記載のポリペプチド。
【請求項48】
本質的に前記アミノ酸配列、またはそのフラグメントからなる、請求項45記載のポリペプチド。
【請求項49】
前記アミノ酸配列、またはそのフラグメントからなる、請求項48記載のポリペプチド。
【請求項50】
X9、X10、X11、またはX12の少なくとも1つがアラニンである、請求項45〜49記載のポリペプチド。
【請求項51】
請求項33〜50記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項52】
請求項33〜51のいずれか一項記載のポリペプチドまたは組成物を、骨粗しょう症を治療するのに十分な量で、その必要のある対象に投与する工程を含む、対象において骨粗しょう症を治療するための方法。
【請求項53】
対象において骨折修復、骨軟化症、関節炎、血小板減少症、副甲状腺機能低下症もしくは高リン血症を治療するまたは幹細胞動員を高めるための方法であって、請求項33〜51のいずれか一項記載のポリペプチドを、前記疾患を治療するまたは幹細胞動員を高めるのに十分な量で前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項54】
投与経路が、皮下的、静脈内、鼻腔内、経肺的、経皮的、および経口的からなる群より選択される、請求項52または53記載の方法。
【請求項55】
PTH受容体に結合し、且つR0形態のPTH受容体に高い親和性を有する、ポリペプチド。
【請求項56】
野生型PTHまたはPTHrP配列と比較して1またはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加によって修飾されたアミノ酸配列を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項57】
7.9nM未満のIC50を有する図26Bのペプチドのいずれか、

からなる群より選択される、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項58】
アミノ酸配列が、野生型PTHと比較してPTHRのアミノ末端細胞外ドメインに対してより高い親和性を有する、請求項55記載のポリペプチド。
【請求項59】
アミノ酸配列が、19位にアルギニンまたは5位にイソロイシンを含む、請求項55または58記載のポリペプチド。
【請求項60】
式中、
X1が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X2が、Ser、Ala、もしくはAibであり;
X3が、Asn、Glu、Val、Asp、Glu、もしくはGlnであり;
X4が、Leu、Val、Ala、Trp、Ile、Met、Lys、もしくはArgであり;
X5が、Gly、His、Arg、もしくはAlaであり;
X6が、Lys、Gln、Leu、His、Trp、Ala、もしくはArgであり;且つ
X7が、His、Arg、Leu、Phe、もしくはTrpである、

のアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、もしくは1〜27を含有するそのフラグメントを含む、請求項55〜59記載のポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項61】
50アミノ酸長より短い、請求項60記載のポリペプチド。
【請求項62】
24〜28アミノ酸長である、請求項61記載のポリペプチド。
【請求項63】
本質的に前記アミノ酸配列、またはそのフラグメントからなる、請求項60記載のポリペプチド。
【請求項64】
請求項60〜63記載のポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
【請求項65】
対象において副甲状腺機能低下症、高リン血症、腫瘍状石灰沈着症、および骨粗しょう症からなる群より選択される疾患または状態を治療するための方法であって、請求項55〜57のいずれか一項記載のポリペプチドを、前記疾患または状態を治療するのに十分な量で、その必要のある対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項66】
骨折修復を必要とする、または骨軟化症、関節炎、血小板減少症を有する、または幹細胞動員を必要とする対象を治療するための方法であって、請求項55〜57のいずれか一項記載のポリペプチドを、前記骨折を修復する、前記疾患を治療する、または幹細胞を動員するのに十分な量で、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項67】
投与経路が、皮下的、静脈内、鼻腔内、経肺的、経皮的、および経口的からなる群より選択される、請求項65または66記載の方法。
【請求項68】
式中、
Xlが、Leu、Ala、Ser、Met、Phe、もしくはGluであり;
X2が、Phe、Ala、Ser、Leu、Asn、Trp、Glu、もしくはLysであり;
X3が、His、Leu、Arg、Lys、Trp、Ile、もしくはPheであり;
X4が、His、Ala、Ser、Asn、Lys、もしくはArgであり;
X5が、Ala、Gly、Ser、Asn、Gln、Trp、Glu、もしくはLysであり;
X6が、Glu、Gly、Ser、Leu、Asn、Asp、Lys、もしくはAlaであり;
X7が、Ile、Leu、Val、Lys、もしくはAlaであり;
X8が、His、もしくはAlaであり;
X9が、Thr、Asn、もしくはAlaであり;且つ
X10が、Ala もしくはPheである、アミノ酸配列:

または該アミノ酸配列のアミノ酸1〜24、1〜25、1〜26、1〜27、1〜28、1〜29、1〜30、1〜31、1〜32、1〜33、1〜34、もしくは1〜35を含有するそのフラグメントを含み、対応する野生型PTHrP配列またはそのフラグメントと比較して少なくとも1つのアミノ酸の置換を含む、ポリペプチド、または薬学的に許容されるその塩。
【請求項69】
50アミノ酸長より短い、請求項68記載のポリペプチド。
【請求項70】
ポリペプチドもしくはそのフラグメントが28〜36アミノ酸長である、請求項69記載のポリペプチド。
【請求項71】
XlがAlaまたはGluである、X2がAlaである、X3がLeuである、およびX4がLysであるアミノ酸置換からなる群より選択される少なくとも1つのアミノ酸置換を有する、請求項68〜70記載のポリペプチド。
【請求項72】
表1に示すアミノ酸配列を含む、請求項68〜70記載のポリペプチド。
【請求項73】
アミノ酸配列

を含む、請求項71または72記載のポリペプチド。
【請求項74】
アミノ酸配列

からなる、請求項73記載のポリペプチド。
【請求項75】
ヒドロキシル基を有するかまたはそのC末端でアミド化されている、請求項68〜70記載のポリペプチド。
【請求項76】
本質的に前記アミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、請求項68〜75記載のポリペプチド。
【請求項77】
RG選択的であるかまたはR0形態のPTH受容体に低い結合親和性を有する、請求項68〜76記載のポリペプチド。
【請求項78】
請求項68〜77記載のポリペプチドのいずれかおよび薬学的に許容される担体を含む、薬学的組成物。
【請求項79】
請求項68〜78のいずれか一項記載のポリペプチドまたは組成物を、骨粗しょう症を治療するのに十分な量で、その必要のある対象に投与する工程を含む、対象において骨粗しょう症を治療するための方法。
【請求項80】
対象において骨折修復、骨軟化症、関節炎、血小板減少症、副甲状腺機能低下症もしくは高リン血症を治療する、または幹細胞動員を高めるための方法であって、請求項68〜78のいずれか一項記載のポリペプチドを、前記疾患を治療するまたは幹細胞動員を高めるのに十分な量で、前記対象に投与する工程を含む、方法。
【請求項81】
投与経路が、皮下的、静脈内、鼻腔内、経肺的、経皮的、および経口的からなる群より選択される、請求項79または80記載の方法。
【請求項82】
請求項33〜50、55〜63、および68〜77のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする配列を含む、核酸。
【請求項83】
プロモーターに機能的に連結される、請求項82記載の核酸。
【請求項84】
請求項83記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項85】
請求項84記載のベクターを含む、細胞。
【請求項86】
ポリペプチドを作製する方法であって、該ポリペプチドが発現される条件下で請求項85記載の細胞を増殖させる工程を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公表番号】特表2010−536327(P2010−536327A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519932(P2010−519932)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/009288
【国際公開番号】WO2009/017809
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(592017633)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション (177)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】