説明

GABAsアゴニストによる胃不全麻痺と非潰瘍性消化不良の治療

本発明は、バクロフェン又は(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を含む製剤と、それらの使用方法に関する。本発明の製剤及び方法は、バクロフェンの治療量を、その治療効果を最大にする方法で、放出するように設計される。該方法と製剤は、胃不全麻痺及び非潰瘍性消化不良の治療に特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願第60/502,242号(2003年9月12日出願)と米国仮特許出願第60/553,940号(2004年3月18日出願)の優先権の恩恵を主張するものであり、これらの仮特許出願の両方ともそれらの全体で本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、ガンマ−アミノ酪酸−B(γ−アミノ酪酸−B又はGABAs)受容体のアゴニストによる胃不全麻痺と非潰瘍性消化不良の治療のための方法と製剤に関する。このようなアゴニストは、非限定的に、バクロフェンを含み、本発明の方法と製剤は、調節放出製剤を含めた製剤中での、ラセミ・バクロフェン又は(R)−バクロフェンの投与を包含する。
【0003】
迷走神経は、消化管を通る食物の移動を制御する。通常は、胃の筋肉は1分間に約3回収縮し、食後約90〜120分間以内に胃は空になる。迷走神経が損傷するか又は機能不全になると、胃の筋肉は適切に機能しなくなり、胃の収縮は不活発になる、及び/又は収縮回数が少なくなる。その結果、食物の移動は緩慢になるか、又は停止する。胃不全麻痺は、この状態の医学用語である。
【0004】
胃不全麻痺の主要な原因は、非限定的に、ウイルス感染後症状、拒食症、胃神経若しくは迷走神経の手術、薬物療法、特に抗コリン作用薬と麻薬(又は腸における収縮を緩慢にする、何らかの他の薬物)、胃食道逆流疾患、例えばアミロイド症と強皮症のような平滑筋障害、例えば腹性偏頭痛とパーキンソン病のような神経系疾患、及び例えば甲状腺機能低下症のような代謝障害を包含する。
【0005】
糖尿病も、胃不全麻痺の主要な原因である。糖尿病患者の血糖レベルは、しばしば、長期間にわたって高いままである。高い血糖は神経中に化学変化を惹起し、酸素と栄養物を迷走神経に運ぶ血管を損傷する。その結果、I型糖尿病患者の少なくとも20%がい不全麻痺を発症する。胃不全麻痺は、I型糖尿病患者より低い罹患率であるが、II型糖尿病患者においても生じる。
【0006】
胃不全麻痺の典型的な症状は、早期満腹感(early satiety)、体重減少、胃鼓脹、胃不快感、上腹部痛、拒食症、吐き気及び嘔吐を包含する。これらの症状は、軽度であることも、重篤であることもありうる。さらに、食物は胃に残存するので、胃不全麻痺は、例えば、食物の発酵からの細菌の異常増殖、胃石と呼ばれる固体塊への食物の硬化のような合併症を生じる可能性があり、胃石は吐き気、嘔吐及び胃の閉塞を惹起する可能性がある。胃石は、小腸への食物の通過をブロックするならば、危険である可能性がある。
【0007】
経口形及び注射可能形でのメトクロプラミドは、米国における胃不全麻痺の唯一の認可された治療薬である。シサプリド、エリスロマイシン及びドムペリドンが胃不全麻痺の治療のために研究されているが、この適応に関して認可されていない。シサプリドは安全性の理由から退けられている。エリスロマイシンは抗菌剤であり、抗感染性でないとの理由から、一般人口における耐性発生を防止するために用いるべきではない。そして、ドムペリドンはメトクロプラミドの低効力型(less potent version)である。さらに、胃不全麻痺の1つ以上の症状(即ち、吐き気、嘔吐)を寛解するために時には用いられるが、例えばメトクロプラミドとは異なって、胃運動性を高めることによって根本的障害を治療しない。実際に、胃不全麻痺は、嘔吐に加えて複数の症状を包含しているので、熟練した開業医は、嘔吐のみを治療する薬物が胃不全麻痺の適切な治療薬であるとは期待しないと考えられる。
【0008】
メトクロプラミドはドーパミン・アンタゴニストであり、胃筋肉の収縮を刺激することによって作用して、食物を空にするのを助ける。伝統的に、メトクロプラミドによる胃不全麻痺の治療は、注射又は経口ルートを介してである。メトクロプラミドは現在、名称REGLAN(登録商標)(A.H.Robbins Company)の下に、錠剤形、注射形及びシロップ形で入手可能である。タキフィラキシーは、患者によっては、メトクロプラミドの有利な効果を明らかにすることになる。
【0009】
メトクロプラミドは、疲労、睡眠、抑うつ、不安、及び物理的運動に伴う困難性を包含する、重大な副作用プロフィルを有する。抑うつの先行病歴の有無に拘らず、患者に精神の抑うつは生じている。症状は、軽度から重症までの範囲であり、自殺の観念及び自殺を包含する。他の副作用には、四肢の無意識の動作と顔面の歪み、斜頚、注視痙攣、舌の律動的突出、球状言語(bulbar type of speech)、開口障害、及び例えば喘鳴と呼吸困難のようなジストニー反応を包含する。
【0010】
胃不全麻痺患者では、GI管からの吸収は予測不可能であり、通常よりも有効性がはるかに低い、予測可能性と有効性は症状の重症度に逆比例する。したがって、症状が重症であればあるほど、経口投与がオプションである可能性は低くなる。経口投与の問題をさらに複雑にしているのは、胃不全麻痺患者がしばしば、嘔吐及び吐き気のような症状を有するという事実である。嘔吐が生じる場合には、経口投与量のうちの胃中に残存する量は未知であり、治療結果はさらに予想し難い。
【0011】
上述したように、胃不全麻痺の1つの結果は、消化不良であり、消化不良は、上腹部に集中した持続する又は反復する痛みとして定義される。該痛みが少なくとも12週間にわたって生じる又は反復し、12か月間内に連続的又は非連続的であり、そして該症状を説明することができる器質性疾患の証拠が存在しないか、又は該痛みが排便によって絶対的に寛解される若しくは糞便回数若しくは糞便形状の変化の開始に関連するといった証拠が存在しない場合には、消化不良は、非潰瘍性消化不良又は機能性消化不良として分類される。
【0012】
非潰瘍性消化不良の典型的な症状は、上腹部不快感又は鼓脹感、満腹感、及び上腹部の膨張を包含する。該痛みは灼熱痛でも、激痛でもない。非潰瘍性消化不良の症状は、時には、他の障害の症状、例えば、嘔吐又は吐き気と重複し、このことが、別の障害としての非潰瘍性消化不良の誤診を生じる可能性がある。しかし、非潰瘍性消化不良は、嘔吐に加えて一連の症状を包含するので、熟練した開業医は、嘔吐のみを治療する薬物が非潰瘍性消化不良の適切な治療薬であるとは期待しないと考えられる。
【0013】
非潰瘍性消化不良の原因は、食後前庭部運動障害、小腸運動障害、膨張及び栄養物に対する内臓過敏症、食事に対する適応障害、及び中枢神経障害を包含する。しかし、非潰瘍性消化不良の病理生理学は複雑であり、殆ど未知のままである。
【0014】
非潰瘍性消化不良を治療するために、プロトン・ポンプ阻害薬が用いられている。しかし、プラセボを上回る治療効果は、顕著な痛み症状を有する患者においては些少であり、顕著な運動不全型症状を有する患者では見られない。Hブロッカーは、非潰瘍性消化不良患者において如何なる有利な成果も示していない。
【0015】
胃不全麻痺の治療に関して上述した、例えば、シサプリド、レボスルプリド、ドムペリドン及びメトクロプラミドのような消化管運動賦活調整剤(prokinetic agents)も、非潰瘍性消化不良の治療に用いられている。しかし、非潰瘍性消化不良におけるこれらの薬物の効力はまだ充分に研究されていない。
【0016】
抗うつ薬及び心理療法による非潰瘍性消化不良の治療も提案されている。しかし、非潰瘍性消化不良の症状の改善がうつ病に対する効果と無関係であるか否かは、まだ確認されていない。
【0017】
上記を考慮すると、胃不全麻痺と非潰瘍性消化不良の改良された治療方法が明らかに必要とされている。
【0018】
バクロフェン(4−アミノ−3−(p−クロロフェニル)−酪酸)は、筋肉弛緩剤及び抗痙縮剤として一般に用いられている。バクロフェンは中枢的に作用し、主としてGABAs受容体アゴニストとして作用すると考えられる。GABA(γ−アミノ酪酸)は、GABAとGABA受容体サブタイプの両方において作用する神経伝達物質である。GABA受容体はCNS及び腸神経系中に存在する。
【0019】
GABAアゴニスト、GABAアゴニスト及びバクロフェンは、ある種のGI状態の治療に有用であるとして記載されている。例えば、WO 96/11680とWO 94/25016は、t6特に嘔吐を治療するためのGABAアゴニスト及びバクロフェンの使用を記載している。他の例は、胃食道逆流疾患(GERD)の治療へのバクロフェンを含めたGABAアゴニストの使用を記載するWO 98/11885、GERDと夜間酸ブレイクスルー(nocturnal acid breakthrough)(NAB)とを同時に治療するためのGABAアゴニストの使用を記載しているWO 02/096404、胃腸障害を治療するためのGABAアゴニストの使用を記載しているWO 03/090731、及び胃腸障害を治療するための、他の治療薬と組み合わせたGABAアゴニストの使用を記載しているWO 03/072048を包含する。胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の種々な症状、例えば嘔吐がバクロフェンの治療に反応しうるが、根本的障害を治療するためにバクロフェンを用いることが知られていないことは、当業者に明らかであろう。
【0020】
消化管の運動に対するバクロフェンの薬理学的効果、特に胃の運動に対するバクロフェンの効果は、in vitro研究と完全な動物において研究されている。これらの研究は、バクロフェンが迷走神経依存性機構によって胃の運動に効果を及ぼすことを示唆している。しかし、バクロフェンがその効果を中枢的若しくは末梢的若しくは両方のいずれで及ぼすかに関して、又は実際に、該効果がコリン作用性効果、直接のGABAアゴニスト効果若しくは5−ヒドロキシトリプタミンによって若しくはこれら効果全ての何らかの組み合わせのいずれで仲介されるかに関して、種々な理論が存在する。
【0021】
現在用いられているバクロフェンはラセメートである。主要なGABAアゴニスト活性は(R)異性体((−)及び(L)とも呼ばれる)に付随する。血液脳関門を横切る(R)異性体の立体選択的輸送が存在すること、及び(R)異性体が、(S)異性体よりも、低い代謝クリアランス、長い半減期及び高度な全身暴露を示すことの証拠も存在する。
【0022】
バクロフェンの物理化学的特徴は、投与量製剤化(dosage formulation)の問題を提示する。バクロフェンは両性イオンであり、pHに依存して、正味の陰性、正味の陽性、又は正味の中性電荷を有することができる。バクロフェンがアミノ酸キャリヤー仲介機構によって輸送される上部小腸を例外として、バクロフェンはGI管において低透過性を示す。これらの特徴は、総合すれば、バクロフェンが酸性環境中及び低透過性の部位に保持されうるような、例えば胃不全麻痺及び非潰瘍性消化不良のような状態では、伝統的経口バクロフェン製剤にとって特に問題である。
【0023】
本発明は、胃不全麻痺及び非潰瘍性消化不良を治療するための方法と製剤を提供する場合に、有利である。本発明はまた、副作用を軽減しながら、バクロフェン又は(R)バクロフェンの全身吸収を最大にするという利点を有する。本発明の方法と製剤は胃不全麻痺に付随する嘔吐を寛解することもできるが、この効果は本発明の一部とは見なされない、本発明は根本的状態の治療に関する。
【0024】
本発明のこれら及び他の利点は、胃不全麻痺及び非潰瘍性消化不良の治療を必要とする対象における、有効量のバクロフェン又はその製薬的に受容される塩を前記対象に投与することを含む、胃不全麻痺の治療方法及び非潰瘍性消化不良の治療方法によって達成される。
【0025】
胃不全麻痺は、糖尿病、ウイルス感染後症状、拒食症、胃神経若しくは迷走神経の手術、アミロイド症、強皮症、腹性偏頭痛、パーキンソン病、甲状腺機能低下症によって惹起されうるか、又は胃不全麻痺は、上記状態のいずれかの症状でありうる。胃不全麻痺は、バクロフェン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に付随する、少なくとも1つの副作用を最小にしながら、治療することができる。
【0026】
非潰瘍性消化不良は、胃内容排出遅延、食後胃前庭部(antral)運動障害、小腸運動障害、胃炎、膨張及び食物に対する内臓過敏症、食事に対する適応障害、及び中枢神経障害によって惹起されうるか、又は上記状態のいずれかの症状でありうる。非潰瘍性消化不良は、バクロフェン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に付随する、少なくとも1つの副作用を最小にしながら、非潰瘍性消化不良を治療することができる。
【0027】
本発明の幾つかの実施態様では、調節放出製剤を含むことができる製薬的投与形で、バクロフェンを提示する。該調節放出製剤は、即時放出製剤との組み合わせで存在することができる。該投与形は、経口投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、注射投与又は経皮投与のために適切でありうる。
【0028】
全ての実施態様では、バクロフェンは、ラセミ・バクロフェン、富化(即ち、少なくとも51%)(R)−バクロフェン、実質的純粋な(即ち、少なくとも90%)(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩を含むことができる。バクロフェン又はその製薬的に受容される塩は、1種類以上の他の薬剤学的活性化合物と組み合わせて投与することができる。
【0029】
本発明はさらに、経口、鼻腔内、頬側、経皮、非経口又は舌下投与のための製薬的投与形の形態で、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な[R]−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩を含む、製薬的に受容される製剤をも提供する。これらの製剤のいずれも、調節放出投与形として製剤化することができる。幾つかの場合に、本発明の製剤の、それを必要とする対象への投与は、バクロフェンの慣用的ラセミ製剤の投与に付随する副作用の1つ以上を最小にしながら、胃不全麻痺の症状を軽減する。他の実施態様では、本発明の製剤の、それを必要とする対象への投与は、バクロフェンの慣用的ラセミ製剤の投与に付随する副作用の1つ以上を最小にしながら、非潰瘍性消化不良の症状を軽減する。
【0030】
幾つかの経口実施態様では、本発明の製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、0.01N〜0.1N HCl中で撹拌したときに、30分間以内にその薬物含量の75%以上を放出する。他の実施態様では、該製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、1時間:約10%〜約50%;2時間:約20%〜約70%;4時間:約70%を越えて;及び6時間:約80%を越えて放出する。
【0031】
幾つかの経口実施態様では、本発明の製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、0.01N〜0.1N HCl中で2時間、続いて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で試験の残り時間撹拌したときに、2時間(酸中):約20%以下;2時間(緩衝液中):約20%以上;4時間(緩衝液中):約40%以上;6時間(緩衝液中):約60%以上;及び12時間(緩衝液中):約80%以上を放出する。或いは、本発明の製剤は、2時間(酸中):約10%以下;2時間(緩衝液中):約50%以上;4時間(緩衝液中):約70%以上;及び6時間(緩衝液中):約80%以上を放出する。
【0032】
幾つかの経口実施態様では、該製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、2時間:約10%以下;及び6時間:約80%以上を放出する。該製剤はさらに、2時間:約10%以下;4時間:約20%〜約80%;及び6時間:約80%以上を放出することができる。
【0033】
本発明はまた、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療を必要とする対象に投与することを含む胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療方法であって、該対象が富化(R)−バクロフェン又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの投与から生じる治療利益を得る、そして富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の該量が、同じ治療利益を得るために必要な、ラセミ・バクロフェンの量よりも少ない方法に関する。
【0034】
本発明はさらに、ラセミ・バクロフェンの投与に付随する1つ以上の副作用を軽減する方法であって、このような軽減を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、該1つ以上の副作用が、等量のラセミ・バクロフェンの投与から生じる副作用に比べて軽減される方法に関する。
【0035】
さらになお、本発明は、ラセミ・バクロフェンの投与に付随する1つ以上の薬物相互作用を軽減する方法であって、このような軽減を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、該1つ以上の薬物相互作用が、等量のラセミ・バクロフェンの投与から生じる薬物相互作用に比べて軽減される方法に関する。
【0036】
本発明はさらに、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療の治療効果を持続させる方法であって、このような治療を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の投与が、等量のラセミ・バクロフェンの投与によって得られる治療効果よりも長く持続する治療効果を生じる方法に関する。
【0037】
幾つかの実施態様では、本発明は、例えば嘔吐及び/又は胃食道逆流疾患のような、他の胃腸障害に関連しない、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療方法に関する。
【0038】
上記一般的記載及び以下の詳細な記載が、典型的かつ説明的であるに過ぎず、特許請求する本発明を制限するものではないことを理解すべきである。
【0039】
本発明は、富化(R)−バクロフェン及び/又は実質的純粋な(R)−バクロフェンを含む、新規な組成物と、それらの使用方法に関する。如何なる特定の理論によっても縛られることを望む訳ではないが、ラセミ・バクロフェン中の(S)−バクロフェンの存在が、その部分的アゴニスト活性のために、薬物の特異的アゴニスト活性を減ずることが考えられる。この部分的アゴニスト活性は、(R)−バクロフェンの活性を部分的にブロックし、さらに、それ自体の効果を及ぼす、即ち、GABAの本来の活性をブロックするという二重効果を有する。したがって、投与された(S)−バクロフェンは動脈血圧及び心拍数を低下させるが、(R)−バクロフェンは反対の効果を示すことが判明している。(R)−バクロフェンGABA受容体亜型に対して比較的選択的である。したがって、富化(R)−バクロフェン又は実質的純粋な(R)−バクロフェンは、それを受容する患者において、ラセミ混合物を受容する患者に比べて、殆ど副作用を惹起しない可能性がある。したがって、本発明の富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン組成物は、ラセミ・バクロフェン組成物並びに他のGABAアゴニストに比べて、幾つかの重要な利点を提供する。
【0040】
例えば、所望の治療効果を達成するために必要な、薬物製品の総量は、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンを用いる場合には、ラセミ混合物に比べて低くなる可能性がある。例えば、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの該量は、同じ効果を達成するために必要な、ラセミ・バクロフェンの量の90、80、70%未満、又は50%未満でありうる。したがって、低い量の総薬物製品を最終製剤に用いることができる。総薬物製品の低い量は、生体異物への患者暴露を最小にして、それによって、多くの副作用を軽減して、大きい安全性を提供することができる。例えば皮膚発疹のような、非特異的副作用の可能性を減ずることも可能である。さらに、例えば錠剤のような最終製剤をより小さく、したがって嚥下し易く製造することができる。
【0041】
等量のラセミ混合物に比べて、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンを用いることの他の利点は、持続する治療効果である。腎臓クリアランス率は(S)−バクロフェンに関しては、(R)−バクロフェンに関するよりも大きいと考えられる。それ故、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンを受容する患者に関しては、同じ投与量のラセミ・バクロフェンを受容する患者に比べて、持続する治療効果が期待される。
【0042】
本発明による富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン組成物は、例えば、該化合物の血漿濃度の低いピーク〜トラフ変動を示す1日1回調節放出投与形のような、より安全で、有効な投与形として製造することもできる。これは、(R)−バクロフェンのGABA受容体選択性にとって最適である範囲内に血漿濃度を維持しながら、著しいピーク濃度の回避を可能にする。この最適範囲を維持することによって、他のGABA受容体亜型におけるアゴニスト効果による副作用の可能性は低下する。
【0043】
本明細書で用いる限り、「調節放出」製剤又は投与形なるフレーズは、製剤からの薬物の所望の放出を達成する薬剤製剤を包含する。例えば、調節放出製剤は、患者における活性化合物の治療有効量の影響又は効果を持続させる。このような製剤は、本明細書では、「持続放出(extended-release)」製剤と呼ばれる。活性化合物の治療レベルを維持することの他に、調節放出製剤は該活性化合物の放出を指定された期間遅延させるように設計することもできる。このようなコンパウンド(compounds)は、本明細書では、「遅延開始」製剤又は投与形と呼ばれる。さらになお、調節放出製剤は、遅延放出製剤と持続放出製剤の両方の性質を示すことができ、したがって、例えば、「遅延開始、持続放出」製剤と呼ばれることができる。
【0044】
本明細書で用いる限り、「慣用的迅速放出バクロフェン製剤」なる用語は、pH6.8緩衝液のUSP溶解浴中で試験したときに、約1時間未満内にその含量の80%を越えて放出する製剤を意味する。
【0045】
本明細書で用いる限り、「バクロフェン」なる用語は、バクロフェンと、その如何なる製薬的に受容される塩をも包含する。バクロフェンは本明細書において明白に実証されているが、当業者は、如何なる場合に、他のGABAアゴニストをバクロフェンの代わりに又はバクロフェンに加えて用いることができるかを理解するであろう。
【0046】
上述したように、バクロフェンは、(R)−立体異性体と(S)−立体異性体とのラセミ混合物として入手可能である。本発明は、ラセミ・バクロフェンと富化(R)−バクロフェンの両方の使用を考慮に入れる。本明細書で用いる限り、「富化(R)−バクロフェン」なる用語は、(R)立体異性体が(S)立体異性体よりも多量に存在するバクロフェン組成物を意味する。例えば、富化(R)−バクロフェンは51%以上の(R)−バクロフェン、例えば、約55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%以上の割合の(R)−バクロフェンを含む。「富化(R)−バクロフェン」なる用語は、本明細書で用いる限り、少なくとも90%の(R)−バクロフェンを含有するバクロフェンの製剤を意味する「実質的純粋な(R)−バクロフェン」を包含する。
【0047】
本明細書で用いる限り、「製薬的に受容される賦形剤」なる用語は、薬剤製剤中の他の成分、特に有効成分と相容性であり、受容される量で投与された場合に患者に対して有害でない成分を包含する。
【0048】
本明細書で用いる限り、「製薬的に受容される塩」なる用語は、患者によって生理的に耐えられる塩を包含する。このような塩は、無機酸若しくは塩基及び/又は有機酸若しくは塩基から製造することができる。これらの酸と塩基との例は当業者に周知である。
【0049】
本明細書で用いる限り、「治療有効量」なる用語は、単独で及び/又は他の薬物と組み合わせて、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の予防、治療及び/又は管理に利益を与える、バクロフェン(又はその製薬的に受容される塩)の量を包含する。富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンに関して、治療量とは、ラセミ・バクロフェンの投与に典型的に付随する、好ましくない副作用の1つ以上を軽減する又は回避しながら、該状態に対する治療効果を得るために充分な量である。幾つかの実施態様では、上記状態の1つ以上の治療、予防及び/又は管理に用いられる富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの治療量は、同じ状態の予防、治療及び/又は管理に該薬物のラセミ形を用いる場合に必要な治療量以下である。
【0050】
富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンは、ラセミ混合物から立体異性体を製造するための慣用的方法によって得ることができ、該方法の例は、当業者に周知である。或いは、(R)−バクロフェンは、立体選択的合成方法によって得ることができ、このような方法の例も当業者に周知である。米国特許第6,051,734号は、(R)−バクロフェンを得るための方法についてのその技術的な開示に関して、本明細書に援用される。
【0051】
本発明のバクロフェン方法と製剤は、胃不全麻痺、非潰瘍性消化不良又は治療されることが望ましい任意の他の状態の治療に治療効果を及ぼす、他の薬物と共に投与することができる。このような薬物は、他のGABAアゴニスト、例えばメトクロプラミドのようなドーパミン・アンタゴニスト、例えばシサプリドのような消化管運動賦活調整剤、例えばエリスロマイシンのようなモチリン・アゴニスト、例えばドムペリドンのようなオピオイド、並びに5−ヒドロキシトリプタミン・アゴニスト及びアンタゴニストを包含する。
【0052】
本発明は、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療、予防及び/又は管理の方法であって、このような治療、予防及び/又は管理を必要とする対象に、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はその製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することによる方法を包含する。1実施態様では、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の投与は、バクロフェンのラセミ混合物の投与後に見られる副作用に比べて、1つ以上の副作用を軽減する。
【0053】
他の実施態様では、本発明は、該予防、治療及び/又は管理を必要とする対象に富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含む、ラセミ・バクロフェンの投与に付随した副作用の軽減方法であって、等量のラセミ・バクロフェンの投与後から生じる副作用に比べて、1つ以上の副作用が軽減される方法に関する。
【0054】
本発明はまた、ラセミ混合物を用いる場合に必要な量に比べて、同じ治療効果を達成するための富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの組成物及び使用方法に関する。したがって、本発明は、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の予防、治療又は管理の方法であって、このような予防、治療又は管理を必要とする対象に富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、該対象が富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの投与に起因する治療利益を得る、そして富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の該量が、バクロフェンのラセミ混合物を用いて同じ治療利益を達成するために必要な量よりも少ない方法を包含する。
【0055】
本発明はまた、該製剤を受容する対象における薬物相互作用を軽減する、組成物及びそれらの使用方法をも包含する。したがって、本発明は、該治療、予防及び/又は管理を必要とする対象に富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含む、ラセミ・バクロフェンに付随する薬物相互作用の軽減方法であって、該1つ以上の薬物相互作用が等量のラセミ・バクロフェンの投与に起因する薬物相互作用に比べて軽減される方法を包含する。
【0056】
本発明はまた、胃不全麻痺及び/又は非潰瘍性消化不良の治療の治療効果を持続させる組成物とそれらの使用方法をも包含する。したがって、本発明は、バクロフェン治療の治療効果を持続させる方法であって、このような治療を必要とする対象に富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェン又はこれらの製薬的に受容される塩の投与が、等量のラセミ・バクロフェンの投与後に得られる治療効果よりも長く持続する治療効果を生じる方法を包含する。
【0057】
本発明の方法及び組成物の一部は、胃不全麻痺によって惹起される胃腸運動性の低下に対処するように設計される。該方法及び組成物は、薬物放出を殆ど又は全く遅延させず、それでもなお長期間にわたって薬物をデリバリーする製剤の使用によって、小腸への薬物デリバリーを遅延させるように作用する該運動性低下を利用するように設計することができる。また、本発明の製剤は、該遅延の利益を最大化するように、大きい単位形で製造することができる。さらになお、本発明の製剤は、胃腸管からの薬物の吸収を改良する、透過促進剤又はpH調節剤のような成分を含むことができる。
【0058】
本発明は、治療有効量のバクロフェン又はその製薬的に受容される塩を含む製剤と、それらの使用方法に関する。該製剤は、例えば、それが胃不全麻痺におけるような、胃腸運動が不規則である場合に、バクロフェン吸収を最大にするように設計することができる。
【0059】
バクロフェン吸収の最適化は、人が、本発明の組成物に、該薬物の慣用形での必要量に比べて少ないバクロフェンを用いることも可能にする。本発明によってバクロフェンのより効果的なデリバリーが達成されるために、該薬物の慣用的な製剤に比べて、含まれるバクロフェン量を約10〜約90%、約10〜約80%、約10〜約70%、約20〜約70%、約20〜約60%、又は約25〜約50%に減ずることが可能になる。1実施態様では、本発明の組成物中のバクロフェン量を、市販の経口バクロフェン(例えば、LIORESAL(登録商標))の投与量に比べて、約25%に減ずることが可能になる。
【0060】
幾つかの実施態様では、(R)−バクロフェンを用いることができ、該量はラセミ・バクロフェンの投与量に比べて減ずることができる。実際に、含まれる(R)−バクロフェン量を、バクロフェンのラセミ製剤に比べて、約10〜約90%、約10〜約80%、約10〜約70%、約20〜約70%、約20〜約60%、又は約25〜約50%に減ずることが可能である。1実施態様では、本発明の組成物中の(R)−バクロフェン量を、ラセミ・バクロフェンの投与量に比べて、約25%に減ずることが可能になる。
【0061】
本発明はまた、同等以上の投与量の使用を、より良好な効力で及び/又は見られる副作用が殆どなく、可能にするという点で有利である。例えば、本発明のバクロフェン製剤は、慣用的製剤中のバクロフェン量の100%〜200%を含むことができる。同様に、ラセミ・バクロフェンの慣用的に用いられる投与量よりも大きい投与量で、(R)−バクロフェンを用いることができる。しかし、これらの大きい投与量によってさえも、本発明の製剤は、より良好な効力と副作用が殆どないことを達成する。
【0062】
本発明の組成物は、体内のGABAアゴニストの治療レベルによって利益を受ける状態又は疾患を治療する及び/又は予防するために適している。このような状態は、典型的に慣用的バクロフェン組成物によって治療される及び/又は予防される、例えば痙縮、脊髄損傷と疾患、及び骨格筋痙攣のような状態を包含する。さらに、バクロフェンは、承認適応症外に(off-label)、例えば発作、脳性麻痺、パーキンソン病、三叉神経痛及び耳鳴りのような状態に、用いることができる。
【0063】
本発明の製剤と方法は、非限定的に、経口、鼻腔内、頬側、舌下、非経口又は経皮投与と、このような投与のための製剤を包含し、該製剤のいずれも調節放出製剤の形態をとることができる。
【0064】
本明細書で用いる限り、「鼻腔内」投与とは、鼻腔の粘膜を通しての吸収によって対象に化合物を投与する形式、又は鼻腔を通してなされる、いずれの投与をも包含する意味である。
【0065】
本明細書で用いる限り、「頬側投与」及び「舌下投与」なる用語は、口腔の粘膜を通しての吸収を用いて対象に化合物を投与する形式、又は薬物が口腔から吸収される場合になされる、いずれの投与をも包含する意味である。
【0066】
本明細書で用いる限り、「経皮投与」なる用語は、皮膚を通しての吸収を用いて、対象に化合物を投与する形式を包含する意味である。「経皮製剤」なる用語は、対象に化合物を経皮投与するために適している、薬剤製剤、デバイス(device)及び投与形式を包含する意味である。このような製剤は、製薬的に有効な化合物の他に、適当である、製薬的に不活性なキャリヤー又は作用剤(agents)を含むことができる。
【0067】
例えば注射(非限定的に、皮下、ボラス注射、筋肉内、腹腔内及び静脈内を包含する)による投与のような非経口投与のためには、薬剤組成物は、油性又は水性ビヒクル中の等張性懸濁液、溶液又はエマルジョンとして製剤化することができ、例えば懸濁化剤、安定剤又は分散剤のような処方剤(formulatory agents)を含有することができる。或いは、該組成物は、使用前に滅菌の、発熱性物質を含まない水又は等張性生理食塩水によって再構成するための、例えば粉末、結晶又は噴霧乾燥した固体のような乾燥形で提供することができる。これらは、例えば、滅菌したアンプル又はバイアルに入れて提示することができる。
【0068】
適当な水性及び非水性賦形剤の例は、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、油、注射可能な有機エステル、及びこれらの混合物を包含する。例えば、界面活性剤の使用によって、適当な流動性を維持することができる。
【0069】
これらの組成物はさらに、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバントを含有することもできる。種々な抗菌剤及び/又は抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等を含めることによって、微生物の作用を予防することもできる。例えば糖、塩化ナトリウム等のような等張剤(isotonic agent)を組成物中に含めることも、望ましいと考えられる。さらに、例えばモノステアリン酸アルミニウム及び/又はゼラチンのような、吸収を遅延させる作用剤を含めることによって、注射可能な薬剤形の持続性吸収(prolonged absorption)をもたらすことができる。
【0070】
薬物の治療効果を持続又は延長させるために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を緩慢にすることが、しばしば望ましいと考えられる。これは、低い溶解性を有する結晶質又は非晶質物質の液体懸濁液の使用によって達成することができる。次に、薬物の吸収速度は、一般に、結晶サイズ及び結晶形状に依存しうる、その溶解速度に依存する。或いは、非経口投与される形態の遅延吸収は、油性ビヒクル中に薬物を溶解又は懸濁させることによって達成することができる。
【0071】
直腸又は膣投与のためには、本発明の製剤は座薬として提供されることができる。座薬は、1種類以上の非刺激性賦形剤、例えばポリエチレングリコール、座薬ワックス又はサリチレートを含むことができる。このような賦形剤は、所望の物理的性質に基づいて選択することができる。例えば、室温では固体であるが体温では液体であるコンパウンドは、直腸又は膣腔内で溶融して、活性化合物を放出する。或いは、該製剤を直腸デリバリーのために浣腸剤として提供することができる。膣投与に適した製剤はさらに、その例が当該技術分野で知られているようなキャリヤーを含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム又はスプレー製剤を包含する。
【0072】
局所又は経皮投与に適した製剤は、非限定的に、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤(inhalant)を包含する。このような製剤は、例えば動物性及び植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有することができる。粉末及びスプレーはまた、例えばラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末のような賦形剤を含有することができる。さらに、スプレーは、例えばクロロフルオロ炭化水素及び揮発性非置換炭化水素(例えば、ブタン及び/又はプロパン)のような噴射剤を含有することができる。
【0073】
経皮投与による薬剤学的活性化合物の全身デリバリーは、皮膚へのアクセス可能性並びに対象の受容性及びコンプライアンスという利点を有する。一般に、本発明の経皮デリバリー・デバイスは、非限定的に、膜−調節系、接着剤拡散−制御系、マトリックス分散−型系及びミクロレザバー(microreservoir)系を包含するカテゴリーに分類することができる。経皮デリバリー系に関する開示に関して、本明細書に援用される Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Gennaro(ed.),20thedition(2000),Mack Publishing,Inc.,Easton,PA),Chapter 47,pp.903-929を参照のこと。
【0074】
膜−調節系に関して、薬物不透過性バッキングと律速ポリマー膜とから形成された、浅い区画に薬物レザバー(drug reservoir)が一般に封入される。バクロフェン又はその製薬的に受容される塩は、微孔質又は無孔質でありうる律速膜から放出される。該膜の外表面には、デリバリー・デバイスを対象の皮膚と接触させるために、薬物相容性で、低アレルゲン性の接着剤ポリマー層を加えることができる。薬物相容性で、低アレルゲン性の接着剤ポリマーの例は、非限定的に、シリコーン及びポリアクリレート接着剤を包含する。ポリマー組成、透過係数、又は律速膜と接着剤との厚さを変えることによって、薬物放出速度を変化させることができる。
【0075】
接着剤拡散−制御経皮系では、接着剤ポリマーマトリックス中に薬物を直接分散させ、この分散系を薬物不透過性バッキングのフラットシート上に広げて、薄い薬物−レザバー層を形成することによって、薬物レザバーが一般に製造される。この層の上部には、薬物を含有しない他の接着剤ポリマー層が配置される。商業的に購入することができるか又は固体の接着剤を適当な溶媒中に溶解することによる接着剤ポリマーの溶液を、必要に応じて強化剤中に溶解したか又は一様に分散させたGABABアゴニストの溶液と混合することによって、接着剤マトリックスを製造することができる。この混合物は、型に注入するか又は単独で若しくは所望のバッキング材料上にキャストすることができる。このキャスチング(casting)を室温において又はやや高温のオーブン中で放置して、溶媒を蒸発させることができる。溶媒を蒸発させた後に、接着剤マトリックスは、約50〜100μmの範囲内の厚さを有することができる接着剤ポリマーフィルムの形態になる。
【0076】
マトリックス分散型経皮系は、薬物を疎水性又は親油性ポリマー中に均質に分散させ、次にこれを、一定の表面積と制御された厚さを有するディスクに成形することによって形成される薬物レザバーを含むことができる。該ディスクを、薬物不透過性バッキングから製造された区画中の閉塞性床板上に貼付することができる。該ディスクの周囲に沿ってリムを形成するように接着剤ポリマーを広げて、次に、これを対象の皮膚に貼付することができる。
【0077】
ミクロレザバー系では、薬物粒子を水溶性ポリマーの水溶液中に懸濁させ、次に、これを親油性ポリマー中に高剪断機械力によって均質に分散させて、薬物の非浸出性微視的球体を形成することによって、薬物レザバーを製造することができる。該球体は、所望の皮膚浸透速度を達するために充分な速度で、閉じ込められた薬物を放出するのに効果的である。このような粒子は、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びセルロースから選択された親水性ポリマーを含むことができる。粒子はリポソームであることができる。次に、ポリマーをその場で架橋させ、それによって一定の表面積と決まった厚さを有する薬物含有ディスクを製造することによって、該分散系を安定化させることができる。該ディスクを次に、接着剤リムで囲繞された経皮系の中心に配置することができる。
【0078】
本発明による経皮製剤では、経皮デリバリー・デバイスを構成する任意の層の中に薬剤学的活性化合物は存在することができる。各層中に存在する薬剤学的活性化合物の量は、それぞれの所望の放出速度に応じて変化することができる。例えば、接着剤マトリックス中に負荷されるバクロフェン又はその製薬的に受容される塩の量は、キャスチング混合物中のその濃度と接着剤マトリックスの厚さを変えることによって、変化することができる。一定のパッチ面積の接着剤マトリックス中のGABAアゴニストの量は、約6時間〜約7日間の範囲で、又は約12時間〜約72時間の範囲で、又は約16時間〜約48時間の範囲で、又は約16時間〜約36時間の範囲で、又は中間の任意の時間数内に治療効果を与えるために充分であるべきである。
【0079】
本発明による経皮デバイスは、ミクロカプセル封入された形態又はリポソーム形態で、経皮系に製剤化され、組み込まれたGABAアゴニストを含むことができる。これらの形態は、該系の加工、安定性、耐用性又はデリバリー特徴を改良することができる。
【0080】
本発明による経皮デバイスはまた、皮膚に対する、例えばバクロフェン又はその製薬的に受容される塩のようなGABAアゴニストの皮膚浸透速度を高めるために有効な強化剤を含むこともできる。GABAアゴニストの経皮投与に用いることができる強化剤の1グループは、脂肪酸、脂肪酸エステル及び脂肪アルコールを包含する。このような化合物は、疎水性であるか、又は限定された水溶性を有する可能性があり、該化合物は約150〜約300ダルトンの分子量を有することができる。脂肪アルコールは、非限定的に、ステアリルアルコール及びオレイルアルコールを包含する。脂肪酸は、非限定的に、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、カプリン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリン酸ナトリウム、及びパルミトレイン酸を包含する。10を越えて12個までの炭素(more than 10 to 12 carbons)を含有する脂肪酸エステルも使用可能である。脂肪酸エステルの例は、非限定的に、イソプロピルミリステートと、オレイン酸及びラウリン酸のメチルエステル及びエチルエステルを包含する。
【0081】
イオン性強化剤も使用可能である。用いることができるイオン性強化剤の例は、非限定的に、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン20−セチルエーテル、laureth-9、ドデシル硫酸ナトリウム、及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを包含する。
【0082】
胆汁酸塩も使用可能である。用いることができる胆汁酸塩の例は、非限定的に、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、及びグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムを包含する。
【0083】
キレート化剤も、使用可能である。用いることができるキレート化剤の例は、非限定的に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸及びサリチレートを包含する。
【0084】
強化剤の他のグループは、低分子量アルコールを包含する。このようなアルコールは、約200ダルトン未満、又は約150ダルトン未満、又は約100ダルトン未満の分子量を有することができる。これらはまた、親水性であることもでき、室温において水中で約2重量%を越える、約5重量%又は約10重量%の溶解度を有する。このようなアルコールの例は、非限定的に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、及びプロピレングリコールを包含する。
【0085】
スルホキシドも、使用可能である。スルホキシドの例は、非限定的に、ジメチルスルホキシド及びデカメチルスルホキシド(decmethyl sulfoxide)を包含する。
【0086】
使用可能である、他の強化剤は、尿素とその誘導体、不飽和環状尿素、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、シクロデキストリン、エナミン誘導体、テルペン、リポソーム、アシルカルニチン、コリン、ペプチド(ポリアルギニン配列又はアルギニン富化配列を含む)、ペプチドミメチック(peptidomimetics)、ジエチルヘキシルフタレート、オクチルドデシルミリステート、イソステアリルイソステアレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルオレエート、及び種々な油(例えば、冬緑油又はオイカリプトール)を包含する。
【0087】
本発明への使用に適した強化剤の他の例は、Santus,G.C.et al., Journal of Controlled Release,25:1-20(1993)、及びRemingtonによって与えられ、これらの両方が、強化剤についてのそれらの考察に関して、本明細書に援用される。
【0088】
その上、このような経皮製剤は、GABAアゴニストの他に、少なくとも1種類の薬剤学的活性化合物を含むことができる。本発明に用いることができる該少なくとも1種類の付加的な薬剤学的活性化合物は、非限定的に、他のGABAアゴニスト、例えばメトクロプラミドのようなドーパミン・アンタゴニスト、例えばシサプリドのような消化管運動賦活調整剤、例えばエリスロマイシンのようなモチリン・アゴニスト、例えばドムペリドンのようなオピオイド、並びに5−HT・アゴニスト及びアンタゴニストを包含する。
【0089】
接着剤マトリックス型経皮パッチに用いられる接着剤は、製薬的パッチに用いるために受容される、いずれの接着剤からも選択することができる。例えば、接着剤は、ポリイソブチレン、アクリル樹脂(acrylics)又はシリコーンに基づくものであることができる。接着剤の選択は、選択した強化剤(単数又は複数種類)、マトリックス中に負荷させた薬物量及び強化剤量に一部依存しうる。接着剤は、これらの添加物の存在下で、その接着性を保持して、皮膚への良好な瞬間接着のための粘着、治療期間を通しての良好な接着、及び治療後の皮膚からのクリーンな除去を生じるべきである。幾つかの適当な接着剤は、Avery Chemical Corp.から及びNational Starch and Chemical Companyから入手可能なものを包含する。
【0090】
さらに、本発明の経皮パッチは、GABAアゴニストのデリバリーを強化するために、エネルギー補助デバイス(energy-assisted device)と組み合わせて用いることができる。このようなエネルギー補助デバイスの例は、非限定的に、イオントフォレーゼ・デバイス(iontophoretic device)、ソーラー・デバイス及び熱によるデバイス(thermal device)を包含する。
【0091】
イオントフォレーゼ薬物デリバリー・デバイスでは、バッテリーをデバイス中の2電極と、皮膚上に置かれた電極に接続することができる。薬物は1つの電極に接触させて配置する(例えば、陽性薬物(positive drug)は陽極に接触させて配置することができる)、低電位の電流が電極を横断して与えられると、薬物は皮膚を通って対向電極方向に移動し、それによって身体に入る。デリバリーされる薬物量は、加える電流及び治療時間の関数であることができ、これらのパラメーターは当業者に知られている。イオントフォレーゼ及びイオントフォレーゼ・デバイスは、例えば、Ranade et al.,DRUG DELIVERY SYSTEMS,CRC Press,Chapter 6,(1996); Tyle,Pharmaceutical Res.,3:318(1986);及びBanga et al.,J.Controlled Release,7:1-24(1988)によって考察されており、これらの各々は、イオントフォレーゼ及びイオントフォレーゼ・デバイスについてのそれらの考察に関して、本明細書に援用される。
【0092】
頬側又は舌下投与のためには、本発明の製剤は、錠剤、パッチ、トローチの形態で又は例えばゲル、軟膏、クリーム若しくはガムのような自由形式で提供することができる。適当な頬側又は舌下製剤及びデバイスの例は、例えば、米国特許第5,863,555号、第5,849,322号、第5,766,620号、第5,516,523号、第5,346,701号、第4,983,395号、及び第4,849,224号に開示されている。このような製剤とデバイスは、デバイスを頬側粘膜に接触させて維持するために、適当な接着剤を用いることができる。適当な接着剤の例は、例えば米国特許第3,972,995号、第4,259,314号、第4,680,323号、第4,740,365号、第4,573,996号、第4,292,299号、第4,715,369号、第4,876,092号、第4,855,142号、第4,250,163号、第4,226,848号及び第4,948,580号に見出される。該接着剤は、湿った粘膜表面に接着することができる、親水性、例えば水溶性又は膨潤性のポリマー又はポリマー混合物のマトリックスを含むことができる。これらの接着剤は、軟膏、薄いフィルム、錠剤、トローチ及び他の形態として製剤化することができる。
【0093】
経口投与のためには、例えばバクロフェン又は(R)−バクロフェンのようなGABAアゴニスト(単数又は複数)を、液体投与形に製剤化することもできる。適当な製剤は、エマルジョン、ミクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤を包含する。これらの製剤は、任意に、例えば、水又は他の溶媒のような、当該技術分野で一般的に用いられる希釈剤、可溶化剤及び乳化剤を含み、該乳化剤は、非限定的に、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を包含する。さらに、該液体製剤は、場合によっては、例えば、湿潤剤、乳化剤と懸濁化剤、甘味剤、フレーバー剤、着色剤、芳香剤及び保存剤のようなアジュバントを含むことができる。適当な懸濁化剤は、非限定的に、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレン・ソルビトールとソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物を包含する。液体製剤は、そのままデリバーすることができるか、又は例えば硬質若しくは軟質カプセル入りで供給することができる。
【0094】
軟質ゼラチン・カプセル
【0095】
本発明の製剤は、軟質ゼラチン・カプセル中に充填することができる液体として、製造することもできる。例えば、該液体は、例えば、バクロフェン若しくは(R)−バクロフェンのようなGABAアゴニスト(単数又は複数)を有する、溶液、懸濁液、エマルジョン、ミクロエマルジョン、沈殿、又は任意の他の望ましい液体媒質を包含しうる。該液体は、放出時のGABAアゴニスト(単数又は複数)の溶解性を改良するように設計することができるか、又は放出時に薬物含有エマルジョン若しくは分散相を形成するように設計することができる。このような手法の例は当該技術分野で周知である。軟質ゼラチン・カプセルを、望ましい場合には、薬物の放出を遅延させるように機能性被膜で被覆することができる。
【0096】
本発明の組成物は、バクロフェン又は(R)−バクロフェンのような活性剤の放出を調節する、他の投与形に製剤化することもできる。本発明に従って用いることができる、適当な調節放出製剤の例は、非限定的に、マトリックス系、浸透圧ポンプ及び膜制御投与形を包含する。本発明のこれらの製剤はバクロフェン又はその製薬的に受容される塩を含むことができる。適当な製薬的に受容される塩は上記で考察されている。これらのタイプの投与形の各々を以下で簡単に説明する。このような投与形についてのより詳細な考察は、例えば、The handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology, D.L.Wise(ed), Marcel Dekker,Inc.,New York(2000)に;及びさらに、Treatise on Controlled Drug Delivery: Fundamentals, Optimization,and Applications, A.Kydonieus(ed),Marcel Dekker,Inc.,New York(1992)に見出すことができ、これらの文献の各々の関連する内容は、この目的のために、本明細書に援用される。
【0097】
マトリックスに基づく投与形
【0098】
幾つかの実施態様では、本発明の調節放出製剤を、マトリックスに基づく投与形として提供する。本発明によるマトリックス製剤は、親水性ポリマー、例えば水溶性ポリマー及び/又は疎水性ポリマー、例えば水不溶性ポリマーを包含することができる。本発明のマトリックス製剤は、機能性被膜付きで製造することができ、該機能性被膜は、例えばpH依存性溶解性を示す腸溶性であるか、又は例えばpH非依存性溶解性を示す非腸溶性であることができる。
【0099】
本発明のマトリックス製剤は、例えば直接圧縮成形又は湿式造粒を用いて、製造することができる。次に、上述したような機能性被膜を本発明によって加えることができる。さらに、機能性被膜を加える前に、マトリックス錠剤コア上にバリヤー塗膜又はシーラント塗膜を加えることができる。バリヤー塗膜又はシーラント塗膜は、有効成分を、該有効成分と相互作用する可能性がある機能性被膜から分離するという目的を果たすことができる、又は該塗膜は、水分が有効成分に接触するのを防ぐことができる。バリヤー及びシーラントの詳細は、以下に述べる。
【0100】
本発明によるマトリックスに基づく投与形では、典型的に1種類以上の水溶性ポリマー及び/又は1種類以上の水不溶性ポリマーを含むポリマーマトリックス中に、バクロフェンと任意の、製薬的に受容される賦形剤(単数又は複数種類)を分散させる。薬物は、この投与形から拡散及び/又は侵食によって放出されることができる。このようなマトリックス系は、WiseとKydonieusの上記文献に詳述されている。
【0101】
適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0102】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)又はポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0103】
適当な、製薬的に受容される賦形剤は、非限定的に、例えばクエン酸ナトリウム及びリン酸二カルシウムのようなキャリヤー;例えばステアレート、シリカ、石膏、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、タルク及びケイ酸のような、充填剤又は増量剤;例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアラビアゴムのような結合剤;例えば、グリセロールのような保湿剤;例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ及びタピオカ澱粉、アルギン酸、ある一定のシリケート、EXPLOTABTM、クロスポビドン及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;例えば、パラフィンのような溶解遅延剤(solution retarding agent);例えば、第4級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;例えば、セチルアルコール若しくはグリセロール・モノステアレートのような湿潤剤;例えば、カオリン及びベントナイト粘土のような吸収剤;例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール及びラウリル硫酸ナトリウムのような滑剤;例えばフマル酸のような安定剤;着色剤;緩衝剤;分散剤;保存剤;有機酸;及び有機塩基を包含する。上記賦形剤は、例として挙げたに過ぎず、全ての可能な選択を包含する意味ではない。さらに、多くの賦形剤は2つ以上(more than one)の役割若しくは機能を有することができる、又は2つ以上のグループに分類される可能性があり;該分類は単なる記述であるに過ぎず、特定の賦形剤の如何なる使用をも限定しようとは意図しない。
【0104】
幾つかの実施態様では、マトリックスに基づく投与形は、バクロフェン、;例えば澱粉、ラクトース又は微結晶セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンのような結合剤/制御放出ポリマー;例えばステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸のような滑剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)又はタルクのようなグライダントを含む。1実施態様では、例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン又は澱粉のような崩壊剤も含まれる。
【0105】
本発明の製剤に含まれる、ポリマーの量及び種類と、水溶性ポリマーの、水不溶性ポリマーに対する比率とは、一般に、以下に記載するような、バクロフェンの所望の放出プロフィルを達成するように選択される。例えば、水溶性ポリマーの量に比べて水不溶性ポリマーの量を高めることによって、薬物の放出を遅延させる又は緩慢化することができる。これは、一部は、ポリマーマトリックスの不透過性の増強と、場合によっては、GI管を通っての通過中の侵食速度の低下による。
【0106】
浸透圧ポンプ投与形
【0107】
他の実施態様では、本発明の調節放出製剤を浸透圧ポンプ投与形として提供する。浸透圧ポンプ投与形においては、バクロフェンと任意に1種類以上の浸透性賦形剤を含有するコアが、少なくとも1つのオリフィスを有する選択的浸透膜によって覆われる。該選択的浸透膜は一般に水には透過性であるが、薬物には不透過性である。体液がこの系と接触すると、水が選択的浸透膜を通って、薬物と任意の浸透性賦形剤を含有するコア中に浸透する。浸透圧は投与形内で上昇し、薬物は、選択的浸透膜を横切る浸透圧を等しくしようとして、オリフィス(単数又は複数)を通って放出される。
【0108】
より複雑なポンプでは、投与形はコア内に2つの内部区画を含有することができる。第1区画は薬物を含有し、第2区画はポリマーを含有することができ、該ポリマーは水性流体と接触すると膨潤する。摂取後に、このポリマーは膨張して、薬物含有区画に入って、薬物が占める容積を縮小して、それによって薬物を長時間にわたって制御された速度でデバイスからデリバリーする。このような投与形は、ゼロ次放出プロフィルが望ましい場合に、しばしば用いられる。
【0109】
浸透圧ポンプは当該技術分野で周知である。例えば、米国特許第4,088,864号、第4,200,098号及び第5,573,776号(これらの各々は、このために本明細書に援用される)は、浸透圧ポンプ及びそれらの製造方法を記載している。本発明によって有用な浸透圧ポンプは、浸透的に活性な薬物(osmotically active drug)、又は浸透活性剤(osmotically active agent)と組み合わせた浸透的に不活性な薬物(osmotically inactive drug)の錠剤を圧縮成形し、次に、該錠剤を選択的浸透膜で被覆する、該膜は外部水性流体には透過性であるが、薬物及び/又は浸透剤に対しては不透過性である。
【0110】
選択的浸透膜壁に、1つ以上のデリバリー・オリフィスを穿孔することができる。或いは、該壁に浸出性孔形成物質を組み込むことによって、該壁に1つ以上のオリフィスを形成することができる。操作において、外部水性流体は該選択的浸透膜壁を通って吸収されて、薬物と接触して、該薬物の溶液又は懸濁液を形成する。次に、新鮮な流体が選択的浸透膜を通って吸収されるにつれて、この薬物溶液又は懸濁液はオリフィスから排出される。
【0111】
選択的浸透膜のための典型的な物質は、浸透性膜及び逆浸透性膜に有用であると当技術分野において知られた選択的浸透ポリマー、例えばセルロース・アシレート(cellulose acylate)、セルロース・ジアシレート(cellulose diacylate)、セルロース・トリアシレート(cellulose triacylate)、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、酢酸寒天(agar acetate)、三酢酸アミロース、酢酸βグルカン、アセトアルデヒド・ジメチルアセテート(acetaldehyde dimethyl acetate)、酢酸セルロース・エチルカルバメート(cellulose acetate ethyl carbamate)、ポリアミド、ポリウレタン、スルホン化ポリスチレン、酢酸フタル酸セルロース、酢酸セルロース・メチルカルバメート、酢酸コハク酸セルロース、酢酸セルロース・ジメチルアミノアセテート、酢酸セルロース・エチルカルバメート、酢酸セルロース・クロルアセテート、ジパルミチン酸セルロース、ジオクタン酸セルロース、ジカプリル酸セルロース、セルロース・ジペンタンレート(cellulose dipentanlate)、酢酸吉草酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、プロピオン酸コハク酸セルロース、メチルセルロース、酢酸p−トルエンスルホン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、軽度に架橋したポリスチレン誘導体、架橋ポリ(スチレンスルホン酸ナトリウム)、ポリ(ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド)、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0112】
ポンプに用いることができる浸透剤は、投与後にデバイスに侵入する流体中に典型的に溶解して、外部流体に対して選択的浸透壁を横切る浸透圧勾配を生じる。適当な浸透剤は、非限定的に、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、d−マンニトール、尿素、ソルビトール、イノシトール、ラフィノース、スクロース、グルコース、例えばセルロースポリマーのような親水性ポリマー及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0113】
上述したように、浸透圧ポンプ投与形は、膨潤性ポリマー(swellable polymer)を含有する第2区画を含有することができる。適当な膨潤性ポリマーは、典型的に、水及び/又は水性生体流体と相互作用し、該水及び/又は該流体はこれらのポリマーを平衡状態になるまで膨潤又は膨張させる。受容されるポリマーは、水及び/又は水性生体流体中で膨潤して、このような吸収された流体のかなりの部分をそれらのポリマー構造中に保持して、投与形内の静水圧を高める能力を示す。該ポリマーは非常に高度に膨潤又は膨張することができ、通常、2〜50倍の体積増加を示す。ポリマーは架橋されていなくても、架橋されていてもよい。1実施態様では、該膨潤性ポリマーは親水性ポリマーである。適当なポリマーは、非限定的に、約30,000〜約5,000,000の分子量を有するポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート);κ−カラゲナン;約10,000〜約360,000の分子量を有するポリビニルピロリドン;非イオン性及びカチオン性ヒドロゲル;高分子電解質錯体;低量のアセテートを有し、グリオキサール、ホルムアルデヒド若しくはグルタルアルデヒドによって架橋され、約200〜約30,000の重合度を有するポリ(ビニルアルコール);メチルセルロース、架橋寒天及びカルボキシメチルセルロースを含む混合物;スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン若しくはイソブチレンによって微粉状無水マレイン酸の分散系を形成することによって製造される水不溶性、水膨潤性コポリマー;N−ビニルラクタムの水膨潤性ポリマー;及び/又は上記いずれかの混合物を包含する。
【0114】
本明細書で用いる“オリフィス”なる用語は、投与形から薬物を放出するために適した手段及び方法を含む。この表現は、機械的手段によって選択的浸透膜に穿孔されている、1つ以上の開口又はオリフィスを包含する。或いは、該選択的浸透膜に例えばゼラチンプラグのような侵食性要素を組み込むことによっても、オリフィスを形成することができる。このような場合には、該選択的浸透膜の孔は、薬物の通過のための“通路”を形成する。このような“通路”製剤は、例えば、米国特許第3,845,770号及び第3,916,899号に記載されており、これらの特許の関連する開示はこのために本明細書に援用される。
【0115】
本発明による有用な浸透圧ポンプは、当該技術分野で知られた手法によって製造することができる。例えば、薬物とその他の成分を一緒に粉砕して、所望の寸法(例えば、第1区画に対応する)を有する固体にプレスすることができる。次に、膨潤性ポリマーを形成して、薬物と接触させて配置し、両方を選択的浸透剤で囲む。必要な場合には、薬物成分とポリマー成分とを一緒にプレスしてから、選択的浸透膜を加えることができる。該選択的浸透膜は任意の適当な方法によって、例えば、成形、吹き付け又は浸漬によって加えることができる。
【0116】
膜制御投与形
【0117】
本発明の調節放出製剤はさらに、膜制御製剤(membrane-controlled formulations)として提供することもできる。本発明の膜制御製剤は、モノリシック(例えば、錠剤)型又は多重単位(例えば、ペレット)型であることができる迅速放出コア(rapid release core)を用意して、該コアを膜で被覆することによって製造することができる。次に、膜制御コアを機能性被膜でさらに被覆することができる。膜制御コアと機能性被膜との間に、バリヤー又はシーラントを適用することができる。該バリヤー又はシーラントは、迅速放出コアと塗膜(membrane coating)との間に代替的に又は付加的に与えることができる。膜制御投与形の詳細は以下に記載する。
【0118】
1実施態様では、バクロフェンを多粒子状膜制御製剤として提供する。バクロフェンを約0.4〜約1.1mm又は約0.85〜約1.00mmの範囲内の平均直径を有するノンパレイル・シード(nonpareil seed)に塗布することによって、バクロフェンを活性コアに形成することができる。バクロフェンを、付加的な賦形剤の有無に拘わらず、不活性コア上に塗布することができ、溶液又は懸濁液から流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系を用いて吹き付けることができる。或いは、バクロフェンをコア上に結合させるために結合剤を用いて、バクロフェンを粉末として、不活性コア上に塗布することができる。コアを適当な可塑剤(以下で説明)及び必要に応じて、任意の他の加工助剤と共に押出成形することによって、活性コアを形成することもできる。
【0119】
本発明の調節放出製剤は、薬物含有コアに塗膜として塗布される、少なくとも1種類のポリマー物質を含む。適当な水溶性ポリマーは、非限定的に、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリエチレングリコール及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0120】
適当な水不溶性ポリマーは、非限定的に、エチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、三酢酸セルロース、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)及びポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、ポリ(エチレン)、低密度ポリ(エチレン)、高密度ポリ(エチレン)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ビニルイソブチルエーテル)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(塩化ビニル)、又はポリウレタン、及び/又はこれらの混合物を包含する。
【0121】
EUDRAGITTMポリマー(Rohm Pharmaから入手可能)は、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマー・ラッカー物質である。有効成分及び水に対して自由に透過性である適当なポリマーは、EUDRAGITTMRLである。有効成分及び水に対して弱透過性である適当なポリマーは、EUDRAGITTMRSである。有効成分及び水に対して弱透過性であり、pH依存性の透過性を示す、他の適当なポリマーは、非限定的に、EUDRAGITTML、EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMEを包含する。
【0122】
EUDRAGITTMRL及びRSは、低含量の第4級アンモニウム基を有する、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルのコポリマーを含むアクリル樹脂である。該アンモニウム基は塩として存在して、該ラッカー・フィルムの透過性をもたらす。EUDRAGITTMRL及びRSは、それぞれ、pHに関係なく、自由透過性(RL)及び弱透過性(RS)である。該ポリマー類は、水中及び消化液中で、pH非依存的に膨潤する。膨潤した状態で、これらのポリマーは水及び溶解した活性化合物に対して透過性である。
【0123】
EUDRAGITTMLは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルエステルとから合成されるアニオンポリマーである。これは、酸及び純粋な水中に不溶性である。これは、中性〜弱アルカリ性条件では、溶解性になる。EUDRAGITTMLの透過性は、pH依存性である。pH5.0を超えると、該ポリマーはますます透過性になる。
【0124】
膜制御投与形を含む1実施態様では、ポリマー物質は、メタクリル酸コポリマー、アンモニオメタクリレートコポリマー又はこれらの混合物を含む。例えばEUDRAGITTMS及びEUDRAGITTML(Rohm Pharma)のようなメタクリル酸コポリマーは、本発明の調節放出製剤への使用に特に適している。これらのポリマーは胃耐性(gastroresistant)で、腸溶性のポリマーである。それらのポリマーフィルムは純粋な水及び希薄な酸に不溶性である。これらのポリマーは、それらのカルボン酸含量に依存して、高いpHで溶解する。EUDRAGITTMS及びEUDRAGITTMLはポリマー・コーティング中に単独成分として、又は任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのポリマーの組み合わせを用いることによって、該ポリマー物質は、EUDRAGITTML及びEUDRAGITTMSが別々に溶解性であるpHの間のpHにおいて溶解性を示すことができる。
【0125】
塗膜は、主要な割合(即ち、総ポリマー含量の50%超過)の1種類以上の製薬的に受容される水溶性ポリマーと、任意に、より小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の1種類以上の製薬的に受容される水不溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。或いは、塗膜は、主要な割合(即ち、総ポリマー含量の50%超過)の1種類以上の製薬的に受容される水不溶性ポリマーと、任意に、より小さい割合(即ち、総ポリマー含量の50%未満)の1種類以上の製薬的に受容される水溶性ポリマーを含むポリマー物質を含むことができる。
【0126】
例えばEUDRAGIT RS及びEUDRAGIT RL(Rohm Pharma)のような、アンモニオメタクリレート・コポリマーは、本発明の調節放出製剤への使用に適している。これらのポリマーは、純粋な水、希薄な酸、緩衝溶液又は全生理的pH範囲にわたる消化液中に不溶性である。該ポリマーは、水中及び消化液中でpH非依存的に膨潤する。次に、膨潤した状態で、これらのポリマーは水及び溶解した活性物質に対して透過性である。ポリマーの透過性は、ポリマー中のエチルアクリレート(EA)基、メチルメタクリレート(MMA)基及びトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド(TAMCl)基の比率に依存する。1:2:0.2のEA:MMA:TAMCl比率を有するポリマー(EUDRAGITTMRL)は、1:2:0.1の比率を有するポリマー(EUDRAGITTMRS)よりも大きく透過性である。EUDRAGITTMRLのポリマーは、高透過性の不溶性ポリマーである。EUDRAGITTMRSのポリマーは、低透過性の不溶性フィルムである。
【0127】
アンモニオメタクリレート・コポリマーは、任意の所望の比率で組み合わせることができ、その比率は、薬物放出速度を調節するように調整することができる。例えば、90:10のEUDRAGITTMRS:EUDRAGITTMRLの比率を用いることができる。或いは、EUDRAGITTMRS:EUDRAGITTMRLの比率は、約100:0〜約80:20、又は約100:0〜約90:10、又はこれらの中間の任意の比率であることができる。このような製剤では、低透過性ポリマーEUDRAGITTMRSが一般にポリマー物質の大部分を占めることになる。
【0128】
薬物の放出を望ましく遅延させるために、ポリマー物質中でアンモニオメタクリレート・コポリマーに、メタクリル酸コポリマーを組み合わせることができる。約99:1から約20:80までの範囲内のアンモニオメタクリレート・コポリマー(例えば、EUDRAGITTMRS)の、メタクリル酸コポリマーに対する比率を用いることができる。該2種類のポリマーを一緒にして、同じポリマー物質にすることができる、又はコアに塗布する別々の被膜(coats)として提供することもできる。
【0129】
上記EUDRAGITポリマーの他に、多くの他の、このようなコポリマーを用いて、薬物放出を制御することができる。これらには、メタクリレート・エステル・コポリマー(例えば、EUDRAGITTMNE30D)が包含される。EUDRAGITポリマーに関するさらなる情報は、“Chemistry and Application Properties of Polymethacrylate Coating Systems,”in Aqueous Polymeric Coatings for Pharmaceutical Dosage Forms,ed.James McGinity,Marcel Dekker Inc.,New York,pg 109-114に見い出すことができる。
【0130】
上記で考察したEUDRAGITポリマーの他に、他の腸溶性又はpH依存性ポリマーを用いることができる。このようなポリマーは、フタレート、ブチレート、スクシネート、及び/又はメリテート基を含むことができる。このようなポリマーは、非限定的に、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、フタル酸水素セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピル−メチルセルロース、酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、酢酸フタル酸澱粉(starch acetate phthalate)、酢酸フタル酸アミロース(amylose acetate phthalate)、ポリビニルアセテートフタレート及びポリビニルブチレートフタレートを包含する。
【0131】
該塗膜(coating membrane)はさらに、該ポリマー物質の透過性を高めるために、1種類以上の溶解性賦形剤を含むことができる。該溶解性賦形剤は、溶解性ポリマー、界面活性剤、アルカリ金属塩、有機酸、糖、及び糖アルコールの中から適当に選択される。このような溶解性賦形剤は、非限定的に、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベートのような界面活性剤、例えば酢酸、アジピン酸、クエン酸、フマル酸、グルタル酸、リンゴ酸、コハク酸及び酒石酸のような有機酸、例えばデキストロース、フルクトース、グルコース、ラクトース及びスクロースのような糖、例えばラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール及びキシリトールのような糖アルコール、キサンタンガム、デキストリン、並びにマルトデキストリンを包含する。幾つかの実施態様では、ポリビニルピロリドン、マンニトール及び/又はポリエチレングリコールを溶解性賦形剤として用いることができる。該溶解性賦形剤(単数又は複数種類)は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、約1重量%〜約10重量%の量で用いることができる。
【0132】
他の実施態様では、該ポリマー物質は、胃腸液にも不溶性である、1種類以上の水不溶性ポリマーと、1種類以上の水溶性孔形成化合物を含む。例えば、該水不溶性ポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル及び/又はポリビニルアルコールのターポリマーを含むことができる。適当な水溶性孔形成化合物は、非限定的に、サッカロース、塩化ナトリウム、塩化カリウム、ポリビニルピロリドン及び/又はポリエチレングリコールを包含する。孔形成化合物は、水不溶性ポリマー全体にわたって均一に又はランダムに分布することができる。典型的には、孔形成化合物は、それぞれ水不溶性ポリマーの約1〜約10部当り、約1部〜約35部を占める。
【0133】
このような投与形が溶解媒質(例えば、消化液)に接触すると、ポリマー物質中の孔形成化合物は溶解して、多孔質構造を生じて、これを通して薬物が拡散する。このような製剤は、米国特許第4,557,925号にさらに詳しく記載されており、この特許の関連する部分はこのために本明細書に援用される。該多孔質膜は、胃での放出を防止するために、本明細書に記載するように、腸溶性被膜でさらに被覆することもできる。
【0134】
1実施態様では、例えば、孔形成調節放出投与形は、バクロフェン;例えば澱粉、ラクトース又は微結晶セルロース(AVICELTM)のような充填剤;例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース又はポリビニルピロリドンのような結合剤/制御放出ポリマー;例えばEXPLOTABTM、クロスポビドン又は澱粉のような崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸のような滑剤;例えばラウリル硫酸ナトリウム又はポリソルベートのような界面活性剤;及び例えばコロイド状二酸化ケイ素(AEROSILTM)又はタルクのようなグライダントを含む。
【0135】
ポリマー物質はさらに、例えば充填剤、可塑剤及び/又は消泡剤のような、1種類以上の補助剤を含むことができる。代表的な充填剤は、タルク、ヒュームドシリカ(fumed silica)、グリセリルモノステアレート、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、カオリン、コロイド状シリカ、石膏、微粉状シリカ、及び三ケイ酸マグネシウムを包含する。充填剤の使用量は、ポリマーの総乾燥重量に基づいて、典型的に約2〜約300重量%の範囲であり、約20〜約100重量%の範囲であることができる。1実施態様では、タルクが充填剤である。
【0136】
塗膜、及び機能性被膜も同様に、ポリマーの加工を改良する物質を含むこともできる。このような物質は、一般に、可塑剤と呼ばれ、例えば、アジペート、アゼレート、ベンゾエート、シトレート、イソエブケート(isoebucate)、フタレート、セバケート、ステアレート及びグリコールを包含する。代表的な可塑剤は、アセチル化モノグリセリド、ブチルフタリルブチルグリコレート、ジブチルタルトレート、ジエチルフタレート、ジメチルフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリアセチンシトレート、トリアセチン、トリプロピノイン(tripropinoin)、ジアセチン、ジブチルフタレート、アセチルモノグリセリド、ポリエチレングリコール、ひまし油、トリエチルシトレート、多価アルコール、酢酸エステル、グリセロールトリアセテート、アセチルトリエチルシトレート、ジベンジルフタレート、ジヘキシルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジオクチルアゼレート、エポキシド化タレート(epoxidised tallate)、トリイソオクチルトリメリテート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ−i−オクチルフタレート、ジ−i−デシルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−n−トリデシルフタレート、トリ−2−エチルヘキシルトリメリテート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート(di-2-ethylhexylazelate)、ジブチルセバケート、グリセリルモノカプリレート、及びグリセリルモノカプレートを包含する。1実施態様では、可塑剤はジブチルセバケートである。ポリマー物質中の可塑剤の使用量は、乾燥ポリマーの重量に基づいて、典型的に約10〜約50%の範囲であり、例えば、約10、20、30、40又は50%である。
【0137】
消泡剤を含めることもできる。1実施態様では、消泡剤はシメチコンである。消泡剤の使用量は、典型的に、最終製剤の約0%〜約0.5%を占めることができる。
【0138】
膜制御製剤中のポリマーの使用量は典型的に、薬物のデリバリー量、薬物デリバリーの速度及び位置、薬物放出の遅延時間並びに製剤中の多粒子のサイズを含めた、望ましい薬物デリバリー特性が得られるように調節される。ポリマーの塗布量(the amount of polymer applied)は典型的に、コアに約10〜約100%の増量(weight gain)を生じる。1実施態様では、ポリマー物質による増量は約25〜約70%の範囲である。
【0139】
ポリマー膜は、例えば充填剤、可塑剤、安定剤又は他の賦形剤及び加工助剤のような、ポリマーの他の成分を含むことができる。該膜の付加的成分の1例は、安定剤として作用しうる炭酸水素ナトリウムである。
【0140】
コポリマー、充填剤、可塑剤と、任意の賦形剤及び加工助剤を含めた、ポリマー物質の全固体成分の組み合わせは、コアに約10〜約450%の増量を与えることができる。1実施態様では、この増量は約30〜約160%である。
【0141】
ポリマー物質は、任意の既知方法によって、例えば、流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系を用いる吹き付けによって塗布することができる。ポリマー物質の塗布後に、塗布されたコアを通常、乾燥又は硬化させる。硬化は、安定な放出速度を与えるために充分な時間、多粒子が制御された温度に保持されることを意味する。硬化は、例えばオーブン内で又は流動床乾燥器内で行なうことができる。硬化は、関連したポリマーのガラス転移温度を越えることができる、室温を超える任意の温度で行なうことができる。
【0142】
シーラント又はバリヤーをポリマー被膜に塗布することもできる。ポリマー物質を塗布する前のコアに、代替的に又は付加的に、シーラント又はバリヤー層を塗布することもできる。シーラント又はバリヤー層は、一般に、バクロフェンの放出を調節するようには意図されないが、バクロフェンがどのように製剤化されるかに依存して、バクロフェンの放出を調節するように意図される場合もある。適当なシーラント又はバリヤーは、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びキサンタンガムのような、透過性又は溶解性の作用剤である。外部シーラント又はバリヤーは、例えば、製剤全体の耐湿性を改良するために用いることができる。例えば、コアと被膜との間のシーラント又はバリヤーを用いて、pH依存性又はpH非依存性の溶解プロフィルを示しうる外部ポリマー被膜から、コア内容物(core contents)を保護することができる。さらに、両方の効果、即ち、耐湿性とコア保護が望ましい場合も存在しうるが、この場合には、シーラント/バリヤーを、コアとポリマー塗膜との間に塗布し、次に、該ポリマー塗膜の外側に塗布する。
【0143】
該シーラント又はバリヤー層の加工性を改良するために、他の作用剤を加えることができる。このような作用剤は、タルク、コロイド状シリカ、ポリビニルアルコール、二酸化チタン、微粉状シリカ、ヒュームドシリカ、グリセロールモノステアレート、三ケイ酸マグネシウム及びステアリン酸マグネシウム、又はこれらの混合物を包含する。該シーラント又はバリヤー層は、溶液(例えば、水性)又は懸濁液から、例えば流動床コーター(例えば、Wurster coating)又はパン・コーティング系のような、任意の既知手段を用いて付加することができる。適当なシーラント又はバリヤーは、例えば、OPADRY WHITE Y−1−7000(登録商標)及びOPADRY OY/B/28920WHITE(登録商標)を包含し、これらの各々は、Colorcon Limited,Englandから入手可能である。
【0144】
本発明はまた、上記で定義したような多粒子状バクロフェンを、キャプレット、カプセル剤、投与前の懸濁液用粒子、サシェ又は錠剤の形態で含有する経口投与形を提供する。投与形が錠剤の形態である場合には、錠剤は、崩壊する錠剤、迅速に溶解する錠剤、起沸性錠剤、迅速に溶融する錠剤及び/又はミニ錠剤であることができる。投与形は、例えば球状、キューブ形状楕円形(oval)又は長円形(ellipsoidal)のような、薬物の経口投与に適した、任意の形状であることができる。投与形は、多粒子から当該技術分野で知られた方法で製造することができ、必要に応じて、付加的な製薬的に受容される賦形剤を含むことができる。
【0145】
非限定的に、マトリックスに基づく形、浸透圧ポンプに基づく形、軟質ゼラチンカプセル及び/又は膜制御形を含めた、さらにモノリシック及び/又は多重単位投与形の形態をとりうる、上述した特定の投与形の全ては、機能性被膜を有することができる。このような被膜は一般的に、薬物の放出を所定の期間遅延させるという目的を果たす。例えば、このような被膜は、投与形を胃酸又は消化液にさらさないで、胃を通過させることができる。したがって、このような被膜は、例えば上部腸のような、胃腸管中の望ましい点に達したときに溶解する又は侵食されることができる。
【0146】
このような機能性被膜は、pH依存性又はpH非依存性のいずれの溶解プロフィルも示すことができる。pH非依存性プロフィルを有する被膜は、一般に、所定の期間後に侵食されるか又は溶解し、該期間は一般に該被膜の厚さと組成に直接比例することができる。他方では、pH依存性プロフィルを有する被膜は、胃の酸性pH中に在る間はそれらの完全性を維持することができるが、より塩基性の上部腸に入ると迅速に侵食されるか又は溶解する。
【0147】
したがって、マトリックスに基づく製剤、浸透圧ポンプに基づく製剤又は膜制御製剤を、薬物の放出を遅延させる機能性被膜でさらに被覆することができる。例えば、膜制御製剤を、上部腸に達するまで該膜制御製剤の暴露を遅延させる腸溶性被膜で被覆することができる。酸性の胃を出て、より塩基性の腸に入ると、腸溶性被膜は溶解する。その結果、膜制御製剤は胃腸液に暴露され、本発明によって、バクロフェンを長時間にわたって(over an extended period)放出する。例えばこれらのような、機能性被膜の例は当業者に周知である。
【0148】
1実施態様では、バクロフェン製剤は最初に薬物の放出を遅延させる。この遅延後に、該製剤は迅速に該薬物を放出する。
【0149】
上述したように、胃不全麻痺自体は、自然の胃保持効果(natural gastroretentive effect)を生じて、腸への胃内容物の移動を緩慢にする。しかし、さらに、本発明の製剤は、胃から腸へのそれらの移動をさらになお遅延させるように製造することができる。このことは、例えば、幽門括約筋の閉鎖によって排出されない寸法である錠剤を用いることによる、サイズによって;例えば、ガスを発生し、それによって胃内容物の上面に浮遊することによって得られるような、低密度であることによる浮遊によって;粘膜との結合を形成し、それによって胃保持を高めるコーティング及び/又は他の賦形剤による粘膜付着によって、達成することができる。
【0150】
本発明の経口製剤のいずれも、pH調節剤、例えば、約1〜約6.5のpKaを示す作用剤をさらに含むことができる。このような作用剤は、非限定的に、ジカルボン酸を包含する。ジカルボン酸は、非限定的に、2−エタン二酸(シュウ酸)、3−プロパン二酸(マロン酸)、4−ブタン二酸(コハク酸)、5−ペンタン二酸(グルタル酸)、6−ヘキサン二酸(アジピン酸)、シス−ブテン二酸(マレイン酸)、トランス−ブテン二酸(フマル酸)、2,3−ジヒドロキシブタン二酸(酒石酸)、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパン・トリカルボン酸(クエン酸)、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸を包含する。幾つかの実施態様では、1種類以上のジカルボン酸が製剤中に含まれる。
【0151】
幾つかの実施態様では、製剤は少なくとも1種類のモノカルボン酸を包含する。モノカルボン酸は、非限定的に、メタン酸(蟻酸)、エタン酸(酢酸)、プロパン酸(プロピオン酸)、ブタン酸(酪酸)、ペンタン酸(吉草酸)、ヘキサン酸(カプロン酸)、ヘプタン酸(エナント酸)、1−ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、3−ベンジル−2−プロペン酸(桂皮酸)及び2−オキソプロパン酸(ピルビン酸)を包含する。
【0152】
pH状態をアルカリ性範囲内にする、緩衝剤又はアルカリ性化剤でありうるpH調節剤も使用可能である。このような作用剤は、無機酸の塩、有機塩基の塩、及び有機酸の塩から選択される緩衝剤を包含する。無機酸の塩の例は、ナトリウム若しくはカリウムのクエン酸塩、ナトリウム若しくはカリウムのリン酸塩若しくはリン酸水素塩、二塩基性リン酸ナトリウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム若しくはカルシウムの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、硫酸塩、及び/又はこのような緩衝剤の混合物等;炭酸塩緩衝剤若しくはリン酸塩緩衝剤、例えば炭酸ナトリウム若しくはリン酸ナトリウムを包含する。有機塩基の塩の例は、アミノグアニジンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、グアニジンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、スクシンイミドの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、1−アダマンチルアミンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩、D(−)−N−メチルグルカミンの炭酸塩若しくは炭酸水素塩等を包含する。有機酸の塩の例は、酢酸、クエン酸、乳酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ラウリル硫酸等のカリウム塩及びナトリウム塩を包含する。
【0153】
塩基性化物質(basifying substance)又は塩基性化剤は、金属酸化物、無機塩基、有機塩基、及び塩基の特徴を有する有機酸から選択することができる。金属酸化物の例は、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムを包含する。無機塩基の例は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物、例えば水酸化カルシウム又は水酸化マグネシウムのようなアルカリ土類金属水酸化物を包含する。有機塩基の例は、スクシンイミド、1−アダマンチルアミン、N,N’−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、D(−)−N−メチルグルカミン等を包含する。塩基特徴を有する有機酸の例は、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、4−[[シクロヘキシルアミノ]]−1−ブタンスルホン酸、4−[[シクロヘキシルアミノ]]−1−エタンスルホン酸とこれらの酸のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、アルギニン、オルニチン、リシン等を包含する。
【0154】
本発明の製剤は、pH調節剤を含むことができ、このpH調節剤は、バクロフェンが水性流体に暴露されたときに、該バクロフェンの周囲に微環境を作り出す。例えば、これらのpH調節剤は、該バクロフェンの周囲に、約5〜約9のpH、例えば約7のpHを有する微環境を作り出すことができる。本発明の製剤は、両性イオンのバクロフェンをその正味の中性形に駆動して、それによってバクロフェンの吸収を強化するpH調節剤を含むことができる。
【0155】
本発明の製剤は、透過促進剤を含むこともできる。このような作用剤は、非限定的に、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び脂肪アルコールを包含する。このような化合物は疎水性であることも、又は限られた水溶性を有することもでき、該化合物は約150〜約300ダルトンの分子量を有することができる。脂肪アルコールは、非限定的に、ステアリルアルコール及びオレイルアルコールを包含する。脂肪酸は、非限定的に、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、カプリン酸、モノグリセリド、ジグリセリド、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリン酸ナトリウム、及びパルミトール酸を包含する。10個を越えて12個までの炭素(‘more than 10 to 12 carbons)を含有する脂肪酸エステルも用いることができる。脂肪酸エステルの例は、非限定的に、イソプロピル・ミリステートと、オレイン酸及びラウリン酸のメチルエステル及びエチルエステルを包含する。
【0156】
イオン強化剤(ionic enhancers)も用いることができる。用いることができるイオン強化剤の例は、非限定的に、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン20−セチルエーテル、ラウレス−9、ドデシル硫酸ナトリウム、及びスルホコハク酸ジオクチルナトリウムを包含する。
【0157】
胆汁酸塩も使用可能である。用いることができる胆汁酸塩は、非限定的に、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、及びグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムを包含する。キレート化剤も使用可能である。用いることができるキレート化剤の例は、非限定的に、EDTA、クエン酸及びサリチレートを包含する。
【0158】
強化剤の他のグループは、低分子量アルコールを包含する。このようなアルコールは、約200ダルトン未満、又は約150ダルトン未満、又は約100ダルトン未満の分子量を有することができる。これらはまた、親水性であることができ、一般に、室温において水中で約2重量%より大きい、約5重量%又は約10重量%の溶解度を有する。このようなアルコールの例は、非限定的に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、及びプロピレングリコールを包含する。スルホキシドも使用可能である。スルホキシドの例は、非限定的に、ジメチルスルホキシド及びデカメチルスルホキシドを包含する。
【0159】
使用可能である、他の強化剤は、非限定的に、尿素とその誘導体、不飽和環状尿素、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、シクロデキストリン、エナミン誘導体、テルペン、リポソーム、アシルカルニチン、コリン、ペプチド(ポリアルギニン配列又はアルギニン富化配列を含む)、ペプチドミメチック、ジエチルヘキシルフタレート、オクチルドデシルミリステート、イソステアリルイソステアレート、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、グリセリルオレエート、及び種々な油(例えば、冬緑油又はオイカリプトール)を包含する。
【0160】
本発明の方法及び製剤は、一般に、患者への投与時に下記特徴:約0.5〜約6時間にわたる長時間の放出(an extended release)を示す。換言すると、本発明の製剤及び方法は、一般に、患者への投与時に下記特徴:制御放出、但し、上部小腸中への完全な放出を示す。
【0161】
このように、本発明の幾つかの方法及び製剤は、約6時間未満内に使用環境中にバクロフェンを完全に放出する。即ち、投与後約6時間より前の時間までに80%より多くが放出される。「完全に放出される」とは、製剤中のバクロフェンの80%より多くが放出されることを意味する。
【0162】
治療レベルとは、特定の患者において治療的に有効である、バクロフェンの最小濃度である。もちろん、当業者は、治療レベルが、治療される個体及び症状の重症度に依存して変化しうることを認識するであろう。例えば、個々の患者の年齢、体重及び病歴が、療法の治療効果に影響を及ぼす可能性がある。資格ある医師は、これらの要因を考慮して、投与が過度の実験なしに所望の治療成果を確実に達成するように投与計画を調整することができる。臨床医及び/又は治療医が、個々の患者の反応に関連して、療法を中断し、調整し、及び/又は停止する方法及び時を知ることも認められる。富化又は実質的純粋な(R)−バクロフェンを含めた、他のGABAアゴニストが異なる治療濃度を示す可能性があり、開業医は必要に応じてどのように投与量を調節するであろうことも注目される。
【0163】
一般に、本発明の製剤中の(R)−バクロフェンの総1日量は、約0.1mg〜約100mg、約0.5mg〜約80mg、約1mg〜約60mg、又は約2mg〜約40mg、又は中間のいずれかの整数若しくは分数量の範囲である。単回量は、(R)−バクロフェン 約0.1、0.2、0.5、1、2、2.5、5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、25、30、40、50、60、70、80又は100mgを含有するように製剤化することができる。1実施態様では、単回量は約2.5mgの(R)−バクロフェンを含有する。
【0164】
本発明の経口製剤は、それらの溶解プロフィルによって説明することができる。当業者は、このような溶解プロフィルを測定するために用いる手法に精通している。該当する部分において本明細書に援用される、米国薬局方に指定されている標準方法論を用いることができる。例えば、溶解プロフィルは、米国薬局方タイプI装置(バスケット)又は米国薬局方タイプII装置(パドル)のいずれかで測定することができる。
【0165】
即時放出製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置において37℃で試験し、50rpmにおいて、0.1N HCl中で撹拌したときに、その薬物含量の75%以上を30分間以内に放出することができる。持続放出製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置において37℃で試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、1時間:約10〜約50%;2時間:約20〜約70%;4時間:約70%以上;及び6時間:約80%以上を放出することができる。
【0166】
pH非依存性製剤に関しては、該製剤は、異なるpH値の媒質中、即ち、約pH1.2の0.1N HCl媒質中、又はpH6.8以上のリン酸塩緩衝液中で、37℃及び50〜100rpmにおいて試験することができる。pH依存性製剤に関しては、該製剤は、最初の2時間は0.01〜0.1N HCl中で37℃及び50〜100rpmにおいて、続いて、試験の残り時間に関してはpH6.8以上のリン酸塩緩衝液に移して試験することができる。pH依存性及びpH非依存性製剤の溶解プロフィルの測定に適した、他の緩衝液系は、当業者に周知である。
【0167】
本発明のpH依存性バクロフェン組成物のin vitro 溶解プロフィルは、酸中で2時間、続いてpH6.8以上の緩衝液中で試験したときに、下記に相当することができる:
(1)約2時間(酸中)後に最小放出;及び
(2)約6時間後に完全放出。
或いは、該プロフィルは下記に相当することができる:
・ 約2時間(酸中)後に、バクロフェンの約10%未満が放出される;
・ 約2時間(緩衝液中)後に、約20%〜約80%が放出される;及び
約4〜6時間(緩衝液中)後に、約80%より多くが放出される。
【0168】
本発明のpH依存性製剤のin vitro 溶解プロフィルは、全期間をpH6.8緩衝液中で試験したときに、下記に相当することができる:
・ 約4〜6時間内に完全放出。
或いは、該プロフィルは下記に相当することができる:
・ 約2時間後に、約20%以上が放出される;及び
・ 約4〜6時間後に、約80%より多くが放出される。
【0169】
本発明のpH非依存性バクロフェン組成物のin vitro 溶解プロフィルは、下記に相当することができる:
・ 約1〜2時間後に最小放出;及び
・ 約6時間後に、完全放出。
或いは、該プロフィルは下記に相当することができる:
・ 約1〜2時間後に、バクロフェンの約10%未満が放出される;
・ 約2〜4時間後に、バクロフェンの約20〜約80%が放出される;及び
・ 約4〜6時間後に、約80%より多くが放出される。
【0170】
本発明のバクロフェン製剤の溶解プロフィルは、in vitro 放出速度に基づいて、以下に提供するプロフィルの1つ以上を実質的に模倣する可能性がある。pH依存性製剤に関して、該製剤からの薬物の放出を酸中で1〜2時間遅延させることができる。pH6.8以上の緩衝液中では、薬物の放出は、小腸中への通過、バクロフェンの吸収部位に一致した形式である。pH非依存性製剤に関しては、製剤からの薬物の放出は、溶解媒質のpHに関係なく、1〜2時間遅延させることができる。胃から小腸中への投与形の排出と一致する1〜2時間後に、薬物は投与形の小腸を通る通過、バクロフェンの吸収部位と一致した形式で放出される。放出プロフィルは、50〜75rpmでのパドル又は100rpmでのバスケットのいずれかを用いて得られる。
【0171】
即時放出製剤は、米国薬局方(USP)タイプ2装置において37℃で試験し、50rpmにおいて、0.1N HCl中で撹拌したときに、その薬物含量の75%以上を30分間以内に放出することができる。
【0172】
上記薬剤組成物のいずれも、バクロフェン以外の1種類以上の薬剤学的活性化合物をさらに含むことができる。このような化合物は、バクロフェンによって治療される同じ状態又は異なる状態を治療するために用意することができる。当業者は、本発明の製剤中に付加的有効成分を組み入れるための手法の例に熟知している。或いは、このような付加的な薬剤学的活性化合物を別の組成物中に用意して、患者にバクロフェン組成物と共投与することができる。このような別の組成物は、バクロフェン組成物の前、後又はバクロフェン組成物と同時に投与することができる。
【0173】
下記実施例に言及することによって、本発明をさらに説明する。本発明の目的及び範囲から逸脱することなく、材料と方法の両方に関して多くの変更がなされうることは、当業者に明らかであろう。
【実施例】
【0174】
実施例1:薬物動態学試験
【0175】
(R)−バクロフェンの2種類の試験製剤(実施例4と5による)と市販の基準ラセメート製品(LIORESAL(登録商標))との相対的バイオアベイラビリティを比較し、評価するために、非盲検、単回、3−治療、3期間、バランスのとれた、無作為化、クロスオーバー試験を設計する。
【0176】
健康な被験者15人に、3種類の場合の各々に、各投与間に少なくとも7日間のウォッシュアウト期間を置いて投与する。投与は、一晩絶食した後に、8A.M.に行なう。水は、投与時の150mlを除いて、投与前の1時間と投与後の1時間禁止する。48時間にわたって、各投与の直前及び直後に規則的な時間間隔を置いて静脈血液サンプルを採取する。血漿中のバクロフェン異性体の濃度をHPLCによって測定する。個々の血漿濃度曲線を作成して、Tmax、Cmax及びAUCを含めた、個別、平均及び相対的薬物動態パラメータを算出する。
【0177】
実施例2:胃不全麻痺に罹患した対象を治療するための富化(R)−バクロフェン経口投与形の使用
【0178】
SAQ(頻度に基づく患者報告症状評価アンケート)及びIAQ(重症度に基づく治験担当医評価アンケート)の各々で8〜20の総合スコアを有する、胃不全麻痺と診断されたI型糖尿病対象に、富化(R)−バクロフェン約2.5mgを含有する富化(R)−バクロフェン製剤を1日3回投与する。該対象の胃不全麻痺の症状を約2週間モニターして、胃不全麻痺に対する2.5mg投与量の効果を評価する。効果は、重症度及び強度アンケートの総合スコアを基準にする。両方のアンケートは6種類の目標症状:吐き気、嘔吐、食欲不振、鼓脹、早期満腹感及びミール・トレランス(meal tolerance)を有する。総合症状スコアは、SAQとIAQとの評価の合計として算出される。
【0179】
2.5mg投与量の効果がひと度確認されたならば、富化(R)−バクロフェンの量を数日間又は数週間にわたって胃不全麻痺の所望の軽減を達成する高いレベルに高めることによって、投与量を安全に滴定することができる。慣用的ラセミ製剤中の薬物使用量未満を含む、この実施例の製剤は、殆ど副作用を示さずに、同等以上の治療効果を達成する。
【0180】
実施例3:非潰瘍性消化不良に罹患した対象を治療するための富化(R)−バクロフェン経口投与形の使用
【0181】
上腹部痛と吐き気の症状を有する、非潰瘍性消化不良と診断された対象に、富化(R)−バクロフェン約2.5mgを含有する富化(R)−バクロフェン製剤を1日3回投与する。該対象の非潰瘍性消化不良の症状を約2週間モニターして、非潰瘍性消化不良に対する2.5mg投与量の効果を評価する。効果は、重症度及び強度アンケートの総合スコアを基準にする。両方のアンケートは4種類の目標症状:上腹部痛、満腹感(sensation of fullness)、鼓脹感及び吐き気を有する。総合症状スコアは、SAQとIAQとの評価の合計として算出される。
【0182】
2.5mg投与量の効果がひと度確認されたならば、富化(R)−バクロフェンの量を数日間又は数週間にわたって非潰瘍性消化不良の所望の軽減を達成する高いレベルに高めることによって、投与量を安全に滴定することができる。慣用的ラセミ製剤中の薬物使用量未満を含む、この実施例の製剤は、殆ど副作用を示さずに、同等以上の治療効果を達成する。
【0183】
実施例4:(R)−バクロフェンを含有する即時放出コア製剤
【表1】

【0184】
製造方法
【0185】
適当な秤を用いて成分を秤量する。
【0186】
V型ブレンダーに、ステアリン酸マグネシウム以外の成分を加える。
【0187】
30分間(均質なブレンドが得られるまで)混合する。
【0188】
該ブレンダーにステアリン酸マグネシウムを加える。
【0189】
さらに5分間混合する。
【0190】
適当な製錠機で、圧縮成形して、錠剤(100mg重量)にする。
2.5mg強度の錠剤重量100mg
【0191】
実施例5:種々な等級のMethocel(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を種々なレベルで用いた、(R)−バクロフェンの調節放出錠剤製剤
【表2】

加工中に除去される。
【0192】
材料供給者(Dow chemicals)が述べているように、種々な等級のMethocel(例えば、K.E.Series)が使用可能である。
【0193】
湿式造粒法(上記製剤を用いる)
【0194】
成分を秤量する。
【0195】
PVPをイソプロピルアルコール(IPA)中に溶解する。
【0196】
(R)−バクロフェン、Methocel、Avicelの50%及びラクトースの50%を適当なミキサー(例えば、プラネタリ・ミキサー(Hobart)、高剪断ミキサー(Diosna/Fielder))に入れる。
【0197】
混合を15分間行なって、均質な混合物を製造する。
【0198】
混合を続けて、該混合物に造粒用流体(granulating fluid)(PVP溶液)を加える。
【0199】
適当な造粒終点に達するまで、混合を続ける(必要に応じて、さらにIPAを加えて、適当な顆粒を製造する)。
【0200】
許容される水分レベル(<1.0%)及びIPAレベル(<0.5%)が得られるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置において)。
【0201】
適当なサイズのスクリーン(100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置(例えば、Co-Mill又はFitzpatrickミル)に、乾燥顆粒を通す。
【0202】
上記で得られた顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素を、ラクトース及びAvicelの残部と共に加える。
【0203】
混合を15分間行なう。
【0204】
ステアリン酸マグネシウムを加えて、さらに5分間混合を続ける。
【0205】
適当な製錠機上で、錠剤を圧縮成形する。
【0206】
直接圧縮成形法(上記製剤を用いる)
【0207】
成分を秤量する。
【0208】
全ての成分(ステアリン酸マグネシウム以外)を適当なブレンダー(V型又はY型)に入れる。
【0209】
均質になるまで、混合を15分間行なう。
【0210】
ステアリン酸マグネシウムを加える。
【0211】
さらに5分間混合を続ける。
【0212】
適当な製錠機上で、錠剤ブレンドを圧縮成形して錠剤にする。
【0213】
実施例6:種々な等級のMethocel(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を種々なレベルで用いた、カプリン酸ナトリウムを含有する(R)−バクロフェンの調節放出錠剤製剤
【表3】

加工中に除去される。
【0214】
材料供給者(Dow chemicals)が述べているように、種々な等級のMethocel(例えば、K.E.Series)が使用可能である。
【0215】
湿式造粒法(上記製剤を用いる)
【0216】
成分を秤量する。
【0217】
PVPをイソプロピルアルコール(IPA)中に溶解する。
【0218】
(R)−バクロフェン、Methocel、Avicelの50%及びラクトースの50%を適当なミキサー(例えば、プラネタリ・ミキサー(Hobart)、高剪断ミキサー(Diosna/Fielder))に入れる。
【0219】
混合を15分間行なって、均質な混合物を製造する。
【0220】
混合を続けて、該混合物に造粒用流体(granulating fluid)(PVP溶液)を加える。
【0221】
適当な造粒終点に達するまで、混合を続ける(必要に応じて、さらにIPAを加えて、適当な顆粒を製造する)。
【0222】
許容される水分レベル(<1.0%)及びIPAレベル(<0.5%)が得られるまで、顆粒を乾燥させる(オーブン又は流動化装置において)。
【0223】
適当なサイズのスクリーン(100〜500ミクロン)を装備した、適当な粉砕装置(例えば、Co-Mill又はFitzpatrickミル)に、乾燥顆粒を通す。
【0224】
上記で得られた顆粒をブレンダーに入れて、コロイド状二酸化ケイ素を、ラクトース及びAvicelの残部と共に加える。
【0225】
混合を15分間行なう。
【0226】
ステアリン酸マグネシウムを加えて、さらに5分間混合を続ける。
【0227】
適当な製錠機上で、錠剤を圧縮成形する。
【0228】
直接圧縮成形法(上記製剤を用いる)
【0229】
成分を秤量する。
【0230】
全ての成分(ステアリン酸マグネシウム以外)を適当なブレンダー(V型又はY型)に入れる。
【0231】
均質になるまで、混合を15分間行なう。
【0232】
ステアリン酸マグネシウムを加える。
【0233】
さらに5分間混合を続ける。
【0234】
適当な製錠機上で、錠剤ブレンドを圧縮成形して錠剤にする。
【0235】
実施例7:カプリン酸ナトリウムを含有する(R)−バクロフェン即時放出コア製剤
【表4】

【0236】
製造方法
【0237】
適当な秤を用いて、成分を秤量する。
【0238】
ステアリン酸マグネシウム以外の全ての成分をV型ブレンダーに加える。
【0239】
均質なブレンドが得られるまで、混合を30分間行なう。
【0240】
ステアリン酸マグネシウムを該ブレンダーに加える。
【0241】
さらに5分間混合を続ける。
【0242】
適当な製錠機上で、錠剤ブレンドを圧縮成形して、100mg錠剤にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃不全麻痺の治療を必要とする対象における胃不全麻痺の治療方法であって、該対象に有効量のバクロフェン又はその製薬的に受容される塩を投与することを含み、この場合に、嘔吐以外の胃不全麻痺の少なくとも1つの症状が寛解される方法。
【請求項2】
該胃不全麻痺が、糖尿病、ウイルス感染後症状、拒食症、胃神経若しくは迷走神経の手術、アミロイド症、強皮症、腹性偏頭痛、パーキンソン病、甲状腺機能低下症から選択された、少なくとも1つの状態によって惹起されたものであるか、又は上記状態のいずれかの症状である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
バクロフェン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に関連した副作用の少なくとも1つを最小にしながら、該胃不全麻痺を治療する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
バクロフェンが製薬的投与形中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
該投与形が、経口投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、注射投与又は経皮投与に適したものである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
調節放出製剤を即時放出製剤と組み合わせる、請求項7記載の方法。
【請求項9】
該バクロフェンがラセミ・バクロフェン、富化(R)−バクロフェン、実質的に純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
バクロフェン又はその製薬的に受容される塩を、少なくとも1種類の他の薬剤学的活性化合物と組み合わせて投与する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
非潰瘍性消化不良の治療を必要とする対象における非潰瘍性消化不良の治療方法であって、該対象に有効量のバクロフェン又はその製薬的に受容される塩を投与することを含み、この場合に、嘔吐以外の非潰瘍性消化不良の少なくとも1つの症状が寛解される方法。
【請求項12】
該非潰瘍性消化不良が、胃内容排出遅延、食後胃前庭部運動障害、小腸運動障害、胃炎、膨張に対する内臓過敏症、食物に対する内臓過敏症、食事に対する適応障害、及び中枢神経障害から選択された、少なくとも1つの状態によって惹起されたものであるか、又は上記状態のいずれかの症状である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
バクロフェン又はその製薬的に受容される塩の慣用的製剤の投与に関連した副作用の少なくとも1つを最小にしながら、該非潰瘍性消化不良を治療する、請求項11記載の方法。
【請求項14】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
バクロフェンが製薬的投与形中で与えられる、請求項11記載の方法。
【請求項16】
該投与形が、経口投与、鼻腔内投与、頬側投与、舌下投与、注射投与又は経皮投与に適したものである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項11記載の方法。
【請求項18】
調節放出製剤を即時放出製剤と組み合わせる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
該バクロフェンがラセミ・バクロフェン、富化(R)−バクロフェン、実質的に純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩を含む、請求項11記載の方法。
【請求項20】
バクロフェン又はその製薬的に受容される塩を、少なくとも1種類の他の薬剤学的活性化合物と組み合わせて投与する、請求項11記載の方法。
【請求項21】
富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩を、経口投与、鼻腔内投与、頬側投与、経皮投与、非経口投与又は舌下投与のための製薬的投与形の形態で含む、製薬的に受容される製剤。
【請求項22】
調節放出投与形として製剤化される、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項23】
請求項20記載の製薬的に受容される製剤であって、それを必要とする対象へのその投与が、バクロフェンの慣用的ラセミ製剤の投与に付随する副作用の少なくとも1つを最小にしながら、非潰瘍性消化不良の症状を軽減する製剤。
【請求項24】
請求項21記載の製薬的に受容される製剤であって、それを必要とする対象へのその投与が、バクロフェンの慣用的ラセミ製剤の投与に付随する副作用の少なくとも1つを最小にしながら、非潰瘍性消化不良の症状を軽減する製剤。
【請求項25】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、0.1N HCl中で撹拌したときに、30分間以内にその薬物含量の75%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項26】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、1時間:約10%〜約50%;2時間:約20%〜約70%;4時間:約70%以上;及び6時間:約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項27】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、0.1N HCl中で2時間、続いて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で試験の残り時間撹拌したときに、2時間(酸中):約20%以下;2時間(緩衝液中):約20%以上;4時間(緩衝液中):約40%以上;6時間(緩衝液中):約60%以上;及び12時間(緩衝液中):約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項28】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、2時間:約10%以下;及び6時間:約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項29】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、2時間:約10%以下;4時間:約20%〜約80%;及び6時間:約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項28記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項30】
富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を胃不全麻痺の治療を必要とする対象に投与することを含む胃不全麻痺の治療方法であって、該対象が富化(R)−バクロフェン又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの投与から生じる治療利益を得る、そして富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の量が、同じ治療利益を得るために必要な、ラセミ・バクロフェンの量よりも少ない方法。
【請求項31】
富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を非潰瘍性消化不良の治療を必要とする対象に投与することを含む非潰瘍性消化不良の治療方法であって、該対象が富化(R)−バクロフェン又は実質的純粋な(R)−バクロフェンの投与から生じる治療利益を得る、そして富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の量が、同じ治療利益を得るために必要な、ラセミ・バクロフェンの量よりも少ない方法。
【請求項32】
ラセミ・バクロフェンの投与に付随する1つ以上の副作用を軽減する方法であって、このような軽減を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、該1つ以上の副作用が、等量のラセミ・バクロフェンの投与から生じる副作用に比べて軽減される方法。
【請求項33】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項32記載の方法。
【請求項34】
ラセミ・バクロフェンの投与に付随する1つ以上の薬物相互作用を軽減する方法であって、このような軽減を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、該1つ以上の薬物相互作用が、等量のラセミ・バクロフェンの投与から生じる薬物相互作用に比べて軽減される方法。
【請求項35】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
胃不全麻痺治療の治療効果を持続させる方法であって、このような治療を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の投与が、等量のラセミ・バクロフェンの投与によって得られる治療効果よりも長く持続する治療効果を生じる方法。
【請求項37】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項36記載の方法。
【請求項38】
非潰瘍性消化不良の治療の治療効果を持続させる方法であって、このような治療を必要とする対象に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の治療有効量を投与することを含み、この場合に、富化(R)−バクロフェン、実質的純粋な(R)−バクロフェン、又はこれらの製薬的に受容される塩の投与が、等量のラセミ・バクロフェンの投与によって得られる治療効果よりも長く持続する治療効果を生じる方法。
【請求項39】
バクロフェンが調節放出製剤中で投与される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、0.1N HCl中で2時間、続いて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で試験の残り時間撹拌したときに、2時間(酸中):約20%以下;2時間(緩衝液中):約20%以上;4時間(緩衝液中):約40%以上;6時間(緩衝液中):約60%以上;及び12時間(緩衝液中):約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項41】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、2時間:約10%以下;及び6時間:約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項21記載の製薬的に受容される製剤。
【請求項42】
該製剤が、米国薬局方(USP)タイプ2装置で37℃において試験し、50rpmにおいて、pH6.8リン酸塩緩衝液中で撹拌したときに、2時間:約10%以下;4時間:約20%〜約80%;及び6時間:約80%以上を放出する、経口製剤としての、請求項28記載の製薬的に受容される製剤。

【公表番号】特表2007−505099(P2007−505099A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525927(P2006−525927)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003299
【国際公開番号】WO2005/025559
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(506377248)エイジーアイ・セラピューティクス・リサーチ・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】