GLP−1、EXENDIN−4、そのペプチド・アナログ及びその使用
【課題】糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療薬としてのポリペプチドの提供。
【解決手段】GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログ。
【効果】ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等量のGLP-1又はexendin-4の効果と同程度か又はそれを超える。糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療に用いることができる。
【解決手段】GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログ。
【効果】ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等量のGLP-1又はexendin-4の効果と同程度か又はそれを超える。糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療に用いることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
当該出願は、2001年7月31日に出願された米国特許出願番号第60/309,076号に対して優先権を主張する。
【0002】
本願発明は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、exendin-4、及びそれらのペプチド・アナログに広く関する。本発明は、糖尿病及び神経変性症状の治療におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
膵臓のベータ細胞機能不全及び付随するインシュリン産生の減少は、糖尿病をもたらす恐れがある。1型糖尿病において、ベータ細胞は、免疫系によって完全に破壊され、インシュリン産生細胞の欠如をもたらす(インシュリン依存型[1型]糖尿病に対する内科医のガイド:Diagnosis and Treatment, American Diabetes Association, 1988(非特許文献1))。2型糖尿病において、ターゲット組織がグルコース摂取においてインシュリンの効果に抵抗性をもつようになると、ベータ細胞が徐々に能率的でなくなる。よって、ベータ細胞は、1型糖尿病の人々において不存在であり、そして2型糖尿病の人々において機能的に十分な機能を果たしていない。
【0004】
現在、ベータ細胞機能不全は、いくつかのの異なる方法で治療される。1型糖尿病又は末期の2型糖尿病は、インシュリン補充療法が必要である。たとえ連続的な注入又は複数の注射が複雑な投薬計画で使用されたとしても、インスリン療法、あるいは救命療法は、正常血糖を回復させない。例えば、インシュリン補充療法を受けている個人において、食後のグルコース・レベルは、非常に高いままである。よって、インスリン療法は、複数の毎日の注射又は連続的な注入によってなされなければならなくて、かつ、その効果は、高血糖、低血糖、代謝性アシドーシス、及びケトーシスを避けるために慎重に監視されなければならない。
【0005】
2型糖尿病の人々は、ベータ細胞からのインシュリン産生及び分泌を刺激する、及び/又はインシュリン感受性を改善する薬物を用いて一般に治療される。しかし、これらの薬の主な問題点は、インシュリン産生及び分泌が血糖値にかかわらず促進されることである。よって、食物摂取は低血糖又は高血糖を避けるために、インシュリン産生及び分泌の促進に対して釣り合わせなければならない。ここ数年で、いくつかの新しい薬剤が2型糖尿病の治療に利用可能になった。これらは、メトフォルミン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、及びアクラボス(Bressler and Johnson, 1997(非特許文献2)を参照のこと)を含んでいる。しかし、これらの新しい薬剤によって得られたヘモグロビンA1cの低下は、あまり十分ではなく、それらが糖尿病の長期のコントロールを改善しないことを示唆している(Ghazzi et al., 1997(非特許文献3))。
【0006】
食物に応答して腸神経内分泌細胞によって通常分泌されているホルモンである、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が、2型糖尿病の新しい治療として提案された(Gutniak et al., 1992(非特許文献4); Nauck et al., J. Clin. Invest., 1993(非特許文献5))。それは、長年の2型糖尿病の患者であっても、ベータ細胞によるインシュリン分泌分泌を増加させる(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6))。GLP-1が内性インシュリン分泌を刺激し、それが血糖値が下がったときに止まるので、GLP-1治療は、インスリン療法を上回る利点がある(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6); Elahi et al., 1994(非特許文献7))。GLP-1は、インシュリンの分泌及び合成を増加させることによって正常血糖を促進するので、グルカゴン分泌を抑え、そして胃内容排出を減少させる(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6); Elahi et al., 1994(非特許文献7); Wills et al., 1996(非特許文献8); Nathan et al., 1992(非特許文献9); De Ore et al., 1997(非特許文献10))。GLP-1は、ヘキソキナー・mRNAレベルの増加をも誘発する(Wang et al., Endocrinology 1995(非特許文献11); Wang et al., 1996(非特許文献12))。
【0007】
GLP-1は、ベータ細胞においてインシュリン分泌効果をもつこと(Thorens and Waeber, 1993(非特許文献13); Orskov, 1992(非特許文献14))、及びインシュリン分泌細胞系に加えられて24時間、インシュリン生合成及びプロインシュリン遺伝子発現を増加させることが知られている(Dracker et al., 1987(非特許文献15); Fehmann and Habener, 1992(非特許文献16))。RIN1046-38細胞を使った研究において、GLP-1による24時間の処理が、GLP-1が取り除かれた後1時間、及びこの細胞の数回の洗浄後でさえ、グルコース反応性を増加させた(Montrose-Rafizadeh et al., 1994(非特許文献17))。よって、GLP-1は、系から代謝された後でもβ細胞に対する生物学的な効果をもつことが知られているインシュリン分泌刺激剤である。GLP-1は、プログルカゴンの転写後修飾の産物である。GLP-1の配列、並びにその活性断片GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)アミドが当該技術分野で知られている(Fehmann et al., 1995(非特許文献18))。GLP-1は、糖尿病の治療における治療薬として提案されたが、それは、たとえ皮下にボーラスによって与えられるとしても(Ritzel et al., 1995(非特許文献19))、短い生物学的半減期をもつ(De Ore et al., 1997(非特許文献10))。1つは、GLP-1(及びGLP-1(7-36)アミド)の分解は、第8アミノ酸と第9アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)の間でポリペプチドを切断する酵素ジペプチジル・ペプチダーゼ(DPP1V)によってである。
【0008】
exendin-4は、アメリカ・ドクトカゲトカゲの唾液腺で産生されるポリペプチドである(Goke et al., 1993(非特許文献20))。exendin-4のアミノ酸配列は、当該技術分野で知られている(Fehmannet al., 1995(非特許文献18))。それが特殊な非哺乳類の遺伝子の産物であり、かつ、唾液腺だけで発現されると思われたが(Chen and Drucker, 1997(非特許文献21))、exendin-4は、GLP-1と52%のアミノ酸配列相同性をもち、そして哺乳動物においてGLP-1受容体と相互作用する(Goke et al., 1993(非特許文献20); Thorens et al., 1993(非特許文献22))。インビトロにおいて、インシュリン産生細胞によるインシュリン分泌を促進すし、そして等モルの分量で与えられると、exendin-4は、GLP-1より強力にインシュリン産生細胞からのインシュリン放出を引き起こすことが示された。さらに、exendin-4が、齧歯動物及びヒトの両方で、強力にインシュリン分泌を促進して血漿グルコース・レベルを下げ、そしてそれがGLP-1より長く作用する。しかし、通常哺乳動物において生じないので、Exendin-4は、GLP-1を欠く哺乳動物において潜在的な抗原特性を必ずもっている。
【0009】
糖尿病で生じるインシュリン産生の減少に加えて、末梢神経障害が、糖尿病に一般に関係する。全糖尿病患者の20〜30パーセントが、いつかは末梢神経障害を患う。さらに、心臓病、脳卒中、高血圧症、及び糖尿病によるアルツハイマー症の高い危険性が報告されている(Moceri et al., 2000(非特許文献23); Ott et al., 1999(非特許文献24))。よって、糖尿病は神経変性疾患に関係する病気でもある。
【0010】
多数の研究が、GLP-1受容体が、齧歯動物(Jin et al., 1988(非特許文献25)、Shughrue et al., 1996(非特許文献26))及びヒト(Wei and Mojsov 1995(非特許文献27)、Satoh et al., 2000(非特許文献28))の両方の脳にあることを証明した。分布の化学的構成(chemoarchitecture)は、視床下部、視床、脳幹、外側中隔、脳弓下器官、及び最後野であり、一般にたくさんのペプチド受容体が配置されている全ての脳室周囲区域に大部分は限られているように思われる。しかし、GLP-1のための特定の結合部位は、低密度ではあるが、被殻-尾状核、皮質、及び小脳の全体にわたって検出された(Campos et al. 1994(非特許文献29), Calvo et al. 1995(非特許文献30), Goke et al. 1995(非特許文献20))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Diagnosis and Treatment, American Diabetes Association, 1988
【非特許文献2】Bressler and Johnson, Arch. Int. Med. 157: 836-848, 1997
【非特許文献3】Ghazzi et al., Diabetes 46: 433-439, 1997
【非特許文献4】Gutniak et al., N. Engl. J. Med. 326: 1316-1322, 1992
【非特許文献5】Nauck et al., J. Clin. Invest., 91: 301-307, 1993
【非特許文献6】Nauck et al., Diabetologia, 36:741―744,1993
【非特許文献7】Elahi et al., Regul. Pep. 51: 63-74, 1994
【非特許文献8】Wills et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 81: 327-332, 1996
【非特許文献9】Nathan et al., Diabetes Care 15: 270-276, 1992
【非特許文献10】De Ore et al., J. Gerontol. 52: B245-249, 1997
【非特許文献11】Wang et al., Endocrinology 136: 4910-4917, 1995
【非特許文献12】Wang et al., Moll. Cell. Endo. 116: 81-87, 1996
【非特許文献13】Thorens and Waeber, Diabetes 42: 1219-1225, 1993
【非特許文献14】Orskov, Diabetologia 35: 701-711, 1992
【非特許文献15】Dracker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84: 3434-3438, 1987
【非特許文献16】Fehmann and Habener, Endocrinology 130: 159-166, 1992
【非特許文献17】Montrose-Rafizadeh et al., Endocrinology 135: 589-594, 1994
【非特許文献18】Fehmann et al., Endocrine Rev. 16: 390-410, 1995
【非特許文献19】Ritzel et al., Diabetologia 38: 720-725, 1995
【非特許文献20】Goke et al., Diabetes 46: 433-439, 1993
【非特許文献21】Chen and Drucker, J. Biol. Chem. 272: 1408-4115, 1997
【非特許文献22】Thorens et al., Diabetes 42: 1678-1682, 1993
【非特許文献23】Moceri et al., Neurology 54: 415-420, 2000
【非特許文献24】Ott et al., Neurology 53: 1937-1942, 1999
【非特許文献25】Jin et al., J. Comp. Neurol. 271: 519-532, 1988
【非特許文献26】Shughrue et al., Endocrin. 137(11): 5159-5162, 1996
【非特許文献27】Wei and Mojsov FEBS Lett. 358(3): 219-224, 1995
【非特許文献28】Satoh et al., Endocrinology 141: 1301-1309, 2000
【非特許文献29】Campos et al. Endocrinology 134: 2156-2164, 1994
【非特許文献30】Calvo et al. J. Neurochem. 64(1): 299-306, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該技術分野で必要とされているのは、糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療において治療的に価値のあるポリペプチドである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の概要
本願発明の目的に従って、本明細書中に含まれ、かつ、全体的に記載されているとおり、1の側面において、本願発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、インシュリン分泌刺激性及び長期作用性である。好ましくは、前記ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等モル量のGLP-1又はexendin-4の効果に匹敵するか又はそれを超える。
【0014】
本発明は、さらに、精製されたポリペプチド、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25又は配列番号33を含むアミノ酸配列に関する。
【0015】
他の側面において、本発明は、糖尿病の患者の治療方法であって、インシュリン分泌刺激効果がある量で本発明のポリペプチドを上記患者に投与することを含む方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる利点は、以下の記載によりある程度説明され、そしてある程度記載から明らかであるか、又は本発明の実施によって確認されうる。本発明の利点は、特に添付の請求項で指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成される。先の概要及び以下の詳細な説明は共に、請求される本発明の単なる典型及び解説であり、本発明を制限するものではないことは、理解されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。前記ポリペプチドは、インシュリン分泌刺激性及び長期作用性である。好ましくは、前記ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等モル量のGLP-1又はexendin-4の効果に匹敵するか又はそれを超える。したがって、本発明は、糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療において治療的に価値のあるポリペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】それらのインシュリン分泌刺激性質について試験した35の合成ポリペプチドについての配列、並びにGLP-1及びEx-4についての配列を示す。暗い陰影は、exendin-4に似た残基を示して、明るい陰影は、GLP-1に似た残基を示す。
【図1−2】図1-1の続きである。
【図1−3】図1-1の続きである。
【図2】GLP-1、exendin-4、及び図1に規定した合成ポリペプチドの存在下、RIN1048-36細胞におけるインシュリン分泌の比較を示す。レベルを、基礎レベルのパーセンテージとして表す。
【図3】グルコース(5mM)の存在下、そして10 nMのGLP-1(配列番号1)、GLP-1 Gly8(ペプチド1;配列番号3)、GLP-1 6-アミノヘキサン酸8(ペプチド11;配列番号8)、GLP-1(6-アミノヘキサン酸9)4(ペプチド25;配列番号22)、GLP-1(6-アミノヘキサン酸9)8(ペプチド26;配列番号23)又はカルボキシ末端から3、5、7、12、21、及び全てのD-アミノ酸を含むGLP-1の6つのアナログの存在又は不存在下のRIN1048-38細胞におけるインシュリン分泌の比較を示す。データは、2〜3の実験の平均±SEMを表す。処理、対、基礎について**p<0.001、*p<0.05である。レベルは、インシュリンのpg/タンパク質のμgで表す。同様に、基礎分泌も示される。
【図4】細胞内cAMPの産生におけるGLP-1アナログの効果を示す。CHO/GLP-1R細胞は、37℃にて30分間指示されたポリペプチド(10 nm)と一緒にインキュベートされ、その後にそれらは溶解され、そしてこのライセートがcAMP含量の定量のために処理された。データは、GLP-1(10 nm)の存在下で得られた最大値に標準化される。データポイントは、2〜3の実験の平均を表す。治療、対、基礎について**p<0.001、*p<0.05である。
【図5】GLP-1、GLP-1 Gly8(配列番号3)、及びGLP-1 6-アミノヘキサン酸8(配列番号8)に関する用量反応曲線を示す。細胞内cAMPレベルが、指示された濃度の GLP-1、GLP-1 Gly8、GLP-1 6-アミノヘキサン酸8により37℃で30分間処理された後のCHO/GLP-1R細胞において計測された。データは、GLP-1(10 nM)の存在下、各々の実験で得られた最大値に対して標準化された。バーは、トリプリケートで実施された3つの実験の±SEMを表す。
【図6】CHO/GLP-1R細胞に結合している[125I]-GLP-1の、GLP-1・アナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]-GLP-1を、様々な濃度の前記ポリペプチドと競合させた。データは、10 nMのそれぞれのポリペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、平均+トリプリケートで実施された3つの実験の±SEMを表す。
【図7】等モル濃度のexendin-4及びGLP-1と比較した場合の、絶食中の糖尿ズッカーラットにおいて、インシュリン分泌を誘発する、0.4 nmol/kgのポリペプチドEx-4WOT(配列番号7)及びGLP-1Gly8(配列番号3)の急性インシュリン分泌活性を示す。
【図8】等モルの濃度のexendin-4及びGLP-1と比較した場合の、最大24時間の絶食させた糖尿病ズッカーラットにおける、0.4 nmol/kgのポリペプチド10(Ex-4WOT(配列番号7))、ポリペプチド1(GLP-1Gly8(配列番号3))、及びポリペプチド11(GLP-1 6-アミノヘキサン酸8(配列番号8))のインシュリン分泌活性のタイムコースを示す。
【図9】GLP-1Gly8(配列番号3)及びGLP-1 6-アミノヘキサン酸酸8(配列番号8)の生物学的な効果を示す。図9Aは、ウィスター及びズッカー肥満ラットへのGLP-1 6-アミノヘキサン酸8(24 nmol/kg)を、そしてズッカーラットだけへのGLP-1Gly8(24nmol/kg)の皮下注射後の、血糖値に対する効果を示し、そして図9Bは、上記の後のインシュリン・レベルへの効果を示す。ズッカー及びウィスターラットの両者は、注射前の一晩絶食させた。結果は、平均±SEM、1群あたりn=6。
【図10A】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図10B】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図10C】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図11】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理されたPC12細胞から抽出されたタンパク質の濃度測定による定量化を示す。細胞ライセート及び調整培地サンプルから得られたタンパク質バンドは、22C11モノクローナル抗体(エピトープ:βAPP aa66-81、Roche, Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を用いたウェスタンブロッティングによって分析され、そして免疫プローブされた。データは、細胞ライセート・サンプル(A及びB)由来のβAPP誘導体、及び処理3日目に採集されたの調整培地サンプル(C及びD)由来の可溶性sAPPの、低血清培地のみで培養した未処理の対照サンプルと比較した、発現のパーセント変化として表される。垂直なエラーバーは、3つの別個の実験値の±標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図12】PC12細胞における神経突起増殖に対する異なる濃度のNGF及び/又はexendin-4処理の効果を示す。神経突起増殖は、未処理(低血清培地)のものと比較して、神経突起をもつ細胞数の増加パーセントで表される。垂直なエラーバーは、6つの別個の実験値の平均間の差異についての±標準誤差である。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図13】NGF介在細胞死に対するexendin-4処理の効果を示す。複合処理が、exendin-4(1又は5 ng/ml)の存在又不存在下、そして50 ng/mlのNGFの存在又は不存在下、合計7日間実施された。その後細胞を採集し、そしてさらに3日間完全培地中で回復させた。10日目に、細胞の生存が、(MTT法による)生菌の割合として示される。垂直なエラーバーは、4つの別個の実験値の±標準誤差を表す。
【図14】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、GLP-1処理PC12細胞から抽出されたシナプトフィジン・タンパク質の濃度測定による定量化を示す。細胞ライセート・サンプルから得られたタンパク質バンドは、神経分泌小胞を染色するシナプトフィジン・モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析され、そして免疫プローブされた。それは。シナプトフィジンは、分化のマーカーとして使われた。シナプトフィジン・タンパク質の濃度は、未処理のものからの差異のパーセントとして示される。垂直なエラーバーは、別々の時間間隔で行われた3つの個々の実験値の±標準誤差である。未処理からの有意差:**p<0.01。
【図15】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理後のPC12細胞の調整培地中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの倍増を示す。LDHレベルは、高いレベルほど細胞の完全性の損失に関係している細胞生存のマーカーである。垂直なエラーバーは、別々の時間間隔で行われた3つの別個の実験値の平均間の差異の±標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図16】培養された海馬ニューロンにおける、非放射性GLP-1による125I-GLP-1結合の置き換え(A)、GLP-1刺激されたcAMP放出(B)、及びグルタミン酸によって誘発されたアポトーシスに対する保護(C)を示す。完全な培養海馬ニューロンに結合した125I-GLP-1を、様々な濃度GLP-1と競合させた。データは、1 μMのGLP-1の存在下で得られた最大値に対して標準化される。各々のデータポイントは、2つの実験値の平均を表し、それは、非放射性ペプチドの不存在下の最大結合に対するパーセンテージとして示される。cAMPレベルは、10 nMのGLP-1との、30分間のインキュベーションにわたってアッセイされた(B)。垂直なエラーバーは、3つの個々の実験値の平均の±標準誤差を表す。10 nMのGLP-1又は0.3 μMのexendin-4による処理が、10 μMのグルタミン酸のアポトーシス効果から完全に保護した(C)。培養物は、一晩処理されて、4%のパラホルムアルデヒドで固定され、そしてHoechst33342を用いて染色された。アポトーシス核の数を、数えて、そしてこの値は、1つの処理条件につき6枚の別個の皿の合併平均として示される。垂直なエラーバーは、平均間の差異の±標準誤差である。対照からの有意差:*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001。
【図17】大脳核におけるコリン・アセチルトランスフェラーゼ及びグリア繊維性酸性タンパク質免疫反応性を示す。部分的なイボテン酸病変に対して、同側性の(AとC)、及び対側性の(BとD)ChAT-陽性免疫反応性。パネルAとB、そしてCとDは、それぞれ、媒質注入、及びGLP-1注入を受けた個々の動物からの左、及び左の大脳核を描写する。媒質注入(A)を受けた動物の同側大脳核のChAT-陽性免疫反応性は、GLP-1注入を受けた動物の同側大脳核のそれより実質的に低かった(C)。損傷に応答して産生された神経膠星状細胞の反応に関するマーカーであるグリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)免疫反応性は、カニューレ挿入部位を囲んでいる、及び注入部位の周辺の側脳室を裏打ちする陽性免疫反応性の区域を説明した。興味深いことには、GLP-1の注入が、病変(E)の結果として明らかであるもの又は媒質注入後のものより、注入側(F)の大脳核において高いグリア反応を引き起こした。
【図18】媒質(人工CSF:aCSF)、exendin-4又はGLP-1の脳室内(i.c.v.)注入受けた、シャム注射及びイボテン酸動物における、完全な対側の大脳核と関係がある同側の大脳核(病変側)のChAT-免疫反応性細胞体のAbercrombie補正された数の差異のパーセンテージを示す。垂直エラーバーは、平均間の差異の標準誤差を表す。イボテン酸媒質群からの有意差;*p<0.05、及び**p<0.01。
【図19】GLP-1及びアナログによるPC12細胞の処理が、細胞の機能不全なしにβAPP及びsAPPタンパク質レベルを顕著に減少させたことを示す。NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理は、培地標準と比べて、調整培地サンプルからのLDHレベルの測定によって測定される細胞の機能不全と関係しなかった(パネルA)。免疫プローブしたタンパク質の濃度測定による定量化は、低血清培地のみで培養された未処理対照サンプルに対する、細胞ライセート・サンプルからのβAPP誘導体の(パネルB)、及び処理の3日目に採集した調整培地サンプルからの可溶性sAPP(パネルC)の発現の平均パーセント変化として提供される。X軸に沿って説明される条件は、パネルA、B及びCに共通である。垂直なエラーバーは、3つの別個の実験値の標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図20】GLP-1処理が、対照マウスにおける内性Aβ1-40レベルを顕著に減らしたことを示す。対照マウスは、GLP-1(3.3 μgと6.6 μg)、exendin-4(0.2 μg)、NGF(2 μg)及び対照(媒質)をi.c.v.注入された。全脳ホモジェネートの生化学分析が、Aβ1-40についてのサンドイッチELISAによって行われた。Aβ値は、処理及び未処理動物からのfmol/g±SEMで平均Aβ濃度として表されてる。対照からの有意差:**p<0.01。
【図21】Ex-4及びGLP-1Gly8アナログのいくつかについての用量反応曲線を示す。細胞内cAMPレベルが、指示された濃度のペプチドにより37℃で30分間処理した後のRin1046-38細胞において計測された。このデータは、各々のペプチドについて各々の実験で得られた最大値に対して標準化される。
【図22A】血糖値に対するペプチドの急性の生物学的な効果を示す。Ex(1-36)(円)及びEX(1-35)(四角)による結果が、図22Aに示され、そして追加のペプチドによる結果が、図22Bに示される。血糖値及びインシュリン・レベルが、ズッカーラットへの10 nmol/kgの各々のペプチドのsc注射後に測定された。結果は、平均±SEMである(図22Aについてn=4/群、及び図22Bについてn=3)。
【図22B】血糖値に対するペプチドの急性の生物学的な効果を示す。Ex(1-36)(円)及びEX(1-35)(四角)による結果が、図22Aに示され、そして追加のペプチドによる結果が、図22Bに示される。血糖値及びインシュリン・レベルが、ズッカーラットへの10 nmol/kgの各々のペプチドのsc注射後に測定された。結果は、平均±SEMである(図22Aについてn=4/群、及び図22Bについてn=3)。
【図23】対照(白い棒グラフ)及びEx(1-30)処理動物(黒い棒グラフ)における51日間にわたる腹部脂肪量の減少を示す。値は、最初の総脂肪量(0日目)のパーセンテージとして表す。各々の群について、総脂肪減少、並びに内臓及び皮下組織画分から減少した脂肪が共に示される。このデータは、対照動物においてより、Ex(1-30)処理された動物において、顕著に大量の総脂肪及び内臓脂肪の減少があった。どちらの群も、51日目の時点で減少した総脂肪量を示した。対照群において、この減少は主に皮下画分からの脂肪の損失のためであり、それは処理された動物と同程度に思われた。*P<0.05 Ex(1-30)、対、対象。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の説明
本発明は、以下の、本発明の好ましい態様の詳細な説明及びそこに含まれる実施例、並びに図面及びそれらの上記及び下記の説明を参照することによってより容易に理解される。
【0020】
当該化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法が開示及び記載される前に、本願発明は、それらは当然変化するので、特定の合成方法、特定の投与計画、又は特別な精製手順に制限されないと理解されるべきである。本明細書中に使用された用語が、特定の態様のみを記載する目的のためのものであって、制限されることを意図しないと理解されもする。
【0021】
明細書及び添付した請求項で使われる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、前後関係が別段の明確な指示をしない限り、複数の指示物を含む。
よって、例えば、「a polypeptide」への言及は、複数のポリペプチドの混合物を含み、「a pharmaceutical carrier」への言及は、2以上のそのような担体の混合物を含む、そのほかも同様。
【0022】
範囲は、「約」一方の特有の値から、及び/又は「約」他方の特有の値まで、のように本明細書中で表される。そのような範囲が表現されるとき、他の態様は、一方の特有の値から、及び/又は他方の特有の値までを含む。同様に、値が前例の「約」の使用によって、近似値として表現されるとき、特有の値が他の態様を形成することが知られる。各々の範囲の終了点が、他の終了点との関係、及び他の終了点からの独立の両方において重要であることはさらに理解されるであろう。本明細書中に使用されるとき、「約」は、任意の値±10%を表す。
【0023】
本願明細書及び後に続く請求項において、言及は、以下の意味をもつと規定される多数の用語に対して成される:
「任意に」又は「場合により」は、その後に記載された事件又は情況が生じるかもしれず、そしてこの記載は、上記事件又は状況が生じる場合と生じない場合を含むことを意味する。
【0024】
全体にわたり使用されるとき、「患者」は、個人を意味する。好ましくは、患者は哺乳動物、例えば霊長類、より好ましくは、ヒトである。よって、「患者」は、飼い慣らされた動物、例えば猫、犬等、家畜(例えば、牛、馬、豚、羊、ヤギ等)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット等)を含みうる。
【0025】
用語「ポリペプチド」は、用語「ペプチド」と互換性をもって本明細書中で使われる。「ポリペプチド」も「ペプチド」もペプチド結合によって接続された一連の天然又は非天然アミノ酸を含んでいる。
【0026】
「単離されたポリペプチド」又は「精製されたポリペプチド」は、上記ポリペプチドに通常天然又は培養において付随する物質を実質的に含まないポリペプチドを意味する。本発明のポリペプチドは、例えば利用可能であれば(例えば、哺乳類細胞)天然起源からの抽出によって、上記ポリペプチドをコードしている組み換え核酸の発現によって(例えば、細胞又は細胞を含まない翻訳系により)、又は上記ポリペプチドの化学合成によって得ることができる。さらに、ポリペプチドは、完全長のポリペプチドの切断によって得ることができる。ポリペプチドが大きな天然のポリペプチドの断片であるとき、単離されたポリペプチドは短く、そして断片の完全長の、天然のポリペプチドを除外する。
【0027】
本発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。本明細書中に使用されるとき、「GLP-1」は、完全なGLP-1配列の第7〜36残基のアミド化型であるGLP-1 7-36アミド、及びGLP-1 7-37と同義的に使われる。exendin-4の残基は、GLP-1、第7〜36残基とアラインされ、GLP-1残基の番号付けに従って番号付けされる。そのような残基番号付けの慣習が、全体にわたり使われる。図1を参照のこと。
【0028】
好ましい態様において、前記ポリペプチドはインシュリン分泌刺激性である。「インシュリン分泌刺激性」は、前記ポリペプチドが、グルコースのみに対する応答の基礎分泌レベルに比べて、グルコースに依存した様式でインシュリン合成、放出又は分泌を増やすことを意味する。好ましくは、インシュリン分泌のそのような増加は、基礎分泌よりも少なくとも1.15、1.25、1.5、2.0、2.5、3.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5又は20.0倍多い。インシュリン分泌の増加は、本技術分野に知られる分析方法を使って、直接的に(例えば、インシュリン・レベルの増加を示すことによって)、又は間接的に(例えば、グルコース・レベルの減少、又はcAMPレベルの増加を示すことによって)、インビボで(例えば、血糖値をアッセイすることによって)、又はインビトロで(例えば、培地中のインシュリン・レベルをアッセイすることによって)示される。
【0029】
インシュリン分泌刺激効果は、例えばインシュリン陽性細胞数の増加を含むいくつかの機構のいずれか1つによるかもしれない。インシュリン分泌刺激性ポリペプチドは、例えば幹細胞の、インシュリン陽性細胞への分化を促進することによって、並びに非幹細胞のより分化されていない状態への脱分化を促進し、そしてインシュリン陽性細胞への分化を促進することによって、インシュリンの放出を促進する。2番目の態様として、インシュリン分泌刺激効果は、任意の期間において各々のインシュリン陽性細胞で合成された及び/又は放出されたインシュリンの量の増加によって引き起こされる。インシュリン陽性細胞の数が増やされて、そして同様に、各々細胞によって分泌されるインシュリンの量が増やされる場合、合わせたインシュリン分泌刺激効果が、生じることもある。
【0030】
「基礎分泌」は、第2の放出剤の不存在下で、グルコース刺激に応答して放出されたインシュリンの量を意味する。
【0031】
「インシュリン陽性細胞」は、例えば膵臓の島細胞、例えばベータ細胞、又は細胞株、例えばRIN1048-36細胞を含むインシュリンを放出することが示されたあらゆる細胞、インシュリンを放出するように設計されたあらゆる細胞(例えば、インシュリンを含む遺伝学的に修飾された細胞)、又はインシュリンを含んでいるあらゆる細胞を意味する。
【0032】
「GLP-1又はexendin-4のアナログ」は、アゴニスト特性を示す(すなわち、GLP-1又はexendin-4の1以上の生物活性を示す)修飾されたGLP-1及びexendinアミノ酸配列を意味する。そのような修飾は、GLP-1中に存在する1以上のアミノ酸残基、又はexendin-4中に存在する1以上のアミノ酸残基を含むキメラ・ポリペプチドを含む。修飾は、GLP-1又はexendin-4、あるいはキメラ・ポリペプチドの切詰めをも含む。例えば、切詰められたキメラ・ポリペプチドは、GLP-1の36位のRと交換された36位のGをもつexendin-4 7-36である。本発明のポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4と比べて機能上の活性のかなりの損失のない、GLP-1又はexendin-4の、1以上の追加のアミノ酸(すなわち、挿入又は付加)、アミノ酸の削除、あるいはアミノ酸配列の置換を含む。例えば、削除は、現在の規定された識別活性に不可欠ではないアミノ酸から成り、そして置換は、保存的であるか(すなわち、塩基性、親水性又は疎水性アミノ酸を同じもので置換する)、又は非保存的である。よって、所望の修飾及び変更は、GLP-1及びexendin-4のアミノ酸配列で作製され、そしてタンパク質は、依然として観察される似た特徴をもつと理解されている。生物学的な有用性又は活性のかなりの喪失、及びそのような有用性又は活性の増加の可能性なしに、様々な変更が、GLP-1アミノ酸配列又はexendin-4アミノ酸配列(又は基礎をなす核酸配列)で作製される。
【0033】
本明細書中に使用されるとき、GLP-1又はexendin-4、あるいはそれと実質的に一致するアミノ酸配列をもつポリペプチドに関する用語「断片」又は「切詰め」は、GLP-1又はexendin-4、あるいはそれと実質的に一致しているアミノ酸配列をもつポリペプチドのいずれかの少なくとも5つの隣接したアミノ酸のポリペプチド配列を意味し、ここで、上記ポリペプチド配列はインシュリン分泌刺激機能をもつ。
【0034】
他の修飾は、アミノ酸残基の少なくとも1つの天然L立体配位が、アミノ酸残基のD立体配位と置き換えられている、D-エナンチオマーを含む。
【0035】
本発明は、スペーサ、例えばラテラル・スペーサの使用を検討する。用語「ラテラル・スペーサ」は、化学結合によってアミノ酸配列の中に組み込まれる化合物と規定され、それにより上記化合物は、その位置での又はその付近でのアミノ酸配列の切断(例えば、DPP1Vによる)を減らすか又は除くために、2つ以上のアミノ酸残基の間の距離を延ばす。例えば、配列A-X-B(式中、AとBがアミノ酸残基であり、Xがラテラル・スペーサである)において、酵素による配列の切断は、ラテラル・スペーサの存在しない配列(A-B)に比べて、減らされるか又は除かれる。好ましくは、1〜4の化合物が、ラテラル・スペーサとしてのアミノ酸配列に組み込まれることができる。よって、1,2,3,又は4の化合物が、様々な態様において挿入される。
【0036】
一般的に、ラテラル・スペーサは、アミノ酸とペプチド結合を形成することができる、すなわち少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基(CO2-)を含むあらゆる化合物であり、ここで、上記カルボキシル基は、カルボン酸、又はそのエステル若しくはその塩であるかもしれない。1の態様において、ラテラル・スペーサは、式、H2N-R1-CO2H(I){式中、R1は、置換された若しくは置換されていない、分岐若しくは直鎖C1-C20アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基;置換された又は置換されていないC3-C8シクロアルキル基;置換された又は置換されていないC6-C20アリール基;あるいは置換されたか又は置換されていないC4-C20ヘテロアリール基である。}によって表される。他の態様において、R1が、式(CH2)n{式中、nが1〜10である。}によって表されることができる。好ましい態様において、R1は、(CH2)3(3-アミノプロピオン酸)又は(CH2)5(6-アミノヘキサン酸)である。
【0037】
本発明は、精製されたポリペプチドを提供する、ここで、上記ポリペプチドは、GLP-1の第7と第8残基(例えば、GLP-1の場合にAhaスペーサで指示された、例えば「GLP-1Aha8」)、又は第8と第9残基(GLP-1の場合にAhaスペーサで指示された、例えば「GLP-1Aha9」)に相当するアミノ酸残基の間にスペーサにより、修飾されたGLP-1又はexendin-4配列、あるいはそのアナログを含む。1の態様において、ラテラル・スペーサは、1以上のアミノプロピオン酸残基である。1の態様において、スペーサは、6-アミノヘキサン酸スペーサ、及び4つ未満の6-アミノヘキサン酸残基を含む6-アミノヘキサン酸スペーサである。前記ポリペプチドは、例えば第7と第8残基の間に1以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に1以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。前記ポリペプチドは、第7と第8残基の間に2以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に2以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。前記ポリペプチドは、例えば第7と第8残基の間に3以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に3以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。より具体的には、1の態様において、ポリペプチドは、配列番号8、配列番号22又は配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0038】
他の態様において、ポリペプチドは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48又は配列番号49のアミノ酸配列を含む。代わる態様において、ポリペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33のアミノ酸配列を含み、ここで、上記アミノ酸配列が、GLP-1の第7と第8残基、又は第8と第9残基に相当するアミノ酸残基の間にスペーサを含む。
【0039】
好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、等モルの量のGLP-1の効果に匹敵するインシュリン分泌刺激効果をもち、より好ましい態様において、等モルの量のexendin-4の効果に匹敵するインシュリン分泌刺激効果をもつ。「効果に匹敵する」は、GLP-1又はexendin-4の効果の約10〜15%以内の効果を意味する。さらにより好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4のいずれかのインシュリン分泌刺激効果を超えるインシュリン分泌刺激効果をもつ。GLP-1又はexendin-4の「効果を超える」は、GLP-1又はexendin-4と比べてインシュリン分泌刺激効果の増加を、好ましくは、GLP-1又はexendin-4の効果の約10%超である増加を意味する。よって、好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4と同程度に強力であり、より好ましい態様においては、GLP-1のそれより強力であり、場合によりexendin-4のそれより強力である。
【0040】
好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、GLP-1より長時間作用する。より好ましい態様において、このポリペプチドは、exendin-4と同程度に長時間作用する。よりさらに好ましい態様において、このポリペプチドは、exendin-4より長時間作用する。「長時間作用する」は、ポリペプチドが少なくとも1つの分解酵素に対して、GLP-1又はexendin-4より抵抗性であることを意味する。例えば、本発明のポリペプチドの好ましい態様は、GLP-1より酵素、ジペプチジル・ジペプチダーゼ(DPP1V)による分解に抵抗性であり、場合によりexendin-4より抵抗性である。1以上の分解酵素に対するそのような抵抗性は、分解物の量(例えば、N末端分解物の量)、又は分解されなかったポリペプチドの量を検出することによって直接的に評価されることができる。あるいは、1以上の分解酵素に対する抵抗性は、本発明のポリペプチドの投与後の長期にわたるインシュリン分泌刺激効果の減少を評価することによって間接的に検出することができる。例えば、分解酵素が本発明のポリペプチドを切断する場合、血漿インシュリン・レベルは、単回投与後に下るはずである。好ましい態様において、この低下は、GLP-1に関するより緩慢であり、そしておそらくexendin-4より緩慢でさえある。
【0041】
好ましい態様において、ポリペプチドは、exendin-4と比べて抗原性を低減した。抗原性は、慣用法、例えば中和抗体及びポリペプチド・クリアランスを評価するために設計された生物学的アッセイ法を使って評価されることができる。
【0042】
好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1受容体に対するGLP-1の結合親和性より高い、GLP-1受容体に対する結合親和性をもつ。より好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1受容体に対するexendin-4の結合親和性より高い、GLP-1受容体に対する結合親和性を有する。
【0043】
好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1よりも、基礎レベルを上回る細胞内cAMPレベルを促進する。より更に好ましい態様において、ポリペプチドは、exendin-4よりも、基礎レベルを上回る細胞内cAMPレベルを促進する。
【0044】
特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33を含む、精製されたポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33から本質的に成る、精製されたポリペプチドを提供する。さらにより特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33から成る、精製されたポリペプチドを提供する。
【0045】
同様に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41を含む、精製されたポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41から本質的に成る、精製されたポリペプチドを提供する。さらにより特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41から成る、精製されたポリペプチドを提供する。
【0046】
本発明のポリペプチドは、溶液法及び固相法を含めた当業者に周知の多数の化学的なポリペプチド合成技術のいずれかを使用して調製できる。ポリペプチド配列のC末端アミノ酸が、不溶性の支持体に結合され、続いて配列中の残りのアミノ酸を順次的に付加する固相合成は、ポリペプチドを調製するための合成法の1つである。固相合成に関する技術は、Merrifield et al, J. Am. Chem. Soc. 55:2149-2156 (1963)によって説明されている。固相ペプチド合成を実施するための多くの自動化されたシステムが、市販されている。
【0047】
固相合成は、好適な固形支持体へのそのカルボキシル基を介した保護アミノ酸のカップリングによって、ポリペプチドのカルボキシ末端(すなわち、C末端)から開始される。使用される固形支持体は、重要な特徴ではない、但しペプチド合成手順に利用される試薬に対してそれが実質的に不活性なままでありながらカルボキシル基に結合できなければならない。例えば、開始材料は、クロロメチル化樹脂若しくはヒドロキシメチル樹脂にベンジルエステル結合を介して、又はベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂若しくはp-メチルベンズヒロリルアミン(MBHA)樹脂にアミド結合を介してアミノ-保護されたアミノ酸を結合することによって調製されることができる。固形支持体として使用するのに好適な材料は、当業者に周知であり、そしてこれだけに制限されることなく、以下の:クロロメチル樹脂若しくはブロモメチル樹脂のようなハロメチル樹脂;ヒドロキシメチル樹脂;4-(a-[2,4-ジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノメチル)フェノキシ樹脂のようなフェノール樹脂;tert-アルキルオキシカルボニル-ヒドラジド化樹脂;等を含む。そのような樹脂は、市販されており、それらの調製法は、当業者に知られている。
【0048】
ペプチドの酸性型は、固形支持体としてベンジルエステル樹脂を使った固相ペプチド合成によって調製される。対応するアミドは、固形支持体としてベンズヒドリルアミン樹脂又はメチルベンズヒドリルアミン樹脂を使うことによって製造されうる。当業者は、BHA又はMBHA樹脂が使用されるとき、固形支持体体からペプチドを切断するための無水フッ化水素酸処理が、末端にアミド基をもつペプチドを産生することを認識している。
【0049】
合成で使われた各々のアミノ酸のα-アミノ基は、反応性α-アミノ機能に影響を及ぼす副作用を防ぐためにカップリング反応の間保護されるべきである。特定のアミノ酸は、同様に、ペプチド合成の間、化学反応がそれらの部位で生じることを防ぐための適当な保護基により、保護されなければならない反応性側鎖官能基(例えば、スルフィドリル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル等)をも含む。保護基は、当業者に周知である。例えば、The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 3: Protection of Functional Groups in Peptide Synthesis (Gross and Meienhofer (eds.), Academic Press, N.Y. (1981))を参照のこと。
【0050】
適当に選ばれたα-アミノ保護基は、カップリング反応の間、不活性なα-アミノ機能を与え、側鎖保護基を取り除かない条件下、カップリング後に容易に除去でき、ペプチド断片の構造を変えることなく、そしてカップリング直前の活性化によるラセミ化を防ぐ。同様に、側鎖保護基は、合成の間、不活性な側鎖官能基を提供するように選ばれる必要があり、α-アミノ保護基を取り除くための条件下で安定している必要があり、そしてペプチドの構造を変えることのない条件下のペプチド合成の完了後に、除去されることができる必要がある。
【0051】
アミノ酸のカップリングは、当業者に知られた種々の技術によって達成されうる。典型的なアプローチは、ペプチド断片の遊離のN末端アミノ基との反応に対しより感受性があるカルボキシル基を提供する、誘導体へのアミノ酸の転換、又は好適なカップリング剤例えば、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジミド(DCC)、又はN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)の使用を伴う。しばしば、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)が、これらのカップリング反応の触媒として利用される。
【0052】
一般的に、ペプチドの合成は、まず、保護基、例えばフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を用いて、N-アミノの位置で保護されるC末端アミノ酸を固形支持体に連結することによって開始される。Fmoc-Asnの連結前に、Fmoc残基が、重合体から取り除かれなければならない。例えば、Fmoc-Asnは、撹拌しながら、約25℃で約2時間、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジミド(DCC)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使って、4-(a-[2,4-dジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノ-メチル)フェノキシ樹脂に連結される。前記樹脂支持体へのFmoc-保護アミノ酸の連結に続いて、室温にて、DMF中20%のピペリジンを使って、α-アミノ保護基が取り除かれる。
【0053】
α-アミノ保護基の除去後に、残りのFmoc-保護アミノ酸が、所望の順序で段階的に連結される。適切に保護されたアミノ酸は、多数の供給業者(例えば、Novartis (Switzerland)又はBachem (Torrance, CA))から市販されている。個々のアミノ酸の段階的な付加のための選択肢として、1以上のアミノ酸から成る適切に保護されたペプチド断片が、「成長している」ペプチドに連結されることもできる。先で説明されたとおり、適当な連結試薬の選択は、当業者に周知である。
【0054】
各々の保護アミノ酸又はアミノ酸配列が、過剰に固相反応器内に導入されて、そして連結が、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン(CH2Cl2)、又はその混合物から成る媒質中で実行される。連結が不完全である場合、N-アミノ基の脱保護及び次のアミノ酸の添加前に、連結反応が繰り返される。連結効率は、当業者に周知の多数の手段によって観察されうる。連結効率の観察の好ましい方法は、ニンヒドリン反応によってである。ペプチド合成反応は、多数の市販のペプチド合成機、例えばBiosearch 9500(商標)合成機(Biosearch, San Raphael, CA)を使って自動的に実施されうる。
【0055】
0℃で約20〜90分間、好ましくは60分間、アニソール及びジメチルスルフィドの存在下、無水の液体フッ化水素(HF)中、不溶性担体又は固形支持体を撹拌することによって;選択された保護基に依存して、約室温で60〜360分間、トリフルオロ酢酸(TFA)中、樹脂の1 mg/10 mLの懸濁液をを通して、連続的に臭化水素(HBr)をバブリングすることによって;あるいは、又は固相合成のために使った反応カラム内の固形支持体を、90%のトリフルオロ酢酸、5%の水、及び5%のトリエチルシランと一緒に約30〜60分間インキュベートすることによって、ペプチドが切断され、前記保護基が除去される。当業者に周知の他の脱保護法が使われもする。
【0056】
前記ペプチドは、当業者に周知のペプチド精製によって、前記反応混合物から分離され、精製されることができる。例えば、ペプチドは、既知のクロマトグラフィー手順、例えば逆相HPLC、ゲル透過、イオン交換、サイズ排除、親和性、分配、又は向流分配を使って精製されうる。
【0057】
本発明のポリペプチドは、他の手段、例えば組み換え技術を含む他の手順によっても調製できかもしれない。適当なクローニング、及び配列決定技術、そして多くのクローニングの訓練を経験した熟練者に向けられるのに十分な指示が、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, NY, (Sambrook)中に見られる。
【0058】
本発明は、糖尿病患者を治療する方法をさらに提供し、この方法は、インシュリン分泌刺激効果がある量の本発明のポリペプチドを、上記患者に投与することを含む。「糖尿病(diabetes)」は、糖尿病(diabetes mellitus)を意味する。本発明の方法は、2型糖尿病の患者の治療に役立つと考えられる。前記ポリペプチドが非インシュリン産生細胞のインシュリン産生を促進する場合、本発明の方法は、(例えば、1型糖尿病を含む)他の型の糖尿病に有用であるかもしれない。
【0059】
本発明のポリペプチドは、神経系に使用される。1の態様において、前記ポリペプチドは、神経栄養性(すなわち、増殖、分化又は神経突起伸長を促進する)、又は神経保護性(すなわち、ニューロン細胞を救う若しくはニューロン細胞死を減少させる)である。よって、本発明は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又は神経保護性又は神経栄養性GLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと接触させることを含むニューロンの死滅を減少させる方法にさらに関する。ニューロンの死滅は、例えば機械的な傷害(例えば、損傷若しくは手術)、中毒性傷害、神経変性疾患、アポトーシス、及び末梢神経障害により生じるかもしれない。当業者は、ニューロンを救うこと(すなわち、細胞死の徴候を示す細胞の生存を促進すること)、及びニューロンの死滅を減らすこと(すなわち、細胞死の徴候を示していない細胞の生存を促進すること)が望まれることを認識している。例えば、続く移植の前に、ニューロンの死滅を減らした化合物を用いた処理が、ニューロン細胞の外植片又は培養物の処理に有用である。同様に、そのような処理は、脳卒中、脳若しくは脊髄損傷、神経損傷、又は神経毒性損傷に続くニューロンを救い、そしてニューロンの死滅を減少させるために使用されうる。さらに、ニューロンを救うこと又はニューロンの死滅を減少させることは、神経変性症状、あるいは、例えばアルツハイマー症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及び末梢神経障害を含む病気の治療に有用である。
【0060】
本発明は、ニューロンの分化又は増殖の促進方法であって、1以上のニューロン又はニューロン前駆細胞を、GLP-1、exendin-4、又は分化を誘発するか若しくは増殖を誘発するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む方法にも関する。分化は、細胞がニューロンの特性を欠いている細胞状態(例えば、明瞭な核小体、ニューロンの突起、幅広い粗面小胞体、ニューロン・マーカーの発現のような特性の欠如)から、ニューロンの表現型によって特徴づけられた細胞状態への移行を伴う。ニューロンの増殖は、幹細胞又はニューロン系統の細胞が分化し、及び/又はニューロンに区別されることを意味する。分化又は増殖の効果は、ニューロン数の増加である。「ニューロン数の増加」は、存在している全てのニューロン総数へのニューロンの追加を意味する。よって、ニューロン細胞死の速度は、分化又は増殖の速度を超えるかもしれないが、しかし新しいニューロンの追加が、全ニューロンを上回る増加であると考えられるので、生存しているニューロンの総数の増加がない状態であっても、そのような数の増加は、それでも治療的な利点をもつ。
【0061】
本発明は、アミロイドβタンパク質の形成又は蓄積を減少させる方法にも関し、上記方法は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又はβ-アミロイド前駆体タンパク質代謝に影響するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む。そのような方法は、アミロイド・タンパク質のレベルを下げるか、又はアルツハイマー症の患者において老人斑で観察されるアミロイド・タンパク質の沈着を防ぐために有用であるかもしれない。本発明の方法は、β-アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングの様々なポイントにおける作用によってアミロイドβタンパク質の形成又は蓄積を減少させうるであろう。例えば、前記ポリペプチドは、β-アミロイド前駆体タンパク質の合成を減少させるか、アミロイドβタンパク質領域内のβ-アミロイド前駆体タンパク質の切断を促進するか、アミロイドβタンパク質の分泌を減少させることにより、可溶性β-アミロイド前駆体タンパク質の分泌を増やすか、又はアミロイドβタンパク質の分解を増やすかもしれない。
【0062】
本発明は、ニューロン突起の増殖を促進する方法にも関し、この方法は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又は突起を促進するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む。「ニューロン突起の成長」は、体細胞からのニューロン突起の数、ニューロン突起の複雑さの増加(通常、軸索又は樹状突起の分岐点の数の増加による)、又は突起の長さの増加をも意味する。ニューロン突起の成長は、例えば、再生能力の最適化が望まれる、末梢神経損傷又は中枢神経系への傷害の後を含む多くの状況で望まれる。同様に、神経変性症状において、存在しているニューロンは、突起の豊富な領域におけるニューロナル死滅を埋め合わせることができるかもしれない。
【0063】
本発明は、神経変性症状の患者を治療する、又は神経変性症状の1以上の徴候を減らす方法にも関し、上記方法は、GLP-1、exendin-4、又は治療として有効なGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドを、治療として有効な量で患者に投与することを含む。より特に、前記治療は、アルツハイマー症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる神経変性症状に向けられる。
【0064】
同様に、神経毒性損傷の患者を治療する方法又は患者の神経毒性損傷による1以上の徴候を減らす方法が提供され、この方法は、GLP-1、exendin-4、又は治療として有効なGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドを、治療として有効な量で上記患者に投与すること含む。そのような投与は、神経毒に晒される前、その間、又はその後であるかもしれない。神経毒は、神経毒性型のアミロイドβ-ペプチド、カンプトセシン、グルタミン酸、エトポシド、制癌剤、ビンカアルカロイド、3-nitrognognonic acid、MPTP、ドウモイ酸、カイニン酸、及びイボテン酸を含む。
【0065】
これらの神経系の方法における接触ステップは、所望した効果に依存してインビボ又はインビトロで実施される。例えば、培養状態のニューロンは、ニューロンの死滅をに引き起こすかもしれない培養中の操作より前に、又はその後に処理されることができる。また、神経系のin situニューロンは、ニューロンの死滅を引き起こすトリガーに晒されるより前に又はその後で処理されうる。移植組織の典型において、例えば、移植されるドナーのニューロンは、培養物の状態で処理されるかもしれず、次に脳又は脊髄の移植部位が、移植者のニューロン及び移植されたニューロンのニューロンの死滅を防ぐために処理されうる。
【0066】
神経系への使用に関係するポリペプチドは、GLP-1、exendin-4、及び生物学的に活性なそのアナログ又はそのアゴニストを含むポリペプチドを含む。好ましくは、前記アナログは、GLP-1/exendin-4受容体に結合し、活性化する。前記ポリペプチドは、例えば配列番号1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、33、42、43、44、45、46、47又は48のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。他の例は、配列番号:3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41のアミノ酸配列をもつポリペプチドを含む。
【0067】
同様に、医薬として許容される担体と組み合わせて、GLP-1、xendin-4、及び生物学的に活性なそのアナログ又はそのアゴニストを含む本発明のポリペプチドを含む医薬組成物が本発明によって提供される。
【0068】
当業者は、治療の有効性をどのように観察するか、およびそれに沿ってどのように治療を調節すべきか認識しているであろう。例えば、血糖値は、治療の最的な効果である正常血糖により観察されうるであろう。血糖値が好ましいレベルより高ければ、その後投与されるポリペプチドの量は減らされ、そして血糖値が好ましいレベルより低ければ、投与されるポリペプチドの量が増やされる。
【0069】
好ましくは、本発明のインビボでの方法で使用されるポリペプチドの投与量は、継続的な投与については、約0.1 pmoles/kg/分〜約100 nmoles/kg/分、そしてボーラス注射については約0.01 nmoles/kg〜約400 nmoles/kgにおよぶ。好ましくは、インビボでの方法におけるポリペプチドの投与量は、約0.01 nmoles/kg/分〜約10 nmoles/kg/分におよぶ。必要とされる厳密な量は、患者の種、年齢、及び全身症状、治療される病気の重さ、使用される特定のポリペプチド、その投与様式等に依存してポリペプチドごとに、そして患者ごとに変わる。よって、厳密な「インシュリン分泌刺激量」又はニューロンの病気又は損傷を治療するために有用な量を指定することは不可能である。しかし、適当な量は、日常的な実験だけを使い、当業者によって決定される。
【0070】
好都合なことに、前記ポリペプチドは、医薬として許容される担体に関連した1以上の化合物から成る医薬組成物中に処方される。前記組成物は、経口的に、静中に、筋中に、腹腔内に、局所的に(topically, locally)、経皮的に、全身的に、脳室内に、脳内に、硬膜下に、又はくも膜下に投与される。当業者は、投与の様式、薬理担体、又はインシュリン分泌刺激効果を最適化するための他の指標を修飾することを知っているであろう。もちろん、投与されている活性化合物の量は、治療される患者、患者の体重、投与の様式、及び処方する内科医の判断に依存する。
【0071】
意図された投与の方式に依存して、医薬組成物は、固体、半固体、又は液体の剤形、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル、散剤、液剤、懸濁液剤、ローション剤、クリーム、ゲル等の形態で、好ましくは正確な投与量の単一投与に好適な単位剤形である。先に指摘されたとおり、前記組成物は、有効な量の選ばれた薬物を、医薬として許容される担体と組み合わせて含み、さらに、他の薬剤、医薬品、担体、補助剤、希釈剤等を含むかもしれない。例えば、典型的な担体、及びポリペプチドの製剤の準備に一緒に使用されうる医薬組成物を調製する従来法を開示する、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, by E.W. Martin Mack Pub. Co., Easton, PAを参照のこと、そしてここで上記文献を本明細書中に援用する。
【0072】
固体組成物について、従来の無毒性固体担体は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等を含む。例えば、液体の医薬として投与可能な組成物は、本明細書中に記載の活性化合物、並びにそれによって溶液又は懸濁を形成するための、賦形剤の中の任意の医薬補助剤、例えば水、水性デキストロース生理食塩水、グリセロール、エタノール等を溶かす、分散させる等によって調製されることができる。所望であれば、投与される医薬組成物は、小量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝化剤等、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタン・モノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン・オレエーと等を含むかもしれない。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、又は明らかである;例えば先に参照したRemington's Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0073】
経口投与のために、細末又は顆粒剤が希釈剤、懸濁化剤、及び/又は界面活性剤を含み、そして水中若しくはシロップ剤中に、乾燥状態でカプセル若しくはサシェ(sachet)中に、又は非水性溶液若しくは懸濁化剤が含まれる懸濁液で、結合剤及び潤滑剤が含まれる錠剤で、あるいは水中若しくはシロップ中の懸濁液で提供される。所望の又は必要であれば、調味料、保存料、懸濁化剤、増粘剤、又は乳化剤が含まれる。錠剤及び顆粒剤は、好ましい経口投与形態であり、これらはコートされる。
【0074】
使用される場合、非経口投与は、一般に注射を特徴とする。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液、注射の前に液体による溶液若しくは懸濁液として好適な固体形態、又は乳液として、従来の形態で調製されうる。非経口投与に関する、ごく最近修正されたアプローチは、一定レベルの投与量が維持されるように、徐放システム(slow release or sustained release system)の使用を伴う。例えば、米国特許番号第3,710,795号を参照のこと、そしてここで上記文献を本明細書中に援用する。
【0075】
局所投与のために、活性化合物が皮膚の表面にデリバリーされうる限り、液剤、懸濁液剤、ローション剤、クリーム、ゲル等が使用されうる。
【実施例1】
【0076】
実験1
以下の実施例は、本明細書中で主張される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法がどのように作製され、そして評価されるのかについての完璧な開示及び説明を当業者に提供するためになされ、そして本発明の純粋な例示として意図され、当該発明者が彼ら発明とみなすものの範囲を制限することはない。数(例えば、数量、温度等)に関して正確度を確保するために努力がなされたが、しかしいくつかの誤り及び偏りが明らかにされるであろう。別段の指示のない限り、部分は、重量による部分であり、温度は、℃又は気温であり、圧力は、大気又はその付近である。
【0077】
実施例1.ペプチドの設計及び合成
exendin-4及びGLP-1の基本的な特徴を取り入れた一連のキメラ・ペプチドを、設計した。35のペプチドの配列を、GLP-1(第7〜第36残基)、及びexendin-4(番号付けされたGLP-1残基を用いたexendin-4のアラインメントに従って番号を付けた第7〜第45残基)の配列とともに図1に示す。それらは、(i)第8と第9アミノ酸の間のDDP1Vの切断作用を最小限にし、(ii)インシュリン分泌刺激作用のための最小限の要件を評価し、そして(iii)exendin-4とGLP-1の間のアミノ酸の差異がGLP-1に対する効果における前者の13倍増の原因となることを評価するように設計した。図1に示されたペプチドは、それらの合成にL-及びD-アミノ酸を利用した。
【0078】
ペプチドは、脱保護のためにピペリジン-ジメチルホルムアミドを、そしてカップリングのためにHOBt/HBTUを使用した、Applied Biosystems(Foster, CA)の自動ペプチド合成機によって、アミノ酸のFmoc-誘導体を使いペグ-ポリスチレン樹脂上で合成した。完成したペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)を使って樹脂から切断して、エーテルを用いて沈澱させて、アセトニトリル勾配を使った0.1%のTFA中、C-18疎水性樹脂を用いた逆相HPLCを使った精製に共した。最終物質の純度は、逆相HPLCを使って確認し、このペプチドの質量は、質量分析を使って確認した。全てのペプチドが、95%超の純度であった。
他のペプチドを、2-アミノヘキサン酸(6-アミノヘキサン酸)を使ってDPP1Vによる切断を減らすように設計した。表2を参照のこと。
【表1】
【実施例2】
【0079】
実施例2.インビトロでのインシュリン分泌
Dr. Samuel A. Clark(Bio Hybrid Technologies, Shrewsbury, MA)から贈与物であるRIN1048-36細胞を、インシュリン分泌に対するGLP-1、exendin-4、及びアナログの作用を観察するために使用した。細胞を、12ウェル皿の底に置いたガラス・カバースリップ上に、2.5×105細胞/cm2の密度で播種し、48時間培養した。その後、それらを、37℃の加湿インキュベータ内で、それぞれグルコース不含緩衝液(mMの:140 NaCl、5 KCl、1 NaPO4、1 MgSO4、2 CaCl、20 HEPES緩衝液(pH 7.4)及び0.1%のウシ血清アルブミンを含む)を用いて30分で2期間プレインキュベートした。その後、細胞を、5 mMのグルコース及びペプチド(1×10-8 M)を伴う同じ緩衝液1 mLの存在下、37℃で1時間インキュベートした。GLP-1とexendin-4(1×10-8 M)を、全てのアッセイの標準として使用した。1時間後、培地を取り除き、そしてEIA(Crystal Chem, Dhicago II)によるインシュリンレベルの定量化の前に−80℃で保存し、そして標準としてウシγ-グロブリンを用いたブラッドフォード法(Bio-Rad, Richmond, CA)を使った総タンパク質の測定のために、HCl(300 μl、0.1 M、20分、RT)を用いて細胞を溶解した。
【0080】
図2に示されるように、アミノ酸修飾のいくつかが、GLP-1又はexendin-4による誘発に匹敵するか又は超える様式でインシュリン分泌を誘発した。いくつかの修飾が、第8と第9アミノ酸残基の間の切断部位についての、DDP1Vによる認識力を減らすために使用された。しかし、第8と第9アミノ酸残基付近のL-アミノ酸の、D型による置換は、このペプチドがインシュリン分泌を誘発することができないので、第2、第3及び第5〜第7ペプチドによって示されたとおり効果がないことを証明した。ペプチド4(図1に示されない)、Dアミノ酸である第7〜第14残基をもつGLP-1配列は、同様にインシュリン分泌を誘発することができなかった。アミノ酸スペーサを第8と第9残基の前又はその間に組み込んだとき、ペプチド11(配列番号8)(第8残基の前に4つのアミノ酸スペーサを持つ)は、強力にインシュリン分泌を誘発したのに対して、ペプチド25(配列番号22)( 第8と第9残基の間に4つのアミノ酸スペーサをもつ)、及びペプチド26(配列番号23)(第8と第9残基の間に8つのアミノ酸スペーサをもつ)は、インシュリン分泌を誘発しなかった。GLP-1の第8アミノ酸(アラニン:A)の、小さい中性アミノ酸であるexendin-4の対応する位置のペプチド(すなわちグリシン:G) による置換は、exendin-4よりわずかにインシュリン分泌を誘発した。GLP-1Gly8(配列番号3)を参照のこと。
【0081】
GLP-1アミノ酸残基の、exendin-4残基によるさらなる置換は、インシュリン分泌を誘発する能力を保ったペプチドをもたらした。例えば、ペプチド8(配列番号5)(8位でのA→Gの置換と、16位でのV→Lの置換をもつ)、ペプチド9(配列番号6)( 8、16、18、19及び20位での、それぞれA→G、V→L、S→K、Y→Q及びL→Mの置換をもつ)、ペプチド10(Ex-WOT;配列番号7)(ペプチド9と同じ置換をもち、さらに22、23、25、26、27、30、33、34、36位での、それぞれG→E、Q→E、A→V、K→R、E→L、A→E、V→K、K→N及びR→Gの置換をもつ)は、全てインシュリン分泌を誘発する能力を保った。実際、ペプチド8(配列番号5)は、GLP-1又はexendin-4のいずれかよりも、インシュリン分泌に対して実質的に大きな効果をもった。
【0082】
ペプチド12(配列番号9)のような、exendin-4に存在する末端の第8〜第9アミノ酸の、GLP-1への付加が、GLP-1又はexendin-4よりインシュリン分泌に対して実質的に大きな効果をもつペプチドをもたらした。exendin-4の第8残基(すなわち、グリシン:G)を、GLP-1の第8残基(すなわち、アラニン:A)で置換し、そしてペプチド13(配列番号10)のようにexendin-4の末端の第9アミノ酸が維持されるか、又はペプチド14(配列番号11)のように除去された場合、どちらのペプチドもインシュリン分泌を誘発する能力を維持した;しかし、ペプチド13は、修飾なしのexendin-4より実質的に強い効果をもった。
【0083】
インシュリン分泌を誘発するそれらの能力について、exendin-4の切詰めを試験しもした。ペプチド15〜24(配列番号12〜21)を参照のこと。32残基以上を含むペプチド(すなわち、ペプチド15〜18(配列番号12〜15))だけが、インシュリン分泌を誘発した。インシュリン分泌を誘発したそれらの切詰めペプチドについて、ペプチド15(配列番号12)(第43残基以下の残基を含む)、及びペプチド18(配列番号15)(第34残基以下の残基を含む)が、exendin-4又はGLP-1のそれを超えた誘発効果をもつ唯一のものである。
【0084】
ペプチドの荷電に影響するように考えられた修飾が、行われもした。GLP-1は、7位、26位、34位及び36位の塩基性アミノ酸に関連する合計4+の電荷、及び9位、15位、21位及び27位の酸性アミノ酸に関連する合計4-の電荷をもつ、正味中性荷電をもつ。Exendin-4は、21〜23位の塩基性ドメインに関連する正味負の電荷をもつ。Exendin-4は、合計4+の電荷(7位、18位、26位、33位)、及び合計6-の電荷(9位、15位、21位、22位、23位、30位)をもつ一方で、その9つのアミノ酸の末端は中性である。ペプチド34(配列番号31)のような、exendin-4(すなわち、36位での、小さい中性のグリシン、Gの、より大きなアルギニン、Rによる置換)の末端に(正電荷を提供する)単一の塩基性アミノ酸の付加は、インビトロのインシュリン分泌におけるペプチドの不活性をもたらす。アルギニン、Rは、GLP-1の36位でよく許容され、そして維持されるか又はGLP-1において中性のグリシン、Gであるexendin-4末端によって置換されるとき(ペプチド12(配列番号9)、それは、活性を維持し、それどころかexendin-4のそれを超える活性をもつ。
【0085】
興味深いことには、27位が負電荷をもつ場合に、30位が酸性のグルタミン酸、Eから中性のアラニン、Aに修飾されるとき(ペプチド36(配列番号33))、アルギニン、Rは、exendin-4の36位でよく許容される。同様に、第30ペプチド(配列番号27)と比べて、18位(ペプチド1(配列番号3))に正電荷を導入するための、中性のセリン、Sの、塩基性のリジン、Kによる置換は、活性の喪失をもたらす;しかし、隣接する(19、20位の)中性のアミノ酸、チロシン、Y及びロイシン、Lの、中性のアミノ酸、グルタミン、Q及びメチオニン、Mによる置換が、活性を回復させる(ペプチド9(配列番号6)をペプチド30(配列番号27)と比べて)。
【0086】
GLP-1と6-アミノヘキサン酸含有ペプチドのインシュリン分泌効果を比較した場合、GLP-1Aha8(ペプチド11;配列番号8)は、GLP-1と同程度の有効性を示した。GLP-1Aha8(ペプチド11;配列番号8)は、基礎レベルの約1.2倍を上回るインシュリン分泌を誘発した。図3を参照のこと。しかし、ペプチド25及び26(配列番号22〜23)にあるとおり、追加の6-アミノヘキサン酸残基の挿入は、インシュリン分泌を誘発するペプチドの能力を阻害した。
【実施例3】
【0087】
実施例3.細胞内cAMPの定量
ヒトGLP-1受容体を安定的にトランスフェクトされたCHO細胞、GLP-1R細胞を、12ウェル・プレート上に60〜70%集密まで育て、クレブズ-リンガー・リン酸塩緩衝物質(KRP)で3回洗浄し、そして加湿気インキュベータ内、37℃で2時間、0.1%のウシ血清アルブミン含有KRP(BSA)1 mlと一緒にインキュベートした。次に細胞を、研究中のペプチドの存在又は不存在下、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)(1 mM;Calbiochem, La Jolla, CA)を伴う、0.1%のBSAを補った1 mlのKRP中でインキュベートした。氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で無傷の細胞を3回洗浄することによって30分後に反応を止めた。氷冷過塩素酸(0.6 M、1 ml、5分)中で細胞をインキュベートすることによって細胞内のcAMPを抽出した。炭酸カリウム(5M、84 μl)を使ってサンプルのpHを7に調整した後、試料管をボルテックスし、形成された沈殿を、遠心分離(5分、2000×g、4℃)で沈殿させた。上清を、真空で乾燥させ、4 mMのEDTA含有0.05 MのTris(pH7.5)(300 μl)中に可溶化した。炭酸ナトリウム(0.15 μM)と硫酸亜鉛(0.15 μM)を加えたサンプルを、次に氷上で15分間インキュベートした。得られた塩沈殿物を、遠心分離(5分、2000×g、4℃)によって除去した。サンプルを、[3H]cAMP競合的タンパク質結合アッセイ・キット(Amersham, Philadelphia, PA)を使って、二重のアリコート(50 μl)でアッセイした。
【0088】
cAMPレベルを、GLP-1、6-アミノヘキサン酸含有ペプチド、又はD-アミノ酸含有ペプチドにより処理された細胞で計測した。GLP-1アナログによって産生された細胞内cAMPレベルは、当初10 nM(最大のcAMP産生の濃度は、GLP-1で見られる)のペプチド濃度で評価した。データを図4に示す。前記ペプチドを、TBMXの存在下、CHO/GLP-1R細胞と一緒に37℃で30分間インキュベートした。インビトロでのインシュリン・アッセイからの結果と一致して、GLP-1分子全体にわたるD-アミノ酸置換は、基礎レベルを上回るわずかな増加だけに終わった、すなわち、それらは、IBMXによってのみ得られた。同様に、インシュリン分泌刺激性化合物GLP-1Gly8(配列番号3)及びGLP-1Aha8(配列番号8)と比べたとき、GLP-1(Aha9)4(配列番号22)及びGLP-1(Aha9)8(配列番号23)は不活性であった。GLP-1、GLP-1Gly8、又はGLP-1Aha8の濃度の変化に対するcAMP誘導における応答を計測した。図5を参照のこと。表3は、3つの化合物全てのED50値を示す。GLP-1Aha8(0.5 nM)は、基礎を4倍上回るまで細胞内cAMP産生を刺激したが、しかしそれは、GLP-1及びGLP-1Gly8と比べたとき、より高いED50を示した。
【0089】
【表2】
【実施例4】
【0090】
実施例4.完全な細胞のGLP-1受容体へのペプチドの競合的結合
結合研究を、Montrose-Rafizadeh et al., (1997b) J. Biol. Chem. 272:21201-206のやり方で実施した。要するに、CHO/GLP-1R細胞を、12ウェル・プレート上で集密まで育て、実験の2時間前に無血清Ham F-12培地で洗浄した。0.5 mlの結合緩衝液(10)により2回洗浄した後、細胞を、2% BSA、17 mg/LのDiprotin A(Bachem, Torence, CA)、10 mMのグルコース、1〜1000 nMのGLP-1又は他のペプチド、及び30,000 cpmのSI-GLP-1(Amersham, Philadelphia, PA)を含む0.5 mlの緩衝液と一緒に、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション終了後に、上清を捨て、細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、そして0.5 mlの0.5 NのNaOH及び0.1%のドデシル硫酸ナトリウムと一緒に室温で10分間インキュベートした。細胞ライセートの放射活性を、ICN Apec-Series g-counterで計測した。総結合から、大過剰の非標識GLP-1(1 μM)の存在下でインキュベートした細胞に関する放射活性を差し引いて、特定の結合を決定した。
【0091】
次に、ヒトGLP-1受容体に対する競合的結合によって[125I]GLP-1を置き換えるこれらのGLP-1アナログの能力を検査した。濃度を変えたペプチドの不存在及び存在下、CHO/GLP-1R細胞を[125I]標識GLP-1と一緒にインキュベートした。図6を参照のこと。
【0092】
GLP-1受容体に競合的に結合したそれらの化合物について得られたIC50値を、表3に示す。6-アミノヘキサン酸部分の挿入は、受容体への結合の減少をもたらした。9位のスペーサー、6-アミノヘキサン酸基の長さの増加により、GLP-1受容体に対する親和性の劇的な減少があった。D-アミノ酸置換された化合物で見られた生物活性の欠損は、それらのGLP-1受容体に対する結合能力の著しい減少によって説明されうる。化合物GLP-1D21(ペプチド6)及びGLP-1A11D(ペプチド7)は、標識されたGLP-1を置き換えなかったように、D-アミノ酸置換の増加するほど受容体認識の累進的な減少があった。
【実施例5】
【0093】
実施例5.インビボにおける急性活性
急性最大インシュリン応答を、静中ペプチド投与後のズッカーラットにおける血漿インシュリン・レベルの定量によって測定した。特に、一晩の絶食後の体重約400 gの糖尿病雄ラットを、50 mg/kgのペントバルビタールにより麻酔し、そして採血のためにカテーテルをそれらの右大腿動脈に結んだ。その後、exendin-4、GLP-1、又はペプチド(0.4 nmol/kg)のボーラスを、それらの左伏在静脈中に30秒で投与した(1つのペプチドにつきN=6)。ペプチド投与前、及びその後5、15、30、60及び90分で採集した血液を、インシュリン定量のために、EDTA及びアプロチニンを含むヘパリン処理管内に注いだ。血漿を、分離し、取り除き、そして直ちに-70℃に冷凍した。次にラット・インシュリンELISAキット(Crystal Chem Inc., Chicago, IL)を使ってインシュリン・レベルを定量した。
【0094】
先のインビトロにおける研究からの2例の効能をもつペプチド、ペプチド番号10(Ex-4WOT;配列番号7)、及びペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)の急性インビボ活性を、インシュリン分泌を誘発について、絶食、糖尿病ズッカーラットにおいて評価した。ペプチド(0.4 nmol/kg)の等モル投与の後の、ピークの血漿インシュリン濃度を、図7に示し、等モルのexendin-4及びGLP-1の後に達成されたものと比較する。Ex-4WOTもGly-8も、強力に血漿インシュリン濃度を増加させた。
【0095】
図7で説明されるように、それらのi.v.投与の後に、ペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)及びペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7)によって例証されるように、RIN1048-36細胞においてインシュリン分泌を誘発するペプチドのインビトロにおける作用は、絶食、糖尿病ズッカーラットにおける血漿インシュリン濃度を急激性に高めるインビボにおける活性と相関関係がある。特に注目すべきことは、exendin-4の末端第9アミノ酸を欠いているEx-4が等モルのexendin-4がしたよりさらに強力であることが証明されたことである。同様に、ペプチド1(GLP-1Gly8)が、等モルのGLP-1より効さらに強力であることを証明した。
【実施例6】
【0096】
実施例6.インビボにおける活性の継続時間
インシュリン分泌刺激作用の時間依存的な継続時間を、腹膜内(i.p.)ペプチド投与後のズッカーラットにおける血漿インシュリン及びグルコース・レベルの定量によって評価した。具体的には、一晩に絶食した、体重約400gの糖尿病雄ラットを、50 mg/kgのペントバルビタールで麻酔し、そして採血のためにカテーテルを右大腿動脈に結んだ。その後、exendin-4、GLP-1、又はペプチド(0.4 nmol/kg)のボーラスをi.p.投与した。(1ペプチドにつきN≧2)。ペプチド投与前、及びその後30及び60分、そして2、4、6及び24時間に採集した血液を、インシュリン定量のために、EDTA及びアプロチニンを含むヘパリン処理管内に注ぎ、そして分離したサンプルで、グルコースを計測することにした。血漿を分離し、取り除き、そして直ちに-70℃に冷凍した。次にラット・インシュリンELISAキット(Crystal Chem Inc., Chicago, IL)を使ってインシュリン・レベルを定量し、血漿グルコースをグルコース酸化酵素法によって定量した。
【0097】
図8で示されるように、特定のアミノ酸修飾は、インビボにおいてインシュリンに対して長期間の作用を提供する。この件に関して、血漿インシュリン・レベルに対して、ポリペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7)は、exendin-4のように、長く作用することが分かった。さらに、急性研究と同様に、糖尿病ラットにおいて、ポリペプチド10が、等モルのexendin-4よりさらに強力であることを証明した。対照的に、ポリペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)及びポリペプチド11(GLP-1Aha8;配列番号8)が、GLP-1とexendin-4の中間であった;前者より長いが、後者より短い、時間依存的なインシュリン応答に対する作用をもつことが分かった。さらに、急性研究と同様に、糖尿病ラットにおいて、ポリペプチド1及び11が、等モルのGLP-1よりさらに強力であることを証明した。
【実施例7】
【0098】
実施例7.MALDI質量スペクトル法
GLP-1(2 μM)とGLP-1Aha8(配列番号8)(2 μM)を、PBS中、5 mUの組み換えDPP1V(Calbiochem, La Jolla, CA)と一緒に、37℃でそれぞれ10分間と2時間インキュベートした。両化合物(100 μM、100 μl)を、同等の量のヒト血清中、37℃で2時間インキュベートした。全てのケースについて、酸素反応を、トリフルオロ酢酸(0.1%v/vの終濃度)の添加によって止めた。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)を使って、サンプルを直ちに分析した。MicromassMALDI-TOF(Micromass, Beverly, MA)リフレクトロン機器を、1スペクトルにつき5レーザー・ショットを用いて、1000〜6000 Daの質量範囲にわたり15〜25%のレーザー・エネルギーで使用した。α-シアノ-4-ヒドロキシシンナミック酸(Sigma, St.Louis, MO)を、マトリックスとして使用し、8 mg/mlの炭酸アンモニウム(Sigma, St.Louis, MO)バッファー中、10 mg/mlの濃度に調製した。MALDIプレートに移す前に、1 μlのサンプルを、マトリックスで50/50 v/vに希釈した。
【0099】
GLP-1Aha8(配列番号8)の安定性を、DPP1V及びヒト血清の存在下でGLP-1と比較した。37℃で、10分間のDPP1V(5 mU)による、又は2時間の100%血清によるGLP-1(2 μM)の処理は、MALDIによって計測されるように、N末端を切り取られた産物の量の顕著な増加を引き起こした(Mr=3089 gmol-1)。対して、GLP-1Aha8(2 μM)は、いずれの治療に対しても抵抗力があるように思われた。
【実施例8】
【0100】
実施例8.インビボにおけるGLP-1Aha8の生物活性の測定
6ヶ月齢の雄ズッカーfa/faラット(Harlan, Indianapolis, IN)、及び6ヶ月齢のウィスターラットを、この研究で使用した。それらを、食べ物と水を自由摂取させ、12時間の明、12時間の暗のサイクル(午前7時に点灯)の状態にした。ズッカーラットの床敷きは、紙ベースの製品「Carefresh」(Absorption Co., Belingham、WA)であった。実験の前一晩、床敷きの不存在の状態で、ズッカーラットをワイヤー上で絶食させた。ウィスターラットを、それらの通常の床敷き上で絶食させた。ペントバルビタール(50mg/kg)の腹膜内の注射によって全身麻酔を誘発した。採血のために大腿動脈にカニューレを取り付け、そしてポリペプチド(GLP-1Aha8(配列番号8)及びGLP-1Gly8(配列番号3)、24 nmol/kg)を、動物の首筋に皮下注射した(各処置群についてn=5)。血糖値を、Glucometer Elite(Bayer Corp. Diagnostics, Tarrytown, NY)を使っやグルコース酸化酵素法によって計測した。
【0101】
GLP-1Aha8がインビボにおいて生物活性をもつことを確認するために、前記ポリペプチドを、絶食ズッカー脂肪(fa/fa)ラット及びウィスターラットに皮下投与した(24 nmol/kg)。ズッカーラットの他の群は、同投与量のGLP-1Gly8を受けた。そして次の8時間の間、血糖値を観察した。図9において、結果は、両化合物ともに、急速に血糖を下げたことを示す。ズッカーラットにおいて、グルコース絶食は、その群の中では低かったが、しかし低下の傾斜及び大きさは両化合物に類似していた事実から、血糖の減少は、GLP-1Gly8によってより顕著だった。このクラスの化合物によるインシュリン分泌刺激のグルコース依存性を証明した、低血糖の範囲への血糖の低下から、インシュリン分泌は、GLP-1Gly8により弱められた。GLP-1Aha8によって処理したズッカーラットが低血糖にならなかった場合、インシュリン分泌刺激応答は、撤回されずに、そして長期間の効果が見られることができた。絶食状態で高血糖ではないウィスターラットにおいて、インシュリン・レベルは、GLP-1Aha8によって急激に高められ、低血糖、そして再度のインシュリン分泌刺激応答の迅速な減衰をもたらした。
【実施例9】
【0102】
実施例9.Exendin-4の切詰め、及びExendin-4の第9アミノ酸C末端の生物学的な重要性
この研究は、Ex-4の生物活性に対する、第9C末端アミノ酸の重要性を判断するために実施した。切詰められたEx-4アナログの配列と、第9C末端配列を付加したGLP-1アナログを当該研究に使用した。
【0103】
材料及び細胞系
先に記載のとおり、ペプチドを合成した。全てのペプチドが、95%超の純度であった。表4は、研究したGLP-1及びexendin-4アナログの配列を示す。イソブチルメチルキサンチン(IBMX)は、Calbiochem(La Jolla, CA)から購入した。Exendin-4及びGLP-1-(7-36)アミドを、Bachem(Torrance, CA)から入手した。クローン化したラット・インスリノーマ細胞系RIN1046-38は、Dr. Samuel A. Clark(BioHybrid Technologies, Shrewsbury, MA)からの贈与物であり、37℃の加湿5%CO2-95%エアー・インキュベーター内で、グルコース(11 mM)、50 U/mlのペニシリン、50 μg/mlのストレプトマイシン及びグルタミン(2 mM)を補充したEarle's塩(Mediatech, Inc., Herndon, VA)を伴うM199中で、日常的に培養された。GLP-1受容体遺伝子により安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO/GLP-1R細胞を、先に記載した。血漿インシュリン・レベルをELISAによって計測した(Crystal Chem Inc., Chicago ILL)。HbA1cを、Greig et al., 1999に記載のとおり計測した。血糖値を、Glucometer Elite(Bayer Diagnostics, Tarrytown, NY)を使って計測した。
【表3】
下線を引かれたアミノ酸が、試験されるexendin-4配列由来のアミノ酸を表す。
【0104】
動物
6ヶ月齢の雄ズッカー(fa/fa)ラット(Harlan, Indianapolis, IN)、2ヶ月齢のC57BLKS/J-Leprdb/Leprdbマウス(Jackson Laboratories, Bar Haror, MA)、及び2ヶ月齢のフィッシャーラット(Harlan, Indianapolis, IN)を、急性及び慢性の実験で使用した。全ての動物に、食べ物と水を自由摂取させた。動物を、12時間の明-暗いサイクル(午前7時に点灯)の状態のおいた。ズッカーラット及びdb/dbマウスのための床敷きは、紙ベースの製品、Carefresh(Absorption Co., Belingham, WA)であり、そしてフィッシャーラットを、通常の床敷きの上に収容した。
【0105】
細胞内cAMPの定量
12ウェル・プレート上で60から70%集密まで培養したRIN1046-38細胞を、実施例3に記載のとおり処理し、そして適宜にcAMP定量を実施した。用量反応曲線を図21に示す。
【0106】
完全な細胞のGLP-1受容体へのペプチドの競合的な結合
実施例4に記載のとおり結合試験を実施した。表5は、それぞれCHO GLP-1R細胞における競合的結合及びRIN 1046-38細胞におけるcAMPアッセイから得たIC50及びEC50値を示す。
【表4】
【0107】
統計分析
全ての値を平均±SEMとして示し、群間の差を、ANOVAを使って分析した。図1及び2の曲線を、反復コンピュータプログラム(20)を使って4因子S字状ロジスティック回帰方程式に適合させ、そして表2のEC50及びIC50値を適合データから計算した。
【0108】
ズッカーfa/faラットにおける急性経時変化実験
10 nmol/kgのペプチドを、0.1%のBSAを含むPBS溶液で投与したことを除き、実施例5で先に記載したとおり、6ヶ月齢の雄ズッカーfa/faラット(Harlan, Indianapolis, IN)をこの研究で使用した。Ex(1-36)及びEx(1-35)のsc注射後の血糖値を、図22に示す。
【0109】
db/dbマウスにおけるEx(1-30)を用いた慢性研究
動物を、実験開始前にそれらの環境順化を容易にするために、2.5ヶ月間我々の施設に収容した。処理の最初の20日間、毎日午前9時に、動物にEx(1-30)(1 nmol/kg)を腹膜内(ip)注射で与えた。その後、次の32日間、午前9時と午後9時位に、動物は、ipでEx(1-30)(1 nmol/kg)を受けた。処理プリトコールの最初の20日の終了時点で、血糖値及びHbA1cを計測した。食物摂取及び動物体重を、毎日午前9時の注射時に測定した。スケジュールの中で失敗した日はない。磁気共鳴像(MRI)を、51日目で取り、そしてIPGTTを、52日目に実施した。
【0110】
20日目におけるHbA1cは、Ex(1-30)処理マウスについて7.8±0.4、生理食塩液処理マウスについては7.7±0.3であった。絶食血糖値は、Ex(1-30)処理マウスについて412±92 mg/dl、が生理食塩液処理マウスについては600±1 mg/dlであった。
【0111】
磁気共鳴映像法
1.9 T、ボア31 cmのBruker BioSpecシステム(Bruker Medizintechnik GmbH, Ettlingen, Germany)、内径20 cmのシールド型グラジエント・セット、及び直径5 cmのボリューム共鳴器を使って、磁気共鳴イメージを得た。慢性の研究で使用した動物を、イソフルオラン知覚麻痺下に置き、標準T1強調多重スライス・スピン−エコー法(TR=500 ms、TE=8.5 ms)を、腹部全体を含む領域をカバーする、各2.1mmの厚さの20の隣接するスライスにわたって得られた。視野は、128×128画素より高く5×5 cmであった。各々のイメージを、約9分の総撮像時間にわたり、8回の収集を使って収集した。全ての動物において、撮像を2つの時点(0日目と51日目)で実施した。
【0112】
内臓と皮下部位の分離を、各々のスライスについて、着目の図面領域(ROIs)によって実施した(Bruker Paravisionソフトウェア)。各ROIから得られる強度ヒストグラムを使って、正常な組織からの脂肪の区分けを達成した(NTH Image software, National Institutes of Health, USA)。このヒストグラムは、各ROIにおいて脂肪組織含量が合計できるようにする分界点としてそれらの間の谷を使用して分けられた、2つの十分に分離されたピークを一般的に示した。
【0113】
結果を図23に示す。両セットの動物(対照及びEx(1-30)投与)で体重が減少したが、Ex(1-30)処理した動物は、内臓脂肪沈着の減少を示した。処理された動物は、薬物を受けなかった対照と同ほど速く体重を失わなかった。よって、処理は糖尿病を軽くして、処置した動物はより健康的だった。
【実施例10】
【0114】
実施例10.β-アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の代謝に対するGLP-1とGLP-1アナログの効果
アルツハイマー症(AD)の重要な病理的な特徴の1つは、主にアミロイド-βペプチド(Aβ)より成る老人斑の脳血管沈着である。Aβは、より大きなグリコシル化膜結合タンパク質β-アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)から誘導される。大部分のβAPPは、Aβドメインにタンパク質分解によって切断されて、アミロイド生成性断片の形成を防ぐ可溶性誘導体(sAPP)を産生する。この研究は、β-アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングに対するGLP-1及び2つのアナログの効果を測定するために実施した。
【0115】
PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化胎児ウシ血清、25 mMのHepesバッファー、及び1×抗生物質−抗真菌性溶液を補充したRPMI1640中で培養した。(全ての培地及び血清を、MediaTech Inc.から入手した(Herndon VA)。処理を、低血清中、GLP-1(3.3、33及び330 μg/ml)(Bachem, Torrance, CA)、並びに2つのアナログexendin-4(0.1、1.0及び10 μg/ml)及びexendin-4-WOT(ペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7))(0.1及び1.0 μg/ml)の存在下で実行した。PC12細胞によって調整培地中により多くのsAPPの分泌をもたらす分泌経路を刺激することが示されているNGF(5、10、25及び50 ng/ml)(Promega, Madison, WI)を正の対照として使用した。処置の3日後、未処理(低血清培地のみ)及び処理細胞の調整培地、及び細胞ライセートを、モノクローナル抗体、22C11(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を使って免疫ブロット分析に共した。そのエピトープ領域が外形質のシステイン含有ドメインのβAPP66-81に割り当てられた、E.コリ(E.coli)産生βAPPに対して産生された、抗体は、細胞膜中に見つかったβAPPの全ての成熟型、並びに調整培地中に分泌されたカルボキシ切詰め可溶性型を認識する。処理又は未処理細胞からの調整培地又は細胞ライセートの典型的な免疫ブロットで、複数の高分子量タンパク質の結合(Mr 100〜140 kDa)が、明白だった。免疫ブロットにおける免疫反応性バンドの特徴で観察される差異は、ゲル中へのタンパク質の不均一な添加によるものでなく膜上へのタンパク質のむらがある移行によるものでもなかった。等量の総タンパク質を、ゲルの各々のレーンに添加し、5%の酢酸中、0.1%のPonceau Sにより膜を染色することによって、電気泳動移行の効率を観察した。
【0116】
上方のバンドの濃度測定による定量化は、NGF処理後にβAPPの細胞内レベルの急激な上昇を明らかにした(図11A、棒グラフ1及び2;図11B、棒グラフ1及び2)。細胞培養実験間の特有の変化は、1組の研究の中の5 ng/mlと10 ng/mlのNGFによる(図面11AとC)、並びに異なる組の研究の中の25 ng/mlと50 ng/mlのNGFによる(図11BとD)処理後の分化の程度の差異を考慮する。NGFとは対照的に、GLP-1及びアナログは、βAPPの細胞内レベルを減少させた(図11A、棒グラフ3〜5;図11B棒グラフ3〜7)。NGF及びexendin-4の組み合わせ物は、未処理細胞に対して細胞内βAPPを増加させたが、しかし2つの単独の処理条件のそれの間のレベルであった(図11A、棒グラフ6)。
【0117】
図11C及びDに示されるように、全ての投与量の神経成長因子処理が、調整培地で検出されることができた分泌された、可溶性βAPP誘導体の急激な上昇をもたらした(図11C、棒グラフ1及び2;図11D、棒グラフ1及び2)。細胞ライセートからの細胞内βAPPレベルの類似したパターンに続いて、GLP-1、exendin-4及びexendin-4-WOTの全ての投与量による処理は、調整培地中への検出可能なレベルのsAPPの減少を引き起こした(図11、棒グラフ3〜5;図11D、棒グラフ3〜7)。NGFとexendin-4の組み合わせ物は、未処理細胞に対してsAPPレベルの少しの変化も引き起こさなかった(図11C、棒グラフ6)。
【0118】
Sigma Co.からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)キットを使って、使用した処理及び未処理細胞の両方の、調整培地及び細胞ライセート・サンプルにおいて以下に記載のとおりLDHのアッセイを実施した。使用した条件下で処理及び未処理細胞間のLDHレベルで著しい変化は観察されなかった。使用された投与量でのGLP-1及びアナログによる処理の結果としての毒性の可能性は外される。
【0119】
データは、12細胞におけるGLP-1処理後に、βAPPの分泌されている誘導体と成熟型のレベルを減少させることを示す。sAPP分泌のこれらの減少は、減少したβAPP合成の分泌の結果である。
【実施例11】
【0120】
実施例11.GLP-1及びアナログの神経増殖と分化の促進
ラット褐色細胞腫(PC12)細胞系において、ニューロンの増殖と分化、及びニューロンタンパク質の代謝に対するGLP-1とその長期作用性アナログ2種類、exendin-4、及びexendin-4 WOTの効果を、試験した。GLP-1及びexendin-4は、神経突起の伸長を誘発し、それは、選択的GLP-1受容体拮抗薬、exendin(9-39)との同時インキュベーションによって覆された。さらに、exendin-4は、神経成長因子(NGF)によって開始された分化を促進し、かつ、NGF介在撤回に続く細胞の変性を救う。
【0121】
材料
7S NGFを、Promega(Madison, WI)から購入した。GLP-1及びexendin(9-39)を、Bachem(Torrance, CA)から入手した。Exendin-4及びそのアナログ、exendin-4WOTを合成し、先に記載のとおりHPLC分析によって>95%の純度であることを評価した。全ての他の化学薬品は、別段の記載のない限り、高純度であって、Sigma Chemicals(St.Louis, MO)から入手した。
【0122】
データ分析
統計分析を、必要に応じて実施した。結果を平均±SEM(SEM=平均間の差異の標準誤差)と表現した。SPSSバージョンVIIを使って、分散分析(ANOVA)を実行し、p<0.05を、統計的に有意であるとみなした。有意な主効果に続いて、Tukey's Honestly Significant Difference test(テューキーのHSD)を使って計画比較を行った。
【0123】
培養条件
褐色細胞腫細胞を、Dr. D. K. Lahiri(Indianapolis)から入手し、RIN1046-38細胞(クローン・ラット・インスリノーマ細胞株)は、Dr. Samuel A. Clark(Bio Hybrid Technology, Shrewsbury, MA)からの贈与物である。PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化胎児ウシ血清、25 mMのHepesバッファー、及び1×抗生物質−抗真菌溶液を補ったRPMI1640中で培養した。RIN1046-38細胞を、12 mMのグルコースを含み、5%の熱不活化胎児ウシ血清、0.03%のグルタミン、50 U/mlのペニシリン、及び50 mg/mlのストレプトマイシンを補った培地199中で培養した。細胞培養培地及び血清を、MediaTech(Cellgro) Inc.(Herndon, VA)から入手した。細胞を、5.0%のCO2を含む加湿雰囲気中で培養した。それらを、1枚の60 mm皿につき約2.0×106細胞にて播種した。PC12細胞を、ラットの尾のコラーゲンで覆われた培養器(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis)上で培養した。7S NGFを、100 mg/mlの濃度で成長培地中への希釈によって調製し、-20℃で保存した。GLP-1及びアナログの原液を、滅菌水中で新たに作製し、-20℃で保存した。
【0124】
各々の処理条件について3枚の皿を、準備した。播種後24時間、いったん細胞が十分に接着すれば、処理を開始する。培地を吸引し、そして(0.5%の胎児ウシ血清だけを含む)3 mlの新鮮な低血清培地を、適当な化合物と一緒に加えた。
【0125】
細胞ライセートの準備
イムノブロッティング法によるタンパク質分析のために、調整培地及び細胞ペレットを毎日採集した。細胞ライセートを以下のとおり調製した。プレートからの細胞を、そっと回収し、10分間800 gで遠心分離した。細胞ペレットを、10 mMのTris-HCl(pH7.4)、1%のSDS、0.174 mg/mlのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、各々1 mg/mlのアプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチンA、及び45.98 mg/mlバナジン酸ナトリウムと10.5 mg/mlフッ化ナトリウムの混合物4 mlを含む溶解バッファー中に懸濁した。懸濁した細胞を、粉砕し、15分間14,000 gで遠心分離した。上清溶液のタンパク質(細胞ライセート)を、計測し(Bradford, 1976)、イムノブロッティング法によって分析した。
【0126】
ウェスタンブロッティングによるタンパク質分析
2.6%のビスアクリルアミド(Novex、サンディエゴCA)を含む10%のTris−グリシン・ゲルを使って、各細胞ライセート及び調整培地からのタンパク質10 μgを用いて、ウェスタンブロット分析を実施した。タンパク質を、PVDF紙上にブロットした。5%の酢酸(Sigma)中、0.1%のPonceau S溶液を用いて膜を染色することによって、移したタンパク質を可視化した。
【0127】
Exendin-4及びGLP-1の介在した神経突起の伸長
PC12細胞を、上記のとおり60 mm皿上で培養し、4日間培養した。この間神経突起の伸長を毎日定量した。1枚の皿につき、5つの無作為な細胞領域を評価し、そして神経突起をもつ細胞の割合が測定した。1つの領域につき約100細胞を、細胞体のそれと同等以上の長さの神経突起について記録した。1つの細胞につき1以上の突起をもっていたかもしれないが、1つの細胞を一度だけ記録した。
【0128】
神経栄養性化合物の存在しない完全培地で培養された培養されるとき、PC12細胞はニューロン細胞型の特徴を全く示さなかった。低血清培地中でNGFに晒されたとき、細胞は、分裂を止め、そして交感神経ニューロンに類似した形態的特徴を発現させた。細胞は、長い突起を伸ばし、あるものは、低血清培地のみで培養した細胞においてより、さらに扁平な外観を示す細胞体を伴って高度に分岐するようになった。
【0129】
低血清培地中でのGLP-1及びexendin-4による処理は、NGFによって誘発されたものへの分化に対して類似した効果を引き起こした。GLP-1及びexendin-4の誘発した神経突起は、NGFによる処理を受けて産まれた神経突起より、一般に長さが短かくて、分岐が少ない。対照的に、exendin-4との組み合わせでGLP-1拮抗薬、exendin(9-39)は、神経突起伸長を開始できない。
【0130】
神経突起の発達に関する毎日の定量化をも実施した。図12で示した結果は、処理3日目に得たカウントを表し、そして未処理対照のパーセンテージとして表される。低血清培地の存在下、PC12細胞の培養は、5〜10%の細胞が神経突起の突起を伸長する結果となった。分析は、処理条件の有意な主効果を明らかにした(F=263.5、df=8,89、p<0.001)。期待されるように、NGF処理は、本明細書中で試験した3つの投与量;10、30及び100 ng/mlでニューロン表現型を有意に誘発した(全てp<0.01)。例えば、10及び30 ng/mlのNGFによる細胞の処理は、対照から神経突起の突起の、それぞれ550及び720%の増加を引き起こした。同じ条件下で、PC12細胞をexendin-4で処理した場合、有意な神経突起の伸長は、1 μg/ml(未処理に対して98%の増加、p<0.05)、及び10 μg/ml(未処理に対して160%の増加、p<0.01)の化合物でも観察された。しかし、exendin-4による神経突起の伸長は、NGF処理細胞のそれほどは顕著ではなかった。2つの化合物の相乗効果を測定するために、組み合わせ処理の系列を試した。
exendin-4(100 ng/ml)を、10 ng/ml又は30 ng/mlのNGFのいずれかと同時処理したとき、神経突起伸長の有意な増加を、未処理対照細胞に対して観察した(それぞれ、596%及び819%増加、ともにp<0.01)。NGF処理単独に対する神経突起伸長の増加は、30 ng/mlで有意であるのみだった(p<0.01)。類似した結果を、単独で又はNGFと組み合わせて、他の投与量のexendin-4によって観察した。これらのデータは、exendin-4が分化を開始することができて、かつ、NGFに誘発された分化を促進することができることを示唆している。
【0131】
NGFが介在する細胞死に対するExendin-4の効果
50 ng/mlのNGFの存在/不存在下、又はexendin-4(1又は5 mg/ml)存在/不存在下、PC12細胞を、完全培地(RPMI1640+5%のウシ胎仔血清+10%のウマ血清)中で培養した。4又は7日後に、細胞を採集し、続いてさらに3日間、通常培地中で回復させた。最終日に、細胞を採集し、生細胞の割合を測定するためにMTTアッセイを実施した。2番目の組の実験(阻止)において、4又は7日間、細胞を、50 ng/mlのNGF及びexendin-4(1又は5 mg/ml)の存在下で培養した。細胞を採集し、前記のとおり回復させた。3番目の組の実験(救済)において、細胞を、50 ng/mlのNGFの存在下で4日間培養した。さらに3日間、5 mg/mlのExendin-4を、培地に加えた。7日目に細胞を採集し、前記のとおり回復させた。
【0132】
4番目の組の実験(救済)において、細胞をNGFの存在下で培養した。4日目に、さらに3日間、5 mg/mlのexendin-4を加えた。7日目に細胞を採集し、前記のとおり回復させた。以下に記載のとおり、4及び7日目に、トリパンブルー排除法、及びにMTTアッセイを実施することによって、細胞を各々のプレート(4プレート/処理条件)についてカウントした。
【0133】
これらの実験で、4日後のNGF処理中止は、大量の細胞死を引き起こさずに、そして大部分の細胞はほとんど完全に回復することができた。Exendin-4同時処理は有意な効果を示さなかった。処理の7日後のNGF処理中止は、細胞の生存度の15〜20%の減少を引き起こし、そしてこの細胞は、完全に回復することができなかった(図13、棒グラフ2)。この場合、exendin-4の同時処理は、低用量(図13、棒グラフ4)又は高用量(図13、棒グラフ6)のいずれも、あるいはNGF処理の4日に添加された場合にも(図13棒グラフ7)細胞死を防がなかった。しかしexendin-4処理をNGF処理中止に続いて実施した場合、回復過程が促進された。例えば、PC12細胞をNGFの存在下で4日間培養し、4〜7日目にNGFを処理中止し、exendin-4を加えたとき(図13、棒グラフ8及び9)、細胞生存度は、対照値に達した(>95%)。これは、高用量(5 mg/ml)及び低用量(1 mg/ml)のexendin-4の両方についてであった。
【0134】
MTT分析
Promega(Madison, WI)製のCellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay Reagentを、修飾MTTアッセイにおける生細胞数の測定のための比色分析手順で使用した。この試薬は、新規テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチル-2-yl)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム、内部塩;MTS]、及び電子共役試薬(フェナジン・エトスルフェート;PES)を含む。PESは化学安定性を高め、それはMTSとの組み合わせを可能にし、安定した溶液を形成した。MTSテトラゾリウム化合物は、組織培養培地に溶解する、有色のホルマザン産物へと細胞によって生物学的に還元される。代謝的に活性な細胞中のデヒドロゲナーゼ酵素によって産生されるNADPH又はNADHによって、この転換は恐らく達成される(Berridge and Tan, 1993)。アッセイを、直接的に培養したウェルへの少量の試薬の追加、1〜4時間のインキュベーション、続く96ウェルプレート・リーダーによる490 nmの吸光度によって実施される。490 nmの吸光度の値によって計測されるホルマザン産物の量を、培養物中の生細胞の数に直接に比例している。MTSホルマザン産物は組織培地に溶解するので、本手順は、MTTのようなテトラゾリウム成分を使う手順よりわずかなステップしか必要としない。
【0135】
PKA阻害薬による神経突起伸長の部分的な抑制
GLP-1及びexendin-4誘発神経突起伸長の機構を決定するために、分化した培養物を、それぞれERK MAPKとPI3-Kを阻害する50 μMのPD98059又は40 μMのLY294002で処理する。cAMPに依存したMAPKリン酸化がPKAによって制御されたかどうかを決定するために、GLP-1及びNGFによって誘発した神経突起をPKAの特異的阻害薬、H89で処理した。
【0136】
具体的には、培養物を、GLP-1アンタゴニストであるexendin(9-39);PI3キナーゼ阻害薬であるLY294002(40 μM);MAPキナーゼ阻害薬であるPD98059(50 μM)、又はPKA阻害薬であるH89(20 μM)で48時間処理した。細胞を、約1×105細胞/mlで60 mm皿上に播種し、そして前記の化合物のそれぞれとともに10 nMのGLP-1又は0.3 μMのexendin-4で処理した。50 ng/mlのNGF及びフォルスコリン(PKAアクチベーター)(20pM)を、これらの処理の正の対照として使用した。
【0137】
PD98059及びLY294002の両者は、細胞のGLP-1及びexendin-4の誘発した神経突起伸長を減少させた。同様に、NGFに誘発された神経突起の伸長が、PD98059及びLY294002の処理にを受けて減少した。よって、ERK MAPキナーゼ及びPI3キナーゼ・シグナル伝達経路の関与が、PC12細胞におけるGLP-1及びexendin-4が介在した神経突起産生に関係する。H89での処理が、GLP-1及びNGFによって誘発された神経突起伸長に対する多少の阻害効果を証明した。これらのデータは、PKAがMAPキナーゼ・シグナル伝達経路の調節に関与しているが、しかし他のシグナル伝達経路も関与していることを示唆する。
【0138】
シナプトフィジン及びBETA-2/NeuroDの発現
GLP-1、exendin-4又はexendin-WOTの誘発したPC12細胞の分化の間に生じている分子の変化を検討するために、シナプス小胞膜でよく発現されているリン酸化された37 kDaのタンパク質である、シナプトフィジンの特徴を試験した。PC12細胞の神経分泌液胞を染色するシナプトフィジン・モノクローナル抗体(Oncogene Research Products, San Diego, CA)を使用した。膜を、20 mMのTris、500 mMのNaCl pH7.4、1%(w/v)のカゼイン(BioRad, San Diego, CA)によって37℃で1時間ブロックした。一次抗体を、ブロック中に希釈し、そして4℃で一晩タンパク質と一緒にインキュベートした。前記膜を、20 mMのTris pH7.4、150 mMのNaCl、及び0.05%のTween-20(TBST)で3回、室温で15分間強く洗浄した。ブロック中、ペルオキシダーゼ連結二次抗体を、膜と一緒に室温で2時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ連結抗マウスIgM(Chemicon, Tenecula, CA)を、シナプトフィジンに対する二次抗体として使用した。過剰な抗体を、TBSTで3回強く洗い落とし、その後ECLプラス(Amersham, Philadelphia, PA)中で5分間インキュベーションした。続いて膜を写真用フィルムに焼き付けた。Molecular Analystソフトウェア(BioRad, Hercules, CA)を使ってタンパク質バンドの濃度測定による定量化を実施した。
【0139】
シナプトフィジン抗体を使った細胞ライセート・サンプルのウエスタン免疫ブロット分析は、約37 kDaの分子量バンドを明らかにした。NGF、GLP-1及びGLP-1アナログによる処理は、未処理細胞と比べてのシナプトフィジン・タンパク質の発現を著しく減少させた。タンパク質バンドの濃度測定による定量化は、未処理に対して、全ての処理条件について有意な減少を示し(図14、全てp<0.01)、それらは、投与量に依存していると考えられる。PC12細胞由来の調整培地サンプルの中に、免疫反応性バンドは検出されなかった。
【0140】
NGF処理の結果としてのPC12細胞における高度の分化は、未処理対照細胞に対してシナプトフィジン発現の著しい減少によって明らかとなった。神経成長因子は、対照細胞に対して約70%の最大減少を引き起こす、細胞性シナプトフィジン発現の投与量に関係した変化を証明した。GLP-1及びアナログは、NGFが介在した分化に対して神経突起の伸長への類似した効果を示したが、しかしより低頻度に対してシナプトフィジン発現の比較的わずかな減少しか示さなかった。興味深いことに、組み合わせたNGFとexendin-4は、相加的な形態的効果を反映して、いずれか単独の化合物よりもシナプトフィジン発現の大きな減少を引き起こした(図14)。総じて、exendin-4は、シナプトフィジン発現の点で、PC12細胞の分化を、GLP-1又はexendin-4WOTのいずれかがしたより顕著な誘導を示した。
【0141】
GLP-1の誘発したPC12の分化における転写因子BETA-2/NeuroDの役割を調査するために、細胞ライセートを、NeuroDポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)によって調査した。BETA-2/NeuroDは、ニューロンと膵臓の内分泌の発達に重要な役割をもつ。NeuroDの発現は、ニューロン分化の間の、末梢神経系の知覚及び運動ニューロン、感覚器、並びに脳及び脊髄の一部において短期的であると考えられるが;しかし成人の脳における検出は、成熟したニューロンにおける二次的な役割を示唆する(Lee et al., 1997)。膵臓の内分泌の細胞、腸及び脳におけるBETA-2発現は、インシュリン遺伝子の転写を活性化して、ニューロンの分化を促進しうる。機能的なBETA-2遺伝子を欠く突然変異マウスは、インシュリンを産生するベータ細胞数の顕著な減少を有し、成熟した島の発達を欠き、そして結果としてしばしば周産期死亡をもたらす重度の糖尿病を患う(Naya et al., 1997)。よって、BETA-2/NeuroDは、インビボの膵臓の発達、及びニューロンの分化に不可欠である。
【0142】
ペルオキシダーゼ連結抗ヤギIgG(Santa Cruz Biotechnology Inc.)を二次抗体として使用したことを除いて、シナプトフィジン抗体について先に記載のとおり抗NeuroD抗体を使って、NeuroD産生をウェスタンブロット分析によって測定した。未処理、及びGLP-1で処理したPC12細胞ライセートの両方ではっきり見える43kDaバンドを検出し、それは、GLP-1処理により増加した。BETA-2/NeuroD発現は、GLP-1での処理により増加し、このインシュリン分泌刺激ポリペプチドのニューロン分化特性のさらなる証拠を提供する。予想されるように、低血清培地のみに晒された培養物は、BETA-2/NeuroDの通常の発現を示した。実際、Noma et al.,(1999)は、NGFのような分化を誘発する薬剤なしに、神経突起に似た突起、及びシナプスに似た構造体のような形態的変化が誘発されたトランスフェクトPC12細胞におけるNeuroDの過剰発現を示した。
【0143】
PC12細胞におけるGLP-1受容体の存在の証明
PC12細胞を、35 mm培養皿内のポリ-L-リジン・コート・ガラス・カバースリップ上に移し、(先に記載のとおり)標準的な条件下で培養した。細胞を、30分間、0.25%のグルタルアルデヒドを用いて固定した。内性ペルオキシダーゼ活性を、0.3%のH2O2でクエンチし、GLP-1受容体のN末端に対して産生された一次ポリクローナル抗体(Dr. Joel F. Habener, Massachusetts GeneralHospital, MAからの贈与物)(希釈係数1:1500)中でのインキュベーションを、室温で1時間実行した。可視化は、ビオチン化抗ウサギIgG二次抗体中でのインキュベーションに続く、ジアミノベンジジン・ジヒドロクロライド(DAB)による発色を伴う、アビジン−ビオチン・ペルオキシダーゼ法を使った。
【0144】
PC12細胞におけるGLP-1R陽性免疫反応性染色の存在は、GLP-1受容体の存在を確かにした。より特に、染色は、細胞体上にあり、そして神経突起末端上により少ない。ほとんど全て細胞が、陽性に見えたが、しかし全てのPC12細胞が同程度に陽性免疫反応性染色を表したわけではない。
【0145】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
RT-PCRを、GLP-1受容体mRNAに関する高感度アッセイとして実施した。ラット・インスリノーマ細胞(RIN細胞)を、正の対照として使用した。全RNAを、ChomczynskiとSaccchi(1987)の方法を使ってPC12細胞から分離した。2.5 mgのRNAを我々のRT-PCR反応に使用した。50 mMのKCl、10 mMのTris-HCl、3.5 mMのMgCl2、200 mMのdNTP、並びに各々0.4 mMのラットGLP-1Rセンス(5'ACAGGTCTCTTCTGCAACC 3')及びアンチセンス(5'AAGATGACTTCATGCGTGCC 3')オリゴヌクレオチド・プライマー(膵臓のGLP-1受容体配列の5'及び3'末端)を含むバッファー50 mlの量でRT-PCRを行った。[a-32P]dCTPの存在下、30サイクルで増幅を行った。ラット島細胞を、正の対照として使用した。RT-PCR産物(10 ml)を、適当なサイズマーカーと一緒に4〜20%のポリアクリルアミドゲルで分離した。続いて、真空下80℃で1時間ゲルを乾燥させて、そしてX線フィルムに焼き付けた。
【0146】
GLP-1受容体について予測されるサイズのRT-PCR産物を得た。ラット島mRNA及びPC12細胞mRNA中の928-bpのクリア・バンドは、PC12細胞上のGLP-1受容体の存在を支持した。
【0147】
cAMPの測定
cAMPの測定の前に、PC12細胞を、3日間、33 μg/mlのGLP-1で処理した。トリプリケートの培養物を、処理開始後、合計期間30分の間、5分の間隔で採集した。処理開始時(ゼロ分)に採集した細胞を、cAMPの基礎レベルに使用した。サイクリックAMPを、Monte-Rafizadeh et al.,(1997a)の方法に従って計測した。
【0148】
GLP-1受容体の活性化は、細胞内のcAMPの増加をもたらす、アデニルシクラーゼを刺激することを示した。サイクリックAMPを、33 mg/mlのGLP-1でのPC12細胞の処理に続いて30分間アッセイした。刺激の15分以内にcAMPレベルで最大1200倍増加し、それは30分以内にベースライン近くに戻った。これらの所見は、PC12細胞上のGLP-1受容体の存在及び活性を証明する。
【0149】
毒性分析
exendin-4の考えられる毒性効果を、インビトロにて2つの方法:LDH分析及びトリパンブルー排除法によって試験した。LDHアッセイを、Sigmaキットを使って実施した。処理後に異なる時間間隔で回集した調整培地サンプルを、高感度乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイに供した。LDHアッセイは、総細胞質内LDHを通して又は培地中に放出された細胞質内LDHの量の関数としての膜の完全性によって、細胞数の尺度を提供した。放出されたLDHの測定は、LDHの作用によるNADの減少に基づいた。得られた減少したNAD(NADH)を、テトラゾリウム色素の化学量論的変換に利用した。最終有色化合物を、分光光学的にに計測した。培地をアッセイするより前に細胞が溶解された場合、細胞数の増加又は減少が、変換された基質の量の付随する変化をもたらす。これは、試験物質によって引き起こされた胞傷害反応又は膜損傷(細胞毒性)の程度を示した。
【0150】
処理に続いて生細胞数の著しい変化はなく、我々の化合物が、検討した条件下で、PC12細胞に無毒であることを示唆した。図15を参照のこと。処理の間の細胞膜の完全性を測定するために、LDHレベルを、2つの別個の組の実験において、3日目に同じ条件下の対照及び処理細胞からの調整培地で計測した。期待されるように、LDHレベルは、培地標準(サンプルを処理開始時に採取した)に対して上昇した。しかし、10 ng/mlのNGF及び10 μg/mlのexendin-4を唯一の特例として、いかなる処理の投与も未処理細胞対照を越えてLDHレベルを大幅に高めなかった。10 μg/mlのExendin-4が、対照のそれの1.65倍までレベルを高め(p<0.001)、そしてlO ng/mlのNGFが、1.38倍の増加を示した(p<0.05)。
【0151】
ブロモデオキシウリジンの取り込みによって測定されたPC12細胞における細胞ターンオーバー
GLP-1が培養においてPC12細胞の増殖に影響するかどうかを測定するために、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)の取り込みを観察することによって低血清培地中の細胞増殖を評価した。標識後の抗BrdU抗体を用いた免疫細胞化学を、標識の時点で活発にDNAを複製していた細胞を確認するために使用した。PC12細胞を、33 μg/mlのGLP-1又は50 ng/mlのNGFの存在下又は不存在下で3日間培養した。細胞DNAを標識するために、4%のパラホルムアルデヒド中に固定する6時間前に、10 μMのBrdUを培地に加えた。方法の残りの部分は、増殖キット(Roche, Indianapolis, IN)に従って行った。増殖している細胞(BrdU標識の時点でDNA複製を受けてた細胞)は、クロモゲン反応により暗染された核を示した。BrdU取り込みを、処理の1、2及び3日目に定量した。各々の処理条件について3枚の皿をカウントし、細胞総数に対する標識された細胞のパーセンテージとして表した。PC12細胞は、NGFによる処理(未処理に対して9%の上昇)及びGLP-1による処理(未処理に対して18%)後、1日目にBrdUの取り込みの増加を示した。
【実施例12】
【0152】
実施例12.グルカゴン様ペプチド-1及びExendin-4による、興奮毒性神経損傷の保護及び回復
グルタミン酸によって誘発した細胞死から培養海馬ニューロンを保護する、並びに、成体ラットイにおけるボテン酸で誘発したコリン作用性マーカー欠損を軽減する、GLP-1及びその長期作用性アナログ、exendin-4の能力を試験した。
【0153】
培養条件
海馬ニューロン培養物を、前記(Mattson et al., 1995)に類似した方法を使って18日齢の胎仔Sprague Dawleyラットから調製した。要するに、細胞を、軽いトリプシン処理及び粉砕によって解離させ、そして10%のFBS及び1%の抗生物質溶液(104 U/mlのペニシリンG、10 mg/mlのストレプトマイシン及び25 μg/mlのアムホテリシンB;Sigma Chemicals, St. Louis, MO)を含む最小必須培地中に蒔いた。海馬ニューロンを、25 mmの直径のポリ-D-リジン・コート・ガラス・カバースリップ上に、100,000細胞/mlの密度で蒔いた。細胞を蒔いた3時間後に、培地を、1%のB27-サプリメント(Gibco/Life Technologies, Carlsbad, CA)を含む無血清Neurobasal培地によって交換した。
【0154】
MAP-2(ニューロン)とGFAP(神経膠星状細胞)について染色した免疫螢光法が、細胞の98%以上がニューロンであり、そして残りが主に神経膠星状細胞であることを示した。培養物を、プレーティングの7〜10日以内に使用した。
【0155】
結合の検討
結合の検討を、Montrose-Rafizadeh(1997b)に記載のとおり実施した。デュプリケートの海馬ニューロン培養物を、0.5 mlの結合バッファーで洗浄し、続いて
2%のBSA、17 mg/lのdiprotinA(Bachem, Torrance, CA)、10 mMのグルコース、0.001〜1000 nMのGLP-1、及び30,000 cpmの125I-GLP-1(Amersham Pharmacia Biotech, Little Chalfont, UK)を含む0.5 mlのバッファー中、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション終了の時点で、上清を捨て、そして細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、そして0.5mlの、0.5MのNaOH及び0.1%のSDS中、室温で10分間インキュベートした。細胞ライセート中の放射活性を、Apecシリーズγカウンター(ICN Biomedicals, Inc., Costa Mesa, CA)えにより計測した。総結合から、大過剰の非標識GLP-1(1 μM)の存在でインキュベートした細胞に関する放射活性を差し引いたものとして、特異的結合を測定した。50%の結合、EC50に関係しているGLP-1濃度を、ロジット・プロット分析によって測定した。
【0156】
培養海馬ニューロンへの125IGLP-1の結合は、非標識GLP-1によって濃度依存的に置き換えられた(図16A)。結合した125IGLP-1の50%を置き換えるために必要とされるGLP-1濃度を、ロジット・プロット分析によって決定し、培養海馬ニューロンにおいて14 nMのGLP-1(r=-0.999)の濃度を必要とした。
【0157】
cAMPの測定
機能性GLP-1受容体の存在を証明するために、サイクリックAMPを、Montrose-Rafizadeh et al.,の方法に従って計測した(1997a)。トリプリケートの海馬ニューロンの細胞培養を、10 nMのGLP-1で処理し、合計で30分間、薬物処理開始後5分間隔で採集した。薬物処理の開始時(ゼロ分)で採集された細胞を、cAMPの基礎レベルに使用した。
【0158】
10 nMのGLP-1による培養海馬ニューロンの処理は、cAMP産生の増加を引き起こした(図16B)。刺激の15分以内にcAMPレベルの最大で2〜3倍の上昇があり、30分以内にベースラインの近くに戻った。一元ANOVAは、cAMP産生に対する処理の有意な主効果(F=9.45、df=6,20、p<0.001)を証明した。次のチューキーのHSD検定を使った連続した多重比較(subsequent multiple comparisons)は、10(p<0.01)及び15(p<0.001)分後のcAMP産生の有意な増加を明らかにした。これらのデータは、初代海馬ニューロンが、機能性GLP-1受容体を発現し、それを用いてこれらのペプチドの潜在的な保護及び栄養効果を検討するのに適当なインビトロのシステムとなっていることを説明する。
【0159】
アポトーシス細胞死
蛍光性DNA結合色素Hoescht 33342を、アポトーシス細胞死を計測するために使用した。ニューロンを、グルタミン酸(10 μM)の存在又は不存在下、GLP-1(10 nM)又はexendin-4(0.3 μM)を伴ったLocke'sバッファー中で16時間インキュベートした。使用したGLP-1の濃度は、cAMPの放出を刺激することが証明され、かつ、我々の先のニューロン細胞研究において細胞死を引き起こすことなく分化を誘発した、結合実験によって得られたEC50値を基にした。細胞を、PBS中、4%のパラホルムアルデヒド溶液中で固定し、膜を0.2%のTritionX-100によって透過処理した。Hoechst 33342(1 μM)との30分間のインキュベーションに続いて、40×油浸対物レンズを使ってエピ蛍光照明(340 nm励起、510 nmバリア・フィルター)下で核を可視化した。約200の細胞を、各々の処理条件について少なくとも3枚の別々の皿でカウントし、そして実験を少なくとも2度繰り返した。核DNAが断片化されるか又は凝集された場合、細胞はアポトーシスであると考えられ、それに対しより拡散した、及び均一な分布の核DNAをもつ細胞は生き残ったものとみなした。カウントの時点で、調査員は処理群の正体に気付かなかった。凝集又は断片化された核をもつ細胞のパーセンテージを、各々の培養物で測定した。
【0160】
初代海馬ニューロンを、10 μMのグルタミン酸で一晩処理した。固定後、細胞をHoechst 33342で染色し、、アポトーシス細胞の数がカウントした。培地のみで培養した細胞において、ニューロンの23%がアポトーシス核を示した。グルタミン酸処理は、73%のアポトーシスを生じた(図16C)。10 nMのGLP-1(24%のアポトーシス細胞)又は0.3 μMのexendin-4(25%のアポトーシス細胞)のいずれかによる同時処理が、細胞死から完全に保護した(図16B)。GLP-1又はexendin-4単独での処理は、対照レベルのそれを越える、アポトーシス細胞(それぞれ20%と23%)のパーセンテージの少しの増加も引き起こさなかった。値は、6つの個々の実験の合併平均を表す。各々の処理条件の結果としてアポトーシスを経験した細胞のパーセンテージを、StatView統計ソフトウェア(Cary, NC)を使ってANOVAに供した。有意な主効果に続いて、処理、対、投与の帰納的な比較を、チューキーのHSD(Tukey’s Honestly Significant Difference)検定、合併ANOVA誤差項、及び自由度を使って得た。一元ANOVAは、各々の障害間の細胞死の程度の著しい有意差を証明し(F=35.31、df=5,36、p<0.001)、そしてチューキーのHSD検定(Tc=14.91及び18.165)を使った連続した多重比較が、グルタミン酸処理後のアポトーシス細胞のパーセンテージについての統計的に有意な増加を明らかにした(p<0.01、対照と比べて)。GLP-1又はexendin-4での培養物の同時処理は、グルタミン酸によって誘発した細胞死から有意に保護した(両方ともp<0.01、グルタミン酸のみと比べて)。同時グルタミン酸/ペプチド培養物と対照間の有意な差は存在せず、グルタミン酸の効果に対するニューロンの完璧な保護を証明した。
【0161】
動物及び外科的処理
各々約300gの体重がある35匹の生体雄フィッシャー-344ラットを、食物及び水を自由摂取できる、制御された明/暗、及び温度条件下で収容した。ラットを、ケタミン(90 mg/kg)とアセプロマジン(0.91 mg/kg)で麻酔をかけた。先に記載のとおり定位の手術が実行した。0.1 Mのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解したイボテン酸を、10 μg/μl(0.5 μl、2箇所)で、内側前脳束の左側支部に注入した;Paxinos & Watson(1998)によって大脳核と呼ばれた、参考文献を参照のこと。毒素のこの特定の一団の効能に関する先の試験的な調査が、この投与量が、皮質への突起の同程度の減少と共に、脳基底におけるコリン・アセチルトランスフェラーゼ(ChAT)陽性免疫反応性の60%減少を引き起こしたことを証明した。媒質の注入を受けた2番目のシリーズを、対照として使用した。各々の注入を、2.5分にわたり行い、そしてさらに2.5分がカニューレを引き抜く前の拡散のために与えられた。2週間後、動物を、再度麻酔し、脳室内カニューレを定位的に右側脳室に植え込んだ(AP=-0.8 mm、L=+1.4 mm、V=-4.0mm)。
【0162】
このカニューレを、カテーテルを介して浸透性ミニポンプ(ALZA Pharmaceutical, Mountain View, CA)に付けた。ポンプを、2×10-8 MのGLP-1、2×10-9 Mのexendin-4、又は媒質(人工脳脊髄液)で満たした。両ペプチドを媒質で希釈した。このポンプを、14日間0.25 μl/hを送り届けるように設定した(合計0.8 nM/kg/分で5.54 ngのGLP-1及び0.08 nM/kg/分で0.7 ngのexendin-4)。脳輸液キットを、挿入術の5〜6時間前に組み立て、そして37℃で滅菌生理食塩液中に放置した。ミニポンプを、肩甲骨の間の皮下ポケットに挿入し、傷を縫合し、そして動物を回復させた。GLP-1又はexendin-4の注入を受けた動物は、ペプチドのインシュリン分泌刺激性質の結果として緩やかに失語症(aphagic)及び無飲症(adipsic)となり、体重のわずかな低下をもたらした。
【0163】
これは、毎日2度の流体(0.9%の生理食塩液)と柔らかい食事の適用により3〜4日以内に回復し、屠殺のときまで、体重の群間差はなかった。ミニポンプ(14日)の終了時に、動物に0.1 mg/kgのペントバルビトン・ナトリウムで最後の麻酔をかけ、そして15〜20分間、100 mm水銀の一定の圧力で、100〜150 mlのPBS(pH 7.4)、その後250〜350 mlの、PBS中、4%のパラホルムアルデヒド溶液を心臓経由で灌流した。脳を、免疫細胞化学的評価、並びに病変によって誘発した損害及び前脳基底核のコリン作用性の分担に対するペプチド注入に関して得られた効果の全ての定量化のために採取した。
【0164】
免疫組織化学
隣接する前頭面に沿った脳切片を、病変部位を通して40 μmの厚さで得、そして処理したChATについて;1:100希釈のポリクローナル・ヤギ抗ChAT抗体(Chemicon、International Inc., Temecula, CA)を使って、及びグリア繊維酸性タンパク質(GFAP)について;1:750希釈のポリクローナル・ウサギ抗GFAP抗体(Chemicon)を使って、比較的自由に処理した。アビジン-ビオチン/セイヨウワサビペルオキシダーゼ・プロトコルを使って、陽性の免疫反応性の可視化を行った。さらに、一組の切片を、Geula and Mesulam, 1989によって、修飾された方法を使って前脳基底核のコリン作用性ニューロンについて細胞化学的マーカーとしてのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性について染色した。追加の一組の切片を、ゼラチン・コートされたスライド上へのせ、クレシル・バイオレットで染色して細胞体を可視化した。
【0165】
前脳部部分のChAT陽性免疫反応性細胞体を、×100の倍率下で可視化し、両側について手作業でカウントした。未加工のカウントを、この部分内の細胞体の総数の評価のためのAbercrombie(1946)の公式で補正した。イボテン酸病変の結果としての前脳基底核における細胞損失の特徴づけを、右(注入側)に対する左(病変側)カウント、及びパーセント変化として示されたデータの比較によって行われた。細胞のカウントを実験条件に外観的に導かないように動物の名前をコード化した。差異を、分散分析、及び先の通りチューキーのHSD検定を使って帰納的な比較に供した。有意性を、全ての統計分析についてp<0.05で受け入れた。
【0166】
イボテン酸で誘発されたコリン作用性マーカーの欠損
コリン・アセチルトランスフェラーゼ免疫反応性を、前脳基底核全体にわたるコリン作用性ニューロンのマーカーとして使用した。ChAT抗体は、類似したサイズとアセチルコリンエステラーゼ(AChE)陽性細胞への分布をもつ非常に多数の大きな多極ニューロンを染色した。免疫細胞化学的染色は、低いバックグラウンドをもち、かつ、細胞形態の明確な写真を提供した(図17)。媒質の連続注入を伴うイボテン酸の注入は、左大脳核の注射部位から約1 mm半径のChAT-免疫反応性ニューロンの大幅な(43%)損失をもたらした(図18、棒グラフ4)。媒質注入を受けたシャム手術対照群は、右大脳核に対する左大脳核のChAT陽性細胞体のパーセンテージの増加を示した(図18、棒グラフ1)。GLP-1又はexendin-4注入を受けたイボテン酸損傷動物は、媒質の注入を受けたそれらの損傷動物に対して左大脳核におけるChAT-免疫反応性細胞体の損失の減少をもたらした。より特に、exendin-4の注入は、媒質注入に続いて現れた43%から大脳核のそれのたった24%未満まで、左大脳核のChAT-免疫反応性細胞体の損失の減少をもたらした(図18、棒グラフ5)。さらに、GLP-1注入は、右大脳核のそれのたった6%未満まで左大脳核のChAT陽性免疫反応性細胞体の損失を減少させる、より多くの顕著な逆転を成し遂げた(図18、棒グラフ6)。標準ANOVAは、処理条件についての全体的な有意な効果を証明した(F=21.363、df=5,28、p<0.001)。ペプチド、対、媒質処理の多重比較(Tc=14.14及び19.71)は、イボテン酸による病変の後のexendin-4(p<0.05)、及びGLP-1(p<0.01)の注入を受けて左大脳核におけるChAT免疫反応性の有意な改善を明らかにした。イボテン酸による病変後のGLP-1注入であっても、右側とほぼ対等の値を実現するまで、左大脳核のChAT陽性細胞の損失を減少させ、全体的なパーセント差異は、シャム媒質群より有意に低いままであった(p<0.001)。媒質注入を受けたシャム群(sham group)のChAT-免疫反応性のかなりの増加のため、これは適当である(図18、棒グラフ1)。
【0167】
シャム媒質群(表6)に関して左と右のChAT陽性免疫反応性ニューロンのカウントを分けることは、左(586±32)と右(478±40)の大脳核ChAT-陽性細胞カウント(p<0.01)の間の有意差を明らかにした。カニューレ挿入術及び処理デリバリーからの圧力の影響は、右大脳核のChAT免疫反応性の見かけ上の減少の原因である。これらの観測は、組織完全性のあらゆる妨害が、緩やかであるか又は非特異的に、ChAT免疫反応性の機能性崩壊を引き起こしうることを示唆する。さらに、そのような効果が、媒質注入を受けたイボテン酸群におけるChAT陽性免疫反応性の予想したパーセント損失より低い原因である(図18、棒グラフ4)。群の「中」(すなわち、左対右)を比較するより、さらにこれを検査するために、群の「間」の比較を、シャムaCSFとイボテン酸aCSF群(それぞれ、586±32及び260±28)について右大脳核カウント(F=6.136、df=5,28、p<0.001;表6)を実施した。この群間比較は、ChAT免疫反応性の56%の損失を明らかにした。これらのデータは、右大脳核の非特異的な損傷が、比較を個々の実験群内で行った場合に全体的なパーセント損失に影響するChAT免疫反応性細胞体の数の減少を引き起こしたことを示す。さらに、右大脳核のChAT陽性細胞カウントを別々に分析したとき、群間の有意な違いがなく(F=0.512、df=5,28、p>0.05;表6)、組織完全性のそのような崩壊が等しく全ての実験群に影響したことを示唆した。
【表5】
【実施例13】
【0168】
実施例13.グルカゴン様ペプチド-1は、アミロイド-βペプチド(Aβ)産生を減少させ、かつ、Aβ及び鉄によって誘発された死からニューロンを保護する
Aβ1-42又はFe2+で誘発した細胞死に続くGLP-1及び/又はexendin-4の保護効果、並びにインビトロにおける、分泌型と細胞内型の間のβAPPプロセッシングに対するGLP-1、exendin-4、及びexendin-4WOTの効果、そして最終的に、対照マウスにおけるインビボでのAβペプチドのレベルを試験した。
【0169】
培養条件
他の箇所で記載のとおり、PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、及び25 mMのHepesバッファーを補ったRPMI 1640中で培養した(Labiri et. al., 2000)。全ての培地及び血清を、MediaTech Inc. (Herndon, VA)から入手した。細胞を、ラットの尾のコラーゲンでコートした培養器(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)に、約2.0×106細胞/60 mmで蒔いた。細胞が十分に接着するとすぐに、播種した24時間後に処理をトリプリケートで開始した。前記培地を吸引し、適当な化合物を伴った0.5%のFBSを含む、3 mlの新鮮な低血清培地を加えた。細胞を、GLP-1(3.3、33及び330 μg/ml)(Bachem, Torrence, CA)、及び2つのGLP-1アナログ、exendin-4(0.1、1.0及び10 μg/ml)及びexendin4-WOT(0.1及び1.0 μg/ml)で処理した。NGF(5、10、25及び50 ng/ml)(Promega, Madison, WI)によるPC12細胞の処理を、正の対照として使用した。さらに、5 ng/mlのNGFと0.1 μg/mlのexendin-4を、組み合わせて同時に加えた。Exendin-4及びそのアナログのexendin4-WOTを、合成し、そして高速液体クロマトグラフィー分析によって95%超純粋であると評価した。
【0170】
毒性分析
処理が誘発した細胞毒性を、処理及び未処理のPC12細胞由来の調整培地の両方で(Sigma, St.Louis, MO製のLDHキットを使って)分泌された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの分析によって検査した。予想どおり、LDHレベルは、薬物処理の開始時点で採取した培地標準に対して上昇した(図19A)。分散分析は、LDH分泌に対する処理の全体的な有意な効果を証明した(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。チューキーのHSD検定(Tc=0.42,及び0.51)を使った対照との帰納的な連続した多重比較が、10 μg/mlのEx4処理に続くLDH分泌の単一の有意な増加を明らかにした(1.65倍上昇;p<0.01)。使用した投与量及び時点での、GLP-1及びアナログでの処理の結果としての毒性の可能性は;10 μg/mlのexendin-4を除いて、外されうる。これは、合計細胞数で全く有意な変化を証明しなかったGLP-1処理前後に実行した(トリパンブルーによる染色後の)細胞カウントによってさらに実証された。
【0171】
ウエスタン分析
3日間の処理に続いて、未処理(低血清培地のみ)及び処理PC12細胞由来の調整培地及び(前記のとおり調製された)細胞ライセートを、モノクローナル抗体、22C11(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を使ったウエスタン免疫ブロット分析に供した。そのエピトープ部位が外形質のシステイン含有ドメイン内の第66〜81残基に割り当てられたE.コリ(E.coli)産生βAPPに対して産生された抗体は、細胞膜で見出されるβAPPの全ての成熟型、及び調整培地中に分泌されるカルボキシル切り詰め可溶性型及びβAPP様タンパク質(APLP)を認識する。免疫反応産物の可視化を、化学発光によって行い、ゆえに分子量マーカーは写真用フィルム上で見えなかった。PVDF膜上に目に見える標準分子量マーカーを重ねることによって発光性の産物の分子量の特定を達成した。NIHイメージを使ってタンパク質バンドの濃度測定による定量化を実施した。
【0172】
処理又は未処理細胞由来の細胞ライセートのウエスタン免疫ブロットは、成熟したβAPP(βAPP695-βAPP770)の異なるイソフォーム及び/又はそれらの翻訳後修飾された誘導体を表すであろう、複数のより高分子量タンパク質バンド(100〜140 kDa)を明らかにした。分泌されたAPPを、α-又はβ-セクレターゼによって産み出されたβAPP誘導体を表すであろう、110〜120 kDaのタンパク質バンドとして処理及び未処理細胞由来の調整培地中に検出された。細胞内タンパク質のイムノブロットにおける免疫反応性バンドの特徴で観察されている差異は、同じブロットにおける(ヒトβ-アクチンのカルボキシル末端の特定の部位に対して産生されたポリクローナルβ-アクチン抗体;Santa Cruz Biotechnology, CAを使った)同等のβ-アクチン免疫反応性染色によって証明されるとおり、ゲル内のタンパク質の不均一な添加のためでも、膜上へのタンパク質の移行のむらがあるためでもない。可視反応産物を、ビオチン化二次抗体を使ってPVDF膜上に直接産生した。これにより、標準分子量マーカーが目視でき、42 kDaの単一のタンパク質バンドとしてβ-アクチンを確認した。等量の総タンパク質を、ゲルの各々のレーンに添加し、5%の酢酸中、0.1%のPonceauSにより膜を染色することによって電気泳動トランスファーの効率を観察した。
【0173】
βAPP及びsAPPブロットの濃度測定による定量化を、それぞれ図19B及びCに示す。定量化βAPPレベル(上の2個の高分子量バンド)の一元ANOVAは、処理の全体的な有意な効果を証明した(F=2.24;df=11,34;p<0.001)。対照との多重比較を、チューキーのHSD検定(Tc=47.0及び55.75)を使って行ない、両投与量;5 ng/ml(図19B、棒グラフ1;p<0.01)及び10 ng/ml(図19B、棒グラフ2;p<0.01)のNGFでの処理に続くβAPPの細胞内レベルの増加を明らかにした。NGFとは対照的に、GLP-1及びアナログは、βAPPの細胞内レベルを大幅に減少させた(図19B);10 ng/mlのEx4、棒グラフ5(p<0.01)、1.0 ng/mlのEx4-WOT、棒グラフ10(p<0.01)、3.3 ng/mlのGLP-1、棒グラフ11(p<0.01)、33 μg/mlのGLP-1、棒グラフ12(p<0.05)、及び330 ng/mlのGLP-1、棒グラフ13(p<0.01)。5 ng/mlのNGFと0.1 ng/mlのEx4の組み合わせ処理は、未処理細胞に対して細胞内βAPPレベルを大幅に増加させた(図19B、棒グラフ6;p<0.01)。
【0174】
調整培地中に検出されたβAPPタンパク質の定量化された分泌可溶性誘導体の分析は、処理の全体的な有意な効果を明らかにした(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。連続した多重比較(Tc=20.11及び23.91)は、両投与量のNGF処理がsAPPの有意な増加をもたらすことを明らかにした(5 ng/mlと10 ng/ml(両方p<0.01);図19C、棒グラフ1-2)。細胞内βAPPに類似したパターンに続く、全ての投与量のGLP-1(3.3 μg/ml(p>0.05)、33 μg/ml(p<0.01)及び330 μg/ml(p<0.01);図19C、棒グラフ9-11)、Ex4(0.1 μg/ml、1.0 μg/ml及び10 μg/ml(全てp<0.01);図19C、棒グラフ3-5)、並びにEx4-WOT(0.1 μg/ml及び1.0 μg/ml(両方p<0.01);図19C、棒グラフ7-8)が調整培地中のsAPPの検出可能なレベルの減少を引き起こした。NGFとEx4の組み合わせ処理は、対照細胞のそれからの、sAPPレベルのあらゆる有意な変化を引き起こすことはなかった(図19C、棒グラフ6)。
【0175】
GLP-1処理に続くβAPPレベルの低下が分泌Aβ1-40レベルの低下を推定させることができるかどうか調査するために、調整培地サンプルをAβ1-40についてアッセイした。我々は、先にPC12細胞におけるAβ1-42の非常に低い基礎分泌レベルを証明し、そして一般に検出可能な処理の誘発した効果は有意性に至らない。さらに、が分泌した主なAβペプチドは、Aβ1-40であり、そして神経芽細胞腫細胞を使った類似した研究で(Lahiri et. al., 1998)、Aβ1-40レベルがAβ1-42に対する効果を反映し、Aβ1-42の特異的な変化を捜す必要をなくしていた。定量化されたAβ1-40レベルを、一元ANOVAに供し、処理の全体的な有意な効果を説明した(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。チューキーのHSD検定(Tc=69.91及び83.13)を使った多重比較が、NGFのみの(両方p<0.01)又はexendin-4との組み合わせでの(p<0.01)処理に続くAβ1-40レベルの有意な増加を明らかにした。GLP-1、exendin-4、又はexendin-4 WOTのみの処理は、対照細胞のそれからAβ1-40産生レベルを大幅に変えなかった。
【0176】
正常な対照マウスにおけるGLP-1、exendin-4、NGF、又は媒質の脳室を経由した注入に続くAβ1-40レベルについて、脳全体のホモジェネートをアッセイした。動物を、食物と水を自由摂取可能な、明/暗及び温度条件の管理下に収容した。痩せたdb+/db+対照雄マウス(n=24)を、50 mg/kgペントバルビトンで麻酔し、側頭骨カップホルダーを使ったマウス・アダプターをもつ定位の外科フレーム(David Kopf Instruments, Tujunga, CA)に置いた。GLP-1(3.3 μg;n=3及び6.6 μg;n=4)、exendin-4(0.2 μg;n=3)、NGF(2 μg;n=5)又は媒質(人工脳脊髄液;n=9)を、4分間にわたり0.25 μl/mlで両側の側脳室内に注入した(AP=-0.2 mm、L=±1.0mm、V=-2.5 mm)。カニューレが引き抜く前に、追加の4分間で拡散させ、動物を縫合し、そして回復させた。48時間後に、全ての動物を、頸部脱臼によって屠殺し、脳を取り出し、そして液体窒素中で急冷した。脳を粉砕し、Aβについてアッセイする前に-80℃で保存した。
【0177】
Aβ分析
サンドイッチELISAを使って等量の調整培地及び脳全体のホモジェネートを、Aβ1-40についてアッセイした(Suzuki et. al., 1994)。モノクローナル抗体BAN50(Aβ1-16に対して産生された)を全ての種類のAβ(Aβ1-40とAβ1-42)のための捕獲抗体として使用し、モノクローナル抗体BA27を、Aβ1-40レベルの特異的な検出のために使用した。アッセイと並行して行なわれた適当な標準曲線から推論されるように、Aβ1-40のレベルを、調整培地サンプルに関するpM濃度で、そしてマウス脳ホモジェネートに関してfmol/gで表した。
【0178】
全ての処理が、媒質と比べてAβ1-40のレベルを減少させた(図20)。処理の有意な主な効果に続く多重比較(F=10.577、df=4,19、p<0.001)が、Aβ1-40レベルが6.6 μgのGLP-1(36%、p<0.01)及び2 μgのNGF(40%、p<0.01)処理に続いて減少させたことを証明した。全ての他の比較は、有意性に至らなかった;3.3 μgのGLP-1(16%)、0.2 μgのexendin-4(23%)(Tc=139.00及び172.34、独特な群サイズに関する調和平均補正を使った)。
【0179】
初代海馬細胞培養
海馬を発生初期18日目のSprague-Dawleyラットから取り出し、細胞を軽いトリプシン処理及び粉砕によって分離し、そして約150細胞/mm2培養面積の密度で、ポリエチレンイミンによって表面をコートしたプラスチック製の直径35 mmの皿上に播種した。培養物を、37℃で、6%のCO2/94%の大気雰囲気中、B-27サプリメン(GibcoBRL ,Carlsbad, CA)、2 mMのL-グルタミン、1 mMのHepes、及び0.001%の硫酸ゲンタマイシン(Sigma, St.Louis, MO)を含むNeurobasal培地中で維持した。これらの条件下で維持されるとき、ニューロン抗原NeuN及び神経膠星状細胞タンパク質グリア繊維酸性タンパク質に対する抗体で免疫染色することによって測定されるように、この海馬培養物は、約95%のニューロンと5%の神経膠星状細胞から成る。Aβ1-42を、Bachem(Torrance, CA)から購入し、滅菌水中に1 mMの原液として調製した。FeSO4を、滅菌水中に200 μMの原液として調製した。GLP-1及びexendin-4を、生理食塩液中に500×の原液として調製した。
【0180】
先に記載のとおり、ニューロンの生存を定量化した(Mark et. al., 1997)。要するに、前もって指示された領域(10×対物レンズ)中の生存ニューロンを、実験的な処理の前、及びその後の所定の時点でカウントした。海馬ニューロンを、GLP-1(0、1、5、10及び20 nM)又はexendin-4(0、50、100、200及び500 nM)によって2時間前処理した。次に、培養物を、2 μMのAβ1-42又は1 μMのFe2+に24時間晒した。均一な直径の無傷な神経突起をもつニューロンと、滑らかな丸い外観をもつ細胞体を、生細胞とみなし、それに対し断片化された神経突起をもつニューロンと、空胞化した細胞体を死細胞とみなした。カウントは、培養物の処理歴の知識なしに行った。
【0181】
Aβ1-42又は鉄(ヒドロキシルラジカル産生と膜脂質過酸化を誘発する)への培養海馬細胞の暴露は、24時間の間のニューロンの55〜75%の死をもたらした。GLP-1又はexendin-4がAβ1-42及び/又はFe2+によって誘発された細胞死からニューロンを保護することができるかを判断するために、高濃度のGLP-1及びexendin-4で細胞を前処理し、そしてAβ1-42又はFe2+に晒した。GLP-1は、Aβ1-42及びFe2+によって誘発された死からニューロンを保護し、最大の効果は10 nMのGLP-1で生じた。同様に、Exendin-4は、Aβ1-42及びFe2+によって誘発された死からニューロンを保護したが、しかし作用は弱く、最大の効果は200 nMのexendin-4で生じた。
【0182】
本願出願全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示の全体を、本願発明に関する最先端のものをより完全に記載するために本願出願中に援用する。
【0183】
本発明の範囲又は本質から逸脱することなく様々な修飾及び変異が本発明によって作製されうることは、当業者にとって明白である。本発明の他の態様は、当業者にとって明細書の考慮及び本明細書中に開示された本発明の実施から明白である。前記明細書及び実施例は典型としてのみ考慮されることを意図し、真の本発明の範囲及び本質は請求項によって示される。
【0184】
【化1】
【0185】
【化2】
【0186】
【化3】
【0187】
【化4】
【0188】
【化5】
【0189】
この明細書に組み入れられ、かつ、その一部を構成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を説明し、そして記載と一緒に本発明の原理を明らかにする役割をもつ。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、糖尿病や神経変性疾患の治療薬の製造等の分野に利用できる。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
当該出願は、2001年7月31日に出願された米国特許出願番号第60/309,076号に対して優先権を主張する。
【0002】
本願発明は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、exendin-4、及びそれらのペプチド・アナログに広く関する。本発明は、糖尿病及び神経変性症状の治療におけるそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
膵臓のベータ細胞機能不全及び付随するインシュリン産生の減少は、糖尿病をもたらす恐れがある。1型糖尿病において、ベータ細胞は、免疫系によって完全に破壊され、インシュリン産生細胞の欠如をもたらす(インシュリン依存型[1型]糖尿病に対する内科医のガイド:Diagnosis and Treatment, American Diabetes Association, 1988(非特許文献1))。2型糖尿病において、ターゲット組織がグルコース摂取においてインシュリンの効果に抵抗性をもつようになると、ベータ細胞が徐々に能率的でなくなる。よって、ベータ細胞は、1型糖尿病の人々において不存在であり、そして2型糖尿病の人々において機能的に十分な機能を果たしていない。
【0004】
現在、ベータ細胞機能不全は、いくつかのの異なる方法で治療される。1型糖尿病又は末期の2型糖尿病は、インシュリン補充療法が必要である。たとえ連続的な注入又は複数の注射が複雑な投薬計画で使用されたとしても、インスリン療法、あるいは救命療法は、正常血糖を回復させない。例えば、インシュリン補充療法を受けている個人において、食後のグルコース・レベルは、非常に高いままである。よって、インスリン療法は、複数の毎日の注射又は連続的な注入によってなされなければならなくて、かつ、その効果は、高血糖、低血糖、代謝性アシドーシス、及びケトーシスを避けるために慎重に監視されなければならない。
【0005】
2型糖尿病の人々は、ベータ細胞からのインシュリン産生及び分泌を刺激する、及び/又はインシュリン感受性を改善する薬物を用いて一般に治療される。しかし、これらの薬の主な問題点は、インシュリン産生及び分泌が血糖値にかかわらず促進されることである。よって、食物摂取は低血糖又は高血糖を避けるために、インシュリン産生及び分泌の促進に対して釣り合わせなければならない。ここ数年で、いくつかの新しい薬剤が2型糖尿病の治療に利用可能になった。これらは、メトフォルミン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン、及びアクラボス(Bressler and Johnson, 1997(非特許文献2)を参照のこと)を含んでいる。しかし、これらの新しい薬剤によって得られたヘモグロビンA1cの低下は、あまり十分ではなく、それらが糖尿病の長期のコントロールを改善しないことを示唆している(Ghazzi et al., 1997(非特許文献3))。
【0006】
食物に応答して腸神経内分泌細胞によって通常分泌されているホルモンである、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)が、2型糖尿病の新しい治療として提案された(Gutniak et al., 1992(非特許文献4); Nauck et al., J. Clin. Invest., 1993(非特許文献5))。それは、長年の2型糖尿病の患者であっても、ベータ細胞によるインシュリン分泌分泌を増加させる(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6))。GLP-1が内性インシュリン分泌を刺激し、それが血糖値が下がったときに止まるので、GLP-1治療は、インスリン療法を上回る利点がある(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6); Elahi et al., 1994(非特許文献7))。GLP-1は、インシュリンの分泌及び合成を増加させることによって正常血糖を促進するので、グルカゴン分泌を抑え、そして胃内容排出を減少させる(Nauck et al., Diabetologia, 1993(非特許文献6); Elahi et al., 1994(非特許文献7); Wills et al., 1996(非特許文献8); Nathan et al., 1992(非特許文献9); De Ore et al., 1997(非特許文献10))。GLP-1は、ヘキソキナー・mRNAレベルの増加をも誘発する(Wang et al., Endocrinology 1995(非特許文献11); Wang et al., 1996(非特許文献12))。
【0007】
GLP-1は、ベータ細胞においてインシュリン分泌効果をもつこと(Thorens and Waeber, 1993(非特許文献13); Orskov, 1992(非特許文献14))、及びインシュリン分泌細胞系に加えられて24時間、インシュリン生合成及びプロインシュリン遺伝子発現を増加させることが知られている(Dracker et al., 1987(非特許文献15); Fehmann and Habener, 1992(非特許文献16))。RIN1046-38細胞を使った研究において、GLP-1による24時間の処理が、GLP-1が取り除かれた後1時間、及びこの細胞の数回の洗浄後でさえ、グルコース反応性を増加させた(Montrose-Rafizadeh et al., 1994(非特許文献17))。よって、GLP-1は、系から代謝された後でもβ細胞に対する生物学的な効果をもつことが知られているインシュリン分泌刺激剤である。GLP-1は、プログルカゴンの転写後修飾の産物である。GLP-1の配列、並びにその活性断片GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)アミドが当該技術分野で知られている(Fehmann et al., 1995(非特許文献18))。GLP-1は、糖尿病の治療における治療薬として提案されたが、それは、たとえ皮下にボーラスによって与えられるとしても(Ritzel et al., 1995(非特許文献19))、短い生物学的半減期をもつ(De Ore et al., 1997(非特許文献10))。1つは、GLP-1(及びGLP-1(7-36)アミド)の分解は、第8アミノ酸と第9アミノ酸(アラニンとグルタミン酸)の間でポリペプチドを切断する酵素ジペプチジル・ペプチダーゼ(DPP1V)によってである。
【0008】
exendin-4は、アメリカ・ドクトカゲトカゲの唾液腺で産生されるポリペプチドである(Goke et al., 1993(非特許文献20))。exendin-4のアミノ酸配列は、当該技術分野で知られている(Fehmannet al., 1995(非特許文献18))。それが特殊な非哺乳類の遺伝子の産物であり、かつ、唾液腺だけで発現されると思われたが(Chen and Drucker, 1997(非特許文献21))、exendin-4は、GLP-1と52%のアミノ酸配列相同性をもち、そして哺乳動物においてGLP-1受容体と相互作用する(Goke et al., 1993(非特許文献20); Thorens et al., 1993(非特許文献22))。インビトロにおいて、インシュリン産生細胞によるインシュリン分泌を促進すし、そして等モルの分量で与えられると、exendin-4は、GLP-1より強力にインシュリン産生細胞からのインシュリン放出を引き起こすことが示された。さらに、exendin-4が、齧歯動物及びヒトの両方で、強力にインシュリン分泌を促進して血漿グルコース・レベルを下げ、そしてそれがGLP-1より長く作用する。しかし、通常哺乳動物において生じないので、Exendin-4は、GLP-1を欠く哺乳動物において潜在的な抗原特性を必ずもっている。
【0009】
糖尿病で生じるインシュリン産生の減少に加えて、末梢神経障害が、糖尿病に一般に関係する。全糖尿病患者の20〜30パーセントが、いつかは末梢神経障害を患う。さらに、心臓病、脳卒中、高血圧症、及び糖尿病によるアルツハイマー症の高い危険性が報告されている(Moceri et al., 2000(非特許文献23); Ott et al., 1999(非特許文献24))。よって、糖尿病は神経変性疾患に関係する病気でもある。
【0010】
多数の研究が、GLP-1受容体が、齧歯動物(Jin et al., 1988(非特許文献25)、Shughrue et al., 1996(非特許文献26))及びヒト(Wei and Mojsov 1995(非特許文献27)、Satoh et al., 2000(非特許文献28))の両方の脳にあることを証明した。分布の化学的構成(chemoarchitecture)は、視床下部、視床、脳幹、外側中隔、脳弓下器官、及び最後野であり、一般にたくさんのペプチド受容体が配置されている全ての脳室周囲区域に大部分は限られているように思われる。しかし、GLP-1のための特定の結合部位は、低密度ではあるが、被殻-尾状核、皮質、及び小脳の全体にわたって検出された(Campos et al. 1994(非特許文献29), Calvo et al. 1995(非特許文献30), Goke et al. 1995(非特許文献20))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Diagnosis and Treatment, American Diabetes Association, 1988
【非特許文献2】Bressler and Johnson, Arch. Int. Med. 157: 836-848, 1997
【非特許文献3】Ghazzi et al., Diabetes 46: 433-439, 1997
【非特許文献4】Gutniak et al., N. Engl. J. Med. 326: 1316-1322, 1992
【非特許文献5】Nauck et al., J. Clin. Invest., 91: 301-307, 1993
【非特許文献6】Nauck et al., Diabetologia, 36:741―744,1993
【非特許文献7】Elahi et al., Regul. Pep. 51: 63-74, 1994
【非特許文献8】Wills et al., J. Clin. Endocrinol. Metab. 81: 327-332, 1996
【非特許文献9】Nathan et al., Diabetes Care 15: 270-276, 1992
【非特許文献10】De Ore et al., J. Gerontol. 52: B245-249, 1997
【非特許文献11】Wang et al., Endocrinology 136: 4910-4917, 1995
【非特許文献12】Wang et al., Moll. Cell. Endo. 116: 81-87, 1996
【非特許文献13】Thorens and Waeber, Diabetes 42: 1219-1225, 1993
【非特許文献14】Orskov, Diabetologia 35: 701-711, 1992
【非特許文献15】Dracker et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 84: 3434-3438, 1987
【非特許文献16】Fehmann and Habener, Endocrinology 130: 159-166, 1992
【非特許文献17】Montrose-Rafizadeh et al., Endocrinology 135: 589-594, 1994
【非特許文献18】Fehmann et al., Endocrine Rev. 16: 390-410, 1995
【非特許文献19】Ritzel et al., Diabetologia 38: 720-725, 1995
【非特許文献20】Goke et al., Diabetes 46: 433-439, 1993
【非特許文献21】Chen and Drucker, J. Biol. Chem. 272: 1408-4115, 1997
【非特許文献22】Thorens et al., Diabetes 42: 1678-1682, 1993
【非特許文献23】Moceri et al., Neurology 54: 415-420, 2000
【非特許文献24】Ott et al., Neurology 53: 1937-1942, 1999
【非特許文献25】Jin et al., J. Comp. Neurol. 271: 519-532, 1988
【非特許文献26】Shughrue et al., Endocrin. 137(11): 5159-5162, 1996
【非特許文献27】Wei and Mojsov FEBS Lett. 358(3): 219-224, 1995
【非特許文献28】Satoh et al., Endocrinology 141: 1301-1309, 2000
【非特許文献29】Campos et al. Endocrinology 134: 2156-2164, 1994
【非特許文献30】Calvo et al. J. Neurochem. 64(1): 299-306, 1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
当該技術分野で必要とされているのは、糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療において治療的に価値のあるポリペプチドである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の概要
本願発明の目的に従って、本明細書中に含まれ、かつ、全体的に記載されているとおり、1の側面において、本願発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。好ましい態様において、前記ポリペプチドは、インシュリン分泌刺激性及び長期作用性である。好ましくは、前記ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等モル量のGLP-1又はexendin-4の効果に匹敵するか又はそれを超える。
【0014】
本発明は、さらに、精製されたポリペプチド、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25又は配列番号33を含むアミノ酸配列に関する。
【0015】
他の側面において、本発明は、糖尿病の患者の治療方法であって、インシュリン分泌刺激効果がある量で本発明のポリペプチドを上記患者に投与することを含む方法に関する。
【0016】
本発明のさらなる利点は、以下の記載によりある程度説明され、そしてある程度記載から明らかであるか、又は本発明の実施によって確認されうる。本発明の利点は、特に添付の請求項で指摘された要素及び組み合わせによって実現及び達成される。先の概要及び以下の詳細な説明は共に、請求される本発明の単なる典型及び解説であり、本発明を制限するものではないことは、理解されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。前記ポリペプチドは、インシュリン分泌刺激性及び長期作用性である。好ましくは、前記ポリペプチドのインシュリン分泌刺激効果は、等モル量のGLP-1又はexendin-4の効果に匹敵するか又はそれを超える。したがって、本発明は、糖尿病の治療及び神経障害、例えばアルツハイマー病及びパーキンソン病の治療、並びに2型糖尿病に関連した末梢神経障害の治療において治療的に価値のあるポリペプチドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1−1】それらのインシュリン分泌刺激性質について試験した35の合成ポリペプチドについての配列、並びにGLP-1及びEx-4についての配列を示す。暗い陰影は、exendin-4に似た残基を示して、明るい陰影は、GLP-1に似た残基を示す。
【図1−2】図1-1の続きである。
【図1−3】図1-1の続きである。
【図2】GLP-1、exendin-4、及び図1に規定した合成ポリペプチドの存在下、RIN1048-36細胞におけるインシュリン分泌の比較を示す。レベルを、基礎レベルのパーセンテージとして表す。
【図3】グルコース(5mM)の存在下、そして10 nMのGLP-1(配列番号1)、GLP-1 Gly8(ペプチド1;配列番号3)、GLP-1 6-アミノヘキサン酸8(ペプチド11;配列番号8)、GLP-1(6-アミノヘキサン酸9)4(ペプチド25;配列番号22)、GLP-1(6-アミノヘキサン酸9)8(ペプチド26;配列番号23)又はカルボキシ末端から3、5、7、12、21、及び全てのD-アミノ酸を含むGLP-1の6つのアナログの存在又は不存在下のRIN1048-38細胞におけるインシュリン分泌の比較を示す。データは、2〜3の実験の平均±SEMを表す。処理、対、基礎について**p<0.001、*p<0.05である。レベルは、インシュリンのpg/タンパク質のμgで表す。同様に、基礎分泌も示される。
【図4】細胞内cAMPの産生におけるGLP-1アナログの効果を示す。CHO/GLP-1R細胞は、37℃にて30分間指示されたポリペプチド(10 nm)と一緒にインキュベートされ、その後にそれらは溶解され、そしてこのライセートがcAMP含量の定量のために処理された。データは、GLP-1(10 nm)の存在下で得られた最大値に標準化される。データポイントは、2〜3の実験の平均を表す。治療、対、基礎について**p<0.001、*p<0.05である。
【図5】GLP-1、GLP-1 Gly8(配列番号3)、及びGLP-1 6-アミノヘキサン酸8(配列番号8)に関する用量反応曲線を示す。細胞内cAMPレベルが、指示された濃度の GLP-1、GLP-1 Gly8、GLP-1 6-アミノヘキサン酸8により37℃で30分間処理された後のCHO/GLP-1R細胞において計測された。データは、GLP-1(10 nM)の存在下、各々の実験で得られた最大値に対して標準化された。バーは、トリプリケートで実施された3つの実験の±SEMを表す。
【図6】CHO/GLP-1R細胞に結合している[125I]-GLP-1の、GLP-1・アナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]-GLP-1を、様々な濃度の前記ポリペプチドと競合させた。データは、10 nMのそれぞれのポリペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、平均+トリプリケートで実施された3つの実験の±SEMを表す。
【図7】等モル濃度のexendin-4及びGLP-1と比較した場合の、絶食中の糖尿ズッカーラットにおいて、インシュリン分泌を誘発する、0.4 nmol/kgのポリペプチドEx-4WOT(配列番号7)及びGLP-1Gly8(配列番号3)の急性インシュリン分泌活性を示す。
【図8】等モルの濃度のexendin-4及びGLP-1と比較した場合の、最大24時間の絶食させた糖尿病ズッカーラットにおける、0.4 nmol/kgのポリペプチド10(Ex-4WOT(配列番号7))、ポリペプチド1(GLP-1Gly8(配列番号3))、及びポリペプチド11(GLP-1 6-アミノヘキサン酸8(配列番号8))のインシュリン分泌活性のタイムコースを示す。
【図9】GLP-1Gly8(配列番号3)及びGLP-1 6-アミノヘキサン酸酸8(配列番号8)の生物学的な効果を示す。図9Aは、ウィスター及びズッカー肥満ラットへのGLP-1 6-アミノヘキサン酸8(24 nmol/kg)を、そしてズッカーラットだけへのGLP-1Gly8(24nmol/kg)の皮下注射後の、血糖値に対する効果を示し、そして図9Bは、上記の後のインシュリン・レベルへの効果を示す。ズッカー及びウィスターラットの両者は、注射前の一晩絶食させた。結果は、平均±SEM、1群あたりn=6。
【図10A】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図10B】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図10C】CHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1の、GLP-1、GLP-1Gly8、及びEx-4のアナログによる置き換えを示す。完全なCHO/GLP-1R細胞に結合した[125I]GLP-1を、様々な濃度の前記ペプチドと競合させた。図10A、B、及びCの各々は、異なるペプチドに関するデータを示す。データは、10 nMのそれぞれのペプチドの存在下で得られた最大値に対して標準化される。データポイントは、トリプリケートで実施した3つの実験の平均を表す。B0は、非放射性ペプチドの不存在下で最大の結合である。
【図11】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理されたPC12細胞から抽出されたタンパク質の濃度測定による定量化を示す。細胞ライセート及び調整培地サンプルから得られたタンパク質バンドは、22C11モノクローナル抗体(エピトープ:βAPP aa66-81、Roche, Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を用いたウェスタンブロッティングによって分析され、そして免疫プローブされた。データは、細胞ライセート・サンプル(A及びB)由来のβAPP誘導体、及び処理3日目に採集されたの調整培地サンプル(C及びD)由来の可溶性sAPPの、低血清培地のみで培養した未処理の対照サンプルと比較した、発現のパーセント変化として表される。垂直なエラーバーは、3つの別個の実験値の±標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図12】PC12細胞における神経突起増殖に対する異なる濃度のNGF及び/又はexendin-4処理の効果を示す。神経突起増殖は、未処理(低血清培地)のものと比較して、神経突起をもつ細胞数の増加パーセントで表される。垂直なエラーバーは、6つの別個の実験値の平均間の差異についての±標準誤差である。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図13】NGF介在細胞死に対するexendin-4処理の効果を示す。複合処理が、exendin-4(1又は5 ng/ml)の存在又不存在下、そして50 ng/mlのNGFの存在又は不存在下、合計7日間実施された。その後細胞を採集し、そしてさらに3日間完全培地中で回復させた。10日目に、細胞の生存が、(MTT法による)生菌の割合として示される。垂直なエラーバーは、4つの別個の実験値の±標準誤差を表す。
【図14】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、GLP-1処理PC12細胞から抽出されたシナプトフィジン・タンパク質の濃度測定による定量化を示す。細胞ライセート・サンプルから得られたタンパク質バンドは、神経分泌小胞を染色するシナプトフィジン・モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロッティングによって分析され、そして免疫プローブされた。それは。シナプトフィジンは、分化のマーカーとして使われた。シナプトフィジン・タンパク質の濃度は、未処理のものからの差異のパーセントとして示される。垂直なエラーバーは、別々の時間間隔で行われた3つの個々の実験値の±標準誤差である。未処理からの有意差:**p<0.01。
【図15】NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理後のPC12細胞の調整培地中の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの倍増を示す。LDHレベルは、高いレベルほど細胞の完全性の損失に関係している細胞生存のマーカーである。垂直なエラーバーは、別々の時間間隔で行われた3つの別個の実験値の平均間の差異の±標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図16】培養された海馬ニューロンにおける、非放射性GLP-1による125I-GLP-1結合の置き換え(A)、GLP-1刺激されたcAMP放出(B)、及びグルタミン酸によって誘発されたアポトーシスに対する保護(C)を示す。完全な培養海馬ニューロンに結合した125I-GLP-1を、様々な濃度GLP-1と競合させた。データは、1 μMのGLP-1の存在下で得られた最大値に対して標準化される。各々のデータポイントは、2つの実験値の平均を表し、それは、非放射性ペプチドの不存在下の最大結合に対するパーセンテージとして示される。cAMPレベルは、10 nMのGLP-1との、30分間のインキュベーションにわたってアッセイされた(B)。垂直なエラーバーは、3つの個々の実験値の平均の±標準誤差を表す。10 nMのGLP-1又は0.3 μMのexendin-4による処理が、10 μMのグルタミン酸のアポトーシス効果から完全に保護した(C)。培養物は、一晩処理されて、4%のパラホルムアルデヒドで固定され、そしてHoechst33342を用いて染色された。アポトーシス核の数を、数えて、そしてこの値は、1つの処理条件につき6枚の別個の皿の合併平均として示される。垂直なエラーバーは、平均間の差異の±標準誤差である。対照からの有意差:*p<0.05、**p<0.01、及び***p<0.001。
【図17】大脳核におけるコリン・アセチルトランスフェラーゼ及びグリア繊維性酸性タンパク質免疫反応性を示す。部分的なイボテン酸病変に対して、同側性の(AとC)、及び対側性の(BとD)ChAT-陽性免疫反応性。パネルAとB、そしてCとDは、それぞれ、媒質注入、及びGLP-1注入を受けた個々の動物からの左、及び左の大脳核を描写する。媒質注入(A)を受けた動物の同側大脳核のChAT-陽性免疫反応性は、GLP-1注入を受けた動物の同側大脳核のそれより実質的に低かった(C)。損傷に応答して産生された神経膠星状細胞の反応に関するマーカーであるグリア繊維性酸性タンパク質(GFAP)免疫反応性は、カニューレ挿入部位を囲んでいる、及び注入部位の周辺の側脳室を裏打ちする陽性免疫反応性の区域を説明した。興味深いことには、GLP-1の注入が、病変(E)の結果として明らかであるもの又は媒質注入後のものより、注入側(F)の大脳核において高いグリア反応を引き起こした。
【図18】媒質(人工CSF:aCSF)、exendin-4又はGLP-1の脳室内(i.c.v.)注入受けた、シャム注射及びイボテン酸動物における、完全な対側の大脳核と関係がある同側の大脳核(病変側)のChAT-免疫反応性細胞体のAbercrombie補正された数の差異のパーセンテージを示す。垂直エラーバーは、平均間の差異の標準誤差を表す。イボテン酸媒質群からの有意差;*p<0.05、及び**p<0.01。
【図19】GLP-1及びアナログによるPC12細胞の処理が、細胞の機能不全なしにβAPP及びsAPPタンパク質レベルを顕著に減少させたことを示す。NGF、exendin-4、exendin-4WOT、及びGLP-1処理は、培地標準と比べて、調整培地サンプルからのLDHレベルの測定によって測定される細胞の機能不全と関係しなかった(パネルA)。免疫プローブしたタンパク質の濃度測定による定量化は、低血清培地のみで培養された未処理対照サンプルに対する、細胞ライセート・サンプルからのβAPP誘導体の(パネルB)、及び処理の3日目に採集した調整培地サンプルからの可溶性sAPP(パネルC)の発現の平均パーセント変化として提供される。X軸に沿って説明される条件は、パネルA、B及びCに共通である。垂直なエラーバーは、3つの別個の実験値の標準誤差を表す。未処理からの有意差:*p<0.05、及び**p<0.01。
【図20】GLP-1処理が、対照マウスにおける内性Aβ1-40レベルを顕著に減らしたことを示す。対照マウスは、GLP-1(3.3 μgと6.6 μg)、exendin-4(0.2 μg)、NGF(2 μg)及び対照(媒質)をi.c.v.注入された。全脳ホモジェネートの生化学分析が、Aβ1-40についてのサンドイッチELISAによって行われた。Aβ値は、処理及び未処理動物からのfmol/g±SEMで平均Aβ濃度として表されてる。対照からの有意差:**p<0.01。
【図21】Ex-4及びGLP-1Gly8アナログのいくつかについての用量反応曲線を示す。細胞内cAMPレベルが、指示された濃度のペプチドにより37℃で30分間処理した後のRin1046-38細胞において計測された。このデータは、各々のペプチドについて各々の実験で得られた最大値に対して標準化される。
【図22A】血糖値に対するペプチドの急性の生物学的な効果を示す。Ex(1-36)(円)及びEX(1-35)(四角)による結果が、図22Aに示され、そして追加のペプチドによる結果が、図22Bに示される。血糖値及びインシュリン・レベルが、ズッカーラットへの10 nmol/kgの各々のペプチドのsc注射後に測定された。結果は、平均±SEMである(図22Aについてn=4/群、及び図22Bについてn=3)。
【図22B】血糖値に対するペプチドの急性の生物学的な効果を示す。Ex(1-36)(円)及びEX(1-35)(四角)による結果が、図22Aに示され、そして追加のペプチドによる結果が、図22Bに示される。血糖値及びインシュリン・レベルが、ズッカーラットへの10 nmol/kgの各々のペプチドのsc注射後に測定された。結果は、平均±SEMである(図22Aについてn=4/群、及び図22Bについてn=3)。
【図23】対照(白い棒グラフ)及びEx(1-30)処理動物(黒い棒グラフ)における51日間にわたる腹部脂肪量の減少を示す。値は、最初の総脂肪量(0日目)のパーセンテージとして表す。各々の群について、総脂肪減少、並びに内臓及び皮下組織画分から減少した脂肪が共に示される。このデータは、対照動物においてより、Ex(1-30)処理された動物において、顕著に大量の総脂肪及び内臓脂肪の減少があった。どちらの群も、51日目の時点で減少した総脂肪量を示した。対照群において、この減少は主に皮下画分からの脂肪の損失のためであり、それは処理された動物と同程度に思われた。*P<0.05 Ex(1-30)、対、対象。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の説明
本発明は、以下の、本発明の好ましい態様の詳細な説明及びそこに含まれる実施例、並びに図面及びそれらの上記及び下記の説明を参照することによってより容易に理解される。
【0020】
当該化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法が開示及び記載される前に、本願発明は、それらは当然変化するので、特定の合成方法、特定の投与計画、又は特別な精製手順に制限されないと理解されるべきである。本明細書中に使用された用語が、特定の態様のみを記載する目的のためのものであって、制限されることを意図しないと理解されもする。
【0021】
明細書及び添付した請求項で使われる場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、前後関係が別段の明確な指示をしない限り、複数の指示物を含む。
よって、例えば、「a polypeptide」への言及は、複数のポリペプチドの混合物を含み、「a pharmaceutical carrier」への言及は、2以上のそのような担体の混合物を含む、そのほかも同様。
【0022】
範囲は、「約」一方の特有の値から、及び/又は「約」他方の特有の値まで、のように本明細書中で表される。そのような範囲が表現されるとき、他の態様は、一方の特有の値から、及び/又は他方の特有の値までを含む。同様に、値が前例の「約」の使用によって、近似値として表現されるとき、特有の値が他の態様を形成することが知られる。各々の範囲の終了点が、他の終了点との関係、及び他の終了点からの独立の両方において重要であることはさらに理解されるであろう。本明細書中に使用されるとき、「約」は、任意の値±10%を表す。
【0023】
本願明細書及び後に続く請求項において、言及は、以下の意味をもつと規定される多数の用語に対して成される:
「任意に」又は「場合により」は、その後に記載された事件又は情況が生じるかもしれず、そしてこの記載は、上記事件又は状況が生じる場合と生じない場合を含むことを意味する。
【0024】
全体にわたり使用されるとき、「患者」は、個人を意味する。好ましくは、患者は哺乳動物、例えば霊長類、より好ましくは、ヒトである。よって、「患者」は、飼い慣らされた動物、例えば猫、犬等、家畜(例えば、牛、馬、豚、羊、ヤギ等)、及び実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット等)を含みうる。
【0025】
用語「ポリペプチド」は、用語「ペプチド」と互換性をもって本明細書中で使われる。「ポリペプチド」も「ペプチド」もペプチド結合によって接続された一連の天然又は非天然アミノ酸を含んでいる。
【0026】
「単離されたポリペプチド」又は「精製されたポリペプチド」は、上記ポリペプチドに通常天然又は培養において付随する物質を実質的に含まないポリペプチドを意味する。本発明のポリペプチドは、例えば利用可能であれば(例えば、哺乳類細胞)天然起源からの抽出によって、上記ポリペプチドをコードしている組み換え核酸の発現によって(例えば、細胞又は細胞を含まない翻訳系により)、又は上記ポリペプチドの化学合成によって得ることができる。さらに、ポリペプチドは、完全長のポリペプチドの切断によって得ることができる。ポリペプチドが大きな天然のポリペプチドの断片であるとき、単離されたポリペプチドは短く、そして断片の完全長の、天然のポリペプチドを除外する。
【0027】
本発明は、GLP-1及びexendin-4の新規ポリペプチド・アナログに関する。本明細書中に使用されるとき、「GLP-1」は、完全なGLP-1配列の第7〜36残基のアミド化型であるGLP-1 7-36アミド、及びGLP-1 7-37と同義的に使われる。exendin-4の残基は、GLP-1、第7〜36残基とアラインされ、GLP-1残基の番号付けに従って番号付けされる。そのような残基番号付けの慣習が、全体にわたり使われる。図1を参照のこと。
【0028】
好ましい態様において、前記ポリペプチドはインシュリン分泌刺激性である。「インシュリン分泌刺激性」は、前記ポリペプチドが、グルコースのみに対する応答の基礎分泌レベルに比べて、グルコースに依存した様式でインシュリン合成、放出又は分泌を増やすことを意味する。好ましくは、インシュリン分泌のそのような増加は、基礎分泌よりも少なくとも1.15、1.25、1.5、2.0、2.5、3.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5又は20.0倍多い。インシュリン分泌の増加は、本技術分野に知られる分析方法を使って、直接的に(例えば、インシュリン・レベルの増加を示すことによって)、又は間接的に(例えば、グルコース・レベルの減少、又はcAMPレベルの増加を示すことによって)、インビボで(例えば、血糖値をアッセイすることによって)、又はインビトロで(例えば、培地中のインシュリン・レベルをアッセイすることによって)示される。
【0029】
インシュリン分泌刺激効果は、例えばインシュリン陽性細胞数の増加を含むいくつかの機構のいずれか1つによるかもしれない。インシュリン分泌刺激性ポリペプチドは、例えば幹細胞の、インシュリン陽性細胞への分化を促進することによって、並びに非幹細胞のより分化されていない状態への脱分化を促進し、そしてインシュリン陽性細胞への分化を促進することによって、インシュリンの放出を促進する。2番目の態様として、インシュリン分泌刺激効果は、任意の期間において各々のインシュリン陽性細胞で合成された及び/又は放出されたインシュリンの量の増加によって引き起こされる。インシュリン陽性細胞の数が増やされて、そして同様に、各々細胞によって分泌されるインシュリンの量が増やされる場合、合わせたインシュリン分泌刺激効果が、生じることもある。
【0030】
「基礎分泌」は、第2の放出剤の不存在下で、グルコース刺激に応答して放出されたインシュリンの量を意味する。
【0031】
「インシュリン陽性細胞」は、例えば膵臓の島細胞、例えばベータ細胞、又は細胞株、例えばRIN1048-36細胞を含むインシュリンを放出することが示されたあらゆる細胞、インシュリンを放出するように設計されたあらゆる細胞(例えば、インシュリンを含む遺伝学的に修飾された細胞)、又はインシュリンを含んでいるあらゆる細胞を意味する。
【0032】
「GLP-1又はexendin-4のアナログ」は、アゴニスト特性を示す(すなわち、GLP-1又はexendin-4の1以上の生物活性を示す)修飾されたGLP-1及びexendinアミノ酸配列を意味する。そのような修飾は、GLP-1中に存在する1以上のアミノ酸残基、又はexendin-4中に存在する1以上のアミノ酸残基を含むキメラ・ポリペプチドを含む。修飾は、GLP-1又はexendin-4、あるいはキメラ・ポリペプチドの切詰めをも含む。例えば、切詰められたキメラ・ポリペプチドは、GLP-1の36位のRと交換された36位のGをもつexendin-4 7-36である。本発明のポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4と比べて機能上の活性のかなりの損失のない、GLP-1又はexendin-4の、1以上の追加のアミノ酸(すなわち、挿入又は付加)、アミノ酸の削除、あるいはアミノ酸配列の置換を含む。例えば、削除は、現在の規定された識別活性に不可欠ではないアミノ酸から成り、そして置換は、保存的であるか(すなわち、塩基性、親水性又は疎水性アミノ酸を同じもので置換する)、又は非保存的である。よって、所望の修飾及び変更は、GLP-1及びexendin-4のアミノ酸配列で作製され、そしてタンパク質は、依然として観察される似た特徴をもつと理解されている。生物学的な有用性又は活性のかなりの喪失、及びそのような有用性又は活性の増加の可能性なしに、様々な変更が、GLP-1アミノ酸配列又はexendin-4アミノ酸配列(又は基礎をなす核酸配列)で作製される。
【0033】
本明細書中に使用されるとき、GLP-1又はexendin-4、あるいはそれと実質的に一致するアミノ酸配列をもつポリペプチドに関する用語「断片」又は「切詰め」は、GLP-1又はexendin-4、あるいはそれと実質的に一致しているアミノ酸配列をもつポリペプチドのいずれかの少なくとも5つの隣接したアミノ酸のポリペプチド配列を意味し、ここで、上記ポリペプチド配列はインシュリン分泌刺激機能をもつ。
【0034】
他の修飾は、アミノ酸残基の少なくとも1つの天然L立体配位が、アミノ酸残基のD立体配位と置き換えられている、D-エナンチオマーを含む。
【0035】
本発明は、スペーサ、例えばラテラル・スペーサの使用を検討する。用語「ラテラル・スペーサ」は、化学結合によってアミノ酸配列の中に組み込まれる化合物と規定され、それにより上記化合物は、その位置での又はその付近でのアミノ酸配列の切断(例えば、DPP1Vによる)を減らすか又は除くために、2つ以上のアミノ酸残基の間の距離を延ばす。例えば、配列A-X-B(式中、AとBがアミノ酸残基であり、Xがラテラル・スペーサである)において、酵素による配列の切断は、ラテラル・スペーサの存在しない配列(A-B)に比べて、減らされるか又は除かれる。好ましくは、1〜4の化合物が、ラテラル・スペーサとしてのアミノ酸配列に組み込まれることができる。よって、1,2,3,又は4の化合物が、様々な態様において挿入される。
【0036】
一般的に、ラテラル・スペーサは、アミノ酸とペプチド結合を形成することができる、すなわち少なくとも1つのアミノ基と少なくとも1つのカルボキシル基(CO2-)を含むあらゆる化合物であり、ここで、上記カルボキシル基は、カルボン酸、又はそのエステル若しくはその塩であるかもしれない。1の態様において、ラテラル・スペーサは、式、H2N-R1-CO2H(I){式中、R1は、置換された若しくは置換されていない、分岐若しくは直鎖C1-C20アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基;置換された又は置換されていないC3-C8シクロアルキル基;置換された又は置換されていないC6-C20アリール基;あるいは置換されたか又は置換されていないC4-C20ヘテロアリール基である。}によって表される。他の態様において、R1が、式(CH2)n{式中、nが1〜10である。}によって表されることができる。好ましい態様において、R1は、(CH2)3(3-アミノプロピオン酸)又は(CH2)5(6-アミノヘキサン酸)である。
【0037】
本発明は、精製されたポリペプチドを提供する、ここで、上記ポリペプチドは、GLP-1の第7と第8残基(例えば、GLP-1の場合にAhaスペーサで指示された、例えば「GLP-1Aha8」)、又は第8と第9残基(GLP-1の場合にAhaスペーサで指示された、例えば「GLP-1Aha9」)に相当するアミノ酸残基の間にスペーサにより、修飾されたGLP-1又はexendin-4配列、あるいはそのアナログを含む。1の態様において、ラテラル・スペーサは、1以上のアミノプロピオン酸残基である。1の態様において、スペーサは、6-アミノヘキサン酸スペーサ、及び4つ未満の6-アミノヘキサン酸残基を含む6-アミノヘキサン酸スペーサである。前記ポリペプチドは、例えば第7と第8残基の間に1以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に1以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。前記ポリペプチドは、第7と第8残基の間に2以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に2以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。前記ポリペプチドは、例えば第7と第8残基の間に3以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36(すなわち、GLP-1Aha8)を含むことができるか、又は第8と第9残基の間に3以上の6-アミノヘキサン酸残基を有するGLP-1 7-36を含むことができる。より具体的には、1の態様において、ポリペプチドは、配列番号8、配列番号22又は配列番号23のアミノ酸配列を含む。
【0038】
他の態様において、ポリペプチドは、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48又は配列番号49のアミノ酸配列を含む。代わる態様において、ポリペプチドは、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33のアミノ酸配列を含み、ここで、上記アミノ酸配列が、GLP-1の第7と第8残基、又は第8と第9残基に相当するアミノ酸残基の間にスペーサを含む。
【0039】
好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、等モルの量のGLP-1の効果に匹敵するインシュリン分泌刺激効果をもち、より好ましい態様において、等モルの量のexendin-4の効果に匹敵するインシュリン分泌刺激効果をもつ。「効果に匹敵する」は、GLP-1又はexendin-4の効果の約10〜15%以内の効果を意味する。さらにより好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4のいずれかのインシュリン分泌刺激効果を超えるインシュリン分泌刺激効果をもつ。GLP-1又はexendin-4の「効果を超える」は、GLP-1又はexendin-4と比べてインシュリン分泌刺激効果の増加を、好ましくは、GLP-1又はexendin-4の効果の約10%超である増加を意味する。よって、好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、GLP-1又はexendin-4と同程度に強力であり、より好ましい態様においては、GLP-1のそれより強力であり、場合によりexendin-4のそれより強力である。
【0040】
好ましい態様において、本発明のポリペプチドは、GLP-1より長時間作用する。より好ましい態様において、このポリペプチドは、exendin-4と同程度に長時間作用する。よりさらに好ましい態様において、このポリペプチドは、exendin-4より長時間作用する。「長時間作用する」は、ポリペプチドが少なくとも1つの分解酵素に対して、GLP-1又はexendin-4より抵抗性であることを意味する。例えば、本発明のポリペプチドの好ましい態様は、GLP-1より酵素、ジペプチジル・ジペプチダーゼ(DPP1V)による分解に抵抗性であり、場合によりexendin-4より抵抗性である。1以上の分解酵素に対するそのような抵抗性は、分解物の量(例えば、N末端分解物の量)、又は分解されなかったポリペプチドの量を検出することによって直接的に評価されることができる。あるいは、1以上の分解酵素に対する抵抗性は、本発明のポリペプチドの投与後の長期にわたるインシュリン分泌刺激効果の減少を評価することによって間接的に検出することができる。例えば、分解酵素が本発明のポリペプチドを切断する場合、血漿インシュリン・レベルは、単回投与後に下るはずである。好ましい態様において、この低下は、GLP-1に関するより緩慢であり、そしておそらくexendin-4より緩慢でさえある。
【0041】
好ましい態様において、ポリペプチドは、exendin-4と比べて抗原性を低減した。抗原性は、慣用法、例えば中和抗体及びポリペプチド・クリアランスを評価するために設計された生物学的アッセイ法を使って評価されることができる。
【0042】
好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1受容体に対するGLP-1の結合親和性より高い、GLP-1受容体に対する結合親和性をもつ。より好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1受容体に対するexendin-4の結合親和性より高い、GLP-1受容体に対する結合親和性を有する。
【0043】
好ましい態様において、ポリペプチドは、GLP-1よりも、基礎レベルを上回る細胞内cAMPレベルを促進する。より更に好ましい態様において、ポリペプチドは、exendin-4よりも、基礎レベルを上回る細胞内cAMPレベルを促進する。
【0044】
特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33を含む、精製されたポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33から本質的に成る、精製されたポリペプチドを提供する。さらにより特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号25、配列番号33から成る、精製されたポリペプチドを提供する。
【0045】
同様に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41を含む、精製されたポリペプチドを提供する。より具体的には、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41から本質的に成る、精製されたポリペプチドを提供する。さらにより特に、本発明は、そのアミノ酸配列が、配列番号3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41から成る、精製されたポリペプチドを提供する。
【0046】
本発明のポリペプチドは、溶液法及び固相法を含めた当業者に周知の多数の化学的なポリペプチド合成技術のいずれかを使用して調製できる。ポリペプチド配列のC末端アミノ酸が、不溶性の支持体に結合され、続いて配列中の残りのアミノ酸を順次的に付加する固相合成は、ポリペプチドを調製するための合成法の1つである。固相合成に関する技術は、Merrifield et al, J. Am. Chem. Soc. 55:2149-2156 (1963)によって説明されている。固相ペプチド合成を実施するための多くの自動化されたシステムが、市販されている。
【0047】
固相合成は、好適な固形支持体へのそのカルボキシル基を介した保護アミノ酸のカップリングによって、ポリペプチドのカルボキシ末端(すなわち、C末端)から開始される。使用される固形支持体は、重要な特徴ではない、但しペプチド合成手順に利用される試薬に対してそれが実質的に不活性なままでありながらカルボキシル基に結合できなければならない。例えば、開始材料は、クロロメチル化樹脂若しくはヒドロキシメチル樹脂にベンジルエステル結合を介して、又はベンズヒドリルアミン(BHA)樹脂若しくはp-メチルベンズヒロリルアミン(MBHA)樹脂にアミド結合を介してアミノ-保護されたアミノ酸を結合することによって調製されることができる。固形支持体として使用するのに好適な材料は、当業者に周知であり、そしてこれだけに制限されることなく、以下の:クロロメチル樹脂若しくはブロモメチル樹脂のようなハロメチル樹脂;ヒドロキシメチル樹脂;4-(a-[2,4-ジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノメチル)フェノキシ樹脂のようなフェノール樹脂;tert-アルキルオキシカルボニル-ヒドラジド化樹脂;等を含む。そのような樹脂は、市販されており、それらの調製法は、当業者に知られている。
【0048】
ペプチドの酸性型は、固形支持体としてベンジルエステル樹脂を使った固相ペプチド合成によって調製される。対応するアミドは、固形支持体としてベンズヒドリルアミン樹脂又はメチルベンズヒドリルアミン樹脂を使うことによって製造されうる。当業者は、BHA又はMBHA樹脂が使用されるとき、固形支持体体からペプチドを切断するための無水フッ化水素酸処理が、末端にアミド基をもつペプチドを産生することを認識している。
【0049】
合成で使われた各々のアミノ酸のα-アミノ基は、反応性α-アミノ機能に影響を及ぼす副作用を防ぐためにカップリング反応の間保護されるべきである。特定のアミノ酸は、同様に、ペプチド合成の間、化学反応がそれらの部位で生じることを防ぐための適当な保護基により、保護されなければならない反応性側鎖官能基(例えば、スルフィドリル、アミノ、カルボキシル、ヒドロキシル等)をも含む。保護基は、当業者に周知である。例えば、The Peptides: Analysis, Synthesis, Biology, Vol. 3: Protection of Functional Groups in Peptide Synthesis (Gross and Meienhofer (eds.), Academic Press, N.Y. (1981))を参照のこと。
【0050】
適当に選ばれたα-アミノ保護基は、カップリング反応の間、不活性なα-アミノ機能を与え、側鎖保護基を取り除かない条件下、カップリング後に容易に除去でき、ペプチド断片の構造を変えることなく、そしてカップリング直前の活性化によるラセミ化を防ぐ。同様に、側鎖保護基は、合成の間、不活性な側鎖官能基を提供するように選ばれる必要があり、α-アミノ保護基を取り除くための条件下で安定している必要があり、そしてペプチドの構造を変えることのない条件下のペプチド合成の完了後に、除去されることができる必要がある。
【0051】
アミノ酸のカップリングは、当業者に知られた種々の技術によって達成されうる。典型的なアプローチは、ペプチド断片の遊離のN末端アミノ基との反応に対しより感受性があるカルボキシル基を提供する、誘導体へのアミノ酸の転換、又は好適なカップリング剤例えば、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジミド(DCC)、又はN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)の使用を伴う。しばしば、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)が、これらのカップリング反応の触媒として利用される。
【0052】
一般的に、ペプチドの合成は、まず、保護基、例えばフルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)を用いて、N-アミノの位置で保護されるC末端アミノ酸を固形支持体に連結することによって開始される。Fmoc-Asnの連結前に、Fmoc残基が、重合体から取り除かれなければならない。例えば、Fmoc-Asnは、撹拌しながら、約25℃で約2時間、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジミド(DCC)及びヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)を使って、4-(a-[2,4-dジメトキシフェニル]-Fmoc-アミノ-メチル)フェノキシ樹脂に連結される。前記樹脂支持体へのFmoc-保護アミノ酸の連結に続いて、室温にて、DMF中20%のピペリジンを使って、α-アミノ保護基が取り除かれる。
【0053】
α-アミノ保護基の除去後に、残りのFmoc-保護アミノ酸が、所望の順序で段階的に連結される。適切に保護されたアミノ酸は、多数の供給業者(例えば、Novartis (Switzerland)又はBachem (Torrance, CA))から市販されている。個々のアミノ酸の段階的な付加のための選択肢として、1以上のアミノ酸から成る適切に保護されたペプチド断片が、「成長している」ペプチドに連結されることもできる。先で説明されたとおり、適当な連結試薬の選択は、当業者に周知である。
【0054】
各々の保護アミノ酸又はアミノ酸配列が、過剰に固相反応器内に導入されて、そして連結が、ジメチルホルムアミド(DMF)、塩化メチレン(CH2Cl2)、又はその混合物から成る媒質中で実行される。連結が不完全である場合、N-アミノ基の脱保護及び次のアミノ酸の添加前に、連結反応が繰り返される。連結効率は、当業者に周知の多数の手段によって観察されうる。連結効率の観察の好ましい方法は、ニンヒドリン反応によってである。ペプチド合成反応は、多数の市販のペプチド合成機、例えばBiosearch 9500(商標)合成機(Biosearch, San Raphael, CA)を使って自動的に実施されうる。
【0055】
0℃で約20〜90分間、好ましくは60分間、アニソール及びジメチルスルフィドの存在下、無水の液体フッ化水素(HF)中、不溶性担体又は固形支持体を撹拌することによって;選択された保護基に依存して、約室温で60〜360分間、トリフルオロ酢酸(TFA)中、樹脂の1 mg/10 mLの懸濁液をを通して、連続的に臭化水素(HBr)をバブリングすることによって;あるいは、又は固相合成のために使った反応カラム内の固形支持体を、90%のトリフルオロ酢酸、5%の水、及び5%のトリエチルシランと一緒に約30〜60分間インキュベートすることによって、ペプチドが切断され、前記保護基が除去される。当業者に周知の他の脱保護法が使われもする。
【0056】
前記ペプチドは、当業者に周知のペプチド精製によって、前記反応混合物から分離され、精製されることができる。例えば、ペプチドは、既知のクロマトグラフィー手順、例えば逆相HPLC、ゲル透過、イオン交換、サイズ排除、親和性、分配、又は向流分配を使って精製されうる。
【0057】
本発明のポリペプチドは、他の手段、例えば組み換え技術を含む他の手順によっても調製できかもしれない。適当なクローニング、及び配列決定技術、そして多くのクローニングの訓練を経験した熟練者に向けられるのに十分な指示が、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press, NY, (Sambrook)中に見られる。
【0058】
本発明は、糖尿病患者を治療する方法をさらに提供し、この方法は、インシュリン分泌刺激効果がある量の本発明のポリペプチドを、上記患者に投与することを含む。「糖尿病(diabetes)」は、糖尿病(diabetes mellitus)を意味する。本発明の方法は、2型糖尿病の患者の治療に役立つと考えられる。前記ポリペプチドが非インシュリン産生細胞のインシュリン産生を促進する場合、本発明の方法は、(例えば、1型糖尿病を含む)他の型の糖尿病に有用であるかもしれない。
【0059】
本発明のポリペプチドは、神経系に使用される。1の態様において、前記ポリペプチドは、神経栄養性(すなわち、増殖、分化又は神経突起伸長を促進する)、又は神経保護性(すなわち、ニューロン細胞を救う若しくはニューロン細胞死を減少させる)である。よって、本発明は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又は神経保護性又は神経栄養性GLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと接触させることを含むニューロンの死滅を減少させる方法にさらに関する。ニューロンの死滅は、例えば機械的な傷害(例えば、損傷若しくは手術)、中毒性傷害、神経変性疾患、アポトーシス、及び末梢神経障害により生じるかもしれない。当業者は、ニューロンを救うこと(すなわち、細胞死の徴候を示す細胞の生存を促進すること)、及びニューロンの死滅を減らすこと(すなわち、細胞死の徴候を示していない細胞の生存を促進すること)が望まれることを認識している。例えば、続く移植の前に、ニューロンの死滅を減らした化合物を用いた処理が、ニューロン細胞の外植片又は培養物の処理に有用である。同様に、そのような処理は、脳卒中、脳若しくは脊髄損傷、神経損傷、又は神経毒性損傷に続くニューロンを救い、そしてニューロンの死滅を減少させるために使用されうる。さらに、ニューロンを救うこと又はニューロンの死滅を減少させることは、神経変性症状、あるいは、例えばアルツハイマー症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、及び末梢神経障害を含む病気の治療に有用である。
【0060】
本発明は、ニューロンの分化又は増殖の促進方法であって、1以上のニューロン又はニューロン前駆細胞を、GLP-1、exendin-4、又は分化を誘発するか若しくは増殖を誘発するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む方法にも関する。分化は、細胞がニューロンの特性を欠いている細胞状態(例えば、明瞭な核小体、ニューロンの突起、幅広い粗面小胞体、ニューロン・マーカーの発現のような特性の欠如)から、ニューロンの表現型によって特徴づけられた細胞状態への移行を伴う。ニューロンの増殖は、幹細胞又はニューロン系統の細胞が分化し、及び/又はニューロンに区別されることを意味する。分化又は増殖の効果は、ニューロン数の増加である。「ニューロン数の増加」は、存在している全てのニューロン総数へのニューロンの追加を意味する。よって、ニューロン細胞死の速度は、分化又は増殖の速度を超えるかもしれないが、しかし新しいニューロンの追加が、全ニューロンを上回る増加であると考えられるので、生存しているニューロンの総数の増加がない状態であっても、そのような数の増加は、それでも治療的な利点をもつ。
【0061】
本発明は、アミロイドβタンパク質の形成又は蓄積を減少させる方法にも関し、上記方法は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又はβ-アミロイド前駆体タンパク質代謝に影響するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む。そのような方法は、アミロイド・タンパク質のレベルを下げるか、又はアルツハイマー症の患者において老人斑で観察されるアミロイド・タンパク質の沈着を防ぐために有用であるかもしれない。本発明の方法は、β-アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングの様々なポイントにおける作用によってアミロイドβタンパク質の形成又は蓄積を減少させうるであろう。例えば、前記ポリペプチドは、β-アミロイド前駆体タンパク質の合成を減少させるか、アミロイドβタンパク質領域内のβ-アミロイド前駆体タンパク質の切断を促進するか、アミロイドβタンパク質の分泌を減少させることにより、可溶性β-アミロイド前駆体タンパク質の分泌を増やすか、又はアミロイドβタンパク質の分解を増やすかもしれない。
【0062】
本発明は、ニューロン突起の増殖を促進する方法にも関し、この方法は、1以上のニューロンを、GLP-1、exendin-4、又は突起を促進するGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドと、接触させることを含む。「ニューロン突起の成長」は、体細胞からのニューロン突起の数、ニューロン突起の複雑さの増加(通常、軸索又は樹状突起の分岐点の数の増加による)、又は突起の長さの増加をも意味する。ニューロン突起の成長は、例えば、再生能力の最適化が望まれる、末梢神経損傷又は中枢神経系への傷害の後を含む多くの状況で望まれる。同様に、神経変性症状において、存在しているニューロンは、突起の豊富な領域におけるニューロナル死滅を埋め合わせることができるかもしれない。
【0063】
本発明は、神経変性症状の患者を治療する、又は神経変性症状の1以上の徴候を減らす方法にも関し、上記方法は、GLP-1、exendin-4、又は治療として有効なGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドを、治療として有効な量で患者に投与することを含む。より特に、前記治療は、アルツハイマー症、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる神経変性症状に向けられる。
【0064】
同様に、神経毒性損傷の患者を治療する方法又は患者の神経毒性損傷による1以上の徴候を減らす方法が提供され、この方法は、GLP-1、exendin-4、又は治療として有効なGLP-1又はexendin-4アナログを含むポリペプチドを、治療として有効な量で上記患者に投与すること含む。そのような投与は、神経毒に晒される前、その間、又はその後であるかもしれない。神経毒は、神経毒性型のアミロイドβ-ペプチド、カンプトセシン、グルタミン酸、エトポシド、制癌剤、ビンカアルカロイド、3-nitrognognonic acid、MPTP、ドウモイ酸、カイニン酸、及びイボテン酸を含む。
【0065】
これらの神経系の方法における接触ステップは、所望した効果に依存してインビボ又はインビトロで実施される。例えば、培養状態のニューロンは、ニューロンの死滅をに引き起こすかもしれない培養中の操作より前に、又はその後に処理されることができる。また、神経系のin situニューロンは、ニューロンの死滅を引き起こすトリガーに晒されるより前に又はその後で処理されうる。移植組織の典型において、例えば、移植されるドナーのニューロンは、培養物の状態で処理されるかもしれず、次に脳又は脊髄の移植部位が、移植者のニューロン及び移植されたニューロンのニューロンの死滅を防ぐために処理されうる。
【0066】
神経系への使用に関係するポリペプチドは、GLP-1、exendin-4、及び生物学的に活性なそのアナログ又はそのアゴニストを含むポリペプチドを含む。好ましくは、前記アナログは、GLP-1/exendin-4受容体に結合し、活性化する。前記ポリペプチドは、例えば配列番号1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25、33、42、43、44、45、46、47又は48のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。他の例は、配列番号:3、4、16、17、18、19、20、21、22、23、24、26、27、28、29、30、31、32、34、35、36、37、38、39、40又は41のアミノ酸配列をもつポリペプチドを含む。
【0067】
同様に、医薬として許容される担体と組み合わせて、GLP-1、xendin-4、及び生物学的に活性なそのアナログ又はそのアゴニストを含む本発明のポリペプチドを含む医薬組成物が本発明によって提供される。
【0068】
当業者は、治療の有効性をどのように観察するか、およびそれに沿ってどのように治療を調節すべきか認識しているであろう。例えば、血糖値は、治療の最的な効果である正常血糖により観察されうるであろう。血糖値が好ましいレベルより高ければ、その後投与されるポリペプチドの量は減らされ、そして血糖値が好ましいレベルより低ければ、投与されるポリペプチドの量が増やされる。
【0069】
好ましくは、本発明のインビボでの方法で使用されるポリペプチドの投与量は、継続的な投与については、約0.1 pmoles/kg/分〜約100 nmoles/kg/分、そしてボーラス注射については約0.01 nmoles/kg〜約400 nmoles/kgにおよぶ。好ましくは、インビボでの方法におけるポリペプチドの投与量は、約0.01 nmoles/kg/分〜約10 nmoles/kg/分におよぶ。必要とされる厳密な量は、患者の種、年齢、及び全身症状、治療される病気の重さ、使用される特定のポリペプチド、その投与様式等に依存してポリペプチドごとに、そして患者ごとに変わる。よって、厳密な「インシュリン分泌刺激量」又はニューロンの病気又は損傷を治療するために有用な量を指定することは不可能である。しかし、適当な量は、日常的な実験だけを使い、当業者によって決定される。
【0070】
好都合なことに、前記ポリペプチドは、医薬として許容される担体に関連した1以上の化合物から成る医薬組成物中に処方される。前記組成物は、経口的に、静中に、筋中に、腹腔内に、局所的に(topically, locally)、経皮的に、全身的に、脳室内に、脳内に、硬膜下に、又はくも膜下に投与される。当業者は、投与の様式、薬理担体、又はインシュリン分泌刺激効果を最適化するための他の指標を修飾することを知っているであろう。もちろん、投与されている活性化合物の量は、治療される患者、患者の体重、投与の様式、及び処方する内科医の判断に依存する。
【0071】
意図された投与の方式に依存して、医薬組成物は、固体、半固体、又は液体の剤形、例えば錠剤、坐剤、丸剤、カプセル、散剤、液剤、懸濁液剤、ローション剤、クリーム、ゲル等の形態で、好ましくは正確な投与量の単一投与に好適な単位剤形である。先に指摘されたとおり、前記組成物は、有効な量の選ばれた薬物を、医薬として許容される担体と組み合わせて含み、さらに、他の薬剤、医薬品、担体、補助剤、希釈剤等を含むかもしれない。例えば、典型的な担体、及びポリペプチドの製剤の準備に一緒に使用されうる医薬組成物を調製する従来法を開示する、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, latest edition, by E.W. Martin Mack Pub. Co., Easton, PAを参照のこと、そしてここで上記文献を本明細書中に援用する。
【0072】
固体組成物について、従来の無毒性固体担体は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、スターチ、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、ショ糖、炭酸マグネシウム等を含む。例えば、液体の医薬として投与可能な組成物は、本明細書中に記載の活性化合物、並びにそれによって溶液又は懸濁を形成するための、賦形剤の中の任意の医薬補助剤、例えば水、水性デキストロース生理食塩水、グリセロール、エタノール等を溶かす、分散させる等によって調製されることができる。所望であれば、投与される医薬組成物は、小量の無毒性補助物質、例えば湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝化剤等、例えば酢酸ナトリウム、ソルビタン・モノラウレート、トリエタノールアミン酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン・オレエーと等を含むかもしれない。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、又は明らかである;例えば先に参照したRemington's Pharmaceutical Sciencesを参照のこと。
【0073】
経口投与のために、細末又は顆粒剤が希釈剤、懸濁化剤、及び/又は界面活性剤を含み、そして水中若しくはシロップ剤中に、乾燥状態でカプセル若しくはサシェ(sachet)中に、又は非水性溶液若しくは懸濁化剤が含まれる懸濁液で、結合剤及び潤滑剤が含まれる錠剤で、あるいは水中若しくはシロップ中の懸濁液で提供される。所望の又は必要であれば、調味料、保存料、懸濁化剤、増粘剤、又は乳化剤が含まれる。錠剤及び顆粒剤は、好ましい経口投与形態であり、これらはコートされる。
【0074】
使用される場合、非経口投与は、一般に注射を特徴とする。注射剤は、液体溶液若しくは懸濁液、注射の前に液体による溶液若しくは懸濁液として好適な固体形態、又は乳液として、従来の形態で調製されうる。非経口投与に関する、ごく最近修正されたアプローチは、一定レベルの投与量が維持されるように、徐放システム(slow release or sustained release system)の使用を伴う。例えば、米国特許番号第3,710,795号を参照のこと、そしてここで上記文献を本明細書中に援用する。
【0075】
局所投与のために、活性化合物が皮膚の表面にデリバリーされうる限り、液剤、懸濁液剤、ローション剤、クリーム、ゲル等が使用されうる。
【実施例1】
【0076】
実験1
以下の実施例は、本明細書中で主張される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法がどのように作製され、そして評価されるのかについての完璧な開示及び説明を当業者に提供するためになされ、そして本発明の純粋な例示として意図され、当該発明者が彼ら発明とみなすものの範囲を制限することはない。数(例えば、数量、温度等)に関して正確度を確保するために努力がなされたが、しかしいくつかの誤り及び偏りが明らかにされるであろう。別段の指示のない限り、部分は、重量による部分であり、温度は、℃又は気温であり、圧力は、大気又はその付近である。
【0077】
実施例1.ペプチドの設計及び合成
exendin-4及びGLP-1の基本的な特徴を取り入れた一連のキメラ・ペプチドを、設計した。35のペプチドの配列を、GLP-1(第7〜第36残基)、及びexendin-4(番号付けされたGLP-1残基を用いたexendin-4のアラインメントに従って番号を付けた第7〜第45残基)の配列とともに図1に示す。それらは、(i)第8と第9アミノ酸の間のDDP1Vの切断作用を最小限にし、(ii)インシュリン分泌刺激作用のための最小限の要件を評価し、そして(iii)exendin-4とGLP-1の間のアミノ酸の差異がGLP-1に対する効果における前者の13倍増の原因となることを評価するように設計した。図1に示されたペプチドは、それらの合成にL-及びD-アミノ酸を利用した。
【0078】
ペプチドは、脱保護のためにピペリジン-ジメチルホルムアミドを、そしてカップリングのためにHOBt/HBTUを使用した、Applied Biosystems(Foster, CA)の自動ペプチド合成機によって、アミノ酸のFmoc-誘導体を使いペグ-ポリスチレン樹脂上で合成した。完成したペプチドを、トリフルオロ酢酸(TFA)を使って樹脂から切断して、エーテルを用いて沈澱させて、アセトニトリル勾配を使った0.1%のTFA中、C-18疎水性樹脂を用いた逆相HPLCを使った精製に共した。最終物質の純度は、逆相HPLCを使って確認し、このペプチドの質量は、質量分析を使って確認した。全てのペプチドが、95%超の純度であった。
他のペプチドを、2-アミノヘキサン酸(6-アミノヘキサン酸)を使ってDPP1Vによる切断を減らすように設計した。表2を参照のこと。
【表1】
【実施例2】
【0079】
実施例2.インビトロでのインシュリン分泌
Dr. Samuel A. Clark(Bio Hybrid Technologies, Shrewsbury, MA)から贈与物であるRIN1048-36細胞を、インシュリン分泌に対するGLP-1、exendin-4、及びアナログの作用を観察するために使用した。細胞を、12ウェル皿の底に置いたガラス・カバースリップ上に、2.5×105細胞/cm2の密度で播種し、48時間培養した。その後、それらを、37℃の加湿インキュベータ内で、それぞれグルコース不含緩衝液(mMの:140 NaCl、5 KCl、1 NaPO4、1 MgSO4、2 CaCl、20 HEPES緩衝液(pH 7.4)及び0.1%のウシ血清アルブミンを含む)を用いて30分で2期間プレインキュベートした。その後、細胞を、5 mMのグルコース及びペプチド(1×10-8 M)を伴う同じ緩衝液1 mLの存在下、37℃で1時間インキュベートした。GLP-1とexendin-4(1×10-8 M)を、全てのアッセイの標準として使用した。1時間後、培地を取り除き、そしてEIA(Crystal Chem, Dhicago II)によるインシュリンレベルの定量化の前に−80℃で保存し、そして標準としてウシγ-グロブリンを用いたブラッドフォード法(Bio-Rad, Richmond, CA)を使った総タンパク質の測定のために、HCl(300 μl、0.1 M、20分、RT)を用いて細胞を溶解した。
【0080】
図2に示されるように、アミノ酸修飾のいくつかが、GLP-1又はexendin-4による誘発に匹敵するか又は超える様式でインシュリン分泌を誘発した。いくつかの修飾が、第8と第9アミノ酸残基の間の切断部位についての、DDP1Vによる認識力を減らすために使用された。しかし、第8と第9アミノ酸残基付近のL-アミノ酸の、D型による置換は、このペプチドがインシュリン分泌を誘発することができないので、第2、第3及び第5〜第7ペプチドによって示されたとおり効果がないことを証明した。ペプチド4(図1に示されない)、Dアミノ酸である第7〜第14残基をもつGLP-1配列は、同様にインシュリン分泌を誘発することができなかった。アミノ酸スペーサを第8と第9残基の前又はその間に組み込んだとき、ペプチド11(配列番号8)(第8残基の前に4つのアミノ酸スペーサを持つ)は、強力にインシュリン分泌を誘発したのに対して、ペプチド25(配列番号22)( 第8と第9残基の間に4つのアミノ酸スペーサをもつ)、及びペプチド26(配列番号23)(第8と第9残基の間に8つのアミノ酸スペーサをもつ)は、インシュリン分泌を誘発しなかった。GLP-1の第8アミノ酸(アラニン:A)の、小さい中性アミノ酸であるexendin-4の対応する位置のペプチド(すなわちグリシン:G) による置換は、exendin-4よりわずかにインシュリン分泌を誘発した。GLP-1Gly8(配列番号3)を参照のこと。
【0081】
GLP-1アミノ酸残基の、exendin-4残基によるさらなる置換は、インシュリン分泌を誘発する能力を保ったペプチドをもたらした。例えば、ペプチド8(配列番号5)(8位でのA→Gの置換と、16位でのV→Lの置換をもつ)、ペプチド9(配列番号6)( 8、16、18、19及び20位での、それぞれA→G、V→L、S→K、Y→Q及びL→Mの置換をもつ)、ペプチド10(Ex-WOT;配列番号7)(ペプチド9と同じ置換をもち、さらに22、23、25、26、27、30、33、34、36位での、それぞれG→E、Q→E、A→V、K→R、E→L、A→E、V→K、K→N及びR→Gの置換をもつ)は、全てインシュリン分泌を誘発する能力を保った。実際、ペプチド8(配列番号5)は、GLP-1又はexendin-4のいずれかよりも、インシュリン分泌に対して実質的に大きな効果をもった。
【0082】
ペプチド12(配列番号9)のような、exendin-4に存在する末端の第8〜第9アミノ酸の、GLP-1への付加が、GLP-1又はexendin-4よりインシュリン分泌に対して実質的に大きな効果をもつペプチドをもたらした。exendin-4の第8残基(すなわち、グリシン:G)を、GLP-1の第8残基(すなわち、アラニン:A)で置換し、そしてペプチド13(配列番号10)のようにexendin-4の末端の第9アミノ酸が維持されるか、又はペプチド14(配列番号11)のように除去された場合、どちらのペプチドもインシュリン分泌を誘発する能力を維持した;しかし、ペプチド13は、修飾なしのexendin-4より実質的に強い効果をもった。
【0083】
インシュリン分泌を誘発するそれらの能力について、exendin-4の切詰めを試験しもした。ペプチド15〜24(配列番号12〜21)を参照のこと。32残基以上を含むペプチド(すなわち、ペプチド15〜18(配列番号12〜15))だけが、インシュリン分泌を誘発した。インシュリン分泌を誘発したそれらの切詰めペプチドについて、ペプチド15(配列番号12)(第43残基以下の残基を含む)、及びペプチド18(配列番号15)(第34残基以下の残基を含む)が、exendin-4又はGLP-1のそれを超えた誘発効果をもつ唯一のものである。
【0084】
ペプチドの荷電に影響するように考えられた修飾が、行われもした。GLP-1は、7位、26位、34位及び36位の塩基性アミノ酸に関連する合計4+の電荷、及び9位、15位、21位及び27位の酸性アミノ酸に関連する合計4-の電荷をもつ、正味中性荷電をもつ。Exendin-4は、21〜23位の塩基性ドメインに関連する正味負の電荷をもつ。Exendin-4は、合計4+の電荷(7位、18位、26位、33位)、及び合計6-の電荷(9位、15位、21位、22位、23位、30位)をもつ一方で、その9つのアミノ酸の末端は中性である。ペプチド34(配列番号31)のような、exendin-4(すなわち、36位での、小さい中性のグリシン、Gの、より大きなアルギニン、Rによる置換)の末端に(正電荷を提供する)単一の塩基性アミノ酸の付加は、インビトロのインシュリン分泌におけるペプチドの不活性をもたらす。アルギニン、Rは、GLP-1の36位でよく許容され、そして維持されるか又はGLP-1において中性のグリシン、Gであるexendin-4末端によって置換されるとき(ペプチド12(配列番号9)、それは、活性を維持し、それどころかexendin-4のそれを超える活性をもつ。
【0085】
興味深いことには、27位が負電荷をもつ場合に、30位が酸性のグルタミン酸、Eから中性のアラニン、Aに修飾されるとき(ペプチド36(配列番号33))、アルギニン、Rは、exendin-4の36位でよく許容される。同様に、第30ペプチド(配列番号27)と比べて、18位(ペプチド1(配列番号3))に正電荷を導入するための、中性のセリン、Sの、塩基性のリジン、Kによる置換は、活性の喪失をもたらす;しかし、隣接する(19、20位の)中性のアミノ酸、チロシン、Y及びロイシン、Lの、中性のアミノ酸、グルタミン、Q及びメチオニン、Mによる置換が、活性を回復させる(ペプチド9(配列番号6)をペプチド30(配列番号27)と比べて)。
【0086】
GLP-1と6-アミノヘキサン酸含有ペプチドのインシュリン分泌効果を比較した場合、GLP-1Aha8(ペプチド11;配列番号8)は、GLP-1と同程度の有効性を示した。GLP-1Aha8(ペプチド11;配列番号8)は、基礎レベルの約1.2倍を上回るインシュリン分泌を誘発した。図3を参照のこと。しかし、ペプチド25及び26(配列番号22〜23)にあるとおり、追加の6-アミノヘキサン酸残基の挿入は、インシュリン分泌を誘発するペプチドの能力を阻害した。
【実施例3】
【0087】
実施例3.細胞内cAMPの定量
ヒトGLP-1受容体を安定的にトランスフェクトされたCHO細胞、GLP-1R細胞を、12ウェル・プレート上に60〜70%集密まで育て、クレブズ-リンガー・リン酸塩緩衝物質(KRP)で3回洗浄し、そして加湿気インキュベータ内、37℃で2時間、0.1%のウシ血清アルブミン含有KRP(BSA)1 mlと一緒にインキュベートした。次に細胞を、研究中のペプチドの存在又は不存在下、イソブチルメチルキサンチン(IBMX)(1 mM;Calbiochem, La Jolla, CA)を伴う、0.1%のBSAを補った1 mlのKRP中でインキュベートした。氷冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で無傷の細胞を3回洗浄することによって30分後に反応を止めた。氷冷過塩素酸(0.6 M、1 ml、5分)中で細胞をインキュベートすることによって細胞内のcAMPを抽出した。炭酸カリウム(5M、84 μl)を使ってサンプルのpHを7に調整した後、試料管をボルテックスし、形成された沈殿を、遠心分離(5分、2000×g、4℃)で沈殿させた。上清を、真空で乾燥させ、4 mMのEDTA含有0.05 MのTris(pH7.5)(300 μl)中に可溶化した。炭酸ナトリウム(0.15 μM)と硫酸亜鉛(0.15 μM)を加えたサンプルを、次に氷上で15分間インキュベートした。得られた塩沈殿物を、遠心分離(5分、2000×g、4℃)によって除去した。サンプルを、[3H]cAMP競合的タンパク質結合アッセイ・キット(Amersham, Philadelphia, PA)を使って、二重のアリコート(50 μl)でアッセイした。
【0088】
cAMPレベルを、GLP-1、6-アミノヘキサン酸含有ペプチド、又はD-アミノ酸含有ペプチドにより処理された細胞で計測した。GLP-1アナログによって産生された細胞内cAMPレベルは、当初10 nM(最大のcAMP産生の濃度は、GLP-1で見られる)のペプチド濃度で評価した。データを図4に示す。前記ペプチドを、TBMXの存在下、CHO/GLP-1R細胞と一緒に37℃で30分間インキュベートした。インビトロでのインシュリン・アッセイからの結果と一致して、GLP-1分子全体にわたるD-アミノ酸置換は、基礎レベルを上回るわずかな増加だけに終わった、すなわち、それらは、IBMXによってのみ得られた。同様に、インシュリン分泌刺激性化合物GLP-1Gly8(配列番号3)及びGLP-1Aha8(配列番号8)と比べたとき、GLP-1(Aha9)4(配列番号22)及びGLP-1(Aha9)8(配列番号23)は不活性であった。GLP-1、GLP-1Gly8、又はGLP-1Aha8の濃度の変化に対するcAMP誘導における応答を計測した。図5を参照のこと。表3は、3つの化合物全てのED50値を示す。GLP-1Aha8(0.5 nM)は、基礎を4倍上回るまで細胞内cAMP産生を刺激したが、しかしそれは、GLP-1及びGLP-1Gly8と比べたとき、より高いED50を示した。
【0089】
【表2】
【実施例4】
【0090】
実施例4.完全な細胞のGLP-1受容体へのペプチドの競合的結合
結合研究を、Montrose-Rafizadeh et al., (1997b) J. Biol. Chem. 272:21201-206のやり方で実施した。要するに、CHO/GLP-1R細胞を、12ウェル・プレート上で集密まで育て、実験の2時間前に無血清Ham F-12培地で洗浄した。0.5 mlの結合緩衝液(10)により2回洗浄した後、細胞を、2% BSA、17 mg/LのDiprotin A(Bachem, Torence, CA)、10 mMのグルコース、1〜1000 nMのGLP-1又は他のペプチド、及び30,000 cpmのSI-GLP-1(Amersham, Philadelphia, PA)を含む0.5 mlの緩衝液と一緒に、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション終了後に、上清を捨て、細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、そして0.5 mlの0.5 NのNaOH及び0.1%のドデシル硫酸ナトリウムと一緒に室温で10分間インキュベートした。細胞ライセートの放射活性を、ICN Apec-Series g-counterで計測した。総結合から、大過剰の非標識GLP-1(1 μM)の存在下でインキュベートした細胞に関する放射活性を差し引いて、特定の結合を決定した。
【0091】
次に、ヒトGLP-1受容体に対する競合的結合によって[125I]GLP-1を置き換えるこれらのGLP-1アナログの能力を検査した。濃度を変えたペプチドの不存在及び存在下、CHO/GLP-1R細胞を[125I]標識GLP-1と一緒にインキュベートした。図6を参照のこと。
【0092】
GLP-1受容体に競合的に結合したそれらの化合物について得られたIC50値を、表3に示す。6-アミノヘキサン酸部分の挿入は、受容体への結合の減少をもたらした。9位のスペーサー、6-アミノヘキサン酸基の長さの増加により、GLP-1受容体に対する親和性の劇的な減少があった。D-アミノ酸置換された化合物で見られた生物活性の欠損は、それらのGLP-1受容体に対する結合能力の著しい減少によって説明されうる。化合物GLP-1D21(ペプチド6)及びGLP-1A11D(ペプチド7)は、標識されたGLP-1を置き換えなかったように、D-アミノ酸置換の増加するほど受容体認識の累進的な減少があった。
【実施例5】
【0093】
実施例5.インビボにおける急性活性
急性最大インシュリン応答を、静中ペプチド投与後のズッカーラットにおける血漿インシュリン・レベルの定量によって測定した。特に、一晩の絶食後の体重約400 gの糖尿病雄ラットを、50 mg/kgのペントバルビタールにより麻酔し、そして採血のためにカテーテルをそれらの右大腿動脈に結んだ。その後、exendin-4、GLP-1、又はペプチド(0.4 nmol/kg)のボーラスを、それらの左伏在静脈中に30秒で投与した(1つのペプチドにつきN=6)。ペプチド投与前、及びその後5、15、30、60及び90分で採集した血液を、インシュリン定量のために、EDTA及びアプロチニンを含むヘパリン処理管内に注いだ。血漿を、分離し、取り除き、そして直ちに-70℃に冷凍した。次にラット・インシュリンELISAキット(Crystal Chem Inc., Chicago, IL)を使ってインシュリン・レベルを定量した。
【0094】
先のインビトロにおける研究からの2例の効能をもつペプチド、ペプチド番号10(Ex-4WOT;配列番号7)、及びペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)の急性インビボ活性を、インシュリン分泌を誘発について、絶食、糖尿病ズッカーラットにおいて評価した。ペプチド(0.4 nmol/kg)の等モル投与の後の、ピークの血漿インシュリン濃度を、図7に示し、等モルのexendin-4及びGLP-1の後に達成されたものと比較する。Ex-4WOTもGly-8も、強力に血漿インシュリン濃度を増加させた。
【0095】
図7で説明されるように、それらのi.v.投与の後に、ペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)及びペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7)によって例証されるように、RIN1048-36細胞においてインシュリン分泌を誘発するペプチドのインビトロにおける作用は、絶食、糖尿病ズッカーラットにおける血漿インシュリン濃度を急激性に高めるインビボにおける活性と相関関係がある。特に注目すべきことは、exendin-4の末端第9アミノ酸を欠いているEx-4が等モルのexendin-4がしたよりさらに強力であることが証明されたことである。同様に、ペプチド1(GLP-1Gly8)が、等モルのGLP-1より効さらに強力であることを証明した。
【実施例6】
【0096】
実施例6.インビボにおける活性の継続時間
インシュリン分泌刺激作用の時間依存的な継続時間を、腹膜内(i.p.)ペプチド投与後のズッカーラットにおける血漿インシュリン及びグルコース・レベルの定量によって評価した。具体的には、一晩に絶食した、体重約400gの糖尿病雄ラットを、50 mg/kgのペントバルビタールで麻酔し、そして採血のためにカテーテルを右大腿動脈に結んだ。その後、exendin-4、GLP-1、又はペプチド(0.4 nmol/kg)のボーラスをi.p.投与した。(1ペプチドにつきN≧2)。ペプチド投与前、及びその後30及び60分、そして2、4、6及び24時間に採集した血液を、インシュリン定量のために、EDTA及びアプロチニンを含むヘパリン処理管内に注ぎ、そして分離したサンプルで、グルコースを計測することにした。血漿を分離し、取り除き、そして直ちに-70℃に冷凍した。次にラット・インシュリンELISAキット(Crystal Chem Inc., Chicago, IL)を使ってインシュリン・レベルを定量し、血漿グルコースをグルコース酸化酵素法によって定量した。
【0097】
図8で示されるように、特定のアミノ酸修飾は、インビボにおいてインシュリンに対して長期間の作用を提供する。この件に関して、血漿インシュリン・レベルに対して、ポリペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7)は、exendin-4のように、長く作用することが分かった。さらに、急性研究と同様に、糖尿病ラットにおいて、ポリペプチド10が、等モルのexendin-4よりさらに強力であることを証明した。対照的に、ポリペプチド1(GLP-1Gly8;配列番号3)及びポリペプチド11(GLP-1Aha8;配列番号8)が、GLP-1とexendin-4の中間であった;前者より長いが、後者より短い、時間依存的なインシュリン応答に対する作用をもつことが分かった。さらに、急性研究と同様に、糖尿病ラットにおいて、ポリペプチド1及び11が、等モルのGLP-1よりさらに強力であることを証明した。
【実施例7】
【0098】
実施例7.MALDI質量スペクトル法
GLP-1(2 μM)とGLP-1Aha8(配列番号8)(2 μM)を、PBS中、5 mUの組み換えDPP1V(Calbiochem, La Jolla, CA)と一緒に、37℃でそれぞれ10分間と2時間インキュベートした。両化合物(100 μM、100 μl)を、同等の量のヒト血清中、37℃で2時間インキュベートした。全てのケースについて、酸素反応を、トリフルオロ酢酸(0.1%v/vの終濃度)の添加によって止めた。マトリックス支援レーザー脱離イオン化法−飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF)を使って、サンプルを直ちに分析した。MicromassMALDI-TOF(Micromass, Beverly, MA)リフレクトロン機器を、1スペクトルにつき5レーザー・ショットを用いて、1000〜6000 Daの質量範囲にわたり15〜25%のレーザー・エネルギーで使用した。α-シアノ-4-ヒドロキシシンナミック酸(Sigma, St.Louis, MO)を、マトリックスとして使用し、8 mg/mlの炭酸アンモニウム(Sigma, St.Louis, MO)バッファー中、10 mg/mlの濃度に調製した。MALDIプレートに移す前に、1 μlのサンプルを、マトリックスで50/50 v/vに希釈した。
【0099】
GLP-1Aha8(配列番号8)の安定性を、DPP1V及びヒト血清の存在下でGLP-1と比較した。37℃で、10分間のDPP1V(5 mU)による、又は2時間の100%血清によるGLP-1(2 μM)の処理は、MALDIによって計測されるように、N末端を切り取られた産物の量の顕著な増加を引き起こした(Mr=3089 gmol-1)。対して、GLP-1Aha8(2 μM)は、いずれの治療に対しても抵抗力があるように思われた。
【実施例8】
【0100】
実施例8.インビボにおけるGLP-1Aha8の生物活性の測定
6ヶ月齢の雄ズッカーfa/faラット(Harlan, Indianapolis, IN)、及び6ヶ月齢のウィスターラットを、この研究で使用した。それらを、食べ物と水を自由摂取させ、12時間の明、12時間の暗のサイクル(午前7時に点灯)の状態にした。ズッカーラットの床敷きは、紙ベースの製品「Carefresh」(Absorption Co., Belingham、WA)であった。実験の前一晩、床敷きの不存在の状態で、ズッカーラットをワイヤー上で絶食させた。ウィスターラットを、それらの通常の床敷き上で絶食させた。ペントバルビタール(50mg/kg)の腹膜内の注射によって全身麻酔を誘発した。採血のために大腿動脈にカニューレを取り付け、そしてポリペプチド(GLP-1Aha8(配列番号8)及びGLP-1Gly8(配列番号3)、24 nmol/kg)を、動物の首筋に皮下注射した(各処置群についてn=5)。血糖値を、Glucometer Elite(Bayer Corp. Diagnostics, Tarrytown, NY)を使っやグルコース酸化酵素法によって計測した。
【0101】
GLP-1Aha8がインビボにおいて生物活性をもつことを確認するために、前記ポリペプチドを、絶食ズッカー脂肪(fa/fa)ラット及びウィスターラットに皮下投与した(24 nmol/kg)。ズッカーラットの他の群は、同投与量のGLP-1Gly8を受けた。そして次の8時間の間、血糖値を観察した。図9において、結果は、両化合物ともに、急速に血糖を下げたことを示す。ズッカーラットにおいて、グルコース絶食は、その群の中では低かったが、しかし低下の傾斜及び大きさは両化合物に類似していた事実から、血糖の減少は、GLP-1Gly8によってより顕著だった。このクラスの化合物によるインシュリン分泌刺激のグルコース依存性を証明した、低血糖の範囲への血糖の低下から、インシュリン分泌は、GLP-1Gly8により弱められた。GLP-1Aha8によって処理したズッカーラットが低血糖にならなかった場合、インシュリン分泌刺激応答は、撤回されずに、そして長期間の効果が見られることができた。絶食状態で高血糖ではないウィスターラットにおいて、インシュリン・レベルは、GLP-1Aha8によって急激に高められ、低血糖、そして再度のインシュリン分泌刺激応答の迅速な減衰をもたらした。
【実施例9】
【0102】
実施例9.Exendin-4の切詰め、及びExendin-4の第9アミノ酸C末端の生物学的な重要性
この研究は、Ex-4の生物活性に対する、第9C末端アミノ酸の重要性を判断するために実施した。切詰められたEx-4アナログの配列と、第9C末端配列を付加したGLP-1アナログを当該研究に使用した。
【0103】
材料及び細胞系
先に記載のとおり、ペプチドを合成した。全てのペプチドが、95%超の純度であった。表4は、研究したGLP-1及びexendin-4アナログの配列を示す。イソブチルメチルキサンチン(IBMX)は、Calbiochem(La Jolla, CA)から購入した。Exendin-4及びGLP-1-(7-36)アミドを、Bachem(Torrance, CA)から入手した。クローン化したラット・インスリノーマ細胞系RIN1046-38は、Dr. Samuel A. Clark(BioHybrid Technologies, Shrewsbury, MA)からの贈与物であり、37℃の加湿5%CO2-95%エアー・インキュベーター内で、グルコース(11 mM)、50 U/mlのペニシリン、50 μg/mlのストレプトマイシン及びグルタミン(2 mM)を補充したEarle's塩(Mediatech, Inc., Herndon, VA)を伴うM199中で、日常的に培養された。GLP-1受容体遺伝子により安定的にトランスフェクトされたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、CHO/GLP-1R細胞を、先に記載した。血漿インシュリン・レベルをELISAによって計測した(Crystal Chem Inc., Chicago ILL)。HbA1cを、Greig et al., 1999に記載のとおり計測した。血糖値を、Glucometer Elite(Bayer Diagnostics, Tarrytown, NY)を使って計測した。
【表3】
下線を引かれたアミノ酸が、試験されるexendin-4配列由来のアミノ酸を表す。
【0104】
動物
6ヶ月齢の雄ズッカー(fa/fa)ラット(Harlan, Indianapolis, IN)、2ヶ月齢のC57BLKS/J-Leprdb/Leprdbマウス(Jackson Laboratories, Bar Haror, MA)、及び2ヶ月齢のフィッシャーラット(Harlan, Indianapolis, IN)を、急性及び慢性の実験で使用した。全ての動物に、食べ物と水を自由摂取させた。動物を、12時間の明-暗いサイクル(午前7時に点灯)の状態のおいた。ズッカーラット及びdb/dbマウスのための床敷きは、紙ベースの製品、Carefresh(Absorption Co., Belingham, WA)であり、そしてフィッシャーラットを、通常の床敷きの上に収容した。
【0105】
細胞内cAMPの定量
12ウェル・プレート上で60から70%集密まで培養したRIN1046-38細胞を、実施例3に記載のとおり処理し、そして適宜にcAMP定量を実施した。用量反応曲線を図21に示す。
【0106】
完全な細胞のGLP-1受容体へのペプチドの競合的な結合
実施例4に記載のとおり結合試験を実施した。表5は、それぞれCHO GLP-1R細胞における競合的結合及びRIN 1046-38細胞におけるcAMPアッセイから得たIC50及びEC50値を示す。
【表4】
【0107】
統計分析
全ての値を平均±SEMとして示し、群間の差を、ANOVAを使って分析した。図1及び2の曲線を、反復コンピュータプログラム(20)を使って4因子S字状ロジスティック回帰方程式に適合させ、そして表2のEC50及びIC50値を適合データから計算した。
【0108】
ズッカーfa/faラットにおける急性経時変化実験
10 nmol/kgのペプチドを、0.1%のBSAを含むPBS溶液で投与したことを除き、実施例5で先に記載したとおり、6ヶ月齢の雄ズッカーfa/faラット(Harlan, Indianapolis, IN)をこの研究で使用した。Ex(1-36)及びEx(1-35)のsc注射後の血糖値を、図22に示す。
【0109】
db/dbマウスにおけるEx(1-30)を用いた慢性研究
動物を、実験開始前にそれらの環境順化を容易にするために、2.5ヶ月間我々の施設に収容した。処理の最初の20日間、毎日午前9時に、動物にEx(1-30)(1 nmol/kg)を腹膜内(ip)注射で与えた。その後、次の32日間、午前9時と午後9時位に、動物は、ipでEx(1-30)(1 nmol/kg)を受けた。処理プリトコールの最初の20日の終了時点で、血糖値及びHbA1cを計測した。食物摂取及び動物体重を、毎日午前9時の注射時に測定した。スケジュールの中で失敗した日はない。磁気共鳴像(MRI)を、51日目で取り、そしてIPGTTを、52日目に実施した。
【0110】
20日目におけるHbA1cは、Ex(1-30)処理マウスについて7.8±0.4、生理食塩液処理マウスについては7.7±0.3であった。絶食血糖値は、Ex(1-30)処理マウスについて412±92 mg/dl、が生理食塩液処理マウスについては600±1 mg/dlであった。
【0111】
磁気共鳴映像法
1.9 T、ボア31 cmのBruker BioSpecシステム(Bruker Medizintechnik GmbH, Ettlingen, Germany)、内径20 cmのシールド型グラジエント・セット、及び直径5 cmのボリューム共鳴器を使って、磁気共鳴イメージを得た。慢性の研究で使用した動物を、イソフルオラン知覚麻痺下に置き、標準T1強調多重スライス・スピン−エコー法(TR=500 ms、TE=8.5 ms)を、腹部全体を含む領域をカバーする、各2.1mmの厚さの20の隣接するスライスにわたって得られた。視野は、128×128画素より高く5×5 cmであった。各々のイメージを、約9分の総撮像時間にわたり、8回の収集を使って収集した。全ての動物において、撮像を2つの時点(0日目と51日目)で実施した。
【0112】
内臓と皮下部位の分離を、各々のスライスについて、着目の図面領域(ROIs)によって実施した(Bruker Paravisionソフトウェア)。各ROIから得られる強度ヒストグラムを使って、正常な組織からの脂肪の区分けを達成した(NTH Image software, National Institutes of Health, USA)。このヒストグラムは、各ROIにおいて脂肪組織含量が合計できるようにする分界点としてそれらの間の谷を使用して分けられた、2つの十分に分離されたピークを一般的に示した。
【0113】
結果を図23に示す。両セットの動物(対照及びEx(1-30)投与)で体重が減少したが、Ex(1-30)処理した動物は、内臓脂肪沈着の減少を示した。処理された動物は、薬物を受けなかった対照と同ほど速く体重を失わなかった。よって、処理は糖尿病を軽くして、処置した動物はより健康的だった。
【実施例10】
【0114】
実施例10.β-アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)の代謝に対するGLP-1とGLP-1アナログの効果
アルツハイマー症(AD)の重要な病理的な特徴の1つは、主にアミロイド-βペプチド(Aβ)より成る老人斑の脳血管沈着である。Aβは、より大きなグリコシル化膜結合タンパク質β-アミロイド前駆体タンパク質(βAPP)から誘導される。大部分のβAPPは、Aβドメインにタンパク質分解によって切断されて、アミロイド生成性断片の形成を防ぐ可溶性誘導体(sAPP)を産生する。この研究は、β-アミロイド前駆体タンパク質のプロセッシングに対するGLP-1及び2つのアナログの効果を測定するために実施した。
【0115】
PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化胎児ウシ血清、25 mMのHepesバッファー、及び1×抗生物質−抗真菌性溶液を補充したRPMI1640中で培養した。(全ての培地及び血清を、MediaTech Inc.から入手した(Herndon VA)。処理を、低血清中、GLP-1(3.3、33及び330 μg/ml)(Bachem, Torrance, CA)、並びに2つのアナログexendin-4(0.1、1.0及び10 μg/ml)及びexendin-4-WOT(ペプチド10(Ex-4WOT;配列番号7))(0.1及び1.0 μg/ml)の存在下で実行した。PC12細胞によって調整培地中により多くのsAPPの分泌をもたらす分泌経路を刺激することが示されているNGF(5、10、25及び50 ng/ml)(Promega, Madison, WI)を正の対照として使用した。処置の3日後、未処理(低血清培地のみ)及び処理細胞の調整培地、及び細胞ライセートを、モノクローナル抗体、22C11(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を使って免疫ブロット分析に共した。そのエピトープ領域が外形質のシステイン含有ドメインのβAPP66-81に割り当てられた、E.コリ(E.coli)産生βAPPに対して産生された、抗体は、細胞膜中に見つかったβAPPの全ての成熟型、並びに調整培地中に分泌されたカルボキシ切詰め可溶性型を認識する。処理又は未処理細胞からの調整培地又は細胞ライセートの典型的な免疫ブロットで、複数の高分子量タンパク質の結合(Mr 100〜140 kDa)が、明白だった。免疫ブロットにおける免疫反応性バンドの特徴で観察される差異は、ゲル中へのタンパク質の不均一な添加によるものでなく膜上へのタンパク質のむらがある移行によるものでもなかった。等量の総タンパク質を、ゲルの各々のレーンに添加し、5%の酢酸中、0.1%のPonceau Sにより膜を染色することによって、電気泳動移行の効率を観察した。
【0116】
上方のバンドの濃度測定による定量化は、NGF処理後にβAPPの細胞内レベルの急激な上昇を明らかにした(図11A、棒グラフ1及び2;図11B、棒グラフ1及び2)。細胞培養実験間の特有の変化は、1組の研究の中の5 ng/mlと10 ng/mlのNGFによる(図面11AとC)、並びに異なる組の研究の中の25 ng/mlと50 ng/mlのNGFによる(図11BとD)処理後の分化の程度の差異を考慮する。NGFとは対照的に、GLP-1及びアナログは、βAPPの細胞内レベルを減少させた(図11A、棒グラフ3〜5;図11B棒グラフ3〜7)。NGF及びexendin-4の組み合わせ物は、未処理細胞に対して細胞内βAPPを増加させたが、しかし2つの単独の処理条件のそれの間のレベルであった(図11A、棒グラフ6)。
【0117】
図11C及びDに示されるように、全ての投与量の神経成長因子処理が、調整培地で検出されることができた分泌された、可溶性βAPP誘導体の急激な上昇をもたらした(図11C、棒グラフ1及び2;図11D、棒グラフ1及び2)。細胞ライセートからの細胞内βAPPレベルの類似したパターンに続いて、GLP-1、exendin-4及びexendin-4-WOTの全ての投与量による処理は、調整培地中への検出可能なレベルのsAPPの減少を引き起こした(図11、棒グラフ3〜5;図11D、棒グラフ3〜7)。NGFとexendin-4の組み合わせ物は、未処理細胞に対してsAPPレベルの少しの変化も引き起こさなかった(図11C、棒グラフ6)。
【0118】
Sigma Co.からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)キットを使って、使用した処理及び未処理細胞の両方の、調整培地及び細胞ライセート・サンプルにおいて以下に記載のとおりLDHのアッセイを実施した。使用した条件下で処理及び未処理細胞間のLDHレベルで著しい変化は観察されなかった。使用された投与量でのGLP-1及びアナログによる処理の結果としての毒性の可能性は外される。
【0119】
データは、12細胞におけるGLP-1処理後に、βAPPの分泌されている誘導体と成熟型のレベルを減少させることを示す。sAPP分泌のこれらの減少は、減少したβAPP合成の分泌の結果である。
【実施例11】
【0120】
実施例11.GLP-1及びアナログの神経増殖と分化の促進
ラット褐色細胞腫(PC12)細胞系において、ニューロンの増殖と分化、及びニューロンタンパク質の代謝に対するGLP-1とその長期作用性アナログ2種類、exendin-4、及びexendin-4 WOTの効果を、試験した。GLP-1及びexendin-4は、神経突起の伸長を誘発し、それは、選択的GLP-1受容体拮抗薬、exendin(9-39)との同時インキュベーションによって覆された。さらに、exendin-4は、神経成長因子(NGF)によって開始された分化を促進し、かつ、NGF介在撤回に続く細胞の変性を救う。
【0121】
材料
7S NGFを、Promega(Madison, WI)から購入した。GLP-1及びexendin(9-39)を、Bachem(Torrance, CA)から入手した。Exendin-4及びそのアナログ、exendin-4WOTを合成し、先に記載のとおりHPLC分析によって>95%の純度であることを評価した。全ての他の化学薬品は、別段の記載のない限り、高純度であって、Sigma Chemicals(St.Louis, MO)から入手した。
【0122】
データ分析
統計分析を、必要に応じて実施した。結果を平均±SEM(SEM=平均間の差異の標準誤差)と表現した。SPSSバージョンVIIを使って、分散分析(ANOVA)を実行し、p<0.05を、統計的に有意であるとみなした。有意な主効果に続いて、Tukey's Honestly Significant Difference test(テューキーのHSD)を使って計画比較を行った。
【0123】
培養条件
褐色細胞腫細胞を、Dr. D. K. Lahiri(Indianapolis)から入手し、RIN1046-38細胞(クローン・ラット・インスリノーマ細胞株)は、Dr. Samuel A. Clark(Bio Hybrid Technology, Shrewsbury, MA)からの贈与物である。PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化胎児ウシ血清、25 mMのHepesバッファー、及び1×抗生物質−抗真菌溶液を補ったRPMI1640中で培養した。RIN1046-38細胞を、12 mMのグルコースを含み、5%の熱不活化胎児ウシ血清、0.03%のグルタミン、50 U/mlのペニシリン、及び50 mg/mlのストレプトマイシンを補った培地199中で培養した。細胞培養培地及び血清を、MediaTech(Cellgro) Inc.(Herndon, VA)から入手した。細胞を、5.0%のCO2を含む加湿雰囲気中で培養した。それらを、1枚の60 mm皿につき約2.0×106細胞にて播種した。PC12細胞を、ラットの尾のコラーゲンで覆われた培養器(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis)上で培養した。7S NGFを、100 mg/mlの濃度で成長培地中への希釈によって調製し、-20℃で保存した。GLP-1及びアナログの原液を、滅菌水中で新たに作製し、-20℃で保存した。
【0124】
各々の処理条件について3枚の皿を、準備した。播種後24時間、いったん細胞が十分に接着すれば、処理を開始する。培地を吸引し、そして(0.5%の胎児ウシ血清だけを含む)3 mlの新鮮な低血清培地を、適当な化合物と一緒に加えた。
【0125】
細胞ライセートの準備
イムノブロッティング法によるタンパク質分析のために、調整培地及び細胞ペレットを毎日採集した。細胞ライセートを以下のとおり調製した。プレートからの細胞を、そっと回収し、10分間800 gで遠心分離した。細胞ペレットを、10 mMのTris-HCl(pH7.4)、1%のSDS、0.174 mg/mlのフッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、各々1 mg/mlのアプロチニン、ロイペプチン、ペプスタチンA、及び45.98 mg/mlバナジン酸ナトリウムと10.5 mg/mlフッ化ナトリウムの混合物4 mlを含む溶解バッファー中に懸濁した。懸濁した細胞を、粉砕し、15分間14,000 gで遠心分離した。上清溶液のタンパク質(細胞ライセート)を、計測し(Bradford, 1976)、イムノブロッティング法によって分析した。
【0126】
ウェスタンブロッティングによるタンパク質分析
2.6%のビスアクリルアミド(Novex、サンディエゴCA)を含む10%のTris−グリシン・ゲルを使って、各細胞ライセート及び調整培地からのタンパク質10 μgを用いて、ウェスタンブロット分析を実施した。タンパク質を、PVDF紙上にブロットした。5%の酢酸(Sigma)中、0.1%のPonceau S溶液を用いて膜を染色することによって、移したタンパク質を可視化した。
【0127】
Exendin-4及びGLP-1の介在した神経突起の伸長
PC12細胞を、上記のとおり60 mm皿上で培養し、4日間培養した。この間神経突起の伸長を毎日定量した。1枚の皿につき、5つの無作為な細胞領域を評価し、そして神経突起をもつ細胞の割合が測定した。1つの領域につき約100細胞を、細胞体のそれと同等以上の長さの神経突起について記録した。1つの細胞につき1以上の突起をもっていたかもしれないが、1つの細胞を一度だけ記録した。
【0128】
神経栄養性化合物の存在しない完全培地で培養された培養されるとき、PC12細胞はニューロン細胞型の特徴を全く示さなかった。低血清培地中でNGFに晒されたとき、細胞は、分裂を止め、そして交感神経ニューロンに類似した形態的特徴を発現させた。細胞は、長い突起を伸ばし、あるものは、低血清培地のみで培養した細胞においてより、さらに扁平な外観を示す細胞体を伴って高度に分岐するようになった。
【0129】
低血清培地中でのGLP-1及びexendin-4による処理は、NGFによって誘発されたものへの分化に対して類似した効果を引き起こした。GLP-1及びexendin-4の誘発した神経突起は、NGFによる処理を受けて産まれた神経突起より、一般に長さが短かくて、分岐が少ない。対照的に、exendin-4との組み合わせでGLP-1拮抗薬、exendin(9-39)は、神経突起伸長を開始できない。
【0130】
神経突起の発達に関する毎日の定量化をも実施した。図12で示した結果は、処理3日目に得たカウントを表し、そして未処理対照のパーセンテージとして表される。低血清培地の存在下、PC12細胞の培養は、5〜10%の細胞が神経突起の突起を伸長する結果となった。分析は、処理条件の有意な主効果を明らかにした(F=263.5、df=8,89、p<0.001)。期待されるように、NGF処理は、本明細書中で試験した3つの投与量;10、30及び100 ng/mlでニューロン表現型を有意に誘発した(全てp<0.01)。例えば、10及び30 ng/mlのNGFによる細胞の処理は、対照から神経突起の突起の、それぞれ550及び720%の増加を引き起こした。同じ条件下で、PC12細胞をexendin-4で処理した場合、有意な神経突起の伸長は、1 μg/ml(未処理に対して98%の増加、p<0.05)、及び10 μg/ml(未処理に対して160%の増加、p<0.01)の化合物でも観察された。しかし、exendin-4による神経突起の伸長は、NGF処理細胞のそれほどは顕著ではなかった。2つの化合物の相乗効果を測定するために、組み合わせ処理の系列を試した。
exendin-4(100 ng/ml)を、10 ng/ml又は30 ng/mlのNGFのいずれかと同時処理したとき、神経突起伸長の有意な増加を、未処理対照細胞に対して観察した(それぞれ、596%及び819%増加、ともにp<0.01)。NGF処理単独に対する神経突起伸長の増加は、30 ng/mlで有意であるのみだった(p<0.01)。類似した結果を、単独で又はNGFと組み合わせて、他の投与量のexendin-4によって観察した。これらのデータは、exendin-4が分化を開始することができて、かつ、NGFに誘発された分化を促進することができることを示唆している。
【0131】
NGFが介在する細胞死に対するExendin-4の効果
50 ng/mlのNGFの存在/不存在下、又はexendin-4(1又は5 mg/ml)存在/不存在下、PC12細胞を、完全培地(RPMI1640+5%のウシ胎仔血清+10%のウマ血清)中で培養した。4又は7日後に、細胞を採集し、続いてさらに3日間、通常培地中で回復させた。最終日に、細胞を採集し、生細胞の割合を測定するためにMTTアッセイを実施した。2番目の組の実験(阻止)において、4又は7日間、細胞を、50 ng/mlのNGF及びexendin-4(1又は5 mg/ml)の存在下で培養した。細胞を採集し、前記のとおり回復させた。3番目の組の実験(救済)において、細胞を、50 ng/mlのNGFの存在下で4日間培養した。さらに3日間、5 mg/mlのExendin-4を、培地に加えた。7日目に細胞を採集し、前記のとおり回復させた。
【0132】
4番目の組の実験(救済)において、細胞をNGFの存在下で培養した。4日目に、さらに3日間、5 mg/mlのexendin-4を加えた。7日目に細胞を採集し、前記のとおり回復させた。以下に記載のとおり、4及び7日目に、トリパンブルー排除法、及びにMTTアッセイを実施することによって、細胞を各々のプレート(4プレート/処理条件)についてカウントした。
【0133】
これらの実験で、4日後のNGF処理中止は、大量の細胞死を引き起こさずに、そして大部分の細胞はほとんど完全に回復することができた。Exendin-4同時処理は有意な効果を示さなかった。処理の7日後のNGF処理中止は、細胞の生存度の15〜20%の減少を引き起こし、そしてこの細胞は、完全に回復することができなかった(図13、棒グラフ2)。この場合、exendin-4の同時処理は、低用量(図13、棒グラフ4)又は高用量(図13、棒グラフ6)のいずれも、あるいはNGF処理の4日に添加された場合にも(図13棒グラフ7)細胞死を防がなかった。しかしexendin-4処理をNGF処理中止に続いて実施した場合、回復過程が促進された。例えば、PC12細胞をNGFの存在下で4日間培養し、4〜7日目にNGFを処理中止し、exendin-4を加えたとき(図13、棒グラフ8及び9)、細胞生存度は、対照値に達した(>95%)。これは、高用量(5 mg/ml)及び低用量(1 mg/ml)のexendin-4の両方についてであった。
【0134】
MTT分析
Promega(Madison, WI)製のCellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay Reagentを、修飾MTTアッセイにおける生細胞数の測定のための比色分析手順で使用した。この試薬は、新規テトラゾリウム化合物[3-(4,5-ジメチル-2-yl)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)-2H-テトラゾリウム、内部塩;MTS]、及び電子共役試薬(フェナジン・エトスルフェート;PES)を含む。PESは化学安定性を高め、それはMTSとの組み合わせを可能にし、安定した溶液を形成した。MTSテトラゾリウム化合物は、組織培養培地に溶解する、有色のホルマザン産物へと細胞によって生物学的に還元される。代謝的に活性な細胞中のデヒドロゲナーゼ酵素によって産生されるNADPH又はNADHによって、この転換は恐らく達成される(Berridge and Tan, 1993)。アッセイを、直接的に培養したウェルへの少量の試薬の追加、1〜4時間のインキュベーション、続く96ウェルプレート・リーダーによる490 nmの吸光度によって実施される。490 nmの吸光度の値によって計測されるホルマザン産物の量を、培養物中の生細胞の数に直接に比例している。MTSホルマザン産物は組織培地に溶解するので、本手順は、MTTのようなテトラゾリウム成分を使う手順よりわずかなステップしか必要としない。
【0135】
PKA阻害薬による神経突起伸長の部分的な抑制
GLP-1及びexendin-4誘発神経突起伸長の機構を決定するために、分化した培養物を、それぞれERK MAPKとPI3-Kを阻害する50 μMのPD98059又は40 μMのLY294002で処理する。cAMPに依存したMAPKリン酸化がPKAによって制御されたかどうかを決定するために、GLP-1及びNGFによって誘発した神経突起をPKAの特異的阻害薬、H89で処理した。
【0136】
具体的には、培養物を、GLP-1アンタゴニストであるexendin(9-39);PI3キナーゼ阻害薬であるLY294002(40 μM);MAPキナーゼ阻害薬であるPD98059(50 μM)、又はPKA阻害薬であるH89(20 μM)で48時間処理した。細胞を、約1×105細胞/mlで60 mm皿上に播種し、そして前記の化合物のそれぞれとともに10 nMのGLP-1又は0.3 μMのexendin-4で処理した。50 ng/mlのNGF及びフォルスコリン(PKAアクチベーター)(20pM)を、これらの処理の正の対照として使用した。
【0137】
PD98059及びLY294002の両者は、細胞のGLP-1及びexendin-4の誘発した神経突起伸長を減少させた。同様に、NGFに誘発された神経突起の伸長が、PD98059及びLY294002の処理にを受けて減少した。よって、ERK MAPキナーゼ及びPI3キナーゼ・シグナル伝達経路の関与が、PC12細胞におけるGLP-1及びexendin-4が介在した神経突起産生に関係する。H89での処理が、GLP-1及びNGFによって誘発された神経突起伸長に対する多少の阻害効果を証明した。これらのデータは、PKAがMAPキナーゼ・シグナル伝達経路の調節に関与しているが、しかし他のシグナル伝達経路も関与していることを示唆する。
【0138】
シナプトフィジン及びBETA-2/NeuroDの発現
GLP-1、exendin-4又はexendin-WOTの誘発したPC12細胞の分化の間に生じている分子の変化を検討するために、シナプス小胞膜でよく発現されているリン酸化された37 kDaのタンパク質である、シナプトフィジンの特徴を試験した。PC12細胞の神経分泌液胞を染色するシナプトフィジン・モノクローナル抗体(Oncogene Research Products, San Diego, CA)を使用した。膜を、20 mMのTris、500 mMのNaCl pH7.4、1%(w/v)のカゼイン(BioRad, San Diego, CA)によって37℃で1時間ブロックした。一次抗体を、ブロック中に希釈し、そして4℃で一晩タンパク質と一緒にインキュベートした。前記膜を、20 mMのTris pH7.4、150 mMのNaCl、及び0.05%のTween-20(TBST)で3回、室温で15分間強く洗浄した。ブロック中、ペルオキシダーゼ連結二次抗体を、膜と一緒に室温で2時間インキュベートした。ペルオキシダーゼ連結抗マウスIgM(Chemicon, Tenecula, CA)を、シナプトフィジンに対する二次抗体として使用した。過剰な抗体を、TBSTで3回強く洗い落とし、その後ECLプラス(Amersham, Philadelphia, PA)中で5分間インキュベーションした。続いて膜を写真用フィルムに焼き付けた。Molecular Analystソフトウェア(BioRad, Hercules, CA)を使ってタンパク質バンドの濃度測定による定量化を実施した。
【0139】
シナプトフィジン抗体を使った細胞ライセート・サンプルのウエスタン免疫ブロット分析は、約37 kDaの分子量バンドを明らかにした。NGF、GLP-1及びGLP-1アナログによる処理は、未処理細胞と比べてのシナプトフィジン・タンパク質の発現を著しく減少させた。タンパク質バンドの濃度測定による定量化は、未処理に対して、全ての処理条件について有意な減少を示し(図14、全てp<0.01)、それらは、投与量に依存していると考えられる。PC12細胞由来の調整培地サンプルの中に、免疫反応性バンドは検出されなかった。
【0140】
NGF処理の結果としてのPC12細胞における高度の分化は、未処理対照細胞に対してシナプトフィジン発現の著しい減少によって明らかとなった。神経成長因子は、対照細胞に対して約70%の最大減少を引き起こす、細胞性シナプトフィジン発現の投与量に関係した変化を証明した。GLP-1及びアナログは、NGFが介在した分化に対して神経突起の伸長への類似した効果を示したが、しかしより低頻度に対してシナプトフィジン発現の比較的わずかな減少しか示さなかった。興味深いことに、組み合わせたNGFとexendin-4は、相加的な形態的効果を反映して、いずれか単独の化合物よりもシナプトフィジン発現の大きな減少を引き起こした(図14)。総じて、exendin-4は、シナプトフィジン発現の点で、PC12細胞の分化を、GLP-1又はexendin-4WOTのいずれかがしたより顕著な誘導を示した。
【0141】
GLP-1の誘発したPC12の分化における転写因子BETA-2/NeuroDの役割を調査するために、細胞ライセートを、NeuroDポリクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc., Santa Cruz, CA)によって調査した。BETA-2/NeuroDは、ニューロンと膵臓の内分泌の発達に重要な役割をもつ。NeuroDの発現は、ニューロン分化の間の、末梢神経系の知覚及び運動ニューロン、感覚器、並びに脳及び脊髄の一部において短期的であると考えられるが;しかし成人の脳における検出は、成熟したニューロンにおける二次的な役割を示唆する(Lee et al., 1997)。膵臓の内分泌の細胞、腸及び脳におけるBETA-2発現は、インシュリン遺伝子の転写を活性化して、ニューロンの分化を促進しうる。機能的なBETA-2遺伝子を欠く突然変異マウスは、インシュリンを産生するベータ細胞数の顕著な減少を有し、成熟した島の発達を欠き、そして結果としてしばしば周産期死亡をもたらす重度の糖尿病を患う(Naya et al., 1997)。よって、BETA-2/NeuroDは、インビボの膵臓の発達、及びニューロンの分化に不可欠である。
【0142】
ペルオキシダーゼ連結抗ヤギIgG(Santa Cruz Biotechnology Inc.)を二次抗体として使用したことを除いて、シナプトフィジン抗体について先に記載のとおり抗NeuroD抗体を使って、NeuroD産生をウェスタンブロット分析によって測定した。未処理、及びGLP-1で処理したPC12細胞ライセートの両方ではっきり見える43kDaバンドを検出し、それは、GLP-1処理により増加した。BETA-2/NeuroD発現は、GLP-1での処理により増加し、このインシュリン分泌刺激ポリペプチドのニューロン分化特性のさらなる証拠を提供する。予想されるように、低血清培地のみに晒された培養物は、BETA-2/NeuroDの通常の発現を示した。実際、Noma et al.,(1999)は、NGFのような分化を誘発する薬剤なしに、神経突起に似た突起、及びシナプスに似た構造体のような形態的変化が誘発されたトランスフェクトPC12細胞におけるNeuroDの過剰発現を示した。
【0143】
PC12細胞におけるGLP-1受容体の存在の証明
PC12細胞を、35 mm培養皿内のポリ-L-リジン・コート・ガラス・カバースリップ上に移し、(先に記載のとおり)標準的な条件下で培養した。細胞を、30分間、0.25%のグルタルアルデヒドを用いて固定した。内性ペルオキシダーゼ活性を、0.3%のH2O2でクエンチし、GLP-1受容体のN末端に対して産生された一次ポリクローナル抗体(Dr. Joel F. Habener, Massachusetts GeneralHospital, MAからの贈与物)(希釈係数1:1500)中でのインキュベーションを、室温で1時間実行した。可視化は、ビオチン化抗ウサギIgG二次抗体中でのインキュベーションに続く、ジアミノベンジジン・ジヒドロクロライド(DAB)による発色を伴う、アビジン−ビオチン・ペルオキシダーゼ法を使った。
【0144】
PC12細胞におけるGLP-1R陽性免疫反応性染色の存在は、GLP-1受容体の存在を確かにした。より特に、染色は、細胞体上にあり、そして神経突起末端上により少ない。ほとんど全て細胞が、陽性に見えたが、しかし全てのPC12細胞が同程度に陽性免疫反応性染色を表したわけではない。
【0145】
逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
RT-PCRを、GLP-1受容体mRNAに関する高感度アッセイとして実施した。ラット・インスリノーマ細胞(RIN細胞)を、正の対照として使用した。全RNAを、ChomczynskiとSaccchi(1987)の方法を使ってPC12細胞から分離した。2.5 mgのRNAを我々のRT-PCR反応に使用した。50 mMのKCl、10 mMのTris-HCl、3.5 mMのMgCl2、200 mMのdNTP、並びに各々0.4 mMのラットGLP-1Rセンス(5'ACAGGTCTCTTCTGCAACC 3')及びアンチセンス(5'AAGATGACTTCATGCGTGCC 3')オリゴヌクレオチド・プライマー(膵臓のGLP-1受容体配列の5'及び3'末端)を含むバッファー50 mlの量でRT-PCRを行った。[a-32P]dCTPの存在下、30サイクルで増幅を行った。ラット島細胞を、正の対照として使用した。RT-PCR産物(10 ml)を、適当なサイズマーカーと一緒に4〜20%のポリアクリルアミドゲルで分離した。続いて、真空下80℃で1時間ゲルを乾燥させて、そしてX線フィルムに焼き付けた。
【0146】
GLP-1受容体について予測されるサイズのRT-PCR産物を得た。ラット島mRNA及びPC12細胞mRNA中の928-bpのクリア・バンドは、PC12細胞上のGLP-1受容体の存在を支持した。
【0147】
cAMPの測定
cAMPの測定の前に、PC12細胞を、3日間、33 μg/mlのGLP-1で処理した。トリプリケートの培養物を、処理開始後、合計期間30分の間、5分の間隔で採集した。処理開始時(ゼロ分)に採集した細胞を、cAMPの基礎レベルに使用した。サイクリックAMPを、Monte-Rafizadeh et al.,(1997a)の方法に従って計測した。
【0148】
GLP-1受容体の活性化は、細胞内のcAMPの増加をもたらす、アデニルシクラーゼを刺激することを示した。サイクリックAMPを、33 mg/mlのGLP-1でのPC12細胞の処理に続いて30分間アッセイした。刺激の15分以内にcAMPレベルで最大1200倍増加し、それは30分以内にベースライン近くに戻った。これらの所見は、PC12細胞上のGLP-1受容体の存在及び活性を証明する。
【0149】
毒性分析
exendin-4の考えられる毒性効果を、インビトロにて2つの方法:LDH分析及びトリパンブルー排除法によって試験した。LDHアッセイを、Sigmaキットを使って実施した。処理後に異なる時間間隔で回集した調整培地サンプルを、高感度乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイに供した。LDHアッセイは、総細胞質内LDHを通して又は培地中に放出された細胞質内LDHの量の関数としての膜の完全性によって、細胞数の尺度を提供した。放出されたLDHの測定は、LDHの作用によるNADの減少に基づいた。得られた減少したNAD(NADH)を、テトラゾリウム色素の化学量論的変換に利用した。最終有色化合物を、分光光学的にに計測した。培地をアッセイするより前に細胞が溶解された場合、細胞数の増加又は減少が、変換された基質の量の付随する変化をもたらす。これは、試験物質によって引き起こされた胞傷害反応又は膜損傷(細胞毒性)の程度を示した。
【0150】
処理に続いて生細胞数の著しい変化はなく、我々の化合物が、検討した条件下で、PC12細胞に無毒であることを示唆した。図15を参照のこと。処理の間の細胞膜の完全性を測定するために、LDHレベルを、2つの別個の組の実験において、3日目に同じ条件下の対照及び処理細胞からの調整培地で計測した。期待されるように、LDHレベルは、培地標準(サンプルを処理開始時に採取した)に対して上昇した。しかし、10 ng/mlのNGF及び10 μg/mlのexendin-4を唯一の特例として、いかなる処理の投与も未処理細胞対照を越えてLDHレベルを大幅に高めなかった。10 μg/mlのExendin-4が、対照のそれの1.65倍までレベルを高め(p<0.001)、そしてlO ng/mlのNGFが、1.38倍の増加を示した(p<0.05)。
【0151】
ブロモデオキシウリジンの取り込みによって測定されたPC12細胞における細胞ターンオーバー
GLP-1が培養においてPC12細胞の増殖に影響するかどうかを測定するために、5-ブロモ-2'-デオキシウリジン(BrdU)の取り込みを観察することによって低血清培地中の細胞増殖を評価した。標識後の抗BrdU抗体を用いた免疫細胞化学を、標識の時点で活発にDNAを複製していた細胞を確認するために使用した。PC12細胞を、33 μg/mlのGLP-1又は50 ng/mlのNGFの存在下又は不存在下で3日間培養した。細胞DNAを標識するために、4%のパラホルムアルデヒド中に固定する6時間前に、10 μMのBrdUを培地に加えた。方法の残りの部分は、増殖キット(Roche, Indianapolis, IN)に従って行った。増殖している細胞(BrdU標識の時点でDNA複製を受けてた細胞)は、クロモゲン反応により暗染された核を示した。BrdU取り込みを、処理の1、2及び3日目に定量した。各々の処理条件について3枚の皿をカウントし、細胞総数に対する標識された細胞のパーセンテージとして表した。PC12細胞は、NGFによる処理(未処理に対して9%の上昇)及びGLP-1による処理(未処理に対して18%)後、1日目にBrdUの取り込みの増加を示した。
【実施例12】
【0152】
実施例12.グルカゴン様ペプチド-1及びExendin-4による、興奮毒性神経損傷の保護及び回復
グルタミン酸によって誘発した細胞死から培養海馬ニューロンを保護する、並びに、成体ラットイにおけるボテン酸で誘発したコリン作用性マーカー欠損を軽減する、GLP-1及びその長期作用性アナログ、exendin-4の能力を試験した。
【0153】
培養条件
海馬ニューロン培養物を、前記(Mattson et al., 1995)に類似した方法を使って18日齢の胎仔Sprague Dawleyラットから調製した。要するに、細胞を、軽いトリプシン処理及び粉砕によって解離させ、そして10%のFBS及び1%の抗生物質溶液(104 U/mlのペニシリンG、10 mg/mlのストレプトマイシン及び25 μg/mlのアムホテリシンB;Sigma Chemicals, St. Louis, MO)を含む最小必須培地中に蒔いた。海馬ニューロンを、25 mmの直径のポリ-D-リジン・コート・ガラス・カバースリップ上に、100,000細胞/mlの密度で蒔いた。細胞を蒔いた3時間後に、培地を、1%のB27-サプリメント(Gibco/Life Technologies, Carlsbad, CA)を含む無血清Neurobasal培地によって交換した。
【0154】
MAP-2(ニューロン)とGFAP(神経膠星状細胞)について染色した免疫螢光法が、細胞の98%以上がニューロンであり、そして残りが主に神経膠星状細胞であることを示した。培養物を、プレーティングの7〜10日以内に使用した。
【0155】
結合の検討
結合の検討を、Montrose-Rafizadeh(1997b)に記載のとおり実施した。デュプリケートの海馬ニューロン培養物を、0.5 mlの結合バッファーで洗浄し、続いて
2%のBSA、17 mg/lのdiprotinA(Bachem, Torrance, CA)、10 mMのグルコース、0.001〜1000 nMのGLP-1、及び30,000 cpmの125I-GLP-1(Amersham Pharmacia Biotech, Little Chalfont, UK)を含む0.5 mlのバッファー中、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション終了の時点で、上清を捨て、そして細胞を氷冷PBSで3回洗浄し、そして0.5mlの、0.5MのNaOH及び0.1%のSDS中、室温で10分間インキュベートした。細胞ライセート中の放射活性を、Apecシリーズγカウンター(ICN Biomedicals, Inc., Costa Mesa, CA)えにより計測した。総結合から、大過剰の非標識GLP-1(1 μM)の存在でインキュベートした細胞に関する放射活性を差し引いたものとして、特異的結合を測定した。50%の結合、EC50に関係しているGLP-1濃度を、ロジット・プロット分析によって測定した。
【0156】
培養海馬ニューロンへの125IGLP-1の結合は、非標識GLP-1によって濃度依存的に置き換えられた(図16A)。結合した125IGLP-1の50%を置き換えるために必要とされるGLP-1濃度を、ロジット・プロット分析によって決定し、培養海馬ニューロンにおいて14 nMのGLP-1(r=-0.999)の濃度を必要とした。
【0157】
cAMPの測定
機能性GLP-1受容体の存在を証明するために、サイクリックAMPを、Montrose-Rafizadeh et al.,の方法に従って計測した(1997a)。トリプリケートの海馬ニューロンの細胞培養を、10 nMのGLP-1で処理し、合計で30分間、薬物処理開始後5分間隔で採集した。薬物処理の開始時(ゼロ分)で採集された細胞を、cAMPの基礎レベルに使用した。
【0158】
10 nMのGLP-1による培養海馬ニューロンの処理は、cAMP産生の増加を引き起こした(図16B)。刺激の15分以内にcAMPレベルの最大で2〜3倍の上昇があり、30分以内にベースラインの近くに戻った。一元ANOVAは、cAMP産生に対する処理の有意な主効果(F=9.45、df=6,20、p<0.001)を証明した。次のチューキーのHSD検定を使った連続した多重比較(subsequent multiple comparisons)は、10(p<0.01)及び15(p<0.001)分後のcAMP産生の有意な増加を明らかにした。これらのデータは、初代海馬ニューロンが、機能性GLP-1受容体を発現し、それを用いてこれらのペプチドの潜在的な保護及び栄養効果を検討するのに適当なインビトロのシステムとなっていることを説明する。
【0159】
アポトーシス細胞死
蛍光性DNA結合色素Hoescht 33342を、アポトーシス細胞死を計測するために使用した。ニューロンを、グルタミン酸(10 μM)の存在又は不存在下、GLP-1(10 nM)又はexendin-4(0.3 μM)を伴ったLocke'sバッファー中で16時間インキュベートした。使用したGLP-1の濃度は、cAMPの放出を刺激することが証明され、かつ、我々の先のニューロン細胞研究において細胞死を引き起こすことなく分化を誘発した、結合実験によって得られたEC50値を基にした。細胞を、PBS中、4%のパラホルムアルデヒド溶液中で固定し、膜を0.2%のTritionX-100によって透過処理した。Hoechst 33342(1 μM)との30分間のインキュベーションに続いて、40×油浸対物レンズを使ってエピ蛍光照明(340 nm励起、510 nmバリア・フィルター)下で核を可視化した。約200の細胞を、各々の処理条件について少なくとも3枚の別々の皿でカウントし、そして実験を少なくとも2度繰り返した。核DNAが断片化されるか又は凝集された場合、細胞はアポトーシスであると考えられ、それに対しより拡散した、及び均一な分布の核DNAをもつ細胞は生き残ったものとみなした。カウントの時点で、調査員は処理群の正体に気付かなかった。凝集又は断片化された核をもつ細胞のパーセンテージを、各々の培養物で測定した。
【0160】
初代海馬ニューロンを、10 μMのグルタミン酸で一晩処理した。固定後、細胞をHoechst 33342で染色し、、アポトーシス細胞の数がカウントした。培地のみで培養した細胞において、ニューロンの23%がアポトーシス核を示した。グルタミン酸処理は、73%のアポトーシスを生じた(図16C)。10 nMのGLP-1(24%のアポトーシス細胞)又は0.3 μMのexendin-4(25%のアポトーシス細胞)のいずれかによる同時処理が、細胞死から完全に保護した(図16B)。GLP-1又はexendin-4単独での処理は、対照レベルのそれを越える、アポトーシス細胞(それぞれ20%と23%)のパーセンテージの少しの増加も引き起こさなかった。値は、6つの個々の実験の合併平均を表す。各々の処理条件の結果としてアポトーシスを経験した細胞のパーセンテージを、StatView統計ソフトウェア(Cary, NC)を使ってANOVAに供した。有意な主効果に続いて、処理、対、投与の帰納的な比較を、チューキーのHSD(Tukey’s Honestly Significant Difference)検定、合併ANOVA誤差項、及び自由度を使って得た。一元ANOVAは、各々の障害間の細胞死の程度の著しい有意差を証明し(F=35.31、df=5,36、p<0.001)、そしてチューキーのHSD検定(Tc=14.91及び18.165)を使った連続した多重比較が、グルタミン酸処理後のアポトーシス細胞のパーセンテージについての統計的に有意な増加を明らかにした(p<0.01、対照と比べて)。GLP-1又はexendin-4での培養物の同時処理は、グルタミン酸によって誘発した細胞死から有意に保護した(両方ともp<0.01、グルタミン酸のみと比べて)。同時グルタミン酸/ペプチド培養物と対照間の有意な差は存在せず、グルタミン酸の効果に対するニューロンの完璧な保護を証明した。
【0161】
動物及び外科的処理
各々約300gの体重がある35匹の生体雄フィッシャー-344ラットを、食物及び水を自由摂取できる、制御された明/暗、及び温度条件下で収容した。ラットを、ケタミン(90 mg/kg)とアセプロマジン(0.91 mg/kg)で麻酔をかけた。先に記載のとおり定位の手術が実行した。0.1 Mのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解したイボテン酸を、10 μg/μl(0.5 μl、2箇所)で、内側前脳束の左側支部に注入した;Paxinos & Watson(1998)によって大脳核と呼ばれた、参考文献を参照のこと。毒素のこの特定の一団の効能に関する先の試験的な調査が、この投与量が、皮質への突起の同程度の減少と共に、脳基底におけるコリン・アセチルトランスフェラーゼ(ChAT)陽性免疫反応性の60%減少を引き起こしたことを証明した。媒質の注入を受けた2番目のシリーズを、対照として使用した。各々の注入を、2.5分にわたり行い、そしてさらに2.5分がカニューレを引き抜く前の拡散のために与えられた。2週間後、動物を、再度麻酔し、脳室内カニューレを定位的に右側脳室に植え込んだ(AP=-0.8 mm、L=+1.4 mm、V=-4.0mm)。
【0162】
このカニューレを、カテーテルを介して浸透性ミニポンプ(ALZA Pharmaceutical, Mountain View, CA)に付けた。ポンプを、2×10-8 MのGLP-1、2×10-9 Mのexendin-4、又は媒質(人工脳脊髄液)で満たした。両ペプチドを媒質で希釈した。このポンプを、14日間0.25 μl/hを送り届けるように設定した(合計0.8 nM/kg/分で5.54 ngのGLP-1及び0.08 nM/kg/分で0.7 ngのexendin-4)。脳輸液キットを、挿入術の5〜6時間前に組み立て、そして37℃で滅菌生理食塩液中に放置した。ミニポンプを、肩甲骨の間の皮下ポケットに挿入し、傷を縫合し、そして動物を回復させた。GLP-1又はexendin-4の注入を受けた動物は、ペプチドのインシュリン分泌刺激性質の結果として緩やかに失語症(aphagic)及び無飲症(adipsic)となり、体重のわずかな低下をもたらした。
【0163】
これは、毎日2度の流体(0.9%の生理食塩液)と柔らかい食事の適用により3〜4日以内に回復し、屠殺のときまで、体重の群間差はなかった。ミニポンプ(14日)の終了時に、動物に0.1 mg/kgのペントバルビトン・ナトリウムで最後の麻酔をかけ、そして15〜20分間、100 mm水銀の一定の圧力で、100〜150 mlのPBS(pH 7.4)、その後250〜350 mlの、PBS中、4%のパラホルムアルデヒド溶液を心臓経由で灌流した。脳を、免疫細胞化学的評価、並びに病変によって誘発した損害及び前脳基底核のコリン作用性の分担に対するペプチド注入に関して得られた効果の全ての定量化のために採取した。
【0164】
免疫組織化学
隣接する前頭面に沿った脳切片を、病変部位を通して40 μmの厚さで得、そして処理したChATについて;1:100希釈のポリクローナル・ヤギ抗ChAT抗体(Chemicon、International Inc., Temecula, CA)を使って、及びグリア繊維酸性タンパク質(GFAP)について;1:750希釈のポリクローナル・ウサギ抗GFAP抗体(Chemicon)を使って、比較的自由に処理した。アビジン-ビオチン/セイヨウワサビペルオキシダーゼ・プロトコルを使って、陽性の免疫反応性の可視化を行った。さらに、一組の切片を、Geula and Mesulam, 1989によって、修飾された方法を使って前脳基底核のコリン作用性ニューロンについて細胞化学的マーカーとしてのアセチルコリンエステラーゼ(AChE)活性について染色した。追加の一組の切片を、ゼラチン・コートされたスライド上へのせ、クレシル・バイオレットで染色して細胞体を可視化した。
【0165】
前脳部部分のChAT陽性免疫反応性細胞体を、×100の倍率下で可視化し、両側について手作業でカウントした。未加工のカウントを、この部分内の細胞体の総数の評価のためのAbercrombie(1946)の公式で補正した。イボテン酸病変の結果としての前脳基底核における細胞損失の特徴づけを、右(注入側)に対する左(病変側)カウント、及びパーセント変化として示されたデータの比較によって行われた。細胞のカウントを実験条件に外観的に導かないように動物の名前をコード化した。差異を、分散分析、及び先の通りチューキーのHSD検定を使って帰納的な比較に供した。有意性を、全ての統計分析についてp<0.05で受け入れた。
【0166】
イボテン酸で誘発されたコリン作用性マーカーの欠損
コリン・アセチルトランスフェラーゼ免疫反応性を、前脳基底核全体にわたるコリン作用性ニューロンのマーカーとして使用した。ChAT抗体は、類似したサイズとアセチルコリンエステラーゼ(AChE)陽性細胞への分布をもつ非常に多数の大きな多極ニューロンを染色した。免疫細胞化学的染色は、低いバックグラウンドをもち、かつ、細胞形態の明確な写真を提供した(図17)。媒質の連続注入を伴うイボテン酸の注入は、左大脳核の注射部位から約1 mm半径のChAT-免疫反応性ニューロンの大幅な(43%)損失をもたらした(図18、棒グラフ4)。媒質注入を受けたシャム手術対照群は、右大脳核に対する左大脳核のChAT陽性細胞体のパーセンテージの増加を示した(図18、棒グラフ1)。GLP-1又はexendin-4注入を受けたイボテン酸損傷動物は、媒質の注入を受けたそれらの損傷動物に対して左大脳核におけるChAT-免疫反応性細胞体の損失の減少をもたらした。より特に、exendin-4の注入は、媒質注入に続いて現れた43%から大脳核のそれのたった24%未満まで、左大脳核のChAT-免疫反応性細胞体の損失の減少をもたらした(図18、棒グラフ5)。さらに、GLP-1注入は、右大脳核のそれのたった6%未満まで左大脳核のChAT陽性免疫反応性細胞体の損失を減少させる、より多くの顕著な逆転を成し遂げた(図18、棒グラフ6)。標準ANOVAは、処理条件についての全体的な有意な効果を証明した(F=21.363、df=5,28、p<0.001)。ペプチド、対、媒質処理の多重比較(Tc=14.14及び19.71)は、イボテン酸による病変の後のexendin-4(p<0.05)、及びGLP-1(p<0.01)の注入を受けて左大脳核におけるChAT免疫反応性の有意な改善を明らかにした。イボテン酸による病変後のGLP-1注入であっても、右側とほぼ対等の値を実現するまで、左大脳核のChAT陽性細胞の損失を減少させ、全体的なパーセント差異は、シャム媒質群より有意に低いままであった(p<0.001)。媒質注入を受けたシャム群(sham group)のChAT-免疫反応性のかなりの増加のため、これは適当である(図18、棒グラフ1)。
【0167】
シャム媒質群(表6)に関して左と右のChAT陽性免疫反応性ニューロンのカウントを分けることは、左(586±32)と右(478±40)の大脳核ChAT-陽性細胞カウント(p<0.01)の間の有意差を明らかにした。カニューレ挿入術及び処理デリバリーからの圧力の影響は、右大脳核のChAT免疫反応性の見かけ上の減少の原因である。これらの観測は、組織完全性のあらゆる妨害が、緩やかであるか又は非特異的に、ChAT免疫反応性の機能性崩壊を引き起こしうることを示唆する。さらに、そのような効果が、媒質注入を受けたイボテン酸群におけるChAT陽性免疫反応性の予想したパーセント損失より低い原因である(図18、棒グラフ4)。群の「中」(すなわち、左対右)を比較するより、さらにこれを検査するために、群の「間」の比較を、シャムaCSFとイボテン酸aCSF群(それぞれ、586±32及び260±28)について右大脳核カウント(F=6.136、df=5,28、p<0.001;表6)を実施した。この群間比較は、ChAT免疫反応性の56%の損失を明らかにした。これらのデータは、右大脳核の非特異的な損傷が、比較を個々の実験群内で行った場合に全体的なパーセント損失に影響するChAT免疫反応性細胞体の数の減少を引き起こしたことを示す。さらに、右大脳核のChAT陽性細胞カウントを別々に分析したとき、群間の有意な違いがなく(F=0.512、df=5,28、p>0.05;表6)、組織完全性のそのような崩壊が等しく全ての実験群に影響したことを示唆した。
【表5】
【実施例13】
【0168】
実施例13.グルカゴン様ペプチド-1は、アミロイド-βペプチド(Aβ)産生を減少させ、かつ、Aβ及び鉄によって誘発された死からニューロンを保護する
Aβ1-42又はFe2+で誘発した細胞死に続くGLP-1及び/又はexendin-4の保護効果、並びにインビトロにおける、分泌型と細胞内型の間のβAPPプロセッシングに対するGLP-1、exendin-4、及びexendin-4WOTの効果、そして最終的に、対照マウスにおけるインビボでのAβペプチドのレベルを試験した。
【0169】
培養条件
他の箇所で記載のとおり、PC12細胞を、10%の熱不活化ウマ血清、5%の熱不活化ウシ胎仔血清(FBS)、及び25 mMのHepesバッファーを補ったRPMI 1640中で培養した(Labiri et. al., 2000)。全ての培地及び血清を、MediaTech Inc. (Herndon, VA)から入手した。細胞を、ラットの尾のコラーゲンでコートした培養器(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)に、約2.0×106細胞/60 mmで蒔いた。細胞が十分に接着するとすぐに、播種した24時間後に処理をトリプリケートで開始した。前記培地を吸引し、適当な化合物を伴った0.5%のFBSを含む、3 mlの新鮮な低血清培地を加えた。細胞を、GLP-1(3.3、33及び330 μg/ml)(Bachem, Torrence, CA)、及び2つのGLP-1アナログ、exendin-4(0.1、1.0及び10 μg/ml)及びexendin4-WOT(0.1及び1.0 μg/ml)で処理した。NGF(5、10、25及び50 ng/ml)(Promega, Madison, WI)によるPC12細胞の処理を、正の対照として使用した。さらに、5 ng/mlのNGFと0.1 μg/mlのexendin-4を、組み合わせて同時に加えた。Exendin-4及びそのアナログのexendin4-WOTを、合成し、そして高速液体クロマトグラフィー分析によって95%超純粋であると評価した。
【0170】
毒性分析
処理が誘発した細胞毒性を、処理及び未処理のPC12細胞由来の調整培地の両方で(Sigma, St.Louis, MO製のLDHキットを使って)分泌された乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルの分析によって検査した。予想どおり、LDHレベルは、薬物処理の開始時点で採取した培地標準に対して上昇した(図19A)。分散分析は、LDH分泌に対する処理の全体的な有意な効果を証明した(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。チューキーのHSD検定(Tc=0.42,及び0.51)を使った対照との帰納的な連続した多重比較が、10 μg/mlのEx4処理に続くLDH分泌の単一の有意な増加を明らかにした(1.65倍上昇;p<0.01)。使用した投与量及び時点での、GLP-1及びアナログでの処理の結果としての毒性の可能性は;10 μg/mlのexendin-4を除いて、外されうる。これは、合計細胞数で全く有意な変化を証明しなかったGLP-1処理前後に実行した(トリパンブルーによる染色後の)細胞カウントによってさらに実証された。
【0171】
ウエスタン分析
3日間の処理に続いて、未処理(低血清培地のみ)及び処理PC12細胞由来の調整培地及び(前記のとおり調製された)細胞ライセートを、モノクローナル抗体、22C11(Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN)を使ったウエスタン免疫ブロット分析に供した。そのエピトープ部位が外形質のシステイン含有ドメイン内の第66〜81残基に割り当てられたE.コリ(E.coli)産生βAPPに対して産生された抗体は、細胞膜で見出されるβAPPの全ての成熟型、及び調整培地中に分泌されるカルボキシル切り詰め可溶性型及びβAPP様タンパク質(APLP)を認識する。免疫反応産物の可視化を、化学発光によって行い、ゆえに分子量マーカーは写真用フィルム上で見えなかった。PVDF膜上に目に見える標準分子量マーカーを重ねることによって発光性の産物の分子量の特定を達成した。NIHイメージを使ってタンパク質バンドの濃度測定による定量化を実施した。
【0172】
処理又は未処理細胞由来の細胞ライセートのウエスタン免疫ブロットは、成熟したβAPP(βAPP695-βAPP770)の異なるイソフォーム及び/又はそれらの翻訳後修飾された誘導体を表すであろう、複数のより高分子量タンパク質バンド(100〜140 kDa)を明らかにした。分泌されたAPPを、α-又はβ-セクレターゼによって産み出されたβAPP誘導体を表すであろう、110〜120 kDaのタンパク質バンドとして処理及び未処理細胞由来の調整培地中に検出された。細胞内タンパク質のイムノブロットにおける免疫反応性バンドの特徴で観察されている差異は、同じブロットにおける(ヒトβ-アクチンのカルボキシル末端の特定の部位に対して産生されたポリクローナルβ-アクチン抗体;Santa Cruz Biotechnology, CAを使った)同等のβ-アクチン免疫反応性染色によって証明されるとおり、ゲル内のタンパク質の不均一な添加のためでも、膜上へのタンパク質の移行のむらがあるためでもない。可視反応産物を、ビオチン化二次抗体を使ってPVDF膜上に直接産生した。これにより、標準分子量マーカーが目視でき、42 kDaの単一のタンパク質バンドとしてβ-アクチンを確認した。等量の総タンパク質を、ゲルの各々のレーンに添加し、5%の酢酸中、0.1%のPonceauSにより膜を染色することによって電気泳動トランスファーの効率を観察した。
【0173】
βAPP及びsAPPブロットの濃度測定による定量化を、それぞれ図19B及びCに示す。定量化βAPPレベル(上の2個の高分子量バンド)の一元ANOVAは、処理の全体的な有意な効果を証明した(F=2.24;df=11,34;p<0.001)。対照との多重比較を、チューキーのHSD検定(Tc=47.0及び55.75)を使って行ない、両投与量;5 ng/ml(図19B、棒グラフ1;p<0.01)及び10 ng/ml(図19B、棒グラフ2;p<0.01)のNGFでの処理に続くβAPPの細胞内レベルの増加を明らかにした。NGFとは対照的に、GLP-1及びアナログは、βAPPの細胞内レベルを大幅に減少させた(図19B);10 ng/mlのEx4、棒グラフ5(p<0.01)、1.0 ng/mlのEx4-WOT、棒グラフ10(p<0.01)、3.3 ng/mlのGLP-1、棒グラフ11(p<0.01)、33 μg/mlのGLP-1、棒グラフ12(p<0.05)、及び330 ng/mlのGLP-1、棒グラフ13(p<0.01)。5 ng/mlのNGFと0.1 ng/mlのEx4の組み合わせ処理は、未処理細胞に対して細胞内βAPPレベルを大幅に増加させた(図19B、棒グラフ6;p<0.01)。
【0174】
調整培地中に検出されたβAPPタンパク質の定量化された分泌可溶性誘導体の分析は、処理の全体的な有意な効果を明らかにした(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。連続した多重比較(Tc=20.11及び23.91)は、両投与量のNGF処理がsAPPの有意な増加をもたらすことを明らかにした(5 ng/mlと10 ng/ml(両方p<0.01);図19C、棒グラフ1-2)。細胞内βAPPに類似したパターンに続く、全ての投与量のGLP-1(3.3 μg/ml(p>0.05)、33 μg/ml(p<0.01)及び330 μg/ml(p<0.01);図19C、棒グラフ9-11)、Ex4(0.1 μg/ml、1.0 μg/ml及び10 μg/ml(全てp<0.01);図19C、棒グラフ3-5)、並びにEx4-WOT(0.1 μg/ml及び1.0 μg/ml(両方p<0.01);図19C、棒グラフ7-8)が調整培地中のsAPPの検出可能なレベルの減少を引き起こした。NGFとEx4の組み合わせ処理は、対照細胞のそれからの、sAPPレベルのあらゆる有意な変化を引き起こすことはなかった(図19C、棒グラフ6)。
【0175】
GLP-1処理に続くβAPPレベルの低下が分泌Aβ1-40レベルの低下を推定させることができるかどうか調査するために、調整培地サンプルをAβ1-40についてアッセイした。我々は、先にPC12細胞におけるAβ1-42の非常に低い基礎分泌レベルを証明し、そして一般に検出可能な処理の誘発した効果は有意性に至らない。さらに、が分泌した主なAβペプチドは、Aβ1-40であり、そして神経芽細胞腫細胞を使った類似した研究で(Lahiri et. al., 1998)、Aβ1-40レベルがAβ1-42に対する効果を反映し、Aβ1-42の特異的な変化を捜す必要をなくしていた。定量化されたAβ1-40レベルを、一元ANOVAに供し、処理の全体的な有意な効果を説明した(F=2.22、df=11,35、p<0.001)。チューキーのHSD検定(Tc=69.91及び83.13)を使った多重比較が、NGFのみの(両方p<0.01)又はexendin-4との組み合わせでの(p<0.01)処理に続くAβ1-40レベルの有意な増加を明らかにした。GLP-1、exendin-4、又はexendin-4 WOTのみの処理は、対照細胞のそれからAβ1-40産生レベルを大幅に変えなかった。
【0176】
正常な対照マウスにおけるGLP-1、exendin-4、NGF、又は媒質の脳室を経由した注入に続くAβ1-40レベルについて、脳全体のホモジェネートをアッセイした。動物を、食物と水を自由摂取可能な、明/暗及び温度条件の管理下に収容した。痩せたdb+/db+対照雄マウス(n=24)を、50 mg/kgペントバルビトンで麻酔し、側頭骨カップホルダーを使ったマウス・アダプターをもつ定位の外科フレーム(David Kopf Instruments, Tujunga, CA)に置いた。GLP-1(3.3 μg;n=3及び6.6 μg;n=4)、exendin-4(0.2 μg;n=3)、NGF(2 μg;n=5)又は媒質(人工脳脊髄液;n=9)を、4分間にわたり0.25 μl/mlで両側の側脳室内に注入した(AP=-0.2 mm、L=±1.0mm、V=-2.5 mm)。カニューレが引き抜く前に、追加の4分間で拡散させ、動物を縫合し、そして回復させた。48時間後に、全ての動物を、頸部脱臼によって屠殺し、脳を取り出し、そして液体窒素中で急冷した。脳を粉砕し、Aβについてアッセイする前に-80℃で保存した。
【0177】
Aβ分析
サンドイッチELISAを使って等量の調整培地及び脳全体のホモジェネートを、Aβ1-40についてアッセイした(Suzuki et. al., 1994)。モノクローナル抗体BAN50(Aβ1-16に対して産生された)を全ての種類のAβ(Aβ1-40とAβ1-42)のための捕獲抗体として使用し、モノクローナル抗体BA27を、Aβ1-40レベルの特異的な検出のために使用した。アッセイと並行して行なわれた適当な標準曲線から推論されるように、Aβ1-40のレベルを、調整培地サンプルに関するpM濃度で、そしてマウス脳ホモジェネートに関してfmol/gで表した。
【0178】
全ての処理が、媒質と比べてAβ1-40のレベルを減少させた(図20)。処理の有意な主な効果に続く多重比較(F=10.577、df=4,19、p<0.001)が、Aβ1-40レベルが6.6 μgのGLP-1(36%、p<0.01)及び2 μgのNGF(40%、p<0.01)処理に続いて減少させたことを証明した。全ての他の比較は、有意性に至らなかった;3.3 μgのGLP-1(16%)、0.2 μgのexendin-4(23%)(Tc=139.00及び172.34、独特な群サイズに関する調和平均補正を使った)。
【0179】
初代海馬細胞培養
海馬を発生初期18日目のSprague-Dawleyラットから取り出し、細胞を軽いトリプシン処理及び粉砕によって分離し、そして約150細胞/mm2培養面積の密度で、ポリエチレンイミンによって表面をコートしたプラスチック製の直径35 mmの皿上に播種した。培養物を、37℃で、6%のCO2/94%の大気雰囲気中、B-27サプリメン(GibcoBRL ,Carlsbad, CA)、2 mMのL-グルタミン、1 mMのHepes、及び0.001%の硫酸ゲンタマイシン(Sigma, St.Louis, MO)を含むNeurobasal培地中で維持した。これらの条件下で維持されるとき、ニューロン抗原NeuN及び神経膠星状細胞タンパク質グリア繊維酸性タンパク質に対する抗体で免疫染色することによって測定されるように、この海馬培養物は、約95%のニューロンと5%の神経膠星状細胞から成る。Aβ1-42を、Bachem(Torrance, CA)から購入し、滅菌水中に1 mMの原液として調製した。FeSO4を、滅菌水中に200 μMの原液として調製した。GLP-1及びexendin-4を、生理食塩液中に500×の原液として調製した。
【0180】
先に記載のとおり、ニューロンの生存を定量化した(Mark et. al., 1997)。要するに、前もって指示された領域(10×対物レンズ)中の生存ニューロンを、実験的な処理の前、及びその後の所定の時点でカウントした。海馬ニューロンを、GLP-1(0、1、5、10及び20 nM)又はexendin-4(0、50、100、200及び500 nM)によって2時間前処理した。次に、培養物を、2 μMのAβ1-42又は1 μMのFe2+に24時間晒した。均一な直径の無傷な神経突起をもつニューロンと、滑らかな丸い外観をもつ細胞体を、生細胞とみなし、それに対し断片化された神経突起をもつニューロンと、空胞化した細胞体を死細胞とみなした。カウントは、培養物の処理歴の知識なしに行った。
【0181】
Aβ1-42又は鉄(ヒドロキシルラジカル産生と膜脂質過酸化を誘発する)への培養海馬細胞の暴露は、24時間の間のニューロンの55〜75%の死をもたらした。GLP-1又はexendin-4がAβ1-42及び/又はFe2+によって誘発された細胞死からニューロンを保護することができるかを判断するために、高濃度のGLP-1及びexendin-4で細胞を前処理し、そしてAβ1-42又はFe2+に晒した。GLP-1は、Aβ1-42及びFe2+によって誘発された死からニューロンを保護し、最大の効果は10 nMのGLP-1で生じた。同様に、Exendin-4は、Aβ1-42及びFe2+によって誘発された死からニューロンを保護したが、しかし作用は弱く、最大の効果は200 nMのexendin-4で生じた。
【0182】
本願出願全体にわたって、様々な刊行物が参照される。これらの刊行物の開示の全体を、本願発明に関する最先端のものをより完全に記載するために本願出願中に援用する。
【0183】
本発明の範囲又は本質から逸脱することなく様々な修飾及び変異が本発明によって作製されうることは、当業者にとって明白である。本発明の他の態様は、当業者にとって明細書の考慮及び本明細書中に開示された本発明の実施から明白である。前記明細書及び実施例は典型としてのみ考慮されることを意図し、真の本発明の範囲及び本質は請求項によって示される。
【0184】
【化1】
【0185】
【化2】
【0186】
【化3】
【0187】
【化4】
【0188】
【化5】
【0189】
この明細書に組み入れられ、かつ、その一部を構成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を説明し、そして記載と一緒に本発明の原理を明らかにする役割をもつ。
【産業上の利用可能性】
【0190】
本発明は、糖尿病や神経変性疾患の治療薬の製造等の分野に利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニューロンの死滅を減少させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってニューロンの死滅が減少させられるものである、使用。
【請求項2】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ニューロンの死滅が神経変性症状によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニューロンの死滅が毒素によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューロンの死滅が損傷によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ニューロンの分化又は増殖を促進するための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってニューロンの分化又は増殖が促進させられるものである、使用。
【請求項8】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
アミロイドタンパク質の形成又は蓄積を減少させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってアミロイドタンパク質の形成又は蓄積が減少させられるものである、使用。
【請求項11】
神経突起の発達を促進するための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによって神経突起の発達が促進されるものである、使用。
【請求項12】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
神経変性症状の患者を治療するか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候を軽減させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、治療として有効な量の該ポリペプチドが患者に投与されることによって、神経変性症状の患者が治療されるか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候が軽減されるものである、使用。
【請求項15】
前記神経変性症状が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
神経毒性損傷の患者を治療するか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候を軽減させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、治療として有効な量の該ポリペプチドが患者に投与されることによって、神経毒性損傷の患者が治療されるか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候が軽減されるものである、使用。
【請求項17】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロンの死滅を減少させるための医薬組成物。
【請求項21】
前記ニューロンの死滅が神経変性症状によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ニューロンの死滅が毒素によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ニューロンの死滅が損傷によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項26】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロンの分化又は増殖を促進するための医薬組成物。
【請求項28】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、アミロイドタンパク質の形成又は蓄積を減少させるための医薬組成物。
【請求項32】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、神経突起の発達を促進するための医薬組成物。
【請求項36】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロン突起を成長させるための医薬組成物。
【請求項40】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項43】
神経変性症状の患者を治療するか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候を軽減させるための医薬組成物であって、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項44】
前記神経変性症状が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項47】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項48】
神経毒性損傷の患者を治療するか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候を軽減させるための医薬組成物であって、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項49】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項51】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項1】
ニューロンの死滅を減少させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってニューロンの死滅が減少させられるものである、使用。
【請求項2】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ニューロンの死滅が神経変性症状によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ニューロンの死滅が毒素によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューロンの死滅が損傷によって引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ニューロンの分化又は増殖を促進するための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってニューロンの分化又は増殖が促進させられるものである、使用。
【請求項8】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
アミロイドタンパク質の形成又は蓄積を減少させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによってアミロイドタンパク質の形成又は蓄積が減少させられるものである、使用。
【請求項11】
神経突起の発達を促進するための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、1以上のニューロンが該ポリペプチドと接触させられることによって神経突起の発達が促進されるものである、使用。
【請求項12】
前記接触ステップがインビボにおいてである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記接触ステップがインビトロにおいてである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
神経変性症状の患者を治療するか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候を軽減させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、治療として有効な量の該ポリペプチドが患者に投与されることによって、神経変性症状の患者が治療されるか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候が軽減されるものである、使用。
【請求項15】
前記神経変性症状が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
神経毒性損傷の患者を治療するか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候を軽減させるための医薬の製造のための、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドの使用であって、治療として有効な量の該ポリペプチドが患者に投与されることによって、神経毒性損傷の患者が治療されるか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候が軽減されるものである、使用。
【請求項17】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項18】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項1、7、10、11、14または16のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロンの死滅を減少させるための医薬組成物。
【請求項21】
前記ニューロンの死滅が神経変性症状によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記ニューロンの死滅が毒素によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ニューロンの死滅が損傷によって引き起こされる、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項24】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項25】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項26】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項27】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロンの分化又は増殖を促進するための医薬組成物。
【請求項28】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項30】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、アミロイドタンパク質の形成又は蓄積を減少させるための医薬組成物。
【請求項32】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項34】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項35】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、神経突起の発達を促進するための医薬組成物。
【請求項36】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項38】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項39】
配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む、ニューロン突起を成長させるための医薬組成物。
【請求項40】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項41】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項42】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項39に記載の医薬組成物。
【請求項43】
神経変性症状の患者を治療するか、又は患者の神経変性症状の1以上の徴候を軽減させるための医薬組成物であって、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項44】
前記神経変性症状が、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、多発性硬化症、脳の損傷、脊髄損傷、及び末梢神経障害から成る群から選ばれる、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項46】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項47】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項48】
神経毒性損傷の患者を治療するか、又は患者の神経毒性損傷の1以上の徴候を軽減させるための医薬組成物であって、配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列を含むポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項49】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列を含むものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項50】
該ポリペプチドが配列番号:1、2、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、25および33からなる群より選択される配列からなるものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【請求項51】
該ポリペプチドが配列番号:2の配列からなるものである、請求項48に記載の医薬組成物。
【図1−1】
【図1−2】
【図1−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【図1−2】
【図1−3】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22A】
【図22B】
【図23】
【公開番号】特開2010−90129(P2010−90129A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262568(P2009−262568)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2003−517083(P2003−517083)の分割
【原出願日】平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願人】(301046880)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッドステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ ザ ナショナル インステ (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【分割の表示】特願2003−517083(P2003−517083)の分割
【原出願日】平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願人】(301046880)ザ ガバメント オブ ザ ユナイテッドステイツ オブ アメリカ アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ ザ ナショナル インステ (1)
【Fターム(参考)】
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