説明

GPS信号伝送システム

【課題】 電波が届きにくいビルの内部においてGPS受信機によってその位置を詳細に知る。
【解決手段】 ビル2の屋上2Rの異なる位置にGPS受信アンテナ4a乃至4hを設け、ビル2内のGPS受信アンテナ4a乃至4hに対応する位置にGPS再送信アンテナ6a乃至6hを設け、GPS受信アンテナ4a乃至4hの近傍にこれらに対応して光送信機8a乃至8hを設け、対応するGPS受信アンテナ4a乃至4hで受信したGPS信号を光GPS信号に変換し、光ファイバーケーブル10の対応する光ファイバー10a乃至10hに供給する。光ファイバー10は、ビル2の各階に敷設され、GPS再送信アンテナ6a乃至6hの近傍にこれらに対応して設けた光受信機28a乃至28hが、対応する光ファイバー10a乃至10hからの光GPS信号をGPS信号に再変換して、対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hに供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波が到来しにくい電波遮断体内に、電波遮断体の外部で受信したGPS信号を再送信するGPS信号伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上述したシステムとしては、例えば特許文献1に開示されているものがある。この文献1に開示されている技術では、1台のGPS受信アンテナで受信したGPS信号を伝送路を介して伝送し、伝送路の端末において再送信アンテナから再送信している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−244625号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術を利用して、例えばGPS受信アンテナをビルの屋上に設置し、再送信アンテナをビルの内部に設置すれば、電波が到来しにくいビル内においてもGPS信号を受信することができる。従って、ビル内においてGPS受信機を用いて再送信されたGPS信号を受信することによって、GPS受信機の使用者は、ビルの位置を知ることができる。しかし、このシステムでは、1台のGPS受信アンテナしか使用していない。従って、ビル内のどこの位置にGPS受信機の使用者がいても、位置としてはGPS受信アンテナの設置位置しか判明しない。これでは、例えば火災等が発生して避難する場合に、自己の正確な位置をGPS受信機によって知ることができない。このような問題は、ビルだけではなく、地下鉄、地下街、トンネル等の電波が届きにくい場所に、特許文献1の技術を採用した場合にも生じる。
【0005】
本発明は、電波が届きにくい電波遮断体の内部においても、GPS受信機によって詳細に位置を知ることができるGPS信号伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のGPS信号伝送システムは、複数のGPS受信アンテナを有している。これらGPS受信アンテナは、電波が内部に到来しにくい電波遮断体、例えば構築物、具体的にはビル、地下街、地下鉄の構内の外部のそれぞれ異なる位置に設けられている。前記電波遮断体内における前記各GPS受信アンテナに対応する位置に複数のGPS再送信アンテナが設けられている。各GPS受信アンテナの近傍に、これらに対応して複数の電気−光変換手段が設けられている。これら電気−光変換手段は、対応するGPS受信アンテナで受信したGPS信号を光GPS信号に変換する。これら電気−光変換手段からの光GPS信号を、前記各GPS受信アンテナに対応する前記各GPS再送信アンテナまで複数の光伝送路が個別に伝送する。各GPS再送信アンテナの近傍にこれらに対応して複数の光−電気変換手段が設けられ、対応する前記光伝送路を伝送された光GPS信号をGPS信号に再変換して、対応する各GPS再送信アンテナに供給する。
【0007】
このように構成すると、各GPS受信アンテナで受信されたGPS信号が、光GPS信号に変換されて、各光伝送路を介して、対応するGPS再送信アンテナまで伝送され、ここでGPS信号に再変換され、GPS再送信アンテナによって再送信される。従って、電波遮断体内において、GPS受信機を携帯している者は、いずれのGPS再送信アンテナから再送信されているGPS信号を受信しているかによってGPS受信機の所在位置を知ることができる。従って、例えば災害等の際に、GPS受信アンテナ受信機の携帯者は、自己の位置を知ることができるので、どの方向に避難するべきかについて迅速に判断することができる。
【0008】
前記各光伝送路を多芯の光ファイバーケーブルの一部のファイバーによって構成することができる。このように構成すると、光ファイバーケーブルを敷設するだけでよいので、敷設作業が容易になる。もし、各電気−光変換手段と各光−電気変換手段との間を個別の光伝送路で接続していると、電気−光変換手段及び光−電気変換手段対と同数の光伝送路が必要で、これら光伝送路をそれぞれ敷設するのは非常に面倒である。しかし、各光伝送路を多芯の光ファイバーケーブルの一部の光ファイバーによって構成すると、この光ファイバーケーブルを敷設するだけでよいので、格段に敷設作業が容易になる。
【0009】
更に、前記光ファイバーケーブルは、他のファイバーによって放送信号を伝送することもできる。放送信号としては、例えば共同受信システムにおいて伝送されるテレビジョン放送信号、衛星放送中間周波信号、衛星通信中間周波信号等がある。このように構成すると、例えば光ファイバーケーブルを使用した放送信号伝送システムを利用して、GPS信号の再送信を行うことができ、GPS信号伝送システムと共同受信システムとに多芯の光ファイバーケーブルを兼用して使用することができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、電波が届きにくい電波遮断体の内部でも、GPS受信機によって詳細にGPS受信機の位置を知ることができる。特に、GPS信号を光GPS信号に変換して、各GPS信号に対応して設けた各光伝送路によって各光GPS信号を伝送しているので、同一周波数の各GPS信号をGPS受信アンテナから対応するGPS再送信アンテナに間違いなく供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の1実施形態のGPS信号伝送システムでは、図1(a)、(c)に示すように、内部では直接に電波を受信しにくい電波遮断体、例えばビル2の外部、例えば屋上2Rに、複数、例えば8基のGPS受信アンテナ4a乃至4hが配置されている。これらGPS受信アンテナ4a乃至4hは、それぞれ異なる位置に配置されている。このビル2内の各階の天井には、それぞれGPS再送信アンテナ6a乃至6hが配置されている。これらGPS再送信アンテナ6a乃至6hは、図1(b)、(c)に示すように、GPS受信アンテナ4a乃至4hとそれぞれ対応する位置に配置されている。即ち、GPS再送信アンテナ6aは、GPS受信アンテナ4aと同じ緯度、経度の近傍位置に配置され、GPS再送信アンテナ6bは、GPS受信アンテナ6bと同じ緯度、経度の近傍位置に配置されている。他のGPS再送信アンテナ6c乃至6hも同様である。
【0012】
各GPS受信アンテナ4a乃至4hで受信されたGPS信号を、対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hから送信すると、例えばGPS受信アンテナ4aで受信したGPS信号を各GPS再送信アンテナ6aから、・・・・GPSアンテナ4hで受信したGPS信号を各GPS再送信アンテナ6hから再送信すると、ビル2の各階においてGPS受信機(図示せず)の携帯者は、GPS再送信アンテナ6a乃至6hのいずれが再送信しているGPS信号を受信しているかによって、ビル2のいずれの位置に携帯者が位置しているかを知ることができる。
【0013】
しかし、各GPS受信アンテナ4a乃至4hで受信するGPS信号は、同じ周波数、例えば1.57542GHzである。従って、これらを混合して一本の同軸ケーブルでは伝送できない。また、単独で同軸ケーブルを敷設する場合、この実施形態では8本の同軸ケーブルが必要となり、外径が太くなり大きなスペースが必要になる。
【0014】
そこで、図2に示すように、各GPS受信アンテナ4a乃至4hには、その近傍に電気−光変換手段、例えば光送信機8a乃至8hが設けられている。各光送信機8a乃至8hは、対応するGPS受信アンテナ4a乃至4hが受信したGPS信号を、それぞれ光GPS信号に変換する。これら光GPS信号は、ビル2内に敷設されている光伝送路、例えば多芯光ファイバーケーブル10の8本の光ファイバー10a乃至10hに供給されている。多芯光ファイバーケーブルの外径は10芯でも、約9mm程度である。
【0015】
この多芯光ファイバーケーブル10は、本来、共同受信システムの幹線としてビル2内にそれぞれ敷設されたものである。従って、光ファイバーケーブル10の他の光ファイバー10iには、光放送信号が供給されている。例えば、VHFテレビジョン放送受信アンテナ14で受信したVHF帯テレビジョン放送信号と、UHFテレビジョン放送受信アンテナ16で受信したUHF帯テレビジョン放送信号と、衛星放送受信用アンテナ18で受信され、かつ周波数変換された衛星放送中間周波信号とを、合成器20で合成し、増幅器22で増幅して合成信号が生成される。この合成信号を光送信機24で変換したものが、光放送信号として使用されている。
【0016】
ビル2の各階において、図3に示すように、光ファイバー10a乃至10hを伝送された光GPS信号は、分岐手段、例えば光分岐器26a乃至26hによって分岐される。これら分岐された光GPS信号は、それぞれ対応する光−電気変換手段、例えば光受信機28a乃至28hによってGPS信号に再変換され、対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hに供給される。なお、光受信機28a乃至28hは、対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hの近傍に配置されている。
【0017】
例えば、GPS受信アンテナ4aで受信されたGPS信号は、光送信機8aで光GPS信号に変換され、多芯光ファイバーケーブル10の光ファイバー10aによってビル2の各階に伝送される。各階において、光GPS信号が光分岐器26aによって分岐され、光受信機28aによってGPS信号に再変換され、再送信アンテナ6aから再送信される。他のGPS受信アンテナ4b乃至4hで受信されたGPS信号も、同様にして対応する再送信アンテナ6b乃至6hから再送信される。従って、各階において各再送信アンテナ6a乃至6hから送信されているGPS信号のいずれをGPS受信機が受信しているかによって、ビル2内におけるGPS受信機の位置を詳細に知ることができる。
【0018】
また、光ファイバー10iによって伝送された光放送信号も、同様に各階において光分岐器26iによって分岐され、光受信機28iによって放送信号に変換され、図示していない各階に設けた複数のタップオフに供給され、各タップオフからテレビジョン受信機や衛星放送用チューナに供給される。
【0019】
このように各GPS受信アンテナ4a乃至4hで受信したGPS信号を、それぞれ光GPS信号に変換し、各GPS受信アンテナ4a乃至4hに対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hにまで伝送し、GPS信号に再変換して、対応するGPS再送信アンテナ6a乃至6hから再送信しているので、ビル2の内部にあるGPS受信機の携帯者は、屋上2Rにいるのと同様に詳細に自己の位置を知ることができる。従って、電波の到来しにくいビル2の内部でも、自己の位置を正確に知ることができ、例えば緊急時の避難を容易に行える。また、多芯の光ファイバーケーブル10を利用しているので、ケーブルの敷設が容易である。
【0020】
上記の実施形態では、電波遮断体としてビル2を示したが、これに限ったものではなく、例えば地下街、地下鉄の構内、トンネル等の内部に電波が到来しにくいものを電波遮断体とすることもできる。また、上記の実施形態では、光GPS信号と光放送信号とを同一の光ファイバーケーブル10によって伝送したが、例えば上述したような地下鉄構内やトンネル等の場合、光放送信号が不要であるので、光GPS信号のみを光ファイバーケーブルで伝送することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の1実施形態のGPS信号伝送システムのアンテナの配置を示す図である。
【図2】図1のGPS信号伝送システムのGPS受信アンテナ回りのブロック図である。
【図3】図1のGPS信号伝送システムのGPS再送信アンテナ回りのブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
2 ビル(電波遮断体)
4a乃至4h GPS受信アンテナ
6a乃至6h GPS再送信アンテナ
8a乃至8h 光送信機(電気−光変換手段)
10a乃至10h 光ファイバー(光伝送路)
10 光ファイバーケーブル
28a乃至28h 光受信機(光−電気変換手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波が内部に到来しにくい電波遮断体の外部のそれぞれ異なる位置に設けられた複数のGPS受信アンテナと、
前記電波遮断体内における前記各GPS受信アンテナに対応する位置に設けられた複数のGPS再送信アンテナと、
前記GPS受信アンテナの近傍にこれらに対応して設けられ、対応するGPS受信アンテナで受信したGPS信号を光GPS信号に変換する複数の電気−光変換手段と、
これら複数の電気−光変換手段からの光GPS信号を、前記各GPS受信アンテナに対応する前記各GPS再送信アンテナまで、個別に伝送する複数の光伝送路と、
前記各GPS再送信アンテナの近傍にこれらに対応して設けられ、対応する前記光伝送路を伝送された光GPS信号を前記GPS信号に再変換して、対応する前記各GPS再送信アンテナに供給する複数の光−電気変換手段とを、
具備するGPS信号伝送システム。
【請求項2】
請求項1記載のGPS信号伝送システムにおいて、前記各光伝送路が多芯の光ファイバケーブルの一部のファイバによって構成されているGPS信号伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載のGPS信号伝送システムにおいて、前記光ファイバケーブルの他のファイバによって放送信号が伝送されているGPS信号伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−333400(P2007−333400A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162039(P2006−162039)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】