説明

HPVCD8+T細胞エピトープ

本発明は、所望のタンパク質中の有効なCD8+T細胞エピトープを同定するための方法を提供する。本発明は更に、各種タンパク質のCD8+T細胞エピトープを提供する。追加的な態様において、本発明は、予防用及び/又は治療に用いるワクチンに用いるのに適切なエピトープを提供する。特定の好ましい態様において、本発明は、予防用及び/又は治療用のワクチンに用いるのに適している修飾されたエピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は、HPVワクチン特に、高リスクHPV系統に伴う感染を防ぐための多面的ワクチンの発達に対する手段を提供する。具体的には、本発明は、HVP16及びHVP18等のHPV系統におけるCD8+T細胞エピトープを同定する手段を提供する。追加的な態様において、本発明は、感染した個体において、腫瘍の生成及び/又は悪性疾患に進展するのを防ぐ、高リスクHVPタイプに対する治療ワクチンの開発に対する手段を提供する。本発明はさらに予防及び治療に有効なワクチンに用いる適切なエピトープも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所望のタンパク質中の有効なCD8+T細胞エピトープを同定する手段を提供する。本発明は更に各種タンパク質のCD8+T細胞エピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は、ヒトパピローマウイスル(HPV)のCD8+T細胞エピトープを提供する。追加的な態様において、予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適したエピトープを提供する。特定の好ましい態様において、本発明は予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適した修飾エピトープを提供する。
【背景技術】
【0002】
リンパ球、特に「B細胞」及び「T細胞」はヒト及び他の動物の免疫反応において作用する2つの主要な細胞タイプである。B細胞は免疫反応独特の側面に関与し、抗体生産に関与する一方で、T細胞は免疫反応の細胞が介在する側面に関係する。これらの2タイプのリンパ球は、認識因子、サイトカイン、及び免疫反応の他の要素等の複雑なネットワークを介して共に作用する。
【0003】
T細胞には、2の主要な細胞のクラスがある。すなわち、サイトトキシックT細胞(Tc)及びヘルパーT細胞(Th)である。サイトトキシックT細胞は感染細胞を殺し、一方ヘルパーT細胞は、B細胞及びマクロファージのような他の細胞を活性化させる。未処置T細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に存在する特定の抗原に曝されると、活性化され、主要組織適合性複合体(MHC)の成分と共同して「アームド」(armed)エフェクターT細胞を生産する。各T細胞表面のレセプターに基づいて2の主要なT細胞のクラスが定義される。Tc細胞は、「CD8」細胞(CD8+)と言われる。Th細胞は「CD4」細胞(CD4+)と言われる。これらの細胞は機能が異なるにも関わらず、互いに共同して作用する。すなわち、CD8+細胞は、免疫原に対する反応を高めることについてCD4+細胞に依存していることが知られている。従って、感染細胞を殺すことにおいて、CD8+細胞はCD4+の活性化を必要とする。加えて、幾つかのケースにおいて、CD8+細胞は感染細胞を殺すことにおいて有効であるが、他のケースでは無効である。近年、免疫反応の理解が進んでいるけれども、有効でないCD8+細胞エピトープから、有効なエピトープを分ける手段だけでなく、有効なCD8+細胞エピトープの信頼できる同定方法に対する要請が未だに存在する。
【発明の開示】
【0004】
発明の概要
本発明は、所望のタンパク質の中の有効なCD8+T細胞エピトープを同定する手段を提供する。本発明は、更に変異タンパク質のCD8+T細胞エピトープを提供する。いくつかの好ましい態様において、本発明は、ヒトパピローマウイルス(HPV)のCD8+T細胞エピトープを提供する。更に、本発明は、予防用及び/又は治療用ワクチンへの使用に適したエピトープを提供する。特に好ましい態様において、本願発明は予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適した修飾エピトープを提供する。
【0005】
本発明は、有効な方法でCD8+T細胞の反応を測定する手段を提供する。特に、本発明は、in vivoにおいてT細胞の活性を擬似する抗体の存在下において、CD8+T細胞の反応を評価するためのin vitroの手段を提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は、所望のタンパク質の免疫原性を同定する手段を提供する。この手段は、所望のタンパク質を得る工程と、所望のタンパク質の多数のアミノ酸フラグメントを調製する工程(このフラグメントは、お互いに重複する部分を有するように調製される)と、所望のタンパク質のアミノ酸フラグメントを天然のヒトCD8+T細胞及び樹状細胞を含む溶液に接触させる工程(この工程において樹状細胞は分化しており細胞を樹状細胞及びエピトープに接触させるの前にCD8+T細胞を抗-CD40に曝す)と、所望のタンパク質のアミノ酸フラグメントを用いてエピトープ領域を同定する工程(この同定工程は、天然のヒトCD8+T細胞の分化を刺激するエピトープ領域の能力を測定する工程を含む)を含む。幾つかのこの好ましい態様において、前記樹状細胞及びCD8+細胞は単一の血液源から得られる。追加的な好ましい態様において、前記抗-CD40抗体はCD8+T細胞、樹状細胞及びエピトープを混合した後に、溶液に添加する。
【0006】
本発明は更に、所望のタンパク質の免疫原性を修飾する方法を提供する。該方法は、所望のタンパク質を得る工程と、所望のタンパク質の複数のアミノ酸フラグメントを調製する工程(この工程において、アミノ酸フラグメントはフラグメント断片がお互いに重複する部分を有するように調製される)と、所望のタンパク質のアミノ酸フラグメントを天然のヒトCD8+T細胞及び樹状細胞を含む溶液に接触させる工程(この工程において樹状細胞は分化しており細胞を樹状細胞及びエピトープに接触させる前にCD8+T細胞を抗CD-40に曝す)と、所望のタンパク質のアミノ酸フラグメントを用いてエピトープ領域を同定する工程(この同定工程は、天然のヒトCD8+T細胞の分化を刺激するエピトープ領域の能力を測定する工程を含む)と、これらの工程の後に、所望のタンパク質の同定されたエピトープ領域を修飾し、該修飾エピトープの免疫原性が本来の所望のタンパク質が有する免疫原性よりも高くあるいは低くなるように修飾する工程を含む。いくつかの態様において、複数のエピトープを修飾する。いくつかの具体的な好ましい態様において、樹状細胞及びCD8+T細胞は、単一の血液源より得られる。追加的な好ましい態様において、抗CD40抗体は、CD8+T細胞、樹状細胞及びエピトープを混合した後に溶液に添加される。
【0007】
幾つかの態様において、本発明は、HPVを含むがこれに限定されない各種ウイルスの中のエピトープを同定するための手段及び組成物を提供する。具体的には、本発明は、HPVを含む各種ウイルス中のCD8+T細胞エピトープの同定するための、修飾T細胞アッセイシステム(すなわち、I-MUNE(登録商標)アッセイ)に用いる製品を提供する。追加的な態様において、本発明は、HPV配列に取り込まれたときにCD8+T細胞の反応を開始することができるペプチドを生産する方法だけでなく、各種HPVタイプの配列にあるHPVエピトープの同定方法も提供する。
【0008】
幾つかの態様において、本発明は、HPV配列におけるCD8+T細胞エピトープの同定方法及びCD8+T細胞反応を開始することができるペプチドの生産方法を提供する。具体的には、本発明はHPVワクチン調製物に用いるHPVエピトープの免疫原性を高めるのに適した手段及び組成物を提供する。
【0009】
これらの態様において、本発明は、所望のタンパク質を含む各種エピトープに対するヒトのT細胞反応を検出する手段を提供する。追加的な態様において、初めに本明細書で述べるI-MUNE(登録商標)アッセイシステムを用いて有意エピトープの同定を行い、次いで、タンパク質に対して高められた免疫反応を誘導するエピトープを生産するために、この有意エピトープを修飾する。
【0010】
従って、上で説明したように、本発明のタンパク質は、それらの前駆体DNAによりコードされている天然のタンパク質と比較した場合、修飾された免疫反応(例えば、修飾された抗原性及び/又は免疫原性)を示す。例えば、高い免疫反応を示すHPV(例えば、変異HPVエピトープ)は予防用及び治療用ワクチン組成物として使用することができる。
【0011】
本発明は、2系統のヒトパピローマウイスル(HPV)由来のE7タンパク質におけるCD8+T細胞エピトープも提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は、ハイリスクHPV系統による感染を予防するための、特定の多様性ワクチンにおけるHPVワクチンの開発に対する手段を提供する。追加的な態様において、本発明は、感染した個人における腫瘍の発生及び/又は悪性疾患を防止するのに適した、ハイリスクHPVタイプに対する治療用ワクチンの開発に対する手段を提供する。本発明はさらに予防用及び/又は治療用のワクチンの使用に適したエピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は配列番号1-25で定義されるエピトープを提供する。具体的な好ましい態様において、本発明は予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適した修飾エピトープを提供する。
【0012】
本発明はさらに、2のハイリスクHPV系統(例えば、系統16及び18)のE7タンパク質に対するワクチン組成物の開発に対する方法を提供する。幾つかの特定の好ましい態様において、前記ワクチン組成物は配列番号1-25の群より選択される少なくとも1のエピトープを含む。幾つかの代替的な好ましい態様において、該ワクチン組成物はハイリスクHPV系統として当該技術分野において知られている系統の少なくとも1のエピトープ、及び/又は、中程度のリスクのHPV系統として当該技術分野において知られている系統の少なくとも1のエピトープを含む。したがって、本発明のHPVワクチンは多くのHPV系統の治療及び予防に使用できることが明らかである。本発明は、特定のエピトープ及び/又は特定のエピトープを含む組成物に限定されることは意図していない。従って、本発明の各種ワクチンの態様において、本発明に使用可能であると意図されるエピトープの組み合わせも本発明の範囲である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は任意の所望のタンパク質における有効なCD8+T細胞エピトープを同定する手段を提供する。本発明はさらに、各種タンパク質のCD8+T細胞エピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明はヒトパピローマウイルス(HPV)のCD8+T細胞エピトープを提供する。追加的な態様において、本発明は、予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適したエピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明は、予防用及び/又は治療用ワクチンに適した修飾エピトープを提供する。幾つかの具体的な好ましい態様において、本発明は、癌を予防するだけでなく、ウイルスを含む各種微生物系統由来のT細胞エピトープに基づくワクチンを開発するための手段を提供する。
【0014】
1998年4月15日に提出されたUS Patent Appln Ser. No.09/060,872、2000年2月2日に提出されたUS Patent Appln Ser. No.09/500,135、2001年1月23日に提出されたUS Patent Appln Ser. No.09/768,080及びこれらに関連する出願に記載されているように、I-MUNE(登録商標)アッセイは任意の所望のタンパク質中の有効なT細胞エピトープを同定することを目的として開発された。このアッセイの特徴の一つは、特定のタンパク質に曝されたことがないと推定される固体を含むドナー集団から得られた細胞を使用することである。引用される出願及び刊行物に記載されているように、前記アッセイは各種タンパク質のCD4+T細胞エピトープの同定においては大きな成功を収めた。しかしながら、CD8+T細胞エピトープについての研究がなされていなかったので、該アッセイは、健常者に対する効果が少なかった。文献によると、CD8+T細胞の反応は、その反応を「助ける」CD4+細胞に依存している。一つには、この「助ける」作用には、抗原提示細胞(APCs)の活性化が含まれる。ACPの活性はCD4+T細胞がACPsと相互作用するときに起きる。CD4+T細胞とAPCの間の相互作用は、部分的にCD40リガンド/CD40レセプターの相互作用により仲介される。従って、本発明が開発される間は、抗CD40モノクローナ抗体が、CD4+T細胞活性化の存在に対する代替物としてアッセイに使用されてきた。
【0015】
加えて、幾つかのケースにおいて、ある病気を克服した患者は慢性の病気を患っている患者よりも異なるエピトープに対応する免疫反応を有することが信じられてきた。すなわちこのことは、自然に感染を克服したHCV罹患者 (Wertheimer et al., Hepatol., 37: 577-589 [2003]参照)及びウイスルに感染している間に強いCD8+反応を示したHIV罹患者(Addo etal., J.Virol., 77: 2081-2092[2003]参照)において証明されている。従って、本明細書に記載されているように通常の健康なドナーのエピトープを同定すると、非機能的なCD8+エピトープの中に効果を有する可能性のあるエピトープを同定することになる。
【0016】
本明細書で述べるように、CD8+T細胞の分化反応における効果を評価するために抗CD40モノクローナル抗体をCD8+I-MUNE(登録商標)を用いて繰り返し試験を行った。実施例に詳細を記載するが、in vitroにおいて特定の幅の濃度が効果的であることがわかった。本明細書に示すように、CD8+増殖及びINF-γ分泌の両者は、抗CD40抗体の使用によりin vitroにおいて増強される。本明細書で述べるように、多くの他の抗体においても同様の実験を行ったが、CD8+T細胞活性を誘導した抗体はなかった。
【0017】
有効なCD8+T細胞エピトープを同定する他の方法は、免疫反応を経験したドナー由来の細胞を用いている。これらのアッセイでは、末梢血単核細胞(PBMCs)をそのまま用いるか、あるいは、末梢血単核細胞(PBMCs)を使用に先立ちin vitroで培養するか、あるいは、末梢血単核細胞(PBMCs)をクローンして用いる。すなわち、最近のHPV及び他の主要組織適合性複合体(MHC)クラスIエピトープペプチドを同定する方法は、抗原特異的CD8+T細胞が豊富であることが検証されたドナー由来の末梢血管血液を使用している。抗原特異的CD8+T細胞が豊富な集団に対して、テトラマー染色法及び分化法が使用される。すなわち、ペプチドのセットを用いたテトラマー解析は、CD8T細胞が機能的であるということを確かめるために、エリスポット(Elispot)解析と共に反応エピトープを検出するのに用いられてきた(例えば、 Terajima et al., J.Exp.Med., 197: 927-932 [2003]参照)。しかしながら、テトラマーの使用には限界があった。すなわち、該方法は一握りのクラスI構築物しか利用することができなかったのである(例えば、 Sato et al., J. Immunol.Meth., 271 : 177-184 [2002] ; 及びAltman et al., Science 274: 94-96 [1996], erratum at Science 280: 1821[1998]参照)。
【0018】
加えて、多くのCD8+T細胞エピトープを予測するアルゴリズムが知られており、それらのいくつかは効果的で即効的であった(Nussbaum et al., Curr. OpinImmunol., 15: 69-74 [2003]参照)。幾つかの態様において、これらのコンピューターアルゴリズムは、MHCクラスI結合を予測するために用いられる。しかしながら、コンピュータアルゴリズムに基づいて同定された予測エピトープは機能的に保証されなければならないことから、完全な答えは、この方法で提供されることはない。
【0019】
本発明は、非暴露細胞ドナーを用いて、かつ、エピトープ及び免疫反応の間の関係をコンピューターアルゴリズムに依存しないような、近年用いられている方法よりも有意に有利な方法を提供する。重要なことは、本発明は、各エピトープ及びサンプルに対して得られた結果物を機能的に評価すための手段を提供することである。
【0020】
定義
他の違った方法で定義しない限り、本明細書で用いられる全ての技術的及び化学的言語は、本出願に関係する技術分野における当業者に通常理解されているものと同じ意味を有する。例えば、Singleton and Sainsbury, Dictionary of Microbiology and Molecular Biology, 2d Ed., JohnWiley and Sons, NY (1994);及び Hale and Marham, The Harper Collins Dictionary of Biology, Harper Perennial, NY (1991)は、本発明の技術分野の当業者が利用する、本発明において多く用いられている用語の一般的な辞書である。本明細書で述べられているのと同じかあるいは似通った多くの方法及び物質は、本発の実施に用いることができるけれども、本明細書には、好ましい方法及び物質が本明細書で述べられている。従って、以下で定義される言葉は、本明細書全体にわたり参照することにより、十分に説明される。本明細書で用いる記号、「一つの」及び「この」という語は、他に違った形で定義されていない限り、複数を示す場合にも用いる。
【0021】
「HPV」及び「ヒトパピローマウイスル」の語は、感染することによってヒトに影響するパピローマウイスル遺伝子のメンバーを言う。HPVの主要な2の分類(すなわち、性器型又は皮膚型)がある。この各グループは、複数のウイルス「タイプ」又は「系統」を含む(例えば、HPV16、HPV18、HPV31、HPV32等)。本発明において具体的に意図されるものは生殖器感染及び悪性疾患に関係するHPVタイプである。
【0022】
本明細書で用いる、「予防用」又は「防止用」ワクチンは、感染、病気及び/又は病原菌、特にHPVに関連して又はHPVによって引き起こされるあらゆる連続的な症状の予防を意図して投与されるワクチンを意味する。
【0023】
本明細書で用いる、「治療用」ワクチンは、1以上のHVP系統のような病原性を有する有機体にすでに感染している患者に投与するワクチンを意味する。治療用ワクチン(例えば、治療用HVPワクチン)は、感染している患者における、腫瘍の発生又は悪性疾患への進展を予防及び/又は処置するために使用される。
【0024】
「抗原提示細胞(APC)」の語は、抗原を表面に有している免疫システムの細胞を言う。この抗原はT細胞の表面にあるレセプターによって認識される。抗原提示細胞の例は、樹状細胞、樹枝状細胞、活性B細胞及びマクロファージである。
【0025】
細胞系統又は細胞について用いる「リンパの」という語は、リンパ系由来の細胞系統又は細胞を言い、B及びTリンパ系統の細胞を含む。
【0026】
本明細書で用いる「Tリンパ球」及び「T細胞」の語は、T細胞前駆体 (T細胞レセプター(TCR)遺伝子を再構築していないThy1陽性細胞を含む)から、成熟T細胞(すなわち、CD4又はCD8のどちらか一方に陽性である表面TCR陽性細胞)までの、Tリンパ系統内のあらゆる細胞を含む。
【0027】
本明細書で用いる「Bリンパ球」及び「B細胞」の語は、B前駆細胞のようなB細胞前駆体(Ig重鎖遺伝子を再構成しているB220+細胞)から、成熟B細胞及びプラズマ細胞までのB細胞系統内のあらゆる細胞を含む。
【0028】
本明細書で用いる「CD4+T細胞」及び「CD4T細胞」の語は、ヘルパーT細胞を言う。一方、「CD8+T細胞」及び「CD8T細胞」の語は、サイトトキシックT細胞を言う。
【0029】
本明細書で用いる「B細胞増殖」とは、抗原の存在下あるいは非存在下において、抗原提示細胞と共にB細胞をインキュベーションした場合に生産される、多数のB細胞を意味する。
【0030】
本明細書で用いる「B細胞増殖のベースライン」の語は、抗原ペプチド又は抗原タンパク質の非存在下で、B細胞を抗原提示細胞に曝した時の反応において個人に通常見られる程度のB細胞の増殖を言う。本明細書においては、B細胞増殖のベースラインのレベルは、抗原の非存在下に、抗原提示細胞に反応したB細胞の増殖として、各個体サンプルごとに決定される。
【0031】
本明細書で用いる「B細胞エピトープ」の語は、抗原(すなわち免疫原)を含むペプチドに対する免疫反応において、B細胞レセプターにより認識されるペプチド又は、プロテインの特定の構造を言う。
【0032】
本明細書で用いる「修飾されたB細胞エピトープ」の語は、対象とする前駆体ペプチドまたはタンパク質とは異なるエピトープアミノ酸配列を言う。そのような、対象とする変異ペプチドは、ヒトあるいは、他の動物において、異なる(すなわち変更された)免疫反応を引き起こす。変更された免疫反応は、変更された免疫原性及び/又はアレルギー性(すなわち、免疫反応全体が増強するか、あるいは、減弱する)を示す。いくつかの好ましい態様において、修飾B細胞エピトープは、同定されたエピトープ内の残基から選択される、1のアミノ酸の置換及び/又は欠失を含んでいる。別の態様において、修飾B細胞エピトープは、エピトープ内の1以上の残基の付加を含む。
【0033】
本明細書で用いる「T細胞エピトープ」の語は、抗原を有するペプチドに反応する免疫反応の開始において、T細胞レセプターが、認識するペプチドまたはタンパク質の特定の構造を意味する。T細胞によるT細胞エピトープの認識は、通常、T細胞が、抗原提示細胞上に発現しているクラスI及びクラスIIの主要組織適合性複合体(MHC)分子に結合する抗原のペプチド断片を認識するというメカニズムを介して行われていると考えられている(例として、Moller(ed.), Immunol. Rev., 98; 187[1987]参照のこと)。本発明の幾つかの態様において、エピトープ又はエピトープの断片は、該エピトープまたは断片を結合及び提示することができるMHC分子を有する抗原提示細胞の検出に用いられる。幾つかの態様において、エピトープ/エピトープ断片は、対象とするエピトープ/エピトープ断片を結合及び/又は提示する細胞の同定のための検出ラベル(すなわちマーカー)を更に含む。
【0034】
本明細書で用いる「T細胞増殖」の語は、抗原の存在下、あるいは、非存在下において、抗原提示細胞と共にT細胞を培養する間に生産されるT細胞の数を言う。
【0035】
本明細書で用いる「ベースラインT細胞増殖」の語は、ペプチド又はタンパク質抗原の非存在下において、抗原提示細胞の作用を受けて反応した固体において見られるT細胞の増殖を意味する。本明細書では、ベースラインT細胞増殖のレベルは、抗原の非存在下に抗原提示細胞に反応したT細胞の増殖として個々のサンプルごとに決定される。
【0036】
本明細書で用いている「免疫反応の変化」とは、免疫反応の増強または低下を意味する。タンパク質(例えば、プロテアーゼ)およびペプチドは、これらが引き起こすT細胞反応が親の(例えば、前駆体)タンパク質もしくはペプチド(例えば、対象とするプロテアーゼ)により引き起こされる反応よりも強い場合、「免疫反応の増強」を示す。この反応増強の正味の増強分が、この変異タンパク質もしくはペプチドを標的とする抗体反応の増強分である。タンパク質およびペプチドは、これらが引き起こすT細胞反応が親の(例えば、前駆体)タンパク質もしくはペプチドにより引き起こされる反応よりも弱い場合、「免疫反応の低下」を示す。この反応低下の正味の低下分が、この変異タンパク質もしくはペプチドを標的とする抗体反応の低下分である。一部の実施態様として、この親タンパク質は、野性型タンパク質もしくはペプチドである。
【0037】
特定のアミノ酸配列に関係する「エピトープ」は、特定の免疫グロブリンにより認識されるアミノ酸残基のセットである、T細胞に関しては、これらの残基は、T細胞レセプタータンパク質及び/又は主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識に必要である。In vitro又はin vivoにおける免疫システムの設定において、エピトープは一次、二次、及び三次ペプチド構造のような分子の集合体の特徴を有し、免疫グロブリン、T細胞又はHLA分子の認識部位を形成するために集合する。本明細書全体を通じて、「エピトープ」又は「ペプチド」の語はしばしば互換的に使用される。
【0038】
本明細書において「主要(メジャー)エピトープ」の語は、試験されるドナープール内の反応割合が、バックグラウンドよりも少なくとも3標準偏差高いことを特徴とするエピトープ(すなわち、T細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープ)を意味する。
【0039】
本明細書において「中程度(モデレート)エピトープ」の語は、試験されるドナープール内の反応割合が、バックグラウンドよりも少なくとも2標準偏差高いことを特徴とするエピトープ(すなわち、T細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープ)を意味する。
【0040】
本明細書において「マイナーエピトープ」の語は、試験されるドナープール内の反応割合が、バックグラウンドの2倍であることを特徴とするエピトープ(すなわち、T細胞エピトープ及び/又はB細胞エピトープ)を意味する。
【0041】
本明細書で用いる、「有意エピトープ」の語は、テストドナープール内の反応割合が、バックグラウンドレスポンスの反応速度の3倍以上であることを特徴とするエピトープ(すなわちT細胞及び/又はB細胞エピトープ)を言う。
【0042】
本明細書で用いる「弱有意エピトープ」の語は、テストドナープール内の反応割合が、バックグラウンドの反応割合より大きいが、3倍未満であることを特徴とするエピトープ(すなわち、T細胞及び/又はB細胞エピトープ)を言う。
【0043】
本明細書において、「バックグラウンドレベル」及び「バックグラウンド反応」の語は任意の試験されたタンパク質に対するデータセットにおける反応する任意の所与のペプチドの%を言う。この値は、試験された全ドナーを含むセットの中の全ペプチドに対する反応%を平均して求める。例として、3%のバックグラウンド反応は、テストされたドナーが100である場合にデータセットの中の任意のペプチドに対する陽性反応が3であることを示している(SIは2.95以上)。
【0044】
本明細書で用いる「サンプル」の語は、最も幅広い意味に用いる。好ましい態様において、この語は、解析、同定、修飾及び/又は他のペプチドと比較されるペプチド(すなわち、所望のタンパク質の配列を含むペプセットの中のペプチド)を含むサンプル(例えば、分割サンプル)を意味する。従って、大部分のケースにおいて、この語は所望のタンパク質又はペプチドを含む物質を意味する。
【0045】
本明細書で用いる「所望のタンパク質」の語は、解析、同定及び/又は修飾されるタンパク質を意味する。本発明に使用される全ての組換えタンパク質、合成タンパク質、変異体及びその誘導体だけでなく、自然発生タンパク質も意味する。
【0046】
本明細書で用いる「タンパク質」の語は、アミノ酸及び当業者によりタンパク質と認められているあらゆる物質を意味する。「タンパク質」「ペプチド」及びポリペプチドの語は互換的に使用される。アミノ酸は、完全な名称(例えば、アラニン)、又は一文字表記(例えば、A)又三文字の略語(例えば、ala)で表記する。ペプチドが所望のタンパク質である場合、当業者は文脈上で用いる語により理解することができる。「タンパク質」の語は、関連タンパク質の「プレ」又は「プレプロ」型のほか、タンパク質の成熟型も意味する。タンパク質のプレプロ型は、タンパク質のアミノ末端に作動可能に結合しているプロシークエンスと該プロシークエンスのアミノ末端に作動可能に結合している「プレ」又は「シグナル」配列配列を有するタンパク質の成熟型を含む。
【0047】
本明細書で用いるように、似た機能を有するタンパク質は、「関連タンパク質」と言われる。いくつかの態様において、これらのタンパク質は異なる有機体の異なる遺伝子及び/又は異なる種由来である(例えば、バクテリアタンパク質及び糸状菌タンパク質)。いくつかの態様において、関連タンパク質は同じ種から提供される。本発明は、特定の源由来の関連タンパク質に制限することを意図しない。
【0048】
本明細書で用いている「誘導体」という用語は、前駆体タンパク質に対し、C末端とN末端のうちの一方もしくは両方に1個以上のアミノ酸を付加し、あるいは、そのアミノ酸配列内の1つ又は異なるいくつかの部位において1個以上のアミノ酸を置換し、あるいは、このタンパク質の一端もしくは両端またはそのアミノ酸配列内の1個所以上の部位において1個以上のアミノ酸を欠損させるか、又はそのアミノ酸配列内の1個所以上の部位において1個以上のアミノ酸を挿入することによって得られるタンパク質を意味する。プロテアーゼ誘導体は、未修飾タンパク質をコードするDNA配列を修飾し、得られたDNA配列を適当な宿主細胞中で形質転換し、修飾DNA配列を発現させることにより調製することが好ましい。
【0049】
関連(及び誘導体)タンパク質は、「変異タンパク質」も含む。好ましい態様において、変異タンパク質は、一方の親タンパク質及び他方の親タンパク質と比較すると、小数のアミノ酸残基が異なる。異なるアミノ酸残基の数は、1以上であり、好ましくは、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50または、それ以上である。ある態様において、変異体間で異なるアミノ酸の数は、1から10の間である。特に好ましい態様において、関連タンパク質及び特定の変異タンパク質は、少なくとも、10%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、及び、99%のアミノ酸配列の相同性を有する。加えて、本明細書で用いられる関連タンパク質又は変異体タンパク質は、プロミネント領域の数が、他の関連タンパク質又は親タンパク質とは異なる。例えば、幾つかの態様において、変異タンパク質は、親タンパク質とは異なる1、2、3、4、5、又は10の対応するプロミネント領域を有する。
【0050】
ある態様において、変異体のプロミネント対応領域は、バックグラウンドレベルの免疫反応のみを生産する。置換、挿入又は欠失に関係するいくつかの残基は、保存残基であるが、保存されない残基もある。保存されない残基の場合、1以上のアミノ酸の置換は、自然界に存在しないアミノ酸配列を有する変異体を生産する置換に限定される。保存される残基の場合、そのような置換は自然発生する配列とはならない。
【0051】
幾つかの態様において、他の方法も用いることができるが、以下で説明するカセット変異誘発方法は、本発明のアミラーゼ変異体を構築するのに用いられる。第一に、タンパク質をコードしている自然発生遺伝子を入手し、全体あるいは一部の配列を決定する。それから、コードされているタンパク質中に1以上のアミノ酸の変異(欠失、挿入または置換)を作成するために適した場所をスキャンする。この場所にフランキングしている配列は、発現したときに各種変異体をコードするオリゴヌクレオチドプールを用いて、遺伝子短断片を置換するための制限部位があるかどうか評価される。そのような制限部位は、好ましくは、遺伝子セグメントの置換を促進するためのタンパク遺伝子内の特徴的な部位である。しかしながら、アミラーゼ遺伝子中にあまり多く存在しない任意の制限部位を用いることもできる。制限消化によって、生成する遺伝子断片は、所望の配列中で再構築することもできる。もし、制限部位が、選択されたポイントから便利な距離(10から15ヌクレオチド)に存在しないときは、最終的な構築物中のリーディングフレームまたはアミノ酸のいずれも変化させずに、遺伝子中の核酸配列のヌクレオチドの置換によって、そのような部位を生成することができる。対象とする配列を確認するために、その配列を変化させるための遺伝子の変異は、既知の方法であるM13プライマーを伸長させることによって行うことができる。適切なフランキング領域の位置決め、及び、2の簡便な制限部位配列で必要な変異を発現させるための評価の作業は、遺伝子コードの余剰量(redundancy)、遺伝子の制限酵素マップ、及び、多くの異なる制限酵素を用いた、ルーチン作業で行うことができる。もし、簡便な制限フランキング部位が使用可能であるならば、上記方法は、サイトを含まないフランキング領域の結合にのみ用いる。
【0052】
一旦自然発生DNA又は、合成DNAがクローン化されると、変異位置に隣接している制限部位が同じ起源の制限酵素を用いて消化され、エンド末端に相補的なオリゴヌクレオチドの複数のカセットが、遺伝子の中に結合される。変異誘発はこの方法によって簡素化される、なぜならば、オリゴヌクレオチドの全ては、同じ制限部位を有するように合成することができ、該制限部位をつくるための合成リンカーが必要ないからである。
【0053】
本明細書で用いている「対応する」残基とは、タンパク質またはペプチド内に列挙された位置にある各残基、あるいはタンパク質またはペプチド内に列挙された各残基と類似、相同もしくは同等である残基を意味する。
【0054】
本明細書で用いる「対応する領域」の語は、通常、関連タンパク質又は親タンパク質中の類似する位置を言う。
【0055】
本明細書で用いる「類似の(アナロガス)配列」は所望のタンパク質と、(すなわち、対象とするタンパク質と同じ起源の)、同じ機能、三次構造及び/又は、保存残基を有するタンパク質内の配列を言う。具体的な好ましい態様において、類似の配列は、エピトープ又はエピトープの近くにある配列を含む。例えば、アルファヘリックス又はベータシート構造を含むエピトープ領域内で、類似配列内で置換されたアミノ酸は、同じ特定の構造を維持していることが好ましい。この語は、アミノ酸配列の他に核酸配列についても用いる。いくつかの態様において、アナログ配列は、置換アミノ酸が、エピトープ又はエピトープに近いところのタンパク質中のアミノ酸と、同じ機能、三次構造及び/又保存される残基を示すように、構築される。従って、例えば、アルファヘリックス又はベータシート構造のようなエピトープ領域を含むところでは、アミノ酸の置換は、特定の構造を維持していることが、好ましい。
【0056】
本明細書で用いる「相同(ホモログ)タンパク質」とは、所望のタンパク質と同様な作用、構造、抗原性反応/または免疫原性反応を有するタンパク質を意味する。相同タンパク質と対象タンパク質とは、必ずしも進化の上で関係がなくてもよい。従って、この用語は、異なる種から得られる機能的に同じタンパク質(例えば、プロテアーゼ)を含むと考えられる。好ましい実施態様としては、所望のタンパク質内のエピトープを相同タンパク質からの類似のセグメントで置換すれば、変化による混乱を少なくすることができるので、所望のタンパク質と同様な三次および/または一次構造を有する相同タンパク質を用いることが望ましい。従って、多くの場合、相同性の高いタンパク質は、エピトープの置換の最も好ましい供給源となる。あるいは、所与のタンパク質のヒトにおける類似体に関心を向けることも有利である。例えば、幾つかの態様において、あるヒトHPVタイプの中の特定のエピトープを他のHPV又は他の種のパピローマウイスルで置換すると、ワクチン組成物として適したレベルの免役原性を有するHPVタイプが生産される。
【0057】
ここで用いる「相同遺伝子」とは、異なる種由来の、または通常は関連種由来の一組の遺伝子対をいい、それぞれが対応し、それぞれ同一または非常に類似しているものをいう。当該用語は種形成(すなわち、新しい種の進化)により分離した遺伝子(例えばオーソロガス遺伝子)、及び遺伝子重複により分離した遺伝子(例えばパラロガス遺伝子)を包含する。
【0058】
ここで用いる「オーソログ」及び「オーソロガス遺伝子」とは種形成により共通祖先の遺伝子(すなわち相同遺伝子)から進化した異なる種の遺伝子をいう。通常、オーソロガスは進化の過程において同じ機能を保持する。新しく配列決定されたゲノムのオーソロガスを同定することで、信頼性の高い遺伝子機能の推測ができる。
【0059】
ここで用いる「パラログ」及び「パラロガス遺伝子」とはゲノム内で重複していることにより関連した遺伝子をいう。オーソログは進化の過程を通して同じ機能を維持するが、パラログはいくつかの機能は最初の機能に関連するが、それに加えて新しい機能も有している。パラログ遺伝子の例としては、限定されないが、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びトロンビンをコードする遺伝子が挙げられ、これらは全てセリンプロテイナーゼであり、同じ種内で一緒に発生する。
【0060】
本明細書で用いる「野生型」及び「天然の」タンパク質は、自然界において通常見られるタンパク質である。本明細書にて、互換的に用いる、「野生型配列」及び「野生型遺伝子」の語は、宿主細胞内で、天然に、または、自然発生的に生じる配列を言う。いくつかの態様において、野生型配列は、タンパク質工学的手法により利用されるタンパク質の開始点となる所望の配列を言う。この自然発生(すなわち、前駆体)タンパク質をエンコードしている遺伝子は、当該技術分野の当業者に既知の方法に従って得ることができる。この方法は、通常、所望のタンパク質の領域をエンコードする成熟配列を有するラベルプローブの合成、該タンパク質を発現している有機体の遺伝子ライブラリーの作成、及び、対象とする遺伝子に対するライブラリーのスクリーニングを含む。陽性ハイブリダイズクローンはその後、マッピングされ、配列決定される。
【0061】
本明細書で用いる「組換えDNA分子」の語は、分子生物学的手法によって、互いに結合されたDNAセグメントを含むDNA分子を言う。
【0062】
配列間の相同性の程度は、本発明の技術分野で知られている適切な方法で決定することができる(Smith and Waterman, Adv. Appl. Math.,2: 482 [1981]; Needleman and Wunsch, J. Mol.Biol., 48: 443[1970] ; Pearson and Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444 [1988]; programs such as GAP, BESTFIT, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package (Genetics Computer Group, Madison, WI) ; 及び Devereux et al., Nucl. Acid Res., 12: 387-395 [1984] 参照のこと)。
【0063】
例えば、PILEUPは、配列のホモロジーのレベルを決定するのに有用なプログラムである。PILEUPは、累進的で対合的な配列法を用いて関係する配列の群から多重配列アラインメントを作り出す。アラインメントを作るための関係性の集積を示す系統樹(tree)もプロットすることができる。PILEUPは、Feng 及びDoolittleの累進的アラインメント方法を簡素化したものである(Feng and Doolittle, J. Mol. Evol., 35: 351-360 [1987])。この方法は、Higgins及びSharpによって述べられた方法と同じである(Higgins and Sharp, CABIOS 5: 151-153 [1989])。有用なPILEUPパラメーターは、3.00のデフォルトギャップウエイト、0.10のデフォルトギャップレングス、及び、ウエイトエンドギャップを含んでいる。他の有用なアルゴリズムの例は、Altschulらによって述べられたブラストアルゴリズムである(Altschulet al., J. Mol.Biol., 215: 403-410, [1990]; and Karlin etal., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5873-5787 [1993])。ある具体的なBLASTプログラムは、WU-BLAST-2プログラムである(Altschulet al., Meth.Enzymol.266 : 460-480 [1996] 参照のこと)。「W」、「T」及び「X」のパラメーターは、アラインメントの速度及び感度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、ワード長(W)11、BLOSUM62得点マトリックス(Henikoff、Henikoff、Proc. Nat’l Acad. Sci. USA、89:p10915(1989)参照)アラインメント(B)50、期待値(E)10、M’5、N’-4、および両ストランドの比較を用いる。
【0064】
本明細書で用いる「ヌクレオチド配列の相同性の割合(%)」は、候補配列中にある、配列のヌクレオチド配列と同一であるヌクレオチド残基の割合として定義される。
【0065】
本明細書で用いる、「ハイブリダイゼーション」の語は、本発明の技術分野で知られているように、塩基のペアリングを通じて、核酸のストランドに相補的なストランドが結合するプロセスであると定義される。
【0066】
本明細書で用いる「ハイブリダイゼーション条件」の語は、ハイブリダイゼーションが行われる条件を言う。これらの条件は、ハイブリダイゼーションが観測される条件の「ストリンジェンシー」の程度によって分類される。
【0067】
例えば、「最大ストリンジェンシー」は通常約Tm-5℃(プローブのTmより5℃低い)で起こり、「高ストリンジェンシー」はTmより約5〜10℃低く、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmより約10〜20℃低く、そして「低ストリンジェンシー」はTmより約20〜25℃低い。機能上、最大ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションプローブと同一な配列を同定するために用いることができ、中から低いストリンジェンシーなハイブリダイゼーションは相同なポリヌクレオチド配列を同定するために用いることができることは当業者に理解されている。
【0068】
2の核酸分子またはペプチドを示す文脈中における、「実質的に似ている」及び「実質的に同一な」の語は、参照される配列(すなわち野生型配列)と比較して、少なくとも60%の同一性、好ましくは、少なくとも75%の同一性、より好ましくは少なくとも80%の同一性、更に、より好ましくは、少なくとも90%の同一性、更により好ましくは少なくとも95%の同一性、より好ましくは97%の同一性、時には、98%及び99%の同一性を有する配列を含む。配列同一性は、標準パラメーターを使用した、BLAST、ALIGEN及びCLUSTAL等の既知のプログラムを用いて決定される(Altschul et al., J. Mol.Biol. 215: 403-410 [1990]; Henikoff eta/., Proc. Natl. Acad Sci. USA 89: 10915 [1989]; Karin et al, Proc. Natl Acad. Sci USA 90: 5873 [1993]; 及び Higgins et al., Gene 73: 237-244 [1988]参照のこと)。BLAST解析を行うソフトウエアは、National Center for Biotechnology Information を通じて利用可能である。また、データベースもFASTAを用いて検索することができる(Pearson et al., Proc.Natl. Acad. Sci. USA 85: 2444-2448 [1988] )。
【0069】
本明細書で用いる「等しい残基」の語は、特定のアミノ酸残基を共有するタンパク質を言う。例えば、等しい残基は、X線結晶化学によって同定される三次構造を有するあるタンパク質(例えばINF-β)の三次構造のホモロジーレベルを検出することによって同定される。等しい残基は、前駆体タンパク質の特定のアミノ酸残基の2個以上の主鎖原子の原子座標(N対N、CA対CA、C対CおよびO対O)が位置合わせ後に0.13nm、好ましくは0.1nm以内であるものと定義される。位置合わせは、対象とする非水素タンパク質原子の原子座標について最大の重複を生じるように最良のモデルが配向、配置された後に達成される。この最良のモデルは、結晶学及びタンパク質の特徴付け/解析の分野において当業者に知られている方法を用いて検出され、利用できる最高の解像度において回折実験データの最低のRファクターが得られる結晶学的なモデルである。
【0070】
いくつかの態様において、修飾には、好ましくは、前駆体酵素のアミノ酸配列をコードする「前駆体DNA配列」を用いるが、前駆体タンパク質の操作によってでも行うことができる。保存されない残基の場合には、1以上のアミノ酸の置換は、自然界に見られるものに対応しないアミノ酸配列を有する変異体を生産する置換に限定される。保存残基の場合、そのような置換は自然発生的する配列にはならない。本発明によって提供される誘導体は、更に、アミラーゼの特徴を変える化学修飾も含む。
【0071】
一部の好ましい態様として、タンパク質遺伝子は、適切な発現プラスミドに結合される。次いで、このクローン化したタンパク質遺伝子は、タンパク質遺伝子を発現するための形質転換または形質移入に用いられる。このプラスミドは、プラスミド複製に必要なよく知られたエレメントを含有するように宿主内で複製可能なように設計されるか又は宿主染色体中に組み込まれるように設計することができる。必要なエレメントは、効率的な遺伝子発現のために提供される(例えば、目的の遺伝子に作動可能なように結合したプロモータ)。いくつかの実施態様として、必要なエレメントは、もしそれが、外因性である又はタンパク質遺伝子の内性ターミネーター領域により提供される転写ターミネーター(真核宿主細胞のポリアデニル化領域)を認識するならば遺伝子自身の相同プロモーター (即ち、その宿主細胞により転写される)として与えられる。いくつかの態様として、プラスミド感染宿主細胞の連続的な培養維持を可能にする抗生物質抵抗性遺伝子のような選択遺伝子も含まれる。
【0072】
本発明は、免疫原性を等しく変更したタンパク質も包含する。「等しい」の語は、本明細書で開示するいずれか1の配列を有するポリペプチドに、中から高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることができ、かつ、ヒトT細胞に反応するように修飾された免疫原性を有するポリペプチドによりコードされるタンパク質を意味する。「等しい」の語は、タンパク質が少なくとも55%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%エピトープ配列に相同であり、かつ、そのようなエピトープ(例えば、修飾されたアミノ酸配列を有するエピトープ)を有する変異プロテアーゼであることを意味する。
【0073】
本明細書で用いる、「ハイブリッドタンパク質」及び「融合タンパク質」の語は、少なくとも2の異なる「親」タンパク質から改造されたタンパク質を言う。好ましい態様において、これらの親タンパク質は、お互いに相同である。例えば、いくつかの態様において、好ましいハイブリッドアミラーゼ、又は、融合アミラーゼは、タンパク質のN末端及びタンパク質の相同体のC末端を含む。いくつかの好ましい態様において、2のターミナルエンドは、全長活性タンパク質に対応するように結合する。代替的な好ましい態様において、この相同体はT細胞エピトープとは同一ではないが、実質的類似性を有する。それゆえ、ある態様において、本発明は、T細胞エピトープが少ないか、あるいは、まったくT細胞エピトープを有しない相同性と置き換えることができる1以上のT細胞エピトープをC末端に有しているアミラーゼを提供する。したがって、当業者は、相同体中のT細胞エピトープを同定することにより、異なる免疫反応を生産する、各種変異体を形成することができる。更に、内部タンパク質及び1以上の相同体も本発明の変異体を生産するために用いることができることが理解される。
【0074】
「作動可能に結合」及び「作動可能な組み合わせ」の語は、少なくとも2のDNA配列の関連について述べるときは、単にそれらがお互いに機能的な位置にあることを意味する。例えば、配列は、大部分のシグナル配列の分割を含む、成熟型タンパク質の分泌に関係するシグナル配列として機能するならばペプチドに作動可能に結合している。プロモータは配列の転写を制御するならばコード領域に作動可能に結合している。リボゾーム結合部位は転写をさせるような位置にあるならば、コード配列に作動可能に結合している。
【0075】
5’ペントース環のモノヌクレオチドの一つが、リン酸ジエステル結合を介して一方向にその隣の3’酸素に付着されるような方法で、オリゴヌクレオチドを作るために反応することから、DNA分子は「5’末端」及び「3’末端」と言われる末端を有する。それゆえ、オリゴヌクレオチドの末端は、5’リン酸がモノヌクレオチドペントース環の3’酸素に結合していない場合には、5’末端といわれ、3’酸素がモノヌクレオチドのペントース環の5‘リン酸に結合していない場合には、3’末端と言われる。本明細書のように、より大きなオリゴヌクレオチドの内部にある核酸配列でさえ、5’及び3’末端を有する。直線及び環状DNA分子のいずれかにおいて、分離しているエレメントは「下流」又は3’エレメントの「上流」又は「5’」にあると言い表される。これらの用語は、DNAストランドに沿って5’から3’にむかって転写が起こることを意味する。結合している遺伝子の転写に関係するプロモータ及びエンハンサーエレメントは、通常、コード配列の5’又は上流に位置する(エンハンサーエレメントはプロモータエレメント及びコード領域の3’に位置するときでも効果を有する)。転写の終了及びポリアデニレーションシグナルは、コード領域の3‘又は下流に位置する。
【0076】
「遺伝子をコードするヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチド」の語は、遺伝子のコード領域を含むDNA配列あるいは他言すれば、遺伝子産物をコードするDNA配列を意味する。コード領域はcDNA又はゲノムDNA形態で存在する。エンハンサー/プロモータ、スプライスジャンクション、ポリアデニレーションシグナル等の適切な調節エレメントは、もし、転写の開始及び/又は一次RNA転写の修正に必要であるならば遺伝子のコード領域の近いところに位置する。代替的に本発明の発現ベクターに用いられるコード領域は、内性のエンハンサー/プロモータ、スプライスジャンクション、介在配列、ポリアデニレーションシグナル等を含むか、あるいは、内性及び外因性の両方の制御エレメントの組み合わせを含む。
【0077】
「組換えオリゴヌクレオチド」の語は、ポリヌクレオチド配列の制限酵素消化により生成された2以上のポリヌクレオチド配列の結合、オリゴヌクレオチドの合成(例えば、プライマー又はオリゴヌクレオチドの合成)及び同種のものを含むがこれらに限定されない分子生物学的手順を用いて作られたオリゴヌクレオチドを言う。
【0078】
「転写単位」の語は、転写の開始及び終わりの部位の間のDNAセグメント及び効果的な開始及び終了に必要なエレメントを意味する。例えば、エンハンサー/プロモーター、コード領域、及び転写及びポリアデニレーション配列を含むDNAセグメントは転写単位を含む。
【0079】
「調節エレメント」の語は、核酸配列の発現のいくつかの側面を制御する遺伝的エレメントを意味する。例えば、プロモータは、作動可能に結合しているコード領域の転写の開始を促進する調節領域である。他の調節エレメントは、スプライスシグナル、ポリアデニレーションシグナル、ターミネーションシグナル等(下で定義する)である。
【0080】
「発現ベクター」の語は、所望のコード配列を含む組換えDNA分子及び特定の宿主微生物中で作動可能に結合するコード領域の発現に必要な核酸配列を含む組換えDNA分子を意味する。原核生物の中で発現するのに必要な核酸配列は、プロモータ、任意のオペレータ配列、リボゾーム結合部位及び可能な他の配列を含む。真核生物の細胞はプロモータ、エンハンサー、及びターミネーション及びポリアデニレーションシグナルに用いることができることは知られている。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」の語は、プラスミドが、最も一般的にベクターとして用いられていることから、互換的に使用する。しかしながら、本発明は、同等の機能を提供する他の発現ベクター形態及びプラスミド、ファージ粒子、ウイスルベクター及び/又は単なるゲノム挿入を含むがこれらに限定されない、本技術分野で知られている又は知られつつあるものも含む。
【0081】
本発明で用いる「宿主細胞」の語は、発現ベクター又は所望の遺伝子を含む原核又は真核宿主細胞である。宿主細胞は組換えDNA技術を用いて構築されたベクターで形質転換、又は、トランスフェクションされる。そのような形質転換された宿主細胞はタンパク質変異体をコードする複製ベクター又は所望のタンパク質を発現する複製ベクターのいずれかである。このような変異タンパク質のプレ-又はプレプロ−型をエンコードするベクターの場合、発現したときに宿主細胞培地の中で選択される。
【0082】
「プロモータ/エンハンサー」の語は、プロモータ及びエンハンサー機能(例えば、プロモータ及びエンハンサー機能の両方を含むレトロウイルスのロングターミナルリピート)の両方を提供することができる配列を含むDNAセグメントを意味する。このプロモータ/エンハンサーは「内性」又は「外因性」または「異種の」ものである。内性のエンハンサー/プロモータは、ゲノム内の所与の遺伝子で自然に結合されているものである。外因性(異種の)エンハンサー/プロモータは、遺伝的操作(例えば、分子生物学的手法)により遺伝子のジュクスターポジションに置かれたものである。
【0083】
発現ベクター上の「スプライシングシグナル」の存在は、組み替えられた転写の発現のレベルを高める。スプライシングシグナルは、一次RNA転写からイントロンの除去を仲介するものであり、スプライスドナー及びアクセプター部位を含む(Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York [1989], pp.16.7-16.8)。通常用いられるスプライスドナー及びアクセプター部位はSV40の16S RNA由来のスプライスジャンクションである。
【0084】
原核細胞の中で組換えDNAの効果的な発現には、得られた転写の効果的な終了及びポリアデニレーションに関係するシグナルが必要である。転写終了シグナルは通常ポリアデニレーションシグナルの下流に見られ、数百ヌクレオチドの長さである。「ポリA部位」又は「ポリA配列」の語は初期のRNA転写の終了及びポリアデニレーションに関係するDNA配列を意味する。組換え転写の効果的なポリアデニレーションはポリA部位が不安定であり、急速に分解されることにより、ポリA部位を欠いている転写として知られている。発現ベクターに用いられる内性ポリAシグナルは、ゲノムの中の所与のコード領域の3’末端に見られる。異種のポリAシグナルは他の遺伝子の3’に位置する遺伝子から単離されたものである。通常用いられる異種のポリAシグナルは、SV40ポリAシグナルである。
【0085】
「安定な転写」及び「安定に転写された」の語は、形質転換させる細胞のゲノム内へ外来DNAを導入及び挿入することを意味する。「安定な形質転換体」の語は、ゲノムDNA内に外来DNAを安定に挿入した細胞を意味する。
【0086】
本明細書で用いる「選択マーカー」または、「選択遺伝子プロダクト」の語は、選択マーカーが発現されたところで、細胞の抗生物質または薬物体制を確定する酵素活性をコードしている遺伝子を言う。
【0087】
ここで用いる、「増幅」及び「遺伝子増幅」の語は特定DNAの増幅遺伝子が初期ゲノムに存在した数より多いコピー数で存在するように偏って複製されるプロセスを言う。いくつかの実施態様において、薬物存在下(例えば、阻害可能酵素のインヒビター)での増殖による細胞選択は、薬物存在下での増殖に必要な遺伝子産物をコードする内性遺伝子の増幅、またはこの遺伝子産物をコードする外来(すなわち、入来)配列の増幅または両方をもたらす。遺伝子増幅は、例えば、両生類の卵母細胞におけるリボゾームの遺伝子の増幅のように特定の遺伝子内で自然に起こる。遺伝子増幅は、培養された細胞を薬物で処置することによって、誘発される。薬物誘発増幅の例は、哺乳類細胞の内性dhfr遺伝子のメトトレキサート誘発増幅である(Schmike et al., Science 202: 1051[1978])。ある薬物の存在下で、細胞の成長により、対象遺伝子(例えば、ある酵素の抑制因子)を選択すると、薬物存在下の成長に対して必要な遺伝子産物をコードしている内性遺伝子の配列の増幅させるか、あるいは、この遺伝子産物をコードしている外因性(すなわちインプット)配列の増幅させるかの一方を達成することができる。もしくは、両者に帰結する場合もある。
【0088】
「増幅」はテンプレート特異性に関する核酸複製の特殊なケースである。これは非特異性テンプレート複製(すなわち、テンプレート依存性であるが特定テンプレートに依存しない複製)と対比される。テンプレート特異性は複製の正確さ(すなわち、適正なポリヌクレオチド配列の合成)及びヌクレオチド(リボ−またはデオキシリボ−)特異性とはここでは区別される。テンプレート特異性は「標的」配列に対する特異性に関して説明されることが多い。標的配列は、それらがその他の核酸から選別するために探されるという意味において「標的」である。増幅技術はこの選別を第一に考えて発達してきた。
【0089】
ここで用いる「共増幅」の語は、その他の遺伝子配列と共に導入される増幅マーカーを1の細胞内へ導入すること(すなわち、発現ベクター内に含まれる遺伝子のような1以上の非選択遺伝子を含む)及び細胞が増幅マーカーとその他の非選択遺伝子配列の両方を増幅するような適当な選択圧力を適用することを言う。増幅マーカーはその他の遺伝子配列に物理的に結合していてもよく、またはDNAが2つの別個の断片、すなわち一方が増幅マーカーを含み、及びもう一方が非選択マーカーを含むものが同じ細胞内に導入されてもよい。
【0090】
ここで用いる、「増幅可能マーカー」、「増幅可能遺伝子」及び「増幅ベクター」の語は適当な増殖条件下で遺伝子の増幅を可能にする遺伝子をエンコードする遺伝子またはベクターをいう。
【0091】
本明細書で用いる「増幅可能な核酸」の語は、任意の増幅方法で増幅された核酸を言う。「増幅可能な核酸」は通常「サンプルテンプレート」を含む。
【0092】
本明細書で用いる「サンプルテンプレート」の語は、「標的」(下記に定義)の存在について分析されるサンプルから生じる核酸をいう。一方、「バックグラウンドテンプレート」はサンプルテンプレート以外の核酸に関して用いられ、サンプル内に存在していてもいなくてもよい。バックグラウンドテンプレートはほとんどの場合、不慮もものである。前駆体からの影響を受けているか、または、サンプルから精製すべき核酸汚染物質の存在によるものである。例えば、検出すべき微生物以外の生物由来の核酸は試験サンプル内でバックグラウンドとして存在し得る。
【0093】
「テンプレート特異性」はほとんどの増幅技術において酵素の選択により達成される。増幅酵素は使用される条件下において、核酸の外来混合物において核酸の特定配列のみ処理する酵素である。例えば、Qβレプリカーゼの場合、MDV-1 RNAはレプリカーゼの特異テンプレートである(例えば、Kacian et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69:3038[1972]を参照)。その他の核酸はこの増幅酵素によっては複製されない。同様に、T7 RNAポリメラーゼの場合、この増幅酵素はそれ自身のプロモーターにストリンジェントな特異性を有する(Chamberlin et al., Nature 228:227[1970]を参照)。T4 DNAリガーゼの場合、当該酵素は2つのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを連結せず、ここで連結接合部分にオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド基質とテンプレート間の不整合が存在する(Wu and Wallace, Genomics 4:560[1989]を参照)。最後に、Taq及びPfuポリメラーゼは、高温で機能する能力を有するため、配列結合の高い特異性を示し、従って、プライマーにより確定され、高温が標的配列とのプライマーハイブリダイゼーションに有利に働き、非標的配列とのハイブリダイゼーションには有利でない熱力学的条件を生じる。
【0094】
本明細書で用いる、「プライマー」の語は、精製制限消化などにおいて自然に生じるまたは合成的に生成されるオリゴヌクレオチドをいい、核酸鎖に相補的なプライマー伸長生成物の合成が導入される条件下に置かれた場合(すなわち、ヌクレオチド及びDNAポリメラーゼなどの誘発剤の存在下、及び適した温度及びpHで)、合成開始点として作用するものを言う。当該プライマーは好ましくは増幅効率を最大にする1本鎖であるが、2本鎖であってもよい。2本鎖の場合、プライマーは伸長生成物の準備のために用いる前にそのストランドを分離処理する。好ましくは、プライマーはオリゴデオキシリボヌクレオチドである。プライマーは誘発剤の存在下、伸長生成物の合成開始のため十分に長くなければならない。プライマーの正確な長さは、誘発温度、プライマーの供給源及び使用する方法など多くの因子に左右される。
【0095】
本明細書で用いる「プローブ」の語は、精製制限消化などにおいて自然に生じる、または合成、組換えまたはPCR増幅により生成されるオリゴヌクレオチド(すなわちヌクレオチド配列)をいい、別の目的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズできるものである。プローブは1本鎖または2本鎖である。プローブは特定遺伝子配列の検出、同定及び単離に有用である。本発明で使用されるいかなるプローブも任意の「リポーター分子」で標識するので、任意の検出システムにおいて検出可能であり、限定されないが、酵素(例えば、ELISA及び酵素ベースの組織化学的分析)、蛍光、放射性及び発光性システムなどがある。本発明はいかなる特定の検出システムまたは標識にも限定されない。
【0096】
本明細書で用いる「標的」の語はポリメラーゼ連鎖反応に関して用いる場合、ポリメラーゼ連鎖反応に用いるプライマーが結合する核酸領域をいう。従って、「標的」は他の核酸配列から選別された所定の核酸を言う。「断片」は標的配列内の核酸領域として定義される。
【0097】
本明細書で用いる「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)の語はここに引用するU.S. Patent Nos.4,683,195、4,683,202及び4,965,188に記載の方法をいい、クローニングまたは精製することなくゲノムDNAの混合物中にある標的配列の断片濃度を増加させる方法を含む。標的配列を増幅するこの方法は、対象とする標的配列を含むDNA混合物に過剰な2つのオリゴヌクレオチドプライマーを導入し、DNAポリメラーゼの存在下、サーモサイクルの正確な繰り返しを行うことからなる。2つのプライマーは2本鎖標的配列のそれぞれの鎖に相補的である。増幅をもたらすために、混合物を変性させ、それからプライマーを標的分子内のそれらの相補配列にアニールする。アニーリングに続いて、プライマーは新しい相補鎖ペアを形成するためにポリメラーゼを用いて伸長する。変性、プライマーアニーリング及びポリメラーゼ伸長工程は何回も繰り返すことができ(すなわち変性、アニーリング、及び伸長は1の「サイクル」を構成し、多数の「サイクル」を行うことができる)、対象とする標的配列の増幅断片を高濃度で得ることができる。対象とする標的配列の増幅断片の長さはお互いのプライマーの相対位置により決定され、従って、この長さは制御可能なパラメーターである。当該プロセスの繰返し側面のため、当該方法は「ポリメラーゼ連鎖反応」(以下「PCR」とする)と呼ばれる。標的配列の対象とする増幅断片は混合物中で主要な配列(濃度に関して)となるので、それらは「PCR増幅された」という。
【0098】
本明細書で用いる「増幅試薬」の語は、プライマー、核酸テンプレート及び増幅酵素以外の増幅に必要な試薬をいう(デオキシリボヌクレオチド3リン酸、バッファー等)。通常、増幅試薬はその他の反応成分と一緒に反応容器(試験管、マイクロウェル等)内に含まれている。
【0099】
PCRを用いて、ゲノムDNA中の特定の標的配列の1のコピーをいくつかの異なる方法で検出可能なレベルまで増幅することが可能である(例えば、標識プローブを用いるハイブリダイゼーション;ビオチン化プライマーの混合、続いてアビジン−酵素結合検出;dCTPまたはdATPなどの32P標識デオキシヌクレオチド3リン酸の増幅断片への混合)。ゲノムDNAに加えて、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド配列が適当なプライマー分子のセットを用いて増幅できる。特に、PCRプロセスにより作成された増幅断片はそれ自身が後に続くPCR増幅の有効なテンプレートとなる。
【0100】
本明細書で用いる「PCR生成物」「PCR断片」及び「増幅生成物」の語は変性、アニーリング及び伸長が完結する2以上のサイクルのPCR工程後の化合物の最終混合物をいう。これらの語は1以上の標的配列の1以上の断片の増幅が行われる場合を含む。
【0101】
本明細書で用いる「制限エンドヌクレアーゼ」及び「制限酵素」の語はそれぞれ特定のヌクレオチド配列で、またはその近くで2本鎖DNAを切断する細菌性酵素をいう。
【0102】
「コードする核酸分子」及び「コードしているDNA配列」及び「コードするDNA」の語は、デオキシリボ核酸のストランドに沿ったデオキシリボヌクレオチドの順序又は配列を意味する。これらのデオキシリボヌクレオチドの順序は、ポリペプチド(タンパク質)の鎖に沿ったアミノ酸の順序を検出する。このDNA配列は従って、アミノ酸配列をコードする。
【0103】
本発明のペプチド及び医薬品及びワクチン組成物は、HPV感染の治療及び/又は予防のために動物特にヒトに投与するのが有効である。本明細書で述べるように免疫学的に有効な量の1以上のペプチドを含むワクチンは、本発明の実施態様で詳述する。一旦、適切な免疫学的エピトープが同定されると、本明細書において「ワクチン組成物」とされる各種手段によりそれらを提供することができる。そのようなワクチン組成物は例えば、リポペプチド(例えば、Vitiello et al., J Clin. Invest., 95: 341 [1995]及びPCTUSOO/17842 ; peptide compositions encapsulated in poly(DL-lactide-co-glycolide参照) ("TLG") ミクロスフィア(microspheres)(例えば Eldridge et al., Molec.Immunol., 28 : 287-294[1991] : Alonso et al., Vaccine 12: 299-306 [1994];Jones et al., Vaccine 13: 675-681 [1995]参照)、免疫刺激複合体に含まれるペプチド (ISCOMS) (例えば Takahashi et al., Nature 344: 873-875[1990] ; Hu et al., Clin. Exp. Immunol., 113:235-243 [1998]参照)、多重抗原ペプチドシステム(multiple antigen peptide systems)(MAPs) (例えば Tam, Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 85: 5409-5413[1988] ; Tam, J. Immunol. Meth., 196: 17-32 [1996]参照)、ウイルス輸送ベクター(viral delivery vectors) (Perkus et al., In :Concent in Vaccine Develonment, Kaufinann (ed.), p.379[1996] ; Chakrabarti et al., Nature 320: 535[1986] ; Hu et al., Nature 320: 537 [
1986]; Kieny et al., AIDS BiolTechnol., 4: 790[1986] ; Top et al., J Infect. Dis.,124 : 148 [1971]; Chanda et al., Virol., 175 : 535[1990]参照)、ウイスル又は合成複製起点の粒子(particles of viral or synthetic origin) (例えば Kofler et al., J Immunol., Meth.,192 : 25 [1996]; Eldridge et al., Sem. Hematol., 30: 16 [1993]; Falo et al., NatureMed., 7: 649 [1995]参照)、アジュバンド(Warren et al., Ann. Rev. Immunol., 4: 369 [1986]; Gupta et al., Vaccine 11 :293 [1993] )、リポソーム (Reddy et al., J Immunol., 148: 1585[1992] ; Rock, Immunol. Today 17: 131 [1996])、むき出し又は粒子に併合されたcDNA(naked or particle absorbed cDNA) (Ulmer et al., Science 259 : 1745 [1993]; Robinson et al., Vaccine 11: 957 [1993]; Shiver et al., In : Concepts in Vaccine Development, Kaufinann (ed), p.423 [1996]; Cease and Berzofsky, Ann. Rev. Immunol., 12:923 [1994] 及びEldridge et al., Sem. Hematol., 30: 16 [1993]参照)。Avant Immunotherapeutics, Inc等のレセプター仲介標的法として知られている、トキシン標的輸送技術も用いることができる。
【0104】
本発明のワクチン組成物は、核酸仲介様式を含む。本発明の1以上のエピトープをエンコードするDNA又はRNAも患者に投与することができる。このアプローチは例えば、Wolff et. al., Science 247 :1465 (1990) 及び U. S. Patent Nos. 5,580,859 ; 5,589, 466;5,804, 566; 5,739, 118; 5,736, 524; 5,679, 647; WO98/04720 に記載されている。DNA塩基輸送技術の例は、「ネイキッドDNA」、促進 (バビピカイン(bupivicaine))、ポリマー、 ペプチド仲介)輸送、カチオン脂質複合体及び粒子仲介(遺伝子ガン)又は圧力仲介輸送(U.S. Patent No. 5,922,687参照) を含む。
【0105】
治療又は予防を目的とする免疫化のために、本発明のペプチドは、ウイスル又はバクテリアベクターを用いて発現することができる。発現ベクターの例は、痘疹又は鶏痘のような弱毒化したウイルス宿主を含む。このアプローチは、弱毒化されたウイスルの使用、例えば、本発明のペプチドをコードする核酸配列を発現するためのベクターとしての使用を含む。急激に又は慢性的に感染させた宿主細胞又は非感染宿主細胞に導入する上で、組換え痘疹ウイルスは、免疫性を有するペプチドを発現し、それにより、宿主にCTL及び/又はHTL反応を起こさせる。痘疹ベクター及び免疫化プロトコルにおいて有用な方法は、U.S. Patent No.4,722,848に記載されている。他のベクターは、BCGである。BCGベクターは、Stover et al., Nature 351:456-460(1991)に記載されている。本発明のペプチドの治療的投与又は免疫化に有用な他のベクターの種類は、例えば、アデノ及びアデノ-関連ウイスルベクター、レトロウイルスベクター、サルモネラタイプベクター、解毒された炭疽毒素ベクター及び同種のものは、当業者により本明細書に記載から当業者が調製されるであろう。
【0106】
さらに、本発明に関するワクチンは本発明のペプチドの1以上を含む。これらのペプチドはワクチンの中で別々に存在する。代替的に、該ペプチドを別々の担体に結合することもでき、該ペプチドは同じペプチドの複数のコピーを含むホモポリマー又は、各種ペプチドのヘテロポリマーとして存在することもできる。ポリマーは、免疫反応を高めるという利益を有し、異なるペプチドエピトープがこのポリマーを作るために用いられるときは、免疫反応を標的とする病原性有機体の異なる抗原病原因子と反応する抗体及び/又はCTLを誘発する付加的な能力を有することとなる。この組成物は抗原の自然発生領域又は例えば組み換え的又は化学合成等により調製されたものであってもよい。
【0107】
本発明のワクチンに用いることができる担体は、当業者に良く知られており、サイログロブリン、ヒト血清アルブミンのようなアルブミン、破傷風トキソイド、L-リジン、ポリL-グルタミン酸等のポリアミノ酸、インフルエンザ、B型肝炎ウイスル核タンパク及び同種のものである。ワクチンは、生理的に耐えうる(すなわち、許容される)水、又は生理食塩水、好ましくは、リン酸緩衝液の生理食塩水等の希釈剤を含むことができる。ワクチンにはアジュバントも含むことができる。インコンプリートFreund’sアジュバンド(incomplete Freund’s adjuvant)、リン酸アルミニウム、水酸化アルミニウム又はミョウバンは当業者に良く知られている物質である。加えて、CTL反応は、本発明のペプチドをチパルミトイル-S-グリセリルシステインイルセリンイル-セリン(tripalmitoyl-S-glycerylcysteinylseryl-serine)(PCSS)等の脂質に結合することにより調製する。
【0108】
本発明のペプチド組成物をもちいた免疫では、注射、エアロゾル、経口、経皮、径粘膜的、腹腔内、髄腔内、又は他の適切な経路において、宿主細胞の免疫システムがCD8+T細胞反応を開始する。引き続き、該宿主細胞は、感染を遅らせるために部分的に免疫になるか、あるいは、少なくとも長期にわたる感染のために耐性体となる、あるいは、抗原が腫瘍関連物である場合には、少なくとも1の治療効果を提供する。
【0109】
特定の態様において、T細胞反応を誘発する組成物は、所望の標的抗原に反応する抗体を誘発する成分と組み合わせられる。そのような組成物の好ましい例は、クラスI及びクラスIIエピトープを含む。
【0110】
医薬品組成物について、本願発明の免疫エピトープはHIVに感染している個人に投与される。感染の潜伏期間又は顕在期間の患者は、別々の免疫ペプチド及び適切な他の処置と一緒に治療される。治療製品において、本発明の組成物は、ウイスルに反応するCD8+T細胞の有効的な反応を引き出して、症状及び合併症を治す又は部分的に阻害するために患者に投与される。このことに適した量を「治療的有用投与量」と定義する。この有効投与量は、ペプチド組成物、投与方法、治療される症状の段階及び重症度、患者の健康状態及び体重、処方する医師の判断等 (これらに限定されない) の各種因子に依存している。しかしながら、初期の免疫(治療又は予防のための投与)には、70kgの患者に対して約10μgから約50,000μgのペプチドが用いられる。引き続き、患者の反応及び患者の血液中のCD8+T細胞活性の測定値にもとづいた数週間から数ヶ月の投与計画により、投与量が約10μgから約10,000μgペプチドに上げられる。
【0111】
確定したインターバルで(例えば、1週間に一度)の高い投与量で免疫化のための投与を続けることは、好ましくは個人を免疫するために必要な期間続けられる。慢性的な感染の場合、投与は、以降の期間において、ウイスルの感染が排除されるかあるいは実質的に減少するという、臨床における見解又は試験データが得られるまで続けられるべきである。
【0112】
治療用の医薬品組成物は、非経口的に、局所的に、経口的に又は局所的に投与される。好ましくは、医薬品組成物は、非経口に投与される(例えば、静脈内投与、皮下投与、腹腔内、経粘膜)。従って、本発明は、医薬品上許容される担体、好ましくは水溶性の担体に、溶解又は懸濁されている免疫性ペプチド溶液を含む非経口投与される組成物を提供する。用いられる水溶性担体の種類は、例えば、水、緩衝液、0.9%生理食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸及び同種のものである。これらの組成物は、従来技術により滅菌されるか、又はフィルターろ過により滅菌される。得られた水溶性溶液は、そのままで用いられるか又は凍結乾燥され、投与の前に滅菌溶液に融解して使用する。この組成物は、pH調製剤、緩衝剤、張力調製剤、湿剤、及び同種のもののような医薬品上許容される補助物質の他に、ヒトの生理状態に応じて必要となる、酢酸ナトリウム、酪酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン等を含む。
【0113】
本発明は、変異体HPVの中のHPVエピトープ配列の同定方法の他に、HPV配列に導入したときに、CD8+T細胞反応を開始することができるペプチドの生産方法も提供する。
【0114】
幾つかの態様において、本願発明はHPV配列の中のCD8+T細胞エピトープの同定方法及びCD8+T細胞反応を開始することができるエピトープの生産方法を提供する。特に、本発明はHPVワクチンの調製に用いるためのHPVエピトープの免疫原性を高めるのに適した手段及び組成物を提供する。
【0115】
これらの態様において、本発明は所望のタンパク質に含まれる各種エピトープに対するヒトのCD8+T細胞反応を検出するための手段を提供する。追加的な態様において、修飾I-MUNE(登録商標)アッセイシステムを用いて一旦有意エピトープが同定されると、該有意エピトープは所定のタンパク質に対する高められた免疫反応を誘発するエピトープを生産するために修飾される。
【0116】
従って、上で示したように、本発明のタンパク質は、その前駆体DNAによりエンコードされる天然のタンパク質と比較した時に、修飾された免疫反応を示す(例えば、抗原性及び/又は免疫原性)。例えば、高められた免疫反応を示すHPVs(例えば、変異体HPVエピトープ)は、治療及び予防用のワクチン組成物に使用することができる。
【0117】
発明の詳細な説明
本発明は、所望のタンパク質中のCD8+T細胞エピトープを同定する手段を提供する。本発明はさらに各種タンパク質のCD8+T細胞エピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、本発明はヒトパピローマウイルス(HPV)のCD8+T細胞エピトープを提供する。追加的な態様において、本発明は予防用及び/又は治療用ワクチンに適したエピトープを提供する。特定の好ましい態様において、本発明は、予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適した修飾エピトープを提供する。
【0118】
本発明が開発される間に、テストシステムへ抗CD40抗体を添加することが各種ペプチドに反応するCD8+T細胞を評価するため手段であった。本発明を特定の作用機構に限定することは意図していないけれども、抗-CD40抗体の含有物は活性化されたCD4+T細胞の上のCD40リガンドに似ていることが信じられている。この含有物は、APCs(例えば、樹状細胞)の表面に存在するCD40レセプターへ結合し、MHC及びB7発現を高めることにより、CD8+T細胞の相対的な活性を刺激する。
【0119】
予備実験において、抗-CD40抗体は、HLA-A2ペプチドと共にI-MUNE(登録商標)アッセイシステムで試験された。抗-CD40抗体を用いない場合には反応は認められなかった。対照的に、抗CD40を添加すると有意に改善された反応が観察された。これらの初期の実験において、抗CD40の5つの濃度が試験された(10μg/ml、5 μg/ml、2 μg/ml、1 μg/ml、及び0.5 μg/ml)。10 μg/mlの濃度では濃度が高すぎ細胞が死滅した。0.5μg/mlの濃度では反応を引き起こすには低いようであったが、細胞のドナーが、通常から高いバックグラウンド値を有しているときには作用した。したがって、5 μg/ml、2 μg/ml、及び1 μg/mlの濃度を用いた6の比較が行われた。Stat-Ease DX6.1ソフトウェア(State-Ease Inc., Minneapolis, MN)を用いてこの結果の統計解析を行った。これらの結果に基づいて、バックグラウンドと比較して最も高い分化反応を示した、1 μg/ml濃度が選択された。1 μg/mlの濃度は、2.5μg/ml及び5μg/mlと比較してバックグラウンドを低く保つのに役立った。しかしながら、他のアッセイシステムにおいて、異なる抗体濃度が用いられることも本発明では意図する。
【0120】
本発明はさらに、ヒトパピローマウイスル(HPV)の2系統由来のE7タンパク質中のCD8+T細胞エピトープを提供する。幾つかの好ましい態様において、この発明は、高リスクHPVの感染を避けるための複合ワクチンにおけるHPVワクチンの開発に関する手段を提供する。追加的な態様において、本発明は、感染した個人おいて、腫瘍の開始及び/又は悪性化への進展を避けるため用いるのに適した高リスクHPVタイプに対する治療用ワクチンの開発の手段を提供する。本発明はさらに、予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適したエピトープを提供する。特定の好ましい態様において、本発明は、予防用及び/又は治療用ワクチンに用いるのに適した修飾エピトープを提供する。
【0121】
HPV由来のE7オンコプロテインは、子宮頚癌においてユビキタスを発現することからDNAワクチンについての特に魅力的な標的である。E7タンパク質及びE6タンパク質はHPVの発ガンの特性に関与している(Finzer et al., Cancer Lett., 188 :15-24 [2002])。これらの2のタンパク質の連続的な発現は、子宮頚癌細胞の分化及び生存に必要である(von Knebel-Doeberitz et al., Cancer Res., 48: 3780-6[1988])。E6及びE7は、子宮頚部領域の形質転換及びアポトーシスの抑制に関与する。これらのタンパク質に対する免疫反応は子宮頚癌に対して予防しうることを幾つかの研究が示している。E6及びE7に反応する天然のCTLは、SILを伴うHPV16陽性の女性よりも偏平上皮乳頭腫における上皮内部の新しい組織形成(SIL)を伴わないHPV16陽性の女性により多く見受けられる(Nakagawa et al., J. Infect. Dis. , 175: 927-931[1997])。加えて、E6及びE7の特定の防御タンパク質に反応する細胞が仲介する免疫反応は病気の回復及びウイルス性感染の解消に関係がある(Kadish et al., Cancer Epidemiol. Biomarkers Prev., 11: 483-488 [2002] )。さらに、E7DNAを用いたワクチン接種は細胞障害性のT細胞反応の誘発において効果が高いことが知られている(Osen etal., Vaccine 19: 4276- 4286 [2001])。
【0122】
完全長ワクチンではなくエピトープワクチンを用いる本願発明は、発ガン物質を投与するという問題を排除できる利点を有する。DNAワクチンは制限されたサイズを有することから、E7領域のみの含有物はより高いリスクの系統についても適用することができる。HPV感染患者は、しばしば1以上のHPVのキャリアーでもある。さらに1系統のHPV感染を克服した患者は、第二の系統により再感染することがある。CTLエピトープは通常抗ウイスルワクチンに関係するけれども、本発明の幾つかの好ましい態様において、CD8+エピトープに結合させてCD4+エピトープを包含することには理由がある。例えば、抗原特異的、CD4+の補助は、通常、抗原提示細胞のクロスプライミングを通じて、CD8+細胞毒性活性の活性化に必要である(Bennett etal., Nature 393: 478-480[1998] ; Schoenberger etal., Nature 393: 480-483[1998] ; 及びRidge et al., Nature 393: 474-478[1998]参照のこと) 。さらに動物モデルの研究において、同じ抗原から提供されるCD4及びCD8エピトープを含むワクチンは強い防御反応を誘発することが証明されている(Ossendrop et al., J.Exp. Med., 187: 693-702[1998] ;De Veermann et al., J. Immunol., 162: 144-151 [1999]; 及び Zwaveling et al., J. Immunol., 169:350-8[2002]参照のこと)。
【0123】
幾つかの好ましい態様において、本発明は、HPV系統、特に悪性疾患のリスクと関係する系統に対してのワクチン組成物を開発するための組成物と方法を提供する。従って、特定の好ましい態様において、本発明は、2の高リスクHPV系統(すなわち、16系統及び18系統)のE7タンパク質に対するワクチン組成物の発達のための組成物と方法を提供する。重要なことに、これらのHPV系統からDNAの存在は子宮頚部障害及び子宮頚部癌に関係する(Lorincz et al., Obstet Gynecol., 79: 328-337. [1992] )。2003年4月28日に提出されたU.S. Patent No. 60/460,235のように各種高リスク及び中リスクHPV系統のE6及びE7タンパク質の中のMHCクラスIIヘルパーエピトープが同定されている。従って、既知の補助エピトープに加えて、本発明のCD8+エピトープを含む組成物及び方法は、治療用及び/又は予防用ワクチン組成物に用いられることが明らかである。
【0124】
実施例
以下の実施例は、特定の好ましい態様及び本発明の側面を説明する。説明される実施例に本発明を限定することは意図しない。
【0125】
以下の実験に関する開示においては、次の略語が適用される:M(モル濃度の);mM(ミリモル濃度の);μM(マイクロモル濃度の);nM(ナノモル濃度の);mol(モル);mmol(ミリモル);μmol(マイクロモル);nmol(ナノモル);gm(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);pg(ピコグラム);L(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);μm(マイクロメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);cDNA(複製又は相補的DNA);DNA(デオキシリボ核酸);ssDNA(一本鎖DNA);dsDNA(二本鎖DNA);dNTP(デオキシリボヌクレオチド三リン酸);RNA(リボ核酸);HRP(ホースラディッシュペルオキシダーゼ);AEC基質(酢酸ナトリウム、ジメチルスルホキシド、メタノール及び尿酸過酸化物の溶液);AECクロモゲン(3-アミノ-9-エチルカルバゾール(2%w/v)及びN,N-ジメチルホルムアミドの溶液);PBS(リン酸緩衝生理食塩水);g(比重);DC(樹状細胞);PHA(フィトヘムアグルチニン);OD(光学密度);ダルベッコ(Dulbecco’s)リン酸緩衝溶液(DPBS);HEPES(N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N-[2−エタンスルホン酸]);HBS(HEPES緩衝生理食塩液);SDS(ドデシル硫酸ナトリウム);トリス-HCl(トリス[ヒドロキシメチル]アミノメタン-塩酸);DMSO(ジメチルスルホキシド);EGTA(エチレングリコール-ビス(β−アミノエチルエーテル)N,N,N,N’-四酢酸);EDTA(エチレンジアミン四酢酸);DPBS(ダルベッコリン緩衝生理食塩水);bla(β-ラクタマーゼ又はアンピリシン耐性遺伝子);エンドーゲン(エンドーゲン(Endogen)、ウォーバン、マサチューセッツ州);サイトバックス(CytoVax) (サイトバックス(CytoVax), エドモント(Edmonton), カナダ); ワイス・エアスト(Wyeth-Ayerst) (ワイス・エアスト(Wyeth-Ayerst), フィラデルフィア, ペンシルバニア州); NEN (NEFライフサイエンスプロダクト(NEN Life Science Products), ボストン、マサチューセッツ州); ワレスオイ(Wallace Oy)(ワレスオイ(Wallace Oy)、トゥルク、フィンランド); ファルマAS(Pharma AS) (ファルマAS(Pharma AS)、オスロ、ノルウェイ); ダイナル(Dynal) (ダイナル(Dynal)、オスロ, ノルウェイ) ; バイオシンセシス(Bio-Synthesis) (バイオシンセシス(Bio-Synthesis)、ルイスビル, テキサス州) ; ミモトペス(Mimotopes) (ミモトペス社(Mimotopes, Inc.)、サンディエゴ、カナダ);ATCC(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、ロックビル、メリーランド州); ギブコ(Gibco)/BRL(ギブコ(Gibco)/BRL、グランドアイランド(Grand Island)、ニューヨーク州);シグマ(Sigma)(シグマ・ケミカル社(Sigma Chemical Co.)、セントルイス、ミズーリ州);ファルマシア(Pharmacia)(ファルマシア・バイオテク社(Pharmacia Biotech)、インビチロジェン (インビトロジェン社(Invitrogen, Inc.), グランドアイランド,ニューヨーク州) ; アボット(Abbott) (アボットラボラトリーズ(Abbott Laboratories), アボットパーク, イリノイ州) ; リスト(List) (リストバイオロジカルラボラトリーズ社(List Biological Laboratories Inc.)、キャンベル、カナダ); パーキンエルマー(Perkin Elmer)(パーキンエルマーライフサイエンス(PerkinElmer Life Sciences), ボストン マサチューセッツ州) ; eバイオサイエンス(eBioscience)(eバイオサイエンス(eBioscience)サンディエゴ、カナダ); BDバイオサイエンス(BD Bioscience) (BDバイオサイエンス(BD Bioscience); セルラーテクロノジー(Cellular Technology )(セルラーテクノロジー(Cellular Technology), クリーブランド, オハイオ州);およびストラタジーン(Stratagene)(ストラタジーン社(Stratagene)、ラ・ホーヤ、カナダ)。
【実施例1】
【0126】
E7エピトープの調製
HPV16及び18由来のE7タンパク質の完全長アミノ酸配列を用いて9-merのペプチドセット作成した。SwissProt.P03129は、HPV16E7に対応する。SwissProt.P06788は、HPV18E7に対応する。これらの変異体ペプチドを、当該技術分野で知られているマルチピン(multi-pin)合成技術を用いた、ミモトペス(Mimotopes)(例えば、Maeji et al. ; J. Immunol. Meth., 134: 23-33 [1990] 参照のこと)で合成した。9-merのペプチドを、8アミノ酸を共有する隣接ペプチドを有する配列になるように調製した(すなわち、各ペプチドは1のアミノ酸がそれぞれ異なる)。約2mg/mlのストック濃縮溶液を提供するためにDMSOでペプチドを希釈した。各アッセイに用いるペプチドの最終濃度は、5μg/mlであった。
【実施例2】
【0127】
ヒトT細胞を用いたHPVのT細胞エピトープペプチドを同定するためのアッセイシステムに用いる細胞の調製
ヒトの新鮮末梢血液細胞をHPVに曝されていないヒトから収集した。これらの細胞を、実施例3で示すように、HPV16及び18の抗原エピトープを検出するために試験した。
【0128】
末梢単核血液細胞(室温放置24時間未満のもの)を以下のように調製した。PBMC’sは、30分間の1000 x gによるLymphorepの下敷きとする遠心分離により緩衝剤(buffy coat material)より単離した。中間層を収集、洗浄し、Cell-Dyn 3700System(アボット(Abbott))を用いてカウントした。その後、30ml のAIM-V(インビトロジェン)に再懸濁した108PBMC’sを含む懸濁液を調製し、その後プラスチックのT-75培養フラスコに2時間付着させた。残りの細胞を45%FCS(ギブコ/BRL)、45%PBS(w/o)Ca&Mg(メディアテック(Mediatech))及び10%CMSO(シグマ)の中で5x107細胞/mlの濃度で凍結した。2時間のPBMCでのインキュベーションの後、非付着細胞をフラスコから除去した。付着細胞は、800単位/mlの組換えヒトGM-CSF(R&Dシステムズ)及び100単位/mlの組換えヒトIL-4(Endogen)と共にフラスコ内で、37℃、5%CO2で培養した。インキュベーションの5日目に50単位/mlの組換えヒトIl-1a(Endogen)及び0.2単位/mlの組換えヒトTNF-αを培地に添加した。付着及び非付着樹状細胞を収穫、洗浄し、7日目にカウントを行い、マイトマイシンC(シグマ)及び10mMEDTAで1時間処置した。
【0129】
自系のCD8+T細胞をPBMCsの凍結保存の分割サンプルから調製した。DPBS中で解凍及び洗浄した後、市販されているCD8陰性選択キット(ダイナル)を用いて、製造元の指示に従ってCD8+T細胞を単離した。細胞を、Abbott Cell-Dyn 3700システムを用いてカウントした。これらの方法を用いて得られた生成物は90%以上精製されている。
【実施例3】
【0130】
T細胞分化アッセイ
この実施例は本発明に用いるアッセイシステムについて述べる。基本的なテストシステムは、「I-MUNE(登録商標)」アッセイシステムに基づいている。基本的なI-MUNE(登録商標)は、CD8+T細胞反応の解析を促進するためにここで述べられているように修飾されている。以下で詳細に述べるように、本発明の開発のための修飾(変更)は、PBMCに基づくCD8(すなわち、CD4の代わりに)陰性選択に基づいている。更に、プレートの中にCDs及びエピトープを導入する前に(抗-CD40の最終濃度は1μg/ml)CD8細胞の再懸濁の際に、2μg/mlの抗CD40溶液の1.5x105mlから2.5x105mlを添加した。そして、1μlの1μg/mlPHAを、破傷風トキソイドの変わりに陽性対照として用いた。
【0131】
丸底の96ウェルの中で、自系樹状細胞及びCD8+T細胞を試験するペプチドと混合した。より具体的には、100μl/ウェルの容量の、AIMVの中の2×104の樹状細胞を各ペプチドと混合した(ペプチドの最終濃度は、5μg/ml及びDMSOの最終濃度は0.25%)。5%CO2、37℃で1時間インキュベーションした後、CD8+T細胞と2μg/mlの抗CD40(eバイオサイエンス(eバイオサイエンス);Clone 5C3マウスIgG1、Kappa)を全容量が200μlに成るように培地の中に添加し、抗CD40の最終濃度はウェル当たり1μg/mlとした。陰性対照ウェルは樹状細胞、CD8+T細胞及び0.25%DMSOを含んでいた。陽性対照ウェルは樹状細胞、CD8+T細胞(テストウェルと同じ濃度で)、及び0.25%DMSOを、5μg/ml PHA(シグマ)と共に含んでいた。幾つかの実験において、1μg/mlの抗IgG1(eバイオサイエンス;Clone P3マウスIgG1、Kappa)は比較の目的で、アイソタイプの対照として用いられた。試験ペプチドは各ドナーに対して、2又は3回の繰り返し試験を行った。
【0132】
5%CO2、37℃で5日間のインキュベーションの後、培地の0.25μCi/ウェルにトリチウム化したチミジン(パーキンエルマー)を添加した。つづいて24時間インキュベーションした後、プレートを収穫し、Wallac Microbeta TriLux Liquid scintillation counter (パーキンエルマー)を用いてトリチウム化したチミジンの取り込みを評価した(すなわち、T細分化)。反応体は、各試験試料に対する2回の試験の平均で評価された。陽性反応は、バックグラウンドの少なくとも2.95倍を有するものであると定義される。抗CD40抗体及び抗IgG1アイソタイプ抗体で得られた結果に基づいて、抗CD40の効果が特異的であるということがわかった(図3を参照のこと)。
【0133】
少なくとも45ドナーで両方のタンパク質を試験したデータのセットを計算した。各ペプチドに対する反応(体の)パーセントは、ドナーの全体を母集団として決定された。このアッセイシステムにおいて、「ドナーの母集団に対するバックグラウンド反応割合の平均」は、一のセットの中のすべてのペプチドに対する反応割合の平均パーセントであると定義される。このアッセイシステムにおいて、「主要エピトープ」は、バックグラウンドの反応割合の平均値よりも少なくとも3標準偏差高い反応割合を有するものと定義される。「中程度のエピトープ」は、少なくとも平均値よりも2標準偏差高い又はバックグラウンドの3倍の結果を生産するものである。「マイナーエピトープ」は、背景値の少なくとも2倍の反応割合を有するものである。本明細書において、このアッセイは試験されたHPVの両系統においていつかのエピトープを同定した。
【0134】
A. HPVE7.16
抗原について、45ドナーが、HPV E7.16に対するエピトープを決定するために、I-MUNE(登録商標)アッセイシステムにおいて試験された。図1は、各エピトープに対する反応体を示すグラフである。表1に示したように、この抗原で、19の所望のエピトープが検出された。
【表1】

B. HPV E7.18
抗原について、58ドナーがHPV E7.18に対する所望のエピトープを検出するためにI-MUNE(登録商標)アッセイで試験された。図2は、各エピトープ対する反応体を示したグラフである。表2に示すように、抗原において、6の所望のエピトープが検出された。
【表2】

上で示した結果は、HPV16及びHPV18 E7タンパク質において所望のエピトープを提供する。従って、本発明は、所望のタンパク質のエピトープに反応するCD8+T細胞を評価する方法だけでなく、修飾に適切であり、ワクチンとしての組成物に用いるエピトープも提供する。
【実施例4】
【0135】
INF-γELISPOTアッセイ
この実施例において、ELISPOT(BD バイオサイエンス)アッセイを、それぞれの実施例において同定されたエピトープが効果的なエピトープであるかどうかについて評価するために用いた。この実施例において、INF-γELISPOTアッセイを、HPV18E7ペプセットから低い及び非反応ペプチドとともに、上で述べたように同定されたエピトープを用いて行った。20のドナーに対してCD8+I-MUNE(登録商標)エピトープを用いて同時に試験を行った。
【0136】
この実施例において、丸底の96ウェルのプレート内で、1ウェル当たり各細胞100μLのCD8+T細胞及び樹状細胞を混合した。所望の各ペプチドを、0.25%DMSO中の最終濃度が5μg/mlになるように添加した。対照ウェルはDMSOを含むがペプチドを含んでいない。抗ヒトCD40Ab(eバイオサイエンス)を、1ウェル当たり1μg/ml添加した。各ペプチドは2回試験を行った。インキュベーションは37℃、5%CO2で5日間行った。
【0137】
インキュベーションの5日目に、細胞をピペッティングにより再懸濁し、細胞の懸濁液を精製されたα-ヒトINF-γ補足抗体でコートされているELISPOT(BDバイオサイエンス)プレート内に移した。プレートを、37度、5%CO2で24時間インキュベートした。このプレートを洗浄し、ビオチン標識したα-ヒトINF-γ検出抗体と共に2時間インキュベーションした。アビジン-HRP及びAEC基質及び色原体(クロモゲン)は、スポットの発色に用いた。スポットは、ImmunoSpot(登録商標)解析装置(Cellular Technology)を用いて、製造元の取り扱い説明書に従って定量した。陽性反応は背景レベルより少なくとも3倍高いものである。
【0138】
全ての結果を図4に示す。この図に示すように、INF-γプロダクションとエピトープの分化の間には強い関係が見られる(r=0.67;p=0.0019)。INF-γ及びCD8+T細胞分化との間の相関は、分化しているCD8+T細胞が実はエフェクター細胞であることを示している。
【0139】
CD8+分化とINF-γ生産の比較より、発現したエピトープは、エフェクターエピトープであることがわかる。それゆえ、I-MUNE(登録商標)アッセイにおけるCD8+分化は、アレルギー性細胞ではなくエフェクター細胞である。
【0140】
分化よりもINF-γに対してより強い陽性反応を示す幾つかのエピトープがある。特にメモリ細胞反応のように、分化を伴わないサイトカイン生産は珍しい現象ではない。このケースでは、INF-γ生産を伴わない分化が見られた。INF-γはバックグラウンドレベルの2倍であったが、本発明における「陽性」の基準は満たしていなかった。しかしながら、このことは、多くの他の研究から陽性であると考えられる。要するに、ここに示す結果は、I-MUNE(登録商標)で同定されたエピトープは、INF-γELISPOTアッセイ等の市販のアッセイシステムを用いてCTL活性を検証することができることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】図1は、試験されたHPV E7.16の各エピトープに対する反応を示したグラフである。
【図2】図2は、試験されたHPV E7.18の各エピトープに対する反応を示したグラフである。
【図3】図3は、抗CD40抗体及び抗LgG1イソタイプ抗体の存在下におけるHPV E7.18に対する反応を示したグラフである。
【図4】図4は、20の無作為抽出ドナーにおいてHPV E7.18エピトープを用いて、ELISPOT INF-γアッセイ及びCD8 I-MUNE(登録商標)アッセイを平行して実施してときの反応を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD8+エピトープを同定する方法。
【請求項2】
タンパク質中のCD8+T細胞エピトープを検出する方法であって、
(a) 単一ヒト血液より樹状細胞溶液及び未処置CD8+T細胞溶液を得る工程と、
(b) 分化した樹状細胞の溶液を生産するために、前記樹状細胞溶液中で、前記樹状細胞を分化させる工程と、
(c) 前記タンパク質からペプチドのペプセットを調製する工程であって、前記ペプセットが、前記T細胞エピトープを含むことを特徴とする工程と、
(d) T細胞及び抗体溶液を提供するために、前記CD8+T細胞の溶液及び抗CD40抗体を混合する工程と、
(e) 前記分化した樹状細胞及び前記ペプセットを前記T細胞及び抗体溶液に混合させる工程と、
(f) 前記工程(e)において前記T細胞の分化を測定する工程と
を含む方法。
【請求項3】
前記タンパク質がウイルスタンパク質、バクテリアタンパク質、寄生虫タンパク質、糸状菌タンパク質、及び腫瘍関連タンパク質からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質のアレルゲン性を減弱させる方法であって、
(a) 請求項1に記載の前記タンパク質中のT細胞エピトープを同定する工程と、
(b) 前記未処置のT細胞のベースライン分化よりも少ないか又は実質的に同じベースライン分化を修飾タンパク質が誘導するように、前記T細胞エピトープを中和するために、前記タンパク質を修飾する工程と
を含む方法。
【請求項5】
前記T細胞エピトープが、
(a)所望のタンパク質のホモログの類似配列による前記T細胞エピトープのアミノ酸配列の置換、及び
(b) 前記エピトープの主要な3次元構造特性に実質的に似ている配列による前記T細胞エピトープのアミノ酸配列の置換
からなる群より選択される置換により修飾されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質の免疫原性を増強する方法であって、
(a) 請求項1に記載の前記タンパク質におけるT細胞エピトープを同定する工程と、
(b) 前記未処理のT細胞のベースライン分化よりも大きい分化を修飾タンパク質が誘導するように前記タンパク質を創成するために作り出すために前記タンパク質を修飾する工程
を含む方法。
【請求項7】
前記T細胞エピトープを、
(a)所望のタンパク質のホモログの類似配列による前記T細胞エピトープのアミノ酸配列の置換、及び
(b) T細胞エピトープの主要な3次元構造特性に実質的に似ている配列による前記T細胞エピトープのアミノ酸配列の置換
からなる群から選択される置換により修飾することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項1の方法を用いて同定されたヒトパピローマウイルスのCD4+T細胞エピトープ。
【請求項9】
請求項8のヒトパピローマウイルスのCD4+T細胞エピトープを含む組成物。
【請求項10】
さらに、変異ヒトパピローマウイルスを生産するために前記ヒトパピローマウイルスを修飾する工程を含み、前記変異体タンパク質が、前記ヒトパピローマウイルスと比較して変更された免疫原性を示すことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
請求項8の方法により生産された変異ヒトパピローマウイルス。
【請求項12】
請求項9の変異タンパク質を含む組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−503830(P2007−503830A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525356(P2006−525356)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【国際出願番号】PCT/US2004/027263
【国際公開番号】WO2005/025497
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(500284580)ジェネンコー・インターナショナル・インク (67)
【Fターム(参考)】