説明

HSTシステムの油圧回路

【課題】現状のチャージポンプを変更することなく、負荷がかからない状態のときに、チャージポンプのエネルギーロスを最小限に止める技術を提供しようとする。
【解決手段】チャージポンプ1からの油路10の途中に設けられるドレン用油路11に、可変型リリーフ5弁を用いた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、HSTシステムの油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械のHST(Hydro static transmission)システムの油圧回路では、その略図である図2に示すように、メインポンプ2の予備としてチャージポンプ1が備えられる(HST回路については例えば特開2005−121158号参照)。このチャージポンプ1は、作業機械の負荷が高く、かつ回路の油漏れが1番大きいときを想定して、一定のチャージ圧が設定され、常にその圧で吐出している。
【特許文献1】特開2005−121158号(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、作業機械が作業をしておらず、高負荷が発生していない場合には、チャージポンプ1から吐出される予備的な圧油は、リリーフ弁50を介して一定圧状態のままドレン用油路からタンク7に戻されており、このためチャージポンプ1に要するエネルギーを無駄にロスしていた。
【0004】
このような問題に対しては、チャージポンプ自体を可変容量型に変更し、低負荷のときにはポンプ吐出圧を低減するようにすることも考えられる。しかし、そもそもチャージポンプは予備的なものなので、ポンプに要するコストはできるだけ抑えたいとする要請がある。また、ポンプがエンジンに直結するため、ポンプ自体を止めることもできない。
【0005】
この発明は、従来技術の以上のような問題に鑑み創案されたもので、現状のチャージポンプを変更することなく、負荷がかからない状態のときに、チャージポンプのエネルギーロスを最小限に止める技術を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本願請求項1に係る発明は、チャージポンプからの油路の途中に設けられるドレン用油路に、可変型リリーフ弁を用いたことを特徴とするHSTシステムの油圧回路である。
【0007】
また、本願請求項2に係る発明は、チャージポンプからの油路の途中に設けるドレン用油路として、リリーフ弁を介した油路以外に、切替弁を介した第2の油路を設けることを特徴とするHSTシステムの油圧回路である。
【0008】
これらの発明では、作業停止状態のときには次のように作用させれば良い。まず請求項1の発明の場合、可変型リリーフ弁を調整して、回路の圧を低減させれば、チャージポンプからの吐出圧も低減される。次に、請求項2の発明の場合、切替弁の切替により、第2のドレン用油路を開ければ、回路の圧が低減し、これによりチャージポンプからの吐出圧も低減される。いずれの発明でも、チャージポンプの回転負荷が低減され、従来のような無駄なエネルギーロスが抑えられる。なお、後述する形態例のように、両発明を同一の回路に用いても良い。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、この発明は、チャージポンプを現状どおりとしたままで、負荷がかからない状態であっても、チャージポンプのエネルギーロスを最小限に止めることができる。このため、燃費が向上するとともに、チャージポンプの耐久性も改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明の具体的な一形態例を図面を用いて説明する。なお、以下の形態例はあくまで本発明の一例であって、本発明がその形態例に限定されないことは当然である。
【0011】
図1は作業機械に適用されたHSTシステムの油圧回路であり、HSTメインポンプ2と、HSTモータ3とでメイン回路が形成されている。チャージポンプ1からの油路10は、前記メイン回路の途中のバイバス油路に接続され、そのバイパス油路の両端にはチェック弁4が配置される。チャージポンプ1からの油路10には、リリーフ弁5が配置された第1のドレン用油路11と、切替弁6が配置された第2のドレン用油路12が設けられている。前記リリーフ弁5は圧力調整が自在な可変型であり、また切替弁6はタンク7に戻る油路を開閉する切替を行う。
【0012】
これらリリーフ弁5の圧力調整及び切替弁6のドレン油路開閉の切替は、図示しない制御手段により制御される。具体的には、該制御手段が作業停止と判断したとき、リリーフ弁5には設定圧を低減させるように、また切替弁6には第2ドレン用油路12を開けさせるように、それぞれ指令信号が出力がされる。作業停止の判断にあたっては、エンジン回転数の低減、車速の低減、アクセルないし作業機レバー開度低下のいずれかを検知させる。このため、それらを検知するためのセンサを設ける必要があるが、検知対象を他に設定しても良い。
【0013】
例えば、エンジン回転数を検知するセンサを設けた場合の本形態例の動作は次のようになる。センサからの出力により、エンジン回転数が低減し、作業が停止されたと制御手段が判断した場合、リリーフ弁5の圧力を低減させる指令と、切替弁6の第2ドレン油路12を開かせる切替指令とがそれぞれ出力される。これにより、回路の圧が低減されたうえ、第2ドレン用油路12からタンク7に戻る油量が増し、チャージポンプ1の回転負荷が大幅に低減される。
【0014】
なお、コストを抑えたければ、前記リリーフ弁5と切替弁6のどちらか一方のみを設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0015】
この発明は、チャージポンプを備えるHSTシステム回路に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る一実施形態例の油圧回路の略図である。
【図2】従来のHSTシステム回路の略図である。
【符号の説明】
【0017】
1 チャージポンプ
2 HSTポンプ
3 HSTモータ
5 可変型リリーフ弁
6 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャージポンプからの油路の途中に設けられるドレン用油路に、可変型リリーフ弁を用いたことを特徴とするHSTシステムの油圧回路。
【請求項2】
チャージポンプからの油路の途中に設けるドレン用油路として、リリーフ弁を介した油路以外に、切替弁を介した第2の油路を設けることを特徴とするHSTシステムの油圧回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−32198(P2008−32198A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209484(P2006−209484)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】