説明

ICカード及び通信機器

【課題】ICカードに記憶される電子バリューのセキュリティを維持しつつ、ディスプレイに表示させる表示用データを取得できるようにする。
【解決手段】ディスプレイ102を備えたICカード100であって、駅務機器200と通信を行うためのアンテナ103と、アンテナ103を介して駅務機器200とメモリ104bの電子バリューに関する情報のやり取りを行うICチップ104と、アンテナ103を介して駅務機器200から表示用データを受信してメモリ105に記憶させ、メモリ105の表示用データをディスプレイ102に表示させる表示制御ICチップ106とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示手段を備えたICカード、及び、そのICカードと通信を行う駅務機器等の通信機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、磁気カード等に比べて記憶容量が大きく、機密性や安全性に優れているといった理由から、多種多様な分野において利用されている。
【0003】
ICカードを利用するに際し、その内部に記憶されている電子的なデータをどのようにして可視化するかが一つの重要な課題となっている。
【0004】
例えば特許文献1には、カード本体の表面に、エレクトロルミネセンス発光素子を用いたシート状の表示部を設けた表示機能付き非接触ICカードが開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−223622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている非接触ICカードは、ICチップのカードデータ用メモリに使用目的に応じた可変情報を記憶させ、表示用メモリに表示部に表示させる表示データを記憶させる構成となっており、カードデータ用メモリに記憶される可変情報から表示データを生成し、表示用メモリに記憶させる。
【0007】
しかしながら、カードデータ用メモリに記憶されるデータは電子バリュー等の重要なデータであって、そのセキュリティを厳格に維持する必要がある。セキュリティの観点からいえば、たとえ同一のICカード内であっても、カードデータ用メモリに記憶されるデータへのアクセスは最低限必要な構成要素やタイミングに限定すべきであり、カードデータ用メモリに記憶される可変情報から随時表示データを生成する構成は好ましくない。
【0008】
また、カードデータ用メモリに記憶される可変情報から表示データを生成する場合、表示データ生成のための構成が必要となり、構成が複雑になってしまう。
【0009】
本発明は、上記のような点に鑑みてなされたものであり、ICカードに記憶される電子バリューのセキュリティを維持しつつ、表示手段に表示させる表示用データを取得できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるICカードは、表示手段を備えたICカードであって、通信機器と通信を行うための通信手段と、電子バリューを記憶する第1の記憶手段と、表示用データを記憶する第2の記憶手段と、前記通信手段を介して前記通信機器と前記第1の記憶手段の電子バリューに関する情報のやり取りを行う制御手段と、前記通信手段を介して前記通信機器から表示用データを受信して前記第2の記憶手段に記憶させ、前記第2の記憶手段の表示用データを前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
本発明による通信機器は、表示手段を備えたICカードと通信を行う通信機器であって、前記ICカードと通信を行うための通信手段と、前記通信手段を介して前記ICカードと電子バリューに関する情報のやり取りを行う制御手段と、前記ICカードの表示手段に表示させる表示用データを生成し、前記通信手段を介して前記ICカードに送信する表示用データ生成手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ICカード内において制御手段と表示制御手段とがやり取りを行うのではなく、それぞれが通信手段を介して通信機器と通信し、制御手段は第1の記憶手段の電子バリューに関する情報のやり取りを行い、表示制御手段は表示用データを受信するようにしたので、ICカードに記憶される電子バリューのセキュリティを維持しつつ、表示手段に表示させる表示用データを取得することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
(第1の実施形態)
図1、2は、第1の実施形態に係る非接触ICカード100の構成を示す図である。本実施形態では、Suica(登録商標)のように主に交通機関で利用される非接触ICカード100を説明する。非接触ICカード100は電子バリュー(例えば定期券情報、乗車券や特急券等のデジタルチケット情報、ストアードフェア(SF)の残額情報)を書き換え可能に記憶し、図3に示すように、駅務機器(図示例では自動改札機)200と無線通信を行う。
【0013】
図1、2に示すように、非接触ICカード100のカード本体101には、表示手段の一例であるディスプレイ102が設けられている。ディスプレイ102としては、電力供給がなくても表示が残存するディスプレイ、例えばマイクロカプセル型電気泳動式ディスプレイが用いられる。このように電力供給がなくても表示が残存するディスプレイを用いることにより、ユーザはいつでもディスプレイ102の表示を視認することができ、また、ディスプレイ102の表示更新時にのみ電力が消費されるので電力消費を抑えることができる。図1には、ディスプレイ102に、定期券情報、デジタルチケット情報、SFの残額情報の3つが表示されている例を示す。
【0014】
また、図2に示すように、カード本体101には、通信手段の一例であるアンテナ103と、制御手段の一例であるICチップ104と、第2の記憶手段の一例であるメモリ105と、表示制御手段の一例である表示制御ICチップ106とが内蔵されている。
【0015】
アンテナ103は、ループコイルからなり、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに(図3を参照)、駅務機器200との間で電磁誘導方式の無線通信を行う。
【0016】
ICチップ104は、CPU104a、ROMやRAM等のメモリ104bを含んで構成され、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに電磁誘導方式で得られる電力で駆動する。メモリ104bは電子バリューを書き換え可能に記憶する。CPU104aがメモリ104bに記憶されているプログラムを実行することにより、アンテナ103を介して駅務機器200とメモリ104bの電子バリューに関する情報のやり取りを行う。具体的には、メモリ104bの電子バリューの情報を駅務機器200に送信したり、駅務機器200からデータ或いはコマンドを受信してメモリ104bの電子バリューを書き換えたりする。なお、メモリ104bが本発明でいう第1の記憶手段に相当するものである。
【0017】
メモリ105は、表示制御ICチップ106がアンテナ103を介して駅務機器200から受信する表示用データを記憶する。
【0018】
表示制御ICチップ106は、CPU106a、ROMやRAM等のメモリ106bを含んで構成され、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに電磁誘導方式で得られる電力で駆動する。CPU106aがメモリ106bに記憶されているプログラムを実行することにより、アンテナ103を介して駅務機器200から表示用データを受信してメモリ105に記憶させ、メモリ105の表示用データをディスプレイ102に表示させる。なお、図2では、メモリ105を表示制御ICチップ106とは別体として図示したが、表示制御ICチップ106に実装されたメモリが本発明でいう第2の記憶手段として機能するようにしてもよい。
【0019】
なお、図示は省略するが、ディスプレイ102による表示機能の補助電源として、例えばコンデンサを設けておき、電磁誘導方式で得られる電力の一部を蓄えるようにしてもよい。或いは、ディスプレイ102による表示機能専用の電源として、一次電池や二次電池を別途設けてもよい。
【0020】
図3に示すように、駅務機器200には、通信手段の一例であるアンテナ201と、リーダ/ライタ202と、CPUやメモリ等により構成される主制御部203と、表示用データ生成手段の一例である表示用データ生成部204とが設けられている。なお、駅務機器200が本発明でいう通信機器に相当するものである。
【0021】
アンテナ201は、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに(図3を参照)、非接触ICカード100との間で電磁誘導方式の無線通信を行う。
【0022】
リーダ/ライタ202及び主制御部203は、非接触ICカード100と電子バリューに関する情報のやり取りを行う。ここでは、一例としてSFの残額情報に基づく自動改札機200での出場処理を説明する。図3に示すように自動改札機200と非接触ICカード100とが無線通信を行っている状態で、リーダ/ライタ202及び主制御部203は、非接触ICカード100のメモリ104bのSFの残額情報を読み取り、SFの残額情報が運賃等の利用料金に対して充足しているか否か判定する。その結果、SFの残額情報が充足していると判定すると、不図示のドアを開いて出場を許可するとともに、利用料金を減算した残金情報に書き換えるよう書き換え指令を非接触ICカード100に送信する。非接触ICカード100のICチップ104は、書き換え指令を受けて、メモリ104bのSFの残額情報を書き換える。
【0023】
また、一例としてデジタルチケット情報に基づく自動改札機200での出場処理を説明する。図3に示すように自動改札機200と非接触ICカード100とが無線通信を行っている状態で、リーダ/ライタ202及び主制御部203は、非接触ICカード100のメモリ104bのデジタルチケット情報を読み取り、デジタルチケット情報の券種の判定、期間や区間の判定等を行う。その結果、デジタルチケット情報が有効であると判定すると、不図示のドアを開いて出場を許可するとともに、該当デジタルチケット情報を削除するよう削除指令を非接触ICカード100に送信する。非接触ICカード100のICチップ104は、削除指令を受けて、メモリ104bの該当デジタルチケット情報を削除するように書き換える。
【0024】
表示用データ生成部204は、非接触ICカード100のディスプレイ102に表示させる表示用データを生成し、非接触ICカード100に送信する。上述したように駅務機器200と非接触ICカード100とが電子バリューに関する情報のやり取りを行った結果、非接触ICカード100のメモリ104bに記憶されることになる電子バリューを正データとすると、その正データに対応させた表示用データを生成し、アンテナ201を介して非接触ICカード100に送信する。表示用データは、例えばビットマップやドットコードからなる。非接触ICカード100の表示制御ICチップ106は、駅務機器200から表示用データを受信してメモリ105に記憶させ、メモリ105の表示用データをディスプレイ102に表示させる。
【0025】
以上のように自動改札機200と非接触ICカード100との間では、電子バリューに関する情報と表示用データとがやり取りされる。この場合に、駅務機器200と、非接触ICカード100のICチップ104及び表示制御ICチップ106とに合言葉を持たせてあり、駅務機器200からの呼び掛けは合言葉を使って行う。これにより、自動改札機200と非接触ICカード100との間で電子バリューに関する情報のやり取りを行う際にはICチップ104だけがこれに応え、表示用データを送信する際には表示制御ICチップ106だけがこれに応える仕組みとなっている。
【0026】
以上述べたように、非接触ICカード100内においてICチップ104と表示制御ICチップ106とがやり取りを行うのではなく、それぞれがアンテナ103を介して駅務機器200と通信し、ICチップ104はメモリ104bの電子バリューに関する情報のやり取りを行い、表示制御ICチップ106は表示用データを受信するようにしたので、非接触ICカード100に記憶される電子バリューのセキュリティを維持しつつ、ディスプレイ102に表示させる表示用データを取得することができる。
【0027】
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る非接触ICカード100の構成を示す図である。以下では、上記第1の実施形態との相違点を中心に説明し、第1の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0028】
第2の実施形態では、カード本体101に、ICチップ104が駅務機器200と通信を行うための第1のアンテナ103aと、表示制御ICチップ106が駅務機器200と通信を行うための第2のアンテナ103bとが内蔵されている。アンテナ103a、103bはそれぞれループコイルからなり、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに(図3を参照)、駅務機器200との間で電磁誘導方式の無線通信を行う。
【0029】
このようにした第2の実施形態では、非接触ICカード100を駅務機器200の読み取り部205にかざしたときに、ICチップ104は第1のアンテナ103aを介して電磁誘導方式で得られる電力で駆動し、表示制御ICチップ106は第2のアンテナ103bを介して電磁誘導方式で得られる電力で駆動する。すなわち、ICチップ104、106がそれぞれ独自に電力供給を受けることになり、ICチップ104、106での処理が相互し合うのを避けて、両ICチップ104、106を安定動作させることができる。
【0030】
以上、本発明を種々の実施形態と共に説明したが、本発明はこれらの実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能である。例えば駅務機器200としては、自動改札機以外にも、駅員が用いる携帯型端末装置、定期券発売機、のりこし精算機、自動発券機等がある。
【0031】
また、上記実施形態では、通信を行う際に電力を発生する無線通信として電磁誘導方式を説明したが、他の方式、例えばUHF帯や2.45GHz帯での電波方式を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係る非接触ICカードの構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る非接触ICカードの構成を示す図である。
【図3】非接触ICカードと駅務機器とが無線通信を行っている状態を示す図である。
【図4】第2の実施形態に係る非接触ICカードの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
100 非接触ICカード
101 カード本体
102 ディスプレイ
103 アンテナ
103a アンテナ
103b アンテナ
104 ICチップ
104a CPU
104b メモリ
105 メモリ
106 表示制御ICチップ
106a CPU
106b メモリ
200 駅務機器
201 アンテナ
202 リーダ/ライタ
203 主制御部
204 表示用データ生成部
205 読み取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段を備えたICカードであって、
通信機器と通信を行うための通信手段と、
電子バリューを記憶する第1の記憶手段と、
表示用データを記憶する第2の記憶手段と、
前記通信手段を介して前記通信機器と前記第1の記憶手段の電子バリューに関する情報のやり取りを行う制御手段と、
前記通信手段を介して前記通信機器から表示用データを受信して前記第2の記憶手段に記憶させ、前記第2の記憶手段の表示用データを前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記通信手段として、前記制御手段が前記通信機器と通信を行うための第1のアンテナと、前記表示制御手段が前記通信機器と通信を行うための第2のアンテナとが設けられており、前記第1のアンテナ及び前記第2のアンテナは、前記通信機器との間で通信を行う際に電力を発生する無線通信を行うことを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
表示手段を備えたICカードと通信を行う通信機器であって、
前記ICカードと通信を行うための通信手段と、
前記通信手段を介して前記ICカードと電子バリューに関する情報のやり取りを行う制御手段と、
前記ICカードの表示手段に表示させる表示用データを生成し、前記通信手段を介して前記ICカードに送信する表示用データ生成手段とを備えたことを特徴とする通信機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−217103(P2008−217103A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49845(P2007−49845)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【Fターム(参考)】