説明

ICカード用記録装置

【課題】ICカードに対する画像の記録動作と電子データの書込み動作に関連して、ICカードを給送する給送タイミングを最適に設定することにより、ICカードの発行効率を向上させること。
【解決手段】搬送部302のベルト302Dによって、先行のICカード201−1と後続のICカード201−2を搬送方向Yに搬送する。先行のICカード201−1に対し、通信アンテナ303によって電子情報の書き込みが終了してから、記録ヘッドによって画像の記録が終了するまで間の第1の時間を算出する。その算出された第1の時間に基づいて、後続のICカード201−2をベルト302D上に給送する給送タイミングを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードに対して電子情報の書込みと画像の記録を行なうICカード用記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カードの中にICチップを内蔵する、いわゆるICカードは、その利便性や保守性の点から非接触型のICカードとして普及してきている。非接触ICカードからは、カードの表面に記録された画像情報と、ICチップに記憶された電子情報が獲得できるため、個人認証手段、および電子マネー分野における決済手段として注目を浴びている。
【0003】
ICカードの発行機器としては、ICカードの表面に対する文字や画像などの記録と、ICカードのICチップに対する電子情報の書き込みと、が可能なICカード用記録装置が開発されている。このようなICカード用記録装置は、通信アンテナからの電波によって、ICカードに内蔵されるICチップに電子情報を書き込む電子情報書込み部と、ICカードの表面に画像を記録する記録部と、を備えている。このような記録装置においては、収納部に収納された複数のICカードが一枚ずつ順次給送され、その給送されたICカードは、搬送部によって所定の搬送方向に搬送される。その搬送方向の上流側に備わる電子情報書込み部は、ICカードを搬送中の搬送部が搬送動作を停止したときに、その停止中のICカードに対して電子情報を書込む。また、搬送方向の下流側に備わる記録部は、搬送部によって搬送中のICカードに対して画像を記録する。
【0004】
このように、収納部に収納された複数のICカードを一枚ずつ順次給送してから搬送する記録装置においては、ICカードを給送してから、次のICカードを給送するまでの間隔(以降、「給送間隔」ともいう)が短い程、ICカードの発行効率は向上する。しかしながら、給送間隔が短くなり過ぎた場合には、先に給送された先行のICカードが記録部において画像が記録されている際に、その後に給送された後続のICカードが電子情報書込み位置に到達することがある。この場合には、搬送装置の搬送動作を一時停止させる必要がある。しかし、先行のICカードに対する画像の記録中に搬送装置の搬送動作が停止するため、その搬送動作の停止時に発生する滑り等の搬送誤差によって、記録画像の画質の劣化を招くおそれがある。そのため、従来のICカードの記録装置は、先行のICカードに対する画像の記録が完了した後に、後続のICカードの給送を開始する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−150909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のICカード用記録装置は、先行のICカードに対する画像の記録が終了した後に、後続のICカードを給送するため、ICカードの給送間隔が大きくなり、ICカードを発行する効率が低下する虞がある。
【0007】
本発明の目的は、ICカードに対する画像の記録動作と電子情報の書込み動作に関連して、ICカードを給送する給送タイミングを最適に設定することにより、ICカードを発行する効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のICカード用記録装置は、電子情報を記憶する記憶部を有する複数のICカードを、トレイ上から1枚ずつ給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたICカードが載置される無端ベルトを備え、前記無端ベルト上に載置された前記ICカードを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって所定の電子情報書込み位置に搬送された前記ICカードの前記記憶部に対して、前記電子情報を書込む書込み手段と、前記搬送手段によって前記電子情報書込み位置よりも前記搬送方向の下流側にある所定の画像記録位置に搬送された前記ICカードの画像記録領域に対して、画像を記録する記録手段と、前記給送手段が前記搬送手段に対して前記ICカードを給送する給送タイミングを制御する制御手段と、を備えたICカード用記録装置であって、前記制御手段は、前記搬送手段によって先に搬送される先行のICカードに対する前記電子情報の書き込みが終了してから、前記先行のICカードに対する前記画像の記録が終了するまでの間の第1の時間を算出し、算出された前記第1の時間に基づいて、前記搬送手段によって前記先行のICカードの後に搬送される後続のICカードを前記給送手段から前記搬送手段に給送する前記給送タイミングを変更することを特徴とする。
【0009】
本発明のICカード用記録装置は、電子情報を記憶する記憶部を有する複数のICカードを、トレイ上から1枚ずつ給送する給送手段と、前記給送手段によって給送されたICカードが載置される無端ベルトを備え、前記無端ベルト上に載置された前記ICカードを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって所定の画像記録位置に搬送された前記ICカードの画像記録領域に対して、画像を記録する記録手段と、前記搬送手段によって前記画像記録位置よりも前記搬送方向の下流側にある所定の電子情報書込み位置に搬送された前記ICカードの前記記憶部に対して、前記電子情報を書込む書込み手段と、前記給送手段が前記搬送手段に対して前記ICカードを給送する給送タイミングを制御する制御手段と、を備えたICカード用記録装置であって、前記制御手段は、前記搬送手段によって先に搬送される先行のICカードに対する前記画像の記録が終了してから、前記先行のICカードに対する前記電子情報の書込みが終了するまでの間の第1の時間を算出し、算出された前記第1の時間に基づいて、前記搬送手段によって前記先行のICカードの後に搬送される後続のICカードを前記給送手段から前記搬送手段に給送する前記給送タイミングを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、先行のICカードに対する電子情報の書込み動作および画像の記録動作に関連して、後続のICカードの給送タイミングを変更することにより、それら先行と後続のICカードの搬送間隔を短縮して、ICカードを効率よく発行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態の記録装置を備えた記録システムの概略構成図である。
【図2】ICカードの構成例を説明するための模式図である
【図3】図1における記録装置の内部構成を説明するための概略図である。
【図4】図1の記録装置における電子情報書込み位置と、画像の記録位置と、の関係の説明図である。
【図5】図1の記録装置における給紙部を模式的に示す斜視図である。
【図6】図5の給紙部の動作を説明するための概略側面図である。
【図7】図5の給紙部の動作を説明するための概略側面図である。
【図8】図1における記録装置の制御系のブロック構成図である。
【図9】図1におけるホストコンピューターの機能を説明するための正面図である。
【図10】図1の記録装置において用いる制御コマンドの説明図である。
【図11】(a)および(b)は、異なる記録画像に対応する制御コマンドの説明図である。
【図12】図1の記録装置におけるICカードの給送タイミングの説明図である。
【図13】図1の記録装置における給送タイミング決定処理を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1の記録装置における給送制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図15】(a)および(b)は、異なる記録画像に対応する制御コマンドの説明図である。
【図16】(a)は、図15(a)の画像の記録終了タイミングの説明図、(b)は、図15(b)の画像の記録終了タイミングの説明図である。
【図17】(a)は、記録画像の一例の説明図、(b),(c),(d),(e)は、その記録画像のイメージデータの説明図である。
【図18】本発明の第3の実施形態における記録装置の内部構成を説明するための概略図である。
【図19】図18の記録装置における電子情報書込み位置と、画像の記録位置と、の関係の説明図である。
【図20】図18の記録装置におけるICカードの給送タイミングの説明図である。
【図21】図18の記録装置における給送タイミング決定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の記録装置にホストコンピューターを接続した記録システムの説明図である。本例のICカード用記録装置は、長尺のインクジェット記録ヘッド(以下、「ラインヘッド」ともいう)を用いて、インクジェット方式によりカラー画像の記録が可能である。記録装置101とホストコンピューター(ホスト装置)PCはプリンタケーブル107で接続されており、記録装置101は、ホストコンピューターPCにて処理された各種データを後述する記録媒体としてのICカードに記録する。本例の記録装置101は、ICカード以外の記録媒体に対しても画像の記録が可能であり、この場合には、通常のプリンタとして機能する。
【0013】
記録装置101には、後述の記録ヘッド、通信アンテナ、及び搬送部を覆う開閉可能な上部カバー103と、ラインヘッドに供給されるインクを貯蓄する後述のタンク部を開閉するための前カバー104と、が備えられている。給送部109は、トレイ102に積載されたICカードを記録部108に給送する。排出部110は、記録部108から搬送されるICカードを格納する。105は記録装置の電源スイッチである。操作パネル106には、記録装置における操作環境の設定を行なうための入力部、および記録装置のエラー発生状況をユーザーに知らせる手段として、エラーランプ111およびLCD112が備えられている。
【0014】
図2はICカードの模式図である。本例のICカード201におけるRFIDタグ205は、電子情報を記憶するための不揮発性メモリ(記憶部)を搭載したICチップ203と、ICチップ203に接続されたループアンテナ202と、を含む。さらに、RFIDタグ205は、紙もしくはPET樹脂のフィルム204によって覆われている。ICカード201は電源を持たず、記録装置101に配設された後述の通信アンテナから送信されて、ル−プアンテナ202で受信される電波の受信電力を利用して電力を発生する。その電力をICチップ203の内部電源として、通信アンテナを介してRFIDタグ205に電子情報の書込みを行なうことができる。RFIDタグ205は、その不揮発性メモリに識別IDを記憶しており、電子情報の書込みは、指定するIDを所有するRFIDタグ205に対して行われる。
【0015】
図3は、記録装置101の概略構成を示す断面図であり、図4は、記録装置101におけるインクジェット記録ヘッドHと通信アンテナ303との配置関係を模式的に説明するための斜視図である。
【0016】
記録ヘッドHの下側には搬送部302が配備されている。本例の搬送部302は、後述するフィードモータ804によって、ローラ302A,302B,302Cの間に掛け渡された無端ベルト302Dを所定方向(矢印Y方向)に移動させる構成となっている。このような搬送部302に対しては、トレイ102に積載されたICカード201が後述する給送方法によって200mm/secの速度で給送され、そのICカード201の先端部は記録媒体検知センサ(以下、単に「センサ」ともいう)304により検知される。搬送部302は、無端ベルト上に載置された少なくとも2枚のICカードを搬送方向の上流側と下流側に位置させて同時に搬送可能である。搬送部302は、そのICカード201を通信アンテナ303の下方の電子情報書込み位置に搬送したときに、その搬送動作を停止する。その電子情報書込み位置において、ICカード201のICチップ203に対して、通信アンテナ303を介して電子情報が書き込まれる。その後、その電子情報が書き込まれたICカード201は、搬送部302が搬送動作を再開することにより、記録ヘッドHが備わる記録部108に向けて一定速度で矢印Y方向(搬送方向)に搬送される。記録部108を通過するICカード201に対しては、記録ヘッドHからインクが吐出され、これによりICカード201上に画像が記録される。したがって、記録部108は、記録ヘッドHが位置する画像記録位置に搬送されたICカード201に画像を記録する。
【0017】
本例の記録装置101は、記録ヘッドHとして、ブラック(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)のインクを吐出する4つのヘッドが備えられている。それらのヘッドには、インクを吐出可能な複数のノズルが形成されており、それらのノズルは、記録媒体の搬送方向(矢印Y方向)と交差(本例の場合は、直交)する方向に配列されてノズル列を形成している。ノズルは、電気熱変換素子(ヒータ)やピエゾ素子などの吐出エネルギー発生素子を用いて、インクを吐出することができる。
【0018】
記録部108において画像が記録されたICカード201は、搬送部302の搬送動作によって排出部110に排出される。記録媒体として、例えば、名刺のようなICチップを備えない記録媒体を使用することもできる。この場合、電子情報の書込みを行なわないため、トレイ102から給送される記録媒体は、電子情報書込み位置にて停止することなく搬送部302によって連続的に搬送され、記録部108にて画像が記録されてから排出部110に排出される。搬送部302の下には、記録ヘッドH(Bk、C、M、Y)に供給するためのインクを貯蓄するタンク部301が脱着自在に装着されている。
【0019】
図5は、給送部109の概略構成を示す斜視図であり、図6および図7はその断面図ある。給送部109は、トレイ102上に積載された記録媒体(ICカード201を含む)を1枚ずつピックアップして、搬送部302に順次給送する。トレイ102は、リフトモータ501の回転に応じて昇降する。トレイ102の上方位置には、給送可能な記録媒体の表面位置を検知するための紙面フラグ504および紙面センサ505が配備されている。トレイ102の上方位置には、記録媒体を1枚ずつピックアップするためのピックアップローラ507と、ピックアップローラ507を上下動させるためのピックアップソレノイド506が配設されている。ピックアップローラ507は、ピックアップソレノイド506がONとなったときに下降し、トレイ102上に積載された最上位の記録媒体と接触する。ピックアップローラ507は、ピックアップモータ508によって回転される。502は、トレイ102の上限位置を検知するための上限センサであり、503は、トレイ102の下限位置を検知するための下限センサである。本例の給送部109は、100mm/秒の速度で記録媒体を給送する。
【0020】
次に、図6および図7を参照して、給送部109の給送動作について説明する。
【0021】
まず、トレイ102上に積載された最上位の記録媒体が紙面センサ505によって検知されるまで、トレイ102を上昇させて、最上位の記録媒体をピックアップ位置にセットする。そして、ピックアップローラ507を回転させてから、ピックアップソレノイド506をONとする。これにより、ピックアップローラ507が下降し、それが最上位の記録媒体に接触して、その記録媒体を給送する。その記録媒体の先端がタイミングセンサ509によって検知されたときに、ピックアップソレノイド506をOFFとして、ピックアップローラ507を上昇させる。その記録媒体が搬送部302により搬送されて、その後端がタイミングセンサ509によって検知されてから規定時間経過後に、ピックアップローラ507を下降させて次の記録媒体を給送する。
【0022】
このような給送動作を繰り返して複数の記録媒体を給送すると、記録媒体のピックアップ位置は次第に低くなる。そこで、紙面センサ505が再び記録媒体を検知するまで、トレイ102を約0.5mmずつ繰り返し上昇させて、最上位の記録媒体をピックアップ位置にセットする。さらに給送動作を繰り返した場合には、トレイ102上の全ての記録媒体が給送されてトレイ上からなくなる。この場合には、トレイ102を上昇させても紙面フラグ504がトレイ102によって押し上げられないため、紙面センサ505は記録媒体を検知しない。そのままトレイ102が上昇して、上限センサ502がトレイ102を検知したときに、操作パネル106(図1参照)のエラーランプ111を点灯させ、かつLCD112にエラーメッセージを表示して、記録媒体の補充をユーザーに促す。
【0023】
図8は、記録装置101の制御系のブロック構成図である。801は、記録装置全体を制御するメインコントローラであり、後述する入力データを格納する格納手段としての機能、およびデータ制御手段、設定手段としての機能などを有する制御手段である。メインコントローラ801は、ホストコンピューターPCとの間において互いに信号の授受を行なう。802は、メインコントローラ801に接続されて、制御プログラムなどが格納されるROMである。メインコントローラ801は、それらのプログラムにしたがってRAM812を作業用メモリとして用いて、種々の制御機能を発揮する。ホストコンピューターPCからはRFIDタグ205に書き込むデータが転送され、そのデータは、RAM812に一時的に格納される。メインコントローラ801に接続されたRFID通信回路809は、通信アンテナ303を通して、RAM812に格納されたデータをICチップ203に書き込む。806は、ホストコンピューターPCから送信されてきた画像データを格納するイメージバッファ(記録データ格納部)であり、806Bkは、ブラックの画像データを一時的に格納するブラックイメージバッファである。同様に、806C、806M、806Yは、それぞれシアン、マゼンタ、シアン、イエローの画像データを一時的に格納するイメージバッファである。
【0024】
803は、記録ヘッドHのノズルからインクを吐出するための吐出エネルギー発生素子を駆動するための駆動回路である。本例においては、吐出エネルギー発生素子として電気熱変換素子(ヒータ)が用いられている。メインコントローラ801に接続されたドライバコントローラ807は、イメージバッファに格納されたインク色毎のビットマップ形式の画像データに応じて、ヘッド駆動回路803を制御する。これにより、記録ヘッドH(Bk,C,M,Y)が画像データに基づいてインクを吐出して、画像を記録する。804Dは、搬送部302を搬送動作させるためのフィードモータ804を駆動するモータドライバである。800は、給送部109のトレイ102を昇降させるリフトモータ501と、記録媒体を給送するピックアップモータ508と、を駆動する駆動回路である。これらのドライバ804Dおよび駆動回路800は、いずれもメインコントローラ801によって制御される。
【0025】
図9は、ホストコンピューターPCの機能を説明するための模式図である。ホストコンピューターPCには、入力装置としてキーボード901とマウス902が接続され、それらから入力された情報は、制御部であるCPU(不図示)により処理されて、メモリ(不図示)もしくはハードディスク(不図示)に格納される。このような処理を行なうためのオペレーティングシステムは、予めハードディスクに格納されており、ホストコンピューターPCの電源投入時に読み込まれて各種の制御を行なう。ホストコンピューターPCと記録装置101は、ケーブルなどにより情報通信が可能な状態に接続されており、後述の記録コマンドを送信することができる。
【0026】
次に、ホストコンピューターPCを用いた記録画像情報の作成方法について説明する。
【0027】
記録対象となる画像情報は、ホストコンピューターPCのハードディスク内に格納されている専用のアプリケーションソフトによって作成される。そのアプリケーションソフトは、記録装置101の機能に適合するものであり、バーコードや続き番号などを処理する機能が備えられている。作成する画像情報の種類によっては、汎用の画像作成アプリケーションソフトを用いることもできる。本例における専用のアプリケーションソフトは、任意の画像情報を画像イメージ904としてレイアウトして、CRT905に表示させた上、記録枚数911や用紙サイズ(記録媒体のサイズ)906などの各種設定を行なう機能を有する。入力されたカードサイズ906はCRT905上の画像イメージ904に反映され、その画像イメージ904において、矩形907、線908、文字909、イメージ情報910などを自由に配置して、それらの大きさや角度などを指定することができる。これらの情報は、操作者の指示により記録装置101に送信される。画像情報は、CRT905上においてはRGB(レッド、グリーン、ブルーの色要素)で表され、記録装置101に送信するときには、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの色要素毎に2値データに変換されて、後述するコマンドの体系とされる。また、専用アプリケーションソフトは、画像情報の他に、ICチップ203に記憶させるべき電子情報903の編集機能をも備える。このアプリケーションソフト上において指定された電子情報903の内容は、後述するコマンドの体系で記録装置101に送信される。
【0028】
次に、図10および図11を用いて、ホストコンピューターPCから記録装置101に送信される記録コマンドについて説明する。記録コマンドとしては、記録媒体のサイズ等を通知する用紙設定コマンド1001、記録画像の記録領域等を通知するするフォーマットコマンド1002、および記録画像のイメージデータを通知するデータコマンド1003が含まれる。さらに記録コマンドとして、ICチップ203に書き込む電子情報を通知するデータコマンド1004、および記録データの終了を示すジョブ開始コマンド1005も存在する。
【0029】
用紙設定コマンド1001において、用紙縦サイズ1008は、画像記録する記録媒体の縦サイズを指定し、用紙横サイズ1009は、その記録媒体の横サイズを指定する。フォーマットコマンド1002において、画像縦領域1012はイメージデータの縦サイズを指定し、画像横領域1013はイメージデータの横サイズを指定する。また、開始縦座標1010および開始横座標1011は、記録媒体に対する記録画像の記録開始位置(記録開始座標)を通知し、その記録開始位置を始点として、データコマンド1003によって指定される記録画像が記録される。
【0030】
図11(a)の記録画像Aは、画像縦領域1012が45mmの記録画像1101であり、記録媒体のほぼ全体に渡って記録される。一方、図11(b)の記録画像Bは、画像縦領域1012が10mmの記録画像1102であり、記録媒体の上方部に対してのみ記録される。
【0031】
図12は、記録媒体としてのICカード201に対する電子情報の書き込み動作と画像の記録動作の説明図であり、本例においては、記録画像として図11(a),(b)の記録画像A,Bを記録する。また、図12においては、搬送部302におけるローラ302Cおよびフィードモータ804の図示が省略されている。
【0032】
図12の部分(a)において、記録装置101は、ホストコンピューターPCからの記録指令を待っているアイドル状態にある。
【0033】
図12の部分(b)は、記録装置101がホストコンピューターPCから記録コマンドを受信して、トレイ102に積載される1枚目のICカード(先行のICカード)201−1を給送し、そのICカード201−1が搬送部302の入口に到達した状態を示す。201−2は、2枚目のIDカード(後続のICカード)である。トレイ102上のICカード201が搬送部302の入口に到達するまでの時間T1(秒)は、下式(1)によって求められる。
【0034】
T1=L3/S1 ・・・ (1)
上式(1)において、L3(mm)は、トレイ102上のICカード201が搬送部302の入口に到達するための間の距離であり、S1(mm/秒)は、給送部109によるICカード201の給送速度である。本例の場合、L3=10(mm)であり、S1=(100mm/秒)であるため、T1は0.1(秒)である。尚、L3及びS1は本体内に記憶されている固定値である。
【0035】
図12の部分(c)は、給送された1枚目のICカード201−1が搬送部302により矢印Y方向に搬送されて、それが電子情報書込み位置に到達した状態を示す。ICカード201は、その中央部を中心とするループ状のループアンテナ202を有している。したがって、ICカード201−1の中央部が通信アンテナ303の中央に位置する電子情報書込み位置に到達した際に、そのICカード201−1に電子データが書き込まれる。その電子情報書込み位置における電子データの書き込み時には、搬送部302が搬送動作を停止する。 ICカード201が搬送部302の入口から電子情報書込み位置に到達するまでの時間T2(秒)は、下式(2)によって求められる。
【0036】
T2=(L2+Lp/2)/S2 ・・・ (2)
上式(2)において、L2(mm)は、搬送部302の入口から通信アンテナ303の中央部までの間の距離であり、Lp(mm)は、用紙縦サイズに相当するICカード201の縦サイズであり、S2(mm/秒)は、搬送部302の搬送速度である。L2、S2、およびLpは本体内に記憶されている固定値である。尚、通信アンテナ303は用紙中央(Lp/2mm)の位置に配置される。
【0037】
説明の便宜上、搬送部302の入口に給送されたICカード201は、直ちに、搬送部302によって速度S2で搬送されるものとする。本例の場合、L2=30(mm)、S2=(200mm/秒)であり、ICカード201の縦サイズLpが55mmのときには、T2が0.2875(秒)となる。したがって、トレイ102に積載されたICカード201が電子情報書込み位置に到達するまでの時間(第2の時間)Trは、下式(3)によって求められる。尚、S1よりS2のほうが速い理由は、ICカードをL3内でたるませないためである。
【0038】
Tr=T1+T2 ・・・ (3)
本例の場合、Trは0.3875(=0.1+0.2875)(秒)である。
【0039】
図12の部分(d)は、ICカード201−1に対して記録画像Aの記録が終了した状態を示す。ICカード201−1に電子情報が書込まれた後、搬送部302が搬送動作を再開してから、記録画像Aの記録が終了する記録終了時期までの時間(第1の時間)Tp(秒)は、下式(4)によって求められる。
【0040】
Tp={L1−(Lp/2)+La+Lb}/S2 ・・・(4)
上式(4)において、L1(mm)は、電子情報書き込み位置から、矢印Yの搬送方向の最も下流側に位置する記録ヘッドYの記録位置までの間の距離である。La(mm)は、矢印Yの搬送方向において、ICカード201の先端から画像の記録開始位置までの間の距離(開始縦座標に相当)であり、Lb(mm)は、矢印Yの搬送方向における記録画像の長さ(画像縦領域に相当)である。説明の便宜上、搬送部302は、搬送動作の再開の直後から、ICカード201を速度S2で搬送するものとする。本例の場合、S2=200(mm/秒)、L1=85(mm)であり、また、画像A,Bのいずれが記録される場合であっても、Lp=55(mm)、La=5(mm)である。ただし、画像Aの場合にはLb=45(mm)であるため、画像Aを記録するときの時間Tpは0.5375(秒)となる。(Lbは変数である)一方、画像Bの場合にはLb=10(mm)であるため、画像Bを記録するときの時間Tpは、画像Aを記録するときの時間Tpとは異なる。L1およびLaは本体内に記憶されている固定値であり、また、Lbは、記録画像に応じて変化する値であって、制御部により算出される。したがって、第1の時間Tpは、記録画像に応じて変化するLbの値を含む変数であり、一方、第2の時間Trは、前述したように固定値のみを含む定数である。本発明においては、このような変数である第1の時間Tpに基づいて、ICカード201の給送タイミングを変更する。
【0041】
図12の部分(e)は、ICカード201−1に対して記録画像Bの記録が終了した状態を示す。ICカード201に電子情報が書込まれた後、搬送部302が搬送動作を再開してから、記録画像Bの記録が終了するまでの時間Tp(秒)は、記録画像Aを記録する場合と同様に、上式(4)によって求められる。記録画像Bは、Lp=55(mm)、La=5(mm)、Lb=10(mm)であるため、記録画像Aを記録するときの時間Tpは0.3625(秒)となる。
【0042】
図13は、ICカード201の給送タイミングを決定する給送タイミング決定処理を説明するためのフローチャートである。図14は、その給送タイミング決定処理により決定された給送タイミングに基づいて、ICカード201の給送を制御する給送制御処理を説明するためのフローチャートである。これらの処理は、メインコントローラ801が、ROM802に格納された制御プログラムを、RAM812を使用し実行することにより実現される。また、これら2つの処理は、記録装置101がホストコンピューターPCからジョブ開始コマンド1005を受信することにより実行され、受信した記録コマンドに対応する給紙処理が完了するまで周期的に実行される。
【0043】
この図13の給送タイミング決定処理について説明する。
【0044】
制御部は、まず、1枚目のICカード201−1を給送部109によって給送し(ステップS1)、それを搬送部302によって矢印Y方向に搬送する制御を実行する。そのICカード201−1が電子情報書込み位置に搬送された後(ステップ8)、搬送部302の搬送動作を休止する(ステップ9)。続いて、そのICカード201−1に対し電子情報を書込む(ステップS2)。電子情報の書込みが終了した後、2枚目以降のICカード201−2,201−3・・・に関するジョブ開始コマンド1005を受信しているか否か、つまり処理対象のICカード201(記録媒体)として2枚目以降が存在するか否かを判定する(ステップS3)。2枚目のICカード201−2に関するジョブ開始コマンド1005を受信しない場合には、次のICカード201を給送することなく処理を終了する。
【0045】
制御部は、次に、2枚目のICカード201−2に関するジョブ開始コマンド1005を受信した場合に、1枚目のICカード201−1に関する時間Tpを算出する。その時間Tpは、ICカード201−1に対する電子情報の書込みの終了後に搬送部302の搬送動作が再開してから、そのICカード201−1に対する画像の記録が終了するまでに要する時間である。すなわち、1枚目のICカード201−1に関するフォーマットコマンド1002によって指定される開始縦座標laおよび画像縦領域Lbを用い、前述した式(4)に基づいて、1枚目のICカード201−1についての時間Tpを算出する(ステップS4)。さらに、2枚目のICカード201−2に関するフォーマットコマンド1002によって指定された縦サイズ1008(図10参照)を用い、上式(3)に基づいて、2枚目のICカード201−2についての時間Trを算出する(ステップS4)。前述したように、時間Trは、ICカード201をトレイ102から電子情報書込み位置まで搬送させるまでに要する時間である。
【0046】
その後、ICカード201−1についての第1の時間Tpと、ICカード201−2についての第2の時間Trと、を比較する。そして、Tp<Trのとき、つまり第1の時間が第2の時間未満のときには、給送開始タイマーを「1」に設定する(ステップS6)。一方、Tp≧Trのとき、つまり第1の時間が第2の時間以上のときには、第1および第2の時間の差分の「Tp−Tr」を給送開始タイマーに設定する(ステップS7)。
【0047】
Tp<Trのときは、先行する1枚目のICカード201−1に電子情報が書込まれてから搬送部302が搬送動作を再開するときに、同時に、後続の2枚目のICカード201−2の給送を開始したとしても問題がない。つまり、図12の部分(d),(e)のように、2枚目のICカード201−2が電子情報書込み位置に到達する前に、1枚目のICカード201−1に対する画像の記録が終了するからである。したがって、Tp<Trのときには、先行のICカード201−1に電子情報が書込まれてから搬送部302が搬送動作を再開するときに、同時に、後続のICカード201−2の給送を開始するように、給送開始タイマーを「1」に設定する。一方、Tp≧Trのときは、ICカード201−1に電子情報が書込まれてから搬送部302が搬送動作を再開した後、Tp−Trの時間の経過を待ってから、ICカード201−2の給送を開始するように、給送開始タイマーを「Tp−Tr」に設定する。したがって、搬送部302が搬送動作を再開した後、Tp−Trの時間の経過した時期がICカード201−2を給送する給送タイミングとなる。続いて、休止していた搬送を再開し(ステップ8)、ICカード201−1を記録開始位置まで搬送(ステップ9)すると、ICカード201−1に画像記録を開始する(ステップ10)。
【0048】
次に、図14の給紙制御処理について説明する。この給紙制御処理は、周期的に実行される割込み処理である。
【0049】
この給紙制御処理において、制御部(CPU)は、RAM812に構成された後述の給送開始タイマー(不図示)のカウント値に応じて給紙制御処理を実行する。その給送開始タイマーは、上述した、図13の給送タイミング決定処理によってセットされる。まず、給送開始タイマーのカウント値が「0」であるか否かを判定し(ステップS1)、それが「0」でないときは、給送開始タイマーをカウントダウンする(ステップS2)。そのカウントダウンされた後の給送開始タイマーのカウント値が「0」のときは、トレイ102に積載されたICカード201を給送部109によって1枚給送する(ステップS13,14)。その後、給送開始タイマーのカウント値を「0」にリセット(ステップS15)してから、処理を終了する。給送部109によって給送されたICカード201は、搬送部302によって、直ちに矢印Y方向に搬送されるものとする。ステップS13の判定において、カウントダウンされた後の給送開始タイマーのカウント値が「0」ではないときは、ICカード201を給送することなく処理を終了する。これによって、図13の処理を実行しているときでも、優先して図14の処理を実行する。
【0050】
このように本実施形態の記録装置によれば、図12の部分(d),(e)のように、先行のICカード201−1に対する画像の記録終了と同時に、後続のICカード201−2を電子情報書込み位置に到達させることができる。したがって、ICカードを効率良く発行することができる。
【0051】
(第2の実施形態)
第1の実施形態の記録装置では、ホストコンピューターPCから送信される図10の開始縦座標1010および画像縦領域1012を用いて、時間Tpを算出する。前述したように、時間Tphは、電子情報の書込みの終了後に搬送部302の搬送動作が再開してから、画像の記録が終了するまでに要する時間である。本実施形態においては、ホストコンピューターPCから送信されるイメージデータ1014を解析して、時間Tpを算出する。
【0052】
図15(a),(b)は、本実施形態において記録する記録画像の2つの例の説明図である。本例の記録画像CおよびDは、いずれも、記録媒体の縦サイズが55(mm)、画像縦領域が45(mm)である。しかし、記録画像CおよびDにおいては、背景が黄色であって枠線が黒の文字列データ1303と、背景と枠線が透明の文字列データ1304と、の配置関係が異なる。そのため、ICカード201に対する記録画像CおよびDの記録終了のタイミングは異なる。
【0053】
図16(a),(b)は、記録画像CおよびDの記録終了のタイミングを説明するための概略平面図である。前述したように、記録装置101には、Bk,C,M,Yの4つの記録ヘッドHが一定の間隔(15mm)で配備されている。そのため、記録画像Cは、画像領域の下部に配置される文字列データ1304が記録ヘッドYを通過した時点で、記録が終了する。一方、記録画像Dは、画像領域の上部に配置される文字データ1305が記録ヘッドYを通過した時点で、記録が終了する。したがって記録画像Dは、記録画像Cよりも早く記録が終了する。
【0054】
メインコントローラ801は、ホストコンピューターPCから送信される記録コマンドを解析し、イメージデータを各インク色に対応するイメージバッファ806(806Bk,806C,806M,806Y)に展開する。その後、ジョブ開始コマンド1005を受信すると、各イメージバッファ806Bk,806C,806M,806Yに格納されたイメージデータデータを解析し、各イメージバッファ806Bk,806C,806M,806Yにおける最終記録位置を検出する。その後、イメージバッファ毎に、画像の記録開始位置と最終記録位置との間の記録間隔Lc(画像記録領域)を求め、その記録間隔Lcに対して、イメージバッファに対応する記録ヘッド毎のオフセット量Ldを加算する。先頭記録位置は、イメージバッファ毎に共通であり、最終記録位置は、イメージバッファに展開されるイメージデータによって異なる。オフセット量Ldは、イメージバッファに対応する記録ヘッドと、搬送方向(矢印Y方向)の最も上流側に位置して基準となる記録ヘッドBkと、の間の配置間隔である。本例の場合、各記録ヘッド間の間隔が15mmである。そのため、基準となる記録ヘッドBkのオフセット量Ldは0、記録ヘッドCのオフセット量Ldは15mm、記録ヘッドMのオフセット量Ldは30(=15×2)mm、記録ヘッドYのオフセット量Ldは45(=15×3)mmである。そして、イメージバッファ806Bk,806C,806M,806Yのそれぞれに関して求めたLc+Ldを比較し、それらの中で最も大きい値に基づいて、記録画像の記録終了タイミングを求める。
【0055】
具体的に、図17(a)の記録画像Cの場合、そのイメージデータは、図17(b),(c),(d),(e)のように、各イメージバッファ806Bk,806C,806M,806Yに展開される。図17(b)のイメージバッファ806Bkにおいては、文字画像1303の枠線が最終記録位置となるため、記録間隔Lcは45mmとなり、Lc+Ldは45(=45+0)mmとなる。図17(c),(d)のイメージバッファ806C,806Mにはイメージデータがないため、それらの記録間隔Lcはいずれも0mmとなり、それらのLc+Ldは、15(=0+15)mmおよび30(=0+39)mmとなる。図17(e)のイメージバッファ806Yにおいては、文字画像1303の背景データが最終記録位置となるため、記録間隔Lcは45mmとなり、Lc+Ldは90(=45+45)mmとなる。よって、記録画像Cの記録終了タイミングは、Lc+Ldの最大値の90mmに基づいて求められることになる。
【0056】
ICカード201に対する電子情報の書込み後に搬送部302の搬送動作が再開してから、そのICカード201に対する画像の記録が終了するまでの時間Tpは、下式(5)によって求められる。
【0057】
Tp={La+Lc+Ld+L4−(Lp/2)}/S2 ・・・(5)
上式(5)において、L4(mm)は、電子情報書き込み位置から記録ヘッドBkの記録位置までの間の距離である(図12参照)。前述したように、La(mm)は、ICカード201の先端から画像の記録開始位置までの間の距離(開始縦座標に相当)、Lp(mm)は、用紙縦サイズに相当するICカード201の縦サイズ、S2(mm/秒)は、搬送部302の搬送速度である。本例の場合、La=5(mm)、L4=40(mm)、Lp=55(mm)、S2=200(mm/秒)である。また、記録画像Cを記録する場合には、上述したように、Lc+Ldが90(=45+45)mmとなるため、時間Tpは、0.5375(={5+90+40−(55/2)}/200)秒となる。
【0058】
その後、前述した第1の実施形態と同様に、先行のICカード201−1についての時間Tpと、後続のICカード201−2についての時間Trと、を算出し、それらの比較結果に応じて、後続のICカード201−2の給送開始タイミングを決定する。
【0059】
本実施形態によれば、画像データを解析することにより、より正確に時間Tpを求めることできる。したがって、先行のICカード201−1に対する画像の記録終了と同時に、後続のICカード201−2を電子情報書込み位置に到達させることができる。
【0060】
(第3の実施形態)
図18は、本実施形態の記録装置100の概略構成を示す断面図であり、図19は、記録装置100におけるインクジェット記録ヘッドHと通信アンテナ303との配置関係を模式的に説明するための斜視図である。
【0061】
前述した第1および第2の実施形態の記録装置においては、通信アンテナ303が記録ヘッドHよりも搬送方向(矢印Y方向)の上流側に配備されている。そのため、通信アンテナ303によって電子情報が書き込まれたICカード201に対して、記録ヘッドHにより画像が記録される。一方、本実施形態の記録装置においては、通信アンテナ303が記録ヘッドHよりも搬送方向(矢印Y方向)の下流側に配備されている。したがって、本実施形態の記録装置は、記録ヘッドHによって画像が記録されたICカード201に対して、通信アンテナ303によって電子情報が書き込まれる構成となっている。
【0062】
図20は、記録媒体としてのICカード201に対する電子情報の書き込み動作と画像の記録動作の説明図である。前述したように、ICカード201は、その中央部を中心とするループ状のループアンテナ202を有しており、ICカード201の中央部が通信アンテナ303の中央に位置する電子情報書き込み位置において、そのICカード201に電子データが書き込まれる。記録位置の手前の検出位置に備わるセンサ304がICカード201の先端を検出してから、そのICカード201が電子情報書込み位置に到達するまでに要する時間(第1の時間)Tr1(秒)は、下式(6)によって求められる。
【0063】
Tr1=(L12+Lp/2)/S2 ・・・ (6)
上式(6)において、L12(mm)は、センサ304と通信アンテナ303の中央部との間の距離である。また、前述した実施形態と同様に、Lp(mm)は、用紙縦サイズに相当するICカード201の縦サイズであり、S2(mm/秒)は、搬送部302の搬送速度である。本例の場合、L12=105(mm)、S2=(200mm/秒)であるため、Lp=55(mm)のICカード201を処理対象とするときには、Tr1は0.6625(秒)となる。
【0064】
図20の部分(d)は、後続のICカード201−2が画像の記録開始位置まで搬送された状態を示す。尚、トレイ102上のICカード201を搬送部302の入口まで給送するために要する時間T1(秒)は、前述した第1の実施形態の場合と同様に、式(1)によって求められる。本実施形態の記録装置100においては、L3=10(mm)、S1=(25mm/秒)であるため、T1は0.4(秒)である。また、ICカード201が搬送部302の入口から画像の記録位置に到達するまでの時間T12(秒)は、下式(7)によって求められる。
【0065】
T12=(L11+La)/S2 ・・・ (7)
La(mm)は、前述した第1の実施形態の場合と同様に、ICカード201の先端から画像の記録開始位置までの間の距離(開始縦座標に相当)である。本例の場合、L11=30(mm)、S2=(200mm/秒)であるため、La=5(mm)のICカード201を処理対象とするときには、T12は0.175(秒)となる。よって、トレイ102上のICカード201が画像の記録開始位置に到達するまでの時間(第2の時間)Tp1は、下式(8)によって求められる。
【0066】
Tp1=T1+T12 ・・・ (8)
図20の部分(d)のように、La=5(mm)のICカード201を処理対象とするときには、Tp1が0.575(秒)となる。また、図20の部分(e)のように、La=30(mm)のICカード201を処理対象とするときには、Tp1が0.7(秒)となる。
【0067】
図21は、ICカード201の給送タイミングを決定する給送タイミング決定処理を説明するためのフローチャートである。
【0068】
まず、1枚目のICカード201−1を給送部109によって給送し(ステップS21)、それを搬送部302により矢印Y方向に搬送して、そのICカード201−1のセンサ304による検出を待つ(ステップS22)。給送部109によって搬送部302の入口に給送されたICカード201は、搬送部302によって、直ちに矢印Y方向に搬送されるものとする。センサ304がICカード201−1を検出したときに、2枚目以降のICカード201−2,201−3・・・に関するジョブ開始コマンド1005を受信しているか否かを判定する(ステップS23)。つまり、処理対象のICカード201(記録媒体)として2枚目以降が存在するか否かを判定する。2枚目のICカード201−2に関するジョブ開始コマンド1005を受信しない場合には、次のICカード201を給送することなく処理を終了する。
【0069】
2枚目のICカード201−2に関するジョブ開始コマンド1005を受信した場合には、1枚目のICカード201−1について、トレイ102から電子情報書込み位置まで搬送させるまでに要する時間Tr1を算出する(ステップS24)。さらに、2枚目のICカード201−2について、トレイ102上のICカード201−2が画像の記録開始位置に到達するまでの時間Tp1を算出する(ステップS24)。すなわち、2枚目のICカード201−2に関するフォーマットコマンド1002によって指定された開始縦座標1010(図10参照)を用いて、2枚目のICカード201−2についての時間Tp1を算出する(ステップS24)。
【0070】
その後、ICカード201−1についての時間Tr1と、ICカード201−2についての時間Tp1と、を比較する。そして、Tp1>Tr1のときには給送開始タイマーを「1」に設定し(ステップS26)、Tp1≦Tr1のときには給送開始タイマーを「Tr1−Tp1」を設定する(ステップS27)。Tp1>Tr1のときは、先行する1枚目のICカード201−1がセンサ304の位置に到達した時点において、後続の2枚目のICカード201−2の給送を開始したとしても問題がない。つまり、図20の部分(d),(e)のように、2枚目のICカード201−2が画像の記録に到達する前に、1枚目のICカード201−1が電子情報書き込み位置に到達するからである。したがって、Tp1>Tr1のときには、先行のICカード201−1がセンサ304の位置に到達したときに、後続のICカード201−2の給送を開始するように、給送開始タイマーを「1」に設定する。1枚目のICカード201−1が電子情報書き込み位置に到達したときには、前述した実施形態と同様に、搬送部302が搬送動作を一時的に休止する。一方、Tp1≦Tr1のときは、ICカード201−1がセンサ304の位置に到達してから、「Tr1−Tp1」の時間の経過を待ってから、ICカード201−2の給送を開始するように、給送開始タイマーを「Tr1−Tp1」に設定する。
【0071】
このように本実施形態の記録装置によれば、図20の部分(d),(e)のように、先行のICカード201−1が電子情報書き込み位置に到達すると同時に、後続のICカード201−2を画像の記録位置に到達させることができる。したがって、ICカードを効率良く発行することができる。
【0072】
(他の実施形態)
前述した実施形態では、通信アンテナ303の中央部とICカード201の中央部とが対向する位置を電子情報書込み位置とした。しかし、本発明はこの限りではなく、例えば、ICカード201の先端部が通信アンテナ303の中央部と対向する位置を電子情報書込み位置としてもよい。
【0073】
また前述した実施形態では、ICカードの給送時および搬送時に、ローラの滑り等に起因する給送遅延および搬送遅延が生じないものとして説明した。しかし、そのような給送遅延および搬送遅延が生じる場合には、それらの遅延時間を考慮して、ICカードの給送タイミングおよび搬送タイミングを最適に設定することができる。また前述した実施形態の説明においては、ICカードに電子情報が書込まれた後に、そのICカードの搬送を再開する際の加速度と、ICカードを電子情報書込み位置に停止させる際の減速度と、について言及しなかった。ICカードの給送タイミングおよび搬送タイミングは、これらの加速度および減速度に応じて最適に設定することができる。
【0074】
また記録部は、インクジェット記録ヘッドを用いることにより、ICカードを高速搬送中に画像を記録することができる。また、ICカードに対する電子データの書込み時には、必ずしもICカードの搬送動作を停止させる必要はない。つまり、ICカードが停止中のみならず、それが画像の記録時よりも低速度で搬送中のときに電子データを書き込みこともできる。
【0075】
また、本発明においては、記録装置に接続されるホスト装置が前述した記録装置の機能の少なくとも一部を持つように構成してもよい。また、本発明の形態としては、上述した記録装置におけるICカードの給送タイミングの制御をコンピュータによって実施するためのプログラム、および、そのプログラムを格納した記憶媒体を含むことができる。
【符号の説明】
【0076】
100,101 記録装置
102 トレイ
108 記録部
109 給紙部
201 ICカード(記録媒体)
202 ループアンテナ
203 ICチップ
302 搬送部
303 通信アンテナ
304 用紙センサ
305 搬送ローラ
Bk 記録ヘッド(ブラック)
C 記録ヘッド(シアン)
M 記録ヘッド(マゼンタ)
Y 記録ヘッド(イエロー)
505 紙面センサ
801 メインコントローラ
802 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子情報を記憶する記憶部を有する複数のICカードを、トレイ上から1枚ずつ給送する給送手段と、
前記給送手段によって給送されたICカードが載置される無端ベルトを備え、前記無端ベルト上に載置された前記ICカードを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって所定の電子情報書込み位置に搬送された前記ICカードの前記記憶部に対して、前記電子情報を書込む書込み手段と、
前記搬送手段によって前記電子情報書込み位置よりも前記搬送方向の下流側にある所定の画像記録位置に搬送された前記ICカードの画像記録領域に対して、画像を記録する記録手段と、
前記給送手段が前記搬送手段に対して前記ICカードを給送する給送タイミングを制御する制御手段と、
を備えたICカード用記録装置であって、
前記制御手段は、前記搬送手段によって先に搬送される先行のICカードに対する前記電子情報の書き込みが終了してから、前記先行のICカードに対する前記画像の記録が終了するまでの間の第1の時間を算出し、算出された前記第1の時間に基づいて、前記搬送手段によって前記先行のICカードの後に搬送される後続のICカードを前記給送手段から前記搬送手段に給送する前記給送タイミングを変更することを特徴とするICカード用記録装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記後続のICカードを前記トレイ上から前記電子情報書込み位置まで搬送するために要する第2の時間を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間未満のときは、前記先行のICカードを前記電子情報書込み位置から前記画像記録位置に向かって搬送させる時期を前記後続のICカードの前記給送タイミングとし、前記第1の時間が前記第2の時間以上のときは、前記先行のICカードを前記電子情報書込み位置から前記画像記録位置に向かって搬送させてから、前記第1の時間と前記第2の時間との差分の時間が経過した時期を、前記後続のICカードの前記給送タイミングとすることを特徴とする請求項1に記載のICカード用記録装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記後続のICカードのサイズに関する情報と、前記後続のICカードに記録する画像のサイズに関する情報と、に基づいて、前記後続のICカードの前記給送タイミングを制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のICカード用記録装置。
【請求項4】
電子情報を記憶する記憶部を有する複数のICカードを、トレイ上から1枚ずつ給送する給送手段と、
前記給送手段によって給送されたICカードが載置される無端ベルトを備え、前記無端ベルト上に載置された前記ICカードを所定の搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって所定の画像記録位置に搬送された前記ICカードの画像記録領域に対して、画像を記録する記録手段と、
前記搬送手段によって前記画像記録位置よりも前記搬送方向の下流側にある所定の電子情報書込み位置に搬送された前記ICカードの前記記憶部に対して、前記電子情報を書込む書込み手段と、
前記給送手段が前記搬送手段に対して前記ICカードを給送する給送タイミングを制御する制御手段と、
を備えたICカード用記録装置であって、
前記制御手段は、前記搬送手段によって先に搬送される先行のICカードに対する前記画像の記録が終了してから、前記先行のICカードに対する前記電子情報の書込みが終了するまでの間の第1の時間を算出し、算出された前記第1の時間に基づいて、前記搬送手段によって前記先行のICカードの後に搬送される後続のICカードを前記給送手段から前記搬送手段に給送する前記給送タイミングを変更することを特徴とするICカード用記録装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記後続のICカードを前記トレイ上から前記画像記録位置まで搬送するために要する第2の時間を算出し、前記第1の時間が前記第2の時間未満のときは、前記先行のICカードを前記画像記録位置から前記電子情報書込み位置に向かって搬送させる時期を前記後続のICカードの前記給送タイミングとし、前記第1の時間が前記第2の時間以上のときは、前記先行のICカードを前記画像記録位置から前記電子情報書込み位置に向かって搬送させてから、前記第1の時間と前記第2の時間との差分の時間が経過した時期を、前記後続のICカードの前記給送タイミングとすることを特徴とする請求項4に記載のICカード用記録装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記後続のICカードのサイズに関する情報と、前記後続のICカードに記録する画像のサイズに関する情報と、に基づいて、前記後続のICカードの前記給送タイミングを制御することを特徴とする請求項4または請求項5に記載のICカード用記録装置。
【請求項7】
前記搬送手段は、前記ICカードが前記電子情報書込み位置に到達したときに搬送速度を零とすることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のICカード用記録装置。
【請求項8】
前記記録手段は、インクを吐出可能な記録ヘッドを用いて前記ICカードに画像を記録することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のICカード用記録装置。
【請求項9】
前記ICカードが前記搬送手段によって前記電子情報書込み位置および前記画像記録位置まで搬送されたことを検出する検出手段を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のICカード用記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−146181(P2012−146181A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4864(P2011−4864)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】