説明

ICカード

【課題】 樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができるICカードを提供する。
【解決手段】 本発明のICカードは、ICチップ2と、絶縁基板1及びアンテナ3からなるインレットシートと、第1の樹脂シート4からなるコアシート部と、第2の樹脂シート5からなるオーバーシート部と、接着剤シート6で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種証明書や電子決済システム、ドアの開閉システム等に使用されるICカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカードは、情報記録媒体として様々な分野で利用されており、例えば、学生証、社員証、免許証などの個人身分証明書等に用いられている。ICカードには、カード基材にICチップとアンテナを内蔵し、電波を用いて外部機器との情報のやり取りを行う非接触型ICカードと、ICチップと電気的に接続する外部接触端子を備え、ICチップを樹脂封止して内蔵したICモジュールをカード基材に設け、外部接触端子を介して外部機器との情報のやり取りを行う接触型ICカードと、非接触型ICカード及び接触型ICカードの両方の通信手段を備えた、接触非接触共用型ICカードがある。
【0003】
非接触型ICカードは、一般に、電気的に接続したICチップとアンテナを樹脂シートで挟んで積層一体化して作製される。接触型ICカードは、一般に、樹脂シートを積層一体化してカード基材を作製し、このカード基材にICモジュールを挿入する凹部を設け、この凹部にICモジュールを挿入し、カード基材に接着して作製される。接触非接触共用型ICカードは、一般に、アンテナを樹脂シートで挟んで積層一体化してカード基材を作製し、カード基材のアンテナを埋設した箇所に、非接触型ICカード及び接触型ICカードの両方の通信手段を備えたICモジュールを挿入する凹部を設け、凹部に両方の通信手段を備えたICモジュールを挿入し、カード基材に埋設したアンテナとICモジュールを電気的に接続するとともに、カード基材に接着して作製される。
【0004】
ICカードを構成するカード基材は、一般に、樹脂シートを複数枚、積層一体化して作製され、カード基材の厚みの大半を占め、カード基材の剛性等のICカードとしての機械的強度を担うコアシート部と、コアシート部の表面に施された印刷を保護する目的や、昇華印刷等の加熱方式印刷に適した印刷適性を付加する為にコアシート部の両面に設けられた、厚みの薄いオーバーシート部とで構成される。
【0005】
カード基材用の樹脂シートとしては、従来、ポリ塩化ビニル(PVC)製のシートが主流であったが、近年、環境保護の観点からハロゲンを用いない素材への代替の要望が高くなり、ポリエステル系樹脂製のシートに主流が代わってきている。ポリエステル系樹脂製のシートとしては、非晶性でPVCに近い加工特性を有する点から1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合成分として含む共重合ポリエステル(PETG)シート、あるいは、汎用性の点から二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)シートが主に用いられている。
【0006】
PETGシートは、熱融着機能を有しており、複数枚重ねて加熱し加圧することで、接着剤を介さずに積層一体化することができる。一方、PETシートは、熱融着性を有しておらず、一般に、ホットメルト等の接着剤シートをPETシート間に介在させ、加熱し加圧して積層一体化させる必要がある。
【0007】
コアシート部及びオーバーシート部は、コアシート部を1つの種類の樹脂シートで構成し、オーバーシート部を1つの種類の樹脂シートで構成していれば良く、コアシート部の樹脂シートとオーバーシート部の樹脂シートを異なる種類の樹脂シートとしても良い。
【0008】
非接触型ICカード及び接触非接触共用型ICカードに用いるアンテナは、一般に、被覆された導線(例えばエナメル線)を同一面上に巻き回して作製した巻線アンテナや、PETやポリイミド等の樹脂からなる絶縁基板上に、積層された銅箔やアルミ箔などの金属箔をエッチング加工して作製したエッチングアンテナや、絶縁基板上に導電性ペーストを印刷して形成した印刷アンテナ等が用いられ、無線通信に用いる電波の周波数によって選択される。
【0009】
近年、アンテナの小型化の要求に伴い、無線通信に用いる電波の周波数帯域は、13.56MHz、860〜960MHzのUHF帯、2.45GHz等のマイクロ波帯が用いられてきている。これらの周波数帯に用いられるアンテナは厚みが薄く、一般に、アンテナの形状を保持する為に絶縁基板の上に形成される。例えば、PETやポリイミド等の樹脂シートを絶縁基板としたアンテナ(以下インレットシートと記載する)が用いられている。
【0010】
インレットシートと樹脂シートの積層一体化は、樹脂シートに熱融着性を有するPETGシートを用いた場合でも、インレットシートの絶縁基板及びアンテナとの接着性を得ることが容易ではなく、インレットシートとの接着が不完全となる可能性があり、PETシートの積層一体化と同様に、ホットメルト等の接着剤シートを介在させ、加熱し、加圧することで積層一体化する必要がある。
【0011】
インレットシートと樹脂シートの積層一体化は、例えば、インレットシートと樹脂シートの間にホットメルト系の接着剤シートを設けて積み重ね、加熱、加圧し、樹脂シートの温度が、ホットメルト系の接着剤シートと樹脂シートとの接着を可能にする温度(積層温度)に達するまで加熱を続け、既定の温度に達して以降は冷却を行い、樹脂シートの温度が室温程度になった時点で圧力を開放して作製される。この圧力開放にともなって、インレットシートまたは接着剤シートを境にして対向する樹脂シート同士が、積層時の熱により発生した収縮を顕在化させ、その収縮の差がカード基材の反りを発生させる。
【0012】
カード基材の積層一体化において、カード基材の反りを防止する為には、例えば、インレットシートの両側に、同じ厚みで同じ構成の樹脂シート及び接着剤シートを設け、カード基材の厚み方向でほぼ中央にインレットシートを配置する必要がある。
【0013】
しかし、非接触型ICカード及び接触非接触共用型ICカードに用いるICチップ及びICモジュールは、外力に対する損傷防止やセキュリティを目的とした隠蔽性を考慮し、一般に、カード基材の厚み方向で中央部近傍に配置される。それに伴い、アンテナは、ICチップ及びICモジュールと電気的に接続する為に、ICチップ及びICモジュールの厚み分だけ、カード基材の厚み方向で中央部よりずらして配置する必要があり、積層一体化して作製したカード基材に反りが発生するという問題があった。
【0014】
更に、樹脂シートの熱による収縮は、熱が加わる度に発生し、カード製造時のカード基材の反りを抑えたICカードであっても、昇華型再転写プリンタや熱溶融型再転写プリンタ等を用いた加熱方式印刷によって、カード基材の一方の面のみに熱が加わることで、カード基材の片面にのみ収縮が生じ、カード基材の反りを発生させるという問題があった。
【0015】
これらのICカードのカード基材の反りに対して、元の形状に復元できるICカードが、例えば、特許文献1に開示されている。
【0016】
特許文献1には、インレットシートに銅系形状記憶合金から形成した平面状アンテナコイルが使用されているので、平面状態を維持する形状記憶性を有し、ICカードの後加工または使用状態において熱的影響で、カード基材の反り(カール)変形を受けた場合には、カード内部から反りを元の平面状態に戻す復元力が働くので、カードの反りを最小限に抑えることができる非接触型ICカード及び接触非接触共用型ICカードが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2006−139330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載のように、銅系形状記憶合金からなる金属箔で作製したアンテナの矯正力で、ICカードのカード基材に発生した反りを復元させる技術では、カード基材にアンテナを有しない接触型ICカードに適用できない。また、非接触型ICカード及び接触非接触共用型ICカードにおいて、アンテナで十分な矯正力を得る為に、アンテナを構成する金属箔の厚みを厚くするとともに、金属箔の面積を大きくしなければならない場合があり、それによってアンテナ形状が限定されることとなり、任意の周波数帯域を用いることができないという問題があった。
【0019】
本発明は、上記課題を解決し、樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができるICカードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、形状記憶ポリマーからなり、融点以上の温度で平坦なシート状に形成した樹脂シートを、カード基材を構成するコアシート部に用いる。
【0021】
形状記憶ポリマーは、融点以上の温度で形成した形状を記憶することができる。更に、ガラス転移温度(以下Tgと記載する)以上で融点未満の温度範囲において、融点以上の温度で記憶した形状を自由な形状に変形させることができ、この変形させた状態を維持したままTg未満の温度に冷却することで、この変形を固定することができる。更に、Tg未満の温度に冷却して変形を固定させたものに、外力を加えない状態で、Tg以上で融点未満の温度範囲に加熱することによって、融点以上の温度で記憶した形状に復元することができるという特性を有する。
【0022】
更に、形状記憶ポリマーは、Tgを境に大きく弾性率が変化するものであり、Tg以上融点未満の温度範囲ではゴムのような柔軟性を示めす状態(ゴム状態)となり、Tg未満の温度では硬く変形し難い状態(ガラス状態)となる。
【0023】
本発明では、カード基材のコアシート部に、加熱方式印刷の加熱温度以上のTgを有する形状記憶ポリマーで構成され、融点以上の温度で平坦なシート状に形成した樹脂シートを用い、積層一体化時の積層温度を形状記憶ポリマーのTg以上融点未満とし、加圧しながら樹脂シートを積層温度まで加熱した後、加圧した状態で形状記憶ポリマーのTg以下に冷却してカード基材を作製しており、本発明のコアシート部には、従来のコアシート部のように積層一体化時の熱による大きな収縮が発生せず、本発明のカード基材は、カード基材の中心部にインレットシートが配置されていなくとも、反りの発生を抑えることができる。
【0024】
更に、本発明では、コアシート部の樹脂シートを構成する形状記憶ポリマーのTgを、昇華型再転写印刷や熱溶融型再転写印刷等に代表される、加熱方式印刷の加熱温度以上とすることで、本発明のコアシート部には、従来のコアシート部のように加熱方式印刷の熱による大きな収縮が発生せず、本発明のコアシート部は、平坦な状態を保つことができ、加熱方式印刷時のカード基材の反りを抑えることができる。
【0025】
更に、本発明では、ICカードの保管環境や使用環境において、カード基材に反りが発生した場合でも、無負荷状態で、Tg以上融点未満にカード基材を加熱することで、本発明のコアシート部は、融点以上の温度で形成した平坦な状態に復元することができ、カード基材を平坦に矯正することができる。
【0026】
本発明によれば、第1の樹脂シートで構成するコアシート部と、前記コアシート部を挟む第2の樹脂シートで構成するオーバーシート部と、前記コアシート部と前記オーバーシート部の間に介在し接合する接着剤シートとを有するカード基材、及びICチップまたはICモジュールを備えたICカードであって、前記第1の樹脂シートは、加熱方式印刷の加熱温度以上のガラス転移温度を有する形状記憶ポリマーで構成され、前記形状記憶ポリマーの融点以上の温度で平坦なシート状に形成してなり、前記カード基材は、加圧しながら前記ガラス転移温度以上前記融点未満の積層温度まで加熱し、加圧した状態で前記ガラス転移温度以下に冷却し積層一体化したことを特徴とするICカードが得られる。
【0027】
また、本発明によれば、前記ICチップ、及び前記ICチップと電気的に接続したアンテナを前記カード基材の内部に埋設したことを特徴とする上記のICカードが得られる。
【0028】
また、本発明によれば、前記カード基材の内部に前記ICモジュールと電気的に接続するアンテナを埋設し、前記カード基材の一方の面の前記アンテナの末端近傍に、前記ICモジュールを挿入する凹部及び前記アンテナの末端を露出させる凹部を設け、前記アンテナの末端を露出させる凹部にハンダペーストを充填し、前記ICモジュールを挿入する凹部に前記ICモジュールを挿入し接着するとともに、前記ハンダペーストを介して前記アンテナと前記ICモジュールを電気的に接続したことを特徴とする上記のICカードが得られる。
【0029】
また、本発明によれば、前記カード基材の一方の面に凹部を設け、前記ICモジュールを挿入し接着したことを特徴とする上記のICカードが得られる。
【0030】
また、本発明によれば、前記オーバーシート部は、少なくとも一方の面に、加熱による文字及び画像の印刷が可能な面を設けたことを特徴とする上記のICカードが得られる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カード基材のコアシート部に、加熱方式印刷の加熱温度以上のTgを有する形状記憶ポリマーで構成され、融点以上の温度で平坦なシート状に形成した樹脂シートを用い、積層一体化時の積層温度を形状記憶ポリマーのTg以上融点未満とし、加圧しながら樹脂シートを積層温度まで加熱した後、加圧した状態で形状記憶ポリマーのTg以下に冷却してカード基材を作製することにより、本発明のコアシート部には従来のコアシート部のように積層一体化時の熱による大きな収縮が発生しないので、カード基材の中心部にインレットシートが配置されていなくとも、カード基材の反りの発生を抑えることができるICカードが得られる。
【0032】
更に、本発明によれば、本発明のコアシート部には、従来のコアシート部のように加熱方式印刷の熱による大きな収縮が発生しないので、本発明のコアシート部は、平坦な状態を保つことができ、加熱方式印刷時のカード基材の反りを抑えることができるICカードが得られる。
【0033】
更に、本発明によれば、無負荷状態で、Tg以上融点未満にカード基材を加熱することで、本発明のコアシート部は、融点以上の温度で形成した平坦な状態に復元することができるので、カード基材に発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができるICカードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明のICカードの第1の実施の形態を説明する図で、図1(a)はICカードの断面図、図1(b)はICカードの構成を説明する断面図である。
【図2】本発明のICカードの第2の実施の形態を説明する図で、図2(a)はICカードの断面図、図2(b)は積層工程を説明するカード基材の断面図である。
【図3】本発明のICカードの第2の実施の形態に係るカード基材の製造工程を説明する図で、図3(a)はICモジュール用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図、図3(b)はハンダペースト用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図である。
【図4】本発明のICカードの第3の実施の形態を説明する図で、図4(a)はICカードの断面図、図4(b)は積層工程を説明するカード基材の断面図、図4(c)はモジュール用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0036】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態では、非接触型ICカードを説明する。図1は、本発明のICカードの第1の実施の形態を説明する図であり、図1(a)は、ICカードの断面図であり、図1(b)はICカードの構成を説明する断面図である。
【0037】
本発明の第1の実施の形態に係るICカードは、図1(a)のように、ICチップ2と、絶縁基板1及びアンテナ3からなるインレットシートと、第1の樹脂シート4からなるコアシート部と、第2の樹脂シート5からなるオーバーシート部と、接着剤シート6で構成される。
【0038】
本発明の第1の実施の形態に係るICカードは、図1(b)のように、第1の樹脂シート4の両面に接着剤シート6を設け、この第1の樹脂シート4で、ICチップ2と電気的に接続されたアンテナ3を絶縁基板1の一方の面に設けて作製したインレットシートを挟み、更に、この第1の樹脂シート4に第2の樹脂シート5を重ね、加圧しながら積層温度まで加熱し、その後加圧したまま冷却して積層一体化し、カード基材を作製して得る。
【0039】
尚、本発明の第1の実施の形態に係るICカードにおいて、ICチップ2及びアンテナ3を設けたインレットシートの面に重ねる第1の樹脂シート4、及び第1の樹脂シート4に設けた接着剤シート6には、ICチップ2が埋設される部分に、貫通孔又は凹部を予め設けても良い。
【0040】
ICチップ2は、非接触通信機能を有するものであれば良く、何れの周波数を用いたものでも良い。小型化等を考慮すれば、例えば、13.56MHz、960MHz、2.45GHz等の周波数を用いた非接触通信機能を有するICチップを用いることができ、適宜選択するのが良い。
【0041】
アンテナ3は、ICチップ2の通信周波数及び通信特性に合わせて、適宜選択するのがよい。例えば、図1のように、銅箔やアルミ箔などの金属箔をエッチング加工して作製したエッチングアンテナが良く、他に被覆された導線を巻き回して作製した巻線アンテナ、導電性ペーストを印刷して形成した印刷アンテナ等を用いることができる。尚、巻線アンテナにおいて、形状記憶性のある銅系合金材料からなる導線を用いても良い。
【0042】
絶縁基板1は、絶縁性を有する樹脂シートであれば良く、例えば、PETやポリイミド等の樹脂シートを用いることができ、適宜選択するのが良い。尚、積層一体化において、アンテナの形状が保てるのであれば、絶縁基板1を用いずとも良く、第1の樹脂シート4に設けた接着剤シート6の表面にアンテナ3を設けても良い。
【0043】
第1の樹脂シート4は、昇華型再転写プリンタや熱溶融型再転写プリンタ等を用いた加熱方式印刷の加熱温度以上のTgを有する形状記憶ポリマーで構成され、形状記憶ポリマーの融点以上の温度で平坦なシート状に形成した樹脂シートであれば良く、形状記憶ポリマーとしては、例えば、ポリノルボルネン系ポリマーやポリウレタン系ポリマー等を用いることができる。形状記憶ポリマーのTgは、例えば、加熱方式印刷の加熱温度が100℃である場合、110℃とすることができる。
【0044】
第2の樹脂シート5は、少なくとも一方の面に、加熱による文字及び画像の印刷が可能な面、いわゆる受像層を有する樹脂シートであれば良く、例えば、PVCシート、PETGシート、受像層を設けたPETシート等を用いることができる。
【0045】
接着剤シート6は、第1の樹脂シート4及び第2の樹脂シート5との接着性を有するものであれば良く、第1の樹脂シート4及び第2の樹脂シート5の材質を考慮して選択するのが良く、例えば、ポリアミド系、ポリウレタン系、ポリエステル系、EVA系のホットメルトシート等を用いることができる。尚、接着剤シートの代わりとして、第1の樹脂シート4または第2の樹脂シート5の面に、硬化性の接着剤をシルクスクリーン印刷やグラビア印刷にて形成しても良い。
【0046】
本発明のICカードを構成するカード基材を積層一体化して作製する際の積層温度は、第1の樹脂シート4のTg以上であり、第1の樹脂シート4の融点未満の温度範囲であればよく、適宜選択できる。
【0047】
上述のような構成により、樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができる非接触型ICカードが得られる。
【0048】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、接触非接触共用型ICカードを説明する。図2は、本発明のICカードの第2の実施の形態を説明する図であり、図2(a)は、ICカードの断面図であり、図2(b)は、積層工程を説明するカード基材の断面図である。
【0049】
図3は、本発明のICカードの第2の実施の形態に係るカード基材の製造工程を説明する図である。図3(a)は、ICモジュール用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図であり、カード基材の一方の面に、ICモジュールを挿入して接着する為の凹部を設けるミリング工程を説明する図である。図3(b)は、ハンダペースト用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図であり、ICモジュール用の凹部のアンテナ末端部に、ハンダペーストを充填する為の凹部を設けるミリング工程を説明する図である。
【0050】
本発明の第2の実施の形態に係るICカードは、図2(a)のように、アンテナ接続端子11aを有する基板部15a及びモールド部16aを備えたICモジュール8aと、アンテナ末端部9aを有するアンテナ3a及び絶縁基板7aからなるインレットシートと、第1の樹脂シート4aからなるコアシート部と、第2の樹脂シート5aからなるオーバーシート部、接着剤シート6a、ハンダペースト10aで構成される。
【0051】
本発明の第2の実施の形態に係るICカードは、図2(b)のように、第1の樹脂シート4aの両面に接着剤シート6aを設け、この第1の樹脂シート4aで、アンテナ末端部9aを有するアンテナ3aを絶縁基板7aの一方の面に設けて作製したインレットシートを挟み、更に、この第1の樹脂シート4aに第2の樹脂シート5aを重ね、加圧しながら積層温度まで加熱し、その後加圧したまま冷却し、積層一体化してカード基材を作製する。
【0052】
次に、図3(a)のように、作製したカード基材の一方の面のアンテナ末端部9aの近傍に、ICモジュール8aを挿入する段付きの凹部13aを設ける。
【0053】
次に、図3(b)のように、作製した段付きの凹部13aのアンテナ末端部9aが埋設してある箇所に、アンテナ末端部9aを露出させる凹部14aを設け、凹部14aにハンダペースト10a(図2(a)参照)を充填した後、段付きの凹部13aにICモジュール8aを挿入し、ICモジュール8aを加熱することでハンダペースト10aに熱を加え、アンテナ末端部9aをアンテナ接続端子11aにハンダ付けし、ICモジュール8aをカード基材に熱圧着し、接着して作製する。尚、ICモジュール8aのカード基材への接着は、接着剤シートを用いても良く、例えば、EVA系のホットメルトシート等を用いることができる。
【0054】
ICモジュール8aは、接触通信機能及び非接触通信機能を有するICチップと、このICチップを樹脂封止したモールド部16aと、外部接触端子及びアンテナと電気的に接続するアンテナ接続端子11aを有する基板部15aを備えたICモジュールであれば良く、適宜選択できる。非接触通信機能においては、何れの周波数を用いたものでも良く、小型化等を考慮すれば、例えば、13.56MHz、960MHz、2.45GHz等の周波数を用いたICモジュールを用いることができる。
【0055】
アンテナ3aは、ICモジュール8aの通信周波数及び通信特性に合わせて、適宜選択するのがよい。例えば、図2及び図3のように、被覆された導線を巻き回して作製した巻線アンテナが良く、他に、銅箔やアルミ箔などの金属箔をエッチング加工して作製したエッチングアンテナ、導電性ペーストを印刷して形成した印刷アンテナ等を用いることができる。尚、巻線アンテナにおいて、形状記憶性のある銅系合金材料からなる導線を用いても良い。
【0056】
絶縁基板7aは、第1の実施の形態で用いた絶縁基板1と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0057】
第1の樹脂シート4aは、第1の実施の形態で用いた第1の樹脂シート4と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0058】
第2の樹脂シート5aは、第1の実施の形態で用いた第2の樹脂シート5と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0059】
接着剤シート6aは、第1の実施の形態で用いた接着剤シート6と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0060】
ハンダペースト10aは、アンテナ接続端子11aとアンテナ末端部9aの電気的接続に用いるものであり、アンテナ3aを埋設しているカード基材への影響を避ける為に、できるだけ低い温度でハンダ付けできるハンダペーストが好ましく、適宜選択するのが良い。
【0061】
本発明のICカードを構成するカード基材を積層一体化して作製する際の積層温度は、第1の樹脂シート4aのTg以上であり、第1の樹脂シート4aの融点未満の温度範囲であればよく、適宜選択できる。
【0062】
上述のような構成により、樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができる接触非接触共用型ICカードが得られる。
【0063】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態では、接触型ICカードを説明する。図4は、本発明のICカードの第3の実施の形態を説明する図であり、図4(a)は、ICカードの断面図であり、図4(b)は、積層工程を説明するカード基材の断面図である。図4(c)は、ジュール用の凹部を設ける工程を説明するカード基材の断面図であり、カード基材の一方の面に、ICモジュールを挿入して接着する為の凹部を設けるミリング工程を説明する図である。
【0064】
本発明の第3の実施の形態に係るICカードは、図4(a)のように、基板部15b及びモールド部16bを備えたICモジュール8bと、第1の樹脂シート4bからなるコアシート部と、第2の樹脂シート5bからなるオーバーシート部、接着剤シート6b、接着剤12bで構成される。
【0065】
本発明の第3の実施の形態に係るICカードは、図4(b)のように、コアシート部となる第1の樹脂シート4bを接着剤シート6bで挟み、第1の樹脂シート4bの両面に設けた接着剤シート6bにそれぞれ第1の樹脂シート4bを重ね、加圧しながら積層温度まで加熱し、その後加圧したまま冷却し、積層一体化してカード基材を作製する。尚、第1の樹脂シート4bは、1枚でコアシート部として必要な厚みを構成しても良く、あるいは複数枚で構成してもよい。
【0066】
次に、図4(c)のように、作製したカード基材の一方の面に、ICモジュール8bを挿入する段付きの凹部13bを設け、ICモジュール8bの鍔状になった基板部15bに接着剤12b(図4(a)参照)を塗布した後、段付きの凹部13bに挿入して、カード基材にICモジュール8bを接着して作製する。
【0067】
ICモジュール8bは、接触通信機能有するICチップと、このICチップを樹脂封止したモールド部16bと、外部接触端子を有する基板部15bを備えたICモジュールであれば良く、適宜選択できる。
【0068】
第1の樹脂シート4bは、第1の実施の形態で用いた第1の樹脂シート4と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0069】
第2の樹脂シート5bは、第1の実施の形態で用いた第2の樹脂シート5と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0070】
接着剤シート6bは、第1の実施の形態で用いた接着剤シート6と同様のものを用いる事ができ、適宜選択するのが良い。
【0071】
接着剤12bは、ICモジュール8bの基板部とカード基材を接着するものであり、ICモジュール8bの基板部の材質とカード基材を構成する第1の樹脂シート4b及び第2の樹脂シート5bの材質を考慮して選択するのが良い。例えば、熱硬化性樹脂系接着剤、ホットメルト系接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤等を用いることができる。
【0072】
本発明のICカードを構成するカード基材を積層一体化して作製する際の積層温度は、第1の樹脂シート4bのTg以上であり、第1の樹脂シート4bの融点未満の温度範囲であればよく、適宜選択できる。
【0073】
上述のような構成により、樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができる接触型ICカードが得られる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0075】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1に係るICカードについて説明する。本発明の実施例1に係るICカードは、図1のように、960MHzの周波数の電波で無線通信ができるICチップ2を用いた。次に、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚みが50μmのPETシートを絶縁基板1とし、絶縁基板1の一方の面に厚みが35μmの銅箔を貼り合わせ、既存のエッチング技術を基に、銅箔面にアンテナパターンを印刷した後、不要な銅箔部分を除去し、平面状アンテナからなるアンテナ3を絶縁基板1の上に作製した。
【0076】
次に、アンテナ3とICチップ2を電気的に接続するとともに、ICチップ2を絶縁基板1の上に設置し、インレットシートを作製した。
【0077】
次に、ICカードへの加熱方式印刷には、加熱温度が80℃以下の昇華型再転写プリンタを用いた印刷を行う事とし、第1の樹脂シート4を構成する樹脂として、Tgが90℃であり、融点が170℃のポリウレタン系形状記憶ポリマーを用い、熱プレス機で、ポリウレタン系形状記憶ポリマーを180℃まで加熱するとともに、圧力0.5MPaで加圧し、加圧したまま室温まで冷却し、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが300μmの平坦なシートと、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが100μmの平坦なシートを作製し、第1の樹脂シート4とした。
【0078】
次に、作製した厚さが300μmの第1の樹脂シート4、及び厚さが100μmの第1の樹脂シート4を、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが30μmのポリウレタン系のホットメルトシートからなる接着剤シート6で挟み、作製したインレットシートのアンテナ3とICチップ2が設けてある面に、接着剤シート6で挟んだ厚みが300μmの第1の樹脂シート4を重ね、それとは反対のインレットシートの面に、接着剤シート6で挟んだ厚みが100μmの第1の樹脂シート4を重ねた。
【0079】
次に、第1の樹脂シート4のインレットシートに接していない接着剤シート6の面に、昇華印刷適性を備え、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが125μmのPETGシートからなる第2の樹脂シート5を重ね、熱プレス機で圧力0.6MPaで加圧しながら加熱し、積層温度の120℃まで加熱した後、加圧したまま室温まで冷却し、積層一体化してカード基材を作製した。尚、積層温度は、第1の樹脂シート4を構成するポリウレタン系形状記憶ポリマーのTgが90℃であり、融点が170℃であることから、120℃とした。
【0080】
次に、カード打ち抜き機を用いて、長さ方向の寸法が85.60mmで、幅方向の寸法が54.00mmのカードに打ち抜き、非接触型ICカードを作製した。ICカードの寸法は、JIS規格によれば、長さ方向の寸法は85.47mm以上85.72mm以下であり、幅方向の寸法は53.92mm以上54.03mm以下である。
【0081】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2に係るICカードについて説明する。本発明の実施例2に係るICカードは、図2のように、外部接触端子及びアンテナと電気的に接続するアンテナ接続端子11aを有するガラスエポキシ基板からなる基板部15aに、接触通信機能、及び13.56MHzの周波数の電波で無線通信ができるICチップを設置し、このICチップを樹脂封止してなるモールド部16aを備えたICモジュール8aを用いた。
【0082】
次に、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚みが125μmのPETGシートを絶縁基板7aとし、線径が100μmのウレタン被膜銅線をループ状に巻いてアンテナ3aを作製し、アンテナ3aを温度100℃まで加熱した後、圧力0.3MPaで加圧して絶縁基板7aに埋め込み、インレットシートを作製した。
【0083】
次に、ICカードへの加熱方式印刷には、加熱温度が80℃以下の昇華型再転写プリンタを用いた印刷を行う事とし、第1の樹脂シート4aを構成する樹脂として、Tgが90℃であり、融点が170℃のポリウレタン系形状記憶ポリマーを用い、熱プレス機で、ポリウレタン系形状記憶ポリマーを180℃まで加熱するとともに、圧力0.5MPaで加圧し、加圧したまま室温まで冷却し、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが180μmの平坦なシートを作製し、第1の樹脂シート4aとした。
【0084】
次に、作製した第1の樹脂シート4aを長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが30μmのポリウレタン系のホットメルトシートからなる接着剤シート6aで挟み、作製したインレットシートの両面面に接着剤シート6aで挟んだ第1の樹脂シート4aを重ねた。
【0085】
次に、第1の樹脂シート4aのインレットシートに接していない接着剤シート6aの面に、昇華印刷適性を備え、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが100μmのPETGシートからなる第2の樹脂シート5aを重ね、熱プレス機で圧力0.6MPaで加圧しながら加熱し、積層温度の120℃まで加熱した後、加圧したまま室温まで冷却し、積層一体化してカード基材を作製した。尚、積層温度は、第1の樹脂シート4aを構成するポリウレタン系形状記憶ポリマーのTgが90℃であり、融点が170℃であることから、120℃とした。
【0086】
次に、カード打ち抜き機を用いて、長さ方向の寸法が85.60mmで、幅方向の寸法が54.00mmのカードに打ち抜き、図3のように、作製したカード基材の一方の面のアンテナ末端部9aの近傍に、ミリング加工機で、ICモジュール8aを挿入する段付きの凹部13aを作製した。
【0087】
次に、作製した段付きの凹部13aのアンテナ末端部9aが埋設してある箇所に、ミリング加工機で、アンテナ末端部9aを露出させる凹部14aを作製した。
【0088】
次に、図2のように、溶解温度が135℃であり、Sn(錫)、Bi(ビスマス)、Ag(銀)を含有するハンダペーストをハンダペースト10aとし、作製した凹部14aにハンダペースト10aを充填した後、段付きの凹部13aにICモジュール8aを挿入し、ICモジュール8aの基板部15aを介してハンダペースト10aに熱を加え、アンテナ末端部9aをアンテナ接続端子11aにハンダ付けするとともに、ICモジュール8aをカード基材に熱圧着し接着して、接触非接触共用型ICカードを作製した。
【0089】
(実施例3)
以下、本発明の実施例3に係るICカードについて説明する。本発明の実施例3に係るICカードは、図4のように、外部接触端子を備えたガラスエポキシ基板からなる基板部15bに接触通信機能を有するICチップを設置し、このICチップを樹脂封止してなるモールド部16aを備えたICモジュールをICモジュール8bとした。
【0090】
次に、ICカードへの加熱方式印刷には、加熱温度が80℃以下の昇華型再転写プリンタを用いた印刷を行う事とし、第1の樹脂シート4bを構成する樹脂として、Tgが90℃であり、融点が170℃のポリウレタン系形状記憶ポリマーを用い、熱プレス機で、ポリウレタン系形状記憶ポリマーを180℃まで加熱するとともに、圧力0.5MPaで加圧し、加圧したまま室温まで冷却し、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが500μmの平坦なシートを作製し、第1の樹脂シート4bとした。
【0091】
次に、作製した第1の樹脂シート4bを長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが30μmのポリウレタン系のホットメルトシートからなる接着剤シート6bで挟み、挟んだ接着剤シート6aに、昇華印刷適性を備え、長さ寸法が100mmであり、幅寸法が70mmであり、厚さが150μmのPETGシートからなる第2の樹脂シート5bを上下に重ね、熱プレス機で圧力0.6MPaで加圧しながら加熱し、積層温度の120℃まで加熱した後、加圧したまま室温まで冷却し、積層一体化してカード基材を作製した。尚、積層温度は、第1の樹脂シート4bを構成するポリウレタン系形状記憶ポリマーのTgが90℃であり、融点が170℃であることから、120℃とした。
【0092】
次に、カード打ち抜き機を用いて、長さ方向の寸法が85.60mmで、幅方向の寸法が54.00mmのカードに打ち抜き、ミリング加工機で、ICモジュール8bを挿入する段付きの凹部13bを作製した。
【0093】
次に、ICモジュール8bの基板部15bに、熱硬化性のエポキシ接着剤からなる接着剤12bを塗布した後、段付きの凹部13bにICモジュール8bを挿入し、ICモジュール8bのガラスエポキシ基板を介して接着剤12bに熱を加え、ICモジュール8bをカード基材に固着して、接触型ICカードを作製した。
【0094】
(比較例)
次に、比較例として、上述の実施例1乃至3のICカードのコアシート部にPETGシートを用い、実施例1乃至3と同一の製造条件で、従来の非接触型ICカード、接触非接触共用型ICカード、接触型ICカードを作成した。
【0095】
(製造工程後の反りの評価)
次に、上述の実施例1乃至3、及び比較例で作製したICカードの反りを10枚ずつ測定した結果、比較例の何れのICカードにも1〜2mmの反りが発生していたが、実施例1乃至3で作製したICカード全てに、反りは発生しなかった。
【0096】
(加熱方式印刷後の反りの評価)
次に、上述の実施例1乃至3、及び比較例で作製したICカードの一方の面に、昇華型再転写プリンタを用い、加熱温度が80℃での印刷を行った後で、各々のICカードの反りを10枚ずつ測定した結果、比較例の何れのICカードにも2〜3mmの反りが発生していたが、実施例1乃至3で作製したICカード全てに、反りは発生しなかった。
【0097】
(反り復元の評価)
次に、上述の実施例1乃至3、及び比較例で作製したICカードを100℃に加熱して曲げた後、曲げたままの状態で常温まで冷却してICカードを反らせた。次に、反らせたICカードを再度100℃に加熱した後、負荷をかけずに常温まで定盤上に放置して冷却した。次に、各々のICカードの反りを10枚ずつ測定した結果、比較例の何れのICカードにも1〜2mmの反り、及びカード全体に歪みが発生していたが、実施例1乃至3で作製したICカードは、全て平坦なカードに復元した。
【0098】
上述のように、本発明によれば、従来得られなかった、樹脂シートの積層一体化時に発生するカード基材の反りや、加熱して文字及び画像を印刷する加熱方式印刷で発生するカード基材の反りを抑制するとともに、発生した反りを容易に矯正して平坦にすることができる非接触型ICカード、接触非接触共用型ICカード、接触型ICカードが得られた。
【0099】
以上、図面を用いて本発明の実施の形態及び実施例を説明したが、本発明は、これら実施の形態及び実施例に限られるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で部材や構成の変更があっても本発明に含まれる。すなわち、当事者であれば、当然なしえるであろう各種変形、修正もまた本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0100】
1、7a 絶縁基板
2 ICチップ
3、3a アンテナ
4、4a、4b 第1の樹脂シート
5、5a、5b 第2の樹脂シート
6、6a、6b 接着剤シート
8a、8b ICモジュール
9a アンテナ末端部
10a ハンダペースト
11a アンテナ接続端子
12b 接着剤
13a、13b 段付きの凹部
14a 凹部
15a、15b 基板部
16a、16b モールド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の樹脂シートで構成するコアシート部と、前記コアシート部を挟む第2の樹脂シートで構成するオーバーシート部と、前記コアシート部と前記オーバーシート部の間に介在し接合する接着剤シートとを有するカード基材、及びICチップまたはICモジュールを備えたICカードであって、前記第1の樹脂シートは、加熱方式印刷の加熱温度以上のガラス転移温度を有する形状記憶ポリマーで構成され、前記形状記憶ポリマーの融点以上の温度で平坦なシート状に形成してなり、前記カード基材は、加圧しながら前記ガラス転移温度以上前記融点未満の積層温度まで加熱し、加圧した状態で前記ガラス転移温度以下に冷却し積層一体化したことを特徴とするICカード。
【請求項2】
前記ICチップ、及び前記ICチップと電気的に接続したアンテナを前記カード基材の内部に埋設したことを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項3】
前記カード基材の内部に前記ICモジュールと電気的に接続するアンテナを埋設し、前記カード基材の一方の面の前記アンテナの末端近傍に、前記ICモジュールを挿入する凹部及び前記アンテナの末端を露出させる凹部を設け、前記アンテナの末端を露出させる凹部にハンダペーストを充填し、前記ICモジュールを挿入する凹部に前記ICモジュールを挿入し接着するとともに、前記ハンダペーストを介して前記アンテナと前記ICモジュールを電気的に接続したことを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項4】
前記カード基材の一方の面に凹部を設け、前記ICモジュールを挿入し接着したことを特徴とする請求項1に記載のICカード。
【請求項5】
前記オーバーシート部は、少なくとも一方の面に、加熱による文字及び画像の印刷が可能な面を設けたことを特徴とする請求項1乃至4に記載のICカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−96197(P2011−96197A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−252282(P2009−252282)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】