説明

ICチップ、ICチップ用処理プログラム、及びICチップにおける書き込み処理方法

【課題】不揮発性メモリへの書き込み処理が中断された場合であっても、書き換え対象の情報毎に元に戻すか否かを切り分けることが可能なICチップを提供する。
【解決手段】不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域とバックアップ領域を有し、書き込み手段は、前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻す処理を行うものであって、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンド(命令)があった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で不揮発性メモリに情報を書き込む書き込み手段と、を備えるICカードの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ICカードでは、不揮発性メモリへの書き込み処理中の引き抜き等による電源供給の中断に対処するため、トランザクション(Transaction)という仕組みが利用されている。トランザクションとは、特定の一連の処理の開始前もしくは終了後のどちらかの状態のみを取り得る仕組みのことをいう。この仕組みにより、不揮発性メモリに記憶される情報が中途半端な内部状態とならないようにしている。特許文献1には、電源供給が中断した場合に、データの書き込み前の状態に戻すことが記載されている。ただし、書き込まれる情報によっては、例えトランザクション中であったとしても1度不揮発性メモリに書き込まれた情報を処理前の状態に書き戻されてしまうと不都合が起こる場合がある。例えば、認証処理等の失敗回数をカウントするカウンタの値は、元の値に戻っては不都合がある情報である。これに対処しようとしたとき、従来から使用されている1バイト(Byte)単位で書き換えが可能な不揮発性メモリであれば、特定の書き込み時のみバックアップを取らない、という単純な対処が取れた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4195822号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、最近主流になってきている特定のデータブロック(例えば、数十〜数百バイト)単位(所謂、頁単位という)で書き換えるタイプの不揮発性メモリでは、上記と同じ対処では不十分である。なぜならば、そのようなタイプでは、1度ブロック単位で情報(データ)を消去した後に新情報を書き込むことで書き換えを実行しているため、書き換え対象の情報以外のデータブロック内の情報をバックアップしておく必要がある。このバックアップをしない場合は、書き換え中に引き抜き等が生じた際に想定外の情報(つまり、ブロック内の他の情報)が破壊されてしまう恐れがある。一方、バックアップした場合には、途中で処理を中断した際に戻されては不都合がある情報まで処理前の状態に戻ってしまう問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような点等に鑑みてなされたものであり、特定のデータブロック単位で書き換えるタイプの不揮発性メモリへの書き込み処理が中断された場合であっても、書き換え対象の情報毎に元に戻すか否かを切り分けることが可能なICチップ、ICチップ用処理プログラム、及びICチップにおける書き込み処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備えるICチップにおいて、前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有し、前記書き込み手段は、前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻す処理を行うものであって、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップすることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のICチップにおいて、前記書き込み手段は、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報を前記データブロックの単位で前記バックアップ領域にバックアップした後、当該バックアップされた複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報を書き換えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備え、前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有するICチップに含まれるコンピュータを、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップするステップと、前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻すステップと、を実行させることを特徴とするICチップ用処理プログラムである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備え、前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有するICチップにおける書き込み処理方法であって、前記ICチップが、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップするステップと、前記ICチップが、前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻すステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のデータブロック単位で書き換えるタイプの不揮発性メモリへの書き込み処理が中断された場合であっても、書き換え対象の情報毎に元に戻すか否かを切り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ICカードに搭載されるICチップの概要構成例を示すブロック図である。
【図2】ICチップ1のCPU15における書き込み処理を示すフローチャートである。
【図3】書き込み処理において、記憶領域とバックアップ領域に記憶される情報の遷移例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。以下に説明する実施形態は、外部機器との間で接触または非接触で通信を行うICカードに対して本発明を適用した場合の実施の形態である。
【0013】
先ず、図1を参照して、ICカードに搭載されるICチップの構成及び機能等について説明する。図1は、ICカードに搭載されるICチップの概要構成例を示すブロック図である。
【0014】
ICチップ1は、外部機器2(外部)からのコマンドに応じてコマンド処理を実行するものである。外部機器2の例としてはATM、改札機、認証用ゲート等が挙げられる。或いは、ICチップ1が携帯端末に搭載される場合、外部機器2には携帯端末の機能を担うコントローラが該当する。また、外部機器2は、ICチップ1との間で接触または非接触で通信を行うためのリーダーライタを備える。
【0015】
ICチップ1は、図1に示すように、I/Oインターフェイス11、ROM(Read Only Memory)12、EEPROM(Electrical Erasable Programmable Read Only Memory)13、RAM(Random Access Memory)14、及びCPU(Central Processing Unit)15(マイクロコンピュータ)等を備えて構成されている。なお、EEPROM13は、本発明における「情報の書き換え可能な不揮発性メモリ」の一例である。
【0016】
I/Oインターフェイス11は、外部機器2との間でリーダーライタを介して各種信号(リセット、コマンド、クロック等)の入出力を接触または非接触で行う。
【0017】
ROM12又はEEPROM13には、オペレーティングシステム、及びアプリケーションプログラム(本発明のICチップ用処理プログラムを含む)が予め記憶されている。ここで、アプリケーションプログラムは、外部機器2からのコマンド(例えば、書き込みコマンド)に対応するコマンド処理(例えば、書き込み処理)の内容及び実行順序を規定するプログラムである。
【0018】
また、EEPROM13には、書き込み処理により書き込まれる各種情報を記憶する記憶領域と、当該記憶領域への書き込み処理中に当該情報をバックアップ(記憶)するためのバックアップ領域と、を有している。
【0019】
RAM14は、書き込み処理等において情報を一時的に記憶する作業用メモリとして使用される。
【0020】
CPU15は、アプリケーションプログラムを実行することにより「書き込み手段」としての機能を有する。CPU15による書き込み処理では、複数の情報を含むデータブロック(例えば、数十〜数百バイト)(以下、単に、「ブロック」という)の単位で記憶領域に情報を書き込む。また、この書き込み処理では、記憶領域に記憶されている情報(以下、「元情報」という)がブロック単位で消去された後に、書き込みコマンドで指定された新情報が書き込まれる(つまり、書き換え対象の元情報が、書き込みコマンドで指定された新情報に書き換えられる)。
【0021】
また、CPU15は、書き込み処理において、書き込み処理の対象となるブロック単位でバックアップ領域に複数の情報(元情報を含む)をバックアップする。このとき、バックアップされる元情報には、書き換え対象以外の元情報が含まれる場合もある。そして、CPU15は、書き込み処理が中断された場合には、バックアップ領域にバックアップされている情報を記憶領域に書き戻す処理を行う。
【0022】
また、書き込み処理が中断された場合の対処方法として、アトミック(atomic)と、ノンアトミック(non-atomic)の2種類がある。アトミックでは、書き込み処理直前に記憶領域に記憶されていた元情報が、当該記憶領域に書き戻されることが許容される。
【0023】
このようにアトミックの対象の情報は、書き込み処理直前に記憶領域に記憶されていた元情報に書き戻すことが許容される情報である。一方、ノンアトミックでは、書き込み処理直前に記憶領域に記憶されていた元情報が、当該記憶領域に書き戻されることが許容されない(つまり、書き込み処理が中断された場合であっても、書き込みコマンドで指定された新情報により書き換えられるため、場合によっては中途半端な内部状態となる)。このようにノンアトミックの対象の情報は、書き込み処理直前に記憶領域に記憶されていた元情報に書き戻すことが許容されない情報である。ノンアトミックの対象の情報の例としては、認証処理等の失敗回数をカウントするカウンタの値、またはステップを踏む(1→2→3というように)タイプの処理(元のステップに逆戻りすることが許されない)における当該ステップのカウンタの値等が挙げられる。
【0024】
そして、本実施形態において、CPU15は、複数の情報を含むブロックに対して書き込み処理を行う場合には、当該ブロックに含まれる複数の情報のうち、ノンアトミックの対象の情報については書き換え後の新情報(書き込みコマンドで指定された新情報)をバックアップ領域にバックアップする一方、ノンアトミック以外の情報(アトミックの対象の情報と書き換え対象以外の情報の少なくとも何れか一方の情報)については書き換え前の元情報をバックアップ領域にバックアップするようになっている。
【0025】
次に、図2及び図3を参照して、ICチップ1のCPU15における書き込み処理について説明する。図2は、ICチップ1のCPU15における書き込み処理を示すフローチャートである。図3は、書き込み処理において、記憶領域とバックアップ領域に記憶される情報の遷移例を示す図である。
【0026】
なお、図3に示す例においては、説明の便宜上、横1行を1ブロック(例えば、128バイト)とし、1ブロックを3つの領域に分けている。つまり、1ブロックは3つの情報を含む。
【0027】
図2に示す処理は、外部機器2から書き込みコマンドがあった(つまり、I/Oインターフェイス11を介して書き込みコマンドが受信された)場合に開始される。なお、書き込みコマンドには、書き込み対象の新情報(実データ)、当該新情報を書き込むべき記憶領域における位置(アドレス)情報、及び、書き込み対象の新情報がアトミックの対象である否かを示す情報が含まれる。
【0028】
図2に示す処理が開始されると、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロック(書き込み先のブロック)を特定する(ステップS1)。次いで、CPU15は、書き込み対象の新情報がアトミックの対象である否かを判定する(ステップS2)。そして、CPU15は、書き込み対象の新情報がアトミックの対象であると判定した場合には(ステップS2:YES)、ステップS3に進む。一方、CPU15は、書き込み対象の新情報がアトミックの対象でない(つまり、ノンアトミックの対象である)と判定した場合には(ステップS2:NO)、ステップS5に進む。
【0029】
ステップS3では、CPU15は、上記ステップS1で特定された書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済であるか否かを判定する。そして、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済であると判定した場合(つまり、処理対象のブロックに既に書き込みが発生しており対象のブロックが既にバックアップされている場合)には(ステップS3:YES)、ステップS8に進む。一方、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済でないと判定した場合には(ステップS3:NO)、当該ブロックの元情報をバックアップ領域にバックアップ(つまり、書き込み前の状態のバックアップ作成)する(ステップS4)。例えば、図3(A)の(a)に示すブロック51が、書き込み処理の対象となるブロックであるとすると、当該ブロック51の「2−1」(元情報),「2−2」(元情報),及び「2−3」(元情報)が、図3(A)の(b)に示すように、バックアップ領域に記憶される。
【0030】
そして、上記バックアップ後に、CPU15は、書き込み対象の新情報(アトミックの対象)を記憶領域に書き込む(ステップS8)。これにより、当該ブロックの元情報が新情報に書き換えられる。例えば、ブロック51の「2−2」(元情報)が、図3(A)の(b)に示すように、「2−2(新)」(新情報)に書き換えられる。なお、ステップS8では、書き込み処理の対象となるブロックの情報が全て一旦記憶領域から消去(1ブロック単位で一旦消去されるため)され、その後に当該ブロックの元情報及び新情報が記憶領域に書き込まれる(書き換え対象でない元情報は再び書き込まれる)。
【0031】
一方、ステップS5では、CPU15は、上記ステップS1で特定された書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済であるか否かを判定する。そして、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済でないと判定した場合には(ステップS5:NO)、当該ブロックの元情報及び新情報をバックアップ領域にバックアップ(つまり、書き込み後の状態のバックアップ作成)する(ステップS6)。例えば、図3(A)の(b)に示すブロック52が、書き込み処理の対象となるブロックであるとすると、当該ブロック52の「3−1」(元情報),「3−2」(元情報),及び「3−3(新)」(新情報)が、図3(A)の(c)に示すように、バックアップ領域に記憶される。なお、ステップS6では、書き込み処理の対象となるブロックの元情報(図3(A)の例では、ブロック52の「3−1」(元情報),「3−2」(元情報),及び「3−3」(元情報))が一旦RAM14に記憶される。そして、書き込み処理の対象となるブロックの元情報が記憶されたRAM14において、書き換え対象の元情報が新情報に書き換え(書き換え対象でない元情報はそのまま)られた後に、当該ブロックの元情報及び新情報(図3(A)の例では、ブロック52の「3−1」(元情報),「3−2」(元情報),及び「3−3(新)」(新情報))がRAM14からバックアップ領域に記憶される。そして、上記と同様、このバックアップ後に、CPU15は、書き込み対象の新情報(ノンアトミックの対象)を記憶領域に書き込む(ステップS8)。
【0032】
一方、ステップS5において、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済であると判定した場合には(ステップS5:YES)、バックアップ領域に既にバックアップされている当該ブロックの元情報を、書き込み対象の新情報に書き換える(新たなバックアップの作成)(ステップS7)。例えば、図3(B)の(a)に示すブロック53が、書き込み処理の対象となるブロックであるとし、このブロック53の情報が、図3(B)の(b)に示すように、バックアップ領域に既にバックアップされているとすると、書き込み処理の対象となるブロックの情報が記憶されたバックアップ領域において、書き換え対象の元情報が新情報に書き換え(書き換え対象でない元情報はそのまま)られて、図3(B)の(c)に示すように、当該ブロックの元情報及び新情報(図3(B)の例では、ブロック52の「1−1」(元情報),「1−2」(元情報),及び「1−3(新)」(新情報))が新たにバックアップされる。そして、上記と同様、このバックアップ後に、CPU15は、書き込み対象の新情報(ノンアトミックの対象)を記憶領域に書き込む(ステップS8)。
【0033】
そして、ステップS9では、CPU15は、ステップS1で特定した書き込み処理の対象となるブロックにおいて書き換え対象の情報が未だあるか(言い換えれば、当該ブロックにおいて書き込むべき新情報があるか)否かを判定する。そして、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックにおいて書き換え対象の情報が未だあると判定した場合には(ステップS9:YES)、ステップS2に戻り、当該ブロックにおいて次に書き込むべき新情報についてステップS2以降の処理を行う。一方、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックにおいて書き換え対象の情報がないと判定した場合には(ステップS9:NO)、書き込み処理の対象となるブロックが未だあるか否かを判定する(ステップS10)。そして、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックが未だあると判定した場合には(ステップS10:YES)、ステップS1に戻り、次に書き込み処理の対象となるブロックを特定して、ステップS2以降の処理を行う。一方、CPU15は、書き込み処理の対象となるブロックがないと判定した場合には(ステップS10:NO)、図2に示す書き込み処理を終了する。
【0034】
そして、以上の書き込み処理が中断された場合には、CPU11は、バックアップ領域にバックアップされている情報を記憶領域に書き戻す処理を行う。例えば、図3(A)の(d)に示す例では、記憶領域において書き換えられたブロック51の「2−2(新)」(新情報)は、アトミックの対象の情報であるため、書き換え前の「2−2」(元情報)に戻るが、記憶領域において書き換えられたブロック52の「3−3(新)」(新情報)は、ノンアトミックの対象の情報であるため、書き換え前の「3−3」には戻らず、書き換えられたままの状態となる。また、例えば、図3(B)の(d)に示す例では、記憶領域において書き換えられたブロック53の「1−1(新)」(新情報)は、アトミックの対象の情報であるため、書き換え前の「1−1」(元情報)に戻るが、記憶領域において書き換えられたブロック52の「1−3(新)」(新情報)は、ノンアトミックの対象の情報であるため、書き換え前の「1−3」には戻らず、書き換えられたままの状態となる(つまり、同じブロック内の情報であっても、書き換え前の状態に戻る情報と戻らない情報とがある)。
【0035】
以上説明したように、上記実施形態によれば、複数の情報を含むブロックに対して書き込み処理を行う場合には、当該ブロックに含まれる複数の情報のうち、ノンアトミックの対象の情報については書き換え後の新情報をバックアップ領域にバックアップする一方、ノンアトミック以外の情報については書き換え前の元情報をバックアップ領域にバックアップしておき、書き込み処理が中断された場合には、バックアップ領域にバックアップされている情報を記憶領域に書き戻すように構成したので、ブロック単位で書き換えるタイプの不揮発性メモリへの書き込み処理が中断された場合であっても、書き換え対象の情報毎に元に戻すか否かを切り分けることができる。これにより、書き込み処理が中断した場合に、書き換え対象外の情報が破壊されることなく元の状態に戻すことができ、なおかつ、書き換え対象且つノンアトミックの対象の情報(戻されては不都合がある情報)が元の状態に戻ることを防止することができる。
【0036】
更に、書き込み処理の対象となるブロックがバックアップ済である場合、バックアップ領域に既にバックアップされている当該ブロックの元情報を、書き込み対象の新情報に書き換えるように構成したので、同じブロック内にアトミックの対象の情報とノンアトミックの対象の情報とが混在する場合であっても、より効率良く元に戻すか否かを切り分けることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 ICチップ
2 外部機器
11 I/Oインターフェイス
12 ROM
13 EEPROM
14 RAM
15 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備えるICチップにおいて、
前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有し、
前記書き込み手段は、
前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻す処理を行うものであって、
前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップすることを特徴とするICチップ。
【請求項2】
請求項1に記載のICチップにおいて、
前記書き込み手段は、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報を前記データブロックの単位で前記バックアップ領域にバックアップした後、当該バックアップされた複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報を書き換えることを特徴とするICチップ。
【請求項3】
情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備え、前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有するICチップに含まれるコンピュータを、
前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップするステップと、
前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻すステップと、
を実行させることを特徴とするICチップ用処理プログラム。
【請求項4】
情報の書き換え可能な不揮発性メモリと、外部から書き込みコマンドがあった場合に、複数の情報を含むデータブロックの単位で前記不揮発性メモリに前記情報を書き込む書き込み手段と、を備え、前記不揮発性メモリは、情報を記憶する記憶領域と、前記記憶領域への書き込み処理中に前記情報をバックアップするためのバックアップ領域と、を有するICチップにおける書き込み処理方法であって、
前記ICチップが、前記書き込み処理直前に前記記憶領域に記憶されている情報に書き戻すことが許容されない情報を含むデータブロックに対して前記書き込み処理を行う場合には、前記データブロックに含まれる複数の情報のうち、前記書き戻すことが許容されない情報については書き換え後の情報を前記バックアップ領域にバックアップする一方、前記書き戻すことが許容される情報以外の情報については書き換え前の情報を前記バックアップ領域にバックアップするステップと、
前記ICチップが、前記記憶領域への書き込み処理が中断された場合には、前記バックアップ領域にバックアップされている前記情報を前記記憶領域に書き戻すステップと、
を含むことを特徴とするICチップにおける書き込み処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−3831(P2013−3831A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134097(P2011−134097)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】