説明

ICE阻害剤のプロドラッグの中間体

【課題】プロドラッグ形態の新規のインターロイキン−1β変換酵素(ICE)インヒビターの中間体の提供。
【解決手段】以下の式(II):


{式中、Rは、水素又は有機基から選ばれる。}
により表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロドラッグ形態の新規のインターロイキン−1β変換酵素(ICE)インヒビターに関する。この化合物及びその医薬組成物はインターロイキン−1−(IL−1)、アポトーシス−、インターフェロン−γ誘導因子−(IL−18)又はインターフェロン−γ(IFN−γ)仲介疾患、例えば炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖障害、感染疾患及び変性疾患の治療のための薬剤として有用である。本発明は更に本発明の組成物を利用してICE活性を阻害する並びにIL−18産生及びIFN−γ産生を低下させるための方法、更にはインターロイキン−1、アポトーシス−及びインターフェロン−γ−仲介疾患を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン−1(IL−1)は、線維芽細胞の分化及び増殖、滑液細胞及び軟骨細胞によるプロスタグランジン、コラゲナーゼ及びホスホリパーゼの産生、好塩基球及び好酸球の脱顆粒及び好中球の活性化を刺激する主要プロ炎症及び免疫調節タンパク質である。Oppenheim, J. H. ら、Immunology Today, 7, pp. 45-46 (1986)。従って、それは慢性及び急性の炎症及び自己免疫疾患の病因に関与する。例えばリウマチ様関節炎では、IL−1は炎症徴候の仲介因子及び炎症を起こした関節における軟骨プロテオグリカンの破壊の仲介因子の双方となる。Wood, D.D. ら、Arthritis Rheum. 26, 975, (1983) ; Pettipher, E.J. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 71, 295 (1986) ; Arend, W.P. 及びDayer, J.M., Arthritis Rheum. 38, 151 (1995)。IL−1は極めて有能な骨吸収剤でもある。Jandiski, J.J., J. Oral Path 17, 145 (1988) ; Dewhirst, F.E. ら、J. Immunol. 8, 2562 (1985) 。それは破壊性骨障害、例えば変形性関節症及び多発性骨髄においては別名「破骨細胞活性化因子」とも呼ばれている。Bataille, R.ら、Int. J. Clin. Lab. Res. 21 (4), 283 (1992)。一定の増殖疾患、例えば急性骨髄形成白血病及び多発性骨髄腫では、IL−1は腫瘍細胞の増殖及び接着を促進しうる。Bani, M.R., J. Natl. Cancer Inst. 83, 123 (1991) ; Vidal Vanaclocha, F., Cancer Res. 54, 2667 (1994)。このような障害において、IL−1は腫瘍の発達を調節できるため他のサイトカイン、例えばIL−6の産生も刺激する(Tartour ら、Cancer Res. 54, p.6243 (1994))。IL−1は主に末梢血液単球により炎症反応に付随して産生され、そして二通りの異なるアゴニスト形態、IL−1α及びIL−1βで存在する。Mosely, B.S. ら、Proc. Nat. Acad. Sci., 84, pp.4572-4576 (1987) ; Lonnemann, G. ら、Eur. J. Immunol., 19, pp. 1531-1536 (1989)。
【0003】
IL−1βは生物学的に不活性な前駆体、プロ−IL−1βとして合成される。プロ−IL−1βは通常のリーダー配列を欠き、そしてシグナルペプチダーゼによってプロセシングされない。March, C.J., Nature, 315, pp.641-647 (1985)。その代わり、プロ−IL−1βはインターロイキン−1β変換酵素(ICE)によりAsp−116とAla−117との間で切断され、ヒト血清及び滑液の中で見い出される生物学的に活性なC末端フラグメントを生成する。Sleath, P.R., らJ. Biol. Chem., 265, pp.14526-14528 (1992) ; A.D. Howard らJ. Immunol., 147, pp.2964-2969 (1991)。ICEは主に単球に局在するシステインプロテアーゼである。それは前駆体IL−1βを成熟形態へと変換させる。Black, R.A. ら、FEBS Lett., 247, pp.386-390 (1989) ; Kostura, M.J. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86, pp.5227-5231 (1989)。ICEによるプロセシングは、成熟IL−1βの細胞膜を介する輸送にとっても必要とされる。
【0004】
ICE(又はカスパーゼ−1)はカスパーゼと称される相同酵素ファミリーの一員である。これらの相同体は酵素の活性部位領域において配列類似性を有する。かかる相同体(カスパーゼ)にはTX(又はICErel−II 又はICH−2)(カスパーゼ−4)(Faucheu, ら、EMBO J., 14, p.1914 (1995) ; Kamens J.,ら、J. Biol. Chem., 270, p.15250 (1995) ; Nicholson ら、J. Biol. Chem., 270 15870 (1995))、TY(又はICErel-III)(カスパーゼ−5)(Nicholsonら、J. Biol. Chem., 270, p.15870 (1995) ; ICH−1(又はNedd−2)(カスパーゼ−2)(Wang, L. ら、Cell, 78, p.739 (1994))、MCH−2(カスパーゼ−6)、(Fernandes-Alnemri, T. ら、Cancer Res., 55, p.2737 (1995), CPP32(又はYAMA又はアポパイン)(カスパーゼ−3)(Fernandes-Alnemri, T. ら、J. Biol. Chem., 269, p.30761 (1994) ; Nicholson, D.W. ら、Nature, 376, p.37 (1995))、CMH−1(又はMCH−3)(カスパーゼ−7)(Lippke, ら、J. Biol. Chem., 271 (4), p1825-1828 (1996));Fernandes-Alnemri, T. ら、Cancer Res., (1995))、Mch5(カスパーゼ−8)(Muzio, M. ら、Cell 85 (6), 817-827, (1996))、MCH−6(カスパーゼ−9)、(Duan, H. ら、J. Biol. Chem., 271 (34), p.16720-16724 (1996))、Mch4(カスパーゼ−10)(Vincenz, C. ら、J. Biol. Chem., 272, p. 6578-6583 (1997) ; Fernandes-Alnemri, T. ら、Proc. Natl. Acad. Sci. 93, p. 7464-7469 (1996))、Ich−3(カスパーゼ−11)(Wang, S. ら、J. Biol. Chem., 271, p.20580-20587 (1996))、mCASP−12(カスパーゼ−12)、(Van de Craen, M. ら、FEBS Lett. 403, p. 61-69 (1997) ; Yuan, Y. and Miura, M. PCT公開公報 WO95/00160 (1995))、ERICE(カスパーゼ−13)、(Humke, E.W., ら、J. Biol. Chem., 273 (25) p. 15702-15707 (1998))、及びMICE(カスパーゼ−14)(Hu, S. ら、J. Biol. Chem., 273 (45) p. 29648-29653 (1998))が挙げられる。
【0005】
このようなICE相同体及びICE自体は各々、トランスフェクションされた細胞系内で過剰発現されるアポトーシスを誘導することができる。ペプチジルICEインヒビターTyr−Val−Ala−Asp−クロロメチルケトンによるこのような相同体の1又は複数の阻害は一次細胞又は細胞系のアポトーシスの阻害をもたらす。Lazebnikら、Nature, 371, p.346 (1994)。
【0006】
カスパーゼはプログラミングされた細胞死又はアポトーシスの調節にも関与するようである。Yuan, J. ら、Cell, 75, pp.641-652 (1993) ; Miura, M. ら、Cell, 75, pp. 653-660 (1993) ; Nett-Fiordalisi, M.A. ら、J. Cell. Biochem., 17B, p.117 (1993))。詳しくは、ICE又はICE相同体は神経変性疾患、例えばアルツハイマー及びパーキンソン病におけるアポトーシスの調節に関係するものと考えられている。Marx,J. and M.Baringa, Science, 259, pp. 760-762 (1993) ; Gagliardini, V. ら、Science, 263, pp.826-828 (1994)。カスパーゼの阻害は最近になって筋萎縮性側索硬化症のネズミモデルにおいて有効であることが示された。Li,M. ら;Science, 288, pp.335-339 (2000)。アポトーシスの阻害の治療的用途には、とりわけ、アルツハイマー病、パーキンソン病、発作、心筋梗塞、脊髄萎縮及び加齢の治療が挙げられる。
【0007】
ICEは一定の組織タイプにおいてアポトーシス(プログミングされた細胞死)を仲介することが証明されている。Steller, H., Science, 267, p.1445 (1995) ; Whyte, M. and Evan, G., Nature, 376, p.17 (1995) ; Martin, S.J. and Green, D.R., Cell, 82, p.349 (1995) ; Alnemri, E.S., ら、J. Biol. Chem., 270, p.4312 (1995) ; Yuan, J. Curr. Opin. Cell Biol., 7, p.211 (1995)。ICE遺伝子の中断されたトランスジェニックマウスはFas仲介アポトーシスにおいて欠陥を有する(Kuida, K ら、Science 267, 2000 (1995))。ICEのこの活性はプロ−IL−1βのプロセシング酵素としてのその役割とは異なっている。一定の組織タイプでは、ICEの阻害は成熟IL−1βの分泌に影響を及ぼさないことがあるが、アポトーシスは阻害しうると考えられる。
【0008】
酵素的に活性なICEは2つのサブユニットp20及びp10(それぞれ20kDa 及び10kDa の分子量)から成るヘテロダイマーとして既に発表されている。これらのサブユニットは自己触媒性たる活性化メカニズムを通じて、45kDa のプロ酵素(p45)からp30形態を介して誘導される。Thornberry, N.A.ら、Nature, 356, pp.768-774 (1992)。ICEプロ酵素はいくつかの機能性ドメイン、即ち、プロドメイン(p14)、p22/20サブユニット、ポリペプチドリンカー及びp10サブユニットへと分割される。Thornberryら、前掲;Casanoら、Genomics, 20. pp. 474-481 (1994)。
【0009】
全長p45はそのcDNA及びアミノ酸配列によって特性決定されている。PCT特許出願WO91/15577及びWO94/00154。p20及びp10のcDNA及びアミノ酸配列も公知である。Thornberryら前掲。ネズミ及びラットのICEも配列決定され、且つクローニングされている。それらはヒトICEに対して高度なアミノ酸及び核酸配列相同性を有する。Miller, D.K. ら、Ann. N. Y. Acad. Sci., 696, pp.133-148 (1993) ; Molineaux, S. M. ら、Proc. Nat. Acad. Sci., 90, pp.1809-1813 (1993)。ICEの三次元構造はX線結晶学による原子解析で決定されている。Wilson, K.P. らNature, 370, pp.270-275 (1994)。この活性酵素は2つのp20及び2つのp10サブユニットのテトラマーとして存在する。
【0010】
最近になって、ICE及びICE/CED−3ファミリーのその他の構成員はプロ−IL−18のIL−18への変換又はIFN−γのin vivo産生に結びつけられている(引用することで本明細書に組入れるPCT出願PCT/US96/20843、公開番号WO97/22619)。IL−18はin vivoで前駆体タンパク質「プロ−IL−18」として合成される。
インターロイキン−18(IL−18)(以前はインターフェロン−ガンマ−誘導因子(IGIF)はインターフェロン−ガンマ−(IFN−γ)のT細胞産生を刺激する約18kDa のポリペプチドである。IL−18はin vivoで活性化クップファー細胞及びマクロファージにより産生され、そして内毒素刺激によりかかる細胞の外へと輸送される。IL−1βと同様に、IL−18は単一のペプチドを欠く生物学的を不活性な前駆体分子として合成され、それはIL−1β変換酵素による活性成熟分子に至る切断を要する。Dinerello, C.A. Methods, 19. pp 121-132 (1999)。かくして、IL−18は産生を低下させる化合物がかかるT細胞刺激のインヒビターとして有用であり、換言すればそれはこのような細胞によるIFN−γ産生のレベルを低下させるであろう。
【0011】
IFN−γは様々な免疫細胞に対する免疫調節作用を有するサイトカインである。詳しくは、IFN−γはマクロファージの活性化及びTh1細胞の分泌に関与する(F. Belardelli, APMIS, 103, p.161 (1995))。IFN−γはSTAT及びIRF経路を通じて遺伝子の発現を調節することによってある程度その作用を奏する(C. Schindler and J.E.Darnell, Ann. Rev. Biochem., 64, p.621 (1995) ; T.Taniguchi, J. Cancer Res. Clin. Oncol., 121, p.516 (1995))。
IFN−γ又はそのレセプターを欠くマウスは免疫細胞機能において多数の欠陥をもち、また内毒素ショックに対して耐性である(S.Huang ら、Science, 259, p.1742 (1993) ; D.Dalton ら、Science, 259, p.1739 (1993) ; B.D.Carら、J. Exp. Med., 179, p.1437 (1994))。IL−12と共に、IL−18はT細胞によるIFN−γ産生の有能な誘導因子のようである(H.Okamuraら、Infection and Immunity, 63, p.3966 (1995) ; H.OkamuraらNature, 378, p.88 (1995) ; S.Usio ら、J. Immunol., 156, p.4274 (1996)。
【0012】
IFN−γは様々な炎症性、感染性及び自己免疫障害及び疾患に関係する病理に寄与することが示されている。かくして、IFN−γ産生を低下できる化合物はIFN−γ関連病理の効果を緩和するのに有用であろう。
従って、プロ−IL−18とIL−18に至る変換を調節できる組成物及び方法はin vivoでのIL−18及びIFN−γの産生を低下させるのに有用であり、それ故ヒトの障害及び疾患に寄与するこのようなタンパク質の有害な効果を緩和するのに有用であろう。
【0013】
カスパーゼインヒビターは炎症もしくはアポトーシス又はその両者の調節のために有用な化合物のクラスの代表である。ICEのペプチド及びペプチジルインヒビターが発表されている(PCT特許出願WO91/15577、WO93/05071、WO93/09135、WO93/12076、WO93/14777、WO93/16710、WO95/35308、WO96/30395、WO96/33209及びWO98/01133;ヨーロッパ特許出願503 561、547 699、618 223、623 592、及び623 606;並びに米国特許第5,434,248、5,710,153、5,716,929及び5,744,451号)。ICEのかかるペプチジルインヒビターはマウスの炎症モデルにおいて成熟IL−18の産生をブロックし(後掲)、またin vitroで白血病細胞の増殖を抑制することが観察されている(Estrovら、Blood, 84, 380a (1994))。しかしながら、ペプチドであるが故、かかるインヒビターは一般に望ましくない薬理特性、例えば劣った細胞侵入性及び細胞活性、劣った経口吸収性、不安定且つ迅速な代謝性を特徴とする。Plattner, J.J. and D.W. Norbeck, Drug Discovery Technologies, C.R. Clark and W.H.Moos, Eds. (Ellis Horwood, Chichester, England, 1990), pp.92-126 。このような特性は有効な薬剤へのその開発の妨げとなる。
【0014】
非ペプチジル化合物もin vitroでICEを阻害することが報告されている。PCT特許出願WO95/25958;米国特許第5,552,400号;Dolle ら、J. Med. Chem., 39, pp. 2438-2440 (1996)。しかしながら、これらの化合物が治療的に有効となる適当な薬理学的プロファイルを有するかどうかは不明である。
【0015】
国際公開第99/47545号は、有利なインビボ特性を有することが報告された、カスパーゼ阻害剤の新しい分類を記載する。これらの阻害剤を、以下の式により表す:
【化1】

ここで、X、Y、及びR1 −R6 は、さまざまな置換基である。阻害剤のこの分類のたくさんの例の中で、以下の構造物を開示した:
【化2】

【0016】
本分野で知られるように、構造分類内の化合物の生物学的利用能は、予想が難かしい。比較的小さな構造上の変更が、化合物の吸収、血中濃度及び/又は半減期に対して、しばしば大きな影響をもつ。例えば生物学的利用能についてのそのようなバリエーションが、国際公開第99/47545号中のデータから確認されうる。結果として、ひじょうに良好なインビトロでの効果を有する、構造的に関連した化合物は、治療に関する有効性がさまざまでありうる。
【0017】
進歩は、ICE阻害剤の生物学的利用能を改善させてきたが、カスパーゼを効果的に阻害しうる、そして改善されたインビボ活性を有する化合物の同定及び開発の必要性は、相変わらず存在する。前述の化合物は、慢性及び急性型のIL−1、アポトーシス、IL−18、又はIFN−γ仲介疾患、同様に炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖障害、感染疾患又は変性疾患を予防する、そして治療する薬剤として有効であろう。
【発明の概要】
【0018】
本願発明は、哺乳動物において、ひじょうに良好な生物学的利用能を有する、新規ICE阻害剤プロドラッグ化合物を提供する。前記化合物を、式Iにより表す:
【化3】

【0019】
化合物Iは、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γにより仲介された疾患の治療又は予防のために、単独で使用されるか又は他の治療薬若しくは予防薬、例えば抗生剤、免疫賦活剤、若しくは他の抗炎症剤と併用されうる。本願発明は、医薬として許容されうる、前記化合物の誘導体及びプロドラッグにも関する。
【0020】
化合物I自体が、活性ICE阻害剤IIへのバイオコンバージョンを受けるプロドラッグである:
【化4】

【0021】
化合物Iは、経口及び/又は静脈中投与において、親又はその薬の活性型よりも良好なインビボ活性を有する。活性型である、アスパラギン酸アルデヒドII(aspartic aldehyde II)は、主に生物学的利用能が乏しいことから、最大インビボ活性を下回る活性を示し、そしてこのことから直接的な、治療としての使用には適さない。一般的に、乏しい生物学的利用能は、以下の理由のいずれかによりもたらされうる:活性型が、摂取後、動物消化管において不安定であるから、消化管を通してうまく吸収されないから、及び/又は意図された生物学的区画(例えば脳又はリンパ系)へうまく輸送されないからである。前記プロドラッグIは、その活性型IIに比べて、促進された生物学的利用能を表す一方で、本願発明は、それにより生物学的利用能が促進されるところの、ある特定の機構を制限しない。
【0022】
出願人は、前述の国際公開第99/47545号に一覧の例を含む、多くのプロドラッグICE阻害剤を検討した。生物学的利用能を、下記のとおり、経口投与にラット血漿中のICE阻害剤量を計量することにより決定した。化合物Iは、構造上近似したいくつかのものを含む、試験された他のプロドラッグICE阻害剤に比べて、思いもよらない改良された生物学的利用能を有することが発見された。
【0023】
本明細書に表された化合物Iの構造は、上記化合物の全ての立体化学的形態;すなわち、各不斉中心に関するR及びS立体配置を含むことを意味する。したがって本化合物の単一の立体化学的異性体、同様に鏡像異性の、そしてジアステレオマーの混合物は、本発明の範囲の中にある。好ましい異性体は、以下に示す、三級ブチル基がもつ炭素での「S」立体配置、プロリン環の第2位での「S」立体配置、フラノン環の第3位での「S」立体配置、及びフラノン環の第2エトキシ部位での「R」立体配置を有する化合物I−Aである:
【化5】

【0024】
他の好ましい異性体は、化合物I−Bである:
【化6】

【0025】
別に規定されない限り、本明細書に表された構造は、1以上の同位体的に濃縮された原子の存在だけが異なる化合物を含むことをも意味する。例えば、本発明の構造を有する化合物は、水素の、重水素若しくはトリチウムによる置き換え又は炭素の、13C若しくは14C濃縮炭素による置き換えを別にすれば、本願発明の範囲の中にある。
【0026】
本願発明の化合物は、以下の全般的な模式図及び以下の調製のための実施例により説明したとおり、類似化合物として、当業者に知られる方法により、一般的に調製されうる。
化合物I−Aについての合成模式図
【化7】

【0027】
試薬
a)Cbz−Cl、NaHCO3 ;b)H−プロ−OtBu、EDC,HOBT;c)10% Pd/C、H2 ;d)4−アミノ−3−クロロ安息香酸、EDC、DIPEA;e)TFA;f)7、EDC、HOBT、DIPEA;g)DMBA、Pd(PPh34
【0028】
化合物Iを作るために有用ないくつかの中間体は、新規であると信じられる。よって、本願発明の1つの態様は、式IIにより表した化合物に関する:
【化8】

ここでRは、水素又は有機ラジカル、好ましくは水素又はC1-12アルキル、そして最も好ましくは水素又は三級ブチルから選ばれる。前記有機ラジカル部分が、化合物IIの中の他の官能基に対して非反応性であるところの基であることは、理解されるであろう。化合物IIは、4つの可能な立体異性体のいずれか、同様にそれらの混合物を含むことを理解される。IIの好ましい異性体は、式II−Aにより表される:
【化9】

ここで、Rは、前述のとおりである。
【0029】
本願発明の医薬組成物は、式Iの化合物又はそれらの医薬として許容しうる塩、及び医薬として許容しうる担体を含む。前述の組成物は、場合により補足的な治療薬を含みうる。前述の薬は、これだけに制限されることなく、抗炎症剤、基質メタロプロテアーゼ・阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、サイトカイン・アンタゴニスト、免疫抑制剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、成長因子、免疫賦活剤、プロスタグランジン又は抗血管過剰増殖化合物を含む。
【0030】
用記「医薬として許容しうる担体」は、本願発明の化合物と一緒に患者に対して投与されうる、そしてそれらの医薬活性を無効にしないところの無毒性担体を指す。
【0031】
本願発明の医薬組成物に使用されうる、医薬として許容しうる担体は、これだけに制限されることなく、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸、グリシン、ソルビン酸、カリウム・ソルベート、飽和植物脂肪酸の一部グリセリド混合物、水、塩又は電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛酸、コロイド・ケイ酸、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニル・ピロリドン、セルロースを基にした物質、ポリエチレン・グリコール、カルボキシメチルセルロース・ナトリウム、ポリアクリル酸、ろう、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック重合体、羊毛脂、及び自己乳化薬物送達システム(self−emulsifying drug delivery systems)(SEDDS)、例えばα−トコフェロール、コハク酸ポリエチレングリコール1000又は他の類似の重合体の送達基質を含む。
【0032】
活性成分として式Iの化合物のみを含む医薬組成物において、これらの組成物を投与する方法は、患者に対して、付加的な薬剤を投与するステップを付加的に含みうる。前述の薬剤は、これだけに制限されることなく、抗炎症剤、基質メトロプロテアーゼ・阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、サイトカイン・アンタゴニスト、免疫抑制剤、抗癌剤、抗ウイルス剤、サイトカイン、成長因子、免疫賦活剤、プロスタグランジン又は抗血管過剰増殖化合物を含む。
【0033】
用語「医薬として有効な量」は、患者における、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γ仲介疾患の治療又は改善に有効な量を指す。用語「医薬として有効な量」は、患者における、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γ仲介疾患の予防又は大幅な減少に有効な量を指す。
本願発明の化合物は、インビボにおけるIL−18及びIFN−γレベルを制御する、そして疾患を治療するあるいは進行又はIL−1、アポトーシス、IL−18若しくはIFN−γにより仲介される作用の重症度を軽減するために、慣例のやり方により利用されうる。前述の治療方法、それらの投与レベル及び必要条件は、利用可能な方法及び技術から、当業者により選ばれる。
【0034】
例えば本願発明の化合物は、医薬として許容しうるやり方で、それらの疾患の重症度の軽減に有効な量で、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γ仲介疾患を患う患者に対して投与するために、医薬として許容しうるアジュバントと取り合わされうる。
あるいは、本発明の化合物を、長期間にわたって、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γにより仲介される疾患に対して、個体を治療又は防護するための組成物及び方法において用いうる。当該化合物を、医薬組成物における酵素阻害剤の通常の使用に合致した様式で、単独の形又は本発明のその他の化合物と共に用いる形のいずれかの組成物において用いうる。例えば、本発明の化合物を、ワクチンにおいて通常用いられる医薬上容認されるアジュバントと組み合せて、そして長期間にわたって、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γにより仲介される疾患に対して、個体を防護するために、予防上有効な量で投与しうる。
【0035】
式Iの化合物を、IL−1、アポトーシス、IL−18又はIFN−γにより仲介される疾患に対する治療又は予防の効果を高めるために、その他のカスパーゼ又はICE阻害剤と共に共投与してもよい。
更に、本発明の化合物を、通常の抗炎症剤、又はマトリクスメタロプロテアーゼ阻害剤、リポオキシゲナーゼ阻害剤、及びIL−1β以外のサイトカインのアンタゴニストのいずれかと組み合せて用いうる。
【0036】
本発明の化合物を、また、IL−1により仲介される疾患の徴候、例えば炎症を抑制又は治療するために、免疫調節剤(例えば、ブロピリミン、抗ヒトアルファーインターフェロン抗体、IL−2、GM−CSFメチオニンエンケファリン、インターフェロン−アルファ、ジエチルジチオカルバメート、腫瘍壊死因子、ナルトレキソン、及びEPO)と、プロスタグランジンと、又は抗ウイルス剤(例えば、3TC、ポリスルフェート化多糖、ガニクロビル、リバビリン、アシクロビル、アルファインターフェロン、トリメトトレキセート及びファンシクロビル)、又はこれらのプロドラッグ、又は関連する化合物と組み合せて投与することもできる。
【0037】
本発明の化合物を、その他の薬剤による治療と組み合せて投与する場合、それらを、患者に、順次に、又は同時に投与しうる。あるいは、本発明の治療又は予防用の組成物は、式Iの化合物と、その他の治療剤又は予防剤との組み合せを含んでなる。
本発明の医薬組成物を、経口で、腸管外に、吸入スプレーにより、局所的に、直腸に、鼻に、頬に、膣に、又は移植された貯蔵物により投与しうる。経口投与が好ましい。本発明の医薬組成物は、任意の通常の、毒性のない、医薬上容認される担体、アジュバント又は賦形剤を含有しうる。いくつかの場合、その調合剤のpHを、調合された化合物又はその投与形の安定性を高めるために、医薬上容認される酸、塩基又は緩衝剤により調整しうる。本文では、腸管外投与という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、鞘内、病巣内、及び頭蓋内への注射又は注入を含む。
【0038】
当該医薬組成物は、無菌の注射可能な調製物の形、例えば、水性又は油性の無菌注射用懸濁液であってよい。この懸濁液を、当分野に既知の方法に従って、適当な分散剤又は湿潤剤(例えばTween 80)及び沈殿防止剤を用いて、調合しうる。この無菌注射用調製品は、また、毒性のない、腸管外投与に適合する希釈剤又は溶剤による無菌注射用溶液又は懸濁液、例えば1,3−ブタンジオールによる溶液であってもよい。容認されうる賦形剤及び溶剤として、マンニトール、水、リンガー溶液及び等張塩化ナトリウム溶液を用いうる。更に溶剤又は懸濁溶媒として、通常、無菌の不揮発性油が用いられる。そのために、任意の無菌の不揮発性油、例えば合成のモノ又はジグリセリドを用いうる。脂肪酸、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体が、注射用調製品において有用であり、同様に、医薬上容認される天然の油、例えばオリーブ油又はひまし油、特にそれらのポリオキシエチレン化された種類も有用である。この様な油性溶液又は懸濁液は、また、長鎖アルコール性希釈剤又は分散剤、例えばPharmacopeia Helveticaに記載のもの、又は同様なアルコールを含有してもよい。
【0039】
本発明の医薬組成物を、任意の適当な経口投与剤の形で、例えば、限定でなく、カプセル剤、錠剤、及び水性の懸濁液や溶液の形で経口投与しうる。経口投与用の錠剤の場合、通常用いられる担体は、ラクトース及びコーンスターチである。滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムも、典型的に用いられる。カプセル剤の形で経口投与する場合、有用な希釈剤はラクトース及び乾燥コーンスターチである。水性の懸濁液及び溶液、及びプロピレングリコールを経口投与する場合、当該活性成分を、乳状化剤及び懸濁化剤と組み合せる。所望ならば、一定の甘味料及び/又は香料及び/又は着色料を加えうる。
【0040】
本発明の医薬組成物を、また、直腸投与のために、座剤の形で投与してもよい。この様な組成物を、本発明の化合物を適当な非刺激性の賦形剤と共に混合することにより調製することができ、そしてその賦形剤は、室温で固体であるが、直腸温度では液体であるものであり、従って直腸内で融解して、当該活性成分を放出する。その様な物質は、例えば、限定でなく、カカオバター、蜜ろう及びポリエチレングリコールである。
【0041】
望まれる治療が、局所投与により容易に到達しうる領域又は器官に関わる場合、本発明の医薬組成物の局所投与が特に有用である。皮膚に局所投与する場合、当該医薬組成物を、担体中に懸濁又は分散された状態で当該活性成分を含有する適当な軟こうとして調合するべきであろう。本発明の化合物の局所投与のための担体は、例えば、限定ではなく、鉱物油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポレオキシプロピレン化合物、乳状性ワックス及び水である。あるいは、当該医薬組成物を、担体中に懸濁又は分散された状態で当該活性化合物を含有する適当なローション又はクリームとして調合することができる。適当な担体は、例えば、限定でなく、鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水である。本発明の医薬組成物を、また、直腸用の座剤又は適当な浣腸剤として、下部腸管に局所適用することもできる。局所投与される経皮パッチも本発明に含まれる。
【0042】
本発明の医薬組成物を、鼻用のエアロゾル又は吸入により投与しうる。この様な組成物を、医薬調剤分野に周知の技術に従って調製し、そして塩水溶液として、ベンジルアルコール又はその他の適当な保存剤、生体利用性を高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、及び/又は、当分野に既知のその他の溶解剤又は分散剤を用いて、調製しうる。
【0043】
IL−1、アポトーシス、IL−18及びIFN−γにより仲介される疾患の予防及び治療のための単独療法では、約0.01〜約100mg/kg体重/日、好ましくは0.5〜約75mg/kg体重/日、そして最も好ましくは約1〜50mg/kg体重/日の当該活性成分の投与量が有用である。前記の疾患は、例えばブドウ膜炎、炎症性疾患、自己免疫疾患、破壊性骨障害、増殖障害、感染疾患、変性疾患、壊死性疾患、炎症性腹膜炎、骨関節炎、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、成人呼吸困難症候群、糸球体腎炎、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブ病、自己免疫胃炎、インスリン依存性真性糖尿病(I型)、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、慢性活性型肝炎、重症筋無力症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主疾患、骨粗しょう症、多発性骨髄腫関連骨障害、白血病及び関連障害、脊髄形成異常症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色種、カポジ肉腫、多発性骨髄腫、敗血症、敗血性ショック、細菌性赤痢、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、心筋虚血、心筋梗塞、うっ血性心不全、ハンチントン病、アテローム性腫脈硬化症、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、AIDS関連脳炎、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、発作に因る神経学的損傷、潰瘍性結腸炎、伝染性肝炎、若年型糖尿病、扁平苔癬、急性皮膚筋炎、湿疹、原発性肝硬変、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アトピー性皮膚病、赤芽球ろう、再生不良性貧血、筋萎縮性側索硬化症、ネフローゼ症候群、並びに、過剰食事性アルコール摂取又はウイルス、例えばHBV、HCV、HGV、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、及び日本脳炎ウイルスを原因として、炎症又は壊死部分を有する全身性の疾患又は、肝臓又はその他の臓器に有効に限局する疾患である。
【0044】
典型的には、本発明の医薬組成物を、1日あたり約1〜5回、あるいは連続注入により投与するだろう。この様な投与を、長期又は短期治療として用いることができる。単一投与剤形で製造するために担体物質と組み合せうる当該活性成分の量は、治療対象及び投与の特定の様式に依存して変動するだろう。典型的な製剤は、約5〜約95%(w/w)の活性化合物を含有するだろう。好ましくは、この様な製剤は、約20〜約80%の活性化合物を含有する。
【0045】
本発明の組成物が、式Iの化合物と、1又は複数の追加治療剤又は予防剤との組み合せを含んでなる場合、その化合物及び追加した薬剤は、双方共に、単独治療方式において標準的に投与される投与量の約10〜80%の投与量レベルで存在すべきであろう。
患者の症状の改善にあたって、必要ならば、本発明の化合物、組成物又は組み合せ物の保守的投与量を投与してよい。続いて、投与の用量又は頻度、又はその両者を、症状の程度に応じて、改善した症状が維持される程度まで減らしうる。その症状が望ましいレベルまで軽減した時に、治療を止めるべきであろう。しかし、患者は、なんらかの再発又は病症状に応じて、長期間ベースで、断続的に治療を必要とすることがある。
【0046】
当業者には明かである通り、前記の投与量より低い、又は高い投与量が必要なことがある。ある特定の患者のための特定の投与量及び治療様式は、種々の要因、例えば、用いる化合物の活性、年齢、体重、総合的健康状態、性別、食事、投与期間、排出速度、薬物の組み合せ、疾患の重症度と経過、及びその疾患に対する患者の素質、そして治療担当医の判断に依存するだろう。
本発明の化合物により治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の疾患は、例えば、限定でなく、炎症性疾患、自己免疫疾患、増殖障害、感染疾患、及び変性疾患である。本発明の化合物により治療又は予防しうるアポトーシス仲介性疾患は、例えば変性疾患である。
【0047】
治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の炎症疾患は、例えば、限定でなく、骨関節炎、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、及び成人呼吸困難症候群である。好ましくは、当該炎症疾患は骨関節炎又は急性膵炎である。
治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の自己免疫疾患は、例えば、限定でなく、糸球体腎炎、リウマチ様関節炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブ病(Grave’s disease)、自己免疫胃炎、インスリン依存性真性糖尿病(I型)、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、慢性活性型肝炎、重症筋無力症、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、移植片対宿主疾患である。好ましくは、当該自己免疫疾患は、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、乾癬、又はアトピー性皮膚炎である。
【0048】
治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の破壊性骨障害は、例えば、限定でなく、骨粗しょう症及び多発性骨髄腫関連骨障害である。
治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の増殖性疾患は、例えば、限定でなく、白血病及び関連障害、脊髄形成異常症候群、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、転移性黒色腫、カポジ肉腫、多発性骨髄腫である。
治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の感染疾患は、例えば、限定でなく、敗血症、敗血性ショック、細菌性赤痢である。
【0049】
本発明の化合物により治療又は予防しうるIL−1又はアポトーシス仲介性の変性又は壊死性疾患は、例えば、限定でなく、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、及び心筋虚血である。好ましくは、当該変性疾患はアルツハイマー病である。
本発明の化合物によって処置され、又は予防され得るIL−1又はアポトーシス仲介変性疾患は、限定しないが、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳虚血、心筋虚血、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、AIDS関連脳炎、HIV関連脳炎、老化、脱毛症、及び発作に因る神経学的損傷、を含む。
【0050】
炎症性又はアポトーシス性の成分を有する他の疾患も、本発明の化合物によって処置又は予防され得る。その様な疾患は、全身性疾患又は肝臓若しくは他の器官において局在している作用を有する疾患のこともあり、そして例えば過剰食事性アルコール摂取又はウイルス、例えばHBV、HCV、HGV、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、及び日本脳炎ウイルスによって起こることもある。
本発明の化合物によって処置又は予防され得るIL−18−又はIFN−γ−仲介疾患は、限定しないが、炎症、感染、自己免疫、増殖、神経変性及び壊死性の症状を含む。
【0051】
処置又は予防され得るIL−18−又はIFN−γ−仲介炎症疾患は、限定しないが、骨関節炎、急性膵炎、慢性膵炎、喘息、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性結腸炎、脳虚血、心筋虚血及び成人性呼吸困難症候群を含む。好ましくは、炎症性疾患はリウマチ様関節炎、潰瘍性結腸炎、クローン病、肝炎又は成人性呼吸困難症候群である。
処置又は予防され得るIL−18−又はIFN−γ−仲介感染性疾患は、限定しないが、感染性肝炎、敗血症、敗血症ショック及び細菌性赤痢を含む。
処置又は予防され得るIL−18−又はIFN−γ−仲介自己免疫疾患は、限定しないが、糸球体腎炎、全身性エリテマトーデス、強皮症、慢性甲状腺炎、グレーブ病、自己免疫胃炎、インスリン依存性真性糖尿病(I型)、若年性糖尿病、自己免疫溶血性貧血、自己免疫好中球減少症、血小板減少症、重症筋無力症、多発性硬化症、乾癬、苔癬、移植片対宿主疾患、急性皮膚筋炎、湿疹、原発性肝硬変、肝炎、ブドウ膜炎、ベーチェット病、アトピー性皮膚炎、赤芽球労、再生不良性貧血、筋萎縮性側索硬化症及びネフローゼ症候群を含む。好ましくは、自己免疫疾患は糸球体腎炎、インスリン依存性真性糖尿病(I型)、若年性糖尿病、乾癬、移植片対宿主疾患又は肝炎である。
【0052】
処置又は予防され得る、更に好ましい疾患又は症状は、リウマチ様関節炎、炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性結腸炎、炎症性腹膜炎、筋萎縮性側索硬化症、敗血症ショック、膵炎、外傷性脳障害、器官移植拒絶、骨粗鬆症、骨関節炎、喘息、ブドウ膜炎、乾癬、アルツハイマー病、心筋梗塞、うっ血性心不全、ハンチントン病、アテローム性動脈硬化症、アトピー性皮膚炎又は白血病及び関連障害、例えば骨髄異形性症候群又は多発性骨髄腫を含む。
従って、本発明の1つの態様は、対象者のIL−1又はアポトーシス仲介疾患を処置又は予防するための方法であって、前記対象者に任意の化合物、医薬組成物、又は本明細書に記載の組み合わせ及び医薬として許容される担体を投与する段階を含んで成る方法を提供する。
【0053】
本発明の別の態様は、対象者のIL−18産生を低下させるための方法であって、前記対象者に任意な化合物、医薬組成物、又は本明細書に記載の組み合わせ及び医薬として許容される担体を投与することを含んで成る方法を提供する。
本発明の更に別の態様は、対象者のIFN−γ産生を低下させるための方法であって、前記対象者に任意な化合物、医薬組成物、又は本明細書に記載の組み合わせ及び医薬として許容される担体を投与することを含んで成る方法を提供する。
【0054】
本発明はIL−1、アポトーシス、IL−18、及びIFN−□−仲介疾患を予防し、そして処置するための、本明細書で開示されている化合物の使用に焦点を当てているが、本発明の化合物はまた、他のシステインポプロテアーゼの阻害剤として使用され得る。
【0055】
本発明の化合物はまた、カスパーゼ又は、限定しないが、ICEを含む他のシステインプロテアーゼと効率的に結合する市販の試薬としても有用である。市販の試薬として、本発明の化合物、及びそれらの誘導体は、ICE及びICE相同体の生化学的アッセイ又は細胞アッセイにおいて標的ペプチドのタンパク質分解を防ぐために使用されることがあり、あるいはアフィニティークロマトグラフィー利用のための拘束される基質として安定樹脂と結合するために誘導体化されることがある。市販のプロテアーゼ阻害剤を特徴づけるこれら及び他の使用は、当業者にとって明らかであるだろう。
本発明を更に完全に理解するために、以下の例を記載する。これらの例は例示目的のみであり、そして決して本発明の限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0056】
合成例
1−〔2−(4−アミノ−3−クロロ−ベンゾイルアミノ)−3,3−ジメチル−ブチリル〕−ピロリジン−2−カルボン酸(2−エトキシ−5−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イル)−アミド(I−A)の調製
2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3,3−ジメチル酪酸(2)
氷(500g)及び水(500ml)中のL−tert−ロイシン(1)(50.0g、38.0mmol)及びNaHCO3 (96.0g、114mmol)の溶液に対して、ヘロロギ酸ベンジル(65.0ml、74.0mmol)を加え、そして反応物を0℃で3時間、次に室温で18時間撹拌した。0.1NのNa2 CO3 を油層が消滅するまで加え、そしてこの溶液を10%EtOAc/ヘキサン(2%500ml)で洗浄した。氷冷した水層を、12NのHClを用いてpH1まで酸性化し、続いてEtOAc(3×350ml)を用いて抽出した。一緒にした有機抽出物をNa2 SO4 上で脱水し、濾過し、そして蒸発させて表題の化合物を無色の油として生成せしめた(82.4g、81.5%の収率):
【化10】

【0057】
1−(2−ベンジルオキシカルボニルアミノ−3,3−ジメチル−ブチリル)−ピロリジン−2−カルボン酸tert−ブチルエステル(3)
0℃のCH2 Cl2 (30ml)及び無水DMF(ジメチルホルムアミド)(10ml)中の2(6.01g、2.0mmol)の溶液に、HOBT(3.16g、2.0mmol)、EDC(1−(3−ジメチルアミノプロピル−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩)(7.19g、4.0mmol)及びL−プロリン−tert−ブチルエステル(4.22g、2.0mmol)を加えた。この溶液を0℃で10分間、続いて室温で5時間撹拌した。溶媒を減圧下で蒸発させ、そして生じた油をEtOAcに溶解し、それを水(3×200ml)及び塩溶液(200ml)で洗浄した。有機層を無水Na2 SO4 上で脱水し、濾過し、そして蒸発させて粗製生成物を生成せしめた。シリカゲル上でのヘキサン/EtOAc(95/5〜80/20%)を用いるフラッシュクロマトグラフィーは、無色の油として表題の化合物を生成せしめた(8.30g、87.5%の収率):
【化11】

【0058】
1−〔2−(4−アミノ−3−クロロ−ベンゾイルアミノ)−3,3−ジメチル−ブチリル〕−ピロリジン−2−カルボン酸−tert−ブチルエステル(4)の合成
MeOH(200ml)中の3(19.0g、45.4mmol)の溶液に、EtOAc(50ml)中の10%活性型Pd/C(2.0g)を加え、そして反応物を水素下で18時間撹拌した。この溶液をセライトを介して濾過し、そして溶媒を蒸発させて、粘稠性の無色の油を生成せしめた。遊離アミンを乾燥CH2 Cl2 /DMF(2:1、120ml)に溶解し、この溶液を0℃に冷却し、そして4−アミノ−3−クロロ安息香酸(7.79g、45.4mmol)及びDIPEA(7.90mL、45.4mmol)を加えた。反応物を10分間撹拌し、続いてEDC(11.32g、59.1mmol)を加えた。混合物を0℃で30分間、続いて室温で18時間撹拌した。この溶液をEtOAc(300ml)で希釈し、0.5NのNaHSO4 (2×250mL)、10%NaHCO3 (2×250mL)、飽和NaCl(150mL)で洗浄し、MgSO4 上で脱水し、そして乾燥するまで蒸発させた。シリカゲル上でのCH2 Cl2 /MeOH(99/1〜98/2%)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーは、白色の固体として表題の化合物を生成せしめた(19.25、97%の収率):
【化12】

分析的HPLC(シアノカラム):12.59分。LC−MS(ES+)m/e=438.5(M+H)。
【0059】
1−〔2−(4−アミノ−3−クロロ−ベンゾイルアミノ)−3,3−ジメチル−ブチリル〕−ピロリジン−2−カルボン酸(5)の合成
CH2 Cl2 (30mL)中の4(15.9g、36.3mmol)の溶液に、TFA(トリフルオロ酢酸)(30mL)を加え、そしてこの溶液を窒素下で、室温で3時間撹拌した。反応物をビーカー(1L)に移し、そしてCH2 Cl2 (60mL)で希釈した。0℃のこの溶液に、固体のNaHCO3 (39g、46mmol)を加え、そしてEtOAc(300mL)とH2 O(300mL)との間に分配する前に15分間撹拌した。抽出後、水層をpH4〜5に酸性化し、そしてEtOAcで抽出した。有機層を脱水(MgSO4 )し、そして乾燥するまで蒸発させて、白色固体として5を生成せしめた(14.0g、定量的な収率):
【化13】

分析的HPLC(シアノカラム):8.24分。LC−MS(ES+)m/e=382.4(M+H)。
【0060】
1−〔2−(4−アミノ−3−クロロ−ベンゾイルアミノ)−3,3−ジメチル−ブチリル〕−ピロリジン−2−カルボン酸(2−エトキシ−5−オキソ−テトラヒドロ−フラン−3−イル)−アミド(I−A)の合成
0℃の CH2 Cl2 (50mL)中の6(5.05g、22.0mmol)の溶液に、1,3−ジメチルバルビツール酸(DMBA)(3.78g、24.2mmol)及びPd(PPh34 (0.15g、0.13mmol)を加えた。10分後、DMF(25mL)中の5(8.40g、22.0mmol)の溶液に、続けてジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(7.66mL、44.1mmol)、(2.98g、22.0mmol)及びEDC(5.06g、26.4mmol)を加えた。この溶液を0℃で10分間、続けて室温で18時間撹拌した。反応物をEtOAc(200mL)で希釈し、0.5NのNaHSO4 (2×200mL)、10%NaHCO3 (2×200mL)、飽和NaCl(1×500mL)で希釈し、無水MgSO4 上で脱水し、そして乾燥するまで蒸発させた。シリカゲル上でのCH2 Cl2 /MeOH(99/1〜98/2%)を用いるフラッシュカラムクロマトグラフィーは、白色固体として表題の化合物を生成せしめた(11.20、77%の収率):
【化14】

分析的HPLC(シアノカラム):13.10分。LC−MS(ES+ )m/e=509.4(M+H)、融点=96〜99℃。
【0061】
経口薬理動態学
雄性のSprague−Dawleラット(Harlan, Indianapolis, IN, 300〜350g)をケタミン/セラクタール(rompun)混合液の筋肉内注射によって麻酔した。PE−50カニューレを、動脈血の試料採取のために右の頸動脈に挿入した。ラットは、研究に使用する前に、手術からの回復のために一晩(16時間)放置した。試験化合物は、50mg/kg 100%プロピレングリコール(PE)と一緒に10mL/kgの投与量で経口投与した。血液試料(〜0.30mL)を投与から0.25、0.50、1.0、1.5、2.3、4、6、及び8時間後に採取し、血漿を遠心によって分離し、そして解析まで−80℃で保存した。血漿試料の定量は、下文に詳述するものと同様に、グラジエントHPLC/MS/MSを用いて行った:
【0062】
ラット血漿中のICE阻害剤の定量のためのHPLC/MS/MS方法
試料の調製
1.100mlの血漿をエッペンドルフ遠心管に等分する。
2.等量のアセトニトリルを血漿に加え、血漿タンパク質を沈澱させる。
3.試料を2分間ボルテックスし、そして14,000rpm で3分間遠心する。
4.100μlの上清を12mmのHPLC液体試料容器に載せる。
5.20μlの外部標準を100μlのアリコートに加え、機器の応答における変化を監視する。
6.10μlの試料を、質量分析計を介する解析のために注入する。
【0063】
HPLC機器パラメーター
HPLC:Hewlett Packard HP1100 Binary Solvent Delivery システム。
HPLCグラジエント条件
A=H2 O 0.2%ギ酸
B=アセトニトリル0.2%ギ酸
【0064】
【表1】

【0065】
HPLC分析カラム:Keystone Phenyl−1 Hypersil 2.0×100mm、5μ 120Å細孔細孔サイズ、P/N# 105−36−2
インジェクション容量: 10μl
流速: 0.20mL/分
【0066】
質量分析装置パラメーター
装置:Micromass Quattro Ultima, Tandem Mass Spectrometer
イオン化技術: オルソゴナル・スプレー(ESI)
極性: 陽
滞留時間: 300m秒
一時停止時間: 5m秒
スキャン時間: 0.9秒
スキャン・モード: MRM(多反応モニタリング)
イオン/トランジション: 化合物I−A m/z509.1−243.1
化合物II m/z481.1−215.1
【0067】
薬理動態パラメーター
上記血漿濃度データの薬理動態分析を、非コンパートメント法(noncompartmental methods)を用いて実施した。曲線下の面積(AUC(0-t) )を、線形台形方法を用いて時刻0から最後の計測時点まで推定した。除去速度(ke)を、血漿濃度−時間曲線の終期からの対数−線形回帰により推定した。上記曲線の尾の下の面積を、最後に計測された濃度対keの比として推定した。時刻0から無限までの上記曲線下の面積(AUC(0〜∞))を、上記尾下の面積をAUC(0−t)に加えることにより得た。推定半減期を、0.693/keとして推定した。ピーク血漿濃度(Cmax )に関して観察された値を、記録した。
【0068】
【表2】

【0069】
上記表1は、化合物Iの薬理動態値を、構造が密接に関連する化合物A及びBと、比較する。上記データから分かるように、Cmax とAUCは、他の2つの化合物に関してよりも化合物Iに関してかなり高い。
我々は、本発明の多くの態様を記載してきたが、我々の基本的構成を変更して、本発明の物及び方法を使用する他の態様を提供することができるということは、明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II):
【化1】

{式中、Rは、水素又は有機基から選ばれる。}
により表される化合物。
【請求項2】
式中、Rが水素又はtert−ブチルから選ばれる、請求項1に記載の化合物。

【公開番号】特開2011−236235(P2011−236235A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162436(P2011−162436)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【分割の表示】特願2001−586252(P2001−586252)の分割
【原出願日】平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願人】(598032106)バーテックス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (414)
【氏名又は名称原語表記】VERTEX PHARMACEUTICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】130 Waverly Street, Camridge, Massachusetts 02139−4242, U.S.A.
【Fターム(参考)】