説明

II型TGF−βレセプター/免疫グロブリン定常領域融合タンパク質

【課題】TGF−βレセプターへのTGF−βの結合を競合的に阻害する、単離されたTGF−βレセプター融合タンパク質、ならびに細菌および哺乳動物宿主細胞のTGF−βレセプター融合タンパク質の発現を可能にするベクターおよびそれらの使用の方法、を提供すること。
【解決手段】TGF−βレセプターへのTGF−βの結合を競合的に阻害する、単離されたTGF−βレセプター融合タンパク質、ならびに細菌および哺乳動物宿主細胞のTGF−βレセプター融合タンパク質の発現を可能にするベクターおよびそれらの使用の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可溶性TGF-βレセプター融合タンパク質、および線維増殖を含むTGF-βの過剰産生によって特徴付けされる状態の処置におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
トランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)は、ポリペプチドのファミリー(そのうちの3つは、哺乳動物に存在するTGF-β1、TGF-β2およびTGF-β3に存在する)を意味する。これらの因子は、細胞増殖および分化における全体的な効果を有する(RobertsおよびSporn(1990)Handbk.Exp.Pharm.95:419-58)。TGF-βはまた免疫プロセスを調節するという証拠の増大する具体例(growing body)がある(Wahlら(1989)Immunol.Today10:258-61)。損傷部位の免疫細胞の集合を刺激することに加えて、TGF-βはまた、それ自身の続く合成のための強力なポジティブフィードバックを提供する(Kimら(1990)Mol. Cell. Biol.10:1492-1497)。
【0003】
TGF-βは線維増殖障害の病因において顕著な要因であり得る。TGF-βは、コラーゲン、ビグリカン、デコリンおよびフィブロネクチンを含むより多くのタンパク質を産生するように;そしてこれらのタンパク質を分解する酵素を阻害するように細胞を刺激することが公知である。従って、TGF-βは線維組織を蓄積させ得る。例えば、糖尿病腎障害およびヒト糸球体間質増殖糸球体腎炎において、両方の線維増殖障害(顕著なそして重要な病理学的特長)は、糸球体間質マトリックスの蓄積である(Mauerら、(1984)J.Clin.Invest.74:1143-55)。同様に、放射後線維症は、過剰のTGF-β、線維芽細胞増殖、および結合組織の過剰産生によって特徴づけられる(CanneyおよびDean(1990) Brit. J. Radiol.63:620-23)。当業者は、抗TGF-β抗体を投与することによってTGF-βの効果を抑制することを試みている。Borderら、(1990)Nature346:371-74;Borderら、((1992)KidneyInt. 41: 566-570)を参照のこと。
【0004】
TGF-βの生物学的効果は、いわゆるI型、II型、III型TGF-βレセプターを含む、いくつかの特異的細胞表面タンパク質によって媒介される。これらのほとんどは、二官能性試薬DSSを使用して、細胞表面タンパク質に放射性ヨウ素化されたTGF-βを化学的に架橋することによって最初に同定された。ほとんどすべてのTGF-β応答細胞株はI型およびII型レセプターの両方を発現するが、これらの発現レベルは、異なる細胞型の中で変化し得る。他のレセプターの非存在下でI型またはII型レセプターのどちらもTGF-β応答を媒介しないが、II型レセプターのみがTGF-βの結合を可能にし得る。
【0005】
線維増殖障害を処置するための改良されたTGF-βインヒビターの開発において、このようなインヒビターが抗TGF-β抗体よりも非常に低分子量および高い親和性を有するべきであることを考慮することは重要である。特徴のこの組み合わせは、非常に低い用量および投与の容易さを良くすることを可能にする。さらに、ネイティブのタンパク質は、交雑種反応を引き起こさない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の要旨
従って、本発明は、線維増殖障害を有する患者の治療的処置のための新規の組成物および方法に関する。
【0007】
本発明はまた、組換えDNAベクターおよびそれらの使用の方法に関する。ベクターは、細菌および哺乳動物宿主細胞のTGF-βレセプター融合タンパク質の発現を可能にする。
【0008】
本発明の1つの実施態様は、TGF-βのTGF-βレセプターへの結合を競合的に阻害する単離されたTGF-βレセプター融合タンパク質である。好ましくは、このタンパク質は第2タンパク質に連結するTGF-βII型レセプターであるが、第2のタンパク質は免疫グロブリンの定常領域であるTGF-βII型レセプターではない。他の好ましいタンパク質は、TGF-βレセプター/免疫グロブリン接合部のどちら側かに融合領域を含む、配列番号11および13の新規のアミノ酸配列を含む。
【0009】
単離されたポリヌクレオチドもまた、本明細書中で具体化され、発現において、TGF-βII型レセプターではない第2タンパク質に連結されるTGF-βII型レセプターをコードする。好ましいポリヌクレオチドは、以下からなる群から選択される:(a)配列番号1、2、3、4、10および12;(b)標準的なハイブリダイゼーション条件下でこれらの配列にハイブリダイズし、そしてTGF-βII型レセプター融合タンパク質のTGF-β阻害活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;ならびに(c)発現において任意の前述のポリヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0010】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリア中のTGF-βレセプター融合タンパク質(TGF-βリガンドへのTGF-βの結合を競合的に阻害するために十分な量の融合タンパク質)によって例示される。
【0011】
本発明の方法は、本発明のベクターを含む宿主細胞を培養する工程、上記細胞に融合タンパク質を発現させる工程、融合タンパク質を単離および精製する工程を含む、TGF-βレセプター融合タンパク質を産生するための方法を含む。
【0012】
1つの実施態様は、個体に対して有効な量のTGF-βアンタゴニスト(配列番号8、9、11および13のアミノ酸配列を含むTGF-βレセプター融合タンパク質である)を投与することを含む、個体のTGF-βのレベルを低下させるための方法である。
【0013】
別の実施態様は、個体に対して効果的な量のTGF-βアンタゴニスト(配列番号8,9,11および13のアミノ酸配列を含むTGF-βレセプター融合タンパク質である)を投与する工程を含む、関節炎を有する個体のTGF-βのレベルを低下させるための方法である。
【0014】
1つの実施態様において、本発明は線維増殖障害と関連する医療状態について個体を処置するための方法を提供する。方法は、個体の障害および/またはTGF-β活性の阻害活性を減少または回復させるために、個体に対して有効な量の可溶性TGF-βレセプター融合タンパク質の非経口、経口または局部投与を提供する。
なお別の実施態様において、本発明の方法は、静脈内、眼内、関節内、経皮および腸内への方法によるTGF-βレセプター融合タンパク質投与を提供する。本発明の別の実施態様において、TGF-βレセプター融合タンパク質が、コラーゲン血管障害(例えば、全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、または全身性エリテマトーデス)を有する患者に対して投与される。
【0015】
本発明のなお別の実施態様において、TGF-βレセプター融合タンパク質が、眼内線維症および肺線維症を有する患者に投与される。さらなる実施態様において、TGF-βレセプター融合タンパク質が、糖尿病腎障害、糸球体腎炎、増殖性硝子体網膜症、および関節リウマチを有する患者に投与される。
【0016】
さらに別の実施態様において、本発明の方法は、結合組織形成(TGF-βのアップレギュレーションに関連する)の過剰産生から避けるための個体の創傷を処置することを提供する。方法は、個体におけるTGF-βの量または活性を減少させるための、個体に対する十分な量のTGF-βレセプター融合タンパク質の投与を提供する。さらなる実施態様において、創傷の型は、外科的切開、外傷誘導裂傷、および結合組織形成の過剰産生が腹腔内吸着である腹膜に関する創傷を含む。さらなる実施態様において、避けられる結合組織形成の過剰産生は、瘢痕(血管の再狭窄を含むおよび肥大性瘢痕、ならびにケロイド)を含む。
【0017】
別の実施態様において、本発明は、放射線療法を受けている個体または受けようとする個体において、照射後線維症を防止する方法を提供する。TGF-βレセプター融合タンパク質は、線維症組織形成の過剰産生を予防するのに十分な量で投与される。
【0018】
本発明はさらに、以下を提供する:
・(項目1) TGF-βレセプターへのTGF-βの結合を競合的に阻害する、単離されたTGF-βレセプター融合タンパク質。
・(項目2) TGF-βII型レセプターではない第2タンパク質に連結されるTGF-βII型レセプターを含む、項目1に記載の融合タンパク質。
・(項目3) 項目2に記載の融合タンパク質であって、ここで上記第2タンパク質が免疫グロブリンの定常領域である、融合タンパク質。
・(項目4) 配列番号8または配列番号9を含む、項目3に記載の融合タンパク質。
・(項目5) 配列番号8のアミノ酸1〜160を含む、単離されたTGF-βレセプター融合タンパク質。
・(項目6) 配列番号9のアミノ酸1〜160を含む、単離されたTGF-βレセプター融合タンパク質。
・(項目7) 項目5または6に記載の単離されたタンパク質であって、ここで上記アミノ酸が免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部分に連結される、単離されたタンパク質。
・(項目8) 発現において、TGF-βII型レセプターではない第2タンパク質に連結されるTGF-βII型レセプターをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
・(項目9) 項目8に記載の単離されたポリヌクレオチドであって、以下:
(a)配列番号10または12;
(b)標準的なハイブリダイゼーション条件下で上記配列にハイブリダイズし、そしてTGF-βII型レセプター融合タンパク質のTGF-β阻害活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;および
(c)発現において、任意の上記ポリヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質をコードするポリヌクレオチド
からなる群から選択される、単離されたポリヌクレオチド。
・(項目10) 薬学的に受容可能なキャリア中のTGF-βレセプター融合タンパク質を含む組成物であって、上記融合タンパク質がTGF-βリガンドへのTGF-βの結合を競合的に阻害するために十分な量である、組成物。
・(項目11) 項目9に記載の上記ポリヌクレオチド配
列を含む、ベクター。
・(項目12) 項目11に記載のベクターを含む、宿主細胞。
・(項目13) TGF-βレセプター融合タンパク質を産生するための方法であって、項目12に記載の宿主細胞を培養する工程、上記細胞に融合タンパク質を発現させる工程、上記融合タンパク質を単離および精製する工程を包含する、方法。
・(項目14) TGF-βのレベルを低下させる必要性がある個体においてTGF-βのレベルを低下させるための方法であって、配列番号8または9に記載のアミノ酸配列を含むTGF-βレセプター融合タンパク質であるTGF-βアンタゴニストのTGF-βを低減する量を上記個体に投与する工程を包含する、方法。
・(項目15) 関節炎を有する個体において、TGF-βのレベルを低下させるための方法であって、配列番号8または9に記載のアミノ酸配列を含むTGF-βレセプター融合タンパク質であるTGF-βアンタゴニストの有効量を上記個体に投与する工程を包含する、方法。
・(項目16) TGF-β過剰産生と関連する医学的状態に関して個体を処置するための方法であって、配列番号8または9に示されるアミノ酸配列を有するTGF-βII型レセプター融合タンパク質を、上記個体中のTGF-β活性を減少させるために十分な量で、上記個体に投与する工程を包含する、方法。
・(項目17) 項目16に記載の方法であって、ここで上記TGF-βレセプター融合タンパク質が、静脈内投与、眼内投与、関節内投与、経皮投与、および腸内投与からなる群から選択される方法によって投与される、方法。
・(項目18) 項目16に記載の方法であって、ここで上記医学的状態が線維増殖障害を含む、方法。
・(項目19) 項目18に記載の方法であって、ここで上記線維増殖障害が、腎臓線維症、眼内線維症、および肺線維症からなる群から選択される線維症を含む、方法。
・(項目20) 項目18に記載の方法であって、ここで上記線維増殖障害が、糖尿病腎障害、糸球体腎炎、増殖性硝子体網膜症、および骨髄線維症からなる群から選択される、方法。
・(項目21) 項目18に記載の方法であって、ここで上記線維増殖障害が、全身性硬化症、多発性筋炎、強皮症、皮膚筋炎、または全身性エリテマトーデスからなる群から選択されるコラーゲン血管障害である、方法。
【0019】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、例示的および説明的であり、そして請求される本発明のさらなる説明を提供することが意図されることが理解される。添付図面は、本発明のさらなる理解を提供するように含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、そして本明細書の一部分を構成し、そして本発明の原理を説明することを提供する説明と共に本発明のいくつかの実施態様を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
配列の一覧表
【0021】
【化1】

【0022】
【化2】

【0023】
【化3】

【0024】
【化4】

【0025】
【化5】

【0026】
【化6】

【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
【化11】

【0032】
【化12】

【0033】
【化13】

【0034】
【化14】

【0035】
【化15】

【0036】
【化16】

【0037】
【化17】

詳細な説明
以下の用語を本明細書中で使用する:
定義
本明細書中で使用される「組換え」は、タンパク質が組換え(例えば、微生物または哺乳動物の)発現系に由来することを意味する。「微生物の」は、細菌または真菌(例えば、酵母)の発現系で作製された組換えタンパク質をいう。産物としての「組換え微生物の」は、微生物の発現系において産生されたタンパク質を定義し、これは本質的ネイティブな内因性物質を含まない。ほとんどの細菌の培養(例えば、E.coli)で発現されるタンパク質は、グリカンを含まない。酵母で発現されるタンパク質は、哺乳動物細胞で発現されるものとは異なるグリコシル化パターンを有し得る。
【0038】
TGF-βレセプターの特徴として本明細書中を通して使用される「生物学的に活性」は、特定の分子が、検出可能な量のTGF-βを結合し得るおよび/または(例えば、ハイブリッドレセプター構築物の成分として)TGF-β刺激を細胞に伝達し得るために、あるいは天然の(すなわち、非組換え)供給源からのTGF-βレセプターに対して惹起された抗TGF-βレセプター抗体と交叉反応し得るために、本明細書中に開示される本発明の実施態様と有意なアミノ酸配列相同性を共有することを意味する。好ましくは、本発明の範囲内の生物学に活性なTGF-βレセプター融合物は、標準的な結合アッセイにおいて、1ナノモルのレセプターあたり0.1ナノモルより多いTGF-β、および最も好ましくは1ナノモルのレセプターあたり0.5ナノモルより多いTGF-βを結合し得る(以下を参照のこと)。
【0039】
同様に、本明細書中で使用される「TGF-β結合分子」は、TGF-βレセプター融合タンパク質と同じまたは実質的に同じ生物学的活性を示す任意の分子である。
【0040】
「個体」は、TGF-βを産生する生きている生物(ヒト、他の哺乳動物、および任意のほかの動物を含む)を意味する。
【0041】
本明細書中で使用される「TGF-β過剰産生」は、血清または組織に存在するTGE-βの量であり、これは通常のレベルを有意に超える。より好ましくは、TGF-β過剰産生は、通常の約2〜約20倍のレベルである。なおより好ましくは、TGF-β過剰産生は、通常の約2〜約15倍のレベルである。例えば、Deguchiは、気管支肺胞細胞の24時間のTGF-β産生を測定し、そしてエリテマトーデスにおいて1288+/-453pg/10細胞および強皮症において1417+/-471pg/10細胞の過剰TGF-β産生に対して、410+/-255pg/10細胞の通常レベルを報告した((1992)Ann.Rheum.DIs.51:362-65)。TGF-β過剰産生は、通常のレベルと組み合わせて、TGF-βタンパク質の測定、TGF-βMRNAの測定、またはその合成がTGF-βによって刺激される産物(例えば、コラーゲン)の測定によって決定され得る。
【0042】
「結合組織」は、線維芽細胞および線維性タンパク質(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)の存在によって特徴付けられる線維性組織である。
【0043】
「線維増殖性(fibroproliferative)疾患」は、繊維芽細胞の増殖および対応する細胞外マトリックス(例えば、フィブロネクチン、ラミニン、およびコラーゲン)の過剰発現によって特徴付けられる。
【0044】
本明細書中で使用される「治療用組成物」は、本発明のタンパク質および他の生理学的に適合性の成分を含むとして定義される。治療用組成物は、水、ミネラル、およびキャリア(例えば、タンパク質)のような賦形剤を含み得る。
【0045】
本明細書中で使用される本発明のタンパク質の「有意な量」は、過剰のTGF-βの生物学的活性を中和するTGF-βレセプター融合タンパク質の量をいう。(1)改善の適切な臨床可変、(2)線維症における効果の病理的評価および/または線維症の免疫抑制または予防、あるいは(3)TGF-βの直接阻害によって決定され得る。
【0046】
「アミノ酸」は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質のモノマー単位である。天然に存在するペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質において見出される20のアミノ酸が存在し、これらの全ては、L-異性体である。用語はまた、アミノ酸のアナログならびにタンパク質アミノ酸のD-異性体およびそれらのアナログを含む。
【0047】
「タンパク質」は、任意の20のアミノ酸から本質的に構成される任意のポリマーである。「ポリペプチド」はしばしば、比較的大きなポリペプチドに関して使用され、そして「ペプチド」はしばしば、小さなポリペプチドに関して使用されるが、当該分野でのこれらの用語の用法は重複し、そして変化する。本明細書中で使用される用語「タンパク質」は、他に示さない限りは、ペプチド、タンパク質、およびポリペプチドをいう。
【0048】
アミノ酸残基の「機能的に等価物」は、機能的等価物で置換されたアミノ酸残基と類似の生理化学的特徴を有するアミノ酸である。
【0049】
「融合」は、個々のペプチド骨格を介し、最も好ましくは、これらのタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子の遺伝子発現を介する、2つ以上のタンパク質またはそのフラグメントの同一線形(co-linear)共有結合をいう。
【0050】
「変異体」は、生物の遺伝物質における任意の変化、特に野生型ポリヌクレオチド配列における任意の変化(例えば、欠失、置換、付加、または変更)、または野生型タンパク質における任意の変化である。
【0051】
「野生型」は、通常はインビボに存在するような、それぞれ、タンパク質のエキソンの天然に存在するポリヌクレオチド配列またはその一部、あるいはタンパク質配列またはその一部である。
【0052】
「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の両方についての、0.5×SSC〜約5×SSCおよび65℃に実質的に等価な塩および温度条件である。本明細書中で使用される用語「標準的なハイブリダイゼーション条件」は、それゆえ、操作上の定義であり、そしてハイブリダイゼーション条件の範囲を包含する。より高いストリンジェンシー条件は、例えば、プラークスクリーニング緩衝液(0.2%ポリビニルピロリドン、0.2%Ficoll 400;0.2%ウシ血清アルブミン、50mM Tris-HCl(pH7.5);1M NaCl;0.1%ピロリン酸ナトリウム;1% SDS);10%硫酸デキストラン、および100μg/mlの変性させて超音波処理したサケ精子DNAで、65℃にて12〜20時間ハイブリダイズする工程、および75mMNaCl/7.5mMクエン酸ナトリウム(0.5×SSC)/1%SDSで65℃にて洗浄する工程を含み得る。より低いストリンジェンシー条件は、例えば、プラークスクリーニング緩衝液、10%硫酸デキストラン、および110μg/mlの変性させて超音波処理したサケ精子DNAで、55℃にて12〜20時間ハイブリダイズする工程、および300mMNaCl/30mMクエン酸ナトリウム(2.0×SSC)/1%SDSで55℃にて洗浄する工程を含み得る。Current Protocols inMolecular Biology, John Wiley&Sons,Inc. New York, 6.3.1-6.3.6節(1989)。
【0053】
「発現制御配列」は、これらの遺伝子に作動可能に連結される場合、遺伝子の発現を調節および制御するポリヌクレオチドの配列である。
【0054】
「作動可能に連結された」は、ポリヌクレオチド配列(DNA,RNA)が発現制御配列がそのポリヌクレオチド配列の転写および翻訳を調節および制御する場合、発現制御配列に作動可能に連結されることである。用語「作動可能に連結された」は、発現されるポリヌクレオチド配列の前に適切な開始シグナル(例えば、ATG)を有し、そして発現制御配列の制御下でポリヌクレオチド配列の発現およびポリヌクレオチド配列によってコードされる所望のポリペプチドの産生を可能にする、正確なリーディングフレームを維持することを含む。
【0055】
「発現ベクター」は、発現ベクターが宿主細胞に導入される場合に、少なくとも1つの遺伝子の発現を可能にするDNAプラスミドまたはファージ(とりわけ他の一般的な例)のようなポリヌクレオチドである。ベクターは、細胞において複製可能であってもなくても良い。
【0056】
「単離された」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)は、ポリペプチドをコードする核酸(すなわち、ポリヌクレオチド配列)に適用される場合、RNAまたはDNAポリヌクレオチド、ゲノムポリヌクレオチドの一部、cDNA、あるいはその起源または操作によって以下の合成ポリヌクレオチドを意味する:(i)天然に結合される(例えば、発現ベクターまたはその一部として宿主に存在する)ポリヌクレオチドの全てと結合されない;または(ii)天然に連結されるものとは異なる核酸もしくは他の化学部分に連結される;または(iii)天然に存在しない。「単離された」によって、以下のポリヌクレオチド配列がさらに意味される:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅されたポリヌクレオチド配列;(ii)化学的に合成されたポリヌクレオチド配列;(iii)クローニングによって組換え的に産生されたポリヌクレオチド配列;または(iv)切断およびゲル分離によって精製されたポリヌクレオチド配列。
【0057】
従って、「実質的に純粋な核酸」は、核酸が由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて通常隣接するコード配列の1つまたは両方とすぐ隣接しない核酸である。実質的に純粋なDNAはまた、さらなる配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換えDNAを含む。
【0058】
「単離された」(「実質的に純粋」と交換可能に使用される)は、ポリペプチドに適用される場合、その起源または操作による以下のポリペプチドまたはその一部を意味する:(i)発現ベクターの一部の発現産物として宿主細胞に存在する;または(ii)天然に連結されるもの以外のタンパク質もしくは他の化学部分に連結される;または(iii)天然に存在しない。「単離された」によって、以下のタンパク質がさらに意味される:(i)化学的に合成されたタンパク質;または(ii)宿主細胞において発現され、そして関連するタンパク質から精製されたタンパク質。用語は一般的に、天然に存在するほかのタンパク質および核酸から分離されているポリペプチドを意味する。好ましくは、ポリペプチドはまた、抗体またはそれを精製するのに使用されるゲルマトリックス(ポリアクリルアミド)のような物質から分離される。
【0059】
本明細書中で使用される「異種プロモーター」は、遺伝子または精製された核酸分子と天然では結合していないプロモーターである。
【0060】
本明細書中で使用される「相同な」は、用語「同一」と同義であり、そして2つのポリペプチド間、2つの分子間、または2つの核酸間の配列類似性をいう。2つの比較される配列の両方における位置が、同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットで占有される場合(例えば、2つのDNA分子の各々の位置が、アデニンによって占有される場合、または2つのポリペプチドの各々の位置がリジンで占有される場合)、次いでそれぞれの分子は、その位置で相同である。2つの配列間の相同性の割合は、比較される位置の数で除算した2つの配列によって共有される一致位置または相同位置の数×100の関数である。例えば、2つの配列における10の位置のうち6が一致するか、または相同である場合、次いで2つの配列は60%相同である。例示の目的で、DNA配列CTGACTおよびCAGGTTは、50%相同性を共有する(6つの全位置のうち3つが一致する)。一般的には、比較は、2つの配列が整列されて、最大相同性を与える場合になされる。
【0061】
用語「ペプチド」、「タンパク質」、および「ポリペプチド」は、本明細書中で交換可能に使用される。用語「ポリヌクレオチド配列」および「ヌクレオチド配列」もまた、本明細書中で交換可能に使用される。
【0062】
本発明の実施は、他に示されない限りは、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の従来の技術を使用し、これらは当業者の範囲内である。このような技術は、文献に記載される。例えば、MolecularCloning: A Laboratory Manual,第2版(Sambrook, FritschおよびManiatis編)、Cold SpringHarbor Laboraotry Press, 1989;DNA Cloning,第IおよびII巻(D.N.Glover編),1985;OligonucleotideSynthesis,(M.J.Gait編)1984;米国特許第4,683,195号(Mullisら);Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Transcriptionand Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins編),1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney編).AlanR.Liss,Inc.,1987;Immobilized Cells and Enzymes, IRL Press, 1986;A PracticalGuide to Molecular Cloning(B.Perbal)1984;Methods in Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら編)、AcademicPress, New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編),1987,ColdSpring Harbor Laboratory;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology,(MayerおよびWalker編),Academic Press, London, 1987;Handbook of Experiment Immunology, 第I〜IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編)、1986;Manipulatingthe Mouse Embryo, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1986を参照のこと。
【0063】
II.単離されたタンパク質およびポリヌクレオチドの一般的な特徴
A.可溶性TGF-βレセプター融合物およびTGF-βアンタゴニストとしてのそれらのアナログ
本発明は、単離されそして精製されたTGF-βアンタゴニストポリペプチドを利用する。本発明で使用される単離されそして精製されたTGF-βアンタゴニストポリペプチドは、天然または内因性起源の物質を含む他のものを実質的に含まず、そして約1%未満の産生プロセスの残存タンパク質夾雑物量を含む。本発明で使用されるTGF-βポリペプチドアンタゴニストは必要に応じて、ネイティブパターンのグリコシル化と関連しない。
【0064】
本明細書中で使用される用語「TGF-βレセプター」は、ネイティブの哺乳動物TGF-βレセプターまたはTGF-β結合分子配列に実質的に類似し、そしてTGF-βに結合し得、そしてTGF-βをTGF-βレセプターを含む細胞膜への結合から阻害し得る、アミノ酸配列を有するタンパク質をいう。好ましいTGF-βレセプターは、成熟全長TGF-βレセプターII型である。TGF-βレセプターII型は、細胞内ドメイン、膜貫通ドメイン、およびTGF-βに結合する細胞外部分を有する膜結合タンパク質である。ヒトTGF-βレセプターII型は、Linら、Cell:68,775-785(1992)に示されるアミノ酸配列を有することが決定されており、そして米国特許第5,693,607号に示されるように修正されている。
【0065】
本発明の好ましいTGF-βレセプターは、TGF-βレセプターII型の可溶性形態、ならびに可溶性TGF-βII型結合分子である。可溶性TGF-βレセプターは、例えば、少なくとも20アミノ酸を有するネイティブなタンパク質のアナログまたはサブユニットを含み、そしてこれは、TGF-βレセプターII型またはTGF-β結合分子に共通して、少なくとも何らかの生物学的活性を示す。
【0066】
用語「TGF-βII型レセプター融合タンパク質」または「TGF-βRII:Fc」は、交換可能に使用され、そして本発明の組成物の最も好ましい実施態様を示す。この融合タンパク質は、TGF-βレセプターII型ではない第2のタンパク質の少なくとも一部に連結されるTGF-βレセプター(II型)の少なくとも一部を含む。詳細には、第2のタンパク質は、免疫グロブリン(好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1)の定常領域であり得るか、またはヒンジCH2またはCH3のようなそれらの一部であり得る。本発明の好ましい融合物は、ホモダイマーであり、ジスルフィド結合によって互いに結合されるが、ヘテロダイマー形態もまた、本発明の範囲内であることを意味する。第IV節を参照のこと。
【0067】
従って、本発明の最も好ましい組成物は、免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖のいずれかまたは両方の可変ドメインで置換されたTGF-βレセプター配列を有し、そして未改変の定常領域ドメインを有する、組換えキメラ抗体分子のような可溶性融合タンパク質である、TGF-βアンタゴニストである。例えば、キメラTGF-βRII/IgG1は、キメラ遺伝子から産生される:TGF-βRII/ヒトγ1重鎖キメラ。キメラ遺伝子の翻訳および転写の後に、遺伝子産物は、二価を提示するTGF-βレセプターを有するホモダイマーに集められる。TGF-βレセプターのこのような多価形態は、TGF-βリガンドについての増強された結合親和性を有し得る。
【0068】
本発明の可溶性TGF-βレセプター構築物は、膜貫通領域を欠いている(そして細胞から分泌される)が、TGF-βを結合する能力は保持する。種々の生物学的同等性のタンパク質およびアミノ酸アナログは、ネイティブのTGF-βレセプターの細胞外領域の全てまたは一部に対応するアミノ酸配列(例えば、配列番号8または9)あるいは配列番号8または9の配列に実質的に類似するかまたは少なくとも60%相同であるアミノ酸配列を有し、そしてこれらのアナログはTGF-βリガンドに結合する点で、生物学的に活性である。等価なTGF-βレセプターは、1つ以上の置換、欠失、または付加によってこれらの配列から変化し、そしてTGF-βに結合する能力または細胞表面結合TGF-βレセプタータンパク質を介してTGF-βシグナル伝達活性を阻害する能力を保持する、ポリペプチドを含む。TGF-βシグナル伝達活性の阻害は、細胞を組換えTGF-βレセプターDNAでトランスフェクトして、組換え発現を得ることによって決定され得る。次いで、細胞をTGF-βと接触させ、そして得られる代謝効果を実験する。効果が、リガンドの作用に寄与する場合、次いで組換えレセプターはシグナル伝達活性を有する。ポリペプチドがシグナル伝達活性を有するかを決定するための例示的な手順は、Idzerdaら、J.Exp.Med.171:861(1990);Curtisら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.86:3045(1989);Prywesら、EMBO J. 5:2179(1986)、およびChouら、J.Biol.Chem. 262:1842(1987)に開示される。あるいは、内因性TGF-βレセプターを発現し、そしてTGF-βに対する検出可能な生物学的応答を有する原発性細胞または細胞株もまた利用され得る。
【0069】
本発明のタンパク質「フラグメント」は、TGF-βに結合し得るタンパク質の一部または全てである。好ましくは、このフラグメントは、TGF-βについて高い親和性を有する。融合タンパク質の好ましいフラグメントは、免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部に結合したTGF-βII型の細胞外部分の少なくとも一部を含むタンパク質フラグメントである。好ましくは、親和性は、約10-11から10-12Mの範囲であるが、親和性は、異なるサイズのフラグメントで相当異なり得、10-7から10-13Mである。1つの実施態様において、フラグメントは約10から110アミノ酸長であり、そして免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部に連結されるTGF-β結合部位を含む。
【0070】
TGF-βレセプターの細胞外ドメインのネイティブなアミノ酸配列(例えば、配列番号8または9の1〜160アミノ酸が融合タンパク質に使用される場合、アミノ酸配列は、II型レセプターの全体の細胞外部分のものに似ている。より小さいTGF-βレセプターII型部分が使用される場合、それらは、高い親和性でTGF-βを結合する限りは、II型TGF-βレセプターの細胞外部分の種々の部分に似ている。所定の「フラグメント」の配列は、最も好ましくは、ネイティブのTGF-βレセプターII細胞外領域に基づくが、定義はまた、TGF-βについて高い親和性を有する本発明のタンパク質のアナログを含む。このようなアナログは、アミノ酸の保存的置換によって作製されたもの、ならびにフラグメントを合成する変異された細胞によって作製されたものを含む。
【0071】
本発明の方法に有用なTGF-βレセプターのファミリーメンバーは、それらの対立遺伝子改変体、系統発生的対応物、または他の改変対を含む天然に存在するネイティブのタンパク質のいずれか(天然に供給されたかまたは化学的に産生されたかのいずれかのムテインまたは変異体タンパク質を含む)、ならびに組換え形態およびファミリーの新たな活性メンバーを含む。ポリペプチドは、配列番号8または9のアミノ酸配列に、少なくとも60%、80%、90%、95%、98%、または99%相同なアミノ酸を含む。ポリペプチドはまた、配列番号8または9のアミノ酸配列と本質的に同じアミノ酸配列を含み得る。ポリペプチドは、少なくとも5、10、20、50、100、または150アミノ酸長であり、配列番号8または9の少なくとも5、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、最も好ましくは少なくとも50、100、または150の連続するアミノ酸を含む。
【0072】
本発明のポリペプチドは、複数の遺伝子の存在の結果として、別の転写事象として、別のRNAスプライシング事象として、ならびに別の翻訳および翻訳後事象として惹起されるものを含む。ポリペプチドは、合成手段によって全体的に作製され得るか、またはタンパク質ネイティブの細胞において発現される場合に生じる、実質的に同じ翻訳後改変体を生じる系(例えば、培養細胞)において発現され得るか、またはネイティブな細胞で発現される場合に生じる同じ翻訳後修飾の省略を生じる系において発現され得る。
【0073】
B.単離されたポリヌクレオチド配列
本発明の好ましいポリヌクレオチドは、発現される際には野生型TGF-βレセプターをコードする、ポリヌクレオチドに由来する(例えば、配列番号1〜4、10、および12)。米国特許第5,693,607号もまた、参照のこと。TGF-βレセプターII型分子をコードするcDNA(すなわち、配列番号2の832〜1311として番号付けられたヌクレオチド、言い換えると配列番号4)は、TGF-βレセプターをコードする相補的DNA(cDNA)配列である。TGF-βレセプターファミリーの他のメンバーは、野生型TGF-βI型ポリヌクレオチド(REF)、および野生型III型ポリヌクレオチド(REF)として提示される。
【0074】
さらに、単離された、配列番号1〜4、10および12に示されるポリヌクレオチドは変更されて機能的に等価なポリヌクレオチドを提供し得る。ポリヌクレオチドは、以下の条件の少なくとも1つを満たす場合、配列番号1〜4、10、および12のポリヌクレオチドと比較して「機能的に等価」である:(a)「機能的に等価」とは、標準的なハイブリダイゼーション条件下で、上述の配列(配列番号1〜4、10、12)のいずれかにハイブリダイズするポリヌクレオチドである。最も好ましくは、これは野生型TGF-βレセプターと同じ生物学的活性を有するTGF-βレセプタータンパク質をコードする:ならびに、(b)「機能的に等価」とは、発現される際に配列番号1〜4、10および12のポリヌクレオチドのいずれかによってコードされるアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドである。
【0075】
ヌクレオチドコード配列の縮重に起因して、他のポリヌクレオチドが使用されてTGF-βレセプターまたはその融合物をコードし得る。TGF-βII型レセプターについて、これらは配列番号8または9をコードするDNAの全て、または部分を含み、これらは配列内の同じアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更され、それによって、サイレントな変化を生成する。このように変更された配列は配列番号8または9の等価物とみなされる。例えば、Phe(f)は2つのコドンであるTTCまたはTTTによってコードされ、Try(Y)はTACまたはTATによってコードされ、そしてHis(H)はCACまたはCATによってコードされる。一方で、Trp(W)は唯一のコドンであるTGGによってコードされる。従って、特定のタンパク質をコードする所定のDNA配列に対して、それをコードする多数のDNA縮重型配列が存在することが理解される。これらの縮重型DNA配列は本発明の範囲内であると考えられる。
【0076】
ウサギTGF-βII型レセプターを組み込む本発明の融合タンパク質は、cDNAおよび推定アミノ酸配列に対して、それぞれ、配列番号2および8に示される。ヒトTGF-βII型レセプターを組み込む融合タンパク質は、cDNAおよび推定アミノ酸配列に対して、それぞれ、配列番号4および9に示される。
【0077】
本発明の好ましいTGF-βRII:Fcタンパク質は、新規の「連結(junction)」DNA配列(配列番号10)およびアミノ酸(配列番号11)を含む。配列番号10は、ウサギTGF-βRIIDNAと免疫グロブリンのDNAとの間のCTG/GTC連結のどちらか一方に、11の3塩基連鎖のコドンを表す。配列番号10において、TGF-β配列はCTGの3塩基連鎖の後で終結し、そして免疫グロブリン配列はGTCの3塩基連鎖で始まる。対応する推定ウサギアミノ酸「連結」配列は配列番号11に表され、このなかでTGF-βレセプター配列の末端はロイシンであり、そして免疫グロブリン配列の始まりはその直後のバリンである。対応する「連結」ヒトcDNAおよびアミノ酸配列はそれぞれ配列番号12および13である。配列番号2において、対応する連結はヌクレオチド1309から開始する3塩基連鎖で始まり、そしてヌクレオチド1312で開始する3塩基連鎖で終結する。
【0078】
配列番号10および12は、任意のTGF-βレセプター:Fc融合タンパク質をコードする任意のDNA配列への標準条件下でのハイブリダイゼーションに必要とされる最小DNAである。それにもかかわらず、プローブ全体が、連結の両側にハイブリダイズし、そしてTGF-βレセプター/定常領域連結の両側がハイブリダイゼーションに関与するならば、より小さい配列が存在し得る。さらに、当業者は配列番号10および12より大きなDNA配列が、同様にハイブリダイゼーションに適していることを理解する。当業者は、特定のプローブ(例えば、配列番号10および12)が連結の両側にハイブリダイズし得る場合、ポリヌクレオチドキナーゼを使用して適切に標識されたATPのリン酸塩で、1本鎖センスオリゴヌクレオチドまたは1本鎖アンチセンスオリゴヌクレオチドのいずれかの5’末端を標識することによって試験し得る。本発明の配列はハイブリダイズしなくてはならず、従って、両方のオリゴヌクレオチドプローブによって標識されなくてはならない。本発明は、連結配列番号10および12をコードする縮重型配列を十分に包含することが、さらに理解される。
【0079】
ほとんどの哺乳動物遺伝子と同様に、哺乳動物TGF-βレセプターはおそらく複数のエキソン遺伝子によってコードされる。転写に続く異なるmRNAスプライシング事象に起因し得、そして本明細書中に請求されるcDNAと同一であるかまたは類似である広い領域を共有する、他のmRNA構築物もまた、使用され得る。TGF-βRII:FccDNAクローンを含むベクターを使用して可溶性TGF-βRII:Fcを発現および精製した。融合タンパク質を発現するプラスミドはAmerican TypeCulture Collection、12301 Parklawn Drive、Rockville、Md.20852、U.S.A.(受託番号 )に の名称のもとに寄託されている。
【0080】
他の哺乳動物TGF-βレセプターcDNAは、種間交差ハイブリダイゼーション(cross-specieshybridization)による特定の哺乳動物cDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして、適切なヒトTGF-βレセプターDNA配列を使用することによって、単離され得る。本発明に使用される哺乳動物TGF-βレセプターには、例として、霊長類、ヒト、マウス、イヌ、ネコ、ウシ、ウマおよびブタのTGF-レセプターが挙げられる。哺乳動物TGF-βレセプターは、ヒトTGF-βレセプターDNA配列由来の1本鎖cDNAを、哺乳動物cDNAライブラリーからTGF-βレセプターcDNAを単離するためのハイブリダイゼーションプローブとして使用して、種間交差ハイブリダイゼーションによって入手され得る。
【0081】
III.組換えポリペプチドの生成
本明細書中に記載される単離されたポリペプチドは、当該分野において公知の任意の適切な方法によって生成され得る。このような方法は、直接タンパク質合成法から、単離されたポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し、そしてこれらの配列を適切な形質転換宿主中で発現することに及ぶ。例えば、cDNAは、配列番号8,9,11または13のポリペプチドをコードする標識されたDNAフラグメントでヒトcDNAライブラリーをスクリーニングし、そしてオートラジオグラフィーによってポジティブなクローンを同定することによって入手され得る。従来の方法を使用して、さらなる回数のプラーク精製およびハイブリダイゼーションが行われる。
【0082】
組換え方法の1つの実施態様において、DNA配列は、目的の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離するかまたは合成することによって構築される。必要に応じて、配列は部位特異的変異誘発によって変異誘発されて、その機能的なアナログを提供し得る。例えば、Zoellerら、Proc.-NatAcad.Sci.USA 81:5662-5066(1984)および米国特許第4,588,585号を参照のこと。目的のポリペプチドをコードするDNA配列を構築する別の方法は、オリゴヌクレオチド合成機を使用する化学的合成法によるものである。このようなオリゴヌクレオチドは、好ましくは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計され得、そして好ましくは目的の組換えポリペプチドが生成される宿主細胞において好まれるコドンを選択する。
【0083】
標準的な方法が適用されて、目的の単離されたポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチド配列を合成し得る。例えば、完全なアミノ酸配列が使用されて、逆に翻訳された(back-translated)遺伝子を構築し得る。Maniatisら、前述を参照のこと。さらに、特定の単離されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むDNAオリゴマーが合成され得る。例えば、所望のポリペプチドの一部をコードするいくつかの小さいオリゴヌクレオチドが合成されて、次いで連結され得る。代表的には、個々のオリゴヌクレオチドは、相補的なアセンブリに対する5‘または3’オーバーハングを含む.
一旦、(合成、部位特異的変異誘発または別の方法によって)アセンブリされると、目的の特定の単離されたポリペプチドをコードする変異型DNA配列は発現ベクターに挿入され、そして所望の宿主でのタンパク質の発現に適切な発現制御配列に作動可能に連結される。適したアセンブリは、ヌクレオチド配列決定、制限酵素地図法および適切な宿主内での生物学的に活性なポリペプチドの発現によって確認され得る。当該分野において周知のように、宿主にトランスフェクトされた遺伝子の高い発現レベルを得るため、この遺伝子は、選択された発現宿主において機能的である転写および翻訳発現制御配列に作動可能に連結されなければならない。
【0084】
A.組換えTGF-βレセプターの発現
好ましくは、組換え発現ベクターが使用されて、TGF-βレセプター融合物をコードするDNAを増幅または発現する。組換え発現ベクターは複製可能なDNA構築物であり、これは、哺乳動物、微生物、ウイルスまたは昆虫遺伝子由来の適切な転写または翻訳調節エレメントに作動可能に連結された、TGF-βレセプター融合物または生物学的に等価なアナログをコードする、合成またはcDNA由来DNAフラグメントを有する。転写単位は、一般的に、以下に詳細に記載されるように、(1)遺伝子エレメントまたは遺伝子発現において調節的な役割を有するエレメント、例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRMAへと転写されそしてタンパク質へと翻訳される構造的配列またはコード配列、ならびに(3)適切な転写および翻訳の開始および終結配列、のアセンブリを含む。このような調節エレメントには、転写を制御するオペレーター配列が含まれ得る。通常、宿主内で複製する能力は複製起点によって付与され、そして形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子がさらに組み込まれ得る。DNA領域は、これらが互いに機能的に関連する場合は、作動可能に連結される。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)についてのDNAが、それがポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現される場合は、ポリペプチドについてのDNAに対して作動可能に連結されるか、プロモーターが、それが配列の転写を制御する場合にはコード配列に作動可能に連結されるか、またはリボソーム結合部位が、それが翻訳を可能にするように配置される場合はコード配列に作動可能に連結される。一般的に、作動可能に連結されるとは、連続することを意味し、そして分泌リーダーの場合は、連続およびリーディングフレーム内にあることを意味する。酵母発現系での使用を意図される構造的エレメントには、好ましくは、宿主細胞により翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。あるいは、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列を伴わずに発現される場合、N末端メチオニン残基を含み得る。続いて、この残基は発現された組換えタンパク質から、必要に応じて、切断されて最終産物を提供し得る。
【0085】
哺乳動物TGF-βレセプターをコードするDNA配列(これは微生物中で融合物として発現されるはずである)は、好ましくは、DNAのmRNAへの転写を未成熟に終結させ得るイントロンを含み得る。なぜならば、このような転写の未成熟な終結は、例えば、それが有利なC末端短縮(例えば、細胞膜に結合していない可溶性レセプターを生じる膜貫通領域の欠失)を有する変異体を生じる場合、望ましいものであり得るからである。コードの縮重に起因して、同じアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列において、多量の改変が存在し得る。上記のように、他の実施態様には、標準的な条件下(50℃、2×SSC)において、提供されるcDNAの配列にハイブリダイズし得る配列、および生物学的に活性な本発明のタンパク質をコードする配列にハイブリダイズする他の配列かまたはそれらに対する縮重体が含まれる。
【0086】
発現制御配列および発現ベクターの選択は宿主の選択に依存する。広範な種々の発現宿主/ベクターの組合せが使用され得る。真核生物宿主に有用な発現ベクターには、例えば、SV40、ウシパピローマウィルス、アデノウィルスおよびサイトメガロウィルス由来の発現制御配列を含むベクターが挙げられる。細菌宿主に有用な発現ベクターには、Esherichiacoli由来のプラスミドのような公知の細菌プラスミド(pCR1、pBR322、pMB9およびそれらの誘導体を含む)、広範な宿主範囲のプラスミド(例えば、M13)および糸状一本鎖DNAファージが挙げられる。好ましいE.coliベクターには、λファージpLプロモーターを含むpLベクター(米国特許第4,874,702号)、T7ポリメラーゼプロモーターを含むpETベクター(Studierら、Methodsin Enzymology 185:60-89、1990 1)、およびpSP72ベクター(Kaelinら、前述)が挙げられる。酵母細胞に有用な発現ベクターには、例えば、2μおよび動原体プラスミドが挙げられる。
【0087】
さらに、任意の広範な種々の発現制御配列が、これらのベクターに使用され得る。このような有用な制御配列には、上述の発現ベクターの構造遺伝子に関連する発現制御配列が挙げられる。有用な発現制御配列の例には、例えば、SV40またはアデノウィルスの初期および後期プロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、λファージ(例えば、pL)のメジャーオペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性フォスファターゼ(例えば、Pho5)のプロモーター、酵母α-接合系および真核生物細胞または原核生物細胞およびそれらのウィルスの遺伝子の発現を制御することが公知である他の配列、ならびにそれらの種々の組合せが挙げられる。
【0088】
組換えTGF-βレセプターDNAまたは組換えTGF-βR:FcDNAは、適切な宿主の実質的に同質の単一培養物(monoculture)を含む組換え発現系で発現されるか、または増幅され、この宿主は、(形質転換またはトランスフェクションによって)染色体DNA中に組換え転写単位が安定に組み込まれているか、または常在のプラスミドの成分として組換え転写単位を保有する。一般に、系を構成する細胞は単一の祖先の形質転換体の子孫である。本明細書中に規定されるように、組換え発現系は、発現されるDNA配列または合成遺伝子に連結された調節エレメントの誘導の際に、異種タンパク質を発現する。
【0089】
哺乳動物TGF-βレセプターおよびその融合タンパク質の発現に適切な宿主細胞には、適切なプロモーターの制御下での原核生物、酵母または高等真核生物細胞が挙げられる。原核生物にはグラム陰性生物またはグラム陽性生物、例えば、E.coliもしくはbacillusが挙げられる。高等真核生物細胞には、以下に記載される哺乳動物起源の樹立された細胞株が含まれる。また、無細胞翻訳系がまた使用されて、本発明のDNA構築物由来のRNAを使用して哺乳動物TGF-βレセプターおよびTGF-βR:Fcが生成され得る。細菌、真菌、酵母および哺乳動物細胞の宿主での使用のための適切なクローニングベクターおよび発現ベクターは、Pouwelら(CloningVectors: A Laboratory Manual, Elsevier,N.Y.,1985)により記載され、この関連の開示は参考として本明細書中に援用される。
【0090】
本発明の組換えタンパク質はまた、好ましくはSaccharomyces種、例えば、S.cerevisiae由来の酵母宿主において発現され得る。他の属の酵母、例えば、PichiaまたはKluyveromycesもまた、使用され得る、酵母ベクターは一般に2mu酵母プラスミド由来の複製起点または自律複製配列(ARS)、プロモーター、本発明のタンパク質をコードするDNAおよびポリアデニル化および転写終結ならびに選択遺伝子のためのDNA配列を含む。好ましくは、酵母ベクターは、複製起点ならびに酵母およびE.coliの両方の形質転換を可能にする選択マーカー、例えば、E.coliのアンピシリン耐性遺伝子およびS.cerevisiaeTRP1またはURA3遺伝子(これはトリプトファン中で増殖する能力を欠失した酵母の変異株に対する選択マーカーを提供する)ならびに下流の構造遺伝子の転写を誘導する高度に発現された酵母遺伝子由来のプロモーターを含む。次いで、酵母宿主細胞ゲノムのTRP1またはURA3の破壊(lesion)の存在は、トリプトファンまたはウラシルが存在しない場合での増殖によって、形質転換を検出する有効な環境を提供する。
【0091】
酵母ベクターにおける適切なプロモーター配列は、メタロチオネイン、3-ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzemanら、J.Biol.Chem.255:2073、1980)または他の解糖酵素(Hessら、J.Adv.EnzymeReg.7:149、1968;およびHollandら、Biochem.7:4900、1978)、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース-6-リン酸イソメラーゼ、3-ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼおよびグルコキナーゼに対するプロモーターが挙げられる。酵母発現での使用に適切なベクターおよびプロモーターは、R.Hitzemanら、EPA73、657に、さらに記載される。好ましい酵母ベクターは、E.coliでの選択および複製のためのpUC18由来のDNA配列(Amp遺伝子および複製起点)、ならびにグルコース抑制ADH2プロモーターおよびα因子分泌リーダーを含む酵母DNA配列を使用してアセンブリされ得る。ADH2プロモーターはRussellら(J.Biol.Chem.258:2674、1982)およびBeierら(Nature300:724、1982)により記載されている。酵母α因子リーダー(これは異種タンパク質の分泌に関する)は、プロモーターおよび発現される構造遺伝子の間に挿入され得る。例えば、Kurjanら、Cell30:933、1982およびBitterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 81:5330、1984を参照のこと。リーダー配列は修飾されて、その3'末端近傍に、リーダー配列の外来遺伝子に対する融合を容易にする1つ以上の有用な制限部位を含み得る。
【0092】
適切な酵母形質転換プロトコールは当業者に公知である。例示的な技術はHinnenら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:1929,1978、Shermanらにより記載されるLaboratoryCourse Mannual for Methods in Yeast Genetics,Cold Spring Harbor Laboratory,ColdSpring Harbor、N.Y.、1986により、記載される。
【0093】
種々の哺乳動物または昆虫細胞培養系もまた、有利に使用されて組換えタンパク質を発現し得る。このようなタンパク質が、一般的に正しく折り畳まれ、適切に修飾され、そして完全に機能的であるので、哺乳動物細胞での組換えタンパク質の発現が特に好ましい。適切な宿主細胞株の例には、Gluzman(Cell 23:175、1981)により記載されるサル腎臓細胞のCOS-7株、および、例えば、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLaおよびBHK細胞株を含む、適切なベクターを発現し得る他の細胞株が含まれる。哺乳動物発現ベクターには、発現される遺伝子に連結された複製起点、適切なプロモーターおよびエンハンサーのような転写されないエレメント、ならびに必須であるリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナーおよびアクセプター部位のような他の5'または3'隣接非転写配列、および他の5'または3'隣接非翻訳配列、ならびに転写終結配列を含み得る。昆虫細胞での異種タンパク質産生のためのバキュロウィルス系は、LuckowおよびSummers、Bio/Technology6:47(1988)により概説されている。
【0094】
cDNAを含む組換え発現ベクターは、宿主細胞のDNAに安定に組み込まれる。発現産物の上昇したレベルは、増幅した数のベクターDNAを有する細胞株を選択することにより達成される。増幅した数のベクターDNAを有する細胞株は、例えば、既知の薬物により阻害される酵素をコードするDNA配列を含むベクターで、宿主細胞を形質転換することにより選択される。ベクターはまた、所望のタンパク質をコードするDNA配列を含み得る。あるいは、宿主細胞は所望のタンパク質をコードするDNA配列を含む第2のベクターで同時形質転換され得る。次いで、形質転換された、または同時形質転換された宿主細胞は漸増する濃度の公知の薬物中で培養されて、それにより薬物耐性細胞が選択される。このような薬物耐性細胞は、薬物によって阻害される酵素を過剰発現することによって、頻繁には、酵素をコードする遺伝子の増幅の結果として、漸増する濃度の毒性薬物中を生存する。阻害可能な酵素をコードするベクターDNAのコピー数の増加によって、薬物耐性が引き起こされる場合、宿主細胞のDNAにおいて所望のタンパク質をコードするベクターDNAの付随的な同時増幅が存在する。
【0095】
このような同時増幅に好ましい系は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の遺伝子(これは薬物メトトレキセート(MTX)により阻害され得る)を使用する。同時増幅を達成するため、DHFRをコードする活性な遺伝子を欠失する宿主細胞は、DHFRおよび所望のタンパク質をコードするDNA配列を含むベクターで形質転換されるか、またはDHFRをコードするDNA配列を含むベクターおよび所望のタンパク質をコードするDNA配列を含むベクターで同時形質転換されるかのいずれかである。形質転換された、または同時形質転換された宿主細胞は、漸増するレベルのMTXを含む培地中で培養され、そして生存する細胞株が選択される。
【0096】
特に好ましい同時増幅系はグルタミンシンセターゼ(GS)の遺伝子を使用する。これは、反応を駆動するためにATPからADPおよびリン酸への加水分解を使用する、グルタミン酸およびアンモニアの合成を担う。GSは種々のインヒビター、例えば、メチオニンスルフォキシミン(sulphoximine)(MSX)による阻害の対象である。従って、本発明のタンパク質は、GSおよび所望のタンパク質に対するDNA配列を含むベクターで形質転換した細胞を同時増幅するか、またはGSをコードするDNA配列を含むベクターおよび所望のタンパク質をコードするDNA配列を含むベクターで同時形質転換した細胞を同時増幅する工程、漸増するレベルのMSXを含む培地中で宿主細胞を培養する工程、ならびに生存している細胞を選択する工程により、高濃度で発現され得る。GS同時増幅系、適切な組換え発現ベクターおよび細胞株が以下のPCT出願に記載される:WO87/04462、WO 89/01036、WO 89/10404およびWO86/05807。
【0097】
組換えタンパク質は、好ましくは哺乳動物宿主細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)、またはマウス骨髄腫細胞株(例えば、SP2/0-Ag14もしくはNS0)において、またはラット骨髄腫細胞株(例えば、YB2/3.0-Ag20)(PCT出願WO/89/10404およびWO86/05807)における、DHFRまたはGSの同時増幅によって発現される。
【0098】
全てのベクターおよび発現制御配列が等しく良好に機能して、所定の単離されたポリペプチドを発現するわけではないことが理解されるべきである。全ての宿主が同じ発現系で等しく良好に機能するわけではない。しかし、当業者は過度な実験を行うことなく、これらのベクター、発現制御系および宿主の中から選択を行い得る。
【0099】
B.組換えTGF-βRII:Fcの精製
形質転換された宿主によって産生されたタンパク質は、任意の適切な方法にしたがって精製され得る。このような標準的な方法には、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、およびサイズ排除カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、示差溶解性、またはタンパク質精製のための任意の他の標準的な技術による方法を含む。ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、およびグルタチオンSトランスフェラーゼのようなアフィニティータグは、適切なアフィニティーカラムに通すことによって容易な精製を可能にするためにタンパク質に付着させ得る。単離されたタンパク質はまた、タンパク質分解、核磁気共鳴、およびX線結晶解析のような技術を使用して物理的に特徴付けられ得る。
【0100】
例えば、組換えタンパク質を培養培地中に分泌する系に由来する上清は、まず市販のタンパク質濃縮フィルター(例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット)を使用して濃縮され得る。濃縮工程の後に、濃縮物を適切な精製マトリックスに適用し得る。例えば、適切なアフィニティーマトリックスは、適切な支持体に結合したTGF-βまたはレクチンまたは抗体分子またはプロテインAを含み得る。あるいは、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を使用し得る。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に使用される他のタイプであり得る。あるいは、陽イオン交換工程が、利用され得る。適切な陽イオン交換剤には、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性のマトリックスが含まれる。スルホプロピル基が好ましい。最後に、疎水性RP-HPLC媒体(例えば、ペンダントメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲル)を利用する1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)工程が、TGF-βRII:Fc組成物をさらに精製するために使用され得る。上記の精製工程のいくつかまたはすべてはまた、種々の組み合わせにおいて、均一な組換えタンパク質を提供するために使用され得る。
【0101】
細菌の培養物において産生された組換えタンパク質は、細胞ペレットからの最初の抽出、その後、1回以上の濃縮、塩析、水性イオン交換、またはサイズ排除クロマトグラフィー工程によって通常単離される。最後に、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)が、最終精製工程のために利用され得る。組換え哺乳動物TGF-βレセプターの発現において使用される微生物細胞は、任意の都合のよい方法(凍結解凍サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解剤の使用を含む)によって破壊され得る。
【0102】
哺乳動物TGF-βレセプター融合物を分泌されたタンパク質として発現する酵母の発酵は、精製を非常に簡略化する。大規模発酵から生じる分泌された組換えタンパク質は、Urdalら(J.Chromatog. 296:171, 1984)によって開示される方法に類似の方法によって精製され得る。この参考文献は、調製用HPLCカラムでの組換えヒトGM-CSFの精製のための、2つの連続的な逆相HPLC工程を記載する。
【0103】
C.フラグメントおよびアナログの産生
単離されたタンパク質のフラグメント(例えば、配列番号8のフラグメント)はまた、組換え方法によって、タンパク質分解性消化によって、または化学的合成によって、当業者に公知の方法を使用して効率的に産生され得る。組換え法において、ポリぺプチドの内部フラグメントまたは末端フラグメントが、単離されたポリぺプチドをコードするDNA配列の一端(末端フラグメントについて)または両端(内部フラグメントについて)から、1つ以上のヌクレオチドを除去することによって生成され得る。変異誘発されたDNAの発現は、ポリぺプチドフラグメントを産生する。「末端ニブリング(nibbling)」エンドヌクレアーゼでの消化によりまた、フラグメントのアレイをコードするDNAを生成し得る。タンパク質のフラグメントをコードするDNAもまた、ランダム剪断、制限消化、または組み合わせ、または両方によって生成され得る。
【0104】
TGF-βレセプターフラグメントは、インタクトなTGF-βレセプタータンパク質から直接生成され得る。ペプチドは、タンパク質分解酵素(プラスミン、トロンビン、トリプシン、キモトリプシン、またはペプシンを含むがこれらに限定されない)によって特異的に切断され得る。これらの酵素の各々は、それがアタックするペプチド結合のタイプについて特異的である。トリプシンは、ペプチド結合(カルボニル基が塩基性アミノ酸、通常アルギニンまたはリジンに由来する)の加水分解を触媒する。ペプシンおよびキモトリプシンは、芳香族アミノ酸(例えば、トリプトファン、チロシン、およびフェニルアラニン)からのペプチド結合の加水分解を触媒する。切断されたタンパク質フラグメントの代替のセットは、タンパク質分解性酵素に感受性である部位での切断を阻止することによって生成される。例えば、弱塩基性の溶液中でのリジンのεアミノ酸基のエチルトリフルオロチオ酢酸との反応は、隣接するペプチド結合がトリプシンによる加水分解にもはや感受性ではないブロックされたアミノ酸残基を生じる。タンパク質は、タンパク質分解性酵素に感受性であるペプチド結合を生成するために改変され得る。例えば、システイン残基のβハロエチルアミンでのアルキル化は、トリプシンによって加水分解されるペプチド結合を生じる(Lindley,Nature 178:647(1956))。さらに、特定の残基でペプチド鎖を切断する化学試薬が使用され得る。例えば、シアノゲンブロミドは、メチオニン残基でペプチドを切断する(GrossおよびWitkip,J.Am.Chem.Soc., 83:1510(1961))。従って、タンパク質を、改変剤、タンパク質分解性酵素、および/または化学試薬の種々の組み合わせで処理することによって、タンパク質は、フラグメントの重複を有さない所望の長さのフラグメントに分割され得るか、または所望の長さの重複するフラグメントに分割され得る。
【0105】
フラグメントはまた、当該分野で公知の技術(例えば、Merrifield固相Fmocまたはt-Boc化学)を使用して、化学合成され得る。Merrifield, RecentProgress in Hormone Research 23:451(1967)。
【0106】
D.改変されたDNAおよびペプチド配列の産生:ランダム法
タンパク質のアミノ酸配列改変体(例えば、配列番号8の改変体)は、タンパク質またはその特定の部分をコードするDNAのランダム変異誘発によって調製され得る。有用な方法には、PCR変異誘発および飽和変異誘発が含まれる。ランダムアミノ酸配列改変体のライブラリーはまた、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットの合成によって生成され得る。改変されたDNAおよびペプチドを使用して所与のタンパク質のアミノ酸配列改変体を生成する方法は、当該分野で周知である。このような方法の以下の実施例は、本発明の範囲を限定することを意図しないが、単に、代表的な技術を例示するために提供される。当業者は、他の方法もまた、この点において有用であることを認識する。
【0107】
PCR変異誘発:簡単には、Taqポリメラーゼ(または、別のポリメラーゼ)を使用して、ランダム変異をDNAのクローン化したフラグメントに導入する(Leungら、Technique1:11-15(1989)を参照のこと)。PCR条件は、DNA合成の忠実度が、例えば、5のdGTP/dATP比を使用することによって、およびMn2+をPCR反応に添加することによって、TaqDNAポリメラーゼによって低減されるように選択される。増幅されたDNAフラグメントのプールを、適切なクローニングベクターに挿入し、ランダム変異体ライブラリーを提供する。
【0108】
飽和変異誘発:1つの方法が、Mayersら、Science, 229:242(1989)に一般的に記載される。簡単には、その技術には、化学的処理による変異の生成またはインビトロでの1本鎖DNAの照射、およびcDNA鎖の合成が含まれる。変異の頻度は、処理の強度によって調整され、そして本質的にすべての可能性のある塩基置換が得られ得る。
【0109】
縮重オリゴヌクレオチド変異誘発;相同なペプチドのライブラリーは、縮重オリゴヌクレオチド配列のセットから生成され得る。縮重配列の化学合成は、自動化DNA合成機において行われ得、次いで合成遺伝子は、適切な発現ベクターに連結される。Itakuraら、Recombinant DNA,Proc. 第3版、Cleveland Symposium on Macromolecules, 273-289頁(A.G. Walton編)Elsevier,Amsterdam, 1981を参照のこと。
【0110】
E.改変されたDNAおよびペプチド配列の産生:指向された方法
非ランダム、または指向された変異誘発は、単離されたポリぺプチドをコードするポリヌクレオチド配列の特定の部分に特異的な配列または変異を提供し、単離されたポリぺプチドの公知のアミノ酸配列の残基の欠失、挿入、または置換を含む改変体を提供する。変異部位は、個々にまたは連続的に、例えば、(1)まず保存されたアミノ酸を置換し、次いで達成された結果に依存してよりラジカルな選択を置換することにより;(2)標的残基を欠失させることにより;または(3)配置された位置に隣接して、同じかまたは異なるクラスの残基を挿入することにより、あるいは選択1〜3の組み合わせにより、改変され得る。
【0111】
アラニンスキャニング変異誘発:この方法は、変異誘発に好ましい位置である所望のタンパク質の残基または領域を配置する。CunninghamおよびWells, Science 244:1081-1085(1989)を参照のこと。アラニンスクリーニングにおいて、標的残基の残基または基が選択され、そしてアラニンまたはポリアラニンによって置換される。この置換は、そのアミノ酸の隣接するアミノ酸、および/または周囲の水性または膜の環境との相互作用に影響を及ぼし得る。次いで、置換に対する機能的な感受性を有するアミノ酸は、さらなる改変体または他の改変体を、置換の部位に、または置換の部位の替わりに導入することによって純化される。
【0112】
オリゴヌクレオチド媒介変異誘発:この方法の1つのバージョンは、DNAの置換、欠失、および挿入改変体を調製するために使用され得る。Adelmanら、DNA 2:183(1983)を参照のこと。簡単には、所望のDNAは、DNA変異をコードするオリゴヌクレオチドプライマーをDNAテンプレート(これは、代表的には、所望のタンパク質(例えば、そのタンパク質)の改変されていないかまたは野生型のDNA配列テンプレートを含有するプラスミドまたはファージの1本鎖形態である)にハイブリダイズすることによって改変される。ハイブリダイゼーションの後、DNAポリメラーゼは、オリゴヌクレオチドプライマーを組み込み、そして所望のDNA配列における選択された変更をコードするテンプレートのDNAの第二鎖および相補鎖を作製するために使用される。一般的に、少なくとも25ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドが使用される。最適なオリゴヌクレオチドは、変異のいずれかの側のテンプレートに完全に相補的な12〜15のヌクレオチドを有する。これは、オリゴヌクレオチドが1本鎖DNAテンプレート分子に適切にハイブリダイズすることを確実にする。
【0113】
カセット変異誘発:この方法(Wellsら、Gene 34:315(1985))は、変異されるべきタンパク質サブユニットDNAを含有するプラスミドまたは他のベクターを必要とする。タンパク質サブユニットDNA中のコドンを同定し、そして同定された変異部位の各々の側の単一の制限エンドヌクレアーゼ部位を、上記のオリゴヌクレオチド特異的変異誘発法を使用して挿入する。次いで、プラスミドをこれらの部位で切断し、直線化する。制限部位間のDNAの配列をコードするが、所望の変異を含有する二重鎖オリゴヌクレオチドを、標準的な手順を使用して合成する。2つの鎖を、別々に合成し、次いで標準的な方法を使用して一緒にハイブリダイズする。この二重鎖オリゴヌクレオチドは、「カセット」であり、そして直線化したプラスミドの末端に直接連結され得るように適合性である3'および5'末端を有する。こうして、プラスミドは、変異がなされた所望のタンパク質サブユニットDNA配列を含有する。
【0114】
組み合わせ変異誘発:この方法の1つのバージョン(Ladnerら、WO88/06630)において、相同体または他の関連するタンパク質の群のアミノ酸配列を、好ましくは、可能な限り最も高い相同性を促進させるために整列させる。整列された配列の所定の位置に見られるアミノ酸のすべてを、組み合わせの配列の縮重セットを作製するために選択し得る。まだらなライブラリーは、核酸レベルでの組み合わせ変異誘発によって生成され、そしてこれは、まだらな遺伝子ライブラリーによってコードされる。例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物は、潜在的配列の縮重セットが個々のペプチドとして、あるいは、縮重配列の完全なセットを含有するタンパク質のセットとして発現可能であるような遺伝子配列に酵素的に連結され得る。
【0115】
IV. 単離されたポリぺプチドの他の改変体
本発明のタンパク質の誘導体はまた、生物学的活性を維持する一次タンパク質の種々の構造形態を含む。イオン化可能なアミノ基およびカルボキシル基の存在により、例えば、TGF-βレセプター融合タンパク質は、酸性もしくは塩基性の塩の形態、または中性の形態であり得る。個々のアミノ酸残基はまた、酸化または還元によって改変され得る。一次アミノ酸構造(例えば、TGF-βRII部分の構造)は、他の化学的部分(例えば、グリコシル基、脂質、リン酸、アセチル基など)と共有結合体または凝集的な結合体を形成することによって、またはアミノ酸配列変異体を作製することによって改変され得る。
【0116】
TGF-βレセプターの共有結合誘導体は、特定の官能基をTGF-βレセプターアミノ酸側鎖に、またはN末端もしくはC末端に結合させることによって調製され得る。TGF-βRII:Fcの他の誘導体には、さらなるN末端もしくはC末端融合物としての組換え培養物における合成による、TGF-βRIIもしくはそのフラグメントの、他のタンパク質もしくはポリぺプチドとの共有結合体または凝集結合体が含まれる。例えば、結合体化されたペプチドは、細胞膜または細胞壁の内側または外側の、合成のその部位からその機能の部位へのタンパク質の移動を、翻訳と同時にまたは翻訳後に指向させるタンパク質のN末端領域でのシグナル(またはリーダー)ポリぺプチド配列であり得る(例えば、酵母のα因子リーダー)。TGF-βレセプタータンパク質は、TGF-βレセプター(例えば、ポリHis)の精製または同定を容易にするために添加されるペプチドを含み得る。TGF-βレセプターのアミノ酸配列はまた、ペプチドAsp-Tyr-Lys-Asp-Asp-Asp-Asp-Lys(DYKDDDDK)(Hoppら、Bio/Technology6:1204, 1988)に連結され得る。後者の配列は、アルギニンを多く含み、そして特異的なモノクローナル抗体によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイおよび容易な精製を可能にする。この配列はまた、Asp-Lys対合のすぐ後の残基でウシ粘膜エントロキナーゼによって特異的に切断される。このペプチドでキャップされる融合タンパク質はまた、E.coliでの細胞内分解に耐性であり得る。
【0117】
TGF-βレセプターの多価形態は、有用である。なぜなら、これらは、TGF-βリガンドに対する多数のTGF-βレセプター結合部位を有するからである。例えば、二価の可溶性TGF-βレセプターは、リンカー領域によって隔てられた配列番号8または9の1〜160と番号付けられたアミノ酸の2つのタンデムな反復(免疫グロブリン定常ドメインに結合した反復)からなり得る。代替の多価形態はまた、例えば、TGF-βレセプターFc融合物の任意の臨床的に受容可能なキャリア分子(Ficoll、ポリエチレングリコール、またはデキストランからなる群から選択されるポリマー)への、従来の架橋技術を使用した化学的架橋によって構築され得る。あるいは、TGF-βレセプター融合物は、ビオチンに化学的に架橋され得、次いで、そのビオチン-TGF-βレセプターのFc結合体は、アビジンに結合され得、4価のアビジン/ビオチン/TGF-βレセプター分子を生じる。TGF-βレセプターFc融合物はまた、ジニトロフェノール(DNP)またはトリニトロフェノール(TNP)に共有結合し得、そして得られる結合体は、抗DNPまたは抗TNP-IgMで沈殿されて、TGF-βレセプター結合部位について10価のデカマーの結合体を形成する。
【0118】
不活化Nグリコシル化部位を有するTGF-βRII:Fc融合体の機能的な変異体アナログは、オリゴヌクレオチド合成および連結により、または部位特異的変異誘発技術により、産生され得る。これらのアナログタンパク質は、酵母発現系を使用して、均一な還元された炭水化物形態において、良好な収量で産生され得る。真核生物タンパク質におけるNグリコシル化部位は、3連のアミノ酸(aminoacid triplet)Asn-A1-Zによって特徴付けられ、ここで、A1は、Pro以外の任意のアミノ酸であり、Zは、SerまたはThrである。この配列において、Asnは、炭水化物の共有結合のための側鎖アミノ酸基を提供する。このような部位は、別のアミノ酸でAsnまたは残基Zを置換することによって、AsnまたはZを欠失させることによって、またはZでないアミノ酸をA1とZとの間に挿入することによって、または、AsnとA1との間のAsn以外のアミノ酸によって排除することができる。TGF-βレセプター誘導体はまた、TGF-βレセプターまたはそのサブユニットの変異によって得られ得る。TGF-βレセプタータンパク質の生物学的に等価なアナログはまた、例えば、残基または配列の種々の置換を作製することによって、または末端残基もしくは内部残基もしくは生物学的活性に必要でない配列を欠失させることによって構築され得る。
【0119】
他のアナログには、TGF-βRII:Fcタンパク質、またはその配列が1つ以上の保存的アミノ酸置換によって、もしくは1つ以上の非保存的アミノ酸置換によって、もしくは単離されたタンパク質の生物活性を失わせない欠失もしくは置換によって配列番号2もしくは配列番号4とは異なる、その生物学的に活性なフラグメントが含まれる。保存的置換は、代表的には、1つのアミノ酸の、同様な特徴を有する他のアミノ酸との置換、例えば、以下の群のなかでの置換が含まれる:バリン、アラニン、およびグリシン;ロイシンおよびイソロイシン;アスパラギン酸およびグルタミン酸;アスパラギンおよびグルタミン;セリンおよびスレオニン;リジンおよびアルギニン;ならびにフェニルアラニンおよびチロシン。非極性の疎水性アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。極性の中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。他の保存的置換は、当業者によって容易に知られ得る。例えば、アミノ酸のアラニンについては、保存的置換は、D-アラニン、グリシン、βアラニン、L-システイン、およびD-システインの任意の1つから選択され得る。リジンについては、置換は、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、またはD-オルニチンの任意の1つであり得る。
【0120】
一般的に、単離されたポリぺプチドの機能的特性に変化を誘導すると予想され得る置換は、(i)極性残基(例えば、セリンまたはスレオニン)が、疎水性の残基(例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、またはアラニン)を置換している(または、それらで置換されている)か;(ii)システイン残基が、任意の他の残基を置換している(または、それらで置換されている)か;(iii)正に荷電した側鎖を有する残基(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン)が、負に荷電した側鎖を有する残基(例えば、グルタミン酸またはアルパラギン酸)を置換している(または、それらで置換されている);あるいは(iv)大きな側鎖を有する残基(例えば、フェニルアラニン)が、このような側鎖を有さない残基(例えば、グリシン)を置換している(または、それらで置換されている)置換である。
【0121】
単離された分子が、本発明に含まれ、それらは、対立遺伝子改変体、天然の変異体、誘導された変異体、高いかまたは低いストリンジェンシーな条件下で、配列番号8または9のようなポリぺプチドをコードする核酸にハイブリダイズするDNAによってコードされたタンパク質、およびペプチドに対する抗血清(特に、その活性部位または結合部位に対する抗血清)が特異的に結合するポリぺプチドである。本明細書中に記載されるすべての改変体は、(i)元のタンパク質の生物学的機能を維持することが予想される。
【0122】
V.有用性
本発明は、医学的状態を有する個体に、十分な量のTGF-βレセプター融合タンパク質(例えば、TGF-βRII:Fc)を、個体におけるTGF-β活性を低減させるために投与することを提供する。本発明はさらに、TGF-βRII:Fcを、TGF-βが過剰である部位(例えば、繊維増殖(fibroproliferation)、および感染性疾患に付随するような免疫抑制によって特徴付けられる疾患状態における)に送達することを提供する。
【0123】
任意の特定の理論に束縛されることを望まないが、TGF-βRII:Fcは、 細胞表面レセプターとTGF-βについて競合することによって、TGF-β活性を調節するようである。細胞表面レセプターと相互作用するために利用可能なTGF-βの遊離のプールからTGF-βを除去することによってそれを不活化することがさらに考えられている。クリアランスの薬理学的特性に依存して、TGF-βRII:Fc/TGF-β複合体は、TGF-βの部位から除去される。過剰のTGF-βをともなうこの複合体は、遊離のTGF-βの量を減少させる。細胞レセプターと複合体化するのに利用可能なTGF-βの量が少ない場合、TGF-βに誘導された繊維増殖は遅くなり、疾患状態を生じる。
【0124】
本発明のフラグメントのタンパク質の投与は、繊維増殖疾患において使用され得る。上記のように、糸球体腎炎の動物モデルは、過剰のTGF-βをブロックする抗TGFβ抗体での良好な結果を示している。これらの抗体は、送達するのが困難である。なぜなら、これらは、高分子量を有し、そしてこれらは他の種(species)に由来する場合には、重篤なアレルギー性反応を生じるからである。したがって、低分子量の天然のタンパク質または近縁のアナログ(例えば、TGF-βRII:Fc)を、糸球体腎炎において投与することが好ましい。TGF-βを過剰に付随する腎疾患には、糸球体間質増殖、糸球体腎炎、半月体糸球体腎炎、糖尿病腎症、シクロスポリンを受けている移植患者における腎間質性繊維症、およびHIV関連腎症が含まれるが、これらに限定されない。これらの状態は、TGF-βRII:Fcの投与が抑制すべき繊維組織形成の過剰産生と関連する。
【0125】
TGF-βRII単独では、TGF-βを捕獲する以外の機能を有することが公知ではないので、TGF-βRII:Fcは、網膜再付着手術(これは、もっとも一般的な増殖性硝子体網膜症(PVR)の原因である(Connorら、(1989)J.Clin.Invest.83:1661-1666))中または手術後に安全に投与され得る。別の重要な線維増殖性状態は、慢性関節リウマチ(RA)であり、これはまた過剰なTGF-β産生と関連する。データは、発達の任意の時点またはRAの慢性段階におけるTGF-βのブロッキングが、関節および骨の進行性変質を停止するのを助け得ることを示す。それ故に、本発明の融合物は、初期関節疼痛を有する患者ならびに長期の関節疼痛および変質関節を有する患者へ、投与され得る。現在の理論は、RAにおける関節変質は、TGF-βの過剰産生に起因するというものである。過剰なTGF-βは、試験動物が連鎖球菌細胞壁を注入された後の関節において測定され、この過剰発現の存在は、慢性関節リウマチ(RA)を引き起こすと考えられている。抗TGF-β抗体は、このモデルにおいて関節炎の変化をブロックするので、本発明の融合物はまた、陽性の効果を有し得ると考えられている。過剰なTGF-βレベルと関連した他の状態は、特発性肺線維症および骨髄線維症を含む。過剰なTGF-βと複合体形成し、そして過剰な線維性組織の発達を減速するために、本発明のタンパク質のこれらの状態への投与が意図される。
【0126】
本発明のタンパク質は、TGF-βの過剰産生と関連する膠原血管障害の処置のために使用され得る。現在、膠原血管障害(例えば、進行性全身性硬化症(PSS)、多発性筋炎、硬皮症、皮膚筋炎、好酸球性筋膜炎、および限局性強皮症)においてTGF-βの過剰産生が存在すると考えられている。膠原血管障害はまた、レーノー症候群の発生と関連し得る。他の効果のなかで、TGF-βの過剰産生はまた、間質性肺線維症(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)および硬皮症のような自己免疫疾患に関連する末期肺障害(Deguchi,(1992) Ann. Rheum. Dis. 51:362-65))に関与し得;または化学的接触、塵埃に対するアレルギーおよび枯草熱により生じ得る。本発明のタンパク質の治療的に有効な量は、TGF-βの生物学的活性を中和するために投与され得、次いで望まれない線維症を予防する。
【0127】
本発明のタンパク質はまた、ケロイドや過形成性瘢痕を形成することが知られている患者における瘢痕の過剰産生を予防するために使用され得る。例えば、TGF-βRII:Fcは、外科的切開および外傷性裂傷を含む種々のタイプの創傷の治癒の間に、瘢痕や瘢痕の過剰産生を防ぐために投与され得る。TGF-βRII:Fc融合物は、皮膚創傷が閉鎖する前に皮膚創傷に適用され、瘢痕形成を伴わずに治癒を補助し得る。本発明のタンパク質は、外科的腹部創傷中に配置され、このタイプの手術後に非常に一般的に生じる癒着形成の予防を補助し得る。本発明は、十分な融合物の局所的な投与を提供し、局所的なTGF-β過剰産生物と複合体形成し、治癒過程における過剰産生を予防する。
【0128】
TGF-β過剰はまた、鼻ポリープ症(多発性ポリープにより特徴付けられる状態)において報告されている(Ohnoら、(1992)J. Clin. Invest. 89:1662-68)。融合タンパク質は、TGF-βレベルを低下させることを補助し得、ポリープにおいて生じる過剰増殖を減速し得る。例えば、TGF-βRII:Fcは、ポリープ手術後に投与され、瘢痕の過剰生成およびポリープの再発を予防し得、そしてまた小腸におけるポリープ形成を阻止するために投与され得る。
【0129】
本発明のタンパク質はまた、冠動脈形成術に続き投与され得、好ましくは患部動脈内に沿って配置され得る。Karasら(1991)Clin. Cardiol. 14:791-801によれば、冠動脈形成術に続く動脈の再狭窄または瘢痕および再閉鎖は、手術を受けた患者の約3分の1に見られる。究極的に瘢痕に発達する線維性ネットワークは通常迅速に蓄積するため、例えば、TGF-βRII:Fcの初期の投与はこの領域における過剰なTGF-βを減少し、そして結合組織の過剰増殖および再狭窄を減速する。
【0130】
TGF-β過剰はまた、梗塞後の心臓線維症および高血圧性血管症において、観察されてきた。過剰な瘢痕または線維性組織形成せずに適切な治癒を補助するために、本発明のタンパク質は、これらの状態において投与され得る。TGF-β過剰はまた、放射線治療を受ける患者の組織において観察される。このような組織は、過剰な結合組織発達、上皮が薄くなる、そして内皮細胞の過剰増殖に関連する血管の閉塞により特徴付けられる。TGF-βRII:Fcの投与は、過剰のTGF-βと複合体形成し、そして過剰の線維症のない治癒に寄与する。
【0131】
VI.処方、投与および用量
本発明のタンパク質の処方、投与の方法および用量は、処置されるべき障害および患者の病歴に依存する。これらの要素は、治療の過程において容易に決定され得る。過剰なTGF-βにより生じた状態をともなう適切な患者は、実験室試験、病歴および身体的所見により同定され得る。TGF-β過剰は、患者血清または患部組織の免疫アッセイにより直接決定され得る。過剰なTGF-βはまた、Kekowら(1990)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:8321-25によって記載される細胞増殖アッセイのようなバイオアッセイによって決定され得る。過剰のTGF-βはまた、TGF-βmRNAレベルの測定によって間接的に(例えば、Kekowらのポリメラーゼ連鎖反応において)決定され得る。
【0132】
病歴は、線維増殖性障害、膠原血管障害、免疫抑制の診断、または、手術後の腹膜の癒合もしくは冠動脈形成術後の血管の再狭窄のような問題のある創傷の治癒の可能性の診断を援助する事実を、明らかにし得る。高レベルのTGF-βおよび/または線維性組織の増殖と関連するとして同定された状態は、TGF-β過剰を生じると考えられる。患者は、このような障害の指標となる広範囲の身体的所見を有し得る。皮膚生検は、全身性硬化症をともなう患者におけるTGF-βを試験するために使用されてきた。腫大した、熱のある関節は、関節炎において見られる。本発明の方法により、処方物は、投与され得る形態における本発明のタンパク質を含む。本発明の方法は、当業者にとって容易に明らかな様態において本発明のタンパク質の処方を提供する。好ましくは、本発明のタンパク質は、生理学的に適合性のキャリア中に溶解される。
【0133】
本発明のタンパク質のための生理学的に適合性のキャリアとしては、通常の生理食塩水のような静脈注射用の溶液、血清アルブミン、5%ブドウ糖、血漿調製物、他のタンパク質含有溶液およびTPN溶液が挙げられる。非経口的な投与のための好ましいキャリアは、滅菌した等張水性溶液(例えば、生理食塩水または5%ブドウ糖)である。さらにより好ましいのは、ヒト血清アルブミンをともなう通常の生理食塩水である。ワクチンに対する免疫応答の増強における使用のために、本発明のタンパク質は、ワクチン処方物と混合され得る。
【0134】
投与の様態に依存して、本発明のタンパク質は、液体または半固形の投薬調製物の形態(例えば、液体または懸濁液など)であり得る。あるいは、溶液は、長時間にわたる低速の放出のために、移植片中に配置され得る(例えば、浸透圧ポンプ)。あるいは、本発明のタンパク質は、キャリア処方物(例えば、坐剤形態またはマイクロカプセル形態における半透性ポリマーキャリア)の徐放において提供され得る。例えば、ポリ乳酸を含むマイクロカプセルの徐放性マトリックスについては、米国特許第3,773,919号を、L−グルタミン酸およびガンマ-エチル-L-グルタメートのコポリマーについては、Sidmonら、Biopolymers22(1),547-556(1983)を、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)ついては、Langerら、J. Biomed. Res. 15,167-277(1981)などを参照のこと。
【0135】
投与の様態は、本発明のタンパク質を、安全に、生理学的に効果的な様式で、個体に送達する。本発明のタンパク質は、眼内に、鼻腔内に、皮下に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、腹腔内に、関節内に、腸内に、または他の従来の投与の経路で、与えられ得る。好ましい実施態様において、本発明のタンパク質は、罹患した組織部位に、ボーラス注入または灌流適用によって局所的に投与される。例えば、PVRについては、投与の好ましい態様は、単回の眼内注入である。局所的な投与はまた、腹膜の創傷において、癒合形成を防ぐために、および他の創傷においてケロイドまたは目に見える瘢痕をともなわずに治癒を促進するために、好ましい。鼻ポリープ症については、鼻滴下が好ましい。局所的および全身的投与は、肺線維症において、等しく好ましい(非経口注入または鼻スプレーまたは鼻滴下)。慢性関節リウマチ(RA)は、関節内投与または全身投与により処置され得る。
【0136】
全身投与は、糸球体腎炎および広範囲の皮膚障害(例えば、進行性全身性硬化症、散在性筋膜炎、および全身性強皮症)における好ましい投与の様式である。全身性投与はまた、本発明のタンパク質がワクチン応答を増強するために用いられる場合、好ましい。本発明のタンパク質は、皮下注入、筋肉内注入または皮内注入により、ワクチンとともに投与され得る。
【0137】
投与される本発明のタンパク質の用量は、上記で議論される通常の患者の症状に基づき、当業者によって容易に決定され得る。ボーラス注入により与えられる本発明のタンパク質の投薬量は、20ngと300mgの間が好ましい。ボーラス注入は、数日にわたり繰り返され得るか、または本発明のタンパク質は、連続的に注入され得る。静脈内注入として与えられる場合、24時間にわたり注入される本発明のタンパク質の量は、約1mg〜約100mgである。
【0138】
投与する本発明のタンパク質の量はまた、局所的組織のTGF-β濃度を正常値以下のレベル、すなわち1〜1,000mu g/mlに維持することにより決定され得る。
【0139】
好ましくは、本発明のタンパク質は、局所的に適用され、問題の部位で注入されるか、または静脈内に注入される。もっとも好ましくは、本発明のタンパク質は、TGF-βが制御されるべき部位で、ボーラス注入により投与される。静脈内注入によって、本発明のタンパク質は、TGF-βの過剰を減少するのに十分な循環する血清濃度を維持する速度で投与されるべきである。好ましくは、患者は、本発明のタンパク質の比較的低用量で、開始する。低用量は、好ましくは、患者の急性期が、適切な身体的所見および実験室での結果に示されるように、回復するかまたは十分に改善されるまで、続けられるべきである。このような改善は、2、3週間において、明らかであり得る。顕著な改善がない場合、本発明のタンパク用量を増加すべきである。
【0140】
本発明の分子を投与する遺伝子治療方法はまた、本発明の範囲内に含まれる。用語「形質転換」または「形質転換する」とは、細胞の任意の遺伝子改変をいい、そして「トランスフェクション」および「形質導入」の両方を含む。本明細書において使用する場合、「細胞のトランスフェクション」とは、細胞による添加したDNAの取込みによる新規の遺伝的物質の獲得をいう。従って、トランスフェクションとは、物理学的または化学的方法を用いた核酸(例えば、DNA)の細胞への挿入をいう。いくつかのトランスフェクション技術は、当業者にとって公知である。対照的に、「細胞の形質導入」とは、DNAまたはRNAウイルスを用いた細胞中への核酸の移入のプロセスをいう。ウイルス内に含まれる、1つ以上のTGF-βRII:Fcタンパク質をコードする1つ以上の単離されたポリヌクレオチド配列は、形質導入された細胞の染色体内に取り込まれ得る。あるいは、細胞はウイルスで形質導入されるが、細胞はその染色体に組込まれた単離されたポリヌクレオチドを有さず、しかし、細胞内において染色体外でインターフェロンを発現し得る。1つの実施態様によって、細胞はエキソビボで形質転換され(すなわち、遺伝学的に改変され)る。細胞は、哺乳動物(好ましくは、ヒト)から単離され、そして単離されたポリヌクレオチド(例えば、組換え分泌タンパク質の発現のために1つ以上の発現制御配列に作動可能に連結された組換えTGF-βRII:Fcヌクレオチド)を含むベクターで形質転換され(すなわち、インビトロで形質導入またはトランスフェクトされ)る。次に細胞は、インサイチュでのタンパク質送達について哺乳動物レシピエントに投与される。好ましくは、哺乳動物レシピエントはヒトであり、改変される細胞は自己細胞(すなわち細胞は哺乳動物レシピエントより単離される)である。インビトロでの細胞の単離および培養が報告されている。別の実施態様により、細胞は、形質転換されるか、またはそうでなければインビボで遺伝学的に改変される。哺乳動物レシピエント(好ましくはヒト)由来の細胞は、同様の単離されたポリヌクレオチドを含むベクターを用いインビボで形質転換(すなわち形質導入またはトランスフェクト)され、そしてタンパク質はインサイチュで送達される。
【0141】
融合タンパク質をコードする単離されたポリヌクレオチドは、遺伝子移入方法(例えば、トランスフェクションまたは形質導入)によりエキソビボまたはインビボで細胞に導入され、遺伝的に改変された細胞を提供する。種々の発現ベクター(すなわち標的細胞内への単離されたポリヌクレオチドの送達を促進するためのビヒクル)は、当業者にとって公知である。代表的には、導入される物質は、転写を制御するプロモーターとともに本発明の単離されたポリヌクレオチドを含む。TGF-βRII:Fcポリヌクレオチドの送達が特定の組織に対するものである場合、この遺伝子の発現を標的とすることが所望され得る。例えば、文献において記載されている、特定の組織内においてのみ発現する多くのプロモーターが存在する。従って、適切なプロモーター(構成性対誘導性;強い対弱い)を選択することにより、遺伝的に改変された細胞において、融合タンパク質の存在および発現レベルの両方を制御することが可能である。融合タンパク質をコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、インサイチュでのタンパク質の送達は、遺伝的に改変された細胞をインサイチュにおいてタンパク質の転写を許容する条件(例えば、因子の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導物質の注入により)に曝露ことにより、誘発される。近年、非常に精巧な系が開発され、この系では外因的に投与された低分子により遺伝子発現の正確な調節を可能にする。この系としては、FK506/ラパマイシン系(Riveraら、NatureMedicine 2(9):1028-1032,1996);テトラサイクリン系(Gossenら、Science 268:1766-1768,1995)、エクジソン系(Noら、Proc.Natl. Acad. Sci., USA 93:3346-3351,1996)およびプロゲステロン系(Wangら、Nature Biotechnology15:239-243,1997)が挙げられる。
【0142】
従って、インサイチュで送達される融合タンパク質の量は、以下の要素の制御により調節される:(1)挿入されたポリヌクレオチドの転写を指向するために用いられるプロモーターの性質(すなわち、プロモーターが構成性かまたは誘導性か、強いかまたは弱いか、あるいは組織特異的か否か);(2)細胞に挿入される外来性ポリヌクレオチドのコピー数;(3)患者に投与される(例えば、、移植される)形質導入/トランスフェクト細胞の数;(4)エキソビボ方法における移植片(例えば、移植片または被包性発現系)のサイズ;(5) エキソビボ方法における移植片の数;(6)インビボ投与により形質導入/トランスフェクトされる細胞の数;(7)エキソビボ方法およびインビボ方法の両方において、形質導入/トランスフェクト細胞または移植片が正しい場所に置かれる期間;ならびに(8)遺伝的に改変された細胞による融合タンパク質の産生速度。
【0143】
遺伝子治療における使用のための哺乳動物宿主細胞に適合する発現ベクターとしては、例えば、プラスミド;トリ、マウスおよびヒトレトロウイルスベクター;アデノウイルスベクター;ヘルペスウイルスベクター;パルボウイルス;および非複製性ポックスウイルスが挙げられる。特に、複製欠損組換えウイルスは、複製欠損ウイルスのみを産生するパッケージング細胞株において産生され得る。Current Protocols in Molecular Biology:9.10〜9.14節(Ausubelら、編)、GreenePublishing Associates, 1989を参照のこと。遺伝子移入系における使用のための特定のウイルスベクターは、現在、確立されている。例えば、Madzakら、J.Gen. Virol., 73:1533-36(1992)(パポバウイルスSV40);Berknerら、Curr. Top. Microbiol. Immunol.,158:39-61(1992)(アデノウイルス);Mossら、Curr. Top. Microbiol. Immunol., 158:25-38(1992)(ワクシニアウイルス);Muzyczka、Curr.Top. Microbiol. Immunol., 158:97-123(1992)(アデノ随伴ウイルス);Margulskee、Curr. Top.Microbiol. Immunol., 158:67-93(1992)(単純ヘルペスウイルス(HSV)およびエプスタイン‐バーウイルス(HBV));Miller、Curr.Top. Microbiol. Immunol., 158:1-24(1992)(レトロウイルス);Brandyopadhyayら、Mol. Cell.Biol., 4:749-754(1984)(レトロウイルス);Millerら、Nature, 357:455-450(1992)(レトロウイルス);Anderson,Science, 256:808-813(1992)(レトロウイルス) を参照のこと。好ましいベクターは、アデノウイルス(好ましくはAd-2またはAd-5に基づくベクター)、ヘルペスウイルス(好ましくは、単純ヘルペスウイルスに基づくベクター)、およびパルボウイルス(好ましくは、「欠損」または非自律性パルボウイルスに基づくベクター、より好ましくは、アデノ随伴ウイルスに基づくベクター、もっとも好ましくは、AAV-2に基づくベクター)を含むDNAウイルスである。例えば、Aliら、GeneTherapy 1:367-384,1994;米国特許第4,797,368号および同5,399,346号ならびに下記の考察を参照のこと。
【0144】
アデノ随伴ウイルス(AAV)はまた、体性の遺伝子治療のためのベクターとして使用される。AAVは、単純なゲノム構成(4.7kb)を有する、低分子の一本鎖(ss)DNAウイルスであり、このことは、AAVを遺伝子操作のための理想的な基質にする。2つのオープンリーディングフレームは、一連のrepおよびcapポリペプチドをコードする。Repポリペプチド(rep78,rep68, rep62 および rep40)は、 AAVゲノムの複製、 レスキュー、および組込みに関与する。capタンパク質(VP1, VP2およびVP3)は、ウイルス粒子キャプシド由来である。repおよびcapオープンリーディングフレームに、5'および3'末端で隣接して、145bpの逆方向末端反復配列(ITR)が存在し、その最初の125bpは、Y形またはT形二重鎖構造を形成し得る。AAVベクターの開発において重要なことに、全repおよびcapドメインは、切除され得、そして治療的トランスジーンまたはレポータートランスジーンで置き換えられ得る。B.J.Carter,Handbook of Parvoviruses, P.Tijsser,編、CRC Press, 155〜168頁(1990)を参照のこと。ITRは、AAVゲノムの複製、レスキュー、パッケージングおよび組込みに必要な最小の配列を表すことが示されている。AAVの生活環は、二相性であり、潜伏性および溶解性の場面の両方よりなる。潜伏性感染の間、AAVウイルス粒子は、被包性ssDNAとして細胞内へ侵入し、その後まもなく核へ送達され、そこでAAVDNAは、宿主細胞の細胞分裂を明らかには必要とすることなく、宿主染色体へ安定的に組込まれる。ヘルパーウイルス非存在化で、組込まれたAAVゲノムは、潜在性を維持するが、活性化されそしてレスキューされ得る。生活環の溶解期は、AAVプロウイルスを有する細胞がAAVの宿主染色体からの切り出しを補助するためにAAVによって必要とされるヘルパー機能をコードするヘルペスウイルスまたはアデノウイルスによる第二の感染でチャレンジされる場合に、始まる(B.J.Carter、前出)。この感染する親1本鎖(ss)DNAは、rep依存様式で2本鎖複製形態(RF)DNAに展開する。レスキューされたAAVゲノムは、予め形成されたタンパク質キャプシド(正二十面体の対称形、直径約20nm)中にパッケージされ、そして細胞溶解の後、+または−ssDNAゲノムのいずれかでパッケージされた感染性ウイルス粒子として放出される。AAVは、遺伝子治療において顕著な潜在能力を有する。ウイルス粒子は、非常に安定であり、そして組換えAAV(rAAV)は、「薬物様」特徴を有し、この特徴において、rAAVがペレット化によりまたはCsCl勾配バンド形成により精製され得る。rAAVは、熱安定性であり、そして粉末に凍結乾燥され得、そして再水和されて十分に活性であり得る。これらのDNAは、安定的に宿主染色体中に組込まれ、それにより長期間発現する。これらの宿主の範囲は広範であり、AAVは公知の疾患を引き起こさないので、そのため組換えベクターは無毒である。近年、組換えバキュロウイルス(主にバキュロウイルスAutographacalifornica、多核の多核体病ウイルス由来(AcMNPV))は、インビトロで哺乳動物細胞を形質導入し得ることが示された(Hofmann,C.,Sandig,V., Jennings,G., Rudolph,M., Schlag,P.,およびStrauss,M(1995)「Efficient genetransfer into human hepatocytes by baculovirus vectors」, Proc. Natl. Acad. Sci.USA 92, 10099-10103;Boyce,F.M.およびBucher,N.L.R.(1996)「Baculovirus-mediated genetransfer into mammalian cells」, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 2348-2352を参照のこと)。組換えバキュロウイルスは、遺伝子治療について、いくつかの潜在的利点を有する。これらには、非常に大きなDNA挿入容量、ヒトにおいて予め存在する免疫応答の欠如、哺乳動物における複製の欠如、哺乳動物における毒性の欠如、バキュロウイルス転写プロモーターの昆虫特異性に起因する哺乳動物細胞におけるウイルス遺伝子発現の欠如、および潜在的に、これらのウイルスタンパク質に対して指向する細胞障害性Tリンパ球応答の欠如が挙げられる。
【0145】
本発明は、以下の非限定的な実施例により説明される。
【実施例】
【0146】
実施例1:可溶型ウサギTGFβR:Fc融合タンパク質の構築および発現
ウサギII型TGFβ(「TGFβ」)レセプターをコードする全長クローン(MIS_3f11)を、ウサギ卵巣cDNAライブラリーから記載のように(diClementeら、Mol. Endcrinol. 8:1006[1994])単離する。ヒトIgG1のFc部分(配列番号2由来のヌクレオチド1312〜1995)に融合したウサギII型レセプターの細胞外ドメイン(配列番号2由来のヌクレオチド832〜1311)からなる、組換えウサギTGFβRII:Fc融合遺伝子を以下のようにして構築する:
フラグメント1)479bpフラグメント(ウサギTGFβII型レセプターの細胞外ドメインを含む)を適切なオリゴヌクレオチドプライマー(配列番号5および配列番号6)を使用する従来のPCRにより、クローンMIS_3f11から増幅する。これらのオリゴヌクレオチドは、得られたPCR産物に、隣接するNot1およびSal1制限酵素部位を付与し、続いて、このPCR産物をこれらの2つの制限酵素を用いて消化する。
【0147】
フラグメント2)pSAB132(Millerら、J.Exp. Med. 178:211[1993])を制限酵素Not1を用いて消化し、そして末端リン酸基を、仔ウシアルカリ腸ホスファターゼを用いる消化により除去する。
【0148】
フラグメント3)pSAB144を構築する。ヒンジ領域、CH2およびCH3の配列を含むヒトIgG1重(H)鎖定常領域を、H鎖特異的プライマーを用いて、3kbpのゲノム挿入物を含むプラスミドでトランスフェクトしたCOS-7細胞のRNA由来のcDNAのPCR増幅により単離する(Millerら、J.Exp. Med. 178:211[1993])。重鎖特異的オリゴヌクレオチドプライマーを設計し、その結果得られたCH2およびCH3IgG1PCR増幅された配列は、5'Sal1および3'Not1制限酵素認識部位に隣接していた。pSAB144を、制限酵素Not1およびSal1を用いて消化して、ヒトIgG1のFc部分を含む700塩基対のフラグメントを放出させる。
【0149】
フラグメント1、2、および3をお互いに連結し、そしてこれで形質転換コンピテント細菌を形質転換する。形質転換体からプラスミドを回収し、そしてアセンブリされたフラグメントの正確な配向性について、制限酵素消化およびゲル電気泳動により分析する。この構築物は、組換えウサギTGFβRII:Fc融合遺伝子を含み、そしてそのコード配列全体をDNA配列決定により確認する(配列番号1および2)。
【0150】
組換えウサギTGFβRII:Fc融合遺伝子をチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に、280ボルトでのエレクトロポレーションによりトランスフェクトする。最初のトランスフェクションの後、グリシン、ヒポキサンチン、およびチミジンを欠く選択培地における継代培養により、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)の発現について細胞を選択する。次いで、得られたコロニーを24ウェルプレートに移し、そしてウサギTGFβRII:Fc融合遺伝子の発現について分析する。最も高く発現する培養物を、漸増量のメトトレキサートに曝露することにより、増幅へ供する。25nMのメトトレキサートで増殖し得る細胞を、96ウェルプレートにおける限界希釈によりクローニングする。最も高く発現するクローンを懸濁培養へ移し、そしてTGFβRII:Fcを最も高いレベルで発現するクローンをTGFβRII:Fcの産生について選択する。
【0151】
当業者は、市販のヒト卵巣cDNA(Clontech)からヒトII型TGFβレセプター遺伝子を単離することにより、および配列番号7に記載のオリゴヌクレオチドプライマーを配列番号6に記載のオリゴヌクレオチドプライマーに置換することにより、ヒトTGFβII型レセプターの細胞外ドメインを含む同様の組換え遺伝子を構築し、そして発現し得る。得られたヒトTGFβR:Fc融合遺伝子のDNA配列を記載する(配列番号3および配列番号4)。
【0152】
実施例2:TGFβR:Fc融合タンパク質は、インビトロでTGFβを結合する
組換えウサギTGFβR:Fc融合遺伝子(発現ベクター配列番号1内に含まれる配列番号2)を280ボルトでのエレクトロポレーションにより、COS細胞にトランスフェクトする。トランスフェクトされた細胞を、10%ウシ胎児血清を補充したDMEM培地において増殖させる。5日後、細胞を遠心分離により培養物から除去し、そして上清をSDS/ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS/PAGE)により、組換えウサギTGFβRII:Fcの発現について評価する。細胞培養物の上清中に存在するTGFβRII:Fcを、TGFβに結合する能力について試験する。[125I]-TGFβ(NENLife Science Products)を、ウサギTGFβRII:FcまたはコントロールIgG、およびIgGのFc部分に結合するプロテインA-Sepharoseを含む馴化細胞培養培地とともに2.5時間インキュベートする。得られたプロテインA:Fc複合体を遠心分離により回収し、リン酸緩衝化生理食塩水中で洗い、そしてSDS/PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析する。TGFβRII:Fcは、[125I]-TGFβを免疫沈降させるが、コントロールIgGは免疫沈降させない。
【0153】
実施例3:ミンク肺(mink lung)の細胞増殖アッセイ
ミンク肺上皮細胞(CCL64)の増殖をTGFβ1により阻害する。従って、本発明者らは、TGFβ1の抗増殖効果をブロックするTGFβR:Fcの能力を試験し得る。CCL64細胞は、100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%ウシ胎児血清を補充したMEMにおいて維持する。試験するために、96ウェルマイクロタイター組織培養プレートにおけるアッセイ培地(100単位/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および10%ウシ胎児血清を補充したMEM)中で、TGFβR:Fcの段階希釈物を、0.1ng/mlのTGFβ1とともに1時間インキュベートする。CCL64細胞をアッセイ培地中で再懸濁し、そして1ウェルあたり4000個の細胞濃度でアッセイプレートに添加する。細胞を37℃で72時間インキュベートし、そしてさらに4時間、[3H]チミジン(70〜86Ci/mmol)でパルス刺激する。細胞増殖を反映するDNA合成を、[3H]チミジンの取り込みを測定することにより、決定する。細胞が培地単独中で増殖可能な場合、取り込まれた[3H]チミジンの量は、188,745計数/分(CPM)と測定される。TGFβ1を培地に含む場合、増殖は阻害され、そして取り込まれた[3H]チミジンの量は49088計測/分と測定される。以下に、漸増量のTGFβR:FcまたはコントロールIgGを培地に添加する場合の結果を示す。
【0154】
【化18】

【0155】
【化19】

0.1ng/mlのTGFβ1の抗増殖効果を50%阻害するのに必要なTGFβRII:Fcの量は、0.5μg/mlに等しい。
【0156】
実施例4:ラット血管損傷モデル
体重が400g、そして約3〜4ヶ月齢の雄性Sprague-Dawleyラット(Bantin& Kingman, Edwards, WA)を始めから終わりまで使用した。全ての外科手術の手順を、キシラジン(2.2mg/kg, AnaSedTM, Lloyd Laboratories, Shenandoah, IA)およびケタミン(540mg/kg, Ketaset TM, Aveco Co.,Fort Dodge, IA)の腹腔内注射による全身麻酔下で行う。左総頚動脈を、外頚動脈を通してカテーテルを導入することにより、2Fバルーンカテーテルを用いて露出させる。遠位左総頚動脈および外部頚動脈を、頚部における正中線の創傷を介して露出する。カテーテルを、わずかな抵抗性を生じるように生理食塩水で充分に拡張したバルーンで3回通す;この方法は、頚動脈自体の拡張を生じ、外部頚動脈は、カテーテルの除去および創傷を閉じた後に連結する。
【0157】
実験処置は、隔日(処置後)で与えられる、5mg/kgでPBS中にTGFβII型レセプター:Fc(配列番号8)の一連の1ml静脈注射を含む。バルーンカテーテル露出の14日後、全てのラットを麻酔し、そして頚動脈を、0.1Mリン酸緩衝液、pH 7.4中の1% パラホルムアルデヒドおよび1.25% グルタルアルデヒドを用いて、腹大動脈に逆方向に配置した大きなカニューレを介して120mmHg圧で灌流することにより固定した。固定の10分前に、これらの動物にエバンスブルー(5%の生理食塩水溶液中に0.3ml)の静脈注射を行う。灌流の5分後、大動脈弓を含む左および右の総頚動脈の全体を取り出す。灌流のために使用したのと同じ固定液中での浸漬により血管をさらに固定する。
【0158】
露出させ、青色に染色された左総頚動脈から3つのセグメントを得、そしてそれらを「Micron」ミクロトームを使用する横断切断(cross sectioning)のためのパラフィンに包埋することにより、動脈セグメントを内皮の存在または非存在についてアッセイする。内膜の面積を測定するために、顕微鏡写真をそれぞれの動物から3〜4切片得る。顕微鏡写真をイメージ分析ソフトウェア(NIHImage 1.55 for MacIntosh)を使用してデジタル化し、そして分析する。内膜面積を、管腔と内弾性板との間の領域を決定することにより測定する。中膜(medial)の面積を内弾性板と外弾性板との間の面積を測定することにより決定する。内膜/中膜の面積比を測定値から計算する。
【0159】
ラットモデルにおける再狭窄に対するTGFβRII:Fc(配列番号8)の効果
【0160】
【化20】

処置間で対応のないT検定は、統計学的に有意なp=0.0001を生じる。
【0161】
【化21】

処置間で対応のないT検定は、統計学的に有意なp=0.0018を生じ、これは配列番号8を用いた処置が、非処置群と比較した際に、中膜と比較して内膜形成を有意に減少させることを示す。
【0162】
実施例5:肺線維症モデル
肺におけるコラーゲンの過剰蓄積は、肺線維症の特徴である。組織におけるコラーゲンの量は、コラーゲンの合成速度およびコラーゲンの分解速度に依存し、そして線維症の場合においては、コラーゲン合成速度は、コラーゲン分解速度を凌駕する。
【0163】
慢性呼吸器疾患のない120〜130gの体重のGolden SyrainハムスターをCharles River(Boston, MA)から購入し、そしてAmericanAssociation for Accreditation of Laboratory Animal Careにより認可された施設内で4つの群においてプラスチックのケージに住まわせる。実験を始める前に、これらの動物を実験条件に1週間慣れさせる。これらの動物に、RodentLaboratory Chow 5001(Purina Mills, Inc., St. Louis, MO)および水を任意に与え、そして濾過空気を与え、そして12時間/12時間の明/暗サイクルを有する部屋に住まわせる。ハムスターを、生化学的および組織病理学的な研究のために以下の群に分ける。
【0164】
【化22】

ブレオマイシン硫酸塩を、気管内(IT)滴下注入の直前に発熱物質を含まない無菌等張生理食塩水に溶解する。ペントバルビタール麻酔(25〜35mg/kg 腹腔内)下、適切な群におけるハムスターに、経口経路を介して、ブレオマイシン(5.5単位/kg/4ml)または等容量の発熱物質を含まない等張生理食塩水(4ml/kg)のいずれかを投与する。TGFβII型レセプター:Fcを、注入(instillation)後21〜28日間、1週間に2回、適切な群のハムスターに治療的用量で、腹腔内(IP)経路または気管内経路により投与する。その後、それぞれの群における動物を過量のペントバルビタールナトリウム(100〜125mg/kg腹腔内)により死なせ、そしてそれらの肺を生化学的研究および組織病理学的研究のために処置する。
【0165】
1.生化学的研究
生化学的研究のために用いる動物の肺を、氷冷した等張生理食塩水を用いて右心室を介して、インサイチュで灌流して、血液を左心室における開口部を通して肺血管系から洗い流す。肺葉をすばやく非柔組織を含まない組織に切開分離し、急速な凍結のために液体窒素中に滴下し、次いで-80℃で保存する。凍結した肺を後に融解し、そしてPolytronホモジナイザーを用いて0.1M KC、0.02M Tris 緩衝液(pH7.6)中でホモジナイズする。1mlのホモジネートのアリコートのいくつかを種々の生化学的アッセイが行われる時間まで、-80℃で保存する。
【0166】
コラーゲン含量の尺度としての肺ホモジネートのヒドロキシプロリン含量を、Woessnerの技術(Arch.Biochem. Biophys. 93: 440-447(1961))およびGiriら、Biochem.Pharmacol. 54: 1205-1216(1997)に記載される方法による脂質の過酸化により定量する。
【0167】
2.組織病理学的研究
ハムスターを心停止のレベルまで麻酔する。胸郭を開き、心臓を、心基底で結紮し、そして気管にカニューレを挿入する。肺および心臓をひとまとめにして取り出し、重量を量り、そして通常の生理食塩水槽中に置き、そして肺を0.12M カコジル酸緩衝液中の1% グルタルアルデヒド-パラホルムアルデヒド固定液を、400m Osm、30cm H2O圧で滴注する。肺を約2時間この圧を介して固定し、次いで閉塞した気管とともに固定液中に保存する。包埋する前に、おおざっぱな解剖により、心臓および全ての非肺組織から肺を単離し、そして取り出す。組織のブロックをそれぞれの肺の右上葉(cranial)、右下葉(caudal)、および左肺葉からの少なくとも2つの矢状厚板(sagittalslab)(2〜3mm厚)から切断する。約1cm2表面を有する各ブロックに切断する。そのブロックを段階的な系列のエタノール中で脱水し、そしてパラフィンに包埋する。切片(5μm厚)をパラフィンブロックから切り出し、そして組織病理学的評価のためにヘマトキシリンおよびエオシンで染色する。
【0168】
3.データの分析および解釈
コントロールおよび処置した動物の肺において異なる生化学的な決定因子についての値を、1mgの肺タンパク質またはDNAあたりで表す。しかし、1mgの肺タンパク質またはDNAに基づくデータの表現は、人為的なより低い値を処置動物に導入する傾向にあることに注意すべきである。この問題は、リンパ球の浸潤、灌流後でさえも肺の中に残存する血漿タンパク質の存在、ならびにブレオマイシンで処置したハムスターの肺における長期間の研究におけるII型細胞および線維芽細胞の増殖による。値の人為的な低下を回避するために、データを、肺1つを基準に表現する。Starcherら、Am.Rev. Resp. Dis.,117:299-305(1973)およびWitschi,Essays Toxicol., 6:125-191(1975)を参照のこと。
【0169】
データをそれらの標準偏差および平均の標準誤差とともに平均値という形で分析する。スチューデントのt検定、χ二乗分布、相関係数、分散分析(ANOVA)、および多重比較検定適用して、コンピューターに基づく統計学的パッケージ(SAS/STATGuide, 第6版、Cary, N.C., 183-260頁(1985))を使用して、コントロールと処置群との間の有意差を判断する。
【0170】
実施例6:糸球体腎炎モデル
本発明のタンパク質の効果を、糸球体腎炎モデルにおいて評価する。ウサギ由来の抗糸球体基底膜腎毒素血清(NTS)の単回注射を用いて、実験的な糸球体腎炎をラットに誘導する。実験的な病変は、急性糸球体間質増殖性の糸球体腎炎であり、これは糸球体間質のマトリックスの増大および過細胞性(hypercellularity)により特徴付けられる。損傷した細胞はまた、より多くのTGFβ1mRNA、およびTGFβ1を発現し、これは次いで、2つのプロテオグリカン、ビグリカン、およびデコリンの合成を刺激する。特に興味深いことに、腎炎は、糸球体および尿細管間質の瘢痕を介して、腎疾患の最終段階まで再現性よく進行する。
【0171】
最初に、NTS血清の静脈注射によりラットに糸球体腎炎を誘導する。次に、6日間、2つの群のラットを生理食塩水(ネガティブコントロール群)または本発明のタンパク質の静脈注射で毎日処置する。10日目に動物を屠殺し、そして腎臓のスライドを作製し、これを過ヨウ素酸シッフ溶液で染色して病理学的変化を強調する。ネガティブコントロールの腎臓は、糸球体のほとんどを満たす赤みをおびたピンクの不定型の線維性物質(amorphousfibrous material)を伴う成熟した糸球体腎炎を有する。ポジティブコントロールの腎臓は、正常な糸球体と同様の染色パターンを有する。本発明のタンパク質を用いて処置する腎臓はまた、正常な外見を有し、このことは本発明のタンパク質が過剰生産のTGFβの分泌による応答をブロックすることを示す。
【0172】
糸球体損傷の程度を、それぞれの群における正常動物および腎炎動物から無作為に選択された30の糸球体由来の糸球体細胞数の計測を行うことにより定量し得る。10日目までに、NTS処置ラット由来の糸球体においてより多くの細胞が存在する。腎機能をまた、尿中アルブミンのレベルを測定すること、およびクレアチニンクリアランスを定量することにより評価する。
【0173】
疾患プロセスに対する本発明のタンパク質の効果の別の尺度は、糸球体における細胞外マトリックスの蓄積量を定量することである。糸球体マトリックスの増大の程度を、Raijら、(1984)Kidney Int.26: 137-43の方法に従い、糸球体間質マトリックスにより占有される各糸球体の割合として決定する。TGFβRII:Fc処置した腎臓は、正常な腎臓におけるのと同様の割合の糸球体間質糸球体間質マトリックス、およびネガティブコントロールの腎臓におけるより有意に少ない割合の糸球体間質マトリックスを有すると予想される。
【0174】
実施例7:関節炎モデル
病原体を有さない約100gの体重の雌性LEWラット(Harlan Sprague Dawely, Indianapolis, Ind)に関節炎を誘導する。各ラットに、1用量のA型連鎖球菌(SCW)由来の細胞壁フラグメント(30μgラムノース/体重(g))を、Brandesら、(1991)J. Clin. Invest. 87:1108において記載の技術に従って腹腔内(ip)注射する。SCWを注射したLEWラットおよびコントロールLEWラットに以下のうちの1つを後脚関節の1箇所に関節内(IA)注射する:
1.本発明のタンパク質を含む25μlのPBS
2.PBSのみ、または
3.IgGコントロール。
【0175】
関節の紅斑、腫脹および歪曲の量を0(正常)〜4(重篤な炎症)の尺度について決定することにより、関節を臨床的にモニタリングする。X線写真を撮り、軟組織の腫脹、関節空間の狭小化、骨侵食および変形について評価する。Brandesら(同上)に記載されるように、組織病理学的分析のための組織標本を得、そして調製する。総RNAをAllenら(1990)J.Exp. Med. 171:231の方法に従って切り出した滑膜組織から単離する。
【0176】
SCWの注射は、臨床的に数時間内に検出可能であり、そして3〜5日に最大となる急性炎症応答を生じる。SCWの腹腔内投与の前にTGFβII型:Fcを関節に直接注射する場合、炎症は24時間で、関係のない抗体を伴う関節で観察されるよりも有意に低い。急性応答のピーク時で、このような処置をした関節の炎症は、関係のない抗体を伴う関節よりもずっと低い。炎症が十分に進行した(13日目)際に、TGFβII型レセプター:Fcを関節に注射しても、関係のない抗体と比較した場合に、その融合体はなお有意な抗炎症効果を有する。本発明のタンパク質はTGFβにも結合するので、炎症プロセスの初期または後期に投与する場合、それらは同様に有益な効果を有する。RAの他の充分に確立された実験モデルは、コラーゲンおよびアジュバント誘導性関節炎を含む。例えば、JanuszMJら、Inflamm Res. 46:503-508(1997); Myersら、Life Sci 61:1861-1878(1997); およびKockら、ClinImmunol Immunopathol 86: 199-208(1998)を参照のこと。
【0177】
等価物
本発明は、実施例および直接的な記載の両方により記載されている。当業者が、上記の精神に従うがその範囲内にある、請求の範囲に記載される発明との等価物を推測し得ることが明白であるはずである。これらの等価物は、本発明の範囲内に含まれるべきである。
(配列表)
【0178】
【化23】

【0179】
【化24】

【0180】
【化25】

【0181】
【化26】

【0182】
【化27】

【0183】
【化28】

【0184】
【化29】

【0185】
【化30】

【0186】
【化31】

【0187】
【化32】

【0188】
【化33】

【0189】
【化34】

【0190】
【化35】

【0191】
【化36】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載されるような、融合タンパク質。

【公開番号】特開2008−106076(P2008−106076A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5068(P2008−5068)
【出願日】平成20年1月11日(2008.1.11)
【分割の表示】特願平10−546150の分割
【原出願日】平成10年4月16日(1998.4.16)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【Fターム(参考)】