説明

IL−11ムテイン

本発明は、部位Iの疎水性が増大した新しいIL−11ムテインに関する。これらのムテインは、IL−11アゴニストまたはハイパーアゴニストとして作用し、血小板減少症治療薬剤として、および放射線または化学療法により、癌の治療中にまたは移植に対して患者を前処理するために引き起こされる有害なインビボの効果に対する生体の抵抗力を改善する薬剤として、特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ヒトインターロイキン−11(hIL−11)は、造血、破骨細胞形成、神経形成および女性の受胎能のような多数の生物学的活性に関係する、多重の能力を有するサイトカインである。それはさらに抗炎症特性を発揮する。hIL−11は、化学療法に起因する血小板減少症を治療するために臨床的に用いられる。
【0002】
インターロイキン−11は霊長類間質細胞系統PU−34からクローニングされ、最初は造血性のサイトカインと考えられた。その後それは非造血系にも効果があること、および様々な細胞型および組織に作用することが発見された。動物モデルにおける多数の実験、および慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、炎症性肝臓病、粘膜炎および乾癬を含む急性および慢性炎症性疾患に罹患している患者に対する臨床的な試みにより、IL−11が抗炎症剤および粘膜保護剤であり、IL−11は、核因子κB(NF−κB)の核内移転を阻害することにより、マクロファージによって分泌されるTNF−α、IL−1β、IL−6およびIL−12などの炎症性サイトカインの産生を減少させることができることが明らかになった。その放射線保護活性および敗血症性ショック保護活性も、他の実験によって実証された。このサイトカインの巨核球形成と血小板新生を刺激する能力により、化学療法に起因する血小板減少症の治療に対するhIL−11の臨床適用がFDAにより承認された。IL−11は健康なマウスだけでなくフォンウイルブランド病マウスモデルにおいてもフォンウイルブランド因子および第VIII因子生産を増加させることができるという事実により、IL−11が軽症の血友病Aまたはフォンウイルブランド病の処置にもう一つの将来性のある治療適用を有することが、最近、立証された。
【0003】
その作用が広いスペクトルを有するために、IL−11拮抗剤はもちろん改良されたIL−11アゴニストも、多数の生物学的・臨床的応用に対して重要となるであろう。
【0004】
いくつかのIL−11分子の構造研究が、IL−11の活性化および信号伝達に関係する相互作用を解明するために行なわれた。
【0005】
Czupryn et al. 1995によるこのような構造研究は、チオレドキシン融合タンパク質として大腸菌からの61のhIL−11の突然変異型の産生を記載している。[Czupryn et al.(1995) Alanine-scanning mutagenesis of human interleukin-11 : identification of regions important for biological activities. Ann. New York Acad. Sci. Jul 21; 762,152-164]。これらの突然変異型の、マウスT10プラズマ細胞腫増殖反応測定による検査により、hIL−11のC末端近くのいくつかの位置に起こったD186A突然変異などの突然変異が、生物活性の実質的な減少を引き起こし(D186A突然変異は、マウスのプラズマ細胞腫細胞系統T10における生物活性の500倍の減少を引き起こした)、またこの領域の多くの他の突然変異がタンパク質の折り畳みまたは安定性のいずれかに影響した、という結論が得られた。
【0006】
Tacken et al.1999は、ヒトIL−11の3次元モデルを構築した[Tacken et al.(1999) Definition of receptor binding sites on human interleukin-11 by molecular modelling-guided mutagenesis. Eur. J. Biochem. 265,645-655]。IL−11分子内の3つのレセプター結合部位がこのようにして明らかにされた(Tacken et al. 1999の図1Bの、部位I、部位II、および部位IIIを参照のこと)。
【0007】
Tacken et al. 1999の研究においては、表面に露出している10個のアミノ酸を部位I、IIおよびIII内で単一点突然変異原生試験(1つの分子当たり1つのアミノ酸のみを突然変異させた)の候補として選択した。作成された単一点突然変異は、実質的な攪乱をレセプター結合部位に導入するために、疎水性の側鎖を荷電した基(アスパラギン酸)に置換すること、および荷電した側鎖を反対に荷電した残基(リジンまたはグルタミン酸)に置換することからなっていた。このようにして作成された10個の単一点突然変異体のうちの9個が、単一点突然変異が部位Iに属するアミノ酸に存在する4つの突然変異体(A84D突然変異;L85D突然変異;R190E突然変異;L194D突然変異)を含めて、IL−11レセプター複合体に対する親和性の相当な低下、生物活性の欠失または実質的な減少(HepG2細胞におけるα1−抗キモトリプシン合成の誘導およびBa/F3−130−11α細胞増殖の誘導の喪失または相当な減少)をもたらした。ただ1個の突然変異体即ち、部位IIの親水性アミノ酸を親水性ではあるが反対の電荷を持つアミノ酸により置換した結果であるR135Eだけが、ハイパーアゴニスト的なIL−11突然変異体である可能性があるように見えた。
【0008】
したがって、効率的にIL−11アゴニストを生成し、インビボで活性を有すると証明されるであろうIL−11アゴニストを得る方法が必要なことに変わりはない。
【0009】
発明の要約
本発明者らは、少なくとも2個のIL−11部位I親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸により置換することにより、部位Iの疎水性を実質的に増加させたIL−11のムテインを設計し、生成した。ムテインを、構造、親和性、特異性、および生物活性について特性決定した。電気泳動解析、ゲルろ過、赤外分光、および円偏光二色性により、これらの新しいタンパク質は、野生型のIL−11よりもコンパクトであることが明らかである。
【0010】
本発明のIL−11ムテインは、IL−11Rαに増大した親和性(3倍増大した親和性が測定された)をもって結合し、また部位IIを通じてgp130を動員する能力を保持している。
【0011】
有利な特徴として、それらは、様々なIL−11依存性細胞のインビトロにおける増殖を引き起こす能力を保持している。本発明のムテイン;すなわちH182V+D186A hIL−11ムテインは、7TD1マウスハイブリドーマ細胞のインビトロの増殖において、野生型のIL−11より60〜400倍活性が高いことがさらに示された。
【0012】
本発明のムテインはまた、インビボの生物活性を有利に保持している。それらのインビボの生物活性はさらに、野生型IL−11よりもはるかに高い可能性がある。H182V+D186A hIL−11ムテインを野生型hIL−11より10倍低い用量を注入することにより、放射線照射されたマウスの死を同じ期間だけ遅らせることが示された。
【0013】
D186A IL−11ムテインなどの単一点突然変異IL−11ムテインと比較して、本発明の二重点突然変異のムテインは、インビトロおよびインビボにおいて予期しない効果および長所を有することが判明している。それらは特に、放射線曝露に対するはるかに高い生存率を引き起こす(即ち、微小血管内皮アポトーシスの阻止において);下記の実施例3に記載する比較用実例データ、および添付図35〜36を参照のこと。
【0014】
本発明のムテインは、したがって野生型IL−11が役に立つすべての生物学的、医学的または臨床的応用に有用であり、またさらに高い効率を示すことさえもできる。本発明のムテインは、放射線防護(例えば、腹部照射中の小腸の放射線防護)に、化学療法の有害作用(例えば、5−フルオロウラシル化学療法中の)の減少に、抗炎症治療において、敗血症性ショックに対する抵抗性において、糖尿病に対して、および造血刺激において、より特別に有用である。
【0015】
発明の詳細な説明
IL−11の信号伝達は、現在、IL−11、IL−11Rαサブユニット(相互作用の特異性を担う)およびgp130レセプターβサブユニット(信号伝達を担う)を含むリガンド/レセプター複合体の形成に依存することが知られている。IL−11とそのレセプターαサブユニット間の相互作用は最近特定された部位Iで生じる(上に引用したTacken et al. 1999、これは参照により本明細書に組み入れられる)。
【0016】
IL−11の活性にとっては、gp130との機能的多量体信号伝達複合体にリガンド特異性を与えるαレセプターサブユニット(IL−11Rα)への結合が必要である。gp130は、IL−6、vIL−6、CNTF(毛様体神経栄養因子)、LIF(白血病抑制因子)、OSM(オンコスタチンM)、CT−1(カルジオトロフィン)およびNNT−1/BSF−3(新神経栄養因子−1/B細胞刺激第3因子)を含むサイトカインファミリーの共通のレセプターサブユニットである。IL−11はまずIL−11Rαと低い親和性(K=10nM)で相互作用し、続いてIL−11/IL−11Rα複合体がgp130と相互作用して、高親和性(Kd=300〜800pM)のシグナル伝達複合体を形成すると信じられている。
【0017】
レセプターサブユニットとの相互作用を担う3つの部位がIL−11上に特定された[Grotzinger, J., Kurapkat, G., Wollmer, A., Kalai, M. and Rose-John, S. (1997) The family of the IL-6-type cytokines: specificity and promiscuity of the receptor complexes. Proteins 27, 96-109; Tacken, I., Dahmen, H., Boisteau, O., Minvielle, S., Jacques, Y., Grotzinger, J., Kuster, A., Horsten, U., Blanc, C., Montero- Julian, F. A., Heinrich, P. C. and Muller-Newen, G.(1999) Definition of receptor binding sites on human interleukin-11 by molecular modelling-guided mutagenesis. Eur.J. Biochem. 265,645-655]。
【0018】
部位Iは、基本的にABループの終端およびDへリックスのC末端部分のアミノ酸から成り、IL−11Rαサブユニットとの相互作用に関与する。基本的にAおよびCへリックスからのアミノ酸から成る部位II、および基本的にDへリックスのN末端部分およびABループの始めの残基から成る部位IIIは、gp130(β−サブユニット)の動員に関与する(図25)。
【0019】
本発明者らは、IL−Rαに対する親和性が増大し、gp130への親和性を保持し、そしてIL−11の生物学的活性を保持しまたは改善されたIL−11ムテインを生成することができることを発見した。
【0020】
本発明者らは、そのようなアゴニストIL−11ムテインをIL−11の部位Iの疎水性を実質的に増加させることにより得ることができ、それによってIL−11分子の構造がよりコンパクトになることを実証する。IL−11の部位Iの疎水性増加を、IL−11の部位Iの親水性アミノ酸を疎水性のアミノ酸によって置換することにより達成することができる。さらに、少なくとも2個のそのような親水性アミノ酸を疎水性アミノ酸により置換するべきであることが、発明者らには明らかであった。
【0021】
本発明者らは、ヒト野生型IL−11の部位Iは、2個の親水性アミノ酸(His182およびAsp186)を含むこと、およびその両方を疎水性の対応物により置換(例えばHis182およびAspl86をそれぞれバリンおよびアラニンにより置換)することによって、IL−11Rαに対する増加した親和性、増加した特異性、および増加したインビトロおよびインビボの生物活性を有するhIL−1ムテインが得られることを特に証明する。
【0022】
本発明のムテインがそのような優れた特性および効果を持っているという事実は、これらの2個の親水性アミノ酸のうちの1個だけが置換された場合には反対の特性と効果が得られるため、なおさら驚くべきかつ予期しないことである。
【0023】
確かに、Czupryn et al. 1995(上に引用)は、D186のAによる置換(H186の置換無しに)が、野生型のヒト1L−11に比較して高度に減少した生物活性を有するヒトIL−11ムテインをもたらすこと:マウスのプラズマ細胞腫細胞系統T10上で生物活性の500倍の減少が測定されたこと、を記載している。
【0024】
従ってこの文献は、増加した生物活性を有するムテインを得るためには非常に望ましくない候補突然変異としてD/A突然変異を開示した。
【0025】
実際、本発明者らは、ここでさらに、インビトロで細胞系統から得た結果を直接頼りにして、ある突然変異が、増大した効率を有するムテインを得るための良いかまたは悪い候補であると信頼性を持って考えることはできないことを実証する:同じD186A突然変異であるが、しかしFPΔIL−11タンパク質(フラグタグ+N末端プロリンリッチ領域の欠失、下記の実施例を参照)上で起こったものを、別の細胞系統(細胞系統7TD1、下記の実施例を参照)上で本発明者が分析し、この細胞系統については生物活性の増加を引き起こすように見える。
【0026】
実際本発明者らは、インビボで、D186A IL−11ムテインなどの単一点突然変異のIL−11ムテインと比較して、本発明の二重点突然変異のムテインが、インビボにおける予期しない効果および利点を有することを確認する実験を行った。それらは特に放射線への曝露に対してはるかに高い生存率を誘起する(例えば、微小血管内皮のアポトーシスの抑制において);下の実施例3に記載した比較用例証データ、および添付図35〜36を参照のこと。
【0027】
His182およびAsp186の両方を(それぞれValおよびAlaにより)突然変異された本発明のムテインが、驚くべきことにまた予期しないことに、ヒト野生型IL−11よりもずっと大きな生物学的活性を有することはさらに注目できる:60〜400倍のインビトロにおける細胞増殖の増加が、7TD1のマウスハイブリドーマ細胞で測定された。
【0028】
更に、非常に有利なそして実際高度に本質的な特徴として、本発明のムテインは、哺乳動物などの動物においてインビボの生物活性の増加を引き起こす(インビボにおける放射線防護効率の10倍の増加が、H/V−D/Aを有する照射マウスで測定された。下記の実施例を参照のこと)。
【0029】
本発明はこのように、IL−11Rαに対する野生型IL−11のエピトープの一部である少なくとも2個の非疎水性アミノ酸を疎水性のアミノ酸によって置換することにより部位Iの疎水性を増加させたIL−11ムテインの生成を含む、IL−11アゴニストを生成するための方法を提供する。
【0030】
前記2個の非疎水性アミノ酸は、IL−11Rαに対する野生型IL−11エピトープの一部であるので、それらはIL−11の部位Iとして知られている部分(=ABループの終端、およびD−へリックスのC−末端部)に属する。
【0031】
前記少なくとも2個の非疎水性アミノ酸は表面に露出されているのが最も好ましい。
【0032】
ムテイン分子はそれによりさらにコンパクトになる。
【0033】
それは突然変異された部位Iを通じてIL−Rαに結合する能力を保持しており、またIL−11シグナル伝達複合体の他のコンポーネントに、特にgp130にムテインの部位IIおよび部位IIIを介して結合する能力をさらに保持していた。
【0034】
さらに、それはICLC(Interlab Cell Line Collection of the Istituto Nazionale per la Ricerca sul Cancro; L. go R. Benzi, 10; 16132 Genova, Italy; see http://www.iclc.it/Lista.html and http://www.biotech.ist.unige.it; ICLC Catalogue accession number = HYL96001)から入手可能な7TD1マウスハイブリド−マ細胞などのIL−11依存性細胞のインビトロでの増殖を引き起こす能力を保持していた。
【0035】
さらに、それは例えば放射線に対して保護する能力などのインビボの生物活性を保持していた。
【0036】
本発明のムテインは、少なくともIL−11の親和性および生物活性を保持しているため、それらをIL−11アゴニストまたはハイパーアゴニストと呼ぶことができる。
【0037】
あるIL−11のアミノ酸がIL―11Rαに対するエピトープの一部かどうか、またそれが表面に露出されているかどうかを判断するためには、当業者はTacken et al. 1999(上に引用)の記述に従って進めばよい。それは例えば前記のIL−11の三次元構造表現を使用して前記の与えられたアミノ酸の位置を決め、それが部位I(=IL−11Rαに対するエピトープ)に属するかどうか、およびそれが表面に露出されているかどうかを決定することを含んでもよい(前記Tacken et al. 1999の図1Aおよび1B、およびこの出版物内の"Generation of a molecular model of interleukin-ll and selection of amino acid residues for site-directed mutagenesis"と表題をつけられた章(その内容は参照により本明細書に組み入れられる)を参照のこと)。
【0038】
野生型IL−11Rαのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当業者に公知の標準配列データバンクから入手可能である。したがってヒトIL−11Rα配列をNCBIウェブサイト、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezから、ヌクレオチドアクセッション番号Z38102の下に、利用可能である(参照によりその内容は本明細書に組み入れられる)。マウスおよびラットなどの非ヒト起源の動物からのIL−11Rα配列もまた、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezから利用可能である(マウスおよびラットのIL−11Rα配列に関しては、それぞれのヌクレオチドアクセッション番号X98519およびAF347936の下で参照のこと。参照によりその内容は本明細書に組み入れられる)。
【0039】
IL−11Rαへの結合を分析するための基質として、可溶性IL−11Rα、例えばBlanc et al. 2000に記載されているヒトIL−11Rα−IL−2融合タンパク質を用いることができる(Blanc et al. (2000) Monoclonal antibodies against the human interleukin-11 receptor α-chain (IL-11Rα) and their use in studies of human mononuclear cells. J. Immunol. Methods 241, 43-59、参照によりその内容は本明細書に組み入れられる)。マウスのIL11−11RαはR&D Sytems(http://www.RnDSystems.com)から入手できる。
【0040】
野生型のIL−11ヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、当業者に公知の標準配列データバンクから利用可能である:ヒト野生型のIL−11配列は、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrezに、ヌクレオチドアクセッション番号AY207429の下に記述されている。参照によりその内容は本明細書に組み入れられる。さらにヒト野生型ヌクレオチドおよびアミノ酸配列を、前記サイトから印刷して添付図1に示す(配列番号73=AY207429 IL−11ヌクレオチド配列;配列番号1=ヒト野生型IL−11アミノ酸配列)。さらに、野生型hIL−11 cDNA配列が、アクセッション番号NM57765で前述のNCBIウェブサイトから利用可能である。
【0041】
非ヒト動物源からの野生型IL−11配列、例えばマウスおよびラットIL−11(それぞれヌクレオチドアクセッション番号NM 008350およびNM 133519)などが、さらに前述のNCBIウェブサイトから利用可能である。
【0042】
前記少なくとも2個のアミノ酸の置換は、当業者に公知の任意の標準的手順により達成することができる。その手順には、例えば、Stemmer W. P. and Morris S. K.1992[Stemmer and Morris (1992) Enzymatic inverse PCR: a restriction site independent, single-fragment method for high-efficiency, site-directed mutagenesis. Biotechniques 13, 214-220]に記述されているインバースPCR増幅による突然変異が含まれよう。参照によりその内容は本明細書に組み入れられる。
【0043】
適切なプライマーの選択を、ある与えられたIL−11鋳型配列に対してプライマーの機能を有し、かつその鋳型配列に関してアンプリコンに少なくとも2つの点突然変異を導入する能力を有する配列を有するオリゴヌクレオチドの設計に適用される分野における通常の知識を利用することにより、行なう(上に引用のStemmer and Morris 1992を参照のこと)。
【0044】
そのようなIL−11突然変異生成の実例となる手順について下の実施例1に記述する。
【0045】
ムテインの産生を、タンパク質一般の生成、特に野生型IL−11の生成の技術分野における当業者に公知の任意の従来手順により達成することができる。それは、例えばムテインをコードする配列を含むプラスミドの生成を含んでもよく(プラスミドの構築については、Wang, X. M., Wilkin, J. M., Boisteau, O., Harmegnies, D., Blanc, C., Vandenbussche, P., Montero-Julian, F. A., Jacques, Y. and Content, J. (2002) Engineering and use of 32P-labelled human recombinant interleukin-11 for receptor binding studies. Eur. J. Biochem. 269,61-68、を参照のこと。この内容は参照により本明細書に組み入れられる。)、このプラスミドによってE. coliなどの宿主細胞を形質転換し、その結果、形質転換された細胞によってムテインが発現され、それをこの細胞から回収分離することができる。ムテイン産生の実例となる手順を下の実施例1に記述する。
【0046】
非疎水性アミノ酸(例えば、親水性アミノ酸)は、荷電しているか、荷電していないが極性鎖である側鎖を有する。それらは特に次のものを含む:
−システイン(記号=CまたはCys)、
−チロシン(記号=YまたはTyr)、
−ヒスチジン(記号=H、またはHis)、
−リシン(記号=KまたはLys)、
−アルギニン(記号=RまたはArg)、
−グルタミン(記号=QまたはGln)、
−アスパラギン(記号=NまたはAsn)、
−グルタミン酸(記号=EまたはGlu)、
−アスパラギン酸(記号=DまたはAsp)、
−セリン(記号=SまたはSer)、
−トレオニン(記号=TまたはThr)。
【0047】
疎水性アミノ酸は、無極性で荷電していない側鎖を有する。それらは特に次のものを含む:
−バリン(記号=VまたはVal)、
−アラニン(記号=AまたはAla)、
−プロリン(記号=P、またはPro)、
−ロイシン(記号=LまたはLeu)、
−イソロイシン(記号=IまたはIle)、
−メチオニン(記号=M、あるいはMet)、
−トリプトファン(記号=W、またはTrp)、
−フェニルアラニン(記号=FまたはPhe)。
【0048】
ヒトIL−11の部位Iは、限られた数の親水性アミノ酸を含む疎水性のクラスタからなる:これらの部位Iの親水性アミノ酸は、特に位置182にH、および位置186にDを含む(図1および図2の配列番号1を参照のこと)。
【0049】
本発明によれば、位置182のヒスチジン(H)および位置186のアスパラギン酸(D)が、疎水性アミノ酸により置換されるべき野生型hIL−11の突然変異の標的として、最も好ましい。
【0050】
立体障害、構造、および/またはサイズに関する類似性を、前記HおよびD標的を置換するためにより適切な疎水性アミノ酸を選ぶ際に考慮することになる。IL−11部位I親水性アミノ酸を置換するための最も好ましい疎水性アミノ酸には、バリン(V)およびアラニン(A)が含まれる。
【0051】
VによるH182の置換、およびAによるD186の置換によって得られるムテインが、IL−11ハイパーアゴニストであることが判明した:野生型のhIL−11と比較して、それはIL−11Rαへの3倍に増加した親和性を有し、一方gp130を動員する能力を依然として保持する;それは、マウスのハイブリドーマ細胞系統7TD1の増殖に対して60〜400倍活性が強く、また、ムテインは、野生型のIL−11より10倍低用量でインビボにおける放射線防護の同一効果に達する(同じインビボの放射線防護結果を達成するために野生型IL−11より10倍少ないムテインしか必要でない);下記の実施例1および2を参照のこと。
【0052】
マカク、マウスおよびラットの野生型IL−11において、現在部位Iに属することが知られている親水性アミノ酸もまた、H182およびD186である。
【0053】
野生型IL−11タンパク質のN末端は21個のアミノ酸のシグナルペプチドから始まり、13個のアミノ酸のプロリンリッチ領域が直接その後に続く。これらの最初の34個のN末端アミノ酸はIL−11生物活性には必要でない:したがって、それらを欠失させることができる。図3は、それらの最初の34個のN末端アミノ酸をそれぞれ欠失させた、野生型のヒト、マカク、マウス、およびラットのIL−11配列(それぞれ配列番号5〜8)を示す。
【0054】
本発明はこのようにIL−11ムテインを提供する。その配列は、野生型IL−11から、位置182および186(完全な野生型配列を基準にして計算された位置)の親水性アミノ酸のそれぞれX1およびX2による置換であって、X1およびX2は:
−バリン(記号=VまたはVal)、
−アラニン(記号=AまたはAla)、
−プロリン(記号=PまたはPro)、
−ロイシン(記号=LまたはLeu)、
−イソロイシン(記号=IまたはIle)、
−フェニルアラニン(記号=FまたはPhe)
−メチオニン(記号=MまたはMet)、および
−トリプトファン(記号=WまたはTrp)、
を含む群より選ばれる置換、および場合によっては、最初の34個のN末端アミノ酸を超えないN末端部分の欠失により、導出することのできる配列を含む。
【0055】
最初の34個のN末端アミノ酸はIL−11の生物活性に必要ではないため、本発明のムテインの機能を実質的に変更せずに、最初の34個のN末端アミノ酸を超過しないN末端部分を欠失させることが実際に可能である。本発明はこのように、図4、7、10、13にそれぞれ示した、配列番号9、配列番号24、配列番号39、配列番号54(それぞれ、34個のアミノ酸を欠失させたヒト、マカク、マウスおよびラット起源の野生型IL−11に由来するIL−11ムテイン)を含む群から選ばれる配列を含む配列のIL−11ムテインに関する。
【0056】
本発明はさらに、X1とX2が上に定義した通り(すなわち疎水性アミノ酸)であり、また生じたタンパク質が、野生型IL−11が有する、例えば7TD1マウスのハイブリドーマ細胞系統などのIL−11依存性細胞系統の増殖を引き起こす能力を保持しているならば、上述の配列番号9、配列番号24、配列番号39または配列番号54と少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の同一性を備えた配列を含む等価なIL−11ムテインもまた包含する。
【0057】
本発明の実例となり有用なムテインは、X1およびX2がVまたはAであるムテインを含む。
【0058】
したがって本発明はより詳細には、生物活性に必要でないN−末端のアミノ酸を欠失させた野生型のIL−11に対応する配列を含み、位置182および186のアミノ酸がそれぞれ、VおよびA、AおよびV、VおよびV、またはAおよびAにより置換されたIL−11ムテインを包含する。
【0059】
本発明はこのように、X1=VおよびX2=Aである配列番号9、配列番号24、配列番号39または配列番号54の配列を含むIL−11ムテインに関する;即ち、配列番号10(ヒトIL−11由来)、配列番号25(マカクIL−11由来)、配列番号40(マウスIL−11由来)または配列番号55(ラットIL−11由来)の配列を含むIL−11ムテインに関する。これらの配列番号を、それぞれ図4、7、10および13に示す。
【0060】
本発明はまた、X1=AおよびX2=Vである配列番号9、配列番号24、配列番号39または配列番号54の配列を含むIL−11ムテインに関する、すなわち、配列番号11(ヒトIL−11由来)、配列番号26(マカクIL−11由来)、配列番号41(マウスIL−11由来)または配列番号56(ラットIL−11由来)の配列を含む、IL−11ムテインに関する。これらの配列番号を、それぞれ図4、7、10および13に示す。
【0061】
本発明はまた、X1=VおよびX2=Vである配列番号9、配列番号24、配列番号39または配列番号54の配列を含むIL−11ムテインに関する、すなわち、配列番号12(ヒトIL−11由来)、配列番号27(マカクIL−11由来)、配列番号N042(マウスIL−11由来)、または配列番号57(ラットIL−11由来)の配列を含む、IL−11ムテインに関する。これらの配列番号を、それぞれ図4、7、10、および13に示す。
【0062】
本発明はまた、X1=AおよびX2=Aである配列番号9、配列番号24、配列番号39または配列番号54の配列を含むIL−11ムテインに関する、すなわち、配列番号13(ヒトIL−11由来)、配列番号28(マカクIL−11由来)、配列番号43(マウスIL−11由来)または配列番号58(ラットIL−11由来)の配列を含む、IL−11ムテインに関する。これらの配列番号を、それぞれ図4、7、10および13に示す。
【0063】
本発明の実例となり有用なIL−11ムテインは従って、シグナルペプチド(最初の21個のアミノ酸)を欠失させ、かつ位置182および186(完全な野生型配列を基準にして計算された位置)のアミノ酸を、上に定義した疎水性のX1およびX2のアミノ酸によって置換することにより野生型のIL−11から導出可能なIL−11ムテインを包む。
【0064】
本発明はこのように、配列が、配列番号14、配列番号29、配列番号44または配列番号59の配列(配列中X1およびX2は上に定義されている)を含む、あるいはからなるIL−11ムテインを包含する。これらの配列番号を、それぞれ図5、8、11および14に示す。
【0065】
配列番号14の配列は、位置182および186のアミノ酸がX1およびX2により置換され、最初の21個のN末端アミノ酸が欠失されたヒトの野生型IL−11に対応する(図5を参照)。
【0066】
配列番号29の配列は、位置182および186のアミノ酸がX1およびX2により置換され、最初の21個のN末端アミノ酸が欠失されたマカクの野生型IL−11に対応する(図8を参照)。
【0067】
配列番号44の配列は、位置182および186のアミノ酸がX1およびX2により置換され、最初の21個のN末端アミノ酸が欠失されたマウスの野生型IL−11に対応する(図11を参照)。
【0068】
配列番号59の配列は、位置182および186のアミノ酸がX1およびX2により置換され、最初の21個のN末端アミノ酸が欠失されたラットの野生型IL−11に対応する(図14を参照)。
【0069】
配列番号14、配列番号29、配列番号44、配列番号59中で、それぞれ、X1=VおよびX2=Aであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号15、配列番号30、配列番号45、配列番号60の配列を含む、または、からなる(それぞれ図5、8、11、14に示す)。
【0070】
配列番号14、配列番号29、配列番号44、配列番号59中で、それぞれ、X1=AおよびX2=Vであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号16、配列番号31、配列番号46、配列番号61の配列を含む、または、からなる(それぞれ図5、8、11、14に示す)。
【0071】
配列番号14、配列番号29、配列番号44、配列番号59中で、それぞれ、X1=VおよびX2=Vであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号17、配列番号32、配列番号47、配列番号62の配列を含む、または、からなる(それぞれ図5、8、11、14に示す)。
【0072】
配列番号14、配列番号29、配列番号44、配列番号59中で、それぞれ、X1=AおよびX2=Aであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号18、配列番号33、配列番号48、配列番号63の配列を含む、または、からなる(それぞれ図5、8、11、14に示す)。
【0073】
配列番号15〜18、配列番号30〜33、配列番号45〜48、配列番号60〜63の配列を含む、または、からなる本発明のムテインは、それぞれ本発明の好ましいムテインである。配列番号15、配列番号30、配列番号45、配列番号60の配列を含む、または、からなる本発明のムテインが、それぞれ最も好ましい。
【0074】
本発明の実例となり有用なムテインはまた、位置182および186のアミノ酸を、上に定義した疎水的なX1およびX2のアミノ酸によって置換することにより完全な野生型IL−11から導出可能な本発明のムテインである。そのような実例となり有用なIL−11ムテインは、このように、X1とX2が上に定義された、配列番号19、配列番号34、配列番号49または配列番号64の配列を含む、又はからなるムテインを含む。
【0075】
配列番号19の配列は、位置H182およびD186が共に上に定義されたX1およびX2によって置換されたヒトの完全な野生型IL−11に対応する。それを図6に示す。
【0076】
配列番号34の配列は、位置H182およびD186が共に上に定義されたX1およびX2によって置換されたマカクの完全な野生型IL−11に対応する。それを図9に示す。
【0077】
配列番号49の配列は、位置H182およびD186が共に上に定義されたX1およびX2によって置換されたマウスの完全な野生型IL−11に対応する。それを図12に示す。
【0078】
配列番号64の配列は、位置H182およびD186が共に上に定義されたX1およびX2によって置換されたラットの完全な野生型IL−11に対応する。それを図15に示す。
【0079】
配列番号19、配列番号34、配列番号49、配列番号64中で、それぞれX1=VおよびX2=Aであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号20、配列番号35、配列番号50配列番号65の配列を含む、または、からなる(それぞれ、図6、9、12、15に示す)。
【0080】
配列番号19、配列番号34、配列番号49、配列番号64中で、それぞれX1=AおよびX2=Vであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号21、配列番号36、配列番号51、配列番号66の配列を含む、または、からなる(それぞれ、図6、9、12、15に示す)。
【0081】
配列番号19、配列番号34、配列番号49、配列番号64中で、それぞれX1=VおよびX2=Vであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号22、配列番号37、配列番号52、配列番号67の配列を含む、または、からなる(それぞれ、図6、9、12、15に示す)。
【0082】
配列番号19、配列番号34、配列番号49、配列番号64中で、それぞれ、X1=AおよびX2=Aであるときは、本発明のムテインは、それぞれ配列番号23、配列番号38、配列番号53、配列番号68の配列を含む、または、からなる(それぞれ、図6、9、12、15に示す)。
【0083】
配列番号20〜23、配列番号35〜38、配列番号50〜53、配列番号65〜68の配列を含む、または、からなる本発明のムテインは、それぞれ本発明の好ましいムテインである。配列番号20、配列番号35、配列番号50、配列番号65の配列を含む、または、からなる本発明のムテインが、それぞれ最も好ましい。
【0084】
本発明は、さらに本発明のムテインをコードするDNAまたはRNAなどの任意の核酸を包含する。
【0085】
それは特に、本発明に従って適切に突然変異された野生型IL−11の連結されたCDS(コード配列)を含む、DNAなどの任意の核酸を包含する。
【0086】
ヒト野生型IL−11の連結されたCDS配列を、図16Aに配列番号69として示す(H182をコードするコドンCAC、およびD186をコードするコドンGACに下線を付す)。
【0087】
本発明の適切な突然変異は、前記cacおよびgacの野生型コドンをコドンnおよびnによりそれぞれ置換することを含む、ここでnおよびnは共に疎水性アミノ酸、すなわち上に定義したX1およびX2アミノ酸をコードする。)
【0088】
従ってnおよびnは、バリン(記号=VまたはVal)、アラニン(記号=AまたはAla)、プロリン(記号=PまたはPro)、ロイシン(記号=LまたはLeu)、イソロイシン(記号=IまたはIle)、フェニルアラニン(記号=FまたはPhe)、メチオニン(記号=M、あるいはMet)およびトリプトファン(記号=WまたはTrp)をコードするヌクレオチドコドンを含む群から選ばれる。したがって、遺伝コードの縮重を考慮に入れて、nおよびnは共に、次のコドン:
【表3】


を含む群から選ばれることになる。
【0089】
このように、本発明は特に、図16Bに示す配列番号72の配列を含む任意の核酸(例えばDNA)を包含する。配列中nおよびnは上に定義された通りである。
【0090】
本発明に従って野生型IL−11から、最初の21個のN末端アミノ酸(図5の配列番号14〜18を参照)または最初の34のN末端アミノ酸(図4の配列番号9〜13を参照)を欠失させる場合は、対応する連結されたCDS配列から対応するコドンを欠失させる。
【0091】
本発明はしたがって、図16Bおよび16Aにそれぞれ示す配列番号71または配列番号70の配列を含む任意の核酸(例えばDNA)を包含する。配列中nおよびnは上に定義した通りである
【0092】
本発明はしたがってより詳細には、図19および17にそれぞれ示した配列番号76または配列番号74の配列を含む、または、からなる任意の核酸(例えばDNA)を包含する。配列中コドンnおよびnは上に定義した通りである。
【0093】
配列番号76の配列は、本発明に従って適切に突然変異された、即ち配列中のH182およびD186をコードする野生型コドンcacおよびgacが上に定義したnおよびnにより置換された、ヒトIL−11野生型遺伝子(AY207429 NCBIアクセッション配列中、位置1582から位置7566までに定義されている)に対応する。
【0094】
配列番号74の配列は、本発明に従って適切に突然変異された、即ち、配列中のH182およびD186をコードする野生型コドンcacおよびgacが上に定義したnおよびnにより置換された、配列番号73(AY207429 NCBI配列)のヌクレオチド配列に対応する。
【0095】
同じ突然変異スキームに従って、マカク、マウスおよびラットの野生型IL−11 DNAなどの、ヒト以外の野生型IL−11のDNAから同様に突然変異された配列を得ることができ、またそのような同様に突然変異された配列は本発明に包含される。
【0096】
本発明はさらに、本発明に従って適切に突然変異された(すなわち、H182とD186をコードする野生型のコドンCACおよびGACが、上に定義したnとnによって置換されている)野生型のIL−11 RNA配列に由来するRNA配列を含む、または、からなる任意の核酸も包含する。
【0097】
本発明は、したがって詳細には、図18に示す配列番号75の配列に関する。配列番号75の配列は、適切に本発明に従って突然変異されたヒト野生型IL−11のmRNA配列(AY207429 NCBI登録配列に、連結された配列1582〜1651、3014〜3186、3386〜3472、3584〜3745、5778〜7566により定義されている)に対応する(nとnに下線を引く)。本発明はまた、マカク、マウス、ラットIL−11などの野生型のヒト以外のIL−11 RNAから同様に得られる任意の突然変異されたRNA配列に関する。
【0098】
本発明のさらなる局面によれば、本出願は、例えばプラスミドなどの、本発明の核酸即ち本発明のIL−11ムテインをコードする核酸を含む、任意のトランスフェクションベクターに関する。
【0099】
本発明の実例となり有用なトランスフェクションベクターは、位置182および186の親水性アミノ酸をコードするコドンの上に定義したコドンnおよびnによる置換により;そして恐らくIL−11型の生物活性に必要でないコドンの欠失により、例えば完全な野生型IL−11の中でN末端シグナルペプチドをコードするコドンおよび/または、プロリンリッチ領域に対応するN末端コドンの欠失などにより;野生型IL−11をコードする配列から導出可能な配列を含む、または、からなる配列を挿入配列として含むベクターを含む。
【0100】
本発明の実例となり有用なトランスフェクションベクターは、位置182および186の親水性アミノ酸をコードするコドンの上に定義したコドンnおよびnによる置換により;および完全な野生型IL−11の最初の21個のN末端アミノ酸、または最初の31または34個のN末端アミノ酸をコードするコドンの欠失により;野生型IL−11をコードする配列から導出可能な配列を含む、または、からなる配列をこのようにして含むことができる。
【0101】
Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lysなどのフラグタグをコードする短いヌクレオチド配列およびそれに続く(ウシ心臓キナーゼによって認識され、セリン残基がリン酸化されるArg−Arg−Ala−Ser−Val−Alaなどの)キナーゼによって認識されリン酸化されることができるコンセンサス配列をコードするもう一つの短いヌクレオチド配列を、IL−11ムテインをコードする核酸の一端、例えばその5’端に、完全な野生型IL−11中で最初の31個のN末端アミノ酸をコードするコドンの代わりに加えることができる
【0102】
そのようなトランスフェクションベクターを下の実施例1に記述する。実例となり有用な、そのようなベクターの挿入配列を図23の配列番号79に示す(本発明に従い上に定義されたnおよびnコドンにより突然変異させ、最初の31のN末端アミノ酸をコードするコドンを欠失させ、フラグタグおよびウシ心臓キナーゼにより認識されるコンセンサス配列をコードするコドンを付加した野生型ヒトIL−11:図23中、フラグタグをボックスに入れ、キナーゼ用コンセンサス配列に下線を付す。)
【0103】
本発明のさらなる局面によれば、本出願は、本発明の核酸を含む任意の細胞、および/または本発明のトランスフェクションベクターによりトランスフェクションされた任意の細胞、および/または本発明のムテインを発現する任意の細胞に関する。そのような細胞は、例えば本発明のIL−11ムテインを生成し分離するために用いることができる。当業者にとって適切な宿主細胞として利用可能な任意の細胞は、本発明のトランスフェクションベクターによって形質転換するために用いることができ、その結果生成された形質転換細胞は本発明のムテインを発現することができる。適切な標準宿主細胞には、例えばE. coli細胞、例えばE. coliBL21(DE3)株など(Novagenから入手可能)が含まれる。
【0104】
本発明はこのように、適当な培地(例えばE. coli形質転換細胞用のLuria−Bertani培地)中で本発明の細胞を培養することおよび前記細胞から前記IL−11ムテインを単離することを含む、本発明のIL−11ムテインを生成するための方法を包含する。
【0105】
本発明はしたがって、前記核酸配列の複製および発現を指令することができる発現制御配列と機能的に共同して働く本発明の核酸配列によって形質転換された任意の細胞を包含する。
【0106】
上に示し、下に説明するように、本発明のIL−11ムテインは少なくともIL−llRαおよびgp130に結合する能力、ならびに野生型IL−11により誘起される型の活性をインビトロおよびインビボにおいて誘起する能力を保持していた。それらは、したがって野生型IL−11が有用であると考えられるすべての応用において有用である。
【0107】
典型的なIL−11の生物学的または医学的応用が、US 6,126,933; WO 00/74707; US 5,460,810; US 6,540,993; US 5,215,895; WO 00/53214に記載されており、
その内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0108】
H182とD186がValとAlaによって置換された本発明のIL−11ムテインは、さらに野生型のIL−11よりも極めて効率的であると判明し、したがってIL−11ハイパーアゴニストと呼ぶことができる。例えば、本発明のH182V+D186Aムテイン(すなわち配列番号10、配列番号25、配列番号40または配列番号55の配列を含むムテイン、またはそれらの保存的突然変異体)が、IL−llRaに野生型のIL−11と比較して3倍増強された親和性で結合し、7TD1マウスハイブリド−マ細胞の増殖に対して野生型のIL−11より60〜400倍活性が強く、また野生型のIL−11と同じインビボの放射線防護イソ−効果を引き起こすために10倍低い用量しか必要としない(下記の実施例1および2を参照)。
【0109】
したがって、本出願はまた、癌の治療のためまたは骨髄移植用に患者を前処理するための放射線治療に対する耐性などの、放射線に対する耐性の改善に役立つ薬剤として本発明のIL−11ムテインを包含する。
【0110】
本出願はまた、癌治療のための化学療法によって引き起こされた有害作用に対する耐性を改善するために役立つ薬剤として本発明のIL−11ムテインを包含する。
【0111】
それは、より詳細には、抗−血小板減少症薬剤としての本発明のIL−11ムテインに関する。
【0112】
本発明のIL−11ムテインはさらに、抗炎症剤として、および/または造血、神経形成、破骨細胞形成および/または女性の受胎能を誘導または刺激する薬剤として、有用であり得る。
【0113】
本発明の抗炎症性局面の詳細に立ち入ると、当業者に知られているように野生型IL−11が敗血症性ショック保護および糖尿病保護活性を有することを強調することができる(本明細書の導入部を参照のこと)さらに当業者には、これらのIL−11の保護活性の基礎となる機構が、IL−11が微小血管内皮アポトーシスに及ぼす抑制中に見出されることが知られている(例えば、Sheridan et al. 1999, "Interleukin-11 attenuates pulmonary inflammation and vasomotor dysfunction in endotoxin-induced lung injury", Am.J. Physiol. 277 (Lung Cell. Mol. Physiol. 21: L861-L867); Nicoletti et al. 1999, "Early prophylaxis with recombinant human interleukin-11 prevents spontaneous diabetes in NOD mice", Diabetes, vol. 48, pages 2333-2339、を参照のこと)。
【0114】
さらに放射線によって引き起こされる一次病変は微小血管内皮のアポトーシスであることが知られているため(例えば、Paris et al. 2001,"Endothelial apoptosis as the primary lesion initiating intestinal radiation damage in mice", Science vol. 293, pages 293-297参照)、本発明のムテインは微小血管内皮のアポトーシスを阻害するための有用な薬剤である。本発明のムテインは、従って、敗血症性ショックおよび糖尿病(例えば1型糖尿病)などの微小血管内皮アポトーシスの抑制を必要とする疾病または症状の予防および/または症状緩和および/または治療への適用に好都合である。本発明のムテインは強力な抗炎症剤薬であり、初期の免疫性糖尿病誘発経路を下方制御することができる可能性が極めて高い。
【0115】
本発明は、したがって本発明の治療上有効な量の、IL−11ムテイン、または本発明の核酸、または本発明のベクター、または本発明の細胞を含む任意の薬剤に関する。そのような薬剤はさらに、薬物を製剤する当業者が利用できる、任意の薬学的に許容される担体(例えば等張食塩水)、ならびに当業者が適切であると分かる任意の安定剤、保存剤、緩衝液、酸化防止剤または添加剤を含むことができる。薬剤を、その意図した投与の態様(非経口、静脈内、皮下、局所的等)に適切な任意の形および調質で生成してもよい。本発明の薬剤の投与計画を、担当医は、治療する患者の症状、体重、性別、食事、年齢および他の医学的に重要な特徴を考慮して決定することになる。本発明の有利な特徴として、H182およびD186がValとAlaにより置換されたムテインを含む薬剤は、通常、野生型IL−11の場合よりも低い用量しか必要としない。
【0116】
本発明の薬剤は、免疫応答に関与する細胞および造血系の適切な作動に関与する細胞を刺激および/または増強するために役立つ可能性がある。
【0117】
それはさらに、炎症性腸疾患(例えばクローン病、潰瘍性大腸炎、不定性大腸炎および感染性大腸炎)、粘膜炎(例えば口粘膜炎、消化管粘膜炎、鼻粘膜炎、および直腸炎)、壊死性小腸結腸炎、炎症性皮膚病(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、および接触過敏症)、アフタ性潰瘍、咽頭炎、食道炎、消化性潰瘍、歯周炎、歯膜炎および眼の疾病(例えば結膜炎、網膜炎、および葡萄膜炎)を治療するために役立つ可能性がある。
【0118】
それはまた、出血性ショックの予防または治療、および出血性ショック中と蘇生中に胃腸系を保護することにも役立つ可能性がある。
【0119】
それはまた、移植片対宿主疾患または器官および組織移植の拒絶などの免疫媒介性細胞毒性作用、ならびに血液供給喪失、腐食、炎症、によって引き起こされた局所的組織または細胞障害、または疾病による局部障害などの非免疫媒介的壊死性損傷の、予防または治療にも有用である可能性がある。
【0120】
本発明はより詳細には、本発明のムテインを含む任意の血小板減少症治療薬、および癌の化学療法のための治療上有効な量の有効成分に関する。
【0121】
本発明の薬はさらに、微小血管アポトーシスの抑制が望ましい任意の疾病または症状の予防、症状緩和または治療のために、および、より詳細には1型糖尿病などの糖尿病、および/または敗血症性ショックの予防、症状緩和または治療にも役立つ。
【0122】
次の実施例は、説明用の実施例として挙げるものであり、本発明の範囲を制限するように意図したものでは全くない。より詳細には、ヒトのIL−11ムテインを有用で特に適切な実例として記載するが、当業者が考慮できるいかなるそれらの保存的突然変異体も本出願に包含される。
【0123】
実施例1
IL−11ムテインの生成、およびそれらの構造、親和性、特異性および細胞系統生物活性の特性決定。
実験
菌株、酵素および化学薬品
Escherichia coli DH5αを、Invitrogen Life Technologiesから、BL21(DE3)およびpET―22b(+)をNovagenから入手した。E. coli組み換えヒトIL−11をPepro Tech Inc(London, UK)およびR & D Systems(Wiesbaden-Nordenstadt, Germany)から入手した。突然変異生成用プライマーをGensetから入手した。MAB628および抗−hIL−11ビオチン化ポリクローナル抗体BAF218をR & D Systemsから入手した。比放射能〜3000Ci/mmolの[γ−32P]ATPをAmersham Pharmacia Biotechから得た。アクリルアミドおよびN,N’−メチレン−ビスアクリルアミドを、Bio-Radから得た。RPMI−1640、DMEM、グルタミン、およびFCSをGibco-BRLから入手した。ウシ心筋cAMP非依存性プロテインキナーゼ触媒サブユニット、ストレプトアビジン結合アルカリ性フォスファターゼ、硫酸ドデシルナトリウム(SDS)、および抗−フラグM2モノクローナル抗体をSigma(Bornem, Belgium)から得た。
【0124】
突然変異誘発
FPΔIL−11を、図24に示されたプライマーを用いて以前にWang et al. 2002 に記述されたプラスミドpET−FPΔIL−11のインバースPCR増幅により突然変異させ、続いてDpnI消化によって親のプラスミドを除去した。
【0125】
インバースPCR増幅による突然変異の詳細な記述については、Stemmer, W. P. and Morris, S. K. (1992) Enzymatic inverse PCR: a restriction site independent, single-fragment method for high-efficiency, site-directed mutagenesis. Biotechniques 13,214-220を参照すること。なおその内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0126】
プラスミドpET−FPΔIL−11の構築のためには、Wang, X. M., Wilkin, J. M., Boisteau, O., Harmegnies, D., Blanc, C., Vandenbussche, P., Montero-Julian, F. A., Jacques, Y. and Content, J. (2002) Engineering and use of 32P-labelled human recombinant interleukin-11 for receptor binding studies. Eur. J. Biochem. 269,61-68を参照すること。なおその内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0127】
Wang et al. 2002に従って、図16Aの配列番号69に示したヒトIL−11の連結されたCDSの最初の31個のアミノ酸をコードするN末端ヌクレオチドを欠失させ(最初の21のシグナルペプチドアミノ酸+それに続くプロリンリッチ領域に対応する10個のアミノ酸)、フラグタグ(Asp−Tyr−Lys−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys)およびそれに続く、ウシ心蔵キナーゼが認識してセリン残基をリン酸化することができるコンセンサスアミノ酸配列(Arg−Arg−Ala−Ser−Val−Ala)をコードする配列により置換したことに注意されたい。したがって、FPΔIL−11は次の配列(上部のイタリック体のヌクレオチド列=ヒトIL−11の連結されたCDS配列配列番号69;その下のヌクレオチド列=FPΔIL−11;下部のアミノ酸列=FPΔIL−11タンパク質)を有する:
【0128】
【表4】

【0129】
FPΔIL−11のフラグタグをボックスに入れ;FPΔIL−11中に作られたウシ心臓タンパク質キナーゼ触媒サブユニットによって認識されるリン酸化部位に下線を引く。
【0130】
従って、突然変異していない親のFPΔIL−11のヌクレオチド配列が図22に示す配列番号77の配列であり、またそのアミノ酸配列が配列番号78の配列である。
【0131】
また、本発明に従って突然変異されたFPΔIL−11のヌクレオチド配列が、図23に示す配列番号79の配列であり、またこの突然変異されたFPΔIL−11のアミノ酸タンパク質配列が、配列番号80の配列である。
【0132】
ゲル精製したPCR断片を、T4DNAリガーゼを用いて終夜16℃でライゲーションし、次にこれを用いてE. coli DH5αを形質転換した。DH5α中で対応するプラスミドを増幅して配列決定し、次にこれを用いてE. coliのBL21(DE3)菌株を形質転換した。
【0133】
親および突然変異体のFPΔIL−11の生成および精製
突然変異体のまたは親のFPΔIL−11 cDNAを保持しているプラスミドにより形質転換されたBL21(DE3)細胞を、100μg/mlのアンピシリンを含むLuria−Bertani培地中で培養した。組換えタンパク質の発現を、1mMのIPTGにより2時間37℃で誘導した。
【0134】
E. coliを次に、50mM Hepes pH7.4中、0.1%トリトンX−100および150μg/mlリゾチーム存在下で、30分間37℃のインキュベーション、およびその後のマイクロプローブ(Vibra Cell, Sonics Materials Inc. Danburg, Connecticut, USA)を用いた強度レベル5での5分間の超音波処理により溶解した。溶解物を13,000g25分間4℃で2回遠心し、次に以前に記述したように分析または精製した[上に引用したWang et al. 2002;参照により組み入れられる]。簡潔に述べれば、溶解物を60%(NHSOで沈殿させて粗タンパク質を濃縮した。50mM Hepes pH7.4緩衝液に対して透析して塩を除去し、続いて50mM Hepes緩衝液pH7.4および0〜1MのNaCl勾配を用いたMono−S HR5/5カラム(Amersham Pharmacia Biotech)によるクロマトグラフィーを行って試料を精製した。
【0135】
親および突然変異体FPΔIL−11のELISAによる定量化
ヒトIL−11に対して生成された2つの抗体、中和しないモノクローナル抗体MAB618およびビオチン化ポリクローナルBAF218を、組換えヒト親およびムテインのサンドイッチエリザ法による定量化に用いた。96ウエルプレートを、終夜4℃で100μlの2μg/ml濃度のモノクローナル抗体MAB618によりコートした。3%BSAでブロック後、100μlの段階希釈試料を加え、1時間37℃でインキュベートした。PBST緩衝液(0.1%トゥイーン20を含むPBS緩衝液)で洗浄後、プレートをさらに1時間37℃で100μl/ウエルの30ng/ml濃度のビオチン化ポリクローナル抗体BAF218とインキュベーションした。ストレプトアビジンを連結させたアルカリ性フォスファターゼ(1/5000)と37℃で1時間もう1回インキュベーションする前に、プレートをTBS緩衝液(100mM Tris−HC1、150mM NaCI(pH7.5))で3回洗浄した。最後に、ELISA増幅システム(Gibco BRL)を用いて、そのテストを明らかにした。市販の組換えIL−11を標準として用いた。感度は2pg/mlであった。
【0136】
質量分析
FPΔIL−11およびムテインの正確な分子量を、ナノ−エレクトロスプレー質量分析法により、ハイブリッド四極子飛行時間型Q−TOF質量分析計(Micromass, Whytenshawe, UK)を用いて決定した。解析に先立って、10kDaのカットオフを持つVivaspin微小濃縮装置(Millipore, Bedford, MA)を用いて、試料を脱塩した。水で2回洗浄した後に、試料を50%アセトニトリルおよび0.1%ギ酸水溶液の混合液に溶解し、およそ5pmol/μlの濃度とした。この試料4μlを、ナノ・エレクトロスプレーキャピラリー(MDS Proteomics, Odense, D)に入れ、次にこの装置と共に供給された特別のホルダーに設置した。ニードル・チップをわずかに破壊し、小さな窒素の逆圧を加えることにより、スプレーを開始した。キャピラリー電圧を1250Vに設定した。m/Z1000〜2500、1走査当たり1秒でデータを集め、約5分間スペクトルを蓄積した。データ処理を、装置と共に供給されたMasslynxおよびMaxEntソフトウェアを用いて行なった。
【0137】
赤外分光法
ATR−FTIRスペクトルを、室温で液体窒素冷却された水銀カドミウムテルル(MCT)検知器を装備したBruker IFS55 FTIR分光光度計により、名目上2CM-1の分解能で記録し、1cm-1ごとにコード化した。内部反射エレメント(IRE)は、45°の開口角を有するゲルマニウム・プレート(50×20×2mm)であり、25の内部反射を産み出した。分光光度計を、FTIRパージガスジェネレーター75−62 Balston((Maidstone, England)を用いて乾燥させた空気により、試料区画において10〜20l/分、および光学区画において5l/分の流量で連続的に浄化した。試料を窒素気流下で徐々に蒸発させることにより、薄膜がATRプレートの一側面に得られた[Fringeli and Gunthard (1981). Infrared membrane spectroscopy. Mol. Biol. Biochem. Biophys. 31,270-332、参照により本明細書にその内容が組み入れられる]。その後、ATRプレートを液体試料ホルダー中に密閉した。Oを飽和させたNを室温で吹きかけることによりATRプレート上の試料を再水和した。各測定に対して256の走査を平均した。二次構造決定を、二次構造に敏感なアミドIバンド(1600〜1700cm-1)の形状に基づいて行った[Goormaghtigh et al. (1990). Secondary structure and dosage of soluble and membrane proteins by attenuated total reflection Fourier-transform infrared spectroscopy on hydrated films. Eur.J.Biochem.193, 409-420、この内容は、参照により本明細書に組み入れられる]。
【0138】
水素/重水素交換キネティクス:窒素を、一連の3個のOを含むバイアル瓶に泡立てて吹き込むことにより0で飽和した。重水素化を始める前に、試料の10個のスペクトルを記録して測定値の安定性をテストした。ゼロ時間に、100ml/分の流量(Brooks流量計によって制御した)で、O飽和したN流束を試料に連結した。個々のキネティクス時間点に対して、24の走査を記録し、4cm-1の分解能で平均した。すべてのキネティクスのスペクトルを大気からの吸水および側鎖の寄与について補正した。大気からの水の減算は、減算係数を、試料スペクトルと基準の大気中水スペクトルとの、1579〜1572cm-1の大気中水バンドの比率[45〜49]として計算する自作ソフトウェアにより、自動的に行った。δ(N−H)振動に特徴的であるアミドIIの面積を、1596〜1502cm-1間の積分により得た。各スペクトルについて、アミドIIの面積を対応するアミドIν(C=O)面積で割算した。百分率で表したこの比率を重水素化時間に対してプロットした。100%値は重水素化前に得られたアミドII/アミドI比で定義される。0%値はアミドII領域におけるゼロ吸収に対応し、タンパク質の完全な重水素化に対して観察される。
【0139】
円偏光二色性
CD測定を、温度制御装置を装備し、Chen and Yang[Chen and Yang (1977). Two-point calibration of circular dichrometer with d-10-camphorsulfonic acid. Anal. Lett. 10,1195-1207、その内容は参照により本明細書に組み込まれる]により較正したJasco J−720分光旋光計(日本分光株式会社、Tokyo, Japan)を用いて行なった。スペクトルバンド幅は、それぞれ2nm(<250nm)および1nm(>250nm)であった。測定を温度20℃で実行し、溶媒はすべてPBSであった。時定数は1〜4sであり、またセル光路長は0.1〜10mmであった。
【0140】
FPΔIL−11およびそのムテインのラベル
FPΔIL−11およびH/V−D/Aを、ウシ心臓キナーゼ存在下の[γ−32P]ATPによるタンパク質リン酸化により、ラベルした。またリン酸化を、前述のオートラジオグラフィーにより、確認した[Wang et al. (2002);上に引用、参照により組み入れられる]。
【0141】
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット
SDS−PAGEを前述のように実行した[Laemmli (1970). Cleavage of structural proteins during the assembly of the head of bacteriophage T4. Nature 227, 680-685。参照により、その内容は本明細書に組み入れられる]。ムテインおよび親のFPΔIL−11を、ゲルからニトロセルロース膜に転写し、ビオチン化ヤギ・ポリクローナル抗体BAF218(R&D)と、次にストレプトアビジン結合アルカリフォスファターゼとインキュベートして検出し、最後にNBT/BCIPシステム(Sigma)によって明らかにした。あるいは、タンパク質をビオチン化抗−フラグ抗体(SigmaからのM2抗体)を用いて検出した。
【0142】
32P−H/V−D/Aの細胞への結合
32P−H/V−D/Aの7TD1細胞への結合を、親の32P−FPΔIL−llのB13Rαl細胞への結合についてのWangらの記述に従って実施した[Wang et al. (2002)、上に引用、参照により組み入れられる]。7TD1細胞(5×10)を成長因子を欠く培地中で予め2時間インキュベートし、リン酸緩衝食塩水pH7.4(PBS)で3回洗浄した。結合の研究のために、放射性ラベルされたH/V−D/Aを0.5%ウシ血清アルブミンを含むPBS中の指定した濃度の細胞へ加えた。混合物を4℃で適当な時間インキュベートし、結合した放射性ラベルH/V−D/Aを、40%フタル酸ジオクチルおよび60%フタル酸ジブチル(Janssen Chimica, Beerse, Belgium)混合液の0.2mlの層を通過して3000g、1分間遠心分離することにより、フリーの放射能から分離した。急速凍結の後、細胞沈殿を含む各チューブの先端を切り離し、Beckman β−カウンターによって放射能をカウントした。非特異的結合を、200倍モル過剰のラベルされていないH/V−D/Aの存在下で、細胞を放射性ラベルされたH/V−D/Aとインキュベートすることにより、測定した。
【0143】
表面プラズモン共鳴研究
これらの実験をBiaCore 2000光学バイオセンサー(BiaCore, Uppsala, Sweden)を用いて行なった。ヒトのIL−11RとIL−2の融合タンパク質(IL−11R−IL−2)[Blanc et al. (2000). Monoclonal antibodies against the human interleukin-11 receptor alpha- chain (IL-llRalpha) and their use in studies of human mononuclear cells. J. Immunol. Methods 241,43-59、参照により、その内容は本明細書に組み入れられる]を、第一アミノ基によりカルボキシメチルデキストラン・フローセル(CM5)に、速度論的結合研究に適した低い固定化レベル(1つのフロー・セル当たり約500RU)で、結合させた。続いて親のFPΔIL−11またはムテインの結合を、Hepes緩衝食塩水(pH7.4)中で10μl/分の流量、室温で実施した。
【0144】
IL−11 バイオアッセイ
IL−11活性を、7TD1細胞を用いて測定した。2×10細胞/ウエルを平底96ウエルのマイクロタイタープレートで7日間、精製されたムテインまたは親のFPΔIL−11の段階希釈物、あるいは予め同じタンパク質濃度に調節された種々のムテインを含むE. coli粗溶解物の存在下で、培養した。次に各ウエル中の菌体数を、ヘキソサミニダーゼ比色測定法により測定した[Van Snick et al. (1986). Purification and NH2-terminal amino acid sequence of a T-cell-derived lymphokine with growth factor activity for B-cells hybridomas. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 83, 9679-9683、参照によりその内容は本明細書に組み入れられる]。生物活性を同様に、1×10B9細胞/ウエルについて約3日間測定し、XTT比色測定法によって明らかにした。各試料を、標準として市販の組換えヒトIL−11(PeproTechより)を用いて、3重にテストした。
【0145】
結果
H/V−D/A ムテインの発現、精製および最初の特性決定
FPΔIL−11をヒトIL−11の親分子として用いて、突然変異生成によりIL−11ムテインを生成した。その理由は、i)野生型ヒト組換えIL−11と同じ活性を有すること、ii)フラグタグ(F)、リン酸化部位(P)の存在およびIL−11の最初の10のアミノ酸の欠如(Δ)により、IL−11の強い発現、単純な精製および容易な放射性ラベルが可能になること[Wang et al.(2002)、上に引用]である。
【0146】
H182およびD186残基の生物活性およびレセプター結合に関する関与を評価するために、インバースPCR法を用いる部位特異的突然変異誘発により対応する位置を置換した[上に引用したStemmer and Morris (1992)。参照により組み入れられる]。これらの2個の残基を、バリン(H182/V)およびアラニン(D186/A)と置換して、H/V−D/Aと名付けたムテインを生成した。
【0147】
これらの親および突然変異体FPΔIL−11のE. coli中における発現をSDS−PAGEによって解析した(図26)。親の分子は、見かけ上約24kDaの分子量を有し、理論上予期される値(20.050kDa)より高い値であった。この相違は、FPΔIL−11のN末端のフラグタグおよびリン酸化部位に存在する多数の荷電残基(1個のGlu、5個のAsp、2個のArgおよび2個のLys)の導入による可能性があった。確かに、FPΔIL−11の2個の荷電残基H182およびD186が2個の疎水性アミノ酸と置換されたとき、生じたムテインは親よりゲル中でより速く移動し、その結果、見かけの分子量(19kDa)は計算値(19.9kDa)に近かった。この観察によって、荷電残基がSDS−PAGE中の分子移動度に影響を及ぼし得るという仮説が強化された。しかし、H/V−D/Aの移動度の減少がタンパク質の切断による可能性を除外するために、精製した親と突然変異体のFPΔIL−11を質量分析に付した。FPΔIL−11およびH/V−D/Aがそれぞれ、20.016kDaおよび19.934kDaの質量を有すると判明し、予測された分子量に完全に合致した。
【0148】
たとえSDS−PAGE上のH/V−D/Aムテインの電気泳動度の増加が、電荷の修飾による可能性が最も高いとしても、それが突然変異生成によって引き起こされた分子構造および/または立体構造の変化に、部分的にはよるものである可能性を、我々は除外することができない。そのような変更が、親の分子よりコンパクトなムテインをもたらし、したがってそれを熱変性に対してより耐性にし、ポリアクリルアミドゲル中でより速く移動するようにした可能性があろう。
【0149】
赤外分光法(IR)および円偏光二色性(CD)による構造解析
突然変異によって立体構造変化が引き起こされた可能性をさらに評価するために、均質となるよう精製された親およびムテインの、減衰全反射フーリエ変換赤外分光分析(ATR−FTIR)による特性決定を行った。この技術は可溶性および膜タンパク質の構造を研究するために用いられ、成功を収めた[Goormaghtigh et al. (1990)、上に引用]。その方法は、タンパク質の振動バンド、詳細にはその吸収振動数が二次構造に依存するアミドIバンド、v(C=O)の解析に基づいている。図27が、ATR−FTIRによるpH7.4で記録した2個のタンパク質の重水素化スペクトルを表わす。それらのスペクトルが似ていることから、2個のアミノ酸(H182とD186)のそれぞれバリンとアラニンによる置換は、タンパク質の二次構造に検知できる影響を及ぼさないことが示唆される。アミドI内の主吸収ピークは、α−へリックス構造に関連した領域に位置しており、この構造が両方のIL−11(親とムテイン)において優勢であることを裏付ける。
【0150】
親と突然変異体のIL−11をさらにCD解析に付した。この技術がα−へリックス構造により敏感であるという理由による。図28にそれらのCDスペクトルを示す。両方のスペクトルは同じ形状を有しているが、それらの強度は異なる。両タンパク質の遠紫外CDスペクトルによる二次構造解析[Kalai et al. (1997). Analysis of the human interleukin-6/human interleukin-6 receptor binding interface at the amino acid level: proposed mechanism of action. Blood 89,1319-1333。この内容は、参照により本明細書に組み入れられる]は、タンパク質のα−へリックス性を反映しており(親IL−11:α−ヘリックス44.8%、β−シート14.0%、ターン15%、残り26.2%;突然変異体IL−11:α−ヘリックス38.8%、β−シート17.0%、ターン15.7%、残り28.5%)、それは4本のα−へリックス束を持つサイトカインに典型的なものである。IL−11ムテインの、親のものと比較して少し低いヘリックス含量は、突然変異されたアミノ酸によって導入された構造変化を反映している可能性があろう。
【0151】
FPΔIL−11の突然変異によって起きた構造変化をさらに特徴づけるために、ムテインおよび親タンパク質の重水素化キネティクスを測定した。可溶性タンパク質では、水素/重水素交換の速度は、本質的に、タンパク質構造安定性と関係する(二次構造中の局所的なアンフォールディング動態が交換を決める)。タンパク質の水素交換速度を、アミドII吸光度ピーク[1596〜1502cm-1領域におけるδ(N−H)の最大値]の重水素化による1460cm-1領域「アミドII'、δ(N−D)]へのシフトにより起こる減少をモニターすることにより追跡した(データを示さず)。実験の項に記述したようにアミドII/アミドIの比率から計算した交換されていない残基のパーセンテージの経時変化を図29に示す。FPΔIL−11は速い交換をしているが、H/V−D/Aムテインは水素/重水素交換に、より耐性があるように見える。これはムテインがオリゴマーを形成する、および/または、親FPΔIL−11よりコンパクトな構造を有する可能性があることを示唆している。
【0152】
Superdex−75カラムによるゲルろ過により、親および突然変異タンパク質が共にモノマー型に対応する類似の位置で溶出された(図30)。これは、突然変異による部位Iの疎水性の増加によって二量体またはオリゴマーの形成が起こることはなかったことを示す。
【0153】
可溶性IL−llRαとの相互作用
H/V−D/Aの突然変異生成および関連する構造変化がIL−lIRaとの相互作用に影響があるかどうかを明らかにするために、親のIL−11およびH/V−D/AムテインのヒトIL−11Rαへの結合を記述する結合および解離の反応速度定数(kon、koff)を、デキストランに固定された精製ヒトIL−llRa−IL−2[Blanc et al. (2000)、上に引用]融合タンパク質をマトリックスして用いる表面プラズモン共鳴バイオセンサー解析により測定した。下の表1に表すように、H/V−D/Aの結合(kon)および解離(koff)反応速度定数は共に、親FPΔIL−11のものよりはるかに高く(それぞれ35倍および14倍)、その結果、ムテインの平衡解離定数(K)は、FPΔIL−11のそれより3倍低くなった。
【0154】
【表5】

【0155】
平衡解離定数を相互作用の自由エネルギー(ΔG=−RT・ln(1/K))によって解釈すれば、FPΔIL−11またはH/V−D/AのIL−11R−IL−2への結合には、それぞれ9.2または9.8kcal/molの自由エネルギー変化が伴う。これは突然変異生成およびそれが引き起こした構造変化は、IL−11のIL−11Rαレセプターとの相互作用に有利であることを示す。
【0156】
細胞表面IL−11レセプターとの相互作用
B13Rα1および7TD1細胞を、H/V−D/AのヒトおよびマウスのIL−11レセプターへの結合を検査するために用いた。B13Rα1は、ヒトgp130およびhIL−llRαによって安定にトランスフェクションされたBa/F3細胞である[Lebeau et al. (1997) Reconstitution of two isoforms of the human interleukin-11 receptor and comparaison of their functional properties. FEBS Lett. 407, 141-147、この内容は、参照により本明細書に組み入れられる]。ラベルされていないH/V−D/Aを200倍モル過剰加えて決定された非特異的結合成分は少なかった(全結合の5%未満)。スキャチャード法による特異的結合データの解析により、単一クラスの結合部位の存在が明らかになった(下の表2を参照)。
【0157】
【表6】

【0158】
おそらく、トランスフェクションされた細胞の表面にgp130が過剰に発現されたために、我々はこれらの細胞上に高親和性レセプターのみを検出することができた。ムテインに対する解離定数(K=0.7nM)は、その親に対する解離定数(Kd=0.4nM)より高かった。32PH/V−D/Aの結合は過剰のFPΔIL−11によって完全に阻害され、またその逆も成立することが分かり、これは2個の分子が互いに、この結合について競合することを示す。
【0159】
7TD1は、マウス骨髄腫細胞系統Sp2/0−Agl4とC57BL/6マウス由来の脾臓細胞の融合により得られたマウスハイブリドーマ細胞系統である。この細胞系統がピコグラム量のIL−6に応答することは周知である[Van Snick et al.(1986)、上に引用]、しかしナノグラム量のIL−11に対する増殖応答も有する[Wang et al. (2002)、上に引用]。
【0160】
7TD1細胞を用いて、32PでラベルされたH/V−D/AまたはFPΔIL−11のレセプターへの結合を解析したとき、2つのクラスの結合部位が観察された(上記の表2を参照):ナノモル範囲のKを有する低親和性レセプターは、IL−11またはムテインの孤立したIL−llRα鎖への結合に相当する可能性が高く、またピコモル範囲のKを有する高親和性受容体は、IL−11/IL−llRαとgp130伝達サブユニットとの集合体に相当する可能性が高い。いずれの型のレセプターも、ラベルされたFPΔIL−11およびH/V−D/Aについて同程度の数が検出され、2つの分子が共通のレセプターを競合するという上記の観察に合致した。孤立したIL−11Rα鎖への低親和性結合に関して、H/V−D/Aの親和性(K=2.7nM)が、バイオセンサー実験(上記の表1を参照のこと)に一致して、FPΔIL−11について測定された親和性(K=7.2nM)よりおよそ3倍高いことが分かった。高親和性受容体複合体に関しては、しかしながら、H/V−D/AとFPΔIL−11の結合間で相違が見出されなかった(Kd=0.60nM対0.65nM)。
【0161】
細胞増殖の誘導
ムテインのIL−11Rαに対する増加した親和性がどの程度までその生物活性に影響を与えることができるか研究するために、細胞増殖分析を種々の細胞系統で行った。
【0162】
図31Aに示すように、H/V−D/Aムテインは、IL−11と同様に、7TD1の細胞増殖を用量依存的にサポートする。しかしながら、半最大値の増殖(EC50)を引き起こすのに必要なムテインの濃度は、野生型IL−11に必要なそれよりはるかに低かった(400倍)。(H/V−D/Aに対するEC50=0.03ng/ml対FPΔIL−11およびrhIL−11に対する15ng/ml)。ムテインのこの活性増大は一貫していくつかの実験で見出され、H/V−D/A/FPΔIL−1l活性比が60〜400の範囲であった。ゲルろ過実験(図30Aおよび30B)は、親と突然変異体IL−11が凝集の兆候なくモノマー分子(約20kDaの)として行動したこと、および生物活性は完全にこれらのモノマーに関連していたことを示した。
【0163】
7TD1細胞で見出されたこととは際立って対照的に、H/V−D/Aムテインは、別のマウスのハイブリドーマ細胞系統であるB9細胞では10倍活性が弱かった(図31B)。これはIL−11ムテインの作用機序が予想したよりも複雑であることを示している。
【0164】
H/V−D/A活性がgp130の伝達によって媒介されるかどうかをチェックするために、我々はIL−11の部位II中に局在するエピトープと反応することが実証された抗−IL−11mAb(H2)を用いた[Blanc et al.(2000)、上に引用]。gp130の動員の邪魔をすることにより、この抗体が、FPΔIL−11のレセプターへの結合を阻害し、従ってIL−11依存細胞増殖を阻害する[Wangら(2002)、上に引用]。図32は、この中和抗体が親と突然変異体FPΔIL−11によって誘導された7TD1細胞の増殖を共に阻害することができることを示す。これは、抗体H2により認識されるエピトープ(部位II)がH/V−D/Aムテイン上に保存されていること、およびH/V−D/Aは、親IL−11と同様に、その生物活性を発揮するためにgp130サブユニットが必要であることを表している。抗ヒトgp130抗体、MAB628およびB−R3は、親または突然変異体IL−11によるマウス7TD1細胞の増殖に影響せず、対照として役立った。これらの2つの抗体がヒト細胞の細胞増殖を阻害することがすでに示されているため[Chevalier et al. (1996). Interleukin-6 family of cytokines induced activation of different functional sites expressed by gp130 transducing protein. J. Biol. Chem. 271, 14764-14772]、これらの結果は、これらの抗体により認識されるヒトgp130上のエピトープを、マウスgp130は共有していないことも示す。
【0165】
H2抗体の阻害作用を表す用量応答曲線(図32)を解析したところ、半最大値の抑制(IC50)を引き起こすために必要なH2の濃度は、H/V−D/Aムテインの場合には親のIL−11より約10倍低かった。これは、部位IにおけるH/V−D/A突然変異が部位IIの立体構造変化を引き起こし、その結果H2抗体に対する親和性が増加したことを示す。別の実験が、H/V−D/AがIL−11と同様に、ヒトIL−lIRaおよびヒトgp130を共トランスフェクションしたBa/F3細胞の増殖を刺激できることを示した。しかしその一方で、ヒトgp130のみをトランスフェクションしたBa/F3細胞はどちらの分子にも応答しなかった。したがって、H/V−D/Aは、親IL−11と同様にIL−11Rαがなければgp130を活性化することができない。
【0166】
H182およびD186のH/V−D/Aの特性における相対的な役割
H182とD186の相対的重要度を研究するために、これらの残基を別々にまたは組合せて突然変異させ、H/V−D/Aに加えて、H/V、D/V、D/A、およびH/V−D/Vムテインを生成した。図33に示すように、SDS−PAGEおよびウエスタンブロット解析により、すべての組換え型タンパク質が良好に発現されていることが明らかである。H/V−D/Aに対して以前に観察されたように、全てのムテインが、SDS−PAGE上の見かけの分子量とそれらの予測値の間で系統的な差異を示した。ムテインD/VおよびD/Aが、ムテインH/Vより速く移動した。これは負に帯電した残基(D)はゲル中の分子移動度に、正に帯電した残基(H)より多くの影響を及ぼしたことを示唆する。D/VとD/Aの間の移動度の違いはさらに、電荷が移動度の変化に含まれる唯一の因子ではないことを示した。これは、電荷以外に、突然変異に起因する分子のSDS抵抗性の構造変化もまた、移動度変化に寄与する可能性がある、という我々の以前の仮説を強化する。2つの二重ムテインH/V−D/VおよびH/V−D/Aは類似していて、単一ムテインより高い移動度を有していた。これは2つの突然変異の累積効果を示している。
【0167】
7TD1細胞を、様々なFPΔIL−11ムテインの生物活性を測定するために用いた(図34)。D/Aのみの突然変異が、H/V−D/Aの組合せよりもさらに強い、強力な活性の増大をもたらしたようである。D/V突然変異もまた活性の増大をもたらしたが、D/A突然変異よりもはるかに低い程度あった。対照的に、H/V突然変異は、常に生物活性の僅かな減少に帰着した:H/V、H/V−D/V、およびH/V−D/Aはそれぞれ、野生型、D/V、およびD/Aより活性が低かった。
【0168】
これらの結果は、D186が部位Iの鍵となるアミノ酸であって、IL−11の活性に本質的な役割を果たすことを示唆する。注目すべきは、D186をアラニンの代わりにバリンで置換すると、はるかに低い活性の増大がもたらされたが、これは疎水性に加えて位置186の側鎖のサイズがこの活性の増強に重要であることを示唆する。H182残基も部位Iにおける相互作用に関係しているがしかし役割は小さいようである。
【0169】
考察
この研究の目的は、特異的なレセプター鎖(IL−11Rα)への結合を担う領域(部位I)内に位置するアミノ酸を変化させることにより、強力なヒトIL−11アゴニストを作成することであった。IL−11のモデル(図25)を、関連するサイトカインIL−6、CNTFおよびLIFの公知のレセプター相互作用部位に基づいたホモロジー考察により構築した[Jacques et al. (1998). The interleukin-11/receptor complex: rational design of agonists/antagonists and immunoassy as potentially useful in human therapy. Res. Immunol. 149,737-740、この内容は参照により本明細書に組み入れられる]。突然変異生成実験に支持されて、モデルは、水素結合および塩橋の形成により相互作用の特異性を保証する周囲の極性残基または荷電残基の骨格によって保護された、少数の無極性側鎖の疎水性相互作用が、レセプターリガンド結合の主要なエネルギーを提供する、と予測する[Kalai et al.(1997)、上に引用]。したがって、IL−11とα−レセプターサブユニットとの相互作用を増強するために、我々は部位Iの疎水性クラスタの中央にある2個の荷電アミノ酸残基H182およびD186を、2個の疎水性残基により置換した。我々は、部位Iの表面の疎水性を局所的に増加させることが分子の四次構造に影響を及ぼす可能性があると予想した:突然変異生成によって生成された推定上の大きな疎水的相互作用領域が、H/V−D/Aがオリゴマーを形成するために好都合である可能性がある。Superdex−75クロマトグラフィーが、H/V−D/Aが実際に、可溶性で機能的なモノマータンパク質として発現されたことを証拠づけた。しかし、赤外の水素/重水素交換キネティクスがH/V−D/AムテインがH/H交換に対してより耐性があることを示し、これはムテインが親のFPΔIL−11よりコンパクトな構造を有する可能性があることを示唆した。赤外H/Hキネティクス研究では、実験のためにタンパク質がフィルム中で濃縮されたため、実際は、より高いタンパク質濃度で記録された。したがって付加的な相互作用が赤外実験に存在することが考えられる。それでも、H/V―D/A突然変異体で見出されたそのような新しく、より疎水性の領域を包含する局所相互作用によっては、残基のほとんど40%がより遅い交換を行うという図29に報告した大きな効果を説明することができず、またそのような差は二次構造の小さな差を考慮したのでは説明できなかった。他方で、突然変異体のSDS−PAGE上でのより速い移動度から、よりコンパクトな構造が導かれ、これはより遅い赤外H/H交換、およびCDのデータと良く一致する。
【0170】
H/V−D/Aムテインの結合特性の解析によって、Dヘリックスの終端の残基がIL−11Rαの認識およびこれとの相互作用に、関係していることが確認された。実際に、バイオセンサーによる研究によって、H/V−D/A突然変異が、単離したIL−llRa鎖との結合のパラメーターの変更に関係していることが示された。結合定数と解離定数が共に著しく増加した。これは、部位Iにおけるサイトカイン・レセプター相互作用に含まれる分子結合の性質が強く修飾されたことを示している。これらの変化にもかかわらず、IL−11Rαに対するムテインの結合親和性は、親のIL−11のそれより3倍高いだけであった。細胞表面レセプターの平衡研究によって、この3倍の親和性の増加が確認され、さらに高親和性IL−llRa/gp130複合体については、ムテインおよび野生型のIL−11が同程度の親和性を表すことが示された。
【0171】
野生型IL−11と比較したH/V−D/Aムテインの相対的な生物活性は、2つの分子間の親和性の差との間に相関がなかった。確かに、7TD1マウスハイブリドーマ細胞系統においては、H/V−D/Aは相当程度(400倍まで)増大した活性を有していたが、別のマウスハイブリドーマ細胞系統(B9)においては、その生物活性は約10倍低くなった。そのような変動は、別のマウスプラズマ細胞腫細胞系統(T10)においては、アラニンによるD186の置換(D/Aムテイン)が、サイトカインの活性を野生型より500倍弱くしたことを示す従来の研究に一致している[上に引用した Czupryn et al.(1995), Ann. New York Acad. Sci. 762,152-16、参照により本明細書に組み入れられる]。
【0172】
何がH/V−D/Aを、7TD1細胞においてより活性を高くするのであろうか。7TD1細胞はIL−6に強く応答しているので、そのような高いH/V−D/A生物活性は、IL−6Rαを介した信号伝達による刺激に起因する可能性がある。親のFPΔIL−11が、7TD1細胞への高親和性結合について、32PラベルされたH/V−D/Aと完全に競合することがこの研究で明らかになり、またこの放射性ラベルされたタンパク質のIL−6Rαへの結合がRIA分析によって検出できなかったため、この仮説を論駁することができる。H/V−D/AによるマウスIL−6の誘導は、我々が、H/V−D/Aの7TD1に対する生物活性がIL−6中和抗体存在下で変更されなかったことを見出したため、除外することができる。したがって、発現が細胞系統に依存する別の因子が、H/V−D/Aムテインの増強された活性の原因であることを仮定しなければならない。そのような因子は、機能的なIL−11レセプターの構造に関与しているもう一つの未知のレセプター鎖である可能性がある。IL−11リガンドレセプター複合体の化学量論はいまだに未解決問題であり、gp130とは異なる伝達サブユニットが、IL−11を介するシグナル伝達に参加している可能性がある。この未知のサブユニットの有力な候補は、最近同定され、活性化された単球上で主に発現されることが見出された、gp130様レセプター(GLM−R)である[Ghilardi et al. (2002). A novel type I cytokine receptor is expressed on monocytes, signals proliferation, and activates STAT-3 and STAT-5. J. Biol. Chem. 277,16831-16836、この内容は参照により本明細書に組み入れられる]。このレセプターは、増殖信号を伝達して、転写因子STAT−3およびSTAT−5の活性化を引き起こすことができる。まだそのリガンドは同定されていないが、GLM−Rは「それ自身」がIL−11のレセプターであると分かったわけではなかった。
【0173】
そのような仮説(gp130とgp130様レセプターとのヘテロ複合体)の枠のなかで、突然変異誘発によって引き起こされた構造変化により、ムテインH/V−D/Aが野生型IL−11よりも、この未知のgp130様因子を動員および/または活性化しやすいようになったと仮定することができる可能性がある。7TD1細胞に関する我々の研究は、H/V−D/Aおよび野生型IL−11が同程度の高親和性結合をすることを示したので、H/V−D/Aのより高い活性は、より高いシグナル伝達効率と関係しているのであろう。したがってgp130様因子をgp130よりも多く発現する細胞(7TD1のような)上では、ムテインはより活性が強いであろう、そして反対に、gp130をgp130様因子より多く発現する細胞(B9またはT10のような)上では、ムテインは活性がより弱いであろう。中和抗体阻害実験により、H/V−D/Aの部位IIは、抗体H2結合に関連して立体構造が修飾されたが、機能的なままであることが示された。部位IIのそのような修飾は、H/V−D/Aによってgp130の代わりにgp130様分子が動員される結果となる可能性がある。あるいは、H/V−D/Aの部位IIはやはりgp130の動員に関与し、部位IIIがgp130様因子の動員に関与することも考えられる。
【0174】
結論として、我々は7TD1細胞上のIL−llRαに対する増大した親和性および強く増強された活性を有する新規なhIL−11ムテインを生成した。したがって、これらのムテインは、IL−11が有益であることが示された病状に役立つ可能性のあるアゴニスト分子を構成する。さらに、それはIL−11レセプターの構造と機能の詳細をさらに解明することを目指す研究にとって価値のある分子であるに違いない。
【0175】
実施例2:
インビボにおける放射線防護
マウス
生後8〜12週のC57B1/6オス・マウスをCharles River Laboratories(Chatillon sur Chalaronne, France)から購入した。マウスをNantes(France)における、INSERM U463の動物中核施設に収容した。この施設はPrefecture of the French Department of Loire-Atlantiqueが承認し、フランス獣医局の規制および基準に従って維持されている。
【0176】
放射線およびIL−11処置
60Co源を操作してTeratron 780(Atomic Energy of Canada limited, Canada)により全身照射を行った。線量率は1.5Gy/分であった。ヒト組み換えFPΔIL−11およびH/V−D/Aタンパク質(Jean Content, Institut Pasteur, Bruxelles, Belgiumによって合成された)を0.2%のゼラチンを含む無菌のPBSに溶解し、眼窩後静脈内注入により800ngを照射前30分ならびに照射後5、60および120分に、与えた。
【0177】
生存率の研究
終点での生存率を、プロダクトリミットカプラン・マイヤー法を用いて、処理の時から死亡まで計算した。プロダクトリミットカプラン・マイヤー生存曲線の差を、打ち切りデータのためのマンテルのログランク検定により評価した。統計解析をスチューデントのt−テストにより行なった。
【0178】
結果
放射線治療医が患者の腹部照射に際して遭遇する大問題の1つは、胃腸管の大きな放射線感受性である。腹部の局部照射は腸の絨毛の破壊をもたらし、患者の脱水、敗血症性ショック、およびそれに続く死亡を引き起こす結果となる。この病状は胃腸症候群(GI症候群)として知られている。腸陰窩に存在する幹細胞の死が上皮細胞の再生を阻止して絨毛の壊死を引き起こすことが、ずっと以前から証明されている(Potten CS, Merritt A, Hickman J, Hall P, Faranda A: Characterization of radiation-induced apoptosis in the small intestine and its biological implications. Int. J. Radiat. Biol. 65: 71-8.1994)。
【0179】
マウスにおいて、我々は1回の15Gyの線量が腸粘膜の完全な破壊およびそれに続く動物の死を引き起こすことを観察した(Paris F, Fuks Z, Kang A, Capodieci P, Juan G, Ehleiter D, Haimovitz-Friedman A, Cordon-Cardo C, Kolesnick R: Endothelial apoptosis as the primary lesion initiating intestinal radiation damage in mice. Science. 293: 293-7., 2001)。
【0180】
したがって我々は、FPΔIL−11(上記実施例1に記述された)の、γ−線に曝露されて致命的な照射を受けたC57BL6/Jマウスにおける治療能力を評価し、FPΔIL−11が動物の死を遅らせることを見出した(FPΔIL−11によって予め処理されてから15Gyの照射を受けたマウスの死亡中央値8日に対し、担体のみで処理された後に照射されたマウスの5日間)。結果を図21に図示する。
【0181】
同一の実験条件で、我々は、H/V−D/Aムテインの治療活性を評価した。FPΔIL−11に使用した用量と比較して10倍低い用量のH/V−D/A(全量0.32μg対3.2μg)による前処理が同一の効果で死亡を遅延させる(8日の死亡中央値)。結果を図22に図示する。この低用量のFPΔIL−11(0.32μg)による前処理は、15Gyで照射された動物の調査では極めて僅かの効果しか有しなかった。
【0182】
これらの実験は、本発明のH/V−D/Aムテインが、野生型IL−11と比較して機能の増大をもたらし、放射線曝露後の小腸保護を改善したことを示す。
【0183】
実施例3
結果の比較[単一点突然変異対二重点突然変異]
血清中のH/V−D/A hIL−11ムテインの定量化
H/V−D/A IL−11ムテインを、15Gy照射の30分前、5分、1時間、および2時間後にマウスの眼窩後に注入する。
【0184】
第一段階で、我々は眼窩後の注入後に血液中に存在するH/V−D/A IL−11の量を測定する。
【0185】
その目的のために、ELISA免疫測定を、800ngのムテイン注入30分後に採取した血清中のH/V−D/A IL−11を測定するように設計する。
【0186】
96ウエルプレートを抗ヒトIL−11抗体(R&D SystemsからAF−218−NAと指定して入手可能なポリクローンヤギIgG)で予めコートした。その後組換えH/V−D/A IL−11ムテインを含む標準、または血清を適当なマイクロタイタープレートのウエルに加えてインキュベーションする。
【0187】
洗浄して、試料中の結合していないIL−11および試料の他の成分を除去した後、H/V−D/A IL−11ムテインのフラグタグに対する抗−フラグ抗体(M2、Sigma)およびM2抗体に対するビオチン結合ポリクローナル抗体を加えてインキュベーションする。IL−11は、もし存在すれば、予めウエル上にコートされた抗体に結合し、それによって固定化され、その後ビオチン結合抗体により「サンドイッチ」される。
【0188】
試料中に存在するIL−11の量を定量的に測定するために、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)に結合させたアビジンを各マイクロプレートウエルに加えてインキュベーションする。酵素基質反応を、硫酸溶液を加えて終了させ、カラー変化を分光測光法により波長450nmで測定する。
【0189】
このELISA免疫測定により、我々は血清中のH/V−D/A IL−11を2.2nMのモル濃度で検出する。これは血液1ml当たり3.3ngのH/V−D/A hIL−11濃度を表わす(マウス中の血液の体積は約5mlであり;また、我々はマウスに800ngのH/V−D/A hIL−11(即ち160ng/mlの血液)を注入した。)。
【0190】
我々のデータは、注入30分後に2%のムテインが血液中を循環していることを示している。残りは分解されたか、または細胞レセプターに結合した。
【0191】
D/Aムテインの効力
単一点D/A突然変異hIL−11ムテインを、Czupryn et al.1995(上に引用)の教示に従って生成し、野生型FPΔIL−11タンパク質および本発明の二重点突然変異H/V−D/A hIL−11ムテインと:
− 第1にインビトロでの7TD1細胞における増殖誘導解析によって、および
− 第2にインビボでの動物の小腸放射線防護および死亡の研究により、
比較した。
【0192】
増殖測定は、2×10の細胞濃度の7TD1細胞を、平底90ウエルプレート中において、野生型FPΔIL−11またはそのムテインの存在用量を増加させてインキュベーションすることにより行う。7日後に、生存している細胞数をヘキソサミダーゼに対する比色定量法により測定した。
【0193】
我々はD/AおよびH/V−D/A hIL−11が細胞増殖に対して同等の用量応答を有しており、一方で野生型組換えIL−11はそれより弱い活性であることを見出した(図35参照)。
【0194】
15Gyの照射後にD/A IL−11ムテインを眼窩後に注入したマウスの生存率を解析し、野生型のFPΔIL−11および本発明のH/V−D/Aムテインを注入したマウスの生存率と比較する(図36参照)。
【0195】
生後8〜12週のオスC57B1/6マウスに、60Co源を操作してTeratron 780(Atomic Energy of Canada limited, Canada)により全身照射を行う。線量率は1.5Gy/分である。ヒト組換えFPΔI1−11、D/AおよびH/V−D/Aムテインを0.2%ゼラチンを含む無菌PBSに溶解し、眼窩後静脈内に800ngを、照射前30分、照射後5、60および120分に注入して与える。
【0196】
終点での生存率を、処理の時間から死亡まで、プロダクトリミットカプラン・マイヤー法を用いて計算する。プロダクトリミットカプラン・マイヤー生存曲線の差を、打ち切りデータのためのマンテルのログランク検定により評価する。統計解析をスチューデントのt−テストにより行なう。同じ実験条件において、我々は本発明のH/V−D/Aムテインの治療活性をD/Aムテインと比較して評価した。
【0197】
我々は既に、FPΔIL−11に用いる用量と比較して10倍低用量のH/V−D/Aによる前処理(全量0.32μg対3.2μg)が、死亡を同一のイソ効果で遅延させる(死亡中央値8日)ことを証明した;上記実施例2を参照のこと。
【0198】
同じ実験条件で、H/V−D/Aムテインの0.32μgの注入がマウスの死を遅らせるが、しかしD/Aムテインの同用量の注入ではそうでない。0.32μgを注入され15Gyで照射されたマウスは、同じ低用量の野生型FPΔIL−11を注入され同じ線量で照射されたマウスと同じイソ効果で速く死亡した。
【0199】
これらの実験は、本発明のH/V−D/Aムテインは、野生型IL−11と比較して機能の増大をもたらし放射線曝露の後に小腸保護を改善するとしても、D/Aムテインは同じ治療効果をもたらさないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】図1は、NCBIウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)からの、AY207429アクセッションのエントリーの転載であって、野生型ヒトIL−11(hIL−11)のヌクレオチドおよびアミノ酸の配列および特性(それぞれ配列番号73および配列番号1)を示す。
【図2】図2は、完全な野生型のヒト、マカク、マウスおよびラットIL−11のアミノ酸配列(配列番号1〜4)を示す。
【図3】図3は、最初の34個のN末端アミノ酸を欠失させた野生型のヒト、マカク、マウス、および、ラットIL−11のアミノ酸配列(配列番号5〜8)を示す。H182およびD186に下線が引かれている。
【図4】図4は、34個のアミノ酸を欠失させた野生型hIL−11から、野生型のH182およびD186を疎水性アミノ酸(下線で示す)によって置換することにより導出可能な本発明のhIL−11ムテイン(配列番号9〜13)を示す。
【図5】図5は、最初の21個のアミノ酸を欠失させた野生型hIL−11から、野生型のH182およびD186を疎水性アミノ酸(下線で示す)で置換することにより導出可能な本発明のhIL−11ムテイン(配列番号14〜18)を示す。
【図6】図6は、完全な野生型のhIL−11から、野生型のH182およびD186を疎水性アミノ酸(下線で示す)で置換することにより導出可能な本発明のhIL−11ムテイン(配列番号19〜23)を示す。
【図7】図7は、34個のアミノ酸を欠失させた野生型マカクIL−11から、野生型のH182およびD186を疎水性アミノ酸で置換することにより導出可能な本発明のIL−11ムテイン(配列番号24〜28)を示す。
【図8】図8は、最初の21個のN−末端アミノ酸を欠失させた野生型マカクIL−11から、野生型のH182とD186を疎水性アミノ酸で置換することにより導出可能な本発明のIL−11ムテイン(配列番号29〜33)を示す。
【図9】図9は、完全な野生型のマカクIL−11から、野生型のH182およびD186を疎水性アミノ酸で置換することによって導出可能な本発明のIL−11ムテイン(配列番号34〜38)を示す。
【図10】図10は、最初の34個のN−末端アミノ酸を欠失させた野生型マウスIL−11から、H182とD186を疎水性アミノ酸で置換(下線で示す)することによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号39〜43)を示す。
【図11】図11は、最初の21個のN−末端アミノ酸を欠失させた野生型マウスIL−11から、H182とD186を疎水性アミノ酸で置換(下線で示す)することによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号44〜48)を示す。
【図12】図12は、完全な野生型マウスIL−11から、H182およびD186を疎水性アミノ酸で置換(下線で示す)することによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号49〜53)を示す。
【図13】図13は、最初の34個のN−末端アミノ酸を欠失させた野生型ラットIL−11から、H182とD186を疎水性アミノ酸で置換(下線で示す)することによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号54〜58)を示す。
【図14】図14は、最初の21個のN−末端アミノ酸を欠失させた野生型ラットIL−11から、H182とD186を疎水性アミノ酸で置換(下線で示す)することによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号59〜63)を示す。
【図15】図15は、完全な野生型ラットIL−11から、H182およびD186を疎水性アミノ酸で置換する(下線で示す)ことによって導出された本発明のIL−11ムテイン(配列番号64〜68)を示す。
【図16A】図16Aは、AY207429 NCBIヌクレオチドエントリで定義された、ヒトの完全な野生型IL−11に対する連結されたCDS配列(配列番号69)、および34個のアミノ酸を欠失させたhIL−11由来の本発明のhIL−11ムテインに対する連結されたCDS配列(配列番号70)を示す。
【図16B】図16Bは、21個のアミノ酸を欠失させたhIL−11由来の本発明のhIL−11ムテインに対する連結されたCDS配列(配列番号71)、および完全なhIL−11由来の本発明のhIL−11ムテインに対する連結されたCDS配列(配列番号72)を示す。
【図17−1】図17−1は、本発明に従って突然変異させたAY207429 NCBIエントリーのヌクレオチド配列を示す(野生型cacおよびgacを置換するコドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図17−2】図17−2は、本発明に従って突然変異させたAY207429 NCBIエントリーのヌクレオチド配列を示す(野生型cacおよびgacを置換するコドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図17−3】図17−3は、本発明に従って突然変異させたAY207429 NCBIエントリーのヌクレオチド配列を示す(野生型cacおよびgacを置換するコドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図18−1】図18−1は、hIL−11に由来する本発明のムテインのmRNA配列(配列番号75)を示す(コドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図18−2】図18−2は、hIL−11に由来する本発明のムテインのmRNA配列(配列番号75)を示す(コドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図19−1】図19−1は、hIL−11に由来する本発明のIL−11ムテインの遺伝子配列(配列番号76)を示す(コドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図19−2】図19−2は、hIL−11に由来する本発明のIL−11ムテインの遺伝子配列(配列番号76)を示す(コドンnおよびnに下線を付して示す)。
【図20】図20は、15Gyの照射に曝露されたマウスの日数に対する生存%を示す(上の曲線=組換えられしかし突然変異されなかった3.2μgのIL−11で処置されたマウス;下の曲線=処置されていない対照マウス)。
【図21】図21は、15Gyの照射に曝露されたマウスの、日数に対する生存%を示す(上の曲線=3.2μgの組換えられ突然変異されなかったIL−11で、または0.32μgの本発明のH182V+D186Aムテイン「HVDA」−で処置されたマウス;下の曲線=0.32μgの組換えられ突然変異されなかったIL−11で処置されたマウス、または処置されていない対照マウス)。
【図22】図22は、親(突然変異されなかった)の組換えIL−11(FPΔIL−11)のヌクレオチド配列(配列番号77)、およびその、親(突然変異されなかった)のアミノ酸配列(配列番号78)を示す。
【図23】図23は、本発明に従って突然変異されたFPΔIL−11のヌクレオチド配列(配列番号79)、および突然変異された対応するアミノ酸配列(本発明の配列番号80)を示す。
【図24】図24は、FPΔIL−11のインバースPCR突然変異生成に用いたプライマーを示す。
【図25A】図25Aおよび25Bはヒト野生型IL−11の3Dモデルを示す。 図25Aに、Tacken et al.[1999]によって記述された、CNTFに対して得られた結晶学的データに基づくIL−11の3Dモデルを示す。図25Bは、IL−11モデルの部位Iの概観を示す。正荷電のアミノ酸(Arg、Lys)は青色に、負荷電の(Asp、Glu)は赤に、親水性はグレイに、疎水性は黄色に着色されている。
【図25B】図25Aおよび25Bはヒト野生型IL−11の3Dモデルを示す。 図25Aに、Tacken et al.[1999]によって記述された、CNTFに対して得られた結晶学的データに基づくIL−11の3Dモデルを示す。図25Bは、IL−11モデルの部位Iの概観を示す。正荷電のアミノ酸(Arg、Lys)は青色に、負荷電の(Asp、Glu)は赤に、親水性はグレイに、疎水性は黄色に着色されている。
【図26】図26は、SDS−PAGEによって分析した、FPΔIL−11およびH182V+D186Aムテインの発現を示す。 BL21 E. coliを、FPΔIL−11およびH/V−D/AムテインをコードするpET−22b(+)ベクターで、または空のベクター(E)で形質転換した。タンパク質生成の誘導(i、誘導;n、非誘導)の後、実験法に記述するように細菌を溶解した。その後、上清(1レーン当たり全蛋白量100μg)をSDS−PAGEにより解析し、クーマシー青で着色した。
【図27】図27は、FPΔIL−11(上)、およびH182V+D186A(下)の1800〜1400cm-1周波数範囲における、赤外スペクトルを示す。 吸光度をmODで表す。吸光度スケールは下のスペクトルのためである。上のスペクトルは、明瞭さのためにずらして示した。
【図28】図28は、FPΔIL−11(上)、およびH182V+D186A(下)のCDスペクトルを示す。
【図29A】図29Aおよび29Bは、FPΔIL−11(丸)、およびH182V+D186A(十字)の、22Oに曝した時間の関数としてのアミドIIバンドの積分強度の変化を示す。 カーブフィッティングを3つの減衰指数関数により行なった。パネル29A:0〜20分、パネル29B:0〜700分
【図29B】図29Aおよび29Bは、FPΔIL−11(丸)、およびH182V+D186A(十字)の、22Oに曝した時間の関数としてのアミドIIバンドの積分強度の変化を示す。 カーブフィッティングを3つの減衰指数関数により行なった。パネル29A:0〜20分、パネル29B:0〜700分
【図30A】図30Aおよび30Bは、親FPΔIL−11および突然変異体H182V+D186Aのゲル濾過クロマトグラフィー、およびクロマトグラフィー中に集められた画分について検査したそれらの生物活性を示す。 図30Aにおいては、Superdex−75カラム(K16 Pharmacia Biotech)を用い、3つのタンパク質、アルブミン(67kDa)、卵白アルブミン(43kDa)およびキモトリプシノーゲンA(25kDa)で較正した後、分析する各30μgのラベルされていないタンパク質を、トレーサーとして33Pでラベルされた50ngの同一物の存在下でカラムに載せた。集めた各区画の50μlを放射性計測に付した。図30Bでは、IL−11活性を、マウスハイブリドーマ細胞系統7TD1を用いて測定した。細胞を平底マイクロウェルプレート中で(2×103の7TD1細胞/ウエル)、0.2μlの溶出した各画分存在下で培養した。7日間の培養の後、生存している細胞数をヘキソサミニダーゼの比色測定により決定した。各試料を3重に検査し、平均値を標準偏差と共に表示した。
【図30B】図30Aおよび30Bは、親FPΔIL−11および突然変異体H182V+D186Aのゲル濾過クロマトグラフィー、およびクロマトグラフィー中に集められた画分について検査したそれらの生物活性を示す。 図30Aにおいては、Superdex−75カラム(K16 Pharmacia Biotech)を用い、3つのタンパク質、アルブミン(67kDa)、卵白アルブミン(43kDa)およびキモトリプシノーゲンA(25kDa)で較正した後、分析する各30μgのラベルされていないタンパク質を、トレーサーとして33Pでラベルされた50ngの同一物の存在下でカラムに載せた。集めた各区画の50μlを放射性計測に付した。図30Bでは、IL−11活性を、マウスハイブリドーマ細胞系統7TD1を用いて測定した。細胞を平底マイクロウェルプレート中で(2×103の7TD1細胞/ウエル)、0.2μlの溶出した各画分存在下で培養した。7日間の培養の後、生存している細胞数をヘキソサミニダーゼの比色測定により決定した。各試料を3重に検査し、平均値を標準偏差と共に表示した。
【図31A】図31Aおよび31Bは、7TD1(図31A)およびB9細胞(図31B)でテストされた、親のFPΔIL−11および突然変異体H182V+D186Aの生物活性を示す。 細胞を平底マイクロウェルプレート中で(2×103の7TD1細胞/ウエル;1×104のB9細胞/ウエル)、親のFPΔIL−11、ムテインH/V−D/A、または市販のrhIL−11(R&D)の段階希釈物の存在下で培養した。7TD1は培養7日後およびB9細胞は培養3日後に、生存している細胞数を、ヘキソサミニダーゼ(7TD1細胞)、およびXTTの比色測定(B9細胞)により決定した。各試料を3重に検査し、平均値を標準偏差と共に表示した。
【図31B】図31Aおよび31Bは、7TD1(図31A)およびB9細胞(図31B)でテストされた、親のFPΔIL−11および突然変異体H182V+D186Aの生物活性を示す。 細胞を平底マイクロウェルプレート中で(2×103の7TD1細胞/ウエル;1×104のB9細胞/ウエル)、親のFPΔIL−11、ムテインH/V−D/A、または市販のrhIL−11(R&D)の段階希釈物の存在下で培養した。7TD1は培養7日後およびB9細胞は培養3日後に、生存している細胞数を、ヘキソサミニダーゼ(7TD1細胞)、およびXTTの比色測定(B9細胞)により決定した。各試料を3重に検査し、平均値を標準偏差と共に表示した。
【図32】図32は、FPΔIL−11または突然変異体H182V+D186Aにより刺激された7TD1細胞増殖の、抗−hIL−11および抗ヒトgp130中和抗体による阻害を示す。細胞を、表示した濃度の抗ヒトIL−11モノクローナル抗体H2(丸)、ならびに抗ヒトgp130モノクローナル抗体MAB628(四角)およびB−R3(三角)とインキュベーションした。データ点は3回行った測定の平均を表わす。
【図33】図33は、SDS−PAGEおよびイムノブロッティングによって分析された、親のFPΔIL−11およびそのH182V+D186Aムテインの発現を示す。 BL21 E. coliを図に示す空のベクター(対照)、または親のFPΔIL−11またはムテインをコードする発現ベクトルで形質転換した。タンパク質発現を引き起こした後、超音波処理により細胞を溶解し、溶解物(1つのレーン当たり100μg全蛋白量)を、SDS−PAGE(左)およびIL−11に対して生成されたポリクローナル抗体(BAF 218)を用いるイムノブロッティング(右)により解析した。
【図34】図34は、7TD1細胞のFPΔIL−11およびそのH182V+D186Aムテインに応答した増殖を示す。 7TD1細胞を、対照、FPΔIL−11またはムテインを含むE. coli溶解物の段階希釈物(始めに2μg/mlに調節)存在下で、インキュベーションした。7日間の培養の後、ヘキソサミニダーゼの比色測定により、細胞数を決定した。
【図35】図35は、本発明のムテインの有利な局面のインビトロにおける比較結果を、野生型のIL−11(四角)、または本発明のH/V−D/Aムテイン(三角)もしくはD/Aムテイン(丸)の用量増加に応答して、7TD1細胞(ICLCアクセッション番号=HYL96001)によって示されたそれぞれの増殖レベルを示すことにより、表示する。
【図36】図36は、本発明のムテインの有利な局面のインビボにおける比較結果のデモンストレーションであって、IL−11の320ng(四角)または3.2μg(菱形)注入後、本発明のH/V−D/Aムテイン320ng(丸)の注入後またはD/Aムテイン320ng(三角)の注入後の、1.5Gy/分で照射されたマウスのそれぞれのパーセント生存率を示す。
【図1−1】

【図1−2】

【図1−3】

【図1−4】

【図1−5】

【図1−6】

【図1−7】

【図1−8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL−11Rαに対するエピトープ内の少なくとも2個の非疎水性アミノ酸を疎水性アミノ酸で置換することにより、野生型IL−11配列から導出可能なIL−11ムテインの配列を有するタンパク質を生成する工程を含む、IL−11アゴニストを生成する方法。
【請求項2】
IL−11ムテインであって、その配列が、野生型IL−11の完全な配列から:
− 位置182および186(完全な野生型の配列を基準にして計算された位置)の親水性アミノ酸をそれぞれ、
○ バリン(記号=VまたはVal)、
○ アラニン(記号=AまたはAla)、
○ プロリン(記号=PまたはPro)、
○ ロイシン(記号=LまたはLeu)、
○ イソロイシン(記号=IまたはIle)、
○ フェニルアラニン(記号=FまたはPhe)、
○ メチオニン(記号=MまたはMet)、および、
○ トリプトファン(記号=WまたはTrp)、
を含む群より選ばれるXおよびXにより置換すること、
− ならびに最初の34個のN−末端アミノ酸を超えないN末端部分を欠失させること、
により導出可能な配列を含む、IL−11ムテイン。
【請求項3】
野生型IL−11が、ヒトIL−11、マカクIL−11、マウスIL−11またはラットIL−11の配列を有することを特徴とする、請求項2記載のIL−11ムテイン。
【請求項4】
請求項2または3記載のIL−11ムテインであって、その配列が、配列番号9、配列番号24、配列番号39、配列番号54、およびそれらの保存的突然変異配列(前記保存的突然変異配列は、XおよびXが請求項2で定義される通りであり、ならびに生じるムテインがIL−11依存性細胞系統の増殖を誘導する能力を保持していることを条件として、配列番号9、配列番号24、配列番号39、または配列番号54のうちの少なくとも1つと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%の同一性を有する)を含む群より選ばれる配列を含むIL−11ムテイン。
【請求項5】
およびXがVまたはAであることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか1項記載のIL−11ムテイン。
【請求項6】
=VおよびX=Aであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載のIL−11ムテイン。
【請求項7】
配列番号10、配列番号25、配列番号40、または配列番号55の配列を含むことを特徴とする、請求項6記載のIL−11ムテイン。
【請求項8】
=AおよびX=Vであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載のIL−11ムテイン。
【請求項9】
配列番号11、配列番号26、配列番号41、または配列番号56の配列を含むことを特徴とする、請求項8記載のIL−11ムテイン。
【請求項10】
=VおよびX=Vであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載のIL−11ムテイン。
【請求項11】
配列番号12、配列番号27、配列番号42、または配列番号57の配列を含むことを特徴とする、請求項10記載のIL−11ムテイン。
【請求項12】
=AおよびX=Aであることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1項記載のIL−11ムテイン。
【請求項13】
配列番号13、配列番号28、配列番号43、または配列番号58の配列を含むことを特徴とする、請求項12記載のIL−11ムテイン。
【請求項14】
請求項2〜13のいずれか1項記載のIL−11ムテインであって、野生型IL−11の完全な配列から:
− 位置182および186(完全な野生型の配列を基準にして計算された位置)の 親水性アミノ酸をそれぞれXおよびX(XおよびXは請求項2で定義された通り である)で置換することにより、ならびに
− 最初の21個のN末端アミノ酸を欠失させることにより、
導出可能な配列を含むことを特徴とする、IL−11ムテイン。
【請求項15】
配列番号14、配列番号29、配列番号44、または配列番号59の配列(配列中、XおよびXは請求項2で定義されている)を含むことを特徴とする、請求項14記載のIL−11ムテイン。
【請求項16】
=VおよびX=Aであることを特徴とする、請求項15記載のIL−11ムテイン。
【請求項17】
配列番号15、配列番号30、配列番号45、または配列番号60の配列を含むことを特徴とする、請求項16記載のIL−11ムテイン。
【請求項18】
=AおよびX=Vであることを特徴とする、請求項15記載のIL−11ムテイン。
【請求項19】
配列番号16、配列番号31、配列番号46、または配列番号61の配列を含むことを特徴とする、請求項16記載のIL−11ムテイン。
【請求項20】
=VおよびX=Vであることを特徴とする、請求項15記載のIL−11ムテイン。
【請求項21】
配列番号17、配列番号32、配列番号47、または配列番号62の配列を含むことを特徴とする、請求項20記載のIL−11ムテイン。
【請求項22】
=AおよびX=Aであることを特徴とする、請求項15記載のIL−11ムテイン。
【請求項23】
配列番号18、配列番号33、配列番号48、または配列番号63の配列を含むことを特徴とする、請求項22記載のIL−11ムテイン。
【請求項24】
請求項2〜23のいずれか1項記載のIL−11ムテインであって、野生型IL−11の完全な配列から、位置182および186(完全な野生型の配列を基準にして計算された位置)の親水性アミノ酸をそれぞれXおよびX(XおよびXは、請求項2で定義された通りである)で置換することにより導出可能な配列を含むことを特徴とする、IL−11ムテイン。
【請求項25】
配列番号19、配列番号34、配列番号49または配列番号64の配列(配列中、XおよびXは、請求項2で定義された通りである)を含むことを特徴とする、請求項24記載のIL−11ムテイン。
【請求項26】
=VおよびX=Aであることを特徴とする、請求項24記載のIL−11ムテイン。
【請求項27】
配列番号20、配列番号35、配列番号50、または配列番号65の配列を含むことを特徴とする、請求項26記載のIL−11ムテイン。
【請求項28】
=AおよびX=Vであることを特徴とする、請求項24記載のIL−11ムテイン。
【請求項29】
配列番号21、配列番号36、配列番号51、または配列番号66の配列を含むことを特徴とする、請求項28記載のIL−11ムテイン。
【請求項30】
=VおよびX=Vであることを特徴とする、請求項24記載のIL−11ムテイン。
【請求項31】
配列番号22、配列番号37、配列番号52、または配列番号67の配列を含むことを特徴とする、請求項30記載のIL−11ムテイン。
【請求項32】
=AおよびX=Aであることを特徴とする、請求項24記載のIL−11ムテイン。
【請求項33】
配列番号23、配列番号38、配列番号53、または配列番号68の配列を含むことを特徴とする、請求項32記載のIL−11ムテイン。
【請求項34】
核酸であって、その配列が請求項2〜33のいずれか1項記載のムテインをコードすることを特徴とする核酸。
【請求項35】
配列番号72の配列を含むことを特徴とする請求項34記載の核酸であって、配列中nおよびnの各々が:
○ バリン(記号=VまたはVal)、
○ アラニン(記号=AまたはAla)、
○ プロリン(記号=PまたはPro)、
○ ロイシン(記号=LまたはLeu)、
○ イソロイシン(記号=IまたはIle)、
○ フェニルアラニン(記号=FまたはPhe)、
○ メチオニン(記号=MまたはMet)、または
○ トリプトファン(記号=WまたはTrp)、
をコードする、核酸。
【請求項36】
配列番号72の配列を含むことを特徴とする請求項34〜35のいずれか1項記載の核酸であって、配列中nおよびnは共に次のコドン:
【表1】


を含む群から選ばれる、核酸。
【請求項37】
配列番号71または配列番号70の配列を含むことを特徴とする請求項34〜36のいずれか1項記載の核酸であって、配列中、コドンnおよびnが請求項35〜36のいずれか1項記載の通りに定義されている核酸。
【請求項38】
配列番号76または配列番号74の配列を含むことを特徴とする請求項34〜36のいずれか1項記載の核酸であって、配列中、コドンnおよびnが請求項35〜36のいずれか1項記載の通りに定義されている核酸。
【請求項39】
配列番号75のRNA配列を有することを特徴とする請求項34〜35のいずれか1項記載の核酸であって、配列中コドンnおよびnが共にコドン:
【表2】


を含む群から選ばれる核酸。
【請求項40】
請求項34〜39のいずれか1項記載の核酸を含むことを特徴とする、トランスフェクションベクター。
【請求項41】
フラグタグをコードするヌクレオチド配列をさらに含むことを特徴とする、請求項40記載のトランスフェクションベクター。
【請求項42】
配列番号79の配列を含むことを特徴とする請求項40〜41のいずれか1項記載のトランスフェクションベクターであって、配列中、nおよびnが請求項35記載の通りに定義されているトランスフェクションベクター。
【請求項43】
請求項34〜39のいずれか1項記載の核酸を含むこと、および/または請求項40〜42のいずれか1項記載のトランスフェクションベクターによりトランスフェクションされたこと、および/または請求項2〜33のいずれか1項記載のムテインを発現すること、を特徴とする細胞。
【請求項44】
薬剤であって:
− 治療上有効な量の、請求項2〜33のいずれか1項記載のIL−11ムテイン、または請求項34〜39のいずれか1項記載の核酸、または請求項40〜42のいずれか1項記載のトランスフェクションベクター、または請求項43記載の細胞、
− および、場合によっては、薬学的に許容される担体、
を含むことを特徴とする薬剤。
【請求項45】
炎症性の疾患または症状の予防または治療を意図することを特徴とする、請求項44記載の薬剤。
【請求項46】
敗血症性ショックの予防または治療を意図することを特徴とする、請求項44〜45のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項47】
糖尿病の予防または治療を意図することを特徴とする、請求項44〜45のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項48】
微小血管内皮のアポトーシスの阻止を意図することを特徴とする、請求項44〜47のいずれか1項記載の薬剤。
【請求項49】
抗血小板減少症薬であることを特徴とする、請求項44記載の薬剤。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図19−1】
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【図19−2】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【公表番号】特表2007−521795(P2007−521795A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521557(P2006−521557)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009165
【国際公開番号】WO2005/014643
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(500366598)インセルム(アンスティチュ・ナショナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル) (17)
【氏名又は名称原語表記】INSERM(INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE)
【Fターム(参考)】