説明

IP電話システム、通話内容記録装置および通話方法

【課題】既存のIP電話システムやネットワークへの影響を抑え、システムやネットワーク構成に関係なく簡便に通話内容を記録する。
【解決手段】 IPネットワークに接続され呼制御を行う呼制御装置と、IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことによりIPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置とを備えたIP電話システムで、通話内容記録装置は、発信端末と呼制御装置との間で伝送される呼制御情報、並びに着信端末と呼制御装置との間で伝送される呼制御情報を夫々中継すると共に、発信端末と着信端末との間で伝送されるメディアパケットを中継する一方、発信端末及び着信端末から夫々受信したメディアパケットを蓄積して当該端末間で行われる通話の内容を記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話システム、通話内容記録装置および通話方法に係り、特に、パケットを取り込むモニタポート付ハブ等の機器を必要とすることなくIPネットワーク経由で通話を行う複数の電話端末間の通話内容を保存することを可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)ネットワークを利用して通話を行うIP電話が普及しつつある。かかるIP電話は、一般にSIP(Session Initiation Protocol)やH.323等の呼制御プロトコルによりシグナリングを行い、呼が確立すると、RTP(Real-time Transport Protocol)等のプロトコルに従って音声パケット等のメディアパケットを発信端末と着信端末との間で直接送受信して通話を行う。
【0003】
一方、このようなIP電話を利用するユーザ間に、通話内容を記録し保存する要請が近年高まっている。例えば、保険会社や証券会社が顧客とのやり取りを確認したりトラブルを避けるために通話音声を保存したり、企業内のオペレータの教育指導のため顧客との通話を録音するなど様々な用途に利用するため、複雑な操作を必要とせず低コストに通話内容を保存することを可能とするシステムの提供が望まれている。
【0004】
IP電話において通話内容を記録するには、例えば、公衆回線交換網を使用する一般の電話と同様に、単純に電話機自体に録音装置を接続したり電話機に録音機能を備えるなどの方法も考えられるが、ネットワークを介し音声パケット等のメディアパケットを伝送して通話を行うというIP電話特有の特徴から、下記特許文献のように一般電話と異なる様々な提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003‐46646号公報
【特許文献2】特開2008‐60785号公報
【特許文献3】特開2004‐32022号公報
【特許文献4】特開2008‐98905号公報
【0006】
さらに、図3はIP電話において現在利用されている一般的な通話内容記録システムを示すものである。同図に示すようにこのシステムでは、IPネットワーク上に設けた汎用のインターフェースであるモニタポート付ハブ25に通話内容記録装置23を接続しておき、ハブ25が備えるモニタポート25aを通じてIPネットワークで送受信される呼制御パケットとメディアパケットを収集する。そして収集した呼制御パケットとメディアパケットを解析してそれぞれ接続情報と通話データを取得し、この通話データを記憶装置14に蓄積することにより通話内容を記録する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記従来の通話内容記録システムでは、IPネットワーク内の不特定多数の通話ログの蓄積と監視、すなわち、メディアパケットだけでなく制御パケットをも含めた通話ログの蓄積と監視が必要となるため、大容量の記憶装置が必要となり、しかも、メディアパケットの取り出しには当該パケット以外の制御パケットの収集や解析が必要となるから、処理が煩雑となる問題がある。
【0008】
また、通話内容を記録するために、ネットワーク上を流れるすべての呼制御情報とメディアパケットを通過させるモニタポート付ハブ等のハードウェアがネットワーク上で構成されるグループ毎に必要となり、このようなモニタポートを備えないハードウェアによって構築されたネットワークでは通話内容を記録できない不便さがある。また、モニタポート付ハブが使用されていたとしても、例えば端末が多段にカスケード接続されているような場合には、通話する両電話端末の接続位置によっては記録装置を接続したハブをパケットが通過せず、通話内容を記録できないケースも生じ得る。
【0009】
さらに、従来のシステムでは、通話内容の記録を行う電話端末間のメディアパケットが通過する箇所を確認しその場所に記録装置を設置する必要があるから、特にネットワーク規模が大きい場合には、設置箇所の煩雑な検討が必要となり、ネットワーク構成を変更する場合にはそのたびごとに記録装置の設置箇所の再検討が必要となる。
【0010】
一方、前記特許文献に記載の方法では、記録要求があったときにメディアパケットの伝送経路を通話内容記録装置経由に切り換える機能を呼制御装置に加える必要があり(特許文献1)、また電話端末自体にメディアパケットを通話内容記録装置に転送する手段が新たに必要となる(特許文献2)など、既存のIP電話システムにおけるハードウェアの変更が必要となる難がある。また、特許文献3および4記載の方法では、ネットワークを流れるすべてのパケットを収集して解析し蓄積するものであるから、上述した現行の一般的な通話内容記録システムと基本的に同じものであり同様の問題が生じ得る。
【0011】
したがって、本発明の目的は、既存のIP電話システムやネットワークへの影響を極力抑え、システムやネットワークの構成に関係なくより簡便に通話内容を記録できるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係るIP電話システムは、IPネットワークに接続され呼制御を行う呼制御装置と、前記IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより前記IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置とを備えたIP電話システムであって、前記通話内容記録装置は、前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報、ならびに前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報をそれぞれ中継すると共に、前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継する一方、前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録する。
【0013】
また、本発明に係る通話内容記録装置は、IPネットワークに接続され当該IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより当該IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置であって、前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報、ならびに前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報をそれぞれ中継すると共に、前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継する一方、前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録する。
【0014】
さらに本発明に係る通話方法は、IPネットワークに接続され呼制御を行う呼制御装置と、前記IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより前記IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置とを使用して前記電話端末間で通話を行う方法であって、前記通話内容記録装置が、前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報を中継するステップと、前記通話内容記録装置が、前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報を中継するステップと、前記通話内容記録装置が、前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継するステップと、前記通話内容記録装置が、前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録するステップとを含む。
【0015】
本発明では、従来のIP電話システムと同様に呼制御装置が電話端末間を仲介して電話をかける側の電話端末(発信端末)と電話を受ける側の電話端末(着信端末)との間に呼を確立し、両端末間でメディアパケットをやり取りすることにより通話を行うものであるが、これら三者(呼制御装置、発信端末および着信端末)間で送受信される呼制御情報ならびにメディアパケットを通話内容記録装置へ一旦送信させ、通話内容記録装置がこれらを本来の送信先である装置又は端末に転送する処理を行う。そして、この呼制御情報およびメディアパケットの中継を通じて通話内容記録装置がメディアパケットを蓄積し、通話内容を記録する。
【0016】
なお、上記「メディアパケット」とは、典型的には、音声データを含む音声パケットを意味するがこれに限られず、画像データ(動画や静止画)を含む画像パケットなど、特にRTP(Real-time Transport Protocol)等のプロトコルに従ってリアルタイムに伝送される各種のデータパケットが含まれ、本発明によればこれらメディアパケットにより伝送される音声や画像、テキストなど各種のデータを通話内容記録装置によって記録し保存することが可能である。したがって、本発明において「通話」とは、音声通話に限られず、いわゆるテレビ電話などの画像を伴う通信等が含まれる。
【0017】
また、上記のような通話内容記録装置による中継処理は、各電話端末の登録処理(レジスタ登録)を行うときに、各電話端末に対して、通話内容記録装置が呼制御装置(登録サーバ)であるとしてその位置情報(IPアドレス)を予め設定しておき、電話端末から送信される登録要求を通話内容記録装置が中継して各電話端末を代理すると共に、呼の確立時に呼制御の電文を書き換えることにより、すなわち、呼制御情報(メッセージ)を受信した通話内容記録装置が、受信したメッセージに含まれる送信元の位置情報(IPアドレスや送信元が指定してきた受信ポート)を自身の(通話内容記録装置の)位置情報に書き換えて当該メッセージを送信先(宛先)に転送することにより実現することが出来る。
【0018】
なお、通話内容記録装置は、上記のように複数の発信元からのメッセージやメディアパケットを異なる立場で(呼制御装置として、発信端末として、あるいは着信端末として)受信し、それらに含まれる送信元の位置情報を自身の位置情報に書き換えて転送するが、このような中継処理においては、例えば、呼制御装置からの着信端末宛てメッセージと、呼制御装置からの発信端末宛てメッセージとで異なる受信ポートを使用し、あるいは発信端末からのメディアパケットと、着信端末からのメディアパケットとで異なる受信ポートを用いるなど、各メッセージやメディアパケットの転送にあたって通話内容記録装置は、それぞれ異なる受信ポート番号を指定し(書き換え)使用することで複数の端末および呼制御装置間における中継処理を行う。
【0019】
また、これらの処理の詳細は、後に述べる実施形態の説明においてさらに具体的に述べる。
【0020】
また本発明において、上記電話端末は、必ずしもパケット処理機能を内蔵したIP電話機端末である必要はなく、例えば、パケット処理機能を内蔵していない一般電話機にIP電話用のアダプタを接続したものや、IP電話ソフトウエアで動作するパーソナルコンピュータ等であっても良い。さらに当該電話端末には、他のネットワーク(例えば公衆回線交換網や携帯電話網など)に接続された電話端末との間で通話を可能とするために音声データ等のメディアデータとIPパケット間の変換機能を備えたゲートウエイ等の機器が含まれる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、モニタポート付ハブのようなハードウェアを必要とせず、簡易な構成でネットワーク構造に関係なく通話内容を記録することが出来る。
【0022】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基づいて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るIP電話システムを示す図である。
【図2】図2は、前記実施形態のIP電話システムにおける通話動作を示す図である。
【図3】図3は、従来の通話内容記録機能を備えた一般的なIP電話システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係るIP電話システムは、図1に示すように、LAN(IPネットワーク)1に接続された複数のIP電話端末15,16(図では2台しか示していないが多数(3台以上)あって勿論良い)と、同じくLAN1に接続されてこれら電話端末15,16間の呼制御を行う呼制御装置12と、メディアパケットから音声データや画像データを得て通話内容の記録を行う通話内容記録装置13と、音声データや画像データとIPパケット間の変換機能を有し、一般電話網とLAN1とを接続して公衆回線交換網2や携帯電話網3に接続された電話端末4,5との間で通話を可能とするゲートウエイ17とを備えている。また、通話内容記録装置(以下、単に「記録装置」と言う)13はLAN1に接続され、通話データを格納する通話内容記憶部14を有する。
【0025】
本実施形態のIP電話システム11では、通信プロトコルとしてSIP(Session Initiation Protocol)を使用する。したがって呼制御装置12は、当該プロトコルに基づいて呼制御を行うSIPサーバである。このSIPサーバ(呼制御装置)12は、本実施形態では、各電話端末の登録機能を備えた登録サーバ(レジストラ)としての機能と、通話先の位置情報を格納したデータベースを備えて通話要求があったときに通話先の位置情報を提供するロケーションサーバとしての機能を有するが、これらの機能を備えたサーバを別に設けてこれら複数のサーバにより本発明に言う呼制御装置を実現するようにしても良い。
【0026】
本実施形態では、従来のIP電話システムと同様に呼制御装置12が電話端末15,16間を仲介して発信端末15と着信端末16間に呼を確立し、両端末15,16間でメディアパケットをやり取りすることにより通話を行うものであるが、これら三者(呼制御装置12、発信端末15および着信端末16)間で送受信される呼制御情報ならびにメディアパケットをすべて記録装置13へ一旦送信させ、記録装置13がこれらを本来の送信先である呼制御装置12又は電話端末15,16に転送する。また、この呼制御情報およびメディアパケットの中継を通じて記録装置13がメディアパケットを蓄積し通話内容を記録する。このような中継処理を行わせるための具体的な手順は、次のとおりである。
【0027】
〔呼制御装置への電話端末の登録〕
図2も参照して、まず、各電話端末15,16に対して、記録装置13が呼制御装置(登録サーバ)12であるとしてその位置情報(IPアドレス)を予め設定しておく。これにより、各電話端末15,16からの登録要求は、呼制御装置12ではなく記録装置13へ送信される。電話端末15,16のレジスタ登録(位置情報登録)にあたって記録装置13は、電話端末15,16から送信されてきた登録要求を受信し、この登録要求に含まれる電話端末15,16の位置情報を自身(記録装置13)の位置情報(IPアドレスおよび受信ポート)に書き換え、呼制御装置12へ転送する。これにより、呼制御装置12は、記録装置13が当該電話端末15,16であると認識し、登録された各電話端末15,16に対して呼制御装置12から送り出される呼制御情報は、記録装置13へ送信されることとなる。
【0028】
なお、このような電話端末15,16の登録処理は、IP電話システム11を新規に構築する場合に限らず、電話端末を新たに追加したときにも当該電話端末について同様に行う。また、公衆回線交換網2や携帯端末網3との間の仲介を行い、外線(一般固定電話4や携帯電話端末5等)との通話を可能とするゲートウエイ17に対しても上記電話端末15,16と同様な処理を行っておく(後述する通話処理時も同様)。
【0029】
〔通話処理〕
通話にあたっては、呼の確立時に呼制御情報(メッセージ)を受信した記録装置13が、受信したメッセージに含まれる送信元の位置情報(IPアドレスや送信元が指定してきた受信ポート)を自身の(記録装置13の)位置情報に書き換えて当該メッセージを送信先(宛先)に転送する。具体的には、次のとおりである。
【0030】
まず、発信端末15は通話要求(呼の確立要求メッセージ/例えばINVITE)を送信するが、上記のように記録装置13が呼制御装置12であるとしてその位置情報を予め設定してあるから、このメッセージは記録装置13へ送信される。記録装置13は、受信した通話要求の位置情報(送信元IPアドレス及び受信ポート番号)を自身の(記録装置13の)位置情報(IPアドレスおよび特定の受信ポート番号)に書き換えて呼制御装置12へ転送する。なお、このとき発信端末15から送信される認証データはそのまま呼制御装置12へ転送される。
【0031】
通話要求(INVITEリクエスト)を受信した呼制御装置12は、受信した認証データに基づいてユーザ認証を行った後、登録されている電話端末の位置情報をデータベースから検索して通話先(着信端末16)の位置情報を得る。この位置情報は、前記各電話端末15,16の登録処理によって記録装置13のもの(記録装置13のIPアドレスと別の特定の受信ポート番号)となっているから、呼制御装置12は着信端末16宛ての通話要求を記録装置13へ送信する。なお、通話要求に係る電話番号が一般電話網2,3のものである場合などデータベースにない場合には、呼制御装置12はゲートウエイ17宛てに通話要求を転送し、ゲートウエイ17がこれを処理するが、この場合も、前述のようにゲートウエイ17の位置情報として記録装置13の位置情報を登録してあるから、当該通話要求は記録装置13によって中継されゲートウエイ17に送信されることなる。
【0032】
また呼制御装置12は、通話要求を受け取り処理していることを通知するレスポンス(例えば100 Trying)を発信端末15宛てに送信するが、呼制御装置12は記録装置13が発信端末15であると認識しているため、当該レスポンスは記録装置13へ送信され、その後、記録装置13によって中継されて発信端末15へ転送される。
【0033】
なお、記録装置13は、呼制御メッセージやメディアパケットを複数の発信元(呼制御装置12、発信端末15および着信端末16)から異なる立場で(呼制御装置12として、発信端末15として、あるいは着信端末16として)受信し、受信したメッセージに含まれる送信元の位置情報(IPアドレスや送信元が指定してきた受信ポート番号)を自身の位置情報(記録装置13のIPアドレス及び特定の受信ポート番号)に書き換えて当該メッセージを送信先(宛先)へ転送するが、このような処理において記録装置13は、例えば上記呼制御装置12からの着信端末宛てメッセージと、呼制御装置12からの発信端末15宛てメッセージとでは異なる特定の受信ポートを使用し、あるいは後に述べる発信端末15からのメディアパケットと、着信端末16からのメディアパケットとでは異なる特定の受信ポートを用いるなど、各メッセージやメディアパケットの転送にあたって記録装置13は、それぞれ異なる特定の受信ポート番号を指定し(書き換え)使用することで、複数端末15,16および呼制御装置12間における中継処理を行う。
【0034】
呼制御装置12から着信端末16宛ての通話要求(INVITE)を受信した記録装置13は、このリクエストメッセージを着信端末16へ転送する。着信端末16は、このリクエストに応えて呼び出しを行っていることを通知するためのレスポンス(例えば180 Ringing)を送信する。このレスポンスは、呼制御装置12の位置情報として記録装置13の位置情報(記録装置13のIPアドレスと特定の受信ポート番号)が着信端末16に設定されているため、記録装置13へ送信され、記録装置13は当該レスポンスを呼制御装置12へ転送する。呼制御装置12は、当該レスポンスを発信端末15宛てに送信するが、呼制御装置12から見て発信端末15は記録装置13であるからこれも記録装置13が受信することとなる。記録装置13は、当該受信したレスポンス(180 Ringing)を発信端末15へ転送する。
【0035】
着信端末16において受話器が取られると、着信端末16は、通話要求を受け付けたことを通知するレスポンス(例えば200 OK)を呼制御装置12宛てに送信する。着信端末16から見て呼制御装置12は記録装置13であるから、このレスポンスは記録装置13へ送られ、記録装置13は当該レスポンス(200 OK)を呼制御装置12へ転送する。なおこのとき、記録装置13は、着信端末16の通話に係る位置情報(すなわち、着信端末16のメディア送受信に係る位置情報)を自身の位置情報に書き換えて呼制御装置12へ転送する。呼の確立後に発信端末15からのメディアパケットが着信端末16へ直接送信されることを防ぎ、当該メディアパケットを記録装置13に送信させるためである。
【0036】
呼制御装置12は、上記通話要求を受け付けたことを通知するレスポンス(200 OK)を発信端末15宛てに転送するが、呼制御装置12から見て発信端末15は記録装置13であるからこれも記録装置13が受けることとなる。記録装置13は、受信した当該レスポンス(200 OK)を発信端末15へ転送する。発信端末15は、着信端末16からのレスポンスを受け取ったことを確認するためのメッセージ(例えばACK)を着信端末16宛てに送信するが、このメッセージも記録装置13によって中継される。
【0037】
これにより呼が確立され、以降、メディアパケット(RTPパケット)が発信端末15と着信端末16との間でやり取りされるが、発信端末15から見て着信端末16は記録装置13であり、着信端末16から見て発信端末15は記録装置13であるから、これらのメディアパケットはいずれも記録装置13へ送られ、記録装置13はこれらを通話相手先15,16へ転送する。
【0038】
そして、記録装置13は、これらのメディアパケットから音声データや画像データを得ることにより通話内容を記録する。また記録装置13はこれら音声データ等の通話データを、呼制御情報から得た属性情報、例えば、通話当事者を特定する情報(発信元と着信先の電話番号やアドレス、ユーザ名など)、通話日時、通話時間などと共に(これら属性情報と関連付けて)通話内容記憶部14に格納する。そして、この通話内容記憶部14に保存された通話内容は、後に、上記属性情報(例えば発信者電話番号や通話日時など)を鍵として整理したり参照(再生)するなど様々な処理や利用を行うことが可能である。
【0039】
上記実施形態ないし本発明の利点を纏めて述べれば次のとおりである。
(1) 通話内容記録装置が、各電話端末に対して呼制御装置又は通話相手方端末になりすまして呼制御情報およびメディアパケットを送信して貰い、呼制御装置に対しては各電話端末になりすまして呼制御情報を送信して貰って中継を行うから、すべての呼制御情報とメディアパケットが通話内容記録装置を通過することとなり、これによりモニタポート付ハブのようなハードウェアを特に必要とせず、両端末は通話内容記録装置の存在を意識することなくかつ通話内容を保存することが出来る。
(2) 従来では通話内容を記録するためにセグメント毎等に必要な箇所(メディアパケットが通過する場所)へモニタポート付ハブ等を設置する必要があったが、このような機器が不要となるため、ハードウェアの敷設条件の問題やハードウェアが分散する問題、ハードウェアへの依存の問題などがなくなり、通話内容を記録するためのシステムを簡潔化できる。
【0040】
(3) 通話内容記録装置独自の制御情報や信号を使用することがなく、また認証データについても呼制御装置にそのまま渡すため、既設のIPネットワークやハードウェアを変更する必要がなく、認証管理方法を変える必要もない。
(4) 通話内容記録装置を通過する呼制御情報を元にしてメディアパケットから音声等の通話データ部分のみを抽出して呼毎に保存することができ、さらに、自分側の通話データと相手側の通話データを分離して保存することも可能である。
【0041】
(5) 複数のIP電話端末間の呼制御パケットとメディアパケットの両方共が通話内容記録装置を通過しても、各々のIP電話端末がどのIP電話端末と通話しているかは呼制御パケットの情報から容易に判断できるため、記録すべきIP電話端末間のメディアパケットを容易に抽出して保存することが出来る。
(6) 本発明において通話内容記録装置は呼制御装置と一体に構成する(呼制御装置に当該機能を付加する)ことも可能であるが、呼制御装置と別個独立した装置とすれば、既に呼制御装置が設置され稼動しているIP電話システムに対して、呼制御装置を交換することなく現在稼動している呼制御装置をそのまま生かして通話内容記録装置だけを導入することにより(したがって低コストに)通話内容の記録を可能にすることが出来る。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0043】
例えば、本発明において通話内容記録装置は、必ずしもすべてのメディアパケットを蓄積して通話内容の記録を行う必要はなく、予め設定した特定の通話のみを(例えば記録を行う通話を特定するためのリスト(テーブル)を参照して特定の電話番号やIPアドレスの電話端末に係る通話のみを)記録するような処理を行うことも可能である。また、特定の1台又は複数台の電話端末による通話をすべて記録するようにしたり、或る特定の電話端末と或る特定の電話端末との間についてのみ(つまり、発信端末と着信端末の特定の1つ又は複数の組についてのみ)記録を行うなど、記録対象の設定を柔軟に変更することも可能である。
【0044】
さらに、記録する必要がない電話端末については、呼制御装置への端末の登録にあたって通話内容記録装置を通すことなく、従来と同様に呼制御装置へ直接、当該電話端末の位置情報の登録を行えば、通話内容記録装置を通すことなく、通常の呼制御およびメディアパケット伝送により通話を行うことが出来る。
【0045】
また、通信プロトコルはSIPに限られず、他のプロトコルによるものであっても良い。要は、発信側電話端末宛て、着信側電話端末宛て並びに呼制御装置宛ての呼制御情報およびメディアパケットに含まれる送信先に関する情報を、通話内容記録装置の位置情報に設定し又は書き換えることにより、呼制御時および通話中に、発信側電話端末と呼制御装置との間、呼制御装置と着信側電話端末との間、ならびに発信側電話端末と着信側電話端末との間で伝送される呼制御情報およびメディアパケットを通話内容記録装置が中継できれば良い。言い換えれば、通話内容記録装置が、発信側電話端末と着信側電話端末に対しては呼制御装置になりすまして呼制御装置宛ての呼制御情報を受信しかつこれを呼制御装置へ転送し、着信側電話端末と呼制御装置に対しては発信側電話端末になりすまして発信側電話端末宛ての呼制御情報およびメディアパケットを受信しかつこれを発信側電話端末へ転送し、発信側電話端末と呼制御装置に対しては着信側電話端末になりすまして着信側電話端末宛ての呼制御情報およびメディアパケットを受信しかつこれを着信側電話端末へ転送する。そしてこのような中継処理を行うことによって通話内容記録装置は、前記受信した発信側電話端末宛てのメディアパケットと着信側電話端末宛てのメディアパケットから音声データ等の通話データを取得して通話内容を記録する。
【0046】
また、本発明において通話内容記録装置は1台に限られず、例えば通話内容記録装置を複数台設けて処理を分散させ、処理負荷を軽減することも可能である。この場合、電話端末をグループ分けして各グループ毎に呼制御情報およびメディアパケットを中継する上記通話内容記録装置を1台ずつ割り当てるようにすれば良い。
【0047】
また、本発明においては、盗聴を防ぐため、IPネットワークを流れる前記呼制御情報およびメディアパケットを暗号化するようにしても良い。この場合、暗号化の方式は、例えば共通鍵方式や公開鍵方式を用いることが出来る。さらに、予め定められた電話番号に発呼しこれを通話内容記録装置が検知することにより電話端末上での通話内容記録をオンオフできるようにしたり、通話中に通話内容記録装置に登録したIP電話端末からあらかじめ指定されているPBトーンを流すことによって記録の一時停止および再開操作を行えるようにするなど、様々な付加的な機能を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 IPネットワーク(LAN)
2 公衆回線交換網
3 携帯端末網
4 一般固定電話端末
5 携帯電話端末
11 IP電話システム
12 呼制御装置(SIPサーバ)
13,23 通話内容記録装置
14 通話内容記憶部
15,16 IP電話端末
25 ハブ
25a モニタポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IPネットワークに接続され呼制御を行う呼制御装置と、
前記IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより前記IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置と、
を備えたIP電話システムであって、
前記通話内容記録装置は、
前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報、ならびに前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報をそれぞれ中継すると共に、
前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継する一方、
前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録する
ことを特徴とするIP電話システム。
【請求項2】
IPネットワークに接続され当該IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより当該IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置であって、
前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報、ならびに前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報をそれぞれ中継すると共に、
前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継する一方、
前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録する
ことを特徴とする通話内容記録装置。
【請求項3】
IPネットワークに接続され呼制御を行う呼制御装置と、前記IPネットワークを伝送されるメディアパケットを取り込むことにより前記IPネットワークを介した電話端末間の通話内容を記録する通話内容記録装置とを使用して前記電話端末間で通話を行う方法であって、
前記通話内容記録装置が、前記電話端末のうち発信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報を中継するステップと、
前記通話内容記録装置が、前記電話端末のうち着信側電話端末と前記呼制御装置との間で伝送される呼制御情報を中継するステップと、
前記通話内容記録装置が、前記発信側電話端末と前記着信側電話端末との間で伝送されるメディアパケットを中継するステップと、
前記通話内容記録装置が、前記発信側電話端末および前記着信側電話端末からそれぞれ受信した各メディアパケットを蓄積することにより当該電話端末間で行われる通話の内容を記録するステップと
を含むことを特徴とする通話方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−71853(P2011−71853A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222401(P2009−222401)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(507385545)株式会社インテリボイス (5)
【Fターム(参考)】