説明

IP電話機、IP電話交換機、および通話録音方法

【課題】発話者を容易に特定可能なIP電話の録音技術を提供する。
【解決手段】IP電話機1は、IP電話交換機2から受信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージを用いて録音対象の指定を受け付け、通話パスがオープンした場合に、この指定により特定される音声データの録音を開始し、この通話パスがクローズした場合に、この指定により特定される音声データの録音を終了する。また、IP電話機1は、IP電話交換機2から受信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージにより音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定を受け付け、指定された送信プロトコルを用いて、指定された送信先に音声ファイルデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話の通話録音技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、各拠点に配置された通話録音装置に蓄積された通話データを共有化する技術が開示されている。この技術では、IP電話網上に配置された管理装置を経由して、各拠点に配置された通話録音装置間でアドレス情報を交換することにより、通話録音装置が目的の端末に通話データの取得用情報を送信できるようにしている。
【0003】
この技術において、第一の通話録音装置は、配下の端末である第一の端末から、第二の端末の電話番号を含む通話データ配布要求を受信すると、この電話番号を含むアドレス確認要求を管理装置に送信する。管理装置は、アドレス確認要求を受信すると、このアドレス確認要求に含まれている電話番号を持つ第二の端末を配下とする第二の通話録音装置のアドレスを取得し、この第二の通話録音装置にアドレス確認要求を転送する。第二の通話録音装置は、アドレス確認要求を受信すると、このアドレス確認要求に含まれている電話番号に基づき第二の端末のアドレスを取得し、このアドレスを第一の通話録音装置に送信する。第一の通話録音装置は、このアドレスにより特定される第二の端末に対して、自通話録音装置に蓄積された通話データの取得用情報を送信する。
【0004】
また、特許文献2には、IP電話の通話を簡単に録音できる技術が開示されている。この技術では、サウンドDLLとサウンドカードのデバイスドライバとの間でやり取りされるサウンドデータをフッキングするフッキングプログラムモジュールを用いて、このサウンドデータをフッキングし蓄積する。これにより、IP電話に採用されているプロトコルを知らなくても通話データを録音できる。
【特許文献1】特開2006−222812号公報
【特許文献2】特開2005−57511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、IP電話は通常の電話に比べ音声品質が悪い。このため、IP電話の録音データからでは、例えば当事者双方の発言が重なった場合に、それがどちらの発言なのかの判断が困難なことがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、発話者を容易に特定可能なIP電話の録音技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明では、IP電話機において、送話データおよび受話データを別々に録音できるようにした。
【0008】
例えば、本発明は、録音機能を備えたIP電話機であって、
ハンドセットに音声入力された音声データおよび前記ハンドセットから音声出力される音声データを、それぞれ送話データ、受話データとして録音する録音手段と、
録音対象の指定を受け付ける受付手段と、を有し、
前記録音手段は、
前記受付手段で受け付けた指定により特定される前記音声データを録音する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、IP電話機において、送話データおよび受話データを別々に録音できるので、発話者を容易に特定可能なIP電話の録音技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態が適用されたIP電話システムの概略構成図である。
【0012】
図示するように、本実施の形態のIP電話システムは、複数の拠点(拠点A、B)がIP網8に接続されて構成されている。各拠点A、Bには、LAN7に接続された複数のIP機器1〜6が配置される。ここで、IP機器1はIP電話機であり、IP機器2はIP電話交換機であり、IP機器3はパーソナルコンピュータ(PC)であり、そして、IP機器4はファイルサーバである。また、IP機器5は、LAN7をIP網8に接続するルータであり、IP機器6は、LAN7を公衆回線網(PSTN)9に接続するVoIPゲートウェイである。
【0013】
図1において、IP電話機1は、通話パスがオープンすると、IP電話交換機2の指示に従い、送話および受話の少なくとも一方の録音を開始し、通話パスがクローズすると、この録音を終了する。そして、この録音された音声データに、自IP電話機1の電話番号、通話相手の電話番号、音声データの種別(後述の送話データか受話データか)、録音日時等の属性情報を付加することによって音声ファイルデータを生成し、これを所定の宛先(PC3、ファイルサーバ4等)に送信する。
【0014】
図2は、IP電話機1の概略構成図である。
【0015】
図示するように、IP電話機1は、ネットワークインターフェース部11と、マンマシン(MM)インターフェース部12と、呼制御処理部13と、通話処理部14と、録音・再生部15と、音声ファイル記憶部16と、ファイル送信部17と、を有する。
【0016】
ネットワークインターフェース部11は、自IP電話機1をLAN7に接続するためのインターフェースである。
【0017】
MMインターフェース部12は、LCD等の表示パネル、スピーカ、マイク等のハンドセット121、およびダイヤルキー、ファンクションキー等の操作パネルを備えたマンマシンインターフェースである。
【0018】
呼制御処理部13は、SIP(Session Initiation Protocol)等のプロトコルに従い呼制御処理を行って、通話相手との間の通話パスをオープンおよびクローズする。また、呼制御処理部13は、IP電話交換機2から受信した通話パスオープン要求の呼制御メッセージおよび通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを録音・再生部15に渡す。このとき、少なくとも一方の呼制御メッセージには通話相手の電話番号を付加し、それを録音・再生部15に渡す。
【0019】
通話処理部14は、RTP(Realtime Transport Protocol)等のプロトコルに従い音声通信処理を行う。図示するように、通話処理部14は、受話処理部141と、DA変換部142と、AD変換部143と、送話処理部144と、を有する。
【0020】
受話処理部141は、呼制御処理部13により確立された通話パスを介して通話相手から通話データを受信し、これをデジタル音声データ(受話データと呼ぶ)に復調してDA変換部142に渡す。DA変換部142は、受話処理部141から受け取った受話データをアナログ音声信号に変換して、これをハンドセット121のスピーカから出力する。
【0021】
AD変換部143は、ハンドセット121のマイクで集音されたアナログ音声信号をデジタル音声データ(送話データと呼ぶ)に変換して送話処理部144に渡す。送話処理部144は、AD変換部143から受け取った送話データを通話データに変調し、これを、呼制御処理部13により確立された通話パスを介して通話相手に送信する。
【0022】
録音・再生部15は、呼制御処理部13より通話パスオープン要求の呼制御メッセージを受信すると、この呼制御メッセージで指定されている種別の音声データ(通話処理部14が出力する送話データおよび/または受話データ)の録音を開始する。
【0023】
また、録音・再生部15は、呼制御処理部13より通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受信すると、音声データの録音を終了する。そして、この録音された音声データに属性情報を付加して音声ファイルデータを作成し、これを音声ファイル記憶部16に記憶する。また、ファイル送信部17に対して、呼制御処理部13より受信した通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを転送する。
【0024】
また、録音・再生部15は、MMインターフェース部12を介してユーザより受け付けた指示に従い、音声ファイル記憶部16から音声ファイルデータを読み出して再生し、その再生信号を、MMインターフェース部12に設けられたスピーカから音声出力する。
【0025】
音声ファイル記憶部16には、音声ファイルデータが記憶される。図3(A)は、音声ファイル記憶部16に記憶される音声ファイルデータのフォーマットを模式的に表した図である。図示するように、音声ファイルデータは、音声データ161に属性情報162が付加されて構成される。属性情報162は、録音日時(録音開始日時および録音終了日時)1621、自IP電話機1の電話番号1622、呼制御処理部13より通知された通話相手の電話番号1623、および音声データの種別(送話データか受話データか)1624を含む。なお、属性情報162の一部(例えば自IP電話機1の電話番号1622と録音日時1621との組み合わせ)は、音声ファイルデータのファイル名として利用することができる。
【0026】
ファイル送信部17は、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを呼制御処理部13より受信すると、この呼制御メッセージで指定されている送信プロトコルを用いて、音声ファイル記憶部16に新たに記憶された音声ファイルデータを、この呼制御メッセージで指定されている送信先(宛先アドレス)に送信する。
【0027】
図4は、IP電話機1の通話録音処理を説明するための図である。
【0028】
録音・再生部15は、通話パスオープン要求の呼制御メッセージを呼制御処理部13から受け取ると(S101でYES)、この呼制御メッセージにおいて録音対象音声データの種別として「送話」が指定されているか否かを判断する(S102)。「送話」が指定されているならば(S102でYES)、録音・再生部15は、AD変換部143から出力される送話データの録音を開始する(S103)。
【0029】
また、録音・再生部15は、この呼制御メッセージにおいて録音対象音声データの種別として「受話」が指定されているか否かを判断する(S104)。「受話」が指定されているならば(S104でYES)、受話処理部141から出力される受話データの録音を開始する(S105)。
【0030】
次に、録音・再生部15は、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを呼制御処理部13から受け取ると(S106でYES)、録音中の音声データ(送話データおよび/または受話データ)の録音を終了する(S107)。そして、録音を終了した音声データの各々について、図3(A)に示すように、この音声データ161に属性情報162を付加した音声ファイルデータを作成し、これを音声ファイル記憶部16に記憶する(S108)。
【0031】
それから、録音・再生部15は、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージをファイル送信部17に渡す。これを受けて、ファイル送信部17は、この呼制御メッセージにおいて音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)が指定されているか否かを判断する(S109)。宛先アドレスが指定されているならば(S109でYES)、この呼制御メッセージで指定されている送信プロトコルを用いて、音声ファイル記憶部16に新たに記憶された音声ファイルデータを、この宛先アドレスに送信する(S110)。例えば、指定されている送信プロトコルがFTPならば、FTPを用いて、宛先アドレス(IPアドレス)に音声ファイルデータを送信する。また、指定されている送信プロトコルがSMTPならば、SMTPを用いて、宛先アドレス(メールアドレス)に音声ファイルデータを電子メールの添付ファイルとして送信する。
【0032】
図1に戻って説明を続ける。IP電話交換機2は、各拠点A、Bに配置されたIP電話機1を収容しており、SIP等のプロトコルに従い呼制御処理を行って、これらのIP電話機1とIP電話機1との間、あるいはIP電話機1と公衆回線網9との間における通話パスのオープンおよびクローズを制御する。また、IP電話交換機2は、呼制御メッセージを用いて、IP電話機1に録音対象音声データの種別と、音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルとを通知する。
【0033】
図5は、IP電話交換機2の概略構成図である。
【0034】
図示するように、IP電話交換機2は、ネットワークインターフェース部21と、局データ記憶部22と、呼制御処理部23と、指定挿入部24と、を有する。
【0035】
ネットワークインターフェース部21は、自IP電話交換機2をLAN7に接続するためのインターフェースである。
【0036】
局データ記憶部22には、自IP電話交換機2の局データが記憶されている。
【0037】
呼制御処理部23は、局データ記憶部22に記憶されている局データを参照して、SIP等のプロトコルに従い呼制御処理を行って、IP電話機1とIP電話機1との間、あるいはIP電話機1と公衆回線網9と間の通話パスのオープンおよびクローズを制御する。
【0038】
指定挿入部24は、呼制御メッセージを用いて、IP電話機1に、録音対象音声データの種別と、音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルとを通知する。
【0039】
具体的には、指定挿入部24は、IP電話機1に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージに、録音対象音声データの種別の指定を挿入する。通話パスオープン要求の呼制御メッセージの送信先が両方(発信側および着信側)ともIP電話機1である場合、一方のIP電話機1へ送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージに、送話データおよび受話データの何れか一方のデータの指定を挿入し、他方のIP電話機1へ送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージにも、それと同じデータの指定を挿入する。通話パスオープン要求の呼制御メッセージの送信先の一方がIP電話機1であり、他方が公衆回線網9側である場合、このIP電話機1へ送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージに、送話データおよび受話データの両データの指定を挿入する。公衆回線網9側へ送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージには、録音対象音声データの種別の指定を挿入しない。
【0040】
また、指定挿入部24は、IP電話機1に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに、音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する。
【0041】
図6は、IP電話交換機2の指定挿入処理を説明するためのフロー図である。
【0042】
呼制御処理部23は、ネットワークインターフェース部21を介してIP電話機1から発信要求(オフフック信号)を受信すると(S201でYES)、SIP等のプロトコルに従い呼制御処理を開始する。また、発信要求を、この呼制御処理においてIP電話機1から取得したダイヤル情報とともに指定挿入部24に通知する。
【0043】
これを受けて、指定挿入部24は、局データ記憶部22を参照し、呼制御処理部23から受け取ったダイヤル情報により特定される着信側がIP電話機1であるか否かを判断する(S202)。
【0044】
着信側がIP電話機1でない場合、つまり着信側が公衆回線網9側である場合は(S202でNO)、S209に進む。
【0045】
一方、着信側がIP電話機1である場合(S202でYES)、指定挿入部24は、発信側および着信側のIP電話機1各々に対して同じ録音対象音声データの種別を通知するものとし、この録音対象音声データの種別を「送話」および「受話」の何れか一方に決定する(S203)。
【0046】
それから、指定挿入部24は、呼制御処理部23において、発信側および着信側のIP電話機1の各々に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージが生成されるのを待つ(S204)。これらの呼制御メッセージが生成されたならば(S204でYES)、指定挿入部24は、これらの呼制御メッセージ各々に、決定した録音対象音声データの種別の指定を挿入する(S205)。呼制御処理部23は、通話パスをオープンするために、以上のようにして録音対象音声データの種別の指定が挿入された通話パスオープン要求の呼制御メッセージを、発信側および着信側のIP電話機1の各々に送信する。
【0047】
また、指定挿入部24は、呼制御処理部23において、発信側および着信側のIP電話機1の各々に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージが生成されるのを待つ(S206)。これらの呼制御メッセージが生成されたならば(S206でYES)、指定挿入部24は、これらの呼制御メッセージ各々に、予め設定された音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する(S207)。呼制御処理部23は、通話パスをクローズするために、以上のようにして音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定が挿入された通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを、発信側および着信側のIP電話機1の各々に送信する。
【0048】
また、呼制御処理部23は、ネットワークインターフェース部21を介してVoIPゲートウェイ6(公衆回線網9)から着信要求を受信すると(S208でYES)、SIP等のプロトコルに従い呼制御処理を開始する。また、着信要求を指定挿入部24に通知して、S209に進む。
【0049】
さて、S209において、指定挿入部24は、録音対象音声データの種別を「送話」および「受話」の双方に決定する。
【0050】
そして、指定挿入部24は、呼制御処理部23において通話パスオープン要求の呼制御メッセージが生成されるのを待つ(S210)。具体的には、S202でNOであったときには、呼制御処理部23において、発信側のIP電話機1に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージが生成されるのを待ち、S208でYESであったときには、呼制御処理部23において着信側のIP電話機1に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージが生成されるのを待つ。
【0051】
そして、この呼制御メッセージが生成されたならば、この呼制御メッセージに、決定した録音対象音声データの種別(「送話」および「受話」の双方)の指定を挿入する(S211)。呼制御処理部23は、通話パスをオープンするために、以上のようにして録音対象音声データの種別の指定が挿入された通話パスオープン要求の呼制御メッセージを、発信側のIP電話機1(S202でNOの場合)あるいは着信側のIP電話機1(S208でYESの場合)に送信する。ここで、VoIPゲートウェイ6(公衆回線網9)側に対しては、通常の(指定が含まれていない)通話パスオープン要求の呼制御メッセージを送信する。
【0052】
また、指定挿入部24は、S202でNOであったときには、呼制御処理部23において発信側のIP電話機1に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージが生成されるのを待ち、S207でYESであったときには、呼制御処理部23において着信側のIP電話機1に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージが生成されるのを待つ(S212)。そして、この呼制御メッセージが生成されたならば(S212でYES)、指定挿入部24は、予め設定された音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する(S213)。呼制御処理部23は、通話パスをクローズするために、以上のようにして音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定が挿入された通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを、発信側のIP電話機1(S202でNOの場合)あるいは着信側のIP電話機1(S208でYESの場合)に送信する。VoIPゲートウェイ6(公衆回線網9)側に対しては、通常の(指定が含まれていない)通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを送信する。
【0053】
次に、本実施の形態のIP電話システムの動作例を説明する。
【0054】
図7は、あるIP電話機1が他のIP電話機1に発信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。ここで、発信側のIP電話機1をIP電話機A1、着信側のIP電話機1をIP電話機B1とする。
【0055】
IP電話機A1は、IP電話機B1との通話を開始するためにオフフックされ、ダイヤル情報が入力されると、発信要求(オフフック情報)およびダイヤル情報をIP電話交換機2に送信する(S301)。
【0056】
IP電話交換機2は、IP電話機A1から発信要求およびIP電話機B1のダイヤル情報を受信すると、IP電話機A1に呼出音を送信すると共に、IP電話機B1に着信要求を送信する(S302)。また、IP電話交換機2は、発信側および着信側の両方ともIP電話機1であることを確認し、発信側のIP電話機A1および着信側のIP電話機1B1の双方に通知する録音対象音声データの種別を「送話」および「受話」の何れか一方に決定する。ここでは「送話」に決定したものとする(S303)。
【0057】
IP電話機B1は、IP電話交換機2からの着信要求を受けて、着信音を出力する。そして、オフフックされると、着信応答(オフフック情報)をIP電話交換機2に送信する(S304)。
【0058】
IP電話交換機2は、IP電話機B1から着信応答を受信すると、発信側のIP電話機A1および着信側のIP電話機B1の双方に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージに、録音対象音声データの種別「送話」の指定を挿入する(S305)。それから、発信側のIP電話機A1および着信側のIP電話機B1のそれぞれに、録音対象音声データの種別「送話」の指定が挿入された通話パスオープン要求の呼制御メッセージを送信する(S306)。
【0059】
IP電話機A1は、IP電話交換機2から通話パスオープン要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機A1からIP電話機B1への通話パスをオープンする(S307)。同様に、IP電話機B1は、IP電話交換機2から通話パスオープン要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機B1からIP電話機A1への通話パスをオープンする(S308)。これにより、IP電話機A1とIP電話機B1との間に、双方向の通話パスが確立する。
【0060】
さて、IP電話機A1は、IP電話交換機2から受信した通話パスオープン要求の呼制御メッセージに含まれている指定「送話」に従い送話データを録音すると共に、IP電話機A1からIP電話機B1への通話パスを用いて送話データ(音声データ)をIP電話機B1に送信する。また、IP電話機B1からIP電話機A1への通話パスを介してIP電話機B1より受信した受話データ(音声データ)を再生する(S309)。
【0061】
同様に、IP電話機B1は、IP電話交換機2から受信した通話パスオープン要求の呼制御メッセージに含まれている指定「送話」に従い送話データを録音すると共に、IP電話機B1からIP電話機A1への通話パスを用いて送話データ(音声データ)をIP電話機A1に送信する。また、IP電話機A1からIP電話機B1への通話パスを介してIP電話機A1より受信した受話データ(音声データ)を再生する(S310)。
【0062】
その後、通話が終了し、IP電話機A1およびIP電話機B1の何れか一方がオンフックされると、切断要求(オンフック情報)がIP電話交換機2に送信される。ここでは、IP電話機A1がオンフックされ、IP電話機A1からIP電話交換機2に切断要求が送信されたものとする(S311)。
【0063】
IP電話交換機2は、IP電話機A1から切断要求を受信すると、発信側のIP電話機A1および着信側のIP電話機B1の双方に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに、予め設定されている音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する(S312)。ここでは、音声ファイルデータの送信先としてファイルサーバ4が指定され、音声ファイルデータの送信プロトコルとしてFTPが指定されているものとする。
【0064】
それから、IP電話交換機2は、発信側のIP電話機A1および着信側のIP電話機B1のそれぞれに、音声ファイルデータの送信先(ファイルサーバ4)のアドレス、音声ファイルデータの送信プロトコルの指定「FTP」が挿入された通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを送信する(S313)。
【0065】
IP電話機A1は、IP電話交換機2から通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機A1からIP電話機B1への通話パスをクローズする(S314)。同様に、IP電話機B1は、IP電話交換機2から通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機B1からIP電話機A1への通話パスをクローズする(S315)。これにより、IP電話機A1とIP電話機B1との間の双方向の通話パスが切断される。
【0066】
さて、IP電話機A1は、送話データの録音を終了すると共に、この送話データに属性情報を付加して音声ファイルデータを作成する。そして、IP電話交換機2から受信した通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信先であるファイルサーバ4へ、この呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信プロトコルであるFTPを用いて、作成した音声ファイルデータを送信する(S316)。
【0067】
同様に、IP電話機B1は、送話データの録音を終了すると共に、この送話データに属性情報を付加して音声ファイルデータを作成する。そして、IP電話交換機2から受信した通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信先であるファイルサーバ4へ、この呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信プロトコルであるFTPを用いて、作成した音声ファイルデータを送信する(S317)。
【0068】
なお、IP網側と通話パスをオープンする際に、IP電話機A1とIP電話機B1の通話を暗号化して行う場合には、呼制御メッセージを送信する際に(S306)、IP電話機A1から暗号化情報を呼制御メッセージに含めて送信し、IP電話機B1からの暗号化確認情報を受信して暗号化のプロトコルを確立し、その後の通話はIPパケットを暗号化して送受信するようにすればよい。
【0069】
図8は、あるIP電話機1が公衆回線網9側の電話機に発信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。ここで、発信側のIP電話機1をIP電話機A1とし、公衆回線網9(VoIPゲートウェイ6)側の電話機を電話機Cとする。
【0070】
IP電話機A1は、電話機Cとの通話を開始するためにオフフックされ、ダイヤル情報が入力されると、発信要求(オフフック情報)およびダイヤル情報をIP電話交換機2に送信する(S321)。
【0071】
IP電話交換機2は、IP電話機A1から発信要求および電話機Cのダイヤル情報を受信すると、IP電話機A1に呼出音を送信すると共に、VoIPゲートウェイ6を介して電話機Cに着信要求を送信する(S322)。また、IP電話交換機2は、発信側のみがIP電話機1であることを確認し、発信側のIP電話機1(IP電話機A1)に通知する録音対象の音声データの種別を「送話」および「受話」の両方に決定する(S323)。
【0072】
IP電話交換機2は、VoIPゲートウェイ6を介して電話機Cから着信応答を受信すると(S324)、発信側のIP電話機A1に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージにのみ、録音対象音声データの種別「送話」、「受話」の指定を挿入する(S325)。それから、発信側のIP電話機A1に、録音対象音声データの種別「送話」、「受話」の指定が挿入された通話パスオープン要求の呼制御メッセージを送信する。また、電話機Cには、通常の(指定を含まない)通話パスオープン要求の呼制御メッセージを、VoIPゲートウェイ6を介して送信する(S326)。
【0073】
IP電話機A1は、IP電話交換機2から通話パスオープン要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機A1から電話機Cへの通話パスをオープンする(S327)。同様に、電話機Cも、電話機CからIP電話機A1への通話パスをオープンする。これにより、IP電話機A1と電話機Cとの間に、双方向の通話パスが確立する。
【0074】
さて、IP電話機A1は、IP電話交換機2から受信した通話パスオープン要求の呼制御メッセージに含まれている指定「送話」「受話」に従い送話データを録音すると共に、IP電話機A1から電話機Cへの通話パスを用いて送話データ(音声データ)を電話機Cに送信する。また、電話機CからIP電話機A1への通話パスを介して電話機Cより受信した受話データ(音声データ)を再生すると共に、この受話データを録音する(S328)。
【0075】
その後、通話が終了し、IP電話機A1および電話機Cの何れか一方がオンフックされると、切断要求(オンフック情報)がIP電話交換機2に送信される。ここでは、IP電話機A1がオンフックされ、IP電話機A1からIP電話交換機2に切断要求が送信されたものとする(S329)。
【0076】
IP電話交換機2は、IP電話機A1から切断要求を受信すると、発信側のIP電話機A1に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに、予め設定されている音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する(S330)。ここでは、音声ファイルデータの送信先としてファイルサーバ4が指定され、音声ファイルデータの送信プロトコルとしてFTPが指定されているものとする。
【0077】
それから、IP電話交換機2は、発信側のIP電話機A1に、音声ファイルデータの送信先(ファイルサーバ4)のアドレス、音声ファイルデータの送信プロトコルの指定「FTP」が挿入された通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを送信する。また、電話機Cには、通常の(指定を含まない)通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを、VoIPゲートウェイ6を介して送信する(S331)。
【0078】
IP電話機A1は、IP電話交換機2から通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機A1から電話機Cへの通話パスをクローズする(S332)。同様に、電話機Cも、電話機CからIP電話機A1への通話パスをクローズする。これにより、IP電話機A1と電話機Cとの間の双方向の通話パスが切断される。
【0079】
さて、IP電話機A1は、送話データおよび受話データ各々の録音を終了すると共に、この送話データおよび受話データ各々に属性情報を付加して、送話データおよび受話データ各々につき音声ファイルデータを作成する。そして、IP電話交換機2から受信した通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信先であるファイルサーバ4へ、この呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信プロトコルであるFTPを用いて、作成した各音声ファイルデータを送信する(S333)。
【0080】
図9は、公衆回線網9側の電話機から、あるIP電話機1に着信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。ここで、着信側(宛先)のIP電話機1をIP電話機B1とし、公衆回線網9側の電話機を電話機Cとする。
【0081】
IP電話交換機2は、VoIPゲートウェイ6を介して公衆回線網9から着信要求を受信すると、この着信要求に含まれている宛先情報により特定されるIP電話機B1に、この着信要求を転送する(S341)。また、IP電話交換機2は、着信側のみがIP電話機1であることを確認し、着信側のIP電話機B1に通知する録音対象音声データの種別を「送話」および「受話」の両方に決定する(S343)。
【0082】
IP電話機B1は、IP電話交換機2からの着信要求を受けて、着信音を出力する(S342)。そして、オフフックされると、着信応答(オフフック情報)をIP電話交換機2に送信する(S344)。
【0083】
IP電話交換機2は、IP電話機B1から着信応答を受信すると、着信側のIP電話機B1に送信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージに、録音対象音声データの種別「送話」、「受話」の指定を挿入する(S345)。それから、着信側のIP電話機B1に、録音対象音声データの種別「送話」、「受話」の指定が挿入された通話パスオープン要求の呼制御メッセージを送信する。また、電話機Cには、通常の(指定を含まない)通話パスオープン要求の呼制御メッセージを、VoIPゲートウェイ6を介して送信する(S346)。
【0084】
IP電話機B1は、IP電話交換機2から通話パスオープン要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機B1から電話機Cへの通話パスをオープンする(S347)。同様に、電話機Cも、電話機CからIP電話機B1への通話パスをオープンする。これにより、IP電話機B1と電話機Cとの間に、双方向の通話パスが確立する。
【0085】
さて、IP電話機B1は、IP電話交換機2から受信した通話パスオープン要求の呼制御メッセージに含まれている指定「送話」、「受話」に従い送話データを録音すると共に、IP電話機B1から電話機Cへの通話パスを用いて送話データ(音声データ)を電話機Cに送信する。また、電話機CからIP電話機B1への通話パスを介して電話機Cより受信した受話データ(音声データ)を再生すると共に、この受話データを録音する(S348)。
【0086】
その後、通話が終了し、IP電話機B1および電話機Cの何れか一方がオンフックされると、切断要求(オンフック情報)がIP電話交換機2に送信される。ここでは、IP電話機B1がオンフックされ、IP電話機B1からIP電話交換機2に切断要求が送信されたものとする(S349)。
【0087】
IP電話交換機2は、IP電話機B1から切断要求を受信すると、着信側のIP電話機B1に送信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに、予め設定されている音声ファイルデータの送信先(宛先アドレス)および送信プロトコルの指定を挿入する(S350)。ここでは、音声ファイルデータの送信先として任意のPC3が指定され、音声ファイルデータの送信プロトコルとしてSMTPが指定されているものとする。
【0088】
それから、IP電話交換機2は、着信側のIP電話機B1に、音声ファイルデータの送信先(PC3)のアドレス、音声ファイルデータの送信プロトコルの指定「SMTP」が挿入された通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを送信する。また、電話機Cには、通常の(指定を含まない)通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを、VoIPゲートウェイ6を介して送信する(S351)。
【0089】
IP電話機B1は、IP電話交換機2から通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受信すると、IP電話機B1から電話機Cへの通話パスをクローズする(S352)。同様に、電話機Cも、電話機CからIP電話機B1への通話パスをクローズする。これにより、IP電話機B1と電話機Cとの間の双方向の通話パスが切断される。
【0090】
さて、IP電話機B1は、送話データおよび受話データ各々の録音を終了すると共に、この送話データおよび受話データ各々に属性情報を付加して、送話データおよび受話データ各々につき音声ファイルデータを作成する。そして、IP電話交換機2から受信した通話パスクローズ要求の呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信先であるPC3へ、この呼制御メッセージに含まれている指定により特定される送信プロトコルであるSMTPを用いて、作成した各音声ファイルデータを電子メールに添付して送信する(S353)。
【0091】
以上、本発明の一実施の形態を説明した。
【0092】
本実施の形態によれば、IP電話機1において、送話データおよび受話データを別々(すなわち発話者別)に録音することができるので、発話者を容易に特定可能なIP電話の録音技術を提供できる。
【0093】
また、本実施の形態では、各音声ファイルのデータは、それぞれのIP電話機側で作成されるので、IP網側にIPパケットを送信する際にSRTP等で暗号化されたIPパケット情報を用いた場合であっても、送話データは暗号化される前の音声データが音声ファイルデータとして作成され、受話データは復号化された後の音声データが音声ファイルデータとして作成されるので、音声ファイルデータを管理するデータベース(例えば録音サーバなど)側で、SRTP等の暗号化解析を実施する必要がなく、特殊な暗号化に対応したデータベースの構築が不要であり、容易に通話録音のサービスを提供することができる。
【0094】
また、本実施の形態では、IP電話機1において、録音された音声データに、相手装置の電話番号、音声データの種別、および録音時刻を含む属性情報を付加して、音声ファイルデータを作成している。このため、本実施の形態によれば、録音データの管理を容易に行うことができる。
【0095】
また、本実施の形態では、IP電話機1がファイルサーバ4、PC3等の所定の宛先に音声ファイルデータを送信するので、IP電話機1に音声ファイルデータを保存しておく必要がない。このため、IP電話機1の記憶容量を小さくすることができる。
【0096】
また、本実施の形態において、IP電話機1は、IP電話交換機2から受信する通話パスオープン要求の呼制御メッセージを用いて録音対象音声データの指定を受け付ける。そして、通話パスがオープンした場合に、この指定により特定される音声データの録音を開始し、この通話パスがクローズした場合に、この指定により特定される音声データの録音を終了する。したがって、本実施の形態によれば、発話者が録音開始および録音終了の各タイミングをいちいち指示しなくても、通話データを自動で録音することができる。
【0097】
また、本実施の形態において、IP電話機1は、IP電話交換機2から受信する通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを用いて音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定を受け付け、指定された送信プロトコルを用いて、指定された送信先に音声ファイルデータを送信する。したがって、本実施の形態によれば、通話毎に、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルを変更することができ、これにより、例えば音声ファイルデータの保存先を分散させるなどの柔軟な運用が可能になる。
【0098】
また、本実施の形態において、IP電話交換機2は、発信側および着信側の双方ともIP電話機1である場合に、発信側および着信側のIP電話機1の双方ともに、「送話」および「受話」の何れか一方の同じ種別を、録音対象音声データの種別として通知する。一方、発信側および着信側の一方のみがIP電話機1である場合に、「送話」および「受話」の両種別を、録音対象音声データの種別として通知する。したがって、本実施の形態によれば、同じ音声データが複数のIP電話機1で重複録音される事態の発生を防止することができ、IP電話機1の記憶領域の使用量を低減することができる。また、音声ファイルデータ送信により発生するトラヒックを低減することができる。
【0099】
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0100】
例えば、上記の実施の形態では、通話パスオープン要求の呼制御メッセージを用いてIP電話交換機2からIP電話機1に録音対象の指定を通知している。また、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを用いてIP電話交換機2からIP電話機1に音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定を通知している。しかし、本発明はこれに限定されない。通話パスオープン要求および通話パスクローズ要求の呼制御メッセージ以外の呼制御メッセージを用いて、録音対象の指定と、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定とを、IP電話交換機2からIP電話機1に通知してもよい。あるいは、独自プロトコルを用いて、録音対象の指定と、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定とを、IP電話交換機2からIP電話機1に通知してもよい。
【0101】
また、上記の実施の形態では、通話毎に、録音対象の指定と、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの指定とを、IP電話交換機2からIP電話機1に通知している。しかし、本発明はこれに限定されない。録音対象音声データの種別と、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルとを予めIP電話機1に設定しておくようにしてもよい。そして、IP電話機1は、通話の度に、予め設定された種別の音声データを録音して音声ファイルデータを作成し、この音声ファイルデータを予め設定された送信先に、予め設定された送信プロトコルを用いて送信するようにしてもよい。
【0102】
図3(B)は、録音対象音声データの種別の管理テーブルを模式的に表した図である。この管理テーブルは、例えばIP電話機1の録音・再生部15に保持される。図示するように、この管理テーブルは、種別「送話」の音声データを録音対象に設定するか否かを示すフラグを格納するエントリ151と、種別「受話」の音声データを録音対象に設定するか否かを示すフラグを格納するエントリ152と、を有する。なお、エントリ151、152に格納するフラグは、MMインターフェース部12の操作パネルを介してユーザが設定できるようにしてもよい。
【0103】
この場合、録音・再生部15は、通話パスオープン要求の呼制御メッセージを契機として、録音対象に設定する旨を示すフラグが格納されているエントリ151、152に対応する種別の音声データの録音を開始し、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを契機としてこの音声データを録音を終了する。
【0104】
図3(C)は、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの管理テーブルを模式的に表した図である。この管理テーブルは、例えばIP電話機1のファイル送信部17に保持される。図示するように、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの管理テーブルには、音声ファイルデータの送信先候補毎にレコード170が登録されている。レコード170は、送信先のアドレス(宛先アドレス)を登録するフィールド171と、送信プロトコルを登録するフィールド172と、自動送信を実施するか否かを示すフラグを登録するフィールド173と、を有する。なお、各レコード170の各フィールド171〜173に登録する情報は、MMインターフェース部12の操作パネルを介してユーザが設定できるようにしてもよい。
【0105】
この場合、ファイル送信部17は、録音・再生部15から通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを受け取ると、自動送信を実施する旨を示すフラグがフィールド173に登録されているレコード170を全て検索する。そして、検索したレコード170各々について、フィールド171に登録されている宛先アドレスに対して、音声ファイル記憶部16に追加された音声ファイルデータを、フィールド172に登録されている送信プロトコルを用いて送信する。
【0106】
また、上記の実施の形態において、IP電話機1は、通話パスオープン要求の呼制御メッセージを契機として音声データの録音を開始し、通話パスクローズ要求の呼制御メッセージを契機としてこの音声データの録音を終了している。しかし、本発明はこれに限定されない。例えば、MMインターフェース部12の操作パネルに送話データおよび受話データのそれぞれの録音ボタンを設け、押下された録音ボタンに対応する音声データを録音・再生部15に録音させるようにしてもよい。
【0107】
また、上記の実施の形態において、IP電話機1は、PC3、ファイルサーバ4等の他の装置に音声ファイルデータを送信している。例えば、IP電話機1に、メモリカード等の外部記憶媒体のリーダ・ライタを設け、このリーダ・ライタを介して、IP電話機1に装着された外部記憶媒体に音声ファイルデータを記憶するようにしてもよい。この場合、MMインターフェース部12の操作パネルに外部記憶媒体への書き込みボタンを設け、この書き込みボタンが押下された場合に、このリーダ・ライタを介して、IP電話機1に装着された外部記憶媒体に、音声ファイル記憶部16に記憶されている全音声ファイルデータを記憶するようにしてもよい。
【0108】
また、上記の実施の形態では二者通話の場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は多者通話のIP電話システムにも同様に適用できる。多者通話に本発明を適用した場合、通話者毎に発話を録音することができるので、例えば録音データから議事録等を作成するのに好適である。
【0109】
また、上記の実施の形態において、IP電話機1およびIP電話交換機2の構成は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積ロジックICによりハード的に実行されるものでもよい。あるいは、CPU、メモリ、HDD、DVD−ROM等の補助記憶装置、およびNIC(Network Interface Card)を備えたコンピュータにおいて、CPUが所定のプログラムを補助記憶装置からメモリ上にロードして実行することにより実現されるものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態が適用されたIP電話システムの概略構成図である。
【図2】図2は、IP電話機1の概略構成図である。
【図3】図3(A)は、音声ファイル記憶部16に記憶される音声ファイルデータのフォーマットを模式的に表した図、図3(B)は、録音対象音声データの種別の管理テーブルを模式的に表した図、そして、図3(C)は、音声ファイルデータの送信先および送信プロトコルの管理テーブルを模式的に表した図である。
【図4】図4は、IP電話機1の通話録音処理を説明するための図である。
【図5】図5は、IP電話交換機2の概略構成図である。
【図6】図6は、IP電話交換機2の指定挿入処理を説明するためのフロー図である。
【図7】図7は、あるIP電話機1が他のIP電話機1に発信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。
【図8】図8は、あるIP電話機1が公衆回線網9側の電話機に発信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。
【図9】図9は、公衆回線網9側の電話機からあるIP電話機1に着信する場合の動作例を説明するためのシーケンス図である。
【符号の説明】
【0111】
1:IP電話機、2:IP電話交換機、3:PC、4:ファイルサーバ、5:ルータ、6:VoIPゲートウェイ、7:LAN、8:IP網、9:公衆回線網、11:ネットワークインターフェース部、12:MMインターフェース部、13:呼制御処理部、14:通話処理部、15:録音・再生部、16:音声ファイル記憶部、17:ファイル送信部、21:ネットワークインターフェース部、22:局データ記憶部、23:呼制御処理部、24:指定挿入部、121:ハンドセット、141:受話処理部、142:DA変換部、143:AD変換部、144:送話処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
録音機能を備えたIP電話機であって、
ハンドセットに音声入力された音声データおよび前記ハンドセットから音声出力される音声データを、それぞれ送話データ、受話データとして録音する録音手段と、
録音対象の指定を受け付ける受付手段と、を有し、
前記録音手段は、
前記受付手段で受け付けた指定により特定される前記音声データを録音する
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項2】
請求項1に記載のIP電話機であって、
前記録音手段は、
録音された前記音声データに、少なくとも前記通話パスの相手装置の電話番号、録音された前記音声データの種別、および録音時刻を含む属性情報を付加して、音声ファイルデータを作成する
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項3】
請求項2に記載のIP電話機であって、
前記音声ファイルデータを所定の宛先に送信するファイル送信手段をさらに有する
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のIP電話機であって、
前記受付手段は、
自IP電話機に設けられた所定のキー操作で前記指定を受け付ける
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のIP電話機であって、
前記受付手段は、
自IP電話機を収容するIP電話交換機から受信する呼制御メッセージを用いて当該IP電話交換機から前記指定を受け付け、
前記録音手段は、
通話パスがオープンした場合に、前記受付手段で受け付けた前記指定により特定される前記音声データの録音を開始し、当該通話パスがクローズした場合に、当該指定により特定される前記音声データの録音を終了する
ことを特徴とするIP電話機。
【請求項6】
請求項5に記載のIP電話機を複数収容するIP電話交換機であって、
通話パスのオープンに先立って、当該通話パスの発信側の前記IP電話機および着信側の前記IP電話機のそれぞれに送信する呼制御メッセージに、前記録音対象の指定を含める指定手段を有する
ことを特徴とするIP電話交換機。
【請求項7】
請求項6に記載のIP電話交換機であって、
前記指定手段は、
前記発信側のIP電話機と前記着信側のIP電話機との間で録音対象が重複しないように、当該発信側のIP電話機および当該着信側のIP電話機のそれぞれに送信する呼制御メッセージに、前記録音対象の指定を含める
ことを特徴とするIP電話交換機。
【請求項8】
IP電話の通話録音方法であって、
IP電話交換機が、
通話パスのオープンに先立って、当該通話パスの発信側のIP電話機および着信側のIP電話機のそれぞれに送信する呼制御メッセージに、録音対象の指定を含め、
前記IP電話機が、
前記通話パスがオープンした場合に、ハンドセットに音声入力された音声データである送話データおよび前記ハンドセットから音声出力される音声データである受話データのうち、前記IP電話交換機から受信した呼制御メッセージで前記録音対象に指定されている前記音声データの録音を開始し、
前記通話パスがクローズした場合に、当該録音対象に指定されている前記音声データの録音を終了する
ことを特徴とする通話録音方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−135753(P2009−135753A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−310332(P2007−310332)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000153465)株式会社日立コミュニケーションテクノロジー (770)
【Fターム(参考)】