説明

ITO成膜装置とITO成膜方法

【課題】 インライン方式のスパッタ装置において、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題を、解決できるインライン方式のITO成膜装置、ITO成膜方法を提供する。
【解決手段】 順に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理部と、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理部とを、備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温成膜法により処理対象の基板の面にITO膜をスパッタ成膜するインライン方式のITO成膜装置とITO成膜方法に関し、特に、ディスプレイパネル用の基板を処理の対象とするものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会への進展が著しく、ディスプレイ装置の使用も多様化し、種々のディスプレイ装置が開発、実用化されている。
特に、液晶表示装置は、CRT(Cathode−Ray Tube、ブラウン管) に代わり、広く普及されるようになってきた。
液晶表示装置用のカラー表示用の液晶パネルは、簡単には、バックライトからの光が各色の着色層を通過して表示されるが、各色の着色層を通過する光は、画素毎に液晶をスイッチング素子としてオン−オフ制御されている。
そして、この画素毎に液晶をスイッチング素子としてオン−オフ制御するための制御用電極の材質としては、従来から、透明導電性のITO膜(錫をドープしたインジウム酸化物)が用いられている。
ITO膜の成膜方法としては、ITO焼結体をターゲットとし、所定のスパッタリング条件の下で基板上にITOをスパッタリングすることにより、所望のITO膜を形成する方法が、特開平6−24826号公報(特許文献1)、特開平6−247765号公報(特許文献2)等にて知られている。
【特許文献1】特開平6−24826号公報
【特許文献2】特開平6−247765号公報
【0003】
生産性向上の面、低コスト化の面等から、面付け生産が行われているが、これに用いられる透明なガラス基板の大型化の要求は強く、最近では、G6世代(1800mm×1500mmサイズ)サイズの大サイズのガラス基板での量産化が現実のものとなってきている。
そして、生産性の面から、このような、大サイズのガラス基板を用いた処理基板へのITO膜の成膜をインラインで行う、図4(a)にその概略構成配置図を示すような、インライン方式のITOスパッタ成膜装置も提案されている。
ここに示すスパッタ装置においては、図4(b)に示すように、大サイズのガラス基板をベース基板とする処理基板863を、キャリア860に搭載して鉛直方向892に立てた状態で、インラインで、搬送しながらスパッタ処理を行い、処理基板763の一面側に電極用のITO膜をスパッタ成膜する。
簡単には、処理基板863は、ローディングチャンバー811に投入され、予備チャンバー812を経て、第1のスパッタチャンバー883に投入され、搬送されながらスパッタ処理され、回転処理部820に搬入され、ここで、回転部によりキャリアごと180度回転され、向きを変え、第2のスパッタチャンバー833に投入され、搬送されながらスパッタ処理される。
そして、スパッタ後、予備チャンバー832、アンローディングチャンバー831を経て搬出される。
ここでは、図4(b)に示すように、キャリア(基板ホールダとも言う)860と呼ばれる、処理基板863を保持するための枠体861を有するサポート部材に、処理基板863を載せた状態で、キャリア860ごと立てた状態で搬送する。
キャリア860は、枠体861に、順に、処理基板863、裏板861を嵌め込み、処理基板863を保持する処理基板保持部101を備えたものであり、処理基板863は、鉛直方向892に沿うように立てた状態でキャリア860の処理基板保持部101にはめ込まれている。
そして、図4(a)に示すように、処理基板863は、処理基板保持部101ごとキャリア860に搭載されて、水平方向891に搬送され、鉛直方向892に沿うように立てた状態で、ターゲット871と平行にして対向させてスパッタが行われる。
尚、図4(a)中、点線矢印は、キャリア860の搬送方向を示している。
図示していないが、ここでのスパッタ方式は、ターゲット871の裏面側(処理基板863側とは反対の側)に、外側磁極と内側磁極の間で磁場が閉じるように設計し、発生したプラズマをターゲット871近傍のみに存在するようにしているマグネトロンスパッタ方式のものである。
大サイズの処理基板として、例えば、大サイズの透明なガラス基板の一面側に各色の着色層をカラーフィルタ(以下、CFとも言う)として形成したカラーフィルタ形成基板を処理基板が挙げられ、この処理基板のCF形成面側に、電極用のITO膜を成膜する。
【0004】
図4(b)に示すキャリア860には、図示していない駆動用モーター(キャリア側のものではない)からの駆動力を歯車(図示していない)との噛み合わせで伝える溝を切った溝形成部868がその下部に設けられており、更に、歯車による磨耗を極力抑えるために、キャリア860の溝形成部868の進行方向両側、下側に平坦部を有する搬送支持レール866、867が、キャリアの荷重を支えるために設けられており、本体側にある前記の歯車とは異なるボビンのような回転体869にキャリア側の搬送支持レール866、868の平坦部が乗っかるようになっている。
キャリア860は、その下側に設けられた搬送支持レール866、867に保持されながら、溝形成部868にて駆動用モーターからの駆動力を歯車の噛み合わせで受けて、搬送される。
G6世代では、スパッタ処理する処理基板863とキャリ860アを併せた重量は100kg程度となるため、どうしても磨耗が発生するためこのように、できるだけ、前記溝形成部200と歯車との嵌合を少なくしている。
尚、キャリア860の材質としては重量の面、剛性の面から、Tiが好ましく用いられる。
スパッタリングは、Arガス雰囲気中、10-5torr〜10-2torr圧下で、プレート状にされた、成膜する膜組成のITOをターゲットとして用いて行う。
この場合、CFを形成する着色層の耐熱性(CFからの脱ガス)の面から、基板の大型化にともないキャリア等の熱伸びの問題を考慮して、低温で成膜を行うことが求められている。
尚、このような、マグネトロンスパッタ方式で、低温スパッタには、例えば、In2 3 、90w%+SnO2 、10w%組成の焼結したターゲット材を、厚さ8mm〜15mmとして用いる。
例えば、ターゲットとしては、Cuプレートをバッキング材として、インジウム半田を接着層とし、数枚の焼結ターゲット材をつなぎ合わせている。
【0005】
このように、従来、インライン方式のスパッタ装置において、ターゲットとスパッタ処理対象の基板とを立てた状態で対向させてスパッタを行っており、当初は、液晶表示パネル用のCF形成基板の作製において着色層上にITO膜を成膜する場合、スパッタ成膜を230℃の高温で行い、ITO膜を配していた。
このような成膜法を、ここでは、高温成膜法とも言う。
尚、アニール温度は、230℃に限定する必要はありませんが、これより高いとCF形成基板の着色層へのダメージが発生、これより低いとITO膜質改善能力が低下する。
近年では、CF形成基板からの脱ガスや成膜時のCF形成基板への熱負荷低減のため、近年では、液晶表示パネル用のCF形成基板の作製において着色層上にITO膜を成膜する場合、スパッタ成膜を120℃の低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法が採られるようになってきた。
高温成膜法の場合、CF形成基板からの脱ガス量が成膜されたITO膜品質に影響するのに対し、低温成膜方法の場合は、CF形成基板からの脱ガス量が少なく、成膜されたITO膜品質への脱ガスの影響はすくない。
しかし、インライン方式のスパッタ装置において、低温成膜方法を採り入れ、量産する際、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でない場合、インライン方式であるためこの情報を成膜部等へフィードバックしても、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、近年、情報化社会への進展が著しく、ディスプレイ装置の使用も多様化し、特に、液晶表示装置が広く普及されるようになり、その生産性向上の面、低コスト化の面から、面付け生産が行われているが、液晶表示パネル用のCF形成基板の作製において着色層上にITO膜を成膜する場合、インライン方式のスパッタ装置において、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題があり、その対応が求められていた。
本発明はこれに対応するもので、インライン方式のスパッタ装置において、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題を、解決できるインライン方式のITO成膜装置、ITO成膜方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のITO成膜装置は、処理対象の基板の面にITO膜を成膜するインライン方式のITO成膜装置であって、順に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理部と、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理部とを、備えていることを特徴とするものである。
そして、上記のITO成膜装置であって、前記高周波測定部の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理部を備えていることを特徴とするものであり、該前記判定処理部は、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、選ばれた関数F(Rfi)を用いて、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものであることを特徴とするものである。
そしてまた、上記のいずれかのITO成膜装置であって、処理対象の基板をキャリアに搭載した状態で、搬送しながら、前記スパッタ処理部にて、処理対象の基板の成膜する側の面とターゲットとを、平行に対向させ、水平もしくは鉛直方向から斜めに傾けて配して、スパッタ処理を行い、該処理対象の基板の一面側にITO膜を成膜するものであることを特徴とするものである。
Iまた、上記いずれかのITO成膜装置であって、前記処理対象の基板が、その一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板で、該カラーフィルタ形成面側にITO膜を成膜するものであることを特徴とするものである。
【0008】
本発明のITO成膜方法は、処理対象の基板の面に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理とを、順に行い、ITO膜が成膜されたITO膜付着基板を得る、インライン方式のITO成膜方法であって、前記ITO成膜処理後、前記アニール処理前に、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の複数の周波数における抵抗およびまたはリアクタンスを測定する測定処理と、該測定処理の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理を行うもので、該判定処理の結果に基づいて、成膜条件の変更を行う、あるいは必要に応じて成膜中止するものであることを特徴とするものである。
そして、上記のITO成膜方法であって、前記判定処理は、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、関数F(Rfi)を選び、処理対象の基板については、前記関数F(Rfi)の測定結果をもとに、該成膜された処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものであることを特徴とするものであり、前記関数F(Rfi)が、f1、f2を、それぞれ、100kHz、10MHzとして、Rf2/Rf1であることを特徴とするものである。
尚、ここで言う高周波数とは、10kHz〜12MHzの範囲を含むものである。
また、f1、f2を、それぞれ、100kHz、10MHzとした場合、以下、Rf1をR100 kHz 、Rf2をR10MHz とも記す。
【0009】
(作用)
本発明のITO成膜装置は、このような構成にすることにより、インライン方式のスパッタ装置において、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題を、解決できるインライン方式のITO成膜装置の提供を可能とするものである。
具体的には、順に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理部と、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理部とを、備えていることにより、これを達成している。
詳しくは、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部を、この順に備えていることにより、低温成膜法によるITO成膜後、アニール処理前に、所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)や、リアクタンスの測定を可能にしている。
成膜後、アニール前に、早かに、その測定結果の情報を得ることができる。
そして、高周波測定部の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理部を備えている請求項2の発明の形態とすることにより、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定することを可能としている。
判定処理部としては、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、選ばれた関数F(Rfi)を用いて、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものである請求項3の発明の形態が挙げられる。
尚、ITO成膜する際、ITO膜の膜質変動要素が、一番高いのは酸素分圧で、通常、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるようにするためには、ITO成膜処理の際の導入する酸素分圧(%表示)にて調整する。
また、このようなインライン方式のITO成膜装置としては、処理対象の基板をキャリアに搭載した状態で、搬送しながら、前記スパッタ処理部にて、処理対象の基板の成膜する側の面とターゲットとを、平行に対向させ、水平もしくは鉛直方向から斜めに傾けて配して、スパッタ処理を行い、該処理対象の基板の一面側にITO膜を成膜するものである、請求項4の発明の形態が挙げられる。
処理対象の基板が、その一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板で、該カラーフィルタ形成面側にITO膜を成膜するものである場合には、低温成膜法によりCF形成基板からの脱ガスや成膜時のCF形成基板への熱負荷を低減し、生産性良く、着色層上へ所望のシート抵抗値のITOを配設することを可能としており、特に、有効である。
【0010】
尚、成膜後、アニール前のITO膜を通常の直流方式の4端子法で測定すると、酸素分圧を増加した膜では、シート抵抗値が低下して、良化している傾向にありますが、これをアニールすると酸素分圧の高い領域では、シート抵抗値は逆に悪化してしまうため、アニール前の状態では、通常の直流方式の4端子法での測定では、アニール後のシート抵抗を予測判定することができないのです。
例えば、直流方式の4端子法での、成膜後、アニール前のシート抵抗Rsとアニール後のシート抵抗Rs1とは、表2に示すような関係となる。
本発明者は、このような中、高周波の交流4端子法による、成膜後、アニール前のITO膜の測定結果から、直流方式の4端子法での、アニール後のシート抵抗値Rsを予測判定することができる方法を見出したものである。
【0011】
本発明のITO成膜方法は、このような構成にすることにより、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題を、解決できるインライン方式のITO成膜方法の提供を可能としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のように、インライン方式のスパッタ装置において、スパッタ成膜を低温で行い、成膜後にアニール処理を行って、ITO膜を得る低温成膜方法を採る場合、得られたITO膜のシート抵抗値が所望の値でないと、大量の不良膜付けが行われてしまうという問題を、解決できるインライン方式のITO成膜装置、ITO成膜方法の提供を可能とした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
図1(a)は本発明のITO成膜装置の実施の形態の1例の、ラインにおけるITO成膜処理部、高周波測定部、アニール処理部の配列状態を示した概略構成図で、図1(b)は高周波測定部の概略構成を示した図で、図2(a)は図1に示す実施の形態例のITO成膜装置におけるキャリアと搬送用の回転ロールを示した概略断面図で、図2(b)は図2(a)のB1方向からみた図で、図3は各関数とシート抵抗値との関係をグラフ化して示した図である。
図1(a)中点線矢印は処理対象の基板の搬送方向を示し、また。図1(b)中、実線矢印は情報ないし制御の方向を示している。
図1〜図2、図4中、10は(インライン方式の)ITO成膜装置、20、20A、20BはITO成膜処理部(スパッタ処理部とも言う)、30は高周波測定部、31はプローブヘッド(測定部とも言う)、31aは端子用針部、32は高周波測定装置、33はコントロール部、40は判定処理部、50はアニール処理部、80は処理対象の基板(単に基板とも言う)、80aは成膜後、アニール前の処理対象の基板、80bはアニール処理後の処理対象の基板、90はターゲット、95はターゲット保持部である。
【0014】
はじめに、本発明のITO成膜装置の実施の形態の1例を、図1に基づいて説明する。 本例のITO成膜装置10は、ディスプレイパネル用のG6世代サイズ(1800mm×1500mmサイズ)以上の大サイズの透明なガラス基板をベース基板とする処理対象の基板80を、キャリア(図2の100)に搭載して立てた状態で、インラインで、搬送しながらスパッタ処理を行い、処理対象の基板80の一面側に電極用のITO膜をスパッタ成膜するITO成膜装置で、図1(a)に示すように、順に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理部20と、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部30と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理部50と、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理部40とを備えているものである。
本例のITO成膜装置は、図4に示す、従来の各部の構成配列のインライン方式のスパッタ装置において、処理対象の基板(図4(b)の863に相当)の搬送方向、スパッタによりITO成膜を行うITO成膜処理部20Bの後側に、高周波測定部30、アニール処理部50をインラインの装置内に設けているものである。
尚、図1においては、図4に示すスパッタによるITO成膜装置20A、20Bを併せてITO成膜装置20として示している。
ここでは、処理対象の基板80として、G6世代サイズの透明なガラス基板の一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板を用い、そのカラーフィルタ形成面側にITO膜をスパッタ成膜するものである。
【0015】
本例においては、図2(a)に示すように、スパッタ処理の際には、処理対象の基板80の成膜する側の面とターゲット90とを、平行に対向させ、立てた状態のままキャリア100を搬送する。
尚、本例におけるキャリア100は、図2に示すように、枠体110に、処理対象の基板80、裏板120を順に嵌め込み、処理対象の基板80を保持する処理基板保持部101を備えている。
枠体110の材質については、剛性が大きく、強固で、軽いものが好ましく、Tiやステンレスが挙げられる。
他の各部についても、剛性が大きく、強固で軽い材質が好まく、枠体と同様に、Tiやステンレスが用いられる。
【0016】
本例においては、このように、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部30を、上記の配列順に備えていることにより、ITO成膜処理部20における低温成膜法によるITO成膜後、アニール処理部50によるアニール処理前に、所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)や、リアクタンスの測定が可能である。
高周波測定部30は、図1(b)に示すように、コントロール部33の制御の下で、プローブヘッド(測定部とも言う)31の端子用針部31aを処理対象の基板80のITO成膜面側に押し付けて、これに接続する高周波測定装置32にて、周波数に対応した抵抗値とリアクタンス値を測定する。
判定処理部40は、高周波測定部30の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定するものである。
詳しくは、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、選ばれた関数F(Rfi)を用いて、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものである。
これにより、成膜された処理対象の基板80について、その測定結果から、該処理対象の基板80のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定する。
【0017】
このような、関数F(Rfi)の選択は、例えば、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、処理条件としての導入酸素分圧量(%表示)を変化させてITO成膜を行い、それぞれ、ITO成膜処理、測定処理、アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、選ばれた関数F(Rfi)を用いて、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するが、更に、上記の導入酸素分圧量を変化させた場合についての、具体的な測定結果を挙げて、判定が可能であることを、以下説明する。
尚、ITO成膜する際、ITO膜の膜質変動要素が、一番高いのは酸素分圧で、成膜装置でのリークや下地基板からの脱ガスの影響により、この酸素分圧がばらつき、膜質が悪化する。
上記の導入酸素分圧量を変化させた場合についての、試料用の基板について、各測定周波数に対応した抵抗とリアクタンスの測定結果、およびアニール後のシート抵抗は、表1のようになった。
尚、各試料用の基板No1〜No6の成膜条件について、酸素分圧は、それぞれ、表1に示す%表示、0.1%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、1.1%であるが、その他は同じく、下記の条件で行った。
成膜温度 120℃
成膜圧力 0.4Pa
DC投入パワー 1.8W/ cm2
【表1】

この測定結果をもとに、例えば、下記(1)式〜(4)式に示す、関数F1〜F4を、判定のための評価用の関数とした場合、各関数の値は、各試料用の基板No1(0%)〜No6(1.1%)について、測定周波数に対応して、表2のようになった。
表2には、対応させて、各試料用の基板の成膜後、アニール前のシート抵抗Rs1とアニール後のシート抵抗Rsとを挙げて示す。
尚、上記%表示の数値は、ITO膜を成膜する際に導入する酸素分圧量を%で示したものであり、ここでは、以下同様に扱う。
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【表2】

これら関数の値と導入する酸素分圧量(%表示)とを、及び、直流方式の4端子法によるアニール後のシート抵抗Rsと導入する酸素分圧量(%表示)とを関連付けて、グラフ化すると図3のようになる。
但し、分かり易くするため、シート抵抗Rsについては、定数0.05をかけた値で示してある。
CF形成基板の着色層上へのITO膜のシート抵抗値としては、通常、25Ω/□以下であることが求められるが、即ち、(ITO膜のシート抵抗値)×0.05としては、1.25以下であることが求められるが、図3に示すグラフのように、この場合、(ITO膜のシート抵抗Rs)×0.05のグラフは下に凸型のグラフであり、関数F1のグラフは上に凸型のグラフで、概略その数値を2.0以上とすれば、これに対応する(ITO膜のシート抵抗Rs)×0.05の値は、1.25以下となる。
同様に、関数F2、F3についても、それぞれ、概略2.5以上にすれば、これに対応する(ITO膜のシート抵抗Rs)×0.05の値は、1.25以下となる。
また、関数F4についても同様に、概略0.4以上にすれば、これに対応する(ITO膜のシート抵抗Rs)×0.05の値は、1.25以下となる。
したがって、関数F1を用いる場合には、これらの値が2.0以上であるか否かを判定基準とし、F2、F3を用いる場合には、これらの値が2.5以上であるか否かを判定基準とし、また、関数F4を用いる場合には、これらの値が0.4以上であるか否かを判定基準とすれば良い。
このように、選ばれた関数を用い、該関数に応じて決めた判定基準の値をもとに、アニール後のシート抵抗の値を予測して、その量非を判定することができる。
【0018】
尚、成膜後、アニール前のITO膜を通常の直流方式の4端子法で測定すると、酸素分圧を増加した膜では、シート抵抗値が低下して、良化している傾向にありますが、これをアニールすると酸素分圧の高い領域では、シート抵抗値は逆に悪化してしまうため、アニール前の状態では、通常の直流方式の4端子法での測定では、アニール後のシート抵抗を予測判定することができないのです。
直流方式の4端子法での、成膜後、アニール前のシート抵抗Rs1とアニール後のシート抵抗Rsとは、例えば、表2に示すような関係となり、成膜後、アニール前のシート抵抗Rs1により、アニール後のシート抵抗Rsを予測判定することはできない。
【0019】
尚、本例は1例で本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、処理対象の基板とターゲットとを対向させ、鉛直方向から傾けた上体で搬送する形態も挙げられる。
場合によっては、処理対象の基板を水平搬送する形態も挙げられる。
勿論、処理対象の基板を水平状態として、アニール前のITO膜を、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する形態も挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は本発明のITO成膜装置の実施の形態の1例の、ラインにおけるITO成膜処理部、高周波測定部、アニール処理部の配列状態を示した概略構成図で、図1(b)は高周波測定部の概略構成を示した図である。
【図2】図2(a)は図1に示す実施の形態例のITO成膜装置におけるキャリアと搬送用の回転ロールを示した概略断面図で、図2(b)は図2(a)のB1方向からみた図である。
【図3】各関数とシート抵抗値との関係をグラフ化して示した図である。
【図4】図4(a)はインライン型のITOスパッタ成膜装置の概略構成配置図で、図4(b)は図4(a)に示すITOスパッタ成膜装置に用られるキャリアを示した図である。
【符号の説明】
【0021】
10 (インライン方式の)ITO成膜装置
20、20A、20B ITO成膜処理部(スパッタ処理部とも言う)
30 高周波測定部
31 プローブヘッド(測定部とも言う)
31a 端子用針部
32 高周波測定装置
33 コントロール部
40 判定処理部
50 アニール処理部
80 処理対象の基板(単に基板とも言う)
80a 成膜後、アニール前の処理対象の基板
80b アニール処理後の処理対象の基板
90 ターゲット
95 ターゲット保持部
100 キャリア
101 処理基板保持部
110 枠体
120 裏板
150 支持部
161、162 位置決め回転ロール
161a、162a 軸
171、172 搬送支持レール(単に支持部とも言う)
190 回転ロール(回転体とも言う)
190a 軸
200 溝形成部
210 歯車
241 水平方向
242 鉛直方向
811 ローディングチャンバー
812 予備チャンバー
813 スパッタチャンバー
820 回転処理部
821 回転部
831 アンローディングチャンバー
832 予備チャンバー
833 スパッタチャンバー
841〜843 チャンバー仕切り
841a〜843a チャンバー仕切り
860、860a キャリア
860A 基板保持部
861 枠体
862 裏板(押さえ板とも言う)
863 処理基板
864 支持部
865 位置決回転ローラ
865a、865b 軸
866、867 搬送支持レール(単に支持部とも言う)
868 溝形成部
869 回転ローラ(回転部とも言う)
869a 軸
871、872 ターゲット
891 水平方向
892 鉛直方向




【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の基板の面にITO膜を成膜するインライン方式のITO成膜装置であって、順に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理部と、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の周波数でその抵抗およびまたはリアクタンスを測定する高周波測定部と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理部とを、備えていることを特徴とするITO成膜装置。
【請求項2】
請求項1に記載のITO成膜装置であって、前記高周波測定部の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理部を備えていることを特徴とするITO成膜装置。
【請求項3】
請求項2に記載のITO成膜装置であって、前記判定処理部は、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、選ばれた関数F(Rfi)を用いて、成膜された処理対象の基板について、その測定結果から、該処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものであることを特徴とするITO成膜装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のITO成膜装置であって、処理対象の基板をキャリアに搭載した状態で、搬送しながら、前記スパッタ処理部にて、処理対象の基板の成膜する側の面とターゲットとを、平行に対向させ、水平もしくは鉛直方向から斜めに傾けて配して、スパッタ処理を行い、該処理対象の基板の一面側にITO膜を成膜するものであることを特徴とするITO成膜装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載のITO成膜装置であって、前記処理対象の基板が、その一面側に各色の着色層をカラーフィルタとして形成したカラーフィルタ形成基板で、該カラーフィルタ形成面側にITO膜を成膜するものであることを特徴とするITO成膜装置。
【請求項6】
処理対象の基板の面に、低温成膜法によりITO膜をスパッタ成膜するITO成膜処理と、スパッタ成膜されたITO膜をアニール処理するアニール処理とを、順に行い、ITO膜が成膜されたITO膜付着基板を得る、インライン方式のITO成膜方法であって、前記ITO成膜処理後、前記アニール処理前に、スパッタ成膜されたITO膜について、高周波の交流4端子法により、所定の複数の周波数における抵抗およびまたはリアクタンスを測定する測定処理と、該測定処理の測定結果に基づき、成膜されたITO膜のアニール処理後のシート抵抗値の良否を予測判定する判定処理を行うもので、該判定処理の結果に基づいて、成膜条件の変更を行う、あるいは必要に応じて成膜中止するものであることを特徴とするITO成膜方法。
【請求項7】
請求項6に記載のITO成膜方法であって、前記判定処理は、あらかじめ、複数の試料用の基板について、アニール処理後のシート抵抗値がばらけるように、ITO成膜処理の条件を調整し、それぞれ、前記ITO成膜処理、前記測定処理、前記アニール処理を、順に行い、各試料用の基板の測定処理により、それぞれ得られた所定の複数の周波数fi(i=1〜n)における抵抗Rfi(i=1〜n)と、各試料用の基板の対応するアニール処理後のシート抵抗値R0i(i=1〜n)とから、その値が所定の範囲である場合に、アニール処理後のシート抵抗値Rが所望の所定値(通常25Ω)以下に対応付けできる関係を有する、関数F(Rfi)を選び、処理対象の基板については、前記関数F(Rfi)の測定結果をもとに、該成膜された処理対象の基板のアニール処理後のシート抵抗値R0 の良否を予測して判定するものであることを特徴とするITO成膜方法。
【請求項8】
請求項7に記載のITO成膜方法であって、前記関数F(Rfi)が、f1、f2を、それぞれ、100kHz、10MHzとして、Rf2/Rf1であるであることを特徴とするITO成膜方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−157409(P2007−157409A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348700(P2005−348700)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】