説明

LEDパッケージ基板

【課題】p極およびn極にリードフレームを用いたLEDパッケージ基板の放熱性を、LEDパッケージにヒートシンクを設けることなく向上させる。
【解決手段】熱伝導の高いリードフレームの端部の一部を、LED素子より離れた位置まで伸ばした構造とすることによって、その部分より放熱の効果を高める。また、前記伸ばした部分をLED照明装置筐体の外部まで突き出すことにより、いっそうその効果を高めることができる。これらの構造を持つLEDパッケージ基板で、LED素子から発生する熱を効率よく放熱できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はLEDパッケージ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
LED発光技術は年々進歩しており、大電圧化とそれに伴う発光量の増加が加速度的に伸びている。ところが、発光に伴う熱に対する対処法が追いついていない状態であり、小型のLED装置では放熱に対する課題がまだ残されている。
【0003】
放熱が十分でなければ、LED素子の発光効率が落たり、樹脂の封止部材が劣化したりする悪影響があり、これらは寿命を大きく短くする要因となる。
【0004】
現在最も用いられているLEDパッケージの構造は、AlN(窒化アルミ)などの基板上に金メッキなどで回路を印刷し、それに設けられた所定の箇所にLED素子を埋め込む方式である。この方法は高価なAlNの焼結体を用いることや、金メッキなどの印刷が必要となるために、なかなか安価に製作することはできない。
【0005】
そこで本出願人は、特許文献1に示すように、銅を基本フレームとして、用いる部材としては強度及び耐候性に優れるセラミックスを用いた放熱に有利なフリップチップ実装方式を用いることにより、放熱性を高めたLEDパッケージ用基板を発明した。

【特許文献1】WO2009/051178号国際公開特許 この文献には、放熱をリードフレーム(基本フレーム)を用いて行なう方法が述べられており、また、発熱が大きい場合には基本フレームのチップと裏側方向にヒートシンクを用いる方法が述べられている。
【0006】
前記のように、発熱が大きい場合、対策としてヒートシンクを用いると(引用文献1図4、図5参照)パッケージのコストが上がることになる。また重量も大きくなるために、それを支えるLEDパッケージ自体の全体の構造を若干強固にする必要がある。このこともコストに響くことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
銅などを基本フレームとして、p極とn極とを隔てるために用いる部材としては、強度及び耐候性に優れるセラミックスを用いた放熱に有利なフリップチップ実装方式を用いることにより、放熱性を高めたLEDパッケージ用基板において、発熱が大きい場合でもLEDパッケージ基板にヒートシンクを用いることなく、低コストにてそれと同等以上の放熱特性を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、LED素子を搭載したヒートシンクを有さないLEDパッケージの基板であって、LED素子のn極に接続されるn電極とLED素子のp極に接続されるp電極最狭部の一部または全部にセラミックスが充填されており、前記n電極およびp電極がリードフレームによって形成されたLEDパッケージにおいて、前期リードフレームの少なくとも一部がリードフレームの素子を搭載する面に対して、少なくとも10mm以上、LED素子の方向とは異なる温度のより低い方向に向かって伸びたLEDパッケージ基板である。10mmの基点はリフレクタの端部からである。
【0009】
まず、本発明の特徴としては、コスト面で不利となるヒートシンクをLEDパッケージに有さない。LED素子のp極とn極とにあたる部分はリードフレームによって形成されている。また、素子の周辺は絶縁性のセラミックスを充填する構造が基本となる。
【0010】
この構造では、p極或いはn極のリードフレームについては、素子を搭載する部分とそこから離れた部分の形状は自由に設定することが可能である。そのために、本発明ではリードフレームの端部側を伸ばし、その長さをリフレクタ端部より最低10mmとした。このさらに延びた部分は、LED素子からの熱伝導率は高いままに保たれた状態で連続しているために、放熱用の部分として使用することが可能である。最低を10mmとしたのは、これ以下では放熱の効果が十分でないためである。長さの上限は特に設けていないが、他の部品に影響を与えるように接触、近接しない範囲でないことは言うまでもない。また、前記部分は単なる直線状に限らずに渦巻状や断面をミアンダ型とした形状など、様々な形状であってもよい。また、リードフレームから延びた部分は1本とは限らずに、複数本設けることも可能である。
【0011】
また、前記10mm以上伸ばした部分は、位置的にはLED素子とは異なる方向に伸ばす必要がある。前記部分は放熱が目的であるために、より温度の低い方向へ伸ばす必要がある。そのために発熱するLEDとは異なる方向、具体的にはLEDの発光面の背面に当たる空間に伸ばす必要がある。
【0012】
請求項2に記載の本発明は、前記リードフレームは熱伝導率が300W/m・K以上の銅または銅化合物からなる請求項1に記載のLEDパッケージ基板である。ヒートシンクを用いない本発明品の場合は、リードフレームの熱伝導がその放熱性を大きく左右する。リードフレームの熱伝導率が300W/m・K未満であれば、LED素子から発せられる高熱を十分に逃がすことが難しくなる。この熱伝導率は高ければ高いほどよい。
【0013】
請求項3に記載の本発明は前記リードフレームの延びた部分がLED照明機筐体に固定されている請求項1または2に記載のLEDパッケージ基板である。
【0014】
前記延びた部分は、弾力があるためにそのままでは他の部品などに接して悪影響を与える場合がある。そのためにLED照明機の筐体内部に設けられた窒化アルミ製のワッシャーなど熱伝導率の高い絶縁部と固定することで、放熱性も上がり、p極、n極の絶縁をそこから取ることもできる。
【0015】
請求項4に記載の本発明は、前記リードフレームの延びた部分の一部がLED照明装置の筐体外部に突出しているか、筐体外部に付属したヒートシンクに接した状態で固定されていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載のLEDパッケージ基板である。
【0016】
引用文献1などに示されたヒートシンクは、LED照明機の内部に対して熱を逃がすものであることに対し、本発明はその外部に対して熱を逃がすものである。内部に対して熱を逃がすと内部全体の温度が上がることがあるために、これを主に外部に対して行なうことによりLED照明機内部の温度を低く保つことができる。
【0017】
外部に対して熱を逃がす方法としては、一つ目に外部に対して突出したリードフレームの延びた部分を好ましくは3mm以上設けることであり、もう1つは外部に設けられたヒートシンクと接続することである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下に示す効果のうち、少なくとも1つを実現する。
【0019】
LEDパッケージ基板にヒートシンクを用いないために、コストダウンができる。また、パッケージの重量を軽くすることができる。
【0020】
また、LED筐体外部または筐体外部に設けられたヒートシンクまで前記リードフレームの延びた部分を伸ばすことができるために、引用文献1のようにLED素子近傍にヒートシンクを設けた場合と異なり、LED照明機外部へ熱を逃がすことができる。
【0021】
また、リードフレームの放熱する部分で、絶縁も取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明請求項1に係る発明を、図1および従来技術(引用文献1)を示す図7(引用文献の図4(b)を元にした図)を用いて説明する。
【0023】
引用文献の構造は、図7に示すように、p極、n極を有するリードフレーム101、102の直下に108b、108cに示されたヒートシンクを有している。このヒートシンクを用いて101及び102の向かって上面に搭載されたLED素子の熱を、

LED素子(図示されず、A部)〜リードフレーム(101,102)〜ヒートシンク(108b、108c)〜その下方の空気

の経路で放熱を行なう。
【0024】
ところで、このリードフレーム(108b、108c)は、リフレクタ107で側面を覆うよう図示されているが、側面のすべてを覆う必要はなく、図4中200で示したようにリフレクタ107の外側にそのまま伸ばすことができる。
【0025】
ここで本発明の図1の説明を行なう。
本発明のLEDパッケージ基板は図4に追加で示したリードフレーム部200を、図示するように素子とは異なる方向にさらに10mm以上伸ばしたものである(201)。このLEDパッケージ基板にはヒートシンクは備えていない。伸ばす方向は素子がある方向と異なる方向(この場合は図面下方)とする。この伸ばした部分が素子から発生する熱を、リードフレームの一部として温度が素子の周辺より比較的低いところまで伸びて、放熱を行なう。
【0026】
請求項2に記載の本発明は、前記リードフレームを銅および銅合金で、熱伝導率が300W/m・K以上の高熱伝導の部材で製作するものである。本願発明は、熱の高い素子に近い部分からいかに熱を伝導するかがポイントとなるために、当然ながら熱伝導は高いほうがよい。
【0027】
請求項3に係る発明を図2を用いて説明する。
【0028】
請求項1の説明で得られたリードフレームの延びた部分201を、先端を絶縁部材であり、筐体に固定された受け210にて固定している。固定を行なわないと、特に請求項2で示したような銅や銅合金は柔らかく弾性変形があるために、他の部品に接近したり、接したりすることにより衝撃や熱的な悪影響を加えることがある。そこで、受け210で固定することにより、この問題を解決できる。
【0029】
また、受け210の部材を絶縁部材としたのは、そこからp極、n極の絶縁を取る作用も兼ねることができるためである。さらに、受け210を熱伝導の高い例えば窒化アルミ製とすることにより、よりいっそうの放熱が見込める。
【0030】
請求項4に記載の本発明を図5(a)を用いて説明する。この図には筐体の一部に穴をあけたLED照明機の一般的な構造を、説明のために示している。LEDパッケージ基板は300、そこから伸びたリードフレームを201、LED照明機に設けられた外部と通じる穴部を301とした。なお、図5(b)のようにLED照明機の筐体外部に設けられたヒートシンク302を有している場合もある。
【0031】
図5(a)には、リードフレームの延びた部分の一部がLEDパッケージの外部に突出した模式図を示す。前述のように、LED照明機筐体内部に熱が蓄積されないために、内部の温度を低く保つことができる。
【0032】
また、図5(b)にはリードフレームの延びた部分の先端部がLED照明機の筐体外部に設けられたヒートシンク302と接続されている例を示す。
【0033】
これらの方法を用いることにより、LED照明機の筐体内に熱が蓄積しにくくなるために、また、その放熱部とLEDを搭載しているリードフレームが高熱伝導材によって結ばれているために、その効果はより高くなる。
【0034】
以下実施例により、より詳細に本発明を説明する。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
実施例1として、図2(a)に示すような、LED素子を搭載したヒートシンクを有さない、前記n電極およびp電極がリードフレームによって形成され、リードフレームのうち一部がLED素子とは異なるLED素子とは対向する方向に向かって伸びた部分200を有し、その長さが50mmであるLEDパッケージ基板を作製した。
【0036】
また、実施例2として、試料1と他の部分は同様で、リードフレームの伸びた部分200を図2(b)に示すようにミアンダ状に加工した202とした。この延びた部分の総長さは200mmである。
【0037】
さらに、実施例3として、試料1と他の部分は同様でリードフレームの伸びた部分200を窒化アルミ製の絶縁性の受けであるワッシャー210と密接に固定したものを作製した(図3参照)。
【0038】
またさらに、実施例4として、図5(a)に示すようなリードフレームの伸びた部分201がLED照明機筐体内部で50mm、外部と通じる穴部301を経て外部に10mm突出している試料を用いた。
【0039】
最後に、実施例5として、図5(b)に示すように、実施例4と同様でリードフレームの伸びた部分201がその端部にて、LED照明機筐体の外部に設けられたヒートシンク302に接続した試料を用いた。
【0040】
比較例1として、図7に示すような引用文献1に示されたヒートシンクを用いた試料を用意した。
【0041】
また、比較例2として、図8に示すように比較例1と他の部分は同様で、ヒートシンク108b、108cのみを外した試料を用いた。
【0042】
これらの実施例、比較例の試料を用いてLED素子を10個搭載したものに、電圧直流5V、電流0.3Aで通電し、素子の表面温度をサーモグラフィーにて点灯時より連続して測定した。
【0043】
なお、温度を正確に測るために、通常LED素子を封止する封止材は用いていない。
【0044】
その結果、図6に示す結果を得た。
【0045】
比較例1は従来技術であり、ヒートシンクを用いた試料のデータである。温度は約50℃にて安定する。
【0046】
これと比較して、実施例1は安定する温度が比較例1よりやや高かったが、実用には十分な値(約60℃)であった。
【0047】
また、実施例2及び3は、比較例1と比較して若干低い温度に留まり、リードフレームの伸びた部分による放熱効果が確認された。
【0048】
なお、比較例2はLEDパッケージにはヒートシンクもリードフレームの伸びた部分も有さない比較例であるが、他の実施例、比較例と比較して極めて温度が上がり、実用できない範囲であった。
【0049】
また、実施例1と2との比較により、リードフレームの伸びた部分200は、その総延長が長く、面積が広いほうがその効果が高まることが分かった。
【0050】
さらに、実施例1と実施例3の比較より、受け210があるほうが、より放熱が高まることが分かった。なお、実施例3の形態では、リードフレームの伸びた部分200を固定しているために、外部からの衝撃や、移動においても有利であるし、絶縁を確実に取ることもできた。
【0051】
実施例4及び5の試料では、放熱の先が筐体外部であるために、比較例1の試料と比較して、明らかに温度が低く保たれ、優位性が見られた。特に、試料5では本実験で最も温度の低い値を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のリードフレームの一部を素子のある方向意外に伸ばした模式図である。
【図2】(a)本発明のリードフレームの一部を素子のある方向意外に伸ばした模式図である。(b)リードフレームの伸ばした部分をミアンダ状とした模式図である。
【図3】本発明のリードフレームの一部を筐体に固定した受けで固定した模式図である。
【図4】従来技術のLEDパッケージ基板の模式図である。
【図5】LED照明装置の筐体に外部へ通じる穴部を有したものに対して、リードフレームの一部を(a)一部を突き出したもの(b)筐体外部のヒートシンクに固定したもの の模式図である。
【図6】本発明の実施例と比較例とを用いた場合の、LED素子の温度変化である。
【図7】従来技術のLEDパッケージの模式図である。
【図8】従来技術のLEDパッケージからヒートシンクを取り除いた模式図である。
【符号の説明】
【0053】
A LED素子搭載部
101、102 リードフレームによるp極およびn極
103 セラミックス
107 リフレクタ
108(a)、(b)ヒートシンク
150 LED照明機の筐体
151 プリント基板
152 リフレクタ
153 レンズ
154 電子部品
155 プリント基板と筐体の固定部品
200 リードフレームの一部
201、202 リードフレームを伸ばした部分
210 筐体に固定された受け
300 LEDパッケージ
301 筐体と外部の連通部
302 筐体外部のヒートシンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED素子を搭載し、ヒートシンクを有さないLEDパッケージの基板であって、LED素子のn極に接続されるn電極とLED素子のp極に接続されるp電極との最狭部の一部または全部にセラミックスが充填されており、前記n電極およびp電極がリードフレームによって形成されたLEDパッケージ基板において、
前期リードフレームの少なくとも一部がリードフレームの素子を搭載する面に対して、少なくとも10mm以上LED素子の方向とは異なる温度のより低い方向に向かって伸びたLEDパッケージ基板。
【請求項2】
前記リードフレームは熱伝導率が300W/m・K以上の銅または銅化合物からなる請求項1に記載のLEDパッケージ基板。
【請求項3】
前記リードフレームの延びた部分がLED照明機筐体に固定されている請求項1または2に記載のLEDパッケージ基板。
【請求項4】
前記リードフレームの延びた部分の一部がLED照明装置の筐体外部に突出しているか、筐体外部に付属したヒートシンクに接した状態で固定されていることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載のLEDパッケージ基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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