説明

LED封止剤

【課題】低透湿性に優れたオルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる封止剤。
【解決手段】オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られるLED封止剤であって、当該封止剤の水蒸気透過率が、50g/m2/24h以下であることを特徴とするLED封止剤。(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒および(D)シリコーン系粒子を含む組成物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低透湿度にすぐれるLED封止剤に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の発光素子を大気中の水分やゴミから保護するために用いられる封止剤には、従来からシリコーンゴムが用いられてきた(例えば特許文献1)。しかしながらシリコーンゴムは透湿度が高く、長期間の使用により発光素子の発光特性の低下が起こる場合があった。これに対して、シリコーンレジンを封止剤に用いる検討がなされている(例えば特許文献2)。シリコーンゴムに比べ透湿度の低いシリコーンレジンは、発光素子に対する密着性や耐冷熱衝撃性に劣る点があり、低い透湿度と高い耐冷熱衝撃性を兼ね備えたLED封止剤が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−19205号公報
【特許文献2】特開2004−221308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記現状に鑑みなされたもので、低透湿性に優れるLED封止剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、特定のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物から、低透湿度に優れるLED封止剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本願発明は以下の構成を有するものである。
【0006】
1) オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られるLED封止剤であって、当該封止剤の透湿度が、50g/m2/24h以下であることを特徴とするLED封止剤。
【0007】
2) 前記オルガノポリシロキサン組成物中のアリール基含有量が3モル%以下であることを特徴とする1)に記載のLED封止剤。
【0008】
3) 前記封止剤のショアD硬度が20以上であることを特徴とする1)または2)に記載のLED封止剤。
【0009】
4) 前記オルガノポリシロキサン組成物が、(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒および(D)シリコーン系粒子を含むことを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載のLED封止剤。
【0010】
5)(A)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする4)の記載のLED封止剤。
【0011】
6)(B)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(4)、(5)
b1b22SiO1/2(4)
b23SiO1/2(5)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2は水素原子、またはアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(4)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする4)または5)に記載のLED封止剤。
【0012】
7)(D)成分が、シリコーン粒子(D−1)に、アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第1シェル成分(D−2)、さらにその後アルコキシシラン縮合物を添加して縮合させて得られる第2シェル成分(D−3)からなる、シリコーン粒子コア−アルコキシシラン縮合物シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする4)〜6)いずれかに記載のLED封止剤。
【0013】
8)(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が、下記(a)成分を必須成分とし、下記(b)成分、下記(c)成分および下記(d)成分の少なくとも1種を縮合してなることを特徴とする、7)に記載の封止剤。
(a)成分:一般式(6)
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R12はアルキル基を示し、R13、R14およびR15は、同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される1官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(7)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0022】
9)(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が、下記(b)成分、下記(c)成分および下記(d)成分の少なくとも1種を縮合してなることを特徴とする、7)または8)に記載のLED封止剤。
(b)成分:一般式(7)
【0023】
【化5】

【0024】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0029】
10)(D−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(D−1)成分と(D−2)成分と(D−3)成分は、合わせて100重量%)であることを特徴とする、7)〜9)いずれかに記載のLED封止剤。
【0030】
11) 1)〜10)いずれかに記載のLED封止剤を使用したLED。
【発明の効果】
【0031】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物からは、低透湿度のLED封止剤が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0033】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を用いたLED封止剤の透湿度は50g/m2/24h以下、さらには45g/m2/24h以下、特には30g/m2/24h以下、であることが好ましい。
【0034】
本発明における透湿度は、例えば、LEDにおける銀リードフレーム等の腐食性抑制の目安となる値である。封止剤の透湿度が高い場合、具体的には、50g/m2/24hより高い場合においては、水分、更には、酸素等のガスも透過しやすく、LEDの銀リードフレームが腐食され、LEDの発光特性の低下を招く恐れがある。
【0035】
本発明における透湿度とは以下の方法に従って算出されるものである。
【0036】
5±0.1cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5±0.1cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1±0.1gをロの字型内に充填する。さらに上部に5±0.1cm角の評価用硬化物(3mm厚)を固定し、これを試験体とする。試験体を恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生する。
式(10)に従い、透湿度を算出する。
【0037】
透湿度(g/m2/24h)=[(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))]/10000/9cm2 (10)
また、本発明における硬化物の硬度は、ショアD硬度で20以上であることが好ましく、ショアD硬度で30以上がさらに好ましい。ショアD硬度で20未満では、LED封止剤として使用した場合に、半導体素子と電極をつないでいるボンディングワイヤーが外力によって断線することがある。
【0038】
<オルガノシロキサン>
本発明におけるオルガノシロキサン組成物は、硬化させることでLED封止剤となるものである。
【0039】
本発明におけるオルガノポリシロキサン組成物のアリール基含有量は、3モル%以下であることが好ましく、さらには1モル%以下、特には0モル%であることが好ましい。アリール基の含有量が多い場合は、耐熱耐光性が低下し、着色等が起こる恐れがある。
【0040】
また本発明におけるオルガノシロキサン組成物の構造は特に限定はしないが、シロキサン結合を有し、ケイ素原子に有機基あるいは水素原子が結合したものであれば良く、例えば、(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)シリコーン系粒子を含む硬化性組成物が挙げられる。
【0041】
(A)成分、(B)成分および(D)成分の配合量は、(A)成分と(B)成分と(D)成分の合計100重量部に対して、(A)成分98〜1重量部、(B)成分98〜1重量部および(D)成分50〜1重量部であることが好ましい。(A)成分と(B)成分と(D)成分の合計100重量部に対して、(A)成分94〜3重量部、(B)成分94〜3重量部および(D)成分45〜3重量部であることがより好ましく、(A)成分90〜5重量部、(B)成分90〜5重量部および(D)成分40〜5重量部であることが、さらに好ましい。
【0042】
(A)成分の配合量が多いと、十分な硬度の硬化物が得られなかったり、硬化物が着色したりする場合がある。また少ないと十分な硬度の硬化物が得られない場合がある。(B)成分の配合量が多いと、十分な硬度の硬化物が得られなかったり、硬化の際に発泡し気泡が硬化物中に残留したりする場合がある。また少ないと十分な硬度の硬化物が得られない場合がある。(D)成分の配合量が多いと、配合時に増粘したり、硬化物の透明性が低下したりする場合がある。また少ないと耐冷熱衝撃性が不十分になる場合がある
【0043】
(C)成分の使用量については、(A)成分のアルケニル基1モルに対し、白金原子として10-1〜10-10 モルの範囲で用いるのが好ましく、10-4〜10-8 モルの範囲で用いるのがより好ましい。白金触媒が多すぎると短波長の光を吸収するため、得られた硬化物の耐光性が低下するおそれがあり、また少なすぎるとマトリクスが硬化しない場合がある。
【0044】
オルガノポリシロキサン組成物の粘度は、配合直後の粘度から次第に増加する場合があるが、この増加幅は、取り扱いのしやすさや品質安定の観点から、小さい方が好ましい。この粘度の増加幅の範囲は、25℃で24時間放置後の値が配合直後の値と比較して、20%以内が好ましく、10%以内がより好ましい。
【0045】
<(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン>
本発明における(A)成分は、後述の(B)成分である一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、ヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0046】
直鎖状の(A)成分の例としては、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0047】
また環状の(A)成分の例としては、1,3,5,7−テトラビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0048】
また三次元架橋構造を有する(A)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
s1s22SiO1/2(2)
s23SiO1/2(3)
(式中、Rs1はアルケニル基、Rs2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有するものが例示される。
【0049】
上記一般式(1)、一般式(2)および一般式(3)で表される(A)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、架橋密度が高いので、高硬度で高強度の硬化物が得られるので好ましい。
【0050】
前記アルケニル基は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が好ましく、入手性、また、耐熱性・耐光性の観点からビニル基がさらに好ましい。
【0051】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からメチル基がさらに好ましい。
【0052】
更に上記(A)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0053】
<(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン>
本発明における(B)成分は、(A)成分とヒドロシリル化反応により硬化し、シリコーン系マトリクスを形成するものである。このため、1分子中に2個以上のヒドロシリル基を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであれば、特に限定は無く、広く公知のものを使用することができる。またその構造も直鎖状、分岐鎖状、環状および三次元架橋構造を有するもののいずれであってもよい。
【0054】
直鎖状の(B)成分の例としては、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体などが例示されうる。
【0055】
また環状の(B)成分の例としては、1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示されうる。
【0056】
また三次元架橋構造を有する(B)成分の例としては、特に限定はしないが、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(4)、(5)
b1b22SiO1/2(4)
b23SiO1/2(5)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2は水素原子、またはアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(4)で少なくとも2つ封鎖された構造を有するものが好ましいものとして例示される。
【0057】
上記一般式(1)、一般式(4)および一般式(5)で表される(B)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、架橋密度が高いので、高硬度で高強度の硬化物が得られるので好ましい。
【0058】
またアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される、同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8の非置換又は置換の一価の炭化水素基が例示でき好ましい。中でも、耐熱性や耐光性の観点からはメチル基がさらに好ましい。
【0059】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、前述の(A)成分のアルケニル基に対して(B)成分のヒドロシリル基が30〜500モル%、好ましくは40〜200モル%となる割合であることが望ましい。
【0060】
更に上記(B)成分は、取り扱いが容易であることから、室温において液状であることが好ましく、その室温における粘度が1000Pa・s以下であることが好ましく、100Pa・s以下であることがより好ましい。
【0061】
<(C)ヒドロシリル化触媒>
本発明における(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては、例えば白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒を添加することができる。前記白金系触媒としては公知のものが使用でき、具体的には白金元素単体、白金化合物、白金複合体、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物、エーテル化合物、各種オレフィン類やビニルシロキサンとのコンプレックスなどが例示される。白金系触媒の添加量は、(A)成分のアルケニル基1モルに対し、白金原子として10-1〜10-10モルの範囲で用いるのが好ましく、10-4〜10-8モルの範囲で用いるのがより好ましい。白金触媒が多すぎると短波長の光を吸収するため、得られた硬化物の耐光性が低下するおそれがあり、また少なすぎるとマトリクスが硬化しない場合がある。
【0062】
<(D)シリコーン系重合体粒子>
(D)成分は、シリコーン系の粒子であり、コアシェル構造を有することが好ましい。なお本発明におけるコアシェル構造とは、例えばコアとなる粒子の存在下、コアを形成するモノマー成分とは異なる組成や成分からなるモノマー成分を反応させることで得ることができる。シェル成分をコア粒子に吸収させながらコアシェル構造を形成したり、コア部からシェル部への傾斜構造等を形成したりすることも可能であるが、コア粒子との反応性を有するシェル成分を用い、コア粒子の外側にシェル部を形成したような構造を有する粒子が好ましい構造として例示される。
【0063】
(D−1)成分であるシリコーン粒子と、(D−2)成分である第1シェル成分と、(D−3)成分である第2シェル成分のコアシェル構造を有することにより、(D)成分の表面のシラノール基を減少させることができる。これにより、例えばマトリクスとの親和性や相溶性を向上させることができ、さらにマトリクスに配合した際の配合物の粘度が高くなりすぎたりすることを防ぐことができる。さらにこの配合物の経時変化、特に粘度上昇を防ぐことも可能である。
【0064】
また(D)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物は、吸湿性が低く、耐冷熱衝撃性を向上させる点で好ましい。
【0065】
(D−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(D−1)成分と(D−2)成分と(D−3)成分を合わせて100重量%)であることが好ましい。
【0066】
さらには(D−1)成分であるシリコーン粒子35〜96重量%に対して、(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が2〜37重量%、(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が2〜28重量%被覆した重合体であることがより好ましい。
【0067】
(D−1)成分が少ない場合、粒子の柔軟性が損なわれるため、(D)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の耐冷熱衝撃性が低下する場合がある。(D−2)成分が少ない場合、(D)成分が本来の粒子の形状を維持できずにマトリクス中に(D)成分が流出し、オルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の強度を低下させるなど物性の低下を招くことがある。
【0068】
また(D−3)成分が少ない場合、(D)成分表面のシラノール基が十分に減少させることができず、例えばマトリクスとの相溶性が不十分になったり、配合組成物の粘度が高くなったり、経時的に増粘したり、(D)成分を配合したオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の吸湿性が増加して耐冷熱衝撃性が低下したりすることもある。
【0069】
(D−1)成分は、シリコーン粒子であれば良いが、一般式(11)
amSiO(4-m)/2(11)
(式中、Raは置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。mは0〜3の整数を示す。)で表される構造単位を有するオルガノシロキサンから成ることが好ましい。
【0070】
また(D−1)成分は、上記一般式(11)でm=2の構造単位が、(D−1)成分の70モル%以上を占めていることが好ましく、さらに好ましくは80モル%以上を占めていることが好ましい。この成分が少ないと(D−1)成分の柔軟性が損なわれるため、(D)成分をマトリクスに配合して得られるオルガノポリシロキサン組成物の、硬化後の耐冷熱衝撃性が低下したりする場合がある。
【0071】
(D−1)成分はオルガノシロキサンの重合により得ることができるが、そのオルガノシロキサンは、直鎖状、分岐状および環状構造のいずれであってもよいが、入手の容易さやコストの観点から、環状構造を有するオルガノシロキサンを用いるのが好ましい。
【0072】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサンなどの環状化合物のほかに、直鎖状あるいは分岐状のオルガノシロキサンを挙げることができる。これらオルガノシロキサンは、単独または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0073】
このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の一価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、およびそれらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などをあげることができる。
【0074】
また(D−1)成分の分子の末端がシラノール基であることが好ましい。分子の末端にシラノール基を有していることで、後述の(D−2)成分との間で縮合反応により結合を形成するため、安定的なコア−シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子を得ることができる。
【0075】
(D−1)成分の製造方法には、特に限定はないが、通常の乳化重合、分散重合、溶液重合などでも得ることが可能であり、粒径の制御が可能で分布ある点や、操作の簡便性等の点を考慮すると、乳化重合で得ることが好ましい。
【0076】
(D−1)成分は、より粒子径の小さい粒子を得ることができ、さらにラテックス状態での粒子径が狭くできる利点などからもシード重合を利用することが好ましい。シード重合に用いるシードポリマーは特に限定は無いが、アクリル酸ブチルゴム、ブタジエンゴム、ブタジエン−スチレンやブタジエン−アクリロニトリルゴム等のゴム成分、アクリル酸ブチル−スチレン共重合体やスチレン−アクリロニトリル共重合体等の重合体を用いることができる。
【0077】
(D−1)成分は、例えば、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応が速く進行するため有利である。たとえば上記のオルガノシロキサンを含んだ各種原料を、乳化剤および水とともにホモミキサー、コロイドミル、ホモジナイザーなどを用いてエマルジョンとし、ついで、系のpHを酸成分で5以下、好ましくは4以下に調整し、加熱して重合させる。この際に用いる酸成分としては、安定して乳化重合を進行させることができ、またそれ自身も乳化能を併せ持つものが好ましく、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホコハク酸などが例示されうる。
【0078】
なお、原料の全部を一括添加したのち、一定時間撹拌してからpHを任意の値に調整してもよく、また原料の一部を仕込んでpHを任意の値に調整したエマルジョンに残りの原料を逐次追加してもよい。逐次追加する場合、そのままの状態、または水および乳化剤と混合して乳化液とした状態のいずれで添加してもよいが、重合速度を速くすることができるので、乳化状態で追加する方法を用いることが好ましい。反応温度、時間は、反応制御の容易さから反応温度は0〜100℃が好ましく、50〜95℃がさらに好ましい。反応時間は、好ましくは1〜100時間であり、さらに好ましくは3〜50時間である。
【0079】
酸性条件下で重合を行う場合、通常、(D−1)成分の骨格を形成しているSi−O−Si結合は、切断と結合生成の平衡状態にある。この平衡は温度によって変化し、低温になるほど高分子量の(D−1)成分が生成しやすくなる。したがって、高分子量の(D−1)成分を得るためには、加熱により重合した後、重合温度以下に冷却して熟成を行うことが好ましい。
【0080】
具体的には、50℃以上で重合を行い重合転化率が75〜90%、さらに好ましくは82〜89%に達した時点で加熱を止め、重合温度より低い温度例えば、10〜50℃、好ましくは20〜45℃に冷却して5〜100時間程度熟成を行うことができる。なお、ここで言う重合転化率は原料中の低揮発分のオルガノシロキサンの(D−1)成分への転化率を意味する。
【0081】
乳化重合に用いる水の量についてはとくに制限は無く、各種原料を乳化分散させるために必要な量であれば良く、あえて例示するなら通常原料の合計量に対して1〜20倍の重量を用いれば良い。
【0082】
乳化重合に用いる乳化剤は、反応を行うpH領域において乳化能を失わないものであれば特に限定なく公知のものを使用することができる。かかる乳化剤の例としては、たとえばアルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルホン酸ナトリウムなどが挙げられる。また、該乳化剤の使用量にはとくに限定がなく、目的とする(D−1)成分の粒子径などに応じて適宜調整すればよい。
【0083】
乳化剤の使用量は、充分な乳化能が得られ、かつ得られる(D−1)成分と、それから得られる、前記(D)成分であるシリコーン系重合体粒子の物性に悪影響を与えないという点から、あえて例示するならラテックスに対して0.005〜20重量%用いるのが好ましく、特には0.05〜15重量%用いるのが好ましい。
【0084】
(D−1)成分のラテックス状態のシリコーン粒子の体積平均粒径は、0.005μm〜3.0μmが好ましく、0.01μm〜2.0μmがより好ましく、0.05μm〜0.5μmが特に好ましい。体積平均粒径が小さいものは安定的に得ることは難しく、大きいと硬化物の透明性が悪くなる場合がある。なお、体積平均粒径の測定は、例えば、ナノトラック粒度分析計UPA150(日機装株式会社製)を用いて行うことができる。
【0085】
本発明に用いる(D−1)成分の合成の際に、必要によっては架橋剤、グラフト交叉剤と言われるものを使用することもできる。
【0086】
本発明の(D−1)成分の合成に用いることができる架橋剤としては、例えば、トリメトキシメチルシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシランなどの縮合反応に関与できる官能基を3個含むいわゆる3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン、1,3ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,3−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−3−〔2−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕ベンゼン、1−〔1−(ジメトキシメチルシリル)エチル〕−4−〔2−ジメトキシメチルシリル〕エチル〕ベンゼンなどの縮合反応に関与できる官能基を4個含むいわゆる4官能性架橋剤、さらにはこれら架橋剤のアルコキシ基を縮合させた部分縮合物を挙げることができる。
【0087】
これら架橋剤は、必要に応じ、1種若しくは2種以上組み合わせて用いることができる。この架橋剤の使用量は、(D−1)成分の内、0.1〜10重量%がこのましい。架橋剤の使用が多いと、(D−1)成分の柔軟性が損なわれるため、(D)成分をマトリクスに配合した際に、オルガノポリシロキサン組成物の低温での耐冷熱衝撃性が低下する場合がある。また架橋剤の使用量を調節することで、架橋度を変化させることにより(D−1)成分の弾性を任意に調節することができる。
【0088】
本発明に用いることができるグラフト交叉剤は、例えば、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルエチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、テトラビニルテトラメチルシクロシロキサン、アリルメチルジメトキシシラン、メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等があげられる。
【0089】
本発明に第1シェル成分(D−2)用いることにより、(D)成分の粒子としてのモルフォロジーを保持することが可能である。例えばオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の耐冷熱衝撃性向上に寄与することができる。
【0090】
本発明の(D−2)成分に用いるアルコキシシランは、以下の一般式(7)で表される(b)成分である2官能性アルコキシシラン化合物、一般式(8)で表される(c)成分である3官能性アルコキシシラン化合物、一般式(9)で表される4官能性アルコキシシラン化合物、およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)等を用いることが可能であり、これらを加水分解・縮合させることで(D−2)成分が得られる。これらアルコキシシランは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
(b)成分:一般式(7)
【0091】
【化8】

【0092】
(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【0093】
【化9】

【0094】
(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【0095】
【化10】

【0096】
(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【0097】
上記一般式(7)〜(9)において挙げられるアルコキシ基としては、たとえばメトキシ、エトキシ、ノルマルプロポキシ、イソプロポキシ、ノルマルブトキシ、イソブトキシ、第2級ブトキシ、第3級ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等の、炭素数1〜6のアルコキシ基である。またアルコキシ基以外の一価の有機基としては、たとえばアルキル基、アルケニル基、アリル基、アラルキル基等があげられる。
【0098】
アルコキシシラン化合物を用いて(D−2)成分を得る重合方法は、乳化重合を用いることができる。乳化重合の条件は一般的な条件が適用できるが、特に重合温度に注意を払うことが好ましい。重合の際の温度は、20〜85℃を適用することが好ましい。また、重合時間は1〜50時間が適用できる。
【0099】
また(D―2)成分は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応の際にゲル化を抑制しやすい等の理由により有利である。
【0100】
本発明に用いるアルコキシシラン縮合物(D−3)により、(D−1)成分と(D−2)成分の表面に多数存在するシラノール基を減らすことができる。これにより、粒子表面のシラノール基に由来する様々な課題、例えば(D)成分とマトリクスとの相溶性や親和性の低下する課題や、シリコーンゴムやシリコーン樹脂に配合した際に配合物の粘度が高くなりすぎてしまう課題や、配合物が経時変化して粘度が次第に上昇する課題を解決することができる。
【0101】
またこのようなシラノール基が多数含まれる粒子を配合した際に、例えば硬化物の吸湿の原因となり、冷熱試験の際にクラックが生じたりすることもあったが、このような点も解決できる。
【0102】
本発明の(D−3)成分はアルコキシシランの縮合物を用いる。アルコキシシランとしては、以下の一般式(6)で表される(a)成分である1官能性アルコキシシラン化合物およびそれらの部分縮合物(アルコキシ基を縮合させた部分縮合物)を必須成分とすることが好ましい。これらは1種類でも2種類以上でも用いることができる。
(a)成分:一般式(6)
【0103】
【化11】

【0104】
(一般式(6)において、R12はアルキル基を示し、R13、R14、R15は同一または異なる一価の有機基を示す。)
【0105】
さらに(D−3)成分は、前記(b)成分、前記(c)成分および前記(d)成分の少なくとも1種を縮合してなることが好ましい。(a)成分と、(b)成分、(c)成分および(d)成分の少なくとも1種とを組み合わせることで、(a)成分が(D)成分中に効率よく取り込む込まれることが可能となる。
【0106】
またここで(a)〜(d)のうちいずれかでアルケニル基を含む成分を用いれば、(D)成分にアルケニル基を導入できる。(D)成分へのアルケニル基の導入は、ヒドロシリル化反応により硬化する(A)成分および(B)成分からなるマトリクス成分に、(D)成分を配合する場合、(D)成分とマトリクス成分との間で結合を形成するため、本願発明のオルガノポリシロキサン組成物から得られる硬化物の強度を向上させることができるので好ましい。
【0107】
アルコキシシラン化合物を用いて(D−3)成分を得る重合方法は、乳化重合を用いることができる。乳化重合の条件は一般的な条件が適用できるが、特に重合温度に注意を払うことが好ましい。重合の際の温度は、20〜85℃を適用することが好ましい。また、重合時間は1〜50時間が適用できる。
【0108】
また(D―3)成分は、酸性もしくは塩基性条件下で行われる通常の乳化重合方法により製造することができるが、酸性条件下で反応させる方が、塩基性条件下で反応させるよりも、アルコキシシランの縮合反応の際にゲル化を抑制しやすい等の理由により有利である。
【0109】
乳化重合によって得られた(D)成分であるシリコーン系重合体粒子のラテックスから粒子を分離する方法としては、特に限定は無いが、たとえばラテックスに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの金属塩を添加することによりラテックスを凝固、分離、水洗、脱水し、乾燥する方法などがあげられる。また、スプレー乾燥法も使用できる。
【0110】
ラテックスから粒子を分離する方法は、(D)成分をマトリクス樹脂中に均一に分散させることが可能であり、さらに透明な硬化物を得ることができる点から、マスターバッチ法を用いるのが好ましい。
【0111】
マスターバッチ法は、水系ラテックス溶液に水に可溶あるいは部分可溶な有機溶剤、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、2−プロパノール等)やケトン類(メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、酢酸エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メチル)等などを加えることで、粒子どうしを緩凝集させた後、遠心沈降や濾過などの方法で緩凝集体を回収し、この緩凝集体が分散可能な溶剤に再分散させてからマトリクス樹脂と混合し、溶媒を留去させる方法により得ることが出来る。
【0112】
本発明の特徴を妨げない範囲で、得られた(D)成分を表面処理することができる。表面処理を行うことにより、(D)成分とマトリクス成分との親和性を向上させることができる。
【0113】
この際に用いる表面処理剤としては、例えば、シリル化剤を用いることができる。ここで用いるシリル化剤としては、一般的にアルキルシラン、例えば、トリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチル(ジ)シラザンが挙げられる。これらシリル化剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0114】
また表面処理の際に、マトリクス成分と結合能を有する官能基、例えばアルケニル基、アルキニル基等を(D)成分の表面に導入することで、(D)成分とマトリクス成分との間に結合が形成されてオルガノポリシロキサン組成物全体の強度を向上させることができる。
【0115】
このマトリクス成分との結合能を有する官能基を重合体表面に導入する際のシリル化剤としては、一般的にアルケニルシラン、例えばクロロジメチルビニルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジビニルシラン、トリクロロビニルシランが挙げられる。これらシリル化剤は、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0116】
<組成物およびLED封止剤>
本発明のLED封止剤においては、基材との接着性を確保するために、接着付与剤を添加することができる。
【0117】
本発明における接着性付与剤としては、シランカップリング剤、ほう素系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を好適に使用することが可能である。
【0118】
前記、シランカップリング剤の例としては、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基と、ケイ素原子結合アルコキシ基を有するシランカップリング剤が好ましい。前記官能基については、中でも、硬化性及び接着性の点から、分子中にエポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。
【0119】
具体的に例示すると、エポキシ官能基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0120】
また、メタクリル基あるいはアクリル基とケイ素原子結合アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物としては3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシランが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0121】
ほう素系カップリング剤の例としては、ほう酸トリメチル、ほう酸トリエチル、ほう酸トリ−2−エチルヘキシル、ほう酸ノルマルトリオクタデシル、ほう酸トリノルマルオクチル、ほう酸トリフェニル、トリメチレンボレート、トリス(トリメチルシリル)ボレート、ほう酸トリノルマルブチル、ほう酸トリ−sec−ブチル、ほう酸トリ−tert−ブチル、ほう酸トリイソプロピル、ほう酸トリノルマルプロピル、ほう酸トリアリル、ほう素メトキシエトキサイドが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0122】
チタン系カップリング剤の例としては、テトラ(n−ブトキシ)チタン,テトラ(i−プロポキシ)チタン,テトラ(ステアロキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ−ビス(アセチルアセトネート)チタン,i−プロポキシ(2−エチルヘキサンジオラート)チタン,ジ−i−プロポキシ−ジエチルアセトアセテートチタン,ヒドロキシ−ビス(ラクテト)チタン、i−プロピルトリイソステアロイルチタネート,i−プロピル−トリス(ジオクチルピロホスフェート)チタネート,テトラ−i−プロピル)−ビス(ジオクチルホスファイト)チタネート,テトラオクチル−ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,i−プロピルトリオクタノイルチタネート,i−プロピルジメタクリル−i−ステアロイルチタネートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0123】
また、アルミニウム系カップリング剤としては、アルミニウムブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムエチルアセトアセトナート、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレートが例示されるが、これらに限定されるわけではない。
【0124】
本発明における接着性付与剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。添加量は、(A)成分および(B)成分の合計重量の0.05〜30重量%であることが好ましい。また、接着性付与剤の種類あるいは添加量によっては、マトリクス樹脂のヒドロシリル化反応を阻害するものがあるため、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。
【0125】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物の保存安定性を改良する目的、あるいは硬化過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては公知のものが使用でき、具体的には脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらを単独使用、または2種以上併用してもかまわない。
【0126】
前記の脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、2−フェニル−3−ブチン−2−オール、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ヘキシン−3−オール、3−エチル−1−ペンチン−3−オール、2−メチル−3−ブチン−2−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、エン−イン化合物類、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸エステル類等が例示されうる。
【0127】
有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示されうる。有機イオウ化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示されうる。
【0128】
窒素含有化合物としては、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N′,N′−テトラエチルエチレンジアミン、N,N−ジブチル−1,4−ブタンジアミン、2,2’−ビピリジン等が挙げられる。
【0129】
スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示されうる。有機過酸化物としては、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸t−ブチル等が例示されうる。
【0130】
硬化遅延剤の添加量は、特に限定するものではないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対して10-1〜104モルの範囲で用いるのが好ましく、1〜103モルの範囲で用いるのがより好ましい。また、これらの硬化遅延剤は単独で使用してもよく、2種類以上組み合わせて使用してもよい。
【0131】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じ増量剤として粉砕石英、炭酸カルシウム、カーボンなどの充填剤を添加してもよい。
【0132】
また、本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物には、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて着色剤、耐熱性向上剤などの各種添加剤や反応制御剤、離型剤あるいは充填剤用分散剤などを任意で添加することができる。
【0133】
この充填剤用分散剤としては、例えば、ジフェニルシランジオール、各種アルコキシシラン、カーボンファンクショナルシラン、シラノール基含有低分子量シロキサンなどが挙げられる。
【0134】
また、本発明記載のオルガノポリシロキサン組成物を難燃性、耐火性にするためには二酸化チタン、炭酸マンガン、Fe23、フェライト、マイカ、ガラス繊維、ガラスフレークなどの公知の添加剤を添加してもよい。なお、これら任意成分は、本発明の効果を損なわないように最小限の添加量に止めることが好ましい。
【0135】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物は、上記した成分を2本ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの混練機を用いたり、遊星式攪拌脱泡機を用いて均一に混合し、必要に応じ加熱処理を施したりすることにより得ることができる。
【0136】
本発明記載のオルガノポリシロキサン組成物は、成形体として使用することができる。成形としては、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形、発泡成形、射出成形、注型成形などの任意の成形加工法を例示することができる。
【0137】
本発明に用いるオルガノポリシロキサン組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
【0138】
反応温度としては種々設定できるが、25℃〜300℃の温度範囲が好ましく、30℃〜280℃がより好ましく、35℃〜260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
【0139】
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
【0140】
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
【0141】
本発明のオルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られる硬化物は、LED封止剤として用いることができる。
【実施例】
【0142】
以下の実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0143】
(冷熱衝撃試験用硬化物作成)
株式会社エノモト製LEDパッケージ(品名:TOP LED 1−IN−1)に、0.4mm×0.4mm×0.2mmの単結晶シリコンチップ1個を、株式会社ヘンケルジャパン製エポキシ系接着剤(品名:LOCTITE348)で貼り付け、150℃で30分オーブンに入れて固定した。ここに得られた液状混合物を注入し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させて試料を作成した。
【0144】
(透湿性評価試験用硬化物作成)
封止剤を型に充填し、対流式オーブンで80℃×2時間、100℃×1時間、150℃×5時間熱硬化させて厚さ3mmの試料を作成した。この硬化物を室温25℃、湿度55%RHの状態で24時間養生した。
【0145】
(冷熱衝撃試験)
評価用硬化物を、熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)によって、高温保持100℃、5分間、低温保持−40℃、5分間のサイクルを100サイクル行った後、試料を観察した。試験後、目視で変化が無ければ○、クラックが入ったり、パッケージとの間に剥離が起きたりした場合は×とした。
【0146】
(透湿性試験)
本発明における透湿度とは以下の方法に従って算出したものである。
【0147】
5cm角の板ガラス(0.5mm厚)の上部に5cm角のポリイソブチレンゴムシート(3mm厚、ロの字型になるように内部の3cm角を切り取ったもの)を固定した治具を作製し、和光純薬工業製塩化カルシウム(水分測定用)1gをロの字型内に充填した。さらに上部に5cm角の評価用硬化物(3mm厚)を固定し、試験体を得た。試験体を恒温恒湿機(エスペック製 PR‐2KP)内で温度40℃、湿度、90%RHで24時間養生し、試験前後における試験体の総重量を測定した。
式(10)に従い、透湿度を算出した。
【0148】
透湿度(g/m2/24h)=[(透湿性試験後の試験体総重量(g))−(透湿性試験前の試験体総重量(g))]/10000/9cm2 (10)
【0149】
(ショアD硬度)
JIS K6253に記載の方法に準じて、(株)高分子計器製タイプD硬度計を用いて測定した。測定5回の測定値の平均値を採用した。試験片は原則として、試験前に温度23±2℃、相対湿度50±5%で24時間以上、状態調節したものを用いた。
【0150】
(合成例1)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに純水400重量部および10重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム12重量部(固形分)を混合したのち窒素雰囲気下で50℃に昇温した。その後アクリル酸ブチル(BA)10重量部、t−ドデシルメルカプタン3重量部、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.01重量部(固形分)を加えた。
【0151】
30分後、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.18部、エチレンジアミン4酢酸2ナトリウム(EDTA)0.019重量部、硫酸第一鉄0.019重量部を添加し、1時間攪拌した。BA90重量部、t−ドデシルメルカプタン27重量部、および、パラメンタンハイドロパーオキサイド0.18重量部(固形分)の混合液を3時間かけて連続追加した。さらに1時間の後重合を行い、シードポリマー(体積平均粒径0.020μm)を含むラテックスを得た。
【0152】
次に、撹拌機、還流冷却器、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、上述のシードポリマーを2.0重量部(固形分)、10重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸1.5重量部(固形分)および純水300重量部(シードポリマーを含むラテックスからの持ち込み分を含む)を仕込んだ後、10分間攪拌してから、窒素雰囲気下で系を80℃に昇温させた。これとは別に純水150重量部、5重量%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5重量部(固形分)、オクタメチルシクロテトラシロキサン97重量部、トリメトキシメチルシラン3重量部からなる混合物をホモミキサーにて、8000rpmで5分間強制乳化した後に、この混合液を3.5時間かけて連続追加した。さらに2.5時間の後重合を行い、25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(D−1)成分であるシリコーン粒子(体積平均粒径0.110μm)を含むラテックスを得た。
【0153】
(合成例2)
攪拌機、還流冷却機、窒素吹込口、モノマー追加口、温度計を備えた五つ口フラスコに、合成例1で得られた(D−1)成分であるシリコーン粒子90重量部(固形分)、およびドデシルベンゼンスルホン酸を10重量%水溶液で0.45重量部(固形分)を仕込み、窒素雰囲気下で40℃に昇温させた。
【0154】
これとは別に、純水40重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.1重量部(固形分)、ジメトキシジメチルシラン7.30重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)11.16重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して4.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、20分間かけて滴下して加えた。この溶液を40℃に保ったまま5時間攪拌することで(D−2)成分を形成した。
【0155】
次にこの溶液に、純水27重量部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを15重量%水溶液で0.03重量部(固形分)、メトキシトリメチルシラン6.42重量部((CH33SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して5.0重量部に相当)、エトキシジメチルビニルシラン1.40重量部(Vi(CH32SiO1/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して1.0重量部に相当)、ジメトキシジメチルシラン0.81重量部((CH32SiO2/2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)、エチルシリケート縮合物(多摩化学工業社製、商品名エチルシリケート40、SiO2含有量:39.0〜42.0重量%)1.24重量部(SiO2で表される構造単位の完全縮合物に換算して0.5重量部に相当)からなる混合物をホモミキサーにて5000rpmで5分間強制乳化した後に、10分間かけて滴下して加えた。
【0156】
この溶液を40℃に保ったまま4.5時間攪拌することで(D−3)成分を形成した。この系を25℃に冷却して20時間放置して重合を終了し、(D)成分であるシリコーン系重合体粒子(体積平均粒径0.112μm)を含むラテックスを得た。
【0157】
(実施例1)
合成例2で得られた(D)成分を含むラテックス(樹脂固形分濃度16重量%)の樹脂固形分35重量部に対して酢酸エチル/メタノール=6/4 (vol/vol)から成る混合溶媒200重量部を加えて粒子を凝集させた後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿を酢酸エチル/メタノール=3/7 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。得られた沈殿をさらに酢酸エチル/メタノール=4/6 (vol/vol)の混合溶媒200重量部に分散させて洗浄した後、遠心分離機で2000rpm、5分間遠心沈降させた。この洗浄を合計3回行った後、得られた沈殿35重量部に酢酸エチル350重量部を加えて、(D)成分の酢酸エチル溶液を得た。
【0158】
こうして得られた(D)成分であるシリコーン系重合体粒子の樹脂固形分30重量部に対して、(A)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを留去した。
【0159】
その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.0062重量部を加えた後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状混合物を得た。
【0160】
得られた液状混合物を各試験用硬化物作成に従い硬化させて、封止剤硬化物を得た。
【0161】
(実施例2)
(A)成分である三次元構造を有するビニル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQV−7、ビニル基含有量3.5モル/kg)を36.2重量部、(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−5、ヒドロシリル基含有量2.3モル/kg)を57.9重量部と、同じく(B)成分である三次元構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン(クラリアント社製、商品名MQH−8、ヒドロシリル基含有量7.5モル/kg)を5.9重量部配合し、この混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して酢酸エチルを留去した。
【0162】
その後、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.0重量部、ほう酸トリメチル1.0重量部、1−エチニル−1−シクロヘキサノールの1%キシレン溶液0.0011重量部、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンの1%キシレン溶液0.0010重量部、(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3重量%含有)0.0062重量部を加えた後、遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行い、液状混合物を得た。
【0163】
得られた液状混合物を各試験用硬化物作成に従い硬化させて、封止剤硬化物を得た。
【0164】
(比較例1)
シリコーンエラストマーの液状混合物(JCR6115(東レダウコーニング製)A液およびB液を同量ずつ加えて遊星式攪拌脱泡機にて攪拌・脱泡を行った)を各試験用硬化物作成に従い硬化させて、硬化物を得た。
【0165】
各種試験結果を表1に示す
【0166】
【表1】

【0167】
表1に示されるように、実施例1および実施例2では、透湿度が50g/m2/24h以下となり、LEDにおける銀リードフレーム等の腐食性を低減させる効果があることが分かる。また、ショアD高度が20以上であり、LEDを封止した場合に、半導体素子と電極をつなぐボンディングワイヤーの断線等を低減できる効果があることが分かる。さらに、実施例1では、冷熱衝撃試験の結果においても優れた効果があり、冷熱衝撃試験、透湿度及びショアD硬度により表現されるLED封止剤としての信頼性において優れていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン組成物を硬化させて得られるLED封止剤であって、当該封止剤の透湿度が、50g/m2/24h以下であることを特徴とするLED封止剤。
【請求項2】
前記オルガノポリシロキサン組成物中のアリール基含有量が3モル%以下であることを特徴とする請求項1に記載のLED封止剤。
【請求項3】
前記封止剤のショアD硬度が20以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のLED封止剤。
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサン組成物が、(A)一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサン、(B)一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)ヒドロシリル化触媒および(D)シリコーン系粒子を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のLED封止剤。
【請求項5】
(A)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(2)、(3)
a1a22SiO1/2(2)
a23SiO1/2(3)
(式中、Ra1はアルケニル基、Ra2はアルケニル基以外の置換または非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(2)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にアルケニル基を少なくとも2つ有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする請求項4の記載のLED封止剤。
【請求項6】
(B)成分が、一般式(1)
SiO4/2(1)
で表される4官能性の構造単位からなる三次元網目構造を主構造とし、その主構造の末端を、一般式(4)、(5)
b1b22SiO1/2(4)
b23SiO1/2(5)
(式中、Rb1は水素原子、Rb2は水素原子、またはアルケニル基以外の置換若しくは非置換の一価の炭化水素基であり、各々同一であっても異なっていても良い。)
で表される1官能性の構造単位で封鎖した構造を有し、なおかつ、その主構造の末端が一般式(4)で少なくとも2つ封鎖された構造を有する一分子中にヒドロシリル基を少なくとも2つ有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項4または5に記載のLED封止剤。
【請求項7】
(D)成分が、シリコーン粒子(D−1)に、アルコキシシランを添加して縮合させて得られる第1シェル成分(D−2)、さらにその後アルコキシシラン縮合物を添加して縮合させて得られる第2シェル成分(D−3)からなる、シリコーン粒子コア−アルコキシシラン縮合物シェル構造を有するシリコーン系重合体粒子であることを特徴とする請求項4〜6いずれか一項に記載のLED封止剤。
【請求項8】
(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が、下記(a)成分を必須成分とし、下記(b)成分、下記(c)成分および下記(d)成分の少なくとも1種を縮合してなることを特徴とする、請求項7に記載の封止剤。
(a)成分:一般式(6)
【化12】

(式中、R12はアルキル基を示し、R13、R14およびR15は、同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される1官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(b)成分:一般式(7)
【化13】

(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【化14】

(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【化15】

(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【請求項9】
(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が、下記(b)成分、下記(c)成分および下記(d)成分の少なくとも1種を縮合してなることを特徴とする、請求項7または8に記載のLED封止剤。
(b)成分:一般式(7)
【化16】

(式中、R22、R23は同一または異なる一価のアルキル基を示し、R24、R25は同一または異なる一価の有機基を示す。)で表される2官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(c)成分:一般式(8)
【化17】

(式中、R32、R33、R34は、同一または異なる一価のアルキル基を示し、R35は一価の有機基を示す。)で表される3官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
(d)成分:一般式(9)
【化18】

(式中、R42、R43、R44およびR45は、同一または異なる一価のアルキル基を示す。)で表される4官能性アルコキシシラン化合物および/またはその部分縮合物。
【請求項10】
(D−1)成分であるシリコーン粒子40〜98重量%に対して、(D−2)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第1シェル層が1〜40重量%、(D−3)成分であるアルコキシシラン縮合物からなる第2シェル層が1〜30重量%被覆した重合体(ただし、(D−1)成分と(D−2)成分と(D−3)成分は、合わせて100重量%)であることを特徴とする、請求項7〜9いずれか一項に記載のLED封止剤。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか一項に記載のLED封止剤を使用したLED。

【公開番号】特開2010−265410(P2010−265410A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118762(P2009−118762)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】