説明

LED照明灯

【課題】LEDを光源とし波長変換により一様な色の光を放出させることができ、かつ、放熱性に優れ、高輝度発光が可能なLED照明灯を提供する。
【解決手段】本発明は、ベース体2上に設置された発光ダイオード素子5と、ベース体上に発光ダイオード素子の光出力面を半球面状に覆うように設置された光透過性のLEDカバー4と、LEDカバーの内面側に形成された、発光ダイオード素子からの光の波長を変換する蛍光体層3と、ベース体の裏面側に貼着されたSiC製の放熱体6と、ベース体の発光ダイオード素子の直下位置において当該ベース体を貫通するように形成されたサーマルビア9とを備えたLED照明灯1を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波長変換型のLED照明灯に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発光ダイオードLEDは所定の波長の光のみを放出する単色性を有する。そこで、LEDを光源として白色光を得るLED照明灯として、例えば、特開2009−38304号公報(特許文献1)に記載されているような、青色若しくは紫外線発光する複数個のLED素子を基板上に実装し、それらのLED素子の発光面を1個のLEDカバーにて覆い、LEDカバーの内面に各LED素子からの光の波長を変換する蛍光体層を形成した構成のLED照明灯が知られている。
【0003】
従来のLED照明灯は、複数個のLED素子を1個のLEDカバーにて覆う構成であるために、個々のLED素子をLEDカバーにて覆う場合に比べてLEDカバーが大径になり、各LED素子からLEDカバーまでの距離が不必要に長くなる。その結果、各LED素子からの光がLEDカバーに到達するまでに光量ロスが発生し、蛍光体層による蛍光発光量も低くなり、総じて高輝度の発光が期待できない問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−38304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した従来技術の課題に鑑みてなされたもので、LED素子を光源として波長変換により一様な色の光を放出させることができ、かつ、高輝度発光が可能なLED照明灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ベース体上に設置された複数個の発光ダイオード素子と、前記ベース体上に前記発光ダイオード素子各々の光出力面を半球面状に覆うように設置された複数個の光透過性のLEDカバーと、前記LEDカバー各々の内面側に形成された、前記発光ダイオード素子からの光の波長を変換する蛍光体層とを備えたLED照明灯を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明のLED照明灯によれば、ベース体上に設置された複数個の発光ダイオード素子各々の光出力面を半球面状に覆うように複数個の光透過性のLEDカバー各々を設置し、LEDカバー各々の内面側に発光ダイオード素子からの光の波長を変換する蛍光体層を形成したので、個々のLEDカバーに小径のものを採用でき、それによって各LED素子からLEDカバーまでの距離を短くでき、その結果、各LED素子からの光がLEDカバーに到達するまでの光量ロスが少なくなり、蛍光体層による蛍光発光量を大きくでき、総じて高輝度に発光できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の1つの実施の形態のLED照明灯に用いるベース体の平面図。
【図2】上記実施の形態のLED照明灯に用いるベース体とその上に実装した発光ダイオード素子を示す平面図。
【図3】上記の実施の形態のLED照明灯に用いるベース体の底面図。
【図4】上記の実施の形態のLED照明灯の断面図。
【図5】上記実施の形態のLED照明灯の斜視図。
【図6】上記実施の形態のLED照明灯に採用したLEDカバーの製造工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。図1〜図5は、本発明の1つの実施の形態のLED照明灯1を示している。本実施の形態のLED照明灯1は、多孔質のアルミナセラミックスから成るベース体2の上面に実装した複数個の発光ダイオード(LED)素子5と、複数個のLED素子5各々を覆うドーム状のLEDカバー4と、ベース体2の底面に貼着した炭化ケイ素SiC製の放熱体6とで構成している。
【0010】
ベース体2の表面の中央部に複数個、ここでは4個のLED素子4をマウントし、直列に接続するための配線パターン7が形成してあり、この配線パターン7の素子マウント部7aにLED素子5を固定し、また、発光ダイオード素子5の表面に形成した電極と配線パターン7のリボン接合部7bとの間を金製リボン8で接続している。
【0011】
ベース体2の各発光ダイオード素子5のマウント部と他の適切な複数箇所には、貫通孔に金属を充填した構造のサーマルビア9を形成している。発光ダイオード素子5をマウントする位置のサーマルビア9それぞれについては、その上面に発光ダイオード素子5の裏面をダイボンディングして、発光ダイオード素子5の裏面とサーマルビア9の上面とを高熱伝導ペーストを介して接続している。
【0012】
各LED素子5の発光面を覆うLEDカバー4は、ベース体2に対して接着してある。このLEDカバー4の内面には、例えば、白色発光用のシリケート系蛍光体の蛍光体層3が形成してある。LEDカバー4の内側の空間は空気層10である。
【0013】
図4に示したように、蛍光体層3はLEDカバー4の周縁部分から頂点に行くに従って漸次層厚が増加するようになっている。ベース体2上に設置されたLED素子5はその発光面から直上方向に放出される光の輝度が高く、水平方向に至るに従って輝度が低まる輝度分布特性(配光特性)を有している。そこで、本実施の形態では、LED素子5からの光の輝度が高いLEDカバー4の頂点部分では蛍光体層3の層厚を厚くし、LED素子5からの光の輝度が低い周縁部分に行くに従って蛍光体層3の層厚を薄くすることで蛍光体層3により波長変換されてLEDカバー4から放出される光の量と波長変換されずにLEDカバー4を透過する光の量との割合が同等になるようにしている。
【0014】
ベース体2の各LED素子5のマウント部と他の適切な複数箇所には、貫通孔に金属を充填した構造のサーマルビア9を形成している。LED素子5をマウントする位置のサーマルビア9それぞれについては、その上面にLED素子5の裏面をダイボンディングして、LED素子5の裏面とサーマルビア9の上面とを高熱伝導ペーストを介して接続している。ベース体2の裏面には炭化ケイ素SiC製の放熱体6を貼着している。
【0015】
ベース体2は、多孔質のアルミナセラミックス製であり、反射板として機能する。ベース体2の裏面に貼着した放熱体6は、炭化ケイ素SiCである。実寸法を例示すれば、ベース体2は縦×横×厚さ=13×15×0.5[mm]であり、放熱体6の厚みは3[mm]である。
【0016】
放熱体6の素材である炭化ケイ素は、高硬度で耐熱性に優れ、かつ、熱を伝えやすい性質を持っている。そのため、サーマルビア9にて伝熱されるLED素子5の熱を効果的に放熱し、LEDカバー4内に熱がこもらないようにしてLED素子5の温度上昇を抑制する。
【0017】
本実施の形態で採用する炭化ケイ素製の放熱体6の特性は次である。
【0018】
商品名:イビデン社製のSCR−302
組織:Si+SiCの緻密質、黒色。
【0019】
物性:密度3.05[g/cm]、気孔率0%、硬度20Hv[GPa]、曲げ強度(R・T)280[MPa]、ヤング率(R・T)340[GPa]、熱膨張率(R・T〜800℃)4.4[×10−6/℃]、熱伝導率(R・T)220[W/m・k]、最高使用温度(不活性雰囲気)1200[℃]、比熱(R・T)660[J/Kg・K]、体積固有抵抗10〜10
【0020】
特徴:超高熱伝導、高剛性、耐熱衝撃。
【0021】
LEDカバー4に対して不等厚の蛍光体層3を形成する方法は、次による。図6(a)に示すように、LEDカバー4の凹面側を上向きにして、蛍光体粉末3′を溶かし込んだ溶剤12をLEDカバー4の凹面内に満たす。
【0022】
ここで、蛍光体粉末3′には、白色光を取り出すためにはシリケート系蛍光体の粉末を用い、溶剤12としては、例えば、ミクニペイント株式会社製の超耐候性塗料「スプラ」シリーズの中の次のものを用いることができる。
【0023】
硬化剤:No.916−162、NYクリヤーSP [P]
密着性向上剤:No.9−9945、密着性向上剤HN
希釈剤:No.9−0048、NYシンナー
次に、LEDカバー4の凹面内に蛍光体粉末3′を溶かし込んだ溶剤12を満たした後、溶剤12を乾燥させる。図6(b)、(c)に示すように、溶剤12の乾燥工程で、溶剤12は水平な液面から漸次気化、消散してゆく。このとき、溶剤12の消散が進み、その液面が低くなって行くに従い蛍光体粉末3′の濃度が漸次に濃くなってゆく。この結果として、図6(d)に示すように、溶剤12が完全に気化、消散した乾燥状態でLEDカバー4の内面に残った蛍光体粉末3′は、LEDカバー4の周縁部分から頂点部分に行くのに従って重力の影響で漸次層厚が増して行く形の層厚分布をなす蛍光体層3となる。
【0024】
上記実施の形態のLED照明灯1によれば、次のような効果を奏する。LEDカバー4の内面に形成された蛍光体層3の層厚をLEDカバー4の周縁部分から頂点部分に至るまで均一にした場合、LED素子5からの光の輝度が高いLEDカバー4の頂点部分と輝度が低い周縁部分とで蛍光体層3により波長変換される光の量と波長変換されずに透過する光の量との割合が異なることになり、その結果として、各LED素子5を外から見たときに中央部分と周縁部分とで光の色が異なり、一様な色の光が得られないことがある。これに対して、本実施の形態LED照明灯1では、全LED素子5を発光させると、配光特性11は図4に示したものとなる。すなわち、各LED素子5の光は蛍光体層3により波長変換されてLEDカバー4から放出される光の量と波長変換されずにLEDカバー4を透過する光の量との割合が同等になり、各LED素子5を外から見ると、真上から見ても横方向から見てもほぼ同じ白色で発光しているように見せることができる。そしてLED照明灯1の全体の配光特性11は図4に示すものとなり、LED照明灯1の全体としても真上から見ても横方向から見てもほぼ同じ白色で発光しているように見える。
【0025】
また、上記実施の形態のLED照明灯1によれば、ベース体2上に設置された複数個の発光ダイオード素子5各々の光出力面を半球面状に覆うように複数個の光透過性のLEDカバー4各々を設置し、LEDカバー4各々の内面側に発光ダイオード素子5からの光の波長を変換する蛍光体層3を形成したので、個々のLEDカバーに小径のものを採用でき、それによって各LED素子5からLEDカバー4までの距離を短くでき、その結果、各LED素子5からの光がLEDカバー4に到達するまでの光量ロスが少なくなり、蛍光体層3による蛍光発光量を大きくでき、総じて高輝度に発光できる。その上、複数個のLED素子5各々に小径のLEDカバー4各々を被せているので、大径のLEDカバーを全LED素子に同時に被せる構成に比べてLEDカバー4全体の表面積を広くでき、発光面積が広くでき、その点からも輝度の向上が図れる。
【0026】
また、高輝度発光のためには多数個のLED素子5をベース体2上に実装する必要があるが、多チップ実装になればその点灯のために大電流を流す必要があり、結果的に発熱が大きくなる。しかしながら、本実施の形態のLED照明灯1によれば、LED素子5を実装したベース体2の裏面に放熱性に優れたSiC製の放熱体6を貼着しているので、サーマルビア9にてLED素子5の熱を放熱体6に熱伝導させ効果的に放熱させることができ、放熱特性が良好な分、温度上昇を抑制でき、大電流を流すことができ、高輝度発光が可能になる。
【0027】
尚、上記の実施の形態では白色発光のLED照明灯1について説明したが、発光色は白色に限られることはなく、用いるLEDの種類と蛍光体の種類に応じて他の種々の色を発光させることができる。また光透過性のLEDカバーについても、それがカバーするLED素子5の数と配置により略トンネル穴状にすることもあり得る。そしてトンネル穴状の場合にも頂点部分で蛍光体層厚を厚くし、周縁部分で層厚を薄くする。また、上記実施の形態では不等厚に蛍光体層3を形成したLEDカバー4を採用したが、構成を簡素化するためにはこの蛍光体層3を等厚分布のものとすることも許容される。
【符号の説明】
【0028】
1 LED照明灯
2 ベース体
3 蛍光体層
4 LEDカバー
5 発光ダイオード素子
6 放熱体
7 配線パターン
8 金製リード
9 サーマルビア
11 配光特性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース体上に設置された複数個の発光ダイオード素子と、
前記ベース体上に前記発光ダイオード素子各々の光出力面を半球面状に覆うように設置された複数個の光透過性のLEDカバーと、
前記LEDカバー各々の内面側に形成された、前記発光ダイオード素子からの光の波長を変換する蛍光体層とを備えたことを特徴とするLED照明灯。
【請求項2】
前記ベース体の前記発光ダイオード素子各々の直下位置において当該ベース体を貫通するように形成されたサーマルビアを備えたことを特徴とする請求項1に記載のLED照明灯。
【請求項3】
前記ベース体の裏面側に貼着されたSiC製の放熱体を備えたことを特徴とする請求項2に記載のLED照明灯。
【請求項4】
前記蛍光体層は、前記LEDカバーの周縁部分から頂点に行くに従って漸次層厚を増加させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のLED照明灯。
【請求項5】
前記発光ダイオード素子は、青色発光するものであり、
前記蛍光体層は、前記発光ダイオード素子からの青色光を白色光に変換するものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のLED照明灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−14768(P2011−14768A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158651(P2009−158651)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(591244292)株式会社 パールライティング (36)
【Fターム(参考)】