説明

LNG燃料の供給装置

【課題】気化器を必要としないLNG燃料の供給装置を提供する。
【解決手段】LNGを貯蔵するLNG容器12と、一時貯留したLNGを気化させて気化燃料を生成するバッファタンク16とを、LNGを供給するLNG供給配管14によって接続する。LNG供給配管14には、この配管の通路を開閉する遠隔制御可能な開閉弁24を配設する。バッファタンク16に接続される気化燃料供給配管20には、気化燃料の供給対象たる熱機関に供給される気化燃料の圧力を調圧する減圧弁22を配設する。そして、バッファタンク16に取付けられる圧力センサ18により検出されるバッファタンク16の内圧Pbが、所定の下限内圧Pb1未満となったとき開閉弁24を開弁させる一方、バッファタンク内16の内圧Pbが、所定の上限内圧Pb2以上となったとき開閉弁24を閉弁させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG燃料(液化天然ガス燃料)の供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG燃料の供給装置においては、例えば、特許文献1に記載されるように、LNGを貯蔵するLNG容器から供給されるLNGを気化器で気化させて気化燃料を生成することが周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−113108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、気化燃料の供給対象である熱機関において急激に負荷が高まったときなどの場合に備えて、気化燃料の生成能力に余裕を持たせるために、気化器は一般に大型化してその重量が増加するとともに、LNG燃料の供給装置としての製造コストが上昇するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、気化器を必要としないLNG燃料の供給装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、本発明に係るLNG燃料の供給装置は、LNGを貯蔵するLNG容器と、LNGを気化させて気化燃料を生成するバッファタンクと、LNG容器とバッファタンクとを接続するLNG供給配管と、LNG供給配管内の通路を開閉する遠隔制御可能な開閉弁と、開閉弁の開閉を制御する制御手段と、バッファタンクから熱機関に供給される気化燃料を所定圧力まで減圧する減圧弁と、を含んで構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、LNG容器からバッファタンクにLNGを供給して、バッファタンク外部からの伝熱によりバッファタンク内のLNGを気化させているので、気化器を必要としないLNG燃料の供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態に係るLNG燃料の供給装置についての構成図
【図2】第1の実施形態に係る制御プログラムの処理内容を示すフローチャート
【図3】第2の実施形態に係るLNG燃料の供給装置についての構成図
【図4】第2の実施形態に係る制御プログラムの処理内容を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、LNGを燃料として用いる車両に対して本発明を適用した燃料供給装置の第1の実施形態を示している。
【0010】
LNG燃料の供給装置10には、LNGを貯蔵するLNG容器12が備えられる。LNG容器12は、良好な断熱性を確保して極低温で貯蔵されるLNGの気化を抑制すべく、密閉した内側容器12a及び外側容器12bからなり、これらの間が減圧されたいわゆる「魔法瓶構造」をなしている。
【0011】
LNG容器の下部に接続されるLNG供給配管14には、所定容積(例えば180〜200リットル)を有するバッファタンク16が接続される。バッファタンク16は、LNG供給配管14を介して、LNG容器12から供給されるLNGを一時貯留すると共に、バッファタンク16の外部からの伝熱により一時貯留するLNGを気化させて気化燃料を生成する。バッファタンク16には、バッファタンク16の内圧を検出する圧力検出手段としての圧力センサ18が取付けられる。
【0012】
バッファタンク16に接続される気化燃料供給配管20には、減圧弁22が配設される。減圧弁22は、気化燃料の供給対象たる熱機関の一例としてのエンジンに供給される気化燃料の圧力を調圧すべく、バッファタンク16から気化燃料供給配管20を介して供給される気化燃料を、エンジンが要求する所定圧力まで減圧する。
【0013】
LNG容器12からバッファタンク16に対してLNGの供給又は遮断を行うべく、LNG容器12とバッファタンク16との間のLNG供給配管14には、遠隔制御可能な開閉弁24が配設される。ここで、開閉弁24としては、安全性を確保すべく、例えば、常閉式電磁弁を用いることが望ましい。
【0014】
コンピュータを内蔵するコントロールユニット26には、圧力センサ18からの圧力信号が入力される。そして、コントロールユニット26は、ROM(Read Only Memory)などに記憶された制御プログラムを実行することにより、バッファタンク16の内圧に応じて開閉弁24の開閉を制御する。なお、コントロールユニット26は、制御プログラムを実行することで制御手段を実現する。
【0015】
図2は、コントロールユニット26において、イグニッションスイッチONを契機として実行される制御プログラムを示す。
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、圧力センサ18により検出されるバッファタンク16の内圧Pbと下限内圧Pb1との大小を判定する。ここで、下限内圧Pb1は、減圧弁22を通してエンジンに気化燃料を供給するために必要な所定の圧力である。そして、バッファタンク16の内圧Pbが、下限内圧Pb1未満のときには、ステップ2へと進む一方(Yes)、バッファタンク16の内圧Pbが、下限内圧Pb1以上のときには、再び本ステップを実行する(No)。
【0016】
ステップ2では、開閉弁24を開弁させる。
ステップ3では、圧力センサ18により検出されるバッファタンク16の内圧Pb’と上限内圧Pb2との大小を判定する。ここで、上限内圧Pb2は、例えば、バッファタンク16の耐圧限界を考慮した圧力と、LNG容器12の内圧PLのうちのいずれか小さい方の値に等しい圧力であり、上限内圧Pb2は下限内圧Pb1より大きい圧力である。そして、バッファタンク16の内圧Pb’が、下限内圧Pb2以上であるときには、ステップ4へと進む一方(Yes)、バッファタンク16の内圧Pb’が、上限内圧Pb2未満であるときには、再び本ステップを実行する(No)。
【0017】
ステップ4では、開閉弁24を閉弁させる。その後、ステップ1に戻る。
このようなLNG燃料の供給装置10によれば、LNG容器12からバッファタンク16にLNGを供給して、バッファタンク16の外部からの伝熱によりバッファタンク16内のLNGを気化させているので、気化器を必要としないLNG燃料の供給装置を提供することができる。これにより、LNG燃料の供給装置の大型化とそれに伴う重量増大を回避することができ、ひいては製造コストを低減することも可能となる。また、既存の圧縮天然ガス(CNG)の貯蔵容器をバッファタンク16として代用できるという利点もある。
【0018】
なお、第1の実施形態に係るLNG燃料の供給装置10において、圧力センサ18の代わりに、例えば、バッファタンク16の内圧Pbが下限内圧Pb1まで低下したときにONとなる一方、内圧Pbが上限内圧Pb2以上となったときにOFFとなる圧力スイッチをバッファタンク16に取付けた構成とすることもできる。この場合、圧力スイッチの一端には車両電源を、他端には開閉弁24を電気的に接続することにより、バッファタンク16の内圧に応じて開閉弁24の開閉を制御できるので、コントロールユニット26が不要となる利点がある。
【0019】
図3は、LNGを燃料として用いる車両に対して本発明を適用した燃料供給装置の第2の実施形態を示している。なお、第1の実施形態と同一構成については、同一符号を付すことでその説明を省略又は簡潔にする。
【0020】
LNG容器12には、LNG容器12内のLNGの温度を検出する第1の温度検出手段としての温度センサ28と、LNGの液面レベルを検出する液面検出手段としての液面レベルセンサ30とが更に取付けられる。また、バッファタンク16には、バッファタンク16内の気化燃料の温度を検出する第2の温度検出手段としての温度センサ32が更に取付けられる。
【0021】
コンピュータを内蔵するコントロールユニット26には、温度センサ28及び温度センサ32からの温度信号、液面レベルセンサ30からの液面レベル信号、圧力センサ18からの圧力信号が入力される。そして、コントロールユニット26は、ROMなどに記憶された制御プログラムを実行することにより、LNG容器12からバッファタンク16に対するLNGの供給の必要性に応じて開閉弁24の開閉を制御する。なお、コントロールユニット26は、制御プログラムを実行することで、LNG密度算出手段、供給質量算出手段、体積換算手段、予想液面レベル算出手段、及び、制御手段を実現する。
【0022】
図4は、コントロールユニット26において、イグニッションスイッチONを契機として実行される制御プログラムを示す。
ステップ1では、圧力センサ18により検出されるバッファタンク16の内圧Pbと下限内圧Pb1との大小を判定する。そして、バッファタンク16の内圧Pbが、下限内圧Pb1未満であるときには、ステップ2へと進む一方(Yes)、バッファタンク16の内圧Pbが、下限内圧Pb1以上のときには、再び本ステップを実行する(No)。
【0023】
ステップ2では、コントロールユニット26のROMなどに記憶されているLNGの温度とLNGの密度の相関マップを参照することにより、温度センサ28により検出されるLNG容器12内の温度TLから、温度TLにおけるLNGの密度GLを算出する。LNGはCH4、C26、C38、…などの化学式で表される成分から組成されているので、温度TLにおける各成分の密度[kg/m3]であるGLCH4、GLC2H6、GLC3H8、…などを算出する。
【0024】
ステップ3では、温度センサ32から検出されるバッファタンク16内の気化燃料の温度Tb[K]と、既知のバッファタンク16の内圧Pb[N/m2]及びLNG密度GL[kg/m3]に基づいて、LNG容器12からバッファタンク16へ供給するLNGの供給量Sを算出する。具体的には、バッファタンク16の内圧Pbのときのバッファタンク16中に存在する気化燃料の全分子数N[mol]は、バッファタンク16の内圧が上限内圧Pb2のときのバッファタンク16中に存在する気化燃料の全分子数N2[mol]に対して、N2−N[mol]だけ不足しているため、このN2−N[mol]の気化燃料に相当するLNG容器12内のLNGをバッファタンク16へ供給すべくLNGの供給質量を算出する。最終的には、N2―N[mol]に相当するLNGの供給質量[kg]から換算したLNG容器12内のLNGの体積[m3]を、LNG供給量Sとして算出する。
【0025】
気体定数をR[J/(K・mol)]、バッファタンク16の内容積をV[m3]とした場合において、バッファタンク16内の気化燃料の各成分であるCH4、C26、C38、…のモル分率をACH4、AC2H6、AC3H8、…[%]、分子量をMCH4、MC2H6、MC3H8、…[g/mol]とすると、気体の状態方程式を用いれば、LNGの供給量S[m3]は、以下の式で表される。
【0026】
【数1】

【0027】
ステップ4では、LNGの液面レベルHL[m]とLNG供給量S[m3]とから、LNG供給量Sの供給後に予想されるLNG容器12のLNGの予想液面レベルHL1[m]を算出する。例えば、LNG容器12が、断面積D[m2]の筒体であり、その軸線が鉛直方向となるようにLNG容器12が配置されるとすると、HL1=HL−S/Dなる数式により予想液面レベルHL1[m]を算出する。
【0028】
ステップ5では、開閉弁24を開弁させる。
ステップ6では、LNG容器12内のLNGの液面レベルHL’と予想液面レベルHL1との大小を判定する。そして、LNGの液面レベルHL’が、予想液面レベルHL1以下であるときには、ステップ7へと進む一方(Yes)、LNGの液面レベルHL’が、予想液面レベルHL1より大きいときには、LNG容器12からバッファタンク16へのLNG供給量Sの供給を継続すべく、再び本ステップを実行する(No)。
【0029】
ステップ7では、LNG容器12からバッファタンク16へのLNG供給量Sの供給が完了しているため、開閉弁24を閉弁させる。その後、ステップ1に戻る。
なお、バッファタンク16からLNG容器12への気化燃料の逆流を回避するため、LNG容器12とバッファタンク16との間のLNG供給配管14に、逆止弁を配設してもよい。
【0030】
また、気化燃料の供給対象たる熱機関の負荷が急激に増大した場合に対応するために、バッファタンク16の内圧Pbが、下限内圧Pb1以上である場合であっても、例えば、アクセル開度などの変化率が所定値を上回ったときには熱機関の負荷が急激に増大したと判定して、開閉弁24を開弁させてもよい。
【0031】
さらに、上記実施形態においては、本発明をLNGを燃料として用いる車両に適用した具体的な場合について説明したが、当然ながら、他の技術分野、例えば定置式のガスタービンエンジンなどにおいても適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
12 LNG容器
16 バッファタンク
18 圧力センサ
22 減圧弁
24 開閉弁
26 コントロールユニット
28 温度センサ
30 液面レベルセンサ
32 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNGを貯蔵するLNG容器と、
LNGを気化させて気化燃料を生成するバッファタンクと、
前記LNG容器と前記バッファタンクとを接続するLNG供給配管と、
該LNG供給配管内の通路を開閉する遠隔制御可能な開閉弁と、
該開閉弁の開閉を制御する制御手段と、
前記バッファタンクから熱機関に供給される気化燃料を所定圧力まで減圧する減圧弁と、
を含んで構成されたことを特徴とするLNG燃料の供給装置。
【請求項2】
前記バッファタンクの内圧を検出する圧力検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出されるバッファタンクの内圧が、所定の下限内圧未満になったとき前記開閉弁を開弁させる一方、前記圧力検出手段により検出されるバッファタンクの内圧が、所定の上限内圧以上となったとき前記開閉弁を閉弁させることを特徴とする請求項1記載のLNG燃料の供給装置。
【請求項3】
前記バッファタンクの内圧を検出する圧力検出手段と、
前記LNG容器内のLNGの温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記バッファタンク内の気化燃料の温度を検出する第2の温度検出手段と、
前記第1の温度検出手段により検出されるLNG容器内のLNGの温度からLNGの密度を算出するLNG密度算出手段と、
前記圧力検出手段により検出されるバッファタンクの内圧と前記第2の温度検出手段により検出されるバッファタンク内の気化燃料の温度とに基づいて、LNGの供給質量を算出する供給質量算出手段と、
該供給質量算出手段により算出されるLNGの供給質量を、前記LNG密度算出手段により算出されるLNG密度を用いて前記LNG容器内のLNGの体積に換算する体積換算手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段により検出されるバッファタンクの内圧が、所定の下限内圧未満になったとき前記開閉弁を開弁させる一方、前記体積換算手段により換算されるLNGの体積を前記LNG容器から前記バッファタンクへ供給したときに、前記開閉弁を閉弁することを特徴とする請求項1記載のLNG燃料の供給装置。
【請求項4】
前記LNG容器内のLNGの液面レベルを検出する液面検出手段と、
前記LNGの体積の供給後に予想される前記LNG容器のLNGの液面レベルを算出する予想液面レベル算出手段と、
を更に備え、
前記制御手段は、前記液面検出手段により検出されるLNG容器内のLNGの液面レベルが、前記予想液面レベル算出手段により算出される予想液面レベル以下となったときに、前記開閉弁を閉弁することを特徴とする請求項3記載のLNG燃料の供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80363(P2011−80363A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230711(P2009−230711)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000003908)UDトラックス株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】