ＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法及びＬＰＧ噴射制御装置
【課題】ＬＰＧ噴射システムについて、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようにし、燃料組成の変化に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現する。
【解決手段】燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、燃料ポンプ３における上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、ＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ａは、検知した前記燃料ポンプ３の駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ３上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ３上流側の燃料圧力を推定し、燃料ポンプ３上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定する。
【解決手段】燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、燃料ポンプ３における上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、ＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ａは、検知した前記燃料ポンプ３の駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ３上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ３上流側の燃料圧力を推定し、燃料ポンプ３上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法及びＬＰＧ噴射制御装置に関し、殊に、検知した燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定してエンジンの各種制御に利用するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法、及びこの判定方法を実施するＬＰＧ噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
液化石油ガス（以下「ＬＰＧ」という）は、製造者、製造した季節、製造ロット等により、その燃料成分（プロパンとブタンの組成比率等）が異なるのが一般的である。そのため、ＬＰＧの燃料成分が異なる場合にプロパンとブタンの発熱量及びオクタン価が異なること等に起因して、同じ空燃比制御や点火時期制御のままでは動力性能の低下や燃費の悪化に繋がることがある。
【０００３】
これに対し、特開昭６１−２７５５５５号公報や特開２００４―３２４５０９号公報に記載されているように、ＬＰＧを貯留する燃料タンク内の燃料温度と気相燃料圧力をＬＰＧ噴射制御装置が検知して、これに基づき所定のデータテーブル等を使用すること等により使用しているＬＰＧのプロパンとブタンとの組成比率を求めて燃料組成を判定し、基準燃料噴射量や基準点火時期等を補正することが一般的になっている。
【０００４】
図４は、このような制御を行う従来のＬＰＧ噴射システムの配置図を示すものであり、ＬＰＧ噴射制御装置としての電子制御ユニット１０Ｂは、モータ駆動で燃料タンク２に貯留したＬＰＧ燃料を加圧して吐出する燃料ポンプ３に対し、フィードバック制御により駆動操作することで、燃料噴射圧力を設定目標圧力に維持している。
【０００５】
また、燃料タンク２には、圧力センサ１２ａ及び温度センサ１１ａの２つのセンサが配設され、これらのセンサーから貯留しているＬＰＧの圧力データと温度データが電子制御ユニット１０Ｂへ入力それるようになっており、電子制御ユニット１０Ｂに予めセットされた燃料温度と圧力の関係テーブル等から燃料成分を判定（推定）して、この燃料成分の内容（比率）に応じて燃料噴射制御における基準値等を補正している。
【０００６】
しかしながら、このＬＰＧ噴射システムにおいては、燃料タンク２（燃料ポンプ３上流）側の圧力センサ１２ａと、噴射圧力のフィードバック制御のためにインジェクタ４（燃料ポンプ３下流）側に設けた圧力センサ１２ｂの、２つの圧力センサ設けることが必要になるところ、圧力センサは比較的高価な部品であるためにコスト面で不利になるという問題がある。
【特許文献１】特開昭６１−２７５５５５号公報
【特許文献２】特開２００４―３２４５０９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする上記のような問題点を解決しようとするものであり、ＬＰＧ噴射システムについて、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようにし、燃料組成の変化に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
そこで、本発明は、燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする。
【０００９】
従来、ＬＰＧ噴射制御装置が燃料ポンプ上流側の燃料圧力・燃料温度を検知して燃料組成を判定しながらフィードバック制御で燃料噴射圧を目標噴射圧力に維持することから、燃料ポンプの上流側及び下流側に２つの圧力センサを要することからコスト高となっていたのに対し、本発明では、燃料ポンプ駆動電流から目標噴射圧力と燃料ポンプ上流側燃料圧力（≒燃料タンク内ＬＰＧ蒸気圧）の差圧である昇圧代を求めて燃料ポンプ上流側燃料圧力を推定することにより、燃料ポンプ上流側の圧力センサを省略可能とした。
【００１０】
また、この場合、その昇圧代の導出を、電流値と昇圧代の関係を表す所定の関係式を用いて算出することにより、或いは電流値と昇圧代の関係を表す所定のデータテーブルを用いて導くことによりＬＰＧ噴射制御装置の処理負担を過大にすることなく簡易に昇圧代の導出を可能にした。
【００１１】
さらに、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法において、その燃料ポンプ上流側の燃料温度を燃料タンクに貯留した燃料から検出し、その燃料ポンプ下流側の燃料圧力及び燃料温度をインジェクタ近傍の燃料から検出するものとすれば、より確実な判定が行える。
【００１２】
さらにまた、ＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設され、燃料ポンプ上流側に配設された温度センサからの出力信号が入力されるとともに、燃料ポンプ下流側に配設した温度センサ及び圧力センサからの出力信号が各々入力され、且つ、燃料ポンプ電流値検知手段、燃料圧力推定手段、燃料組成判定手段を備えており、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施することを特徴とするＬＰＧ噴射制御装置とすれば、これをＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設するだけで、上述した機能を確実に発揮できるものとなる。
【発明の効果】
【００１３】
燃料ポンプ駆動電流から昇圧代を求めて燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定することにより、使用しているＬＰＧの燃料組成を判定する本発明によると、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようになり、燃料組成の変化に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【００１５】
図１は、本発明である好ましい形態であるＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するためのＬＰＧ噴射制御装置としての電子制御ユニット１０Ａを配設してなるＬＰＧ噴射システムの配置図を示すものであり、このシステムと図４に示した従来のＬＰＧ噴射システムとの大きな違いは、燃料ポンプ３の上流側の燃料タンク２に圧力センサを配設しておらず、その分のコストが低廉に抑えられる点にある。
【００１６】
また、電子制御ユニット１０Ａは、ハード面においては従来のＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ｂと同様であり、ソフト面においても、燃料ポンプ３下流側の燃料圧力（燃料噴射圧力）を検知してフィードバック制御により目標噴射圧力を維持するとともに、燃料ポンプ３上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定する図示しない燃料組成判定手段を備えている点で共通している。
【００１７】
一方、本実施の形態の電子制御ユニット１０Ａには、燃料ポンプ３の駆動電流が入力されるとともに、本発明に特有のＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するためのプログラムがインストールされており、燃料ポンプ３の駆動電流を検知するための燃料ポンプ電流値検知手段１００、燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定するための燃料圧力推定手段１０１を機能的に備えており、以下に詳述するＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するようになっている点が、従来の電子制御ユニット１０Ｂと大きく異なる点である。
【００１８】
次に、本実施の形態のＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法の原理、及びＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ａの機能を説明する。
【００１９】
インジェクタ４から燃料噴射が行われると、燃料ポンプ３下流側の燃料圧力が瞬間的に降下するが、設定目標噴射圧力になるようにフィードバック制御するために燃料ポンプ３が駆動操作される。このとき、燃料ポンプ３の仕事は、ポンプ前後差圧（＝設定目標圧力−燃料タンク２内ＬＰＧ蒸気圧）分だけ燃料を昇圧させることにある。
【００２０】
一方、燃料ポンプ３には、図２のグラフに示すような昇圧代∝電流の関係が成り立つため、燃料ポンプ３を駆動させる電流値（消費電流値）を知ることによりこの昇圧値を知ることができる。即ち、燃料ポンプ電流値検知手段１００により燃料ポンプ３に流れた電流値を検知して、燃料圧力推定手段１０１により所定の関係式またはデータテーブルを用いてこの昇圧代を求め、これを設定目標値から差し引くことにより、燃料タンク２内のＬＰＧ蒸気圧を推定することができる。
【００２１】
尚、燃料組成を判定するための手順は従来のものと同様でもよく、推定した燃料ポンプ３上流側の燃料圧力（燃料タンク２内蒸気圧）と、燃料タンク２に配設した温度センサ１１ａで検出した燃料温度から、各燃料組成における燃料圧力と燃料温度のデータテーブルまたは所定の関係式（近似式）を用いて照合することにより、その燃料組成を比較的正確に判定することができる。
【００２２】
尚、図３は、各燃料組成における燃料圧力と燃料温度ＬＰＧの関係図であるが、このような蒸気圧線図の近似式を例えば燃料成分１０％刻みで電子制御ユニット１０Ａに予めセットしておいて補間計算を行うことにより、ＬＰＧの燃料成分の判定を行うようにすればよい。
【００２３】
そして、このようにして判定したＬＰＧの燃料組成を基に、所定のデータテーブル等を用いて燃料噴射制御など各種制御における基準値を補正することにより、より的確なエンジン制御を実施することができるようになる。尚、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法の各手順は、電子制御ユニット１０ＡのＣＰＵに過剰な処理負担を強いるようなレベルではないため、従来のものと比べて制御装置として高機能である必要はなく、高価な電子制御ユニットの使用を求めるものではないため、ハード面でコストを上昇させる心配はない。
【００２４】
以上、述べたように、ＬＰＧ噴射システムについて、本発明により、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようになり、異なる燃料組成に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明の実施の形態を示すＬＰＧ噴射システムの配置図。
【図２】燃料ポンプの昇圧代と電流の関係を示すグラフ。
【図３】燃料圧力と燃料温度ＬＰＧの関係を示すグラフ。
【図４】従来例を示す配置図。
【符号の説明】
【００２６】
２ 燃料タンク、３ 燃料ポンプ、４ インジェクタ、１０Ａ 電子制御ユニット、１１ａ，１１ｂ 温度センサ、１２ｂ 圧力センサ、１００ 燃料ポンプ電流値検知手段、１０１ 燃料圧力推定手段
【技術分野】
【０００１】
本発明は、ＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法及びＬＰＧ噴射制御装置に関し、殊に、検知した燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定してエンジンの各種制御に利用するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法、及びこの判定方法を実施するＬＰＧ噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【０００２】
液化石油ガス（以下「ＬＰＧ」という）は、製造者、製造した季節、製造ロット等により、その燃料成分（プロパンとブタンの組成比率等）が異なるのが一般的である。そのため、ＬＰＧの燃料成分が異なる場合にプロパンとブタンの発熱量及びオクタン価が異なること等に起因して、同じ空燃比制御や点火時期制御のままでは動力性能の低下や燃費の悪化に繋がることがある。
【０００３】
これに対し、特開昭６１−２７５５５５号公報や特開２００４―３２４５０９号公報に記載されているように、ＬＰＧを貯留する燃料タンク内の燃料温度と気相燃料圧力をＬＰＧ噴射制御装置が検知して、これに基づき所定のデータテーブル等を使用すること等により使用しているＬＰＧのプロパンとブタンとの組成比率を求めて燃料組成を判定し、基準燃料噴射量や基準点火時期等を補正することが一般的になっている。
【０００４】
図４は、このような制御を行う従来のＬＰＧ噴射システムの配置図を示すものであり、ＬＰＧ噴射制御装置としての電子制御ユニット１０Ｂは、モータ駆動で燃料タンク２に貯留したＬＰＧ燃料を加圧して吐出する燃料ポンプ３に対し、フィードバック制御により駆動操作することで、燃料噴射圧力を設定目標圧力に維持している。
【０００５】
また、燃料タンク２には、圧力センサ１２ａ及び温度センサ１１ａの２つのセンサが配設され、これらのセンサーから貯留しているＬＰＧの圧力データと温度データが電子制御ユニット１０Ｂへ入力それるようになっており、電子制御ユニット１０Ｂに予めセットされた燃料温度と圧力の関係テーブル等から燃料成分を判定（推定）して、この燃料成分の内容（比率）に応じて燃料噴射制御における基準値等を補正している。
【０００６】
しかしながら、このＬＰＧ噴射システムにおいては、燃料タンク２（燃料ポンプ３上流）側の圧力センサ１２ａと、噴射圧力のフィードバック制御のためにインジェクタ４（燃料ポンプ３下流）側に設けた圧力センサ１２ｂの、２つの圧力センサ設けることが必要になるところ、圧力センサは比較的高価な部品であるためにコスト面で不利になるという問題がある。
【特許文献１】特開昭６１−２７５５５５号公報
【特許文献２】特開２００４―３２４５０９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
本発明は、燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする上記のような問題点を解決しようとするものであり、ＬＰＧ噴射システムについて、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようにし、燃料組成の変化に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
そこで、本発明は、燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とする。
【０００９】
従来、ＬＰＧ噴射制御装置が燃料ポンプ上流側の燃料圧力・燃料温度を検知して燃料組成を判定しながらフィードバック制御で燃料噴射圧を目標噴射圧力に維持することから、燃料ポンプの上流側及び下流側に２つの圧力センサを要することからコスト高となっていたのに対し、本発明では、燃料ポンプ駆動電流から目標噴射圧力と燃料ポンプ上流側燃料圧力（≒燃料タンク内ＬＰＧ蒸気圧）の差圧である昇圧代を求めて燃料ポンプ上流側燃料圧力を推定することにより、燃料ポンプ上流側の圧力センサを省略可能とした。
【００１０】
また、この場合、その昇圧代の導出を、電流値と昇圧代の関係を表す所定の関係式を用いて算出することにより、或いは電流値と昇圧代の関係を表す所定のデータテーブルを用いて導くことによりＬＰＧ噴射制御装置の処理負担を過大にすることなく簡易に昇圧代の導出を可能にした。
【００１１】
さらに、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法において、その燃料ポンプ上流側の燃料温度を燃料タンクに貯留した燃料から検出し、その燃料ポンプ下流側の燃料圧力及び燃料温度をインジェクタ近傍の燃料から検出するものとすれば、より確実な判定が行える。
【００１２】
さらにまた、ＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設され、燃料ポンプ上流側に配設された温度センサからの出力信号が入力されるとともに、燃料ポンプ下流側に配設した温度センサ及び圧力センサからの出力信号が各々入力され、且つ、燃料ポンプ電流値検知手段、燃料圧力推定手段、燃料組成判定手段を備えており、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施することを特徴とするＬＰＧ噴射制御装置とすれば、これをＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設するだけで、上述した機能を確実に発揮できるものとなる。
【発明の効果】
【００１３】
燃料ポンプ駆動電流から昇圧代を求めて燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定することにより、使用しているＬＰＧの燃料組成を判定する本発明によると、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようになり、燃料組成の変化に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１４】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【００１５】
図１は、本発明である好ましい形態であるＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するためのＬＰＧ噴射制御装置としての電子制御ユニット１０Ａを配設してなるＬＰＧ噴射システムの配置図を示すものであり、このシステムと図４に示した従来のＬＰＧ噴射システムとの大きな違いは、燃料ポンプ３の上流側の燃料タンク２に圧力センサを配設しておらず、その分のコストが低廉に抑えられる点にある。
【００１６】
また、電子制御ユニット１０Ａは、ハード面においては従来のＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ｂと同様であり、ソフト面においても、燃料ポンプ３下流側の燃料圧力（燃料噴射圧力）を検知してフィードバック制御により目標噴射圧力を維持するとともに、燃料ポンプ３上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定する図示しない燃料組成判定手段を備えている点で共通している。
【００１７】
一方、本実施の形態の電子制御ユニット１０Ａには、燃料ポンプ３の駆動電流が入力されるとともに、本発明に特有のＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するためのプログラムがインストールされており、燃料ポンプ３の駆動電流を検知するための燃料ポンプ電流値検知手段１００、燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定するための燃料圧力推定手段１０１を機能的に備えており、以下に詳述するＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施するようになっている点が、従来の電子制御ユニット１０Ｂと大きく異なる点である。
【００１８】
次に、本実施の形態のＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法の原理、及びＬＰＧ噴射制御装置である電子制御ユニット１０Ａの機能を説明する。
【００１９】
インジェクタ４から燃料噴射が行われると、燃料ポンプ３下流側の燃料圧力が瞬間的に降下するが、設定目標噴射圧力になるようにフィードバック制御するために燃料ポンプ３が駆動操作される。このとき、燃料ポンプ３の仕事は、ポンプ前後差圧（＝設定目標圧力−燃料タンク２内ＬＰＧ蒸気圧）分だけ燃料を昇圧させることにある。
【００２０】
一方、燃料ポンプ３には、図２のグラフに示すような昇圧代∝電流の関係が成り立つため、燃料ポンプ３を駆動させる電流値（消費電流値）を知ることによりこの昇圧値を知ることができる。即ち、燃料ポンプ電流値検知手段１００により燃料ポンプ３に流れた電流値を検知して、燃料圧力推定手段１０１により所定の関係式またはデータテーブルを用いてこの昇圧代を求め、これを設定目標値から差し引くことにより、燃料タンク２内のＬＰＧ蒸気圧を推定することができる。
【００２１】
尚、燃料組成を判定するための手順は従来のものと同様でもよく、推定した燃料ポンプ３上流側の燃料圧力（燃料タンク２内蒸気圧）と、燃料タンク２に配設した温度センサ１１ａで検出した燃料温度から、各燃料組成における燃料圧力と燃料温度のデータテーブルまたは所定の関係式（近似式）を用いて照合することにより、その燃料組成を比較的正確に判定することができる。
【００２２】
尚、図３は、各燃料組成における燃料圧力と燃料温度ＬＰＧの関係図であるが、このような蒸気圧線図の近似式を例えば燃料成分１０％刻みで電子制御ユニット１０Ａに予めセットしておいて補間計算を行うことにより、ＬＰＧの燃料成分の判定を行うようにすればよい。
【００２３】
そして、このようにして判定したＬＰＧの燃料組成を基に、所定のデータテーブル等を用いて燃料噴射制御など各種制御における基準値を補正することにより、より的確なエンジン制御を実施することができるようになる。尚、上述したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法の各手順は、電子制御ユニット１０ＡのＣＰＵに過剰な処理負担を強いるようなレベルではないため、従来のものと比べて制御装置として高機能である必要はなく、高価な電子制御ユニットの使用を求めるものではないため、ハード面でコストを上昇させる心配はない。
【００２４】
以上、述べたように、ＬＰＧ噴射システムについて、本発明により、フィードバック制御用の圧力センサを用いて燃料成分の判定を行えるようになり、異なる燃料組成に対応可能な燃料噴射制御を低コストで実現できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【００２５】
【図１】本発明の実施の形態を示すＬＰＧ噴射システムの配置図。
【図２】燃料ポンプの昇圧代と電流の関係を示すグラフ。
【図３】燃料圧力と燃料温度ＬＰＧの関係を示すグラフ。
【図４】従来例を示す配置図。
【符号の説明】
【００２６】
２ 燃料タンク、３ 燃料ポンプ、４ インジェクタ、１０Ａ 電子制御ユニット、１１ａ，１１ｂ 温度センサ、１２ｂ 圧力センサ、１００ 燃料ポンプ電流値検知手段、１０１ 燃料圧力推定手段
【特許請求の範囲】
【請求項１】
燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とするＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項２】
前記昇圧代の導出が、前記電流値と前記昇圧代の関係を表す所定の関係式を用いて算出されることを特徴とする請求項１に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項３】
前記昇圧代の導出が、前記電流値と前記昇圧代の関係を表す所定のデータテーブルを用いて導びかれることを特徴とする請求項１に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項４】
前記燃料ポンプ上流側の燃料温度が、前記燃料タンクに貯留した燃料から検出され、燃料ポンプ下流側の燃料圧力及び燃料温度が、インジェクタ近傍の燃料から検出されることを特徴とする請求項１，２または３に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項５】
ＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設され、前記燃料ポンプ上流側に配設された温度センサからの出力信号が入力されるとともに、前記燃料ポンプ下流側に配設した温度センサ及び圧力センサからの出力信号が各々入力され、且つ、燃料ポンプ電流値検知手段、燃料圧力推定手段、燃料組成判定手段を備えており、請求項１，２，３または４に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施することを特徴とするＬＰＧ噴射制御装置。
【請求項１】
燃料ポンプ下流側の燃料圧力を検知しながらフィードバック制御で目標噴射圧力を維持するＬＰＧ噴射制御装置において、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力及び燃料温度からＬＰＧの燃料組成を判定するためのＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法であって、前記ＬＰＧ噴射制御装置は、検知した前記燃料ポンプの駆動電流の電流値から所定の導出方法で求めた前記目標噴射圧力と前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力の差圧である昇圧代を前記目標噴射圧力から差し引くことにより前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を推定し、前記燃料ポンプ上流側の燃料圧力を直接検出することなく前記燃料組成を判定することを特徴とするＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項２】
前記昇圧代の導出が、前記電流値と前記昇圧代の関係を表す所定の関係式を用いて算出されることを特徴とする請求項１に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項３】
前記昇圧代の導出が、前記電流値と前記昇圧代の関係を表す所定のデータテーブルを用いて導びかれることを特徴とする請求項１に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項４】
前記燃料ポンプ上流側の燃料温度が、前記燃料タンクに貯留した燃料から検出され、燃料ポンプ下流側の燃料圧力及び燃料温度が、インジェクタ近傍の燃料から検出されることを特徴とする請求項１，２または３に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法。
【請求項５】
ＬＰＧエンジンの燃料噴射システムに配設され、前記燃料ポンプ上流側に配設された温度センサからの出力信号が入力されるとともに、前記燃料ポンプ下流側に配設した温度センサ及び圧力センサからの出力信号が各々入力され、且つ、燃料ポンプ電流値検知手段、燃料圧力推定手段、燃料組成判定手段を備えており、請求項１，２，３または４に記載したＬＰＧエンジンの燃料組成判定方法を実施することを特徴とするＬＰＧ噴射制御装置。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００９−２２１８６８（Ｐ２００９−２２１８６８Ａ）
【公開日】平成２１年１０月１日（２００９．１０．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−６４３３５（Ｐ２００８−６４３３５）
【出願日】平成２０年３月１３日（２００８．３．１３）
【出願人】（０００１５３１２２）株式会社ニッキ (296)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年１０月１日（２００９．１０．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年３月１３日（２００８．３．１３）
【出願人】（０００１５３１２２）株式会社ニッキ (296)
【Ｆターム（参考）】
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