説明

LSIテスタ

【課題】より多種類のDUTのテストに柔軟に対応でき、ソフトウェアによる信号処理に比べて格段の高速処理が行えるLSIテスタを実現すること。
【解決手段】アナログ信号波形を出力するLSIの良否をテストするLSIテスタにおいて、被測定対象LSI(DUT)の出力信号を処理する演算処理部の少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成されたことを特徴とするもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LSIテスタに関し、詳しくは、アナログ信号波形を出力するLSIの良否をテストするテスタの高速化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図2は、D/A変換器やFPD(フラットパネルディスプレイ)ドライバなどのアナログ信号波形を出力するように構成されたLSIの良否をテストするテスタの主要部の一例を示すブロック図である。被測定対象LSI(以下DUTという)10から出力されるアナログ信号波形は、デジタイザモジュール20でデジタル信号に変換された後、演算モジュール30に入力されて所定の演算処理が実行される。これらの演算結果は、テストコントローラ(以下TSCという)40に入力される。TSC40は、これらの演算結果に基づき、DUT10の良否判定を行う。
【0003】
具体的には、デジタイザモジュール20に入力されたDUT10のアナログ出力信号はアナログフィルタ21を介してA/D変換器22に入力されて波形データに変換され、メモリ23に格納される。メモリ23に格納された波形データは、演算モジュール30に転送されて演算モジュール上のメモリ31に格納される。メモリ31に転送格納された波形データは、その後DSPや汎用プロセッサなどのプロセッサ32によりFFTなどの所定の演算処理が施され、それらの演算結果はTSC40に転送される。TSC40は、DUT10の種類に応じたテストプログラムを実行するものであり、DUT10の良否判定も行う。
【0004】
【特許文献1】特開2006−242638号公報
【0005】
特許文献1には、ハード構成としてプログラマブルに構築できるコンフィギュアラブルなデバイスであるFPGAを用いた、被測定デバイスの検査に適した半導体検査装置の構成について記載されている。ただし、この特許文献1に記載されている半導体検査装置では、FPGAを使用してはいるものの、FPGAのハード構成を規定するプログラムは半導体検査装置の外部から与えられる構成になっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の構成によれば、たとえばデジタイザモジュール20に組み込まれているローパスフィルタ21の特性はハードウェアによって固定化されていることから、多種類のDUT10のテストに対応することは困難である。
【0007】
演算モジュール30に組み込まれているプロセッサ32のソフトウェアによる信号処理も不可能ではないが、ハードウェアによるフィルタに比べると処理速度が格段に低下してしまい、テスト効率の面から実用的ではない。
【0008】
また、演算モジュール30は、FFTなどの複雑な演算処理をソフトウェア処理で行っているので、これらの演算処理の高速化にも限界があり、テスタの高速化が図れないという問題がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に着目したものであり、その目的は、より多種類のDUTのテストに柔軟に対応でき、ソフトウェアによる信号処理に比べて格段の高速処理が行えるLSIテスタを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を達成する請求項1の発明は、
アナログ信号波形を出力するLSIの良否をテストするLSIテスタにおいて、
被測定対象LSI(DUT)の出力信号を処理する演算処理部の少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、
DUTの波形データを変換出力するデジタイザモジュールと、
少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成され前記デジタイザモジュールから変換出力される波形データに所定の演算処理を施すプロセッサを含む演算モジュールと、
テスト記述言語(TDL)で記述されたDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを出力するとともに演算モジュールの演算結果に基づきDUTの良否判定を行うテストコントローラと、
テストコントローラから出力されるDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを論理合成してFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに変換し前記FPGAにロードするとともに、これらFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに含まれない部分をコンパイルして演算モジュールのプロセッサにロードするTDL処理モジュール、
とで構成されたことを特徴とするLSIテスタである。
【0012】
請求項3の発明は、
少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成されDUTの波形データを変換出力するデジタイザモジュールと、
前記デジタイザモジュールから変換出力される波形データに所定の演算処理を施すプロセッサを含む演算モジュールと、
テスト記述言語(TDL)で記述されたDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを出力するとともに演算モジュールの演算結果に基づきDUTの良否判定を行うテストコントローラと、
テストコントローラから出力されるDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを論理合成してFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに変換し前記FPGAにロードするとともに、これらFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに含まれない部分をコンパイルして演算モジュールのプロセッサにロードするTDL処理モジュール、
とで構成されたことを特徴とするLSIテスタである。
【発明の効果】
【0013】
これらにより、より多種類のDUTのテストに柔軟に対応でき、ソフトウェアによる信号処理に比べて格段の高速処理が行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について、図面を用いて説明する。図1は本発明の具体例の主要部を示すブロック図であり、図2と共通する部分には同一の符号を付けている。図1において、演算モジュール30には、FPGA(Field Programmable Gate Array)33が設けられている。TSC40は、テスト記述言語(以下TDLという)で記述されたDUT10の種類別テスト用信号処理ソフトウェアを、TDL処理モジュール50を介して演算モジュール30にロードする。
【0015】
TDL処理モジュール50には、TSC40から出力されるTDLで記述されたDUT10の種類別テスト用信号処理ソフトウェアを格納する信号処理TDL格納部51が設けられている。
【0016】
信号処理TDL格納部51に格納されているTDLで記述されたDUT10の種類別テスト用信号処理ソフトウェアの全部または一部は、論理合成部52で信号処理用論理合成ソフトウェアにより論理合成され、ネットリスト生成部53に入力される。ネットリスト生成部53はFPGA33のネットリストを生成する。
【0017】
ネットリスト生成部53で生成されたFPGA33のネットリストは、FPGA33のコンフィグレーションデータを生成するFPGAコンフィグレーションデータ生成部54に入力され、FPGA用のコンフィグレーションデータに変換される。
【0018】
変換されたFPGA用のコンフィグレーションデータは、FPGAコンフィグレーションデータ格納部55に格納されるとともに、FPGA33にロードされる。
【0019】
演算コンパイラ部56は、信号処理TDL格納部51に格納されているTDLで記述されたDUT10の種類別テスト用信号処理ソフトウェアのうちFPGA33のネットリストに含まれない部分をプロセッサ32で演算処理するようにコンパイルして、プロセッサ32にロードする。
【0020】
このような構成において、DUT10のテスト実行にあたり、演算モジュール30は、従来と同様にDUT10の波形データをデジタイザモジュール20より受け取る。演算モジュール30のプロセッサ32は、基本的には従来と同様に信号処理ソフトウェアに基づく信号処理を行うが、DUT10の種類別テスト用信号処理のうち、少なくともソフトウェア処理よりも高速処理が可能な部分の信号データをFPGA33に転送し、FPGA33に高速信号処理を行わせて演算結果を求める。
【0021】
FPGAによる論理合成技術を利用したDUT10の種類に応じて柔軟に対応できる動的ハードウェアをLSIテスタの演算処理に適用することにより、使いやすさ・操作性などのユーザビリティを犠牲にすることなく信号演算処理の高速化が図れ、コスト・オブ・テスト(COT)の向上にも貢献できるとともに、機能の高度化が実現できる。
【0022】
なお、上記実施例では、演算モジュール30にFPGAを実装する例について説明したが、デジタル信号処理を必要とする全てのモジュールに応用可能であり、たとえばデジタイザモジュールに信号処理用のFPGAを搭載してもよい。
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、より多種類のDUTのテストに柔軟に対応できて、ソフトウェアによる信号処理に比べて格段の高速処理が行えるLSIテスタが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の具体例を示すブロック図である。
【図2】従来のLSIテスタの主要部の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0025】
10 被測定対象LSI(DUT)
20 デジタイザモジュール
30 演算モジュール
33 FPGA
40 テストコントローラ(TSC)
50 TDL処理モジュール
51 信号処理TDL格納部
52 論理合成部
53 ネットリスト生成部
54 FPGAコンフィグレーションデータ生成部
55 FPGAコンフィグレーションデータ格納部
56 演算コンパイラ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ信号波形を出力するLSIの良否をテストするLSIテスタにおいて、
被測定対象LSI(DUT)の出力信号を処理する演算処理部の少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成されたことを特徴とするLSIテスタ。
【請求項2】
DUTの波形データを変換出力するデジタイザモジュールと、
少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成され前記デジタイザモジュールから変換出力される波形データに所定の演算処理を施すプロセッサを含む演算モジュールと、
テスト記述言語(TDL)で記述されたDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを出力するとともに演算モジュールの演算結果に基づきDUTの良否判定を行うテストコントローラと、
テストコントローラから出力されるDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを論理合成してFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに変換し前記FPGAにロードするとともに、これらFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに含まれない部分をコンパイルして演算モジュールのプロセッサにロードするTDL処理モジュール、
とで構成されたことを特徴とするLSIテスタ。
【請求項3】
少なくとも一部がFPGAによる論理合成で構成されDUTの波形データを変換出力するデジタイザモジュールと、
前記デジタイザモジュールから変換出力される波形データに所定の演算処理を施すプロセッサを含む演算モジュールと、
テスト記述言語(TDL)で記述されたDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを出力するとともに演算モジュールの演算結果に基づきDUTの良否判定を行うテストコントローラと、
テストコントローラから出力されるDUTの種類別テスト用信号処理ソフトウェアを論理合成してFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに変換し前記FPGAにロードするとともに、これらFPGA用のネットリストおよびコンフィグレーションデータに含まれない部分をコンパイルして演算モジュールのプロセッサにロードするTDL処理モジュール、
とで構成されたことを特徴とするLSIテスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−283366(P2008−283366A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124520(P2007−124520)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】