説明

Lumiramic(登録商標)プレートレットのバレル研磨

本発明は、発光セラミックボディ3を後処理するための方法に関する。前記方法は、所定の量の発光セラミックボディ3を容器に加えるステップと、前記発光セラミックボディ3の縁5が面取りされるまで前記容器内で前記発光セラミックボディ3を研磨するステップとを含む。前記縁5の面取りは、前記ボディ3の強度を増大させ、それらの損傷しやすさを低下させ、それによって、一部欠損の可能性を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光装置の設計及び製造の分野に関し、より詳細には、波長変換装置における使用のために発光セラミックボディを後処理するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白色光は、蛍光体などの波長変換材料による青色光の部分的変換によって得られ得る。例えば発光ダイオード(LED)によって放射される、青色光は、蛍光体を励起し、蛍光体に異なる色の光、例えば黄色光を放射させる。LEDによって放射された青色光は、蛍光体によって放射された黄色光と混合され、観察者は、結果として生じる青色光及び黄色光の混合されたものを、白色光として知覚する。
【0003】
一般的な生産プロセスにおいては、蛍光体は、粉末として、又は平板の形のセラミック材料として生産される。セラミック材料の場合には、平板は、粉砕又はさいの目切りのような標準的な分離技術によって、多くの場合、(時として「Lumiramic(登録商標)プレートレット」と呼ばれる)プレートレットの形の、個々の発光セラミックボディに機械加工される。
【0004】
このようにして生産されるLumiramic(登録商標)プレートレットは、明確に規定された形状を持つ。分離プロセスは、一部欠損及びひび割れなどの縁の近くの(機械的)損傷を引き起こす。この損傷は、製品の強度に影響を及ぼし得る。これとは別に、プレートレットの損傷及び縁の形状は、製品の光学性能(例えば光の漏れ)に影響を及ぼす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それ故、当業界においては、上記の問題の少なくとも幾つかを解決する、Lumiramic(登録商標)プレートレットを加工するための改善された方法を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発光セラミックボディを後処理するための方法を開示する。前記方法は、(例えばバレルのような)容器に、予め規定された量の発光セラミックボディを加え、前記容器中の前記発光セラミックボディを、前記発光セラミックボディの縁が面取りされるまで研磨するステップを含む。前記発光セラミックボディは、光源によって放射された一次放射線を二次放射線に変換するよう構成される。
【0007】
ここで用いられているような、「面取りをした縁」という用語は、隣接する表面と鋭角を成さない表面を有する縁を指す。換言すれば、「面取りをした縁」という用語は、90度以下の角を持たない縁を指す。面取りをした縁は、例えば、ファセット化された縁又は丸くされた縁を含み得る。
【0008】
更に、ここで用いられているような、「研磨」という用語は、面取りをした縁をもたらすよう前記発光セラミックボディを研磨することを指す。これは、(例えば、背景の項において記載したような、前記セラミックボディの一般的な加工の一部である、前記材料の前記平板の、個々の発光セラミックボディへの粉砕とは対照的に)前記セラミックボディの後処理の一部である。
【0009】
発光セラミックボディ、及びこのようなボディを含む波長変換装置も、開示されている。前記波長変換装置は、一次放射線を放射するよう構成される光源を含む。前記発光セラミックボディは、前記光源によって放射される前記一次放射線の経路中に配置され、前記一次放射線を二次放射線に変換するよう構成され、ここで、前記発光セラミックボディの縁は、面取りされている。
【0010】
本発明の要旨は、前記発光セラミックボディの縁を、前記セラミックボディをバレル研磨することにより、面取りすることにある。前記縁の面取りは、前記ボディの強度を増大させ、それらの損傷しやすさを低下させ、一部欠損の可能性を減らす。更に、前記縁の面取りは、光の漏れを減らすかもしれず、それによって、前記波長変換装置の効率を改善する。バレル研磨を用いての前記縁の面取りは、大量のLumiramic(登録商標)プレートレットの後処理を可能にする。これは、とりわけ大量生産において有用である。
【0011】
請求項2の実施例は、研磨物質と混ぜ合わされた前記発光セラミックボディの研磨を可能にし、請求項4の実施例は、前記発光セラミックボディの前記研磨物質からの分離を可能にする。請求項3は、研磨物質の有利なタイプを明示している。請求項5及び6は、前記分離を実施する有利な方法を明示している。
【0012】
請求項7及び8は、有利なことには、ローラーベンチにおける前記発光セラミックボディの研磨を可能にする。
【0013】
請求項9の実施例は、研磨時間を明示している。
【0014】
請求項10乃至12及び14の実施例は、面取りをした縁の有利なタイプを明示している。
【0015】
以下、本発明の実施例を更に詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の保護の範囲を限定するものとして解釈されるべきでないことは理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の或る実施例による波長変換装置の概略図を示す。
【図2】本発明の或る実施例による、発光セラミックボディを後処理する方法ステップのフローチャートを示す。
【図3A】本発明の或る実施例による研磨の前の発光セラミックボディの概略図を示す。
【図3B】本発明の或る実施例による研磨の後の発光セラミックボディの概略図を示す。
【図3C】本発明の別の実施例による研磨の後の発光セラミックボディの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の或る実施例による波長変換装置1の概略図を示している。示されているように、波長変換装置1は、光源2と、発光セラミックボディ3とを含む。
【0018】
光源2は、或る波長の一次放射線を放射するよう構成される。或る実施例においては、光源2は、390nm乃至480nmの、好ましくは420乃至460nm波長範囲内の青色光を放射するLEDを有する。このようなLEDは、例えば、窒化ガリウムインジウム及び/又は窒化ガリウムのグループから選択される半導体材料を有する活性層を含み得る。これらの半導体材料は、電気的に駆動されるときに相対的に短い波の一次放射線を放射する。本発明によれば、一次放射線を供給するために、装置1において、幾つかのLEDが用いられてもよい。
【0019】
セラミックボディ3は、一般に、光源2によって放射される一次放射線の経路中に配置される、好ましくはプレートレットの形の(即ち、90度の角度を持つ平行六面体の形の)、自己支持形ボディである(即ち、セラミックボディ3は、光源2の上に、又は光源2の上部から所定の距離のところに、配置される)。セラミックボディ3の他の幾何学的形状も、本発明の範囲内に含まれる。
【0020】
セラミックボディ3は、セラミック蛍光体、又はセラミック蛍光体の混合物で構成され、光源2によって放射される一次放射線の少なくとも一部を二次放射線に変換するよう構成される。ここで用いられているような、「変換」は、第1波長を持つ放射線の、第1波長と異なる(一般に第1波長より長い)第2波長を持つ放射線への変換を指す。
【0021】
「セラミック蛍光体で構成される」によって、セラミックボディ3は、基本的に、セラミック蛍光体から成ることが示されている。しかしながら、それでも、「セラミック蛍光体で構成される」セラミックボディ3は、例えば不純物のため、100%セラミック蛍光体ではないかもしれない。他の例においては、セラミックボディ3は、別のセラミック材料と混ぜ合わされ、共焼結されたセラミック蛍光体で構成され得る。
【0022】
ここで用いられているような、「蛍光体」という用語は、ルミネッセンス現象を示す材料を指す。セラミックボディ3に用いられる適切な材料の例は、部分的に希土類金属が添加されている、アルミン酸塩、ガーネット又はケイ酸塩などのベース材料である。青色放射光源2の場合は、発光材料は、好ましくは、(多)結晶セリウム添加イットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce3+若しくはY3Al5O12:Ce3+)又はマンガン添加硫化亜鉛(ZnS:Mn2+)などの黄色放射蛍光体を有する。他の例においては、YAG:Ce3+は、Al2O3と共焼結され得る。高い光出力のために、セラミックボディ3が、一次放射線及び/又は二次放射線に対して透光性且つ/又は透明である場合に、とりわけ有利である。
【0023】
図1に示されているように、セラミックボディ2の縁5は、面取りされている。有利なことには、縁の面取りは、一部欠損の可能性を減らし、光の漏れを減らし、波長変換装置1の効率を高める。
【0024】
波長変換装置1は、例えば照明機器に組み込まれ得る。
【0025】
図2は、本発明の或る実施例による、面取りをした縁を持つ発光セラミックボディを後処理するための方法ステップのフローチャートを示している。前記方法は、セラミックボディ3が、例えばバレルのような研磨容器に加えられるステップ10において始まる。随意に、ステップ11において、研磨物質がバレルに加えられる。研磨物質は、場合により付加的なセラミック球(例えばアルミナ)を備える、例えば、研磨粒子の粉末、液体中の研磨粒子の懸濁液、又はペースト中に含まれる研磨粒子を含み得る。或る実施例においては、研磨物質は、研磨粉末、例えば、SiC、B4C、CeO2、Cr2O3、Al2O3、SnO2、ZrO2、ダイヤモンド、c-BN、ガラス、又は液体、例えば水に懸濁したコロイド状二酸化ケイ素(SiO2)を有する。ステップ12においては、セラミックボディ3の縁5が面取りされるまで、セラミックボディ3が容器内で研磨される(転がされる)。随意のステップ11において研磨物質が加えられた場合には、ステップ12において、セラミックボディ3は、容器内で研磨物質と一緒に研磨される(転がされる)。前記方法は、セラミックボディ3が、研磨に起因するデブリから分離されるステップ13において終了する。随意のステップ11において研磨物質が加えられた場合には、ステップ13において、セラミックボディ3は、研磨物質からも分離される。分離は、例えば、セラミックボディ3を水(又は別の適切な液体)で洗浄し、ふるいにかけることによって、実施され得る。他の例においては、分離は、沈降分離によって実施され得る。なぜなら、セラミックボディ3は、研磨物質の小さな研磨粒子よりずっと速く沈下するからである。
【0026】
本発明による、面取りをした縁5を持つセラミックボディ3を生産するための特定の手順を、以下の非限定例において説明する。
【0027】
青色LEDの部分的な波長変換のためには、通常、YAG:Ceセラミック平板が、所定の厚さに機械加工され、その後、さいの目に切られてプレートレットにされる。25mlのこのようなプレートレット(一般的なサイズ〜1×〜1×〜0.12mm3)が、100mlの高密度ポリエチレンボトルに入れられる。4ml(軽くたたかれた粉末容積)の(各々、23、13又は6.5μmの平均粒度に対応する、グリットサイズ350、500又は800の)SiC研磨粉末と、液体(例えば水)とが、加えられる。液体の量は、全体的な総量が75mlとなるような量である。閉じられたボトルが、約30rpmで24時間回転することによって研磨するために、ローラーベンチ上に置かれる。
【0028】
或る実施例においては、ボトルの回転速度は、20回転/分(rpm)と60回転/分(rpm)との間、好ましくは、25rpmと35rpmとの間であってもよく、研磨時間は、12時間と48時間との間であってもよい。他の実施例においては、回転速度は、研磨粒子と、粒子が懸濁される液体との混合物の粘度に依存して、異なり得る。前記混合物の粘度は、1ミリパスカル秒と2パスカル秒との間で様々であり得る。
【0029】
ここに記載されている加工は、ミリングボールを用いたセラミック粉末の通常の回転加工と異なる。なぜなら、このようなボールは、前記粉末粒子より、硬く、大きく、著しく重い重量を持つ(従って、前記粉末粒子により大きな影響を与える)からである。本発明の実施例によれば、研磨粒子は、セラミックボディに比べて、より硬く、より小さい。適切な研磨材料は、面取りされるべきセラミックボディのタイプに依存して、セラミックボディの硬さと同じ又はより硬い硬さを持つものが選ばれ得ることは、当業者には分かるであろう。
【0030】
24時間のバレル研磨時間の間、Lumiramic(登録商標)プレートレットの厚さは、影響を及ぼされないことに注意されたい。従って、研磨粉末の影響は、セラミックボディの縁にしか現れない。
【0031】
図3Aは、本発明の或る実施例による研磨の前の発光セラミックボディ3の概略図を示している。示されているように、セラミックボディ3は、バレル研磨の前には、セラミック平板をさいの目に切って個々のセラミックボディにすることに起因して、直角の又は鋭い縁を持ち得る。前述したように、このような縁は、微小な一部欠損を被り、光学的悪影響をもたらす。矢印6A及び7Aで示されているように、セラミックボディ3において浅い角度の下で生成され、散乱された光は、光源2の上面に対して平行に近い方向においてセラミックボディ3を出る。従って、この光は、セラミックボディ3の上面からの一次及び二次放射線の混合物を見る観察者によって観察されない。
【0032】
図3B及び3Cは、本発明の異なる実施例による研磨の後の発光セラミックボディの概略図を示している。研磨後には、セラミックボディ3の縁5は、面取りされている。例えば、縁5は、(図3Bに示されているように)は丸くされてもよく、又は(図3Cに示されているように)ファセット化されてもよい。丸い縁の場合は、巨視的な曲率半径は、10マイクロメートル(μm)と120μmとの間であり得る。
【0033】
矢印6B及び7Bで示されているように、面取りをした縁5は、光の漏れの削減をもたらし、それによって、波長変換装置の効率を改善する。更に、矢印6B及び7Bは、面取りをした縁5は、セラミックボディ3内の光の再利用を可能にすることも示している。結果として、光のうちの、本質的に水平方向に(即ち、光源2の上面に対して平行に)装置を出る部分が減らされる。
【0034】
上記は、本発明の実施例に向けられているが、本発明の根本的範囲から逸脱することなく、本発明の他の及び更なる実施例が考案され得る。例えば、光源2は、セラミックボディ3が、光源2によって放射される一次放射線を二次放射線に変換するようなものである限り、(可視スペクトルの外側の放射線を含む)任意の色の光を放射するLEDを有してもよい。それ故、本発明の範囲は、後に続く請求項によって決定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光セラミックボディを後処理するための方法であって、
光源によって放射される一次放射線を二次放射線に変換するよう構成される所定の量の発光セラミックボディを、容器に加えるステップと、
前記発光セラミックボディの縁が面取りされるまで前記容器内で前記発光セラミックボディを研磨するステップとを有する方法。
【請求項2】
所定の量の研磨物質を前記容器に加えるステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記研磨物質が、研磨粒子の粉末、又は液体に懸濁した研磨粒子を有する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記研磨するステップの後に、前記発光セラミックボディを前記研磨物質から分離するステップを更に有する請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記発光セラミックボディを前記研磨物質から分離するステップが、前記発光セラミックボディを液体で洗浄し、続いて、ふるいにかけるステップを有する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発光セラミックボディを前記研磨物質から分離するステップが、沈降分離ステップを有する請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記発光セラミックボディを研磨するステップが、前記発光セラミックボディをローラーベンチ上で転がすステップを有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ローラーベンチの回転速度が、25回転/分と35回転/分との間である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記発光セラミックボディが、12時間と48時間との間の期間の間、前記容器内で研磨される請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記発光セラミックボディの縁が面取りされるまで前記容器内で前記発光セラミックボディを研磨するステップが、前記縁がファセット化されるまで前記容器内で前記発光セラミックボディを研磨するステップを有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記発光セラミックボディの縁が面取りされるまで前記容器内で前記発光セラミックボディを研磨するステップが、前記縁が丸くされるまで前記容器内で前記発光セラミックボディを研磨するステップを有する請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
丸くされた前記縁の曲率半径が、10マイクロメートルと120マイクロメートルとの間である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
光源によって放射される一次放射線を二次放射線に変換するよう構成される発光セラミック材料を有する発光セラミックボディであって、前記発光セラミックボディの縁が面取りされている発光セラミックボディ。
【請求項14】
前記発光セラミックボディの前記縁が、10マイクロメートルと120マイクロメートルとの間の曲率半径で丸くされている請求項13に記載の発光セラミックボディ。
【請求項15】
一次放射線を放射するよう構成される光源と、
前記光源によって放射される前記一次放射線の経路中に配置され、前記一次放射線を二次放射線に変換するよう構成される発光セラミックボディとを有する波長変換装置であって、
前記発光セラミックボディの縁が面取りされている波長変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【公表番号】特表2012−528018(P2012−528018A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512488(P2012−512488)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【国際出願番号】PCT/IB2010/052205
【国際公開番号】WO2010/136935
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】