説明

MAGEファミリーからの腫瘍関連抗原及びそれらをコードする核酸配列、融合タンパク質の及びワクチン接種のための組成物の調製のための使用

【課題】本発明の抗原は、所定範囲の腫瘍の治療のためのワクチンを供するよう調剤することができる。MAGEタンパク質を精製するための新規な方法も供する。
【解決手段】本発明は、MAGEファミリーからの新規タンパク質に、及びそれらの生産に、特に免疫学的融合パートナー、例えばリポプロテインDに融合したMAGEタンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は癌ワクチン治療に利用できる腫瘍関連抗原を含むタンパク質誘導体に関する。特に、本発明の誘導体は、Tヘルパーエピトープを供する免疫学的融合パートナー、例えばヘモフィルス・インフルエンゼ(Haempophilus influenzae )BからのプロテインDの脂質化型に連結したMAGE遺伝子のファミリー(例えばMAGE−3,MAGE−1)によりコードされた抗原を含む融合タンパク質;抗原のジスルフィド架橋が還元されて生じたチオールがブロッキングされている化学的に改変されたMAGEタンパク質、及びアフィニティータグが供され及び/又はジスルフィド架橋形成を防ぐよう遺伝子改変された遺伝子的に改変されたMAGEタンパク質を含む。MAGEタンパク質を精製するため及び所定範囲の癌、例えば黒色腫、乳癌、膀胱癌、肺癌、NSCLC、頭部の癌及び扁平上皮癌、結腸癌及び食道癌を治療するためのワクチンを調剤するための方法も記載される。
【背景技術】
【0002】
MAGE遺伝子のファミリーによりコードされる抗原は(悪性黒色腫を含む)黒色腫細胞及びNSCLC(非小細胞肺癌)を含むいくつかの他の癌、頭部及び首扁平上皮癌、膀胱移行上皮癌及び食道癌で主に発現されるが、精巣及び胎盤を除く正常な組織では検出できない(Gaugler, 1994; Weyhants, 1994; Patard 1995)。MAGE−3は黒色腫の69%で発現され(Gaugler, 1994 )、NSCLCの44%(Yoshimatsu 1988 )、頭部及び首扁平上皮癌の48%、膀胱移行上皮癌の34%、食道癌の57%、直腸癌の32%、及び乳癌の24%(Van Pel, 1995; Inoue, 1995, Fujie 1997; Nishimura 1997)においても検出されている。MAGEタンパク質を発現する癌はMAGE関連腫瘍として知られている。
【0003】
ヒト黒色腫細胞の免疫原性は黒色腫細胞及び自己由来リンパ球の混合培養物を用いる実験においてエレガントに証明されている。これらの培養物は自己由来黒色腫細胞を排他的に溶解することができるが、自己由来繊維芽細胞も自己由来EBV形質転換リンパ球も溶解することができない特定の細胞毒性Tリンパ球(CTL)をしばしば作り出す(Knuth, 1984; Anichini, 1987 )。これらのCTLクローンにより自己由来黒色腫細胞上で認識される抗原のいくつかは、MAGEファミリーのものを含めて現在、同定されている。
【0004】
自己由来黒色腫細胞上の特定のCTLによりその認識を介して規定され得る最初の抗原はMZ2−Eと呼ばれ(Van den Eynde, 1989 )、遺伝子MAGE−1によってコードされる(Van der Bruggen, 1991 )。MZ2−Eに対するCTLは、これらの細胞がHLA.A1対立遺伝子を有することを条件に自己由来及び他の患者からのMZ2−E陽性黒色腫細胞を認識し、溶解する。
【0005】
MAGE−1遺伝子は染色体X上に位置しそれらのコーディング配列において互いに64〜85%の相同性を有する12の密接に関連した遺伝子、MAGE1,MAGE2,MAGE3,MAGE4,MAGE5,MAGE6,MAGE7,MAGE8,MAGE9,MAGE10,MAGE11,MAGE12のファミリーに属する。これらは時折、MAGE A1,MAGE A2,MAGE A3,MAGE A4,MAGE A5,MAGE A6,MAGE A7,MAGE A8,MAGE A9,MAGE A10,MAGE A11,MAGE A12(MAGE Aファミリー)として知られる。他の2つのグループのタンパク質もMAGEファミリーの一部である。但しより遠い関係にある。これらはMAGE B及びMAGE Cグループである。MAGE Bファミリーは、(MAGE Xp1及びDAM10としても知られる)MAGE B1,(MAGE Xp2及びDAM6としても知られる)MAGE B2,MAGE B3及びMAGE B4を含む。MAGE Cファミリーは、現在、MAGE C1及びMAGE C2を含む。一般的に、MAGEタンパク質はそのタンパク質のC末端に対して位置したコア配列のサインを含むとして定義することができる(例えばMAGE A1の309アミノ酸タンパク質に関して、コアのサインはアミノ酸195〜279に相当する)。
【0006】
従ってコアのサインの共通パターンは次の通りであり、ここでxはいずれかのアミノ酸を指し、小文字の残基は保存され(保存性変異を許容する)、大文字の残基は完全に保存される。
コア配列のサイン
LixvL(2x)I(3x)g(2x)apEExiWexl(2x)m(3-4x)Gxe(3-4x)gxp(2x)llt(3x)VqexYLxYxqVPxsxP(2x)yeFLWGprA(2x)Et(3x)kv
保存性置換は公知であり、一般に配列アラインメントプログラムにおいてデフォルトスコアリングマトリックスとして設定される。これらのプログラムには、PAM250 (Dayhoft M.O.ら、(1978), “A model of evolutionary changes in proteins¨, In“Atlas of Protein sequence and structure¨ 5 (3) M.O. Dayhoft (ed.), 345-352), National Biomedical Research Foundation, Washington、及びBlosum 62 (Steven Henikoft and Jorja G. Henikoft (1992),“Amino acid substitution matricies from protein blocks¨), Proc.Natl.Acad.Sci. USA 89 (Biochemistry): 10915-10919 がある。
【0007】
一般的に、以下のグループ内の置換が保存性置換であるが、グループ間の置換は非保存性であると考えられる。グループは次の通りである:
i)アスパラテート/アスパラギン/グルタメート/グルタミン
ii)セリン/トレオニン
iii) リシン/アルギニン
iv)フェニルアラニン/チロシン/トリプトファン
v)ロイシン/イソロイシン/バリン/メチオニン
vi)グリシン/アラニン
一般に及び本発明の文脈において、MAGEタンパク質はMAGE A1のアミノ酸195〜279と、そのコア領域において約50%、同一であろう。
【0008】
いくつかのCTLエピトープがMAGE−3タンパク質上で同定されている。1つのこのようなエピトープであるMAGE−3.A1はMHCクラスI分子HLA.A1と会合して提示される時にCTLに特異的なエピトープを構成するMAGE−3タンパク質のアミノ酸168〜176の間に位置したノナペプチドである。現在、2つの更なるCTLエピトープが、黒色腫細胞及び自己由来リンパ球の混合培養物中でCTL応答を開始する能力によりMAGE−3タンパク質のペプチド配列上で同定されている。これら2つのエピトープはHLA.A2(Van der Bruggen, 1994 )及びHLA.B44(Herman, 1996)対立遺伝子の各々についての特定の結合モチーフを有する。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、MAGEタンパク質誘導体を供する。このような誘導体は所定範囲の腫瘍型の治療のために適した治療用ワクチン製剤に用いるために好適である。
本発明の一実施形態において、本誘導体は異種のパートナーに連結したMAGEタンパク質ファミリーからの抗原を含む融合タンパク質である。そのタンパク質は化学的にコンジュゲートされ得るが、好ましくは非融合タンパク質と比べて増加したレベルが発現系で生産されるのを許容する組換え融合として発現される。これにより、融合パートナーは、Tヘルパーエピトープ(免疫学的融合パートナー)、好ましくはヒトにより認識されるTヘルパーエピトープを供するのを補助し、又はネイティブ組換えタンパク質より高収率でタンパク質を発現するのを補助し得る(発現エンハンサー)。好ましくは融合パートナーは、免疫学的融合パートナー及び発現増強パートナーの両方であろう。
【0010】
本発明の好ましい形態において、免疫学的融合パートナーはグラム陰性細菌ヘモフィルス・インフルエンゼ(Haemophilus influenza )Bの表面タンパク質であるプロテインDから得られる(WO91/18926)。好ましくは、プロテインD誘導体は、そのタンパク質のおおよそ最初の1/3、特におおよそ最初のN末端100〜110アミノ酸を含む。好ましくは、プロテインD誘導体は脂質化される。好ましくは、リポプロテインD融合パートナーの最初の109残基がN末端上に含まれ、更なる外来T細胞エピトープと共にワクチン候補抗原を供し、大腸菌内で発現レベルを増加させる(これにより発現エンハンサーとしても機能する)。脂質のテールは、抗原提示細胞への抗原の最適な提示を確実にする。
【0011】
他の融合パートナーには、インフルエンザウイルスからの非構造タンパク質NS1(ヘマグルチニン)がある。典型的には、N末端81アミノ酸が利用される。但しそれらがTヘルパーエピトープを含む限り異なるフラグメントを用いることができる。
別の実施形態において、免疫学的融合パートナーはLYTAとして知られるタンパク質である。好ましくはその分子のC末端部分が用いられる。LYTAは、ペプチドグリカン骨格内の特定の結合を特異的に分解するオートリシンである(lytA遺伝子によりコードされる(Gene, 43 (1986) ページ265 〜272 ))N−アセチル−L−アラニンアミダーゼ、アミダーゼLYTAを合成するストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)から得られる。LYTAタンパク質のC末端ドメインはコリンに対する又はDEAEのような特定のコリンアナログに対するアフィニティーの原因である。この特性は融合タンパク質の発現のために役立つ大腸菌C−LYTA発現プラスミドの開発のために活用されている。アミノ末端にC−LYTAフラグメントを含むハイブリッドタンパク質の精製は記述されている(Biotechnolosy: 10, (1992) ページ795 〜798 )。本明細書に用いる場合、好ましい実施形態は残基178で始まるC末端中に見い出されるLyta分子の反復部分を利用する。特に好ましい形態は残基188〜305を組み込む。
【0012】
上述の免疫学的融合パートナーは発現を補助するのにも有利である。特に、このような融合体はネイティブの組換えMAGEタンパク質より高収率で発現される。
臨床セッティングにおけるこのような構成物は、本発明者により黒色腫を治療することができることが示されている。1つの場合、段階IVの黒色腫はアジュバントを添加しないlipo P 1/3 MAGE 3 His タンパク質の2回の投与後に転移物を取り除いた。
【0013】
従って、その実施形態において、本発明は、免疫学的融合パートナーに連結したMAGEファミリーからの腫瘍関連抗原を含む融合タンパク質を供する。好ましくは、その免疫学的融合パートナーはプロテインD又はそのフラグメント、最も好ましくはリポプロテインDである。MAGEタンパク質は好ましくはMAGE A1又はMAGE A3である。リポプロテインD部分は好ましくはリポプロテインDの最初の1/3を含む。
【0014】
本発明のタンパク質は好ましくは大腸菌内で発現される、好ましい実施形態において、タンパク質は、アフィニティータグ、例えば5〜9、好ましくは6のヒスチジン残基を含むヒスチジンテールと共に発現される。これらは精製を補助するのに有利である。
本発明は、本発明のタンパク質をコードする核酸も供する。このような配列は好適な発現ベクターに挿入してDNA/RNAワクチン接種のために用い又は好適な宿主内で発現させることができる。本核酸を発現する微生物ベクターはワクチンとして用いることができる。このようなベクターには、例えばポックスウイルス、アデノウイルス、アルファウイルス、リステリア及びモナルファージ(monarphage)がある。
【0015】
本発明のタンパク質をコードするDNA配列は標準的なDNA合成技術を用いて、例えばD.M.Robertら(Biochemistry 1985, 24, 5090-5098)により記載される酵素連結法により、化学合成により、試験管内酵素重合により、もしくは例えば熱安定性ポリメラーゼを利用するPCR技術により、又はこれらの技術の組合せにより合成することができる。
【0016】
DNAの酵素による重合は、必要に応じて10°〜37℃の温度で、一般に50μL又はそれ未満の容量で、ヌクレオチドトリホスフェートdATP,dCTP,dGTP及びdTTPを含む好適な緩衝液中で、DNAポリメラーゼI(クレノウフラグメント)のようなDNAポリメラーゼを用いて試験管内で行うことができる。DNAフラグメントの酵素による連結は、4℃〜環境温度の温度で、一般に50ml又はそれ未満の容量で、好適な緩衝液、例えば0.05M Tris(pH7.4)、0.01M MgCl2 、0.01Mジチオトレイトール、1mMスペルミジン、1mM ATP及び0.1mg/mlウシ血清アルブミン中で、T4 DNAリガーゼのようなDNAリガーゼを用いて行うことができる。DNAポリマー又はフラグメントの化学合成は、‘Chemical and Enzymatic Synthesis of Gene Fragments-A Laboratory Manual’(ed. H.G.Gassen and A.Lang), Verlag Chemie, Weinheim (1982) に、又は他の科学文献、例えばM.J.Gait, H.W.D.Matthes, M.Singh, B.S.Sproat、及びR.C.Titmas, Nucleic Acids Research, 1982, 10, 6243; B.S.Sproat、及びW.Bannwarth, Tetrahedron Letters, 1983, 24, 5771; M.D.Matteucci 及びM.H.Caruthers, Tetrahedron Letters, 1980, 21, 719; M.D.Matteucci及びM.H.Caruthers, Journal of the American Chemical Society, 1981, 103, 3185; S.P.Adams ら、Journal of the American Chemical Society, 1983, 105, 661; N.D.Sinha, J.Biernat, J.McMannus、及びH.Koester, Nucleic Acids Research, 1984, 12, 4539;並びにH.W.D.Matthes ら., EMBO Journal, 1984, 3, 801 に記載される方法のような固相技術を用いて、慣用的なホスホトリエステル、ホスファイト又はホスホルアミジト化学により行うことができる。
【0017】
本発明の方法は、Maniatisら、Molecular Cloning-A Laboratory Manual; Cold Spring Harbor, 1982-1989に記載されるような慣用的な組換え技術により行うことができる。
特に、その方法は、
i)本タンパク質又はその免疫原性誘導体をコードするヌクレオチド配列を含むDNAポリマーを宿主内で発現することができる複製可能又は組込み可能発現ベクターを調製し;
ii)該ベクターで宿主細胞を形質転換し;
iii) 該形質転換された宿主細胞を、前記DNAポリマーの発現が前記タンパク質を生産することができる条件下で培養し;そして
iv)該タンパク質を回収すること
を含み得る。
【0018】
用語“形質転換”は、本明細書において、外来DNAを宿主細胞に導入することを意味する。これは、例えば、好適なプラスミド又はウイルスで、例えばGenetic Engineering: Eds. S.M.Kingsman及びA.J.Kingsman: Blackwell Scientific Publications; Oxford, England, 1988に記載されるような慣用的な技術を用いて、形質転換、トランスフェクション又は感染により達成することができる。用語“形質転換された”又は“形質転換体”は、以後、関心の外来遺伝子を含みかつそれを発現する生じた宿主細胞に適用するであろう。
【0019】
本発現ベクターは新規であり、本発明の一部を形成する。
複製可能な発現ベクターは宿主細胞に適合したベクターを開裂して完全なレプリコンを有する直鎖DNAセグメントを供し、そしてその直鎖セグメントを、その直鎖セグメントと一緒に要求される産物をコードする1又は複数のDNA分子、例えば本発明のタンパク質をコードするDNAポリマー又はその誘導体と、連結条件下で組み合わせることにより本発明に従って調製することができる。
【0020】
これにより、DNAポリマーは、必要に応じて予め形成し、又はベクターの作製の間に形成することができる。
ベクターの選択は、部分的に宿主細胞により決定されよう。それは原核生物でも真核生物であってもよいが、好ましくは大腸菌又はCHO細胞である。適切なベクターには、プラスミド、バクテリオファージ、コスミド及び組換えウイルスがある。
【0021】
複製可能発現ベクターの調製は、例えば上述のManiatisらに記載される手順により、DNAの制限、重合及び連結のための適切な酵素で便利に行うことができる。
組換え宿主細胞は、本発明に従って、形質転換条件下で宿主細胞を本発明の複製可能発現ベクターで形質転換することにより調製される。適切な形質転換条件は慣用的であり、例えば上述のManiatisら又は“DNA Cloning¨ Vol.II, D.M.Glover ed., IRL Press Ltd, 1985に記載される。
【0022】
形質転換条件の選択は宿主細胞により決定される。これにより、大腸菌のような細菌宿主細胞は、CaCl2 の溶液で(Cohen ら、Proc.Nat.Acad.Sci., 1973, 69, 2110)又はRbCl,MnCl2 、酢酸カリウム、及びグリセロールの混合物を含む溶液で、そして次に3−〔N−モルホリノ〕−プロパン−スルホン酸、RbCl及びグリセロールで処理することができる。培養中の哺乳動物細胞は、ベクターDNAの細胞へのカルシウム同時沈降により形質転換することができる。本発明は、本発明の複製可能発現ベクターで形質転換された宿主細胞にも広げられる。
【0023】
形質転換された宿主細胞をそのDNAポリマーの発現を許容する条件下で培養することは、便利には、例えば上述のManiatisら及び“DNA Cloning¨に記載されるように行われる。これにより、好ましくは細胞には栄養素が補給され、50℃未満の温度で培養される。
その産物は、宿主細胞に従って及び(細胞内又は培養培地にもしくは細胞内ペリプラズムに分泌された)発現産物の局在化に従って、慣用的な方法により回収される。これにより、宿主細胞が細菌、例えば大腸菌である場合、それは例えば物理的に、化学的に又は酵素的に溶解し、生じたライゼートからタンパク質産物を単離することができる。宿主細胞が哺乳動物細胞である場合、その産物は一般に、栄養培地から又は無細胞抽出液から単離することができる。慣用的なタンパク質単離技術には、選択的沈殿、吸着クロマトグラフィー、及びモノクローナル抗体アフィニティーカラムを含むアフィニティークロマトグラフィーがある。
【0024】
本発明のタンパク質は、脂質に可溶性の形態で又は凍結乾燥形態で供される。
一般に、各々のヒトの投与量は、1〜1000μgのタンパク質、好ましくは30〜300μgを含むであろうと予想される。
本発明は、医薬として許容される賦形剤中に本発明のタンパク質を含む医薬組成物も供する。好ましいワクチン組成物は、少くともリポプロテインD−MAGE−3を含む。このようなワクチンは、任意に、1又は複数の他の腫瘍関連抗原を含み得る。例えばMAGE及びGAGEファミリーに属する他のメンバーがある。好適な他の腫瘍関連抗原には、MAGE−1,GAGE−1又はチロシナーゼタンパク質がある。
【0025】
ワクチン調製物は、一般に、Vaccine Design (“The subunit and adjuvant approach¨ (eds. Powell M.F. & Newman M.J) (1995) Plenum Press New York )に記載される。リポソームでのカプセル化は、Fullerton の米国特許4,235,877に記載される。
本発明のタンパク質は、好ましくは、本発明のワクチン調製物中にアジュバントが添加される。好適なアジュバントアルミニウム塩、例えば水酸化アルミニウムゲル(アルム)又はリン酸アルミニウムを含むが、カルシウム、鉄又は亜鉛の塩であってもよく、またアシル化チロシン又はアシル化糖、カチオンに又はアニオンに誘導化したポリサッカライド又はポリホスファゼンの不溶性懸濁液であってもよい。他の周知のアジュバントには、CpG含有オリゴヌクレオチドがある。そのオリゴヌクレオチドは、CpGジヌクレオチドがメチル化されていないことを特徴とする。このようなオリゴヌクレオチドは公知であり、例えばWO96/02555に記載される。
【0026】
本発明の製剤において、アジュバント組成物はTH1型に優先的に免疫応答を誘導することが好ましい。好適なアジュバントシステムには、例えばモノホスホリル脂質A、好ましくは3−de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)の、アルミニウム塩との組合せがある。CpGオリゴヌクレオチドもTH1応答を優先的に誘導する。
【0027】
増強されたシステムはモノホスホリル脂質A及びサポニン誘導体の組合せ、特にWO94/00153に開示されるQS21及び3D−MPLの組合せ、又はWO96/33739に開示されるQS21がコレステロールでクエンチされているより少い反応原性の組成物に関する。
水中油エマルション中のQS21,3D−MPL及びトコフェロールに関する特に能力のあるアジュバントはWO95/17210に記載され、好ましい製剤である。
【0028】
従って、本発明の一実施形態において、モノホスホリル脂質A又はその誘導体がアジュバントとして添加された。本発明のタンパク質、より好ましくはリポプロテインD(又はその誘導体)−MAGE−3を含むワクチンを供する。
好ましくは、そのワクチンは、サポニン、より好ましくはQS21を更に含む。
【0029】
好ましくは、製剤は、水中油エマルション及びトコフェロールを更に含む。本発明は、医薬として許容される賦形剤、例えば3D−MPLを一緒に本発明のタンパク質を混合することを含むワクチン製剤を製造するための方法も供する。
本発明の一態様において、組換え生産されたMAGE−タンパク質を精製するための方法を供する。その方法は、そのタンパク質を、例えば強カオトロピック剤(例えば尿素、塩酸グアニジウム)に、又は両性イオン界面活性剤、例えば(Empigen BB−n−ドデシル−N,N−ジメチルグリシン)に可溶化し、そのタンパク質の分子内及び分子間ジスルフィド結合を還元し、生じたチオールをブロッキングして酸化的再カップリングを防止し、そしてそのタンパク質を1又は複数のクロマトグラフィーステップにかけることを含む。
【0030】
好ましくは、ブロッキング剤はアルキル化剤である。このようなブロッキング剤には、これらに限らないが、α−ハロゲン酸(haloacids )又はα−ハロゲンアミド(haloamides)がある。例えば、ヨード酢酸及びヨードアセトアミドはタンパク質をカルボキシメチル化又はカルボキシアミド化(カルバミドメチル化)させる。他のブロッキング剤を用いることができ、これらは文献に記載されている(例えばThe Proteins Vol II Eds H neurath, RL Hill and C-L Boeder, Academic press 1976, or Chemical Reagents for Protein modification Vol I eds. RL Lundblad and CM Noyes, CRC Press 1985 を参照のこと)。このような他のブロッキング剤の典型例には、N−エチルマレイミド、クロロアセチルホスフェート、O−メチルイソウレア及びアクリロニトリルがある。ブロッキング剤の使用は、それが産物の凝集を防ぎ、後の精製のための安定性を確実にするので有利である。
【0031】
本発明の一実施形態において、ブロッキング剤は、安定に共有結合した不可逆的な誘導体(例えばα−ハロ酸又はα−ハロアミド)を誘導するように選択される。しかしながら、ブロッキング剤は、精製の後に、そのブロッキング剤が除去されて非誘導化タンパク質を遊離し得るように選択してもよい。
誘導化遊離チオール残基を有するMAGEタンパク質は新規であり本発明の一態様を形成する。特に、カルボキシアミド化又はカルボキシメチル化誘導体は本発明の好ましい実施形態である。
【0032】
本発明の好ましい実施形態において、本発明のタンパク質には、アフィニティータグ、例えばCLYTA又はポリヒスチジンテールが供される。このような場合、ブロッキングステップ後のタンパク質は、好ましくはアフィニティークロマトグラフィーにかけられる。ポリヒスチジンテールを有するこれらのタンパク質のために、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)を行うことができる。金属イオンは、いずれかの適切なイオン、例えば亜鉛、ニッケル、鉄、マグネシウム又は銅であり得るが、好ましくは亜鉛又はニッケルである。好ましくは、IMAC緩衝液は、最終産物中に低レベルのエンドトキシンを生ずるので、Empigen BB(以後、Empigen)のような両性イオン界面活性剤を含む。
【0033】
タンパク質がClyta部分と共に生産されるなら、そのタンパク質は、コリン又はコリンアナログ、例えばDEAEへのアフィニティーを利用することにより精製することができる。本発明の一実施形態において、タンパク質には、ポリヒスチジンテール及びClyta部分が供される。これらは簡単な2ステップのアフィニティークロマトグラフィー精製スケジュールで精製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】脂質化Hisテールを有する融合タンパク質の概略を示す。
【図2】発現ベクターpRIT14586の作製ストラテジーを示す。
【図3】プロテインD1/3−MAGE−3−Hisテールを発現するプラスミドpRIT14477の作製ストラテジーを示す。
【図4】Mab32及び54で染色した後のlot 96K19及び96J22について得られたバンドパターンを示す。
【図5】SBAS−2製剤のみ又はPBSを与えたマウスのリンパ球増殖応答と比較した、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を注入したC57BL/6マウスの脾臓細胞における、MAGE−3特異的リンパ球増殖活性の増加を示す。
【図6】SBAS−2製剤のみ又はPBSを与えたマウスのリンパ球増殖応答と比較した、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を注入したC57BL/6マウスのリンパ節細胞における、MAGE−3特異的リンパ球増殖活性の増加を示す。
【図7】SBAS−2製剤のみ又はPBSを与えたマウスのリンパ球増殖応答と比較した、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を注入したBalb/cマウスの脾臓細胞における、MAGE−3特異的リンパ球増殖活性の増加を示す。
【図8】SBAS−2製剤のみ又はPBSを与えたマウスのリンパ球増殖応答と比較した、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を注入したBalb/cマウスのリンパ節細胞における、MAGE−3特異的リンパ球増殖活性の増加を示す。
【図9】マウスの異なるグループ(N=5/グループ)間で、曲線の中点に達するために必要とされる平均希釈にある、血清の相対的平均中点タイターを比較する。
【図10】Balb/cマウスにおけるワクチン接種後のIgサブクラス特異的抗MAGE−3応答を示す。
【図11】C57BL/6マウスにおけるワクチン接種後のIgサブクラス特異的抗MAGE−3応答を示す。
【図12】大腸菌内で発現させるべき融合タンパク質NS1,MAGE−3−Hisのデザインを示す。
【図13】プラスミドpRIT14426の作製ストラテジーを示す。
【図14】pRIT14426のプラスミドマップを示す。
【図15】大腸菌内で発現させる融合タンパク質Clyta−Mage−1−Hisのデザインを示す。
【図16】プラスミドpRIT14613の作製巣取れてジーを示す。
【図17】プラスミドpRITの作製ストラテジーを示す。
【図18】大腸菌内で発現させる融合タンパク質Clyta−Mage−3−Hisのデザインを示す。
【図19】プラスミドpRIT14646の作製ストラテジーを示す。
【実施例】
【0035】
本発明は、以下の実施例を引用することにより更に記述されよう。
実施例I:
融合タンパク質リポプロテインD−MAGE−3−His(LPD 1/3−MAGE−3−His又はLpD MAGE−3−His)を発現する組換え大腸菌株の調製
1.大腸菌発現系:
リポプロテインDの生産のため、プロテインDをコードするDNAを発現ベクターpMG81にクローン化した。このプラスミドはラムダファージDNAからのシグナルを利用して挿入された外来遺伝子の転写及び翻訳を駆動する。そのベクターは、ラムダPLプロモーターPL、オペレーターOL及びNプロテインを供した時に転写極性効果を緩和するための2つの利用部位(Nu+L及びNu+R)を含む(Gross ら、1985, Mol. & Cell.Biol. 5; 1015 )。PLプロモーターを含むベクターはプラスミドDNAを安定化するため大腸菌溶原性宿主に導入される。溶原性宿主株は、ゲノム内に挿入された複製欠損ラムダファージDNAを含む(Shatzmanら、1983; In Experimental Manipulation of Gene Expression. Inouya (ed) pp 1 〜14, Academic Press NY )。ラムダファージDNAはベクターのOLリプレッサーに結合し、RNAポリメラーゼのPLプロモーターへの結合を防ぎ、それにより挿入された遺伝子の転写を防ぐcIリプレッサータンパク質の合成を指示する。発現株AR58のcI遺伝子は、PLに指示された転写が温度変化により制御され得るように、即ち培養温度の増加がリプレッサーを不活性化して外来タンパク質の合成が始まるように、温度感受性変異を含む。この発現系は、外来タンパク質、特に細胞に対して毒性であり得るものの合成を制御する(Shimataka & Rosenberg, 1981, Nature 292: 128)。
【0036】
2.大腸菌株AR58:
LPD−MAGE−3−Hisタンパク質の生産のために用いたAR58溶原性大腸菌株は標準的なNIH大腸菌K12株N99の誘導体(F-Su-galK2, lacZ-thr- )である。それは、欠損した溶原性ラムダファージを含む(galE::TN10, 1Kil-cI857 DH1)のKil−表現型は宿主高分子合成の遮断を防ぐ。cI857変異は、温度感受性障害をcIリプレッサーに与える。DH1欠失は、ラムダファージの右オペロン及び宿主のbio,uvr3、及びchlA座を除去する。AR58株は、SA500誘導体(galE::TN10, 1Kil-cI857 DH1)で先に増殖させたPラムダファージストックでのN99の導入により作り出した。N99への欠損溶原の導入は、隣接galE遺伝子中にテトラサイクリン耐性をコードするTN10トランスポゾンの存在によりテトラサイクリンで選択した。N99及びSA500は、National Institute of HealthのDr.Martin Rosenberg's laboratoryから得た大腸菌K12株である。
【0037】
3.組換えタンパク質LPD−MAGE−3−Hisを発現するようデザインしたベクターの作製
原理は、MAGE−3のN末端に連結した融合パートナーとして脂質化プロテインDのN末端1/3及びC末端に位置したいくつかのヒスチジン残基の配列(Hisテール)を用いて融合タンパク質としてMAGE3を発現させることであった。
【0038】
プロテインDはリポタンパク質である(グラム陰性細菌ヘモフィルス・インフルエンゼの表面上に露出した42kDa イムノグロブリンD結合タンパク質)。そのタンパク質は、細菌のリポタンパク質についての共通配列を含む、18アミノ酸残基シグナル配列を有する前駆体として合成される(WO91/18926)。
【0039】
リポタンパク質のシグナル配列が分泌の間に処理される場合、(前駆体分子中の位置19の)Cysがアミノ末端残基になり、同時に、エステル結合及びアミド結合脂肪酸の両方の共有結合により改変される。
次に、アミノ末端システイン残基に結合した脂肪酸は膜アンカーとして機能する。
【0040】
融合タンパク質を発現するプラスミドは、18アミノ酸シグナル配列及び処理されたプロテインDの最初の109残基、2つの無関係なアミノ酸(Met及びAsp)、MAGE−3のアミノ酸残基2〜314、後に7つのHis残基に露出されるヒンジ領域をして機能する2つのGly残基を含む前駆タンパク質を発現するようデザインした。
【0041】
これにより、組換え株は、432アミノ酸残基長の処理された脂質化Hisテールを有する融合タンパク質を作り出す(図1)。ここでそのアミノ酸配列は配列番号:1に記載され、コーディング配列は配列番号:2に記載される。
4.LPD−MAGE−3−His融合タンパク質の形成のためのクローニングストラテジー(ベクターpRIT14477):
(Ludwig InstituteからのDr Thierry Boon から頂いた)MAGE−3遺伝子(Gaugler B ら、1994)のためのコーディング配列を含むcDNAプラスミド、及び(図2に概説するように調製した)Lipo−D−1/3コーディング配列のN末端部分を含むベクターPRIT14586を用いた。そのクローニングストラテジーは以下のステップを含む(図3)。
【0042】
a)オリゴヌクレオチドセンス:5′gc gcc atg gat ctg gaa cag cgt agt cag cac tgc aag cct及びオリゴヌクレオチドアンチセンス:5′gcg tct aga tta atg gtg atg gtg atg gtg atg acc gcc ctc ttc ccc ctc tct caa を用いてプラスミドcDNA MAGE3内に供される配列のPCR増幅;この増幅は、N末端に以下の改変を導く:最初の5つのコドンの、大腸菌コドン使用への変化、位置1におけるProコドンのAspコドンによる置換、5′末端でのNcoI部位の設置及び2つのGlyコドン及び7つのHisコドン、その後のXbaI部位の、C末端での最後の付加。
【0043】
b)先に増幅したフラグメントのインビトロゲンのTAクローニングベクターへのクローニング及び中間体ベクターpRIT14647の調製。
c)プラスミドpRIT14647からのNcoI XbaIフラグメントの切り出し、及びベクターpRIT14586へのクローニング。
d)宿主株AR58の形質転換。
【0044】
e)LPD−MAGE−3−His融合タンパク質を発現するプラスミドpRIT14477を含む大腸菌株形質転換体の選択及びキャラクタリゼーション
実施例II:
LPD1/3−MAGE−3−His抗原の調製:
1.細菌株の増殖及び誘導−LPD1/3−MAGE−3−Hisの発現:
プラスミドpRIT14477で形質転換したAR58の細胞を、各々イーストエキス(6.4g/L)及びカナマイシンスルフェート(50mg/L)を補給したLY12培地400mLを含む2リッターフラスコ内で増殖させた。振とうテーブル上で、30℃で8+/−1時間、インキュベートした後、顕微鏡検査のため各々のフラスコから少量のサンプルを除去した。2つのフラスコの内容物をプールして20リッター発酵槽のための接種物を供した。
【0045】
その接種物(約800mL)を、50mg/Lのカナマイシンスルフェートを補給した7リッターの培地を含む予め滅菌した20リッター(全量)発酵槽に加えた。そのpHを、NH4 OH(25%v/v)の周期的な添加により6.8に調節し、維持して、その温度を30℃に調節し、維持した。エレーション速度を分当り12リッターに調節し、維持して、溶解した酸素圧を撹拌速度のフィードバック制御により50%の飽和に維持した。発酵槽における過圧は500g/cm2 (0.5bar )に維持した。
【0046】
炭素供給溶液の添加量を制御することによりフェド・バッチ(fed-batch )培養を行った。供給溶液は最初に0.04mL/分の速度で加え、0.1h-1の増殖速度を維持するように最初の42時間の間、指数関数的に増加させた。
42時間後に、発酵槽中の温度を39℃に迅速に増加させ、供給速度を、LPD−MAGE−3−Hisの細胞内発現が最大レベルに達する期間である更なる22〜23時間、誘導期の間、0.005mL/g DCW/分の一定値に維持した。
【0047】
その培養液のアリコート(15mL)を増殖/誘導期全体を通して規則的な間隔で採取し、発酵の終りに微生物増殖の速度及び細胞内産物発現を追跡し、更に、微生物の同定/純度テストのためのサンブルを供した。
発酵の終りに、その培養物の光学密度は(48〜72gの DCW/Lの細胞濃度に相当する)80〜120であり、全液体量は約12リッターであった。その培養物を迅速に6〜10℃に冷却し、ECK32の細胞を、5000×gで4℃で30分の遠心により培養液から分離した。ECK32の濃縮細胞を迅速にプラスチックバッグに保存し、直ちに−80℃に凍結した。
【0048】
2.タンパク質の抽出:
ECK32の凍結した濃縮細胞を4℃に解凍した後、細胞破壊緩衝液に再度懸濁して(約36gの DCW/Lの細胞濃度に相当する)60の最終的な光学密度にした。
その細胞を高圧ホモジナイザー(1000bar )に2回、通すことにより破壊した。その破壊した細胞懸濁液を遠心し(×10,000g、4℃、30分)、そのペレット画分をTriton X100(1%w/v)+EDTA(1mM)で2回、洗い、次にリン酸緩衝塩類溶液(PBS)+Tween20(0.1%v/v)で洗い、そして最後にPBSで洗った。各々の洗浄段階の間に、懸濁液を×10,000gで30分、4℃で遠心し、その上清を捨てて、ペレット画分を保持した。
【0049】
実施例III :
融合タンパク質LipoD−MAGE3のキャラクタリゼーション:
1.精製:
LPD−MAGE−3−Hisを以下に記載のステップの順番を用いて細胞ホモジネートから精製した:
a)細胞破壊物からの洗浄したペレット画分の可溶化。
【0050】
b)タンパク質内及びタンパク質間ジスルフィド結合の化学的還元、次の酸化物再カップリングを防ぐためのチオール基のブロッキング。
c)粒子の除去及びエンドトキシンの削減のための反応混合物の精密ろ過。
d)ポリヒスチジンテールと亜鉛装填Chelating Sepharose との間のアフィニティー相互作用の利用によるLPD−MAGE−3−Hisの捕獲及び最初の精製。
【0051】
e)アニオン交換クロマトグラフィーによる汚染タンパク質の除去。
その精製したLPD−MAGE3−Hisはいくつかの仕上げ段階にかけた:
f)Superdex75を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによる緩衝液交換/尿素除去。
g)製造過程のろ過。
【0052】
h)Sephadex G25を用いるサイズ排除クロマトグラフィーによる緩衝液交換/脱塩。
これらのステップの各々を以下により詳細に記載する。
1.1)細胞ホモジネートペレットの可溶化
(上述の)最終洗浄段階からのペレット画分を、塩酸グアニジン(6M)及びリン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)の溶液800mL中で4℃で一晩、再び可溶化した。
【0053】
1.2)還元及びカルボキシメチル化
可溶化した材料(うすい黄色、濁った懸濁液)にアルゴンを流して残った酸素を一掃し、2−メルカプトエタノールの保存溶液(14M)を加えて4.3Mの最終濃度(溶液1mL当り0.44mLの2−メルカプトエタノールに相当)を供した。
【0054】
得られた溶液を2つのガラスフラスコに分けて移し、それら両方を水浴中で95℃に加熱した。95℃で15分後に、そのフラスコを水浴から除去し、冷却して、その内容物を氷の中においたホイルでおおったビーカー(5L)にプールし、そして固体のヨードアセトアミドを激しく混合しながら加えて6Mの最終濃度(溶液1mL当り1.11gのヨードアセトアミドに相当)を供した。その混合物を1時間、暗所で氷上に保持し、ヨードアセトアミドの完全な可溶化を確実にし、その後、約1Lの水酸化ナトリウム(5M)を加えることにより中和して(激しい混合を維持してpHのモニターを続けて)、7.5〜7.8の最終pHを供した。
【0055】
得られた混合物を更に30分、暗所で氷上に維持し、その後、pHを再びpH7.5〜7.8に調節した。
1.3)精密ろ過
その混合物を、Minikros中空繊維カートリッジ(ret. No M22M-600-01N;面積5,600cm2 、0.2μm)を備えたAmicon Proflux M12接線フロー(tangenital-flow )ユニット内で精密ろ過した。その透過液を後のクロマトグラフィー精製のために保持した。
【0056】
1.4)金属(Zn2+)キレートクロマトグラフィー(IMAC)
金属キレートクロマトグラフィーを、BPG 100/500カラム(Pharmacia Biotechnology Cat No.18-1103-01 )に充填したChelating Sepharose FF (Pharmacia Biotechnology Cat. No.17-0575-01)で行った。充填したベッドの寸法は、直径10cm;断面積79cm2 ;ベッドの高さ19cm;充填容量1, 500mLであった。空のカラムを水酸化ナトリウム(0.5M)で浄化して精製水で洗った。
【0057】
(20%v/vエタノール中から出した)支持体を(真空下で)ブフナー漏斗上で精製水(8リッター)で洗い、少くとも15リッターのZnCl2 の溶液(0.1M)を流すことにより亜鉛で荷電させた。その支持体を、流出液のpHがZnCl2 溶液のpH(pH5.0)に達するまで、10Lの精製水で洗うことにより除去した。次にその支持体を、塩酸グアニジン(6M)及びリン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)を含む溶液4リッターで平衡化した。
【0058】
LPD−MAGE−3−Hisを含む精密ろ過からの浸透液を支持体と混合し(バッチ結合)、次にそのBPGカラムに塩酸グアニジン(6M)及びリン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)を含む溶液をロードし、充填した。
金属キレートクロマトグラフィーの次の段階は、60mL/分の溶出流速で行った。カラムを洗い、最初に塩酸グアニジン(6M)及びリン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)を含む溶液で、次に尿素(6M)及びリン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)を含む溶液で、カラム溶出液がOD280nm で0の吸光度に達する(ベースライン)まで洗った。
【0059】
半純粋なLPD−MAGE−3−Hisタンパク質画分を、尿素(6M)、リン酸ナトリウム(0.1M、pH7.0)及びイミダゾール(0.5M)を含む溶液2カラム容量で溶出した。この画分のコンダクタンスは約16mS/cmであった。
1.5)アニオン交換クロマトグラフィー
アニオン交換クロマトグラフィーを続ける前に、半純粋なLPD−MAGE−3−Hisタンパク質画分のコンダクタンスを、尿素(6M)及びTris−HCl(20mM、pH8.0)を含む溶液で希釈することにより約4mS/cmに減少させた。
【0060】
アニオン交換クロマトグラフィーを、BPG 200/500カラム(Pharmacia Biotechnology Cat.No.18-1103-11 )に充填したQ-Sepharose FF (Pharmacia Biotechnology, Cat No.17-0510-01)を用いた行った。充填したベッドの寸法は、直径10cm;断面積314cm2 ;ベッドの高さ9cm;充填容量2,900mLであった。
【0061】
そのカラムに(20%v/vエタノール)を充填し、9リッターの精製水で70mL/分の溶出流速で洗った。その充填したカラムを3Lの水酸化ナトリウム(0.5M)で浄化し、30Lの精製水で洗い、次に6Lの尿素(6M)及びTris−HCl(20mM、pH8.0)を含む溶液で平衡化した。希釈した半精製したLPD−MAGE−3−Hisをそのカラムに充填し、次に尿素(6M)、Tris−HCl(20mM、pH8.0)、EDTA(1mM)及びTween(0.1%)を含む9Lの溶液で、その溶出液の吸光度(280nm)が0になるまで洗った。
【0062】
更なる洗浄ステップを、尿素(6M)及びTris−HCl(20mM、pH8.0)を含む6リッターの溶液で行った。
精製したLPD−MAGE−3−Hisを、尿素(6M)、Tris−HCl(20mM、pH8.0)及びNaCl(0.25M)を含む溶液でカラムから溶出した。
【0063】
1.6)サイズ排除クロマトグラフィー
精製したLPD−MAGE−3−Hisからの尿素の除去及び緩衝液交換は、両方とも、サイズ排除クロマトグラフィーにより行った。これは、XK 50/100カラム(Pharmacia Biotechnology Cat.No.18-8753-01 )に充填したSuperdex 75 (Pharmacia Biotechnology Cat.No.17-1044-01)を用いて行った。充填したベッドの寸法は、直径5cm;断面積19.6cm2 ;ベッドの高さ90cm;充填容量1,800mLであった。
【0064】
そのカラムはエタノール(20%)中に充填し、5リッターの精製水で20mL/分の溶出速度で洗浄した。そのカラムを2リッターの水酸化ナトリウム(0.5M)で浄化し、5リッターの精製水で洗い、次にTween80(0.1%v/v)を含む5リッターのリン酸緩衝塩類溶液で平衡化した。
その精製したLPD−MAGE−3−His画分(脱塩ラン当り最大500mL)を20mL/分の溶出流速でカラムに充填した。その脱塩した精製LPD−MAGE−3−Hisを、Tween80(0.1%v/v)を含む3リッターのPBSでカラムから溶出した。
【0065】
LPD−MAGE−3−Hisを含む画分はカラムのボイド容量で溶出した。
1.7)製造過程のろ過
サイズ排除クロマトグラフィーからのバルクLPD−MAGE−3−Hisを、層流フード中0.22μm膜(クラス10.000)を介してろ過した。そのろ過したバルクは−80℃に凍結し、脱塩ステップまで保存した。
【0066】
1.8)脱塩クロマトグラフィー
最終的なバルクのオスモル濃度は400mOsM未満であるべきであるので、塩濃度を減少させるために更なる緩衝液交換が必要とされた。これは、BPG 100/950カラム(Pharmacia Biotechnology Cat.No.18-1103-03 )に充填したSephadex G25 (Pharmacia Biotechnology Cat.No.17-0033-02 )を用いて脱塩クロマトグラフィーにより行った。充填したベッドの寸法は直径10cm;断面積78.6cm2 ;ベッドの高さ85cm;充填容量6,500mLであった。
【0067】
Sephadex G25を7リッターの精製水で水和し、4℃で一晩、膨潤させた。次にそのゲルを純水で100mL/分の溶出流速でカラムにつめた。
そのカラムを6リッターの水酸化ナトリウム(0.5M)で浄化し、次にリン酸ナトリウム(10mM、pH6.8)、NaCl(20mM)及びTween80(0.1%v/v)を含む10リッターの溶液で平衡化した。
【0068】
その精製したLPD−MAGE−3−His画分(脱塩ラン当り最大1500mL)を100mL/分の溶出流速でカラムに流した。カラムのボイド容量で溶出した脱塩精製したLPD−MAGE−3−His画分を0.22μm膜を介して滅菌ろ過し、−80℃で保存した。
最終的なバルクタンパク質を+4℃に解凍した後、容器に分取してラクトース賦形剤中に凍結乾燥した。
【0069】
2.クーマシー染色したSDS−ポリアクリルアミドゲルでの分析:
LPD−MAGE−3−His精製抗原を、12.5%アクリルアミドゲル上で還元条件下でSDS−PAGEにより分析した。
タンパク質充填量はクーマシーブルー染色について50μg及び硝酸銀染色について5μgであった。臨床用lot 96K19及びパイロットlot 96J22を分析した。60kDa の分子量に相当する1つの主要バンドを可視化した。約45kDa 及び35kDa の2つのマイナーな更なるバンドも見られた。
【0070】
3.ウェスタンブロット分析:
LPD−MAGE−3−Hisタンパク質のSDS−PAGE分析により表されるペプチドを、マウスモノクローナル抗体を用いてウェスタン・ブロットにより同定した。これらの抗体は、MAGE−3−Hisタンパク質(このタンパク質はLPD−MAGE−3−HisのLPD部分を含まない)の精製した調製物を用いて企業内で開発した。
【0071】
2つのモノクローナル抗体調製物(Mab22及びMab54)は、ウェスタンブロット分析のための適合性に基づいて選択し、lotリリースのための同一性テストに用いた。図4は、Mab32及び54で染色した後のlot 96K19及び96J22について得られたバンドパターンを示す。600ngのタンパク質が12.5% SDS−PAGEで分離され、それをナイロン膜に移し、Mab32及び54(60μg/ml)と反応させ、ペルオキシダーゼに連結させた抗マウス抗体で表した。
【0072】
SDS−PAGEによって検出された60kDa 及び30kDa ペプチドは両方のMabにより表した。
実施例IV:
1.LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を用いるワクチン調製物:
これらの実験に用いたワクチンは、アジュバントを加えた又は加えなかった、株AR58からの大腸菌で発現されたリポプロテインD1/3−MAGE−3−Hisをコードする組換えDNAから作り出す。アジュバントとして、その製剤は、油/水エマルション中、3de−O−アシル化モノホスホリル脂質A(3D−MPL)及びQS21の混合物を含む。アジュバントシステムSBAS2は、先にWO95/17210に記載されている。
【0073】
3D−MPLは、グラム陰性細菌サルモネラ・ミネソタ(Salmonella minnesota)のリポポリサッカライド(LPS)由来の免疫刺激剤である。MPLは脱アシル化されており、脂質A成分上のホスフェート基を欠く。この化学的処理は、免疫刺激特性を保存しながら、毒性を劇的に減少させる(Ribi, 1986)。Ribi ImmunochemistryはMPLを製造し、それをSB-Biologicalsに供給する。Smith Kline Beecham Biologicals で行った実験は、種々のビヒクルと組合わせた3D−MPLは、体液性免疫及び細胞性免疫のTH1型の両方を強力に増強することを示した。
【0074】
QS21は、南アメリカの樹木Quillaja saponaria Molina の樹皮から抽出された天然のサポニン分子である。樹皮の粗抽出液から個々のサポニンを分離するために開発した精製技術は、親構成物と比べて強いアジュバント活性及び低い毒性を示すトリテルペングリコシドである特定のサポニンQS21の単離を許容した。QS21はMHCクラスI制限CTLをいくつかのサブユニットAgsに活性化し、及びAg特異的リンパ球増殖を刺激することが示されている(Kensil, 1992)。Aquila(正式にはCambridge Biotech Corporation )はQS21を製造し、それをSB-Biologicalsに供給する。
【0075】
Smith Kline Beecham Biologicals で行った実験は、体液性及びTH1型細胞性免疫応答の両方の誘導におけるMPL及びQS21の組合せの明らかな相乗効果を証明した。
油/水エマルションは、2種の油(トコフェロール及びスクアレン)から構成される有機相、及び乳化剤としてTween80を含むPBSの水性相から構成される。そのエマルションは、5%のスクアレン、5%のトコフェロール、0.4%のTween80を含み、180nmの平均粒径を有し、SB62として知られる(WO95/17210を参照のこと)。
【0076】
Smith Kline Beecham Biologicals で行った実験は、3D−MPL/QS21(SBAS2)へのO/Wエマルションの添加が種々のサブユニット抗原に対する後者の免疫刺激特性を更に増加させる。
2.エマルションSB62(2倍濃縮物)の調製:
Tween80をリン酸緩衝塩類溶液(PBS)に溶かしてPBS中2%溶液を供する。100mLの2倍濃縮エマルションを供するために、5gのDL−α−トコフェロール及び5mLのスクアレンをボルテキシングして完全に混合する。90mLのPBS/Tween溶液を加え、完全に混合する。次に生じたエマルションをシリンジに通して、M110Sマイクロフルーディクスマシンを用いることにより最終的にミクロな液体にする。得られた油滴は約180nmの大きさを有する。
【0077】
3.リポプロテインD1/3−MAGE−3−His QS21/3D MPL水中油(SBAS2)製剤の調製
アジュバントを油/水エマルション中で、MPL及びQS21の組合せとして調剤する。この調製物を0.7mlの容器に入れて、凍結乾燥した抗原(容器は30〜300μgの抗原を含む)と混合する。
【0078】
凍結乾燥したワクチンのためのアジュバント希釈物の組成は次の通りである:
【0079】

【表1】

【0080】
最終的なワクチンは、凍結乾燥されたLPD−MAGE−3−His調製物をアジュバントで又はPBSのみで再構成した後に得られる。
抗原を含まないアジュバント対照は、タンパク質をPBSで置換することにより調製した。
4.ワクチン抗原:融合タンパク質リポプロテインD1/3−MAGE−3−His:
リポプロテインDはグラム陰性細菌ヘモフィルス・インフルエンゼの表面上に露出したリポタンパク質である。
【0081】
融合パートナーとしての処理したプロテインDの最初の109残基の包含は、T細胞エピトープを有するワクチン抗原を供する。LPD成分の他に、タンパク質は、2つの無関係なアミノ酸(Met及びAsp)、Mage−3のアミノ酸残基2〜314、次の7つのヒスチジン残基を露出するためのヒンジ領域として機能する2つのGly残基を含む。
【0082】
実施例V:
1:マウス及びサルにおけるLPD−MAGE−3−Hisの免疫原性:
ヒトMAGE−3タンパク質の抗原性及び免疫原性をテストするため、候補ワクチンを、遺伝的バックグラウンド及びMHC対立遺伝子が異なる2つの異なるマウス株(C57BL/6及びBalb/c)に注入した。両方のマウス株について、潜在的なMHCクラスI及びMHCクラスIIペプチドモチーフは、LPD−MAGE−3−His融合タンパク質のMAGE部分のためのものであると理論的に予測された。
【0083】
a)免疫化プロトコル:
各々の株の5匹のマウスに、ヒトに用いた濃度の10分の1でSBAS2中に調剤した5μgのLPD−MAGE−3−His又はそれのないものを、足のひらに、2週間間隔で2回、注入した。
b)増殖アッセイ:
リンパ球を、最後の注入後2週間に、マウスからの脾臓又は膝窩リンパ節を破壊することにより調製した。2×105 細胞を96ウェルプレートに3回重複して入れ、細胞を試験管内で72時間、それ自体で又はラテックスマイクロビーズ上にコートした異なる濃度(1〜0.1μg/ml)のHis−Mage3で再刺激した。
【0084】
SBAS−2製剤のみ又はPBSを与えたマウスのリンパ球増殖応答と比べて、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質を注入したC57BL/6又はBalb/cマウスのいずれかからの脾臓細胞(図5及び7を参照のこと)及びリンパ節細胞(図6及び8を参照のこと)の両方で、MAGE−3特異的リンパ球増殖活性の増加が観察された。
【0085】
更に、アジュバントSBAS2中のLPD−MAGE−3−Hisで免疫化したマウスからのリンパ球で、かなり高い増殖応答が得られた(図6及び8を参照のこと)。
c)結論
LPD−MAGE−3−Hisはマウスにおいて免疫原性であり、この免疫原性は、SBAS2アジュバント製剤の使用により増加させることができる。
【0086】
2.抗体応答:
a)免疫化プロトコル
Balb/c又はC57BL/6マウスを、PBS、又はSBAS2、又は5μGのLPD−MAGE−3−His、又は5μGのLPD−MAGE−3−His+SBAS2のいずれかで、2週間間隔で足のひら内注入により2回、免疫化した。
【0087】
対照グループ及びテストグループの各々に3及び5の動物を用いた。
b)間接ELISA:
2回目の注入後2週に、個々の血清を採取し、間接ELISAにかけた。
2μG/mlの精製His MAGE−3をコートした抗原として用いた。PBS+1%新生ウシ血清中で、37℃で1時間の飽和の後、その血清を飽和緩衝液中で逐次的に希釈(1/1000で開始)し、4℃で一晩、又は37℃で90分、インキュベートした。PBS/Tween20、0.1%で洗った後、ビオチニル化ヤギ抗マウス全IgG(1/1000)又はヤギ抗マウスIgG1,IgG2a,IgG2b抗血清(1/5000)を二次抗体として用いた。37℃で90分のインキュベーションの後、ペルオキシダーゼに連結したストレプトアビジンを加え、TMB(テトラメチルベンジジンペルオキシド)を基質として用いた。10分後、その反応をH2 SO4 0.5Mを加えることによりブロックし、そのO.D.を測定した。
【0088】
c)結果:
図9は、マウスの異なるグループ(N=5/グループ)間で、曲線の中点に達するために必要とされる平均希釈にある、血清の相対的平均中点タイターを比較する。
これらの結果は、テストした両方のマウス株においてLPD−MAGE−3−Hisのみの2回の注入の後に弱いAb応答がマウントされるが、LPD−MAGE−3−HisをSBAS2の存在下で注入した時にはより高い抗MAGE−3 Ab濃度が形成されることを示す。これにより、2週間隔でのLPD−MAGE−3−Hisの2回の注入のみで観察される高いAb応答を作り出すのに十分である。
【0089】
C57BL/6マウスで得られる応答と比べてBalb/cマウスで観察されるより優れたAb応答は、たとえC57BL/6マウスで達成されるAbタイターが、LPD−MAGE−3−Hisのみの注入後よりLPD−MAGE−3−His+SBAS2の注入後でより高いとしても、ハプロタイプの差又はこれら2つの株の間のバックグラウンドの差によって説明することができる。
【0090】
マウスの異なるグループにおけるワクチン接種後のIgサブクラス特異的抗MAGE−3応答は、図10及び11で見ることができ、これらは、血清の平均中点希釈の比較を供する。
アジュバントSBAS2中のLPD−MAGE−3−Hisをワクチン接種したマウスからでさえ、血清サンプルのいずれにおいてもIgAもIgMも検出されなかった。
【0091】
対照的に、全IgGレベルは、LPD−MAGE−3−Hisのみをワクチン接種したマウスからの血清中で少し高く、SBAS2中のLPD−MAGE−3−Hisを注入した動物の血清においてかなり増加した。
異なるIgGサブクラス濃度の分析は、テストした全てのIgGサブクラス(IgG1,IgG2a,IgG2b)のレベルが、Ag又はアジュバントのみを注入したマウスにおいてのものよりアジュバントを加えたAgをワクチン接種したマウスにおいて高かったので、混合されたAb応答がマウスにおいて誘導されたことを示す。
【0092】
しかしながら、SBAS2の存在下でのLipoD−MAGE−3でのワクチン接種後のこの混合されたAb応答の性質は、IgG1及びIgG2bがBalb/c及びC57BL/6マウス各々の血清中に主に見い出されるので、マウス株に依存するようである。
3.アカゲザルにおけるリポプロテインD1/3 MAGE3−His+SBAS2アジュバントの免疫原性
5匹のアカゲザル(Macaca Mulatta)の3つのグループを選択した。RTS,S及びgp120を陽性対照として用いた。
【0093】
グループ:
グループ1 右足:RTS,S/SBAS2
左足:GP120/SBAS2
グループ2 右足:RTS,S/SB26T
左足:GP120/SB26T
グループ3 右足:LipoD1/3 Mage3 His/SBAS2
0日目に動物にワクチンを与え、28日目にブーストし、84日目にMAGE3及びプロテインD成分の両方に対する抗体応答を決定するために採血した。ワクチンを、右足の後部にボーラス注入(0.5ml)で筋内に投与した。
【0094】
少量の血液サンプルを14日毎に採取した。3mlの非ヘパリン添加血液サンプルを大腿静脈から収集し、少くとも1時間、凝固させ、室温で10分、2500rpm で遠心した。
血清を除去して−20℃で凍結し、特異的ELISAによる抗体レベルの測定のために用いた。
【0095】
96ウェルマイクロプレート(maxisorb Nunc )を、4℃で5μgのHis Mage 3又はプロテインDでコートした。PBS NCS 1%での37℃での1時間の飽和の後、ウサギ血清の連続希釈物を37℃で1時間30分、(1/10で始めて)加え、PBS Tweenで3回、洗った後、抗ビオチニル化血清(Amersham ref RPN 1004. lot 88 )を加えた(1/5000)。プレートを洗い、ペルオキシダーゼ連結ストレプトアビジン(1/5000)を37℃で30分、加えた。洗浄後、50μlのTMB(BioRad)を7分、加え、その反応をH2 SO4 で停止させ、ODを450nmで測定した。中点希釈をSoftmaxProにより計算した。
【0096】
抗体応答:
ELISAによりMAGE3に対する抗体応答の速度を追跡するために、14日毎に少量の血液サンプルを採取した。結果は、LPD1/3 Mage3 His+SBAS2の1回の注入後に、Mage3特異的全Igタイターが低くなることを示し、同じサルでのLipoD1/3 Mage3+アジュバントの2回目及び3回目の注入後に、5の動物のうち3つで見られた。少い応答のものは、3回の注入後でさえ陰性であり続けた。II後28日又はIII 後に、抗体タイターは基底レベルに戻った。抗体のサブクラスはIgMでなく主要なIgGとして決定した。IgGへのスイッチは、Tヘルパー応答が誘発されていることを示唆する。プロテインD特異的抗体応答は、弱いか、Mage3抗体応答と正確に平行している。
【0097】
実施例VI:
1.LPD−MAGE1 His
同様に、LPD−MAGE−1−Hisを調製した。そのアミノ酸及びDNA配列を配列番号:3及び4に示す。得られたタンパク質は、LPD−MAGE−3−Hisタンパク質と同様に精製した。要約すると、細胞培養物をホモジナイズし、0.5% Empigen界面活性剤の存在下で4MグアニジンHCl及び0.5M β−メルカプトエタノールで処理した。その産物をろ過し、浸透物を0.6Mヨードアセトアミドで処理した。そのカルボキシアミド化画分をIMAC(亜鉛キレート−セファロースFF)クロマトグラフィーにかけた。そのカラムを平衡化し、4Mグアニジン、HCl及びリン酸ナトリウム(20mM、pH7.5)及び0.5% Empigenを含む溶液で洗い、次にそのカラムをリン酸ナトリウム(20mM、pH7.5)0.5% Empigen緩衝液中4M尿素を含む溶液で洗った。タンパク質を同じ緩衝液であるが、イミダゾールの濃度を増加させて(20mM,400mM及び500mM)溶出した。
【0098】
溶出液を4M尿素で希釈した。Q−セファロースカラムを平衡化し、0.5% Empigenの存在下で20mMリン酸緩衝液(pH7.5)中4M尿素で洗った。界面活性剤を含まない同じ緩衝液で2回目の洗浄を行った。同じ緩衝液であるがイミダゾールの濃度を増加させて(150mM,400mM,1M)タンパク質を溶出した。その溶出液を限外ろ過した。
【0099】
実施例VII :
発現プラスミドpRIT14426の作製及びNS1−MAGE−3 Hisを生産するための宿主株AR58の形質転換:
タンパク質デザイン:
大腸菌内で発現させるべき融合タンパク質NS1,MAGE−3−Hisのデザインを図12に示す。
【0100】
生じたタンパク質の一次構造は配列番号:5に記載の配列を有する。
上述のタンパク質デザインに対応するコーディング配列(配列番号:6)を大腸菌発現プラスミド中のλpLプロモーターの制御下においた。
NS1 −MAGE−3−His融合タンパク質の形成のためのクローニングストラテジー
出発材料は、MAGE−3遺伝子のためのコーディング配列を含む、Ludwig InstituteからのDr.Tierry Boonから受け取ったcDNAプラスミド、及びインフルエンザからのNS1 (非構造タンパク質)コーディング領域の81aaを含むベクターPMG81であった。
【0101】
図13に概説するクローニングストラテジーは以下のステップを含む:
a)オリゴヌクレオチドセンス:5′gc gcc atg gat ctg gaa cag cgt agt cag cac tgc aag cct、及びオリゴヌクレオチドアンチセンス:5′gcg tct aga tta atg gtg atg gtg atg gtg atg acc gcc ctc ttc ccc ctc tct caa を用いて、プラスミドcDNA MAGE−3内に供される配列のPCR増幅。
【0102】
この増幅はN末端において以下の改変を導く:最初の5つのコドンの大腸菌コドン使用への変化、位置1におけるProコドンのAspコドンでの置換、5′末端でのNcoI部位の導入及び2つのGlyコドン及び7つのHisコドン、次のXbaI部位のC末端での最後の付加。
b)先に増幅したフラグメントのインビトロゲンのTAクローニングベクターへのクローニング及び中間体ベクターpRIT14647の調製。
【0103】
c)プラスミドpRIT14647からのNcoI−XbaIフラグメントの切り出し及びベクターpRIT PMG81へのクローニング。
d)宿主株AR58の形質転換。
e)NS1−MAGE3−His融合タンパク質を発現するプラスミドpRIT14426(図14を参照)を含む大腸菌株形質転換体の選択及びキャラクタリゼーション。
【0104】
組換えNS1 −MAGE−3−His(pRIT14426)のキャラクタリゼーション
細菌を、50μg/mlのカナマイシンを補給したLB培地で、30℃で増殖させた。その培養がOD=0.3(620nm)に達した時に、温度を42℃に上げることにより熱誘導を行った。
【0105】
4時間の誘導後、細胞を収集し、PBSに再度懸濁し、フレンチプレスに3回、通すことにより(分解により)溶解した。遠心(100,000gで60分)の後、ペレット上清及び全抽出液をSDS−PAGEにより分析した。タンパク質をクーマシーB1染色したゲルにおいて可視化し、ここでその融合タンパク質は全大腸菌タンパク質の約1%を表した。組換えタンパク質は、44.9Kの見掛けMWで単一バンドとして現れた。その融合タンパク質は、抗NS1モノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析により同定した。
【0106】
実施例VIII:
ウサギ/マウス免疫化のためのNS1−MAGE3−His(大腸菌)の精製。
精製スキーム:
抗原を精製するために以下の精製スキームを用いた:
細胞の溶解+遠心

抗原可溶化+遠心

Ni2 +NTAアガロース

濃縮

Prep cell

TCA沈殿及びPBS可溶化
a.溶解
細菌細胞(23g)をRannie(ホモジナイザー)により203mLの50mM PO4 pH7緩衝液に溶かし、そのライゼートを30分、15,000rpm でJA20ローターで遠心した。
【0107】
その上清を捨てた。
b.抗原可溶化
ペレットの1/3を34mlの100mM PO4 −6M GuHCl pH7中4℃でO/Nに再び可溶化した。JA20ローターで15,000rpm で30分の遠心の後、ペレットを捨てて、上清をIMACにより更に精製した。
【0108】
c.アフィニティークロマトグラフィー:Ni2 +NTAアガロース(Qiagen)
カラム容量:15mL(16mm×7.5cm)
パッキング緩衝液:0.1M PO4 −6M GuHCl pH7
サンプル緩衝液:同上
洗浄緩衝液:0.1M PO4 −6M GuHCl pH7
0.1M PO4 −6M尿素 pH7
溶出:6M尿素を補給した0.1M PO4 緩衝液 pH7中のイミダゾール勾配(0→250mM)。
【0109】
流速:2mL/分
a.濃縮:
IMAC溶出物の抗原陽性画分(160mL)をプールし、Filtron膜(Omega型カットオフ10,000)でAmicon撹拌セル内で5mLに濃縮した。この段階の純度はSDS−PAGEにより評価して約70%である。
【0110】
b.調製用電気泳動(Prep Cell Biorad)
2.4mLの濃縮サンプルを0.8mLの還元サンプル緩衝液中で煮沸し、10%アクリルアミドゲルに充填した。その抗原を、4% SDSを補給したTris−Glycine緩衝液 pH8.3中に溶出し、Ns1 −MAGE3 His陽性画分をプールした。
【0111】
a.TCA沈殿:
抗原をTCAで沈殿させ、JA20ローターで15,000rpm で20℃、遠心した後、上清を捨てた。そのペレットをPBS緩衝液 pH7.4に再び溶かした。
そのタンパク質は、凍結/解凍後にPBSに可溶性であり、37℃で3時間、保存した後にいずれの分解も示さず、そしてSDS(12.5% PAGE)により測定して約50,000ダルトンの見掛け分子量を有する。
【0112】
実施例IX:
融合タンパク質CLYTA−MAGE−1−Hisテールを発現する大腸菌株の調製
1.発現プラスミドpRIT14613の作製及び宿主株AR58の形質転換:
タンパク質デザイン:
大腸菌内で発現させる融合タンパク質Clyta−Mage−1−Hisのデザインを図15に示す。
【0113】
生じたタンパク質の一次構造は配列番号:7に示す配列を有する。
上述のタンパク質デザインに相当するコーディング配列(配列番号:8を参照のこと)を大腸菌発現プラスミド中のλpLプロモーターの制御下においた。
クローニング:
出発材料は、ストレプトコッカス・ニューモニエからのLytAコーディング領域の117C末端コドンを含むベクターPCUZ1、及び我々が、Ludwig InstituteからDr.Thierry Boon から頂いたプラスミドからの先にサブクローニングしたMAGE−1遺伝子cDNAを有するベクターpRIT14518であった。
【0114】
CLYTA−Mage−1−Hisタンパク質の発現のためのクローニングストラテジー(図16の概説を参照のこと)は以下のステップを含む:
2.CLYTA−Mage−1−Hisコーディング配列モジュールの調製:
a)最初のステップは、CLYTA配列をNdeI−AflIII 制限部位に隣接させることを予定したPCR増幅であった。そのPCR増幅は、プラスミドPCUZ1テンプレート及びプライマーとしてオリゴヌクレオチドセンス:5′tta aac cac acc tta agg agg ata taa cat atg aaa ggg gga att gta cat tca gac 、及びオリゴヌクレオチドアンチセンス:5′GCC AGA CAT GTC CAA TTC TGG CCT GTC TGC CAG を用いて行った。これは、378ヌクレオチド長のCLYTA配列の増幅を導く。
【0115】
b)第2のステップは、CLYTA配列をMAGE−1−His配列に連結して融合タンパク質のためのコーディング配列を作ることであった。このステップはNdeI−AflIII 制限フラグメントの切り出し及びNdeI及びNcoIにより先に開裂したベクターpRIT14518(NcoI及びAflIII に適合)への挿入を含み、プラスミドpRIT14613を作り出す。
【0116】
c)宿主細胞AR58の形質転換
d)プラスミドpRIT14613を含む大腸菌形質転換体(KAN耐性)の選択及びキャラクタリゼーション(図16を参照)。
1.組換えタンパク質CLYTA−MAGE−1−His(pRIT14613)のキャラクタリゼーション:
細菌を、30℃で50μg/mlカナマイシンを補給したLB培地で増殖させた。その培養物がOD=0.3(620nm)に達した時に、温度を38℃に上げることにより熱誘導を行った。
【0117】
4時間の誘導の後、細胞を収集し、PBS中に懸濁し、そしてワンショット(one shot)により(分解により)溶解した。遠心の後、ペレット上清及び全抽出物をSDS−PAGEにより分析した。タンパク質をクーマシーB1染色したゲルで可視化し、ここでその融合タンパク質は全大腸菌タンパク質の約1%を示した。組換えタンパク質は約49kDの見掛けMWの単一バンドとして現れた。融合タンパク質を、抗Mage−1ポリクローナル抗体を用いたウェスタン・ブロットにより同定した。
【0118】
(ナリジクス酸誘導のために役立つ)長λpLプロモーター及びCLYTA−Mage−1コーディング配列pRIT14614により構成される発現ユニットの再構成:
長いPLプロモーター及びCLYTA配列の一部を含むEcoRI−NCO1 制限フラグメントをプラスミドpRIT DVA6から調製し、プラスミドpRIT14613のEcoRI−NCO1 部位の間に挿入した。
【0119】
組換えプラスミドpRIT14614を得た。
融合タンパク質CLYTA−Mage−1−Hisをコードする組換えプラスミドpRIT14614(図17を参照)を用いて大腸菌AR120を形質転換した。Kan耐性候補株を選択し、キャラクタライズした。
組換えタンパク質のキャラクタリゼーション:
細菌を50mg/mlのカナマイシンを補給したLB培地で30℃で増殖させた。その培養物がOD=400(620nm)に達した時に、ナリジクス酸を60mg/mlの最終濃度まで加えた。
【0120】
4時間の誘導の後、細胞を収集し、PBSに再び懸濁して、分解(disintegration)(分解CLS“ワン・ショット”型)により溶解した。遠心後、ペレット上清及び全抽出物をSDS−PAGEにより分析した。タンパク質をクーマシーブルー染色したゲルで可視化した。ここで、その融合タンパク質は全大腸菌タンパク質の約1%を示した。その融合タンパク質をウサギ抗Mage−1ポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析により同定した。組換えタンパク質は約49kDの見掛けMWの単一バンドとして現れた。
【0121】
実施例X:
CLYTA−MAGE−3−HIS
A:腫瘍拒絶組換え抗原:C−lytA融合パートナーが可溶性タンパク質の発現を導く融合タンパク質CLYTA−Mage−3−Hisはアフィニティータグとして機能し、有用なT−ヘルパーを供する。
【0122】
融合タンパク質CLYTA−Mage−3−Hisテールを発現する大腸菌の調製
発現プラスミドpRIT14646の作製及び宿主株AR120の形質転換:
タンパク質デザイン:
大腸菌内で発現させる融合タンパク質Clyta−Mage−3−Hisのデザインを図18に示す。
【0123】
得られたタンパク質の一次構造は配列番号:9に記載の配列及び配列番号:10に記載のコーディング配列を有する。
上述のタンパク質デザインに相当するコーディング配列を大腸菌発現プラスミド内のλpLプロモーターの制御下においた。
クローニング:
出発材料は、Gene 43 (1986) p 265-272に記載されるストレプトコッカス・ニューモニエからのLytAコーディング領域の117C末端コドンを含むベクターPCUZ1、及び我々が、Ludwig InstituteからDr.Tierry Boonから頂いたプラスミドからのMAGE−3遺伝子cDNAを先にサブクローニングしたベクターpRIT14426であった。
【0124】
CLYTA−MAGE−3−Hisタンパク質の発現のためのクローニングストラテジー(図19の概説を参照のこと)は以下のステップを含む。
1.CLYTA−MAGE−3−Hisコーディング配列モジュールの調製:
1.1.最初のステップはAflII及びAflIII 制限部位にCLYTAを隣接させることを予定したPCR増幅であった。PCR増幅は、テンプレートとしてプラスミドPCUZ1及びプライマーとしてオリゴヌクレオチドセンス:5′tta aac cac acc tta agg agg ata taa cat atg aaa ggg gga att gta cat tca gac 、及びオリゴヌクレオチドアンチセンス:5′ccc aca tgt cca gac tgc tgg cca att ctg gcc tgt ctg cca gtg を用いて行った。これは、427ヌクレオチド長CLYTA配列の増幅を導く。先に増幅したフラグメントをInvitrogenのTAクローニングベクターにクローン化して、中間体ベクターpRIT14661を得た。
【0125】
1.2.第2のステップは、CLYTA配列をMAGE−3−His配列に連結して融合タンパク質のためのコーディング配列を作り出すことであった。このステップは、AflII−AflIII フラグメントの切り出し及びAflII及びNcoI(NcoI及びAflII適合)制限酵素により先に開裂したベクターpRIT14426に挿入することを含み、プラスミドpRIT14662を作り出した。
【0126】
2.(ナリジクス酸誘導のために役立つ)長いλpLプロモーター及びCLYTA−Mage−3コーディング配列により構成される発現ユニットの再構成
短いpLプロモーター及びCLYTA−Mage−3−Hisコーディング配列を含むBglII−XbaI制限フラグメントをプラスミドpRIT14662から調製し、プラスミドTCM67(国際出願PCT/EP92/01827に記載される、アンピシリンに対する耐性、及び長いλpLプロモーターを含むrBR322誘導体)のBglII−XbaI部位の間に挿入した。プラスミドpRIT14607を得た。
【0127】
融合タンパク質Clyta−Mage−3 Hisをコードする組換えプラスミドpRIT14607を用いて大腸菌AR120(Mottら、1985, Proc.Natl.Acad.Sci, 82: 88)を形質転換した。アンピシリン耐性候補株を選択し、キャラクタライズした。
3.プラスミドpRIT14646の調製:
最後に、pRIT14607 に類似するがカナマイシン選択を有するプラスミドを作製した(pRIT14646)。
【0128】
組換えタンパク質のキャラクタリゼーション:
細菌を50mg/mlのカナマイシンを補給したLB培地で30℃で増殖させた。その培養物がOD=400(600nm)に達した時に、ナリジクス酸を60g/mlの最終濃度まで加えた。
4時間の誘導の後、細胞を収集し、PBSに懸濁し、分解(分解CLS“ワン・ショット”型)により溶解した。遠心の後、ペレット上清及び全抽出物をSDS−PAGEにより分析した。タンパク質をクーマシーブルーで染色したゲルで可視化し、ここでその融合タンパク質は全大腸菌タンパク質の約1%を示した。その融合タンパク質は、ウサギ抗Mage−3ポリクローナル抗体を用いてウェスタンブロット分析により同定した。組換えタンパク質は約58kDの見掛けMWの単一バンドとして表れた。
【0129】
実施例XI:
組換えタンパク質CLYTA−Mage−3 Hisの精製:
組換え細菌AR120(pRIT14646)を30℃で、フェド・バッチ条件下で20リッター発酵槽中で増殖させた。組換えタンパク質の発現は、ナリジクス酸を60g/mlの最終濃度まで加えることにより誘導した。発酵の終りに細胞を収集し、フレンチプレス破砕機(20,000psi )に2回、通すことにより60 OD/600に溶解した。溶解した細胞を4℃で15,000gで20分、ペレット化した。組換えタンパク質を含む上清を、0.3M NaCl、20mM Tris HCl pH7.6(緩衝液A)で予め平衡化した交換DEAE Sepharose CL6B 樹脂(Pharmacia )に充填した。緩衝液Aでのカラム洗浄の後、融合タンパク質を緩衝液A中2%コリンにより溶出した。抗Mage−3抗体を用いてウェスタン・ブロット分析により表した陽性抗原画分をプールした。DEAEで溶出した抗原を0.5% Empigen BB(両性イオン界面活性剤)に及び0.5M NaClにし、次に0.5% Empigen BB、0.5M NaCl、50mMリン酸緩衝液 pH7.6(緩衝液B)で予め平衡化したIon Metal Affinityクロマトグラフィーカラムに充填した。
【0130】
IMACカラムを280nmの吸光度がベースラインに達するまで緩衝液Bで洗った。界面活性剤を除去するためのEmpigen BBを含まない緩衝液B(緩衝液C)での第2の洗浄を行い、次に抗原を緩衝液C中のイミダゾール勾配0〜250mMにより溶出した。
0.090〜0.250Mイミダゾール画分をプールし、10kDa Filtronオメガ膜で濃縮し、次にPBS緩衝液に対して透析した。
【0131】
結論:
我々は、融合タンパク質LPD−MAGE3−Hisがマウスにおいて免疫原性であること、及びこの免疫原性(増殖性応答及び抗体応答)は、上述のアジュバントの使用により更に増加させることができることを証明した。精製は、ジスルフィド結合を形成するチオールを誘導化することにより増強することができる。
【0132】
我々は、アジュバントの存在下でのLPD−MAGE−3−Hisでのワクチン接種によりより優れた抗体応答が誘発されることも証明した。C57BL/6の血清中に見い出される主要なアイソタイプがIgG2bであることは、TH1型免疫応答が生じたことを示唆する。
ヒトにおいてアジュバントを加えない製剤中のLPD−MAGE3−Hisで患者を臨床的に処置すると、黒色腫を除去した。
【0133】
【表2】

【0134】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ヘモフィルス・インフルエンゼB(Heamophilus influenzae B)由来のプロテインD、又はプロテインDの最初の約1/3もしくはプロテインDのN末端109もしくは100〜110アミノ酸を含むそのフラグメント;
(ii) インフルエンザ由来のNS1プロテイン、又はNS1プロテインのN末端81アミノ酸を含むそのフラグメント;あるいは
(iii) ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)由来のLytA、又は(a)Lyt−AのC末端部分;(b)残基178で始まるC末端中に発見されるLytA分子の反復部分;及び/又は(c)LytAのアミノ酸残基188〜305を含むそのフラグメント、から選択される融合パートナーに連結したMAGE遺伝子のファミリーによりコードされる抗原を含む融合タンパク質。
【請求項2】
アフィニティータグを更に含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記プロテインDが、プロテインDの脂質化形態である、請求項1又は2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記抗原が、MAGE A1,MAGE A2,MAGE A3,MAGE A4,MAGE A5,MAGE A6,MAGE A7,MAGE A8,MAGE A9,MAGE A10,MAGE A11,MAGE A12,MAGE B1,MAGE B2,MAGE B3,MAGE B4,MAGE C1及びMAGE C2から選択されるMAGE遺伝子によりコードされる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の融合タンパク質をコードする核酸配列。
【請求項6】
請求項5の核酸を含むベクター。
【請求項7】
請求項6のベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項5に記載の核酸を含有するワクチン。
【請求項9】
アジュバント、及び/又は免疫刺激性サイトカインもしくはケモカインを更に含む請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
前記タンパク質が、水中油又は油中水エマルションビヒクルに供される、請求項8又は9に記載のワクチン。
【請求項11】
前記アジュバントが、3D−MPL,QS21又はCpGオリゴヌクレオチドを含む、請求項9又は10に記載のワクチン。
【請求項12】
1又は複数の他の抗原を更に含む、請求項8〜11のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項13】
医薬に用いるための請求項8〜12のいずれか1項に記載のワクチン。
【請求項14】
黒色腫、又は乳癌、膀胱癌、肺癌、NSCLC、頭部の癌及び扁平上皮癌、結腸癌及び食道癌を含む他のMAGE関連腫瘍を患う患者を免疫療法的に治療するためのワクチンにおける使用のための請求項1〜4のいずれか1項に記載のタンパク質又は請求項5に記載の核酸。
【請求項15】
MAGE関連腫瘍を患う患者を免疫療法的に治療するためのワクチンにおける使用のための誘導化チオール残基を含むMAGEファミリー由来の腫瘍関連抗原誘導体であるタンパク質であって、ここで該MAGE関連腫瘍が乳癌、膀胱癌、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、頭部の癌及び扁平上皮癌、結腸癌及び食道癌から選択される、タンパク質。
【請求項16】
前記誘導化遊離チオールが、カルボキシアミド化又はカルボキシメチル化される、請求項15に記載のタンパク質。
【請求項17】
前記抗原が、プロテインDもしくはプロテインDの最初の約1/3を含むプロテインDの誘導体から選択される融合パートナーを含む、請求項15又は16に記載のタンパク質。
【請求項18】
前記抗原がアフィニティータグを含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項19】
前記プロテインD又はそのフラグメントが脂質化される、請求項15〜18のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項20】
前記MAGEタンパク質が、MAGE A1,MAGE A2,MAGE A3,MAGE A4,MAGE A5,MAGE A6,MAGE A7,MAGE A8,MAGE A9,MAGE A10,MAGE A11,MAGE A12,MAGE B1,MAGE B2,MAGE B3,MAGE B4,MAGE C1及びMAGE C2から選択される、請求項15〜19のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項21】
前記ワクチンが、アジュバント、及び/又は免疫刺激性サイトカインもしくはケモカインを更に含む、請求項15〜20のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項22】
前記タンパク質が、水中油又は油中水エマルションビヒクルに供される、請求項21に記載のタンパク質。
【請求項23】
前記アジュバントが、3D−MPL,QS21又はCpGオリゴヌクレオチドを含む、請求項21又は22に記載のタンパク質。
【請求項24】
1又は複数の他の抗原を更に含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載のタンパク質。
【請求項25】
MAGEタンパク質の精製又は製造方法であって、該タンパク質のジスルフィド結合を還元すること、及び得られた遊離チオール基をブロッキング基でブロッキングすることを含み、そして1又は複数のクロマトグラフィーステップを更に含み、ここで該タンパク質は強カオトロピック剤又は両性イオン界面活性剤を使用して可溶化される、方法。
【請求項26】
前記カオトロピック剤が、尿素又は塩酸グアニジウムである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記両性イオン界面活性剤が、エンピゲンBB−n−ドデシル−N,N−ジメチルグリシンである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記ブロッキング剤がアルキル化剤である、請求項25〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ブロッキング剤がα−ハロ酸及び/又はα−ハロアミドである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ブロッキング剤が、1又は複数の以下の群:ヨード酢酸;ヨードアセトアミド;N−エチルマレイミド;クロロアセチルホスフェート;O−メチルイソウレア;及びアクリロニトリルである、請求項28又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記タンパク質がアフィニティータグを含む、請求項25〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記アフィニティータグが、CLytA又はポリヒスチジンテールである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記アフィニティータグを含むタンパク質が、ブロッキングステップ後にアフィニティークロマトグラフィーにかけられる、請求項31又は32に記載の方法。
【請求項34】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー(IMAC)である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記金属イオンが、亜鉛、ニッケル、鉄、マグネシウム又は銅から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記アフィニティークロマトグラフィーが、両性イオン界面活性剤エンピゲンBBを含有する緩衝液を使用して行われる、請求項33〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記タンパク質が、MAGE抗原及び融合パートナーを含む融合タンパク質である、請求項25〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記融合パートナーが、ヘモフィルス・インフルエンゼB(Heamophilus influenzae B)由来のプロテインDもしくはプロテインDの最初の1/3を含むそのフラグメント、インフルエンザ由来のNS1プロテインもしくはNS1のN末端81アミノ酸を含むそのフラグメント、又はストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)由来のLytAもしくはLytAの残基188〜305を含むそのフラグメントである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記融合パートナーがプロテインDの脂質化形態である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記タンパク質が、LytAもしくは残基188〜305を含むそのフラグメントを含み、そしてここで該タンパク質がコリン又はコリンアナログ、例えばDEAEに対するアフィニティークロマトグラフィーにより精製される、請求項32〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記MAGE抗原が、MAGE A1,MAGE A2,MAGE A3,MAGE A4,MAGE A5,MAGE A6,MAGE A7,MAGE A8,MAGE A9,MAGE A10,MAGE A11,MAGE A12,MAGE B1,MAGE B2,MAGE B3,MAGE B4,MAGE C1及びMAGE C2から選択される、請求項25〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
ワクチンの製造方法であって、請求項25〜41のいずれか1項に記載の方法によりMAGEタンパク質を産生又は精製する工程、及び得られたタンパク質をワクチンとして調剤する工程を含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate


【公開番号】特開2009−201510(P2009−201510A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−120409(P2009−120409)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【分割の表示】特願2000−530602(P2000−530602)の分割
【原出願日】平成11年2月2日(1999.2.2)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】