説明

MMP−2タンパク質由来ペプチドおよび抗腫瘍免疫療法におけるその使用

本発明は、MHCクラスIにより提示される、抗原MMP-2のTエピトープを形成するペプチドに関する。該ペプチドは抗腫瘍免疫療法に特に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MMP-2タンパク質由来ペプチドおよび抗腫瘍免疫療法におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ペプチド免疫化または免疫療法は、癌の予防または治療の関係において、現在最も興味のある主題である治療アプローチである。その原理は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)により認識される腫瘍抗原のTエピトープに相当するペプチドに関する免疫応答の誘導に基づく。細胞傷害性Tリンパ球は、これらの腫瘍抗原をその表面に発現する癌細胞の消去において主要な役割を演じる。
【0003】
CTLはタンパク質抗原全体を認識しないが、種々の細胞の表面で発現される主要組織適合複合体(MHC)分子により提示される該タンパク質抗原のペプチド断片を認識することが思い起こされよう。Tエピトープを構成するのはこれらのペプチド断片なのである。
【0004】
クラスI主要組織適合複合体(MHC I)により提示されるエピトープは、一般に8〜11のアミノ酸を有し、CD8+ T細胞により認識され、該T細胞が細胞傷害性応答の主な構成要素に相当する。クラスII主要組織適合複合体(MHC II)により提示されるエピトープは、一般に13〜18のアミノ酸を有し、CD4+ T細胞により認識される。
【0005】
よって、これらのエピトープ、特にMHC Iにより提示されるものの同定は(細胞傷害性におけるCD8+応答の必須の役割によって)、抗腫瘍免疫療法組成物の開発のための必須の工程を構成する。
【0006】
黒色腫は、表皮メラノサイト、すなわち皮膚の色素細胞を犠牲にして発生する悪性の皮膚腫瘍である。フランスでは、現在、100,000人当たり9〜10の新しい症例、すなわち5000に近い新しい患者が毎年記録されている。
【0007】
黒色腫関連抗原(MAA)の2つの主要なクラスが知られている。正常な組織ではほとんどまたは全く発現されない特異的抗原、およびメラノサイトによっても発現されるメラノサイト分化抗原である(参考のために、Castelliら, 2000, J Cell Physiol, 182, 323〜31;Kirkinら, 2002, Cancer Invest, 20, 222〜36を参照)。
【0008】
黒色腫タイプの癌の高い普及率により、抗腫瘍細胞傷害性免疫応答を誘導し得る他の腫瘍抗原を同定することが望まれている。
【0009】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、細胞外マトリックス(ECM)および基底膜の種々のタンパク質成分の分解の原因であるZn依存性エンドペプチダーゼである(Khasigovら, 2001, Biochemistry, 66(2), 130〜40)。現在、MMPファミリーの21のメンバーがヒトにおいて知られている。
【0010】
多数のヒトの癌においてMMPの過剰発現が観察され、低い生存率と関連している。実際、MMPは、細胞増殖、細胞移行および脈管形成を増大させることにより腫瘍の進行を増加させる能力を有する(EgebladおよびWerb, 2002, Nat. Rev. Cancer., 2(3), 161〜74)。
【0011】
MMP-2タンパク質(ゼラチナーゼAまたはコラゲナーゼタイプIVともよばれる;OMIM 120360)は、コラーゲンタイプIV、ゼラチンおよび細胞外マトリックスの他の成分を切断する。このタンパク質は、いくつかの正常なタンパク質および組織で発現される。これは、また、多くの癌においても過剰発現される。多くの研究は、これが腫瘍の進行、転移および脈管形成に関与することを示している(Liottaら, 1980, Nature., 284 (5751), 67〜8;Itohら, 1998, Cancer. Res., 58(5), 1048〜51;Brooksら, 1998, Cell., 92(3), 391〜400)。
【0012】
多くのタイプの腫瘍におけるその過剰発現ならびに悪性転換および腫瘍脈管形成におけるその関与により、MMP-2の活性を阻害することによる、抗腫瘍治療のための標的としてのMMP-2の使用が提案されている(EgebladおよびWerb, 上記;Coussensら, 2002, Science, 295 (5564), 2387〜92)。
【0013】
しかし、MMP-2タンパク質は、今回まで、抗腫瘍細胞傷害性応答を誘導し得る標的抗原になるとはみなされなかった。まして、MMP-2のTエピトープは同定されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明者らは、今回、MMP-2が黒色腫細胞により効果的に加工されてMHC Iにより提示されるTエピトープを生じ、腫瘍細胞を溶解し得る細胞傷害性Tリンパ球を誘導することができることを見出した。
【課題を解決するための手段】
【0015】
よって、本発明の主題は、
- MMP-2 メタロプロテアーゼ;
- MHC Iにより提示されるTエピトープを含む前記メタロプロテアーゼの断片;
- 前記メタロプロテアーゼまたは前記断片をコードするポリヌクレオチド;
から選択される分子の、抗腫瘍免疫療法用、特にMMP-2を発現する黒色腫の治療用の医薬品を製造するための使用である。
【0016】
本発明により用い得るMMP-2断片は、該メタロプロテアーゼの8〜11の連続するアミノ酸からなりかつMHC Iにより提示されるTエピトープを構成するいずれの免疫原性ペプチドを特に包含する。これらの免疫原性ペプチド、およびこれらのペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本発明の主題の一部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の開示において、「MHC Iにより提示されるTエピトープ」の表現は、ペプチドが由来する抗原に対する特異的CTL応答を誘導し得るペプチドを意味することを意図する。
【0018】
本発明の実施の限定しない例として、本発明者らは、配列(1文字表記) GLPPDVQRV (配列番号1)を有するHLA-A*0201で表されるペプチドを同定した。
このペプチドは、MMP-2を発現するHLA-A*0201黒色腫細胞に関する特異的CTL応答を誘導でき、よってHLA-A*0201患者の治療用の医薬品を得るために特に用いることができる。
【0019】
本発明による他のTエピトープは、MMP-2抗原から種々の方法により得ることができる。
例えば、ある特定のMHC I対立遺伝子と複合体を形成し得るペプチドは、共通して、「アンカー残基」とよばれる特異的アミノ酸残基をある位置に有することが知られている。「一次アンカー残基」とよばれるアミノ酸を含む特異的アンカーモチーフは、よって、種々のMHC I対立遺伝子について規定されている。一次アンカーモチーフの外側に位置する残基(二次アンカー残基)が、MHCに対するペプチドの親和性に好ましいかまたは好ましくない影響を及ぼし得ることも示されている。
【0020】
ある特定のMHC I対立遺伝子により提示されるエピトープを構成し得るペプチド配列の選択は、この対立遺伝子に対応する一次アンカーモチーフの全部または一部を有するペプチドを選択するために、通常、MMP-2抗原のペプチド配列の分析により行うことができる。既知のアンカーモチーフを列挙した種々のデータベースが入手可能である。例として、SYFPEITHIデータベース(http://www.uni-tuebingen.de/uni/kxi/; Rammenseeら, Immunogenetics, 50, 213〜219, 1999)またはBIMASデータベース(http://bimas.dcrt.nih.gov/molbio/hla_bind; Parkerら, J. Immunol. 152, 163, 1994)が挙げられる。
【0021】
本発明の主題は、本発明による少なくとも1種の免疫原性ペプチドまたは該ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む組成物でもある。
これらは、特に、複数特異的(polyspecific)なCTL応答を生じ得るマルチエピトープ組成物であることができ、この目的のために、該組成物は1種以上の他の免疫原性エピトープをも含む。これらの他のエピトープは、MMP-2に由来するかまたは1以上の他の抗原に由来することができる。
【0022】
本発明によるマルチエピトープ組成物は、個体が異なるHLA対立遺伝子を保持する集団に広く使用可能とするために、種々のMHC I分子により提示されるエピトープを含み得る。
これらは、さらに、MHC II分子により提示されかつT-ヘルパー応答を誘導し得る少なくとも1種のエピトープをも含み得る。
【0023】
本発明による組成物の好ましい実施形態によると、該組成物は、本発明による免疫原性ペプチドの1以上のコピーを含む少なくとも1つのキメラポリペプチドを含む。マルチエピトープ組成物の場合、該キメラポリペプチドは、少なくとも1つの他の免疫原性エピトープの1以上のコピーをも含む。
【0024】
例えば、治療される患者に、免疫原性ペプチドまたは適切なアジュバントと任意に組み合わせた上記で規定される本発明による組成物を注入することができる。同様に、本発明によるポリヌクレオチド、好ましくは核酸ベクター、特にアデノウイルスのようなウイルスベクターに組み込まれたポリヌクレオチドも、治療される患者への注入により直接投与され得る。
【0025】
本発明は、本発明によるMMP-2由来のTエピトープを提示する抗原提示細胞をも包含する。
本発明による抗原提示細胞は、MHC Iを介して抗原を提示し得る全ての細胞から得ることができる。特に、該細胞は、専門の抗原提示細胞、例えば樹状細胞から得ることができる。
【0026】
本発明の好ましい実施形態によると、該抗原提示細胞は、例えばBakkerら(Cancer Res., 55, 5330〜5334, 1995)またはVan Elsasら(Eur. J. Immunol., 26, 1683〜1689, 1996)により記載されるように、インビトロで、本発明による免疫原性ペプチドをロードされる。
【0027】
本発明の別の好ましい実施形態によると、該抗原提示細胞は、本発明による免疫原性ペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、例えばMMP-2タンパク質をコードするかまたはその断片をコードするポリヌクレオチドで、インビトロでトランスフェクションされる。
【0028】
本発明による抗原提示細胞は、次いで、例えばKaplanら(J. Immunol., 163(2), 699〜707, 1999)またはKimら(Annals of Surgical Oncology, 5(1), 64〜76, 1998)により記載されるように、治療される患者に注入され得る。
【0029】
本発明は、MMP-2タンパク質またはその断片、特に本発明による免疫原性ペプチドの、黒色腫に罹患した個体から得られた生物学的試料中のMMP-2に指向されたCTLを検出するための使用をも包含する。
これらのペプチドは、これらのCTLの特異的弁別を行うために用いることもできる。このようにして単離されたCTLは、インビトロで増幅され、大量に(10億のオーダーで) 患者に再注入され得る。
【0030】
よって、本発明の主題は、黒色腫に罹患した患者から採取したCTLから、MMP-2タンパク質またはその断片、特に本発明によるペプチドを認識するCTLを選択し、このようにして選択されたTリンパ球をインビトロで増加させることを含むことを特徴とする、MMP-2に指向されたCTLを得る方法でもある。
【0031】
本発明の主題は、MMP-2タンパク質に指向されたCTL調製物、特に上記で規定した方法により得ることができるCTL調製物でもある。
【0032】
本発明は、また、
- 本発明による免疫原性ペプチド;
- 本発明によるマルチエピトープ組成物;
- 本発明によるポリヌクレオチド;
- 本発明による抗原提示細胞;
- 本発明によるCTLの調製物
から選択される活性成分を含む医薬品をも包含する。
【0033】
本発明は、MMP-2抗原由来の本発明によるペプチドによる抗腫瘍細胞傷害性応答の誘導を説明する限定しない実施例に言及する、以下のさらなる記載により、より明確に理解されるであろう。
【実施例】
【0034】
実施例1:HLA-A2黒色腫系統を認識するCTLクローン(クローンM134.12)の特徴付け
CTLクローンを、黒色腫に罹患した患者からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL) (HLA A*0201、B*0801、Cw*0701)を、自己由来腫瘍細胞で(Pandolfinoら, 1992, Eur. J. Immunol., 22(7), 1795〜802により記載されたプロトコルに従って)刺激することにより得た。これらのCTLクローンは、自己由来の腫瘍細胞を特異的に溶解し、これらの細胞の刺激に応答してTNFαおよびIFNγを分泌し得る。
【0035】
これらのクローンの1つ(CTL M134.12)を、後続の実験のために選択した。
CTLクローンM134.12を、M134自己由来系統ならびに種々のHLA A*0201患者からの黒色腫由来の種々の同種異系の系統(M17、M113、M147、M153、M204、FM25、FM29、IPC 277/5、M25、M44、M88、M102、M117、M171、M199、M200)の存在下で共培養した。
【0036】
6時間の培養後、上清を回収し、そのTNFα濃度を、De Plaenら(Methods, 12, 125〜42, 1997)により記載されたようにして、これらの培養上清の細胞傷害性をWEHI 164クローン13について測定することにより決定した。
【0037】
結果を図1に示す。
Y軸に沿って、pg/mlでのTNFαの濃度である。
X軸に沿って、試験した種々の系統である。
【0038】
CTLクローンM134.12は、M134系統の他に、HLA A*0201を発現する9つの同種異系の黒色腫細胞系統を認識する。このことは、このCTLクローンがこれらの系統に共通でかつHLA A*0201対立遺伝子により提示される抗原を認識することを示す。
【0039】
実施例2:CTLクローンM134.12により認識される抗原の同定
CTLクローンM134.12により認識される抗原を同定するために、cDNAライブラリをM134腫瘍細胞系統のmRNAから構築した。
【0040】
cDNAライブラリの構築
ポリ(A)+ mRNAを、M134細胞からFast Track 2.0キット(Invitrogen Corp., Oxon, UK)を用いて抽出した。cDNAを、精製mRNAからキット(Stratagene Inc., La Jolla, CA)を用いて合成した。新しく合成されたcDNAをEco RIアダプタに連結し、次いでXho Iで消化し、最後に、真核発現ベクターpcDNA3.1 (Invitrogen Corp.)のEco RIおよびXho I部位に挿入した。得られた組換えプラスミドは、E. coli XL1株(Stratagene Inc., La Jolla, CA)にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションの後、60,000に近いアンピシリン耐性クローンを単離した。これらのクローンのスクリーニングを許容するために、574群(各群は100のアンピシリン耐性細菌クローン)をつくった。各群のプラスミドDNAを、QIAprep Spin Miniprepキット(Qiagen S.A., Courtaboeuf, France)を用いるアルカリ溶解により抽出した。
【0041】
このプラスミドDNAを、次いで、COS-7細胞に、HLA A*0201ベクター(pHLA A*0201, T. Boon, LICR, Brussels, Belgiumから入手)とコトランスフェクションした。
【0042】
COS-7細胞のトランスフェクション
グルコース1 g/lおよび10%の胎児ウシ血清、抗生物質とL-グルタミンを含有するDMEM (Sigma)培地で培養したCOS-7細胞を、ベクターpHLA-A*0201単独またはM134 cDNAライブラリの群の1つに由来するプラスミドDNAとの組み合わせでトランスフェクションした。トランスフェクションは、DEAE-デキストラン-クロロキンプロトコル(Brichard, Exp. Med. 1993, 1(78): 489〜495)に従って行なった。2×104 COS-7細胞を100 ngのプラスミドpHLA-A*0201でトランスフェクションし、コトランスフェクションのために100 ngのM134ライブラリのDNAでトランスフェクションした。トランスフェクションの48時間後、これらのCOS-7細胞を用いてCTLクローンM134.12 Tを刺激した。共培養の6時間後、培養上清を回収して、そのTNF濃度を、上記のように、WEHI 164クローン13についてその細胞傷害性を測定することにより決定した。
【0043】
試験した群のうち、陽性の群(270)が同定された。この群の96の異なるプラスミドを、CTLクローンM134.12によるTNFα分泌を誘導するそれらの能力について個別に試験した。
M134細胞系統の存在下で得られたものに匹敵するTNFα分泌を誘導したpNA134-Aとよばれるこれらのプラスミドの1つが選択された。
【0044】
図2は、CTLクローンM134.12によるTNFαの分泌を、刺激細胞の不在下、M134細胞の存在下、トランスフェクションしていないCOS-7細胞の存在下、プラスミドpHLA-A*0201単独でトランスフェクションされたCOS-7細胞の存在下、およびプラスミドpHLA-A*0201およびpNA134-AでコトランスフェクションされたCOS-7細胞の存在下で比較する。
【0045】
pNA134-Aの配列決定は、これが1.3 kb cDNAを含み、その配列がMMP-2メタロプロテアーゼ(アクセッション番号:NM_004530)をコードする配列の3'末端に相当することを示す。よって、MMP-2タンパク質は、CTLクローンM134.12により認識される抗原である。
プラスミドpNA134-Aの挿入断片は、MMP-2のアミノ酸501〜661をコードする。
【0046】
CTLクローンM134.12により認識されるMMP-2の領域をより詳細に特定するために、NA134-A cDNA挿入断片の短縮変異型(MMP-2のアミノ酸501〜661をコードする断片20およびMMP-2のアミノ酸501〜556をコードする断片25)を含むプラスミドを構築した。
全MMP-2 cDNAを含むプラスミドも構築した。
【0047】
これらのプラスミドのそれぞれをpHLA A*0201とCOS-7細胞内へコトランスフェクションし、次いでCTLクローンM134.12によるTNFα分泌を誘導するそれらの能力について試験した。
【0048】
試験した構築物を図3に概略で示す。図3は、CTLクローンM134.12によるTNFα分泌を誘導するそれらの能力をも示す。
これらの結果は、CTLクローンM134.12により認識されるTエピトープがMMP-2のアミノ酸556と593との間に位置することを示す。
【0049】
MMP-2の領域556〜593に由来する一連のペプチド(配列GLPPDVQRV (配列番号1)、LGLPPDVQRV (配列番号2)、LPPDVQRV (配列番号3)およびGLPPDVQR (配列番号4))を合成した(Synt:em Nimes, France)。
【0050】
これらのペプチドを用いて、51Crで標識されたT2細胞を感作した。これらの細胞を60分間、37℃で種々の濃度の試験される各々のペプチドとインキュベートした。次いで、CTL M134.12エフェクター細胞を、エフェクター細胞/標的細胞の比が10/1で加えた。上清に放出された51Crの量を4時間後に測定する。
【0051】
結果を図4に示す。
Y軸に沿って、相対的溶解のパーセンテージである。
X軸に沿って、nMでのペプチドLGLPPDVQRV (●)、GLPPDVQRV (■)、LPPDVQRV (▲)またはGLPPDVQR (×)の濃度である。
【0052】
これらの結果は、ペプチドGLPPDVQRVがCTLクローンM134.12によりT2細胞を感作して溶解するのに最も効果的であることを示す。
【0053】
実施例3:種々の細胞タイプにおけるMMP-2の発現およびM134.12 CTLによる黒色腫細胞の特異的認識
MMP-2が、子宮内膜、肝臓または大動脈のような組織により(Khasigov, Biochemistry, 2001)、またマクロファージ、栄養膜(Yamamoto, Cancer Res., 1996)、IL-2-活性化Tリンパ球(Leppert, JI, 1995 Esparza J., Blood, 1999)、線維芽細胞、ケラチノサイト、軟骨細胞、内皮細胞、単球または骨芽細胞(Birkedal-Hansen, Crit. Rev. Oral. Biol. Med., 1993)のような多数のタイプの細胞により構成的に発現されることが知られている。
【0054】
CTLクローンM134.12が、MMP-2 (RT-PCRおよび免疫組織化学により確認された発現)およびHLA-A2を発現する種々のタイプの細胞(腫瘍細胞または正常細胞)を認識する能力を、これらの細胞での刺激に応答するCTLクローンM134.12によるTNFαの分泌を測定することにより試験した。用いたプロトコルは上記の実施例1に記載のものと同じである。
【0055】
得られた結果を以下の表1に示す。
【表1】

【0056】
これらの結果は、MMP-2を発現する10の黒色腫細胞系統がCTLクローンM134.12により認識されることを示す。
一方、他の癌細胞系統および非癌細胞系統はMMP-2およびHLA-A2を発現するが、これらはCTLクローンM134.12により認識されない。
【0057】
つまり、MMP-2タンパク質の遍在的な発現にもかかわらず、黒色腫細胞だけがこのタンパク質のエピトープを有効に提示する能力を有するようである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
- MMP-2 メタロプロテアーゼ;
- MHC Iにより提示されるTエピトープを含む前記メタロプロテアーゼの断片;
- 前記メタロプロテアーゼまたは前記断片をコードするポリヌクレオチド;
から選択される分子の、抗腫瘍免疫療法用の医薬品を製造するための使用。
【請求項2】
MMP-2メタロプロテアーゼの8〜11の連続するアミノ酸の断片からなることを特徴とする、MHC Iにより提示されるTエピトープを構成する免疫原性ペプチド。
【請求項3】
配列GLPPDVQRVで規定されることを特徴とする請求項2に記載の免疫原性ペプチド。
【請求項4】
請求項2および3のいずれか1つに記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
請求項2および3のいずれか1つに記載の少なくとも1つのペプチドあるいは請求項4に記載のポリヌクレオチドを含む組成物。
【請求項6】
請求項2および3のいずれか1つに記載のペプチドあるいは請求項4に記載のポリヌクレオチドの、医薬品を得るための使用。
【請求項7】
前記医薬品が、黒色腫の治療用である請求項6に記載の使用。
【請求項8】
インビトロで請求項2および3のいずれか1つに記載のペプチドをロードされたことを特徴とする、MHC I分子を発現する単離された抗原提示細胞。
【請求項9】
請求項2および3のいずれか1つに記載の免疫原性ペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドでトランスフェクションされたことを特徴とする、MHC I分子を発現する抗原提示細胞。
【請求項10】
MMP-2メタロプロテアーゼまたはその断片の、黒色腫に罹患した個体から得られた生物学的試料中のMMP-2に指向された細胞傷害性Tリンパ球を検出するための使用。
【請求項11】
黒色腫に罹患した患者から採取した細胞傷害性Tリンパ球から、MMP-2タンパク質またはその断片を認識する細胞傷害性Tリンパ球を選択し、そのようにして選択されたTリンパ球をインビトロで増幅することを含むことを特徴とする、MMP-2メタロプロテアーゼに指向された細胞傷害性Tリンパ球を得る方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法により得ることができる、MMP-2メタロプロテアーゼに指向された細胞傷害性Tリンパ球の調製物。
【請求項13】
- 請求項2および3のいずれか1つに記載の免疫原性ペプチド;
- 請求項4に記載のポリヌクレオチド;
- 請求項8および9のいずれか1つに記載の抗原提示細胞;
- 請求項12に記載の細胞傷害性Tリンパ球の調製物
から選択される活性成分を含む医薬品。

【公表番号】特表2007−520198(P2007−520198A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516321(P2006−516321)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001585
【国際公開番号】WO2005/000342
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【出願人】(504336294)ユニヴェルシテ デ ナンテス (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE NANTES
【住所又は居所原語表記】1,quai de Tourville,F−44000 NANTES,FRANCE
【Fターム(参考)】