説明

MRI装置と連係する手術台装置

【課題】 本発明は、術者が手術を行う手術空間中の手術領域にMRI装置による検査空間を設け、更に、手術を行う手術領域とMRI装置による検査空間とを結ぶ搬送手段を有した手術台装置によって、手術を行う際、術中にMRI装置による面像診断を適時に行い、精度の高い確実な手術を行い、手術の安全性を高めることを目的とする。
【解決手段】 手術空間の中に検査空間を統合し、患者の体位が任意に設定できる手術台装置において、更にその手術台装置がMRI装置による検査空間に近接して、手術目的に適応した任意の位置に設置される手術領域とを結ぶ搬送手段を有する構造を持ち、手術中にMRI検査が適時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、MRI装置と連係して手術の目的に応じて、手術領域を任意に設定することができる機能を有した手術台装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来は疾患もしくは疾病に対して医者が診断を行い、場合によっては何らかの外科的手術を施し、術後の経過を観察している。これらの過程において診断および経過の観察にはMRI装置等の画像診断装置が用いられている。通常、何らかの外科的手術を行う場合、手術室で手術を行い、手術終了後、別の場所に設けられた画像診断室に患者を搬送して経過の観察が行われているため、術後の画像診断は患者、術者の双方にとって時間的・精神的および肉体的な負担がある。更に、手術終了後の画像診断により手術の不適当が発見された場合、術者及び患者共に再手術のリスクを負う可能性がある。
【0003】近年、術前、術中、術後の患部の観察の必要性が高まり、その有効な手段としてMRI装置(Magnetic Resonance Imaging:核磁気共鳴画像装置)が実用化されている。従来の手術室環境においては、MRI装置から発生する強力な磁場により影響を受ける手術器具や手術台装置等は高磁場環境における様々な問題があるため、手術室と画像診断室は別々に分離した空間に設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】手術目的に対応して患者の体位が設定でき、かつMRI装置に適用できる構造を有する手術台の具現化と、そして手術中に画像診断が必要とされる場合、患者の搬送距離が長いことから患者に対する安全面、更に術者及び看護婦等の作業効率が悪く、その改善が大きな問題として取り上げられる。又医療施設の運用面からも床面積の有効利用等の多くの解決すべき問題点が考えられる。
【0005】本発明では上記の問題点を考慮に入れ、何らかの外科的な手術中において、画像診断装置による診断が必要なときに、適時に診断を行うことのできる手術台装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明による手術台装置は限られた室内で、手術の目的にあわせて患者の体位が設定できる機能を備え、かつMRI装置における検査空間と、該検査空間に近接して、手術目的に適応した任意の位置に設置される手術領域を結ぶ搬送手段とを備えた手術台装置によって、上記課題を解決する。上記手術台装置の天板部がスライドする機能を備え、その天板部がMRI装置の検査空間内を貫通し、患者をMRI装置の外に設けられた手術空間に、搬送する手段によって上記課題を解決する。また、手術台装置の天板部がスライドする機能を備え、MRI装置の検査空間を貫通し、天板部とコラム部が分離して、相対する位置にあらかじめ設置してある第2のコラム部に装着する手段により上記課題を解決する。
【0008】手術台装置は画像診断装置であるMRI装置から発生する高磁場環境に適用できる構造によって課題を解決するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は手術室内の手術空間100と、手術空間内設けられたMRI装置による検査空間120と、手術目的に適用した任意の位置に設定できる手術領域110の概念図を示す。MRI装置による検査空間120と外科的治療を行う手術領域が110手術台装置の搬送手段によって効果的に連係し、手術中に適時に検査を行うことができる。この場合、手術領域110はMRI装置の中及びMRI装置の近接する場所に設定される。この手術領域110は適用する手術によって位置的な設定ができる。手術室のレイアウトにより決定される場合もある。更に、この手術台装置の可動域は手術室内の既に設置されてある他の装置に干渉しないように、例えば、床面にレール等のガイド機能を設置し、手術台装置に該レールの受け部を設置することにより手術台装置がレールのガイドに沿って任意の場所へ移動することができる。また、ガイド機能として、磁気ガイドテープレーザ光等を利用して構成することができる。動力源は、人手もしくはモータによる補助動力あるいは、自走型動力機能を負荷することは容易である。更に電気的なリモコン操作による位置制御、コンピュータによる全自動での位置制御等、様々な方法が考えられることは言うまでもない。
【0010】図2は、オープンタイプ(MRI装置のガントリー部12に開口部を設ける)のMRI装置2の検査空間120に患者5を乗せた手術台装置1が装着されている実施例を示している。手術台装置1は天板部7と天板を支えるコラム部8とコラム部を支える脚台9から構成されている。オープンタイプのMRI装置2は磁気を発生する円筒形の磁石2とその円筒形の磁石を支える四本の支柱3から構成されている。磁場の均一性が高く、高い画質が得られる位置が検査空間120として利用される。したがって、この場合、手術台装置1はこのMRI装置2の検査空間120内における中心位置に設定できる構造からなり、検査空間120内で患者5を動かすことなく術者6が手術を行うことができるように構成され、手術中に適時に検査を行うことができる。
【0011】手術台装置1は、患者5の患部の位置が検査空間120内の中心に来るように、とMRI装置2に精度よく装着できるような構造を有している。図3は手術台装置を装着するガイド機能の実施例を示したものである。例えば、手術台装置の脚台にレール受け部13を設け、更にMRI装置2の下部に別のレール14が構成され、手術台装置のレール受け部13とMRI装置のレール14の両者を組み合わせることによりMRI装置2と手術台装置との位置が明確に搬送される。上記に示した例は、MRI装置と手術台装置のガイド機能を示したもので、手術台装置と室内の床面とのガイド機能も上記と同様の機能を有することができる例えば、床面にレール相当のガイドを設置し、手術台装置に該レールの受け部を設置することにより手術台装置がレールのガイドに沿って任意の場所へ移動することができる。又、ガイド機能は、レール相当の凸部とそのレールを受ける凹部からなり、MRI装置2と手術台装置1と室内の床面を任意に組み合わせることで各々の位置を制御することができる。
【0012】図4は、MRI装置1の検査空間120外に、患者5の患部があり検査空間120外で手術を行う場合の実施例を示している。手術台装置の天板部7がMRI部の検査空間120内を長手方向に貫通して、スライドすることにより、MRIの検査空間120外まで患者5を搬送させ、術者6がその位置で手術することができる。すなわち、手術領域110を検査空間120に近接して設置した実施例であり、したがって、手術台装置2の天板部7のスライド機能によって手術中に適時に検査を行うことができる。
【0013】手術台装置の天板部7のスライド機能を図5R>5に示す天板部7は上部天板7aと下部天板7bとで構成されており、MRI装置2において検査を行っている時は上部天板7aと下部天板7bとが重なっている状態で上部天板7aの上に患者5が乗っている。更に、検査後手術を行う時は上部天板7aだけが患者5を乗せたままMRI装置2の外まで搬送でき、その位置に設置された手術領域110で手術ができる。よって、手術台装置2の天板部7のスライド機能によって、手術中に適時に検査を行うことができる。
【0014】図6は、MRI装置2の検査空間120外に、患者5の患部があり検査空間120外で手術を行うことのできる別の実施例を示している。図8、図9、図1010に示された搬送方法をもとに、上記図6の実施例を説明する。例えば、図8はMRI装置2にて検査を行っている状態を示している。図9ににおいて、手術台装置1の天板部7とコラム8が分離した後、患者3を乗せた天板部7だけが長手方向にスライドし、MRI装置の検査空間内を貫通する。そこで、あらかじめ設置された第2のコラム10の天板受け部11に自動的に装着する。その後、図10に示しすようにMRI装置2の検査空間外に設けられた手術領域まで患者を搬送させる。従来、多くの手間を要し、かつ患者の安全性に問題があった術中の画像診断が容易に検査を行うことができる手術台装置1の搬送機能を導入することにより極めて容易に実現できるようになった。
【0015】前記MRI装置を貫通して行われる手術とは別に、広い空間を要求される場合には、MRI装置2から磁場の影響が少ない場所に手術領域110を設置し、患者5を搬送し手術が行われるように構成した実施例を図7に示す。又、手術症例に適用して患者を長時間磁性領域内に置くことを避けるために、上記MRI装置2から一定の距離以上に離すための搬送方法として、MRI装置2から手術台装置を手術台装置1手術台の長手方向に移動させ、その位置でコラムを中心に任意の角度に回転及び固定させることで、患者を磁場の影響が少ない手術領域110まで搬送させることができる。この場合も前記したように、手術台装置のガイド機能により手術台装置の搬送ができる。
【0016】図11、12、13は現在実用化されているオープンタイプのMRI装置の基本的な構造を示したもので磁石を支える支柱(磁路を構成する)の配置図を示したものである。ここではMRI装置本体の性能については言及しない。図11はタイプ1を示しており、MRI装置の磁路を構成する支柱3が片持ちで構成されており、比較的手術台装置の搬送手段が限定されない構造となっている。図12はタイプ2を示しており、上述した支柱3が2本で構成されている。図13は、タイプ3を示しており、上述した支柱3が4本で構成されている。タイプ3の搬送方法は実施例を既に記述している。手術台装置をMRI装置に搬送する方法すなわち搬送アプローチ方法として手術台装置1の長手方向に対して縦方向へのスライドする方法を図14に示す。この方法は前記した全タイプのMRI装置に対応できる。又、図15R>5に搬送アプローチ方法は手術台装置1の長手方向に対して横方向へのスライドする方法を示す。この方法はMRI装置のタイプ1及び2の場合に適用できる。又、図1616に示した搬送アプローチ方法は手術台装置1のコラム部を軸に任意の角度に回転し固定する方法を示す。この方法はMRI装置のタイプ1及び2の場合に適用できる。この場合も前記したように、手術台装置のガイド機能により手術台装置の搬送ができる。上述した搬送アプローチ方法はMRI装置のタイプ1及び2であれば、3種類の搬送方法が可能であり、MRI装置のタイプ3は縦方向へのスライド及び既に記述し説明した搬送形態をとることができる。したがって、各種のMRI装置に対して手術台装置1のアプローチ方法を任意に組み合わせることが可能であり、限られた手術室内の手術空間100を効率良く使用することができる。
【0017】手術台装置1は主に天板部7はMRI装置2による画像診断結果に有害な影響(アーチファクト)を与えない素材、例えば樹脂等、非磁性が高くかつ非導電性が高い材料で構成されている。そのため、確実な画像診断と安全性の高い手術が可能となる。
【0018】尚、手術台装置の作動機能について図17に示す。手術台装置の天板の作動機能は、手術の目的に応じて患者を任意な体位が設定できるように、例えば、昇降機能、横転、縦転機能及びスライド機能を有する。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、手術を行う際、MRIによる画像診断を適時に行うことで、画像を観察しながら手術を行うので精度の高い確実な手術ができ、手術自体もより高い安全性が可能になるため、術者の精神的負担が大幅に軽減される。
【0020】本発明によれば、術中に、MRIによる画像診断を適時に行うことで、手術後に改めて手術結果の確認作業が不要となるため医者及び患者の時間的、肉体的負担が無くなる。
【0021】本発明によれば、手術を行う手術空間内の手術領域にMRI装置による検査空間を設けることによって、限られた室内の小スペースで手術と検査が一連の流れで行われことができる。そのため、手術の効率が大幅に改善される。更に、手術と検査が一連の流れで行われるため人員の削減が期待される。
【0022】本発明によれば、手術空間と検査空間の共通化により医療施設における小スペース化のため施設費用が大幅に削減される。
【0023】本発明による、手術台装置の搬送手段を用いることで、手術に際してあらかじめ設置された他の設備類との干渉を避けられ手術がより安全に効率よく行うことができる。
【0024】以上、本発明によれば、上述した効果によって患者の安全確保と共にトータル的な医療費の大幅な削減が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】MRI装置対応手術室
【図2】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図3】ガイド機能の説明図
【図4】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図5】手術台装置の天板部のスライドの説明図
【図6】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図7】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図8】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図9】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図10】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図11】MRI装置の支柱の配置図
【図12】MRI装置の支柱の配置図
【図13】MRI装置の支柱の配置図
【図14】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図15】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図16】手術台装置の搬送方法実施例の説明図
【図17】手術台装置の天板部の作動機能の説明図
【符号の説明】
1 手術台装置
2 MRI装置
3 支柱
4 磁石
5 患者
6 術者
7 天板部
7a 上部天板部
7b 下部天板部
8 コラム部
9 脚台
10 第2コラム部
11 天板受け部
12 MRI装置のガントリー
13 レール受け部
14 レール
100 手術空間
110 手術領域
120 検査空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】手術の目的に合わせて患者の体位が任意に設定できる機能を有する手術台と手術台がMRI装置における検査空間と該検査空間に近接して手術目的に適応した任意の位置に設置される手術領域を結ぶ上記手術台の搬送手段と、該搬送手段を介して、手術中にMRI装置による患者の画像診断が適時が遂行されるように構成したことを特徴とする手術台装置
【請求項2】搬送手段に手術台装置の天板部がスライドする機能を備え、該天板部が検査空間内を貫通して移動することを特徴とする手術台装置
【請求項3】手術台装置の天板部とコラム部が分離、スライドする機能を備え、該天板部が上記の検査空間内を貫通して移動し、相対する位置に設置した第2のコラム部に結合して天板部が維持できるように設定したことを特徴とする手術台装置
【請求項4】搬送手段に手術台がMRI装置に対して任意の方向に旋回し設定できる機能を備えたことを特徴とする手術台装置
【請求項5】搬送手段に手術台装置がMRI装置に対して手術台の長手方向に対して垂直方向に横スライドして設定できる機能を備えたことを特徴とする手術台装置
【請求項6】MRI装置から発生される高磁場環境に適用できることを特徴とする手術台装置
【請求項7】検査空間における計測位置に対応して所望する患者体位が設定できる構造を有することを特徴とする手術台装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図11】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2000−232969(P2000−232969A)
【公開日】平成12年8月29日(2000.8.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−74273
【出願日】平成11年2月13日(1999.2.13)
【出願人】(000193612)瑞穂医科工業株式会社 (53)
【Fターム(参考)】