説明

MS/MS型質量分析装置及び同装置用プログラム

【課題】目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することができるMS/MS型質量分析装置及び同装置用プログラムを提供する。
【解決手段】プリカーサイオンを選別する第1質量分離部3と、イオン開裂部4と、プロダクトイオンを選別する第2質量分離部6と、検出器7とを有するMS/MS型質量分析装置であって、目的成分のMS分析を行うMS分析実行部110と、MS分析の結果に基づき1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをプリカーサイオン候補とするプリカーサイオン候補選択部120と、全プリカーサイオン候補のMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部130と、MS/MS分析結果に基づき目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部140を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の質量電荷比(m/z)を有するイオンを衝突誘起解離(CID=Collision-Induced Dissociation)により開裂させ、これにより生成されるプロダクトイオン(フラグメントイオン)の質量分析を行うMS/MS型質量分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
分子量が大きな物質の同定やその構造の解析を行うために、質量分析の1つの手法として、MS/MS分析(タンデム分析とも呼ばれる)という手法が知られている。典型的なMS/MS型質量分析装置として三連四重極(TQ)型質量分析装置がある。図2は特許文献1などに開示されている、一般的な三連四重極型質量分析装置の概略構成図である。
【0003】
この質量分析装置は、図示しない真空ポンプにより真空排気される分析室1の内部に、分析対象の試料をイオン化するイオン化室2と、それぞれ4本のロッド電極から成る3段の四重極3、5、6と、イオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器7と、を備える。第1段四重極3には、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加され、これにより発生する電場の作用により、イオン化室2で生成された各種イオンの中で特定の質量電荷比を有する目的イオンのみがプリカーサイオンとして選別される。
【0004】
第2段四重極5は密閉性が高いコリジョンセル4内に収納されている。このコリジョンセル4内には例えばアルゴン(Ar)などのCIDガスが導入される。第1段四重極3から第2段四重極5に送られたプリカーサイオンは、コリジョンセル4内でCIDガスと衝突し、衝突誘起解離による開裂を生じてプロダクトイオンが生成される。この開裂の態様は様々であるため、通常、一種のプリカーサイオンから質量電荷比の異なる複数種のプロダクトイオンが生成される。これら各種のプロダクトイオンがコリジョンセル4を出て、第3段四重極6に導入される。通常、第2段四重極5には、高周波電圧のみが印加されるか、又は高周波電圧に直流バイアス電圧を加算した電圧が印加され、この第2段四重極5はイオンを収束させつつ後段に輸送するイオンガイドとして機能する。
【0005】
第3段四重極6には第1段四重極3と同様に、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加される。これにより発生する電場の作用により、第3段四重極6では特定の質量電荷比を有するプロダクトイオンのみが選別されて検出器7に到達する。第3段四重極6に印加する直流電圧及び高周波電圧を適宜変化させることで、第3段四重極6を通過し得るイオンの質量電荷比を走査(プロダクトイオンスキャン)することができる。この場合、検出器7で得られる検出信号に基づいて、図示しないデータ処理部は、目的イオンの開裂により生じたプロダクトイオンのマススペクトル(MS/MSスペクトル)を作成することができる。そのほか、特定のプロダクトイオンを生成する全てのプリカーサイオンを検索するプリカーサイオンスキャンや、特定の部分構造が脱離する全てのプリカーサイオンを検索するニュートラルロススキャンなども実行可能である。
【0006】
また液体クロマトグラフ(LC)やガスクロマトグラフ(GC)の検出器として上記MS/MS型質量分析装置を用いたLC/MS/MS、GC/MS/MSなどの装置では、試料に含まれる多成分の一斉分析(同定及び定量)を行うためにMRM(Multiple Reaction Monitoring)と呼ばれる手法がよく用いられる。MRM測定では、各成分について、第1段四重極3で選別されるプリカーサイオンの質量電荷比と、該プリカーサイオンについて第3段四重極6で選別・測定されるプロダクトイオンの質量電荷比の組を予め定めておく。試料に含まれる複数の成分は前段のLCやGCで時間的に分離されるから、各成分の溶出時間(保持時間)に従って前記所定のプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組をそれぞれ切り替えることにより、各成分由来のイオンの信号を高い精度で且つ高い感度で取得し、試料に含まれる各成分の定量測定を高精度・高感度で行うことができる。
【0007】
試料に含まれる各成分はLCやGCで時間的に分離されて質量分析装置に導入されるが、その成分のイオン化の際に、様々なイオン(プリカーサイオン)が生成される。そこで、MRM測定で高精度・高感度の分析を行うためには、各成分についてプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を正しく選択することが重要である。
【0008】
従来、各成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組の選択は、次のようにして行われていた。
まず、検出しようとする成分(以下、「目的成分」という)をイオン化してMS分析を行い、最も高い信号強度が得られる一つの正イオン又は負イオンをプリカーサイオンとして選択する。あるいは、データベース等から、予め目的成分から生成されるイオンに関する情報が得られる場合には、その情報を参照して一つの正イオン又は負イオンをプリカーサイオンとして選択する。
続いて、選択したプリカーサイオンを開裂させてプロダクトイオンを生成させるMS/MS分析を行い、最も高い信号強度が得られるプロダクトイオンを選択して、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−201304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した従来の方法では、はじめに一つの正イオン又は負イオンをプリカーサイオンとして選択し、そのプリカーサイオンのみについてMS/MS分析を行うことにより、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択していた。
しかし、選択するプリカーサイオンによって、MS/MS分析を行う際に各四重極に印加する電圧値等の条件が異なる。特に、プリカーサイオンの極性が異なると、印加する電圧値等の条件が大きく異なり、MS/MS分析において検出されるプロダクトイオンの種類や信号強度も大きく異なる。従って、目的成分をイオン化して行うMS分析で最も高い信号強度が得られるプリカーサイオンを選択したとしても、そのプリカーサイオンを開裂させて生成したプロダクトイオンが必ずしも高い信号強度を有するとは限らず、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として最適ではないものを選択してしまう場合がある。
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、目的成分について、より高い確率で最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することができるMS/MS型質量分析装置及び同装置用プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために成された本願発明に係るMS/MS型質量分析装置の第一の態様は、目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を有するMS/MS型質量分析装置であって、
a) 前記第1質量分離部及び前記検出器を制御して前記目的成分のMS分析を行うMS分析実行部と、
b) 前記MS分析の結果に基づき、所定の基準により1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをプリカーサイオン候補とするプリカーサイオン候補選択部と、
c) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
d) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とする。
【0013】
前記プリカーサイオン候補選択部における所定の基準としては、例えば、MS分析により取得したMSスペクトルにおいて、正イオン及び負イオンのそれぞれについて、強度が高い順に所定数(1又は複数)のマスピークを選択し、該マスピークに対応するイオンをプリカーサイオン候補として選択するものとすることができる。これは、後述するMS/MS型質量分析装置用のプログラムの第一の態様においても同様である。
前記組合せ選択部における所定の基準としては、例えば、全てのプリカーサイオン候補について行ったMS/MS分析により取得した全MS/MSスペクトルの中で、最大強度を有するピークに対応するプロダクトイオン、及び、それに対応するプリカーサイオンの組を選択するものとすることができる。これは、後述するMS/MS型質量分析装置の第二の態様や、MS/MS型質量分析装置用のプログラムの第一及び第二の態様においても同様である。
【0014】
本願発明に係るMS/MS型質量分析装置の第二の態様は、目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を有するMS/MS型質量分析装置であって、
a) 前記目的成分に関するプリカーサイオン候補として、1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをユーザーに設定させるプリカーサイオン候補設定部と、
b) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
c) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明に係るMS/MS型質量分析装置では、第一の態様、第二の態様のいずれにおいても、プリカーサイオン候補として、正イオン及び負イオンをそれぞれ少なくとも一つ以上選択し、それらの全てのプリカーサイオン候補について行ったMS/MS分析の結果に基づいて目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する。従って、はじめにプリカーサイオンとして1つの正イオン又は負イオンを選択し、該プリカーサイオンから生成されるプロダクトイオンの信号強度のみに基づいてプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択するという従来の装置では見出すことが不可能な組の中に、目的成分に関してより適したプリカーサイオンとプロダクトイオンの組が存在する場合でも、これを見出して選択することができる。
【0016】
本発明に係るMS/MS型質量分析装置は、前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方について稼働条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することが望ましい。
【0017】
なお、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルにおいて、最も出現頻度の高いマスピークに加えて、出現頻度が2番目、3番目に高いマスピーク等を選択することにより、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択するようにしてもよい。
【0018】
上記のように、複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行し、マスピークの出現頻度を基準として目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することにより、特殊な条件下でのみ出現するプロダクトイオンを誤って選択することを防ぐことができる。
【0019】
また、全MS/MSスペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークを選択する代わりに、MS/MSスペクトルのマスピークの強度の値を加算又は平均し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択するようにしてもよい。
【0020】
また、単純加算/単純平均ではなく、各MS/MSスペクトルに重み付けを行い、その重み付けを考慮してマスピークの強度の値を加算又は平均(加重加算/加重平均)し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択するようにしてもよい。
【0021】
本願発明に係るMS/MS型質量分析装置用プログラムの第一の態様は、目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を備えるMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、
a) 前記第1質量分離部及び前記検出器を制御して前記目的成分のMS分析を行うMS分析実行部と、
b) 前記MS分析の結果に基づき、所定の基準により1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをプリカーサイオン候補とするプリカーサイオン候補選択部と、
c) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
d) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とする。
【0022】
本願発明に係るMS/MS型質量分析装置用プログラムの第二の態様は、目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を備えるMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、
a) 前記目的成分に関するプリカーサイオン候補として、1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをユーザーに設定させるプリカーサイオン候補設定部と、
b) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
c) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とする。
【0023】
また、前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方について稼働条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行してMS/MS分析を行うイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することが望ましい。
【0024】
本発明に係るMS/MS型質量分析装置用のプログラムにおいても、上記のような各種機能(出現頻度が2番目以降のマスピークに対応する組の選択、加算値/平均値、加重加算値/加重平均値による選択等)を付与して、目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るMS/MS型質量分析装置及びMS/MS型質量分析装置用のプログラムでは、プリカーサイオン候補として、正イオン及び負イオンをそれぞれ少なくとも一つ以上選択し、それらの全てのプリカーサイオン候補について行ったMS/MS分析の結果に基づいて目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する。従って、はじめに一つの正イオン又は負イオンをプリカーサイオンとして選択し、そのプリカーサイオンのみについてMS/MS分析を行うことにより目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する従来の装置やプログラムに比べ、目的成分について、より高い確率で最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することができ、目的とする成分の分析を高精度かつ高感度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例によるMS/MS型質量分析装置の全体構成図。
【図2】一般的なMS/MS型質量分析装置の全体構成図。
【図3】実施例のMS/MS型質量分析装置において、最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を決定するために行う処理のフローチャート。
【図4】最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を決定する方法の一つを説明するための、マススペクトル併記図。
【図5】最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を決定する別の方法を説明するための、マススペクトル重畳図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係るMS/MS型質量分析装置の一実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例のMS/MS型質量分析装置の全体構成図である。なお、既に説明した従来の構成(図2)と同じ構成要素には、同一符号を付して説明を略す。
本実施例のMS/MS型質量分析装置では、第1段四重極3と第3段四重極6との間に、プリカーサイオンを開裂させて各種プロダクトイオンを生成するためにコリジョンセル4が配置され、その内部には質量分離の機能を持たない第2段四重極5が配設されている。第1段四重極3及び第3段四重極6は四重極マスフィルタであり、第2段四重極5は単なる四重極(又は多重極)のイオンガイドである。
【0028】
コリジョンセル4では、第2段四重極5が絶縁性部材から形成される筒状体41内に設けられ、その筒状体41のイオン入射側端面には入口側レンズ電極42が、イオン出射側端面には出口側レンズ電極43が設けられる。
【0029】
第1段四重極3には第1電源部11から、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。第2段四重極5には第2電源部12から、高周波電圧のみ、或いはこれに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。第3段四重極6には第3電源部13から、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧、或いはこれにさらに所定の直流バイアス電圧を加算した電圧が印加される。これら第1電源部乃至第3電源部11、12、13は、コンピュータから成る制御部10の制御の下に動作する。コリジョンセル4の入口側レンズ電極42及び出口側レンズ電極43には、直流電源部20からそれぞれ所定の電圧が印加される。
【0030】
本実施例のMS/MS型質量分析装置によりMRM測定を行う場合の制御部10の動作は次の通りである。ここでは、この質量分析装置の前段に試料を導入するLC又はGCが接続され、LC又はGCで試料から時間的に分離された成分をMRM測定により順次検出する場合を想定する。MRM測定では、第1段四重極3で選別されるプリカーサイオンの質量電荷比Aと、第3段四重極6で選別されるプロダクトイオンの質量電荷比a(a<A)とが固定され、目的成分毎に異なるA、aが設定される。従って、第1段四重極3におけるプリカーサイオンの質量電荷比の切り替えとともに第3段四重極6におけるプロダクトイオンの質量電荷比の切り替えが行われる。このプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組は、保持時間と対応付けて、分析条件の一つとして予め分析者が操作部30を用いて設定しておかねばならない。このとき、各目的成分に対して最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を設定することにより、各成分由来のイオンの信号強度を高精度・高感度で求め、試料に含まれる各成分の定量測定を高精度・高感度で行うことができる。
【0031】
以下に、本実施例のMS/MS型質量分析装置を用いて、目的成分に対して最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの質量電荷比の組を定めるために行う処理を図3を参照して説明する。
【0032】
まず、ユーザーが操作部30を通じて目的成分を入力する(ステップS1)。これには、成分名や化学式、モノアイソトピック質量をユーザーが入力する方法の他、表示部31の画面上に表示されたものの中からユーザーが選択する方法も用意されている。そして、ユーザーが所定の方法により目的成分をイオン化室2に導入する。これにより目的成分から種々のイオンが生成される。次いで、MS分析実行部110が第1電源部11から第1段四重極3に印加する直流電圧及び高周波電圧を変化させて、第1段四重極3を通過しうるイオンの質量電荷比を変化させて検出器7に導く。また、MS分析実行部110は、データ処理部8を通じて検出器7からの検出信号を収集してMSスペクトルを取得する(ステップS2)。このMS分析は目的成分から生成される正イオン、負イオンのそれぞれについて行う。なお、ユーザーが質量電荷比の範囲を指定し、その範囲内に限定してMS分析を行うようにしてもよい。
【0033】
次に、プリカーサイオン候補選択部120が、MS分析により取得したMSスペクトルにおいて、強度が高い順に所定数のマスピークを選択して、これらに対応するイオンをプリカーサイオン候補として選択する(ステップS3)。本実施例では2個の正イオン及び2個の負イオンをプリカーサイオン候補として選択する。このとき、MS分析実行部110がMSスペクトルを表示部31に表示し、操作部30を通じてユーザーにプリカーサイオン候補を選択させるようにしてもよい。
【0034】
こうして、目的成分に対するプリカーサイオン候補を選択した後、後述するMS/MS分析を行うプリカーサイオン候補の順番を決定する(ステップS4)。この決定は、ユーザーが自ら行ってもよく、予め決められた順(例えば、正イオン、負イオンのそれぞれについて質量電荷比の大きい順)にプリカーサイオン候補選択部120が自動的に決定するようにしてもよい。
【0035】
MS/MS分析を行うプリカーサイオン候補の順番が決定すると、イベント準備部131は、プリカーサイオンを開裂させるコリジョンセル4の印加電圧やCIDガスのガス圧、プロダクトイオンを走査する第3段四重極6への印加電圧等のプロダクトイオンスキャン条件を設定したプロダクトイオンスキャンイベントを、所定個数だけ(本実施例では8個)生成する(ステップS5〜S6)。プロダクトイオンスキャンイベントは、所定のアルゴリズムに従って自動的に生成するようにしてもよいし、一部又は全部をユーザーのパラメータ入力値としてもよい。また、全ての条件が同一であるプロダクトイオンスキャンイベントを複数含めてもよい。これは、全ての条件が同一であっても、プロダクトイオンスキャンイベントの実行時刻が異なると、突発的なノイズ等による結果への影響が異なる場合があるからである。
【0036】
所定個数のプロダクトイオンスキャンイベントが生成された後、イベント実行部132はそれらのプロダクトイオンスキャンイベントを順次実行する(ステップS7)。具体的には、各プロダクトイオンスキャンイベントに設定された条件に従い、第1電源部11、第2電源部12、直流電源部20、第3電源部13等を制御し、プリカーサイオン候補を開裂させ、生成したプロダクトイオンを検出器7で検出することによりMS/MSスペクトルを得る。一つのプリカーサイオン候補について、8個のプロダクトスキャンイベントを実行して得られたMS/MSスペクトルの例を図4に示す。
【0037】
一つのプリカーサイオン候補について、全プロダクトスキャンイベントが終了すると、ステップS4で決定した順番に従い、全てのプリカーサイオン候補について、上記手順でMS/MSスペクトルを取得する(ステップS8)。
【0038】
全プリカーサイオン候補について、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行した後、組合せ選択部140は、全MS/MSスペクトルから以下の方法により目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する(ステップS9)。
【0039】
上記の手順で得られた全MS/MSスペクトルから、目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する方法について説明する。その一つは、全MS/MSスペクトルの中で、最も高頻度で出現するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を最適な組として選択する方法である。このとき、所定の許容幅(例えば±0.5m/zなど)の範囲内のm/zは一つのm/zとして扱うようにする。
全MS/MSスペクトルの中で、最も高強度で出現するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を最適な組として選択する方法もあるが、その場合、突発的なノイズなどにより生じた高強度のピークを誤って選択してしまう可能性がある。しかし、このようなピークが高い頻度で生ずることは殆どないため、ピークの出現頻度を基準としてプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することにより、より高い確率で目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択することができる。
【0040】
この方法で最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する例を図4により説明する。図4は、m/z=455.10のプリカーサイオン候補について、それぞれ異なる条件(パラメータ[0001]〜[0008])で8個のプロダクトイオンスキャンイベントを生成し、それらを実行した結果得られたマススペクトルを縦に並べたものである。
【0041】
図4に示す例では、最初のプロダクトイオンスキャンイベント(プロダクトイオンスキャンイベント#1)においてのみ、特異的にm/z=17のマスピーク(p1)が現れているが、その他のプロダクトイオンスキャンイベントにおいてはそのマスピークは現れていない。しかし、このマスピークは全MS/MSスペクトルの中で最も高強度であるため、ピーク強度を基準とする方法ではこれを選択してしまう。しかし、マスピークの出現頻度を基準とする方法を用いると、プロダクトイオンスキャンイベント#2〜#7の6個のMS/MSスペクトルにおいて現れているm/z=165のマスピークが選択される。これは、目的成分から生成されるm/z=455.10のプリカーサイオンから最も安定的に生成されるプロダクトイオンであると言えるため、m/z=455.10のプリカーサイオンとm/z=165のプロダクトイオンの組は、目的成分のMRM測定に適したプリカーサイオンとプロダクトイオンの組であると言える。さらに、この組のマスピークが最も高強度で得られるプロダクトイオンスキャンイベントを目的成分のMRM測定条件として設定することにより、目的成分を最も高感度で測定することができる。
【0042】
図4には1個のプリカーサイオンから得られたMS/MSスペクトルのみを示したが、他のプリカーサイオン候補についても同様に、所定数のプロダクトスキャンイベントによりMS/MSスペクトルが得られている。従って、これら全てのMS/MSスペクトルの中で、最も高い頻度で出現するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択する。
【0043】
また、プリカーサイオン候補ごとに、全プロダクトスキャンイベントを実行して得た全MS/MSスペクトルについて、m/z毎にピーク強度の値を積算し、最大値が得られるマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を選択してもよい。
【0044】
この場合の例を図5により説明する。図5は、図4に示した例の8個のプロダクトイオンスキャンイベントで生成されたMS/MSスペクトルを表示部31の画面上に重畳表示したものである。上記の通り、m/z=17において高強度のマスピークp1が現れているが、m/z=165のマスピークは6個のスペクトルにおいて現れているため、それらを積算するとm/z=17のマスピークより遙かに高くなる。従って、この場合も上記と同様に、目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組としてm/z=455.10のプリカーサイオンとm/z=165のプロダクトイオンの組を選択することができる。
【0045】
なお、全MS/MSスペクトルについて、m/z毎に積算したピーク強度の値の最大値を選択することと、m/z毎に平均したピーク強度値の最大値を選択することは数学的には同等であるため、平均値の最大値を選択するようにしてもよい。
また、単純加算/単純平均ではなく、全てのプリカーサイオン候補について所定数のプロダクトスキャンイベントを行って得たMS/MSスペクトルに対して重み付けを行い、その重み付けを考慮したm/z毎のピーク強度の加算値/平均値(加重加算値/加重平均値)の中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、目的成分に対する最適なプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択してもよい。
【0046】
上記各実施例はいずれも本発明の一例であるから、本発明の趣旨の範囲で適宜に変形、追加、修正を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
例えば、上記実施例では、MS分析実行部110が目的成分のMSスペクトルを取得し、これに基づいてプリカーサイオン候補選択部120がプリカーサイオン候補を選択する構成とした。しかし、例えば、データベース等から、予め目的成分から生成されるイオンに関する情報が得られる場合には、目的成分に関するプリカーサイオン候補として、1又は複数の正イオン、及び1又は複数の負イオンをユーザーに設定させるプリカーサイオン候補設定部を備えるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…分析室
2…イオン化室
3…第1段四重極
4…コリジョンセル
5…第2段四重極
6…第3段四重極
7…検出器
8…データ処理部
10…制御部
11…第1電源部
12…第2電源部
13…第3電源部
20…直流電源部
30…操作部
31…表示部
41…筒状体
42…入口側レンズ電極
43…出口側レンズ電極
110…MS分析実行部
120…プリカーサイオン候補選択部
130…MS/MS分析実行部
131…イベント準備部
132…イベント実行部
140…組合せ選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を有するMS/MS型質量分析装置であって、
a) 前記第1質量分離部及び前記検出器を制御して前記目的成分のMS分析を行うMS分析実行部と、
b) 前記MS分析の結果に基づき、所定の基準により1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをプリカーサイオン候補とするプリカーサイオン候補選択部と、
c) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
d) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置。
【請求項2】
目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を有するMS/MS型質量分析装置であって、
a) 前記目的成分に関するプリカーサイオン候補として、1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをユーザーに設定させるプリカーサイオン候補設定部と、
b) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
c) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置。
【請求項3】
前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方についてMS/MS測定の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のMS/MS型質量分析装置。
【請求項4】
前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方についてMS/MS測定の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルのマスピークの強度の値を加算又は平均し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のMS/MS型質量分析装置。
【請求項5】
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルに重み付けを行い、その重み付けを考慮してマスピークの強度の値を加算又は平均し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することを特徴とする請求項4に記載のMS/MS型質量分析装置。
【請求項6】
目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を備えるMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、
a) 前記第1質量分離部及び前記検出器を制御して前記目的成分のMS分析を行うMS分析実行部と、
b) 前記MS分析の結果に基づき、所定の基準により1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをプリカーサイオン候補とするプリカーサイオン候補選択部と、
c) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
d) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項7】
目的成分から生成した各種イオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第1質量分離部と、該プリカーサイオンを開裂させるイオン開裂部と、開裂により生成した各種プロダクトイオンの中で特定の質量電荷比を有するイオンを選別する第2質量分離部と、該第2質量分離部で選別されたプロダクトイオンを検出する検出器と、を備えるMS/MS型質量分析装置用のプログラムであって、
a) 前記目的成分に関するプリカーサイオン候補として、1又は複数の正イオン、及び、1又は複数の負イオンをユーザーに設定させるプリカーサイオン候補設定部と、
b) 前記第1質量分離部、前記イオン開裂部、前記第2質量分離部、及び前記検出器を制御して、全てのプリカーサイオン候補についてMS/MS分析を行うMS/MS分析実行部と、
c) 前記MS/MS分析の結果に基づき、所定の基準により前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組を選択する組合せ選択部と
を備えることを特徴とするMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項8】
前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方についてMS/MS測定の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行してMS/MS分析を行うイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルの中から最も出現頻度の高いマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択する請求項6又は7に記載のMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項9】
前記MS/MS分析実行部が、
a) 前記プリカーサイオン候補のそれぞれについて、前記イオン開裂部及び前記第2質量分離部のうち少なくとも一方についてMS/MS測定の条件を変化させたプロダクトイオンスキャンイベント及び/又は何ら条件を変化させないプロダクトイオンスキャンイベントからなる複数個のプロダクトスキャンイベントを準備するイベント準備部と、
b) 準備された複数個のプロダクトイオンスキャンイベントを実行するイベント実行部と、
を備え、
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルのマスピークの強度の値を加算又は平均し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することを特徴とする請求項6又は7に記載のMS/MS型質量分析装置用プログラム。
【請求項10】
前記組合せ選択部が、全プロダクトイオンスキャンイベントを実行して得たMS/MSスペクトルに重み付けを行い、その重み付けを考慮してマスピークの強度の値を加算又は平均し、その中で最大値を有するマスピークに対応するプロダクトイオンとそれに対応するプリカーサイオンの組を、前記目的成分に対するプリカーサイオンとプロダクトイオンの組として選択することを特徴とする請求項9に記載のMS/MS型質量分析装置用プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15485(P2013−15485A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149971(P2011−149971)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】