説明

N−(1−アルキル−2−フェニルエチル)−カルボキサミド誘導体と、それを殺真菌剤として利用する方法

一般式(I)の化合物(ただし置換基は請求項1に規定されている)は殺微生物剤として用いるのに適している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺微生物活性のあるエチルアミド、その中でも特に殺真菌活性のある新規なエチルアミドに関する。本発明はさらに、その化合物の調製に用いる中間体と、その化合物を含む組成物と、その化合物を農業または園芸で利用して植物への植物病原性微生物(真菌が好ましい)の感染を制御または防止する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
N-[2-(ピリジニル)エチル]カルボキサミド誘導体と、この誘導体を殺真菌剤として利用する方法が、WO 04/074280、WO 05/085238、WO 06/008193、WO 06/008194に記載されている。チアゾール-5-カルボン酸アミド誘導体と、この誘導体を殺微生物または病虫害制御剤として利用する方法が、ヨーロッパ特許第0-279-239号と日本国特開2001-342183に記載されている。ピラゾール-4-カルボン酸アミド誘導体と、この誘導体を病虫害制御剤として利用する方法が、日本国特開2001-342179に記載されている。同様の化合物も他の技術分野で知られており、例えばチアゾール-5-カルボン酸アミド誘導体を除草剤アンタゴニストとして利用する方法がヨーロッパ特許第0-335-831号に記載され、ピラゾールアミドとスルホンアミドを痛み治療薬として利用する方法がWO 03/037274に記載されている。
【発明の概要】
【0003】
新規なエチルアミドが殺微生物活性を有することが見いだされた。
【0004】
したがって本発明により、一般式(I)の化合物:
【化1】

と、その化合物の互変異性体/異性体/鏡像異性体が提供される。ただし一般式(I)において、
R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;
R1とR2が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わすか;
R3とR4が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(Ra)=N(ORb)のいずれかを表わし;
Raは、水素またはC1〜C6アルキルであり;
RbはC1〜C6アルキルであり;
AはA1
【化2】

(ただしこのA1において、
R16はハロゲンメチルであり;
R17は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R18は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA2
【化3】

(ただしこのA2において、
R26はハロゲンメチルであり;
R27は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA3
【化4】

(ただしこのA3において、
R36はハロゲンメチルであり;
R37は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R38は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA4
【化5】

(ただしこのA4において、
R46はハロゲンメチルであり;
R47は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1個以上の置換基R8で置換されており;
各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェノキシ(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、ピリジニルオキシ(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのRcは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRdは、互いに独立にC1〜C6アルキルであり;
それぞれのR9は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(Re)=N(ORf)のいずれかであり;
それぞれのReは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRfは、互いに独立にC1〜C6アルキルである。
【0005】
置換基の定義に現われるアルキル基は、直鎖または分岐鎖が可能であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-プロピル,n-ブチル、s-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチルなどがある。アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基は、ここに挙げたアルキル基から誘導される。アルケニル基とアルキニル基は、不飽和結合が1個または2個のものが可能である。
【0006】
置換基の定義に現われるシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルである。
【0007】
置換基の定義に現われるビシクロアルキル基は、環のサイズに応じ、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[4.2.2]デカン、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン、アダマンタンなどである。
【0008】
ハロゲンは、一般に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかであるが、その中でもフッ素、臭素、塩素が好ましい。これは、他の基と組み合わされたハロゲン(例えばハロゲンアルキルやハロゲンアルコキシ)にも当てはまる。
【0009】
ハロゲンアルキル基は、鎖の長さが炭素原子1〜4個であることが好ましい。ハロゲンアルキルは、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1-ジフルオロ-2,2,2-トリクロロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチルであるが、トリクロロメチル、ジフルオロクロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロフルオロメチルが好ましい。
【0010】
適切なハロゲンアルケニル基は、1個または複数個のハロゲンで置換されたアルケニル基であり、そのハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素であり、その中でも特にフッ素と塩素である。ハロゲンアルケニル基は、例えば、2,2-ジフルオロ-1-メチルビニル、3-フルオロプロペニル、3-クロロプロペニル、3-ブロモプロペニル、2,3,3-トリフルオロプロペニル、2,3,3-トリクロロプロペニル、4,4,4-トリフルオロブト-2-エン-1-イルである。
【0011】
適切なハロゲンアルキニル基は、例えば、1個または複数個のハロゲンで置換されたアルキニル基であり、そのハロゲンは、臭素、ヨウ素、フッ素、塩素であり、その中でも特にフッ素と塩素である。ハロゲンアルキニル基は、例えば、3-フルオロプロピニル、3-クロロプロピニル、3-ブロモプロピニル、3,3,3-トリフルオロプロピニル、4,4,4-トリフルオロブト-2-イン-1-イルである。
【0012】
アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシであるが、メトキシとエトキシが好ましい。ハロゲンアルコキシは、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2-トルフルオロエトキシ、1,1,2,2-テトラフルオロエトキシ、2-フルオロエトキシ、2-クロロエトキシ、2,2-ジフルオロエトキシ、2,2,2-トリクロロエトキシであるが、ジフルオロメトキシ、2-クロロエトキシ、トリフルオロメトキシが好ましい。アルキルチオは、例えば、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオであるが、メチルチオとエチルチオが好ましい。
【0013】
アルコキシアルキルは、例えば、メトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、エトキシエチル、n-プロポキシメチル、n-プロポキシエチル、イソプロポキシメチル、イソプロポキシエチルである。
【0014】
本発明の文脈では、置換基R1、R2、R3、R4、R8の定義における“1個以上の置換基で置換された”は、一般に、置換基R1、R2、R3、R4、R8の化学構造に応じ、1〜9回置換されていることを意味する。1〜5回置換されていることが好ましく、1回、または2回、または3回置換されていることがより好ましい。
【0015】
本発明の文脈では、置換基Bの定義における“1個以上の置換基で置換された”は、一般に、置換基Bの化学構造に応じ、1〜7回置換されていることを意味する。1〜5回置換されていることが好ましく、1回、または2回、または3回置換されていることがより好ましい。
【0016】
一般式(I)の化合物は、さまざまな互変異性体の形態で生成する可能性がある。例えば一般式(I)の化合物は、互変異性体の形態(II)と(III):
【化6】

で存在する。
【0017】
本発明には、このようなあらゆる互変異性体と、その混合物が含まれる。
【0018】
本発明により、一般式(I):
【化7】

において、
R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;
R1とR2が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わすか;
R3とR4が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(Ra)=N(ORb)のいずれかを表わし;
Raは、水素またはC1〜C6アルキルであり;
RbはC1〜C6アルキルであり;
AはA1
【化8】

(ただしこのA1において、
R16はハロゲンメチルであり;
R17は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R18は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA2
【化9】

(ただしこのA2において、
R26はハロゲンメチルであり;
R27は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA3
【化10】

(ただしこのA3において、
R36はハロゲンメチルであり;
R37は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R38は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA4
【化11】

(ただしこのA4において、
R46はハロゲンメチルであり;
R47は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1個以上の置換基R8で置換されており;
各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかであり;
それぞれのRcは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRdは、互いに独立にC1〜C6アルキルであり;
それぞれのR9は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(Re)=N(ORf)のいずれかであり;
それぞれのReは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRfは、互いに独立にC1〜C6アルキルである化合物と、その化合物の互変異性体/異性体/鏡像異性体が提供されることが好ましい。
【0019】
好ましい一群の化合物では、R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;R1とR2が合わさってC2アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わすか;R3とR4が合わさってC2アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わす。
【0020】
好ましい一群の化合物では、R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わすが; R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わすことが好ましく;R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかを表わすことが最も好ましい。
【0021】
好ましい一群の化合物では、R1は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R2は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R3は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R4は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかである。この実施態様で好ましいのは、R1が、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかであり;R2、R3、R4が、それぞれ独立に、水素とC1〜C6アルキルの中から選択されることである。この実施態様でより好ましいのは、R2とR4が水素になっていることである。一実施態様では、R2、R3、R4は水素である。別の一実施態様では、R1、R2、R3、R4は水素である。
【0022】
好ましい別の一群の化合物では、R3はハロゲンであり、そのハロゲンはフルオロであることが好ましい。
【0023】
好ましい別の一群の化合物では、R1とR2が合わさってアルキレン基になっている。
【0024】
好ましい一群の化合物では、R1は、C1〜C6アルキルまたはC1〜C6ハロアルキルである。さらに好ましい化合物では、R1は、C1〜C6アルキルである。さらに好ましい化合物では、R1は、C1〜C3アルキル、CF3、CF2Hのいずれかであり、さらに好ましいのはメチルである。
【0025】
さらに好ましい化合物では、R1はCF3である。
【0026】
さらに好ましい化合物では、R1はCF2Hである。
【0027】
さらに好ましい化合物では、R1はCFH2である。
【0028】
好ましい一群の化合物では、R1は、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わし;R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;R3とR4が合わさってC2アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)となる。
【0029】
さらに好ましい化合物では、R1は、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わすが;R1は、ハロゲンまたはC1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)を表わすことがより好ましく;R1は、ハロゲンまたはC1〜C6アルキルを表わすことが最も好ましく;
R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わすが;R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わすことがより好ましく;R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかを表わすことが最も好ましい。
【0030】
さらに好ましい化合物では、R1は、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R2は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R3は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかであり;R4は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6アルコキシ-C1〜C6アルキルのいずれかである。
【0031】
この実施態様では、R1は、ハロゲンまたはC1〜C6アルキルであり(C1〜C6アルキルがはるかに好ましい);R2、R3、R4は、互いに独立に、水素とC1〜C6アルキルの中から選択される。この実施態様では、R2とR4は水素であることがより好ましい。一実施態様では、R2、R3、R4は水素である。別の一実施態様では、R1はC1〜C6アルキルであり(メチルが好ましい)、R2、R3、R4は水素である。
【0032】
好ましい別の一群の化合物では、R3はハロゲンである。
【0033】
好ましい一群の化合物では、AはA1である。
【0034】
好ましい別の一群の化合物では、AはA2である。
【0035】
好ましい別の一群の化合物では、AはA3である。
【0036】
好ましい別の一群の化合物では、AはA4である。
【0037】
特に好ましい一群の化合物では、AはA1であり、R18は水素である。特に好ましい別の一群の化合物では、AはA1であり、R16はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R17はC1〜C4アルキルであり;R18は水素またはハロゲンである(水素が好ましい)。
【0038】
さらに好ましいのは、AがA1であり、R1がC1〜C6アルキルである化合物である。
【0039】
特に好ましい別の一群の化合物では、AはA2であり、R26はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R27はC1〜C4アルキルである。
【0040】
特に好ましいさらに別の一群の化合物では、AはA3であり、R36はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R37はC1〜C4アルキルであり;R38は水素またはハロゲンである。
【0041】
特に好ましいさらに別の一群の化合物では、AはA4であり、R46はハロメチルであり、CF3、CF2H、CFH2の中から選択されることが好ましく;R47はC1〜C4アルキルである。
【0042】
本発明の一実施態様は、一般式(I)において、Bが、1個以上の置換基R8で置換されたフェニル基である化合物である。
【0043】
この実施態様では、Bは、1〜3個の置換基R8で置換されたフェニル基である。Bは、1個または2個の置換基R8で置換されたフェニル基であることが好ましい。
【0044】
Bは、パラ位が少なくとも1個の置換基R8で置換されたフェニル基であることも好ましい。
【0045】
好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わす。
【0046】
好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わす。
【0047】
好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わす。
【0048】
好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わす。
【0049】
好ましい一群の化合物では、BはB1
【化12】

である(ただし、
R18aは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;R18bは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;R18cは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;R18dは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;R18eは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;しかもR18a、R18b、R18c、R18d、R18eのうちの少なくとも1つは水素ではない)。
【0050】
本発明の一実施態様では、R18bとR18dは水素であり;R18a、R18c、R18eは、互いに独立に、水素、ハロゲン、シアノ、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、ハロゲンで置換されたフェニルのいずれかであり;しかもR18a、R18c、R18eのうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0051】
本発明の一実施態様では、R18bとR18dは水素であり;しかもR18a、R18c、R18eは、互いに独立に、水素、ハロゲン、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキルのいずれかであり;R18a、R18c、R18eのうちの少なくとも1つは水素ではない。
【0052】
本発明の一実施態様では、R18bとR18dは水素であり;R18aとR18cは、互いに独立に、ハロゲン、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキルのいずれかであり(ハロゲンであることが好ましく、クロロであることがより好ましい);R18eは、水素、ハロゲン、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキルの中から選択される(水素とハロゲンの中から選択されることが好ましく、水素とクロロの中から選択されることがより好ましい)。
【0053】
さらに好ましいのは、AがA1であり、R1がC1〜C6アルキルであり、BがB1である化合物である。
【0054】
本発明の別の一実施態様は、Bが、1個以上の置換基R8で置換されたナフチル基またはキノリニル基である化合物である。
【0055】
本発明の別の一実施態様は、Bが、1個以上の置換基R8で置換されたナフチル基である化合物である。
【0056】
この実施態様では、Bは、1個または2個の置換基R8で置換されたナフチル基であることが好ましい。この実施態様における好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかを表わす。
【0057】
本発明の別の一実施態様は、Bが1個または2個の置換基R8で置換されたキノリニル基である化合物によって表わされる。この実施態様における好ましい一群の化合物では、各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかを表わす。
【0058】
一般式(I)の化合物は、溶媒(例えばジエチルエーテル、TBME、THF、ジクロロメタン、クロロホルム、DMF、NMP)の中で、塩基(例えばトリエチルアミン、ヒューニッヒ塩基、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ピリジン、キノリン)の存在下にて、一般式(II)の化合物:
【化13】

(ただしB、R1、R2、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じものである)を、一般式(IIIA)の化合物:
A-C(=O)-R* (IIIA)
(ただし、Aは一般式(I)で定義したのと同じものであり、R*は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1〜6アルコキシのいずれかであり、クロロが好ましい)と10分間〜48時間(12〜24時間が好ましい)にわたって0℃〜還流温度(20〜25℃が好ましい)にて反応させることによって調製できる。
【0059】
R*がヒドロキシである場合には、カップリング剤(例えばヘキサフルオロリン酸ベンゾトリアゾル-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム、ビス-(2-オキソ-3-オキサゾリジニル)-ホスホン酸クロリド(BOP-Cl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’-カルボニル-ジイミダゾール(CDI))を用いることができる。
【0060】
一般式(II)の中間体:
【化14】

(ただしB、R1、R2、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じものである)のうちのいくつかは新規であり、一般式(I)の化合物を調製するために特別に開発された。したがって一般式(II)のそのような中間体も本発明の主題の一部である。一般式(II)の好ましい一群の化合物では、R3はハロゲンであり、B、R1、R2、R4は、一般式(I)で定義したのと同じものである。
【0061】
一般式(II)の別の好ましい一群の化合物では、R1とR2が合わさってC2〜C5アルキレン基となり、B、R3、R4は、一般式(I)で定義したのと同じものである。
【0062】
一般式(II)の中間体(ただしB、R1、R2、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じものである)は、以下の反応スキーム(スキーム1〜11)に従って調製すること、またはこれら反応スキームと同様の方法で調製することができる。
【0063】
一般式(IIb)の中間体:
【化15】

(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じものであり、R1は、水素であるか、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている(中間体(II)においてR2、R3、R4が水素であるもの)は、反応スキーム1によって調製できる。
【0064】
スキーム1:
【0065】
【化16】

【0066】
一般式(III)のニトロアルケン(ただしBとR1は一般式(IIb)で定義したのと同じものである)は、一般式(V)のニトロアルカン(ただしR1は一般式(IIb)で定義したのと同じものである)を、一般式(VI)のカルボニル化合物(ただしBは一般式(IIb)で定義したのと同じものである)と、(a)Baer, H.H.、Urbas., L、『ニトロ基とニトロソ基の化学』(Feuer, H.編、インターサイエンス社、ニューヨーク、1970年)、第2巻、75〜20ページ;(b)Schickh, G.、Apel, H.G.、『有機化学の方法』(ホウベン-ヴァイル社、シュツッツガルト、1971年)、第10/1巻、9〜462ページ;(c)Kabalka, G.W.、Varma, R.s.、Org. Prep. Proc. Int.、1987年、283〜328ページ;(d)Luzzio, F.A.、Tetrahedron、2001年、第57巻、915〜945ページのいずれかに従ってヘンリー反応(ニトロアルドール反応)させた後、得られる一般式(IV)の2-ニトロアルコール中間体(ただしBとR1は一般式(IIb)で定義したのと同じものである)の脱水ステップを実施することによって調製できる。そのような脱水ステップは、例えばOrg. Synthesis Coll.、第1巻、413ページ、1941年に記載されている。ここで述べた反応群は、適切なプロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の中で0〜80℃の温度で実施されるが、溶媒なしの条件でも実施される。文献に記載されている適切な塩基として、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシド、第四級アンモニウム塩などがある。ニトロアルケン(III)の還元は、水素化アルミニウムリチウムをエーテル溶媒(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)の中で用いることによって、またはラネー・ニッケルや貴金属触媒上での触媒による還元によって実現することができる。この反応は、20〜80℃の温度で実施される。
【0067】
一般式(IIc)の中間体:
【化17】

(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じものであり、R1は、水素であるか、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されており、R3は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)と、一般式(IId)の中間体:
【化18】

(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じものであり、R1は、水素であるか、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されており、R3とR4は、互いに独立に、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)は、反応スキーム2によって調製できる。
【0068】
スキーム2:
【0069】
【化19】

【0070】
一般式(III)のニトロアルケン(ただしBとR1は一般式(IIb)で定義したのと同じであり、スキーム1に従って調製することができる)を鉄と塩酸で還元して一般式(IX)のオキシム(ただしBとR1は一般式(IIb)で定義したのと同じである)にすることができる。例えばM. KulkaとH. Hibbert、J. Am. Chem. Soc.、第65巻、1180ページ、1943年やPrasun K. Pradhan他、Synthetic Commun.、第35巻、913〜922ページ、2005年に記載されているようにしてこのオキシムを加水分解して一般式(VIIIb)のケトン(ただしBとR1は一般式(IIb)で定義したのと同じである)にすることができる。この反応は、適切な有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、t-ブタノール、トリフルオロエタノール、ジオキサン)の中で40〜100℃の温度で実施される。
【0071】
塩基の存在下で化合物R3-X(ただしR3は一般式(IIc)で定義したのと同じものであり、Xは離脱基(例えばハロゲン、メシラート、トシラート)である)を用いて一般式(VIIIb)のケトンをアルキル化すると、一般式(VIIIc)のαアルキル化されたケトン(ただしB、R1、R3は一般式(IIc)で定義したのと同じである)が得られる。R4-X(ただしR4は一般式(IId)で定義したのと同じものであり、Xは離脱基(例えばハロゲン、メシラート、トシラート)である)を用いて一般式(VIIIb)のケトンをさらにアルキル化すると、一般式(VIIId)のα,α-ビスアルキル化ケトン(ただしB、R1、R3、R4は一般式(IIc)で定義したのと同じである)が得られる。これらの反応は、不活性な非プロトン性有機溶媒の中で実施することが望ましい。そのような溶媒は、炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン)である。反応温度は-20℃〜+120℃である。適切な塩基は、無機塩基である例えば水素化物(水素化ナトリウム、水素化カルシウムなど)だが、水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど)、炭酸水素塩(炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなど)も塩基として使用できる。これらの塩基は、そのままで使用すること、または触媒量の相間移動触媒(例えばクラウンエーテル(その中でも特に18-クラウン-6)やテトラアルキルアンモニウム塩)とともに使用することができる。
【0072】
ギ酸の存在下でホルムアミドを用いた一般式(VIIIb)、(VIIIc)、(VIIId)のケトンの還元性ロイカルト・アミノ化反応により、一般式(VIIb)、(VIIc)、(VIId)のN-ホルミル-2-アリールエチルアミン(ただしB、R1、R3、R4は一般式(IId)で定義したのと同じである)が得られる。反応温度は120℃〜220℃であることが望ましい。Cp*Rh(III)錯体触媒(例えば[RhCp*Cl2]2)は、50〜70℃でホルムアミドを用いてケトンの還元的アミノ化を行なう際の触媒となる。Masato Kitamura他、J. Org. Chem.、2002年、第67巻、8685〜8687ページを参照のこと。
【0073】
一般式(VIIb)、(VIIc)、(VIId)のN-ホルミル-2-アリールエチルアミンを酸性(濃HCl)条件または塩基性(10%NaOH水溶液)条件のもとで還流温度にて加水分解して一般式(IIb)、(IIc)、(IId)のアミンにすることができる。
【0074】
一般式(IIe)の中間体:
【化20】

(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じであり、R1は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されており、R4は、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されており、R3は、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニルのいずれかであり、これらはすべて、置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)は、反応スキーム3によって調製できる。
【0075】
スキーム3:
【0076】
【化21】

【0077】
一般式(VIIIe)のケトン(ただしB、R1、R3、R4は一般式(IIe)で定義したのと同じである)の合成は、ハロゲン化物(例えばR4-Br(ただしR4は一般式(IIe)で定義したのと同じである))を用いて一般式(XIII)の酢酸アリール誘導体(ただしBとR3は一般式(IIe)で定義したのと同じである)をアルキル化して一般式(XII)のα,α-ビスアルキル化酢酸アリール(ただしB、R3、R4は一般式(IIe)で定義したのと同じである)を得ることによって実現できる。一般式(XII)の化合物は水酸化物(例えばLiOH)によって加水分解される。得られる一般式(XI)の酸(ただしB、R3、R4は一般式(IIe)で定義したのと同じである)を今度は対応する塩化アシルに変換し、次いでこの塩化アシルをその場でN,O-ジメチルヒドロキシルアミンと反応させて一般式(X)のワインレブ・アミド(ただしB、R3、R4は一般式(IIe)で定義したのと同じである)を得る。その後、一般式R1-MgBrのグリニャール試薬(ただしR1は一般式(IIe)で定義したのと同じである)との反応により、一般式(VIIIe)のケトンが得られる。このケトンは、スキーム2で説明した反応によって一般式(IIe)の化合物に変換することができる。
【0078】
一般式(IIf)の中間体:
【化22】

(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)は、反応スキーム4、5、6のいずれかによって調製できる。
【0079】
スキーム4:
【0080】
【化23】

【0081】
ホウ水素化物を用いて一般式(XVIII)のケトン(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)を還元し、一般式(XVII)のアルコール(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)を得ることができる。そのアルコールをメタンスルホニルクロリドと反応させると一般式(XVI)のメシラート(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)が得られ、それをナトリウムアジドと反応させると一般式(XV)のアジド(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)が形成される。そのアジドを水素と金属触媒とBoc-無水物の存在下で還元すると、一般式(XIV)のアシル化されたアミン(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)が得られる。Boc基は強酸(例えばHCl)の存在下で容易に除去することができ、一般式(IIf)のアミンが得られる。
【0082】
スキーム5:
【0083】
【化24】

【0084】
一般式(XIX)のフタルイミド(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)は、一般式(XVII)のアルコール(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)から、光延条件下で直接合成すること、または一般式(XVI)のメシラート(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)を経由して合成することができる。次に、一般式(XIX)のフタルイミドを分解して対応する一般式(IIf)のアミンにすることができる。一般式(XVII)のアルコールは、スキーム4に記載したようにして一般式(VIII)のケトンから調製することができる。
【0085】
スキーム6:
【0086】
【化25】

【0087】
一般式(XVIII)のケトンをヒドロキシルアミンと反応させて一般式(XXII)のオキシム(ただしB、R1、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)を形成し、次いでそれを水素化アルミニウムリチウムと反応させて一般式(IIf)のアミンにすることができる。
【0088】
一般式(IIg)の中間体:
【化26】

(ただしBとR4は一般式(I)で定義したのと同じである)は、反応スキーム7によって調製できる。
【0089】
スキーム7:
【0090】
【化27】

【0091】
一般式(XXIII)の2-フルオロフェニルアセトニトリル(ただしBとR4は一般式(I)で定義したのと同じである)は対応する一般式(IIg)の2-フルオロ-2-フェネチルアミンに変換することができる。一般式(XXIII)のその中間体は、一般式(XXV)のカルボニル化合物(ただしBとR4は一般式(I)で定義したのと同じである)から対応する一般式(XXIV)のシアノヒドリントリメチルシリルエーテル(ただしBとR4は一般式(I)で定義したのと同じである)を経由し、例えばTetrahedron Letters、第25巻、46号、5227〜5230ページ、1984年に記載されているようにしてその対応する一般式(XXIV)のシアノヒドリントリメチルシリルエーテルをジクロロメタンの中で三フッ化ジエチルアミノイオウ(DAST)で処理することによって調製できる。
【0092】
一般式(IIh)の中間体:
【化28】

(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)は、反応スキーム8、9、10のいずれかによって調製できる。
【0093】
スキーム8:
【0094】
【化29】

【0095】
一般式(XXVI)のアジリジン(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)の環をオラー試薬によって開かせると、一般式(IIh)のアミンが得られる。その反応条件は、例えばTetrahedron Letters、第35巻、3247〜3250ページ、1978年に記載されている。
【0096】
スキーム9:
【0097】
【化30】

【0098】
一般式(XXVIII)のアルケン(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)をトリエチルアミントリス-ヒドロフルオリドの存在下でハロフッ化すると、対応する一般式(XXVII)の中間体(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)が得られる。この一般式(XXVII)の中間体は、当業者に知られている合成法を利用することにより、一般式(IIh)のアミンの前駆体として用いることができる。
【0099】
スキーム10:
【0100】
【化31】

【0101】
スキーム1で説明した一般式(IV)の2-ニトロアルコール(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)を室温にてジクロロメタンの中でDASTを用いて処理することによって一般式(XXIX)のフルオロ-ニトロ化合物(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じである)を調製し、それを標準的な反応条件下で還元して一般式(IIh)の化合物にすることができる。
【0102】
一般式(IIi)の中間体:
【化32】

(ただしB、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じであり、R’は、水素またはC1〜C6アルキルである)は、反応スキーム11によって調製できる。
【0103】
スキーム11:
【0104】
【化33】

【0105】
一般式(XXXIV)のニトリル(ただしB、R3、R4は一般式(I)で定義したのと同じである)を、Ti(II)を媒介として一般式(XXXIII)のグリニャール試薬(ただしR’は、水素またはC1〜C6アルキルである)とカップリングをさせると、一般式(IIi)のシクロプロピルアミンが得られる。この反応の反応条件は、例えばP. Bertus、J. Szymoniak、J. Org. Chem.、2002年、第67巻、3695〜3968ページとヨーロッパ特許第1-595-873号に記載されている。
【0106】
一般式(I)のさらに別のあらゆる化合物(ただしA、B、R1、R2、R3、R4は上記のように定義されている)を調製するには、公知になっている多数の適切な標準的方法がある(例えばアルキル化、ハロゲン化、アシル化、アミド化、オキシム化、酸化、還元)。適切な調製法の選択は、中間体に含まれる置換基の性質(反応性)による。
【0107】
一般式(IIIA)の化合物は公知であり、そのうちのいくつかは市場で入手することができる。この化合物は、例えばWO 00/09482、WO 02/38542、WO 04/018438、ヨーロッパ特許第0-589-301号、WO 93/11117、Arch. Pharm. Res.、2000年、第23巻(4)、315から323ページに記載されているのと同様にして調製することができる。
【0108】
一般式(II)の化合物のうちのいくつかは公知であり、市場で入手すること、または上記の参考文献や従来技術で知られている方法に従って調製することができる。
【0109】
一般式(V)、(VI)、(R3-X)、(R4-X)、(XIII)、(R1-MgBr)、(R4-Br)、(XVIII)、(XXV)、(XXVI)、(XXVIII)、(XXXI)、(XXXII)、(XXXIII)、(XXXIV)の化合物は公知であり、市場で入手すること、または上記の参考文献や従来技術で知られている方法に従って調製することができる。
【0110】
一般式(I)の化合物に至る反応は、不活性な非プロトン性有機溶媒の中で実施することが望ましい。そのような溶媒は、炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン)、塩素化炭化水素(例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロベンゼン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ニトリル(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン)である。反応温度は-20℃〜+120℃であることが望ましい。一般に、反応はわずかに発熱性であり、原則として室温で実施することができる。反応時間を短縮するため、または反応を開始させるため、混合物をその反応混合物の沸点まで短時間加熱するとよい。反応時間は、数滴の塩基を反応触媒として添加することによっても短くできる。適切な塩基は、特に、第三級アミン(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン)である。しかし無機塩基である水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カルシウム)、水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、炭酸水素塩(例えば炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)も塩基として使用できる。これらの塩基は、そのままで、または触媒量の相間移動触媒(例えばクラウンエーテル(その中でも特に18-クラウン-6)やテトラアルキルアンモニウム塩)とともに使用することができる。
【0111】
一般式(I)の化合物は、濃縮および/または溶媒の蒸発によって分離した後、得られた固形残留物を、その固形残留物が容易に溶けない溶媒(例えばエーテル、芳香族炭化水素、塩素化炭化水素)の中で再結晶させること、または研和することによって精製するという一般的な方法で分離することができる。
【0112】
一般式(I)の化合物と、適切な場合のその互変異性体は、分子内に存在する不斉炭素原子の数、絶対配置、相対配置に応じ、および/または分子内に存在する非芳香族二重結合の配置に応じ、可能な異性体のうちの1つの形態で、またはそれらの混合物として存在することができる。例えば純粋な異性体(対掌体および/またはジアステレオマーなど)の形態で、または異性体混合物(鏡像異性体混合物(例えばラセミ化合物)、ジアステレオマー混合物、ラセミ化合物混合物)として存在できる。本発明は、純粋な異性体に関するとともに、可能なあらゆる異性体混合物にも関する。したがって本発明は、それぞれの場合に立体化学の詳細について言及されていないときでさえ、それぞれの場合に上記の意味と後述する意味で理解されるべきである。
【0113】
どのような出発材料と方法を選択したかに応じて得られる一般式(I)の化合物のジアステレオ異性体混合物またはラセミ化合物混合物は、諸成分の物理化学的違いに基づき、公知の手段(例えば分別結晶、および/または蒸溜、および/またはクロマトグラフィ)で純粋なジアステレオマーまたはラセミ化合物に分離することができる。
【0114】
同様の手段によって得られる鏡像異性体混合物(例えばラセミ化合物)は、公知の方法で光学的対掌体に分割することができる。例えば、光学活性な溶媒からの再結晶化による方法、キラル吸着体上のクロマトグラフィ(例えばアセチルセルロース上の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC))による方法、適切な微生物の助けを借りる方法、固定化された特定の酵素を用いた切断による方法、封入化合物の形成(例えばキラルなクラウンエーテルの使用)を通じた方法(この場合、1つの鏡像異性体だけが錯体化される)、ジアステレオマー塩への変換による方法(例えば塩基性最終生成物であるラセミ化合物を光学活性のある酸(カルボン酸(例えばショウノウ酸、酒石酸、リンゴ酸)やスルホン酸(例えばショウノウスルホン酸)など)と反応させ、このようにして得られるジアステレオマー混合物を、例えば溶解度の違いに基づいて分別結晶により分離してジアステレオマーを取得し、そこから適切な試薬(例えば塩基性試薬)の作用によって望む鏡像異性体を遊離させる方法)がある。
【0115】
純粋なジアステレオマーまたは鏡像異性体は、本発明に従い、適切な異性体混合物を分離することによってだけでなく、一般に知られているジアステレオ選択合成法または鏡像異性選択合成法(例えば適切な立体化学の出発材料を用いて本発明の方法を実施すること)によっても得ることができる。
【0116】
個々の成分が異なる生物活性を持つのであれば、それぞれの場合に生物学的により有効な異性体(例えば鏡像異性体またはジアステレオマー)または異性体混合物(例えば鏡像異性体混合物またはジアステレオマー混合物)を分離または合成することが望ましい。
【0117】
化合物(I)と、適切な場合のその互変異性体は、水和物の形態で得ること、および/または他の溶媒(例えば固体形態で存在する化合物の結晶化に使用できたであろう溶媒)を含むこともできる。
【0118】
本発明による一般式(I)の化合物は、実際的な目的において、植物病原性微生物(例えば真菌、細菌、ウイルス)によって起こる病気から有用な植物を保護する非常に有利な活性スペクトルを有することが見いだされた。
【0119】
本発明は、植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、一般式(I)の化合物を、活性成分として、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法に関する。本発明による一般式(I)の化合物は、少ない散布量で優れた活性を示すとともに、植物によってよく許容され、環境にとって安全であることを特徴とする。この化合物は、非常に有用な治療特性、予防特性、全身特性を持つため、多数の有用な植物を保護するのに用いられる。一般式(I)の化合物は、有用なさまざまな作物またはその部分(果実、花、葉、茎、塊茎、根)に発生する病気を抑制する、またはなくすと同時に、あとから成長するこうした部分を例えば植物病原性微生物から保護するのに使用できる。
【0120】
一般式(I)の化合物をドレッシング剤として用い、植物増殖材料(特に種子(果実、塊茎、穀粒))や植物の差し穂(例えばイネ)を処理したり、真菌の感染や土中に発生する植物病原性真菌から保護したりすることもできる。
【0121】
さらに、本発明による一般式(I)の化合物は、関連する分野(例えば工業材料(木や、木に関係する工業材料)の保護、食物の保管、衛生管理)で真菌を制御するのに使用することができる。
【0122】
一般式(I)の化合物は、例えば、以下のクラスの植物病原性真菌に対して有効である:不完全菌類(例えばボトリチス、ピリクラリア、ヘルミントスポリウム、フザリウム、セプトリア、ケルコスポラ、アルテルナリア)、担子菌類(例えばリゾクトニア、ヘミレイア、プクキニア)。さらに、この化合物は、子嚢菌類(例えばベンチュリア、エリシフェ、ポドスフェラ、モニリニア、ウンキヌラ)と卵菌類(例えばフィトフトラ、ピチウム、プラスモパラ)に対しても有効である。著しい活性が、うどん粉病菌(ウンキヌラ・ネカトール)に対して観察されている。さらに、一般式(I)の新規な化合物は、植物病原性細菌とウイルス(例えばキサントモナス属、シュードモナス属、エルウィニア・アミロボラ、タバコモザイクウイルス)に対しても有効である。優れた活性がアジアダイズさび病菌(ファコプソラ・パキリジ)に対して観察されている。
【0123】
本発明の範囲では、保護すべき有用な植物の典型例として、以下の植物種がある:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、モロコシ、ならびに関連する種);ビート(サトウダイコン、飼料ビート);梨果、核果、小果実(例えばリンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ類(インゲンマメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油性植物(セイヨウアブラナ、カラシ、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマ、カカオマメ、ピーナツ);ウリ科植物(カボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(ワタ、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ミカン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、ショウノウ)や;タバコ、ナッツ、コーヒー、ナス、サトウキビ、茶、コショウ、ブドウの木、ホップ、バナナ、天然ゴムの木、装飾植物。
【0124】
“有用な植物”という用語には、育種または遺伝子工学の従来法を用いた結果として除草剤(例えばブロモキシニル)やさまざまなクラスの除草剤(例えばHPPD阻害剤、ALS阻害(例えばプリミスルフロン、プロスルフロン、トリフロキシスルフロン)、EPSPS(5-エノール-ピロビル-シキメート-3-ホスフェート-シンターゼ)阻害剤、GS(グルタミンシンテターゼ)阻害剤、PPO(プロトポルフィリノーゲン-オキシダーゼ)阻害剤)に対して寛容にされた有用な植物も含まれるものとする。従来の育種法(突然変異誘発)によってイミダゾリノン(例えばイマザモクス)に対して寛容にされた作物の一例は、クリアフィールド(登録商標)サマーレイプ(カノラ)である。遺伝子工学の方法によって除草剤やさまざまなクラスの除草剤に対して寛容にされた作物の例としてグリホサート耐性トウモロコシとグルホシネート耐性トウモロコシのさまざまな品種があり、ラウンドアップレディ(登録商標)、ハーキュレックスI(登録商標)、リバティリンク(登録商標)の商標名で市販されている。
【0125】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的に作用する1種類以上の毒素(例えば毒素産生細菌、特にバシラス属の細菌からの毒素)を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。
【0126】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的な作用を有する抗病原物質(例えばいわゆる“病原関連タンパク質”(PRP、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225を参照のこと))を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。そのような抗病原物質と、そのような抗病原物質を合成できるトランスジェニック植物は、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225、WO 95/33818、ヨーロッパ特許公開EP-A-0 353 191によって公知である。そのようなトランスジェニック植物の生産方法は当業者に広く知られており、例えば上記の公開公報に記載されている。
【0127】
この明細書では、有用な植物の“場所”という用語に、有用な植物の植物増殖材料を播くか土の中に移すかした結果としてその有用な植物が成長している場所が含まれるものとする。そのような場所の一例は、作物が成長している畑である。
【0128】
“植物増殖材料”という用語は、植物のうちでその植物を増やすのに使用できる生殖部分(例えば種子)や、生長材料(差し穂や塊茎(例えばジャガイモ))を意味するものとする。例として、(厳密な意味での)種子、根、果実、塊茎、球根、地下茎、植物のいろいろな部分などが挙げられよう。発芽した植物と、発芽後または土から芽を出した後に移植されることになる若い植物も挙げられる。若い植物は、移植する前に全体または一部を浸漬処理して保護するとよい。“植物増殖材料”は、種子を表わすことが好ましい。
【0129】
一般式(I)の化合物は、そのままの形態で使用できるが、従来の製剤で一般に用いられている基剤およびアジュバントとともに使用するほうが好ましい。
【0130】
したがって本発明は、植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物に関するとともに、有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法にも関する。
【0131】
この目的を実現するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤は、通常は、公知の方法で、乳化可能な濃縮液、被覆可能なペースト、直接スプレーできる溶液、希釈できる溶液、希釈したエマルジョン、湿潤化可能な粉末、可溶性粉末、ダスト、顆粒、カプセル(例えばポリマー物質の中に封入される)にされる。組成物のタイプと同様、散布法(例えばスプレー、噴霧、散布、ばらまき、被覆、注入)を目的と周囲環境に合わせて選択する。組成物は、さらに別のアジュバント(例えば安定剤、発泡防止剤、粘性調節剤、結合剤、粘着付与剤、肥料、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物)を含むこともできる。
【0132】
適切な基剤とアジュバントは固体でも液体でもよく、それは製剤化技術において有用な物質(天然尾無機物質、再生された無機物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、肥料)である。このような基剤は、例えばWO 97/33890に記載されている。
【0133】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物は、別の化合物と同時に、または順番に、植物が生えている場所、または処理する植物に散布することができる。その別の化合物として、例えば肥料や、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物が可能である。その別の化合物は、選択的除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺線虫剤、殺陸貝剤でもよく、望むのであれば、これら調製物のうちのいくつかと、従来の製剤で一般に用いられている基剤、界面活性剤、付着促進アジュバントとの混合物であってもよい。
【0134】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を散布する好ましい1つの方法は、葉に付着させるというものである。付着させる頻度と付着量は、対応する病原菌の感染リスクによって異なる。しかし一般式(I)の化合物は、植物が生えている場所に液体製剤を散布することによって、またはその化合物を固体形態(例えば顆粒の形態)で土に散布すること(土への散布)によって、土から根を通して植物に浸透させること(全身作用)もできる。水田栽培のイネでは、そのような顆粒を水田に散布することができる。一般式(I)の化合物は、この殺真菌剤の液体製剤の中に種子または塊茎を浸すことによって、または固体製剤を種子または塊茎に被覆することによって付着させること(被覆)もできる。
【0135】
製剤、すなわち一般式(I)の化合物と、望むのであれば固体または液体のアジュバントとを含む組成物は、公知の方法で調製される。典型的には、その混合物を増量剤(例えば溶媒、固体基剤や、場合によっては界面活性化合物(界面活性剤))とともに混合および/または粉砕する。
【0136】
農業用製剤は、通常は、0.1〜99重量%(0.1〜95重量%が好ましい)の一般式(I)の化合物と、99.9〜1重量%(99.8〜5重量%が好ましい)の固体または液体のアジュバントと、0〜25重量%(0.1〜25重量%が好ましい)の界面活性剤を含んでいる。
【0137】
市販の製品は濃縮液にすることが好ましいが、エンド・ユーザーは、通常は希釈した製剤を使用することになる。
【0138】
望ましい散布量は、通常は、1ヘクタール(ha)につき活性成分(a.i.)が5g〜2kgである。この量は、10g〜1kg a.i./haであることが好ましく、20g〜600g a.i./haであることが最も好ましい。種子浸漬剤として用いる場合には、好ましい付着量は、種子1kgにつき活性物質が10mg〜1gである。望む作用を得るための付着量は実験によって決定できる。その量は、例えば作用のタイプ、有用な植物の成長段階、散布(場所、時期、付着法)に依存し、これらのパラメータのために広い範囲で異なる可能性がある。
【0139】
驚くべきことに、一般式(I)の化合物は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護したり、植物病原性生物に感染した有用な作物を治療したりする方法でも利用できることが見いだされた。この方法は、グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の組み合わせを、植物(ただしこの植物はグリホサートに対する抵抗力があるか、グリホサートに敏感である)またはその植物が生えている場所に散布する操作を含んでいる。
【0140】
この方法により、グリホサートなしで一般式(I)の化合物を用いる場合と比べて病気の制御を予想以上に改善することができる。この方法は、一般式(I)の化合物による病気の制御を促進する上で有効である。グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の混合物は、一般式(I)の化合物によって少なくとも部分的に制御される病気のスペクトルを広げることができるが、一般式(I)の化合物によってある程度制御されることがすでに知られている病気に対する一般式(I)の化合物の活性の増大も、観察される効果である。
【0141】
本発明の方法は、菌類界、担子菌門、サビキン綱、サビキン亜綱、サビキン目の植物病原性生物(一般にサビキンと呼ばれる)に対して特に有効である。農業に特に大きな影響のあるサビキンとして、ファコプソラ科のもの(特にファコプソラ属のもので、例えばファコプソラ・パキリジ(アジアダイズさび病菌とも呼ばれる))とプクキニア科のもの(特にプクキニア属のもので、例えば穀類で問題のある病気を起こすプクキニア・グラミニス(茎さび病菌または黒さび病菌としても知られる)や、プクキニア・レコンディタ(赤さび病菌としても知られる))がある。
【0142】
この方法の一実施態様は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護する方法および/または植物病原性生物に感染した有用な作物を治療する方法であり、この方法は、グリホサート(その塩やエステルも含む)と、その植物病原性生物に対する活性を有する一般式(I)の少なくとも1種類の化合物を、植物、その植物の一部、その植物が生えている場所に同時に散布する操作を含んでいる。
【0143】
驚くべきことに、上記の一般式(I)の化合物またはその薬理学的な塩は、動物における微生物感染症の治療および/または予防にとって望ましい活性スペクトルも有することが見いだされた。
【0144】
“動物”は任意の動物が可能であり、例えば、昆虫、哺乳動物、爬虫類、魚類、両生類などが挙げられる。しかしその中で哺乳動物が好ましく、ヒトが最も好ましい。“治療”は、微生物に感染した動物に使用して、その感染の増大または広がりを減らす、または遅延させる、または停止させること、またはその感染を減らすこと、またはその感染から治癒させることを意味する。“予防”は、微生物に感染した明らかな徴候のない動物に使用して、将来のあらゆる感染を防ぐこと、または将来の感染の増大または広がりを減らしたり遅延させたりすることを意味する。
【0145】
本発明によれば、一般式(I)の化合物を用いて動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用する薬の製造方法が提供される。一般式(I)の化合物を医薬として用いる方法も提供される。動物の治療において一般式(I)の化合物を抗微生物剤として用いる方法も提供される。本発明によれば、活性成分としての一般式(I)の化合物またはその薬理学的に許容可能な塩と、薬理学的に許容可能な希釈剤または基剤とを含む医薬組成物も提供される。この組成物は、動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用することができる。この医薬組成物は、経口投与に適した形態(例えば錠剤、ロゼンジ、硬質カプセル、水性懸濁液、油性懸濁液、エマルジョン、分散可能な粉末、分散可能な顆粒、シロップ、エリキシル)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、局所塗布に適した形態(例えばスプレー、クリーム、ローション)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、非経口投与に適した形態(例えば注射液)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、吸入可能な形態(例えばエーロゾル・スプレー)にすることができる。
【0146】
一般式(I)の化合物は、動物に微生物感染症を起こすさまざまな微生物種に対して有効である。そのような微生物種の例は、アスペルギルス症を起こす微生物(例えばアスペルギルス・フミガトゥス、アスペルギルス・フラブス、アスペルギルス・テルス、アスペルギルス・ニドゥランス、アスペルギルス・ニゲール)、ブラトミセス症を起こす微生物(例えばブラトミセス・デルマティティディス)、カンディダ症を起こす微生物(例えばカンディダ・アルビカンス、カンディダ・グラブラタ、カンディダ・トロピカリス、カンディダ・パラプシロシス、カンディダ・クルセイ、カンディダ・ルシタニエ)、コクシジオイデス症を起こす微生物(例えばコクシジオイデス・イミティス)、クリプトコッカス症を起こす微生物(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス)、ヒストプラズマ症を起こす微生物(例えばヒストプラズマ・カプスラトゥム)、接合菌症を起こす微生物(例えばアブシディア・コリムビフェラ、リゾムーコル・プシルス、リゾプス・アリズス)である。別の例は、フザリウム属(例えばフザリウム・オキシスポルム、フザリウム・ソラニ)、セドスポリウム属(例えばセドスポリウム・アピオスペルムム、セドスポリウム・プロリフィカンス)である。さらに別の例は、ミクロスポルム属、トリコフィトン属、エピデルモフィトン属、ムーコル属、スポロトリックス属、フィアロフォラ属、クラドスポリウム属、ペトリエリジウム属、パラコクシジオイデス属、ヒストプラズマ属である。
【0147】
例示としての以下の実施例において、上に説明した本発明をより詳しく説明するが、本発明がこの説明に限定されることはない。
【0148】
調製の実施例:
【0149】
実施例P1:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-エチル]-アミド(化合物番号1.001)の調製
【0150】
【化34】

【0151】
2-(4-クロロフェニル)-エチルアミン(0.39g、2.5ミリモル)とトリエチルアミン(0.50g、5.0ミリモル)をジクロロメタン(10ml)に溶かした溶液に、0℃にて、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(0.49g、2.5ミリモル)をジクロロメタン(5ml)に溶かした溶液を添加し、1時間にわたって撹拌した。水層をジクロロメタン(20ml)で抽出した。1つにまとめた有機層を1NのNaOH(15ml)と、1NのHCl(15ml)と、10%塩化ナトリウム溶液(15ml)で洗浄し、Na2SO4の上で乾燥させ、真空中で濃縮すると、粗材料が得られた。それをシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製すると、0.71g(理論値の90%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-クロロフェニル)-エチル]-アミド(化合物番号1.001)が無色の油の形態で得られた。
【0152】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ2.86 (t, 2H, CH2)、3.64 (q, 2H, CH2)、3.84 (s, 3H, NCH3)、6.40 (t, 1H, NH)、6.79 (t, 1H, CHF2, J=54Hz)、7.14 (d, 2H, Ar-H)、7.23 (d, 2H, Ar-H)、7.85 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0153】
MS [M+H]+ 314/316。
【0154】
実施例P2:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.197)の調製
【0155】
【化35】

【0156】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(1.95g、10ミリモル)をジクロロメタン(10ml)に溶かした溶液を、2.04g(10ミリモル)の2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.197、実施例P9に記載したようにして調製した)とトリエチルアミン(0.152g、15ミリモル)をジクロロメタン(30ml)に溶かした溶液を撹拌している中に一滴ずつ添加した。この反応混合物を周囲温度にて1時間にわたって撹拌した後、3時間放置した。この反応混合物を1MのNaOH(20ml)と、1MのHCl(20ml)で洗浄した後、Na2SO4の上で乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製すると、2.21g(理論値の61%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.197)が固体の形態で得られた(融点157℃)。
【0157】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ1.24 (d, 3H, CH3)、2.95 (m, 2H, CH2)、3.90 (s, 3H, NCH3)、4.46 (m, 1H, CH)、6.21 (t, 1H, NH)、6.80 (t, 1H, CHF2)、7.14〜7.19 (m, 2H, Ar-H)、7.37 (d, 1H, Ar-H)、7.84 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0158】
MS [M+H]+ 362/364/366。
【0159】
実施例P3:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-エチル]-アミド(化合物番号1.206)の調製
【0160】
【化36】

【0161】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(0.148g、0.758ミリモル)をジクロロメタン(3ml)に溶かした溶液を、0.150g(0.721ミリモル)の2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.206、実施例P10に記載したようにして調製した)とトリエチルアミン(301μl、2.16ミリモル)をジクロロメタン(12ml)に溶かした溶液を撹拌している中に一滴ずつ添加した。この反応混合物を周囲温度にて2時間にわたって撹拌した後、1MのNaOH(10ml)と、1MのHCl(10ml)と、水(10ml)で洗浄し、Na2SO4の上で乾燥させた。190mg(理論値の72%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-エチル]-アミド(化合物番号1.206)が樹脂の形態で得られた。
【0162】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ3.62〜3.75と3.92〜4.15 (m, 2H, CH2)、3.87 (s, 3H, NCH3)、5.86〜5.89と5.98〜6.01 (m, 1H, CH)、6.67 (t, 1H, NH)、6.82 (t, 1H, CHF2)、7.29 (d, 1H, Ar-H)、7.37 (d, 1H, Ar-H)、7.41 (d, 1H, Ar-H)、7.91 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0163】
MS [M+H]+ 366/368/370。
【0164】
実施例P4:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.216)の調製
【0165】
【化37】

【0166】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(0.098g、0.50ミリモル)をジクロロメタン(1ml)に溶かした溶液を、0.129g(0.50ミリモル)の2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.216、実施例P11に記載したようにして調製した)とトリエチルアミン(0.0202g、2.0ミリモル)をジクロロメタン(3ml)に溶かした溶液を撹拌している中に一滴ずつ添加した。この反応混合物を周囲温度にて2時間にわたって撹拌した。溶媒を除去した後、残留物をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製すると、0.15g(理論値の78.9%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.216)が樹脂の形態で得られた。
【0167】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ1.43 (d, 3H, CH3)、3.87 (s, 3H, NCH3)、4.69〜4.80 (m, 1H, CH)、5.73と5.84 (d, 1H, CH)、6.51 (t, 1H, NH)、6.79 (t, 1H, CHF2)、7.19 (d, 1H, Ar-H)、7.35〜7.37 (m, 2H, Ar-H)、7.79 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0168】
MS [M+H]+ 380/382/384。
【0169】
実施例P5:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-プロピル]-アミド(化合物番号1.221)の調製
【0170】
【化38】

【0171】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(0.158g、0.813ミリモル)をジクロロメタン(3ml)に溶かした溶液を、0.2g(0.774ミリモル)の2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-プロピルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.221、実施例P12に記載したようにして調製した)とトリエチルアミン(323μl、2.32ミリモル)をジクロロメタン(12ml)に溶かした溶液を撹拌している中に一滴ずつ添加した。この反応混合物を周囲温度にて3時間にわたって撹拌した後、1MのNaOH(10ml)と、1MのHCl(10ml)と、水(10ml)で洗浄し、Na2SO4の上で乾燥させた。190mg(理論値の65%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-プロピル]-アミド(化合物番号1.221)が樹脂の形態で得られた。
【0172】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ1.77と1.87 (s, 3H, CH3)、3.95 (s, 3H, NCH3)、4.12〜4.14と4.20〜4.22 (q, 2H, CH2)、6.52 (t, 1H, NH)、6.73 (t, 1H, CHF2)、7.28 (m, 1H, Ar-H)、7.39 (d, 1H, Ar-H)、7.40 (d, 1H, Ar-H)、7.86 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0173】
MS [M+H]+ 380/382/384。
【0174】
実施例P6:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[1-(2,4-ジクロロベンジル)-シクロプロピル]-アミド(化合物番号1.231)の調製
【0175】
【化39】

【0176】
3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボニルクロリド(0.190g、0.98ミリモル)をジクロロメタン(3ml)に溶かした溶液を、0.2g(0.93ミリモル)の1-(2,4-ジクロロ-ベンジル)-シクロプロピルアミン(化合物Z1.231、実施例P13に記載したようにして調製した)とトリエチルアミン(0.22ml、1.50ミリモル)をジクロロメタン(7ml)に溶かした溶液を撹拌している中に一滴ずつ添加した。この反応混合物を周囲温度にて2時間にわたって撹拌した後、1MのNaOH(5ml)と、1MのHCl(5ml)と、ブライン(10ml)で洗浄し、Na2SO4の上で乾燥させた。次に、この粗材料をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=1:1)で精製すると、145mg(理論値の40%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[1-(2,4-ジクロロベンジル)-シクロプロピル]-アミド(化合物番号1.231)が固体の形態で得られた(融点165〜168℃)。
【0177】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ0.88〜0.99 (m, 4H, 2×CH2)、3.18 (s, 3H, CH3)、3.86 (s, 3H, NCH3)、6.45 (t, 1H, NH)、6.76 (t, 1H, CHF2)、7.13 (m, 1H, Ar-H)、7.22 (d, 1H, Ar-H)、7.40 (d, 1H, Ar-H)、7.86 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0178】
MS [M+H]+ 374/376/378。
【0179】
実施例P7:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-ブロモ-2-クロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.451)の調製
【0180】
【化40】

【0181】
2-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-1-メチル-エチルアミン(化合物Z1.451、実施例P14に記載したようにして調製した;3.36g、13ミリモル)と、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸(2.16g、12ミリモル)と、10mlのピリジンの混合物を窒素雰囲気下で0℃に冷やした。オキシ塩化リン(2.08g、13ミリモル)をゆっくりと添加した。この混合物を80℃にて12時間にわたって撹拌し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル相を1.5NのHClと、10%NaOHと、水と、ブラインで洗浄した後、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去した後、残留物をヘキサンで洗浄した。3.25g(理論値の59%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-ブロモ-2-クロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.451)が明るい茶色の固体の形態で得られた(純度97%)。
【0182】
1H NMR (400MHz, CDCl3):1.25δ(d, 3H)、2.95δ(ddd, 2H, CH2)、3.9δ(s, 3H, NCH3)、4.45δ(m, 1H, CHN)、6.2δ(s, 1H, NH)、6.79δ(t, 1H, CHF2)、7.2δ(d, 1H)、7.3δ(d, 1H)、7.5δ(s, 1H)、7.84 (s, 1H, ピラゾール-H)。
【0183】
MS [M+H]+ 406/408/410。
【0184】
実施例P8:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(3,4'-ジクロロビフェニル-4-イル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.462)の調製
【0185】
【化41】

【0186】
無水炭酸カリウム(0.25g、0.02ミリモル)と酢酸パラジウム(0.007g、0.031ミリモル)を、3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(4-ブロモ-2-クロロ-フェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.451、実施例P7に記載したようにして調製した;0.25g、0.62ミリモル)を20mlのエタノール/水(エタノール/水=3:1)に溶かした溶液に窒素雰囲気下で添加した。4-クロロベンゼンボロン酸(0.105g、0.677ミリモル)を添加した。この反応混合物を16時間にわたって撹拌した。HPLCを利用して反応をモニターした。反応が終了したとき、反応混合物をセライト床で濾過した。濾液を濃縮し、シリカ・カラム(60〜120μmのメッシュ)と、溶離液としてのヘキサン:酢酸エチル(25%)とを用いたクロマトグラフィによって精製した。163mg(理論値の60%)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(3,4'-ジクロロビフェニル-4-イル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号1.462)が固体の形態で得られた(融点96〜98℃、純度93%)。
【0187】
1H NMR (400MHz, CDCl3):1.25δ(d, 3H)、2.96δ(ddd, 2H, CH2)、3.83δ(s, 3H, NCH3)、4.4δ(m, 1H, CHN)、6.1δ(s, 1H, NH)、6.75δ(t, 1H, CHF2)、7.05〜7.49δ(m, 7H-Ar)、7.8δ(s, 1H, ピラゾール-H)。
【0188】
MS [M+H]+ 438/440。
【0189】
実施例P9:2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物番号Z1.197)の調製
【0190】
a)2,4-ジクロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼンの調製
【0191】
【化42】

【0192】
スルホン化用フラスコの中で、2,4-ジクロロ-ベンズアルデヒド(77g、0.44モル)と、ニトロエタン(216ml、3.04モル)と、酢酸アンモニウム(81.4g、1.06モル)を氷酢酸(600ml)に添加した。得られた溶液を3時間にわたって90℃に加熱した。溶媒を除去した後、氷-水(400ml)を添加した。固体生成物を濾過によって回収し、水で洗浄し、エタノールから再結晶させた。55.9g(理論値の55%)の2,4-ジクロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼンが黄色の固体の形態で得られた(融点79〜81℃)。
【0193】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ8.11 (s, 1H)、7.51 (d, 1H)、7.34 (dd, 1H)、7.27 (d, 1H)、2.33 (s, 3H, CH3)。
【0194】
b)2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物番号Z1.197)の調製
【0195】
【化43】

【0196】
水素化アルミニウムリチウム(3当量、30ミリモル、1.14g)を窒素雰囲気下で乾燥テトラヒドロフラン(30ml)に懸濁させて撹拌させている中に、氷浴で冷やしている乾燥THF(20ml)に2,4-ジクロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼン(10ミリモル、2.32g)を溶かした溶液を一滴ずつ添加した。この懸濁液を10分間にわたって撹拌した後、1時間にわたって還流温度に加熱し、次いで0℃に冷却し、撹拌しながら、順番に、水(40ml)、t-ブチルメチルエーテル(20ml)、20%NaOH(20ml)、水(40ml)を一滴ずつ添加することによって過剰な水素化アルミニウムリチウムを分解させた。反応生成物を濾過によって回収し、MTBEで洗浄した。濾液をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で乾燥させた。2.0g(理論値の98%)の2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物番号Z1.197)が茶色の油の形態で得られた。
【0197】
MS [M+H]+ 204/206/208。
【0198】
この2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリドをさらに精製することなく実施例P2で使用した。
【0199】
実施例P10:2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.206)の調製
【0200】
a)(2,4-ジクロロフェニル)-フルオロ-アセトニトリルの調製
【0201】
【化44】

【0202】
ZnI2(160mg、0.5ミリモル)と、2,4-ジクロロ-ベンズアルデヒド(40g、228ミリモル)と、ジクロロメタン(15ml)からなる懸濁液を窒素雰囲気下で撹拌している中に、5℃に冷やしたトリメチルシリルシアニド(29ml、228ミリモル)を一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を周囲温度で20分間にわたって撹拌した。この反応混合物を、5℃に冷却した乾燥ジクロロメタン(250ml)で希釈し、DAST(33ml、250ミリモル)をジクロロメタン(50ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を周囲温度で30分間にわたって撹拌した後、氷-水(700ml)を添加した。ジクロロメタン(250ml)を添加し、有機層を抽出した。その有機層を、水(250ml)と、0.5NのHCl(200ml)と、飽和NaHCO3(200ml)と、水(200ml)で順番に洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。濃縮された液体をさらにシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9:1)によって精製すると、38.9g(理論値の35.4%)の(2,4-ジクロロフェニル)-フルオロ-アセトニトリルが液体の形態で得られた。
【0203】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ7.64 (d, 1H)、7.49 (d, 1H)、7.41 (dd, 1H)、6.37 (d, 1H, J=44Hz)。
【0204】
b)2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.206)の調製
【0205】
【化45】

【0206】
(2,4-ジクロロフェニル)-フルオロ-アセトニトリル(1.0g、4.9ミリモル)を含む無水テトラヒドロフラン(10ml)を0℃に冷却した。1Mのボラン-THF(19.6ml、19.6ミリモル)を一滴ずつ添加し、得られた反応混合物を0℃にて1時間にわたって撹拌した。その後、エタノール(25ml)を一滴ずつ添加し、次いでこの反応混合物をエタノール性HClを用いて酸性化し、真空中で濃縮した。残留物をエーテルと研和した。2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-エチルアミンヒドロクロリドが白色の固体の形態で得られた。
【0207】
MS [M+H]+ 208/210/212。
【0208】
実施例P11:2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.216)の調製
【0209】
a)1-(2,4-ジクロロフェニル)-2-ニトロ-プロパン-1-オールの調製
【0210】
【化46】

【0211】
ニトロエタン(8.3g、0.11モル)をアセトニトリル(150ml)に溶かして撹拌している中に、無水リン酸カリウム(1.0g、4.6ミリモル)を添加し、次いで2,4-ジクロロ-ベンズアルデヒド(17.5g、0.10モル)を添加した。得られた反応混合物を4時間にわたって撹拌した。水(300ml)を添加し、得られた反応混合物をジエチルエーテル(200ml)で抽出した。有機抽出液を水で洗浄し、無水Na2SO4上で乾燥させ、溶媒を除去し、得られた残留物をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:シクロヘキサン/酢酸エチル=9:1)によって精製した。1-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-ニトロ-プロパン-1-オールのトレオ/エリトロ混合物が20.7g(理論値の82.5%)得られた。シクロヘキサンから結晶化させると、純粋なエリトロ1-(2,4-ジクロロフェニル)-2-ニトロ-プロパン-1-オールが得られた。
【0212】
(エリトロ形)1H NMR (400MHz, CDCl3):δ1.43 (d, 3H, CH3)、2.92 (d, 1H, OH)、4.84 (m, 1H, CH)、5.79 (t, 1H, CH)、7.34 (d, 1H, Ar-H)、7.40 (d, 1H, Ar-H)、7.59 (d, 1H, Ar-H)。
【0213】
b)2,4-ジクロロ-1-(1-フルオロ-2-ニトロ-プロピル)-ベンゼンの調製
【0214】
【化47】

【0215】
エリトロ1-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-ニトロ-プロパン-1-オール(2.5g、10.0ミリモル)と乾燥ジクロロメタン(20ml)の混合物を窒素雰囲気下で撹拌している中に、DAST(1.3ml、10.0ミリモル)を含むジクロロメタン(5ml)を5℃に冷やしながら一滴ずつ添加した。得られた溶液を周囲温度にて1時間にわたって撹拌した。ジクロロメタン(80ml)を添加し、有機層を、飽和NaHCO3(50ml)と、1MのHCl(30ml)と、ソール(30ml)で順番に洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、濃縮した。2.5gの2,4-ジクロロ-1-(1-フルオロ-2-ニトロ-プロピル)-ベンゼンが茶色の油の形態で得られた。
【0216】
c)2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.216)の調製
【0217】
【化48】

【0218】
上記のようにして調製した2,4-ジクロロ-1-(1-フルオロ-2-ニトロ-プロピル)-ベンゼン(0.67g、2.64ミリモル)をさらに精製することなくイソ-プロパノール(52ml)に溶かした。1MのHCl(26.4ml、26.4ミリモル)を添加した。亜鉛(3.46g、52.8ミリモル)を少量ずつ添加し、得られた懸濁液を周囲温度にて2時間にわたって撹拌した。飽和NaHCO3溶液(80ml)を添加し、得られた混合物を15分間にわたって撹拌した後、小さなセライト製プラグで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、ジエチルエーテルを、次いでエタノール性HCl(0.1ml)を一滴ずつ添加した。得られた混合物を減圧下で濃縮した。残留物をエーテルと研和すると、望むヒドロクロリドが白色の固体の形態で得られた。0.175g(理論値の25.6%)のエリトロ2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-1-メチル-エチルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.216)が白色の固体の形態で得られた。
【0219】
MS [M+H]+ 222/224/226。
【0220】
実施例P12:2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-プロピルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.221)の調製
【0221】
a)2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-プロピオニトリルの調製
【0222】
【化49】

【0223】
ZnI2(20mg、0.06ミリモル)と2,4-ジクロロ-アセトフェノン(4.3g、22.8ミリモル)の混合物を窒素雰囲気下で撹拌している中に、トリメチルシリルシアニド(2.9ml、22.8ミリモル)を5℃にて一滴ずつ添加した。得られた溶液を周囲温度にて20分間にわたって撹拌した。乾燥ジクロロメタン(20ml)を添加し、得られた溶液を5℃に冷却した。次に、ジエチルアミノ三フッ化イオウDAST(3.3ml、25.0ミリモル)をジクロロメタン(5ml)に溶かした溶液を一滴ずつ添加した。この溶液を周囲温度にて30分間にわたって撹拌した後、氷-水(70ml)を添加した。ジクロロメタン(25ml)を添加し、有機層を水層から分離した。有機層を、水(25ml)と、0.5NのHCl(25ml)と、飽和NaHCO3(25ml)と、水(20ml)で順番に洗浄した。有機層をNa2SO4上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮し、シリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ヘキサン/酢酸エチル=9:1)によって精製した。3.14g(理論値の63%)の2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-プロピオニトリルが液体の形態で得られた。
【0224】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ7.52 (d, 1H)、7.48 (d, 1H)、7.37 (dd, 1H)、2.15 (d, 3H, J=24Hz)。
【0225】
b)2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-プロピルアミンヒドロクロリド(化合物Z1.221)の調製
【0226】
【化50】

【0227】
2-(2,4-ジクロロ-フェニル)-2-フルオロ-プロピオニトリル(1.0g、4.9ミリモル)と無水THF(10ml)の混合物に1Mのボラン-THF(19.6ml、19.6ミリモル)を0℃にて一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を氷浴の中で1時間にわたって撹拌した。エタノール(25ml)を一滴ずつ添加し、得られた混合物をエタノール性HClを用いて酸性化し、真空中で濃縮した。残留物をエーテルと研和すると、820mg(理論値の64.5%)の2-(2,4-ジクロロフェニル)-2-フルオロ-プロピルアミンヒドロクロリドが白色の固体の形態で得られた(融点152〜155℃)。
【0228】
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ8.44 (sbr, 2H)、7.72 (d, 1H)、7.65 (d, 1H)、7.53 (dd, 1H)、3.55 (m, 2H)、1.85 (d, 3H, J=28Hz)。
【0229】
MS [M+H]+ 222/224/226。
【0230】
実施例P13:1-(2,4-ジクロロ-ベンジル)-シクロプロピルアミン(化合物Z1.231)の調製
【0231】
【化51】

【0232】
(2,4-ジクロロ-フェニル)-アセトニトリル(6.3g、33ミリモル)とTi(OiPr)4(36.3ミリモル)をエーテル(150ml)に溶かした溶液に、EtMgBr(エーテル中に1M、66ml、66ミリモル)を周囲温度にて一滴ずつ添加した。得られた反応混合物を1時間にわたって撹拌し、BF3・Et2O(66ミリモル)を添加し、得られた反応混合物を周囲温度でさらに30分間にわたって撹拌した。1NのNaOH(120ml、120ミリモル)を添加し、有機層を分離した。水層をエーテルで抽出し、有機相を1つにまとめた。ブライン(100ml)で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去し、得られた生成物をシリカゲル上のフラッシュ・クロマトグラフィ(溶離液:ジクロロメタン/メタノール=9:1)によって精製した。3.1g(理論値の43%)の1-(2,4-ジクロロ-ベンジル)-シクロプロピルアミンが液体の形態で得られた。
【0233】
MS [M+H]+ 216/218/220。
【0234】
実施例P14:2-(4-ブロモ-2-クロロフェニル)-1-メチル-エチルアミン(化合物Z1.451)の調製
【0235】
a)4-ブロモ-2-クロロ-1-ジブロモメチル-ベンゼンの調製
【0236】
【化52】

【0237】
4-ブロモ-2-クロロトルエン(10g、48.6ミリモル)と、N-ブロモスクシンイミド(43.3g、243.3ミリモル)と、過酸化ベンゾイル(0.5g)と、CCl4(80ml)の混合物を6時間にわたって還流温度に加熱した。反応の終了をTLCによって確認した。冷却後、黄色の沈殿物を濾過によって分離し、CCl4で洗浄した。有機層を濃縮し、濃縮した有機層と沈殿物の両方を、シリカ・カラム(60〜120μmのメッシュ)と、溶離液としてのヘキサンとを用いたクロマトグラフィによって精製した。17.5g(理論値の98%)の4-ブロモ-2-クロロ-1-ジブロモメチル-ベンゼンが得られた。
【0238】
1H NMR (400MHz, CDCl3):7.02δ(s, 1H)、7.5δ(dd, 2H)、7.87δ(d, 1H, CHBr2)。
【0239】
b)4-ブロモ-2-クロロベンズアルデヒドの調製
【0240】
【化53】

【0241】
AgNO3(82g、482ミリモル)を55mlの水に溶かした溶液を、4-ブロモ-2-クロロ-1-ジブロモメチル-ベンゼン(17.5g、48.2ミリモル)を25mlのエタノールに溶かした溶液に還流温度で一滴ずつ添加した。沈殿物(AgBr)が直ちに形成された。1時間にわたって加熱を続けた。反応混合物を冷却し、200mlの水を添加した。沈殿物を濾過によって除去し、水相をクロロホルムで抽出した。有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去すると、9.6g(理論値の85%)の4-ブロモ-2-クロロベンズアルデヒドが得られた(純度97%)。
【0242】
1H NMR (400MHz, CDCl3):7.24δ(td, 1H)、7.6δ(d, 1H)、7.8δ(d, 1H)、10.4δ(s, 1H, CHO)。
【0243】
MS [M+H]+ 217/219/220。
【0244】
c)4-ブロモ-2-クロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼンの調製
【0245】
【化54】

【0246】
4-ブロモ-2-クロロベンズアルデヒド(9.6g、43.8ミリモル)と、酢酸アンモニウム(8.44g、109.6ミリモル)と、酢酸(25ml)の混合物を0℃にて10分間にわたって撹拌した。ニトロエタン(21.6ml、302.4ミリモル)をゆっくりと添加した。得られた反応混合物を窒素雰囲気下で30分間にわたって110℃に加熱した。反応の終了をTLCによって確認した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、氷-水を添加した。得られた水溶液を酢酸エチルで抽出した。有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を除去し、残留物を、シリカ・カラム(60〜120μmのメッシュ)と、溶離液としての2%酢酸エチル:ヘキサンとを用いたクロマトグラフィによって精製した。6.14g(理論値の50%)の4-ブロモ-2-クロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼン(純度98%)が得られた。
【0247】
1H NMR (400MHz, CDCl3):2.3δ(d, 3H)、7.2δ(d, 1H)、7.5δ(dd, 1H)、7.65δ(d, 1H)、8δ(s, 1H)。
【0248】
d)4-ブロモ-2-クロロ-1-(2-ニトロ-プロピル)-ベンゼンの調製
【0249】
【化55】

【0250】
4-ブロモ-2-クロロ-1-((E)-2-ニトロ-プロペニル)-ベンゼン(6.1g、22.1ミリモル)を40mlのメタノールに溶かした溶液を窒素雰囲気下で0℃に冷却した。ホウ水素ナトリウム(2.52g、66.3ミリモル)をゆっくりと添加した。得られた反応混合物を周囲温度にて6時間にわたって撹拌した後、酢酸エチルを添加した。溶媒を除去した後、残留物を水に溶かし、酢酸エチルで抽出した。有機相を水とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を蒸発させると、5.5g(理論値の89%)の4-ブロモ-2-クロロ-1-(2-ニトロ-プロピル)-ベンゼンが得られた(純度86%)。
【0251】
1H NMR (400MHz, CDCl3):1.5δ(d, 3H)、3.15δ(dd, 1H, CHH)、3.35δ(dd, 1H, CHH)、4.85δ(m, CHN)、7.05δ(d, 1H)、7.3δ(dd, 1H)、7.5δ(d, 1H)。
【0252】
MS [M+H]+(C9H9BrClNO2)(248/249/250)。
【0253】
e)2-(4-ブロモ-2-クロロフェニル)-1-メチル-エチルアミン(化合物Z1.451)の調製
【0254】
【化56】

【0255】
4-ブロモ-2-クロロ-1-(2-ニトロ-プロピル)-ベンゼン(6.8g、24ミリモル)をメタノール/水(1:1)(40ml)に溶かした。鉄粉(4g、72ミリモル)とNH4Cl(7.8g、144ミリモル)を添加した。得られた反応混合物を12時間にわたって65℃に加熱した。この反応混合物をセライト床で濾過し、メタノールで洗浄した。濾液の体積を減らし、水を添加した。得られた水溶液を2NのHClを用いて酸性化し、ジエチルエーテルで洗浄した。10%NaOHを添加して水相のpHを7よりも大きくした。その水相を酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を除去した。3.6g(理論値の59%)の2-(4-ブロモ-2-クロロフェニル)-1-メチル-エチルアミン(化合物Z1.451)が茶色の油の形態で得られた。化合物Z1.451をさらに精製することなく実施例P7で用いた。
【0256】
1H NMR (400MHz, CDCl3):1.25δ(d, 3H)、2.95δ(dd, 2H, CH2)、3.2δ(m, 1H, CHN)、4.42δ(m, NH2)、7.3δ(d, 1H)、7.5δ(dd, 1H)、7.7δ(d, 1H)。
【0257】
MS [M+H]+ 248/249/250。
【0258】
表1〜7:一般式(IA)の化合物
【0259】
以下の表1〜7に記載した一般式(IA)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。特徴のデータは表14に示してある。
【0260】
【化57】

【0261】
以下の表Yに続く表1〜7のそれぞれには、一般式(IA)においてR1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに与えられたものであり、Aが関連する表1〜7に与えられたものである482種類の化合物が含まれている。したがって表1は、Yが1であるときの表Yに対応し、Aは表1に与えられているものであり、表2は、Yが2であるときの表Yに対応し、Aは表2に与えられたものであり、以下表3〜7に関しても同様である。
【0262】
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【0263】
表1には、一般式(IA)においてAが
【化58】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。例えば化合物1.001は、以下の構造を持つ。
【0264】
【化59】

【0265】
表2には、一般式(IA)においてAが
【化60】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0266】
表3には、一般式(IA)においてAが
【化61】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0267】
表4には、一般式(IA)においてAが
【化62】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0268】
表5には、一般式(IA)においてAが
【化63】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0269】
表6には、一般式(IA)においてAが
【化64】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0270】
表7には、一般式(IA)においてAが
【化65】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R8a、R8b、R8cが表Yに規定されているものである482種類の化合物が提示されている。
【0271】
表8〜12:一般式(IB)の化合物
【0272】
以下の表8〜12に記載した一般式(IB)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。特徴のデータは表14に示してある。
【0273】
【化66】

【0274】
以下の表Wに続く表8〜12のそれぞれには、一般式(IB)においてB、R1、R2、R3、R4が表Wに与えられたものであり、Aが関連する表8〜12に与えられたものである288種類の化合物が含まれている。したがって表8は、Wが8であるときの表Wに対応し、Aは表8に与えられたものであり、表9は、Wが9であるときの表Wに対応し、Aは表9に与えられたものであり、以下表10〜12に関しても同様である。
【0275】
表W:
【0276】
表Wにおいて、基Bは、基B1、B2、B3、B4のいずれかを表わす。
【0277】
【化67】

【0278】
【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【0279】
表8には、一般式(IB)においてAが
【化68】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R9a、R9bが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。例えば化合物7.001は、以下の構造を持つ。
【0280】
【化69】

【0281】
表9には、一般式(IB)においてAが
【化70】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R9a、R9bが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0282】
表10には、一般式(IB)においてAが
【化71】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R9a、R9bが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0283】
表11には、一般式(IB)においてAが
【化72】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R9a、R9bが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0284】
表12には、一般式(IB)においてAが
【化73】

であり(ただし点線は、基Aがアミド基に結合する点を示している)、R1、R2、R3、R4、R9a、R9bが表Wに規定されているものである288種類の化合物が提示されている。
【0285】
表13:一般式(IIA)の化合物
【0286】
一般式(IIA)の代表的な化合物は、以下の表13に示した化合物である。これら化合物の特徴のデータは表14に示してある。
【0287】
【化74】

【0288】
【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

表13:
【0289】
表14:特徴のデータ
【0290】
表14には、表1〜13の中から選択した化合物に関する融点とNMRのデータを示してある。特に断わらない限り、NMR測定のための溶媒としてCDCl3を使用した。複数の溶媒の混合物が存在している場合には、例えばCDCl3/d6-DMSOと表記する。なお、あらゆる場合のあらゆる特徴的なデータを示そうとはしていない。
【0291】
表14と以下の説明の全体を通じ、温度は℃で表記し、“NMR”は核磁気共鳴を意味し、MSは質量スペクトルを表わし、“%”は、対応する濃度が他の単位で示されていない限り重量%である。この明細書全体を通じて以下の略号を用いる。
m.p.= 融点 b.p.= 沸点
s = 一重項 br = 広い
d = 二重項 dd = 二重の二重項
t = 三重項 q = 四重項
m = 多重項 ppm = 百万分率
【0292】
【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【0293】
一般式(I)の化合物に関する製剤の実施例:
【0294】
以下に示す製剤の実施例は本発明を説明するためのものであり、一般式(I)の化合物(例えば表1〜12の化合物)を含む組成物の製造に関する。その同じ製剤の実施例を利用して一般式(IA)の化合物(例えば表15に記載した化合物)を含む組成物を作ることができる。
【0295】
実施例F-1.1〜F-1.3:乳化可能な濃縮液
【0296】
成分 F-1.1 F-1.2 F-1.3
表1〜12の化合物 25% 40% 50%
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム 5% 8% 6%
ヒマシ油ポリエチレングリコールエーテル
(36モルのエチレンオキシ単位) 5% - -
トリブチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(30モルのエチレンオキシ単位) - 12% 4%
シクロヘキサノン - 15% 20%
キシレン混合物 65% 25% 20%
【0297】
望むあらゆる濃度のエマルジョンは、このような濃縮液を水で希釈することによって調製できる。
【0298】
実施例F-2:乳化可能な濃縮液
【0299】
成分 F-2
表1〜12の化合物 10%
オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(4〜5モルのエチレンオキシ単位) 3%
ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム 3%
ヒマシ油ポリグリコールエーテル(36モルのエチレンオキシ単位) 4%
シクロヘキサノン 30%
キシレン混合物 50%
【0300】
望む任あらゆる濃度のエマルジョンは、このような濃縮液を水で希釈することによって調製できる。
【0301】
実施例F-3.1〜F-3.4:溶液
【0302】
成分 F-3.1 F-3.2 F-3.3 F-3.4
表1〜12の化合物 80% 10% 5% 95%
プロピレングリコールモノメチルエーテル 20% - - -
ポリエチレングリコール(相対分子量:400原子質量単位) - 70% - -
N-メチルピロリド-2-オン - 20% - -
エポキシド化ココナツ油 - - 1% 5%
ベンジン(沸点の範囲:160〜190℃) - - 94% -
【0303】
溶液は、微小液滴の形態で使用するのに適している。
【0304】
実施例F-4.1〜F-4.4:顆粒
【0305】
成分 F-4.1 F-4.2 F-4.3 F-4.4
表1〜12の化合物 5% 10% 8% 21%
カオリン 94% - 79% 54%
高分散ケイ酸 1% - 13% 7%
アタパルジャイト - 90% - 18%
【0306】
本発明の新規な化合物をジクロロメタンに溶かし、得られた溶液を基剤の表面にスプレーした後、溶媒を真空下での蒸溜によって除去する。
【0307】
実施例F-5.1とF-5.2:ダスト
【0308】
成分 F-5.1 F-5.2
表1〜12の化合物 2% 5%
高分散ケイ酸 1% 5%
タルク 97% -
カオリン - 90%
【0309】
そのまま使用できるダストは、すべての成分を密に混合することによって得られる。
【0310】
実施例F-6.1〜F-6.3:湿潤化可能な粉末
【0311】
成分 F-6.1 F-6.2 F-6.3
表1〜12の化合物 25% 50% 75%
リグニンスルホン酸ナトリウム 5% 5% -
ラウリル硫酸ナトリウム 3% - 5%
ジイソブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム - 6% 10%
オクチルフェノールポリエチレングリコールエーテル
(7〜8モルのエチレンオキシ単位) - 2% -
高分散ケイ酸 5% 10% 10%
カオリン 62% 27% -
【0312】
すべての成分を混合し、得られた混合物を適切なミルの中で完全に粉砕して湿潤化可能な粉末を得る。それを水で希釈して望むあらゆる濃度の懸濁液にすることができる。
【0313】
実施例F7:種子を処理するための流動可能な濃縮液
【0314】
表1〜12の化合物 40%
プロピレングリコール 5%
ブタノールPO/EOコポリマー 2%
EOが10〜20モルのトリスチレンフェノール 2%
1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(20%水溶液の形態) 0.5%
モノアゾ顔料カルシウム塩 5%
シリコーン油(水中の75%エマルジョンの形態) 0.2%
水 45.3%
【0315】
細かく粉砕した活性成分をアジュバントと密に混合すると懸濁濃縮液が得られ、それを水で希釈することによって望むあらゆる希釈度の懸濁液を得ることができる。このような希釈液をスプレーしたり、注いだりすることや、このような希釈液に浸したりすることで、生きている植物と植物増殖材料の処理と、微生物の感染防止ができる。
【0316】
生物での実施例:殺真菌作用
【0317】
実施例B-1:ポドスフェラ・レウコトリチャ/リンゴ(リンゴのうどん粉病菌)に対する作用
【0318】
発芽後5週間のリンゴの苗木cv.マッキントッシュ(登録商標)を、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、リンゴのうどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってリンゴの苗木に接種する。光条件14/10時間(明/暗)のもとで22℃、相対湿度60%で12日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0319】
実施例B-2:ベンチュリア・イネクアリス/リンゴ(リンゴの赤かび病菌)に対する作用
【0320】
発芽後4週間のリンゴの苗木cv.マッキントッシュ(登録商標)を、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、胞子の懸濁液(4×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってリンゴの苗木に接種する。21℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0321】
実施例B-3:エリシフェ・グラミニス/オオムギ(オオムギのうどん粉病菌)に対する作用
【0322】
発芽後1週間のオオムギの苗cv.エクスプレスを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、うどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってオオムギの苗に接種する。温室の中に入れて20℃/18℃(昼/夜)、相対湿度60%で6日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0323】
実施例B-4:ボトリティス・キネレア/リンゴ(リンゴの果実の灰色かび病菌)に対する作用
【0324】
リンゴの果実cv.ゴールデン・デリシャスにドリルで穴を3つ開け、それぞれの穴に、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)の液滴30μlを満たす。その2時間後、ボトリティス・キネレアの胞子懸濁液50μl(4×105個の分生子/ml)をピペットでその付着部位に注ぐ。増殖室の中で22℃にして7日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0325】
実施例B-5:ボトリティス・キネレア/ブドウ(ブドウの灰色かび病菌)に対する作用
【0326】
発芽後5週間のブドウの苗木cv.グーテデルを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子懸濁液(1×106個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってブドウの苗木に接種する。21℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0327】
実施例B-6:ボトリティス・キネレア/トマト(トマトの灰色かび病菌)に対する作用
【0328】
発芽後4週間のトマトの苗木cv.ローター・グノムを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、胞子の懸濁液(1×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってトマトの苗に接種する。20℃、相対湿度95%で4日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0329】
実施例B-7:ピレノフォラ・テレス/オオムギ(オオムギの網斑病菌)に対する作用
【0330】
発芽後1週間のオオムギの苗cv.エクスプレスを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(3×104個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってオオムギの苗に接種する。20℃、相対湿度95%で2日間というインキュベーション期間の後、苗を温室の中で20℃、相対湿度60%に2日間維持する。接種してから4日後に病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0331】
実施例B-8:セプトリア・トリティキ/コムギ(コムギにおける斑点病菌)に対する作用
【0332】
発芽後2週間のコムギの苗cv.リバンドを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(10×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってコムギの苗に接種する。23℃、相対湿度95%で1日間というインキュベーション期間の後、苗を温室の中で23℃、相対湿度60%に16日間維持する。接種してから18日後に病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0333】
実施例B-9:ウンキヌラ・ネカトール/ブドウ(ブドウのうどん粉病菌)に対する作用
【0334】
発芽後5週間のブドウの苗木cv.グーテデルを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その1日後、ブドウのうどん粉病菌に感染した植物をこの試験植物の上で揺することによってブドウの苗木に接種する。光条件14/10時間(明/暗)のもとで26℃、相対湿度60%で7日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0335】
実施例B-10:アルテルナリア・ソラニ/トマト(トマトの夏枯病菌)に対する作用
【0336】
発芽後4週間のトマトの苗木cv.ローター・グノムを、スプレー室の中で、製剤化した試験化合物(0.02%の活性成分)で処理する。その2日後、胞子の懸濁液(2×105個の分生子/ml)をこの試験植物の表面にスプレーすることによってトマトの苗に接種する。増殖室の中に入れて20℃、相対湿度95%で3日間というインキュベーション期間の後、病気の発生を調べる。化合物1.001、1.002、1.036、1.196、1.197、1.198、1.199、1.202、1.204、1.205、1.206、1.207、1.216、1.221、1.231、1.235、1.275、1.392、1.416、1.441、1.442、1.443、1.446、1.448、1.451、1.461、1.462、1.463、1.464、1.465、1.482、2.001、2.157、2.196、2.197、2.198、2.199、2.206、2.235、3.197、3.198、3.199、3.200、3.212、5.197、5.198、5.199が、この試験で優れた活性を示す(感染率が20%未満)。
【0337】
本発明はさらに、殺微生物活性(特に殺真菌活性)を有する光学活性な新規なエチルアミドと、その化合物を含む組成物と、その化合物を農業または園芸で利用して植物への植物病原性微生物(真菌が好ましい)の感染を制御または防止する方法にも関する。
【0338】
したがって本発明により、一般式(IA)の化合物:
【化75】

(ただし、
R51は、C1〜C3アルキル、CF3、CFH2のいずれかであり;X1は、水素またはフルオロであり;nは2または3であり;それぞれのX2は、互いに独立に、クロロ、ブロモ、フルオロ、CH3、CF3のいずれかであり;アキラルな溶媒に溶かしたときに光学活性[α]Dが0°よりも大きい)が提供される。
【0339】
置換基の定義に現われるアルキル基は、直鎖または分岐鎖が可能であり、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピルである。
【0340】
一般式(IA)の化合物は1つのキラル炭素原子を含んでおり、それを上記の構造式では星印で強調してある。
【0341】
一般式(IA)の化合物は、純粋な(+)-鏡像異性体(鏡像異性体過剰度(ee)99%超)として、または(+)-鏡像異性体が鏡像異性体過剰である(+)-鏡像異性体と(-)-鏡像異性体の混合物として合成することができる。
【0342】
どちらの鏡像異性体も、アキラルな溶媒に溶かしたときにその光学活性[α] Dによってはっきりと区別できる。すなわち一方は光学活性[α]Dが0°よりも大きく(本発明による(+)-化合物)、もう一方は光学活性[α] Dが0°よりも小さい(本発明による(-)-化合物)。
【0343】
(+)-化合物は、(-)-化合物よりも殺微生物活性が大きいこと、または両方の化合物のラセミ混合物よりも殺微生物活性が大きいことが見いだされた。
【0344】
本発明により、一般式(IA)においてX1が水素である化合物が提供されることが好ましい。
【0345】
本発明により、一般式(IA)において置換基X2のうちの少なくとも1つがフェニル環のオルト位に位置する化合物が提供されることが好ましい。
【0346】
本発明により、一般式(IA)において各X2がクロロである化合物が提供されることが好ましい。本発明の一実施態様では、nは2である、本発明の別の一実施態様では、nは3である。
【0347】
本発明の一実施態様では、R51はメチルである。本発明の別の一実施態様では、R51はエチルである。本発明の別の一実施態様では、R51はCF3である。
【0348】
本発明により、(+)-鏡像異性体の鏡像異性体過剰度が少なくとも50%である一般式(IA)の化合物が提供されることが好ましい。
【0349】
本発明により、(+)-鏡像異性体の鏡像異性体過剰度が少なくとも75%である一般式(IA)の化合物が提供されることが好ましい。
【0350】
本発明の一実施態様では、一般式(IA)の化合物は、鏡像異性体として純粋な(+)-鏡像異性体である。
【0351】
一般式(IA)の化合物は、(上記の一般式(II)の化合物のグループに属する)一般式(IIk)の化合物:
【化76】

(ただしR51、X2、nは一般式(IA)の化合物で定義したのと同じものであり、この一般式(IIk)の化合物は、アキラルな溶媒に溶かしたときに光学活性[α]Dが0°である)を、(上記の一般式(IIIA)の化合物のグループに属する)一般式(IIIk)の化合物:
【化77】

(ただし、X1は一般式(IA)の化合物で定義したのと同じものであり、R**は、水素、ヒドロキシ、C1〜6アルコキシのいずれかであるが、クロロであることが好ましい)と反応させて一般式(IA)のラセミ化合物を形成した後、適切なキラル定常相を用いたクロマトグラフィでその一般式(IA)のラセミ化合物を分割することによって調製できる。適切なキラル定常相の一例を実施例P15bに示してある。
【0352】
一般式(IIk)の化合物と一般式(IIIk)の化合物の間の反応は、上記の一般式(II)の化合物と一般式(IIIA)の化合物の反応に関して説明したのと同様にして実施できる。
【0353】
一般式(IIk)の化合物のラセミ中間体は、上記の反応スキーム1に従って調製すること、またはこの反応スキームと同様にして調製することができる。それに加え、一般式(III)の中間体は、以下の反応スキーム12に従って調製することもできる。
【0354】
反応スキーム12
【0355】
【化78】

【0356】
一般式(III)のニトロアルケン(ただしBとR1は一般式(I)で定義したのと同じものである)は、一般式(Vk)のニトロアルカン(ただしR1は一般式(I)で定義したのと同じものである)を、酢酸と酢酸アンモニウムの存在下で周囲温度〜還流温度の範囲の温度にて一般式(VIk)のカルボニル化合物(ただしBは一般式(I)で定義したのと同じものである)と反応させることによって調製できる。
【0357】
あるいは一般式(IA)の化合物は、一般式(IIm)の化合物:
【化79】

(ただしR51、X2、nは一般式(IA)の化合物で定義したのと同じものであり、この一般式(IIm)の化合物は、アキラルな溶媒に溶かしたときに光学活性[α]Dが0°よりも大きい)を、上記の一般式(IIIk)の化合物と反応させることによっても調製できる。一般式(IIm)の中間体は、適切なキラル定常相を用いたクロマトグラフィで対応する一般式(IIk)のラセミ中間体を分割することによって調製できる。一般式(IIm)の中間体は新規であり、一般式(IA)の化合物を調製するために特別に開発された。したがってこの中間体も本発明の主題の一部を構成する。
【0358】
一般式(IIIA)の化合物のグループに属する一般式(IIIk)の化合物も公知であり、そのうちのいくつかは市販されている。これらの化合物は、例えばWO 93/11117に記載されているのと同様にして調製できる。一般式(Vk)の化合物と一般式(VIk)の化合物は公知であり、市販されている。あるいはこれらの化合物は、従来から知られている方法に従って調製することもできる。
【0359】
一般式(IA)の化合物は、実際的な目的において、植物病原性微生物(例えば真菌、細菌、ウイルス)によって起こる病気から有用な植物を保護する非常に有利な活性スペクトルを有することが見いだされた。
【0360】
本発明は、植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、一般式(IA)の化合物を、活性成分として、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法に関する。本発明による一般式(IA)の化合物は、少ない散布量で優れた活性を示すとともに、植物によってよく許容され、環境にとって安全であることを特徴とする。この化合物は、非常に有用な治療特性、予防特性、全身特性を持つため、多数の有用な植物を保護するのに用いられる。一般式(IA)の化合物は、有用なさまざまな作物またはその部分(果実、花、葉、茎、塊茎、根)に発生する病気を抑制する、またはなくすと同時に、あとから成長するこうした部分を例えば植物病原性微生物から保護するのに使用できる。
【0361】
一般式(IA)の化合物をドレッシング剤として用い、植物増殖材料(特に種子(果実、塊茎、穀粒))や植物の差し穂(例えばイネ)を処理したり、真菌の感染や土中に発生する植物病原性真菌から保護したりすることもできる。
【0362】
さらに、本発明による一般式(IA)の化合物は、関連する分野(例えば工業材料(木や、木に関係する工業材料)の保護、食物の保管、衛生管理)で真菌を制御するのに使用することができる。
【0363】
一般式(IA)の化合物は、例えば、以下のクラスの植物病原性真菌に対して有効である:不完全菌類(例えばボトリチス、ピリクラリア、ヘルミントスポリウム、フザリウム、セプトリア、ケルコスポラ、アルテルナリア)、担子菌類(例えばリゾクトニア、ヘミレイア、プクキニア)。さらに、この化合物は、子嚢菌類(例えばベンチュリア、エリシフェ、ポドスフェラ、モニリニア、ウンキヌラ)と卵菌類(例えばフィトフトラ、ピチウム、プラスモパラ)に対しても有効である。著しい活性が、うどん粉病菌(ウンキヌラ・ネカトール)に対して観察されている。さらに、一般式(I)の新規な化合物は、植物病原性細菌とウイルス(例えばキサントモナス属、シュードモナス属、エルウィニア・アミロボラ、タバコモザイクウイルス)に対しても有効である。優れた活性がアジアダイズさび病菌(ファコプソラ・パキリジ)に対して観察されている。
【0364】
本発明の範囲では、保護すべき有用な植物の典型例として、以下の植物種がある:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、モロコシ、ならびに関連する種);ビート(サトウダイコン、飼料ビート);梨果、核果、小果実(例えばリンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ類(インゲンマメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油性植物(セイヨウアブラナ、カラシ、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマ、カカオマメ、ピーナツ);ウリ科植物(カボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(ワタ、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ミカン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、ショウノウ)や;タバコ、ナッツ、コーヒー、ナス、サトウキビ、茶、コショウ、ブドウの木、ホップ、バナナ、天然ゴムの木、装飾植物。
【0365】
一般式(IA)の化合物は、そのままの形態で使用できるが、従来の製剤で一般に用いられている基剤およびアジュバントとともに使用するほうが好ましい。したがって本発明は、植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、一般式(IA)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物に関するとともに、有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止する方法であって、請求項23に記載の一般式(IA)の化合物、または活性成分としてその化合物を含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法にも関する。
【0366】
一般式(IA)の化合物を含む組成物のさらに別の特徴、その散布法、その使用量は、上記の一般式(I)の化合物を含む組成物に関して説明したのと同様である。一般式(IA)の化合物は、本発明の方法で使用するため、上に説明した一般的な製剤(例えば溶液、エマルジョン、懸濁液、ダスト、粉末、ペースト、顆粒)に変換することができる。使用形態は、目的とする個々の用途によって異なることになろう。それぞれの場合に、一般式(IA)の化合物が、細かくかつ均一に分布しているようにせねばならない。
【0367】
一般式(IA)の化合物は、上に一般式(I)の化合物に関して説明したように、グリホサートと組み合わせて使用することもできる。一般式(IA)の化合物をグリホサートと組み合わせて使用する方法は、菌類界、担子菌門、サビキン綱、サビキン亜綱、サビキン目の植物病原性生物(一般にサビキンと呼ばれる)に対して特に有効である。農業に特に大きな影響のあるサビキンとして、ファコプソラ科のもの(特にファコプソラ属のもので、例えばファコプソラ・パキリジ(アジアダイズさび病菌とも呼ばれる))とプクキニア科のもの(特にプクキニア属のもので、例えば穀類で問題のある病気を起こすプクキニア・グラミニス(茎さび病菌または黒さび病菌としても知られる)や、プクキニア・レコンディタ(赤さび病菌としても知られる))がある。
【0368】
この方法の一実施態様は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護する方法および/または植物病原性生物に感染した有用な作物を治療する方法であり、この方法は、グリホサート(その塩やエステルも含む)と、その植物病原性生物に対する活性を有する一般式(IA)の少なくとも1種類の化合物を、植物、その植物の一部、その植物が生えている場所からなるグループの中から選択された少なくとも1つのところに同時に散布する操作を含んでいる。
【0369】
驚くべきことに、上記の一般式(IA)の化合物またはその薬理学的な塩は、動物における微生物感染症の治療および/または予防にとって望ましい活性スペクトルも有することが見いだされた。
【0370】
本発明によれば、一般式(IA)の化合物を用いて動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用する薬の製造方法が提供される。一般式(IA)の化合物を医薬として用いる方法も提供される。動物の治療において一般式(IA)の化合物を抗微生物剤として用いる方法も提供される。本発明によれば、活性成分としての一般式(IA)の化合物またはその薬理学的に許容可能な塩と、薬理学的に許容可能な希釈剤または基剤とを含む医薬組成物も提供される。この組成物は、動物における微生物感染症の治療および/または予防に使用することができる。この医薬組成物は、経口投与に適した形態(例えば錠剤、ロゼンジ、硬質カプセル、水性懸濁液、油性懸濁液、エマルジョン、分散可能な粉末、分散可能な顆粒、シロップ、エリキシル)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、局所塗布に適した形態(例えばスプレー、クリーム、ローション)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、非経口投与に適した形態(例えば注射液)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、吸入可能な形態(例えばエーロゾル・スプレー)にすることができる。
【0371】
一般式(IA)の化合物は、動物に微生物感染症を起こすさまざまな微生物種に対して有効である。そのような微生物種の例は、アスペルギルス症を起こす微生物(例えばアスペルギルス・フミガトゥス、アスペルギルス・フラブス、アスペルギルス・テルス、アスペルギルス・ニドゥランス、アスペルギルス・ニゲール)、ブラトミセス症を起こす微生物(例えばブラトミセス・デルマティティディス)、カンディダ症を起こす微生物(例えばカンディダ・アルビカンス、カンディダ・グラブラタ、カンディダ・トロピカリス、カンディダ・パラプシロシス、カンディダ・クルセイ、カンディダ・ルシタニエ)、コクシジオイデス症を起こす微生物(例えばコクシジオイデス・イミティス)、クリプトコッカス症を起こす微生物(例えばクリプトコッカス・ネオフォルマンス)、ヒストプラズマ症を起こす微生物(例えばヒストプラズマ・カプスラトゥム)、接合菌症を起こす微生物(例えばアブシディア・コリムビフェラ、リゾムーコル・プシルス、リゾプス・アリズス)である。別の例は、フザリウム属(例えばフザリウム・オキシスポルム、フザリウム・ソラニ)、セドスポリウム属(例えばセドスポリウム・アピオスペルムム、セドスポリウム・プロリフィカンス)である。さらに別の例は、ミクロスポルム属、トリコフィトン属、エピデルモフィトン属、ムーコル属、スポロトリックス属、フィアロフォラ属、クラドスポリウム属、ペトリエリジウム属、パラコクシジオイデス属、ヒストプラズマ属である。
【0372】
例示としての以下の実施例において、上に説明した本発明をより詳しく説明するが、本発明がこの説明に限定されることはない。
【0373】
調製の実施例:
【0374】
実施例P15:(+)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号A1.01)の調製
【0375】
【化80】

【0376】
a)(+)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(化合物番号A1.01)の調製
【0377】
ラセミ状態の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミド(480mg、実施例P2に記載したようにして調製した)を72mlのn-ヘキサン/イソプロパノール(3:1(v/v))に溶かした。この溶液を、溶離液としてn-ヘキサン/イソプロパノール(7:3(v/v))を用いたChiralpak AD(登録商標)(ロット番号AD00CM-BF001、ダイセル化学、日本国、サイズ:500mm×50mm、粒径:20μm、流速:30ml/分)上での高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)により精製した。全材料を分離するため、1回に8ml(ラセミ化合物が53mg)ずつカラムで分離した。化合物の検出は、UV検出器を用いて210nmで行なった。分離用HPLC(Chiralpak AD00CE-CH017、ダイセル化学)で調べた純粋な鏡像異性体のサンプル(ee>99%)を1つにまとめ、溶媒を蒸発させた。
【0378】
光学回転のデータは、パーキン・エルマー241ポラリメータで採取した(化合物をCHCl3に溶かした。温度は℃で表わし、“c”はg/mlを単位とした濃度であり、光路長は10cmであった)。
【0379】
化合物A1.01、(+)-化合物:
【0380】
116mgの(+)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミドが固体の形態で得られた(Chiralpak AD00CE-CH017、ダイセル化学、n-ヘキサン/イソプロパノール=85:15;保持時間:10.34分);[α]23D=+50(c4.9、CHCl3)。
【0381】
比較例:化合物A1.01の(-)-化合物:
【0382】
174mgの(-)-3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸[2-(2,4-ジクロロフェニル)-1-メチル-エチル]-アミドが固体の形態で得られた(Chiralpak AD00CE-CH017、ダイセル化学、n-ヘキサン/イソプロパノール=85:15;保持時間:7.80分);[α] 23D=-52(c4.4、CHCl3)。
【0383】
表15:一般式(IA)の化合物
【0384】
以下の表15に示した一般式(IA)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。
【0385】
【化81】

【0386】
[α] 23Dの値は、一般式(IA)の化合物をクロロホルムに溶かして測定する。光学活性は、光路長を10cmにしてλ=589nm、23℃で測定する。“c”は濃度を表わし、g/mlを単位として測定する。
【0387】
【表45】

【0388】
表16:一般式(IIn)の化合物
【0389】
以下の表16に示した一般式(IIn)の好ましい個々の化合物によって本発明をさらに説明する。
【0390】
【化82】

【0391】
【表46】

【0392】
生物での実施例:殺真菌作用
【0393】
実施例B-11:ボトリチス・キネレアに対する作用 - 真菌増殖アッセイ
【0394】
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験用プレートを24℃にてインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで48〜72時間後に調べた。化合物の活性は、真菌の増殖の抑制として表現する(0=増殖抑制なし。80%〜90%という値は、良好な抑制〜非常によい抑制を意味する。100%=完全な抑制)。
【0395】
【表47】

【0396】
実施例B-12:ミコスフェレラ・アラキディス(ピーナツの斑点病菌;ケルコスポラ・アラキディコラ(アナモルフ))に対する作用 - 真菌増殖アッセイ
【0397】
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験用プレートを24℃にてインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで6〜7日後に調べた。化合物の活性は、真菌の増殖の抑制として表現する(0=増殖抑制なし。80%〜90%という値は、良好な抑制〜非常によい抑制を意味する。100%=完全な抑制)。
【0398】
【表48】

【0399】
実施例B-13:セプトリア・トリティキに対する作用 - 真菌増殖アッセイ
【0400】
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験用プレートを24℃にてインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで72時間後に調べた。化合物の活性は、真菌の増殖の抑制として表現する(0=増殖抑制なし。80%〜90%という値は、良好な抑制〜非常によい抑制を意味する。100%=完全な抑制)。
【0401】
【表49】

【0402】
実施例B-14:モノグラフェラ・ニバリス(アナモルフ:フザリウム・ニバーレ、ミクロドチウム・ニバーレ;雪枯れ病菌)に対する作用 - 真菌増殖アッセイ
【0403】
低温で保管した真菌の分生子40,000個/mlを栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物のDMSO溶液(2%のジメチルスルホキシド、0.025%のトゥイーン20)を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。さまざまな散布量で化が負う物をテストした。その量は、百万分率(ppm)を単位として表に示してある。試験プレートを24℃にてインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで72時間後に調べた(0=増殖抑制なし。80%〜90%という値は、良好な抑制〜非常によい抑制を意味する。100%=完全な抑制)。
【0404】
【表50】

【0405】
実施例B-15:オオムギのピレノフォラ・テレス(網斑病菌)に対する作用
【0406】
【表51】

【0407】
マルチウエル・プレート(24ウエルの形態)に入れた寒天の上にオオムギの葉の断片を置き、試験溶液(活性成分が200ppm、60ppm、20ppm)をスプレーする。乾燥させた後、円板状の葉に真菌の胞子の懸濁液を接種する。適度にインキュベートした後、化合物の活性を真菌予防活性(単位は%)として接種後4日目に評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物:
【化1】

と、その化合物の互変異性体/異性体/鏡像異性体(ただし一般式(I)において、
R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;
R1とR2が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わすか;
R3とR4が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(Ra)=N(ORb)のいずれかを表わし;
Raは、水素またはC1〜C6アルキルであり;
RbはC1〜C6アルキルであり;
AはA1
【化2】

(ただしこのA1において、
R16はハロゲンメチルであり;
R17は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R18は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA2
【化3】

(ただしこのA2において、
R26はハロゲンメチルであり;
R27は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA3
【化4】

(ただしこのA3において、
R36はハロゲンメチルであり;
R37は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかであり;
R38は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であるか;
AはA4
【化5】

(ただしこのA4において、
R46はハロゲンメチルであり;
R47は、C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルキル、C1〜C4アルコキシ-C1〜C4アルキル、C1〜C4ハロゲンアルコキシ-C1〜C4アルキルのいずれかである)であり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1個以上の置換基R8で置換されており;
各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェノキシ(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、ピリジニルオキシ(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのRcは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRdは、互いに独立にC1〜C6アルキルであり;
それぞれのR9は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(Re)=N(ORf)のいずれかであり;
それぞれのReは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRfは、互いに独立にC1〜C6アルキルである)。
【請求項2】
請求項1に記載の一般式(I)の化合物において、
R1、R2、R3、R4は、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わすか;
R1とR2が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わすか;
R3とR4が合わさってC2〜C5アルキレン基(置換されていないか、1個以上のC1〜C6アルキル基で置換されている)を表わし;
それぞれのR5は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C3〜C6シクロアルキル、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、-C(Ra)=N(ORb)のいずれかを表わし;
Raは、水素またはC1〜C6アルキルであり;
RbはC1〜C6アルキルであり;
Bは、フェニル、ナフチル、キノリニルのいずれかであり、これらは1個以上の置換基R8で置換されており;
各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、シアノ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C6〜C14ビシクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、フェニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わし;
それぞれのRcは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRdは、互いに独立にC1〜C6アルキルであり;
それぞれのR9は、互いに独立に、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、C1〜C6アルキルチオ、C1〜C6ハロゲンアルキルチオ、C3〜C6アルケニルオキシ、C3〜C6アルキニルオキシ、-C(Re)=N(ORf)のいずれかであり;
それぞれのReは、互いに独立に、水素またはC1〜C6アルキルであり;
それぞれのRfは、互いに独立にC1〜C6アルキルである化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、Aが A1である化合物。
【請求項4】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、Bが、1個以上の置換基R8で置換されているフェニル基である化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の一般式(I)の化合物において、それぞれの置換基R8が、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項6】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、AがA1であり、Bが、1個以上の置換基R8で置換されているフェニル基であり、その中の各置換基R8は、互いに独立に、ハロゲン、C1〜C6ハロアルコキシ、C1〜C6ハロアルキルチオ、ニトロ、-C(Rc)=N(ORd)、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R9で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項7】
請求項4に記載の一般式(I)の化合物において、BがB1
【化6】

であり、その中のR18aは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R18bは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R18cは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R18dは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり; R18eは、水素、ハロゲン、シアノ、C1〜C6アルキル、C2〜C6アルキニル、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルキル、C1〜C6ハロゲンアルコキシ、フェニル(置換されていないか、1個以上のハロゲンで置換されている)のいずれかであり;しかもR18a、R18b、R18c、R18d、R18eのうちの少なくとも1つは水素でない化合物。
【請求項8】
請求項7に記載の一般式(I)の化合物において、R18bとR18dが水素であり;R18a、R18c、R18eが、互いに独立に、水素、ハロゲン、C2〜C6アルキニル、C1〜C6ハロゲンアルキルの中から選択され;しかもR18a、R18c、R18eのうちの少なくとも1つが水素でない化合物。
【請求項9】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4が、互いに独立に、水素、ハロゲン、ニトロ、C1〜C6アルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C3〜C6シクロアルキル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルケニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)、C2〜C6アルキニル(置換されていないか、1個以上の置換基R5で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項10】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4が、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲン、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6ハロゲンアルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項11】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4が、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキル(置換されていないか、ハロゲンとC1〜C6アルコキシの中から選択された1個以上の置換基で置換されている)のいずれかを表わす化合物。
【請求項12】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1、R2、R3、R4が、互いに独立に、水素、ハロゲン、C1〜C6アルキルのいずれかを表わす化合物。
【請求項13】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がC1〜C6アルキルまたはC1〜C6ハロアルキルである化合物。
【請求項14】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がハロゲンまたはC1〜C6アルキルである化合物。
【請求項15】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がC1〜C6アルキルである化合物。
【請求項16】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R3がハロゲンである化合物。
【請求項17】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1が、CF3、CF2H、CFH2のいずれかである化合物。
【請求項18】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がCF3である化合物。
【請求項19】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がCF2Hである化合物。
【請求項20】
請求項2に記載の一般式(I)の化合物において、R1がCFH2である化合物。
【請求項21】
有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止する方法であって、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、またはその化合物を活性成分として含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法。
【請求項22】
植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、請求項1に記載の一般式(I)の化合物と、不活性な基剤とを含む組成物。
【請求項23】
一般式(IA)の化合物:
【化7】

(ただし、
R51は、C1〜C3アルキル、CF3、CFH2のいずれかであり;X1は、水素またはフルオロであり;nは2または3であり;それぞれのX2は、互いに独立に、クロロ、ブロモ、フルオロ、CH3、CF3のいずれかであり;アキラルな溶媒に溶かしたときに光学活性[α]Dが0°よりも大きい)。
【請求項24】
請求項23に記載の一般式(IA)の化合物において、X1が水素である化合物。
【請求項25】
請求項23に記載の一般式(IA)の化合物において、R51がメチルである化合物。
【請求項26】
請求項23に記載の一般式(IA)の化合物において、X2がクロロである化合物。
【請求項27】
請求項23に記載の一般式(IA)の化合物において、nが2である化合物。
【請求項28】
請求項23に記載の一般式(IA)の化合物において、nが3である化合物。
【請求項29】
有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止する方法であって、請求項23に記載の一般式(IA)の化合物、または活性成分としてその化合物を含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法。
【請求項30】
植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、請求項23に記載の一般式(IA)の化合物と、不活性な基剤とを含む組成物。

【公表番号】特表2009−539791(P2009−539791A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513596(P2009−513596)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005020
【国際公開番号】WO2007/141009
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【出願人】(500371307)シンジェンタ リミテッド (141)
【Fターム(参考)】