説明

N,N−ジアリルアミン誘導体を基礎とするポリマー、該ポリマーの製造及び使用

本発明は、マイケル付加の範囲内でジアリルアミン又はジアリルアミン誘導体とオレフィン系不飽和化合物との反応から出発し、且つその後に場合により別のラジカル重合可能な化合物の存在下でマイケル付加生成物をラジカル重合する新規のポリマーを製造するための方法に関する。本発明の対象は、それ以外にジアリルアミンとジアリルアミン誘導体との相当するマイケル付加生成物、並びに新規のポリマーの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N−ジアリルアミン誘導体を基礎とする新規のホモポリマー及びコポリマー、該ポリマーを製造するための方法及び中間生成物、並びに場合により置換されたジアリルアミンを活性C=C−2重結合へマイケル付加することによる、これらのホモポリマー及びコポリマーのベースとなるN,N−ジアリルアミン誘導体の製造方法に関する。
【0002】
荷電した有機分子は、多くの化学分野において重要な役割を果たす。特別な地位を占めるのは、界面活性剤として多くの適用分野で使用される両親媒性分子である。
【0003】
高分子電解質は、完全に又は部分的にイオン性モノマー単位又はイオン化可能なモノマー単位から構成されている高分子化合物である。該高分子化合物の特性面は、ポリマー鎖の化学構造により決定されるのみならずまた電荷性質、電荷密度、電荷強度並びにイオン基の局在化によっても決定される。
【0004】
多数の技術適用において、水溶性ポリマーは加工助剤として技術を決定する。例えばポリ4級のポリマーは製紙、化粧品及び構造化学、洗剤調合及び洗浄剤組成物、テキスタイル加工、医薬及び表面コーティングのような多数の工業分野において使用される。この際、高分子電解質は高分子界面活性剤、増粘材、可溶化剤又は分散安定剤として作用する。
【0005】
陽子供与体及び陽子受容体を有する官能基がポリマー中に並存し、かつ分子がpH値に依存して陰イオン又は陽イオンとなり出現することができる場合、このような高分子電解質は、両性高分子電解質又は高分子両性電解質とよばれる。
【0006】
Mumick等(高分子(Macromolecules))1994、27、323〜331)は、流れ抵抗を低下させるための助剤として両性ポリマーの使用を記載している。
【0007】
陽イオン電荷が常時脂肪族又は芳香族のアンモニウム官能基、スルホニウム官能基、ホスホニウム官能基の形で存在し、全てのモノマー単位において塩基性基と結合している場合、これらの両性イオン化合物は、高分子両性電解質ではなくポリベタインとよばれる。というのも、このようなポリマーは水性系において異なった挙動を示すからである。陰イオン電荷がスルホナート基、ホスホナート基又はカルボキシラート基により運ばれるかどうかに従って、ポリスルホベタイン、ポリホスホベタイン及びポリカーボベタインが区別される。
【0008】
原則的に、ポリカーボベタインは2通りの方法で得ることができる。一方では、いわゆるポリマー前駆体の合成、及び引き続くポリマー類似の反応により相当するポリカーボベタインを発生させるか[Al−Muallem等.、ポリマー43、2002、4285〜4295]、又は既に電荷を持つベタインモノマーを重合することによる。WO00/14053は、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(DMAPMA)を基礎とする、水溶性で加水分解安定性の両性モノマーからなるポリマーの合成を記載している。
【0009】
しかしながら、このようなモノマーのラジカル重合は、しばしば単にオリゴマーの及び不均一な生成物を発生させるだけか、さもなければ重合速度は低い反応性に基づいて非常に低い。
【0010】
何よりも、ジアリル化合物を基礎とするポリマーは、ジアリルアンモニウム化合物から出発し、引き続き環化重合を行ったポリカーボベタインである[Favresse等.、ポリマー42(2001)2755〜2766]。
【0011】
pH値に従って、ジアリルアミンと置換されたジアリルアミンとを基礎とする両性ポリマーは、陰イオン性、陽イオン性又は両性イオン性で存在しうる。
【0012】
ジアリルアミンを基礎とする中性及び(両性イオン性)モノマーは公知である。例えば、Hodgkin等はJ.Amer.Chem.Soc.1980(14)第211〜233頁でマンニッヒ反応の反応機構を経由するジアリルアミンモノマーのための合成を記載している。更に、1工程の反応においてN−置換されたジアリルアミン−モノマーが、ジアリルアミンのN−アルキル化により作り出される。同じ著者等は、Reich等の手順に相応する2−ビニルピリジンのジアリルアミンへの酸触媒による付加も記載している[JACS、77(1955)4913〜4915]。塩化水素の放出下で、4−クロロピリジンとジアリルアミンとの反応によりN−置換された4−アミノピリジンの生成を、Mathias等は記載している[US4591625]。HodgkinとSolomonによれば[J.Macromol.Sci.Chem.A10(5)、893〜922]、N−ベンジル置換されたジアリルアミン及びN−複素芳香族置換されたジアリルアミンは、同様にマンニッヒ反応を経由して得ることができる。Al−Muallem等[ポリマー43(2002)1041〜1050]は炭酸カリウムの添加下で、ジアリルアミンと、クロロ酢酸エチルエステルもしくは1−クロロヘキサン酸エチルエステルとの反応によるN,N−ジアリル−N−カーボエトキシメチルアミンもしくはペンチルアミンの合成を記載している。Laschewsky等は、求核置換によりエチル−2−(N,N−ジアリルアミノ)バレラートを合成している。潜在的に陰イオン官能基、とりわけカルボキシル基を含有する置換されたジアリルアミン誘導体の、これら全ての既に公知の合成には、求核置換に際してハロゲン化カルボン酸エステルが使用され、それに応じて精製工程及びけん化工程を酸官能基が得られるまで実施しなければならないという欠点がある。同時にこれは、より高い消費時間及び費用、並びに僅かな収率を意味している。
【0013】
ジアリルアミンと置換されたジアリルアミンとを基礎とするポリマーは、例えば凝集剤及びイオン交換樹脂の製造のために、並びに繊維技術及び紙技術において使用される。
【0014】
Al−Muallem等は、ポリマー43(2002)、第4285頁でカルボキシラート−陰イオン−官能化された側鎖を有するポリピロリジンの合成を記載している。費用の掛かる合成は、カルボエトキシ−メチルジアリル−アンモニウムクロリドのラジカル重合からポリマー類似のけん化、透析及び最終的にはNaOHを用いたプロトン除去により最終生成物を発生させる。この場合、有価生成物の収率は50%を下回る。Hodgkin等は、J.Amer.Chem.Soc.1980(14)第211〜233頁で、遊離酸官能基を有するジアリルモノマーは非常に重合性が劣ることを指摘している。そこで記載される2−ジアリルアミノ−安息香酸の重合は成功していない。とりわけ、Solomon等により、J.Macromol.Sci.−Rev.Macromol.Chem.、C15(1976)第143〜164頁で、電荷を有していない形(die ungeladene Form)はラジカル重合の条件下で「進んで」重合可能ではないことから、ジアリルアミンを有利にその4級化アンモニウム塩の形で重合することが詳しく説明されている。
【0015】
本発明の課題は、容易且つ高い収率で得られるホモポリマー及びコポリマーを、場合により4級化ジアリルアミノ基に加えて更に少なくとも1の官能基を持つジアリルアミン又はジアリルアミン誘導体を基礎とする、同様に容易且つ高い収率で得られるモノマーから製造することであった。これらの更なる官能基は有利にプロ陰イオン(proanionische)の、とりわけ有利にカルボキシル基である。
【0016】
ところで意想外にも、マイケル付加において一般式IのN,N−ジアリルアミン誘導体
【0017】
【化1】

[式中、
、Rは互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]を一般式IIの化合物
【0018】
【化2】

[式中、
はCOOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)又はCONRを表し、且つ
、R及びRは互いに無関係に水素又はC〜C18−アルキルを表す]と反応させ、且つ引き続きマイケル付加生成物を、場合により1又は複数のラジカル共重合可能なモノマーの存在下でラジカル重合することにより、N,N−ジアリルアミンを基礎とするポリマーを、容易且つ高い収率で得られることが判明した。
【0019】
、Rが互いに無関係に、例えば水素、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル、n−ブチル、1−メチルプロピル、2−メチルプロピル又は1,1−ジメチルエチルでもよい、式Iのジアリルアミン誘導体として、化合物ジアリルアミン、2−メチルジアリルアミン又はビス(2−メチルアリル)アミン、2−エチルジアリルアミン、ビス(2−エチルアリル)アミン、2−イソプロピルジアリルアミン、ビス(2−イソプロピルアリル)アミン、2−Tert−ブチルジアリルアミン又はビス(2−Tert−ブチルアリル)アミンが有利である。特に有利であるのはN,N−ジアリルアミンである。
【0020】
一般式IIの化合物は、例えばアクリル酸、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、イソ−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート及びステアリルアクリラートのようなアクリル酸エステル、更にアクリロニトリル、アクロレイン、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド及びN−オクチルアクリルアミドである。一般式IIの有利な化合物はアクリル酸である。
【0021】
従って、有利なのはジアリルアミンとアクリル酸とのマイケル付加である。
【0022】
一般式Iの化合物と一般式IIの化合物とからなる本発明による反応生成物との共重合のためのモノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸並びにその半エステル、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、t−ブチルメタクリラート、イソブチルアクリラート、イソブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ステアリルアクリラート、ステアリルメタクリラート、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、アルキレングリコール(メタ)アクリラート、スチレン、例えばアクリルアミドプロパンスルホン酸のような不飽和スルホン酸、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル(例えば:メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル又はドデシルビニルエーテル)、ビニルホルムアミド、ビニルメチルアセトアミド、ビニルアミン、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリラート及びN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド;3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムメチルスルファート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]メタクリルアミド、硫酸メチル又は硫酸ジエチルが挙げられる。アミノ基を持つモノマーは4級化された形で存在してよい。
【0023】
更に本発明の対象は、式I及びIIの化合物から出発するポリマーの製造方法である。
【0024】
本発明による方法は、一般式Iの化合物と、一般式IIの少なくとも1の化合物とのマイケル付加の意味における反応を含む。
【0025】
I:IIの有利なモル比は1:1であるが、成分の一つを過剰で用いて処理してもよい。過剰の例として、1:1.1又は1.1:1が挙げられる。
【0026】
純粋物質の混和性に従って、マイケル付加を溶剤を用いてか、又は用いないで行うことができる。溶剤として、水、例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノールのようなアルコール、例えばジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンのようなエーテル、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレンのような芳香族炭化水素、例えばアセトンのようなケトン、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドのようなアミド、例えばジクロロメタン、クロロホルム又は1,1,2,2−テトラクロロエタンのような塩素化炭化水素、例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド又はスルホランのようなスルホキシド、スルホンを使用してよい。
【0027】
有利な実施態様は、溶剤を用いない反応である。
【0028】
マイケル付加から得られた生成物は、自体公知の方法で単離してよい。
【0029】
通常、マイケル付加は、−20℃〜+50℃、有利に−10℃〜+30℃の温度で行う。
【0030】
更に発明の対象は、この反応から得られた式III
【0031】
【化3】

[式中、
、Rは互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表し、RはCOOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)又はCONRを表し、且つ
、R、Rは互いに無関係に水素又はC〜C18−アルキルを表す]の生成物であり、この際、プロトン化による窒素の4級化も存在してよい。
【0032】
更に本発明による方法は、式IIIの生成物の重合を含む。一般式IIIの本発明による化合物は単離するか、又は更に後処理することなく重合のために使用してよい。
【0033】
一般式IIIの本発明による化合物は、反応させてホモポリマーにするか、又は1もしくは複数のラジカル共重合可能なモノマーの存在下で反応させてコポリマーにしてよい。
【0034】
重合とは、有利に溶液中で実施されるラジカル重合のことである。可能な溶剤は、重合反応のために通常の全ての溶剤である。有利な溶剤は水である。ラジカル重合は、自体公知の方法で酸素を排除しながら、例えば不活性ガスを貫流することにより、且つ場合により不活性ガス雰囲気下で実施し、この際、不活性ガスとして有利に窒素が使用される。
【0035】
ラジカル重合のための開始剤として、水溶性及び水不溶性の開始剤を使用してよい。通常の開始剤は、過酸化物、ヒドロペルオキシド、ペルオキソ2硫酸塩、ペルカーボナート、ペルオキシドエステル、過酸化水素及びアゾ化合物である。例えば過酸化水素、ジベンゾイルペルオキシド、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボナート、ジラウロイルペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、ジ−tert−ブチルヒドロペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、tert−ブチルペルネオデカノアート、tert−アミルペルピバラート、tert−ブチルペルピバラート、tert−ブチル−ペルベンゾアート、ペルオキソ2硫酸リチウム、ペルオキソ2硫酸ナトリウム、ペルオキソ2硫酸カリウム及びペルオキソ2硫酸アンモニウムが挙げられる。開始剤として、例えばアゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルファートジヒドラート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−yl)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−yl)プロパン]、4,4’−アゾ−ビス−(4−シアノ吉草酸)、1,1’−アゾ−ビス−(シクロヘキサンカルボン酸ニトリル)、2,2’−アゾビス(イソ酪酸アミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドラート、2,2’−アゾビス{2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド] のような水溶性のアゾ化合物、及び例えば2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチル−プロピオナート)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)のような有機溶剤中で可溶性のアゾ化合物も使用してよい。
【0036】
開始剤はそれ単独か、又は混合物として適用してよい。このような混合物のための例は、例えば過酸化水素とペルオキソ2硫酸ナトリウムとの混合物のような2成分の混合物である。水性媒体中での重合のために、有利に水溶性の開始剤を使用する。
【0037】
更に、重合開始剤としてレドックス開始剤系を使用してよい。このようなレドックス開始剤系は少なくとも1のペルオキシドを含有する化合物を、アルカリ金属の重亜硫酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜二チオン酸塩及び四チオン酸塩のような例えば還元作用のある硫黄化合物、及びアンモニウム化合物のようなレドックス−補助開始剤と組み合わせて含有する。従って、ペルオキソ2硫酸塩と、アルカリ金属亜硫酸水素塩又はアンモニウム亜硫酸水素塩、例えばペルオキソ2硫酸アンモニウムと2亜硫酸アンモニウムとの組み合わせを使用してよい。ペルオキシドを含有する化合物:レドックス−補助開始剤の比は、30:1〜0.05:1の範囲である。
【0038】
開始剤もしくはレドックス開始剤系との組み合わせにおいて、更に遷移金属触媒、例えば鉄、コバルト、ニッケル、銅、バナジウム及びマンガンの塩を使用してよい。例えば、適切な塩は硫酸鉄(II)、塩化コバルト(II)、硫酸ニッケル(II)又は塩化銅(I)である。
【0039】
通常、モノマーに対して、還元作用のある遷移金属塩を0.1ppm〜約1000ppmの範囲の濃度で使用する。従って、例えば0.5〜30%の過酸化水素及び0.1〜500ppmのモール塩のように、過酸化水素と鉄(II)塩との組み合わせを使用してよい。
【0040】
有機溶剤中での重合の際、上記の開始剤と組み合わせてレドックス−補助開始剤及び/又は遷移金属触媒、例えばベンゾイン、ジメチルアニリン、アスコルビン酸並びに銅、コバルト、鉄、マンガン、ニッケル及びクロムのような重金属の有機可溶な錯体を併用してよい。通常使用されるレドックス−補助開始剤もしくは遷移金属触媒の量は、使用されるモノマーの量に対して約0.1〜約1000ppmである。
【0041】
有利な実施態様において、水溶性のアゾ開始剤、過酸化水素、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム又は過硫酸アンモニウムを使用する。
【0042】
とりわけ有利な開始剤は、水溶性のアゾ開始剤、非常に有利なのは2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド(商標名:VA−044)である。
【0043】
一般的に開始剤量は、モノマーの全質量に対して0.5〜10質量%である。有利な量は、1〜6質量%、とりわけ有利なのは2〜4質量%である。
【0044】
1又は複数のラジカル重合可能なモノマーと式IIIの化合物との共重合の場合、化合物IIIのモル割合は、モノマーの全量に対して、5〜95モル%の範囲、有利に20〜80モル%の範囲に、とりわけ有利に45〜55モル%の範囲にある。
【0045】
重合を、30〜90℃、有利に40〜70℃、非常に有利に55〜65℃の温度範囲で実施してよい。
【0046】
一般式IIIのモノマーの単独重合は、酸を添加することなく、又は添加して実施してよい。加水分解を受けやすい置換基の非存在下では、有利に単独重合を酸の存在下で実施する。
【0047】
適切な酸は塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸及びトリクロロ酢酸である。とりわけ適切なのは、塩酸、硫酸及びリン酸、非常に適切なのは塩酸である。
【0048】
水溶液中での一般式IIIのモノマーの単独重合は、有利に0〜70モル%の範囲の酸濃度で実施してよい。とりわけ有利なのは、5モル%より大きい、非常に有利に30モル%より大きい分子濃度である。
【0049】
例えばビニルホルムアミドのような、加水分解により得られるモノマーと一般式IIIのモノマーとの共重合は、有利に緩衝水溶液中で実施する。
【0050】
溶液中のモノマー濃度の合計は、15〜85%、有利に25〜75%、とりわけ有利に40〜60%である。
【0051】
例えば本発明によるポリマーの分子量(M、M)のような特性は、選択された反応条件に依存する。例えば影響を与えるパラメータとしての反応条件は、開始剤量、開始剤種類、開始剤添加の過程、酸の使用、酸の種類及び量、重合溶液の固体含有率、温度、反応継続時間、開始剤添加を繰り返し行う後重合、又は後重合の継続時間である。選択された反応条件に応じて、収率は40〜95%である。分子量Mは、10000〜300000、とりわけ30000〜200000の範囲にある。例えば塩酸媒体中でのポリ(N,N−ジアリル−3−アミノ−プロピオン酸)の製造の場合、50%の固体含有率(モノマーの全濃度)及び3%の開始剤濃度で90%の収率が得られる。
本発明によるポリマーの溶液は、ベタインの挙動を示す。
【0052】
本発明によるポリマーは、例えば化粧品剤及び医薬品、食料品、界面活性剤及び洗浄剤のように多岐にわたって使用することができる。本発明によるポリマーは、石油工業、化学パルプ処理、塗料製造及び繊維工業において使用することができる。
【0053】
本発明を、以下の実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されない。
【0054】
実施例1:N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸
ジアリルアミン250gを、0℃で窒素雰囲気下で攪拌した。アクリル酸185.5g(モル比1:1)を、2時間にわたって滴加した。バッチを40℃に加熱し、更に4時間攪拌した。反応生成物として、定量収率で褐色で粘性のある液体が得られる。1%(モル%)の水溶液のpH値は、約5.8である。
【0055】
NMR−分光分析法を用いた構造解析:
H NMR(500MHz、溶剤CDCl):
【0056】
【表1】

【0057】
13C NMR(500MHz、溶剤DO):
δ=34、52.5、58、129、130及び181ppm。
【0058】
実施例2:ポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)
N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸200g、32%の塩酸67.5g及び水32.5gを含有するモノマー溶液を、窒素雰囲気下で60℃に加熱した。その後、重合を、VA−044(2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド)の8%の開始剤水溶液10%の添加により開始した(モノマーの全量に対して、開始剤の全量は4質量%である)。開始剤溶液を更に60%滴下しながら3時間にわたって添加した。更に2時間の攪拌後、残りの開始剤溶液を1時間かけて添加し、最終的に温度を80℃に高め、再び3時間攪拌した。ポリマーが93%の収率で得られた。
【0059】
酸濃度とポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)の収率との関係:
第2表に記載されたポリマーを、実施例2に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、酸量を変更した。その他の反応条件:酸の濃度は、モノマー量に対するものである。全モノマーの質量割合50%、触媒VA−044の質量割合4%、後重合時間1h、温度60℃、開始剤溶液の10体積%を反応開始時に添加した
【0060】
【表2】

モノマー溶液(質量%)の固体含有率に依存するポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)の収率及び分子量M
第3表に記載されたポリマーを、実施例2に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、装入されたモノマー量を変更した。その他の反応条件:後重合時間1h、温度60℃、開始剤溶液10体積%を反応開始時に添加した、塩酸、モノマー量に対する酸濃度50%、触媒VA−044の質量割合2%。
【0061】
【表3】

【0062】
反応温度とポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)の収率及び分子量Mとの関係
第4表に記載されたポリマーを、実施例2に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、温度を変更した。その他の反応条件:全モノマーの質量割合50%、触媒VA−044の質量割合2%、後重合時間1h、開始剤溶液の25体積%を反応開始時に添加した、塩酸、モノマー量に対する酸濃度50%。
【0063】
【表4】

【0064】
開始剤量(モノマーに対する質量%)とポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)の収率との関係
第5表に記載されたポリマーを、実施例2に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、開始剤量を変更した。その他の反応条件:全モノマーの質量割合50%、後重合時間1h、温度60℃、開始剤溶液の10体積%を反応開始時に添加した、塩酸、モノマー量に対する酸濃度50%。
【0065】
【表5】

【0066】
種々の重合条件に依存するポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸)の収率及び分子量M
第6表に記載されたポリマーを、実施例2に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、温度及び開始剤添加を変更した。その他の反応条件:モノマーの質量割合50%、触媒VA−044の質量割合2%、後重合時間1h、モノマー量に対する酸量50%、
【0067】
【表6】

【0068】
実施例4:ポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸−コ−アクリルアミド)
N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸169g、及びアクリルアミド71g(モル比1:1)、及びモノマー量に対して4%のVA−044の開始剤水溶液(水480mlの中に溶解した9.6g)からなる共通の50%の水溶液を、それぞれの滴下漏斗に用意した。モノマー溶液の20%を、反応容器に滴下し60℃に加熱した。開始剤溶液の20%を添加して反応を開始した。次いで、残留するモノマー溶液を4時間のあいだ、残りの開始剤溶液を5時間のあいだ滴加した。その後、反応混合物を更に1時間、80℃で攪拌した。85%のポリマーの収率で帯黄色の溶液が得られた。
【0069】
種々の反応条件下でのポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸−コ−アクリルアミド)の製造における収率
第7表に記載されたポリマーを、実施例4に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、個々の反応条件は第6表から読み取ることができる。
【0070】
DPA:N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸
AAM:アクリルアミド
【0071】
【表7】

【0072】
実施例6:ポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸−コ−ビニルホルムアミド)
N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸及びビニルホルムアミド(モル比1:1)、及びモノマー量に対して4質量%のVA−044の開始剤水溶液からなる共通の25%の水溶液を、それぞれの滴下漏斗に用意した。モノマー溶液の20%を、反応容器に滴下し60℃に加熱した。緩衝剤として、NaHPO・2HO4.8gを添加した。開始剤溶液の20%を添加して反応を開始した。次いで、残留するモノマー溶液を4時間のあいだ、残りの開始剤溶液を5時間のあいだ滴加した。その後、反応混合物を更に1時間、80℃で攪拌した。ポリマーの収率は94%だった。
【0073】
種々の反応条件下でのポリ(N,N−ジアリル−3−アミノプロピオン酸−コ−ビニルホルムアミド)の製造における収率
第8表に記載されたポリマーを、実施例4に記載された反応とほぼ同様に製造し、この際、個々の反応条件は第8表から読み取ることができる。
【0074】
VFA:ビニルホルムアミド
【0075】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーの製造方法において、一般式IのN,N−ジアリルアミン誘導体
【化1】

[式中、
、Rは互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]
をマイケル付加の意味において、一般式IIの化合物
【化2】

[式中、
はCOOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)又はCONRを表し、且つ
、R、Rは互いに無関係に水素又はC〜C18−アルキルを表す]
と反応させ、
且つ引き続きマイケル付加生成物を、場合により1又は複数のラジカル共重合可能なモノマーの存在下でラジカル重合することを特徴とする、ポリマーの製造方法。
【請求項2】
式中、R及びRが水素を表す、請求項1記載の方法。
【請求項3】
式中、RがCOOHを表す、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
重合を、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、並びにその半エステル、メチルアクリラート、メチルメタクリラート、エチルアクリラート、エチルメタクリラート、n−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、t−ブチルアクリラート、t−ブチルメタクリラート、イソブチルアクリラート、イソブチルメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ステアリルアクリラート、ステアリルメタクリラート、アクリルアミド、N−t−ブチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルメタクリラート、アルキレングリコール(メタ)アクリラート、スチレン、例えばアクリルアミドプロパンスルホン酸のような不飽和スルホン酸、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、ビニルエーテル(例えば:メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル又はドデシルビニルエーテル)、ビニルホルムアミド、ビニルメチルアセトアミド、ビニルアミン、1−ビニルイミダゾール、1−ビニル−2−メチルイミダゾール、N,N−ジメチルアミノメチルメタクリラート及びN−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−ビニルイミダゾリウムメチルスルファート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート、塩化メチル、硫酸メチル又は硫酸ジメチルにより4級化されたN−[3−(ジメチルアミノ)−プロピル]メタクリルアミドの群から選択される1又は複数のモノマーの存在下で実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
重合を、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸の群から選択される酸の存在下で行うことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応温度が30〜90℃の間にあることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
反応温度が40〜70℃の間にあることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
1から7までのいずれか1項記載の方法により得られるポリマー。
【請求項9】
一般式IIIのN,N−ジアリルアミン誘導体
【化3】

[式中、
、Rは互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表し、
はCOOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)又はCONRを表し、且つ
、R、Rは互いに無関係に水素又はC〜C18−アルキルを表し、この際、プロトン化による窒素の4級化も存在してよい]
【請求項10】
式中、R及びRが水素を表すことを特徴とする、請求項9記載のN,N−ジアリルアミン誘導体。
【請求項11】
式中、RがCOOHを表すことを特徴とする、請求項9又は10記載のN,N−ジアリルアミン誘導体。
【請求項12】
請求項9から11までのいずれか1項記載の、一般式IIIの置換されたN,N−ジアリルアミン誘導体の製造方法において、一般式IのN,N−ジアリルアミン誘導体
【化4】

[式中、
、Rは互いに無関係に水素又はC〜C−アルキルを表す]
と一般式IIの化合物
【化5】

[式中、
はCOOR、CN、CHO、SOH、PO(OH)又はCONRを表し、且つ
、R、Rは互いに無関係に水素又はC〜C18−アルキルを表す]
との間でマイケル付加を実施することを特徴とする、請求項9から11までのいずれか1項記載の、一般式IIIの置換されたN,N−ジアリルアミン誘導体の製造方法。
【請求項13】
溶剤を使用しないことを特徴とする、請求項12記載の方法。
【請求項14】
化粧品剤及び医薬品を製造するための請求項8記載のポリマーの使用。
【請求項15】
定着剤及び凝集剤を製造するための請求項8記載のポリマーの使用。
【請求項16】
洗剤及び洗浄剤を製造するための請求項8記載のポリマーの使用。
【請求項17】
ポリマー分散液における請求項8記載のポリマーの使用。

【公表番号】特表2007−506852(P2007−506852A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529996(P2006−529996)
【出願日】平成16年9月18日(2004.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/010495
【国際公開番号】WO2005/037882
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】