説明

N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネートの製造方法

【課題】工業的にゼオライトを製造する際の鋳型化合物として有用な、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩を、簡便かつ容易に製造することができる方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)


で表されるN,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと、炭酸ジアルキル化合物とを、溶媒存在下又は無溶媒条件下、反応時における系内の含水量をN,N−ジアルキルアミノアダマンタンの10重量%未満にして反応させるN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは、主としてアルミニウム源とケイ素源を含有する原料を水性合成ゲル中で反応させて結晶を形成させ、該結晶を成長させた後、乾燥させ、次いで焼成処理に付して細孔から水を除去することによって一般に得られる。その際、合成ゲル中において鋳型化合物を使用することにより、各種のゼオライトが設計されている。
【0003】
ゼオライトを製造するための鋳型化合物として、アダマンタン化合物を使用することは公知である。
【0004】
一般的なN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩の合成法としては、例えば、1−アミノアダマンタンにトリブチルアミン存在下で3倍モルのメチルヨウ化物を反応させてN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨウ化物を得る方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。また、1−アミノアダマンタンにホルマリンと蟻酸とを作用させて得られたN,N−ジアルキルアミノアダマンタンを、更にメチルヨウ化物と反応させてN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムヨウ化物とする合成法も知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、これら従来の製法では、原料の1−アミノアダマンタン及び反応試薬として用いられるアルキルヨウ化物が高価であり、工業的な原料として用いることは経済的に不利である。また、一般にアルキルヨウ化物は毒性が高く、多量の試薬を使用するには問題がある。
【0006】
一方、第三級アミン化合物から第四級アンモニウム塩を得る方法として、炭酸ジアルキルを用いる方法が知られている。例えば、水の存在下で炭酸ジアルキルと第三級アミンとを反応させることにより、高純度な第四級アンモニウム塩を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。また、水の存在下で炭酸ジアルキルと第三級アミンとを反応させる反応させる方法において、反応系に有機カルボン酸を添加することにより効率的に高収率で第四級アンモニウム塩を合成する方法も提案されている(例えば、特許文献4参照)。これらいずれの方法も反応には理論量以上の水が必須であり、中間体が加水分解されて反応が促進されることが示唆されている。
【0007】
ところで、第四級トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩は、アルカノールアミンの存在下で加熱によりジアルキルアミノアダマンタンに分解することが知られている(例えば、特許文献5参照)。よって、特許文献3や特許文献4に記載の方法をそのまま適用し、水、第三級アミン、及びアルコール存在下で加熱反応を行っても、目的の第四級アンモニウム塩が得られ難いことは容易に予想される。
【0008】
さらに、これまで合成されたN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムカルボン酸塩としては、シクロペンタンジカルボン酸塩と幾つかの芳香族カルボン酸塩(例えば、非特許文献1参照)、又は一連の環状芳香族エーテルの包摂化合物塩(例えば、非特許文献2参照)が知られているのみであり、これらもヨウ化物塩からのアニオン交換で合成されているため、炭酸ジアルキルからN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム塩を合成した例は知られていない。
【0009】
以上のとおり、工業的にゼオライトを製造する際の鋳型化合物として有用なN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩を、簡便かつ高収率で容易に得られる製造法が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】米国特許第4665110号明細書
【特許文献2】米国特許第4544538号明細書
【特許文献3】特開昭63−132862号公報
【特許文献4】特開平7−53478号明細書
【特許文献5】米国特許第3310469号明細書
【非特許文献1】Russian Journal of General Chemistry(Translation of Zhurnal Obshchei Khimii)1999、69(4)、644−647
【非特許文献2】J.Org.Chem. 1990,55,2762−2767
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記の背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、工業的にゼオライトを製造する際の鋳型化合物として有用なN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウム塩を、簡便かつ容易に製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記の課題を解決するために鋭意検討した結果、N,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと炭酸ジアルキルからN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムアルキルカーボネートを簡便かつ高収率で容易に合成することが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりのN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネートの製造方法である。
【0014】
[1]下記一般式(1)
【0015】
【化1】

[式中、R,Rは、同一又は異なって、C〜Cの直鎖又は分岐のアルキル鎖を示し、RとRが互いに結合して脂環式の炭化水素環を形成していてもよい。]
で表されるN,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと、下記一般式(2)
【0016】
【化2】

[式中、R,Rは、同一又は異なって、C〜Cの直鎖又は分岐のアルキル鎖を示し、RとRが互いに結合して脂環式の炭化水素環を形成していてもよい。]
で表される炭酸ジアルキル化合物とを、溶媒存在下又は無溶媒条件下、反応時における系内の含水量をN,N−ジアルキルアミノアダマンタンの10重量%未満にして反応させる、下記一般式(3)
【0017】
【化3】

[式中、R,R,R,Rは上記と同じ定義である。]
で表されるN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体を製造する方法。
【0018】
[2]前記一般式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を、前記一般式(1)で表されるN,N−ジアルキルアミノアダマンタン1モル当たり1〜20モル使用することを特徴とする上記[1]記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【0019】
[3]反応溶媒として、ジメチルスルホキサイド、ジエチルエーテル、THF、DMF、HMPA、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及び2−プロパノールからなる群より選ばれる極性溶媒を使用することを特徴とすることを特徴とする上記[1]又は[2]記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【0020】
[4]反応温度50℃〜300℃で反応(アンモニウム化)を実施することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ゼオライトを製造する際の鋳型化合物として用いられるN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体を、簡便な製法を用いて容易に得ることができるため、本発明は工業的にきわめて有用である。
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本発明のN,N,N−トリアルキル−1−アダマンタンアンモニウムアルキルカーボネートは、N,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと炭酸ジアルキルとの反応(アンモニウム化)により合成することができる。
【0024】
本発明の方法で使用されるN,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンは、前記一般式(1)で表されるものであればよく、特に限定されない。また、本発明の方法で使用される炭酸ジアルキルは、前記一般式(2)で表されるものであればよく、特に限定するものではないが、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等が挙げられる。
【0025】
本発明の方法で使用されるN,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンは、例えば、1−ハロゲン化アダマンタンとジアルキルアミンを、触媒としてヨウ素の存在下で反応させることにより、簡便にかつ安価に得ることができる。
【0026】
本発明の方法で使用される炭酸ジアルキルの使用量は、特に限定するものではないが、N,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタン1モル当たり、1〜20モルの範囲であることが好ましく、更に好ましくは1モル〜10モルの範囲である。1モル未満であると反応が化学量論的に進行せずに未反応のN,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタンが残存し、20モル以上ではコスト的に不利である。
【0027】
本発明の方法では、N,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと炭酸ジアルキルとの反応は、無溶媒条件又は不活性溶媒存在下で実施される。反応に用いられる不活性溶媒としては、特に限定するものではないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等の直鎖状脂肪族炭化水素類、ジメチルブタン、メチルペンタン、ジメチルペンタン、メチルヘキサン、トリメチルペンタン、ジメチルヘキサン、メチルヘプタン等の分岐状脂肪族炭化水素類、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタン、メチルシクロへキサン、メチルシクロヘプタン、メチルシクロオクタン、ジメチルシクロペンタン、ジメチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘプタン、ジメチルシクロオクタン、エチルシクロペンタン、エチルシクロヘキサン、エチルシクロヘプタン、エチルシクロオクタン等の環状脂肪族炭化水素類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、n−プロピルエーテル、n−ブチルエーテル、n−ペンチルエーテル、n−ヘキシルエーテル、n−オクチルエーテル等の直鎖状脂肪族エーテル類、イソプロピルエーテル、イソブチルエーテル、ブチルメチルエーテル、ブチルエチルエーテル、sec−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、tert−ブチルエチルエーテル等の分岐状脂肪族エーテル類、混合物として石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン等、ジメチルスルホキサイド、THF、DMF、HMPA等の極性溶媒、更には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、n−ノナノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール等の直鎖状一級アルコール類、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、2,2−ジメチル−1−プロパノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、5−メチル−1−ヘキサノール、2,2,4−トリメチル−1−ペンタノール、2,4,4−トリメチル−1−ペンタノール、3,5−ジメチル−1−ヘキサノール、2−プロピル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、3,7−ジメチル−1−オクタノール、6−メチル−1−オクタノール等の分岐鎖状一級アルコール類、イソプロパノール、2−ブタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、2−ノナノール、2−デカノールブタノール、2−ウンデカノール、2−ドデカノール、2−トリデカノール、2−テトラデカノール、2−ヘキサデカノール、2−オクタデカノール、3−メチル−2−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2,2−ジメチル−3−ペンタノール、2−メチル−3−ヘキサノール、2,4−ジメチル−3−ペンタノール、5−メチル−2−ヘキサノール、4,4−ジメチル−2−ペンタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、4−メチル−3−ヘプタノール、2,6−ジメチル−4−ヘプタノール、2,6,8−トリメチル−4−ノナノール等の分岐状二級アルコール類、シクロヘキサノール、シクロヘプタノール、シクロブタノール、シクロペンタノール等の脂環式一級アルコール類、tert−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3−エチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2,3−ジメチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−オクタノール、3,7−ジメチル−3−オクタノール等の三級アルコール類等が挙げられる。これらのうち、ジメチルスルホキサイド、ジエチルエーテル、THF、DMF、HMPA、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノールが、工業的に入手し易い極性溶媒であり、反応溶媒として好ましい。本発明の方法において、これらの溶媒を単独で又は任意の割合で混合して使用しても良い。本発明の方法においては、取り扱いの容易さと経済性から、それらの中でも特にメタノールが好ましい。
【0028】
本発明の方法において、反応で使用される溶媒量は、特に限定するものではないが、N,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタン1g当たり、通常0.1g〜100gの範囲、好ましくは0.5g〜2.0gの範囲である。溶媒量がN,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタン1g当たり0.1gよりも少ない量では、反応系が粘調になり、反応速度が低下するおそれがある。また、100g以上の量では、反応液が希薄となり、反応速度が低下するおそれがある。
【0029】
本発明の方法は、反応時において系内に多量の水が含まれると、反応が阻害され、目的物の収率が低下するため、反応系内の含水量を、通常、N,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンの10重量%未満にして実施される。
【0030】
本発明の方法において、加熱反応を行う際に、炭酸ジアルキル及び低沸点の溶媒は揮発しやすいため、この場合には反応を密閉容器で行うことが望ましい。反応時の圧力は、特に限定するものではないが、常圧〜10MPaの範囲で十分である。
【0031】
本発明の方法において、反応温度としては、特に限定するものではないが、50〜300℃の範囲が好ましく、更に好ましくは100〜200℃の範囲である。50℃よりも低い温度では、十分な反応速度が得られない場合があり、また、300℃を超える温度では、目的生成物の分解等も起こりやすくなるため好ましくない。
【0032】
本発明の方法において、目的物の単離は、通常は生成した四級塩をろ過することで可能である。但し、反応が充分進行して原料のN,N,−ジアルキル−1−アミノアダマンタンが残存していない場合は、反応後に得られた反応液から未反応の炭酸ジアルキルと溶媒を留去することのみで直接目的物を得ることが出来る
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の詳細について実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はそれらに限定して解釈されるものではない。なお、本実施例における生成物の収率は、H−NMRにて確認した。
【0034】
なお、以下の実施例において、H−NMR及び13C−NMRの測定は、Varian社製Gemini−200を使用した。
【0035】
また、液体クロマトグラフィーによる質量分析は、ブルカー・ダルトニクス社製、TOF−MS、microTOFを使用した(イオン源 ESI、測定モード 陽イオン)。
【0036】
調製例.
撹拌子を入れたステンレス製の30ml簡易耐圧容器に、1−ブロモアダマンタン1.0g(4.7mmol)、ヨウ素0.24g(0.93mmol)を入れ、反応器を窒素雰囲気下でドライアイスバスにつけて冷却した状態でボンベからジメチルアミンガスを通じてジメチルアミン9.6g(212mmol)を冷却捕集した。反応器を密閉後、オイルバスに漬け加温撹拌し180℃まで昇温し、続けて同条件で4時間反応を行った。尚、反応時の圧力は10Mpaを越えることはなかった。反応終了後に反応器を室温まで冷却し、得られたスラリー状物に48%苛性水溶液とジクロロメタンを加えて中和、抽出を行い、分液して得られた反応液についてガスクロマトグラフィー分析(内部標準法)を行った。
【0037】
その結果、1−ブロモアダマンタンの転化率は97.1%であり、N,N−ジメチル−1−アミノアダマンタンが収率91.6%で得られ、アダマンタン−1−オールが1.7%とアダマンタンが2.3%得られたことを確認した。
【0038】
実施例1.
攪拌子を入れたステンレス製の30ml簡易耐圧容器に、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタン3.59g(20mmol)、炭酸ジメチル5.40g(60mmol)、メタノール2.92gを入れ、反応器内を窒素で置換した。反応器を密閉後、オイルバスに漬けて加熱攪拌し145℃まで昇温し、続けて同条件で10時間反応を行った。反応終了後に反応器を室温まで冷却し、得られた液をエバポレーターで減圧し、未反応の炭酸ジメチル、溶媒のメタノールを留去した。この時に得られた結晶は、白色の粉体結晶であり、収量は5.30gであった。
【0039】
生成物について、核磁気共鳴スペクトル(NMR)分析、質量スペクトル、元素分析、及び赤外吸収スペクトル(IR)分析を行った。それらの結果を以下に示す。
【0040】
NMR分析:H−NMR(CDCl) δ(ppm):3.52(s,3H)、3.27(s,9H)、3.36(s,3H)、2.05−2.07(d,6H)、1.71(m,6H)。13C−NMR(CDCl) δ(ppm):158.2,71.6,52.3,47.4,47.3,35.1,34.8,30.0。
【0041】
液体クロマトグラフィーによる質量分析 ESI法 (m/e):N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム骨格の分子量 194.191(M+)。
【0042】
元素分析(測定値):C67.6,H10.3,N5.2
(理論値 :C66.9,H10.1,N5.2)。
【0043】
生成物のNMR分析を行った結果、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンを含有しておらず、その転化率は100%であった。生成物のH−NMRの測定結果を図1に示し、13C−NMRの測定結果を図2に示す。また、生成物の液体クロマトグラフィーによる質量スペクトルを測定したところ、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウム骨格の分子量(M+=194.191)が確認された。これらと元素分析の結果も本化合物の構造を支持しており、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートが98.4%の収率で得られたことを確認した。
【0044】
実施例2.
実施例1では反応時間が10時間であった代わりに、5時間反応した以外は全て実施例1と同様に反応を行った。他の例とともに実施例2の結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

実施例3.
実施例2では炭酸ジメチルの量がN,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンの3.0モル倍であった代わりに、2.0モル倍を用いて反応した以外は全て実施例2と同様に反応を行った。他の例とともに実施例3の結果を表1に示す。
【0046】
実施例4.
実施例2では炭酸ジメチルの量がN,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンの3.0モル倍であった代わりに、1.1モル倍を用いて反応した以外は全て実施例2と同様に反応を行った。他の例とともに実施例4の結果を表1に示す。
【0047】
実施例5.
実施例4では反応温度が145℃であった代わりに、160℃で反応した以外は全て実施例4と同様に反応を行った。他の例とともに実施例5の結果を表1に示す。
【0048】
実施例6.
200mlオートクレーブに、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタン17.93g(0.1mol)、炭酸ジメチル90.08g(1.0mol)を入れ、反応器内を窒素で置換した。反応器を密閉後、加熱攪拌し145℃まで昇温し、続けて同条件で5時間反応を行った。その際、反応時の圧力は10MPaを超えることはなかった。反応終了後に反応器を室温まで冷却し、得られたスラリー状物を窒素雰囲気下でろ過して白色の湿結晶を得た。
【0049】
この結晶はNMR分析の結果、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンを含有しておらず、N,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートが59.7%の収率で得られたことを確認した。
【0050】
比較例1.
上記したとおり、3級アミン化合物から4級アルキルアンモニウム塩を得る方法として、水の存在下に、ジアルキルカーボネートと第三級アミンとを反応させる合成法が知られている(例えば、特許文献3参照)。そこで、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンの使用量の10重量%の水を反応系内に添加した以外は、実施例4と同様に反応を行った。他の例とともに比較例1の結果を表1に示す。
【0051】
比較例2.
N,N−ジメチル−1−アミノアダマンタンの使用量の30重量%の水を反応系内に添加した以外は、実施例4と同様に反応を行った。他の例とともに比較例2の結果を表1に示す。
【0052】
以上の検討の結果、実施例1〜実施例5で示されたとおり、極性溶媒としてメタノール溶媒を使用した場合、N,N,−ジメチル−1−アミノアダマンタンは炭酸ジメチルと容易に反応し、高収率で目的のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートを与えた。また、実施例6で示されたとおり、試薬の炭酸ジメチルを溶媒として兼用しても、目的のN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートを与えることが示された。
【0053】
一方、比較例1及び比較例2で示されたとおり、従来法に従い、反応系内に水を添加すると、N,N−ジメチル−1−アミノアダマンタンと炭酸ジメチルの反応は却って進行が遅くなり、収率が低下した。すなわち、比較例1から明らかなとおり、N,N−ジメチル−1−アミノアダマンタンの使用量の10重量%の水を添加すると、反応収率は52%に低下した。また、比較例2から明らかなとおり、N,N−ジメチル−1−アミノアダマンタンの使用量の30重量%の水を添加すると、少量の目的物しか得られなった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施例1で得られたN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートのH−NMRスペクトル図である。
【図2】実施例1で得られたN,N,N−トリメチル−1−アダマンタンアンモニウムメチルカーボネートの13C−NMRスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

[式中、R,Rは、同一又は異なって、C〜Cの直鎖又は分岐のアルキル鎖を示し、RとRが互いに結合して脂環式の炭化水素環を形成していてもよい。]
で表されるN,N−ジアルキル−1−アミノアダマンタンと、下記一般式(2)
【化2】

[式中、R,Rは、同一又は異なって、C〜Cの直鎖又は分岐のアルキル鎖を示し、RとRが互いに結合して脂環式の炭化水素環を形成していてもよい。]
で表される炭酸ジアルキル化合物とを、溶媒存在下又は無溶媒条件下、反応時における系内の含水量をN,N−ジアルキルアミノアダマンタンの10重量%未満にして反応させる、下記一般式(3)
【化3】

[式中、R,R,R、Rは上記と同じ定義である。]
で表されるN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【請求項2】
一般式(2)で表される炭酸ジアルキル化合物を、一般式(1)で表されるN,N−ジアルキルアミノアダマンタン1モル当たり1〜20モル使用することを特徴とする請求項1記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【請求項3】
反応溶媒として、ジメチルスルホキサイド、ジエチルエーテル、THF、DMF、HMPA、メタノール、エタノール、n−プロパノール、及び2−プロパノールからなる群より選ばれる極性溶媒を使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。
【請求項4】
反応温度50℃〜300℃で反応を実施することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のN,N,N−トリアルキルアダマンタンアンモニウムアルキルカーボネート誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138087(P2010−138087A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314476(P2008−314476)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】