説明

NC工作機械の原点復帰方法

【課題】短時間で、且つ、原点復帰動作に伴い工具やワーク等を破損する事なく、これら工具とワークとを原点位置まで自動的に復帰させる事ができる、NC工作機械の原点復帰方法を実現する。
【解決手段】NC装置に、予め加工プログラム23を構成する加工工程単位で、原点復帰プログラム24a〜24cを記憶しておく。これら各原点復帰プログラム24a〜24cは、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を、加工中断位置に関係なく、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材に干渉させずに原点位置まで復帰させる復帰経路を表したものである。前記NC工作機械の異常発生時には、作業者が原点復帰ボタンを操作して前記NC装置に原点復帰指令を入力する事により、中断した当該加工工程に対応する前記原点復帰プログラム24a(24b、24c)を呼び出し、実行する。この様な原点復帰方法により、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工プログラムに従い自動的にワーク(工作物)に所定の加工を施すNC(Numerical Control 、数値制御)工作機械の原点復帰方法の改良に関する。具体的には、NC工作機械の運転時に、異常振動の発生や異音の発生等のトラブルが発生し、加工を中断して、工具及びワークの一方又は双方を原点位置まで復帰させる必要がある場合に、原点復帰動作に伴い工具やワーク等を破損する事なく、或いは損傷を最小限に抑えつつ、これら工具とワークとを原点位置まで自動的に復帰させる、NC工作機械の原点復帰方法の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、工場の省力化、無人化に伴い、加工プログラムによる自動運転が可能なNC工作機械が広く利用されている(例えば特許文献1〜3参照)。図6は、代表的なNC工作機械であるマシニングセンタ(横形マシニングセンタ)の1例を示している。図示の構造の場合、マシニングセンタ1は、工作機械本体2と、NC装置3とから構成される。
【0003】
前記工作機械本体2は、主軸4と、ワークテーブル5と、複数(3つ)のサーボ機構6(図7参照)とを備える。このうちの主軸4は、中心軸を水平方向に配置した状態で、サドル7に対して回転可能に且つZ軸方向(工作機械本体2の正面から見て前後方向)の移動可能に支持されており、その先端部に工具ホルダを介して工具を取り付け可能としている。又、前記サドル7は、床面上に載置された固定ベッド8上にX軸方向(左右方向)の移動可能に配設されたコラム9内に、Y軸方向(上下方向)の移動可能に配設されている。一方、前記ワークテーブル5は、前記固定ベッド8上に固定されており、その上面にチャック等の取付治具を介してワークを取り付け可能としている。更に、前記各サーボ機構6は、図7に示す様に、サーボモータ10と、ボールねじ装置11とを備え、前記NC装置3からの移動指令(パルス信号)に基づき駆動する。そして、前記主軸4を前記ワークテーブル5に対して3軸方向に相対移動させる。尚、図示は省略するが、前記工作機械本体2には、複数の工具を収納する為のマガジン、及び、自動工具交換装置(ATC)等が設けられている。
【0004】
又、前記NC装置3は、NCテープや磁気記録媒体等から加工プログラムを読み込む、或は、このNC装置3を構成する記憶部内に予め記憶された加工プログラムを呼び出す等により、この加工プログラムを構成するブロックを、1ブロックずつ、上から下へと順に実行(演算処理)する。そして、前記工作機械本体2に移動指令やシーケンス制御信号を送り、この工作機械本体2の動作を制御する。このうちの移動指令は、上述した様に、前記各サーボ機構6により、前記主軸4と前記ワークテーブル5とを3軸方向に相対移動させる。又、前記シーケンス制御信号は、前記主軸4の回転制御や切削油等の供給調整を行う。
【0005】
ところで、上述の様なマシニングセンタ1等のNC工作機械の運転時に、ワーク、治具更にはNC工作機械の構成各部品等の取付部の緩み等に起因した異音の発生、或いは、異常振動の発生等のトラブルが発生した場合、作業者による非常停止ボタンの手動操作や、工作機械本体に設けられた複数のセンサ等の異常検知手段に基づき、前記NC工作機械の運転は停止される。そして、この様にトラブル発生に伴い運転を停止した場合には、異常個所の整備、点検、修理等を行い、前記NC工作機械の運転を再開する為に、工具とワークとを原点位置(機械基準点)まで復帰させる事が行われている。
【0006】
従来からNC工作機械の多くには、この様な原点復帰作業を自動的に行う為に、NC装置中に原点復帰プログラム(マシニングセンタにあってはG機能のうちの「G28」)が用意されている。但し、この既存の原点復帰プログラムは、工具とワークとの一方又は双方を、加工中断位置に拘わらず、この加工中断位置から原点位置まで直線的に(最短距離で、X、Y、Zの3軸を同時に)移動させるものであり、ワークの加工内容によっては、次の様な不都合を招く。以下、図8を参照しつつ、具体的に説明する。
【0007】
この図8は、前述したマシニングセンタ1(図6参照)を使用して、工具12によりワーク13の内周面に溝加工(溝仕上加工)を実施する状態を示している。この様な溝加工を実施する場合、前記工具12は自転(回転)しながら渦巻状に公転し、図示の様に、前記ワーク13の内周面に切り込む。そして、この様に前記工具12(のうちの刃部)がこのワーク13の内周面に切り込んだ状態で、トラブル発生に伴い前記マシニングセンタ1の運転を停止し、既存の原点復帰プログラムを実行した場合には、前記工具12を実線で示す加工中断位置から鎖線で示す原点位置まで直線的に復帰させようとする。この為、前記工具12と前記ワーク13とが干渉し、これら工具12(延いては工具ホルダ)及びワーク13(延いては取付治具)等を破損してしまう。
【0008】
この様な事情に鑑み、従来から多くの場合で、既存の原点復帰プログラムを利用せずに、工作機械本体に設けられたハンドルを作業者が手動操作する事により、原点復帰作業を行っている。具体的には、必要に応じて作業者がカバーを取り外して設備内に入り、周辺のツールを取り外した後、NC装置に付属のモニタを利用して、工具及びワークの現在位置(位置座標)を確認(必要に応じて目視により現在位置を確認)しつつ、ハンドルを操作して原点位置まで復帰させている。
【0009】
但し、トラブル発生に伴う加工中断位置は不規則であり、作業者はその都度異なる復帰操作(ハンドル操作)を行う必要がある。この為、何れの部材も破損させずに(損傷を与えずに)、工具とワークとを原点位置まで復帰させる事は困難になる。例えば、図9に示す様に、前記工具12を用いて前記ワーク13の内周面に溝加工を施す場合、この工具12が(A)に示す位置に停止した場合には、この工具12を前記ワーク13に干渉させずに原点位置まで復帰させる為には、先ずこの工具12を+X軸方向(右方向)に所定量移動させた後、+Y軸方向(上方向)に所定量移動させる必要がある。これに対して、前記工具12が同図の(B)に示す位置に停止した場合には、先ずこの工具12を+Y軸方向(上方向)に所定量移動させた後、−X軸方向(左方向)に所定量移動させる必要がある。この様に、加工中断位置によって、前記工具12の移動方向、移動順序及び移動量は異なり、これら移動方向、移動順序と移動量との何れか一つでも不適切であると、前記工具12と前記ワーク13とが干渉し、これら工具12やワーク13等を破損してしまう。しかも、図示の例の様に、この工具12をこのワーク13の内側に進入させた状態では、これら工具12とワーク13との位置関係を目視により確認する事もできず、移動方向や移動順序を決定したり、移動量を調節する事も難しくなる。
【0010】
更に、上述の様な手動操作による原点復帰作業は、作業者の技術力の影響を受け易く、経験の浅い作業者では、前記工具12や前記ワーク13等を破損する可能性も高くなる。又、仮に、何れの部材も破損させずに、前記工具12と前記ワーク13とを原点位置まで復帰させられたとしても、この原点復帰作業に多くの時間が必要となり、生産性を低下させる原因にもなる。
【0011】
本発明者等は、この様な問題を解決すべく、先ず、加工プログラムを遡る様に実行する原点復帰方法を考えた。具体的には、加工中断時点から加工プログラムを構成するブロックを遡り、工具及びワークの移動方向をこの加工プログラムとは逆(プラスマイナス反対)に実行する事を考えた。この先発明に係る原点復帰方法によれば、例えば図10に示す様に、工具12(図8参照)を、加工中断位置(図中のニ点)から、この工具12が加工プログラムに従い進んできた経路(往路:イ→ロ→ハ→ニ)を遡らせる(復路:ニ→ハ→ロ→イ)事ができる。この様な先発明に係る原点復帰方法によれば、復帰経路(復路)が往路と同じになる為、既存の原点復帰プログラムを使用した場合の様に、前記工具12とワーク13とを干渉させる事なく、この工具12を原点位置(図中のイ点)まで復帰させる事が可能になる。
【0012】
ところが、この様な先発明に係る原点復帰方法を採用した場合には、次の様な新たな問題を生じる事が分かった。以下、図11を参照しつつ説明する。この図11は、ワークに相当する、ディスクブレーキのキャリパを構成するシリンダ部14を示している。このシリンダ部14の内周面には、切削バイトや回転砥石等の工具12(図8参照)により、開口側から順に、ブーツ溝15、シール溝16、逃げ溝(奥溝)17をそれぞれ連続して加工する。この為、使用する加工プログラム中には、前記ブーツ溝15を加工する第一加工工程と、前記シール溝16を加工する第二加工工程と、前記逃げ溝17を加工する第三加工工程とが、それぞれ定義されている。尚、図11中の線分A→B→・・・→K→Lは、前記工具12の加工部位が、加工プログラムに従い移動する軌跡を簡略的に表したものである。
【0013】
前記第一〜三加工工程のうち、第一加工工程である前記ブーツ溝15の加工時に(経路C−D間で)トラブルが発生し、加工プログラムを遡り前記工具12を原点位置まで復帰させる場合、その復帰経路(→C→B→A)は短く済む為、原点復帰作業を比較的短時間で行える。ところが、第三加工工程である前記逃げ溝17の加工時に(経路K−L間で)トラブルが発生した場合には、前記シール溝16及び前記ブーツ溝15の加工の為にのみ通過した経路(F→G→H→I、B→C→D→E)をも遡る為、復帰経路が長くなり、原点復帰作業に要する時間が長くなってしまう。
【0014】
更に、前記逃げ溝17の加工時に前記工具12が破損する等のトラブルが発生した場合には、次の様な問題も生じる。即ち、前記逃げ溝17は、前記シリンダ部14に嵌装される図示しないピストンとの干渉防止の為にのみ形成されており、前記ブーツ溝15及び前記シール溝16とは異なり、高い形状精度及び表面精度が要求される事はない。この為、前記逃げ溝17の加工時に前記工具12が破損する等して、この逃げ溝17内に損傷が生じた場合にも、その他の部分に損傷が生じていなければ、その後の手直し作業により製品として十分な品質を確保できる場合が多い。ところが、先発明に係る原点復帰方法により、破損した工具12を前記シール溝16及び前記ブーツ溝15に沿って移動させる(経路:H→G、D→C)と、これら各溝16、17に傷等の損傷(二次損傷)を生じさせる可能性がある。そして、この様な二次損傷が発生した場合には、本来は製品として十分な品質を確保できるキャリパが不良品として使用できなくなると言った不都合を招く。この様に、先発明に係る原点復帰方法を採用した場合には、時間的な不利益を生じるだけでなく、二次損傷を引き起こす可能性もある。
【0015】
【特許文献1】特開2000−15542号公報
【特許文献2】特開平5−318202号公報
【特許文献3】特開平9−300178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、上述の様な事情に鑑み、短時間で、且つ、原点復帰動作に伴い工具やワーク等を破損する事なく、或いは損傷を最小限に抑えつつ、これら工具とワークとを原点位置まで自動的に復帰させる事ができる、NC工作機械の原点復帰方法を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のNC工作機械の原点復帰方法は、工作機械本体とNC装置とから成るNC工作機械の異常発生時(異常停止時も含む)に、工具とワークとを加工中断位置から原点位置まで復帰させる為に利用する。
特に本発明のNC工作機械の原点復帰方法にあっては、前記NC装置に、予め加工プログラムを構成する加工工程単位で原点復帰プログラムを記憶しておく。この原点復帰プログラムは、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を、加工中断位置に関係なく、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材(例えばワークを取り付ける為の取付治具等)に干渉させずに原点位置まで復帰させる復帰経路を表したものである。
そして、前記NC工作機械の異常発生時に、前記NC装置への原点復帰指令に基づき、中断した当該加工工程に対応する前記原点復帰プログラムを呼び出し、この原点復帰プログラムを実行する。
これにより、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材に干渉させずに、加工中断位置から原点位置まで自動的に復帰させる。
尚、前記原点復帰プログラムは、前記加工プログラムに表された各加工工程に於ける加工内容及び加工手順(工具及びワークの移動方向、移動量、移動手順等の運動情報)、並びに、これら工具及びワークの形状及び大きさ等の情報、更には、取付治具等のこれら工具及びワークの周囲に存在する部材の位置、形状及び大きさ等の情報、更には前記工具が破損した場合の形状変化等を考慮して作成する。
【0018】
この様な本発明を実施する場合に好ましくは、例えば請求項2に記載した発明の様に、前記原点復帰指令を、専用に設けられた手動操作部を作業者が手動操作する事により、前記NC装置に入力する。
更に、本発明を実施する場合には、例えば請求項3に記載した発明の様に、前記加工プログラム中に、前記原点復帰指令の入力を有効にする為の有効指令ブロックと、この原点復帰指令の入力を無効にする為の無効指令ブロックとをそれぞれ設けておき、前記有効指令ブロックの実行後、この無効指令ブロックが実行されるまでの間に、前記NC装置へ入力された前記原点復帰指令を有効にする。
【発明の効果】
【0019】
上述の様な本発明のNC工作機械の原点復帰方法によれば、工具とワークとの一方又は双方を、これら工具やワーク等を破損する事なく、或いは損傷を最小限に抑えつつ、加工中断位置から原点位置まで自動的に復帰させる事ができると共に、この原点復帰作業を短時間で行える。
即ち、本発明の場合には、NC装置に予め記憶させておいた原点復帰プログラムを実行する事により原点復帰作業を行う為、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を原点位置まで自動的に復帰させる事ができる。この為、手動操作により原点復帰作業を行う場合の様に、作業者が設備内に入ったり、ツールの取り外し作業等を行う必要がなくなる。従って、作業者の安全の確保を図れると共に、復帰作業の為の段取作業を省略できて、復帰作業時間の短縮を図れる。又、作業者の経験の有無を問わず(技術力の差に関係なく)、全ての作業者が同じ様に原点復帰作業を行える。
特に、本発明の場合には、前記原点復帰プログラムが、前記工具と前記ワークとを、加工中断位置に関係なく、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材に干渉させずに原点位置まで復帰させる復帰経路を表したものである。この為、前記原点復帰プログラムに従い原点位置まで復帰する前記工具と前記ワークとが、互いに且つ周囲に存在する取付治具等の部材に干渉する事はない。従って、原点復帰作業に伴い、前記工具、前記ワーク、工具ホルダ、及び、取付治具等を破損する事を防止できるか、仮に工具が損傷した場合でも、破損した工具が、その移動に伴って、他の物品を損傷する事を防止できる。
又、本発明の場合には、前記原点復帰プログラムを、加工プログラムを構成する加工工程単位で設定している為、複数の加工工程を含む加工プログラムを実行する場合にも、前述した先発明に係る原点復帰方法の様に、前記工具と前記ワークとの一方又は双方が、加工中断位置から往路の全経路を遡らずに済む。この為、復帰経路が不必要に長くなる事を防止できて、復帰作業時間の短縮を図れると共に、二次損傷が発生する事も有効に防止できる。
又、前述した請求項2に係る発明によれば、原点復帰作業の作業性の向上と、作業時間の更なる短縮とを図れる。
更に、前述した請求項3に係る発明によれば、前記原点復帰プログラムの実行を必要とする作業(ブロック)と、必要としない作業とを区別する事ができて、必要とする作業に対してのみこの原点復帰プログラムを実行させる事ができる。この為、原点復帰作業自体が不要であるような場合に、原点復帰動作が行われる事を防止できる。又、前記原点復帰指令の為に専用の手動操作部が誤操作されても、無用な原点復帰動作が行われる事を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1〜5により、全ての請求項に対応する、本発明の実施の形態の1例に就いて説明する。本例のNC工作機械の原点復帰方法の特徴は、加工工程の内容に応じて専用に作成した原点復帰プログラムを利用して、工具とワークとの一方又は双方を加工中断位置から原点位置(機械基準点)まで復帰させる点にある。この様な本例の原点復帰方法は、前述した様なマシニングセンタ1(図6参照)の他、NC旋盤、NCフライス盤、NCボール盤等、各種のNC工作機械を対象に実施できる。但し、NC工作機械自体の基本的な構成に就いては、既に説明した前記マシニングセンタ1とほぼ同様である為、その他のNC工作機械に就いての具体的な説明並びに図示は省略する。
【0021】
図1は、本例の原点復帰方法を実施するマシニングセンタ1aの概略図(ブロック図)である。このマシニングセンタ1aは、前記図6に示したマシニングセンタ1と同様、工作機械本体2と、NC装置3とから構成され、このうちのNC装置3は、入力部18と、記憶部19と、制御部20とを有する。このうちの入力部18は、前記NC装置3に対して作業者が直接指令を与える為のもので、後述する原点復帰指令を入力する為の原点復帰ボタン21と、その他の指令を入力する為の汎用入力部22とを備えている。又、前記記憶部19は、ワーク加工時に前記工作機械本体2の動作制御を行う為の加工プログラム23(図2参照)や、後述する原点復帰プログラム24a〜24c(図2、3参照)等の各種プログラムを格納する。更に、前記制御部20は、前記記憶部19に格納されている各種プログラム23、24a〜24cやデータ等、更には前記入力部18からの指令に基づいて演算処理を行い、前記工作機械本体2に移動指令やシーケンス制御信号を送り、この工作機械本体2の動作を制御する。尚、以下の説明は、この工作機械本体2を構成する主軸4とワークテーブル5(図6参照)とのうち、この主軸4(工具12)のみが3軸方向に移動可能であるとして行う。
【0022】
図2は、前記NC装置3の記憶部19に格納される前記加工プログラム23と、ワークの加工作業に先立って、予めこの記憶部19に格納(記憶)しておく原点復帰プログラム24a〜24cとの1例を模式的に示している。本例の場合、前記加工プログラム23は、前記図11に示したシリンダ部14の加工作業に用いる加工プログラムと同様に、第一〜第三加工工程を連続して実行するものであり、それぞれが第一〜第三加工工程の加工内容及び加工手順等を表すブロック群である、第一〜第三セクション25a〜25cを備えている。これら第一〜第三セクション25a〜25cはそれぞれ、プログラム本体26a〜26cと、復帰プログラム指定ブロック27a〜27cと、復帰プログラム指定解除ブロック28(第一セクション25aには省略)と、復帰ボタン有効指令ブロック(M91)29と、復帰ボタン無効指令ブロック(M90)30とを備える。尚、本例の場合には、これら復帰ボタン有効指令ブロック29及び復帰ボタン無効指令ブロック30として、予め前記NC装置3の記憶部19中に記憶させたM機能(補助機能)を利用している。
【0023】
このうちのプログラム本体26a〜26cは、それぞれ前記第一〜第三加工工程の加工内容及び加工手順等(工具12の移動方向、移動量、移動順序、回転速度等、並びに、オフセット量等)を具体的に定義したものである。尚、前記プログラム本体26a〜26cのうちのプログラム本体26cは、前記復帰ボタン無効指令ブロック30と前記復帰ボタン有効指令ブロック29とにより、3つの小プログラム31a〜31cに分割されている。又、前記各復帰プログラム指定ブロック27a〜27cは、前記各原点復帰プログラム24a〜24cのうちの何れか1つのプログラム番号を指定し、このプログラム番号を前記NC装置3を構成する記憶部19に記憶させるものである。一方、前記復帰プログラム指定解除ブロック28は、前記各原点復帰プログラム24a〜24cの指定(設定)を解除するものである。又、前記復帰ボタン有効指令ブロック29は、前記NC装置3の入力部18を構成する原点復帰ボタン21の操作(NC装置3を構成する制御部20への原点復帰指令の入力)を有効にするものであり、反対に、前記復帰ボタン無効指令ブロック30は、上記原点復帰ボタン21の操作を無効にするものである。又、前記復帰ボタン有効指令ブロック29と前記復帰ボタン無効指令ブロック30とは、前記各原点復帰プログラム24a〜24cの実行を必要とするブロック(小プログラム31a、31c)と必要としないブロック(小プログラム31b)とを区別する為に用いられる。
【0024】
本例の場合には、上述した前記各復帰プログラム指定ブロック27a〜27cにより、第一〜第三加工工程に対応する前記第一〜第三セクション25a〜25cと、前記各原点復帰プログラム24a〜24cとを、1対1で対応させている。言い換えれば、これら各原点復帰プログラム24a〜24cを、加工工程単位毎に、専用に設けている。この為、前記第一加工工程を実施(第一セクション25aを実行)している間に、前記マシニングセンタ1aに、異音の発生や異常振動の発生等のトラブルが発生し、加工を中断して、前記工具12を原点位置まで復帰させる場合には、前記原点復帰プログラム24aを実行する。同様に、前記第二加工工程(第二セクション25b)では前記原点復帰プログラム24bを、前記第三加工工程(第三セクション25c)では前記原点復帰プログラム24cを、それぞれ実行する。
【0025】
前記各原点復帰プログラム24a〜24cはそれぞれ、前記工具12を、加工中断位置に関係なく、前記ワーク13、並びに、これら工具12及びワーク13の周囲に存在する取付治具等に干渉させずに、原点位置まで復帰させる復帰経路を表したものである。この様な前記各原点復帰プログラム24a〜24cは、第一〜第三加工工程のそれぞれの加工内容及び加工手順(第一〜第三セクション25a〜25c中で使用する工具12の移動方向、移動量、移動手順等の運動情報)、並びに、使用する工具12及び前記ワーク13の形状及び大きさ等の情報、更には、取付治具等のこれら工具12及びワーク13の周囲に存在する部材の位置、形状及び大きさ等の情報、更にはこの工具12が破損した場合の形状変化等を考慮して作成する。この様な前記各原点復帰プログラム24a〜24cの作成は、手計算で座標計算を行う所謂マニュアルプログラミングにより行える事は勿論、対話型NC機能を利用した自動プログラミングにより行う事もできる。又、必要に応じて3次元シミュレーションを利用する事もできる。
【0026】
図3には、前記工具12により前記ワーク13の内周面に溝加工(溝仕上加工工程)を行う場合に使用する、原点復帰プログラム24a(24b、24c)の具体例を示している。又、図4には、この原点復帰プログラム24a(24b、24c)を実行した場合に於ける、前記工具12の復帰動作を示している。この原点復帰プログラム24a(24b、24c)を実行した場合、先ず、第一ブロック(G0G90G54G49X0Y0)にて、前記図4の(A)→(B)に示す様に、前記工具12を、加工中断位置に関係なく、前記ワーク13の通孔32の中心へと直線的に(X、Y軸に同時に)移動させる。次いで、第二ブロック(G91Z30)にて、同図の(B)→(C)に示す様に、前記工具12を前記ワーク13の通孔32から引き抜く。そして、第三ブロック(Y50)にて、同図の(C)→(D)に示す様に、一旦、この工具12を前記ワーク13から+Y軸方向に遠ざけて、この工具12が周囲に存在する部材と干渉する事を防止する。そして、第四ブロック(G28X0Y0Z0)にて、同図の(D)→(E)に示す様に、前記工具12を原点位置まで復帰させる。そして最後に、第五ブロック(M30)にて、前記原点復帰プログラム24a(24b、24c)の実行を終了する。
尚、以上に説明した前記原点復帰プログラム24a(24b、24c)は、溝加工工程を行う場合の1例であり、前述した様に、使用する工具12の形状及び大きさ、前記通孔32の内径寸法や内周面の形状、周囲に存在する部材の位置、形状及び大きさ等、種々の情報を元に任意に作成できる。
【0027】
本例の場合には、上述した様な原点復帰プログラム24a〜24cを呼び出し更に実行する為に、前記NC装置3を構成する入力部18に、作業者が手動で操作する専用の原点復帰ボタン21を設けている。この原点復帰ボタン21は、前記加工プログラム23中の前記復帰ボタン有効指令ブロック29により操作が有効とされた後、前記復帰ボタン無効指令ブロック30により操作が無効とされるまでの間に操作がなされた場合に、加工プログラムの実行を中断(一時停止)すると共に、加工が中断した加工工程(第一〜第三セクション25a〜25cの何れか)に対応する前記各原点復帰プログラム24a〜24cを呼び出し更に実行する旨の原点復帰指令を、前記NC装置3の制御部20へと入力する。尚、上記原点復帰ボタン21は、既存の非常停止ボタン等を利用して設ける事もできる。
【0028】
以下、前記マシニングセンタ1aを運転する際の制御フローに就いて、図5を参照しつつ説明する。このマシニングセンタ1aの運転をスタートさせた後、前記NC装置3(制御部20)は、加工プログラムの1ブロックを読み込む。そして、この1ブロックが、原点復帰プログラムのプログラム番号の設定指令であるか否か(STEP1)を判定し、必要に応じて、前記原点復帰ボタン21の操作を有効にする旨の指令であるか否か(STEP3)、この原点復帰ボタン21の操作を無効にする旨の指令であるか否か(STEP5)、前記原点復帰プログラムのプログラム番号を、前記記憶部19から削除する旨の指令であるか否か(STEP7)を、順次判定する。
【0029】
先ず、前記STEP1にて、前記1ブロックが前記プログラム番号の指定であると判定されれば、STEP2に移り、この1ブロックを実行し、このプログラム番号を前記NC装置3の記憶部19に記憶させる。その後、次のブロック(2ブロック)の読み込みに移る。尚、この様なSTEP1及びSTEP2の各工程は、前記図2中、前記復帰プログラム指定ブロック27a〜27cにより同時に行う。
【0030】
又、前記STEP3にて、前記1ブロックが前記原点復帰ボタン21の操作を有効にする旨の指令であると判定されれば、STEP4に移り、前記1ブロックを実行し、その後に行われる前記復帰ボタン21の操作を有効にする。その後、次のブロック(2ブロック)の読み込みに移る。尚、この様なSTEP3及びSTEP4の各工程に就いても、前記図2中、前記復帰ボタン有効指令ブロック29により同時に行う。
【0031】
又、前記STEP5にて、前記1ブロックが前記原点復帰ボタン21の操作を無効にする旨の指令であると判定されれば、STEP6に移り、前記1ブロックを実行し、この原点復帰ボタン21の操作を無効にする。その後、次のブロック(2ブロック)の読み込みに移る。尚、この様なSTEP5及びSTEP6の各工程に就いても、前記図2中、前記復帰ボタン無効指令ブロック30により同時に行う。
【0032】
更に、前記STEP7にて、前記1ブロックが前記原点復帰プログラムのプログラム番号を前記記憶部19から削除する旨の指令であると判定されれば、STEP8に移り、前記1ブロックを実行し、この記憶部19から当該プログラム番号を削除する。その後、次のブロック(2ブロック)の読み込みに移る。尚、前記図2に示した加工プログラム23を構成する第一セクション25aにあっては、続いて実行される第二セクション25bにて新たにプログラム番号を再設定する事に鑑み、前記STEP7及びSTEP8の各工程を省略している。これにより前記加工プログラム23の処理速度の向上を図っている。
【0033】
上述の様な各STEPを経て、前記1ブロックが未だ実行されていない場合には、前記原点復帰ボタン21が有効であるか否かを判定する(STEP9)。そして、この原点復帰ボタン21の操作が有効であると判定されれば、前記1ブロックを実行(STEP10)し、この実行中に前記原点復帰ボタン21が操作されたか否か(原点復帰指令の入力の有無)を判定(STEP11)する。そして、前記原点復帰ボタン21が操作されたと判定した場合には、前記1ブロックの実行を中断(加工を一時停止)し(STEP12)、前記STEP2にて設定した原点復帰プログラムを呼び出す(STEP13)。そして更に、この原点復帰プログラムを実行する(STEP14)。これにより、前記図4に示した場合の様に、前記工具12を、加工中断位置に関係なく、前記ワーク13、並びに、これら工具12及びワーク13の周囲に存在する取付治具等に干渉させずに、原点位置まで自動的に復帰させる。この様にして、前記工具12を原点位置まで復帰させた後は、加工プログラムの実行に戻る事なく、前記マシニングセンタ1aの運転を終了する(STEP15)。
【0034】
尚、本例の場合に、上述の様に加工プログラムの実行に戻る事なく、前記マシニングセンタ1aの運転を終了する理由は、作業者が、前記工具12や前記ワーク13等の損傷の有無や損傷の程度を確認すると共に、前記マシニングセンタ1aの故障の有無等を確認し、作業に区切りを設ける為である。従って、このマシニングセンタ1aに発生した異常の原因が明確であり、前記工具12及び前記ワーク13等に損傷が発生していないか、或は、発生していてもその後の手直し等が可能であると判断される場合には、前記工具12の交換等を行った後、中断した加工プログラムの実行を再開する事も可能である。
【0035】
又、本例の場合には、前記STEP9にて、前記原点復帰ボタン21の操作が有効でないと判定された場合にも、前記1ブロックの実行(STEP10)に移る。この様に前記原点復帰ボタン21の操作を有効とせずに、実行されるブロックとしては、NC工作機械が正常に動作している場合の他、単に工具12(例えばドリル)を直線的に進める加工や、周囲に干渉物が一切存在せず、専用の原点復帰プログラムを使用しなくても、既存の(直線的に復帰動作を行う)原点復帰プログラムを使用できる場合、更には、既にワーク加工作業が完了し前記工具12が復帰動作に入っている場合等が挙げられる。尚、前記図3に示した前記加工プログラム23にあっては、プログラム本体26cを構成する小プログラム31bがこれに相当する。本例の場合には、この様な原点復帰作業自体が不要であるような場合に、原点復帰動作が行われる事を防止できる。又、前記原点復帰ボタン21が誤操作された場合も、無用な原点復帰動作が行われる事も防止できる。
【0036】
何れにしても、前記STEP10にて、前記1ブロックを実行する際には、加工プログラムの実行を終了する旨の指令(M30又はM2コード)であるか否かを判定する(STEP16)。そして、終了する旨の指令であれば、全ての加工作業が完了したとして、加工サイクルを終了する(STEP17)。反対に、終了する旨の指令でなければ、次のブロック(2ブロック)の読み込みに移る。そして、最終的に、加工プログラムの実行を終了する旨の指令があるまで、加工作業を続ける。
【0037】
以上の様な本例の原点復帰方法によれば、前記工具12を、この工具12(延いては工具ホルダ)や前記ワーク13(延いては取付治具)等を破損せずに、或いは、破損を工具12のみに止めて、加工中断位置から原点位置まで自動的に復帰させる事ができると共に、この原点復帰作業を短時間で行える。即ち、本例の原点復帰方法の場合には、前記NC装置3を構成する記憶部19に、予め記憶させておいた前記各原点復帰プログラム(24a〜24c)を実行する事により、前記工具12の原点復帰作業を行う為、この工具12を原点位置まで自動的に復帰させる事ができる。この為、手動操作により原点復帰作業を行う場合の様に、作業者がカバーを取り外して設備内に入ったり、ツールの取り外し作業等を行う必要がなくなる。従って、作業者の安全の確保を図れると共に、復帰作業の為の段取作業を省略(従来、約5分間必要としていた段取時間を、原点復帰ボタン21を押すだけの数秒間に)できて、復帰作業時間の短縮を図れる。又、作業者の経験の有無を問わず(技術力の差に関係なく)、全ての作業者が同じ様に原点復帰作業を行える。
【0038】
特に、本例の場合には、前記原点復帰プログラム(24a〜24c)が、前記工具12を、加工中断位置に関係なく、前記ワーク13、並びに、これら工具12及びワーク13の周囲に存在する取付治具等の部材に干渉させずに、原点位置まで復帰させる復帰経路を表したものである。この為、前記原点復帰プログラム(24a〜24c)に従い原点位置まで復帰する前記工具12が、前記ワーク13、並びに、これら工具12及びワーク13の周囲に存在する取付治具等の部材に干渉する事はない。従って、原点復帰作業に伴い、前記工具12、前記ワーク13、工具ホルダ、及び、取付治具等が破損する事を防止できる。
【0039】
又、本例の場合には、前記原点復帰プログラム(24a〜24c)を、加工プログラム(23)を構成する加工工程(第一〜第三セクション25a〜25c)単位で設定している。この為、前述した先発明に係る原点復帰方法の様に、前記工具12と前記ワーク13との一方又は双方が、加工中断位置から往路の全経路を遡らずに済む。この為、復帰経路が不必要に長くなる事を防止できて、復帰作業時間の短縮を図れると共に、二次損傷が発生する事も有効に防止できる。又、本例の場合には、加工工程単位で原点復帰プログラム(24a〜24c)を作成する為、1つの加工プログラムに対して1つの原点復帰プログラムを作成する場合に比べて、前記各原点復帰プログラムの作成を容易に行える。
【0040】
更に、前記NC装置3を構成する制御部20に対して、専用に設けた前記原点復帰ボタン21から原点復帰指令を簡単に入力できる為、この指令を入力する為に複雑な作業を行う必要がなく、原点復帰作業の作業性の向上を図れると共に、復帰作業時間の更なる短縮を図れる。特に、本例の原点復帰方法を実施した場合に、作業時間の短縮の効果は大きく、具体的には、従来(手動操作による場合)では最低でも約5分程度は必要であった原点復帰作業を、1分未満で行う事が可能になる。
以上の様な本例の原点復帰方法は、前記工具12を他の部材(ワーク13を含む)に干渉させずに直線的に原点位置まで復帰させる事が難しい場合や、複数の加工工程を一つの加工プログラムにより実行する場合、更にはそれぞれの加工工程の加工内容が複雑である場合等に、特に有効に実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本例のNC工作機械の原点復帰方法は、工具(主軸、刃物台)のみを3軸方向に移動可能とするNC工作機械に限らず、ワーク(ワークテーブル)のみを3軸方向に移動可能とするNC工作機械は勿論、工具とワークとの一方又は双方を相対的に複数軸(2軸、3軸、4軸、5軸等)方向に変位させる構成を有するNC工作機械に適用できる。又、本例のNC工作機械の原点復帰方法は、溝加工を実施する場合に限らず、ドリルによる穴あけ加工、エンドミルによる平面或は輪郭加工等の切削加工は勿論、各種の研削加工にも適用できる。更に、本例の原点復帰方法は、工具への過負荷等の異常をセンサが検知し、NC工作機械が自動的に異常停止した際にも実施できる。この場合には、異常停止した時点で実行されていたブロックを特定し、このブロック(が含まれる加工工程)に対応する原点復帰プログラムを呼び出し実行させる。尚、この様に異常停止した時点で実行されていたブロックを特定する手段は特に問わないが、例えば、1つのブロックの実行が終了する毎に、終了したブロック番号等のデータを前記記憶部19に保存しておく事により行える。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施の形態の1例の対象となるマシニングセンタを示すブロック図。
【図2】同じく加工プログラム及び原点復帰プログラムの1例を示す模式図。
【図3】同じく溝仕上加工工程に用いる原点復帰プログラムの具体例。
【図4】同じく工具の復帰動作を動作順に示す、互いに直交する2方向から見た断面図。
【図5】同じく制御フローチャート。
【図6】本発明の対象となるマシニングセンタの斜視図。
【図7】同じくこのマシニングセンタを構成するサーボ機構を示す模式図。
【図8】既存の原点復帰プログラムによる工具の復帰動作を説明する為の断面図。
【図9】原点復帰作業を手作業で行う場合の工具の復帰動作を説明する為の、図8のA−A断面に相当する図。
【図10】先発明に係る原点復帰方法を実施した場合の工具の軌跡を示す、ワークの部分断面図。
【図11】同じくディスクブレーキのシリンダ部の断面図。
【符号の説明】
【0043】
1、1a マシニングセンタ
2 工作機械本体
3 NC装置
4 主軸
5 ワークテーブル
6 サーボ機構
7 サドル
8 固定ベッド
9 コラム
10 サーボモータ
11 ボールねじ装置
12 工具
13 ワーク
14 シリンダ部
15 ブーツ溝
16 シール溝
17 逃げ溝
18 入力部
19 記憶部
20 制御部
21 原点復帰ボタン
22 汎用入力部
23 加工プログラム
24a〜24c 原点復帰プログラム
25a〜25c 第一〜第三セクション
26a〜26c プログラム本体
27a〜27c 復帰プログラム指定ブロック
28 復帰プログラム指定解除ブロック
29 復帰ボタン有効指令ブロック
30 復帰ボタン無効指令ブロック
31a〜31c 小プログラム
32 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械本体とNC装置とから成るNC工作機械の異常発生時に、工具とワークとの一方又は双方を加工中断位置から原点位置まで復帰させるNC工作機械の原点復帰方法に於いて、前記NC装置に、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を、加工中断位置に関係なく、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材に干渉させずに原点位置まで復帰させる復帰経路を表す原点復帰プログラムを、加工プログラムを構成する加工工程単位で予め記憶しておき、前記NC工作機械の異常発生時に、前記NC装置への原点復帰指令の入力に基づき、中断した当該加工工程に対応する前記原点復帰プログラムを呼び出し、この原点復帰プログラムを実行する事により、前記工具と前記ワークとの一方又は双方を、互いに且つこれら工具及びワークの周囲に存在する部材に干渉させずに、加工中断位置から原点位置まで自動的に復帰させる事を特徴とするNC工作機械の原点復帰方法。
【請求項2】
前記原点復帰指令を、専用に設けられた手動操作部を作業者が手動操作する事により、前記NC装置に入力する、請求項1に記載したNC工作機械の原点復帰方法。
【請求項3】
前記加工プログラム中に、前記原点復帰指令の入力を有効にする為の有効指令ブロックと、この原点復帰指令の入力を無効にする為の無効指令ブロックとをそれぞれ設けておき、前記有効指令ブロックの実行後、この無効指令ブロックが実行されるまでの間に、前記NC装置へ入力された前記原点復帰指令を有効にする、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載したNC工作機械の原点復帰方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−131722(P2010−131722A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311339(P2008−311339)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】