説明

NCCa−ATPチャネルを標的とする処置剤およびその使用方法

【課題】脊髄損傷を処置するための改善された処置戦略としての、反応性星状細胞のネクローシス死の減少および血液の溢血の低減を提供する。
【解決手段】本発明は、星状細胞、神経細胞、または毛細血管内皮細胞のNCCa−ATPチャネルを標的とする治療組成物、およびその使用方法に関する。より具体的には、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストが、企図される。上記組成物は、細胞死を防止するため、脊髄損傷に関連する二次的損傷を処置するために、使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2004年9月18日に出願された米国特許仮出願第60/610,758号および2005年7月11日に出願された米国仮特許出願第60/698,272号に対する優先権を主張する。これらの各々は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(連邦政府により支援された研究または開発に関する陳述)
本発明は、部分的には、National Institute of Healthにより授与された助成金番号NS048260およびUnited States Department of Veterans AffairsからのMerit Review助成金の下で、政府の支援を受けてなされた。米国政府は、本発明において特定の権利を有する。
【0003】
(他の支援された研究または開発に関する陳述)
本発明は、一部分は、Christopher Reeves Paralysis Foundation(CRPF)からの助成金の援助によってなされた。CRPFは、本発明において一定の権利を有し得る。
【0004】
(技術分野)
本発明は、細胞生物学、生理学、および医薬品の分野に向けられる。より具体的には、本発明は、星状細胞において見出される、独特の非選択的陽イオンカルシウム−ATPチャネル(NCCa−ATPチャネル)を標的とする処置的化合物を投与する工程を含む、患者を処置する新規の方法に取り組む。特定の実施形態において、その処置的化合物は、アンタゴニストであり、そして脊髄損傷の処置のような、処置におけるその使用は、NCCa−ATPチャネルのブロックおよび/または阻害から利益を得る。NCCa−ATPチャネルからなる組成物も企図される。
【背景技術】
【0005】
(本発明の背景)
(NCCa−ATPチャネル)
独特の非選択的一価カチオン性ATP感受性チャネル(NCCa−ATPチャネル)が、最初に天然反応性星状細胞(NRA)において、および後に、本明細書中で記載されるように、脳卒中または外傷性脳損傷後のニューロンおよび毛細血管内皮細胞において同定された(Simardらに対する国際出願WO03/079987、およびChenおよびSimard、2001を参照のこと、それぞれその全体として本明細書中で参考文献に組み込まれる)。NCCa−ATPチャネルは、スルホニルウレアレセプター1型(SUR1)調節サブユニット、および膵臓β細胞におけるKATPチャネルと同様のポア形成サブユニットからなる、ヘテロ多量体構造であると考えられる(Chenら、2003)。NCCa−ATPチャネルのポア形成サブユニットは、まだ特徴付けられていない。
【0006】
SURは、グリベンクラミドおよびトルブタミドのような、抗糖尿病性スルホニルウレアに対する感受性を与え、そしてジアゾキシド、ピナシジルおよびクロマカリム(cromakalin)のような、「Kチャネル開口薬」と呼ばれる化学的に多様な薬剤のグループによる活性化の原因である(Aguilar−Bryanら、1995;Inagakiら、1996;Isomotoら、1996;Nicholsら、1996;Shyngら、1997)。様々な組織において、分子的に別のSURが、別のポア形成サブユニットと結合して、区別できる生理学的および薬理学的性質を有する、異なるKATPチャネルを形成する。膵臓β細胞におけるKATPチャネルは、Kir6.2と結合したSUR1から形成され、一方心臓および平滑筋KATPチャネルは、それぞれKir6.2およびKir6.1と結合したSUR2AおよびSUR2Bから形成される(Fujitaら、2000)。明確に異なるポア形成サブユニットから成っているにもかかわらず、NCCa−ATPチャネルも、スルホニルウレア化合物に感受性である。
【0007】
また、KATPチャネルと異なり、NCCa−ATPチャネルは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオンおよび他の一価の陽イオンを、ほぼ等しい能力で運び(ChenおよびSimard、2001)、NCCa−ATPチャネルの特徴、および従ってある化合物に対する親和性は、KATPチャネルと異なることをさらに示唆する。
【0008】
細胞内Ca2+によって活性化され、そして細胞内ATPによって阻害される、他の非選択的陽イオンチャネルが同定されたが、星状細胞ではされなかった。さらに、星状細胞において発現および見出されるNCCa−ATPチャネルは、カルシウム感受性およびアデニンヌクレオチド感受性に関して、他のチャネルと生理学的に異なる(Chenら、2001)。
【0009】
細胞内Ca2+によって活性化され、そして細胞内ATPによって阻害される、他の非選択的陽イオンチャネルが、内皮細胞において同定された(CsanadyおよびAdam−Vizi、Biophysical Journal、85:313−327、2003)が、これらのチャネルはSUR1によって調節されず、そしてグリベンクラミドによって阻害されない。
【0010】
(脊髄損傷)
脊髄に対する挫傷は、多くの場合組織の炎症および腫脹からの二次的損傷によって悪化する。不可逆的損傷の領域を拡大する二次的損傷は、医学的ケアの下にある間に遅延した様式で起こるので、原則として予防可能であるべきであるが、有効な処置はまだ利用可能でない。二次的損傷は、典型的には、ペナンブラと呼ばれる、最初の損傷を囲む、潜在的に生存可能な組織の領域を含む。ペナンブラにおける神経組織の生存可能性は不安定であり、そしてそれらの組織は容易に屈してそして死ぬ。
【0011】
炎症に関連する遺伝子発現における変化は、脊髄損傷後最も早くそして最も強力な反応の1つである(BareyreおよびSchwab、2003;BartholdiおよびSchwab、1997)。
【0012】
炎症性応答は、病原性イベントの解決に必要であるが、傍観者(bystander)的組織損傷または付帯的組織損傷が、その副産物の多くの毒性性質によって引き起こされる。TNFαおよびNOのような細胞傷害性薬剤が放出されるので、および炎症は、次に組織の虚血に寄与する浮腫および腫脹の形成を促進するので、炎症は有害であり得ることが、一般的に認識される。従って、強力な炎症性反応は、組織死のもとの領域の拡大を引き起こし得る。対照的に、炎症性反応の軽減は、全体の損傷の程度を減少させ得る。
【0013】
脊髄損傷における最も強力な炎症の刺激剤の1つは、損傷後に破損した毛細血管から溢血した血液である。血液は、一般に、脊髄を含む中枢神経系組織にとって高度に毒性であるとされる。
【0014】
細胞は、アポトーシスおよびネクローシスによって死滅する。その区別は、死滅する細胞にとってはそれほど重要ではないが、たとえ最初は弱くても、生存し得る周囲の組織−ペナンブラ−の細胞にとっては重要である。ネクローシス死は、炎症性反応を刺激し、一方アポトーシス死はしない。ネクローシス細胞死の後の炎症の原因となる分子メカニズムは、完全に理解されていないが、ネクローシス死は、アポトーシス死と異なり、細胞膜が溶解した場合に細胞内分子の放出を伴う可能性がある。これらの細胞内分子は、放出された場合に、他の細胞、特にミクログリアを活性化し、その活性化はケモカインの発現を引き起こし、それが今度は炎症性細胞を誘引する。従って、論理的な処置的ゴールは、たとえそれをアポトーシスに変換するだけにしても、ネクローシスを低減して、炎症を開始する細胞内分子の放出を低減することである。
【0015】
ネクローシス死において炎症を開始し得る細胞内分子の重要なクラスは、熱ショックタンパク質(HSP)である。脊髄に対する損傷は、星状細胞の活性化およびビメンチン、ネスチンおよびHSPを含む、発生的に調節される細胞内タンパク質のアップレギュレーションを引き起こす。HSP−32およびHSP−70は、脊髄損傷においてアップレギュレートされるので、特に興味深い(Songら、2001;Mautesら、2000;MautesおよびNoble、2000)。星状細胞において、HSP−32(ヘムオキシゲナーゼ−1)が血液および血液産物によって誘導され、そしてHSP−70が低酸素またはグルコース欠乏によって誘導される(Reganら、2000;Matzら、1996;Leeら、2001;Currieら、2000;XuおよびGiffard、1997;Papadopoulosら、1996;Copinら、1995)。
【0016】
HSP−70およびHSP−32は、インビボにおいてミクログリアを活性化し(Kakimuraら、2002)、そして活性化されたミクログリアが今度は炎症性ケモカインを放出し、それがマクロファージおよび多形核白血球(PMN)を誘引する。従って、炎症による二次的損傷を引き起こす有害な病原性イベントは、部分的には、星状細胞のネクローシス死およびHSPの放出、および溢血血液から始まり得る。従って、本発明は、脊髄損傷を処置するための改善された処置戦略として、反応性星状細胞のネクローシス死の減少および血液の溢血の低減に向けられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
(本発明の簡単な概要)
本発明は、神経細胞、神経膠細胞または内皮細胞のNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを含む処置的組成物に向けられる。
【0018】
本発明は、神経細胞、神経膠細胞または内皮細胞のNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを投与する工程を含む、その必要がある患者において脊髄損傷を低減する方法に向けられる。そのアンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルを阻害する(閉鎖する、ブロックする、不活性化する、生物学的活性を減少させる)。脊髄損傷は、脊髄の挫傷を含み得る。
【0019】
本発明の1つの実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはその組み合わせにおいて、NCCa−ATPチャネルを阻害するのに有効な化合物を患者に投与する工程を含む、脊髄損傷を受けた患者を処置する方法を含む。その化合物は、チャネルを閉鎖、ブロック、部分的にブロック、および/または不活性化することによってNCCa−ATPチャネルを有効に阻害し、それによって細胞へのNa+の流入、および他の一価のイオンの流入を減少させ、細胞内の水分の蓄積を減少させ、それによって細胞の腫脹を減少させる。従って、本発明の化合物は、NCCa−ATPチャネルの活性化を低減、減少または阻害し、それがナトリウムイオン(Na)の流入を低減し、それによって細胞の脱分極を低減および/または阻害または減少させる。
【0020】
患者は、脊髄損傷を受けた患者、または脊髄損傷の危険性のある患者を含み得る。危険性のある患者は、外科的処置および/または放射線処置を受けている患者を含み得る。他の危険性のある患者は、脊椎の状態、例えば体節の変形、あらゆる公知の型の疾患または感染によって引き起こされる脊髄の圧迫を有する患者を含み得る。例えば、クッシング症候群は、脊髄を圧迫する硬膜外脂肪組織の増殖を引き起こし得る。他の疾患は、脊椎の関節炎疾患を含み得る。
【0021】
本発明の組成物を、消化性または非経口的に伝達し得る。消化性投与の例は、経口、頬側、直腸、または舌下を含むがこれに限らない。非経口投与は、筋肉内、皮下、腹腔内、静脈内、腫瘍内、動脈内、脳室内、腔内、膀胱内、くも膜下腔内、または胸膜内を含み得るが、これに限らない。他の投与の方式はまた、局所、粘膜(すなわち鼻腔内)、または経皮を含み得る。
【0022】
細胞に投与し得る、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストの有効な量は、約0.0001nMから約2000μMの投与量を含む。より具体的には、投与される投与量は、約0.01nMから約2000μM;約0.01μMから約0.05μM;約0.05μMから約1.0μM;約1.0μMから約1.5μM;約1.5μMから約2.0μM;約2.0μMから約3.0μM;約3.0μMから約4.0μM;約4.0μMから約5.0μM;約5.0μMから約10μM;約10μMから約50μM;約50μMから約100μM;約100μMから約200μM;約200μMから約300μM;約300μMから約500μM;約500μMから約1000μM;約1000μMから約1500μMおよび約1500μMから約2000μMである。もちろん、これらの量はすべて例であり、そしてこれらの点の間のあらゆる量も本発明において有用であることが予期される。
【0023】
処置薬としてNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の有効な量は、処置される宿主および特定の投与方式に依存して変化する。本発明の1つの実施形態において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の投与量範囲は、約0.01μg/kg体重から約20,000μg/kg体重である。「体重」という用語は、動物が処置される場合に適用可能である。単離された細胞を処置する場合、本明細書中で使用される「体重」は、「全細胞重量(total cell body weight)」を意味するよう読むべきである。「全重量(total body weight)」という用語は、単離された細胞および動物の処置の両方に適用して使用し得る。本出願において「体重」または単に「kg」と表されたすべての濃度および処置レベルはまた、類似の「全細胞重量」および「全重量」濃度を含むと考えられる。しかし、当業者は、様々な投与量範囲、例えば0.01μg/kg体重から20,000μg/kg体重、0.02μg/kg体重から15,000μg/kg体重、0.03μg/kg体重から10,000μg/kg体重、0.04μg/kg体重から5,000μg/kg体重、0.05μg/kg体重から2,500μg/kg体重、0.06μg/kg体重から1,000μg/kg体重、0.07μg/kg体重から500μg/kg体重、0.08μg/kg体重から400μg/kg体重、0.09μg/kg体重から200μg/kg体重、または0.1μg/kg体重から100μg/kg体重の有用性を認識する。さらに、当業者は、様々な異なる投与量レベル、例えば0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.0005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgが有用であることを認識する。もちろん、これらの投与量はすべて例示であり、そしてこれらの点の間のあらゆる投与量も、本発明において有用であることが予期される。上記の投与量範囲または投与量レベルのいずれかを、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物に関して採用し得る。
【0024】
NCCa−ATPチャネルを、1型スルホニルウレアレセプター(SUR1)のアンタゴニストによってブロックまたは不活性化または阻害し、そしてSUR1アクチベーターによって開口する。より具体的には、1型スルホニルウレアレセプター(SUR1)のアンタゴニストは、KATPチャネルブロックカーを含み、そしてSUR1アクチベーターはKATPチャネルのアクチベーターを含む。より具体的には、本発明のNCCa−ATPチャネルは、20および50pSの間のカリウムイオン(K)に対する単一チャネルコンダクタンスを有する。NCCa−ATPチャネルはまた、生理学的濃度の範囲内で、細胞膜の細胞質側のCa2+によって活性化され、ここで濃度範囲は10−8から10−5Mである。NCCa−ATPチャネルはまた、生理学的濃度の範囲内で、細胞質ATPによって阻害され、ここでその濃度範囲は10−1から10Mである。NCCa−ATPチャネルはまた、いずれか2つの陽イオン間の透過性比が、0.5より大きく、そして2より小さい程度まで、以下の陽イオン;K、Cs、Li、Naに対して透過性である。
【0025】
そのチャネルを、NCCa−ATPチャネルインヒビター、NCCa−ATPチャネルブロックカー、1型スルホニルウレアレセプター(SUR1)アンタゴニスト、SUR1インヒビター、またはチャネルを通じた膜電流の大きさを低減し得る化合物によって、阻害(閉鎖、不活性化、ブロック、部分的に阻害またはブロック等)し得る。より具体的には、SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド(glyclazide)、グリメピリド、エストロゲン、エストロゲン関連化合物(エストラジオール、エストロン、エストリオール、ゲニステイン、非ステロイド性エストロゲン(例えば、ジエチルスチルベストロール(diethylstibestrol))、フィトエストロゲン(例えばクメストロール)、ゼアラレノン等)、およびKATPチャネルを阻害またはブロックすることが公知の化合物から成るグループから選択される。MgADPも、そのチャネルを阻害するために使用し得る。KATPチャネルをブロックまたは阻害するために使用し得る他の化合物は、トルブタミド、グリブリド(glyburide)(1[p−2[5−クロロ−O−アニサミド(anisamido)]エチル]フェニル)スルホニル]−3−シクロヘキシル−3−ウレア);クロルプロパミド(chlopropamide)(1−[[(p−クロロフェニル)スルホニル]−3−プロピルウレア]);グリピジド(1−シクロヘキシル−3[[p−[2(5−メチルピラジンカルボキシアミド)エチル]フェニル]スルホニル]ウレア);またはトラザミド(ベンゼンスルホンアミド−N−[[(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1イル)アミノ]カルボニル]−4−メチル)を含むがこれに限らない。
【0026】
ある実施形態において、患者に投与するSUR1アンタゴニストの量は、約0.0001μg/kg/日から約20mg/kg/日、約0.01μg/kg/日から約100μg/kg/日、または約100μg/kg/日から約20mg/kg/日の範囲である。またさらに、SUR1アンタゴニストを、処置の形式で患者に投与し得、ここでその処置は日(1、2、3、4など)、週(1、2、3、4、5など)、月(1、2、3、4、5など)などあたりに投与する、SUR1アンタゴニストの量またはSUR1アンタゴニストの投与量を含み得る。患者に投与するSUR1アンタゴニストの量が、約0.0001μg/kg/処置から約20mg/kg/処置、約0.01μg/kg/処置から約100μg/kg/処置、または約100μg/kg/処置から約20mg/kg/処置の範囲であるように、処置を投与し得る。
【0027】
ある実施形態において、そのアンタゴニストは、中枢神経系の細胞傷害性およびイオン性浮腫に伴う有害な状態を処置する。そのような状態は、外傷、脊髄損傷、すなわち二次的神経損傷、例えば出血性変換(conversion)、免疫系の反応、酸化障害、カルシウムおよび興奮毒性、ネクローシスおよびアポトーシス、および/または軸索障害を含むがこれに限らない。NCCa−ATPチャネルの不活性化および/または阻害による保護は、浮腫の低減、細胞死の低減、損傷部位における血液の溢血の低減、反応性酸化種の産生の低減、炎症または炎症性反応の低減、および/または出血性変換(conversion)の低減に関連する。従って、本発明の化合物は、その化合物が投与されなった場合の症状のレベルと比較して、これらの症状を低減する。
【0028】
ある実施形態において、Naイオンおよび/または他の一価のイオンのチャネルを通じた流入が低減、停止(ceased)、減少、および/または停止(stopped)するように、NCCa−ATPチャネルをブロック、阻害、または他の方法で活性を減少させる。そのアンタゴニストは、細胞の脱分極を阻害または減少させ、それによってNa流入および細胞の脱分極から起こり得る浸透圧の変化による細胞の腫脹を減少させ得る。従って、NCCa−ATPチャネルの阻害は、細胞傷害性浮腫および細胞死、例えば細胞のネクローシス死を低減し得る。従って、本発明のアンタゴニストを、脊髄損傷に伴う二次的損傷を低減するために使用し得る。
【0029】
またさらに、本発明は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害および/または不活性化するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、脊髄損傷を受けた患者の病的状態を低減または減少させる方法を含み得る。病的状態の低減は、患者の身体的および/または運動の成績および/または感覚の改善を引き起こす。従って、運動範囲の増加および/または患者の感覚の増加は、病的状態が低減される指標である。さらなる実施形態において、患者の身体的な幸福の増加も、患者の病的状態が低減される指標である。
【0030】
またさらに、本発明は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、脊髄損傷を受けた患者の挫傷部位において、またはその近くで、またはその周囲で、血液および/またはヘモグロビン濃度を低減する方法を含み得る。
【0031】
またさらに、別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、患者において脊髄損傷の損傷サイズを低減する方法を含む。損傷サイズの低減は、対側性併発(involvement)の可能性を低減する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、有髄長経路の保存の増加または改善を含む。
【0033】
またさらに、本発明の別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、脊髄損傷を受けた患者においてGFAPのアップレギュレーションを減少させる方法を含む。
【0034】
またさらに、別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、脊髄損傷からの血液の溢血を低減する方法を含む。その患者は、脊髄損傷を受けた患者であり得る、または脊髄損傷の危険性があり得る、例えば手術または照射を受ける患者であり得る。従って、その化合物を、外科的および/または照射処置の前、その間、またはその後に投与し得る。
【0035】
本発明の別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために有効な化合物を患者に投与する工程を含む、患者において脊髄損傷のペナンブラにおける浮腫を低減する方法を含む。
【0036】
またさらに、本発明の別の実施形態は、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはその組み合わせにおいてNCCa−ATPチャネルを阻害するために、有効な量の化合物を投与する工程を含む、脊髄損傷の危険性のある患者を処置することを含む。危険性のある患者は、外科的処置および/または放射線処置を受けている患者を含み得る。危険性のある他の患者は、脊椎の状態、例えば体節の変形、あらゆる公知の型の疾患または感染、例えばクッシング症候群または脊椎の関節炎疾患によって引き起こされる脊髄の圧迫を有する患者を含み得る。
【0037】
またさらに、本発明の別の実施形態は、SUR1のアンタゴニストを標識すること;SUR1の標識アンタゴニストを患者に投与する工程;患者の脊髄におけるSUR1の標識アンタゴニストのレベルを測定することを含む、患者の脊髄において神経細胞浮腫および/または細胞傷害性損傷を診断する方法を含み、ここで患者の脊髄におけるSUR1の標識アンタゴニストの存在は、脊髄の神経細胞浮腫および/または細胞傷害性損傷を示す。標識アンタゴニストは、蛍光マーカーおよび/または放射活性マーカーで標識された化合物を含み得る。その化合物は、SUR1のインヒビター、SUR1の抗体、および/または核酸分子などを含み得る。
【0038】
別の実施形態は、SUR1のアンタゴニストを標識すること;SUR1の標識アンタゴニストを患者に投与する工程;患者の脊髄においSUR1の標識アンタゴニストを可視化することを含む、患者における脊髄損傷後のペナンブラを決定する方法を含み、ここでSUR1の標識アンタゴニストの存在は、患者における脊髄損傷後のペナンブラを示す。
【0039】
ある実施形態において、ペナンブラの決定は、神経損傷の位置を示す、および/または疾患の進行をモニターする。
【0040】
前述のものは、続く本発明の詳細な説明をより良く理解し得るために、本発明の特徴および技術的利点をむしろ広く概説した。本発明のさらなる特徴および利点が、下に記載され、それは本発明の請求の主題を形成する。開示された概念および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を実施するために修飾または他の構造をデザインする基礎として容易に利用し得ることが、当業者によって認識される。そのような等価な構築物は、添付の請求において述べられたような本発明の意図および範囲から離れないことも、当業者によって理解される。組織および操作の方法の両方に関して、本発明に特徴的と考えられる新規の特徴は、さらなる目的および利点と共に、付随する図と関連して考えた場合、以下の説明からより良く理解される。しかし、図のそれぞれは、図解および説明のみの目的で提供され、そして本発明の限界の定義として意図されないことが明白に理解される。
本発明は例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)
脊髄損傷に罹患している被験体を処置するための方法であって、
該被験体に対して、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおけるNCCa−ATPチャネルを阻害するために有効な化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、細胞死を低減する、方法。
(項目3)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、炎症応答を低減する、方法。
(項目4)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、出血性変換を低減する、方法。
(項目5)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、脊髄損傷に関連する二次的損傷を低減する、方法。
(項目6)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、1型スルホニル尿素レセプター(SUR1)アンタゴニストである、方法。
(項目7)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物からなる群より選択される、方法。
(項目8)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約0.0001μg/kg/日〜約20mg/kg/日の範囲内にある、方法。
(項目9)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約0.01μg/kg/日〜約100μg/kg/日の範囲内にある、方法。
(項目10)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約100μg/kg/日〜約20mg/kg/日の範囲内にある、方法。
(項目11)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、ボーラス注射として投与される、方法。
(項目12)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、輸液として投与される、方法。
(項目13)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、輸液と組合わせたボーラス注射として投与される、方法。
(項目14)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約0.0001μg/kg/処置〜約20mg/kg/処置の範囲内にある、方法。
(項目15)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約0.01μg/kg/処置〜約100μg/kg/処置の範囲内にある、方法。
(項目16)
項目6に記載の方法であって、前記被験体に投与されるSUR1アンタゴニストの量は、約100μg/kg/処置〜約20mg/kg/処置の範囲内にある、方法。
(項目17)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、上記細胞中へのNaの流入をブロックし、それによって該細胞の脱分極を防止する、方法。
(項目18)
項目6に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、上記細胞中へのNaの流入をブロックし、それによって細胞傷害性浮腫を防止する、方法。
(項目19)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、消化器系投与または非経口投与される、方法。
(項目20)
項目19に記載の方法であって、前記消化器系投与は、経口投与、口腔内投与、直腸投与、または舌下投与を包含する、方法。
(項目21)
項目19に記載の方法であって、前記非経口投与は、静脈内投与、皮内投与、筋肉内投与、動脈内投与、髄腔内投与、皮下投与、腹腔内投与、または脳室内投与を包含する、方法。
(項目22)
項目1に記載の方法であって、前記化合物は、粘膜投与される、方法。
(項目23)
項目22に記載の方法であって、前記粘膜投与は、鼻内投与を包含する、方法。
(項目24)
項目1に記載の方法であって、前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、前記被験体の病的状態の低減をもたらす、方法。
(項目25)
項目1に記載の方法であって、前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、前記被験体における挫傷部位付近での溢血した血液の減少をもたらす、方法。
(項目26)
項目1に記載の方法であって、前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、脊髄における損傷サイズを低減する、方法。
(項目27)
項目24に記載の方法であって、前記損傷サイズの低減は、脊髄の対側性併発を低減する、方法。
(項目28)
項目1に記載の方法であって、前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、GFAPのアップレギュレーションを低減する、方法。
(項目29)
項目1に記載の方法であって、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおける前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、有髄長経路を保存する、方法。
(項目30)
項目1に記載の方法であって、前記NCCa−ATPチャネルの阻害は、前記被験体による運動または感覚を改善する、方法。
(項目31)
被験体における脊髄損傷のペナンブラにおける浮腫を低減するための方法であって、
該被験体に対して、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおけるNCCa−ATPチャネルを阻害するために有効な化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
(項目32)
脊髄損傷を発症する危険がある被験体を処置するための方法であって、
該被験体に対して、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおけるNCCa−ATPチャネルを阻害するために有効な化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
(項目33)
項目32に記載の方法であって、前記被験体は、外科的処置を受けている、方法。
(項目34)
項目32に記載の方法であって、前記被験体は、放射線処置を受けている、方法。
(項目35)
脊髄損傷からの血液の溢血を低減するための方法であって、
該被験体に対して、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞、またはそれらの組み合わせにおけるNCCa−ATPチャネルを阻害するために有効な化合物を投与する工程;
を包含する、方法。
(項目36)
項目35に記載の方法であって、前記化合物は、1型スルホニル尿素レセプター(SUR1)アンタゴニストである、方法。
(項目37)
項目36に記載の方法であって、前記SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、およびエストロゲン関連化合物からなる群より選択される、方法。
(項目38)
項目35に記載の方法であって、前記被験体は、脊髄損傷の危険がある、方法。
(項目39)
項目38に記載の方法であって、前記化合物は、外科的処置または放射線処置の前、間、または後に投与される、方法。
(項目40)
被験体の脊髄における神経細胞浮腫および/または細胞傷害性損傷を診断するための方法であって、
SUR1のアンタゴニストを標識する工程;
該被験体に対して、該標識したSUR1アンタゴニストを投与する工程;
該被験体の脊髄における標識したSUR1アンタゴニストのレベルを測定する工程;
を包含し、該被験体の脊髄における標識したSUR1アンタゴニストの存在が、該脊髄における神経細胞浮腫および/または細胞傷害性損傷を示す、方法。
(項目41)
被験体における脊髄損傷の後のペナンブラを決定するための方法であって、
SUR1のアンタゴニストを標識する工程;
該被験体に対して、該標識したSUR1アンタゴニストを投与する工程;
該被験体の脊髄における該標識したSUR1アンタゴニストを可視化する工程;
を包含し、標識したSUR1アンタゴニストの存在が、該被験体における脊髄損傷の後のペナンブラを示す、方法。
(項目42)
項目41に記載の方法であって、前記ペナンブラの決定は、ニューロン損傷の位置を示す、方法。
(項目43)
項目41に記載の方法であって、前記ペナンブラの決定は、疾患進行をモニターする、方法。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明をより完全に理解するために、付随する図と共に挙げられた以下の説明に今言及する、ここで:
【図1】図1A−1Cは、新規に単離された反応性星状細胞の外見(図1A)および1mMのアジ化ナトリウムへの接触後5分(図1B)および25分(図1C)の小疱形成を示す走査型電子顕微鏡写真を示す。別の標識が、細胞はGFAP陽性であったことを示した。
【図2】図2は、コントロール条件下での新規に単離された反応性星状細胞の外見、および1mMのアジ化ナトリウムへの接触後の小疱形成を示す位相差顕微鏡写真を示す。小疱形成は、NCCa−ATPチャネルを開放するジアゾキシド単独によって再現され、一方アジ化ナトリウムによって誘発される小疱形成は、チャネルをブロックするグリベンクラミドによって阻害された。別の標識が、細胞はGFAP陽性であったことを示した。
【図3】図3は、外来性ホスファチジルイノシトール−4,5−二リン酸(PIP)の添加は、槽溶液中のATPの存在にもかかわらず、NCCa−ATPチャネルの活性化を引き起こすことを示す。最初に、R1星状細胞由来の膜のインサイドアウトパッチにおいて、チャネル活性をブロックするのに十分な、1μMのCa2+および10μMのATPを含む槽溶液で、チャネル活性を記録した。50μMのPIPの添加は、チャネルの活性化を引き起こし、チャネルのATPに対する親和性の明らかな減少を反映した。
【図4】図4は、R1星状細胞におけるNCCa−ATPチャネルが、エストロゲンによって阻害されることを示す。記録の最初の部分は、メスから得たR1星状細胞由来の膜の細胞結合パッチにおいて記録された、多くの重なったチャネルの活発な活性を示す。10nMのエストロゲンを槽に加えるとすぐ、チャネル活性の強力な阻害を引き起こした。関与するメカニズムは、ホスホリパーゼC(PLC)のエストロゲンレセプターを介した活性化に関連すると考えられ、膜からのPIPの枯渇を引き起こし、そしてATPに対する親和性の明らかな減少を反映する。
【図5】図5A−5Bは、オスおよびメス両方からのR1星状細胞は、エストロゲンレセプターおよびSUR1、NCCa−ATPチャネルのマーカーを発現することを示すウェスタンブロットを示す。オス(M)およびメス(F)から、細胞溶解物をゼラチンスポンジインプラントから得て、そして子宮からの溶解物をコントロールとして使用し、2つの希釈(4×および1×)で研究した。図5Aは、エストロゲンレセプター(ER)に対する抗体を用いて現像し、両方の性由来の星状細胞において、ERαおよびERβが両方発現していることを示す。ウェスタンブロットは、膵臓組織をコントロールとして用いて、SUR1も両方の性由来の細胞によって発現していることを示した(図5B)。
【図6】図6は、オス由来のR1星状細胞におけるNCCa−ATPチャネルが、エストロゲンによって阻害されることを示す。記録の最初の部分は、オスから得たR1星状細胞由来の膜の細胞結合パッチにおいて記録された、多くの重なったチャネルの活発な活性を示す。10nMのエストロゲンを槽に加えるとすぐ、チャネル活性の強力な阻害を引き起こした。
【図7】図7A−7Bは、アジ化ナトリウムによって誘発された小疱形成の後に、新規に単離された反応性星状細胞のネクローシス死が続くことを示す。細胞死を、ネクローシス死を同定するためにヨウ化プロピジウム(PI)を(図7A)、およびアポトーシス死を同定するためにアネキシンVを用いて(図7B)評価した。1mMのアジ化ナトリウムによって誘発されたネクローシス死の有意な増加は、1μMのグリベンクラミドによって強力に減弱した(図7A)。アポトーシス死は、アジ化ナトリウムとの接触後最低限であった(図7B)。
【図8】図8A−8Bは、SUR1に関して免疫標識された、ペナンブラにおける1細胞(図8A)および脳における発作の中の2細胞の免疫蛍光画像を示し(図8B、8C)、GFAPによる同時標識は、それらのアイデンティティーが星状細胞であることを確認した;標識の「小疱様」パターンに注意。
【図9】図9A−9Bは、反応性星状細胞のネクローシス死を誘発するためにジアゾキシドを注入した後の、外傷性脳損傷部位の画像を示す。切片を、核マーカー、DAPIで標識し、小さい細胞のシートを示し(図9A)、そして抗MMP−8抗体で免疫標識して、細胞をPMNと同定した(図9B)。
【図10】図10A−10Dは、SUR1(図10A、10B、10D)またはGFAP(図10C)に関して標識した、コントロール(図10A)および重症の両側性胸部脊髄挫滅損傷から24時間後(図10B−10D)の脊髄切片の免疫蛍光(合成)画像を示す。高い拡大率において、(図10B)で見られる個々のSUR1陽性位置は、反応性星状細胞に一致するGFAP陽性星状細胞(図10D)に対応する。
【図11】図11A−11Cは、中程度の重症度の頸部半脊髄挫傷損傷(SCI;すべての続く説明において使用されるのと同じモデル)におけるSUR1アップレギュレーションを示す。低出力(図11B)および高出力(図11C)で示した、コントロール領域(図11A)および挫傷損傷の領域由来の、SUR1に関して免疫標識された脊髄組織の落射蛍光画像。高出力の写真は、このモデルにおいて、24時間でのSUR1発現は、主に毛細血管で起こることを示す。
【図12】図12A−12Hは、SCIにおいて、SUR1およびビメンチンは、毛細血管においてアップレギュレートされることを示す。挫傷損傷から24時間後の、SUR1に関して免疫標識され(図12A、12D)、そしてビメンチンに関して同時標識された(図12B、12E、12F)、2匹のラット由来の脊髄組織の落射蛍光画像;重ねた画像も示す。
【図13】図13A−Bは、SUR1の発現を調節することが公知の主な転写因子である、転写因子SP1のアップレギュレーションを示す。SP1に関して免疫標識した2匹のラット由来の脊髄組織、コントロール未損傷脊髄(図13A)および挫傷損傷から24時間後の脊髄(図13B)の落射蛍光画像。
【図14】図14A−14Cは、グリベンクラミド処置が、出血性変換(conversion)を低減することを示す。図14Aおよび14Bは、生理食塩水で処置したラット(図14A)およびグリベンクラミドで処置したラット(図14B)に関する、挫傷損傷から24時間後の脊髄の凍結切片の画像を示す;グリベンクラミド処置による、より少量の出血および対側性構造の保存に注意。図14Cは、生理食塩水で処置した2匹のラット(左)およびグリベンクラミドで処置した2匹のラット(右)の、挫傷損傷から24時間後の脊髄のホモジネートを含む試験管を示す;グリベンクラミド処置によるヘモグロビン濃度の明らかな減少を反映する色の違いに注意。
【図15】図15は、脊髄損傷(SCI)後の出血性変換(conversion)のタイムコースに対するグリベンクラミド処置の効果を示す。損傷部位の溢血した血液を、SCIの後様々な時間で評価した。屠殺の時点で、血管内の血液をまず灌流によって除去し、次いで挫傷領域を含む脊髄の5mmの部分を切除し、重量を測り、そして組織の質量の9×の容積の蒸留水中でホモジナイズした。血液の含有量を、Drabkin試薬を用いて定量した(グループあたり5匹のラット)。値を、560nmにおける吸光度として、またはヘマトクリットを40%と仮定して、血液のマイクロリットルとして表した。生理食塩水で処置した動物において、血液の量はSCIの後時間と共に連続的に増加し、損傷の6時間後にプラトーに達した(黒四角)。グリベンクラミドで処置した動物において、45分における値はコントロールと同様であったが、SCIの後時間が経つにつれて、値は有意にコントロールよりも少なく増加した(黒丸)。
【図16】図16A−16Dは、グリベンクラミド処置が、損傷サイズ、GFAP発現を低減し、そして対側性長経路を保存することを示す。図16Aおよび16Bは、生理食塩水で処置したラット(図16A)およびグリベンクラミドで処置したラット(図16B)における、グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)に関して免疫標識された、挫傷損傷から24時間後の脊髄切片の落射蛍光画像を示す。図16Cおよび16Dは、生理食塩水で処置したラット(図16C)およびグリベンクラミドで処置したラット(図16D)における、エリオクロムシアニン−Rを用いてミエリンを染色した、挫傷損傷から24時間後の脊髄切片の画像を示す。グリベンクラミドによる、より小さい損傷および対側性構造の保存に注意。
【図17】図17は、グリベンクラミド処置は、SCI挫傷後の垂直探索を改善することを示す。挫傷損傷の24時間後、生理食塩水で処置した6匹のラットおよびグリベンクラミドで処置した5匹のラットに関する、3分間の観察期間あたり垂直探索(立ち上がり)に費やした秒数を示す棒グラフ。
【発明を実施するための形態】
【0042】
(本発明の詳細な説明)
(I.定義)
他に定義されなければ、本明細書中で使用される技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本発明の目的のために、以下の用語を下記で定義する。
特許請求の範囲および/または明細書において、「含む」という用語と共に使用される場合、「a」または「an」という単語の使用は、「1」を意味し得るが、それはまた「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つより多い」の意味とも一致する。請求における「or」という用語の使用は、代替物のみを指すよう明確に示されなければ、または代替物が相互排他的でなければ、「および/または」を意味するよう使用されるが、開示は代替物のみおよび「および/または」を指す定義を支持する。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「アンタゴニスト」という用語は、体内で別の化学的または生物学的物質の生理学的活性を低減するよう作用する、生物学的または化学的薬剤を指す。「アンタゴニスト」という用語は、小分子、化学物質、タンパク質、ペプチド、核酸分子などを含むがこれに限らない。本発明において、アンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞または神経内皮細胞(例えば毛細血管内皮細胞)のNCCa−ATPチャネルの活性をブロック、阻害、低減および/または減少させる。本発明において、アンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞または神経内皮細胞(例えば毛細血管内皮細胞)のNCCa−ATPチャネルと結合(combines)、結合(binds)、会合して、NCCa−ATPチャネルが閉鎖(不活性化、部分的にブロック、ブロックまたは阻害)され、疾患状態における生物学的活性に関して低減された生物学的活性を意味する。ある実施形態において、アンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルの調節サブユニット、特にSUR1に結合(combines)、結合(binds)および/または会合する。あるいは、アンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルが閉鎖(不活性化および/または阻害)されるように、NCCa−ATPチャネルのポア形成サブユニットと結合(combines)、結合(binds)、および/または会合する。アンタゴニストまたはインヒビターという用語は、交換可能に使用し得る。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「脱分極」という用語は、ナトリウムイオンに対する細胞膜の透過性の増加を指し、ここで細胞膜をはさんだ電位差は低減または排除される。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「有効な量」または「処置的に有効な量」という用語は、交換可能であり、そして疾患の症状または状態の改善または処置を引き起こす量を指す。当業者は、有効な量は、患者または対象の状態を改善し得るが、疾患および/または状態の完全な治癒ではないかもしれないことを理解する。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「内皮」という用語は、体腔、血管、およびリンパ管の内側表面を裏打ちする、または毛細血管を形成する細胞の層を指す。
【0047】
本明細書中で使用される場合、「内皮細胞」という用語は、内皮の細胞または体腔、例えば血管またはリンパ管または毛細血管の表面を裏打ちする細胞を指す。ある実施形態において、内皮細胞という用語は、神経内皮細胞または神経系、例えば中枢神経系、すなわち脊髄の一部である内皮細胞を指す。
【0048】
本明細書中で使用される場合、「出血性変換(conversion)」という用語は、虚血後に毛細血管において起こる病理学的な連続を指す。当業者は、出血性変換(conversion)は、破局的な毛細血管の不全のためであり、その間血液のすべての成分は周囲の組織へ溢血することを認識する。Starlingの法則によって、これらの局面を理解することは、2つの事柄が同定されることが必要である:(i)ものを組織へ「押す」推進力;および(ii)これらのものが組織へ通過することを可能にする透過性ポア。
【0049】
本明細書中で使用される場合、「阻害する」という用語は、NCCa−ATPチャネルをブロック、部分的にブロック、干渉、減少、低減、または不活性化する化合物の能力を指す。従って、当業者は、阻害するという用語は、細胞の脱分極の低減、ナトリウムイオンの流入またはあらゆる他の一価イオンの流入の低減、水の流入の低減、血液の溢血の低減、細胞死の低減、および改善によって示されるような、NCCa−ATPチャネルの活性の完全なおよび/または部分的な喪失を含むことを理解する。
【0050】
本明細書中で使用される場合、「損傷」という用語は、あらゆる病理学的または外傷的な組織の不連続またはその部分の機能の喪失を指す。例えば、損傷は、脊髄に関するあらゆる損傷、例えば挫傷、圧迫損傷などを含むがこれに限らない。
【0051】
本明細書中で使用される「病的状態(morbidity)」という用語は、病気にかかった状態である。またさらに、罹患率(morbidity)は、疾患の割合または当該集団中の病気の患者または疾患の症例の比も指す。
【0052】
本明細書中で使用される「致死性(mortality)」という用語は、致死である、または死を引き起こす状態である。またさらに、死亡率(mortality)は、死亡の割合または所定の集団に対する死亡数の比も指し得る。
【0053】
本明細書中で使用される場合、「神経細胞」という用語は、神経系の形態学的および機能的単位である細胞を指す。その細胞は、神経細胞体、樹状突起、および軸索を含む。ニューロン、神経細胞(nerve cell)、神経細胞の、ニューロン、および神経細胞(neurocyte)は、交換可能に使用し得る。神経細胞型は、内部構造を示す典型的な神経細胞体、大脳皮質からの(カハールの)水平細胞、マルティノッティ細胞、双極細胞、単極細胞、プルキンエ細胞、および大脳皮質の運動領域の錐体細胞を含み得るがこれに限らない。
【0054】
本明細書中で使用される場合、「神経の」という用語は、神経系と関係するあらゆるものを指す。
【0055】
本明細書中で使用される場合、「神経膠」または「神経膠細胞」という用語は、神経系の非神経細胞成分である細胞を指す。神経膠、神経膠細胞(neurogliacyte)、および神経膠細胞(neuroglial cell)という用語は、交換可能に使用し得る。神経膠細胞は、上衣細胞、星状細胞、オリゴデンドロサイト、またはミクログリアを含み得るがこれに限らない。
【0056】
本明細書中で使用される場合、「低減する」という用語は、本発明の化合物で処置しない場合と比較して、細胞死、炎症性反応、出血性変換(conversion)、血液の溢血などの減少を指す。従って、当業者は、処置なしと比較して、患者が本発明の処置を受けた、脊髄損傷に伴う症状および/または状態のいずれかの減少の範囲を、および/または介入無しで何が起こるかを決定し得る。
【0057】
本明細書中で使用される「予防する」という用語は、疾患状態に発展する危険性または疾患状態または進行または他の異常なまたは有害な状態に関連するパラメーターを最小化する、減少させる、または低減することを指す。
【0058】
本明細書中で使用される場合、「脊髄」、「椎骨区域に関係する脊髄神経組織」、「椎骨区域に関係する神経組織」または「椎骨区域またはレベルに関係する脊髄」は、椎骨レベルまたは区域に関係するあらゆる脊髄神経組織を含み、それらはすべて交換可能である。従って、当業者は、脊髄組織はすべての神経細胞、およびそこに関係するあらゆる神経膠細胞を含むことを認識する。当業者は、脊髄およびそこに関係する組織は、頸椎、胸椎、および腰椎と関係することを認識する。本明細書中で使用される場合、C1は頸椎分節1を指し、C2は頸椎分節2を指す、などである。T1は、胸椎分節1を指し、T2は胸椎分節2を指す、などである。他に具体的に述べなければ、L1は腰椎分節1を指し、L2は腰椎分節2を指す、などである。
【0059】
本明細書中で使用される「対象」という用語は、本明細書中で記載された方法に従って組成物が投与される、あらゆる哺乳類対象を意味するようとられる。当業者は、哺乳類対象は、ヒト、サル、ウマ、ブタ、ウシ、イヌ、ネコ、ラットおよびマウスを含むがこれに限らないことを認識する。特定の実施形態において、本発明の方法を、ヒト対象を処置するために採用する。さらなる実施形態において、対象は脊髄損傷を起こす危険性がある。従って、対象はその疾患状態または潜在的な疾患状態を認識し得るまたはし得ない、そして彼らは処置(処置的処置または予防的処置)の必要があることを認識し得るまたはし得ない。
【0060】
本明細書中で使用される「処置する」および「処置」という用語は、対象が疾患または状態において改善するように、対象に処置的に有効な量の組成物を投与する工程を指す。改善は、あらゆる観察可能または測定可能な改善である。従って、当業者は、処置が患者の状態を改善し得ること、しかし疾患の完全な治癒ではないかもしれないことを認識する。処置することはまた、疾患および/または状態になる危険性のある対象を処置することを含む。
【0061】
(II.本発明)
本発明は、処置的組成物およびその使用方法に向けられる。1つの実施形態において、その処置的組成物は、神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞のNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストである。
【0062】
ある実施形態において、本発明の処置的組成物は、神経細胞、神経膠細胞、または内皮細胞のNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを含む。アンタゴニストは、中枢神経系の細胞傷害性およびイオン性浮腫に関連する有害な状態を処置することにおいて使用することが企図される。そのような状態は、外傷、脊髄損傷、すなわち二次的神経損傷、例えば出血性変換(conversion)、免疫系の反応、酸化損傷、カルシウムおよび興奮毒性、ネクローシスおよびアポトーシス、および/または軸索損傷を含むがこれに限らない。NCCa−ATPチャネルの阻害による保護は、浮腫の低減、反応性酸化種の産生の低減、炎症の刺激の低減、および/または出血性変換(conversion)の低減に関連する。
【0063】
1つの局面において、NCCa−ATPチャネルを、ブロック、阻害または他の方法で活性を減少させる。そのような例において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを投与および/または適用する。そのアンタゴニストは、チャネルを通した流入が低減、停止(ceased)、減少または停止(stopped)するように、NCCa−ATPチャネルを調節する。そのアンタゴニストは、神経細胞、神経膠細胞、内皮細胞またはその組み合わせのNCCa−ATPチャネルの活性に関して、可逆的または不可逆的な活性を有し得る。そのアンタゴニストは、細胞の脱分極を阻害または低減し、それによってNaの流入および細胞の脱分極から生じ得る浸透圧変化による細胞の腫脹を低減し得る。従って、NCCa−ATPチャネルの阻害は、細胞傷害性浮腫および細胞の死、例えばネクローシス細胞死を低減し得る。
【0064】
好ましい実施形態において、本発明は、神経細胞、神経膠細胞、または内皮細胞のNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを投与する工程を含む、患者において脊髄損傷を低減する方法を提供し、ここでアンタゴニストはチャネルに結合する。NCCa−ATPチャネルの結合は、Naおよび水の星状細胞、神経細胞および内皮細胞への流入をブロックし、それによって損傷における、またはその周囲の腫脹を低減する。より具体的には、そのアンタゴニストは最初の脊髄損傷からの二次的損傷を低減する、例えば毛細血管の病的関与、すなわち出血性変換(conversion)の進行を低減する、免疫系の反応を低減する、酸化的損傷を低減する、カルシウムおよび興奮毒性を低減する、ネクローシスおよび細胞死を低減する、および/または軸索の損傷を低減する。
【0065】
(III.NCCa−ATPチャネル)
本発明は、部分的には、特定のチャネル、米国出願公開第20030215889号において星状細胞上のチャネルとして定義された、NCCa−ATPチャネルの発見に基づき、それは本明細書中でその全体が参考として援用される。より具体的には、本発明は、中枢神経系の外傷、例えば脊髄挫傷、またはこれらのイベントに関連する他の二次的な神経損傷の後、このチャネルが星状細胞に発現するだけでなく、神経細胞、神経膠細胞、および/または神経内皮細胞に発現することをさらに定義した。
【0066】
NCCa−ATPチャネルは、カルシウムイオン(Ca2+)によって活性化され、そしてATPに対して感受性である。従って、このチャネルは、細胞内Ca2+によって活性化され、そして細胞内ATPによってブロックされる非選択的陽イオンチャネルである。細胞内ATPの枯渇により開口した場合、このチャネルは大量のNaの流入による完全な脱分極の原因であり、それはClに関して電気的勾配を、そしてHOに関して浸透圧勾配を産生し、細胞傷害性浮腫および細胞死を引き起こす。チャネルがブロックまたは阻害される場合、大量のNaは起こらず、それによって細胞傷害性浮腫を予防する。
【0067】
ある機能的特徴が、NCCa−ATPチャネルを他の公知のイオンチャネルから区別する。これらの特徴は、1)Na、Kおよび他の一価陽イオンの通過を容易に可能にする非選択的陽イオンチャネルである;2)細胞内Ca2+の存在下で、細胞内ATPの減少によって活性化される;3)今まで膵臓β細胞において見出されるもののようなKATPチャネルと独占的に関連していると考えられてきた、スルホニルウレアレセプター1型(SUR1)によって調節されることを含むが、これに限らない。
【0068】
より具体的には、本発明のNCCa−ATPチャネルは、20および50pSの間のカリウムイオン(K)に対する単一チャネルコンダクタンスを有する。NCCa−ATPチャネルはまた、生理的濃度範囲で、細胞膜の細胞質側のCa2+によって刺激され、ここで濃度範囲は10−8から10−5Mである。NCCa−ATPチャネルはまた、生理的濃度範囲で、細胞質ATPによって阻害され、ここでその濃度範囲は10−1から10Mである。NCCa−ATPチャネルはまた、以下の陽イオン;K、Cs、Li、Naに対して、いずれか2つの陽イオン間の透過性比が0.5より大きく、そして2より小さい程度まで、透過性である。
【0069】
(IV.NCCa−ATPチャネルのインヒビター)
本発明は、そのチャネルのインヒビター、例えばそのチャネルのアンタゴニストを含む。本発明のアゴニストの例は、米国出願公開第20030215889号において同定されたアンタゴニストを含み得、それは本明細書中で全体が参考として援用される。当業者は、NCCa−ATPチャネルは、2つのサブユニット、調節性サブユニット、SUR1およびポア形成サブユニットからなることを認識する。当業者は、SUR1の核酸配列およびアミノ酸配列は、GenBank、例えばGenBank受け入れ番号L40624(GI:1311533)およびAAA99237(GI:1311534)において容易に入手可能であることを認識し、それらはそれぞれ本明細書中で全体が参考として援用される。
【0070】
(A.SUR1のインヒビター)
ある実施形態において、スルホニルウレアレセプター−1(SUR1)に対するアンタゴニストが、チャネルをブロックするために適当である。適当なSUR1アンタゴニストの例は、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、エストロゲン関連化合物(エストラジオール、エストロン、エストリオール、ゲニステイン、非ステロイド性エストロゲン(例えばジエチルスチルベストロール)、フィトエストロゲン(例えばクメストロール)、ゼアラレノンなど)およびその組み合わせを含むがこれに限らない。本発明の好ましい実施形態において、SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミドおよびトルブタミドからなるグループから選択される。またさらに、別のアンタゴニストはMgADPであり得る。他のアンタゴニストは、KATPチャネルブロックカー、例えばトルブタミド、グリブリド(1[p−2[5−クロロ−O−アニサミド(anisamido)]エチル]フェニル)スルホニル]−3−シクロヘキシル−3−ウレア);クロルプロパミド(1−[[(p−クロロフェニル)スルホニル]−3−プロピルウレア]);グリピジド(1−シクロヘキシル−3[[p−[2(5−メチルピラジンカルボキシアミド)エチル]フェニル]スルホニル]ウレア);またはトラザミド(ベンゼンスルホンアミド−N−[[(ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1イル)アミノ]カルボニル]−4−メチル)を含むがこれに限らない。
【0071】
(B.SUR1の転写および/または翻訳のインヒビター)
ある実施形態において、そのインヒビターは、SUR1(調節性サブユニット)および/またはポア形成サブユニットを含む分子部分の転写および/または翻訳を調節する化合物(タンパク質、核酸、siRNAなど)であり得る。
【0072】
(1.転写因子)
転写因子は、特異的なDNA配列(例えばプロモーターおよびエンハンサー)に結合し、そしてコードしているDNA領域の転写を調節する、調節性タンパク質である。従って、転写因子を使用して、SUR1の発現を調節し得る。典型的には、転写因子は、DNAに結合する結合ドメイン(DNA結合ドメイン)および転写を調節する調節性ドメインを含む。調節性ドメインが転写を活性化する場合、その調節性ドメインは活性化ドメインと呼ばれる。調節性ドメインが転写を阻害する場合、その調節性ドメインは低減ドメインと呼ばれる。
【0073】
より具体的には、Sp1およびHIF1αのような転写因子を使用して、SUR1の発現を調節し得る。当業者は、Sp1およびHIF1αは、SUR1の発現を調節し得ることを認識する。従って、通常虚血/低酸素および/または高血糖によって誘導されるSp1の発現/活性化を阻害し得、それが今度はSUR1の発現を阻害する(Chae YMら、2004、本明細書中で参考文献に組み込まれる)。従って、インヒビターまたはSp1および/またはHIF1の結合を阻害する分子が、本発明において企図される。Sp1の他のそのようなインヒビターは、ミトラマイシンを含み得るがこれに限らない。
【0074】
従って、候補物質またはSUR1インヒビターは、DNA結合タンパク質または転写因子またはSp1またはHIF1のような転写因子の活性または結合を阻害する、または妨害する分子または化合物であり得ることが企図される。SUR1インヒビターが、遺伝子内に位置する調節性エレメントに結合して遺伝子の転写を変化させ得る、またはDNA結合タンパク質またはSp1またはHIF1のような転写因子の結合を妨害し得ることが提案される。DNAと相互作用して、転写を阻害または低減するような、転写を変化させる複合体を形成する、推定SUR1インヒビターと別の化合物、例えばタンパク質との相互作用も、本発明において企図される。推定SUR1インヒビターと相互作用する化合物は、1つまたは1つ以上の化合物であり得ることが理解される。
【0075】
(2.アンチセンスおよびリボザイム)
翻訳または転写開始部位、またはスプライスジャンクションに結合するアンチセンス分子は、理想的なインヒビターである。アンチセンス、リボザイム、および2本鎖RNA分子は、特定の配列を標的として、SUR1のような特定のポリペプチドの低減または排除を達成する。従って、アンチセンス、リボザイム、および2本鎖RNAおよびRNA干渉分子を構築し、そしてSUR1を調節するために使用することが企図される。
【0076】
(a.アンチセンス分子)
アンチセンス方法論は、核酸は相補的配列と対になる傾向があるという事実を利用する。相補的によって、ポリヌクレオチドが、標準的なワトソン−クリック相補性ルールによって塩基対形成し得るものであることを意味する。すなわち、より大きなプリンはより小さなピリミジンと塩基対形成して、シトシンと対になったグアニン(G:C)およびDNAの場合にはチミンと対になったアデニン(A:T)、またはRNAの場合にはウラシルと対になったアデニン(A:U)の組み合わせを形成する。ハイブリダイズする配列中にイノシン、5−メチルシトシン、6−メチルアデニン、ヒポキサンチンおよび他のようなより普通でない塩基を含むことは、対形成を妨害しない。
【0077】
ポリヌクレオチドで2本鎖(ds)DNAを標的化することは、3重らせんの形成を引き起こす;RNAを標的化することは、2重らせんの形成を引き起こす。アンチセンスポリヌクレオチドは、標的細胞に導入された場合、その標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、そして転写、RNAプロセシング、輸送、翻訳および/または安定性に干渉する。アンチセンスRNA構築物、またはそのようなアンチセンスRNAをコードするDNAが、ヒト患者を含む宿主動物におけるように、インビトロまたはインビボのいずれかで、宿主細胞内で遺伝子の転写または翻訳または両方を阻害するために採用される。
【0078】
アンチセンス構築物を、遺伝子のプロモーターおよび他の調節領域、エキソン、イントロンまたはエキソン−イントロン境界にも結合するように設計する。最も有効なアンチセンス構築物は、イントロン/エキソンスプライスジャンクションに相補的な領域を含み得ることが企図される。従って、イントロン−エキソンスプライスジャンクションの50−200塩基以内の領域に相補的なアンチセンス構築物を使用する。いくつかのエキソン配列を、その標的選択性に重大な影響を与えることなく構築物中に含み得ることが観察された。含まれるエキソン材料の量は、使用する特定のエキソンおよびイントロン配列によって変化する。単に構築物をインビトロで試験して通常の細胞機能が影響されているかどうか、または相補的配列を有する関連遺伝子の発現が影響されているかどうかを決定することによって、多すぎるエキソンDNAが含まれているかどうかを容易に試験し得る。
【0079】
ゲノムDNAの一部をcDNAまたは合成配列と組み合わせて、特定の構築物を産生することが有利である。例えば、最終的な構築物においてイントロンが望ましい場合、ゲノムクローンを使用する必要がある。cDNAまたは合成ポリヌクレオチドは、構築物の残る部分に関してより簡便な制限部位を提供し得、そして従って配列の残りに関して使用される。
【0080】
(b.RNA干渉)
本発明において、2本鎖RNAを干渉分子、例えばRNA干渉(RNAi)として使用することも企図される。RNA干渉は、単に関心のある有機体に、2本鎖RNA分子を注射、浸す、または与えることによって、関心のある特定の遺伝子を「ノックダウン」または阻害するために使用される。この技術は、トランスフェクションまたは組み換え技術を必要とすることなく、遺伝子機能を選択的に「ノックダウン」する(Giet、2001;Hammond、2001;Stein Pら、2002;Svoboda Pら、2001;Svoboda Pら、2000)。
【0081】
別の型のRNAiが多くの場合、低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれ、それもSUR1を阻害するために利用し得る。siRNAは、2本鎖構造または1本鎖構造を含み得、その配列は、標的遺伝子の少なくとも一部と「実質的に同一」である(WO04/046320を参照のこと、これは本明細書中でその全体が参考として援用される)。当該分野で公知の「同一性」は、配列を比較することによって決定される、2つまたはそれ以上のポリヌクレオチド(またはポリペプチド)配列間の関係である。当該分野において、同一性はまた、そのような配列間のヌクレオチドの順番の一致によって決定される、ポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度を意味する。同一性を、容易に計算し得る。例えば、明確に本明細書中で参考文献に組み込まれる、Computational Molecular Biology、Lesk,A.M.編、Oxford University Press、New York、1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.編、Academic Press、New York、1993;およびWO99/32619、WO01/68836、WO00/44914およびWO01/36646において開示された方法を参照のこと。2つのヌクレオチド配列間の同一性を測定する多くの方法が存在するが、その用語は当該分野で周知である。同一性を決定する方法は、典型的には、ヌクレオチド配列の最も多い程度の一致を産生するよう設計され、そしてまた典型的にはコンピュータープログラムにおいて具体化される。そのようなプログラムは、関連する当業者に容易に入手可能である。例えば、GCGプログラムパッケージ(Devereuxら)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Atschulら)およびCLUSTAL(Higginsら、1992;Thompsonら、1994)。
【0082】
従って、siRNAは、標的遺伝子、例えばSUR1、またはポア形成サブユニットのようなNCCa−ATPチャネルと関連するあらゆる他の分子部分の少なくとも一部と本質的に同一であるヌクレオチド配列を含む。当業者は、SUR1の核酸配列は、GenBank、例えばGenBank受け入れ番号L40624(GI:1311533)において容易に入手可能であることを認識し、それは本明細書中でその全体が参考として援用される。好ましくは、siRNAは、標的遺伝子の少なくとも一部と完全に同一であるヌクレオチド配列を含む。もちろん、RNA配列をDNA配列と比較する場合、「同一」RNA配列は、DNA配列がデオキシリボヌクレオチドを含むところにリボヌクレオチドを含み、そしてさらにRNA配列は典型的にはDNA配列がチミジンを含む位置にウラシルを含む。
【0083】
当業者は、異なる長さの2つのポリヌクレオチドを、より長い断片の長さ全体で比較し得ることを認識する。あるいは、小さい領域を比較し得る。通常、本発明の実施におけるその有用性を最終的に推定するために、同じ長さの配列を比較する。siRNAとして使用するために、dsRNA間に100%の配列同一性、および少なくとも15個の連続した標的遺伝子(例えばSUR1)のヌクレオチがあることが好ましいが、70%、75%、80%、85%、90%、または95%またはそれより高い同一性を有するdsRNAも本発明において使用し得る。標的遺伝子の少なくとも一部と本質的に同一であるsiRNAはまた、2本の相補鎖のうち1本(または、自己相補的なRNAの場合、2つの自己相補的部分のうち1つ)が、標的遺伝子のその部分と同一であるか、または標的遺伝子のその部分のヌクレオチド配列と比較して1つまたはそれ以上の挿入、欠失、または単一の点突然変異を含む。従って、siRNA技術は、遺伝的変異、系統多型、または進化上の相違から起こることが予測され得る配列の差異を許容できる性質を有する。
【0084】
化学的合成、インビトロ転写、siRNA発現ベクター、およびPCR発現カセットのような、siRNAを調製するいくつかの方法が存在する。どの方法を使用するかとは無関係に、siRNA分子を設計する最初の工程は、siRNA標的部位を選択することであり、それは標的遺伝子のあらゆる部位であり得る。ある実施形態において、当業者は、手作業で遺伝子の標的選択領域を選択し得、それは標的選択領域としてORF(オープンリーディングフレーム)であり得る、および好ましくは「ATG」開始コドンの50−100ヌクレオチド下流であり得る。しかし、siRNA分子の設計を助けるために利用可能な、いくつかの容易に入手可能なプログラム、例えばPromegaによるsiRNA Target Designer、GenScript Corp.によるsiRNA Target Finder、Imgenex Corp.によるsiRNA Retriever Program、EMBOSS siRNAアルゴリズム、QiagenによるsiRNAプログラム、Ambion siRNA predictor、Whitehead siRNA prediction、およびSfoldが存在する。従って、上記のプログラムのいずれかを利用して、本発明で使用し得るsiRNA分子を産生し得ることが構想される。
【0085】
(c.リボザイム)
リボザイムは、部位特異的な様式で核酸を切断するRNA−タンパク質複合体である。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する、特異的触媒ドメインを有する(KimおよびCech、1987;ForsterおよびSymons、1987)。例えば、多数のリボザイムは、高い程度の特異性でホスホエステル転移反応を促進し、多くの場合、オリゴヌクレオチド基質中のいくつかのホスホエステルのうち1つだけを切断する(Cechら、1981;Reinhold−HurekおよびShub、1992)。この特異性は、化学反応の前に、基質がリボザイムの内部ガイド配列(「IGS」)に対する特異的な塩基対形成相互作用によって結合する必要性に起因していた。
【0086】
リボザイム触媒は、主に核酸が関与する配列特異的切断/ライゲーション反応の一部として観察された(Joyce、1989;Cechら、1981)。例えば、米国特許第5,354,855号は、あるリボザイムが、公知のリボヌクレアーゼのものより高く、そしてDNA制限酵素のものに近づく配列特異性でエンドヌクレアーゼとして作用し得ることを報告した。従って、遺伝子発現の配列特異的リボザイムによる阻害は、処置的適用に特に適当である(Scanlonら、1991;Sarverら、1990;Sioudら、1992)。この作用のほとんどは、特定のリボザイムによって切断される特定の変異コドンに基づく、標的mRNAの修飾を含んでいた。本明細書中に含まれる情報および当業者の知識を考慮して、所定の遺伝子に特異的に標的化した、さらなるリボザイムの調製および使用は今や明白である。
【0087】
他の適当なリボザイムは、RNA切断活性を有するRNアーゼP由来の配列(Yuanら、1992;YuanおよびAltman、1994)、ヘアピンリボザイム構造(Berzal−Herranzら、1992;Chowriraら、1993)および肝炎δウイルスに基づくリボザイム(PerrottaおよびBeen、1992)を含む。リボザイムによるRNA切断活性の一般的な設計および最適化が、詳細に議論された(HaseloffおよびGerlach、1988;Symons、1992;Chowriraら、1994;およびThompsonら、1995)。
【0088】
リボザイム設計における他の変数は、所定の標的RNAの切断部位の選択である。リボザイムは、相補的塩基対相互作用によって部位にアニーリングすることによって、所定の配列に標的化される。2つの相同性の範囲が、この標的化に必要である。これらの相同性配列の範囲が、上記で定義された触媒性リボザイム構造をはさむ。相同性配列の範囲はそれぞれ、長さが7から15ヌクレオチドまで異なり得る。相同性配列を定義する唯一の必要条件は、標的RNAにおいて、それらは切断部位である特異的配列によって分離することである。ハンマーヘッド型リボザイムに関して、切断部位は標的RNAにおけるジヌクレオチド配列、ウラシル(U)に続いてアデニン、シトシン、またはウラシルのいずれかである(A、C、またはU;Perrimanら、1992;Thompsonら、1995)。あらゆる所定のRNAにおいて起こるこのジヌクレオチドの頻度は、統計学的には16のうち3である。
【0089】
標的RNAの効率的な切断のためにリボザイムを設計および試験することは、当業者に周知の過程である。リボザイムを設計および試験するための科学的な方法の例は、Chowriraら(1994)およびLieberおよびStrauss(1995)によって記載され、それぞれ参考文献に組み込まれる。SUR1標的化リボザイムにおいて使用するための、操作的および好ましい配列の同定は、単に所定の配列を調製および試験する問題であり、そして日常的に実施される、当業者に公知のスクリーニング方法である。
【0090】
(C.インヒビターをスクリーニングする方法)
本発明のさらなる実施形態は、活性および/または発現を調節する、NCCa−ATPチャネルのインヒビター、例えばアンタゴニストを同定する方法を含み得る。これらのアッセイは、候補物質の大きなライブラリーのランダムスクリーニングを含み得る;あるいは、そのアッセイを、NCCa−ATPチャネルの機能または活性または発現を調節する可能性をより高くすると考えられる、構造的性質に眼を向けて選択された特定のクラスの化合物に焦点を合わせるために使用し得る。
【0091】
機能によって、mRNA発現、タンパク質発現、タンパク質活性、またはチャネル活性、より具体的には、修飾因子のNCCa−ATPチャネルを阻害またはブロックする能力に関してアッセイし得ることを意味する。従って、本発明によってスクリーニングするための化合物は、NCCa−ATPチャネルに結合し、そしてチャネルをブロックする(例えばアンタゴニスト)、天然または合成有機化合物、ペプチド、抗体およびその断片、ペプチド模倣物を含むがこれに限らない。
【0092】
NCCa−ATPチャネルに影響を与える化合物のスクリーニングに関して、天然産物または合成化学物質、およびタンパク質を含む生物学的に活性な物質を含む、公知の化合物のライブラリーを、インヒビターまたはアクチベーターである化合物に関してスクリーニングし得る。好ましくは、そのような化合物はNCCa−ATPアンタゴニストであり、それはNCCa−ATPチャネルインヒビター、NCCa−ATPチャネルブロックカー、SUR1アンタゴニスト、SUR1インヒビター、および/またはチャネルを通じた膜電流の大きさを低減し得る化合物を含む。
【0093】
化合物は、小さい有機または無機分子、化合物ライブラリーで入手可能な化合物、ランダムペプチドライブラリーのメンバーを含むがこれに限らない、例えば可溶性ペプチドのようなペプチド(例えばLam,K.S.ら、1991、Nature 354:82−84;Houghten,R.ら、1991、Nature 354:84−86を参照のこと)、およびD−および/またはL−型立体配置のアミノ酸でできたコンビナトリアルケミストリー由来の分子ライブラリー、ホスホペプチド(ランダムまたは部分的に変性した、指向性ホスホペプチドライブラリーを含むがこれに限らない;例えばSongyang,Z.ら、1993、Cell 72:767−778を参照のこと)、抗体(ポリクローナル、モノクローナル、ヒト化、抗イディオタイプ、キメラ、または1本鎖抗体、およびFab、F(ab’)およびFAb発現ライブラリー断片、およびそのエピトープ結合断片を含むがこれに限らない)を含み得るがこれに限らない。
【0094】
本発明によってスクリーニングし得る他の化合物は、血液−脳関門を通過し、適当な神経細胞へ入り、そして(例えば遺伝子発現に関与する調節性領域または転写因子と相互作用することによって)NCCa−ATPチャネル遺伝子またはNCCa−ATPチャネル活性に関与するいくつかの他の遺伝子の発現に影響を与え得る小さい有機分子;またはNCCa−ATPチャネルの活性またはNCCa−ATPチャネル活性に関与するいくつかの他の細胞内因子の活性に影響を与える化合物を含むがこれに限らない。
【0095】
インヒビターを同定、作成、産生、提供、製造、または得るために、一般的に候補化合物の存在下、欠如下、または両方でのNCCa−ATPチャネルの活性を決定し、ここで、インヒビターまたはアンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルの発現または活性を、ダウンレギュレート、低減、阻害、ブロック、または減少させるあらゆる物質として定義される。例えば、方法は一般的に以下のものを含み得る:
インビトロまたはインビボでNCCa−ATPチャネルの発現または活性を阻害していると思われる候補物質を提供する;
候補物質の、インビトロまたはインビボで、NCCa−ATPチャネルの発現または活性を阻害する能力を評価する;
インヒビターを選択する;および
インヒビターを製造する。
【0096】
ある実施形態において、第2の評価工程は、候補物質の、インビトロまたはインビボでNCCa−ATPチャネルに特異的に結合する能力を評価し得る;
さらなる実施形態において、NCCa−ATPチャネルを、細胞において、または細胞を含まないシステムにおいて提供し得、そしてNCCa−ATPチャネルを候補物質と接触し得る。次に、NCCa−ATPチャネルの活性または発現に対する候補物質の影響を評価することによって、インヒビターを選択する。インヒビターの同定において、その方法はさらにインヒビターの製造を提供し得る。
【0097】
(V.脊髄損傷の処置)
他の実施形態において、本発明の処置的化合物は、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはその組み合わせの、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを含む。アンタゴニストは、脊髄損傷に伴う有害な状態を処置するために使用することが企図される。そのような状態は、脊髄損傷に伴う二次的損傷、例えば細胞浮腫、細胞死(例えばネクローシス細胞死)、炎症、酸化損傷、軸索損傷、出血性変換(conversion)などを含むがこれに限らない。アンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルを発現する細胞を保護し、それは毛細血管の完全性が失われた、イオン性または細胞傷害性浮腫が形成された臨床的処置に望ましい。NCCa−ATPチャネルの阻害による保護は、イオン性および細胞傷害性浮腫の低減に関連する。従って、NCCa−ATPチャネルを阻害する化合物は、神経保護的である。
【0098】
1つの局面において、NCCa−ATPチャネルをブロック、阻害し、または他の方法で活性を減少させる。そのような実施例において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを投与および/または適用する。そのアンタゴニストは、NCCa−ATPチャネルを調節して、チャネルを通じた流入(イオンおよび/または水)を低減、停止(ceased)、減少および/または停止(stopped)する。そのアンタゴニストは、、神経細胞、神経膠細胞、神経内皮細胞またはその組み合わせの、NCCa−ATPチャネルの活性に関して、可逆的または不可逆的な活性を有し得る。従って、NCCa−ATPチャネルの阻害は、イオン性浮腫および出血性変換(conversion)に関連する、細胞傷害性浮腫および内皮細胞の死を低減し得る。
【0099】
よって、本発明は、脊髄損傷に伴う炎症の処置または軽減に有用である。本発明の特定の実施形態によって、有効な量の活性化合物の投与は、もし開いたままなら神経細胞の腫脹および細胞死を引き起こし、炎症性反応の開始を引き起こす、チャネルをブロックし得る。様々なSUR1に対するアンタゴニストが、チャネルをブロックするために適当である。適当なSUR1アンタゴニストの例は、グリベンクラミド、トルブタミド、レパグリニド、ナテグリニド、メグリチニド、ミダグリゾール、LY397364、LY389382、グリクラジド、グリメピリド、エストロゲン、エストロゲン関連化合物およびその組み合わせを含むがこれに限らない。本発明の好ましい実施形態において、SUR1アンタゴニストは、グリベンクラミドおよびトルブタミドからなるグループから選択される。使用し得る他のアンタゴニストは、MgADPである。神経細胞を分極状態に維持する方法、および強力な脱分極を予防する方法を含むがこれに限らない、神経細胞腫脹および細胞死を予防する、さらに他の処置的「戦略」を採用し得る。
【0100】
さらなる実施形態において、NCCa−ATPチャネルのインヒビターまたはアンタゴニストを、損傷部位の付近または周囲の、出血性変換(conversion)および/または溢血血液を低減または軽減または抑止するために使用し得る。NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストの投与によって、NCCa−ATPチャネルの開口のために内皮細胞の脱分極が抑止、遅延、低減または阻害される。従って、細胞の脱分極の抑止は、Naの流入の抑止または阻害を引き起こし、それは浸透圧勾配の変化を防止し、それによって内皮細胞への水の流入を予防し、そして細胞の腫脹、小疱形成、および細胞傷害性浮腫を停止させる。従って、内皮細胞の脱分極を防止または阻害または減弱することは、損傷部位の付近または周囲の、出血性変換(conversion)および/または溢血血液を防止または低減し得る。
【0101】
従って、アンタゴニストまたはその関連化合物の使用は、脊髄損傷を受けた患者の死亡率および/または罹患率を低減し得る、および/またはペナンブラを救出し得る、または不可逆的に損傷を受ける危険性がある組織の領域を含むペナンブラの損傷を防止し得る。
【0102】
NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストを投与し得る神経細胞は、SUR1を発現するあらゆる細胞、例えばあらゆる神経細胞、神経膠細胞、または神経内皮細胞を含み得る。
【0103】
アンタゴニストまたはその関連化合物で処置し得る患者は、脊髄損傷を受けた患者を含む。本発明のアンタゴニストで処置し得る他の患者は、脊髄の手術または脊髄の放射線処置を受けている患者のような、脊髄損傷を発症する危険性のある、またはその素因がある患者を含む。そのような場合には、患者を、実際の処置の前に、本発明のアンタゴニストまたは関連化合物で処置し得る。前処置は、実際の処置または手術または放射線処置の数ヶ月(1、2、3、など)、数週(1、2、3、など)、数日(1、2、3、など)、数時間(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12)または数分(15、30、60、90、など)前にアンタゴニストおよび/または関連化合物を投与する工程を含み得る。アンタゴニストおよび/または関連化合物の処置は、処置および/または手術の間、および処置および/または手術の後、患者の脊髄損傷を発症する危険性が低下、減少、または軽減するまで継続し得る。またさらに、脊髄損傷の危険性のある他の患者は、体節の変形、および/または他の脊髄の状態または圧迫疾患、例えば関節炎またはクッシング病を有する患者を含み得る。
【0104】
細胞に投与し得るNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストの有効な量は、約0.0001nMから約2000μMまでの投与量を含む。より具体的には、投与する投与量は、約0.01nMから約2000μM;約0.01μMから約0.05μM;約0.05μMから約1.0μM;約1.0μMから約1.5μM;約1.5μMから約2.0μM;約2.0μMから約3.0μM;約3.0μMから約4.0μM;約4.0μMから約5.0μM;約5.0μMから約10μM;約10μMから約50μM;約50μMから約100μM;約100μMから約200μM;約200μMから約300μM;約300μMから約500μM;約500μMから約1000μM;約1000μMから約1500μMおよび約1500μMから約2000μMである。もちろん、これらの量はすべて例であり、そしてこれらの点の間のあらゆる量も、本発明で使用されることが予期される。
【0105】
アンタゴニストまたはその関連化合物を、非経口的または消化器系(alimentary)に投与し得る。非経口投与は、静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、髄腔内(intrathecally)、皮下、または腹腔内を含むがこれに限らない。米国特許第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号;同第5,641,515号;および同第5,399,363号(それぞれその全体として本明細書中で明確に参考文献に組み込まれる)。消化性投与は、経口、頬側、直腸内、または舌下を含むがこれに限らない。
【0106】
本発明の処置的化合物の投与および/または処置は、全身性、局所(local)および/または局所(regional)投与、例えばカテーテル、植え込み型ポンプなどによる局所的(経皮的(dermally)、経皮的(transdermally))を含み得る。あるいは、例えば動脈灌流、腔内、腹腔内、胸膜内、脳室内および/またはくも膜下腔内のような、他の投与経路も企図される。当業者は、標準的な方法および手順を用いて、適当な投与経路を決定することを認識する。他の投与経路が、明細書の他の部分で具体的に議論され、そして本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0107】
処置方法は、個人を、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を含む、有効な量の組成物で処置することを含む。有効な量は、一般的に、疾患またはその症状の程度を、検出可能におよび反復して軽減、低減、最小化または制限するのに十分な量として記載される。より具体的には、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物による処置は、細胞の脱分極を阻害し、Naの流入を阻害し、浸透圧勾配の変化を阻害し、細胞への水の流入を阻害し、細胞傷害性細胞浮腫を阻害し、炎症を減少させ、酸化損傷または反応性酸化種の産生を阻害または低減し、出血性変換(conversion)を阻害し、罹患率を減少させ、そして患者の死亡率を減少させることが構想される。
【0108】
使用されるNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の有効な量は、レシピエント動物または患者において、特に脊髄損傷の処置に関して、有用な結果を産生するために有効な量である。そのような量を、発表された文献を再調査することによって、インビトロ試験を行うことによって、または健康な実験動物において代謝研究を行うことによって、最初に決定し得る。臨床的設定において使用する前に、動物モデル、好ましくは処置する特定の疾患の広く受け入れられた動物モデルにおいて確証的な研究を行うことが有用であり得る。ある実施形態において使用するために好ましい動物モデルは、げっ歯類モデルであり、それらは使用するのが経済的であるために、そして特に、得られた結果が臨床値を予測すると広く受け入れられているために、好ましい。
【0109】
当該分野において周知であるように、あらゆる特定の患者に関する、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物のような、活性化合物の特定の投与量レベルは、採用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬剤の組み合わせ、および処置を受ける特定の疾患の重症度を含む様々な因子に依存する。投与の責任がある人は、個々の患者に関して適当な投与量を決定する。さらに、ヒトへの投与に関して、調製物は、FDA Office of Biologics基準によって必要とされる、無菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0110】
当業者は、アンタゴニストまたはその関連化合物の有効な量は、望ましい結果:炎症の低減、細胞死の低減、出血性変換(conversion)の低減、溢血血液の低減、損傷サイズの低減、cGFAPのアップレギュレーションの低減などを達成するために必要な量であり得る。この量はまた、患者において適当なレベルの血中グルコースを維持する量であり、例えば、その量のアンタゴニストは、血中グルコースレベルを少なくとも60mmol/lに維持し、より好ましくは血中グルコースレベルを約60mmol/lから約150mmol/lの範囲に維持する。従って、その量は、患者が低血糖になるのを防止する。もしグルコースレベルが正常でなければ、患者が低血糖または高血糖であるかどうかに依存して、当業者はインスリンまたはグルコースのいずれかを投与する。
【0111】
従って、ある実施形態において、本発明は、適当なレベルの血清グルコースを維持するために、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストと、グルコースまたは関連炭水化物の同時投与を含む。適当なレベルの血清グルコースは、約60mmol/lから約150mmol/lの範囲内である。従って、血清グルコースをこの範囲内に維持するために、グルコースまたは関連炭水化物を組み合わせて投与する。
【0112】
処置としてのNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の適当な量は、処置される宿主および特定の投与形式に依存して変化する。本発明の1つの実施形態において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物の投与量範囲は、約0.01μg/kg体重から約20,000μg/kg体重までである。「体重」という用語は、動物を処置する場合に適用可能である。単離された細胞を処置する場合、本明細書中で使用される「体重」は、「全細胞重量(total cell body weight)」を意味するよう読むべきである。「全重量(total body weight)」という用語は、単離細胞および動物処置の両方に適用して使用し得る。「体重」または単に「kg」として表される、すべての濃度および処置レベルは、類似の「全細胞重量(total cell body weight)」および「全重量(total body weight)」濃度を含むよう考えられる。しかし、当業者は、様々な投与量範囲、例えば0.01μg/kg体重から20,000μg/kg体重、0.02μg/kg体重から15,000μg/kg体重、0.03μg/kg体重から10,000μg/kg体重、0.04μg/kg体重から5,000μg/kg体重、0.05μg/kg体重から2,500μg/kg体重、0.06μg/kg体重から1,000μg/kg体重、0.07μg/kg体重から500μg/kg体重、0.08μg/kg体重から400μg/kg体重、0.09μg/kg体重から200μg/kg体重、または0.1μg/kg体重から100μg/kg体重の有用性を認識する。さらに、当業者は、様々な異なる投与量レベル、例えば0.0001μg/kg、0.0002μg/kg、0.0003μg/kg、0.0004μg/kg、0.0005μg/kg、0.0007μg/kg、0.001μg/kg、0.1μg/kg、1.0μg/kg、1.5μg/kg、2.0μg/kg、5.0μg/kg、10.0μg/kg、15.0μg/kg、30.0μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、100μg/kg、120μg/kg、140μg/kg、150μg/kg、160μg/kg、180μg/kg、200μg/kg、225μg/kg、250μg/kg、275μg/kg、300μg/kg、325μg/kg、350μg/kg、375μg/kg、400μg/kg、450μg/kg、500μg/kg、550μg/kg、600μg/kg、700μg/kg、750μg/kg、800μg/kg、900μg/kg、1mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、12mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、および/または30mg/kgが有用であることを認識する。もちろん、これらの投与量はすべて例であり、そしてこれらの点の間のあらゆる投与量も本発明において有用であることが予期される。上記の投与量範囲または投与量レベルのいずれかを、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物に関して採用し得る。
【0113】
本発明のNCCa−ATPチャネルの処置的アンタゴニスト組成物の、患者または対象への投与は、もしあるなら、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストの毒性を考慮して、処置薬の投与に関する一般的なプロトコールに従う。処置サイクルを必要に応じて繰り返すことが予測される。様々な標準的な処置、および外科的介入を、記載した処置と組み合わせて適用し得ることも企図される。
【0114】
処置は、様々な「単位投与量」を含み得る。単位投与量は、その投与、例えば適当な経路および処置レジメに関連して望ましい反応を産生するよう計算された、前もって決定された量の処置的組成物(NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物)を含むとして定義される。投与される量、および特定の経路および処方は、臨床分野における当業者の技術の範囲内である。処置される患者、特に患者の状態および望ましい保護も重要である。単位投与量は、単回の注射として投与する必要はなく、設定された時間をかけた持続注入を含み得る。
【0115】
(VI.併用療法)
本発明の関係において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を、脊髄損傷をより効果的に処置するために、さらなる処置薬と組み合わせて使用し得ることが企図される。いくつかの実施形態において、薬理学的処置薬を含むがこれに限らない、従来の処置または薬剤を、本発明のアンタゴニストまたは関連化合物と組み合わせ得る。
【0116】
薬理学的処置薬および投与の方法、投与量などは、当業者に周知であり(例えば、「Physicians Desk Reference」、GoodmanおよびGilmanの「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、および「The Merck Index、第11版」を参照のこと、本明細書中で関連する部分において参考文献に組み込まれる)、そして本明細書中の開示を考慮して本発明と組み合わせ得る。投与量におけるいくらかの変動が、処置される患者の状態に依存して必ず起こる。投与の責任のある人は、とにかく個々の患者に関して適当な投与量を決定し、そしてそのような個々の決定は、当業者の技術の範囲内である。
【0117】
本発明において使用し得る薬理学的処置薬の制限しない例は、抗炎症薬を含む。抗炎症薬は、非ステロイド性抗炎症薬剤(例えばナプロキセン、イブプロフェン、セレコキシブ)およびステロイド性抗炎症薬剤(例えばグルココルチコイド、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン)を含むがこれに限らない。
【0118】
本発明のアンタゴニストと組み合わせて使用し得る他の薬剤は、抗酸化剤、カルシウム阻害薬、興奮毒性を調節する薬剤、および4−アミノピリジンのような軸索のシグナル伝達を増強する薬剤を含み得るがこれに限らない。
【0119】
アンタゴニストと組み合わせて使用し得る、またさらに他の薬剤は、栄養性因子および増殖阻害物質を用いることによって、再生を促進するよう設計された薬剤も含み得る。
【0120】
またさらに、移植、末梢神経移植、低体温(冷却)のような、非薬理学的介入も、本発明のアンタゴニストと組み合わせて使用し得る。
【0121】
さらなる処置薬を使用する場合、さらなる処置薬の投与量が以前に引用された毒性レベルを超えない限り、さらなる処置薬の有効な量を、単にNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物と組み合わせて動物に投与した場合に、浮腫を低減する、または二次的損傷を低減するのに有効な量として定義し得る。これは、動物または患者をモニターし、そして所定の処置の成功を示す、健康および疾患の身体的および生化学的パラメーターを測定することによって、容易に決定し得る。そのような方法は、動物実験および診療において日常的である。
【0122】
本発明の方法および組成物を用いて、出血性変換(conversion)を阻害する、酸化ストレスを低減する、細胞死を低減する、細胞腫脹を低減するなどのために、一般的にNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を、抗炎症性薬剤などのようなさらなる処置薬と組み合わせて、細胞に接触させる。これらの組成物は、出血性変換(conversion)、細胞腫脹、細胞死、浮腫などを阻害するのに有効な組み合わせた量で提供される。この過程は、細胞を、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物を、さらなる処置薬または因子と同時に組み合わせて細胞と接触させることを含み得る。これを、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的処方と細胞を接触させることによって、または1つの組成物はNCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその誘導体を含み、そして他方はさらなる薬剤を含む、2つの別々の組成物または処方を同時に細胞と接触させることによって達成し得る。
【0123】
あるいは、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたはその関連化合物による処置は、数分から数時間、数週、数ヶ月の範囲の間隔で、さらなる薬剤処置の前または後になり得る。さらなる薬剤を別々に細胞へ適用する実施形態において、一般的に薬剤が依然として細胞に対して有利に組み合わされた効果を発揮し得るように、各伝達の時間の間に有意な時間が終了しないことを確実にする。そのような場合、細胞を両方の様式とお互いに約1−24時間以内に、およびより好ましくはお互いに約6−12時間以内に接触させる。
【0124】
(VII.化合物の処方および投与経路)
本発明の医薬品組成物は、薬剤学的に許容可能なキャリアに溶解または分散した、有効な量の1つまたはそれ以上のNCCa−ATPチャネルのインヒビター(アンタゴニスト)または関連化合物またはさらなる薬剤を含む。「薬剤学的にまたは薬理学的に許容可能な」という語句は、例えば、ヒトのような動物に適当なように投与した場合に、有害な、アレルギー性の、または他の有害な反応を起こさない分子実体および組成物を指す。少なくとも1つのNCCa−ATPチャネルの調節因子(アンタゴニストおよび/またはアゴニスト)または関連化合物またはさらなる活性成分を含む医薬品組成物の調製は、本明細書中で参考文献に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990によって例示されるように、本開示を考慮して、当業者に公知である。さらに、動物(例えばヒト)投与に関して、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって必要とされるような、滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解される。
【0125】
本明細書中で使用される場合、「薬剤学的に許容可能なキャリア」は、当業者に公知であるように、あらゆるおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば抗菌剤、抗真菌剤)、等張剤、吸収遅延薬剤、塩、薬剤、薬剤安定化剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味料、香料、色素、そのような物質およびその組み合わせを含む(例えば、本明細書中で参考文献に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990、1289−1329頁を参照のこと)。あらゆる従来のキャリアが活性成分と不適合である限りを除いて、医薬品組成物におけるその使用が企図される。
【0126】
NCCa−ATPチャネルのインヒビター(アンタゴニスト)または関連化合物は、それが固体、液体、またはエアロゾル形式のいずれで投与されるのか、および注射のような投与経路のために滅菌である必要があるかどうかに依存して、異なる型のキャリアを含み得る。本発明を、当業者に公知であるように、静脈内、皮内、経皮、髄腔内、脳室内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、膣内、直腸内、局所的(topically)、筋肉内、皮下、粘膜、経口、局所的(locally)、吸入(例えばエアロゾル吸入)、注射、輸液、持続注入、標的細胞を直接浸す局所灌流、カテーテルによって、洗浄によって、クリームで、脂質組成物(例えばリポソーム)で、または他の方法または前述のあらゆる組み合わせによって、投与し得る(例えば、本明細書中で参考文献に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990を参照のこと)。
【0127】
NCCa−ATPチャネルのインヒビター(すなわちアンタゴニスト)または関連化合物を、フリーの塩基、中性または塩形式で組成物に処方し得る。薬剤学的に許容可能な塩は、酸付加塩、例えばタンパク質性組成物のフリーのアミノ基と形成されるもの、または例えば塩酸またはリン酸のような無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、またはマンデル酸のような有機酸と形成されるものを含む。フリーのカルボキシル基と形成された塩も、例えば水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは第二鉄のような無機塩基、またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンまたはプロカインのような有機塩基から得ることができる。処方時に、溶液を、投与処方と適合性の方式で、および処置的に有効な量で投与する。処方を、注射溶液または肺への伝達のためのエアロゾルのような非経口投与のために処方されたような、または薬剤放出カプセルなどのような消化性投与のために処方されたような、様々な投与形式で容易に投与する。
【0128】
さらに本発明によって、投与に適当な本発明の組成物が、不活性な希釈剤を含むまたは含まない薬剤学的に許容可能なキャリア中で提供される。そのキャリアは同化可能であり、そして液体、半固体、すなわちペースト、または固体キャリアを含む。あらゆる従来の媒体、薬剤、希釈剤、またはキャリアが、レシピエントまたはそこに含まれる組成物の処置的有効性にとって有害である限りを除いて、本発明の方法の実施において使用するための投与可能な組成物におけるその使用は適当である。キャリアまたは希釈剤の例は、脂肪、油、水、生理食塩水溶液、脂質、リポソーム、樹脂、結合剤、賦形剤など、またはその組み合わせを含む。組成物はまた、1つまたはそれ以上の成分の酸化を遅らせるために、様々な抗酸化剤も含み得る。さらに、微生物の作用の予防も、パラベン(例えばメチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールまたはその組み合わせを含むがこれに限らない、様々な抗菌および抗真菌剤のような保存剤によって達成し得る。
【0129】
本発明によって、組成物を、あらゆる簡便なおよび実際的な方式で、すなわち溶液、懸濁、乳化、混合、カプセル封入、吸収などによって、キャリアと組み合わせる。そのような手順は、当業者に日常的である。
【0130】
本発明の特定の実施形態において、組成物を、半固体または固体キャリアと組み合わせるまたは完全に混合する。混合を、粉砕のようなあらゆる簡便な方式で実施し得る。組成物を処置活性の損失、すなわち胃における変性から保護するために、混合過程において安定化剤も加え得る。組成物において使用するための安定化剤の例は、緩衝液、グリシンおよびリシンのようなアミノ酸、デキストロース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、ソルビトール、マンニトールなどのような炭水化物を含む。
【0131】
さらなる実施形態において、本発明は、NCCa−ATPチャネルのインヒビター(アンタゴニスト)または関連化合物、1つまたはそれ以上の脂質、および水性溶媒を含む、薬剤学的脂質媒体組成物の使用に関し得る。本明細書中で使用される場合、「脂質」という用語は、特徴的に水に不溶性であり、そして有機溶媒で抽出可能な、広い範囲の物質のいずれかを含むよう定義される。この広い化合物の種類は、当業者に周知であり、そして本明細書中で「脂質」という用語が使用される場合、特定の構造のいずれかに制限されない。例は、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む化合物を含む。脂質は、天然に存在し得る、または合成であり得る(すなわち、人によって設計または産生される)。しかし、脂質は通常生物学的物質である。生物学的脂質は、当該分野において周知であり、そして例えば中性脂肪、リン脂質、ホスホグリセリド、ステロイド、テルペン、リソ脂質(lysolipid)、グリコスフィンゴ脂質、糖脂質、スルファチド、エーテルおよびエステル結合脂肪酸を有する脂質および重合可能な脂質、およびその組み合わせを含む。もちろん、当業者によって脂質として理解される、それらの本明細書中で特に記載されたもの以外の化合物も、本発明の組成物および方法によって含まれる。
【0132】
当業者は、組成物を脂質媒体に分散するために採用し得る技術の範囲に精通している。例えば、NCCa−ATPチャネルのインヒビター(アンタゴニスト)または関連化合物を、当業者に公知のあらゆる手段によって、脂質を含む溶液中に分散、脂質と溶解、脂質と乳化、脂質と混合、脂質と組み合わせる、脂質に共有結合する、脂質中の懸濁液として含む、ミセルまたはリポソームに含むまたは複合体化する、または他の方法で脂質または脂質構造と関係し得る。分散は、リポソームの形成を引き起こし得る、または引き起こさないかもしれない。
【0133】
動物患者へ投与される、本発明の組成物の実際の投与量を、体重、状態の重症度、処置される疾患の型、以前のまたは現在の処置的および/または予防的介入、患者の特発性疾患および投与経路のような、身体的および生理学的因子によって決定し得る。投与量および投与経路に依存して、好ましい投与量および/または有効な量の投与回数は、患者の反応によって変化し得る。投与に責任のある医師は、とにかく組成物中の活性成分の濃度および個々の患者に適当な投与量を決定する。
【0134】
ある実施形態において、医薬品組成物は、例えば少なくとも約0.1%の活性化合物を含み得る。他の実施形態において、活性化合物は、単位の重量の約2%から約75%の間、または例えば約25%から約60%の間、およびその中で推論できるあらゆる範囲を含み得る。当然、処置的に有用な組成物それぞれにおける活性化合物の量を、適当な投与量が化合物のあらゆる所定の単位投与量において得られるような方法で調製し得る。溶解度、生物学的利用能、生物学的半減期、投与経路、製品の有効期間のような因子、および他の薬理学的な考察が、そのような医薬品処方を調製する当業者によって企図され、そしてそのようであるので、様々な投与量および処置レジメが望ましくあり得る。
【0135】
(A.消化性組成物および処方物)
本発明の好ましい実施形態において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたは関連化合物を、消化性経路によって投与するために処方し得る。消化性経路は、組成物が消化管と直接接触する、あらゆる可能性のある投与経路を含む。具体的には、本明細書中で開示された医薬品組成物を、経口、頬側、直腸内、または舌下で投与し得る。そのようであるので、これらの組成物を、不活性な希釈剤または同化可能な食用キャリアと共に処方し得る、またはそれらをハードまたはソフトシェルゼラチンカプセルに封入し得る、またはそれらを錠剤に圧縮し得る、またはそれらを食事の食物に直接組み入れ得る。
【0136】
ある実施形態において、活性化合物を賦形剤に組み入れ、そして経口摂取可能な錠剤、頬側錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウェハースなどの形式で使用し得る(Mathiowitzら、1997;Hwangら、1998;米国特許第5,641,515;5,580,579;および5,792,451号、それぞれ本明細書中でその全体として明確に参考文献に組み込まれる)。錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどは、以下のものも含み得る:例えばトラガカントゴム、アカシア、コーンスターチ、ゼラチンまたはその組み合わせのような結合剤;例えばリン酸ジカルシウム、マンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムまたはその組み合わせのような賦形剤;例えばコーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸、またはその組み合わせのような崩壊剤;例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤;例えばスクロース、ラクトース、サッカリンまたはその組み合わせのような甘味料;例えばペパーミント、冬緑油、チェリー香料、オレンジ香料などのような香料。投与量単位形式がカプセルである場合、それは、上記の型の物質に加えて、液体キャリアを含み得る。様々な他の物質が、コーティングとして、または他の方法で投与量単位の物理的形式を修飾するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセルを、セラック、糖、または両方でコートし得る。投与量形式がカプセルである場合、それは、上記の型の物質に加えて、液体キャリアのようなキャリアを含み得る。ゼラチンカプセル、錠剤または丸剤を、腸溶製コーティングし得る。腸溶製コーティングは、pHが酸性である胃または腸上部における組成物の変性を防止する。例えば米国特許第5,629,001号を参照のこと。小腸に達したとき、そこの塩基性pHがコーティングを溶解し、そして組成物が放出され、そして特殊化した細胞、例えば上皮腸細胞およびパイエル板M細胞によって吸収されることを可能にする。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味料としてスクロース、保存剤としてメチルおよびプロピルパラベン、色素およびチェリーまたはオレンジ香料のような香料を含み得る。もちろん、あらゆる投与量単位形式を調製するのに使用されるあらゆる物質は、薬剤学的に純粋であり、そして採用される量において実質的に無毒性であるべきである。それに加えて、活性化合物を、徐放性調製物および処方に組み込み得る。
【0137】
経口投与に関して、本発明の組成物を、あるいは1つまたはそれ以上の賦形剤と共に、口腔洗浄薬、歯磨剤、頬側錠剤、口腔スプレー、または舌下経口投与処方の形式に組み込み得る。例えば、口腔洗浄薬を、活性成分をホウ酸ナトリウム溶液(Dobell’s 溶液)のような適当な溶媒中で、必要な量で組み込んで調製し得る。あるいは、活性成分を、ホウ酸ナトリウム、グリセリンおよび炭酸水素カリウムを含むもののような経口溶液に組み込み得る、または歯磨剤に分散し得る、または処置的に有効な量で水、結合剤、研磨剤、香料、発泡剤、および湿潤剤を含み得る組成物へ加え得る。あるいは、組成物を、舌の下へ置き得る、または他の方法で口腔内で溶解し得る、錠剤または溶液の形式に形成し得る。
【0138】
消化性投与の他の方法に適当なさらなる処方は、坐剤を含む。坐剤は、直腸へ挿入するための、通常薬用の、様々な重量および形の固体投与形式である。挿入後、坐剤は腔液中で軟化、融解、または溶解する。一般的に、坐剤に関して、伝統的なキャリアは、例えばポリアルキレングリコール、トリグリセリド、またはその組み合わせを含み得る。ある実施形態において、坐剤は、例えば約0.5%から約10%の、そして好ましくは約1%から約2%の範囲の活性成分を含む混合物から形成し得る。
【0139】
(B.非経口組成物および処方物)
さらなる実施形態において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたは関連化合物を、非経口経路によって投与し得る。本明細書中で使用される場合、「非経口」は、消化管を迂回する経路を含む。具体的には、本明細書中で開示される医薬品組成物を、例えば静脈内、皮内、筋肉内、動脈内、脳室内、くも膜下腔内、皮下、または腹腔内に投与し得るがこれに限らない。米国特許第6,7537,514号、同第6,613,308号、同第5,466,468号、同第5,543,158号、同第5,641,515号、および同第5,399,363号(それぞれ明確に本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0140】
遊離の塩基または薬理学的に許容可能な塩としての活性化合物の溶液を、ヒドロキシプロピルセルロースのような界面活性剤と適当に混合した水中で調製し得る。分散も、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびその混合物中で、および油中で調製し得る。通常の保存および使用条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために保存剤を含む。注射可能な使用のために適当な医薬品形式は、滅菌水性溶液または分散、および滅菌注射溶液または分散を即座に調製するための滅菌粉末を含む(米国特許第5,466,468号、本明細書中で明確にその全体が参考として援用される)。すべての場合において、その形式は滅菌でなければならず、そして容易に注射可能である程度に液体でなければならない。それは、製造および保存の条件下で安定でなければならず、そして細菌および真菌のような微生物の混入した作用に対して保存されなければならない。キャリアは、例えば水、エタノール、DMSO、ポリオール(すなわち、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、その適当な混合物、および/または植物油を含む、溶媒または分散媒であり得る。適当な流動性を、例えばレシチンのようなコーティングの使用によって、分散の場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持し得る。微生物の作用の防止を、様々な抗菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによって達成し得る。多くの場合において、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射組成物の延長された吸収を、組成物における吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって達成し得る。
【0141】
水性溶液における非経口投与に関して、例えばその溶液はもし必要なら適当に緩衝化すべきであり、そして液体希釈剤を、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にする。これらの特定の水性溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適当である。この関係において、採用し得る滅菌水性媒体は、本開示を考慮して当業者に公知である。例えば、1回投与量を、1mlの等張NaCl溶液に溶解し、そして1000mlの持続皮下注射液に加えるか、または提案された注入部位に注射し得る(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sceinces」第15版、1035−1038頁および1570−1580頁を参照のこと)。投与量のいくらかの変動が、当然処置される患者の状態に依存して起こる。投与に責任のある人は、とにかく個々の患者に適当な投与量を決定する。さらに、ヒト投与に関して、調製物は、FDA Office of Biologics基準によって必要とされる滅菌性、発熱性、一般的な安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0142】
滅菌注射溶液を、活性化合物を必要とされる量で、必要なら上記で列挙した様々な他の成分と、適当な溶媒中に組み入れ、続いて滅菌ろ過することによって調製する。一般的に、分散を、様々な滅菌活性成分を、基本的な分散媒および上記で列挙したものから必要な他の成分を含む滅菌媒体へ組み入れることによって調製する。滅菌注射溶液を調製するための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、活性成分プラスあらゆるさらなる望ましい成分の粉末を、その前に滅菌ろ過した溶液から産生する、真空乾燥および凍結乾燥技術である。粉末にした組成物を、安定化剤ありまたはなしで、例えば水または生理食塩水溶液のような、液体キャリアと組み合わせる。
【0143】
(C.その他の医薬品組成物および処方物)
本発明の他の好ましい実施形態において、NCCa−ATPチャネルのアンタゴニストまたは関連化合物を、様々なその他の経路、例えば局所(すなわち経皮)投与、粘膜投与(鼻腔内、膣内など)および/または吸入による投与のために処方し得る。
【0144】
局所投与のための医薬品組成物は、軟膏、ペースト、クリームまたは粉末のような薬用の適用のために処方された活性化合物を含み得る。軟膏は、局所的適用のために、すべての油性、吸着、エマルションおよび水溶性基材の組成物を含み、一方クリームおよびローションは、エマルション基材のみを含む組成物である。局所的に投与される薬物は、皮膚を通した活性成分の吸収を促進するために、浸透増強剤を含み得る。適当な浸透増強剤は、グリセリン、アルコール、アルキルメチルスルホキシド、ピロリドンおよびルアロカプラム(luarocapram)を含む。局所適用の組成物ために可能性のある基材は、ポリエチレングリコール、ラノリン、コールドクリームおよびワセリンおよびあらゆる他の適当な吸収、エマルション、水溶性軟膏基材を含む。局所調製物はまた、活性成分を保存し、そして均一な混合物を提供するために、必要に応じて乳化剤、ゲル化剤、および抗菌保存剤も含み得る。本発明の経皮投与は、「パッチ」の使用も含み得る。例えば、パッチは1つまたはそれ以上の活性物質を、前もって決定された速度で、および固定された時間をかけて持続的な方式で供給し得る。
【0145】
ある実施形態において、医薬品組成物を点眼薬、鼻腔内スプレー、吸入、および/または他のエアロゾル伝達媒体によって伝達し得る。組成物を点鼻エアロゾルスプレーによって肺に直接伝達する方法が、例えば米国特許第5,756,353および5,804,212号(それぞれ明確に本明細書中でその全体が参考として援用される)において記載された。同様に、鼻腔内微粒子樹脂(Takenagaら、1998)およびリゾホスファチジルグリセロール化合物(米国特許第5,725,871号、明確に本明細書中でその全体が参考として援用される)を用いる薬剤の伝達も、医薬の分野において周知である。同様に、ポリテトラフルオロエチレン支持マトリックスの形式の経粘膜薬剤伝達が、米国特許第5,780,045号において記載されている(明確に本明細書中でその全体が参考として援用される)。
【0146】
エアロゾルという用語は、液化または加圧ガス噴霧剤中に分散した液体粒子の、微細に分割された固体のコロイド系を指す。吸入のための、本発明の典型的なエアロゾルは、液体噴霧剤中活性成分の懸濁液または液体噴霧剤および適当な溶媒の混合物から成る。適当な噴霧剤は、炭化水素および炭化水素エーテルを含む。適当な容器は、噴霧剤の圧必要条件よって変化する。エアロゾルの投与は、患者の年齢、体重および症状の重症度および反応によって変化する。
【0147】
(VIII.診断)
アンタゴニストまたは関連化合物を、脊髄損傷の診断、モニター、または予後のために、例えばニューロンへの損傷をモニターする、または浮腫の領域における神経細胞をモニターするためなどに使用し得る。
【0148】
(A.遺伝的診断)
本発明の1つの実施形態は、NCCa−ATPチャネルのあらゆる一部分の発現、例えば調節性ユニット、SUR1の発現、および/またはポア形成サブユニットの発現を検出する方法を含む。これは、発現するSUR1のレベル、および/または発現するポア形成サブユニットのレベルを決定することを含み得る。本発明によって、NCCa−ATPチャネルのアップレギュレーションまたは増加した発現は、増加したレベルのSUR1に関連し、それが浮腫のような増加した神経細胞の損傷と関連することが理解される。
【0149】
まず、生物学的サンプルを患者から得る。生物学的サンプルは、組織または体液であり得る。ある実施形態において、生物学的サンプルは、脊髄由来の細胞および/または脊髄または脊髄組織に関連する内皮細胞または微小血管を含む。
【0150】
使用する核酸を、標準的な方法論(Sambrookら、1989)に従って、生物学的サンプルに含まれる細胞から単離する。その核酸は、ゲノムDNAまたは分画または全細胞RNAであり得る。RNAを使用する場合、RNAを相補的DNA(cDNA)に変換することが望ましくあり得る。1つの実施形態において、RNAは全細胞RNAである;別のものにおいて、それはポリA RNAである。通常、核酸を増幅する。
【0151】
型式に依存して、増幅を用いて直接、または増幅後2番目の公知の核酸によって、関心のある特定の核酸を、サンプルにおいて同定する。次に、同定された産物を検出する。ある適用において、検出を視覚的手段(例えばゲルのエチジウムブロミド染色)によって行い得る。あるいは、検出は、化学発光、放射性標識の放射活性シンチグラフィーまたは蛍光標識による、またさらには電気的または熱的インパルスシグナルを用いたシステム(Affymax Technology;Bellus、1994)による、産物の間接的な同定を含み得る。
【0152】
検出の後、所定の患者において見られる結果を、正常患者および脊髄損傷および/またはそれに伴う二次的損傷などと診断された患者の統計学的に有意な参照グループと比較し得る。
【0153】
またさらに、Haciaら(1996)およびShoemakerら(1996)によって記載されたもののような、チップに基づくDNA技術を診断に使用し得ることが企図される。簡単には、これらの技術は、多数の遺伝子を迅速および正確に分析するための定量的方法を含む。遺伝子をオリゴヌクレオチドでタグを付けることによって、または固定化プローブアレイを用いることによって、高密度アレイとして標的分子を分離し、そしてこれらの分子をハイブリダイゼーションに基づいてスクリーニングするために、チップ技術を採用し得る。Peaseら(1994);Fodorら(1991)も参照のこと。
【0154】
(B.他の型の診断)
分子、例えば化合物および/またはタンパク質および/または抗体の、診断薬としての有効性を増加させるために、少なくとも1つの望ましい分子または成分と連結または共有結合または複合体化することが伝統的である。
【0155】
結合物のある例は、分子(例えばタンパク質、抗体、および/または化合物)が検出可能な標識に連結した結合物である。「検出可能な標識」は、その特異的な機能的性質、および/または化学的特徴によって検出し得る化合物および/または成分であり、その使用は、それらが結合している抗体を検出する、および/またはもし望ましいならさらに定量することを可能にする。
【0156】
結合物は一般的に診断薬として使用するために好ましい。診断薬は一般的に2つの種類、様々なイムノアッセイにおけるようなインビトロ診断において使用するためのもの、および/または一般的に「分子指向性イメージング」として知られるインビボ診断プロトコールに使用するためのものに分けられる。
【0157】
多くの適当な造影剤が、その分子、例えば抗体への結合方法と同様に、当該分野で公知である(例えば米国特許第5,021,236;4,938,948;および4,472,509号を参照のこと、それぞれ本明細書中で参考文献に組み込まれる)。使用するイメージング成分は、常磁性イオン;放射活性同位体;蛍光色素;NMRで検出可能な物質;X線造影であり得る。
【0158】
常磁性イオンの場合、例としてクロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジウム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、および/またはエルビウム(III)のようなイオンを挙げ得、ガドリニウムが特に好ましい。X線造影のような他の関係において有用なイオンは、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)を含むがこれに限らない。
【0159】
処置的および/または診断的適用のための放射性同位元素の場合、アスタチン21111炭素、14炭素、51クロム、36塩素、57コバルト、58コバルト、銅67152Eu、ガリウム67水素、ヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素131、インジウム11159鉄、32リン、レニウム186、レニウム18875セレン、35硫黄、テクネチウム99mおよび/またはイットリウム90を挙げ得る。125Iが多くの場合、ある実施形態において使用するために好ましく、そしてテクネチウム99mおよび/またはインジウム111も、その低エネルギーおよび長い飛程の検出の適合性のために、多くの場合好ましい。
【0160】
結合物として使用するために企図される蛍光標識は、Alexa350、Alexa430、AMCA、BODIPY630/650、BODIPY650/665、BODIPY−FL、BODIPY−R6G、BODIPY−TMR、BODIPY−TRX、Cascade Blue、Cy3、Cy5,6−FAM、フルオレセインイソチオシアネート、HEX、6−JOE、Oregon Green488、Oregon Green500、Oregon Green514、Pacific Blue、REG、Rhodamine Green、Rhodamine Red、Renographin、ROX、TAMRA、TET、テトラメチルローダミン、および/またはTexas Redを含む。
【0161】
本発明において企図される他の型の結合物は、主にインビトロにおける使用を意図するものであり、ここでその分子を二次的な結合リガンドおよび/または発色基質との接触時に有色産物を産生する酵素(酵素タグ)に連結する。適当な酵素の例は、ウレアーゼ、アルカリホスファターゼ、(西洋ワサビ)水素ペルオキシダーゼ、またはグルコースオキシダーゼを含む。好ましい二次的結合リガンドは、ビオチンおよび/またはアビジンおよびストレプトアビジン化合物である。そのような標識の使用は、当業者に周知であり、そして例えば米国特許第3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149;および4,366,241号において記載されている;これらはそれぞれ本明細書中で参考文献に組み込まれる。
【0162】
様々な他の有用な免疫検出方法の工程が、例えばNakamuraら(1987)のような、科学文献において記載された。イムノアッセイは、その最も単純および直接的な意味において、結合アッセイである。ある好ましいイムノアッセイは、様々な型のラジオイムノアッセイ(RIA)および免疫ビーズ捕獲アッセイである。組織切片を用いた免疫組織化学的検出も特に有用である。しかし、検出はそのような技術に限らず、そしてウェスタンブロッティング、ドットブロッティング、FACS分析なども、本発明と関連して使用し得ることが、容易に認識される。
【0163】
ウェスタンブロッティングに関連して使用するための、免疫学的に基づいた検出方法は、SUR1またはNCCa−ATPチャネルの調節性サブユニットに対する、酵素的−、放射活性−、または蛍光−タグをつけた二次的分子/抗体を含み、それらは、これに関して特に有用であると考えられる。そのような標識の使用に関する米国特許は、第3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149および4,366,241号を含み、それぞれ本明細書中で参考文献に組み込まれる。もちろん、当該分野で公知であるように、2次抗体またはビオチン/アビジンリガンド結合配置のような二次的結合リガンドの使用によるさらなる利点を見出し得る。
【0164】
上記のイメージング技術に加えて、当業者はまた、ポジトロン放出断層撮影、PETイメージングまたはPETスキャンも、診断的検査として使用し得ることを認識する。PETスキャンは、ポジトロンの放出からの照射の検出に基づく生理学的イメージの取得を含む。ポジトロンは、患者に投与された放射活性物質から放出される微小な粒子である。
【0165】
従って、本発明のある実施形態において、アンタゴニストまたはその関連化合物に、上記で記載されたように酵素的−、放射性標識−、または蛍光タグをつけ、そして脊髄における神経損傷を診断、モニター、および/または段階を決める、および/または脊髄損傷に伴う二次的損傷を予測または段階を決めるために使用する。例えば、標識されたアンタゴニストまたはその関連化合物を、脊髄損傷後に、ペナンブラまたは損傷の危険性のある領域を決定または定義するために使用し得る。
【0166】
(IX.診断キットまたは処置キット)
本明細書中で記載された組成物のいずれも、キットに含み得る。制限しない例において、SUR1に選択的に結合する、または同定する化合物を、診断キットに含み得ることが構想される。そのような化合物を、「SUR1マーカー」と呼ぶことができ、それは、抗体(モノクローナルまたはポリクローナル)、SUR1オリゴヌクレオチド、SUR1ポリペプチド、小分子またはその組み合わせ、アンタゴニストなどを含み得るがこれに限らない。これらSUR1マーカーのいずれも、迅速な決定のために、放射活性物質および/または蛍光マーカーおよび/または酵素タグに連結し得ることが構想される。そのキットはまた、適当な容器手段に、脂質、および/またはさらなる薬剤、例えば放射活性または酵素的または蛍光マーカーを含み得る。
【0167】
そのキットは、適当にアリコートに分けたSUR1マーカー、脂質および/または検出アッセイのために標準曲線を調製するために使用し得るような、さらなる本発明の薬剤組成物を、標識または未標識にかかわらず含み得る。キットの構成要素を、水性媒体または凍結乾燥形式のいずれかでパッケージングし得る。キットの容器手段は、一般的に少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段を含み、それに構成要素を入れ得る、および好ましくは適当にアリコートに分け得る。キットに1つ以上の構成要素が存在する場合、そのキットはまた一般的に2番目、3番目または他のさらなる容器を含み、それにさらなる構成要素を別に入れ得る。しかし、構成要素の様々な組み合わせをバイアルに含み得る。本発明のキットはまた、典型的にはSUR1マーカー、脂質、さらなる薬剤、およびあらゆる他の試薬容器を含むための手段を、市販のために密封して(in close confinement)含む。そのような容器は、注射または吹込み形成されたプラスチック容器を含み得、それに望ましいバイアルを保持する。
【0168】
本発明の処置的キットは、アンタゴニストまたはその関連化合物を含むキットである。従って、そのキットは、NCCa−ATPチャネルをブロックおよび/または阻害するために、SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物を含み得る。そのようなキットは一般的に、適当な容器手段に、SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物の薬剤学的に許容可能な処方を含む。そのキットは、単一の容器手段を有し得る、および/またはそれは各化合物に関して別の容器手段を有し得る。
【0169】
キットの構成要素が1つおよび/またはそれ以上の液体溶液で提供される場合、その液体溶液は、水性溶液であり、滅菌水性溶液が特に好ましい。SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物をまた、注射可能な組成物に処方し得る。その場合、容器手段はそれ自身がシリンジ、ピペット、および/または他のそのような装置であり得、それから処方を体の感染領域に適用、動物に注射、および/またはキットの他の構成成分に適用および/または混合し得る。
【0170】
水性溶液の例は、エタノール、DMSOおよび/またはリンガー溶液を含むがこれに限らない。ある実施形態において、使用するDMSO、ポリエチレングリコール(PEG)またはエタノールの濃度は、0.1%または(1ml/1000L)より低い。
【0171】
しかし、キットの構成成分を、乾燥粉末として提供し得る。試薬および/または構成成分を乾燥粉末として提供する場合、その粉末を、適当な溶媒を加えることによって再構築し得る。その溶媒も別の容器手段において提供し得ることが構想される。
【0172】
容器手段は一般的に、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジ、および/または他の容器手段を含み、それにSUR1アンタゴニストまたはその関連化合物を適当に割り当てる。そのキットはまた、滅菌、薬剤学的に許容可能な緩衝液および/または他の希釈剤を含むために、2番目の容器手段を含み得る。
【0173】
本発明のキットはまた、典型的には、注射および/または望ましいバイアルが保持される吹込み形成されたプラスチック容器のような、市販するためにバイアルを密封して(in close confinement)含む手段を含む。
【0174】
容器の数および/または型に関わらず、本発明のキットはまた、SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物を、動物の体内に注射/投与および/または留置するのを補助するための装置を含み得る、および/またはそれと共にパッケージングし得る。そのような装置は、シリンジ、ピペット、ピンセット、および/またはあらゆるそのような医学的に承認された伝達媒体であり得る。
【0175】
SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物に加えて、そのキットはまた2番目の活性成分を含み得る。2番目の活性成分の例は、低血糖を予防する物質(例えばグルコース、D5W、グルカゴンなど)およびステロイド(例えばメチルプレドニゾロン)などを含む。これらの2番目の活性成分を、SUR1アンタゴニストまたはその関連化合物と同じバイアルに組み合わせ得る、またはそれらを別のバイアルに含み得る。
【0176】
またさらに、本発明のキットはまた、グルコース試験キットを含み得る。従って、患者の血中グルコースを、グルコース試験キットを用いて測定し、次いでSUR1アンタゴニストまたはその関連化合物を、患者に投与し得、続いて患者の血中グルコースを測定する。
【0177】
上記のキットに加えて、本発明の処置的キットを、IVバッグが、化合物をIVバッグ中へ放出するために開放または破壊し得る中隔または小室を含むように、組み立て得る。別の型のキットは、ボーラスキットを含み得、ここでそのボーラスキットは前処置したシリンジまたは同様の、使用が容易で、迅速に投与し得る装置を含む。輸液キットは、バイアルまたはアンプルを注入の前に加えるために、バイアルまたはアンプルおよびIV溶液(例えばリンガー溶液)を含み得る。輸液キットは、注入の前、その間、または後に、ボーラス/初期投与量を患者に投与するために、ボーラスキットも含み得る。
【実施例】
【0178】
(X.実施例)
以下の実施例を、本発明の好ましい実施形態を示すために含む。以下の実施例において開示された技術は、発明者によって、本発明の実施においてよく機能することが発見された技術を表し、そして従ってその実施のために好ましい様式を構成すると考え得ることが、当業者によって認識される。しかし、当業者は、本開示を考慮して、本発明の意図および範囲から離れることなく、開示された特定の実施形態において多くの変更がなされ得、そして依然として同様のまたは類似の結果を得ることを認識する。
【0179】
(実施例1)
(NCCa−ATPチャネルの調節)
細胞が大量のNaの流入によって脱分極する場合、浸透圧勾配のためにHOが細胞内に引き寄せられる。HOの流入は、細胞の小疱形成、すなわち細胞傷害性浮腫を引き起こす。R1星状細胞を、走査型電子顕微鏡(SEM)および位相差顕微鏡を用いて、この現象に関して調査した。SEMで調査した新規に単離した細胞は、複数の細かい突起で装飾された、複雑な表面を示した(図1A)。アジ化ナトリウムへの接触の直後であるが脱分極が予測されるよりも十分後に、複雑な細胞表面は、膜の平滑化を伴う表面の小疱によって置換され始めた(図1B)。後に、表面の外見は、小疱が優位を占め、コントロールで観察された繊細な突起を完全に喪失した(図1C)。
【0180】
小疱形成は、ATP枯渇の非存在下で、単にジアゾキシドでNCCa−ATPチャネルを開口することによって再現される(図2)。逆に、アジ化ナトリウム誘導ATP枯渇によって典型的に観察される小疱形成は、グリベンクラミドによって完全に防止される(図2)。小疱形成および細胞傷害性浮腫は、ネクローシス細胞死の前兆である。
【0181】
(実施例2)
(エストロゲンによる調節)
ATPチャネル(Kir6.1、Kir6.2)の特徴は、ATPに対するチャネル親和性が、膜脂質、ホスファチジルイノシトール4,5−2リン酸(PIP)の存在によって調節されることである。KATPチャネルの開口状態の安定性は、PIPを膜の細胞質側に適用することによって増加する(Ashcroft、1998;Baukrowitzら、1998;Rohacsら、1999)。開口状態の安定性の増加は、ATPの非存在下でのチャネル開口確率の増加として、およびATPによる阻害に対する感受性の対応する低下において明らかとなる(Enkvetchakulら、2000;Harunaら、2000;Kosterら、1999;およびLarssonら、2000)。
【0182】
ATPチャネルおよびNCCa−ATPチャネル間の多くの類似性を考慮して、発明者は、NCCa−ATPチャネルのATP感受性は同じ方法でPIPに反応すると推定した。これを、Csをチャージキャリアとして、そして槽中1μMのCa2+および10μMのATPを用いて、後者はチャネルを完全にブロックすることが予測される、インサイドアウトパッチにおいてNCCa−ATPチャネルを研究することによって試験した。これらの条件下で、NCCa−ATPチャネルのみがR1星状細胞において記録された。PIP(50μM)を槽中に加えた場合、PIPのKATPチャネルに対する効果との類似性によって予測されたように、チャネル活性は顕著になった(図3)。このチャネル活性は、グリベンクラミドによってブロックされ、チャネルのアイデンティティーを確認した。
【0183】
レセプターによるメカニズムがNCCa−ATPチャネル活性の調節に関与しているかどうかを決定するために、周知のホスホリパーゼC(PLC)を用いて、PLC活性化がPIPの分解および消費を引き起こし、そしてそれによってATPに対する親和性を増加させる、例えばチャネルの開口を低減するかどうかを研究した。エストロゲンは、脳および他の場所において周知のPLC活性化物質である(Beyerら、2002;Le Mellayら、1999;Quiら、2003)。この実験に関して、細胞結合パッチを研究して、細胞内シグナル伝達機構の変化を防止した。NCCa−ATPチャネル活性を、細胞ATPの枯渇を引き起こすためにアジ化ナトリウムへ接触させることによって産生した(図4、記録の最初の部分)。
【0184】
エストロゲン(E2;10nM)を槽に適用した場合、NCCa−ATPチャネルによる活性はすぐに停止した(図4)。これは、エストロゲンがNCCa−ATPチャネルに対して調節性コントロールを発揮したことを示唆し、そしてシグナル伝達カスケードの迅速な(非遺伝子性)活性化をし得るエストロゲンレセプターが、これらの細胞上に存在することを示唆した。
【0185】
次に、エストロゲンレセプターをオスおよびメス由来のR1星状細胞において検出し得るかどうかを決定するために、ゼラチンスポンジ移植片を、3匹のメスラット(F)のグループおよび別の3匹のオスラット(M)のグループにおいて、移植から7日後に回収した。各グループ由来のプールしたタンパク質を、2つの希釈(4×=50μgの全タンパク質;1×=12.5μgの全タンパク質)で、子宮由来のタンパク質をコントロールとして使用して、ウェスタンブロッティングによって分析した(図5A)。膜を、αおよびβエストロゲンレセプターの両方を認識する抗体でブロッティングした。オスおよびメスの両方とも、α(66kDa)およびβ(55kDa)レセプターの適当な分子量で顕著なバンドを示した(図5)(Hiroiら、1999)。オスおよびメス由来のタンパク質の同じサンプルを使用して、膵臓由来のタンパク質をポジティブコントロールとして使用して、SUR1の存在も確認した(図5B)。特に、エストロゲンレセプターは、オスおよびメス由来の星状細胞において、以前報告された(Choiら、2001)。ウェスタンブロットによって示唆されるように、大脳皮質において、報告によればβアイソフォームがより豊富である(Guoら、2001)。
【0186】
次に、図4の電気生理学的実験を、オスラットから回収したR1星状細胞を用いて繰り返した。上記のように、細胞結合パッチを研究し、ここでNCCa−ATPチャネル活性を、アジ化ナトリウムへの接触後に細胞内ATPの枯渇によって活性化した(図6A)。より高い時間分解能の記録の検討は、NCCa−ATPチャネルの適当なコンダクタンスのよく定義されたチャネルの活性を確認した(図6B)。エストロゲンを槽に適用した場合(図6、E2、10nM、矢印)、NCCa−ATPチャネルによる活性は、迅速に終了した(図6)。これらのデータは、エストロゲンがNCCa−ATPチャネルに対して調節性コントロールを発揮したさらなる証拠を提供し、そしてそれに加えて、この反応が、オスおよびメス由来のR1星状細胞において同等に強いことを示唆した。
【0187】
エストロゲンの効果との類似性によって、他のレセプターによるメカニズムおよびGタンパク質などのようなより直接的なPLCの活性化物質を含む、PIPを枯渇させる他のメカニズムは、NCCa−ATPチャネルの活性に対して同様の阻害効果を有し、そしてそれによって保護効果を発揮することが予測される。
【0188】
(実施例3)
(NCCa−ATPチャネルおよびネクローシス死)
本出願人は、脳の損傷および卒中における反応性星状細胞のネクローシス死の新規メカニズムを発見し、それは脊髄損傷における重要な役割と関係する。小疱形成および細胞傷害性浮腫は、ネクローシス細胞死の前兆である。新規に単離された反応性星状細胞を、ネクローシス死のマーカーであるヨウ化プロピジウム、およびアポトーシス死のマーカーであるアネキシンVで標識した。アジ化ナトリウムに接触した細胞は、ネクローシス死において顕著な増加を示したが、アポトーシス死においては示さなかった(図7)。しかし、グリベンクラミドが存在する場合、アジ化ナトリウム誘発ネクローシス細胞死は、有意に低減された(図7)。これらのインビトロデータは、反応性星状細胞のネクローシス死におけるNCCa−ATPチャネルの重要な役割を示し、そしてグリベンクラミドのようなSUR1のアンタゴニストは、インビボで細胞傷害性浮腫およびネクローシス死を防止するのに有用であることを示す。
【0189】
本出願人は、脳卒中のげっ歯類モデルにおいてNCCa−ATPチャネルを研究した。ペナンブラにおいて、SUR1標識は、星状細胞において見出され(図8A)、それはまたGFAP陽性であった。卒中の間、星状細胞は存在せず、しかしSUR1標識は小疱様の外見を示す丸い細胞において見出され(図8B、C)、それはまたGFAP陽性であった。インサイツにおける小疱形成を有する丸い細胞は、アジ化ナトリウムへの接触後にネクローシス死を起こしているインビトロにおける反応性星状細胞に似ていた。グリベンクラミドvs生理食塩水の効果を、皮下に移植した浸透圧ミニポンプで投与して(0.5μl/hrで300μM)、調査した。生理食塩水で処置したラットにおいて、脳卒中後の3日後死亡率は、68%であり、一方グリベンクラミドで処置したラットにおいて、3日後死亡率は28%に低減された(各グループにおいてn=20;χによって、p<0.001)。別の動物において、グリベンクラミド処置ラットの脳卒中半球は、生理食塩水処置ラットの半分しか過剰な水を含んでいなかったことが見出され(各グループにおいてn=5;t−testによってp<0.01)、浮腫の形成におけるNCCa−ATPチャネルの重要な役割を確認した。
【0190】
出願人はまた、外傷のげっ歯類モデルにおいてSUR1を研究した。移植した浸透圧ミニポンプを用いて、外傷部位への薬剤の直接注入の効果を調査した。チャネル阻害薬であるグリベンクラミドを使用して、反応性星状細胞の死を低減し、そしてチャネル活性化薬剤であるジアゾキシドを用いて星状細胞の死を促進した。簡単には、グリベンクラミドの注入は、損傷反応全体を低減し、外来性体内移植片周囲のグリオーシス性被膜(gliotic capsule)を安定化させ、そしてコントロールと比較して炎症性反応を最小限にしたことが見出された。
【0191】
逆に、ジアゾキシドは本質的にグリオーシス性被膜(gliotic capsule)を破壊し、そして大量のPMNの流入によって特徴付けられる、巨大な炎症性反応を刺激した(図9A、B)。これらのデータは、NCCa−ATPチャネルは、損傷反応において決定的な役割を果たしていることを示唆し、そしてそれらは、炎症はNCCa−ATPチャネルの活性および反応性星状細胞のネクローシス死と密接に関連しているという仮説を強力に支持した。
【0192】
(実施例4)
(脊髄挫傷における機能的NCCa−ATPチャネルの発現)
脊髄挫傷のげっ歯類モデルにおけるSUR1を同定した。免疫標識した脊髄切片は、コントロール(図10A)と比較して、損傷領域におけるSUR1の発現の大きな増加(図10B)を示した。SUR1は、GFAPと共存しており(図10C)、反応性星状細胞の関与を確認した。高出力における細胞の調査は、SUR1陽性細胞は、星状(図10D)GFAP陽性細胞であることを確認し、脊髄損傷における反応性星状細胞はNCCa−ATPチャネルを発現するという仮説と一致した。
【0193】
反応性星状細胞のさらなる特徴づけを、蛍光標示式細胞分取(FACS)を用いて、損傷から3−5日後に反応性星状細胞を挫傷脊髄から単離することによって行う。新規に単離された細胞をパッチクランプして、予期される生理学的および薬理学的性質を有するチャネルを示す。脊髄損傷(SCI)モデルを使用し、そしてNYU−スタイル衝撃装置の使用を含む(Yuら、2001)。反応性星状細胞を、抗SUR1抗体およびFACSを用いて、酵素的に分散した脊髄組織から単離する。脳損傷における別のサブタイプの反応性星状細胞を単離するためのFACSの使用(Daltonら、2003)。パッチクランプ法を使用して、脳損傷から単離された記載された星状細胞と同様に、単一チャネルコンダクタンス、ATPに対する感受性、およびグリベンクラミドおよびジアゾキシドに対する感受性を測定する(Chenら、2001;ChenおよびSimard、2003)。
【0194】
(実施例5)
(SUR1の阻害は、遅延した出血性変換(conversion)を防止する)
脊髄挫傷における損傷は、組織に対する物理的外傷からだけでなく、二次的損傷からも起こり、それはもとの損傷の拡大を引き起こし、そして神経学的コンプロマイズ(compromise)を悪化させる。二次的なもののメカニズムは、一般的に虚血、浮腫、興奮性アミノ酸の放出、酸化的損傷および炎症の発達に起因する。出願人は、出血もこの二次的損傷の過程の重要な構成要素であることを発見した。毛細血管の進行性の病理的関与のために、出血は損傷後に拡大し、それは「出血性変換(conversion)」と呼ばれる現象である。
【0195】
SCIにおけるSUR1調節NCCa−ATPチャネルの役割を研究するために、半−頸部脊髄挫傷モデルを使用した。このモデルのために、10gmの重りを、成体メスLong−Evansラットにおいて、C4−5における露出した硬膜の左半分に2.5cm落下させた。損傷から24時間後の組織病理学的研究は、損傷領域周囲の毛細血管においてSUR1の大量のアップレギュレーションを示し、それはコントロールには存在しなかった(図11)。それに加えて、SUR1のアップレギュレーションを示した損傷部位の毛細血管はまた、ビメンチンを発現していることが見出され(図12)、それは通常星状細胞と関連する中間径フィラメントタンパク質であるが、脳および脊髄において、損傷した毛細血管内皮細胞によって発現される。
【0196】
SUR1の関与に関するさらなる分子的証拠を提供するために、脊髄損傷における組織を、転写因子、SP1に関しても調査し、それはSUR1の発現を調節していることが公知である主な転写因子である。損傷領域における組織の免疫標識は、コントロール(図13A)と比較して、SP1の顕著なアップレギュレーションを示した(図13B)。
【0197】
SCIにおいて新規に発現したSUR1の役割を評価するために、2グループの動物を研究し、1つはコントロール、および1つは処置グループであり、両方とも半頸部脊髄挫傷プラス生理食塩水または選択的SUR1インヒビター、低用量のグリベンクラミド(0.5μl/hrs.q.で伝達される300μMの溶液)のいずれかを皮下に伝達するミニ浸透圧ポンプの損傷後の移植(盲検)を受けた。損傷後24時間の研究は、コントロールと比較して、グリベンクラミド処置動物は、挫傷部位において有意に少ない血液を有していたことを示した(図14A、B)。また、脊髄組織のホモジネートは、有意に少ないヘモグロビン/ヘモシデリンからの着色を示した(図14C)。脊髄挫傷後の時間の関数としてのヘモグロビン濃度の定量的研究は、生理食塩水処置動物において損傷後最初の6時間で進行的増加を示し、それはグリベンクラミドによる処置によって有意に軽減した(図15)。
【0198】
次に、2つのグループの動物における損傷を、反応性星状細胞を標識するためにGFAP、そしてミエリンを標識するためにエリオクロムシアニンRを用いて評価した。損傷から24時間後の研究は、コントロールと比較して、グリベンクラミド処置動物は、有意に小さい損傷、有意に低減されたGFAP発現、および有意により良い対側性長経路の保存を有することを示した(図16)。
【0199】
またさらに、2グループの動物における行動評価を行った。動物をビデオに撮り、そして動物が以前に接触したことのない環境において、垂直探索行動を定量した。損傷後24時間の研究は、コントロールと比較して、グリベンクラミド処置動物は、有意に改善した垂直探索行動を示したことを示した(図17)。
【0200】
脊髄挫傷における遅延した出血性変換(conversion)の現象を認識することは、二次的損傷を低減するすばらしい機会を提供する。広く公知であるように、血液はCNS組織にとって非常に毒性であり、そして浮腫の形成、反応性酸素種の産生、および炎症の刺激の原因である。遅延した出血性変換(conversion)の概念は、SCIにおいて新規の概念であり、そしてグリベンクラミドを、この状態を軽減するために使用し得るという発見は、二次的損傷を低減することによって予後を改善する、前例のない機会を提供する。
【0201】
(実施例6)
(細胞傷害性浮腫および星状細胞のネクローシス死におけるNCCa−ATPチャネルの役割および組織炎症を促進する生物学的に活性な分子の放出)
脊髄損傷において、炎症性反応の開始に役割を果たす、ネクローシス細胞死の間の細胞膜溶解によって放出される、候補細胞内分子の同定も、本発明において企図される。反応性星状細胞を、挫傷脊髄から、損傷の3−5日後にFACSを用いて単離する。新規に単離した細胞を用いて、中毒の後最初の3時間の間の、ネクローシスvsアポトーシス細胞死に対する、アジ化ナトリウム(1mM)vsアジ化ナトリウムプラスグリベンクラミド(1μM)の効果を、位相差顕微鏡、走査型電子顕微鏡、および透過型電子顕微鏡を用いて、形態学的研究を行う;ヨウ化プロピジウムvsアネキシンVで標識する;およびTUNEL標識およびDNAラダー形成(laddering)を用いてDNA分解を評価することによって評価する。
【0202】
新規に単離した細胞を用いて、アジ化ナトリウムによって誘発された星状細胞のネクローシス死後の、HSP−32およびHSP−70の放出を、ELISAを用いて測定する。また、同じ実験パラダイムを用いて、我々は、アジ化ナトリウムに誘発されたHSP−32およびHSP−70の放出に対する、グリベンクラミドの保護効果を評価する。標準的なFACS法および走査型および透過型電子顕微鏡および位相差顕微鏡を用い、それは小疱形成の間に個々の細胞を連続的に追うことを可能にする。本明細書中で記載されたように、免疫蛍光も使用する。
【0203】
(実施例7)
(インビボにおける脊髄挫傷において炎症性反応を低減する、NCCa−ATPチャネルアンタゴニストの能力)
組織を、損傷から約3日間研究する。生理食塩水またはグリベンクラミドのいずれかで処置した、脊髄挫傷を有するラットにおいて、インサイツにおける炎症性反応を、活性化ミクログリア(OX−42)、マクロファージ(MAC−387、Novus)、PMN(MMP−8、Chemicon)およびiNOSに関する定性的免疫蛍光標識を用いて評価する。これらの実験に関して、挫傷領域に隣接する、および挫傷領域における脊髄の新鮮凍結切片を研究する。マクロファージ(MAC−387)およびPMN(MMP−8)に関する定量的FACS分析を行う。これらの実験に関して、挫傷の領域を含む脊髄の15mmの区域を得て、そしてFACS分析;SUR1およびiNOSに関する定量的ウェスタンブロットのために酵素的に分散する。これらの実験に関して、挫傷の領域を含む脊髄の15mmの区域を得て、そしてウェスタンブロッティングのためにホモジナイズする。上記で記載されたように、FACS分析、ウェスタンブロットおよび免疫蛍光イメージングを含む、標準的な方法および材料を使用する。
【0204】
明細書において言及されたすべての特許および出版物は、本発明が属する当業者のレベルを示す。すべての特許および出版物は、本明細書中で、個々の出版物がそれぞれ明確におよび個々に参考文献に組み込まれると示されたように同じ程度、参考文献に組み込まれる。
【0205】
(参考文献)
【表1】






【0206】
本発明およびその利点が詳細に記載されたが、添付された請求によって定義されるような本発明の意図および範囲から離れることなく、様々な変更(changes)、置換および変更(alterations)を本明細書中でし得ることが理解されるべきである。さらに、本申請の範囲は、明細書において記載された過程、機械、製造、問題の組成物、手段、方法および工程の特定の実施形態に制限されないことが意図される。当業者が本発明の開示から容易に認識するように、本明細書中で記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たす、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するまたは後に発展する過程、機会、製造、問題の組成物、手段、方法、または工程を、本発明によって利用し得る。よって、添付された請求は、そのような過程、機会、製造、問題の組成物、手段、方法、または工程を、その範囲内に含むよう意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−56966(P2012−56966A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−277521(P2011−277521)
【出願日】平成23年12月19日(2011.12.19)
【分割の表示】特願2007−532507(P2007−532507)の分割
【原出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(507088082)ユニバーシティ オブ メリーランド, ボルチモア (4)
【出願人】(507086240)
【Fターム(参考)】