説明

NK細胞を増幅するための組成物及び方法

【課題】NK細胞の純度が高くて、NK細胞の増幅倍率が高くて、しかも、T細胞の混在が少ない細胞を、フィーダー細胞を用いないで、臍帯血からでも、末梢血からでも増幅できる技術を開発する。
【解決手段】本発明は、タクロリムス、その誘導体及び塩と、ダルテパリン、その誘導体及び塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物を含む、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を増幅するための組成物を提供する。本発明は、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)を調製するステップと、タクロリムス、その誘導体及び塩と、ダルテパリン、その誘導体及び塩とからなる群から選択される1種類又は2種類以上の化合物の存在下で、前記NK細胞をインキュベーションするステップとを含む、NK細胞を増幅する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NK細胞の増幅に用いる組成物と、NK細胞の増幅方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
NK細胞は、MHCクラスI分子を発現する細胞は攻撃しないで、MHCクラスI分子の発現が低下した細胞だけを攻撃する。そこでがん及び感染症の細胞療法に同種NK細胞を用いると、GVH(Graft−Versus−Host)病の副作用を回避できる利点がある。実際、Millerら(非特許文献1)及びRubnitzら(非特許文献2)の報告によると、がん患者をレシピエントとし、その近縁の健常者のドナーの新鮮な末梢血単核球細胞をNK細胞を濃縮したうえで移植した場合には、移植されたNK細胞は、レシピエントに副作用を起こすことなく、一時的に生着し、細胞傷害活性を保持した。しかし、NK細胞の移植療法の有効性を示す臨床治験の報告はまだない。その理由の1つは、ドナーからリンパ球アフェレーシスで回収できる細胞数に限度があるため、がん細胞及び病原体感染細胞のような標的細胞を死滅させるのに十分な数のNK細胞を標的細胞が死滅するまでの期間レシピエント体内に滞留させることができないからである。
【0003】
正常な成人の末梢血の1回のアフェレーシスからは約1×1010個の単核球が回収でき、末梢血単核球中のNK細胞の構成比率を約7%とすると、7×10個のNK細胞が得られる(非特許文献3)。一方、NK細胞の移植には、1×10個/kgないし2×10個/kg(非特許文献1)か、5×10個/kgないし8.1×10個/kg(非特許文献2)のオーダーのNK細胞が用いられる。患者の体重を60kgとすると、6×10個ないし4.8×10個のNK細胞が必要となる。これは、正常な成人の末梢血の1回のアフェレーシスから得られるNK細胞の0.0086倍ないし6.86倍に相当する。しかし、例えば非特許文献2によると、NK細胞の生着期間は投与されたNK細胞の数とは相関がみられず、2日ないし189日で、中央値は10日にすぎなかった。つまり、非特許文献2に記載の最大投与量である8.1×10個/kgでも、効果も十分ではなかったことになる。すると、がん細胞及び病原体感染細胞のような標的細胞を死滅させるのに十分な数のNK細胞を、標的細胞が死滅するまでの期間レシピエント体内に滞留させるためには、より大量のNK細胞移植をより頻繁に繰り返す必要がある。
【0004】
そこで、医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理規則に適合した条件(good manufacturing practice、GMP)で、ドナーから得たNK細胞をいったん試験管内で培養増幅して、標的細胞を死滅させるのに十分なNK細胞を得る技術の開発が進められている。Carlens、S.ら(非特許文献4)は、ヒトCD3に対するアゴニスト抗体であるOKT3と、IL−2との存在下で健常者の末梢血単核球細胞を21日間培養して、NK細胞を純度55%、193倍に増幅したと報告した。Alici,E.ら(非特許文献5)は、同様の条件でミエローマ患者の末梢血単核球細胞を20日間培養して、NK細胞を純度65%、1625倍に増幅したと報告した。Fujisaki,H.ら、(非特許文献6)は、NK細胞を活性化する因子を発現するように遺伝的に改変された白血病細胞をフィーダー細胞として用いる培養条件で健常者の末梢血単核球細胞を21日間培養して、NK細胞を純度96.8%、277倍に増幅したと報告した。
【0005】
従来のNK細胞の増幅技術では、副作用の安全性が評価されたNK細胞の投与量の数倍に増幅することしかできない。Carlens、S.ら(非特許文献4)及びAlici,E.ら(非特許文献5)の報告で増幅された細胞集団中のNK細胞の構成比率、すなわち、純度は、それぞれ、55%及び65%で、CD3陽性細胞の構成比率は、それぞれ、22%及び25%であった。NK細胞の投与数が増大すると、混在するT細胞の数も増えるが、これは副作用のリスクを高めるので好ましくない。遺伝的に改変された細胞をフィーダー細胞として用いるFujisaki,H.ら、(非特許文献6)では、T細胞はほとんど混在しないが、このようなフィーダー細胞の使用は遺伝改変細胞の最終産物への混入というリスクがあるので好ましいとは言えない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Miller,J.S.ら、Blood、105:3051(2005)
【非特許文献2】Rubnitz,J.E.ら、J. Clin.Oncol.、28:955(2010)
【非特許文献3】Cho,D.及びCampana,D.、Korean J.Lab.Med.、29:89(2009)
【非特許文献4】Carlens,S.ら、Hum. Immunol.、62:1092(2001)
【非特許文献5】Alici,E.ら、Blood、111:3155(2008)
【非特許文献6】Fujisaki,H.ら、Cancer Res.、69:4010(2009)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、NK細胞の純度が高くて、NK細胞の増幅倍率が高くて、しかも、T細胞の混在が少ない細胞を、フィーダー細胞を用いないで、臍帯血からでも、末梢血からでも増幅できる技術を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タクロリムス又はその誘導体又は塩と、ダルテパリン又はその誘導体又は塩とを含む、NK細胞を増幅するための組成物を提供する。
【0009】
本発明の組成物は、感染症及び/又はがんを治療するために用いられる場合がある。
【0010】
本発明の組成物において、前記タクロリムス又はその誘導体又は塩はタクロリムスの濃度に換算して0.02ng/mLないし0.1ng/mLの濃度で、前記ダルテパリン又はその誘導体又は塩はダルテパリンの濃度に換算して5U/mLないし10U/mLの濃度の場合がある。
【0011】
本発明の組成物は、IL−2及びIL−15をさらに含む場合がある。
【0012】
本発明の組成物において、前記IL−2は0.075ng/mLないし25ng/mLの濃度の場合があり、0.5ng/mLないし10ng/mLの濃度の場合があり、1ng/mLないし10ng/mLの濃度の場合があり、5ng/mLないし10ng/mLの濃度の場合がある。前記IL−15は0.5ng/mLないし50ng/mLの濃度の場合があり、1ng/mLないし20ng/mLの濃度の場合があり、2ng/mLないし20ng/mLの濃度の場合があり、10ng/mLないし20ng/mLの濃度の場合がある。
【0013】
本発明の組成物は、抗CD3抗体をさらに含む場合がある。前記抗CD3抗体はアゴニスト抗体の場合がある。前記抗CD3抗体は、OKT3、UCHT1及びHIT3aの場合がある。
【0014】
本発明の組成物において、前記抗CD3抗体は、OKT3の濃度に換算して10ng/mLないし1mg/mLの濃度の場合がある。
【0015】
本発明の組成物は、自家血清、ヒトAB型血清、及び/又は、ヒト血清アルブミンをさらに含む場合がある。
【0016】
本発明は、NK細胞を含む単核球細胞を調製するステップと、本発明のNK細胞を増幅するための組成物の存在下で、前記単核球細胞を培養するステップとを含む、NK細胞を増幅する方法を提供する。
【0017】
本発明のNK細胞を増幅する方法において、前記NK細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹(iPS)細胞からなるグループから選択されるいずれかの幹細胞由来の造血幹細胞と、臍帯血由来の造血幹細胞と、末梢血由来の造血幹細胞と、骨髄血由来の造血幹細胞と、臍帯血単核球細胞と、末梢血単核球細胞とからなる群から選択される少なくとも1種類の細胞から調製される場合がある。
【0018】
本発明は、NK細胞を含む単核球細胞を調製するステップと、本発明のNK細胞を増幅するための組成物の存在下で、前記単核球細胞を培養するステップと、前記単核球細胞から増幅されたNK細胞を患者に移植するステップとを含む、細胞療法(Adoptive Cell Therapy)を提供する。本発明の細胞療法は、がん及び/又は感染症の治療に用いられる場合がある。
【0019】
本発明の細胞療法において、前記NK細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹(iPS)細胞からなるグループから選択されるいずれかの幹細胞由来の造血幹細胞と、臍帯血由来の造血幹細胞と、末梢血由来の造血幹細胞と、骨髄血由来の造血幹細胞と、臍帯血単核球細胞と、末梢血単核球細胞とからなる群から選択される少なくとも1種類の細胞から調製される場合がある。前記NK細胞のドナーは、レシピエントである患者自身か、該患者の近縁者か、患者とは血縁関係のない者かに由来する場合がある。前記NK細胞は、レシピエントの腫瘍組織適合性抗原(MHC)と抑制性NK細胞受容体(KIR)とが不一致であるドナーに由来する場合がある。
【0020】
本明細書における「NK細胞」とは、CD3陰性CD56陽性の単核球細胞をいい、MHCクラスI分子の発現が少ないか、該発現が消失している細胞に対する細胞傷害活性を有する。
【0021】
本発明の方法において、NK細胞を含む単核球細胞の調製は、当業者に知られたさまざまな手順を用いることができる。例えば、臍帯血及び末梢血のような血液から単核球細胞を回収する際には、比重遠心法を用いることができる。
【0022】
本発明の方法において、臍帯血及び末梢血から分離された単核球細胞は凍結保存され、患者への移植時期に応じて解凍され、NK細胞の増幅に供される場合がある。あるいは、前記単核球細胞は、本発明のNK細胞の増幅方法によって増幅される途中か、増幅が終わった後かに凍結され、患者への移植時期に応じて解凍され、患者への移植に供される場合がある。血球細胞の凍結及び解凍は当業者に周知のいかなる方法を用いてもかまわない。前記細胞の凍結には、いずれかの市販の細胞凍結保存液が用いられる場合がある。
【0023】
本明細書における「タクロリムス」とは、藤沢薬品工業株式会社(アステラス製薬株式会社)によってStreptomyces tuskubaensisから単離された免疫抑制物質を指し、ヘルパーT細胞においてインターロイキン−2(IL−2)等のサイトカイン産生を抑制する。本明細書における「ダルテパリン」とは、ブタ小腸粘膜由来のヘパリンを亜硝酸分解して得られた解重合ヘパリンのナトリウム塩を指し、血液凝固Xa因子を阻害することによって抗凝固作用を有する低分子へパリン製剤である。しかし、前記タクロリムス及び前記ダルテパリンのNK細胞の増幅への作用機序は明らかにされていない。
【0024】
本明細書におけるタクロリムス及びダルテパリンの「塩」とは、タクロリムス及び/又はダルテパリンのNK細胞の増幅効果を損なわないことを条件として、金属塩、アミン塩等を含むいずれかの塩をいう。前記金属塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を含む場合がある。前記アミン塩は、トリエチルアミン塩、ベンジルアミン塩等を含む場合がある。
【0025】
本明細書におけるタクロリムス及びダルテパリンの「誘導体」とは、タクロリムス及びダルテパリンのNK細胞の増幅効果を損なわないことを条件として、タクロリムス及びダルテパリンが、アミノ基か、カルボキシル基か、側鎖かにおいて、いずれかの原子団と共有結合したものを指す。前記いずれかの原子団は、N−フェニルアセチル基、4,4’−ジメトキシトリチル(DMT)基等のような保護基と、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、核酸等のような生体高分子と、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリビニル、ポリエステル等のような合成高分子と、エステル基等のような官能基とを含むがこれらに限定されない。前記エステル基は、例えば、メチルエステル、エチルエステルその他の脂肪族エステルか、芳香族エステルかを含む場合がある。
【0026】
本明細書における「インターロイキン−2(IL−2)」とは、抗原提示されたT細胞から主に産生されるサイトカインの1種類であり、分子量が約15000の糖タンパク質を指す。前記IL−2は、T細胞、NK細胞、B細胞の増殖・分化を促進することが知られている。本明細書における「インターロイキン−15(IL−15)」とは、上皮細胞、単球等のさまざまな細胞タイプから産生されるサイトカインの1種類であり、分子量が約15000の糖タンパク質を指す。前記IL−15は、前記IL−2と類似の生理作用を示すことが知られている。
【0027】
前記IL−2及び前記IL−15は、NK細胞の増幅効果を損なわないことを条件として特に限定されないが、ヒトのアミノ酸配列を有することが好ましく、安全上、組換えDNA技術で生産されることが好ましい。
【0028】
本明細書における「抗CD3抗体」とは、T細胞、胸腺細胞、NKT細胞等に発現するCD3分子を認識する抗体を指す。前記CD3分子は、T細胞受容体(TCR)と会合してTCRのシグナル伝達に関与する。抗CD3抗体は、in vitroでT細胞を活性化及び増幅するために用いられ、TCR複合体に結合してアゴニスト活性を示すことが知られている。前記アゴニスト活性を有する抗CD3抗体には、例えば、OKT3(ヤンセンファーマ株式会社)、UCHT1(ベイバイオサイエンス株式会社)、HIT3a(ベイバイオサイエンス株式会社)が含まれるがこれらに限定されない。
【0029】
本発明のNK細胞を増幅するための組成物は、GMPグレードの幹細胞培養用培地であって、血液系細胞の増殖に適する培地に添加されて、NK細胞の増幅培養に用いられる。好ましい培地は、CellGro SCGM培地(セルジェニックス、岩井化学薬品株式会社)や、X−VIVO15培地(ロンザ、タカラバイオ株式会社)の他、IMDM、MEM、DMEM、RPMI−1640等を含むが、これらに限らない。これらの培地には、被験者の自家血清、BioWhittaker社その他から入手可能なヒトAB型血清や、日本赤十字社から入手可能な献血ヒト血清アルブミンが添加される場合がある。前記自家血清及びヒトAB型血清は0ないし15%の濃度で添加されることが好ましく、5%の濃度で添加されることがより好ましい。献血ヒト血清アルブミンは0ないし10%の濃度で添加されることが好ましい。前記被験者は、健常者と、感染症及び/又はがんに罹患した患者との場合がある。
【0030】
本発明の方法において、培養容器は、商業的に入手可能なディッシュ、フラスコ、プレート、マルチウェルプレートを含むが、これらに限定されない。培養条件は、NK細胞の増幅効果を損なわないことを条件として特に限定されないが、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下の培養条件が一般的である。本発明の目的はNK細胞を増幅することであるため、前記培地で培養する期間が長いほどより多くのNK細胞が得られるので有利である。培養期間は、NK細胞を所望の細胞数まで増幅することを条件として、特に限定されない。
【0031】
増幅されたNK細胞の細胞傷害活性は、当業者に周知の方法によって評価できる。前記細胞傷害活性は、前記NK細胞(エフェクター細胞)と、放射性物質、蛍光物質等で標識した標的細胞とをインキュベーションした後、放射線量又は蛍光強度を測定することによって評価することが一般的である。前記標的細胞は、K562細胞、急性骨髄性白血病細胞、同種PHA芽球、慢性骨髄性白血病細胞の場合があるが、これらに限定されない。増幅されたNK細胞の性質は、RT−PCR法、固相雑種形成法、ELISA法、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、免疫比濁法等を用いて調べられる場合がある。
【0032】
本発明において、自家血清の調製と、臍帯血又は末梢血の全血の採取と、該全血からの単核球細胞の調製と、該単核球細胞の培養前後の細胞数の測定と、培養前後の前記単核球細胞中のNK細胞、T細胞その他の細胞タイプの構成比率の測定と、NK細胞の増幅倍率の算出と、測定誤差や有意性についての統計解析とは、当業者に周知のいかなる方法を使用して実施されてもかまわない。
【0033】
本明細書において言及される全ての文献はその全体が引用により本明細書に取り込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1A】タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で培養された臍帯血単核球におけるT細胞(CD3CD56)、NK細胞(CD3CD56)及びNKT細胞(CD3CD56)の培養細胞全体に対する構成比率の経時的な変化をフロー・サイトメトリー法で測定した実験結果を示すグラフ。
【図1B】タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で培養された臍帯血単核球について、グランザイム及びCD56をともに発現する細胞と、NKG2D及びCD56をともに発現する細胞との構成比率の経時的変化をフロー・サイトメトリー法で調べた実験結果を示すグラフ。
【図2A】本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のK562に対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフ。
【図2B】本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のAMLに対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフ。
【図2C】本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のさまざまな細胞に対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフ。
【図2D】本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞の細胞傷害活性に対する抗NKG2D抗体の阻害効果を調べた実験結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に説明する本発明の実施例は例示のみを目的とし、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載によってのみ限定される。本発明の趣旨を逸脱しないことを条件として、本発明の変更、例えば、本発明の構成要件の追加、削除及び置換を行うことができる。
【実施例1】
【0036】
ヒト臍帯血由来のNK細胞の増幅
1.材料及び方法
(1)細胞の出所
臍帯血単核球細胞は、文書による説明と文書による同意とが得られた被験者の臍帯血から調製され、北海道臍帯血バンク内の液体窒素システムで凍結保存された。本実験は、北海道臍帯血バンク倫理委員会の承認(承認番号第005番、初回承認日:2005年1月20日)を得て実施された。
【0037】
(2)細胞培養
前記臍帯血単核球細胞の培養条件の検討には、GMPグレードの幹細胞培養用培地(CellGro SCGM、セルジェニックス、岩井化学薬品株式会社)に、10ng/mLのIL−15(Peprotech、東洋紡績株式会社、ED50 <0.5 ng/mL、比活性> 2x10 U/mg)と、5ng/mLのIL−2(R&Dシステムズ、コスモ・バイオ株式会社、ED50は0.075−0.375 ng/mL)と、5%のヒトAB型血清(NOVA Biologics, Inc、コスモ・バイオ株式会社)とが添加された培地(以下、「2+15培地」と表される。)が基本培地として用いられた。前記2+15培地に、10ng/mLないし1mg/mLの抗CD3モノクローナル抗体(OKT3、Centocor Ortho Biotech Inc、ヤンセンファーマ株式会社)が添加された培地(以下、「2+3+15培地」と表される。)が調製された。タクロリムス及びダルテパリンの効果を検討する場合には、前記2+15培地(培養開始時のみ前記2+3+15培地)に、0.02−0.1ng/mLのタクロリムス(FK506、アステラス製薬株式会社)、及び/又は、5−10U/mLのダルテパリン(フラグミン(登録商標)、ファイザー株式会社)が添加された培地が用いられた。以下では、2+15培地にタクロニムスのみが添加された培地は、「+FK培地」と表され、2+15培地にダルテパリンのみが添加された培地は、「+F培地」と表され、2+15培地にタクロニムス及びダルテパリンが添加された培地は、「+FK+F培地」と表される。臍帯血単核球細胞は常法に従って解凍され、培地1mLあたり1×10個の濃度に調製され、フィーダー細胞なしで、市販の24穴培養プレート(ファルコン、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)又はT−25フラスコ(ファルコン、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に播種され、37°C、5%CO及び飽和水蒸気雰囲気下で培養された。前記細胞は、3−4日間毎に、新鮮な培地で2分の1ないし4分の1に希釈され、21日後に、以下のとおり細胞数及び細胞表面マーカーの解析に供せられた。
【0038】
(3)細胞数及び細胞表面マーカーの解析
前記臍帯血単核球細胞の培養21日後の細胞数は、トリパンブルーで染色され、改良ノイバウエル血球計算盤を用いて計測された。前記臍帯血単核球細胞の培養開始時及び培養21日後における、T細胞(CD3CD56)、NK細胞(CD3CD56)及びNKT細胞(CD3CD56)を識別する細胞表面マーカーCD3及びCD56と、NK細胞及びNKT細胞の細胞傷害能に関与するグランザイムAと、NK細胞及びNKT細胞の細胞傷害性誘導シグナルレセプターNKG2D(CD314)とは、それぞれ、抗CD3抗体(Pharmingen、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、抗CD56抗体(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)、抗グランザイムA抗体(日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)及び抗NKG2D抗体(Immunotech、ベックマン・コールター株式会社)とを用いて、フロー・サイトメトリー法で解析された。有意性の検定はスチューデントt検定で行われた。
【0039】
2.結果
表1−1及び表1−2は前記臍帯血からのNK細胞(CD3CD56)の21日培養下での増幅に対する0.02ng/mL、0.05ng/mL又は0.1ng/mLのタクロリムス(以下、「+FK0.02」、「+FK0.05」又は「+FK0.1」と表す。)、及び/又は、5U/mLのダルテパリン(以下、「+F」と表す。)の効果を調べた実験結果を示す。各実験条件の標準偏差は、同一条件で5回繰り返された実験結果から算出された。表の「NK細胞の構成比率」では、フロー・サイトメトリー法により計測された、各実験群の全培養細胞中のNK細胞の割合が百分率で表される。表の「全細胞数」では、各実験群の21日後の全細胞数が1×10個の単位で表される。表の「NK細胞の増幅倍率」では、各実験群の21日培養後のNK細胞の数を培養開始時の臍帯血単核球細胞中に存在したNK細胞の数で除算した結果が表される。
【0040】
【表1−1】

【0041】
【表1−2】

【0042】
表1の数値に上付き文字で示された注記a及びbは、2+15培地で培養された実験群の結果に対して比較したときに、有意性のp値が、それぞれ、1%未満及び5%未満であることを示す。注記c及びeは、+FK培地で培養された実験群の結果に対して+FK+F培地で培養された実験群の結果を比較したときに、有意性のp値が、それぞれ、1%未満及び5%未満であることを示す。注記dは、+F培地で培養された実験群の結果に対して+FK+F培地で培養された実験群の結果を比較したときに、有意性のp値が5%未満であることを示す。
【0043】
表1−1及び表1−2から、0.02ng/mLタクロリムス及び5U/mLダルテパリンが添加された培地(+FK0.02+F培地)で臍帯血単核球を21日培養すると、NK細胞が1700倍と多く増幅され、しかも、NK細胞の構成比率は72.8%で純度が高いことが明らかになった。ダルテパリンのみが添加された培地(+F培地)は、培養下での全細胞の増殖が最も活発なために、NK細胞は1989倍と最も多く増幅されたが、NK細胞の純度が65%と低いため、0.02ng/mLタクロリムス及び5U/mLダルテパリンが添加された培地(+FK0.02+F培地)、0.05ng/mLタクロリムス及び5U/mLダルテパリンが添加された培地(+FK0.05+F培地)とのほうがNK細胞増幅に適する。なお、タクロリムスのみが添加された培地(+FK0.02培地、+FK0.05培地及び+FK0.1培地)では、培養下での全細胞の増殖は、基本培地(2+15)より成績が悪かった。しかし、ダルテパリンのみが添加された培地(+F培地)よりもタクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+FK0.02+F培地)のほうがNK細胞の構成比率が高い。そこで、本発明におけるタクロリムスの作用は従来技術から予想することができたとはいえない。
【0044】
図1Aは、0.02ng/mLタクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地、「以下、図1及び図2では、いずれの実験でも、タクロリムスの濃度は0.02ng/mLで、ダルテパリンの濃度は5U/mLなので、濃度の記載は省略する。)で培養された臍帯血単核球におけるT細胞(CD3CD56)、NK細胞(CD3CD56)及びNKT細胞(CD3CD56)の培養細胞全体に対する構成比率の経時的な変化をフロー・サイトメトリー法で測定した実験結果を示すグラフである。グラフの縦軸は培養細胞全体に対する各細胞の構成比率(%)で、横軸は培養日数である。誤差棒は、同一条件で5回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。
【0045】
図1Aに示されるとおり、0.02ng/mLタクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)では、培養開始後7日まではT細胞の構成比率に大きい変化はみられなかった。この結果から、タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)のCD3を発現する臍帯血単核球細胞に対する作用は、OKT3が培養開始時にのみ添加されるため、CD3を介するT細胞刺激は一過性である。理論に拘泥するわけではないが、OKT3はCD3を介するT細胞増殖促進を通じてNK細胞を含む培養系全体の細胞増殖を促進すると考えられる。T細胞の構成比率は培養開始後7日から急激に低下し、21日の培養で約7%にまで減少した。一方、NK細胞の構成比率は培養開始後7日から急激に増大した。これは、表1に示すとおりNK細胞が21日の培養で約1700倍に増幅されることから、NK細胞だけが培養開始後7日経過後から急激に増殖したためである。なお、NKT細胞の構成比率は培養開始後14日までは緩やかに増大したが、培養開始後14日を過ぎるとほぼ一定のままであった。
【0046】
図1Bは、タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で培養された臍帯血単核球について、グランザイム及びCD56をともに発現する細胞と、NKG2D及びCD56をともに発現する細胞との構成比率の経時的変化をフロー・サイトメトリー法で調べた実験結果を示すグラフである。グラフの縦軸は培養細胞全体に対する各細胞の構成比率(%)で、横軸は培養日数である。誤差棒は、同一条件で5回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。
【0047】
図1Aと図1Bとを比較すると、NK細胞(CD3CD56)と、グランザイム及びCD56をともに発現する細胞と、NKG2D及びCD56をともに発現する細胞とは、構成比率の経時的変化パターンがほぼ一致した。そこで、本発明で増幅されるNK細胞は、グランザイム及びNKG2Dを発現することが示唆された。
【実施例2】
【0048】
増幅されたNK細胞の細胞傷害活性
1.材料及び方法
(1)細胞
タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で臍帯血単核球細胞が21日培養されて得られた細胞(以下、「本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞」という。)が、エフェクター細胞として用いられた。慢性骨髄性白血病細胞由来のK562株(以下、「K562」という。)と、未分化型の急性骨髄性白血病(AML(M0))細胞(以下、「AML」という。)と、第三者の同種PHA幼若化細胞(以下、「AlloPHA」という。)と、慢性期の慢性骨髄性白血病細胞(以下、「CML」という。)とが、標的細胞として用いられた。
【0049】
(2)細胞傷害活性の定量
本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞の細胞傷害活性(%)は、当業者に周知の方法で評価された。簡潔には、51Crで標識された標的細胞と、エフェクター細胞とが4時間混合培養された。その後、培養上清に遊離した51Crの放射線量が測定され、傷害された標的細胞の比率が、NK細胞の細胞傷害活性(%)として決定された(4時間51Cr遊離アッセイ)。エフェクター細胞と標的細胞との比(E:T)は、1対1、3対1、及び、10対1であった。
【0050】
(3)抗体による細胞傷害活性阻害
抗NKG2Dモノクローナル抗体(1D11、AbD(Serotec)、R&Dシステムズ、フナコシ株式会社)が、エフェクター細胞及び標的細胞をインキュベーションするときに最終濃度50μg/mLで添加された。
【0051】
2.結果
図2Aは、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のK562に対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフである。縦軸は細胞傷害活性(単位:%)である。各実験条件の誤差棒は、同一条件で3回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。E:Tが1:1のとき、細胞傷害活性は約55%であった。E:Tの比が、3対1と10対1とのとき、前記細胞傷害活性はともに80%を上回り、最大域に達した。
【0052】
図2Bは、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のAMLに対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフである。縦軸は細胞傷害活性(単位:%)である。各実験条件の誤差棒は、同一条件で3回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。E:Tが1:1のとき、前記細胞傷害活性は約15%であった。E:Tが3:1及び10:1のとき、前記細胞傷害活性は、それぞれ、約30%及び約55%であった。以上の結果から、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞はAMLに対しても細胞傷害活性を示すことが示された。
【0053】
図2Cは、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のさまざまな細胞に対する細胞傷害活性を調べた実験結果を示すグラフである。縦軸は細胞傷害活性(単位:%)である。各実験条件の誤差棒は、同一条件で3回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。E:Tの比が10:1のとき、前記細胞傷害活性は、K562に対しては約90%であり、AlloPHAに対しては約5%であり、2名の異なる患者由来のCMLに対しては、それぞれ、約25%及び約35%であり、AMLに対しては約53%であった。以上の結果から、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞は、白血病細胞に対しては細胞傷害活性を示すが、PHAで幼若化されたリンパ球に対しては細胞傷害活性を示さないことが示された。
【0054】
図2Dは、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞の細胞傷害活性に対する抗NKG2D抗体の阻害効果を調べた実験結果を示すグラフである。縦軸は細胞傷害活性(単位:%)である。黒色の棒グラフは抗体非存在下での細胞傷害活性を表し、灰色の棒グラフは抗体存在下での細胞傷害活性を表す。各実験条件の誤差棒は、同一条件で3回繰り返された実験結果の標準偏差を示す。本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のK562に対する細胞傷害活性はE:Tの比が10:1のとき約53%であったが、抗NKG2D抗体存在下では細胞傷害活性が約25%に低下した。本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のAMLに対する細胞傷害活性は約18%であったが、抗NKG2D抗体存在下では細胞傷害活性が約8%に低下した。以上の結果から、本発明の方法で増幅された臍帯血由来NK細胞のK562及びAMLに対する細胞傷害活性には、NKG2Dを介するシグナル伝達経路が少なくとも部分的に関与することが示された。
【実施例3】
【0055】
末梢血由来のNK細胞の増幅
1.材料及び方法
(1)細胞の出所
末梢血単核球細胞は、文書による説明と文書による同意とが得られた被験者の末梢血から調製され、定法に従って凍結保存された。保存検体を使用する本実験は、北海道大学医学研究科医の倫理委員会によって平成13年2月23日に初回承認、平成20年11月6日に追加変更承認を得て実施された。
【0056】
(2)細胞培養
末梢血単核球細胞は、健常者と、同種幹細胞移植を施された白血病患者とから、常法に従って調製された。前記末梢血単核球細胞は、実施例1で説明された手順に従って、タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で21日培養された。
【0057】
(3)細胞数及び細胞表面マーカーの解析
前記末梢血単核球細胞の培養21日後の細胞数は、自動細胞計数装置により計測された。前記臍帯血単核球細胞の培養開始時及び培養21日後における、T細胞(CD3CD56)、NK細胞(CD3CD56)及びNKT細胞(CD3CD56)を識別する細胞表面マーカーCD3及びCD56は、実施例1と同様にフロー・サイトメトリー法で解析された。
【0058】
2.結果
表2は、0.02ng/mLのタクロリムス及び5U/mLのダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で健常者の末梢血からNK細胞(CD3CD56)が21日培養された実験の結果を示す。標準偏差は、同一条件で6回繰り返された実験結果から算出された。表の「培養前」と「培養後」とは、それぞれ、培養開始時と、+F+FK培地での培養21日後とを表す。表の「NK細胞数」は、培養開始時(培養前)及び培養21日後(培養後)のNK細胞数が1×10個の単位で表される。表の「NK細胞の構成比率」では、フロー・サイトメトリー法により計測された、全培養細胞中のNK細胞の割合が百分率で表される。表の「NK細胞増幅倍率」では、+F+FK培地での21日培養後のNK細胞の数を培養開始時の末梢血単核球細胞中に存在したNK細胞の数で除算した結果が表される。
【0059】
【表2】

【0060】
表2の培養後のNK細胞構成比率の数値に上付き文字で示された注記aは、2+15培地と比較した+F+FK培地の場合がp値 5%未満であることを示す(6検体)。
【0061】
表2から、健常者の末梢血単核球では、タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で21日培養すると、NK細胞が約6300倍と非常に多く増幅され、しかも、NK細胞の純度も73.4%と高いことが明らかになった。
【0062】
表3は、0.02ng/mLのタクロリムス及び5U/mLのダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で同種幹細胞を移植された患者の末梢血からNK細胞(CD3CD56)が21日培養された実験の結果を示す。標準偏差は、同一条件で7回繰り返された実験結果から算出された。表の「培養前」と「培養後」とは、それぞれ、培養開始時と、+F+FK培地での培養21日後とを表す。表の「NK細胞数」は、培養開始時(培養前)及び培養21日後(培養後)のNK細胞数が1×10個の単位で表される。表の「NK細胞の構成比率」では、フロー・サイトメトリー法により計測された、全培養細胞中のNK細胞の割合が百分率で表される。表の「NK細胞増幅倍率」では、+F+FK培地での21日培養後のNK細胞の数を培養開始時の末梢血単核球細胞中に存在したNK細胞の数で除算した結果が表される。
【0063】
【表3】

【0064】
表3から、同種幹細胞を移植された患者の末梢血単核球では、タクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)で21日培養すると、NK細胞が約4300倍と非常に多く増幅され、しかも、NK細胞の純度も83.2%と高いことが明らかになった。また、同種幹細胞を移植された患者の末梢血単核球では、グランザイム及びNKG2Dの発現が臍帯血単核球と同様に増大した(データは示されない。)。したがって、前記末梢血単核球は、前記臍帯血単核球と同程度の細胞傷害活性を有することが示唆された。
【0065】
以上のとおり、本発明のタクロリムス及びダルテパリンが添加された培地(+F+FK培地)を用いる方法によって、末梢血単核球細胞を21日間培養したところ、NK細胞が純度73.4%、6268倍に増幅された。本発明の方法による末梢血単核球細胞の増幅成績は、健常者の末梢血単核球細胞を21日間培養して、NK細胞が純度55%、193倍に増幅されたとの報告(Carlens、S.ら、Hum. Immunol.、62:1092(2001))と、ミエローマ患者の末梢血単核球細胞を20日間培養して、NK細胞を純度65%、1625倍に増幅したとの報告(Alici、E.ら、Blood、111:3155(2008))とに比べて顕著に優れている。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクロリムス又はその誘導体又は塩と、ダルテパリン又はその誘導体又は塩とを含むことを特徴とする、NK細胞を増幅するための組成物。
【請求項2】
感染症及び/又はがんを治療するために用いられることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記タクロリムス又はその誘導体又は塩はタクロリムスの濃度に換算して0.02ng/mLないし0.1ng/mLの濃度であり、前記ダルテパリン又はその誘導体又は塩はダルテパリンの濃度に換算して5U/mLないし10U/mLの濃度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
IL−2及びIL−15をさらに含むことを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記IL−2は0.075ng/mLないし25ng/mLの濃度であり、前記IL−15は0.5ng/mLないし50ng/mLの濃度であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
抗CD3抗体をさらに含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載の組成物。
【請求項7】
前記抗CD3抗体は、OKT3の濃度に換算して10ng/mLないし1mg/mLの濃度であることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
自家血清、ヒトAB型血清、及び/又は、ヒト血清アルブミンをさらに含むことを特徴とする、請求項4ないし7のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項9】
NK細胞を含む単核球細胞を調製するステップと、
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の組成物の存在下で、前記NK細胞を培養するステップとを含むことを特徴とする、NK細胞を増幅する方法。
【請求項10】
前記NK細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹(iPS)細胞からなるグループから選択されるいずれかの幹細胞由来の造血幹細胞と、臍帯血由来の造血幹細胞と、末梢血由来の造血幹細胞と、骨髄血由来の造血幹細胞と、臍帯血単核球細胞と、末梢血単核球細胞とからなる群から選択される細胞から調製されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。


【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【公開番号】特開2013−6793(P2013−6793A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140504(P2011−140504)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(510134938)テラ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】