Na/K−ATPアーゼリガンド、ウアバインアンタゴニスト、それらの検定および使用
Na/K−ATPアーゼ/Srcリガンド、それらの検定および使用を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:ジ・ジャン・ジー(Zi-Jian Xie),シュイ・シ(Shuyi Si),ツォンビン・ツァン(Zhongbing Zhang),ヨゼフ・I・シャピロ(Joseph I. Shapiro)
関連出願のクロス・リファレンス
[0001]本出願は、本明細書中にその開示が援用される、2009年9月16日出願の米国仮出願第61/243,036号の恩典を請求する。
【0002】
連邦政府後援による研究に関する供述
[0002]本発明は、政府援助で行われており、政府が、国立衛生研究所(National Institutes of Health)(NIH)GM78565、HL366573および2007DFA31370の下で、本発明の権利を有する。
【0003】
[0003]本発明は、Na/K−ATPアーゼリガンドおよびそれらの使用に関する。本発明は、更に、Na/K−ATPアーゼのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト活性について物質をスクリーニングする方法およびキット、および本明細書中に記載のスクリーニング方法によって識別された物質で疾患または障害を処置するまたは予防する方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]ナトリウムポンプとしても知られるNa/K−ATPアーゼは、ATPを加水分解することによって形質膜を越えてNa+およびK+を輸送する偏在性膜貫通酵素である。それは、ポンピングサイクル中にE1とE2の立体配座状態の間を遷移するP型ATPアーゼのファミリーに属する。その機能性酵素は、主に、αおよびβサブユニットから構成されている。αサブユニットは、それが、ヌクレオチドおよび陽イオン双方の結合部位を含有するので、ホロ酵素の触媒成分である。興味深いことに、過去数年間の研究は、シグナル伝達などの、Na/K−ATPアーゼの多くの非ポンピング機能を発見した。具体的には、シグナリングNa/K−ATPアーゼは、カベオラ中に存在し、そしてSrc、IP3受容体およびカベオリン−1などの多数のシグナリングタンパク質と相互作用する。Na/K−ATPアーゼとIP3受容体との間の相互作用は、Ca2+シグナリングを促進するが、Na/K−ATPアーゼとSrcとの間の動的会合は、細胞内Src活性を調節し、そして強心ステロイドがプロテインキナーゼカスケードを刺激することを可能にする。
【0005】
[0005]強心ステロイド(CTS)には、ジゴキシンおよびウアバインなどの植物由来ジギタリス薬;およびブファリン(bufalin)およびマリノブファゲニン(marinobufagenin)(MBG)などの脊椎動物由来アグリコンが含まれる。
【0006】
[0006]CTSは、それらの発見以来、薬物としてだけ考えられてきたが、最近の研究は、ウアバインおよびMBG双方を、アンギオテンシンIIおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を含めた多様な刺激物質によってその生産および分泌が調節される内因性ステロイドとして識別した。識別され且つ特性決定された循環性CTSの内、ウアバインは、依然として最も研究されている。更に、CTSの濃度は、高食塩負荷、慢性腎不全(CRF)およびうっ血性心不全(CHF)の臨床状態の下で顕著に増加した。臨床的に、ジギタリス薬は、それらが、心臓への十分に証明された変力作用を有するので、うっ血性心不全を処置するのに用いることができる。
【0007】
[0007]臨床的に、これらステロイドは、それらが、心臓への十分に証明された変力作用を有するので、うっ血性心不全を処置するのに用いることができる。Na/K−ATPアーゼは、これらステロイドの受容体として役立つことが知られている。Na/K−ATPアーゼへのCTSの結合は、ポンピング機能を阻害すると同時に、それは、Na/K−ATPアーゼのシグナリング機能を刺激する。例えば、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体へのウアバインの結合は、Srcキナーゼを刺激する。活性化したSrcは、順次、EGF受容体(EGFR)などの受容体チロシンキナーゼをトランス活性化し、そしてチロシンキナーゼシグナルを、セリン/トレオニンキナーゼ、リピドキナーゼおよびリパーゼの刺激へ、更には、反応性酸素種(ROS)の増加した生産へ変換する。興味深いことに、CTSによるNa/K−ATPアーゼの阻害は、これら薬物が心臓収縮機能を増加させるのに不可欠であるが、これらステロイドによるプロテインキナーゼの刺激および引き続きのROS生産の増加も、動物研究において心臓肥大および線維症を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中にそれら出願が特に援用される、2008年7月31日出願の係属出願米国出願第12/087,976号[2007年1月30日出願のPCT/US07/002365号(2007年8月9日公開WO2007/089688号)から優先権を主張、2006年1月31日出願の米国出願第60/763,783号から優先権を主張]に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼリガンド」を発見した。
【0009】
[0009]数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2009年4月23日出願の係属出願米国出願第12/446,856号[2007年10月17日出願のPCT/US07/023011号(2008年5月8日公開WO2008/054792号)から優先権を主張、2006年10月16日出願の米国出願第60/855,482号から優先権を主張]に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼ特異的ペプチド阻害剤/SrcおよびSrcファミリーキナーゼのアクチベーター」を発見した。
【0010】
[0010]更に、数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2008年10月28日出願の係属出願米国出願第61/109,386号に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼ発現を調節する方法および癌の療法としてのそれらの使用」を発見した。
【0011】
[0011]更に、数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2008年12月12日出願の係属出願米国出願第61/122,205号に開示のように、「CTSのアンタゴニストとしてのおよび癌の治療薬としてのNa+/K+−ATPアーゼ由来ペプチド」を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]広い側面において、本明細書中において、強心ステロイド(CTS)とは異なる新規なクラスの化合物であって、プロテインキナーゼを活性化することなくNa/K−ATPアーゼを阻害するこのような化合物を提供する。
【0013】
[0013]別の広い側面において、本明細書中において、Na/K−ATPアーゼのイオンポンピング機能を調節するNa/K−ATPアーゼリガンドを含む化合物のクラスを提供する。
【0014】
[0014]別の広い側面において、本明細書中において、CTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケード活性化に拮抗するNa/K−ATPアーゼリガンドを含む化合物のクラスを提供する。
【0015】
[0015]別の広い側面において、本明細書中において、Na/K−ATPアーゼリガンドを用いる一つまたはそれを超える検定を提供する。
[0016]本発明のいろいろな目的および利点は、以下の詳細な説明および好ましい態様から、添付の図面に照らして読んだ場合に、当業者に明らかになるであろう。
【0016】
[0017]特許または出願の書類は、色彩および/または一つまたはそれを超える写真で作成された一つまたはそれを超える図面を含有してよい。一つまたは複数の色彩図面および/または一つまたは複数の写真を含む本特許または特許出願公報のコピーは、必要料金の請求・支払いで、特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】[0018]図1A:ウアバイン(図1A上部)およびMB7(3,4,5,6−テトラヒドロキシキサントン)(図1A下部)の濃度曲線を示すグラフ。
【図1B】[0019]図1B:キサントン(左)およびクエルセチン(右)の化学構造。
【図2A】[0020]図2A:Na+(図2A)ATP(図2B)依存性へのMB7の作用。Na/K−ATPアーゼ活性は、「実験手順」に記載のように、Na+またはATP濃度の関数として測定した。MB7は、10μMで用いた。
【図2B】[0020]図2B:Na+(図2A)ATP(図2B)依存性へのMB7の作用。Na/K−ATPアーゼ活性は、「実験手順」に記載のように、Na+またはATP濃度の関数として測定した。MB7は、10μMで用いた。
【図3】[0021]図3:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのMB7およびウアバインの作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2μg)および精製Srcを、10μMウアバインかまたは1μMおよび10μMのMB7の存在下において15分間インキュベートし、Src活性化について「実験手順」に記載のように検定した。値は、少なくとも3回の独立した実験の平均SEである。対照と比較して**p<0.01。
【図4A】[0022]図4A:SrcおよびERKへのMB7およびウアバインの作用。A549細胞を、ウアバインまたはMB7で10分間処理し、そして細胞溶解産物(50μg/レーン)を、SDS−PAGEによって分離し、Src活性化について図3の場合のように分析した。値は、4回の別々の実験による平均±S.E.である。対照に対して*,p<0.05。
【図4B】[0023]図4B:LLC−PK1細胞を、MB7またはウアバインで10分間処理し、そしてERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キット(Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit)で、製造者の取扱説明書にしたがって免疫染色した。画像は、「実験手順」に記載のように集めた。スケールバーは、50μMである。代表的な実験による画像を示している。p−ERKの定量的データは、3回の独立した実験における40の異なった視野から集め、平均±S.E.として表した。対照に対して*,p<0.05。
【図5A】[0024]図5A:Na/K−ATPアーゼポンピングサイクルの Albers-Post スキーム
【図5B】[0025]図5B:Na/K−ATPアーゼ/Src相互作用のモデル化。Na/K−ATPアーゼのAドメイン(N末端およびCD)を青色に、Pドメインを緑色に、Nドメインを黒色に標識した。SrcのSH2ドメインを橙色に、キナーゼドメインを淡青色に標識した。
【図6A】[0026]図6A:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src活性へのNa+およびK+濃度変化の作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2ug)を、指定のイオン濃度を有する Tris/HCl(pH7.4)緩衝液中に再懸濁させ、精製c−Srcと一緒に15分間インキュベートした。次に、3mM Mg2+/ATPを、反応混合物に加え、更に10分間インキュベートした。試料を、ウェスタンブロットで分析した。値は、4回の別々の実験の平均±SEである。
【図6B】[0027]図6B:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src活性へのK+の作用。検定は、図6Aの場合のように、15mM NaClおよび指定の異なった濃度のKClの存在下で行った。3回の別々の実験の代表的なウェスタンブロットを示している。
【図7A】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7A:低親和性および高親和性双方の二相阻害。
【図7B】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7B〜7C:MB5はMB7よりも効力があることが注目される、MB5(図7B)およびMB7(図7C)による高親和性阻害の用量反応。
【図7C】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7B〜7C:MB5はMB7よりも効力があることが注目される、MB5(図7B)およびMB7(図7C)による高親和性阻害の用量反応。
【図8】[0029]図8:精製Na/K−ATPアーゼに結合するウアバインへのMB5の作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2μg)を、20nM3Hウアバインと一緒に、異なった濃度のMB5の存在下においてインキュベートした。
【図9A】[0030]図9A:ERKへのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)に10分間暴露後、活性なERKについて「実験手順」に記載のように検定した。代表的な組の画像を示している。同じ実験を3回繰り返した。
【図9B】[0031]図9B:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、1nMウアバインに10分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9C】[0032]図9C:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、100nMウアバインに10分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9D】[0033]図9D:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、1nMウアバインに1時間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9E】[0034]図9E:刺激物質で誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、上皮増殖因子(EGF)またはドーパミン刺激物質に10分間かまたは3分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0035]本開示を通して、いろいろな公報、特許および公開特許明細書を、確認引用によって論及している。これら公報、特許および公開特許明細書の開示は、本発明が関する当該技術分野の状態をより十分に記載するために、本開示に援用される。
【0019】
[0036]本発明は、少なくとも一部分は、Na/K−ATPアーゼで媒介されるSrc調節の新規な分子機構についての本発明者の発見と、(i)Na/K−ATPアーゼへのNa+およびATP双方の親和性を減少させる、および(ii)ウアバインで誘発されるキナーゼカスケード活性化を無効にしうるアンタゴニストとして作用するヒドロキシルキサントン誘導体の識別とに基づく。
【0020】
[0037]本発明を、次の実施例において更に定義するが、ここにおいて、部および百分率は全て、重量により、そして度は、特に断らない限り、摂氏である。これら実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、単に例示するものとして与えられているということは理解されるべきである。上の考察およびこれら実施例により、当業者は、本発明の本質的な特徴を確かめることができるし、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、いろいろな使用および条件に適合するように、本発明のいろいろな変更および修飾を行うことができる。本明細書中に論及される特許および非特許文献を含めた公報は全て、特に援用される。次の実施例は、本発明の特定の好ましい態様を詳しく説明するためのものであり、明記されない限り、請求の範囲に定義の発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0021】
[0038]実施例I
[0039]材料:ATPおよびウアバインは、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。Biomol Green は、BIOMOL(Plymouth Meeting, PA)から購入した。ERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キットは、Cayman Chemical Company(Ann Arbor, MI)から購入した。精製リコンビナントSrcは、Upstate Biotechnology(Lake Placid, NY)から入手した。多クローン性抗Tyr(P)418−Srcは、Invitrogen(Camarillo, CA)から入手した。抗c−Src(B−12)単クローン性抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz, CA)製であった。一般的な化学物質は、入手可能な最高純度のものであった。新鮮ブタ腎臓は、近くの畜殺場から購入し、そして酵素製造に用いるまで−80℃で貯蔵した。
【0022】
[0040]高処理スクリーニング検定:本研究でスクリーニングに用いた化学物質ライブラリーは、2600種類の構造的に異なる、薬物様の天然に存在する有機化合物またはそれらの半合成誘導体を含有した。原料化合物は、96ウェルプレート中においてDMSO中に10mg/mlで調製した。
【0023】
[0041]精製Na/K−ATPアーゼを、ブタ腎臓から製造した。いろいろな腎臓標品のNa/K−ATPアーゼの比活性は、900〜1,200μmol/mg/時の範囲内であり、全ATPアーゼ活性の95%より大であった。高処理スクリーニングは、96ウェルフォーマットにおいて、次の成分:100mM NaCl、20mM KCl、1mM MgCl2、1mM EGTA、20mM Tris−HCl(pH7.4)および0.2μgの精製Na/K−ATPアーゼを含有する100μlの最終反応容量で行う。化合物を加えた後、混合物を37℃で15分間インキュベートし、そして反応を、2mM ATP.Mg混合物を加えることによって開始した。
【0024】
[0042]反応を、15分間行った後、100μlの氷冷トリクロロ酢酸の添加によって止めた。反応混合物を、遠心分離によって透明にし、そして放出されたホスフェートについて、BIOMOL GREENTM試薬を製造者の取扱説明書にしたがって用いて検定した。更に、対照Na/K−ATPアーゼ活性を、1mMウアバインの存在下および不存在下で測定し、100%とした。更に、5μMウアバインおよび0.1%のDMSOを、各々のプレート中に、それぞれ、陽性対照およびビヒクル対照として包含した。対照実験は、Na/K−ATPアーゼによって触媒されたATP加水分解が、上の実験条件下の30分のインキュベーション中に直線範囲内であったということを示した。
【0025】
[0043]細胞培養:ブタ腎臓上皮細胞(LLC−PK1細胞)およびヒト肺癌細胞(A549細胞)を、ATCCから入手し、そしてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、10%FBS、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンの存在下において、5%CO2給湿インキュベーター中で維持した。血清中の増殖因子の混同作用を排除するために、特に断らない限り、細胞を24時間血清欠乏状態とした後、実験を行った。
【0026】
[0044]ウェスタンブロット分析:細胞を、PBSで洗浄し、そして前に記載のように(13)、1% Nonidet P−40、1%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)を含有する氷冷RIPA緩衝液中に溶解させた。次に、細胞溶解産物を、14,000rpmでの遠心分離によって透明にし、上澄みを、タンパク質検定用に用い、ウェスタンブロット分析を行った。試料を、SDS−PAGE(50μg/レーン)で分離し、セルロースメンブランへ移した。メンブランは、全SrcおよびERKについて、TBST(Tris−HCl 10mM、NaCl 150mM、Tween 20、0.1%;pH8.0)中の3%脱脂粉乳で、またはリン酸化SrcおよびERKについて、1%BSA+1%脱脂粉乳で、室温において1時間ブロック後、特異的抗体でプローブした。タンパク質シグナルは、ECLキットを用いて検出し、Bio-Rad GS−670イメージングデンシトメーターを用いて定量した。
【0027】
[0045]受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化についての検定:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性を検定した。簡単にいうと、精製Src(4.5U)を、2μgの精製Na/K−ATPアーゼと一緒に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中において37℃で30分間インキュベートした。その後、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を、ウアバインまたはMB7に10分間暴露した。反応は、2mM ATP/Mg2+の添加によって開始し、37℃で5分間続け、そしてSDS試料緩衝液の添加によって止めた。Srcの活性化は、ウェスタンブロットにより、抗pY418抗体を用いて測定した。全Srcを、負荷対照について更にプローブした。
【0028】
[0046]共焦点画像化および免疫細胞化学:カバーガラス上で増殖したLLC−PK1細胞を、24時間血清欠乏状態にし、そしてMB7またはウアバインで異なった時間処理した。p−ERKの免疫染色は、商業的に入手可能なERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit を製造者の取扱説明書にしたがって用いて行った。シグナルは、Leica 共焦点顕微鏡によって検出した。Leica 共焦点ソフトウェアを、データ分析に用いた。
【0029】
[0047]データ分析:データは、平均±S.E.として与えている。統計的分析は、スチューデントt検定を用いて行い、有意性をp<0.05で認めた。
[0048]実施例Iの結果
[0049]Na/K−ATPアーゼ阻害剤の高処理スクリーニング:Na/K−ATPアーゼ阻害剤について化学物質ライブラリーをスクリーニングするために、本発明者は、96ウェルフォーマット検定を開発した。
【0030】
[0050]図1Aに示されるように、陽性対照としてのウアバインは、Na/K−ATPアーゼの用量依存性阻害を生じた。もう一方において、ビヒクルであるDMSOは、反応容量の1%未満の濃度で用いた場合、Na/K−ATPアーゼ活性への作用を示さなかった(データは示されていない)。ウアバインの見掛けIC50は、報告されたものに匹敵する約5μMであった。同検定を用いて、全2600種類の化合物を10μg/mlの最終濃度で調べた。この濃度は、大部分の化合物が、約200の分子質量を有し、したがって、ウアバインのIC50の10倍である約50μMで調べられているという理由で適応した。各々の96ウェルプレートにおいて、ウアバイン(5μM)を陽性対照として用い、0.1%DMSOを陰性対照として用いた。検定は、二重反復試験で行い、そしてNa/K−ATPアーゼの少なくとも25%阻害を生じた化合物を、正ヒットとして識別した。これら実験条件下において、本発明者は、数種類の周知のNa/K−ATPアーゼ阻害剤(ミリセチン、オリゴマイシン、レシブホゲニン(resibufogenin)およびシノブファジン(cinobufagin))を包含する全15種類の正の化合物を発見した(下の表I)。
【0031】
【表1】
【0032】
[0051]新クラスのNa/K−ATPアーゼリガンドとしてのヒドロキシキサントンの識別:15種類の正ヒットの内の多くは、6種類のヒドロキシルキサントン誘導体(MB1〜MB7)を含めたポリフェノール性化合物である(表I)。構造的に、それらは、クエルセチン(図1B)などの十分に特性決定されたポリフェノール性化合物に似ている。次に、本発明者は、これらヒドロキシキサントンの阻害性を決定した。MB7は、この群で最も効力のある阻害剤であったので(下の表II)、それを、次の研究に用いた。
【0033】
【表2】
【0034】
[0052]図1Aに示される実験において、MB7の用量反応曲線を、ウアバインと比較した。ウアバインのように、MB7は、Na/K−ATPアーゼの用量依存性阻害を示した。その見掛けIC50(5μM)は、ウアバインのそれに匹敵する。しかしながら、基質依存性へのMB7の作用を決定した場合、MB7は、ウアバインとは異なり、Na/K−ATPアーゼのNa+およびATP双方の親和性を減少させた(図2Aおよび図2B)。もう一方において、K+濃度の変化は、MB7で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害への作用を示さなかったが(データは示されていない)、ウアバインで誘発される阻害に拮抗した。更に、10μM MB7は、Na/K−ATPアーゼへの場合のように、Na−ATPアーゼの58±6%阻害を生じた。総合すると、そのデータは、ヒドロキシキサントンが、ウアバインの場合とは異なった機構によってNa/K−ATPアーゼを阻害するということを示している。
【0035】
[0053]構造・活性関係を決定するために、キサントン、6種類のヒドロキシキサントンおよび数種類のメチル化ヒドロキシキサントン誘導体の用量反応を比較した。表IIに示されるように、キサントンは、Na/K−ATPアーゼ活性を阻害できなかったが、フェノール性基の数の増加は、ヒドロキシキサントンの有効性および効力を増加させた(例えば、MB2とMB5とを比較、表II)。一貫して、完全または部分メチル化は、Na/K−ATPアーゼへのヒドロキシキサントンの阻害作用を減少させることができた(例えば、MB5とMB8とを比較)。更に、フェノール性基が、ピロン環中の酸素の近くに(すなわち、4位および5位に)位置した場合、それらは、これら化合物の効力へのより大きい作用を有した(例えば、MB3とMB5とを比較)。
【0036】
[0054]MB7は、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化できない:Na/K−ATPアーゼは、Srcキナーゼと相互作用して、プロテインキナーゼカスケードを活性化するウアバインについて機能性受容体複合体を形成する。
【0037】
[0055]MB7が、プロテインキナーゼを活性化することが可能なウアバインのように作用するか否か決定するために、本発明者は、最初に、Src活性へのMB7の作用を、再構成したNa/K−ATPアーゼ/Src複合体を用いて測定した。ウアバイン(10μM)を、陽性対照として用いた。図3に示されるように、Na/K−ATPアーゼは、Srcを阻害した。しかしながら、驚くべきことに、MB7ではなくウアバインの添加が、試験管中のNa/K−ATPアーゼに会合したSrcを刺激した。この発見は、現在、MB7が、Na/K−ATPアーゼの受容体機能を刺激することなく、ATPアーゼ活性を阻害しうるということを示している。
【0038】
[0056]上の結果を立証するために、培養細胞中のSrcおよびERKへのMB7の作用を測定した。再度、ウアバインを陽性対照として用いた。図4Aに示されるように、100nMウアバインは、A549細胞中においてSrcを刺激したが、10μMまでのMB7は、それができなかった。
【0039】
[0057]更に確かめるために、LLC−PK1細胞を、100nMウアバインかまたは異なった濃度のMB7で処理した。ウアバインは、LLC−PK1細胞中において、Srcを刺激し、引き続き、ERKカスケードを刺激した。ここにおいて、現在、ウアバインは、免疫染色によって検出される細胞内の活性ERK量を増加させたということが分かっている(図4B)。しかしながら、同じ実験条件下において、MB7(100nM〜10μM)は、細胞内ERK活性に影響を与えることができなかった。
【0040】
[0058]実施例Iの考察
[0059]有効な高処理スクリーニング検定を用いて、数種類の構造的に異なるクラスの化合物である15種類のNa/K−ATPアーゼ阻害剤を識別した。更に、新たに識別された阻害剤を、Na/K−ATPアーゼの基質依存性へのそれらの作用を評価することによって、ウアバインおよびオリゴマイシンなどの他の既知の阻害剤と区別した。新たに識別されたキサントン誘導体は、ウアバインとは異なり、ATPアーゼ活性を阻害するだけであるが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化することはない。
【0041】
[0060]新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤としてのキサントン誘導体:Albers-Post 反応スキームによれば、Na/K−ATPアーゼは、多様な立体配座変化によってE1〜E2状態へ遷移する。Na+は、E1状態に好都合であるが、K+は、E2状態を促進する。何年にもわたって、数種類のクラスの有機Na/K−ATPアーゼ阻害剤が識別されてきた。それらは、異なった立体配座状態で酵素を安定化させることによってNa/K−ATPアーゼを阻害する。例えば、CTSは、Na/K−ATPアーゼをE2Pで結合し且つ安定化するが、オリゴマイシンは、E1P〜E2P遷移を妨げる。
【0042】
[0061]比較すると、本発明者は、ここで、新規なリガンドMB7は、それが、Na/K−ATPアーゼのK+感受性に影響を与えることなく、Na+およびATP双方の見掛けの親和性を減少させるので、E1NaATPの形成を減少させると考えられるということを示している。興味深いことに、キサントンは、それらが双方とも、構造が同じベンゾピロンを共有することから、フラボノイドのような類似の構造を共有する(図1B)。更に、クエルセチンおよびミリセチンは、周知の効力のあるNa/K−ATPアーゼ阻害剤である。しかしながら、MB7とは異なり、それらは、Na+かまたはATPに対するNa/K−ATPアーゼの親和性を減少させない。
【0043】
[0062]ベンゾピロンへのベンゼン環の縮合は、キサントンとNa/K−ATPアーゼとの相互作用特性を完全に変化させ、それは、キサントン誘導体で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害の特異性を強調している。
【0044】
[0063]更に、表IIに示されるデータは、キサントン誘導体で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害におけるフェノール性基の重要性を示している。親化合物キサントンは、ベンゼン環に結合したフェノール性基を有していないし、そしてそれは、検出可能なNa/K−ATPアーゼ阻害を示さなかった。テトラヒドロキシキサントンは、最も効力のある阻害剤であるが、ジヒドロキシキサントンは、ATPアーゼ活性にほとんど影響を与えない。
【0045】
[0064]理論によって拘束されたくはないが、本発明者は、ここで、Na/K−ATPアーゼが、他のP型ATPアーゼと共通の多くの特徴を共有していることから、本明細書中に記載の新たに識別されたキサントン誘導体も、他のイオンポンプに影響を与えるかもしれないと考えている。本発明者は、ここで、マイトマイシンおよび4−エピテトラサイクリンなどの他の正ヒットも、別のクラスの新リガンドである可能性があると考えている。
【0046】
[0065]キサントン誘導体化合物は、既知のNa/K−ATPアーゼ阻害剤とは異なった化学構造を有するので、ここで、本発明者は、異なった機構によって作用する新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤であると考えている。
【0047】
[0066]MB7は、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化しない:Na/K−ATPアーゼは、in vitro でも in vivo でもSrcを結合する。この会合は、Srcを不活性状態で保持することによって細胞内Src活性を調節する(11)。更に、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の形成は、ウアバインがポンプに会合したSrcを刺激する機能性受容体を生じ、それが、引き続き、図4に示されるように、ERKを含めた多様な下流プロテインキナーゼカスケードを組み立て且つ活性化する。
【0048】
[0067]ウアバインとは対照的に、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのMB7の結合は、in vitro でSrcを活性化できなかった(図3)。一貫して、それは、培養細胞にMB7を加えた場合に、細胞内SrcおよびERK活性への作用を有していなかった。この発見は、MB7が、ウアバインとは異なり、Na/K−ATPアーゼからSrcキナーゼドメインを放出させることができるような方法でNa/K−ATPアーゼの立体配座を変えることはできないということを示している。MB7は、Na/K−ATPアーゼを、ウアバインの場合とは異なった方法で阻害する。
【0049】
[0068]展望:キサントンという名称は、植物、真菌および地衣類の限られた集合において通常見出される二次代謝産物の群を称する。植物由来のキサントンは、主に、ヒメハギ科(Polygalaceae)、オトギリソウ科(Guttiferae)、クワ科(Moraceae)およびリンドウ科(Gentianaceae)という科に関連していると考えられる。これら植物は、伝統的漢方薬に広く用いられてきた。例えば、ポリガラ・テヌイホリア・ウィルド(Polygala tenuifolia Willd.)またはポリガラ・シビリカ・エル(Polygala sibirica L.)の根である Yuanzhi は、いろいろな医学的状態に広範囲に用いられている。フェノール性化合物として、キサントンは、それらの抗酸化性について記載されてきた。これら性質は、それらの抗炎症作用および化学的予防作用に関連していた。キサントンの一つであるジメチルキサンテノン−4−酢酸は、現在、抗腫瘍薬として臨床試験中である。
【0050】
[0069]新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤として、キサントンは、心臓収縮機能を増加させることもありうる。このようなキサントンは、それらが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を刺激しないので、大きな価値がある。これは、内因性かまたは外因性のCTSによるNa/K−ATPアーゼで媒介されるシグナル伝達の刺激が、心臓成長を変化させ且つ心臓線維症を誘発することから、重要になっている。
【0051】
[0070]したがって、MB7およびその類似体は、現在、うっ血性心不全の臨床状態の下でしばしば認められる心臓肥大および/または線維症を引き起こすことなく、収縮機能を改善するのに特に有用であると考えられる。
【0052】
[0071]実施例II
[0072]材料:ATPおよびウアバインは、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。Biomol Green は、BIOMOL(Plymouth Meeting, PA)から購入した。ERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キットは、Cayman Chemical Company(Ann Arbor, MI)から購入した。多クローン性抗Tyr(P)418−Srcは、Invitrogen(Camarillo, CA)から入手した。抗c−Src(B−12)単クローン性抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz, CA)製であった。一般的な化学物質は、入手可能な最高純度のものであった。新鮮ブタ腎臓は、近くの畜殺場から購入し、そして酵素製造に用いるまで−80℃で貯蔵した。
【0053】
[0073]Na/K−ATPアーゼ精製および活性検定:精製Na/K−ATPアーゼを、ブタ腎臓から製造した。いろいろな腎臓標品のNa/K−ATPアーゼの比活性は、900〜1,200μmol/mg/時の範囲内であり、全ATPアーゼ活性の95%より大であった。Na/K−ATPアーゼ検定は、500μlの最終容量を有する次の反応緩衝液中で行った。100mM NaCl、20mM KCl、1mM MgCl2、1mM EGTA、20mM Tris−HCl(pH7.4)および1μgの精製Na/K−ATPアーゼ。化合物を加えた後、混合物を37℃で15分間インキュベートし、そして反応を、2mM ATP.Mg混合物を加えることによって開始した。反応を、15分間行った後、300μlの氷冷トリクロロ酢酸の添加によって止めた。反応混合物を、遠心分離によって透明にし、そして放出されたホスフェートについて、BIOMOL GREENTM試薬を製造者の取扱説明書にしたがって用いて検定した。対照実験は、Na/K−ATPアーゼによって触媒されたATP加水分解が、上の実験条件下の30分のインキュベーション中に直線範囲内であったということを示した。
【0054】
[0074]細胞培養:ブタ腎臓上皮細胞(LLC−PK1細胞)およびヒト肺癌細胞(A549細胞)を、ATCCから入手し、そしてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、10%FBS、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンの存在下において、5%CO2給湿インキュベーター中で維持した。血清中の増殖因子の混同作用を排除するために、特に断らない限り、細胞を24時間血清欠乏状態とした後、実験を行った。
【0055】
[0075]Src活性検定およびウェスタンブロット分析:Src活性へのNa/K−ATPアーゼおよびそのリガンドの作用を、ウェスタンブロット法Src pY418リン酸化によって測定するプロトコルを続けた。ウェスタン分析用の細胞溶解産物を調製するために、細胞を、PBSで洗浄し、そして1% Nonidet P−40、1%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)を含有する氷冷RIPA緩衝液中に溶解させた。次に、細胞溶解産物を、14,000rpmでの遠心分離によって透明にし、上澄みを、タンパク質検定用に用い、ウェスタンブロット分析を行った。試料を、SDS−PAGE(50μg/レーン)で分離し、セルロースメンブランへ移した。メンブランは、全SrcおよびERKについて、TBST(Tris−HCl 10mM、NaCl 150mM、Tween 20、0.1%;pH8.0)中の3%脱脂粉乳で、またはリン酸化SrcおよびERKについて、1%BSA+1%脱脂粉乳で、室温において1時間ブロック後、特異的抗体でプローブした。タンパク質シグナルは、ECLキットを用いて検出し、Bio-Rad GS−670イメージングデンシトメーターを用いて定量した。
【0056】
[0076]共焦点画像化および免疫細胞化学:カバーガラス上で増殖したLLC−PK1細胞を、24時間血清欠乏状態にし、そしてMB5またはウアバインで異なった時間処理した。p−ERKの免疫染色は、商業的に入手可能なERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit を製造者の取扱説明書にしたがって用いて行った。シグナルは、Leica 共焦点顕微鏡によって検出した。Leica 共焦点ソフトウェアを、データ分析に用いた。
【0057】
[0077]データ分析:データは、平均±S.E.として与えている。統計的分析は、スチューデントt検定を用いて行い、有意性をp<0.05で認めた。
[0078]実施例IIの結果
[0079]Na/K−ATPアーゼは、立体配座依存性方式でSrcを調節する:大多数のNa/K−ATPアーゼは、生細胞中においてSrcキナーゼと直接的に相互作用する。その相互作用は、少なくとも2対のタンパク質ドメインを必要とする。具体的には、μ1サブユニットの第二サイトゾルドメインは、SrcSH2と相互作用し、そしてヌクレオチド結合(N)ドメインは、Srcキナーゼドメインと会合する。ポンピングサイクル中に、Na/K−ATPアーゼは、E1〜E2立体配座遷移を行い(図5A)、そこで、Nドメインは閉じ、そしてAドメインは、回転してNドメイン上に連結する(図5B)。
【0058】
[0080]構造モデル化は、AドメインとNドメインの場所およびその間の空間が、E1状態でのみ、μ1サブユニットがSH2およびキナーゼ双方のドメインに同時に結合するのに適しているということを示している(図5B)。したがって、本発明者は、ここで、E1 Na/K−ATPアーゼは、Srcを阻害するが、Na/K−ATPアーゼに会合したSrcは、その酵素がE2立体配座である時に活性であるべきであると考えている。
【0059】
[0081]実際上、大多数のNa/K−ATPアーゼが、Na+不含で且つ5mM K+の緩衝液(47)中で酵素をインキュベートすることによってE2立体配座で安定化している場合に、Na/K−ATPアーゼに会合したSrcは、十分に活性になる(図6A)。一貫して、この反応緩衝液への150mM Na+の添加は、E2 Na/K−ATPアーゼを不安定にし、それが、Srcの失活を引き起こした(図6A)。更に、5mM〜0へのK+の減少は、緩やかなSrc活性化を引き起こした(図6B)。これら結果は、Na/K−ATPアーゼとSrcとの間の相互作用が、Na/K−ATPアーゼの立体配座状態の変化によって調節しうるということを示している。更に、Na/K−ATPアーゼのE1〜E2立体配座遷移の阻害は、ウアバインで誘発されるSrc活性化に拮抗するのに用いることができる。
【0060】
[0082]キサントン誘導体は、効力のあるNa/K−ATPアーゼ阻害剤であり、ウアバインがNa/K−ATPアーゼに結合するのを妨げる:Na/K−ATPアーゼをE1立体配座で安定化する新Na/K−ATPアーゼリガンドのクラスとしての新キサントン誘導体は、実施例Iに記載している。
【0061】
[0083]図1および図7A〜Cに示されるように、ヒドロキシキサントンは、Na/K−ATPアーゼ活性の二相阻害を示した。MB5による高親和性阻害は、nM下濃度で起こって(40pMのIC50)、ATPアーゼ活性の約25%阻害を生じるが、低親和性結合は、約50μMで100%阻害を生じる。MB5は、高親和性部位においてMB7より効力があるが、それは、低親和性部位ではより少ない効力を有するということに注目することは興味深い。ウアバインは、E2 Na/K−ATPアーゼを結合することを選択するので、MB5によるE1状態でのNa/K−ATPアーゼの安定化は、ウアバイン結合に拮抗するのに用いることができる。実際上、図8に示されるように、MB5は、精製Na/K−ATPアーゼへのウアバイン結合の用量依存性阻害を生じた。有意の阻害は、0.1nMで検出し、そしてNa/K−ATPアーゼを10μM MB5に暴露した場合に、30%の最大阻害に達した。
【0062】
[0084]MB5は、ウアバインで誘発されるプロテインキナーゼ活性化に拮抗するが、EGFおよびドーパミンで誘発されるプロテインキナーゼ活性化には拮抗しない:ウアバインは、LLC−PK1細胞中においてSrc依存性経路によってプロテインキナーゼカスケードを刺激する。MB5が、ウアバインで誘発されるシグナル伝達に拮抗しうるか否かを決定するために、処理済みLLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5で15分間前処理後、ウアバインまたは他の刺激物質に暴露した。
【0063】
[0085]図9A〜9Dに示されるように、ウアバイン(1nMおよび100nM)は、ERKを時間・濃度依存性方式で刺激したが、1nMでのMB5は、ウアバインで誘発されるERK活性化を有意に減少させることができた。更に、MB5を10μMで用いた場合、それは、LLC−PK1細胞中においてERKへのウアバインの作用を完全にブロックした。
【0064】
[0086]対照的に、同じ実験を、EGFかまたはドーパミンの存在下で行った場合、MB5は、これら二つの刺激物質で誘発されるERK活性化に影響を与えることができなかった(図9E)。
【0065】
[0086]総合すると、これらデータは、MB5が、プロテインキナーゼカスケードの活性化に対する特異的ウアバインアンタゴニストとして機能しうるということを示している。
[0088]実施例IIの考察
[0089]受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体は、Na/K−ATPアーゼがE2立体配座で安定化している場合に活性化することができるが、E1 Na/K−ATPアーゼは、Srcを不活性状態で保持する。
【0066】
[0090]本明細書中に記載しているのは、Na/K−ATPアーゼのポンピングおよびシグナリング双方の機能を調節しうる化学物質について有効な高処理スクリーニング検定である。
【0067】
[0091]高処理検定(実施例Iに記載の)は、Na/K−ATPアーゼの阻害によって反映されるように、E1/E2立体配座遷移に影響を与える化学物質/組成物を識別するのに有用である。次に、識別された化学物質/組成物を、次のようなNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体のアゴニストとしてかまたはアンタゴニストとして調べることができる。アゴニストとしては、このような化学物質/組成物は、ウアバインのように機能すると考えられ、Na/K−ATPアーゼへのそれらの阻害作用は、K+濃度を増加させることによって拮抗しうると考えられる。もう一方において、アンタゴニストとしてのそれらは、MB5のように作用すると考えられ、Na/K−ATPアーゼへのウアバイン結合を妨げる。更に、Na/K−ATPアーゼへのそれらの阻害作用は、Na+濃度を増加させることによって減少しうると考えられる。
【0068】
[0092]更に、本明細書中に記載しているのは、ウアバインがNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体を活性化させるのを妨げる新規な且つ効力のあるウアバインアンタゴニストのクラスの識別である。続いて、それらウアバインアンタゴニストは、更に、ウアバインで誘発されるERK活性化を無効にした。
【0069】
[0093]これら結果は、少なくとも次の考察について有意である。(1)Na/K−ATPアーゼ複合体および/またはNa/K−ATPアーゼ/Src複合体は、新しいアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするのに有用である;(2)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、例えば、心臓血管および腎臓のリモデリング、更には、心臓および腎臓の線維症を包含する、内因性CTS上昇で誘発される病理学的変化に拮抗する薬剤として有用である;(3)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、それらが、収縮機能を改善しうるのみならず、心筋層における構造的リモデリングを妨げることもありうるので、うっ血性心不全を処置する薬剤として有用である;(4)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、Na/K−ATPアーゼシグナリングが、前立腺癌および他の癌の細胞増殖に重要であるので、これら癌を処置する薬剤として有用である;および(5)キサントン誘導体は、現在利用可能な組成物よりも効力があり、毒性が少なく、そしてより良い薬物動態学的性質を有するであろう受容体Na/K−ATPアーゼアンタゴニストの新しい生成に有用である。
【0070】
[0094]本発明を、いろいろな且つ好ましい態様に関して記載してきたが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、いろいろな変更を行うことができるし、しかもそれらの要素に均等物を置き換えることができるということは、当業者に理解されるはずである。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、発明の内容に特定の状況または材料を適応させるように多くの修飾を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するのに考えられた本明細書中に開示の具体的な態様に制限されるものではなく、本発明は、請求の範囲の範囲内にある全ての態様を包含するであろうということである。
【技術分野】
【0001】
発明者:ジ・ジャン・ジー(Zi-Jian Xie),シュイ・シ(Shuyi Si),ツォンビン・ツァン(Zhongbing Zhang),ヨゼフ・I・シャピロ(Joseph I. Shapiro)
関連出願のクロス・リファレンス
[0001]本出願は、本明細書中にその開示が援用される、2009年9月16日出願の米国仮出願第61/243,036号の恩典を請求する。
【0002】
連邦政府後援による研究に関する供述
[0002]本発明は、政府援助で行われており、政府が、国立衛生研究所(National Institutes of Health)(NIH)GM78565、HL366573および2007DFA31370の下で、本発明の権利を有する。
【0003】
[0003]本発明は、Na/K−ATPアーゼリガンドおよびそれらの使用に関する。本発明は、更に、Na/K−ATPアーゼのアゴニストおよび/またはアンタゴニスト活性について物質をスクリーニングする方法およびキット、および本明細書中に記載のスクリーニング方法によって識別された物質で疾患または障害を処置するまたは予防する方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0004】
[0004]ナトリウムポンプとしても知られるNa/K−ATPアーゼは、ATPを加水分解することによって形質膜を越えてNa+およびK+を輸送する偏在性膜貫通酵素である。それは、ポンピングサイクル中にE1とE2の立体配座状態の間を遷移するP型ATPアーゼのファミリーに属する。その機能性酵素は、主に、αおよびβサブユニットから構成されている。αサブユニットは、それが、ヌクレオチドおよび陽イオン双方の結合部位を含有するので、ホロ酵素の触媒成分である。興味深いことに、過去数年間の研究は、シグナル伝達などの、Na/K−ATPアーゼの多くの非ポンピング機能を発見した。具体的には、シグナリングNa/K−ATPアーゼは、カベオラ中に存在し、そしてSrc、IP3受容体およびカベオリン−1などの多数のシグナリングタンパク質と相互作用する。Na/K−ATPアーゼとIP3受容体との間の相互作用は、Ca2+シグナリングを促進するが、Na/K−ATPアーゼとSrcとの間の動的会合は、細胞内Src活性を調節し、そして強心ステロイドがプロテインキナーゼカスケードを刺激することを可能にする。
【0005】
[0005]強心ステロイド(CTS)には、ジゴキシンおよびウアバインなどの植物由来ジギタリス薬;およびブファリン(bufalin)およびマリノブファゲニン(marinobufagenin)(MBG)などの脊椎動物由来アグリコンが含まれる。
【0006】
[0006]CTSは、それらの発見以来、薬物としてだけ考えられてきたが、最近の研究は、ウアバインおよびMBG双方を、アンギオテンシンIIおよび副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を含めた多様な刺激物質によってその生産および分泌が調節される内因性ステロイドとして識別した。識別され且つ特性決定された循環性CTSの内、ウアバインは、依然として最も研究されている。更に、CTSの濃度は、高食塩負荷、慢性腎不全(CRF)およびうっ血性心不全(CHF)の臨床状態の下で顕著に増加した。臨床的に、ジギタリス薬は、それらが、心臓への十分に証明された変力作用を有するので、うっ血性心不全を処置するのに用いることができる。
【0007】
[0007]臨床的に、これらステロイドは、それらが、心臓への十分に証明された変力作用を有するので、うっ血性心不全を処置するのに用いることができる。Na/K−ATPアーゼは、これらステロイドの受容体として役立つことが知られている。Na/K−ATPアーゼへのCTSの結合は、ポンピング機能を阻害すると同時に、それは、Na/K−ATPアーゼのシグナリング機能を刺激する。例えば、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体へのウアバインの結合は、Srcキナーゼを刺激する。活性化したSrcは、順次、EGF受容体(EGFR)などの受容体チロシンキナーゼをトランス活性化し、そしてチロシンキナーゼシグナルを、セリン/トレオニンキナーゼ、リピドキナーゼおよびリパーゼの刺激へ、更には、反応性酸素種(ROS)の増加した生産へ変換する。興味深いことに、CTSによるNa/K−ATPアーゼの阻害は、これら薬物が心臓収縮機能を増加させるのに不可欠であるが、これらステロイドによるプロテインキナーゼの刺激および引き続きのROS生産の増加も、動物研究において心臓肥大および線維症を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008]数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中にそれら出願が特に援用される、2008年7月31日出願の係属出願米国出願第12/087,976号[2007年1月30日出願のPCT/US07/002365号(2007年8月9日公開WO2007/089688号)から優先権を主張、2006年1月31日出願の米国出願第60/763,783号から優先権を主張]に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼリガンド」を発見した。
【0009】
[0009]数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2009年4月23日出願の係属出願米国出願第12/446,856号[2007年10月17日出願のPCT/US07/023011号(2008年5月8日公開WO2008/054792号)から優先権を主張、2006年10月16日出願の米国出願第60/855,482号から優先権を主張]に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼ特異的ペプチド阻害剤/SrcおよびSrcファミリーキナーゼのアクチベーター」を発見した。
【0010】
[0010]更に、数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2008年10月28日出願の係属出願米国出願第61/109,386号に開示のように、「Na+/K+−ATPアーゼ発現を調節する方法および癌の療法としてのそれらの使用」を発見した。
【0011】
[0011]更に、数名の共同発明者は、ここにおいて、本明細書中に特に援用される、2008年12月12日出願の係属出願米国出願第61/122,205号に開示のように、「CTSのアンタゴニストとしてのおよび癌の治療薬としてのNa+/K+−ATPアーゼ由来ペプチド」を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]広い側面において、本明細書中において、強心ステロイド(CTS)とは異なる新規なクラスの化合物であって、プロテインキナーゼを活性化することなくNa/K−ATPアーゼを阻害するこのような化合物を提供する。
【0013】
[0013]別の広い側面において、本明細書中において、Na/K−ATPアーゼのイオンポンピング機能を調節するNa/K−ATPアーゼリガンドを含む化合物のクラスを提供する。
【0014】
[0014]別の広い側面において、本明細書中において、CTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケード活性化に拮抗するNa/K−ATPアーゼリガンドを含む化合物のクラスを提供する。
【0015】
[0015]別の広い側面において、本明細書中において、Na/K−ATPアーゼリガンドを用いる一つまたはそれを超える検定を提供する。
[0016]本発明のいろいろな目的および利点は、以下の詳細な説明および好ましい態様から、添付の図面に照らして読んだ場合に、当業者に明らかになるであろう。
【0016】
[0017]特許または出願の書類は、色彩および/または一つまたはそれを超える写真で作成された一つまたはそれを超える図面を含有してよい。一つまたは複数の色彩図面および/または一つまたは複数の写真を含む本特許または特許出願公報のコピーは、必要料金の請求・支払いで、特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1A】[0018]図1A:ウアバイン(図1A上部)およびMB7(3,4,5,6−テトラヒドロキシキサントン)(図1A下部)の濃度曲線を示すグラフ。
【図1B】[0019]図1B:キサントン(左)およびクエルセチン(右)の化学構造。
【図2A】[0020]図2A:Na+(図2A)ATP(図2B)依存性へのMB7の作用。Na/K−ATPアーゼ活性は、「実験手順」に記載のように、Na+またはATP濃度の関数として測定した。MB7は、10μMで用いた。
【図2B】[0020]図2B:Na+(図2A)ATP(図2B)依存性へのMB7の作用。Na/K−ATPアーゼ活性は、「実験手順」に記載のように、Na+またはATP濃度の関数として測定した。MB7は、10μMで用いた。
【図3】[0021]図3:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのMB7およびウアバインの作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2μg)および精製Srcを、10μMウアバインかまたは1μMおよび10μMのMB7の存在下において15分間インキュベートし、Src活性化について「実験手順」に記載のように検定した。値は、少なくとも3回の独立した実験の平均SEである。対照と比較して**p<0.01。
【図4A】[0022]図4A:SrcおよびERKへのMB7およびウアバインの作用。A549細胞を、ウアバインまたはMB7で10分間処理し、そして細胞溶解産物(50μg/レーン)を、SDS−PAGEによって分離し、Src活性化について図3の場合のように分析した。値は、4回の別々の実験による平均±S.E.である。対照に対して*,p<0.05。
【図4B】[0023]図4B:LLC−PK1細胞を、MB7またはウアバインで10分間処理し、そしてERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キット(Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit)で、製造者の取扱説明書にしたがって免疫染色した。画像は、「実験手順」に記載のように集めた。スケールバーは、50μMである。代表的な実験による画像を示している。p−ERKの定量的データは、3回の独立した実験における40の異なった視野から集め、平均±S.E.として表した。対照に対して*,p<0.05。
【図5A】[0024]図5A:Na/K−ATPアーゼポンピングサイクルの Albers-Post スキーム
【図5B】[0025]図5B:Na/K−ATPアーゼ/Src相互作用のモデル化。Na/K−ATPアーゼのAドメイン(N末端およびCD)を青色に、Pドメインを緑色に、Nドメインを黒色に標識した。SrcのSH2ドメインを橙色に、キナーゼドメインを淡青色に標識した。
【図6A】[0026]図6A:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src活性へのNa+およびK+濃度変化の作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2ug)を、指定のイオン濃度を有する Tris/HCl(pH7.4)緩衝液中に再懸濁させ、精製c−Srcと一緒に15分間インキュベートした。次に、3mM Mg2+/ATPを、反応混合物に加え、更に10分間インキュベートした。試料を、ウェスタンブロットで分析した。値は、4回の別々の実験の平均±SEである。
【図6B】[0027]図6B:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src活性へのK+の作用。検定は、図6Aの場合のように、15mM NaClおよび指定の異なった濃度のKClの存在下で行った。3回の別々の実験の代表的なウェスタンブロットを示している。
【図7A】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7A:低親和性および高親和性双方の二相阻害。
【図7B】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7B〜7C:MB5はMB7よりも効力があることが注目される、MB5(図7B)およびMB7(図7C)による高親和性阻害の用量反応。
【図7C】[0028]図7A〜7C:MB5によるNa/K−ATPアーゼの用量依存性阻害。図7B〜7C:MB5はMB7よりも効力があることが注目される、MB5(図7B)およびMB7(図7C)による高親和性阻害の用量反応。
【図8】[0029]図8:精製Na/K−ATPアーゼに結合するウアバインへのMB5の作用。精製Na/K−ATPアーゼ(2μg)を、20nM3Hウアバインと一緒に、異なった濃度のMB5の存在下においてインキュベートした。
【図9A】[0030]図9A:ERKへのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)に10分間暴露後、活性なERKについて「実験手順」に記載のように検定した。代表的な組の画像を示している。同じ実験を3回繰り返した。
【図9B】[0031]図9B:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、1nMウアバインに10分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9C】[0032]図9C:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、100nMウアバインに10分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9D】[0033]図9D:ウアバインで誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、1nMウアバインに1時間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【図9E】[0034]図9E:刺激物質で誘発されるERK活性化へのMB5の作用。LLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5(1nM、10μM)で15分間前処理し、上皮増殖因子(EGF)またはドーパミン刺激物質に10分間かまたは3分間暴露し、そして活性なERKについて図9Aの場合のように検定した。代表的な組の画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0035]本開示を通して、いろいろな公報、特許および公開特許明細書を、確認引用によって論及している。これら公報、特許および公開特許明細書の開示は、本発明が関する当該技術分野の状態をより十分に記載するために、本開示に援用される。
【0019】
[0036]本発明は、少なくとも一部分は、Na/K−ATPアーゼで媒介されるSrc調節の新規な分子機構についての本発明者の発見と、(i)Na/K−ATPアーゼへのNa+およびATP双方の親和性を減少させる、および(ii)ウアバインで誘発されるキナーゼカスケード活性化を無効にしうるアンタゴニストとして作用するヒドロキシルキサントン誘導体の識別とに基づく。
【0020】
[0037]本発明を、次の実施例において更に定義するが、ここにおいて、部および百分率は全て、重量により、そして度は、特に断らない限り、摂氏である。これら実施例は、本発明の好ましい態様を示しているが、単に例示するものとして与えられているということは理解されるべきである。上の考察およびこれら実施例により、当業者は、本発明の本質的な特徴を確かめることができるし、そしてその精神および範囲から逸脱することなく、いろいろな使用および条件に適合するように、本発明のいろいろな変更および修飾を行うことができる。本明細書中に論及される特許および非特許文献を含めた公報は全て、特に援用される。次の実施例は、本発明の特定の好ましい態様を詳しく説明するためのものであり、明記されない限り、請求の範囲に定義の発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0021】
[0038]実施例I
[0039]材料:ATPおよびウアバインは、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。Biomol Green は、BIOMOL(Plymouth Meeting, PA)から購入した。ERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キットは、Cayman Chemical Company(Ann Arbor, MI)から購入した。精製リコンビナントSrcは、Upstate Biotechnology(Lake Placid, NY)から入手した。多クローン性抗Tyr(P)418−Srcは、Invitrogen(Camarillo, CA)から入手した。抗c−Src(B−12)単クローン性抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz, CA)製であった。一般的な化学物質は、入手可能な最高純度のものであった。新鮮ブタ腎臓は、近くの畜殺場から購入し、そして酵素製造に用いるまで−80℃で貯蔵した。
【0022】
[0040]高処理スクリーニング検定:本研究でスクリーニングに用いた化学物質ライブラリーは、2600種類の構造的に異なる、薬物様の天然に存在する有機化合物またはそれらの半合成誘導体を含有した。原料化合物は、96ウェルプレート中においてDMSO中に10mg/mlで調製した。
【0023】
[0041]精製Na/K−ATPアーゼを、ブタ腎臓から製造した。いろいろな腎臓標品のNa/K−ATPアーゼの比活性は、900〜1,200μmol/mg/時の範囲内であり、全ATPアーゼ活性の95%より大であった。高処理スクリーニングは、96ウェルフォーマットにおいて、次の成分:100mM NaCl、20mM KCl、1mM MgCl2、1mM EGTA、20mM Tris−HCl(pH7.4)および0.2μgの精製Na/K−ATPアーゼを含有する100μlの最終反応容量で行う。化合物を加えた後、混合物を37℃で15分間インキュベートし、そして反応を、2mM ATP.Mg混合物を加えることによって開始した。
【0024】
[0042]反応を、15分間行った後、100μlの氷冷トリクロロ酢酸の添加によって止めた。反応混合物を、遠心分離によって透明にし、そして放出されたホスフェートについて、BIOMOL GREENTM試薬を製造者の取扱説明書にしたがって用いて検定した。更に、対照Na/K−ATPアーゼ活性を、1mMウアバインの存在下および不存在下で測定し、100%とした。更に、5μMウアバインおよび0.1%のDMSOを、各々のプレート中に、それぞれ、陽性対照およびビヒクル対照として包含した。対照実験は、Na/K−ATPアーゼによって触媒されたATP加水分解が、上の実験条件下の30分のインキュベーション中に直線範囲内であったということを示した。
【0025】
[0043]細胞培養:ブタ腎臓上皮細胞(LLC−PK1細胞)およびヒト肺癌細胞(A549細胞)を、ATCCから入手し、そしてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、10%FBS、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンの存在下において、5%CO2給湿インキュベーター中で維持した。血清中の増殖因子の混同作用を排除するために、特に断らない限り、細胞を24時間血清欠乏状態とした後、実験を行った。
【0026】
[0044]ウェスタンブロット分析:細胞を、PBSで洗浄し、そして前に記載のように(13)、1% Nonidet P−40、1%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)を含有する氷冷RIPA緩衝液中に溶解させた。次に、細胞溶解産物を、14,000rpmでの遠心分離によって透明にし、上澄みを、タンパク質検定用に用い、ウェスタンブロット分析を行った。試料を、SDS−PAGE(50μg/レーン)で分離し、セルロースメンブランへ移した。メンブランは、全SrcおよびERKについて、TBST(Tris−HCl 10mM、NaCl 150mM、Tween 20、0.1%;pH8.0)中の3%脱脂粉乳で、またはリン酸化SrcおよびERKについて、1%BSA+1%脱脂粉乳で、室温において1時間ブロック後、特異的抗体でプローブした。タンパク質シグナルは、ECLキットを用いて検出し、Bio-Rad GS−670イメージングデンシトメーターを用いて定量した。
【0027】
[0045]受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化についての検定:受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性を検定した。簡単にいうと、精製Src(4.5U)を、2μgの精製Na/K−ATPアーゼと一緒に、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中において37℃で30分間インキュベートした。その後、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を、ウアバインまたはMB7に10分間暴露した。反応は、2mM ATP/Mg2+の添加によって開始し、37℃で5分間続け、そしてSDS試料緩衝液の添加によって止めた。Srcの活性化は、ウェスタンブロットにより、抗pY418抗体を用いて測定した。全Srcを、負荷対照について更にプローブした。
【0028】
[0046]共焦点画像化および免疫細胞化学:カバーガラス上で増殖したLLC−PK1細胞を、24時間血清欠乏状態にし、そしてMB7またはウアバインで異なった時間処理した。p−ERKの免疫染色は、商業的に入手可能なERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit を製造者の取扱説明書にしたがって用いて行った。シグナルは、Leica 共焦点顕微鏡によって検出した。Leica 共焦点ソフトウェアを、データ分析に用いた。
【0029】
[0047]データ分析:データは、平均±S.E.として与えている。統計的分析は、スチューデントt検定を用いて行い、有意性をp<0.05で認めた。
[0048]実施例Iの結果
[0049]Na/K−ATPアーゼ阻害剤の高処理スクリーニング:Na/K−ATPアーゼ阻害剤について化学物質ライブラリーをスクリーニングするために、本発明者は、96ウェルフォーマット検定を開発した。
【0030】
[0050]図1Aに示されるように、陽性対照としてのウアバインは、Na/K−ATPアーゼの用量依存性阻害を生じた。もう一方において、ビヒクルであるDMSOは、反応容量の1%未満の濃度で用いた場合、Na/K−ATPアーゼ活性への作用を示さなかった(データは示されていない)。ウアバインの見掛けIC50は、報告されたものに匹敵する約5μMであった。同検定を用いて、全2600種類の化合物を10μg/mlの最終濃度で調べた。この濃度は、大部分の化合物が、約200の分子質量を有し、したがって、ウアバインのIC50の10倍である約50μMで調べられているという理由で適応した。各々の96ウェルプレートにおいて、ウアバイン(5μM)を陽性対照として用い、0.1%DMSOを陰性対照として用いた。検定は、二重反復試験で行い、そしてNa/K−ATPアーゼの少なくとも25%阻害を生じた化合物を、正ヒットとして識別した。これら実験条件下において、本発明者は、数種類の周知のNa/K−ATPアーゼ阻害剤(ミリセチン、オリゴマイシン、レシブホゲニン(resibufogenin)およびシノブファジン(cinobufagin))を包含する全15種類の正の化合物を発見した(下の表I)。
【0031】
【表1】
【0032】
[0051]新クラスのNa/K−ATPアーゼリガンドとしてのヒドロキシキサントンの識別:15種類の正ヒットの内の多くは、6種類のヒドロキシルキサントン誘導体(MB1〜MB7)を含めたポリフェノール性化合物である(表I)。構造的に、それらは、クエルセチン(図1B)などの十分に特性決定されたポリフェノール性化合物に似ている。次に、本発明者は、これらヒドロキシキサントンの阻害性を決定した。MB7は、この群で最も効力のある阻害剤であったので(下の表II)、それを、次の研究に用いた。
【0033】
【表2】
【0034】
[0052]図1Aに示される実験において、MB7の用量反応曲線を、ウアバインと比較した。ウアバインのように、MB7は、Na/K−ATPアーゼの用量依存性阻害を示した。その見掛けIC50(5μM)は、ウアバインのそれに匹敵する。しかしながら、基質依存性へのMB7の作用を決定した場合、MB7は、ウアバインとは異なり、Na/K−ATPアーゼのNa+およびATP双方の親和性を減少させた(図2Aおよび図2B)。もう一方において、K+濃度の変化は、MB7で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害への作用を示さなかったが(データは示されていない)、ウアバインで誘発される阻害に拮抗した。更に、10μM MB7は、Na/K−ATPアーゼへの場合のように、Na−ATPアーゼの58±6%阻害を生じた。総合すると、そのデータは、ヒドロキシキサントンが、ウアバインの場合とは異なった機構によってNa/K−ATPアーゼを阻害するということを示している。
【0035】
[0053]構造・活性関係を決定するために、キサントン、6種類のヒドロキシキサントンおよび数種類のメチル化ヒドロキシキサントン誘導体の用量反応を比較した。表IIに示されるように、キサントンは、Na/K−ATPアーゼ活性を阻害できなかったが、フェノール性基の数の増加は、ヒドロキシキサントンの有効性および効力を増加させた(例えば、MB2とMB5とを比較、表II)。一貫して、完全または部分メチル化は、Na/K−ATPアーゼへのヒドロキシキサントンの阻害作用を減少させることができた(例えば、MB5とMB8とを比較)。更に、フェノール性基が、ピロン環中の酸素の近くに(すなわち、4位および5位に)位置した場合、それらは、これら化合物の効力へのより大きい作用を有した(例えば、MB3とMB5とを比較)。
【0036】
[0054]MB7は、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化できない:Na/K−ATPアーゼは、Srcキナーゼと相互作用して、プロテインキナーゼカスケードを活性化するウアバインについて機能性受容体複合体を形成する。
【0037】
[0055]MB7が、プロテインキナーゼを活性化することが可能なウアバインのように作用するか否か決定するために、本発明者は、最初に、Src活性へのMB7の作用を、再構成したNa/K−ATPアーゼ/Src複合体を用いて測定した。ウアバイン(10μM)を、陽性対照として用いた。図3に示されるように、Na/K−ATPアーゼは、Srcを阻害した。しかしながら、驚くべきことに、MB7ではなくウアバインの添加が、試験管中のNa/K−ATPアーゼに会合したSrcを刺激した。この発見は、現在、MB7が、Na/K−ATPアーゼの受容体機能を刺激することなく、ATPアーゼ活性を阻害しうるということを示している。
【0038】
[0056]上の結果を立証するために、培養細胞中のSrcおよびERKへのMB7の作用を測定した。再度、ウアバインを陽性対照として用いた。図4Aに示されるように、100nMウアバインは、A549細胞中においてSrcを刺激したが、10μMまでのMB7は、それができなかった。
【0039】
[0057]更に確かめるために、LLC−PK1細胞を、100nMウアバインかまたは異なった濃度のMB7で処理した。ウアバインは、LLC−PK1細胞中において、Srcを刺激し、引き続き、ERKカスケードを刺激した。ここにおいて、現在、ウアバインは、免疫染色によって検出される細胞内の活性ERK量を増加させたということが分かっている(図4B)。しかしながら、同じ実験条件下において、MB7(100nM〜10μM)は、細胞内ERK活性に影響を与えることができなかった。
【0040】
[0058]実施例Iの考察
[0059]有効な高処理スクリーニング検定を用いて、数種類の構造的に異なるクラスの化合物である15種類のNa/K−ATPアーゼ阻害剤を識別した。更に、新たに識別された阻害剤を、Na/K−ATPアーゼの基質依存性へのそれらの作用を評価することによって、ウアバインおよびオリゴマイシンなどの他の既知の阻害剤と区別した。新たに識別されたキサントン誘導体は、ウアバインとは異なり、ATPアーゼ活性を阻害するだけであるが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化することはない。
【0041】
[0060]新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤としてのキサントン誘導体:Albers-Post 反応スキームによれば、Na/K−ATPアーゼは、多様な立体配座変化によってE1〜E2状態へ遷移する。Na+は、E1状態に好都合であるが、K+は、E2状態を促進する。何年にもわたって、数種類のクラスの有機Na/K−ATPアーゼ阻害剤が識別されてきた。それらは、異なった立体配座状態で酵素を安定化させることによってNa/K−ATPアーゼを阻害する。例えば、CTSは、Na/K−ATPアーゼをE2Pで結合し且つ安定化するが、オリゴマイシンは、E1P〜E2P遷移を妨げる。
【0042】
[0061]比較すると、本発明者は、ここで、新規なリガンドMB7は、それが、Na/K−ATPアーゼのK+感受性に影響を与えることなく、Na+およびATP双方の見掛けの親和性を減少させるので、E1NaATPの形成を減少させると考えられるということを示している。興味深いことに、キサントンは、それらが双方とも、構造が同じベンゾピロンを共有することから、フラボノイドのような類似の構造を共有する(図1B)。更に、クエルセチンおよびミリセチンは、周知の効力のあるNa/K−ATPアーゼ阻害剤である。しかしながら、MB7とは異なり、それらは、Na+かまたはATPに対するNa/K−ATPアーゼの親和性を減少させない。
【0043】
[0062]ベンゾピロンへのベンゼン環の縮合は、キサントンとNa/K−ATPアーゼとの相互作用特性を完全に変化させ、それは、キサントン誘導体で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害の特異性を強調している。
【0044】
[0063]更に、表IIに示されるデータは、キサントン誘導体で誘発されるNa/K−ATPアーゼ阻害におけるフェノール性基の重要性を示している。親化合物キサントンは、ベンゼン環に結合したフェノール性基を有していないし、そしてそれは、検出可能なNa/K−ATPアーゼ阻害を示さなかった。テトラヒドロキシキサントンは、最も効力のある阻害剤であるが、ジヒドロキシキサントンは、ATPアーゼ活性にほとんど影響を与えない。
【0045】
[0064]理論によって拘束されたくはないが、本発明者は、ここで、Na/K−ATPアーゼが、他のP型ATPアーゼと共通の多くの特徴を共有していることから、本明細書中に記載の新たに識別されたキサントン誘導体も、他のイオンポンプに影響を与えるかもしれないと考えている。本発明者は、ここで、マイトマイシンおよび4−エピテトラサイクリンなどの他の正ヒットも、別のクラスの新リガンドである可能性があると考えている。
【0046】
[0065]キサントン誘導体化合物は、既知のNa/K−ATPアーゼ阻害剤とは異なった化学構造を有するので、ここで、本発明者は、異なった機構によって作用する新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤であると考えている。
【0047】
[0066]MB7は、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化しない:Na/K−ATPアーゼは、in vitro でも in vivo でもSrcを結合する。この会合は、Srcを不活性状態で保持することによって細胞内Src活性を調節する(11)。更に、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の形成は、ウアバインがポンプに会合したSrcを刺激する機能性受容体を生じ、それが、引き続き、図4に示されるように、ERKを含めた多様な下流プロテインキナーゼカスケードを組み立て且つ活性化する。
【0048】
[0067]ウアバインとは対照的に、Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのMB7の結合は、in vitro でSrcを活性化できなかった(図3)。一貫して、それは、培養細胞にMB7を加えた場合に、細胞内SrcおよびERK活性への作用を有していなかった。この発見は、MB7が、ウアバインとは異なり、Na/K−ATPアーゼからSrcキナーゼドメインを放出させることができるような方法でNa/K−ATPアーゼの立体配座を変えることはできないということを示している。MB7は、Na/K−ATPアーゼを、ウアバインの場合とは異なった方法で阻害する。
【0049】
[0068]展望:キサントンという名称は、植物、真菌および地衣類の限られた集合において通常見出される二次代謝産物の群を称する。植物由来のキサントンは、主に、ヒメハギ科(Polygalaceae)、オトギリソウ科(Guttiferae)、クワ科(Moraceae)およびリンドウ科(Gentianaceae)という科に関連していると考えられる。これら植物は、伝統的漢方薬に広く用いられてきた。例えば、ポリガラ・テヌイホリア・ウィルド(Polygala tenuifolia Willd.)またはポリガラ・シビリカ・エル(Polygala sibirica L.)の根である Yuanzhi は、いろいろな医学的状態に広範囲に用いられている。フェノール性化合物として、キサントンは、それらの抗酸化性について記載されてきた。これら性質は、それらの抗炎症作用および化学的予防作用に関連していた。キサントンの一つであるジメチルキサンテノン−4−酢酸は、現在、抗腫瘍薬として臨床試験中である。
【0050】
[0069]新クラスのNa/K−ATPアーゼ阻害剤として、キサントンは、心臓収縮機能を増加させることもありうる。このようなキサントンは、それらが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を刺激しないので、大きな価値がある。これは、内因性かまたは外因性のCTSによるNa/K−ATPアーゼで媒介されるシグナル伝達の刺激が、心臓成長を変化させ且つ心臓線維症を誘発することから、重要になっている。
【0051】
[0070]したがって、MB7およびその類似体は、現在、うっ血性心不全の臨床状態の下でしばしば認められる心臓肥大および/または線維症を引き起こすことなく、収縮機能を改善するのに特に有用であると考えられる。
【0052】
[0071]実施例II
[0072]材料:ATPおよびウアバインは、Sigma(St. Louis, MO)から入手した。Biomol Green は、BIOMOL(Plymouth Meeting, PA)から購入した。ERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)リン酸化/トランスロケーション細胞基剤検定キットは、Cayman Chemical Company(Ann Arbor, MI)から購入した。多クローン性抗Tyr(P)418−Srcは、Invitrogen(Camarillo, CA)から入手した。抗c−Src(B−12)単クローン性抗体は、Santa Cruz Biotechnology Inc.(Santa Cruz, CA)製であった。一般的な化学物質は、入手可能な最高純度のものであった。新鮮ブタ腎臓は、近くの畜殺場から購入し、そして酵素製造に用いるまで−80℃で貯蔵した。
【0053】
[0073]Na/K−ATPアーゼ精製および活性検定:精製Na/K−ATPアーゼを、ブタ腎臓から製造した。いろいろな腎臓標品のNa/K−ATPアーゼの比活性は、900〜1,200μmol/mg/時の範囲内であり、全ATPアーゼ活性の95%より大であった。Na/K−ATPアーゼ検定は、500μlの最終容量を有する次の反応緩衝液中で行った。100mM NaCl、20mM KCl、1mM MgCl2、1mM EGTA、20mM Tris−HCl(pH7.4)および1μgの精製Na/K−ATPアーゼ。化合物を加えた後、混合物を37℃で15分間インキュベートし、そして反応を、2mM ATP.Mg混合物を加えることによって開始した。反応を、15分間行った後、300μlの氷冷トリクロロ酢酸の添加によって止めた。反応混合物を、遠心分離によって透明にし、そして放出されたホスフェートについて、BIOMOL GREENTM試薬を製造者の取扱説明書にしたがって用いて検定した。対照実験は、Na/K−ATPアーゼによって触媒されたATP加水分解が、上の実験条件下の30分のインキュベーション中に直線範囲内であったということを示した。
【0054】
[0074]細胞培養:ブタ腎臓上皮細胞(LLC−PK1細胞)およびヒト肺癌細胞(A549細胞)を、ATCCから入手し、そしてダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、10%FBS、100単位/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンの存在下において、5%CO2給湿インキュベーター中で維持した。血清中の増殖因子の混同作用を排除するために、特に断らない限り、細胞を24時間血清欠乏状態とした後、実験を行った。
【0055】
[0075]Src活性検定およびウェスタンブロット分析:Src活性へのNa/K−ATPアーゼおよびそのリガンドの作用を、ウェスタンブロット法Src pY418リン酸化によって測定するプロトコルを続けた。ウェスタン分析用の細胞溶解産物を調製するために、細胞を、PBSで洗浄し、そして1% Nonidet P−40、1%デオキシコール酸ナトリウム、150mM NaCl、1mM EDTA、1mMフェニルメチルスルホニルフルオリド、1mMオルトバナジン酸ナトリウム、1mM NaF、10μg/mlアプロチニン、10μg/mlロイペプチンおよび50mM Tris−HCl(pH7.4)を含有する氷冷RIPA緩衝液中に溶解させた。次に、細胞溶解産物を、14,000rpmでの遠心分離によって透明にし、上澄みを、タンパク質検定用に用い、ウェスタンブロット分析を行った。試料を、SDS−PAGE(50μg/レーン)で分離し、セルロースメンブランへ移した。メンブランは、全SrcおよびERKについて、TBST(Tris−HCl 10mM、NaCl 150mM、Tween 20、0.1%;pH8.0)中の3%脱脂粉乳で、またはリン酸化SrcおよびERKについて、1%BSA+1%脱脂粉乳で、室温において1時間ブロック後、特異的抗体でプローブした。タンパク質シグナルは、ECLキットを用いて検出し、Bio-Rad GS−670イメージングデンシトメーターを用いて定量した。
【0056】
[0076]共焦点画像化および免疫細胞化学:カバーガラス上で増殖したLLC−PK1細胞を、24時間血清欠乏状態にし、そしてMB5またはウアバインで異なった時間処理した。p−ERKの免疫染色は、商業的に入手可能なERK/MAPK(Phospho−Thr202/Tyr204)Phosphorylation/Translocation Cell-Based Assay Kit を製造者の取扱説明書にしたがって用いて行った。シグナルは、Leica 共焦点顕微鏡によって検出した。Leica 共焦点ソフトウェアを、データ分析に用いた。
【0057】
[0077]データ分析:データは、平均±S.E.として与えている。統計的分析は、スチューデントt検定を用いて行い、有意性をp<0.05で認めた。
[0078]実施例IIの結果
[0079]Na/K−ATPアーゼは、立体配座依存性方式でSrcを調節する:大多数のNa/K−ATPアーゼは、生細胞中においてSrcキナーゼと直接的に相互作用する。その相互作用は、少なくとも2対のタンパク質ドメインを必要とする。具体的には、μ1サブユニットの第二サイトゾルドメインは、SrcSH2と相互作用し、そしてヌクレオチド結合(N)ドメインは、Srcキナーゼドメインと会合する。ポンピングサイクル中に、Na/K−ATPアーゼは、E1〜E2立体配座遷移を行い(図5A)、そこで、Nドメインは閉じ、そしてAドメインは、回転してNドメイン上に連結する(図5B)。
【0058】
[0080]構造モデル化は、AドメインとNドメインの場所およびその間の空間が、E1状態でのみ、μ1サブユニットがSH2およびキナーゼ双方のドメインに同時に結合するのに適しているということを示している(図5B)。したがって、本発明者は、ここで、E1 Na/K−ATPアーゼは、Srcを阻害するが、Na/K−ATPアーゼに会合したSrcは、その酵素がE2立体配座である時に活性であるべきであると考えている。
【0059】
[0081]実際上、大多数のNa/K−ATPアーゼが、Na+不含で且つ5mM K+の緩衝液(47)中で酵素をインキュベートすることによってE2立体配座で安定化している場合に、Na/K−ATPアーゼに会合したSrcは、十分に活性になる(図6A)。一貫して、この反応緩衝液への150mM Na+の添加は、E2 Na/K−ATPアーゼを不安定にし、それが、Srcの失活を引き起こした(図6A)。更に、5mM〜0へのK+の減少は、緩やかなSrc活性化を引き起こした(図6B)。これら結果は、Na/K−ATPアーゼとSrcとの間の相互作用が、Na/K−ATPアーゼの立体配座状態の変化によって調節しうるということを示している。更に、Na/K−ATPアーゼのE1〜E2立体配座遷移の阻害は、ウアバインで誘発されるSrc活性化に拮抗するのに用いることができる。
【0060】
[0082]キサントン誘導体は、効力のあるNa/K−ATPアーゼ阻害剤であり、ウアバインがNa/K−ATPアーゼに結合するのを妨げる:Na/K−ATPアーゼをE1立体配座で安定化する新Na/K−ATPアーゼリガンドのクラスとしての新キサントン誘導体は、実施例Iに記載している。
【0061】
[0083]図1および図7A〜Cに示されるように、ヒドロキシキサントンは、Na/K−ATPアーゼ活性の二相阻害を示した。MB5による高親和性阻害は、nM下濃度で起こって(40pMのIC50)、ATPアーゼ活性の約25%阻害を生じるが、低親和性結合は、約50μMで100%阻害を生じる。MB5は、高親和性部位においてMB7より効力があるが、それは、低親和性部位ではより少ない効力を有するということに注目することは興味深い。ウアバインは、E2 Na/K−ATPアーゼを結合することを選択するので、MB5によるE1状態でのNa/K−ATPアーゼの安定化は、ウアバイン結合に拮抗するのに用いることができる。実際上、図8に示されるように、MB5は、精製Na/K−ATPアーゼへのウアバイン結合の用量依存性阻害を生じた。有意の阻害は、0.1nMで検出し、そしてNa/K−ATPアーゼを10μM MB5に暴露した場合に、30%の最大阻害に達した。
【0062】
[0084]MB5は、ウアバインで誘発されるプロテインキナーゼ活性化に拮抗するが、EGFおよびドーパミンで誘発されるプロテインキナーゼ活性化には拮抗しない:ウアバインは、LLC−PK1細胞中においてSrc依存性経路によってプロテインキナーゼカスケードを刺激する。MB5が、ウアバインで誘発されるシグナル伝達に拮抗しうるか否かを決定するために、処理済みLLC−PK1細胞を、異なった濃度のMB5で15分間前処理後、ウアバインまたは他の刺激物質に暴露した。
【0063】
[0085]図9A〜9Dに示されるように、ウアバイン(1nMおよび100nM)は、ERKを時間・濃度依存性方式で刺激したが、1nMでのMB5は、ウアバインで誘発されるERK活性化を有意に減少させることができた。更に、MB5を10μMで用いた場合、それは、LLC−PK1細胞中においてERKへのウアバインの作用を完全にブロックした。
【0064】
[0086]対照的に、同じ実験を、EGFかまたはドーパミンの存在下で行った場合、MB5は、これら二つの刺激物質で誘発されるERK活性化に影響を与えることができなかった(図9E)。
【0065】
[0086]総合すると、これらデータは、MB5が、プロテインキナーゼカスケードの活性化に対する特異的ウアバインアンタゴニストとして機能しうるということを示している。
[0088]実施例IIの考察
[0089]受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体は、Na/K−ATPアーゼがE2立体配座で安定化している場合に活性化することができるが、E1 Na/K−ATPアーゼは、Srcを不活性状態で保持する。
【0066】
[0090]本明細書中に記載しているのは、Na/K−ATPアーゼのポンピングおよびシグナリング双方の機能を調節しうる化学物質について有効な高処理スクリーニング検定である。
【0067】
[0091]高処理検定(実施例Iに記載の)は、Na/K−ATPアーゼの阻害によって反映されるように、E1/E2立体配座遷移に影響を与える化学物質/組成物を識別するのに有用である。次に、識別された化学物質/組成物を、次のようなNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体のアゴニストとしてかまたはアンタゴニストとして調べることができる。アゴニストとしては、このような化学物質/組成物は、ウアバインのように機能すると考えられ、Na/K−ATPアーゼへのそれらの阻害作用は、K+濃度を増加させることによって拮抗しうると考えられる。もう一方において、アンタゴニストとしてのそれらは、MB5のように作用すると考えられ、Na/K−ATPアーゼへのウアバイン結合を妨げる。更に、Na/K−ATPアーゼへのそれらの阻害作用は、Na+濃度を増加させることによって減少しうると考えられる。
【0068】
[0092]更に、本明細書中に記載しているのは、ウアバインがNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体を活性化させるのを妨げる新規な且つ効力のあるウアバインアンタゴニストのクラスの識別である。続いて、それらウアバインアンタゴニストは、更に、ウアバインで誘発されるERK活性化を無効にした。
【0069】
[0093]これら結果は、少なくとも次の考察について有意である。(1)Na/K−ATPアーゼ複合体および/またはNa/K−ATPアーゼ/Src複合体は、新しいアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするのに有用である;(2)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、例えば、心臓血管および腎臓のリモデリング、更には、心臓および腎臓の線維症を包含する、内因性CTS上昇で誘発される病理学的変化に拮抗する薬剤として有用である;(3)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、それらが、収縮機能を改善しうるのみならず、心筋層における構造的リモデリングを妨げることもありうるので、うっ血性心不全を処置する薬剤として有用である;(4)本明細書中に記載のキサントン誘導体は、Na/K−ATPアーゼシグナリングが、前立腺癌および他の癌の細胞増殖に重要であるので、これら癌を処置する薬剤として有用である;および(5)キサントン誘導体は、現在利用可能な組成物よりも効力があり、毒性が少なく、そしてより良い薬物動態学的性質を有するであろう受容体Na/K−ATPアーゼアンタゴニストの新しい生成に有用である。
【0070】
[0094]本発明を、いろいろな且つ好ましい態様に関して記載してきたが、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、いろいろな変更を行うことができるし、しかもそれらの要素に均等物を置き換えることができるということは、当業者に理解されるはずである。更に、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、発明の内容に特定の状況または材料を適応させるように多くの修飾を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するのに考えられた本明細書中に開示の具体的な態様に制限されるものではなく、本発明は、請求の範囲の範囲内にある全ての態様を包含するであろうということである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Na/K−ATPアーゼリガンドであって、構造:
【化1】
(式中、R1、R3、R4、R5およびR6の内の一つまたはそれを超えるものは、H、OH、OCH3、カルボン酸エステルまたはその類似体より選択される)
を有する少なくとも一つのヒドロキシルキサントン誘導体を含むNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項2】
プロテインキナーゼを活性化することなく、Na/K−ATPアーゼを阻害するのに有用な、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項3】
MB3を含み、ここにおいて、R1=OH、R3=OHおよびR5=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項4】
MB5を含み、ここにおいて、R3=OH、R4=OHおよびR5=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項5】
MB6を含み、ここにおいて、R1=OH、R3=OH、R5=OHおよびR6=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項6】
MB7を含み、ここにおいて、R3=OH、R4=OH、R5=OHおよびR6=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項7】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
フェノール性基の数の増加が、ヒドロキシキサントンの有効性および効力を増加させる、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項8】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
完全または部分メチル化が、Na/K−ATPアーゼへのヒドロキシキサントンの阻害作用を実質的にブロックする、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項9】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
フェノール性基が、ピロン環中の酸素の近くに位置した場合に、それらが、化合物の効力へのより大きい作用を有していた、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項10】
ATPアーゼ活性を阻害することを必要としている細胞中において、Na/K−ATPアーゼの受容体機能を刺激することなく、ATPアーゼ活性を阻害するための方法であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
Na/K−ATPアーゼリガンドが、MB7を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を実質的に活性化することなく、ATPアーゼ活性を阻害するための方法であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを投与することを含む方法。
【請求項13】
テトラヒドロキシキサントンを含む、Na/K−ATPアーゼの阻害剤。
【請求項14】
少なくともMB5またはその誘導体を含む、CTSアンタゴニスト。
【請求項15】
Na/K−ATPアーゼ阻害剤のスクリーニング用の高処理検定であって、ウアバイン(5μM)を陽性対照として含み、そして0.1%DMSOを陰性対照として用い、ここにおいて、
Na/K−ATPアーゼの少なくとも25%の阻害を生じる化合物を識別する、高処理検定。
【請求項16】
新しいアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするのに有用な、精製Na/K−ATPアーゼおよび/または再構成したNa/K−ATPアーゼ/Src複合体。
【請求項17】
キサントン誘導体であって、心臓血管および腎臓のリモデリング、更には、心臓および腎臓の線維症を包含する、内因性CTS上昇で誘発される病理学的変化に拮抗する薬剤として有用なキサントン誘導体。
【請求項18】
キサントン誘導体であって、現在利用可能な組成物よりも効力があり、毒性が少なく、そしてより良い薬物動態学的性質を有する受容体Na/K−ATPアーゼアンタゴニストの新しい生成に有用なキサントン誘導体。
【請求項19】
細胞中においてNa/K−ATPアーゼで媒介されるSrc調節を引き起こす方法であって、それを必要としている対象に、細胞中においてウアバインなどの強心ステロイドで誘発されるキナーゼカスケード活性化を無効にしうるアンタゴニストとして作用することが可能な少なくとも一つのヒドロキシルキサントン誘導体を投与することを含む方法。
【請求項20】
SrcキナーゼドメインをNa/K−ATPアーゼから放出させることができるような方法でのNa/K−ATPアーゼの立体配座への変更を妨げる方法であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を投与することを含む方法。
【請求項21】
Na/K−ATPアーゼ阻害剤のクラスであって、心臓収縮機能を増加させることを必要としている対象の心臓収縮機能を増加させるのに有用であるが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を刺激しない、Na/K−ATPアーゼ阻害剤のクラス。
【請求項22】
心臓の肥大および/または線維症を引き起こすことなく、心臓収縮機能を改善するのに有用な組成物であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を含む組成物。
【請求項23】
うっ血性心不全の一つまたはそれを超える臨床状態を処置するのに有用な組成物であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を含む組成物。
【請求項24】
Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体をターゲッティング(targeting)し且つCTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケードに拮抗することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中において、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体にターゲッティングし且つCTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケードに拮抗するための組成物であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項25】
Src活性を阻害するまたはCTSで誘発されるシグナル伝達に拮抗することを必要としている対象において、Src活性を阻害するまたはCTSで誘発されるシグナル伝達に拮抗するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される一つまたはそれを超えるNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項26】
SrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールをターゲッティングし且つ効力のあるウアバインアンタゴニストとして作用することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中においてSrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールをターゲッティングし且つ効力のあるウアバインアンタゴニストとして作用するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項27】
ウアバインで誘発されるSrc活性化およびERK1/2などの下流シグナリング経路をブロックすることを必要としている対象においてウアバインで誘発されるSrc活性化およびERK1/2などの下流シグナリング経路をブロックするための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項28】
Na/K−ATPアーゼおよびCTSのシグナリング機能の生理学的および病理学的有意性を決定するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドをプローブとして用いることを含む方法。
【請求項29】
SrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールを選択的にターゲッティングし且つ有効なウアバインアンタゴニストとして機能することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中においてSrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールを選択的にターゲッティングし且つ有効なウアバインアンタゴニストとして機能することが可能な組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項30】
Na/K−ATPアーゼ/Src受容体が過剰刺激されている場合の心臓血管疾患および癌のための治療的組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む治療的組成物。
【請求項31】
細胞増殖阻害および/または細胞死を誘発することを必要としている対象において細胞増殖阻害および/または細胞死を誘発する方法であって、
対象に、キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの治療的有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
CTSで引き起こされるシグナリング経路を妨げることを必要としている対象においてCTSで引き起こされるシグナリング経路を妨げるための組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項33】
ウアバインで引き起こされる心臓のシグナリング伝達を実質的に無効にすることを必要としている対象においてウアバインで引き起こされる心臓のシグナリング伝達を実質的に無効にするための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項34】
癌関連障害または心臓疾患関連障害の処置用の薬剤の製造における、キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの使用。
【請求項35】
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、および生理学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項36】
組成物が、心臓肥大、組織線維症および/またはうっ血性心不全の処置として用いるのに適合されている、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
対象におけるウアバインステロイド受容体によって媒介される状態を予防するまたは処置する方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドおよび/またはそのアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項38】
状態が、癌、心臓肥大、組織線維症またはうっ血性心不全の内の一つまたはそれを超えるものである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステロイド受容体によって媒介される状態の予防または処置用の、対象への投与に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、又はそのアゴニスト若しくはアンタゴニストの有効量、及び薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項40】
心臓障害に苦しむ患者の処置に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、またはその薬学的に許容しうる塩の治療的有効量を含む、医薬組成物。
【請求項41】
医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、またはそのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量、および適当な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項42】
ステロイド受容体によって媒介される状態およびウアバイン受容体によって媒介される状態の予防または処置用の、対象への投与に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、および適当な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項43】
ヒト対象においてNa/K−ATPアーゼ活性を推定的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を、化合物の特異的結合および/またはNa/K−ATPアーゼ阻害または活性化への作用に基づいて識別する in vitro 方法であって、
(i)特異的に結合する、および/または受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化を活性化またはモジュレーションする(増強するまたは阻害する)、または別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の特異的結合および/または活性化をモジュレーションする少なくとも一つの化合物を検出する、結合検定または機能検定において、一つまたはそれを超える化合物をスクリーニングし;そして
(ii)受容体Na/K−ATPアーゼ活性を推定的に引き出すまたはモジュレーションする少なくとも一つのこのような化合物を、(i)化合物の特異的結合および/または活性化またはモジュレーション(阻害または増強)に基づいて;または(ii)化合物の、機能検定における別の化合物による特異的結合または活性化のモジュレーションに基づいて、識別することを含む方法。
【請求項44】
分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質のライブラリーをスクリーニングして、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体に結合可能な分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質を識別するための、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ライブラリーが、化学物質ライブラリー、抗体ライブラリー、ファージ提示ライブラリー、ペプチドライブラリーまたは天然化合物のライブラリーである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質が、ウアバインのアンタゴニストまたはアゴニストである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
対象においてNa/K−ATPアーゼ活性を潜在的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を識別する方法であって、
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化する、または別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化をモジュレーションする(増強するまたは阻害する)化合物を検出する機能検定において、一つまたはそれを超える化合物をスクリーニングし;そして
Na/K−ATPアーゼ活性を潜在的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を、化合物の(i)受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化、および/または(ii)別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化のモジュレーション(増強または阻害)に基づいて、識別することを含む方法。
【請求項48】
Na/K−ATPアーゼを、細胞中において発現させる、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
細胞が、無傷のままであるまたは透過性化されている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を、細胞の表面上で発現させる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
真核細胞が、哺乳動物細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体のインターナリゼーション(internalization)への化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
一つまたはそれを超える化合物が、組み合わせ化学物質ライブラリー中に含まれている、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
一つまたはそれを超える化合物が、低分子量分子、薬草薬剤および細菌代謝産物の無作為ライブラリー中で配合されている、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
方法が、高処理スクリーニング法である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化を増強するまたは阻害する化合物について、ウアバインによってスクリーニングする、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのウアバインまたはその類似体の結合を増強するまたは阻害する化合物についてスクリーニングする、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
機能検定が、シグナル伝達への化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項59】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体とウアバインとのリガンド特異的カップリングへの化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
Na/K−ATPアーゼのアゴニストまたはアンタゴニスト活性について試験物質をスクリーニングするための検定であって、
(i)ウアバインでモジュレーションされたNa/K−ATPアーゼを発現するまたは含有する一つまたはそれを超える細胞と、試験物質とを、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体の存在下において接触させ;
(ii)細胞中に存在するNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体の量を測定しまたは検出し;そして
(iii)工程(ii)において測定されたまたは検出された細胞中に存在するNa/K−ATPアーゼ/Src複合体受容体と、ウアバインでモジュレーションされたNa/K−ATPアーゼを含有するまたは発現する細胞を化合物の存在下で比較可能な条件下で接触させることによって得られる測定されたまたは検出されたNa/K−ATPアーゼ/Src複合体受容体とを比較し、それによって、試験物質が、アゴニストまたはアンタゴニスト活性を示すか否かを決定する工程を含む検定。
【請求項61】
細胞が、心筋細胞または腎臓上皮細胞である、請求項60に記載の方法。
【請求項1】
Na/K−ATPアーゼリガンドであって、構造:
【化1】
(式中、R1、R3、R4、R5およびR6の内の一つまたはそれを超えるものは、H、OH、OCH3、カルボン酸エステルまたはその類似体より選択される)
を有する少なくとも一つのヒドロキシルキサントン誘導体を含むNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項2】
プロテインキナーゼを活性化することなく、Na/K−ATPアーゼを阻害するのに有用な、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項3】
MB3を含み、ここにおいて、R1=OH、R3=OHおよびR5=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項4】
MB5を含み、ここにおいて、R3=OH、R4=OHおよびR5=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項5】
MB6を含み、ここにおいて、R1=OH、R3=OH、R5=OHおよびR6=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項6】
MB7を含み、ここにおいて、R3=OH、R4=OH、R5=OHおよびR6=OHである、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンド。
【請求項7】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
フェノール性基の数の増加が、ヒドロキシキサントンの有効性および効力を増加させる、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項8】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
完全または部分メチル化が、Na/K−ATPアーゼへのヒドロキシキサントンの阻害作用を実質的にブロックする、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項9】
Na/K−ATPアーゼを阻害するためのヒドロキシキサントン組成物であって、請求項1に記載のNa/K−ATPアーゼリガンドを含み、ここにおいて、
フェノール性基が、ピロン環中の酸素の近くに位置した場合に、それらが、化合物の効力へのより大きい作用を有していた、ヒドロキシキサントン組成物。
【請求項10】
ATPアーゼ活性を阻害することを必要としている細胞中において、Na/K−ATPアーゼの受容体機能を刺激することなく、ATPアーゼ活性を阻害するための方法であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項11】
Na/K−ATPアーゼリガンドが、MB7を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項12】
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を実質的に活性化することなく、ATPアーゼ活性を阻害するための方法であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを投与することを含む方法。
【請求項13】
テトラヒドロキシキサントンを含む、Na/K−ATPアーゼの阻害剤。
【請求項14】
少なくともMB5またはその誘導体を含む、CTSアンタゴニスト。
【請求項15】
Na/K−ATPアーゼ阻害剤のスクリーニング用の高処理検定であって、ウアバイン(5μM)を陽性対照として含み、そして0.1%DMSOを陰性対照として用い、ここにおいて、
Na/K−ATPアーゼの少なくとも25%の阻害を生じる化合物を識別する、高処理検定。
【請求項16】
新しいアゴニストおよびアンタゴニストをスクリーニングするのに有用な、精製Na/K−ATPアーゼおよび/または再構成したNa/K−ATPアーゼ/Src複合体。
【請求項17】
キサントン誘導体であって、心臓血管および腎臓のリモデリング、更には、心臓および腎臓の線維症を包含する、内因性CTS上昇で誘発される病理学的変化に拮抗する薬剤として有用なキサントン誘導体。
【請求項18】
キサントン誘導体であって、現在利用可能な組成物よりも効力があり、毒性が少なく、そしてより良い薬物動態学的性質を有する受容体Na/K−ATPアーゼアンタゴニストの新しい生成に有用なキサントン誘導体。
【請求項19】
細胞中においてNa/K−ATPアーゼで媒介されるSrc調節を引き起こす方法であって、それを必要としている対象に、細胞中においてウアバインなどの強心ステロイドで誘発されるキナーゼカスケード活性化を無効にしうるアンタゴニストとして作用することが可能な少なくとも一つのヒドロキシルキサントン誘導体を投与することを含む方法。
【請求項20】
SrcキナーゼドメインをNa/K−ATPアーゼから放出させることができるような方法でのNa/K−ATPアーゼの立体配座への変更を妨げる方法であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を投与することを含む方法。
【請求項21】
Na/K−ATPアーゼ阻害剤のクラスであって、心臓収縮機能を増加させることを必要としている対象の心臓収縮機能を増加させるのに有用であるが、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を刺激しない、Na/K−ATPアーゼ阻害剤のクラス。
【請求項22】
心臓の肥大および/または線維症を引き起こすことなく、心臓収縮機能を改善するのに有用な組成物であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を含む組成物。
【請求項23】
うっ血性心不全の一つまたはそれを超える臨床状態を処置するのに有用な組成物であって、
少なくとも一つのキサントン誘導体を含む組成物。
【請求項24】
Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体をターゲッティング(targeting)し且つCTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケードに拮抗することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中において、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体にターゲッティングし且つCTSで誘発されるプロテインキナーゼカスケードに拮抗するための組成物であって、
請求項1に記載の少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項25】
Src活性を阻害するまたはCTSで誘発されるシグナル伝達に拮抗することを必要としている対象において、Src活性を阻害するまたはCTSで誘発されるシグナル伝達に拮抗するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される一つまたはそれを超えるNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項26】
SrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールをターゲッティングし且つ効力のあるウアバインアンタゴニストとして作用することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中においてSrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールをターゲッティングし且つ効力のあるウアバインアンタゴニストとして作用するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項27】
ウアバインで誘発されるSrc活性化およびERK1/2などの下流シグナリング経路をブロックすることを必要としている対象においてウアバインで誘発されるSrc活性化およびERK1/2などの下流シグナリング経路をブロックするための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項28】
Na/K−ATPアーゼおよびCTSのシグナリング機能の生理学的および病理学的有意性を決定するための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドをプローブとして用いることを含む方法。
【請求項29】
SrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールを選択的にターゲッティングし且つ有効なウアバインアンタゴニストとして機能することを必要としている一つまたはそれを超える細胞中においてSrcのNa/K−ATPアーゼ相互作用性プールを選択的にターゲッティングし且つ有効なウアバインアンタゴニストとして機能することが可能な組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項30】
Na/K−ATPアーゼ/Src受容体が過剰刺激されている場合の心臓血管疾患および癌のための治療的組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む治療的組成物。
【請求項31】
細胞増殖阻害および/または細胞死を誘発することを必要としている対象において細胞増殖阻害および/または細胞死を誘発する方法であって、
対象に、キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの治療的有効量を投与することを含む方法。
【請求項32】
CTSで引き起こされるシグナリング経路を妨げることを必要としている対象においてCTSで引き起こされるシグナリング経路を妨げるための組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドを含む組成物。
【請求項33】
ウアバインで引き起こされる心臓のシグナリング伝達を実質的に無効にすることを必要としている対象においてウアバインで引き起こされる心臓のシグナリング伝達を実質的に無効にするための方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの有効量を投与することを含む方法。
【請求項34】
癌関連障害または心臓疾患関連障害の処置用の薬剤の製造における、キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドの使用。
【請求項35】
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、および生理学的に許容しうる担体を含む、医薬組成物。
【請求項36】
組成物が、心臓肥大、組織線維症および/またはうっ血性心不全の処置として用いるのに適合されている、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
対象におけるウアバインステロイド受容体によって媒介される状態を予防するまたは処置する方法であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンドおよび/またはそのアゴニストまたはアンタゴニストを投与することを含む方法。
【請求項38】
状態が、癌、心臓肥大、組織線維症またはうっ血性心不全の内の一つまたはそれを超えるものである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
ステロイド受容体によって媒介される状態の予防または処置用の、対象への投与に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、又はそのアゴニスト若しくはアンタゴニストの有効量、及び薬学的に許容しうる担体、希釈剤又は賦形剤、を含む医薬組成物。
【請求項40】
心臓障害に苦しむ患者の処置に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、またはその薬学的に許容しうる塩の治療的有効量を含む、医薬組成物。
【請求項41】
医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、またはそのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量、および適当な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項42】
ステロイド受容体によって媒介される状態およびウアバイン受容体によって媒介される状態の予防または処置用の、対象への投与に適合された医薬組成物であって、
キサントン誘導体から構成される少なくとも一つのNa/K−ATPアーゼリガンド、および適当な担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項43】
ヒト対象においてNa/K−ATPアーゼ活性を推定的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を、化合物の特異的結合および/またはNa/K−ATPアーゼ阻害または活性化への作用に基づいて識別する in vitro 方法であって、
(i)特異的に結合する、および/または受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化を活性化またはモジュレーションする(増強するまたは阻害する)、または別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の特異的結合および/または活性化をモジュレーションする少なくとも一つの化合物を検出する、結合検定または機能検定において、一つまたはそれを超える化合物をスクリーニングし;そして
(ii)受容体Na/K−ATPアーゼ活性を推定的に引き出すまたはモジュレーションする少なくとも一つのこのような化合物を、(i)化合物の特異的結合および/または活性化またはモジュレーション(阻害または増強)に基づいて;または(ii)化合物の、機能検定における別の化合物による特異的結合または活性化のモジュレーションに基づいて、識別することを含む方法。
【請求項44】
分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質のライブラリーをスクリーニングして、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体に結合可能な分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質を識別するための、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
ライブラリーが、化学物質ライブラリー、抗体ライブラリー、ファージ提示ライブラリー、ペプチドライブラリーまたは天然化合物のライブラリーである、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
分子、物質、タンパク質、ペプチドおよび/または化学物質が、ウアバインのアンタゴニストまたはアゴニストである、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
対象においてNa/K−ATPアーゼ活性を潜在的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を識別する方法であって、
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を活性化する、または別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化をモジュレーションする(増強するまたは阻害する)化合物を検出する機能検定において、一つまたはそれを超える化合物をスクリーニングし;そして
Na/K−ATPアーゼ活性を潜在的に引き出すまたはモジュレーションする化合物を、化合物の(i)受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化、および/または(ii)別の化合物による受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化のモジュレーション(増強または阻害)に基づいて、識別することを含む方法。
【請求項48】
Na/K−ATPアーゼを、細胞中において発現させる、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
細胞が、無傷のままであるまたは透過性化されている、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体を、細胞の表面上で発現させる、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
真核細胞が、哺乳動物細胞である、請求項49に記載の方法。
【請求項52】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体のインターナリゼーション(internalization)への化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項53】
一つまたはそれを超える化合物が、組み合わせ化学物質ライブラリー中に含まれている、請求項47に記載の方法。
【請求項54】
一つまたはそれを超える化合物が、低分子量分子、薬草薬剤および細菌代謝産物の無作為ライブラリー中で配合されている、請求項47に記載の方法。
【請求項55】
方法が、高処理スクリーニング法である、請求項47に記載の方法。
【請求項56】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体の活性化を増強するまたは阻害する化合物について、ウアバインによってスクリーニングする、請求項48に記載の方法。
【請求項57】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体へのウアバインまたはその類似体の結合を増強するまたは阻害する化合物についてスクリーニングする、請求項47に記載の方法。
【請求項58】
機能検定が、シグナル伝達への化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項59】
機能検定が、受容体Na/K−ATPアーゼ/Src複合体とウアバインとのリガンド特異的カップリングへの化合物の作用を検出する、請求項47に記載の方法。
【請求項60】
Na/K−ATPアーゼのアゴニストまたはアンタゴニスト活性について試験物質をスクリーニングするための検定であって、
(i)ウアバインでモジュレーションされたNa/K−ATPアーゼを発現するまたは含有する一つまたはそれを超える細胞と、試験物質とを、Na/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体の存在下において接触させ;
(ii)細胞中に存在するNa/K−ATPアーゼ/Src受容体複合体の量を測定しまたは検出し;そして
(iii)工程(ii)において測定されたまたは検出された細胞中に存在するNa/K−ATPアーゼ/Src複合体受容体と、ウアバインでモジュレーションされたNa/K−ATPアーゼを含有するまたは発現する細胞を化合物の存在下で比較可能な条件下で接触させることによって得られる測定されたまたは検出されたNa/K−ATPアーゼ/Src複合体受容体とを比較し、それによって、試験物質が、アゴニストまたはアンタゴニスト活性を示すか否かを決定する工程を含む検定。
【請求項61】
細胞が、心筋細胞または腎臓上皮細胞である、請求項60に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図5A】
【図6B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図6A】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図1B】
【図5A】
【図6B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5B】
【図6A】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【公表番号】特表2013−505241(P2013−505241A)
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529802(P2012−529802)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048227
【国際公開番号】WO2011/034772
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(502409721)ザ・ユニバーシティ・オブ・トレド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/048227
【国際公開番号】WO2011/034772
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(502409721)ザ・ユニバーシティ・オブ・トレド (13)
【Fターム(参考)】
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