説明

Nb3Sn超伝導線材及びその製造方法

【課題】良好な加工性を有し、Nb3Sn相の生成を促進し、超伝導特性に優れたNb3Sn超伝導線材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】SnとBとCuを含む第1の基材と、前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NMR分析装置、核融合炉、高密度エネルギー貯蔵等の種々の新技術開発を可能にする高磁界発生用のNb3Sn超伝導線材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高い臨界磁界Bc2と臨界電流密度Jcを持つ超伝導線材は、エネルギ分野では核融合炉のコンパクト化、バイオ分野では核磁気共鳴装置の高分解能化等に必要不可欠であり、現時点では本発明者が先に発明した非特許文献1のブロンズ法Nb3Sn線材が広く用いられている。
【0003】
また、本発明者は、特許文献1の方法(溶融拡散法)を先に発明しているが、この方法で作製されたSn基合金を用いて製造されたNb3Sn線材では最高レベルの26.9テスラという記録的な臨界磁界Bc2を得ることができた。また、この製造方法では中間焼鈍も全く必要としないため線材の作製が容易であり、現在その実用化が進められている。
【0004】
さらにブロンズ法において、本発明者はCu−Sn合金マトリックスに少量のTiを添加することにより上部臨界磁界Bc2が改善されることを見出し、非特許文献2に発表した。その後この製法は工業化された。この線材を用いて4.2Kで18.8テスラ、1.5Kで21.9テスラの磁界が発生され、2005年にたんぱく質の構造解析等に有用な世界最高の930MHzNMR分析装置が完成された。しかし、ブロンズ法線材の特性は限界に達しており、次世代の高磁界超伝導線材の開発が待望されている。
【0005】
本発明者は、Ti,Zr,Hf,V及びTaの群から選ばれた1種または2種以上の金属とSnの合金または金属間化合物をコア材とし、NbまたはNb合金をシース材として前記コア材を充填して得た複合体を線材に加工後、熱処理することにより高磁界特性に優れたNb3Sn線材を作製する方法(粉末コア法)を特許文献2において提案している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】K.Tachikawa, Filamentary A15 Superconductors, Plenum Press(1980)p1
【非特許文献2】関根久,飯嶋安男,伊藤喜久男,太刀川恭治:日本金属学会誌,第49巻,10号(1985)913頁
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4193194号公報
【特許文献2】特許第3945600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来のブロンズ法による線材では線材加工する際に材料の加工硬化が著しく、その加工硬化を緩和するために中間熱処理を繰り返し行う必要があり、多くの時間とコストが掛かる。さらに、ブロンズ法線材では残留ブロンズにより線材のJcが低下するため、その特性は限界近くに達している。このため、次世代の新しい高性能Nb3Sn超伝導線材の開発が待望されている。
【0009】
Sn基合金基材を線材作製に用いることは上記の課題を解決する有力な手段である。Sn基合金基材に対して要求される特性として次の4つが挙げられる。
【0010】
1)加工性(圧延加工性、プレス成形性、引抜加工性など)が良好であること
2)Nb3Sn相の生成を促進すること
3)作製した線材の超伝導特性が優れていること
4)Snと溶融反応後、凝固したときに1つのまとまりのある塊りを形成する凝固性(結合性)を有すること
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、良好な加工性を有し、Nb3Sn相の生成を促進し、超伝導特性に優れたNb3Sn超伝導線材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
現在広く用いられている超伝導線材として、Nb-Ti合金線材やブロンズ法により作製されたNb3Sn化合物線材があり、Ti添加ブロンズ法(Nb,Ti)3Sn線材を用いて1.5K運転で世界最高性能の930MHz級NMR分析装置が開発されている。しかし、ブロンズ法線材の性能は限界に達しており、超伝導線材の更なる高磁界特性の向上が期待されている。本発明者はそのような期待に応えるべく鋭意研究した結果、最近次世代超伝導線材としてSn-B-CuコアとNb(Nb-Ti,Nb-Ta)シースを用いた本発明のNb3Sn超伝導線材を開発した。
【0012】
本発明の線材では熱処理によりシースのNbがコアヘと移動し、それによりコアに含まれるSnのシースヘの拡散を促進させるため、従来法(ブロンズ法)の線材よりも厚く均一なNb3Sn層が形成される。これはBとNbが互いに固溶し易く、シースのNbがコア材に拡散して固溶するため空孔を生じ、コアからシースへのSnの拡散を促進するNbとSnの相互拡散という本発明者が見出した新たな知見に基づくものである。本発明では、新たに加工性に富むSn-B-Cuシートまたはマルチロッド複合体を作製し、Nb3Sn超伝導線材におけるBの添加効果を検討することを目的とした。
【0013】
本発明は上記の知見に基づいてなされたものであり、以下の構成を備えている。
【0014】
(1)本発明に係るNb3Sn超伝導線材は、SnとBとCuを含む第1の基材と、前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、を有する。溶融拡散法により生成されたSn基合金を用いて製造される線材であり、Bの添加により成形性(加工性)が大幅に改善され、工業生産性に優れたものとなる。
【0015】
(2)第1の基材は1原子%以上30原子%以下のBを含む合金とすることができる。Bは、第1の基材の強度を向上させ、線材化におけるNbとの複合加工性を改善する効果がある。第1の基材にBを添加すると、合金の可塑性が増して成形性が飛躍的に向上し、ボタン状、円板状、シート状、棒状などの様々な形状に容易に加工することができる。また、Bは微粒子が得られ易いため、第2の基材と複合化した複合体を引抜加工する際に従来よりもさらに細径の線材を得ることができて実用上のメリットが大きい。B含有量が1原子%未満になると、成形性の改善効果が得られなくなるからである。一方、B含有量が30原子%を超えると、所望レベルの超伝導特性が得られなくなるからである。
【0016】
なお、第1の基材ばかりでなく、第2の基材のほうにもBを添加するようにしてもよい。第1及び第2の基材の両者にBを添加すると、線材の特性をさらに改善することが期待される。
【0017】
(3)第1の基材は、Cuを0.5原子%以上10原子%以下含む合金からなることが好ましい。Cuは線材の熱処理温度を低下させる効果がある。Cu添加量が0.5原子%を下回ると、熱処理温度を低下させる効果が得られなくなるからである。一方、添加量が10原子%を超えると超伝導特性の低下を生じるからである。
【0018】
なお、Cuの添加により線材の熱処理温度を900℃から700℃程度まで低下させることができる。また、Cuの添加により、SnとBとCuの混合粉末をSnの融点以上の温度、好ましくは500℃以上800℃以下の温度域で溶製することにより合金を作製することができる。
【0019】
第1の基材にさらに第3の元素を添加して第2の基材との複合加工性を改善することができる。第1の基材に含まれるSnは第2の基材を構成するNbに比べて軟らかいので、第3の元素を添加して硬さを調整する。これにより第1の基材と第2の基材との伸びが揃い、伸びが一様な伸線加工を行うことができる。
【0020】
(4)このような第3の添加元素として0.5原子%以上10原子%以下のTiを第1の基材に含ませることができる。上記範囲の適正量のTi添加は線材の引抜加工性を改善する。Tiの添加量は0.5〜10原子%とすることが望ましい。0.5原子%未満の添加量ではSn基合金の加工性改善が不十分であり、10原子%を超える添加量ではSn基合金が硬くなりすぎるからである。
【0021】
(5)また、第3の添加元素として10原子%以上25原子%以下のTaを第1の基材に含ませることができる。これは、本発明者の先願特許第4193194号(特許文献1)のものにさらにBを添加した線材に相当するが、Bを含有することによりさらに成形性が改善されて細径の線材を容易に作製することができるようになる。
【0022】
(6)第2の基材がTi及びTaのうち少なくとも一方を0.5原子%以上10原子%以下含むことが好ましい。TiまたはTaの単体添加であっても、TiとTaの複合添加のいずれの場合であっても所望の効果が得られる。添加量が0.5原子%未満であると、所望の超伝導特性の向上効果が得られない。一方、添加量が10原子%を超えると、第2の基材が硬くなりすぎて複合線材の加工性を劣化させる。
【0023】
(7)本発明に係るNb3Sn超伝導線材は、SnとBとCuを含む粉末を原材料として焼成された合金または金属間化合物を有する第1の基材と、前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、を有する。第1の基材としてSn-B-Cuの三元系混合粉末を用いて製造される粉末コア法線材であり、Bの添加により超伝導特性が改善され、実用性に優れたものとなる。
【0024】
(8)上記(7)の発明において、第1の基材はCuを40原子%以上80原子%以下含むことが好ましい。Cuは線材の熱処理温度を低下させる効果がある。Cu添加量が40原子%を下回ると、熱処理温度を低下させる効果が得られなくなる。一方、Cu添加量が80原子%を超えると超伝導特性の低下を生じる。
【0025】
(9)本発明に係るNb3Sn超伝導線材は、20原子%以上55原子%以下のNbとSnとBとCuを含む粉末を原材料として焼成された合金または金属間化合物を有する第1の基材と、前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、を有する。
【0026】
第1の基材として20原子%以上55原子%以下のNbを含有するSn-Nb-B-Cuの四元系混合粉末を用いて製造される粉末コア法線材であり、Bの添加により超伝導特性が改善されるばかりでなく、さらにNbの添加によりCuの添加量を低く抑えて超伝導特性のを改善をさらに図ったものであり、実用性に優れたものとなる。Nb量が上記の範囲内にある場合は、Cuの添加量を少なくでき、Nb3Sn化合物の生成が促進される。一方、Nb量が上記の範囲から外れる場合は、超伝導特性の改善効果が得られにくくなるばかりでなく、混合粉末の作製が困難となる。
【0027】
(10)上記(9)の発明において、第1の基材はCuを5原子%以上20原子%以下含むことが好ましい。第1の基材としてNbを含有するSn-Nb-B-Cuの四元系混合粉末を用いて製造される粉末コア法線材では、少量のCu含有量であってもNbとBの複合添加により優れた超伝導特性の得られる粉末が作製され、実用性に優れたものとなるからである。Cu添加量が5原子%を下回ると、熱処理温度を低下させる効果が得られなくなる。一方、Cu添加量が20原子%を超えると超伝導特性の低下を生じる。
【0028】
(11)上記(7)〜(10)の発明において、第1の基材は、Bを1原子%以上30原子%以下含むものとすることができる。B含有量が1原子%未満になると、成形性の改善効果が得られなくなるからである。一方、B含有量が30原子%を超えると、所望レベルの超伝導特性が得られなくなるからである。
【0029】
B粉末は微粒子の入手が容易であるため、工業生産性に適合するという利点がある。なお、第1の基材ばかりでなく、第2の基材のほうにもBを添加するようにしてもよい。第1及び第2の基材の両者にBを添加すると、超伝導特性をさらに改善することが期待される。
【0030】
(12)上記(7)〜(11)の発明において、さらに第3の添加元素として0.5原子%以上10原子%以下のTiを第1の基材に含ませることができる。上記範囲の適正量のTi添加は線材の超伝導特性を改善する。Tiの添加量は0.5〜10原子%とすることが望ましい。0.5原子%未満の添加量では特性改善が不十分であり、10原子%を超える添加量では却って特性を低下させるからである。
【0031】
(13)上記(7)〜(12)の発明において、さらに、第3の添加元素として40原子%以上60原子%以下のTaを第1の基材に含ませることができる。40原子%未満のTa添加量および60原子%を超えるTa添加量では、ともに粉末化し難いからである。適量のTaの添加により第1の基材の脆さ(粉砕しやすさ)を調整する。
【0032】
(14)上記(7)〜(13)の発明において、第2の基材は、Ti及びTaのうち少なくとも一方を0.5原子%以上10原子%以下含むNb系合金からなることが好ましい。TiまたはTaの単体添加であっても、TiとTaの複合添加のいずれの場合であっても所望の効果が得られる。添加量が0.5原子%未満であると、所望の超伝導特性の向上効果が得られない。一方、添加量が10原子%を超えると、第2の基材が硬くなりすぎて複合線材の加工性を劣化させる。
【0033】
(15)本発明に係るNb3Sn超伝導線材の製造方法は、(a)SnとBとCuの混合体を500℃以上800℃以下の温度域で反応させることにより1原子%以上30原子%以下のBを含む可塑性を有する合金からなる第1の基材を得る工程と、(b)前記第1の基材とNbまたはNb系合金からなる第2の基材とを隣接配置して複合体を作製する工程と、(c)前記複合体を線材に加工する工程と、(d)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、を有する。溶融拡散法に対応する製造方法である。溶融拡散法を用いて作製されるBを含有する第1の基板は、加工性に優れているため様々な形状に成形することができる。B含有量が1原子%未満になると、成形性の改善効果が得られなくなる。一方、B含有量が30原子%を超えると、所望レベルの超伝導特性が得られなくなる。
【0034】
(16)上記(15)の発明において、工程(a)では溶製した前記合金を圧延してシート状の第1の基材を作製し、前記工程(b)では前記シート状の第1の基材とシート状の第2の基材とを交互に積層して複合化し、該複合体を捲回する加工を行い、前記工程(c)では前記捲回体を線材に引抜加工することが好ましい。ジェリーロール法(JR法)に対応する製造方法である(図1)。
【0035】
(17)上記(15)の発明において、工程(a)では溶製した前記合金をプレスして棒状の第1の基材を作製し、前記工程(b)では前記棒状の第1の基材を筒状の第2の基材のなかに挿入して複合化し、該複合体を複数束ねて一体化する加工を行い、前記工程(c)では前記一体加工体を線材に引抜加工することが好ましい。マルチロッド法(MR法)に対応する製造方法である(図7)。
【0036】
(18)本発明に係るNb3Sn超伝導線材の製造方法は、(i)B含有率が1原子%以上30原子%以下となるようにSnとBとCuを混合した混合粉末からなる第1の基材を得る工程と、(ii)前記第1の基材をNbまたはNb系合金からなる筒状の第2の基材のなかに充填して複合体を作製する工程と、(iii)前記複合体を線材に加工する工程と、(iv)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、を有する。
【0037】
粉末コア法に対応する線材の製造方法である。第1の基材として1原子%以上30原子%以下のBを含有するSn-B-Cuの三元系混合粉末を用いる線材では、以下に述べるように40原子%以上80原子%以下のCuを添加することが望ましい。
【0038】
工程(i)ではCuとSnとの混合粉末を300℃以上500℃以下の温度域に加熱してCuSn化合物を生成し、該CuSn化合物を粉砕してCuSn化合物微粉末を作製し、該CuSn化合物微粉末にさらにB粉末を混合することにより前記第1の基材を作製することができる。加熱下でCuとSnを反応させて得られるCu6Sn5化合物は非常に粉砕しやすく、微粉末を容易に得ることができる。さらに、この混合粉末に合計して40原子%以上80原子%以下になるようにCu粉末を添加すると第1の基材の融点が上昇し、線材の熱処理時にSnが端部からしみ出しにくくなる効果がある。Cu6Sn5化合物微粉末とB微粉末とを混合することにより高性能の第1の基材を得ることができ、線材の諸特性を向上させることができる。
【0039】
(19)本発明に係るNb3Sn超伝導線材の製造方法は、(i)B含有率が1原子%以上30原子%以下で、かつNb含有率が20原子%以上55原子%以下となるようにSnとNbとBとCuを混合した混合粉末からなる第1の基材を得る工程と、(ii)前記第1の基材をNbまたはNb系合金からなる筒状の第2の基材のなかに充填して複合体を作製する工程と、(iii)前記複合体を線材に加工する工程と、(iv)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、を有する。
【0040】
粉末コア法に対応する線材の製造方法である。第1の基材として1原子%以上30原子%以下のBおよび20原子%以上55原子%以下のNbを含有するSn-Nb-B-Cuの四元系混合粉末を用いる線材では、以下に述べるように5原子%以上20原子%以下のCuを添加することが望ましい。
【0041】
工程(i)では、先ずSnとNbとBの混合粉末を作製し、この混合粉末を真空中または不活性ガス雰囲気中で所定の熱処理を施して反応させ、得られた反応体を粉砕して微粉末とし、この微粉末にさらに5原子%以上20原子%以下のCu粉末を添加すると、線材の熱処理温度を低下させる効果がある。Cu含有量が少なくてよいのは、Nb添加による第1の基材の融点上昇効果による。Cu添加量が5原子%を下回ると、熱処理温度を低下させる効果が得られなくなる。一方、Cu添加量が20原子%を超えると超伝導特性の低下を生じる。第1の基材の好ましい組成範囲は、Bが1原子%以上30原子%以下、Nbが20原子%以上55原子%以下、Cuが5原子%以上20原子%以下である。このように第1の基材としてNbを含有するSn-Nb-B-Cuの四元系混合粉末を用いて製造される粉末コア法線材では、少量のCu含有量であってもNbとBの複合添加により優れた超伝導特性の得られる粉末が作製され、実用性に優れたものとなる。
【0042】
なお、複合体を線材に加工する工程中に、複合体をSnの融点以上650℃以下の温度域で中間焼鈍するようにしてもよい。この中間焼鈍効果によって組織が均質化し、超伝導特性を向上させる上で有利にはたらく。
【発明の効果】
【0043】
本発明方法で製造された線材は、従来のブロンズ法で作製された線材と比較して格段に高いJc磁界特性が得られ、蛋白質の構造解析などに必要なNMR分析装置、クリーンなエネルギー源として期待される核融合、冷凍機直冷型超伝導マグネットなどの幅広い分野に応用することができる。
【0044】
本発明方法のうち溶融拡散法によれば、SnとBとCuの合金あるいは金属間化合物を作製し、さらにこれをシース材に充填するため粉末に粉砕する工程を省略することができるので、線材作製コストが大幅に削減されるとともに、望ましい組成のコア材を容易に作製することができる。
【0045】
また、本発明の方法は、従来のブロンズ法において必要とされていた多くの中間熱処理を省略することができるので、製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施形態に係るNb3Sn超伝導線材の製造方法(ジェリーロール法)を示すブロック工程図。
【図2】溶融拡散法で作製した凝固後のサンプルの外観写真。
【図3】プレス成形後の板状サンプルの外観写真。
【図4】圧延加工後のシート状サンプルの外観写真。
【図5】本発明のNb3Sn超伝導線材サンプルの横断面組織を示す顕微鏡写真。
【図6】(a)は図5のサンプルのNb分布を示すEPMA分析写真、(b)は同サンプルのSn分布を示すEPMA分析写真、(c)は同サンプルのB分布を示すEPMA分析写真。
【図7】本発明の実施形態に係るNb3Sn超伝導線材の製造方法(マルチロッド法)を示すブロック工程図。
【図8】るつぼ内のBを含まない比較例サンプルの外観写真。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0048】
先ず溶融拡散法により本発明の線材を作製する場合を説明するが、そのうちのNbシートを用いるJR法について図1〜図5を参照して説明する。Nbメッシュシートを用いる改良型JR法(MJR法)も同様な方法で行うことができる。
【0049】
JR法またはMJR法では、Sn粉末とCu粉末とB粉末を混合し、真空中または不活性ガス中500〜800℃の温度範囲で5〜20時間反応させる「溶融拡散法」によりSn-B-Cu合金を作製する。Sn-B-Cu合金の最適組成はSnが75〜90原子%の範囲、Cuが0.5〜10原子%の範囲、Bが1〜30原子%(より好ましくは10〜25原子%)の範囲である。Sn含有量が75原子%未満であると生成されるNb3Sn層の厚さが薄くなる一方、90原子%を超えるとSn基合金の強度が低下する。
【0050】
さらに0.5原子%以上10原子%以下のTiを第1の基材に添加すると、Sn基合金の機械的性質が改善されて、線材の引抜加工性が改善される。
【0051】
上記の混合粉末を石英るつぼに容れて加熱溶融し、凝固させると図2に示すボタン状のSn-B-Cu合金サンプルが得られる。このボタン状のサンプルをプレスして図3に示す円板状に拡張する。円板状サンプルをさらに圧延して図4に示す大面積のシートを得る。このSn-B-Cu合金シートは第1の基材として用いられる。図1に示すようにシート状の第1の基材2を市販のNbシート(第2の基材)3とコア材4の周りに重ね巻きしてジェリーロール複合体5を作製する(工程S1)。このジェリーロール複合体5をNbシース6のなかに挿入し(工程S2)、溝ロール加工または平ロール加工し(工程S3)、さらに引抜加工して所望の線径の線材に加工する(工程S4)。この線材加工工程S3〜S4では中間焼鈍をまったく必要としないため線材の作製時間の短縮とコストの低減が達成される。これらの線材を真空中675℃〜750℃の温度範囲で100時間前後熱処理して、図5に示すようにNb3Sn超伝導層を生成させる。この熱処理工程S5ではSnとNbとの相互拡散という本発明者が見出した新しい反応機構により化学量論比組成をもち、臨界磁界Bc2等の本質的超伝導特性に優れたNb3Sn層が効率よく生成される。また、残留ブロンズが少ないため線材の臨界電流密度Jcを高めることができる。
【0052】
JR法線材ははじめ溝ロール加工を行うと、内部組織に四角いあとが残るが、良好な組織が得られることが判明した。MJR法線材においては、Nbメッシュシートを用いることで容易に多芯形式線材の作製が可能であることが判明した。
【0053】
溶融拡散法は上記のジェリーロール法(JR法)ばかりでなく、マルチロッド法(MR法)にも適用することができる。図7を参照してMR法の概要について説明する。MR法では上記組成のSn-B-Cu混合粉末を舟型(ボート型)るつぼに容れて加熱溶融し、凝固させ、棒状のSn-B-Cu合金サンプルを作製し、この棒状サンプルを切削して丸棒の形状のロッド11に加工し、このロッド11をNb管(第2の基材)12のなかに挿入して複合体とし、この複合体を六角ダイスに通して横断面形状がほぼ正六角形状の一次複合体10を作製する(工程K1)。
【0054】
複数本の一次複合体10をNbバリヤ13が内張りされたCuジャケット管14のなかに装入し、二次複合体15を作製する(工程K2)。二次複合体15を所定条件下で静水圧押出加工し、複数の一次複合体10とCuジャケット管14のNbバリヤ13とを密着させて一体化する(工程K3)。この工程K3は静水圧押出加工に限られるものではなく、部材10,13,14間を相互に密着させて一体化する加工手段であれば他の手段、例えば温間引抜加工でもよい。一体化した二次複合体15を引抜加工して所望の線径の線材に加工する(工程K4)。この線材加工工程K3〜K4では中間焼鈍をまったく必要としないため線材の作製時間の短縮とコストの低減が達成される。これらの線材を所定条件下で熱処理して、第1の基材と第2の基材との境界エリアに所望の厚さのNb3Sn化合物層を生成させる(工程K5)。
【0055】
次に、粉末コア法により本発明の線材を作製する場合について説明する。
【0056】
粉末コア法は、従来のブロンズ法よりもコア材中のSn含有量を多くできるとともに、SnのNbシース材に対する結合力がコア材中の他の成分元素よりも強い。このため、Snがコア材(第1の基材)からNbシース材(第2の基材)に容易に拡散し、所望のNb3Sn化合物層を生成することが可能になる。
【0057】
粉末コア法では、金属粉末、合金粉末または金属間化合物粉末を所望の比率で混合してSnとBとCuを所望の割合で含む混合粉末を作製するか、あるいはSnとNbとBとCuを所望の割合で含む混合粉末を作製する。はじめに作製する化合物粉末の最適組成は、Nbを含まない前者では(Sn/Sn+Cu)比でSnが0.40〜0.50の範囲(より好ましくは0.45)、Cuが0.40〜0.55の範囲(より好ましくは0.55)、Nbを含有する後者では(Sn/Sn+Nb+Cu)比でNbが0.33〜0.55の範囲、Snが0.45〜0.67の範囲である。このうちSnCu系混合粉末を真空中または不活性ガス中で350〜450℃×15〜25時間加熱することにより拡散反応させ、所望の反応体を生成する。また、SnNb系混合粉末を真空中または不活性ガス中で700〜750℃×15〜25時間加熱することにより拡散反応させ、所望の反応体を生成する。これらのCuSn化合物粉末またはSnNb化合物粉末にB粉末を1〜30原子%の割合でさらに添加混合する(実施例3)。
【0058】
生成した反応体は容易に粉砕でき、第1の基材(コア材)となるべき所望の微粉末とすることができる。この粉砕した微粉末か、またはこれに80原子%までのCu微粉末をさらに添加混合した粉末を、Nb又はNb合金管(第2の基材)のなかに充填し、溝ロール加工などを用いて所望の形状に成形加工した後、カセットローラダイスなどを用いる引抜加工により線材を作製する。この線材を真空中675〜750℃で80〜120時間の熱処理を行い、所望のNb3Sn化合物層を生成させる。なお、この熱処理に先立って、追加添加したCu粉末と先に作製した化合物反応体粉末とを反応させて均質化する予備的な熱処理を200〜700℃の温度範囲で行うとさらに有効である。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の好ましい実施例についてそれぞれ説明する。
【0060】
(実施例1-1)
実施例1-1として溶融拡散法を利用するJR法を用いて線材を作製した。Sn粉末にSn/B原子比で、4/1,6/1,8/1のB粉末を混合した。そのSnのうち4原子%をTiで置換した。この混合粉末に5原子%のCu粉末をさらに添加した。Tiの添加は合金の凝固性と加工性をともに高める。また、Cuの添加は線材の熱処理温度を低下させる上で有効である。使用した各粉末の粒度は−325メッシュであった。この混合粉末を石英るつぼに入れて真空中で750℃×10時間加熱した。この反応により図2に示すようなタイトに凝固したSn基合金がえられた。その寸法は直径約30mm、厚さ約6mmであった。これをプレスにより図3に示すプレート形状に加工した。プレートの寸法は直径約45mm、厚さ約2.5mmであった。このプレートを平ロール圧延により図4に示すシート形状に加工した。シートの厚さは80μm、幅は70mm、長さは250mmであった。このシートを市販の厚さ100μmのNbシートと重ねて、Nbの芯棒の周りに巻きつけてSn基合金/Nbの複合体を作製した。この複合体を外径/内径10.0/7.3mmのNb管に挿入し、2.7mm角まで溝ロールにより一次加工を行った。この加工は線引き加工に必要な試料長を得るためである。次いで直径1.4mmまでカセットローラダイスによる引抜加工を行い丸線材を作製した。なお、一次加工は押出加工によるほうが試料断面が円形のまま加工されてさらに良好な断面形状がえられると思われる。この線材から短尺の試料を切り出し、真空中で750℃×100時間の熱処理を行った。図5に熱処理後の試料断面の写真を示した。この線材に用いられたSn基合金シートのSn/B原子比は6/1であった。この熱処理によりSn基合金/Nbの間の拡散反応によりNb3Sn超伝導層が生成される。Nb3Sn層の厚さは線材各部で若干異なるが、Nbシースの内側には65μmの厚さのNb3Sn層が生成されている。なお、Sn/B原子比が4/1及び8/1のSn基合金シートを用いても生成されるNb3Sn層の厚さはほぼ同じであった。さらにこの線材の超伝導臨界電流を4.2Kで18Tの垂直磁界下で測定したところ、350Aであり、高磁界下で大きい超伝導電流を流せることが確認された。また、Sn/B原子比4/1及び8/1のシートを用いた線材でも同じ条件で同等の臨界電流値が得られた。
【0061】
図6にNbシース上に生成されたNb3Sn層のEPMA組成マッピングを示した。図中の(a)はNbの分布、(b)はSnの分布、(c)はBの分布をそれぞれ示し、原図はカラーマッピングであるが、この組織から微量のBを含む均質で厚いNb3Sn層(平均厚み65μm)が生成されていることが確認された。
【0062】
(実施例1-2)
実施例1-2として溶融拡散法を利用するMR法を用いて線材を作製した。Sn粉末にSn/B原子比で4/1,6/1,8/1の割合でB粉末を混合した。それらの混合粉末の調合において、Sn粉末のうち4原子%をTi粉末で置換した。この粉末に5原子%のCuをさらに添加した。調合したSn/B混合粉末を舟型るつぼに装入し、775℃の温度で反応溶融拡散させ、棒状のロッド合金を作製した。作製したロッドを機械切削により丸棒に加工し、この丸棒ロッドを外径/内径が10.0/7.3mmのNbシースに挿入した一次複合体を六角ダイスに通して図7に示す六角断面ロッド10を作製した(工程K1)。この六角断面ロッド10を19本束ねたものにバリヤ層13となるべきNbシートを巻き付け、これを更にジャケット14となるべきCu管のなかに充填し、二次複合体15を作製した(工程K2)。二次複合体15を所定条件下で静水圧押出加工し(工程K3)、さらに引抜加工して所望の線材を得た(工程K4)。得られた線材を真空中で750℃×100時間の熱処理を行った(工程K5)。いずれの線材においても熱処理後NbシースとSn−B系ロッドの反応により平均厚さ40μmのNb3Sn層が均一に生成されるのが認められた。
【0063】
(実施例2)
実施例2として粉末コア法を用いて線材を作製した。(Cu6Sn50.9 B0.1(Sn;40原子%以下、Cu;50原子%以下、B;10原子%以下)の割合でCu粉末とSn粉末とB粉末を混合した。各粉末の粒度は−325メッシュである。この混合粉末をアルミナるつぼに入れて密封し、真空中で400℃で20時間加熱した。得られた反応体はボールミル等を用いて容易に機械粉砕でき、微粉化することができた。これによりBを添加すると粉砕・微粉化が容易になることを確認できた。なお、本実施例ではCu粉末およびSn粉末を別々にB粉末に混合したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、CuSn化合物粉末をB粉末と混合するようにしてもよい。また、Cu量として合計して80原子%までのCu粉末をさらに添加混合してもよい。
【0064】
粉砕した(Cu6Sn50.9 B0.1粉末を外径8.0mm/内径5.6mmのNb-2原子%Ti管内に充填し、これを溝ロール加工して2.7mm角棒とした。この2.7mm角棒をカセットローラーダイスを用いる引抜加工により直径1.2mmの線材とした。得られた直径1.3mmの線材を真空中で725℃×100時間の熱処理を行ったところ、Nb-2Ti管(シース)の内側に厚さ約40μmのNb3Sn層が均一に生成された。線材の臨界電流密度Jcは18Tで140A/mm2であった。また、上記の(Cu6Sn50.9 B0.1粉末に20原子%のCu粉末を追加添加して、300℃×10時間の予備的熱処理を行ったのち725℃×100時間の熱処理を行うと同条件下で150 A/mm2のJcが得られた。
【0065】
(実施例3)
実施例3として別の粉末コア法を用いて線材を作製した。(NbSn2)0.9 B0.1(Sn;62原子%、Nb;28原子%、B;10原子%)の割合でNb粉末、Sn粉末、B粉末を乳鉢に入れ、アルゴン雰囲気中で混合した。各粉末の粒度は−325メッシュである。この混合粉末をアルミナるつぼに入れて真空中で725℃×20時間の熱処理を行った。得られた反応体はるつぼから取り出して機械粉砕機を用いて容易に微粉末に粉砕することができた。この粉末に10原子%の割合で−325メッシュのCu粉末を添加して混合した。この混合粉末を外径8.0mm/内径5.6mmのNb-2原子%Ti管内に充填し、これを溝ロール加工して2.7mm角棒とした。この2.7mm角棒をカセットローラーダイスを用いる引抜加工により直径1.2mmの線材とした。得られた直径1.3mmの線材を真空中で725℃×100時間の熱処理を行ったところ、Nb-2Ti管(シース)の内側に平均厚さ30μmのNb3Sn層が生成された。なお、Nb3Sn層の内側に厚さ約10μmのNb6Sn5層も生成された。なお、750℃で熱処理を行うとNb6Sn5層はNb3Sn層に変わるものと考えられる。この線材の臨界電流密度Jcは18Tで110A/mm2であった。
【0066】
(比較例1)
比較例1としてブロンズ法を用いて線材を作製した。Cuに8原子%のSnと0.6原子%のTiとを含むブロンズ合金を溶製して10mmφの丸棒に加工した。この棒に5.1mmφの孔をあけて管を作製し、このなかに5.0mmφのNb棒を挿入した。この複合体を溝ロールと引抜加工とにより1.4mmφの線材に加工した。次いで線材を真空中で750℃×100時間の熱処理を行ったところ、Nb芯の周囲に平均厚さ20μmのNb3Sn層が生成された。この比較例1の線材は、4.2Kで18Tの垂直磁界下で単位断面積当りの臨界電流密度Jc75A/mm2を示した。
【0067】
本比較例1の線材の加工ではブロンズの加工硬化が著しいため、真空中で500℃×2時間の中間熱処理を18回行った。一方、上記実施例1〜3の線材では中間熱処理をまったく必要としなかった。そのため、本比較例1の線材加工には6日間を要したのに対して、実施例1〜3の線材加工は僅か3時間で完了した。このように本発明方法を用いる線材加工時間は比較例1のそれに比べて大幅に短縮された。その結果、従来法に比べて本発明法では製造コストを大幅に削減することができた。
【0068】
(比較例2)
比較例2として溶融拡散法を用いてBを含まない第1の基材を有する線材を作製した。Snに4原子%Ti及び4原子%Cuを加えた組成の粉末にSn,Ti及びCuの粉末を混合した。各粉末の粒度は−325メッシュであった。この混合粉末を石英るつぼに入れて700℃,725℃,750℃の各温度でそれぞれ10時間加熱した。いずれの温度で反応させた合金もBを含まない組成では図8に示すように形が崩れて1つの塊りとして凝固せず、るつぼから試料を取り出すことができなかった。
【0069】
(評価)
次にJR法線材とMR法線材(19芯)のNb3Sn層について表1を参照して説明する。Nb3Sn層の厚さがJR法線材では約65μmとなったのに対して、MR法線材では約30μmとなり、前者は後者のおよそ2倍の層厚さとなった。この原因としては、JR法線材とMR法線材の拡散機構の差に起因するもの、あるいは線材設計におけるSn含有量の違いに起因するものなどが考えられる。
【0070】
しかし、無Cu領域においてNb3Sn層の面積比は、JR法線材とMR法線材との間に有意な差が認められなかった。この原因としては、JR法線材では熱処理後、未反応のNbシースの面積比が多く残っているためと考えられる。
【0071】
なお、表1中に参考例として併記したブロンズ法線材は、S.Endoh et al.,“Critical current properties of the bronze-processed Nb3Sn wires at high magnetic field”, NIMS TML Annual Report 2006, pp.57-58, 2007に記載されたデータを引用したものである。実施例のMR法線材の特性を参考例のブロンズ法線材の特性と比べてみると、4.2K,22Tでの無Cu臨界電流密度JcがMR法線材では120A/mm2、ブロンズ法線材では50A/mm2を示した。すなわち、MR法線材(実施例)はブロンズ法線材(参考例)の2倍以上の無Cu臨界電流密度Jcを示すことが認められた。表1の結果からMR法線材でもJR法線材に近い高磁界特性が得られることが分かった。
【表1】

【符号の説明】
【0072】
2…第1の基材(Sn-B シート)、3…第2の基材(Nbシート)、4…コア材(Nb棒)、
5…複合体(Sn-M/Nb捲回体) 6…外筒(Nb-Taチューブ)、
10…六角断面ロッド、11…Sn-Bロッド、12…Nbシース、
13…Nbバリア層、14…Cuジャケット、15…超伝導線材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SnとBとCuを含む第1の基材と、
前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、
NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材。
【請求項2】
前記第1の基材がBを1原子%以上30原子%以下含む合金からなることを特徴とする請求項1記載の超伝導線材。
【請求項3】
前記第1の基材がCuを0.5原子%以上10原子%以下含む合金からなることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項4】
前記第1の基材がTiを0.5原子%以上10原子%以下含む合金からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項5】
前記第1の基材がTaを10原子%以上25原子%以下含む合金からなることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項6】
前記第2の基材がTi及びTaのうち少なくとも一方を0.5原子%以上10原子%以下含むことを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項7】
SnとBとCuを含む粉末を原材料として焼成された合金または金属間化合物を有する第1の基材と、
前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、
NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材。
【請求項8】
前記第1の基材がCuを40原子%以上80原子%以下含むことを特徴とする請求項7記載の超伝導線材。
【請求項9】
20原子%以上55原子%以下のNbとSnとBとCuを含む粉末を原材料として焼成された合金または金属間化合物を有する第1の基材と、
前記第1の基材に隣接して配置されたNbを含む第2の基材と、
NbとSnとの拡散反応により前記第1の基材と前記第2の基材との間に生成されたNb3Sn化合物層と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材。
【請求項10】
前記第1の基材がCuを5原子%以上20原子%以下含むことを特徴とする請求項9記載の超伝導線材。
【請求項11】
前記第1の基材がBを1原子%以上30原子%以下含むことを特徴とする請求項7乃至10のいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項12】
前記第1の基材がTiを0.5原子%以上10原子%以下さらに含むことを特徴とする請求項7乃至11のいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項13】
前記第1の基材がTaを40原子%以上60原子%以下さらに含むことを特徴とする請求項7乃至12のうちのいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項14】
前記第2の基材がTi及びTaのうち少なくとも一方を0.5原子%以上10原子%以下さらに含むことを特徴とする請求項7乃至13のうちのいずれか1項記載の超伝導線材。
【請求項15】
(a)SnとBとCuの混合体を500℃以上800℃以下の温度域で反応させることにより1原子%以上30原子%以下のBを含む可塑性を有する合金からなる第1の基材を得る工程と、
(b)前記第1の基材とNbまたはNb系合金からなる第2の基材とを隣接配置して複合体を作製する工程と、
(c)前記複合体を線材に加工する工程と、
(d)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材の製造方法。
【請求項16】
前記工程(a)では溶製した前記合金を圧延してシート状の第1の基材を作製し、前記工程(b)では前記シート状の第1の基材とシート状の第2の基材とを交互に積層して複合化し、該複合体を捲回する加工を行い、前記工程(c)では前記捲回体を線材に引抜加工することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記工程(a)では溶製した前記合金をプレスして棒状の第1の基材を作製し、前記工程(b)では前記棒状の第1の基材を筒状の第2の基材のなかに挿入して複合化し、該複合体を複数束ねて一体化する加工を行い、前記工程(c)では前記一体加工体を線材に引抜加工することを特徴とする請求項15記載の方法。
【請求項18】
(i)B含有率が1原子%以上30原子%以下となるようにSnとBとCuを混合した混合粉末からなる第1の基材を得る工程と、
(ii)前記第1の基材をNbまたはNb系合金からなる筒状の第2の基材のなかに充填して複合体を作製する工程と、
(iii)前記複合体を線材に加工する工程と、
(iv)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材の製造方法。
【請求項19】
(i)B含有率が1原子%以上30原子%以下で、かつNb含有率が20原子%以上55原子%以下となるようにSnとNbとBとCuを混合した混合粉末からなる第1の基材を得る工程と、
(ii)前記第1の基材をNbまたはNb系合金からなる筒状の第2の基材のなかに充填して複合体を作製する工程と、
(iii)前記複合体を線材に加工する工程と、
(iv)前記線材を熱処理することによりNb3Sn化合物層を生成する工程と、
を有することを特徴とするNb3Sn超伝導線材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−262786(P2010−262786A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111307(P2009−111307)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(000125369)学校法人東海大学 (352)
【Fターム(参考)】