説明

OVD付き磁気転写シート

【課題】キャッシュカードやクレジットカード等として用いられている磁気カードの製造に際して好適に使用されるOVD付き磁気転写シート、より詳しくは、これを使用して被転写体上に転写形成されたOVD付き磁気記録部の表面の耐摩耗性が向上されるようにしたOVD付き磁気転写シートの提供を目的とする。
【解決手段】支持体上に、剥離性保護層とOVD層と磁気記録層と接着層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるOVD付き磁気転写シートであって、前記剥離性保護層の構成材料は、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.4以下となる有機高分子材料を70%以上含有する混合物からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッシュカードやクレジットカード等として用いられている磁気カードの製造に際して好適に使用されるOVD付き磁気転写シート、より詳しくは、これを使用して被転写体上に転写形成されたOVD付き磁気記録部の表面の耐摩耗性が向上されるようにしたOVD付き磁気転写シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、偽造防止手段として、光の干渉を利用して立体画像や特殊な装飾画像を表現し得るホログラムや回折格子、さらには、光学特性の異なる薄膜を多層に重ねた媒体であって、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜、等々のOVD(Optically Variable Device)が盛んに利用されている。これらOVDは高度な製造技術を必要とし、また独特な視覚効果を有しており、一瞥で真偽が判定できること等の理由から、有効な偽造防止手段として様々な分野で益々広く使われるようになってきている。
【0003】
これらのOVDは、具体的には、メンバーズカードや社員カード等のプラスチックカードの表面に配置させて使われているが、最近では、クレジットカードやキャッシュカード等のプラスチック製磁気カードに適用し、偽造防止の効果を一層向上させようとする提案もされている。
【0004】
しかしながら、磁気カードは形状が規格で決められているため、限られたスペースの中で情報が記録でききるようにし、かつ用途や持ち主、有効期限等の情報を表示しつつもカードとしての意匠を満足するようにしなければならず、偽造防止手段であるホログラム等のOVDの磁気カード表面への配置はスペース的に厳しい制約を受けることになる。このため、この厳しい制約から逃れるための手段として、磁気カードの磁気記録層上にOVDを有するOVD層を配置、積層させたOVD一体型の磁気転写シートを用いて磁気カードを作製する技術が提案されている。このような技術に基づいて作製される磁気カードは、その磁気記録層の上部のみにOVDが位置するようになり、装飾の点でも優れたものとされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
磁気カードは、その磁気記録層に記録されている磁気情報の読み取りを行う際に金属製の磁気ヘッドに擦られるため、特にその磁気読み取り部分においては優れた耐摩耗性が要求される。磁気カードの製造に用いられる磁気転写シートは、支持体上に少なくとも剥離性保護層と磁気記録層と接着層とが積層された構成となっており、また、その剥離性保護層はアクリル樹脂で構成されてるものが一般的である。従って、このような構成の磁気転写シートを用いて製造された磁気カードの磁気記録部の表面はアクリル樹脂からなる剥離性保護層で覆われ、その下層に磁気記録層が位置するようになる。ところが、アクリル樹脂からなる保護層では十分な耐摩耗性が得られないため、剥離性保護層の耐摩擦性の向上のための提案が強く期待されていた。
【0006】
このような状況の下、上記したような磁気転写シートにおいて、その剥離性保護層の耐摩耗性を向上させるべく、電離放射線(紫外線等)硬化型の樹脂からなる剥離性保護層を設けた転写シートの提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平6−167920号公報
【特許文献2】特開2001−104874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、電離放射線(紫外線等)硬化型の樹脂からなる剥離性保護層を設けた磁気転写シートでは、安定した硬化膜(剥離性保護層)が得られ難く、十分な耐摩耗性が確保し難かった。なぜなら、磁気記録層上に位置させる保護層等の薄膜は、そこを介して磁気記録層からの磁気出力が得られるようにするため、1μm〜3μm程度の厚さで加工しなければならいのであるが、このような厚さでは均質で安定した電離放射線(紫外線等)硬化型の樹脂からなる硬化薄膜が得られ難いからである。また、電離放射線(紫外線等)硬化型の樹脂は硬化収縮が大きいために磁気転写シートにカールを生じさせ、安定した品質のものを作業性良好に製造することが難しいという欠点もある。
【0008】
本発明は以上のような状況に鑑みなされたものであり、磁気転写シートの剥離性保護層を所定の構成材料からなるものとすることにより、優れた耐摩耗性を有する剥離性保護層をOVD層並びに磁気記録層と共に一体的に被転写体側へ転写することを可能とする、OVD付き磁気転写シートを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上のような目的を達成するためになされ、請求項1記載の発明は、支持体上に、剥離性保護層とOVD層と磁気記録層と接着層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるOVD付き磁気転写シートであって、前記剥離性保護層の構成材料は、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.4以下となる有機高分子材料を70%以上含有する混合物からなることを特徴とするOVD付き磁気転写シートである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のOVD付き磁気転写シートは、その一部を構成する剥離性保護層は、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.4以下となる有機高分子材料を70%以上含有する混合物からなるので、優れた耐摩耗性を有する剥離性保護層をOVD層並びに磁気記録層と共に一体的に被転写体側へ転写することを可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係るOVD付き磁気転写シートの概略の断面構成を示す説明図である。図にも示すように、このOVD付き磁気転写シートは、支持体1上に、所定の構成材料からなる剥離性保護層2と、OVD層3と、磁気記録層4と、接着層5とが積層されてなるものである。
【0013】
以下、このOVD付き磁気転写シートの各層に関して詳細に説明する。
【0014】
支持体1としては、厚みが安定しており、かつ耐熱性の高いポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを用いるのが一般的であるが、必ずしもこれに限るものではない。その他の材料としては、ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム等の耐熱性の高いフィルムが例示できる。
【0015】
転写条件等により、後述する剥離性保護層2の剥離が困難である場合には、この支持体1の表面部分に別途に従来公知の離形層を設けるようにしてもよく、また剥離が軽すぎる場合には、従来公知の易接着処理を行って剥離の度合いを調整するようにしてもよい。さらに、転写に影響が無い限りは、帯電防止処理やマット処理、エンボス処理等の種々の処理が施されていても何ら問題は無い。
【0016】
一方、この支持体1上に設けられている剥離性保護層2は、転写の際に支持体1から剥がれる層であり、剥離した後はOVD層3を覆うように被転写体側に転写、配置される層であって、機械的損傷や携帯時の擦り等による外部損傷、さらには生活物質(酒、水等)等に対する耐性を転写部分に付与する役目も兼ねている。
【0017】
この剥離性保護層2は、特に下層に位置するOVD層3や磁気記録層4を保護するための優れた耐摩耗性を有していることが要求される。そこで、本発明の磁気転写シートにおいては、この剥離性保護層2の構成材料として、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.4以下となる有機高分子材料を70%以上含有する混合物を用いる。
【0018】
従来の磁気転写シートの剥離性保護層の構成材料としはアクリル系の樹脂がよく用いられているが、例えばアクリル系の樹脂は、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.56程度であって、それよりなる剥離性保護層においては、上記したような特性、すなわち下に位置する層を保護するための優れた耐摩耗性を発現することができない。
【0019】
剥離性保護層2は、具体的には、上記の特性を有するポリアリレート、ポリカーボネート、塩化ビニル、酢酸セルロース、ポリアミド等の有機高分子材料を70%含有する混合物を用い、グラビアコーティング、ホットメルトコーティング等の公知の各種コーティング法によって1〜5μm程度の厚さで形成される。
【0020】
上記した特性を有する有機高分子材料の含有割合を混合物中で70%以上とするのは、樹脂固有の滑性を有効に発現できるようになるからである。特に、80%以上の割合で含有されていることが好ましい。このような含有割合で上記特性の有機高分子材料が混合物中に含有されていると、前述の小さな動摩擦係数を有する樹脂固有の滑性が発現し、より摩擦に対して強くなる。また、混合物中にはさらに耐摩耗性をさせるべく公知のワックスや滑剤、フィラー等を適宜添加することも可能である。
【0021】
次に、OVD層3に関して、少し詳しく説明する。このOVD層3は、光の干渉を利用して立体画像を表示したり、見る角度により色が変化するカラーシフトが生じるようになっているOVDを具備してなる層である。OVDの例としては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録するレリーフ型や、体積方向に干渉縞を記録する体積型のホログラムや回折格子がある。一方、ホログラムや回折格子とは異なり、見る角度により色の変化(カラーシフト)を生じる、光学特性の異なるセラミックスや金属材料の薄膜を積層してなる光学多層干渉膜層や、コレステリック液晶薄膜層もその例である。
【0022】
コレステリック液晶薄膜層を構成するコレステリック液晶は、光学活性の状態では薄層内ではネマチック一軸配向しているが、隣接層間では相互に一定方向に一定角のねじれを起こしている螺旋構造を有する液晶である。この螺旋のピッチは数100nmから無限大まで分布する。そして、この螺旋構造によりコレステリック液晶は光との特異な相互作用を起こす。すなわち、螺旋軸に沿って屈折率が周期的に変動し、そのために螺旋ピッチに相応した波長の光を選択的に反射し、また、螺旋の掌性に依存して、反射光が左円偏光か右円偏光を示し、さらに青から赤まできらびやかな色彩を放し、また、大きな旋光度を示す。
【0023】
一方、光学多層干渉膜層は、異なる光学特性を有する多層の光学薄膜からなるものであり、金属薄膜、セラミックス薄膜、または、それらを併設してなる複合薄膜を所定の組み合わせで積層してなる多層の層である。具体的には、屈折率の異なる薄膜を積層したもの
である場合は、高屈折率の薄膜と低屈折率の薄膜を組み合わせてもよく、また特定の組み合わせになる複合薄膜を交互に積層するようにしてもよい。各薄膜または複合薄膜における光学的条件が適宜組み合わされて、所望の光学的効果(ここでは構造色)を発現するようになる。
【0024】
より具体的には、高屈折率材料もしくは光透過率が20%〜70%の金属からなる薄膜より少なくとも一種、屈折率がおよそ1.5程度の低屈折率材料よりなる薄膜より少なくとも一種を選択し、これらを所定の厚さで交互に積層させることにより、特定の波長の可視光に対する吸収あるいは反射を示す光学多層干渉薄膜層が得られる。
【0025】
この光学多層干渉薄膜層の形成に当たっては、膜厚、成膜速度、積層数等の制御が可能な、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法等の薄膜形成方法が適宜選択して採用できる。
【0026】
一方、光学多層干渉膜層ではないが、多重反射(散乱)を示す還元二酸化チタン被覆雲母や酸化鉄被覆雲母の粉末をバインダー中に分散したインキを用いて形成される、見る角度により微妙な色変化(フリップフロップ効果)を与える薄膜層もOVD層の例である。
【0027】
また、ホログラムや回折格子の例としては、光の干渉縞を微細な凹凸パターンとして平面に記録してなるレリーフ型や体積方向に干渉縞を記録してなる体積型のものが具体例として挙げられる。尚、特に量産性や製造コストを考慮した場合には、これらの中では、その適性の高さゆえにレリーフ型のホログラム(又は回折格子)が好ましく用いられる。図1に示すOVD層3はそのOVDとしてレリーフ型のホログラムを採用した例で示してある。すなわち、3Aはホログラムに係る微細な凹凸模様がその表面に形成されているOVD形成層を、3BはOVD効果層をそれぞれ示している。
【0028】
レリーフ型のホログラム(または回折格子)は、光学的な撮影方式や電子線の描画方式、さらには誘起表面レリーフ形成方式等により、微細な凹凸パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製し、しかる後にこのマスター版から電気メッキ法により凹凸パターンを複製してなるニッケル製のプレス版を得、そしてこのプレス版にて得られる。すなわち、このプレス版を加熱しOVD形成層3Aに押し当て、その微細な凹凸パターンを賦型させることによりレリーフ型ホログラムが作製される。
【0029】
このようにして得られるOVD形成層3Aの構成材料としては、上記したプレス版のレリーフパターンが賦型可能なものである必要があり、その主たる材料としては熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、紫外線あるいは電子線硬化性樹脂等が挙げられる。
【0030】
具体的には、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂や、反応性水酸基を有するアクリルポリオールやポリエステルポリオール等にポリイソシアネートを架橋剤として添加、架橋したウレタン樹脂や、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂等の熱硬化樹脂、エポキシ(メタ)アクリル、ウレタン(メタ)アクリレート等の紫外線あるいは電子線硬化樹脂を単独もしくはこれらを複合したものが使用できる。
【0031】
また、上記した誘起表面レリーフ形成方式によりホログラムを得る場合には、アゾベンゼンを側鎖に持つポリマーのアモルファス薄膜に対して、数10mW/cm2程度の比較的弱い光(青色−緑色にわたる範囲にある波長)を照射することによって、数μmのスケールで分子の移動を起こさせ、その結果として薄膜表面(OVD形成層表面)にホログラムに係るレリーフを形成すればよい。
【0032】
OVDに係る画像表現方法としては、立体的画像を再現する3Dホログラムや回折格子
を微小なドットで表現して高い輝度感を与えるようにしたグレーティングイメージが挙げられる。また、最近では回折格子の微小なドットを星型等の特定形状で形成する手法や、マイクロ文字と言われる肉眼では見えない細かな文字を描画する手法や、写真のように被写体の色彩を忠実に再現する手法や、見る角度でまったく違う複数の画像を表現するチェンジングと呼ばれる手法、回折格子の形状を光回折効率の高いブレーズド格子と呼ばれる鋸刃状に形成する手法等が開発されているが、本発明においてはこれらを含む種々の画像表現法を用いることができる。
【0033】
他方、OVD層3を構成するOVD効果層3bの方は、OVDに係る画像やカラーシフトを効果的に認識させるための層であり、その認識を視覚に訴えるようにするための反射膜と透過膜のどちらか1種若しくは2種以上の複合によりなる層である。より具体的には、OVD形成層3Aの構成材料の屈折率とは異なり、かつ透明なTiO2、Si23、SiO、Fe23、ZnS等の高屈折率材料によって形成される層である。
【0034】
OVD効果層3Bが光透過膜のものである場合には、OVD形成層3Aを構成する材料よりも屈折率が高い高屈折率材料を使用する必要がある。その屈折率の差は、好ましくは0.2以上とすることが好ましい。このとき、屈折率の差を0.2以上取ることによって、OVD形成層3Aとの界面で屈折及び反射が起こり、透光性と良好な光反射によって優れたOVD効果を得ることができる。つまり、視覚的に実効性の高いホログラム(または回折格子)を得ることができる。
【0035】
ここで使用される材料としては、前述した光学多層干渉薄膜層の構成材料として示したたセラミック材料が使用可能である。また、粒子径が500nm以下であり、屈折率2.0以上の高屈折微粉末材料をバインダー樹脂中に分散した高輝性光透過インキを使用してもよい。そして、公知の真空蒸着法、スパッタリング法等の薄膜形成技術にて、その厚さを5〜1000nm程度として設ければよい。さらには、偽造防止効果を向上すべく、一旦形成した均一な厚さの薄膜をパターン状に部分的に取り除き、OVD効果層とするようにしてもよい。
【0036】
その手法としては、1)OVD形成層形成用の溶解性樹脂からなる層にOVDに係る微細凹凸パターンを賦型し、さらに金属薄膜を積層した後、所定の部分の溶解性樹脂層とそれに対応する金属薄膜層を部分的に洗浄して除去する手法、2)金属薄膜層に耐酸性あるいは耐アルカリ性の樹脂を用い、パターン状に印刷した後、未印刷部分の金属薄膜層を酸あるいはアルカリでエッチングする方法、さらには、3)光を露光することによって、溶解するかあるいは溶解し難くなる樹脂材料を薄膜状に塗布し、しかる後にその薄膜状の樹脂部分に対して所望の形状のマスク越しに露光を施した後、不要部分を洗浄あるいはエッチングで除去する手法、等が挙げられる。
【0037】
一方、磁気記録層4は、磁性体を含むインキや塗料等の薄膜形成用材料を用いて印刷もしくは塗布方法により形成されてなる薄膜層である。薄膜形成用材料の例としては、磁性体であるγ−Fe23 、Co含有Fe23 、Fe34、バリウムフエライト、ストロンチウムフエライト、Co・Ni・Fe・Crの単独もしくは合金、希土類Co磁性体等をブチラール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂等の高分子樹脂中に分散・混練させたものが挙げられる。このような組成の薄膜形成用材料には、必要に応じて界面活性剤、シランカップリング剤、可塑剤、ワックス、シリコーンオイル、カーボン等の化学物質や顔料を添加することも可能である。
【0038】
また、磁気記録層4としては、このような薄膜形成用材料からなる磁気記録層以外にも、近年高密度記録の可能な点で注目されている蒸着、特に斜方蒸着によって形成された金属薄膜層により構成されたものであってもよい。その具体例としては、ニッケルやコバルトの単独もしくは合金の斜方蒸着膜からなる磁気記録層が挙げられる。
【0039】
一方、このような磁気記録層4の上に積層して設けられている接着層5であるが、この層は、様々な被転写体(例えば、紙・プラスチック)に接した状態で熱および圧力を与えられることにより、被転写体に接着することができる機能を有する公知の感熱性接着材料により構成される。構成材料としては、例えばアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩ビ・酢ビ共重合体等が具体的に挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものでなく公知の他の感熱性接着材料であってもよい。
【0040】
以上、本発明を一実施形態に基づき説明してきたが、本発明のOVD付き磁気転写シートはこのような構成のものに限定されるものではなく、意匠性を向上すべく各層を着色したり、表面に印刷を施したものであってもよい。また、各層間の密着性を考慮し、各層間に接着アンカー層が設けられていてもよい。
【0041】
さらには、他の偽造防止効果を付与するために各層に外部刺激(紫外線、赤外線等の照射)を与えると発光が生じる発光材料を適宜添加するようにしてもよい。
【0042】
以下、本発明を具体的な実施例を挙げて詳細に説明する。
【実施例1】
【0043】
厚み25μmの透明ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムから成る支持体上に、以下に示す組成の剥離性保護層形成用材料からなる剥離性保護層と、以下に示す組成のOVD効形成層形成用材料からなるOVD効形成層をグラビア法にて各々1μmの厚さとなるように設け、次いで、ロールエンボス法によりOVD形成層上にOVDレリーフパターンを賦型した。しかる後、真空蒸着法を用いて膜厚が0.05μmのアルミニウム薄膜層(OVD効果層)を設けた。そして、磁気記録層および接着層を、それぞれ下記する組成の構成材料により10μmおよび2μmの厚さで設け、本発明の実施例1に係るOVD付き磁気転写シートを作製した。
【0044】
〔剥離性保護層形成用材料の組成〕
ポリカーボネート 5重量部
ポリエチレンWAX 0.1重量部
MEK(メチルエチルケトン) 64.9重量部
トルエン 30重量部。
【0045】
〔OVD形成層形成用材料の組成〕
ウレタン樹脂 25重量部
MEK 50重量部
トルエン 25重量部。
【0046】
〔磁気記録層形成用材料の組成〕
γ−Fe2O 30重量部
塩酢ビ共重合体 3重量部
ポリウレタンエラストマー 0重量部
トルエン 15重量部
MEK 15重量部。
【0047】
〔接着層形成用材料の組成〕
塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体 15重量部
アクリル樹脂 5重量部
酢酸エチル 50重量部
酢酸ブチル 30重量部。
【0048】
剥離性保護層形成用材料を構成するポリカーボネートの、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数は0.3であった。
【実施例2】
【0049】
剥離性保護層形成用材料として下記の組成のものを使用した以外は実施例1と同様な方法で、比較のための実施例2に係るOVD付き磁気転写シートを作製した。
【0050】
〔剥離性保護層形成用材料の組成〕
アクリル樹脂 15重量部
ポリエチレンWAX 0.3重量部
MEK(メチルエチルケトン) 54.7重量部
トルエン 30重量部。
【0051】
上記実施例に係る各OVD付き磁気転写シートの接着層面を塩化ビニル製カード基体(厚さ0.8mm)の表面部分に当接させ、磁気転写シートの支持体側から熱ロールを用いて圧着・接着させた後、支持体を剥がして、OVD付き磁気記録層を有する磁気カードを作製した。
【0052】
それぞれのOVD付き磁気記録層を有する磁気カードを磁気読み取り機中に搬送させ、磁気情報の読み取りを複数回行い、その耐性を確認した。その結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

表1からも分かるように、実施例2の磁気転写シートを用いて作製された磁気カードでは5000回の読み取りは不可能であったが、実施例1に係る本発明のOVD付き磁気転写シートを用いて作製された磁気カードでは10000回の読み取りが可能であり、耐磨耗性が優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明のOVD付き磁気転写シートの概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1・・・支持体
2・・・剥離性保護層
3・・・OVD層
3A・・・OVD形成層
3B・・・OVD効果層
4・・・磁気記録層
5・・・接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、剥離性保護層とOVD層と磁気記録層と接着層とがこの相対的順序で少なくとも積層されてなるOVD付き磁気転写シートであって、前記剥離性保護層の構成材料は、JISK7125に規定する摩擦係数試験を滑り片として鉄を用いて行ったときの動摩擦係数が0.4以下となる有機高分子材料を70%以上含有する混合物からなることを特徴とするOVD付き磁気転写シート。

【図1】
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【公開番号】特開2008−34049(P2008−34049A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207767(P2006−207767)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】