説明

PD−1に対する抗体およびその使用

本開示は、PD−1(Programmed Death 1)のアゴニストおよび/またはアンタゴニストとして作用し得る抗体および抗体結合性フラグメントを提供するのであって、それによって、概して、免疫応答、ならびに詳細にはTcRおよびCD28によって介される免疫応答を調節する。これらの開示される組成物および方法は、例えば、自己免疫疾患、炎症性障害、アレルギー、移植拒絶、癌、および他の免疫系障害の処置において使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本技術分野は、Programmed Death 1(PD−1)レセプターによって調節される免疫応答の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
適応免疫応答は、T細胞およびB細胞と呼ばれるリンパ球の二種の主要なクラスの活性化、選択、およびクローン増殖を含む。抗原と接触した後、T細胞は増殖して抗原特異的エフェクター細胞へと分化し、一方でB細胞は増殖して抗体分泌細胞へと分化する。
【0003】
T細胞活性化は、T細胞と抗原提示細胞(APC)との間のいくつかのシグナル伝達現象を必要とするマルチ工程プロセスである。T細胞活性化が起こるためには、二つのタイプのシグナルが、休止T細胞へ伝達されなければならない。第一のタイプは、抗原特異的T細胞レセプター(TcR)によって媒介され、免疫応答に特異性を与える。第二の、同時刺激のタイプは、この応答の程度を調節し、T細胞上の補助レセプターを介して伝達される。
【0004】
一次同時刺激シグナルは、CD28のリガンドのB7−1またはB7−2の結合の際に、活性化CD28レセプターを介して伝達される。対照的に、同一のB7−1またはB7−2による阻害性CTLA−4レセプターの結合は、結果としてT細胞応答の減弱になる。従って、CTLA−4シグナルは、CD28によって媒介される同時刺激に拮抗する。高い抗原濃度では、CD28同時刺激は、CTLA−4阻害性効果より優位に立つ。CD28およびCTLA−4の時間的調節は、活性化シグナルと阻害性シグナルとの間のバランスを保ち、有効な免疫応答の発生を確実にし、一方で自己免疫の発生に対して保護する。
【0005】
CD28およびCTLA−4の分子ホモログ、ならびにこれらのB−7様リガンドが、最近、同定されている。ICOSは、CD28様同時刺激レセプターである。PD−1(Programmed Death 1)は、阻害性レセプターであり、CTLA−4のカウンターパートである。本開示は、PD−1によって媒介される免疫応答の調節に関する。
【0006】
PD−1は、もともとは、活性化誘導性アポトーシスを起こすT細胞株において同定された、50〜55kDaのI型膜貫通型レセプターである。PD−1は、T細胞、B細胞、およびマクロファージにおいて発現される。PD−1に対するリガンドは、B7ファミリーメンバーであるPD−L1(B7−H1)およびPD−L2(B7−DC)である。
【0007】
PD−1は、その細胞外領域に単一のIg V様ドメインを含む免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーのメンバーである。このPD−1細胞質ドメインは、ITIM(免疫レセプターチロシンベースの阻害性モチーフ)(immuno−receptor tyrosine−based inhibitory motif)内に位置する最も膜近位のチロシン(マウスPD−1ではVAYEEL)である、二つのチロシンを含む。PD−1上のITIMの存在は、この分子が、細胞質のホスファターゼの補充によって、抗原レセプターシグナル伝達を減弱するために機能することを示す。ヒトPD−1タンパク質およびマウスPD−1タンパク質は、4つの潜在的N−グリコシル化部位およびIg−Vドメインを規定する残基を保存しながら約60%のアミノ酸同一性を共有する。細胞質領域のITIMならびにカルボキシ末端のチロシン周囲のITIM様モチーフ(ヒトおよびマウスにおいてTEYATI)もまた、ヒトオルソログとマウスオルソログとの間で保存される。
【0008】
PD−1は、活性化T細胞、活性化B細胞、および活性化単球上で発現される。実験データは、中枢免疫応答および抹消免疫応答のダウンレギュレーションにおけるPD−1とそのリガンドとの相互作用示す。特に、PD−L1の存在下において、野生型T細胞における増殖は阻害されるが、PD−1欠損T細胞における増殖は阻害されない。さらに、PD−1欠損マウスは、自己免疫表現型を示す。C57BL/6マウスにおけるPD−1欠損は、結果として、慢性進行性狼瘡様の糸球体腎炎および関節炎を生じる。Balb/cマウスでは、PD−1欠損は、心臓組織特異的な自己反応性抗体の存在によって、重度の心筋症をもたらす。
【0009】
一般的に、例えば、自己免疫疾患、炎症性障害、アレルギー、移植拒絶、癌、免疫不全、および他の免疫系関連障害のような免疫障害のための安全かつ有効な治療方法を提供する必要性が、存在する。これらの障害に関与する免疫応答の調節は、PD−1経路の操作によって、成し遂げられ得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本開示は、PD−1のアゴニストおよび/またはアンタゴニストとして作用し得る抗体を提供して、これにより、PD−1によって調節される免疫応答を調節する。本開示は、新規抗原結合フラグメントを含む抗PD−1抗体を、さらに提供する。本発明の抗PD−1抗体は、(a)PD−1(ヒトPD−1を含める)に特異的に結合すること;(b)PD−1とその天然リガンドとの相互作用をブロックすること;または(c)両方の機能を実行することが可能である。さらに、これらの抗体は、免疫調節性特性を有する(すなわち、これらの抗体は、免疫応答のPD−1関連ダウンレギュレーションの調節において有効であり得る)。使用方法および所望される効果に応じて、これらの抗体は、免疫応答を増強するか、または阻害するかのいずれかのために、使用され得る。
【0011】
これらの抗体の非限定的な例示的な実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、およびPD1−F2として呼ばれる。他の実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2のFvフラグメントのVドメインおよび/またはVドメインを含む。さらなる実施形態は、任意のこれらのVドメインおよびVドメインのうちの一以上の相補性決定領域(CDR)を含む。他の実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2のVドメインのH3フラグメントを含む。
【0012】
本開示はまた、PD−1抗体を含有する組成物、および免疫応答を調節する方法(ヒトまたは動物を処置する方法を含める)におけるこれらの使用を提供する。特定の実施形態では、抗PD−1抗体は、TcR/CD28によって媒介されるT細胞応答を上昇または低下させることによって、免疫障害を処置するか、または予防するために使用される。本発明の組成物を用いた処置に感受性がある障害としては、関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、移植拒絶、移植片対宿主病、高増殖性免疫不全、癌、および感染症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
さらに、抗PD−1抗体は、生物学的サンプル中のPD−1またはそのフラグメントを検出するために、診断的に使用され得る。検出されるPD−1の量は、PD−1の発現レベルと相関し得、さらに、この発現レベルは、被験体内の免疫細胞の活性化状態(例えば、活性型のT細胞、B細胞、および単球)と相関する。
【0014】
本開示はまた、単離された核酸を提供し、この核酸は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2のFvフラグメントのVドメインまたはVドメインをコードする配列を含む。任意の本明細書で開示されるVドメインおよびVドメインからの一以上のCDRをコードする配列を含む、単離された核酸もまた提供される。本開示はまた、このような核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提供する。
【0015】
本開示はさらに、新しいVドメインまたはVドメイン、ならびに/あるいはPD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2のVドメインもしくはVドメイン由来のこのようなドメインの全てまたは一部を含む機能的抗体を生成する方法を提供する。
【0016】
本開示のさらなる局面は、一部分は、以下の明細書において示され、そして一部分は明細書から明らかになるか、または本発明を実施することによって理解され得る。本発明は、示され、特に、添付の特許請求の範囲において示され、そして本開示は、決して特許請求の範囲の範囲を限定することとして解釈されるべきでない。以下の詳細な説明は、本発明の種々の実施形態の例示的な説明を含むものであって、特許請求されるように、本発明を限定するものではない。添付の図面は、本明細書の一部を構成し、そしてこの明細書とともに、種々の実施形態を説明するためだけに役立ち、本発明は限定しない。参考文献の引用は、これらの参考文献が本発明の先行技術であることを承認するものではない。
【0017】
(詳細な説明)
(定義)
用語「抗体」は、本開示において使用される場合、免疫グロブリンまたはそのフラグメント、もしくは誘導体を言い、そして、この抗体がインビトロまたはインビボで産生されるか否かにかかわらず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、モノ特異的抗体、ポリ特異的抗体、非特異的抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、および移植抗体を含むが、これらに限定されない。本開示の目的のために、「インタクト抗体」のように、用語「インタクト」によって他に修飾されない限り、用語「抗体」はまた、抗体フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)、Fv、scFv、Fd、dAb)、ならびに抗原結合機能(すなわち、PD−1に特異的に結合する能力)を維持する他の抗体フラグメントを含む。代表的には、このようなフラグメントは、抗原結合ドメインを含む。
【0018】
用語「抗原結合ドメイン」、「抗原結合フラグメント」、および「結合性フラグメント」は、抗体と抗原との間の特異的結合を担うアミノ酸を含む抗体分子の一部分を言う。例えば、抗原が大きい場合、この抗原結合ドメインは、この抗原の一部分にだけ結合し得る。抗原結合ドメインとの特異的相互作用を担う抗原分子の部分は、「エピトープ」または「抗原決定基」と呼ばれる。
【0019】
抗原結合ドメインは、代表的に、抗体軽鎖可変領域(V)および抗体重鎖可変領域(V)を含むが、抗体は、必ずしも両方を含む必要はない。例えば、いわゆるFd抗体フラグメントは、Vドメインのみからなるが、それでもインタクトな抗体のいくつかの抗原結合機能を保持する。
【0020】
用語「レパートリー」は、発現される免疫グロブリンをコードする配列に全体的にあるいは部分的に由来するヌクレオチドの遺伝的に多種多様な収集物を言う。この配列は、例えば、H鎖のVセグメント、Dセグメント、およびJセグメント、ならびに例えば、L鎖のVセグメントおよびJセグメントのインビボでの再構成によって作製される。あるいは、この配列は、インビトロ刺激により細胞から産生され得、このインビトロ刺激に応じて再構成が生じる。あるいは、この部分的配列または全配列は、例えば、ヌクレオチド合成、ランダム変異誘発、および他の方法(例えば、米国特許番号第5,565,332号に開示される)によって、再構成されていないVセグメントをDセグメントおよびJセグメントと組み合わせることにより得られ得る。
【0021】
用語「特異的相互作用」および「特異的結合性」は、生理的条件下において、比較的安定である複合体を形成する二つの分子を言う。通常、中〜高程度の受容能力有する低親和性を有する非特異的結合と区別されて、特異的結合は、高親和性および低〜中程度の受容能力によって特徴づけられる。代表的には、結合は、親和性定数Kが10−1より高いか、または好ましくは10−1より高い場合、特異的であるとみさなれる。必要に応じて、非特異的結合は、結合状態を変えることによって実質的に特異的結合性に影響することなく、低下され得る。この適切な結合条件(例えば、抗体の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合を可能にする時間、ブロッキング剤(例えば、血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度など)は、慣用的な技術を用いて、当業者によって最適化され得る。例示的な条件は、実施例1、2、4、6、および7において示される。
【0022】
語句「実質的に示されるような」は、本発明の関連するCDRドメイン、Vドメイン、またはVドメインが、特定の領域(例えば、CDR)(この配列は、示される)に対して、同一であるか、または非実質的な相違のみを有するかのいずれかであることを意味する。非実質的な相違は、少数のアミノ酸変化(例えば、特定領域の配列において、任意の5つのアミノ酸から1つまたは2つの置換)を含む。
【0023】
用語「PD−1活性」は、PD−1と関連する一以上の免疫調節性活性を言う。例えば、PD−1は、TcR/CD28を介した免疫応答の負の調節因子である。インビボおよびインビトロでのPD−1活性を評価するための手順は、実施例8、9、および10に記載される。
【0024】
用語「調節する」、「免疫調節性」、およびこれらの同族語は、PD−1の抗PD−1抗体との相互作用によって、T細胞応答のダウンレギュレーションに関連するPD−1の活性の低下または上昇を言い、この低下または上昇は、同抗体の非存在下におけるPD−1活性に比例する。活性の低下または上昇は、好ましくは、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%またはそれ以上である。PD−1活性が低下する場合、用語「調節性」および「調節する」は、用語「阻害性」および「阻害する」と互換可能である。PD−1の活性は、実施例8および9に記載されるようなT細胞増殖アッセイを用いて、定量的に決定され得る。
【0025】
用語「処置」および「治療方法」は、治療処置および予防的(prophylactic)/予防の(preventative)手段の両方を言う。処置を必要とする個体は、すでに特定の医学的障害を有する個体ならびにこの障害を最終的には獲得する個体(すなわち、予防手段を必要とする個体)を含み得る。
【0026】
用語「有効量」は、PD−1の活性を低下させ、患者の症状の回復をもたらすため、あるいは所望される生物学的結果(例えば、T細胞の細胞溶解活性の上昇、免疫寛容の誘導、T細胞を介した免疫応答の負の調節に関連するPD−1活性の低下または上昇など)を達成するために十分な投薬量または量を言う。
【0027】
用語「単離された」は、天然の環境から実質的に遊離している分子を言う。例えば、単離されたタンパク質は、このタンパク質が由来する細胞または組織供給源からの細胞性物質または他のタンパク質を実質的に含まない。用語「単離された」はまた、単離されたタンパク質が十分に純粋であって薬学的組成物として投与されるか、あるいは、少なくとも70〜80%(w/w)純粋、より好ましくは、少なくとも80〜90%(w/w)純粋、さらにより好ましくは、90〜95%純粋;ならびに、最も好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%(w/w)純粋である場合の調製物を言う。
【0028】
(抗PD−1抗体)
本開示は、新規抗原結合フラグメントを含む抗PD−1抗体を提供する。
【0029】
概して、抗体は、例えば、従来のハイブリドーマ技術(KohlerおよびMilstein(1975)Nature,256:495−499)、組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)、または抗体ライブラリーを用いて行われるファージディスプレイ(Clacksonら(1991)Nature,352:624−628;Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597)を用いて作製され得る。他の抗体作製技術については、Antibodies:A Laboratory Manual(編).Harlowら,Cold Spring Harbor Laboratory,1988もまた参照のこと。本発明は、任意の特定の供給源、任意の特定の起源の種、任意の特定の作製方法に限定されない。
【0030】
免疫グロブリンとしても公知であるインタクトな抗体はまた、代表的には、それぞれ約25kDaの二つの軽(L)鎖およびそれぞれ約50kDaの二つの重(H)鎖からなる四量体のグリコシル化されたタンパク質である。二つタイプの軽鎖(λ鎖およびκ鎖として名付けられる)が、抗体において見出されている。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、5つの主要なクラス:A、D、E、G、およびMに割り当てられ得、そしてこれらのうちのいくつかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG、IgG、IgG、IgG、IgA、およびIgA)に分類される。
【0031】
免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元配置は、当該分野で周知である。抗体構造の総説については、前出のHarlowらを参照のこと。簡潔には、各軽鎖は、一つのN末端の可変ドメイン(V)および一つの定常ドメイン(C)からなる。各重鎖は、一つのN末端の可変ドメイン(V)、三つまたは四つの定常ドメイン(C)、およびヒンジ領域からなる。Vに最も近位のCドメインは、C1として名付けられる。このVドメインおよびこのVドメインは、フレームワーク領域と呼ばれる四つの比較的保存された配列の領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)からなり、この領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変配列の三つの領域のための骨格を形成する。このCDRは、抗原との特異的相互作用を担うほとんどの残基を含む。この三つのCDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。重鎖上のCDR構成成分(constituent)は、H1、H2、およびH3と呼ばれ、従って、一方で軽鎖上のCDR構成成分は、L1、L2、およびL3と呼ばれる。CDR3(および特にH3)は、抗原結合ドメイン内の分子多様性の最も大きな原因である。例えば、H3は、二個のアミノ酸残基と同じぐらい短くてもよく、または26個よりも大きくてもよい。
【0032】
Fabフラグメント(フラグメント抗原結合(Fragment antigen−binding))は、上記の定常領域間のジスルフィド結合によって共有結合的に連結されたV−C1ドメインおよびV−Cドメインからなる。宿主細胞において同時に発現される場合に、非共有結合されたVドメインおよびVドメインが解離する傾向を克服するために、いわゆる単鎖(sc)Fvフラグメント(scFv)が構築され得る。scFvにおいては、可撓性かつ適切な長さのポリペプチドが、VのC末端をVのN末端に連結させるか、またはVのC末端をVのN末端に連結させる。最も一般に、15残基(GlySer)ペプチドは、リンカーとして使用されるが、他のリンカーもまた当該分野において公知である。
【0033】
抗体多様性は、可変領域をコードする複数の生殖系列遺伝子のコンビナトリアルアセンブリおよび種々の体細胞の事象の結果である。この体細胞の事象は、完全なV領域を作製する、多様性(D)遺伝子セグメントおよび連結(J)遺伝子セグメントを有する可変遺伝子セグメントの組換え、ならびに完全なV領域を作製する、可変遺伝子セグメントおよび連結遺伝子セグメントの組換えを含む。この組換えプロセス自体は、不明確であって、V(D)J連結部分でアミノ酸の欠失または付加をもたらす。多様性のこれらの機構は、抗原露出前の発達中のB細胞において起きる。抗原刺激後、B細胞において発現される抗体遺伝子は、体細胞変異を受ける。
【0034】
生殖系列遺伝子セグメントの概算数、これらのセグメントのランダム組換え、およびランダムV−V対形成に基づき、1.6×10までの種々の抗体が産生され得る(Fundamental Immunology,第3版,Paul(編),Raven Press,New York,NY,1993)。抗体の多様性(例えば、体細胞変異)に寄与する他のプロセスを考慮に入れる場合、1×1010以上の種々の抗体が潜在的に作製され得ると考えられる(Immunoglobulin Genes,第2版,Jonioら(編),Academic Press,San Diego,CA,1995)。抗体の多様性に関与する多くのプロセスによって、独立的に作製される抗体は、CDRにおいて同一のアミノ酸配列またはなお実質的に類似のアミノ酸配列を有する可能性は非常に低い。
【0035】
本開示は、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリー由来の新規CDRを提供する。CDRを保有するための構造は、概して、抗体の重鎖または抗体の軽鎖あるいはこれらの一部であり、その構造においてCDRは、天然に存在するVおよびVのCDRに対応する位置に位置している。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、例えば、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,No.91−3242,National Institutes of Health Publications,Bethesda,MD,1991において記載されるように、決定され得る。
【0036】
抗PD−1抗体、これらのscFvフラグメント、VドメインおよびVドメイン、ならびにCDRのDNA配列およびアミノ酸配列は、配列表に示され、表1に記載されるように、列挙される。これらの抗体の特定の非限定的な例示的な実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、およびPD1−F2と呼ばれる。例示的な実施形態のVドメインおよびVドメイン内の各CDRについての位置は、表2および表3に記載される。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

抗PD−1抗体は、必要に応じて、抗体の定常領域またはこれらの部分を含み得る。例えば、Vドメインは、ヒトのCκ鎖またはCλ鎖を含める抗体の軽鎖定常ドメインのこのC末端で付着され得る。同様に、Vドメインに基づく特異的抗原結合ドメインは、任意の抗体アイソトープ(例えば、IgG、IgA、IgE、およびIgM)ならびに任意のこれらのアイソトープのサブクラス(これとしては、IgGおよびIgGが挙げられるが、これらに限定されない)に由来する免疫グロブリン重鎖の全てまたは一部に付着され得る。例示的な実施形態、PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35において、抗体は、ヒトIgG1λの重鎖および軽鎖のC末端フラグメントを含み、一方でPD1−F2は、ヒトIgG1κの重鎖および軽鎖のC末端フラグメントを含む。このC末端フラグメントについてのDNA配列およびアミノ酸配列は、当該分野において周知である(例えば、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest,No.91−3242,National Institutes of Health Publications,Bethesda,MD,1991を参照のこと)。非限定的で例示的な配列が、表4に示される。
【0040】
【表4】

特定の実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、およびPD1−F2由来のFvフラグメントのVドメインおよび/またはVドメインを含む。さらなる実施形態は、任意のこれらのVドメインおよびVドメインのうちの少なくとも一つのCDRを含む。配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16〜40、配列番号47、または配列番号49に示されるCDR配列抗体のうちの少なくとも一つを含む抗体は、本発明の範囲内に含まれる。例えば、実施形態は、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、およびPD1−F2のうちの少なくとも一つから選択される抗体のVドメインのH3フラグメントを含む。
【0041】
特定の実施形態において、Vドメインおよび/またはVドメインは、生殖系列化され得る(germlined)(すなわち、これらのドメインのフレームワーク領域(FR)は、従来の分子生物学技術を用いて生殖系列細胞によって産生されるFRに適合するように変異される)。他の実施形態において、このフレーム領域配列は、コンセンサス生殖系列配列とは異なったままである。
【0042】
特定の実施形態において、上記の抗体は、ヒトPD−1の細胞外ドメイン内のエピトープに特異的に結合する。この予測される細胞外ドメインは、配列番号41(Swissport登録番号Q15116)の約アミノ酸21〜約アミノ酸170の配列からなる。特定の他の実施形態において、この抗体は、10−1を超える親和性で、そしてより好ましくは10−1を超える親和性で、マウスPD−1の細胞外ドメイン内のエピトープに特異的に結合する。マウスPD−1のアミノ酸配列は、配列番号56(登録番号NM_008798)に示され、そのヒトの対応物に対して全体で約60%の同一である。さらなる実施形態において、本発明の抗体は、PD−1のPD−L結合性ドメインに結合する。
【0043】
本発明の抗体はまた、他のタンパク質(例えば、PD−1細胞外ドメインの全て、または一部を含む組換えタンパク質を含む)と結合し得ると、考えられる。
【0044】
当業者は、本発明の抗体を用いて、PD−1といくらかことなるタンパク質を検出し、測定し、そして阻害し得ることを認識する。この抗体は、標的タンパク質が、配列番号41に示される配列内の連続したアミノ酸のうち、少なくとも100個、80個、60個、40個、または20個の任意の配列に対して少なくとも約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、またはそれ以上同一である配列を含む限りは、結合の特異性を保持することが、期待される。この同一性%は、標準的なアラインメントアルゴリズム(例えば、Altshulら(1990)J.Mol.Biol.,215:403−410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら(1970)J.Mol.Biol.,48:444−453のアルゴリズム、Meyersら(1988)Comput.Appl.Biosci.,4:11−17.のアルゴリズムなど)によって決定される。
【0045】
配列相同性分析に加えて、エピトープマッピング(例えば、Epitope Mapping Protocols,Morris(編)Humana Press,1996を参照のこと)ならびに二次構造分析および三次構造分析を実行して、開示された抗体および抗体の抗原との複合体から推測される固有の3D構造を同定し得る。このような方法としては、X線結晶学(Engstom(1974)Biochem.Exp.Biol.,11:7−13)および本発明の開示される抗体の仮想表示のコンピュータモデリング(Fletterickら(1986)Computer Graphics and Molecular Modeling,in Current Communications in Molecular Biology,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
(誘導体)
本開示はまた、PD−1に特異的な抗体を得る方法を提供する。このような抗体のCDRは、表1に同定されるVおよびVの特異的な配列に限定されず、そしてPD−1に特異的に結合する能力を保持するこれらの配列の改変体を含み得る。このような改変体は、当該分野において周知の技術を用いて、当業者によって、表1に列挙される配列から誘導され得る。例えば、アミノ酸置換、アミノ酸欠失、またはアミノ酸付加は、FRにおいておよび/またはCDRにおいてなされ得る。FRにおける変更は、通常、抗体の安定性および免疫原性を向上するように設計され、一方でCDRにおける変更は、代表的に、この標的に対する抗体の親和性を上昇するように設計される。FRの改変体はまた、天然に存在する免疫グロブリンアロタイプ含む。このような、親和性を上昇させる変更は、CDRを変更させること、および抗体の標的に対する抗体の親和性を試験することを包含する慣例的な技術によって、経験的に決定され得る。例えば、保存的なアミノ酸置換は、任意の一つの開示されるCDR内になされ得る。種々の変更が、Antibody Engineering,第2版,Oxford University Press(編)Borrebaeck,1995に記載される方法に従って、なされ得る。これらは、配列内の機能的に等価なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって変更されて、従って「サイレント」変化を生じるヌクレオチド配列を含むが、これらに限定されない。例えば、非極性アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが挙げられる。極性中性アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが挙げられる。陽性荷電(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジンが挙げられる。陰性荷電(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が挙げられる。この配列内のアミノ酸置換は、このアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る(表5を参照のこと)。さらに、このポリペプチドにおける任意のネイティブ残基はまた、アラニンで置換され得る(例えば、MacLennanら(1998)Acta Physio.Scand.Suppl.643:55−67;Sasakiら(1998)Adv.Biophys.35:1−24を参照のこと)。
【0047】
本発明の抗体の誘導体およびアナログは、組換え方法および合成方法(Maniatis(1990)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,およびBodanskyら(1995)The Practice of Peptide Synthesis,第2版,Spring Verlag,Berlin,Germany)を含める当該分野において周知の種々の技術によって、作製され得る。
【0048】
【表5】

一つの実施形態において、本発明のVドメインのアミノ酸配列改変体であるVドメインを作製するための方法は、本発明で開示されるVドメインのアミノ酸配列における一以上のアミノ酸の付加する工程、欠失する工程、置換する工程、もしくは挿入する工程、必要に応じて、このようにして提供されるVドメインを一以上のVドメインと組み合わせる工程、およびPD−1に対する特異的な結合についてVドメインもしくはV/Vの組み合わせを試験する工程、または必要に応じて、このような抗原結合ドメインのPD−1活性を調節する能力を試験する工程を包含する。このVドメインは、同一であるか、または実質的に表1に従って示されるようなアミノ酸配列を有し得る。
【0049】
本明細書中で開示されるVドメインの一以上の配列改変体が、一以上のVドメインと組み合わせられる類似の方法が、採用され得る。
【0050】
本開示のさらなる局面は、PD−1と特異的に結合する抗原結合フラグメントを調製する方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:
(a)置換されるべきCDR3を含むか、またはCDR3のコード領域を欠いたかのいずれかのVドメインをコードする核酸の開始レパートリーを提供する工程;
(b)このレパートリーを、VのCDR3(すなわちH3)について、本明細書中に実質的に示されるようなアミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせて、このドナー核酸が、このレパートリーのCDR3領域内に挿入されることによって、Vドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供する工程;
(c)この生成物レパートリーの核酸を発現する工程;
(d)PD−1に特異的な抗原結合フラグメントを選択する工程;ならびに
(e)この特異的抗原結合フラグメントまたはこの結合性フラグメントをコードする核酸を回収する工程。
【0051】
さらに、本発明のVのCDR3(すなわち、L3)が、置換されるべきCDR3を含むか、またはCDR3のコード領域を欠いたかのいずれかのVドメインをコードする核酸のレパートリーと組み合わされる方法が、採用され得る。このドナー核酸は、配列番号17〜40または配列番号50〜55において実質的に示されるようなアミノ酸配列をコードする核酸から選択され得る。
【0052】
本発明のCDR(例えば、CDR3)をコードする配列は、組換えDNA技術を用いて、例えば、Marksら(Bio/Technology(1992)10:779−783)に記載される方法論を用いて、それぞれのCDR(例えば、CDR3)を欠く可変ドメインのレパートリー内へ導入され得る。特に、可変ドメイン領域の5’末端方向の、または5’末端に隣接するコンセンサスプライマーが、ヒトV遺伝子の第三のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーとともに使用され、CDR3を欠くV可変ドメインのレパートリーを提供し得る。このレパートリーは、特定の抗体のCDR3と組み合わされ得る。類似の技術を用いて、このCDR3由来の配列は、CDR3を欠くVドメインまたはVドメインのレパートリーと混合され得、そしてこの混合された完全なVドメインまたはVドメインは、同族のVドメインまたはVドメインと組み合わされて、本発明のPD−1特異的抗体が作製され得る。次いで、このレパートリーは、適切な宿主細胞系(例えば、WO92/01047に記載されるようなファージディスプレイシステム)において表示されて、これによって適切な抗原結合フラグメントが選択され得る。
【0053】
類似の混合技術またはコンビナトリアル技術もまた、Stemmer(Nature(1994)370:389−391)によって開示され、Stemmerは、β−ラクタマーゼ遺伝子に関する技術を記載するが、このアプローチが、抗体の作製に使用され得ることを認める。
【0054】
さらなる実施形態において、一以上の選択されるV遺伝子および/またはV遺伝子のランダム変異誘発を用いて、本明細書中で開示される配列由来の一以上の配列を有する新規V領域または新規V領域を作製し得る。一つのこのような技術の変異性(error−prone)PCRは、Gramら(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1992)89:3576−3580)によって記載される。
【0055】
使用され得る別の方法は、V遺伝子またはV遺伝子のCDRに変異誘発を仕向けることである。このような技術は、Barbasら(Proc.Nat.Acad.Sci.U.S.A.(1994)91:3809−3813)およびSchierら(J.Mol.Biol.(1996)263:551−567)によって開示される。
【0056】
同様に、一以上のCDR、または三つ全てのCDRは、VドメインまたはVドメインのレパートリー内に挿入され、次いで、PD−1に特異的な抗原結合フラグメントについてスクリーニングされる。
【0057】
免疫グロブリン可変ドメインの部分は、本明細書中に実質的に示されるようなCDRのうちの少なくとも一つを含み、必要に応じて、本明細書中に示されるようなscFvフラグメント由来のフレームワーク領域に介在する。この部分は、FR1およびFR4のいずれかまたは両方の少なくとも約50%を含み得、この50%は、FR1のC末端の50%、FR4のN末端の50%である。可変ドメインの実質的な部分のN末端またはC末端にあるさらなる残基は、天然に存在する可変ドメイン領域に通常は関連しない残基であり得る。例えば、組換えDNA技術による抗体の構築は、導入されるリンカーによってコードされるN末端残基またはC末端残基の導入を結果としてもたらし、クローニングまたは他の操作工程を容易にし得る。他の操作工程は、可変ドメインを、免疫グロブリン重鎖定常領域、他の可変ドメイン(例えば、ダイアボディ(diabody)の作製における)、または以下にさらに詳細に議論されるようなタンパク質性標識を含むさらなるタンパク質配列に連結するためのリンカーの導入を包含する。
【0058】
実施例に例示される実施形態は、VドメインおよびVドメインの「適合性(matching)」対を含むが、当業者は、代替的な実施形態が、VドメインまたはVドメインのいずれかに由来する単一のCDRのみを含む抗原結合フラグメントを含み得ることを認識する。一本鎖特異的結合性ドメインのうちのいずれか一つを使用して、例えばPD−1に結合可能な二つのドメイン特異的な抗原結合フラグメントを形成し得る相補性ドメインについてスクリーニングし得る。このスクリーニングは、WO92/01047に開示されるいわゆる階層的二重コンビナトリアルアプローチを用いたファージディスプレイスクリーニング法(H鎖クローンまたはL鎖クローンのいずれかを含む個々のコロニーを用いて、他の鎖(LまたはH)をコードするクローンの完全なライブラリーを感染させ、そして結果として生じる二本鎖の特異的結合性ドメインは、記載されるようなファージディスプレイ技術に従って選択される)によって成し遂げられ得る。
【0059】
本明細書中で記載される抗PD−1抗体は、別の機能的分子(例えば、別のペプチドまたはタンパク質(アルブミン、別の抗体など)、毒素、放射性同位体、細胞傷害剤、または細胞増殖抑制剤)に連結され得る。例えば、この抗体は、化学的架橋法によって連結され得るか、または組換え方法によって連結され得る。この抗体はまた、米国特許第4,640,835号、同第4,496,689号、同第4,301,144号、同第4,670,417号、同第4,791,192号、または同第4,179,337号に示される様式で、種々の非タンパク質性ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレン)の一つに連結され得る。この抗体は、ポリマーに共有結合によって、化学的に修飾されて、例えば、その循環半減期を増加させ得る。これらを付着するための例示的なポリマーおよび方法はまた、米国特許第4,766,106号、同第4,179,337号、同第4,495,285号、および同第4,609,546号に示される。
【0060】
この開示される抗体はまた、ネイティブのパターンと異なるグリコシル化パターンを有するように変更され得る。例えば、一以上の炭化水素部分が、欠失され得、そして/または一以上のグリコシル化部位が、最初の抗体に付加され得る。本発明で開示される抗体へのグリコシル化部位の付加は、このアミノ酸配列を当該分野において公知のグリコシル化部位コンセンサス配列を含めるように変更させることによって成し遂げられ得る。抗体上の炭化水素部分の数を上昇させる別の手段は、グリコシドを抗体のアミノ酸残基に化学的にまたは酵素的にカップリングさせる工程による。このような方法は、WO87/05330に、およびAplinrら(1981)CRC Crit.Rev.Biochem.,22:259−306に記載される。抗体からの任意の炭化水素部分の除去は、例えば、Hakimuddinら(1987)Arch.Biochem.Biophys.,259:52;およびEdgeら(1981)Anal.Biochem.,118:131によって記載されるように、ならびにThotakuraら(1987)Meth.Enzymol.,138:350によって記載されるように、化学的にまたは酵素的に成し遂げられ得る。この抗体はまた、検出可能な標識あるいは機能的な標識を用いてタグ化され得る。検出可能な標識は、131Iまたは99Tcのような放射性標識を含み、慣用的な化学を用いて抗体に付着され得る。検出可能な標識としてはまた、西洋ワサビペルオキシダーゼあるいはアルカリホスファターゼのような酵素標識が挙げられる。検出可能な標識はさらに、ビオチンのような化学的部分を含み、これは、特定の同族の検出可能な部分(例えば、標識化アビジン)への結合を介して検出され得る。
【0061】
CDR配列が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16〜40、配列番号47、または配列番号49に示されるものと、非実質的にしか異ならない抗体は、本発明の範囲内に含まれる。代表的に、アミノ酸は、同様の荷電特性、同様の疎水性特性、または同様の立体化学的特性を有する関連したアミノ酸によって置換される。このような置換は、当業者の通常技術の範囲内である。CDRの場合と異なり、FRにおいて、さらなる実質的な変更が、抗体の結合特性に悪影響を及ぼすことなく、なされ得る。FRにおける変更は、非ヒト由来フレームワーク残基をヒト化すること、または抗原との接触にとって重要であるか、もしくはこの結合部位の安定化にとって重要である特定のフレームワーク残基を操作すること(例えば、定常領域のクラスまたはサブクラスを変更すること、Fcレセプターのようなエフェクター機能を変更し得る特定のアミノ酸残基を変更すること(例えば、米国特許第5,624,821および同第5,648,260号、ならびにLundら(1991)J.Immun.147:2657−2662およびMorganら(1995)Immunology 86:319−324に記載されるような)、または定常領域が由来する種を変更すること)を包含するが、これらに限定されない。
【0062】
当業者は、上記に記載される改変が、完全に網羅しているわけではなく、多くの他の改変が、本開示の教示の観点から当業者に明らかになることを理解する。
【0063】
(核酸、クローニング、および発現系)
本開示は、開示された抗体をコードする単離された核酸をさらに提供する。この核酸は、DNAまたはRNAを含み得、そして全体的、もしくは部分的に合成であり得るか、または組み換えであり得る。本明細書で示すような核酸配列への言及は、指定の配列を有するDNA分子を包含し、指定の配列を有するRNA分子を包含する。そのRNA配列においては、文脈が別なように必要としない限りは、UはTに置換されている。
【0064】
本明細書で提供される核酸は、本明細書で開示されるCDR、Vドメイン、および/またはVドメインのためのコード配列を含む。
【0065】
本開示はまた、本明細書で開示される少なくとも1つのCDR、Vドメイン、および/またはVドメインをコードする核酸を含むプラスミド、ベクター、ファージミド、転写カセットまたは発現カセットの形態の構築物をも提供する。
【0066】
本開示はさらに、1つ以上の上記の構築物を含む宿主細胞を提供する。
【0067】
CDR(H1、H2、H3、L1、L2、もしくはL3)ドメイン、VドメインまたはVドメインのいずれかをコードする核酸、およびコードされた生成物の作製の方法もまた、提供される。この方法は、コードしている核酸からコードされた生成物を発現する工程を包含する。発現は、適切な条件下で、その核酸を含む組み換え宿主細胞を培養することにより達成され得る。発現による生成に引き続いて、VもしくはVドメイン、または特異的な結合メンバーは、任意の適切な手法を用いて、単離され得、および/または精製され得、次いで、必要に応じて用いられる。
【0068】
抗原結合フラグメント、Vおよび/またはVドメイン、ならびにコード核酸分子およびベクターは、それらの天然の環境から実質的に純粋な形態または均質の形態で単離および/または精製され得る。または、核酸の場合には、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の、もとの核酸もしくは遺伝子を含まずにかまたは実質的に含まずに遊離型で単離および/または精製され得る。
【0069】
種々の異なった宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のための系は、当該分野で周知である。抗体を生成するために適切な細胞に関しては、Gene Expression Systems,Academic Press,Fernandezら(編),1999を参照のこと。手短には、適切な宿主細胞には、細菌、植物細胞、哺乳類細胞、または酵母系またはバキュロウイルス系が挙げられる。当該分野で、異種のポリペプチドの発現のために利用可能である哺乳類細胞株としては、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎細胞、NSOマウスミエローマ細胞、および多くの他の細胞が挙げられる。一般的な細菌宿主は、E.coliである。本発明と両立し得る任意のタンパク質発現系が、開示された抗体を生成するために用いられ得る。適切な発現系は、Gene Expression Systems,Academic Press,Fernandezら(編),1999において記載されたトランスジェニック動物を含む。
【0070】
適切なベクターは、適切な調節配列(プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および必要に応じて他の配列を含む)を含むように選択され得るか、または構築され得る。ベクターは、プラスミドまたはウイルス(例えば、必要に応じて、ファージ、またはファージミド)であり得る。さらなる詳細については、例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989を参照のこと。例えば、核酸構築物の調製、変異誘発、配列決定、細胞へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における核酸の操作のための多くの公知の手法およびプロトコルは、Current Protocols in Molecular Biology,第2版,(編)Ausubelら,John WileyおよびSons,1992において詳細に記載されている。
【0071】
本開示のさらなる局面は、本明細書に記載された核酸を含む宿主細胞を提供する。なおさらなる局面は、そのような核酸を宿主細胞へ導入する工程を包含する方法を提供する。この導入は、任意の利用可能な手法を適用し得る。真核細胞について、適切な手法としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−Dextran、エレクトロポーレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、およびレトロウイルスまたは他のウイルス(例えば、ワクシニア、昆虫細胞についてのバキュロウイルス)を用いた形質導入が挙げられ得る。細菌細胞について、適切な手法は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポーレーション、およびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが挙げられる。核酸の細胞への導入は、その後に核酸からの発現を引き起こすか、または核酸からの発現を可能にすること、例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することが続き得る。
【0072】
(使用方法)
開示された抗PD−1抗体は、免疫応答のPD−1関連ダウンレギュレーションを調節することが可能である。特定の実施形態において、免疫応答は、TcR/CD28に媒介される。この開示された抗体は、これらの使用の方法に依存して、PD−1のアゴニストまたはアンタゴニストのどちらかとして作用し得る。この抗体は、哺乳動物、特にヒトにおいて医学的障害を阻害、診断、または処置するために用いられ得る。本発明の抗体はまた、PD−1またはPD−1発現細胞を単離するためにも、用いられ得る。さらに、この抗体は、異常PD−1発現または機能に関連した障害の危険性を有するか、もしくは疑いのある被験体、または異常PD−1発現または機能に関連した障害を有する被験体を処置するために用いられ得る。
【0073】
本発明の抗体は、特定の抗原(例えば、治療のタンパク質)に対する耐性を導入するための方法において用いられ得る。1つの実施形態において、耐性は、特異的な抗原に対して、抗原および本発明の抗PD−1抗体の共投与によって導入される。例えば、第VIII因子を受けた患者は、このタンパク質に対する抗体をしばしば産生する;組み換え第VIII因子と組み合わせた本発明の抗PD−1抗体の共投与は、この凝固因子に対する免疫応答のダウンレギュレーションをもたらすことが予想される。
【0074】
本発明の抗体は、免疫応答のレベルの減少が所望され得る状況において用いられ得る。それは、例えば、特定の型のアレルギーまたはアレルギー反応(例えば、IgE生成の阻害による)、自己免疫疾患(例えば、慢性関節リウマチ、I型糖尿病、多発性硬化症、炎症性腸疾患、クローン病、および全身性エリテマトーデス)、組織、皮膚および器官移植拒絶反応、および対宿主性移植片病(GVHD)である。
【0075】
減少した免疫応答が所望される場合、本発明の抗PD−1抗体は、免疫応答のPD−1関連減衰作用を増強するために、PD−1に対するアゴニストとして用いられ得る。これらの実施形態において、正のシグナル(すなわち、例えば、TcRまたはBcRのような抗原レセプターにより媒介される)および負のシグナル(すなわち、PD−1)の共提示と両者の間の物理的近接とが必要とされる。好ましい距離は、天然に存在する抗原提示細胞のサイズより小さいか、またはそれと比較できる距離である。すなわち、約100μmより小さく;より好ましくは、約50μmより小さく;および最も好ましくは、約20μmより小さい。
【0076】
いくつかの実施形態において、正のシグナル(活性化)および負のシグナル(阻害)は、固体支持マトリックスもしくはキャリアに固定化されたリガンドまたは抗体により提供される。種々の実施形態において、固体支持マトリックスは、例えば、活性型アガロース、デキストラン、セルロース、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)のようなポリマーからなり得る。あるいは、その固体支持マトリックスは、シリカまたはプラスチックポリマーに基づき得る(例えば、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリビニル、テフロン(登録商標)、など)。
【0077】
そのマトリックスは、患者の脾臓に移植され得る。あるいは、そのマトリックスは、患者から得られたT細胞のエキソビボインキュベーションのために用いられ得、それは、次いで分離され、患者に戻して移植される。そのマトリックスはまた、生分解性材料(例えば、ポリグリコール酸、ポリヒドロオキシアルカノエート、コラーゲン、またはゼラチン)から作製され得、それは、患者の腹膜腔に注射され得、注射に続いてしばらく後に分解する。このキャリアは、細胞を模倣して形成され得る(例えば、ビーズまたはミクロスフェア)。
【0078】
いくつかの実施形態において、正のシグナルは、TcRを結合するT細胞活性化抗CD3抗体により送達される。抗CD3抗体の活性化は、当該分野で公知である(例えば、米国特許第6,405,696号および同第5,316,763号を参照のこと)。活性化TcRシグナルおよび負のPD−1シグナルの間の割合は、当該分野で公知の従来の手順を用いて、または実施例8、9、および10において記載されるとおりに実験的に決定される。
【0079】
特定の状況下において、免疫障害もしくは癌を処置するために、患者の免疫応答を誘発するか、または増強することは所望され得る。開示された方法によって処置されるか、または阻害される障害としては、微生物(例えば、細菌)、ウイルス(例えば、インフルエンザのような全身性ウイルス感染、ヘルペスまたは帯状ヘルペスのようなウイルス性皮膚疾患)、または寄生虫による感染;および癌(例えば、メラノーマおよび前立腺癌)が挙げられるが、これに限定されない。
【0080】
抗PD−1抗体を用いたT細胞活性化の刺激は、T−T細胞反応を増強する。このような場合、抗体は、PD−1のアンタゴニストとして作用する。従って、いくつかの実施形態において、この抗体は、PD−1に関連するダウンレギュレーション活性を阻害するか、または減少するために用いられ得る。すなわち、その活性は、TcR/CD28媒介免疫応答のダウンレギュレーションに関連する活性である。これらの実施形態において、この抗体は、TcR媒介刺激のような正のシグナルと結合していない(例えば、その抗体は可溶化した、支持体に結合していない形態である)。実施例において実証されるように、抗PD−1抗体をアンタゴナイズすることでのPD−1/PD−L相互作用の遮断は、増強されたT細胞増殖反応をもたらし、これは、T−T相互作用におけるPD−1経路についてのダウンレギュレーションの役割と一致している。種々の実施形態において、その抗体は、PD−LのPD−1への結合を、10nMより少ないIC50で阻害する。より好ましくは、5nMより少なく、最も好ましくは1nMより少ない。PD−L結合の阻害は、実施例6において記載のとおりに、または当該分野で公知の手法を用いて、測定され得る。
【0081】
本発明の抗体または抗体組成物は、治療有効量で投与される。概して、治療有効量は、被験体の年齢、状態、および性別、ならびに被験体の医学的状態の重症度により異なり得る。抗体の治療有効量は、約0.001〜約30mg/kg体重の範囲であり、好ましくは、約0.01〜約25mg/kg体重、約0.1〜約20mg/kg体重、または約1〜約10mg/kg体重の範囲である。この用量は、必要なときに、観察される処置の効果を適応させるために、調節され得る。この適切な量は、臨床的指標に基づいて、処置をする医師によって選択される。
【0082】
抗体は、大量瞬時用量として与えられ、投与後の最も長期間の間、抗体の循環レベルを最大化し得る。持続的な注入もまた、大量瞬時用量の後に、用いられ得る。
【0083】
免疫細胞(例えば、活性化T細胞、B細胞、または単球)はまた、患者から単離され得、そして本発明の抗体と一緒に、エキソビボでインキュベートされる。いくつかの実施形態において、免疫応答は、被験体から免疫細胞を除き、インビトロで免疫細胞を本発明の抗PD−1抗体と接触させることにより阻害され得、これは同時に、免疫細胞の活性化(例えば、TcRおよび/またはBcR抗原レセプターに対する抗体による)を伴う。このような実施形態において、抗PD−1抗体は、多価形態として用いられるべきであり、免疫細胞の表面上のPD−1分子は、そのような抗体に対する結合の際に、「架橋される」。例えば、抗PD−1抗体は、ビーズのような固体支持体に対して結合し得るか、または二次抗体を介して架橋され得る。次いで、この免疫細胞は、当該分野で公知の方法を用いて単離され得、患者に再移植され得る。
【0084】
別の局面において、本発明の抗体は、別の治療の送達のための標的剤として、またはPD−1を発現する細胞に対する細胞毒性剤(例えば、トキシン)として用いられ得る。この方法は、治療剤もしくは細胞毒性剤と結合している抗PD−1抗体の投与、または抗体のPD−1に対する結合を可能にする条件を含む。
【0085】
本発明の抗体はまた、生物学的サンプルにおけるPD−1の存在を検出するためにも用いられ得る。検出されるPD−1の量は、PD−1の発現レベルと相関し得、それは、次には、被験体における免疫細胞(例えば、活性化T細胞、B細胞および単球)の活性状態に相関する。
【0086】
抗体を適用する検出方法は、当該分野で周知であり、例えば、ELISA、ラジオイムノアッセイ、免疫ブロット法、ウェスタンブロット、蛍光抗体法、免疫沈降が挙げられる。この抗体は、PD−1を検出するためのこれらの手法の1つ以上を組み入れる診断キットにおいて提供され得る。そのようなキットは、他の成分、パッケージ、指示、またはそのタンパク質の検出を助けるための他の材料を含み得る。
【0087】
この抗体が、診断目的を対象とする場合、例えばリガンド基(例えば、ビオチン)または検出マーカー基(例えば、蛍光基、放射性同位体元素もしくは酵素)を用いて、それらを改変することが所望され得る。所望される場合、本発明の抗体は、従来の手法を用いて標識され得る。適切な検出可能ラベルには、例えば、発蛍光団、発色団、放射性原子、高電子密度試薬、酵素、および特異的な結合パートナーを有するリガンドが挙げられる。酵素は、代表的に、それらの活性によって検出される。例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼは、西洋ワサビペルオキシダーゼのテトラメチルベンジジン(TMB)を青色色素に変換する能力により検出され得、分光光度計を用いて定量化され得る。検出のための、適切な結合パートナーには、ビオチンおよびアビジンまたはストレプトアビジン、IgGおよびプロテインA、ならびに当該分野で公知の多数のレセプター−リガンド結合が挙げられるが、これらに限定されない。他の順列および可能性は、当業者に対して容易に明らかになり、本発明の範囲内で均等物として考えられる。
【0088】
本発明の抗体は、治療剤として効果的なPD−1経路のインヒビターを同定するためのスクリーニング方法において用いられ得る。そのようなスクリーニングアッセイにおいて、第一の結合混合液は、PD−1および本発明の抗体の組み合わせによって形成され;そして第一の結合混合液における結合の量(M)が、測定される。第二の結合混合液もまた、PD−1、抗体、およびスクリーニングされる化合物または薬剤を組み合わせることによって形成され、そして第二の結合混合液(M)における結合の量が、測定される。試験されるための化合物は、実施例において示されるような別のPD−1抗体であり得る。第一および第二の結合混合液における結合の量は、次いで、例えば、M/M比率を計算することにより比較される。その化合物または薬剤は、免疫応答のPD−1関連ダウンレギュレーションを調節することが可能であると考えられ、それは、第一の結合混合液と比べた第二の結合混合液における結合の減少が、観察される場合である。結合混合液の処方および最適化は、当業者のレベルの範囲内であり、そのような結合混合液はまた、結合を増強するか、または最適化するために必要とされる緩衝剤および塩を含み得、さらなるコントロールアッセイは、本発明のスクリーニングアッセイにおいて含まれ得る。従って、PD−1抗体結合を少なくとも約10%(すなわち、M/M<0.9)まで(好ましくは、約30%を超えるまで)減少させることが見出された化合物は同定され、次いで、所望される場合、下に記載の通りの他のアッセイまたは動物モデルにおいて障害を改善する能力について二次的にスクリーニングされる。PD−1と抗体との間の結合の強さは、例えば、酵素免疫測定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、表面プラスモン共鳴に基づく技術(例えば、Biacore)を用いて測定され得、これらのすべては、当該分野で周知の手法である。
【0089】
この化合物は、次いで、実施例に記載のとおりインビトロでまたは動物モデルにおいて(概しては、Immunologic Defects in Laboratory Animals,Gershwinら(編),Plenum Press,1981を参照のこと)、試験され得、例えば、以下のようなものである:SWR X NZB(SNF1)トランスジェニックマウスモデル(Unerら(1998)J.Autoimmune.11(3):233−240)、KRNトランスジェニックマウス(K/BxN)モデル(Jiら(1999)Immunol.Rev.169:139);NZB X NZW(B/W)マウス(SLEモデル)(Riemekastenら(2001)Arthritis Rheum.,44(10):2435−2445);マウスにおける実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)(多発性硬化症モデル)(Tuohyら(1988)J.Immunol.141:1126−1130,Sobelら(1984)J.Immunol.132:2393−2401,およびTraugott,Cell Immunol.(1989)119:114−129);糖尿病のNODマウスモデル(Baxterら(1991)Autoimmunity,9(1):61−67)など。
【0090】
例えば、動物試験に従って決定された予備的な量、およびヒト投与のための容量のスケーリングは、当該分野で認められた方法に従って、実行された。毒性効力および治療効力は、細胞培養物または実験動物において標準の薬学的手順により決定され得る。細胞培養アッセイまたは動物研究から得られたデータは、ヒトに用いる投薬量の範囲の処方において用いられ得る。1つの動物モデルにおいて達成される治療的有効量は、別の動物(ヒトを含む)に用いる際に、当該分野で公知の変換因子を用いて変換され得る(例えば、Freireichら(1966)Cancer Chemother.Reports,50(4):219−244を参照のこと)。
【0091】
(薬学的組成物および投与の方法)
本開示は、抗PD−1抗体を含有する組成物を提供する。そのような組成物は、薬学的使用および患者への投与のために適し得る。代表的には、この組成物は、1つ以上の本発明の抗体および薬学的に受容可能な賦形剤を含む。語句「薬学的に受容可能な賦形剤」には、薬学的投与と両立するありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などが挙げられる。薬学的に活性な物質のための、このような媒体および薬剤の使用は、当該分野で周知である。その組成物はまた、補足された治療機能、追加された治療機能、または増強された治療機能を提供する他の活性な化合物をも含み得る。その薬学的な組成物はまた、コンテナ(container)、パック、またはディスペンサー(dispenser)中に投与のための指示書と一緒に含まれ得る。
【0092】
本発明の薬学的組成物は、それの意図された経路の投与と両立するために処方される。投与を達成するための方法は、当業者に公知である。その投与は、例えば、静脈内、腹腔内、筋内、腔内、皮下または経皮であり得る。局所的にか、または経口的に投与され得る組成物、または粘膜を経た伝達が可能であり得る組成物を得ることはまた、可能であり得る。
【0093】
皮内または皮下の適用のために用いられる溶液または懸濁液は、代表的に、1つ以上の以下の成分を含む:注射用水のような無菌の希釈液、生理食塩水、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、または他の合成溶媒;ベンジルアルコールまたはメチルパラベンのような抗菌剤;アスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウムのような抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸のようなキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩のような緩衝剤;および塩化ナトリウムまたはブドウ糖のような張度の調節のための薬剤。そのpHは、酸または塩基(例えば、塩酸または水酸化ナトリウム)を用いて調節され得る。このような調製物は、ガラスまたはプラスチックから作製されたアンプル、使い捨てのシリンジまたは複数用量バイヤルの中に入れられ得る。
【0094】
注射に適した薬学的組成物には、無菌の水性溶液または分散物、および無菌の注射可能な溶液および分散物の即座の調製のための無菌の粉末が挙げられる。静脈内投与のための適切なキャリアには、生理的食塩水、静菌性水、Cremophor EL(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、その組成物は、無菌でなければならず、容易なシリンガビリティー(syringability)が存在する程度に流体であるべきである。それは、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に備えて保存されなければならない。微生物の作用の阻害は、種々の抗菌剤および抗真菌剤によって達成され得、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどである。多くの場合において、組成物中に等張剤を含むことが好ましく、それは、例えば、糖、ポリアルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、および塩化ナトリウムである。キャリアは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)を含む溶媒または分散媒、ならびにそれらの適切な混合液であり得る。適切な流動率は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用により、分散の場合において必要とされる粒子サイズを維持することによりおよび/または界面活性剤の使用により、維持され得る。注射用組成物の延長された吸収は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)を含むことによって引き起こされ得る。
【0095】
経口の組成物は、概して、不活性希釈液または食用キャリアを含む。それらは、ゼラチンカプセルの中に入れられ得るか、または錠剤に圧縮され得る。経口投与のために、この抗体は、賦形剤とともに組み合わせられ得、錠剤、トローチ、またはカプセルの形で用いられ得る。薬学的に両立する結合剤、および/またはアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸剤、カプセル、トローチなどは、以下の成分、または類似する性質の化合物のいずれかを含み得る;結合剤(例えば、微結晶性セルロース、ガムトラガカントまたはゼラチン);賦形剤(例えば、デンプンまたはラクトース)、崩壊剤(例えば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンスターチ);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウムまたはステロテス(Sterotes);流動促進剤(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカロース);または矯味矯臭剤(例えば、ペッパーミント、メチルサリチレート、またはオレンジ香料)。
【0096】
全身的投与はまた、経粘膜方法または経皮方法によってされ得る。経粘膜投与または経皮投与のために、浸透されるバリアに適切な浸透剤が、この処方において用いられる。このような浸透剤は、概して当該分野で公知であり、例えば、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、例えば、口内剤、鼻スプレー、吸入器、または坐剤の使用を通じて達成され得る。例えば、Fc部分を含む抗体の場合は、組成物は、腸、口、または肺において粘膜を経た伝達が可能であり得る(例えば、米国特許第6,030,613号に記載のような、FcRnレセプター媒介経路を介するもの)。経皮の投与のために、概して当該分野で公知のように、活性な化合物は、軟剤、軟膏剤、ゲル、またはクリーム中に処方され得る。吸入による投与のために、抗体は、圧をかけられたコンテナまたは容器(それは、適切な噴霧剤(例えば、二酸化炭素のようなガス)を含む)、または噴霧器からエアロゾルスプレーの形で送達され得る。
【0097】
特定の実施形態において、現在開示される抗体は、キャリアを用いて調製される。そのキャリアは、化合物が身体から素早く放出されることから守り、例えば、制御された放出処方物であり、移植片およびマイクロカプセルに入った送達系を含む。生分解性ポリマー、生物適合性ポリマー(例えば、エチレンビニルアセテート、ポリアンヒドリド、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸)が、用いられ得る。このような処方物の調製のための方法は、当業者に明らかである。現在、開示される抗体を含むリポソーム懸濁液もまた、薬学的に受容可能なキャリアとして用いられ得る。これらは、当業者に公知の方法に従って調製され得、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されている。
【0098】
経口または非経口組成物を1つの用量単位形態に処方することは、投与を簡略化するためおよび用量の均一性のために、有利であり得る。本明細書で用いられるとき、用語「用量単位形態」は、処置される被験体のための単位用量として適している、物質的に分離した単位をいう;各単位は、所定の量の活性化合物を含み、その量は、必要とされる薬学的キャリアに関連した所望される治療効果を生成するために計算されている。
【0099】
本発明の組成物の毒性効力および治療効力は、細胞培養物および実験動物において標準的な薬学的手順により決定され得る。例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な量)およびED50(集団の50%において治療有効量)の決定のためである。毒性と治療的効果との間の用量比率は、治療指標であり、それはLD50/ED50比率として表され得る。大きな治療指数を示す組成物が、好ましい。
【0100】
本発明で用いられるいずれの組成物についても、治療有効用量は、細胞培養アッセイから最初に評価され得る。適切なバイオアッセイの例には、DNA複製アッセイ、サイトカイン放出アッセイ、転写ベースのアッセイ、PD−1/PD−L1結合アッセイ、クレアチンキナーゼアッセイ、前脂肪細胞の分化に基づくアッセイ、脂肪細胞におけるグルコースの取り込みに基づくアッセイ、免疫アッセイ、例えば、実施例において記載された通りの他のアッセイが挙げられる。細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトで用いる投薬量の範囲を処方する際に用いられ得る。用量は、動物モデルにおいて処方され得、IC50(すなわち、症候の半最大阻害を達成する抗体濃度)を含む循環する血漿濃度範囲を達成する。血漿における循環レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定され得る。任意の特定の投薬量の効果は、適切なバイオアッセイによりモニターされ得る。その投薬量は、好ましくは、ほとんど毒性がないか、または毒性のない循環する濃度の範囲内である。その投薬量は、適用した投薬形態および利用された投与の経路に依存して異なり得る。
【0101】
以下の実施例は、決して本発明の範囲を制限するものではない。当業者は、本発明の精神または範囲を変更させることなく実行され得る多数の改変および変化を認識する。そのような改変および変化もまた本発明の範囲内に包含される。本出願全体にわたって引用されるすべての参考文献、特許、および刊行された特許出願の全内容は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0102】
(実施例1:PD−1結合ScFvの選択)
scFvファージミドライブラリー(Vaughanら(Nature Biotech.(1996)14:309−314)により記載された1.38×1010ライブラリーの拡張版)を、ヒトPD−1に特異的な抗体を選択するために用いた。可溶PD−1融合タンパク質(20μg/ml(リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中))またはコントロール融合タンパク質(50μg/ml(PBS中))を、一晩4℃においてマイクロタイタープレートのウェルにコートした。ウェルをPBS中で洗浄し、MPBS(3%粉乳(PBS中))において1時間37℃でブロックした。精製ファージ(1012形質転換単位(tu))を、最終容量の100μlの3%MPBSにおいて1時間ブロックした。ブロックされたファージを、ブロックされたコントロール融合タンパク質のウェルに加え、1時間インキュベートした。次いで、ブロックされたファージおよび除外されたファージを、PD−1融合タンパク質でコートされたブロックされたウェルに移し、さらに1時間インキュベートした。ウェルをPBST(PBSコーティング 0.1%v/v Tween20)で5回洗浄し、次いでPBSで5回洗浄した。結合されたファージ粒子を溶出し、10mlの指数関数的に増殖するE.coli TG1に感染させるために用いた。感染細胞を、2TYブロス中で1時間37℃において増殖させ、次いで、2TYAGプレートに薄く塗り、一晩30℃においてインキュベートした。コロニーをプレートからはがして10mlの2TYブロスに移し、そして−70℃における貯蔵のための15%グリセロールを添加した。
【0103】
第1回目のパニング選択からのグリセロールストック培養物を、ヘルパーファージで重感染させ、第2回目のパニングのためのscFv抗体発現ファージ粒子を与えるためにレスキューした。合計2回のパニングを、PD1−17の単離のためにこの方法で実行した。ただし、第2回目のパニングにおいて、20μg/mlのコントロールタンパク質を、除外のために用いた。クローンPD1−28、PD1−33およびPD1−35を、続く第3回目の選択で選択した。2回目および第3回目の除外を、10μg/mgのコントロール融合タンパク質を用いて実行した。
【0104】
マウスPD−1に対する抗体を、ビオチン標識したマウスPD−1融合タンパク質を用いて、最終濃度100nMにおいて可溶選択により、選択した。上に記載の通りのscFvファージミドライブラリーを用いた。1mlの3%MPBS中の精製scFvファージ(1012tu)を30分間ブロックし、次いで、ビオチン標識された抗原を加え、室温において1時間インキュベートした。ファージ/抗原を、1mlの3%MPBS中で1時間37℃においてブッロクされた250μlのDynal M280 Streptavidin磁気ビーズに加え、さらに15分間室温においてインキュベートした。磁気ラックを用いてビーズを捕捉し、それを、1mlの3%MPBS/0.1%(v/v)Tween 20中で4回洗浄し、続いてPBS中で3回洗浄した。最後のPBS洗浄の後、ビーズを100μlのPBS中に再懸濁し、5mlの指数関数的に増殖するE.coli TG−1細胞に感染させるため用いた。感染細胞を、1時間37℃においてインキュベートし(30分静止、30分250rpmにおいて振盪)、次いで2TYAGプレートに薄くまき、一晩30℃においてインキュベートした。産出したコロニーをプレートからはがし、ファージを上記に記載の通りレスキューした。第2回目の可溶選択を上に記載の通りに実行した。
【0105】
(実施例2:ファージELISAによる、PD−1についての抗体の特異性)
PD−1についての抗体の特異性を決定するために、PD−1融合タンパク質およびコントロールタンパク質に対するファージELISAを行った。選択産出からの個々のE.coliコロニーを、1ウェルあたり100μlの2TYAG培地を含む96ウェルプレートに移した。M13K07ヘルパーファージを、10の感染多重度(moi)で指数関数的に増殖する培養物に加え、そのプレートをさらに1時間37℃においてインキュベートした。プレートをベンチトップ(benchtop)遠心分離器において、2000rpmにおいて10分間遠心分離した。その上清を除き、細胞ペレットを100μlの2TYAK中に再懸濁し、30℃において一晩、振盪しながらインキュベートした。次の日、プレートを2000rpmにおいて10分間遠心分離し、各ウェルからのファージ含有上清を新しい96ウェルプレートに移した。ファージサンプルを、ELISAの前に、3%MPBSの最終濃度においてブロックした。
【0106】
ヒトPD−1融合タンパク質またはマウスPD−1融合タンパク質およびコントロール融合タンパク質および非融合タンパク質を、一晩4℃において、96ウェルマイクロタイタープレートに0.5〜2.5μg/ml(PBS中)においてコートした。コートの後、その溶液をウェルから除き、プレートを1時間3%MPBSにおいてブロックした。プレートを、PBSでリンスし、次いで、50μlのブロックされる前のファージを各ウェルに加えた。このプレートを1時間インキュベートし、次いでPBSTで3回洗浄し、続いてPBSで3回洗浄した。各ウェルに対して、50μlの1:5000希釈の抗M13−HRP結合体(Pharmacia,Peapack,NJ)を加え、そのプレートを40〜60分間インキュベートした。各プレートをPBSTで3回洗浄し、次いでPBSで3回洗浄した。50μlのTMB基質を各ウェルに加え、そのサンプルを着色するまでインキュベートした。この反応を、25μlの0.5M HSOを加えることにより停止した。生成されたシグナルを、マイクロタイタープレートリーダーを用いて450nmにおける吸光度を読み取ることにより、測定した。次いで、PD−1融合タンパク質に対して特異的な結合を示すが、コントロール融合タンパク質に対しては示さないクローンを、同定し、確認した。
【0107】
PD1−17 scFvについての特異性データを、図1Aにおいて示す。ヒトPD−1とのPD1−28、PD1−33、およびPD1−35scFvの反応性を、図1Bにおいて示す(IgGコントロールはPD−1を結合しなかった)。
【0108】
(実施例3:抗体クローンの同定)
PD−1結合scFv E.coliクローンを、2TYAGプレートに線引きし、一晩30℃にてインキュベートした。これらのプレートからのコロニーを、scFvクローン由来のV領域およびV領域を増幅するためpCANTAB6ベクター配列オリゴを用いて配列決定した。独特のPD−1結合クローンを、実施例4において記載の通りPD−1に対するPD−L1結合の中和について、アッセイした。scFvとIgGフォーマットとの間の配列の差は、scFvからIgGへの変換の間にPCRプライマーにより導入された変化に起因する。
【0109】
(実施例4:生化学的結合阻害アッセイおよびスクリーニング)
scFv生成を、指数関数的に増殖する培養物に対して1mM IPTGを加え、一晩30℃にてインキュベーションすることによって誘導した。粗製のscFv含有の周辺質抽出物を、一晩の誘導からの細菌のペレットに浸透圧性ショックを受けさせることにより得た。ペレットを、20%(w/v)スクロース、50mM Tris−HCl、pH7.5、1mM EDTA中に再懸濁し、氷上で30分間冷やした。細胞の組織細片を、遠心分離によって除き、scFvをクロマトグラフィーおよびPBSへの緩衝液交換によって精製した。精製scFv(PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35)を、96ウェルマイクロタイタープレートアッセイにおいて、ビオチン標識されたヒトPD−L1融合タンパク質のプラスチック上に固定されたヒトPD−1融合タンパク質に対する結合を阻害する能力について試験した。ビオチン標識されたPD−L1融合タンパク質の結合を、AMDEX−アルカリホスファターゼを用いて検出し、生成されたシグナルを、マイクロタイタープレートリーダーを用いて405nmにおける吸光度を読み取ることにより、測定した。データは、全結合のパーセンテージとして表され、scFv濃度の力価を試験し、計算されたIC50値としてクローン潜在能(potency)を確立した。scFvおよびIgG抗体についてのクローン潜在能のデータを、表5に示す。
【0110】
PD1−F2 scFvを、上に記載の通りに生成し、精製した。マウスPD−1発現細胞を、10細胞/ウェル(最終容量100μl)においてポリ−D−リジンコートの96ウェルマイクロタイタープレートに加えた。細胞を遠心分離し、PBS中で2回洗浄した。次いで、300μlの1%BSA(PBS中)で1時間室温においてブロックした。ブロックされた細胞を、25μl/ウェルのアッセイ緩衝液(0.05%BSA、0.05%Tween 20(ダルベッコPBS中))またはサンプルを加える前に、PBST中で3回洗浄し、続いて25μlのビオチン標識されたマウスPD−L1融合タンパク質を300ng/mlにおいて加えた。ビオチン標識されたPD−L1融合タンパク質の結合を、Amdexアルカリホスファターゼを用いて検出し、シグナルを上に記載の通り解読した。PD1−F2 scFvおよびIgGの潜在能を、表6に示す。
【0111】
【表6】

(実施例5:scFvのIgGへの変換)
scFvクローン由来の重鎖および軽鎖V領域を、クローン特異的プライマーを用いたPCRによって増幅した。PCR産物を、適切な制限酵素を用いて消化し、ヒトIgG重鎖定常領域(Takahashiら(1982)Cell 29,671)を含有するベクター、またはヒトλまたはκ軽鎖定常領域(Hieterら(1982)Nature 294,536)を含有するベクターにサブクローニングした。VおよびVセグメントの生殖系列に基づいて、κまたはλ軽鎖定常領域が変換のために用いられたかどうかを決定した(表7)。
【0112】
【表7】

V領域ドメインのプラスミドへの挿入を、個々のE.coliコロニー由来のプラスミドDNAの配列決定によって検証した。プラスミドを、E.coli培養物から標準的手法によって調製し、重鎖および軽鎖構築物を、真核細胞中に標準的手法を用いて共トランスフェクトした。分泌されたIgGをプロテインAセファロース(Pharmacia)およびPBSへの緩衝液交換を用いて精製した。
【0113】
抗マウスPD1抗体PD1−F2の結合親和性を、Surface Plasmon Resonance(SPR)System(BlAcore 3000)(Biacore,Piscataway,NJ)でCM5センサーチップに固定されたマウスPD−1融合体を用いて決定した。フローセル中のPD1−F2の濃度は、7.81nM〜125nMの範囲であり、一方、抗マウスPD1抗体J43(eBioscience,San Diego,CA)の濃度は、25nM〜500nMの範囲であった。PD1−F2についての平衡定数Kは、6.7×10−9M(K=1.5×10−1)であるのに対し、J43についてのKは、3.8×10−7M(K=2.6×10−1)である。
【0114】
抗PD−1 IgGのヒトPD−1またはマウスPD−1を結合する能力を、以下のように決定した。ELISAプレートを、2.5μg/mlのヒトPD−1/IgGキメラと共に一晩インキュベートした。プレートを、PBS/1%BSAで洗浄し、試験抗体の段階希釈液と共に2時間室温(RT)においてインキュベートした。洗浄の後、飽和濃度のHRP結合ヤギ抗ヒト抗体またはHRP結合ウサギ抗マウス抗体を加え、そのサンプルを1時間RTにおいてインキュベートした。結合していないヤギ抗体およびウサギ抗体を、PBS/1%BSAを用いて洗浄した。このアッセイを、TBMを用いて現像した。結果を、OD405吸光度値として表し、図2A−2Cにおいて提示する。マウス抗ヒトPD−1抗体J110は、市販されており(eBioscience,San Diego,CA)、比較のために含めた。
【0115】
(実施例6:選択されたPD−1抗体は、PD−L1のPD−1に対する結合を阻害する)
阻害アッセイを実行し、抗体のPD−L1のPD−1に対する結合を遮断する能力を評価した。ELISAを、実施例2において記載された通りに、改変を含めて実行した。一次抗PD−1抗体と2時間室温においてインキュベーションした後、一定濃度(1μg/ml)のビオチン結合PD−L1−Igを加え、そのサンプルをさらに1時間RTにおいてインキュベートした。洗浄の後、飽和濃度のアビジンHRPを加え、1時間RTにおいてインキュベートした。結合していないアビジンHRPを、PBS/1%BSAを用いて洗浄した。このアッセイを、TBMを用いて現像した。
【0116】
結果を、図3に示すようにJ110を用いて得られた結果と比較した。抗ヒトPD−1抗体J110およびPD1−30は、PD−L1のPD−1に対する結合を阻害しなかった。抗ヒト抗体PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35ならびに抗マウス抗体PD1−F2は、PD−1/PD−L1相互作用を遮断する。
【0117】
(実施例7:PD−1抗体は、PD−1の識別可能な部位を認識する)
阻害アッセイを実行し、種々のヒト抗ヒトPD−1抗体によって認識される部位を位置づけた。ELISAを、実施例6に記載の通り、小さな改変を含めて実行した。一次抗体と2時間RTにおいてインキュベートした後、固定された濃度(0.25μg/ml)のビオチン結合PD−1抗体J110を加え、そのサンプルをさらに1時間RTにおいてインキュベートした。洗浄の後、飽和濃度のアビジンHRPを加え、1時間RTにおいてインキュベートした。結合していないアビジンHRPを、PBS/1%BSAを用いて洗浄した。このアッセイを、TBMを用いて現像した。
【0118】
図4に示されるように、抗ヒトPD−1抗体の結合(J110、J116、PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35)は、少なくとも2つのPD−1上の識別可能な部位を限定した。交差ブロッキング(cross−blocking)の結果はJ110およびJ116は、同一の部位または重複する部位に対して結合し、一方、PD1−17、28、33、および35は、別の識別可能な部位に対して結合することを示した。J116またはJ110のPD−1に対する結合は、J110の結合を遮断する。対照的に、PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35の結合は、J110の結合を遮断しない。このことは、試験された抗PD−1抗体は、少なくとも2つの識別可能なエピトープに対して結合することを示唆する;1つは、J110およびJ116によって認識され、もう1つは、PD1−17、PD1−28、PD1−33、およびPD1−35によって認識される。
【0119】
(実施例8:減少したT細胞反応におけるPD−1結合結果)
CD4+T細胞(5×10細胞/ウェル)を、抗hCD3+/−PD−L1−Fcまたは抗PD−1(PD1−17もしくはJ110)でコートされたトシルビーズ(Dynal,Great Neck,NY)を用いて刺激した。融合タンパク質の濃度または抗体力価を、図5のX軸に示した。72時間後、増殖をHチミジンの取り込みによって決定した。取り込まれた放射能を、LKB 1205プレートリーダーを用いて決定した。
【0120】
図5において示されるように、抗PD−1抗体PD1−17またはPD−L1.FcによるPD−1結合は、T細胞の増殖における減少の原因になった。従って、PD1−17は、PD−1リガンドを模倣し得、阻害シグナルを送達した。下で議論される通り(実施例9)、この阻害シグナルは、減少したT細胞増殖およびIL−2生成という結果になる。抗体PD1−28、PD1−33、およびPD1−35は、PD1−17と同様の効果を有する。この効果は、量依存的であり、増大する濃度のPD1−17またはPD−L1.Fcの存在下における細胞の活性化のように、減少したT細胞増殖という結果になる。コントロール抗PD−1抗体であるJ110(図5)またはJ116(データは示さず)は、T細胞反応を阻害せず、J110の濃度を増大させることは、T細胞増殖に関して最小限の効果を有する。比較のために、値を、抗CD−3反応のパーセンテージとして表す。「100%」は、抗CD3/マウスIgGコートのミクロスフィア用いて、細胞を活性化した場合に得られたCPMを表す。これらの結果全部が、PD−1を認識する抗体のいくらか(しかし、すべてではない)は、PD−1経路のアンタゴニストとして作用し得ることを示す。
【0121】
さらに実験を行い、必要とされるT細胞反応のPD−1ダウンレギュレーションが、単一細胞表面(CIS)または別々の細胞表面(TRANS)上でのTcR/PD−1結合と協調するかどうかを扱った。2組のミクロスフィアを調製した:1組は、抗CD3およびPD−L1.Fcを含み(CIS)、他の組は、抗CD3またはPD−L1.Fcを含んだ(TRANS)。PD−1を介した阻害は、PD−1およびTcRの両方が、同じ表面上にリガンドにより結合された条件下でのみ観察された(CIS)。試験したすべてのビーズ:細胞の比において、TCRおよびPD−1シグナルが別々の表面上に送達された条件において(TRANS)、阻害は観察されなかった。
【0122】
TRANS実験における立体障害を除外するために、類似のアッセイを、抗CD3抗体およびB7.2.Fcを用いて調製した。これらのアッセイにおいて、T細胞反応のB7同時刺激を、CISおよびTRANS条件の両方において観察した。これらの知見全部で、TCRに近いPD−1は、T細胞活性化に関するレセプター調節機能に必要とされることを示す。従って、T細胞反応を調節するために、活性化シグナルおよび阻害シグナルの両方が、表面が細胞の表面であろうとビーズの表面であろうと、同じ表面から生じなければならない。
【0123】
(実施例9:抗体によるPD−1結合の遮断は、増強された増殖をもたらす)
増殖に関する可溶抗PD−1抗体の効果を評価するために、CD4+T細胞を、抗CD3/抗CD28コートのビーズを用いて、48時間プレ活性化し、収集し、そしてPD1−17、J110またはコントロールIgGの存在下において、指示された濃度のPHAプラス10ng/mlのIL−2を用いて再刺激した。抗体の各々を、種々の濃度において培養の開始時に加えた。増殖を、72時間において測定した。
【0124】
この結果は、PD1−17(図6)およびPD1−35(データは示さず)は、初代T細胞の増殖を増強したことを示す。コントロール抗体J110は、インビトロにおいてT細胞反応を増強しなかった。PD1−17およびPD−35により例示されるような、選択された抗PD1抗体は、PD−1とその天然のリガンドとの相互作用を阻害し、それによって負のシグナルの送達を遮断する。この負のシグナルの遮断はまた、増強された増殖およびIL−2生成という結果になる。
【0125】
(実施例10:障害の処置)
PD−1により制御される免疫応答の調節は、免疫抑制効果または免疫応答の増強が所望される事例において有用である。この実施例は、PD−1アゴニストまたはPD−1アンタゴニストとしてのPD−1抗体の使用を記載し、それぞれ、疾患発症における被験体または確立された免疫障害もしくは癌を有する被験体を処置する。
【0126】
癌の危険がある被験体または癌で苦しむ被験体は、免疫応答増強を必要とし得、PD−1アンタゴニスト(例えば、可溶形態の本発明の抗PD−1抗体)を用いた処置から利益を得る。最も一般的には、抗体は、外来環境において、約0.1〜10mg/kg量における週ごとの投与をゆっくりとした静脈内(IV)注射によって投与される。アンタゴニストの適切な治療有効用量は、処置をする臨床医によって選択され、およそ1μg/kg〜20mg/kg、およそ1μg/kg〜10mg/kg、およそ1μg/kg〜1mg/kg、およそ10μg/kg〜1mg/kg、およそ10μg/kg〜100μg/kg、およそ100μg〜1mg/kg、およびおよそ500μg/kg〜5mg/kgの範囲である。
【0127】
この抗体はまた、異常な免疫応答もしくは所望されない免疫応答(例えば、下に例示される自己免疫障害において)に関連する疾患または状態の重症度および/または症候を、防ぐためおよび/または減少するためにも用いられる。
【0128】
多発性硬化症(MS)は、炎症およびミエリン鞘の減少により特徴付けられる中枢神経系疾患である。多発性硬化症についての実験的自己免疫脳炎(EAE)マウスモデル(Tuohyら(J.Immunol.(1988)141:1126−1130)、Sobelら(J.Immunol.(1984)132:2393−2401)、およびTraugott(Cell Immunol.(1989)119:114−129)において、EAE誘導の前の(および持続的に)PD−1アゴニストを用いたマウスの処置は、MSの発症を防ぐか、または遅らせることが予想される。
【0129】
関節炎は、関節における炎症によって特徴付けられる疾患である。慢性関節リウマチについてのコラーゲン誘導(collagen induced)関節炎(CIA)マウスモデル(Courtenayら(Nature(1980)283:666−628)およびWilliamsら(Immunol.(1995)84:433−439))において、PD−1アゴニストを用いた処置は、慢性関節リウマチ(RA)または他の関節炎疾患を防ぐか、または処置することが予想される。
【0130】
全身性エリテマトーデス(SLE)は、自己抗体の存在によって特徴付けられる自己免疫疾患である。本発明の抗体および組成物は、PD−1アゴニストとして用いられ得、自己反応性T細胞およびB細胞の活性を阻害し、NZB X NZWマウス(SLEについてのマウスモデル)(Immunologic Defects in Laboratory Animals,Gershwinら(編),Plenum Press,1981)、もしくはヒトにおけるSLEまたは関連疾患を防ぐか、または処置する。
【0131】
本発明のPD−1抗体は、PD−1アゴニストとしてエキソビボ治療において、月に一度またはそれ未満の頻度において投与されることが予想される。処置期間は、一ヶ月から数年の間の範囲である。
【0132】
ヒトにおける抗体の臨床的効力を試験するために、メラノーマ、前立腺癌、RA、SLE、MS、I型糖尿病を有する個体を同定し、処置群に無作為化する。処置群は、偽薬群およびPD−1アゴニストで処置される1〜3群(異なる用量)を含む。個体は、将来の1〜3年間追跡される。処置を受けた個体は、改善を示すことが予想される。
【0133】
本明細書は、本明細書内に引用される参照の教示を踏まえて、全面的に理解され、それらすべては、全体における参照として、本明細書で援用される。本明細書内の実施形態は、本発明の実施形態の説明を提供し、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきでない。当業者は、多くの他の実施形態が、特許請求された範囲によって包含されることを認識し、そして本明細書および実施例は、単なる模範として考えられ、本発明の真の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって示されることが意図されることを認識する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】図1Aは、ファージELISAによって決定された、それぞれのscFv抗体のヒトPD−1との反応性を示す。
【図1B】図1Bは、ファージELISAによって決定された、それぞれのscFv抗体のヒトPD−1との反応性を示す。
【図2A】図2Aは、ELISAによって決定された、IgG変換型抗体の、ヒトPD−1またはマウスPD−1との反応性を示す。
【図2B】図2Bは、ELISAによって決定された、IgG変換型抗体の、ヒトPD−1またはマウスPD−1との反応性を示す。
【図2C】図2Cは、ELISAによって決定された、IgG変換型抗体の、ヒトPD−1またはマウスPD−1との反応性を示す。
【図3】図3は、選択されたPD−1抗体が、PD−L1のPD−1への結合を阻害することを実証するELISAの結果を示す。
【図4】図4は、免疫調節性PD−1抗体が、交差ブロッキングELISAアッセイによって決定された、PD−1上の異なる部位に結合することを実証するELISAの結果を示す。
【図5】図5は、TcRと、抗PD−1抗体PD−17またはPD−L1.Fcとによる同時結合が、増殖を減少させることを実証するT細胞増殖アッセイの結果を示す。TcRと抗PD−1 J110とによる同時結合は、増殖に対して効果を有さない。
【図6】図6は、可溶性形態のPD1−17によって、一次T細胞の増殖の増強を実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号19、配列番号25、配列番号31、配列番号37、または配列番号52において示されるアミノ酸配列を含む抗体。
【請求項2】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号47、または配列番号49において実質的に示されるようなアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号47、および配列番号49からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体が、配列番号41および配列番号56からなる群から選択される少なくとも一つ配列の少なくとも100個の連続するアミノ酸のうちの任意の配列と、少なくとも95%同一であるアミノ酸配列に特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
前記抗体が、10−1より大きい親和定数でPD−1の細胞外ドメインに特異的に結合する、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
前記抗体が、10nM未満のIC50で、PD−LのPD−1への結合を阻害する、請求項4に記載の抗体。
【請求項7】
前記抗体が、ヒト抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体が、IgGまたはIgGである、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
前記抗体が、IgG1λまたはIgG1κである、請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗体が、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2である、請求項1に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1に記載の抗体を含む薬学的組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の薬学的組成物の有効用量を投与する工程を包含する処置方法。
【請求項13】
前記薬学的組成物が、自己免疫障害、移植片に対する免疫応答、アレルギー反応、および癌からなる群から選択される障害の処置または予防を必要とする被験体に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記被験体が、ヒトである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
PD−1に特異的に結合するためのヒトフレームワーク領域および手段を含む抗体であって、該抗体は、PD−1とPD−L1との間の結合を阻害することが可能である、抗体。
【請求項16】
前記手段が、PD1−17、PD1−28、PD1−33、PD1−35、またはPD1−F2由来のCDRを含む、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
請求項1に記載の抗体をコードする単離された核酸。
【請求項18】
請求項17に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項19】
請求項18に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項20】
前記宿主細胞が、以下:E.Coli細菌、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、およびNS0細胞から選択される、請求項19に記載の宿主細胞。
【請求項21】
前記核酸が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号47、または配列番号49において示されるアミノ酸配列をコードする、請求項17に記載の核酸。
【請求項22】
前記核酸が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号46、および配列番号48からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項21に記載の核酸。
【請求項23】
PD−1と特異的に結合する抗体を作製する方法であって、該方法は、以下:
(a)置換されるべきCDR3を含むか、またはCDR3のコード領域を欠いたかのいずれかの可変ドメインをコードする核酸の開始レパートリーを提供する工程;
(b)該レパートリーを、配列番号19、配列番号25、配列番号31、配列番号37、または配列番号52において実質的に示されるようなアミノ酸配列をコードするドナー核酸と組み合わせて、該ドナー核酸が、該レパートリーのCDR3領域内に挿入されることによって、可変ドメインをコードする核酸の生成物レパートリーを提供する工程;
(c)該生成物レパートリーの核酸を発現する工程;
(d)PD−1に特異的な抗原結合フラグメントを選択する工程;ならびに
(e)該特異的抗原結合フラグメントまたは該結合性フラグメントをコードする核酸を回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法によって作製される抗体。
【請求項25】
リンパ球を抗PD−1抗体と接触させる工程を包含する、適応免疫応答を調節する方法。
【請求項26】
前記リンパ球が、T細胞、B細胞、または単球である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、請求項1に記載されるようなものである、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、請求項24に記載されるようなものである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、支持マトリクス上で固定されるか、または架橋される、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記支持マトリクスが、アガロース、デキストラン、セルロース、PVDF、シリカ、ナイロン、ダクロン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリビニル、テフロン(登録商標)、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシアルカノエート、コラーゲン、およびゼラチンから選択される一以上の物質を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記抗PD−1抗体が、抗原レセプターを介した免疫細胞応答を調節する、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記抗原レセプターのシグナルが、前記抗PD−1抗体で同時に提示される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記抗原レセプターのシグナルと抗PD−1抗体とが、100μmしか間隔が空いていない、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記抗原レセプターのシグナルが、抗CD−3抗体によって伝達される、請求項31に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−521783(P2006−521783A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−561922(P2004−561922)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/IB2003/006304
【国際公開番号】WO2004/056875
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(502161704)ワイエス (51)
【出願人】(505148324)ケンブリッジ アンティボディー テクノロジー リミテッド (8)
【Fターム(参考)】