説明

PDHおよびFDH酵素を発現する遺伝学的に安定なプラスミド

葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)および改変フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDHmod)の発現に用いられる二シストロン性プラスミドが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、出典明示により本明細書に取り込まれる2009年4月8日に提出した米国仮出願番号第61/167,676に関するものであり、その利益を請求する。
【0002】
配列表は、電子形式(コンピューター読み取り形式)のみで本願と共に提出され、参照により本明細書に取り込まれる。配列表テキストファイル「09-203-SEQ_LIST」[22,343バイトのサイズ]は、2010年4月7日に調製された。
【0003】
本発明は、核酸分子、プラスミド(例えば、二シストロン性プラスミド)、宿主細胞および葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)および改変フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDHmod)の発現に用いられる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
ジペプチジルペプチダーゼIVは、腸、肝臓、肺、腎臓に含まれるが、これらだけに限定されない様々な組織に局在する膜結合型の非古典的なセリンアミノペプチダーゼである。この酵素は、CD−26と称される循環T−リンパ球上にも局在する。ジペプチジルペプチダーゼIVは、インビボにおいて内在性ペプチドGLP−1(7−36)およびグルカゴンの代謝性切断に関して役割を果たしており、インビトロでGHRH、NPY、GLP−2およびVIPのようなその他のペプチドに対してタンパク質分解活性を示した。
【0005】
GLP−1(7−36)は、小腸においてプログルカゴンの翻訳後プロセッシングから生じる29アミノ酸のペプチドである。このペプチドは、インビボで複数の作用を有する。例えば、GLP−1(7−36)は、インスリン分泌を活性化し、グルカゴン分泌を抑制する。このペプチドはまた、満腹感を促し、胃の空腹感を遅らせる。持続注入によるGLP−1(7−36)の外部投与が糖尿病患者に有効であることが示されている。しかしながら、外因性ペプチドは、持続的な治療用途のためにはあまりに早く分解される。
【0006】
ジペプチジルペプチダーゼIVの阻害剤は、GLP−1(7−36)の内在レベルを高めるために開発されてきた。特許文献1は、ジペプチジルペプチダーゼIVのシクロプロピル縮合ピロリジンに基づく阻害剤を開示する。これらの阻害剤を化学的に合成するための方法は、特許文献1ならびにその文献中に開示されている。例えば、非特許文献1〜3を参照のこと。特許文献1に開示の阻害剤の一例は、遊離塩基である(1S,3S,5S)−2−[(2S)−2−アミノ−2−(3−ヒドロキシ−トリシクロ[3.3.1.1.3,7]デク−1−イル)−1−オキソエチル]−2−アザビシクロ−[3.1.0]ヘキサン−3−カルボニトリルである。
【0007】
このジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤の生成で用いられる中間体を調製するための方法は、特許文献2で開示されている。また、非特許文献4〜7も参照のこと。
【0008】
酵素である葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)(例えば、Pichia pastoris(ATCC 20864)に由来する)およびフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDH)(例えば、Thermoactinomyces intermedius(ATCC 33205))の組み換え発現は、3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸への生体内変換、続いてDPPIV阻害剤であるサクサグリプチンの合成における出発物質である(αS)−α−[[(1,1ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸への化学的な変換に用いることができる。これまでの試みは、発現を駆動させるための2つの同一のタンデムプロモーター(各酵素に対して1つのプロモーター)を含む単一プラスミドを用いてFDHおよびPDHを発現させるものであり、成功したものは限られていた。特に、これらまでの試みでは、細菌細胞の2種類の異なる集団:1つは、無傷(intact)のプラスミドであり、もう1つはFDH遺伝子を含むプラスミドの一部が改変されていた(短縮化されていた)可能性があるものを保有する細菌培養物を生じていた可能性がある。このプラスミドの改変は、各細胞世代で増えている可能性が高い。
【0009】
それゆえ、生体内変換の方法は、複雑な化学前駆体を調製するための方法として同定されているが、上記の生化学的プロセスは、遺伝学的な不安定性のために生成収率を減少させる。したがって、サクサグリプチンのような化合物の最終的な生成における合成前駆体分子を調製するための代わりの組み換え配列および方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6,395,767号
【特許文献2】欧州特許出願第0808824号A2
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Sagnard et al. Tetr.Lett. 1995 36:3148-3152
【非特許文献2】Tverezovsky et al. Tetrahedron 1997 53:14773-14792
【非特許文献3】Hanessian et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 1998 8:2123-2128
【非特許文献4】Imashiro and Kuroda Tetrahedron Letters 2001 42:1313-1315
【非特許文献5】Reetz et al. Chem. Int. Ed. Engl. 1979 18:72
【非特許文献6】Reetz and Heimbach Chem. Ber. 1983 116:3702-3707
【非特許文献7】Reetz et al. Chem. Ber. 1983 116:3708-3724
【発明の概要】
【0012】
1の態様において、本開示は、
(a)配列番号:1に95%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸配列;または
(b)配列番号:4のポリペプチドおよび配列番号:5のポリペプチドをコードする配列
を含む単離された核酸分子に関するものである。
【0013】
1の態様において、本開示は、配列番号:1のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0014】
1の態様において、本開示は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下にて、配列番号:1のヌクレオチド配列の相補鎖にハイブリダイズする配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0015】
1の態様において、本開示は、配列番号:2のヌクレオチド配列を含む単離された核酸分子に関する。
【0016】
1の態様において、本開示は、配列番号:1を含む核酸分子を含むプラスミドに関する。
【0017】
1の態様において、本開示は、配列番号:1を含む核酸分子を含む単離された宿主細胞に関する。
【0018】
1の態様において、本開示は、配列番号:2を含む核酸分子を含む単離された宿主細胞に関する。
【0019】
1の態様において、本開示は、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式I):
【化1】

(I)
の生成方法であって、前記方法が、
(a)請求項8に記載の宿主細胞を適当な条件下で培養して、配列番号:1の核酸分子によりコードされるポリペプチドを発現させ;
(b)前記ポリペプチドを含む酵素濃縮物を部分的に精製し;次いで
(c)前記培養単離物を、一定量の3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式II):
【化2】

(II)
と、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式III):
【化3】

(III)
の生成を可能にする条件下で接触させ;次いで
(d)前記(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を、一定量の二炭酸−ジ−tert−ブチルと、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式I)の生成を可能にする条件下で接触させること
を特徴とする方法に関する。
【0020】
1の態様において、本開示は、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDH)および葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)の部分的に精製された酵素濃縮物を調製する方法であって、前記方法が上記の核酸分子またはプラスミドを含む細胞を含有する発酵ブロスを調製することを特徴とするものである方法に関する。
【0021】
上記態様ならびにその他の態様および具体例は、以下の詳細な説明を考慮すれば当業者にとって明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】二シトロン性FDH/PDHmodプラスミドの図を示す。
【図2】FDH/PDHmod二シトロン性プラスミドの核酸配列(配列番号:2)を示す。FDH(配列番号:8)、リボソーム結合部位(配列番号:3)およびPDHmod(配列番号:9)をコードする領域は、太字で下線を引いている(配列番号:1)。
【図3】二シトロン性FDH/PDHmodプラスミドのEcoRI制限酵素消化の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
一般的に、本開示は、核酸分子、プラスミド、ベクター、宿主細胞、および所望の化合物(例えば、DPPIV阻害剤であるサクサグリプチンのような薬物)の生成時において化学分子の有用な合成前駆体分子および/または中間体への生体内変換を提供する方法に関する。核酸分子は、発現ベクターまたはプラスミドなどのベクターに組み込むことができ、宿主細胞(例えば、細菌細胞)内で遺伝学的に安定な組み換え構築物を提供する。前記細胞およびプラスミドは、葉酸デヒドロゲナーゼおよびフェニルアラニンデヒドロゲナーゼ活性を含む方法での用途が見出された。
【0024】
定義
詳細に開示する様々な態様および具体例を説明する前に、多くの用語が定義される。本明細書で用いられるように、単数形「a」、「an」、および「the」には、特に断りがなければ、複数の対象が含まれる。例えば、「核酸」に対する対象は、1つまたはそれ以上の核酸を意味する。
【0025】
「好ましくは」、「一般的に」、および「典型的に」のような用語は、特許請求されている発明の範囲を限定するために、あるいは、特定の特徴が、特許請求されている発明の構造もしくは機能に不可欠、必須、もしくは重要であることを意味するために本明細書で用いられるわけではないことに留意すべきである。むしろ、これらの用語の使用は、単に、特定の具体例で利用することができるかまたはできない代わりの特徴もしくはさらなる特徴を強調することが意図されているだけである。
【0026】
いくつかの例において、本開示は、用語「実質的に」または「約」を使用して、量的比較、値、測定またはその他の表現に起因しうる不確かな特有の程度を表しうる。これらの用語はまた、量的表現が、目的の対象物の基本的な機能に変化を生じることなく目的の対象から変動しうる程度を表しうる。
【0027】
本明細書で用いられるように、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、および「核酸分子」は、DNA、RNA、これらの誘導体、またはこれらの組み合わせを含む核酸分子を意味するために相互に交換可能に用いることができる。
【0028】
用語「天然に存在する」または「元々の(native)」は、核酸分子、ポリペプチド、宿主細胞などの生体物質に関して用いられる場合、天然で見出され、ヒトによる操作が加えられていない物質を意味する。同様に、本明細書で用いられる「天然に存在しない」または「元々ではない(non-native)」は、天然に存在しない物質か、またはヒトによって構造的に改変されているか、もしくは合成されている物質を意味する。ヌクレオチドに関して用いられる場合、用語「天然に存在する」または「元々の(native)」は、塩基であるアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(C)、チミン(T)、およびウラシル(U)を意味する。アミノ酸に関して用いられる場合、用語「天然に存在する」および「元々の」は、20個のアミノ酸であるアラニン(A)、システイン(C)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、ヒスチジン(H)、イソロイシン(I)、リジン(K)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、プロリン(P)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、スレオニン(T)、バリン(V)、トリプトファン(W)、およびチロシン(Y)を意味する。
【0029】
用語「フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ」または「PDH」は、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質、ならびにその酵素学的に活性なフラグメントおよび変異体を意味する。非限定的な例は、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ活性を有する配列番号:5を含む「PDHmod」、ならびに配列番号:5の酵素学的に活性なフラグメントおよび変異体である。
【0030】
用語「葉酸デヒドロゲナーゼ」または「FDH」は、葉酸デヒドロゲナーゼ活性を有するタンパク質、ならびにその酵素学的に活性なフラグメントおよび変異体を意味する。FDHの非限定的な例には、葉酸デヒドロゲナーゼ活性を有する配列番号:4、ならびに配列番号:4の酵素学的に活性なフラグメントおよび変異体が含まれる。
【0031】
核酸、プラスミド、および宿主細胞
本明細書で用いられる組み換えDNA法は、一般的に、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)および/またはCurrent protocols in Molecular Biology (Ausubel et al., eds., Green Publishers Inc. and Wiley and Sons 1994)で説明されているものである。
【0032】
1の態様において、本開示は、配列番号:1、または機能的な葉酸デヒドロゲナーゼおよび機能的なフェニルアラニンデヒドロゲナーゼをコードする配列を含む単離された核酸分子を提供する。具体例において、葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)には、特定の種に由来するFDH配列またはその機能的なフラグメントが含まれうる。具体例において、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDH)は、特定の種に由来するPDH配列またはその機能的なフラグメントであり得る。1の具体例において、FDH配列には、配列番号:4、またはその機能的なフラグメントもしくは変異体が含まれる。1の具体例において、PDH配列には、配列番号:5、またはその機能的なフラグメントもしくは変異体が含まれる。1の具体例において、核酸分子には、配列番号:1のヌクレオチド配列が含まれる。
【0033】
具体例において、核酸分子には、プロモーター領域が下記の本明細書のとおりである、FDHおよびPDHをコードする領域の発現を指揮する単一のプロモーター領域が含まれる。
【0034】
具体例において、核酸分子には、FDHおよびPDHをコードする分子の部分の間の領域が含まれる。具体例において、前記領域には、約10から約100ヌクレオチド長(例えば、約10、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95または100ヌクレオチド塩基)が含まれる。具体例において、前記領域には、下記の本明細書に記載されるリボソーム結合部位が含まれる。
【0035】
用語「単離された核酸分子」は、(1)全ての核酸が供給源の細胞から単離される場合、タンパク質、脂質、炭水化物、または天然で見出されるその他の物質から少なくとも約50%分離されており、(2)「単離された核酸分子」が天然で連結しているポリヌクレオチドの全てもしくは一部に連結しておらず、(3)天然で連結していないポリヌクレオチドに作動可能に連結しており、あるいは(4)大きなポリヌクレオチド配列の一部として天然に存在していない核酸分子を意味する。したがって、様々な具体例において、単離された核酸分子には、ポリペプチド産生またはその治療、診断、予防もしくは研究の用途での使用を妨げるであろうその自然環境で見出されるその他の夾雑核酸分子または夾雑物が実質的に含まれていない。一定の具体例において、単離された核酸分子は細胞内に含有される。
【0036】
用語「核酸配列」または「核酸分子」は、DNAまたはRNA配列を意味する。この用語には、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のいずれかから生じた分子、例えば、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N6−メチルアデノシン、アジリジニル−シトシン、シュード(pseudo)シトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−フルオロウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシ−メチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、イノシン、N6−イソ−ペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュード(pseudo)ウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチル−グアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシアミノ−メチル−2−チオウラシル、ベータ−D−マンノシルケウオシン、5’−メトキシカルボニル−メチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン(oxybutoxosine)、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、シュードウラシル、クエオシン、2−チオシトシン、および2,6−ジアミノプリンが含まれるが、これらだけに限定されるものではない。
【0037】
1の態様において、本開示は、配列番号:1に95%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸配列を提供する。
【0038】
当該技術分野で知られている用語「同一性」は、配列を比較することによって決定される、2つもしくはそれ以上のポリペプチド分子または2つもしくはそれ以上の核酸分子の配列間の関連性を意味する。当該技術分野において、「同一性」はまた、場合によっては、2つもしくはそれ以上のヌクレオチドまたは2つもしくはそれ以上のアミノ酸配列の配列間の適合性によって決定される、核酸分子またはポリペプチド間の配列関連性の程度を意味する。「同一性」は、特定の数学的モデルもしくはコンピュータープログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって定められる(もしあれば)ギャップアラインメント(gap alighnment)を用いて、2つもしくはそれ以上の配列のうちのより低い完全一致のパーセンテージを測定する。
【0039】
1の具体例において、単離された核酸配列は、50%のホルムアミド、5XSSC(0.75M NaCl,0.075M クエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、0.1%のSDS、および10%の硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション緩衝液中で42℃、次いで、0.2XSSCおよび0.1%のSDSを含むハイブリダイゼーション洗浄緩衝液中で42℃にて、配列番号:1のヌクレオチド配列の相補鎖にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0040】
用語「高度にストリンジェントな条件」は、高い相補性を有する配列のDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、あまり一致していないDNAのハイブリダイゼーションを除くように設定される条件を意味する。ハイブリダイゼーションのストリンジェントさは、基本的に、温度、イオン強度、およびホルムアミドなどの変性剤の濃度によって決定される。ハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、65〜68℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムであるか、または42℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および50%のホルムアミドである。Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory, 1989);Anderson et al., Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach Ch. 4 (IRL Press Limited)を参照のこと。
【0041】
よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、より高濃度のホルムアミド、またはその他の変性剤)もまた用いられてもよいが、ハイブリダイゼーションの割合が影響を受ける。非特異的および/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減らすために、その他の薬剤がハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中に含まれてもよい。例として、0.1%のウシ血清アルブミン、0.1%のポリビニルピロリドン、0.1%のピロリン酸ナトリウム、0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、NaDodSO(SDS)、フィコール、デンハルト溶液、超音波処理したサケ精子DNA(または別の非相補性DNA)、および硫酸デキストランがあるが、その他の適当な薬剤もまた用いることができる。これらの添加剤の濃度とタイプは、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェントさに実質的に影響を与えることなく変化させることができる。ハイブリダイゼーション実験は、通常、pH6.8〜7.4で行われるが、典型的なイオン強度条件下では、ハイブリダイゼーションの割合はpHとほぼ関係しない。Anderson et al., Nucleic Acid Hybridisation:A Practical Approach Ch. 4(IRL Press Limited)を参照のこと。
【0042】
DNA二本鎖の安定性に影響する因子には、塩基組成、長さ、および塩基対ミスマッチの程度が挙げられる。ハイブリダイゼーションの条件は、これらの変数を調節し、異なる配列関連性を有するDNA同士にハイブリッド鎖を形成させるために、当業者によって調製することができる。完全に一致したDNA二本鎖の融解温度は、以下の方程式によって算出することができる:
(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
[式中、Nは、生じた二本鎖の長さであり、[Na+]は、ハイブリダイゼーションまたは洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド鎖中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである]
完全に一致していないハイブリッド鎖については、融解温度は各1%のミスマッチにつき約1℃ずつ減らす。
【0043】
用語「中程度にストリンジェントな条件」は、「高度にストリンジェントな条件」下で生じ得る塩基対ミスマッチの割合よりも高い割合でDNA二本鎖が形成できる条件を意味する。典型的な「中程度にストリンジェントな条件」の例は、50〜65℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムであるか、または37〜50℃で0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および20%のホルムアミドである。例として、0.015Mのナトリウムイオン中で50℃の「中程度にストリンジェントな条件」は、約21%のミスマッチを可能にする。
【0044】
「高度にストリンジェントな条件」と「中程度にストリンジェントな条件」の間には絶対的な区別は存在しないことは当業者によって理解されている。例えば、0.015Mのナトリウムイオン(ホルムアミドを含まない)中では、完全に一致した長いDNAの融解温度は、約71℃である。(同一のイオン強度で)65℃で洗浄すると、約6%のミスマッチが可能となるであろう。より離れた関連性の配列を把握するために、当業者は、単に温度を低くするか、あるいはイオン強度を上げることができる。
【0045】
約20ntまでのオリゴヌクレオチドプローブについての1MのNaCl中における融解温度の優れた計算式は、
Tm=AT塩基対あたり2℃+GC塩基対あたり4℃
である。6Xクエン酸ナトリウム塩(SSC)中のナトリウムイオン濃度は1Mである。Suggs et al., Developmental Biology Using Purified Genes 683 (Brown and Fox, eds., 1981)を参照のこと。
【0046】
オリゴヌクレオチドのための高ストリンジェントな洗浄条件は、通常、6XSSC、0.1%のSDS中にてオリゴヌクレオチドのTmより0〜5℃低い温度である。
【0047】
1の態様において、本開示は、配列番号:1の核酸分子を含むプラスミドを提供する。
【0048】
別の態様において、本開示は、配列番号:4のポリペプチドおよび配列番号:5のポリペプチドをコードする配列を含むプラスミドを提供する。
【0049】
用語「プラスミド」は、コーディング情報を宿主細胞に移すために用いられる分子(例えば、核酸、ベクター、またはウイルス)を意味するのに用いられる。
【0050】
用語「発現プラスミド」は、宿主細胞の形質転換に適当であるプラスミドを意味し、挿入された異種性核酸配列の発現を指揮および/または制御する核酸配列を含む。発現には、転写、翻訳、およびイントロンが存在していればRNAスプライシングのようなプロセスが含まれるが、これらだけに限定されない。一般に、プラスミド分子(例えば、発現ベクター、宿主ベクターなど)が当業者に知られており、市販品として入手可能である。
【0051】
具体例において、プラスミドは、FDHおよびPDHの発現が単一プロモーターの制御下である本明細書に記載される核酸を含むように設計される。
【0052】
様々な具体例において、宿主細胞のいずれかで用いられる発現プラスミドは、プラスミド維持のための配列、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有することができる。かかる配列は、ある具体例において「フランキング配列」と総称され、典型的に、1つまたはそれ以上の以下のヌクレオチド:プロモーター、複製開始点、転写終結配列、分泌性タンパク質の発現における分泌のためのリーダー配列、リボソーム結合部位、ポリペプチドをコードする核酸が発現されるように挿入されるためのポリリンカー領域、および選択可能なマーカーエレメントが含まれる。
【0053】
場合により、プラスミドは、「タグ」配列、すなわち、FDHもしくはPDHmodポリペプチドをコードする配列の5’もしくは3’末端に局在するオリゴヌクレオチド分子を含有していてもよく;オリゴヌクレオチド分子は、ポリHis(例えば、ヘキサHis)、または、例えば、市販品として入手可能な抗体が存在しているFLAG、HA(ヘマグルチニンインフルエンザウイルス)またはmycなどのその他の「tag」を含有する。このタグは、ポリペプチドの発現によってポリペプチドに融合させることができ、宿主細胞からPDHmodもしくはFDHポリペプチドのアフィニティー精製のための手段として提供され得る。アフィニティー精製は、例えば、アフィニティーマトリックスとしてタグに対する抗体を用いるカラムクロマトグラフィーによって行うことができる。場合により、タグは、後に、切断のための特定のペプチダーゼを用いるなどの様々な手段によって、精製されたPHDmodもしくはFDHポリペプチドから取り除くことができる。
【0054】
転写終結配列は、典型的に、ポリペプチドをコードする領域の3’末端に局在し、転写を終結させる。通常、原核細胞における転写終結配列は、GCリッチフラグメント、続いてポリT配列である。この配列はライブラリーから容易にクローン化されるか、またはプラスミドの部分として購入されるが、上記のような核酸合成方法を用いて容易に合成することもできる。
【0055】
用語「作動可能に連結された」は、そのように記載されるフランキング配列が、それらの通常の機能を発揮するように構成もしくは構築されている、フランキング配列の配置を意味するのに本明細書で用いられる。よって、コーディング配列に作動可能に連結されたフランキング配列は、コーディング配列の複製、転写および/または翻訳を生じさせうる。例えば、コーディング配列は、プロモーターがコーディング配列の転写を指揮することができる場合、プロモーターに作動可能に連結される。フランキング配列は、正常に機能する限り、コーディング配列と隣接している必要はない。よって、例えば、介在性の翻訳されない転写配列は、プロモーター配列およびコーディング配列の間に存在することができ、前記プロモーター配列は、コーディング配列に「作動可能に連結された」と考えることができる。
【0056】
1の態様において、本開示は、二シトロン性プラスミドを含む単離された宿主細胞であって、前記プラスミドがFDHおよびPDHmodをコードするものである細胞を提供する。宿主細胞は、適当な宿主細胞であり得、所望される適用(例えば、増幅および/またはポリペプチド発現のため)に基づいて当業者によって選択することができる。
【0057】
用語「宿主細胞」は、形質転換されるか、または核酸配列で形質転換され、次いで選択された目的の遺伝子を発現させることができる細胞を意味するために用いられる。前記用語には、選択された遺伝子が存在する限り、その子孫が元々の親の形態または遺伝子構造において同一であるかどうかに関係なく、親細胞の子孫が含まれる。
【0058】
本明細書で用いられる用語「形質転換」は、細胞の遺伝学的な性質の変化を意味し、細胞は、新しいDNAを含むように改変された場合に形質転換される。例えば、細胞がその元々の状態から遺伝学的に改変されると形質転換される。トランスフェクションまたは導入後、その形質転換DNAは、細胞の染色体に物理的に組み込まれることによって細胞の染色体に組み換えられてもよく、複製されることなく染色体外エレメントとして一過的に維持されてもよく、あるいはプラスミドとして独立して複製されてもよい。細胞は、DNAが細胞の分裂により複製されると、安定に形質転換されると考えられている。
【0059】
用語「トランスフェクション」は、細胞による外部DNAもしくは外因性DNAの取り込みを意味するために用いられ、細胞は、外因性DNAが細胞膜の内部に取り込まれた場合に「トランスフェクト」される。多くのトランスフェクション技術が当該技術分野で周知であり、本明細書に開示されている。例えば、Graham et al., 1973, Virology 52:456; Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratories, 1989); Davis et al., Basic Methods in Molecular Biology (Elsevier, 1986); and Chu et al., 1981, Gene 13:197を参照のこと。かかる技術は、1つまたはそれ以上の外因性DNA部分を適当な宿主細胞に導入するために用いることができる。
【0060】
一定の具体例において、選択圧は、形質転換された細胞を、培地中の選択薬剤の濃度が逐次変化される条件下で培養し、それにより選択遺伝子およびPDHmodおよびFDHポリペプチドをコードするDNAの両方を増幅させることによって与えられる。結果として、大量のPDHmodおよびPDHポリペプチドは、増幅されたDNAから合成される。
【0061】
PDHmodおよびFDHポリペプチドのための発現プラスミドの選択された宿主細胞への形質転換またはトランスフェクションは、塩化カルシウム法、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクションまたはDEAEデキストラン法のような方法が含まれる周知の方法によって行われてもよい。前記の選択される方法は、用いられる宿主細胞のタイプに一部依存する。これらの方法およびその他の適当な方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、上記のSambrook et alで説明されている。
【0062】
選択可能なマーカー遺伝子エレメントは、選択培地中で増殖された宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質またはその他の毒素、例えば、原核宿主細胞のためのアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を有するか、(b)細胞の栄養要求性欠乏を補完するか、または(c)複合培地から摂取できない不可欠な栄養素を供給する、タンパク質をコードする。選択可能なマーカーの例は、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。ネオマイシン耐性遺伝子はまた、原核生物および真核生物の宿主細胞の選択に用いられてもよい。
【0063】
PDHまたはPDHmodおよびFDHポリペプチドをコードする核酸分子は、標準的なライゲーション技術を用いて適当な発現プラスミドに組み込まれる。前記プラスミドは、用いられる特定の宿主細胞中で機能するように選択されてもよい(すなわち、前記プラスミドは、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が起こるように宿主細胞の機構に適合可能である)。
【0064】
さらなる具体例において、核酸分子は、原核生物の宿主細胞で増幅および/または発現させることができる。宿主細胞は、原核生物の宿主細胞(例えば、大腸菌)であり得る。宿主細胞は、適当な条件下で培養されると、PDHmodおよびFDHポリペプチドを合成し、後にそれを産生する宿主細胞から直接収集することができる。適当な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、グリコシル化もしくはリン酸化などの作用に望ましいか、または必要であるポリペプチド修飾、ならびに生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易性などの様々な因子に依存している。
【0065】
細菌細胞は、本明細書に記載される核酸分子および/またはプラスミドに適当な宿主細胞として有用である。様々な具体例において、宿主細胞には、大腸菌の様々な株(例えば、JM110、HB101、DH5、DH10、およびMC1061)が含まれ得る。具体例において、核酸もしくはプラスミドを含む細胞(すなわち、形質転換もしくはトランスフェクトされた細胞)は、当該技術分野で周知の標準的な培地を用いて培養されてもよい。前記培地には、通常、細胞の増殖および生存に必要な全ての栄養素が含まれる。大腸菌細胞を培養するための適当な培地は、例えば、ルリアブロス(LB)および/またはテリフィックブロス(TB)である。いくつかの具体例において、トランスフェクトもしくは形質転換された細胞の選択的な増殖に有用な抗生物質またはその他の化合物は、補助剤として培地に添加される。用いられる化合物は、宿主細胞への形質転換に用いられたプラスミドに存在する選択可能なマーカーエレメントによって決定づけられる(TB)。例えば、選択可能なマーカーエレメントがカナマイシン耐性である場合、培地に添加される化合物はカナマイシンである。選択的な増殖のためのその他の化合物には、アンピシリン、テトラサイクリン、およびネオマイシンが含まれる。
【0066】
いくつかの具体例において、リボソーム結合部位(RBS)は、原核生物のmRNAの翻訳を開始することができ、シャインダルガーノ配列によって特徴付けられる。具体例において、RBSは、プロモーターの3’側および発現されるPDHおよびFDHポリペプチドのコーディング配列の5’側に局在しうる。融合していない状態での元々のタンパク質の発現は、リボソームが翻訳を開始できないように、シャインダルガーノ配列および/またはmRNA開始コドンを含有する領域を用いて局在性の二次構造を形成することによって抑制されうる。具体例において、プラスミドは、真核生物の配列を含有するmRNAのこの翻訳阻害を解消するために用いることができる(Yero et al., Biotechnol. Appl. Biochem., 44:27-34, (2006); Schoner et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 83:8506-8510 (1986))。
【0067】
発現およびクローニングプラスミドには、様々な具体例において、宿主生物によって認識され、FDHポリペプチドをコードする分子に作動可能に連結されたプロモーターが含まれうる。プロモーターは、構造遺伝子の転写を制御する構造遺伝子の開始コドンの上流(すなわち、5’側)に局在する非翻訳配列(一般に、約100から1000bpの範囲内)である。プロモーターは、従来、2つのクラス:誘導可能なプロモーターおよび構成的なプロモーターのうちの1つに分けられる。誘導可能なプロモーターは、栄養素の存否または温度の変化のような培養条件におけるいくつかの変化に反応してそれらの制御下でDNAからの転写レベルを上昇させ始める。様々な能力のある宿主細胞によって認識される多くのプロモーターが周知である。これらのプロモーターは、供給源のDNAから制限酵素による消化によって取り出し、当該所望のプロモーター配列をプラスミドに組み込むことによって、FDHポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結される。元々のFDHプロモーター配列は、FDHおよびPDHmodDNAの増幅および/または発現を指揮するために用いられてもよい。異種性プロモーターは、元々のプロモーターと比較して、より高い転写および発現されるタンパク質の高収率を可能にする場合、ならびに使用のために選択された宿主細胞系と適合可能である場合に、一定の具体例で用いられてもよい。
【0068】
原核生物の宿主と共に使用するのに適当なプロモーターには、ベータラクタマーゼ(Villa−Kamaroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 75:3727-31 (1978))およびラクトースプロモーター系;アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系;およびハイブリッドプロモーター、例えば、tacプロモーター(DeBoer et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:21-25 (1983))が含まれる。その他の公知の細菌性プロモーターもまた適当である。それらの配列は、公表されており、当該技術分野で周知である。これらの配列は、いずれかの必要な制限酵素部位の提供が必要となるようなリンカーまたはアダプターを用いて、所望のDNA配列にライゲーションされてもよい。
【0069】
細菌宿主に適合可能ないくつかのプラスミドは、様々な具体例で用いられてもよい。かかるプラスミドには、とりわけ、pCRII、pCR3、およびpcDNA3.1(インビトロジェン,カリフォルニア州のサンディエゴ)、pBSII(Stratagene,カリフォルニア州のラ・ホーヤ)、pET15(Novagen,ウィスコンシン州のマディソン)、pGEX(Pharmacia Biotech,ニュージャージー州のピスカタウェイ)が含まれる。組み換え分子は、形質転換、トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、またはその他の公知の技術により宿主細胞に導入することができる。
【0070】
ポリペプチド産生
様々な具体例で用いられるFDH(配列番号:4)およびPDHmod(配列番号:5)酵素は、NAD依存性酸化反応を触媒するオキシレダクターゼ酵素である。
【0071】
1の態様において、本開示は、配列番号:4および配列番号:5のポリペプチドを産生する方法であって、本明細書に記載のプラスミドを含む宿主細胞を適当な条件下で培養してポリペプチドを発現させることを特徴とする方法を提供する。
【0072】
1の具体例において、本開示は、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(PDH)および葉酸デヒドロゲナーゼ(FDH)の部分的に精製した酵素濃縮物を調製する方法であって、前記方法が、本明細書に記載される核酸分子またはプラスミドを含有する細胞を含む発酵ブロスを調製し;前記発酵ブロスを、約4℃から30℃の間で前記発酵ブロスの温度を維持しながらマイクロ流体化して、PDHおよびFDHを含有するマイクロ流体化したブロスを形成させ;このマイクロ流体化させたブロスを、凝集剤で処理して、細胞残屑を凝固させ、DNAおよび不要なタンパク質を取り除くことによって浄化し、これにより浄化されたブロスを形成させ;浄化されたブロスをろ過してろ液を得て;次いで、場合により、前記ろ液を濃縮して、前記部分的に精製された酵素濃縮物を得て、前記濃縮物が、約400IU/mlから約1000IU/mlのPDH活性および約20IU/mlから約200IU/mlのFDH活性を含むものであることを特徴とする方法を提供する。具体例において、酵素濃縮物は、ケト含有化合物をキラルアミン含有化合物に還元的にアミノ化することができ、前記キラルアミン含有化合物は、酵素濃縮物から単離することなく、BOC保護することができる。具体例において、浄化は、場合により、前記マイクロ流体化されたブロスを珪藻土と接触させることを含むことができ、前記ろ過は、珪藻土をフィルタープレスでろ過することを含む。
【0073】
具体例において、細胞は、配列番号:1に95%同一である配列を含む核酸分子を含む。具体例において、細胞は、配列番号:1を含む核酸分子を含む。具体例において、細胞は、配列番号:4のポリペプチドおよび配列番号:5のポリペプチドをコードする配列を有する核酸分子を含む。具体例において、細胞は、50%のホルムアミド、5XSSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、0.1%のSDS、および10%の硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション緩衝液中で42℃にて、次いで0.2XSSCおよび0.1%のSDSを含有するハイブリダイゼーション洗浄緩衝液中で42℃にて、配列番号:1のヌクレオチド配列の相補鎖にハイブリダイズする配列を含む核酸分子を含む。具体例において、細胞は、配列番号:2を含む核酸分子を含む。
【0074】
前記方法には、発酵ブロスをマイクロ流体化するための有効な範囲の気圧、例えば、約12000から約20000psiの範囲にある気圧が含まれうる。前記方法には、細胞の全体的な状態および/またはPDHおよびFDH酵素の活性を維持するのに有効である温度が含まれうる。温度範囲は当業者によって決定されうるが、温度の非限定的な例には、約4℃から25℃または約8℃から25℃が含まれる。本方法で用いられる細胞は、本明細書に記載の核酸分子および/またはプラスミドを安定的に保有することができ、適当な条件下でPDHおよびFDHを発現させる細胞であり得る。具体例において、細胞は大腸菌JM110である。
【0075】
前記方法には、当該技術分野で知られている有効なろ過方法、例えば、限外ろ過膜もしくはカセットを用いる限外ろ過が含まれうる。同様に、前記方法には、(例えば、細胞残屑を凝集させることによって)DNAおよび不要なタンパク質を取り除くのに有効である凝集剤および/または脱色剤が含まれうる浄化工程が含まれうる。
【0076】
用語「単離されたポリペプチド」は、(1)供給源の細胞から単離される際、ポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、またはその他の天然で見出される物質から少なくとも約50パーセント分離されており、(2)「単離されたポリペプチド」が天然で連結されているポリペプチドの全てもしくは一部に(共有結合性もしくは非共有結合性相互作用によって)連結されておらず、(3)天然で連結していないポリペプチドに(共有結合性もしくは非共有結合性相互作用によって)作動可能に連結され、あるいは(4)天然に存在していないポリペプチドを意味する。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その治療、診断、予防または研究用途を妨げるであろう自然環境で見出されるその他の夾雑ポリペプチドまたはその他の夾雑物を実質的に含むものではない。
【0077】
宿主細胞により産生されるPDHmodおよびFDHポリペプチドの量は、当該技術分野で知られている標準的な方法を用いて評価することができる。かかる方法には、ウェスタンブロット解析、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動、非変性ゲル電気泳動、HPLC分離、免疫沈殿法、および/またはDNA結合ゲルシフトアッセイなどの活性アッセイが含まれるが、これらだけに限定されない。
【0078】
溶液からのPDHmodおよびFDHポリペプチドの精製は、様々な技術を用いて行うことができる。ポリペプチドが、カルボキシル末端もしくはアミノ末端のいずれかに、ヘキサヒスチジンのようなタグまたはFLAG(Eastman Kodak Co.,コネチカット州のニューヘイブン)もしくはmyc(インビトロジェン)のようなその他の小分子ペプチドを含んで合成された場合、前記溶液をアフィニティーカラム(カラムマトリックスがタグもしくはポリペプチドに高い親和性を有する(すなわち、PDHmodもしくはFDHポリペプチドを特異的に認識するモノクローナル抗体))に直接通すことによって、ワンステップ工程で本質的に精製されてもよい。例えば、ポリヒスチジンは、ニッケルに対して高い親和性および特異性で結合し、それによりニッケルのアフィニティーカラム(例えば、QIAGEN(登録商標)ニッケルカラム)は、FDHまたはPDHmodポリペプチド/ポリHisの精製に用いることができる。例えば、Current protocols in Molecular Biology §10.11.8(Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons 1993)を参照のこと。
【0079】
FDHまたはPDHポリペプチドがタグに結合されることなく調製され、抗体が利用できない場合、精製のためのその他の周知な方法が用いられ得る。かかる方法には、イオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、硫酸アンモニウム沈殿による分画、HPLC、ゲル溶出と組み合わせた本来のゲル電気泳動(native gel electrophoresis)、およびプレパラティブ等電点電気泳動(「前処理」装置/技術,Hoefer Scientific)が含まれるが、これらだけに限定されない。ある場合において、これらの技術の2つまたはそれ以上が組み合わされて、精製度が高められてもよい。
【0080】
ある場合において、FDHもしくはPDHmodポリペプチドは、単離によって生物学的に活性でなくなってもよい。ポリペプチドをその三次構造に「リフォールディング」もしくは変換し、ジスルフィド結合を形成させるための様々な方法は、生物学的な活性を回復させるために用いることができる。かかる方法には、溶解させたポリペプチドを、通常7を超えるpHで、特定の濃度のカオトロープの存在下に露出することが含まれる。カオトロープの選択は、封入体の可溶化に用いられる選択に非常に似ているが、通常、カオトロープは、より低い濃度で用いられ、必ずしも可溶化に用いられるカオトロープと同一ではない。多くの場合、リフォールディング/酸化溶液はまた、還元剤または還元剤とその酸化型を特定の割合で含有して、ジスルフィド対形成(disulfide shuffling)を可能にする特定の酸化還元電位を生じ、タンパク質のシステイン架橋を形成させる。いくつかの一般に用いられる酸化還元対には、システイン/シスタミン、グルタチオン(GSH)/ジチオビスGSH、塩化銅、ジチオスレイトール(DTT)/ジチアンDTT、および2−メルカプトエタノール(bME)/ジチオ−b(ME)が含まれる。多くの場合、共溶媒は、リフォールディングの効率を上昇させるために用いられてもよく、または必要とされてもよく、このために用いられるより一般的な試薬には、グリセロール、様々な分子量のポリエチレングリコール、アルギニンなどが含まれる。
【0081】
封入体がFDHまたはPDHmodポリペプチドの発現に応じてあまり形成されていない場合、ポリペプチドは、細胞ホモジェネート物の遠心分離後の上澄み液中で主として見出され、下記に説明されるような方法を用いて、当該上澄み液からさらに単離されてもよい。
【0082】
夾雑物を部分的もしくは実質的に含まないように、FDHまたはPDHmodポリペプチドを部分的もしく完全に精製することが好ましい状況下では、当業者に知られている標準的な方法が用いられてもよい。かかる方法には、電気泳動、続いて電気溶出による分離、様々なタイプのクロマトグラフィー(アフィニティー、免疫アフィニティー、分子ふるい、および/またはイオン交換)、ならびに硫酸アンモニウム沈殿および/または高速液体クロマトグラフィーによる分画が含まれるが、これらだけに限定されない。ある場合では、完全に精製するためにこれらの方法の1つ以上を用いることが望まれうる。
【0083】
用語「類似性」は、同一性に関連する概念であるが、「同一性」とは対照的に、「類似性」は、完全一致と保存的置換適合性との両方が含まれる関連性の指標を意味する。2つのポリペプチド配列が、例えば、10/20の同一のアミノ酸を有し、残りが全て非保存的な置換である場合、パーセント同一性および類似性は、両方とも50%である。同じ例において、保存的な置換が5つのさらなる位置に存在する場合、パーセント同一性は50%のままであるが、パーセント類似性は75%(15/20)である。よって、保存的な置換が存在する場合、2つのポリペプチド間のパーセント類似性は、これらの2つのポリペプチド間のパーセント同一性より高くなる。
【0084】
核酸配列の相違は、配列番号:4または配列番号:5のいずれかのアミノ酸配列に対する保存的および/または非保存的なアミノ酸配列の改変を生じうる。
【0085】
配列番号:4または配列番号:5のいずれかのアミノ酸配列に対する保存的な改変(およびこれらのコードするヌクレオチド配列に対応する改変)は、FDHもしくはPDHmodポリペプチドに類似する機能的および化学的特性を有するポリペプチドを産生する。対照的に、FDHもしくはPDHmodポリペプチドの機能的および/または化学的特性の実質的改変は、(a)置換領域における分子骨格の構造、例えば、シートもしくはへリックス構造、(b)標的部位における分子の荷電性もしくは疎水性、または(c)側鎖の束(bulk)を維持する効果において極めて異なる配列番号:4もしくは配列番号:5のいずれかのアミノ酸配列の置換を選択することによって達成されてもよい。
【0086】
例えば、「保存的なアミノ酸置換」は、その位置におけるアミノ酸残基の極性もしくは荷電性にほとんどもしくは全く効果がないように、天然アミノ酸残基を非天然残基に置換することを意味する。さらに、ポリペプチドの天然残基はまた、「アラニン系統的変異導入法」として以前に示されるようにアラニンで置換されてもよい。
【0087】
保存的なアミノ酸置換はまた、生物システムにおける合成ではなくむしろ化学的なペプチド合成によって典型的に取り込まれる天然に存在しないアミノ酸残基もまた包含される。これらには、ペプチド模倣物、およびその他のアミノ酸部分の逆位もしくは反転型が含まれる。
【0088】
天然に存在する残基は、共通する側鎖の特性に基づいてクラスに分けられうる:
1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
3)酸性:Asp、Glu;
4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;ならびに
6)芳香性:Trp、Tyr、Phe
例えば、非保存的な置換は、これらのクラスのメンバーを別のクラスのメンバーに交換することに関連しうる。
【0089】
かかる変化を生じさせる場合、アミノ酸の疎水性親水性指標が考慮されうる。各アミノ酸は、疎水性および荷電特性に基づいて疎水性親水性指標が付与される。疎水性親水性指標は:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5)である。
【0090】
タンパク質に相互作用的な生物学的機能を付与する際の疎水親水性アミノ酸指標の重要性は、当該技術分野で一般的に認識されている(Kyte et al., 1982, J. Mol. Biol. 157:105-131)。特定のアミノ酸が、類似する疎水性親水性指標もしくはスコアを有するその他のアミノ酸で置換され得、それでもなお同様の生物学的活性を維持することが知られている。疎水性親水性指標に基づいて変化させる場合、一定の具体例において、アミノ酸の置換は、その疎水性親水性指標が±2以内、±1以内および±0.5以内である場合である。
【0091】
特に、本場合のように、作り出された生物学的に機能が同等であるタンパク質もしくはペプチドが免疫学的態様での使用が意図されている場合、類似するアミノ酸の置換が疎水性親水性に基づいて効果的に行われることも当該技術分野で認識されている。タンパク質の最大局所平均親水性は、その隣接するアミノ酸の親水性によって左右され、タンパク質の免疫原性および抗原性、すなわち生物学的特性と相関する。
【0092】
これらのアミノ酸残基に以下の親水性値が付与される:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。類似の親水性値に基づいて変化させる場合、一定の具体例において、アミノ酸の置換は、それらの親水性疎水性値が±2以内、±1以内、および±0.5以内であるものである。
【0093】
親水性に基づいてアミノ酸配列からエピトープも同定しうる。これらの領域は「エピトープコア領域」とも称される。
【0094】
望ましいアミノ酸置換(保存的もしくは非保存的のいずれか)は、かかる置換が望まれる場合、当業者によって決定することができる。例えば、アミノ酸置換は、本明細書に記載のFDHもしくはPDHmodポリペプチドの重要な残基を同定するために用いることができる。例示のアミノ酸置換が表Iに記載される。
表I
アミノ酸置換
【表1】

【0095】
当業者は、周知な技術を用いて、配列番号:4または配列番号:5のいずれかで説明されているようなペプチドの適当な変異体を決定することができる。生物学的活性を失うことなく変化されうる分子の適当な領域を同定するために、当業者は、活性に重要であると考えられない領域を標的としうる。例えば、同一の種もしくはその他の種に由来する同様の活性を有する類似のポリペプチドが知られている場合、当業者は、FDHもしくはPDHmodポリペプチドのアミノ酸配列をかかる類似のポリペプチドと比較しうる。かかる比較とともに、類似のポリペプチド間で保存されている残基および分子の部分を同定することができる。かかる類似のポリペプチドと比較して保存されていないFDHもしくはPDHmod分子の領域における変化が、FDHもしくはPDHmodポリペプチドの生物学的活性および/または構造に悪影響を及ぼす可能性が低いと考えられる。当業者はまた、比較的保存されている領域においても、活性を維持しながら、天然に存在する残基を化学的に類似するアミノ酸に置換しうることも知っている(保存的なアミノ酸残基置換)。よって、生物学的活性もしくは構造に重要でありうる領域でさえ、生物学的活性を失うことなく、またはポリペプチド構造に悪影響を与えることなく保存的アミノ酸置換を行いうる。
【0096】
また、当業者は、活性もしくは構造に重要な類似のポリペプチドにおける残基を同定する構造機能研究を検討することができる。かかる比較を考慮して、類似のポリペプチドにおける活性もしくは構造に重要であるアミノ酸残基に相当するFDHもしくはPDHmodポリペプチドにおけるアミノ酸残基の重要度を予測することができる。当業者は、FDHもしくはPDHmodポリペプチドのかかる予測された重要なアミノ酸残基について、化学的に類似するアミノ酸の置換を選択しうる。
【0097】
当業者はまた、類似するポリペプチドの三次構造およびその構造に関連するアミノ酸配列も解析することができる。かかる情報を考慮して、当業者は、その三次構造に関するFDHもしくはFDHmodポリペプチドのアミノ酸残基の配列を予測しうる。当業者は、タンパク質の表面上であることが予測されるアミノ酸残基は他の分子との重要な相互作用に関連しうるため、かかる残基に劇的な変化を生じないように選択しうる。さらに、当業者は、各アミノ酸残基において単一のアミノ酸置換を含有するテスト変異体を調製しうる。前記変異体は、当業者に公知の活性アッセイを用いてスクリーニングされうる。かかる変異体は、適当な変異体についての情報を収集するために用いられ得る。例えば、特定のアミノ酸残基への変化が、失われ、所望せずに減少し、または適切ではない活性を生じることを知見した場合、かかる変化を有する変異体は、回避されるであろう。すなわち、かかる一般的な実験から収集された情報に基づいて、当業者は、さらなる置換が、単独で、もしくは他の変異との組み合わせのいずれかで回避されるべきアミノ酸を容易に決定することができる。
【0098】
多くの科学文献は、二次構造の予測について取り扱っている。Moult, 1996, Curr. Opin. Biotechnol. 7:422-427;Chou et al., 1974, Biochemistry 13:222-245; Chou et al., 1974, Biochemistry 113:211-222; Chou et al., 1978, Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. 47:45-48; Chou et al., 1978, Ann. Rev. Biochem. 47:251-276;およびChou et al., 1979, Biophys. J. 26:367-384を参照のこと。さらに、二次構造の予測を補助するために、コンピュータープログラムが現在利用可能である。二次構造を予測する方法の1つは、ホモロジーモデリングに基づくものである。例えば、30%以上の配列同一性、または40%以上の配列類似性を有する2つのポリペプチドまたはタンパク質は、多くの場合、類似の構造トポロジーを有する。タンパク質構造データベース(PDB)の近年の発展は、ポリペプチドまたはタンパク質の構造における折りたたみの可能な数を含む、二次構造の予測性を向上させている。Holm et al., 1999, Nucleic Acids Res. 27:244-247を参照のこと。所定のポリペプチドもしくはタンパク質の折りたたみの数は制限されており、一旦構造の臨界数が解消されると、構造予測は劇的に正確になると推測されている(Brenner et al., 1997, Curr. Opin. Struct. Biol. 7:369-376)。
【0099】
二次構造を予測するさらなる方法には、「threading」(Jones, 1997, Curr. Opin. Struct. Biol. 7:377-87; Sippl et al., 1996, Structure 4:15-19)、「profile analysis」(Bowie et al., 1991, Science, 253:164-170; Gribskov et al., 1990, Methods Enzymol. 183:146-159; Gribskov et al., 1987, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 84:4355-4358)、および「evolutionary linkage」(上記のHolmらおよび上記のBrennerらを参照のこと)が含まれる。
【0100】
関連する核酸分子およびポリペプチドの同一性および類似性は、公知の方法によって容易に算出される。かかる方法には、Computational Molecular Biology (A.M. Lesk, ed., Oxford University Press 1988);Biocomputing: Informatics and Genome Projects (D.W. Smith, ed., Academic Press 1993); Computer Analysis of Sequence Data (Part 1, A.M. Griffin and H.G. Griffin, eds., Humana Press 1994); G. von Heijne, Sequence Analysis in Molecular Biology (Academic Press 1987);Sequence Analysis Primer (M. Gribskov and J. Devereux, eds., M. Stockton Press 1991);およびCarillo et al., 1988, SIAM J. Applied Math., 48:1073に記載されるものが含まれるが、これらだけに限定されない。
【0101】
同一性および/または類似性を決定するための一定の方法は、テストされる配列間で最も高い適合性を付与するように設計される。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に入手可能なコンピュータープログラムに記載される。2つの配列間の同一性および類似性を決定するための一定のコンピュータープログラム方法には、以下に限定されないが、GAP(Devereux et al., 1984, Nucleic Acids Res. 12:387;ウィスコンシン州、マディソンのウィスコンシン大学のGenetics Computer Group)、BLASTP、BLASTN、およびFASTA(Altschul et al., 1990, J. Mol. Biol. 215:403-410)を含むGCGプログラムパッケージが含まれる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology Information(NCBI)および他の供給源(AltschulらのBLASTマニュアル(メリーランド州、ベセスダのNCB NLM NIH);上記のAltschul et al.. 1990)から公的に利用可能である。よく知られているスミスウォーターマンアルゴリズムもまた、同一性を決定するために用いられうる。
【0102】
2つのアミノ酸配列を配列するための一定のアラインメントスキームは、2つの配列の短い領域のみの適合を生じ、この短く配列された領域は、2つの全長配列間にあまり関連性がなくても極めて高い配列同一性を有しうる。したがって、1の具体例において、選択されたアラインメント方法(GAPプログラム)は、本発明のポリペプチドの少なくとも50個の連続するアミノ酸に及ぶアラインメントを生じる。
【0103】
例えば、コンピューターアルゴリズムGAP(ウィスコンシン州、マディソンのウィスコンシン大学のGenetics Computer Group)を用いて、パーセント配列同一性が決定される2つのポリペプチドは、それらの各アミノ酸が最適に適合するように配列される(「適合した長さ」はアルゴリズムによって決定される)。ギャップ開始ペナルティー(gap opening penalty)(3X平均対角(average diagonal)として算出される;「平均対角」は、用いられる比較マトリックスの対角の平均である;「対角」は、特定の比較マトリックスによって各々の完全なアミノ酸適合性に付与されるスコアまたは番号である)およびギャップ伸長ペナルティー(gap extension penalty)(通常、0.1Xギャップ開始ペナルティーである)、ならびにPAM250もしくはBLOSUM62などの比較マトリックスは、前記アルゴリズムと組み合わせて用いられる。標準的な比較マトリックスはまた、アルゴリズムによって用いられる(Dayhoff et al., 5 Atlas of Protein Sequence and Structure (Supp. 3 1978)(PAM250比較マトリックス);Henikoff et al., 1992, Proc. Natl. Acad. Sci USA 89:10915−10919(BLOSUM62比較マトリックス)を参照のこと)。
【0104】
ポリペプチド配列の比較に用いられ得るパラメーターには、以下のものが含まれる:
アルゴリズム:Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48:443-453;
比較マトリックス:BLOSUM62(上記のHenikoff et al.,);
ギャップペナルティー:12
ギャップ長ペナルティー(Gap Length Penalty):4
類似性の閾値:0
GAPプログラムは、上記パラメーターで有用である。前記パラメーターは、GAPアルゴリズムを用いる(エンドギャップ(end gap)に対するペナルティーなしの)ポリペプチド比較のための初期パラメーターである。
【0105】
核酸分子配列比較で用いられ得るパラメーターには、以下のものが含まれる:
アルゴリズム:上記のNeedleman and Wunsch;
比較マトリックス:適合=+10,非適合=0
ギャップペナルティー:50
ギャップ長ペナルティー:3
GAPプログラムはまた、上記パラメーターで有用である。前記パラメーターは、核酸分子比較のための初期パラメーターである。
Program Manua, Wisconsin Package, Version 9, September, 1997に記載されるものが含まれる他の例示のアルゴリズム、ギャップ開始アルゴリズム、ギャップ伸長ペナルティー、比較マトリックス、および類似性の閾値が用いられうる。行われる具体的な選択は、当業者にとって明らかであり、DNAからDNA、タンパク質からタンパク質、タンパク質からDNA;および、比較が配列の所定のペア間(この場合、GAPまたはBestFitが用いられ得る)または1つの配列および配列の大規模データベース間(この場合、FASTAもしくはBLASTが用いられ得る)などの実施される具体的な比較による。
【0106】
1の態様において、本開示は、サクサグリプチン前駆体を生成する方法であって、本明細書に記載される核酸分子および/またはプラスミド(例えば、二シトロン性プラスミド)を含む宿主細胞を適当な条件下で培養して、FDHおよびPDHmodを発現させ;前記ポリペプチドを前記培養物から単離し;次いで、単離されたポリペプチドを還元アミノ化反応に用いることを特徴とする方法に関する。
【0107】
本明細書で開示されるプラスミドは、9連続継代培養後に遺伝学的な安定性を維持し(〜60−70代)、これは凍結細胞バンクバイアルから生成発酵の終結までより長い(〜15−20代)。
【0108】
1の態様において、本開示は、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を生成する方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を適当な条件下で培養して、そのポリペプチドを発現させ;前記ポリペプチドを含む培養単離物を単離し;次いで、培養単離物を、一定量の3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸および一定量の二炭酸−ジ−tert−ブチルと、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1,13,7]デカン−1−酢酸の生成を可能にする条件下で接触させることを特徴とする方法を提供する。
【0109】
1の具体例において、前記方法は、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式I):
【化4】

(I)
を生成する方法であって、本明細書に記載の宿主細胞を適当な条件下で培養して、FDHおよびPDHポリペプチドを発現させ;前記ポリペプチドを含む培養単離物を単離し;次いで培養単離物を、一定量の3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3,1.13,7]デカン−1−酢酸(式II):
【化5】

(II)
と、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式III):
【化6】

(III)
の生成を可能にする条件下で接触させ、次いで(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を、一定量の二炭酸−ジ−tert−ブチルと、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の生成を可能にする条件下で接触させることを特徴とする。本明細書に記載の方法で用いることができる様々な反応条件は、他で詳細に記載されており、当該技術分野で一般に知られている。米国特許第7,420,079号を参照のこと。以下の実施例は、本開示の具体的な態様およびそれらの様々な用途を例示するものである。それらは、説明のためだけに記載されており、発明を限定するものと解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲で詳細に記載されている。本明細書で引用される全ての特許文献および非特許文献は、出典明示により全体が本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0110】
実施例1:二シストロン性FDH/PDHmodプラスミドの構築
二シストロン性FDH/PDHmodプラスミドは、PDHmod遺伝子(配列番号:3)を5’リボソーム結合配列と共に含むPCR増幅フラグメントを、PDHmod遺伝子およびその対応するプロモーターが取り除かれたpBMS2000−PPFDH−PDHmodプラスミドに挿入することによって構築した。pBMS2000−PPFDH−PDHmodプラスミドは、米国特許第6,068,991号で元々開示されている前駆体のpBMS2000プラスミドと共に、米国特許第7,420,079号に開示されている。これらの特許文献の両方とも出典明示により本明細書に取り込まれる。
【0111】
pBMS2000−PPFDH−PDHmodプラスミドをBamHIおよびNotI制限酵素で消化して、PDHmod遺伝子およびそのプロモーターを取り除いた。消化したDNAをアガロースゲル上で分離させ、5.5kbのフラグメントをQIAGEN(登録商標)ゲル抽出法を用いて単離した。
【0112】
順向きプライマーであるpdhmod1f(5’−AAGCGAGATCTGCGCACGACACTG−3’;配列番号:6)を、5’リボソーム結合部位と、ベクターのBamHI部位とのライゲーションのためのBglII部位とを有するPDHmod配列を増幅するように設計した。逆向きプライマーであるpdhmod3r(5’−AATTAATTCGCGGCCGCCGCGGCTCG−3’;配列番号:7)を、鋳型であるプラスミドpBMS2000−PDHmodのNotI部位の3’側に設計し、PCR産物のBglII/NotI二重消化により、消化したベクターのFDH配列の3’側の直近に挿入されるフラグメントを調製した。PCR反応を、10pモルの順向きおよび逆向きの各プライマー、ベクター鋳型、pBMS2000−PDHmod、およびHFポリメラーゼ酵素(クロンテック(登録商標))を用いて製造業者のプロトコルに従って行った。反応は9700サーモサイクラー(APPLIED BIOSYSTEMS(登録商標))で行った。PCR産物をQIAGEN(登録商標)PCR clean−upカラムを用いて精製し、50μLのTEで溶出した。PCR産物をBglIIおよびNotI制限酵素で消化し、アガロースゲルで分離させ、〜1.2kbのバンドを切り出し、QIAGEN(登録商標)ゲル抽出キットを用いて精製した。
【0113】
PDHmod遺伝子を含有するBglII/NotIで消化したPCRフラグメントを、T4DNAリガーゼを用いて、FDH遺伝子配列およびプロモーターを含有するBamHI/NotI消化プラスミドにライゲートした。1μLのライゲーション液を、MachIコンピテント細胞(INVITROGEN(登録商標))に形質転換させ、30μg/mLのカナマイシンを含有するルリアブロス(LB)プレートに蒔いた。プラスミドミニプレップを行い、期待されるサイズのプラスミドをアガロースゲル解析により確認した。
【0114】
プラスミドDNAはダイデオキシターミネーター化学(APPLIED BIOSYSTEMS(登録商標))を用いて配列決定した。プライマーは、全ての挿入PCRフラグメント(BglII/NotIフラグメント)および消化したベクター配列との接合部を配列決定するように設計した。FDH遺伝子の終結部分とPDHmod配列の開始部分の間の遺伝子間配列は、予想どおりであった。二シトロン性FDH/PDHmodプラスミドを大腸菌発現宿主JM110に形質転換させた。
【0115】
実施例2:二シトロン性FDH/PDHmodプラスミドの安定性の確認
二シトロン性プラスミドで形質転換した大腸菌宿主JM110の凍結バイアルの1つを、氷上で融解し、100μLを30μg/mLのカナマイシンを含有するLB培地20mLに接種し、250rpmで30℃にて終夜インキュベートした。培養液を新たな20mL体積のLB+30μg/mLのカナマイシンにさらに9回移し、250rpmで30℃にて8〜20時間インキュベートした。プラスミドDNAを、QIAGEN(登録商標)midiプラスミドキットを用いて、最終20mLの培養液から単離した。前記プラスミドをEcoRI制限酵素で消化し、アガロースゲルで解析した(図3)。6と7kb分子量マーカーの間で単一バンドが観察され、無傷(intact)の直線化されたプラスミドの期待されたサイズであった。ゲル上に他のバンドが見られなかったことから、プラスミドが遺伝学的に安定であることが示された。
【0116】
実施例3:二シストロン性FDH/PDHmodプラスミドを有する大腸菌形質転換体の発酵
pBMS2000−FDH/PDHmodを、大腸菌JM110に形質転換させ、プラスミドDNAを抽出し、正しい制限酵素消化パターンにより確認した。JM110(pBMS2000−FDH/PDHmod)をBMS培地(0.5%の酵母エキス、0.22%のグルコース、0.7%のリン酸カリウム(二塩基)、0.1%のクエン酸一水和物、0.17%の硫酸アンモニウム、0.003%の硫酸鉄七水和物、0.23%の硫酸マグネシウム七水和物、および30μg/mLの硫酸カナマイシン)中で発酵させた。4,000Lの発酵槽において、接種物を以下のように調製した:1mLの凍結したJM110(pBMS2000−FDH/PDHmod)を融解させ、30μg/mlのカナマイシンを含む400LのBMS培地を含有する600Lの発酵槽に加えた。前記発酵槽を、150rpm(毎分回転数)の撹拌、80Lpm(毎分リットル)の通気、および7psiの上部圧力で、30℃にて21時間操作した。OD600が〜1.1に達したら、75Lの培養液を、1,700LのBMS培地を含有する4,000Lの発酵槽に移した。前記発酵槽を、105〜150rpmの範囲の撹拌、1,000〜2,000Lpmの範囲の通気、および7psiの上部圧力にて、30℃で増殖を開始させた。温度および圧力は、上記実験中一定に保った。COがオフガス中で0.3%を超えたら、栄養成分(10%の酵母エキスおよび20%のグルコース)を与え始めた。OD600が20〜25に達したら、両遺伝子の発現を、フィルター滅菌した1Mのイソプロピルチオ−β−Dガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度30μMで加えることによって誘導し、合計48時間発酵させ続けた。
【0117】
実施例4:単離させた(部分的に精製した)PDH/FDH酵素濃縮物を用いる(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸による3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸からの(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の短縮された生成
【0118】
PDH/FDH酵素濃縮物の単離
大腸菌JM110(pBMS2000−FDH/PDHmod)の発酵ブロス(30L)を、(実施例3と同様の手順を用いて調製した)4,000Lの発酵物から得て、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイディスクモデルM−110Y、操作圧力12,000〜20,000psi)(ワンパス)に通して、前記ブロスの温度を40℃以下に保ちながら細胞からその活性を遊離させた。マイクロ流体化させたブロスのPDH/FDH活性は、PDHに関しては32IU/mLおよびFDHに関しては8IU/mLであった。
【0119】
全ブロスを浄化するために、4.5kgのセライトを十分に撹拌したブロスに加えた。次いで、30%のポリエチレンイミン溶液の0.201Lを加え、30分間混合させた。次に、前記混合物を、フィルタープレス(Ertel Alsopモデル8−ESSC−10)を用いてろ過し、18Lの濾液を得た。該ろ過ケーキを12Lの水で洗浄して、体積を30Lに戻した。ステップ収率(step yield)は、31IU/mLのPDH活性および8IU/mLのFDH活性の97%の活性回復であった。
【0120】
浄化させたブロスを、100,000MWCOフィルターカセット(Millipore Pellicon 2ユニット,ポリエーテルスルホン低タンパク質結合カセット,0.5mのフィルター面(filter area))に通して限外ろ過した。ポンプの循環速度は400mL/分であった。浄化した濾液を1.5Lに濃縮し、567IU/mLのPDH力価および136IU/mLのFDH力価を有する酵素濃縮物を得た。透過物をアッセイし、活性が見られなかった。濃縮物中の全酵素活性の回復は84%であった。
【0121】
還元アミノ化
3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(1.00Kg;4.46mol)を20Lの反応管に加え、続いて水(5L)を加えた。混合物を撹拌し、pHを10NのNaOHでpH〜8に調整して、溶液を得た。Darco KBBカーボン(100g)を加え、混合物を5分間撹拌し、次いで5μのろ紙を備えたブフナー漏斗に通してろ過した。ろ紙を水で洗浄し(2x1L)、濾液および洗浄液を合わせて、清澄な溶液を得た。
【0122】
撹拌しながら、ギ酸アンモニウム(0.562Kg;8.92mol)を加え、pHを10NのNaOHで〜7.5に再調整した。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(2.65g)およびジチオスレイトール(1.54g)を加えた。固形物を溶解させて、PDH/FDH酵素濃縮物を加えた(1.03L;PDHの500,000IU)。pHを、周囲温度にて10NのNaOHで〜8.0に再調整した。
【0123】
次いで、混合物を〜40℃に温め、水で合計10Lに希釈した。pHを7.7〜8.3に維持しながら、42時間にわたり撹拌した。生じた溶液は、0.955Kg(95.1%)の生成物(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を含有した。
【0124】
BOC保護
二炭酸−ジ−tert−ブチル(1.022Kg;4.68mol)を、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(477.5g;2.12mol)溶液の一部に加えた。この混合物を、pHスタット滴定装置を用いてpHを10NのNaOHで10に調整し、維持しながら、周囲温度で撹拌した。反応は、1.0%より少ない出発物質が残存するBocOの添加4時間後に完了した。
【0125】
混合物のpHを、35%のHSOで〜8に調整し、i−PrOAc(5.0L)を前記混合物に加えた。次いで、前記混合物のpHを、35%のHSOで2.0に調整し、このpHで5〜10分間維持した。ダイカライト(250g)を加え;混合物を〜10分間撹拌し、次いでブフナー漏斗中のろ紙上のダイカライト(250g)のパッドに通してろ過した。ダイカライトパッドを2.5LのiPrOAcでさらに洗浄した。
【0126】
濾液を10NのNaOHでpH8に調整した。1時間静置した後、接触面を含む有機層を捨てた。水層に、i−PrOAc(7.5L)を加えた。該混合液を35%のHSOでpH〜2まで酸性にし、次いで軽く撹拌しながら、40℃で4時間加熱し、維持した。層を分離し、有機抽出物を保存した。接触面を含む水層をi−PrOAc(3.75L)で抽出し、この層を40℃で2時間後に再度分離した。接触面を含む水層をi−PrOAc(3.75L)で再度抽出し、この層を40℃で2時間後に分離した。
【0127】
有機抽出物を合わせて(〜15L)、蒸留により〜4.5Lに濃縮した。次いで、この溶液にヘプタン(〜10L)を、温度を〜82−89℃に保ちながら10〜15分かけて加えた。リアクター表面の温度を70℃に設定し、この温度で1時間保った。冷却直後に結晶が生じた。次いで、リアクター表面の温度を40℃に設定し、この温度で30分間保った。
【0128】
懸濁液を周囲温度に冷まし、次いで0〜5℃にさらに冷却した。0〜5℃で1時間撹拌した後、生成物を濾過した。生成物をヘプタン(2.5L)で洗浄し、次いで減圧中にて40℃で乾燥させて、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエトキシ)カルボニル]アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の607.0g(収率88%)を得た。
【0129】
前記開示は、一定の具体的な態様を強調するものであって、これらに均等な全ての改変もしくは代替物が特許請求の範囲に示される発明の精神および範囲内であることが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)配列番号:1に95%同一であるヌクレオチド配列を含む単離された核酸配列;または
(b)配列番号:4のポリペプチドおよび配列番号:5のポリペプチドをコードする配列
を含む、単離された核酸分子。
【請求項2】
配列番号:1のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項3】
配列番号:4のポリペプチドおよび配列番号:5のポリペプチドをコードする配列が、単一のプロモーター領域をさらに含むものである、請求項1に記載の単離された核酸分子。
【請求項4】
50%のホルムアミド、5XSSC(0.75M NaCl,0.075M クエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、0.1%のSDS、および10%の硫酸デキストランを含むハイブリダイゼーション緩衝液中で42℃、次いで、0.2XSSCおよび0.1%のSDSを含むハイブリダイゼーション洗浄緩衝液中で42℃にて、配列番号:1のヌクレオチド配列の相補鎖にハイブリダイズする配列を含むものである、単離された核酸分子。
【請求項5】
配列番号:2のヌクレオチド配列を含む、単離された核酸分子。
【請求項6】
請求項2に記載の核酸分子を含む、プラスミド。
【請求項7】
請求項6に記載のプラスミドを含む、単離された宿主細胞。
【請求項8】
原核細胞である、請求項7に記載の宿主細胞。
【請求項9】
(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ))カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式I):
【化1】

(I)
の生成方法であって、
前記方法が、
(a)請求項8に記載の宿主細胞を適当な条件下で培養して、配列番号:1の核酸分子によってコードされるポリペプチドを発現させ;
(b)前記ポリペプチドを含む酵素濃縮物を部分的に精製し;次いで
(c)培養単離物を、一定量の3−ヒドロキシ−α−オキソトリシクロ−[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式II):
【化2】

(II)
と、(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸(式III):
【化3】

(III)
の生成を可能にする条件下で接触させ;次いで
(d)前記(αS)−α−アミノ−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸を一定量の二炭酸−ジ−tert−ブチルと、(αS)−α−[[(1,1−ジメチルエチオキシ)カルボキシル]−アミノ]−3−ヒドロキシトリシクロ[3.3.1.13,7]デカン−1−酢酸の生成を可能にする条件下で接触させること
を特徴とする方法。

【図1】
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【図2(a)】
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【図2(b)】
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【図2(c)】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−523235(P2012−523235A)
【公表日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−504868(P2012−504868)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/US2010/030404
【国際公開番号】WO2010/118240
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】