説明

PEG化された単鎖インスリン

本発明は、3〜35のアミノ酸残基を有する連結ペプチドにより連結されたヒトインスリンまたはそのアナログのB鎖およびA鎖を含んでなる単鎖インスリンに関し、単鎖インスリン中の少なくとも1のリジン残基および/またはB1 N末端アミノ酸残基に結合した少なくとも1のPEG基を含んでなる単鎖インスリンに関する。PEG化単鎖インスリンは、同じまたは異なってよい4以下のPEG基を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、インスリン活性を有し、糖尿病の治療に使用することができる、PEG化単鎖インスリンに関する。前記PEG化単鎖インスリンは、標準のインスリンよりも高いバイオアベイラビリティーおよび長い作用プロフィールを有し、特に肺投与に適している。それらは、高い物理的安定性および低いフィブリル化(fibrillation)に対する傾向を有し、中性pHにおいて可溶性である。本発明は、PEG化単鎖インスリンを含有する医薬組成物にも関する。
【発明の背景】
【0002】
インスリンは、膵臓のβ細胞により分泌されるポリペプチドホルモンであり、2つのポリペプチド鎖、AおよびBから成り、2つの鎖間ジスルフィド結合により結合されている。さらに、A鎖は、1つの鎖内ジスルフィド結合を作る。
【0003】
前記ホルモンは、24のアミノ酸のプレペプチドからなる単鎖前駆物質プロインスリン(プレプロインスリン)として合成され、続いて立体配置:プレペプチド−B−Arg Arg−C−Lys Arg−Aである86のアミノ酸を含有するプロインスリンとなり、ここでのCは、31のアミノ酸の連結ペプチドである。Arg-ArgおよびLys-Argは、AおよびB鎖から連結ペプチドを切断し、2つの鎖のインスリン分子を形成するための切断部位である。インスリンは、通常の代謝調節の維持において不可欠である。
【0004】
インスリンの2鎖構造は、インスリンが複数の立体配座をとろうとすることを可能にし、いくつかの知見は、インスリンがかなりの立体配座の変化を起こす傾向を有しており、そのような変化に対する可能性における制限は、インスリン受容体のリガンドに対する親和性を低下させると示唆している。プロインスリンは、天然のインスリンよりもインスリン受容体に対する親和性が100倍低い。インスリンにおけるアミノ酸残基A1のブロッキングも、結果として低い受容体結合性を生じ、インスリンにおけるA鎖の遊離N末端およびB鎖の遊離C末端がインスリン受容体への結合に対して重要であるという教義と一致する。
【0005】
インスリン分子の引き継がれた物理的および化学的安定性は、真性糖尿病のインスリン治療に対する基礎的な条件である。これらの基礎的な性質は、インスリン製剤および適用可能なインスリン投与法、ならびに医薬製剤の有効期間および保管条件に対する基本である。インスリンの投与における溶液の使用は、因子の組み合わせ、例えば、高い温度、変化しやすい空気-液体-固体界面相、ならびにせん断力に分子を曝し、結果として、例えばフィブリル化のような不可逆的な高次構造を生じる可能性がある。
【0006】
残念ながら、多くの糖尿病患者は、グルコースレベルの精密制御を維持するために必要とされる多くの注射に付随する不快感により、集中治療を行うことに気が進まない。このタイプの治療は、心理的にも身体的にも痛みとなり得る。経口投与において、インスリンは、胃腸管において速やかに分解され、血流中に吸収されない。それ故、多くの研究者は、経口、直腸、経皮、および鼻腔の経路のような、インスリン投与の代替経路について研究してきた。しかしながら、このような投与経路は、効果的なインスリン吸収を生じなかった。
【0007】
タンパク質の効率的な肺送達は、タンパク質を深部の肺胞上皮に送達する能力に依存する。上気道上皮に沈着するタンパク質は、有意な程度に吸収されない。これは、約30〜40μmの厚さであり、吸収に対するバリヤーとして働く粘液に覆われていることによる。加えて、この上皮に沈着したタンパク質は、粘膜毛様体輸送により気道から一掃され、消化管を介して排出される。このメカニズムも、いくつかのタンパク質粒子の低い吸収性に実質的に貢献している。タンパク質が吸収されない程度およびむしろこのような経路から廃除される程度は、それらの溶解性、サイズ、ならびに他のより低い解明度の特性に依存する。
【0008】
しかしながら、有機的な鎖状分子を移植することによりペプチドの特性が増強され得るということはよく認識されている。そのような移植は、血漿半減期、タンパク分解性の分解に対する安定性、および免疫原性の低下のような薬学的な特性を改善することができる。
【0009】
性質を強めるためにしばしば使用される前記有機的な鎖状分子は、ポリエチレングリコールをベースとする鎖、すなわち、繰り返し単位-CH2CH2O-に基づく鎖である。以下、略語「PEG」は、ポリエチレングリコールについて使用される。
【0010】
古典的なPEG技術は、可溶性の有機分子をポリペプチドに結合させることにより、増大したサイズ(Stoke radius)のポリペプチドを提供するという利点がある(Kochendoerfer, G., et al., Science (299) 884-, 2003)。この技術は、天然のポリペプチドと比較して、人および動物のホルモンペプチドにおけるクリアランスを減少させる。しかしながらこの技術は、この技術に供するホルモンポリペプチドの作用強度を減少させることにより、しばしば妨害される(Hinds, K., et al., Bioconjugate Chem. (11), 195 - 201, 2000)。ポリアルキレングリコールを含む本来のものとは異なる親水性ポリマーの1以上の分子と共有結合性に結合した2鎖インスリンの接合体を含んでなる肺投与のためのインスリン組成物およびその調製方法は、WO 02/094200およびWO 03/022996に開示されている。
【0011】
しかしながら、今までに既知のインスリン誘導体よりも延長された作用プロフィールを有し、同時に生理的pH値で可溶性であり、ヒトインスリンに匹敵する作用強度を有するインスリンに対する必要性がまだある。さらに、肺投与に適したさらなるインスリン製剤に対する必要性もある。
【発明の概要】
【0012】
1つの側面において、本発明は、3〜35のアミノ酸残基を有する連結ペプチドにより連結されたヒトインスリンまたはそのアナログのB鎖およびA鎖を含んでなる単鎖インスリンに関し、前記単鎖インスリンは、単鎖インスリン分子中の少なくとも1のリジン残基および/またはB鎖N末端アミノ酸残基と結合する少なくとも1のPEG基を含んでなる。
【0013】
前記PEG基は、適切なリンカー基を介して、親単鎖インスリン中のリジン残基と結合し得る。前記リンカーは、典型的にカルボン酸の誘導体であり、前記カルボン酸の官能基は、アミド結合を介してインスリンと結合するために使用される。前記リンカーは、結合モチーフ:-CH2CO-を有する酢酸、結合モチーフ:-CH2CH2CO-もしくは-CHCH3CO-を有するプロピオン酸、結合モチーフ:-CH2CH2CH2CO-もしくは-CH2CHCH3CO-を有する酪酸であってよい。前記リンカーは-CO-基であってもよい。
【0014】
1つの実施形態において、PEG基は親インスリン分子中の天然リジン残基であるB29リジン残基と結合する。あるいは、PEG基は、親インスリン分子のB鎖またはA鎖における選択された位置の天然アミノ酸残基に対して置換されたリジン残基に結合する。PEG基は、連結ペプチド中のリジン残基と結合してもよい。最後に、PEG基は、例えばB1位のようなB鎖のN末端アミノ酸基と結合してよい。この場合、PEG基は、B1位における天然Phe残基の遊離アミノ基と結合するか、または前記天然Phe残基は別の天然アミノ酸で置換されるか、もしくは欠失してよい。
【0015】
単鎖インスリンが1以上のPEG基を含んでなる場合、前記PEG基は、親インスリン分子における選択されたアミノ酸の任意の組み合わせに結合してよい。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、前記単鎖インスリンは、親単鎖インスリン分子における1以上の位置B1; B2; B3; B4; B10; B20; B21; B22; B27; B28; B29; B30; A8; A9; A10; A14; A15; A18; A21; A22; A23および/または連結ペプチドのリジン残基と結合する、少なくとも1のPEG基を含んでなる。本発明によるPEG化単鎖インスリンは、同じまたは異なってよい4以下のPEG基を含んでよい。それ故、前記単鎖は、分子に結合する1、2、3、または4のPEG基を有してよい。
【0017】
1つの実施形態において、前記単鎖インスリンは、インスリン分子に結合する唯一のPEG基を有する。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB1位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB2位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB3位におけるリジン残基と結合する。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB4位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB10位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB20位におけるリジン残基と結合する。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB21位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB22位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB27位におけるリジン残基と結合する。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB28位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB29位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のB30位におけるリジン残基と結合する。
【0022】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA8位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA9位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA10位におけるリジン残基と結合する。
【0023】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA14位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA15位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA18位におけるリジン残基と結合する。
【0024】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA21位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA22位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、親単鎖インスリン分子のA23位におけるリジン残基と結合する。
【0025】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、B20、B21、またはB22位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、B27、B28、B29、またはB30位におけるリジン残基と結合する。
【0026】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、B1、B2、B3、またはB4位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、B10位におけるリジン残基と結合する。
【0027】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、A8、A9、またはA10位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、A14、A15、またはA18位におけるリジン残基と結合する。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、A21、A22、またはA23位におけるリジン残基と結合する。
本発明の1つの実施形態において、前記PEG基は、A22またはA23位におけるリジン残基と結合する。
【0029】
本発明のもう1つの実施形態において、前記PEG基は、連結ペプチドにおけるリジン残基と結合する。
【0030】
インスリンB鎖のB29位における天然リジン基のPEG化が望ましくない場合、このアミノ酸残基は、他のアミノ酸残基により置換されてよい。適切な置換アミノ酸残基は、Ala、Arg、Gln、およびHisである。あるいは、B29位におけるリジンアミノ酸残基は、インスリン分子の望ましい位置におけるリジン残基のPEG化の前に周知の技術によりブロッキングされ、PEG化の後でデブロッキングされてよい。
【0031】
1つの実施形態において、PEG化単鎖インスリンは、B鎖のB29位における天然Lys残基に対して置換されたAla、Arg、Gln、またはHisアミノ酸残基を有する。
【0032】
もう1つの実施形態において、PEG化単鎖インスリンは、B鎖のB29位における天然Lys残基に対して置換されたAlaアミノ酸残基を有する。
もう1つの実施形態において、PEG化単鎖インスリンは、B鎖のB29位における天然Lys残基に対して置換されたArgアミノ酸残基を有する。
【0033】
もう1つの実施形態において、PEG化単鎖インスリンは、B鎖のB29位における天然Lys残基に対して置換されたGlnアミノ酸残基を有する。
もう1つの実施形態において、PEG化単鎖インスリンは、B鎖のB29位における天然Lys残基に対して置換されたHisアミノ酸残基を有する。
【0034】
明細書の詳細な部分で説明するように、親単鎖インスリン分子は、他のアミノ酸残基で置換された限られた数の天然アミノ酸残基を有してよい。
【0035】
それ故、本発明の1つの実施形態において、単鎖インスリンは、A18位にGln残基で置換された天然アミノ酸残基を有する。
本発明のもう1つの実施形態において、単鎖インスリンは、A21位にGly残基で置換された天然アミノ酸残基を有する。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、単鎖インスリンは、B30位に他のアミノ酸残基で置換された天然アミノ酸残基を有するか、またはB30を欠失している。
【0037】
連結ペプチドの長さは、3アミノ酸残基からヒトインスリンにおける天然C-ペプチドの長さに対応する長さまで変化してよい。しかしながら、本発明によるPEG化単鎖インスリンにおける連結ペプチドは、通常、ヒトC-ペプチドよりも短く、典型的に、5〜20、5〜18、5〜16、5〜15、または5〜11のアミノ酸残基の長さを有する。
【0038】
あるいは、前記連結ペプチドは、3〜約35、3〜約30、4〜約35、4〜約30、5〜約35、5〜約30、6〜約35、もしくは6〜約30、3〜約25、3〜約20、4〜約25、4〜約20、5〜約25、5〜約20、6〜約25、もしくは6〜約20、3〜約15、3〜約10、4〜約15、4〜約10、5〜約10、6〜約15、もしくは6〜約10のアミノ酸残基を有する。
【0039】
本発明の1つの実施形態において、前記連結ペプチドは、ペプチド鎖中に6〜10、6〜9、6〜8、6〜7、7〜8、7〜9、または7〜10のアミノ酸残基を有する。
本発明のPEG化単鎖インスリンに適した連結ペプチドの例は、WO 2005/054291に開示されている。
【0040】
さらなる実施形態において、前記連結ペプチドは、TGLGSGQ (配列番号1); VGLSSGQ (配列番号2); VGLSSGK (配列番号3); TGLGSGR (配列番号4); TGLGKGQ (配列番号5); KGLSSGQ (配列番号6); VKLSSGQ (配列番号7); VGLKSGQ (配列番号8); TGLGKGQ (配列番号9)、およびVGLSKGQ (配列番号10)からなる群より選択される。
【0041】
PEG基は、当該分野において周知のように、大きな範囲内でサイズが変化してよい。しかしながら、大きすぎるPEG基は、PEG化単鎖インスリン分子の生物活性を負の方向に妨げ得る。
【0042】
PEG基の非限定的な例は、800〜約1000;850〜約950;600〜約700;約400〜約500;約180〜約300;約100〜約150;約35〜約55;約42〜約62;または約12〜約25の多くのサブユニット(OCH2CH2)を含んでなるものである。
【0043】
1つの実施形態において、PEG基は式CH3O(CH2CH2O)nCH2CH2-O-であり、式中のnは2〜約600の整数である。
もう1つの実施形態において、nは、約400〜約500であってよい。
【0044】
本発明のインスリン分子は、次式で表されてよい:
B1-B2-B3-B4-His-Leu-Cys-Gly-Ser-B10-Leu-Val-Glu-Ala-Leu-Tyr-Leu-Val-Cys-B20-B21-B22-Gly-Phe-Phe-Tyr-B27-B28-B29-B30-Cx-Gly-Ile-Val-Glu-Gln-Cys-Cys-A8-A9-Ile-Cys-Ser-Leu-Tyr-A15-Leu-Glu-A18-Tyr-Cys-A21-A22-A23 (配列番号11);
ここで、式中のB1は、Phe、Lys、Asp、または欠失しており;B2はValまたはLysであり;B3はAsn、Ser、Thr、Lys、Gln、Glu、またはAspであり;B4はGlnまたはLysであり;B10はHis、Gln、またはLysであり;B20はGlyまたはLysであり;B21はGluまたはLysであり;B22はArgまたはLysであり;B27はThr、Arg、Glu、またはLysであり;B28はPro、Asp、Ile、またはLysであり;B29はLys、Arg、Ala、Asp、Phe、Tyr、His、Gln、またはProであり;B30はThr、Lys、またはペプチド結合であり;Cxは、3〜35のアミノ酸残基のペプチド鎖(連結ペプチド)であり;A8はThrまたはLysであり;A9はSerまたはLysであり;A15はGlnまたはLysであり;A18はAsn、Gln、またはLysであり;A21はAsn、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr、Lys、またはValであり;A22は、Lysを含むアミノ酸残基であるか、または欠失しており;A23はLysまたは欠失しており、ただし、親単鎖インスリンにおけるリジン残基の最大数は4である。
【0045】
1つの実施形態において、リジン残基の最大数は3である。
もう1つの実施形態において、リジン残基の最大数は2であり、さらなる実施形態において、親単鎖インスリンにおけるリジン残基は1つのみである。
【0046】
1つの実施形態において、Cxは、式Xa-Xb-Xc-Xd-Xe-Xf-Xg (配列番号12)を有するペプチド配列である:
ここで、式中のXaは、L、R、T、A、H、Q、G、S、およびVからなる群より選択され;
Xbは、W、G、S、A、H、R、およびTからなる群より選択され;
Xcは、L、Y、M、H、R、T、Q、K、V、S、A、G、およびPからなる群より選択され;
Xdは、R、A、Y、M、S、N、H、およびGからなる群より選択され;
Xeは、S、R、A、T、K P、N M、H、Q、V、およびGからなる群より選択され;
Xfは、GおよびAからなる群より選択され;
Xgは、K、R、P、H、F、T、I、Q、W、およびAからなる群より選択される。
【0047】
さらなる実施形態において、
Xaは、L、R、T、A、H、およびVからなる群より選択され;
Xbは、W、G、S、A、H、R、およびTからなる群より選択され;
Xcは、L、Y、M、H、R、T、Q、K、V、S、A、G、およびPからなる群より選択され;
Xdは、R、A、Y、M、S、N、H、およびGからなる群より選択され;
Xeは、S、R、A、T、K P、およびNからなる群より選択され;
XfはGであり;
Xgは、K、R、Q、およびPからなる群より選択される。
【0048】
さらなる実施形態において、
Xaは、T、A V、Kからなる群より選択され;
XbはGであり;
Xcは、L、Y、M、H、R K、Wからなる群より選択され;
XdはGであり;
Xeは、S、Kからなる群より選択され;
XfはGであり;
X gは、K、R、Qからなる群より選択される。
【0049】
さらなる実施形態において、Cxは、配列X9-G-X10-G-X11-G-X12(配列番号13)である:
ここで、式中のX9は、Val、Leu、Arg、Thr、Ala、His、Gln、Gly、またはSerからなる群より選択され、
X10は、Leu、Tyr、Met、His、Arg、Thr、Gln、Lys、Val、Ser、Ala、Gly、Proからなる群より選択され、
X11は、Ser、Arg、Ala、Thr、Lys、Pro、Asn、Met、His、Gln、Val、Glyからなる群より選択され、
X12は、LysまたはArgである。
【0050】
さらなる実施形態において、
X9は、Val、Leu、Arg、Thr、Ala、およびHisからなる群より選択され、
X10は、Leu、Tyr、Met、およびHisからなる群より選択され、
X11は、Ser、Arg、Ala、Thr、Lys、Pro、およびAsnからなる群より選択され、
X12は、LysまたはArgである。
【0051】
もう1つの実施形態において、前記単鎖インスリンは、desB1、desB25、desB27、desB28、またはdesB29インスリンアナログである。
もう1つの実施形態において、前記連結ペプチドは、A1アミノ酸残基に結合したGRまたはGQジペプチド配列を有する。
【0052】
さらなる側面において、本発明は、本発明のPEG化単鎖インスリン、および適切なアジュバント、および例えば、亜鉛イオン、フェノール、クレゾール、パラベン、塩化ナトリウム、グリセロール、もしくはマンニトール等の安定化、保存、または等張化に適した1以上の薬剤のような添加剤を含んでなる医薬製剤に関する。本発明の製剤の亜鉛含量は、インスリン6量体当り0〜約6の亜鉛原子であってよい。前記医薬製剤のpHは、約4〜約8.5、約4〜約5、または約6.5〜約7.5であってよい。
【0053】
さらなる実施形態において、本発明は、哺乳動物において血中グルコースレベルを低下させるため、特に、糖尿病の治療のための医薬としての、PEG化単鎖インスリンの使用に関する。
【0054】
さらなる側面において、本発明は、哺乳動物において血中グルコースレベルを低下させるため、特に、糖尿病を治療するための医薬製剤の調製のための、PEG化単鎖インスリンの使用に関する。
【0055】
さらなる実施形態において、本発明は、本発明によるPEG化単鎖インスリンの治療的な活性量を、治療を必要とする患者に投与することにより、哺乳動物において血中グルコースレベルを低下させる方法に関する。
【0056】
本発明のさらなる側面において、前記PEG化単鎖インスリンは、1以上のさらなる活性薬剤を適切な割合で組み合わせて投与される。前記さらなる活性薬剤は、ヒトインスリン、即効型インスリンアナログ、抗糖尿病薬、抗高脂血症薬、抗肥満薬、降圧剤、および糖尿病の結果としてまたは糖尿病に付随して生じる合併症の治療のための薬剤から選択されてよい。
【0057】
1つの実施形態において、2つの活性成分は、混合医薬製剤として投与される。もう1つの実施形態において、2つの成分は、同時または逐次的に、別々に投与される。
【0058】
1つの実施形態において、本発明のPEG化単鎖インスリンは、即効型ヒトインスリンまたはヒトインスリンアナログと一緒に投与されてよい。前記即効型インスリンアナログは、B28位におけるアミノ酸残基がAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaであり、B29位におけるアミノ酸残基がLysまたはProであるもの、des(B28-B30)、des(B27)、またはdes(B30)ヒトインスリン、およびB3位におけるアミノ酸残基がLysでありB29位におけるアミノ酸残基がGluまたはAspであるアナログであってよい。本発明によるPEG化単鎖インスリンおよび速効型ヒトインスリンまたはヒトインスリンアナログは、約90 /10%、約70/30%、または約50/50%の割合で混合することができる。
【0059】
抗糖尿病薬には、インスリン、WO 98/08871、WO 99/43706、米国特許第5424286号、およびWO 00/09666に記載されているGLP-1(1-37) (グルカゴン様ペプチド-1)、GLP-2、エキセンディン-4(1-39)、それらのインスリン分泌性の断片、それらのインスリン分泌性のアナログ、およびそれらのインスリン分泌性の誘導体が含まれる。GLP-1(1-37)のインスリン分泌性の断片は、全配列がGLP-1(1-37)の配列中に見られるインスリン分泌性のペプチドであり、少なくとも1の末端アミノ酸が欠失している。
【0060】
本発明によるPEG化単鎖インスリンは、チアゾリジンジオン、メトホルミン、および他の経口的な治療のための2型糖尿病医薬製剤のような経口的な抗糖尿病薬と一緒に、併用療法において使用されてもよい。
【0061】
さらに、本発明によるPEG化単鎖インスリンは、1以上の抗肥満薬または食欲調節薬と組み合わせて投与されてよい。
【0062】
1つの実施形態において、本発明は、本発明のPEG化単鎖インスリン、および適切なアジュバント、および例えば、亜鉛イオン、フェノール、クレゾール、パラベン、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、またはマンニトール等の安定化、保存、または等張化のために適した1以上の薬剤のような添加剤を含んでなる、肺性の医薬製剤に関する。
【0063】
PEG化単鎖インスリンとダイエットおよび/または運動、1以上の上述した化合物、および任意に、1以上の他の活性物質との適切な組み合わせは、本発明の範囲内であると解されるべきである。
【発明の詳細な説明】
【0064】
インスリンの安定性および溶解性の性質は、現在のインスリン治療に対する重要な根本的な側面である。本発明は、安定なPEG化単鎖インスリンアナログを提供することによりこれらの問題に取り組み、B鎖とA鎖との間に連結ペプチドを導入することにより、分子の自由度を減少させ、同時にフィブリル化の傾向を低下させ、pH沈殿域を限定または修飾する。
【0065】
本発明によるPEG化単鎖インスリンは、特に、例えばヒトインスリンと比較して相対的に高いバイオアベイラビリティーにより、肺投与が意図される。さらに前記PEG化単鎖インスリンは、遅延性のインスリン活性を有する。
【0066】
肺への投与のための本発明によるPEG化単鎖インスリンは、広い範囲で変化する分子量のPEG基を有してよい。前記分子量の範囲は、典型的に、約4500〜約5500ダルトン、約3500〜約4500ダルトン、約2500〜約3500ダルトン、約1500〜約2500ダルトン、約750〜約1500ダルトン、および約500〜約1000ダルトンであってよい。
【0067】
PEG部分の平均分子量の非限定的な例は、500、600、700、750、800、900、1000、1500、2000、2300、2500、3000、4000、および5000ダルトンである。
【0068】
実質的に、全てのPEGポリマーは多くの大きな分子の混合であるため、分子量について述べるために平均値に頼らざるを得ない。平均値を報告する多くの可能な方法の中で、以下の3つが一般的に使用される:数平均、重量平均、およびz-平均分子量。異なるサイズの鎖のポリマー全体の挙動に対する寄与をある程度説明でき、関心のある物理的性質のほとんどと最もよく相関するため、前記重量平均は、おそらく3つの中で最も有用である。
【数1】

【数2】

【数3】

【0069】
ここで、式中のNiは、ポリマー混合物中における分子量Miの分子のモル分率(または数量分率)である。MwとMnとの比は、多分散指数(PDI)として既知であり、分散の幅の粗い指標を提供する。PDIは、非常に狭いMW分散である特別なポリマーに対して1.0(下限)に近づく。
【0070】
より低い分子量のPEG基は、バイオアベイラビリティーを増大させるために好ましい一方で、例えば4000〜6000ダルトン以上の平均分子量を有するような高い分子量のPEG鎖は、インスリン分子の生物活性を減少させることが一般的に見出されているが、特に注射製剤の場合、半減期を増大させるために好ましい。
【0071】
本発明のPEG基は、典型的に、多くの(OCH2CH2)サブユニットを含んでなり、例えば、2〜約600サブユニット、約4〜約200サブユニット、約4〜約170サブユニット、約4〜約140サブユニット、約4〜約100サブユニット、約10〜約100サブユニット、約4〜約70サブユニット、約4〜約45サブユニット、および約4〜約25サブユニットである。
【0072】
よく適合するPEG基は、サブユニットの数が、約800〜約1000;約850〜約950;約600〜約700;約400〜約500;約180〜約300;約100〜約150;約35〜約55;約42〜約62;または約12〜約25サブユニットからなる群より選択されるものである。
【0073】
与えられた分子量の本発明のPEG基は、典型的に、ある一定範囲のエチレングリコール(またはエチレンオキシド)モノマーからなる。例えば、分子量が2000ダルトンのPEG基は、典型的に、43±10のモノマーからなり、平均は、約43〜44のモノマーである。
【0074】
PEG部分(mPEG-を含む)は、適切なリンカーを介して親単鎖インスリン分子に結合する。このリンカーは、典型的に、カルボン酸の誘導体であり、カルボン酸の官能基は、アミド結合を介してインスリンと結合するために使用される。例えば、前記リンカーは、酢酸(結合モチーフ:-CH2CO-)、プロピオン酸(結合モチーフ:-CH2CH2CO-または-CHCH3CO-)、酪酸(結合モチーフ:-CH2CH2CH2CO-または-CH2CHCH3CO-)である。前記リンカーは、-CO-であってもよい。
【0075】
本発明によるPRG化インスリン分子は、インスリンのA鎖とB鎖が35アミノ酸残基長以下の連結ペプチドにより連結された単鎖インスリン分子である。しかしながら、前記連結ペプチドは、典型的に、天然の連結ペプチドよりも短く、3アミノ酸残基長の短さであってよい。
【0076】
本発明によるPEG化単鎖インスリンは、本発明のインスリン分子におけるリジンアミノ酸残基に結合したPEG基を1つだけ有する、モノ置換体であってよい。あるいは、本発明によるPEG化単鎖インスリンは、2、3、または4のPEG基を含んでよい。単鎖インスリンが1より多いPEG基を含んでなる場合、典型的に、各リジン残基に結合する同じPEG部分を有する。しかしながら、個々のPEG基は、サイズおよび長さにおいて相互に異なってよい。
【0077】
ヒトインスリンのA鎖およびB鎖における唯一の天然リジン残基は、B29位におけるリジン残基である。PEG基が親単鎖インスリン分子の他の位置に結合すべき場合、問題とする位置において天然の残基をリジン残基で置換する必要がある。これは、以下に示すように、周知の技術により行われる。適切なアミノ酸残基は、Ale、Arg、Gln、およびHisである。
【0078】
親単鎖インスリンは、以下の規則に従って命名される:配列はB鎖で始まり、連結ペプチドが続き、A鎖で終わる。ヒトインスリン中の各対応物ならびに変異およびPEG化について明確に述べられた後、アミノ酸残基が示される一方で、A鎖およびB鎖における不変のアミノ酸残基について言及されない。例えば、ヒトインスリンと比較して以下の変異を有する単鎖インスリンであって:A21G、A18Q、B3Q、B29R、desB30、且つ連結ペプチドTGLGKGQ (配列番号5)がB鎖のC末端およびA鎖のN末端に結合し、連結ペプチド中のリジン残基が、例えばmPEG-SPAを用いてmPEG-プロピオン酸, 2 kDaで置換されているインスリンは、B(1-29)-B3Q-B29R-TGLGK(Nε-(3-(mPEG2000-イル)-プロピオニル)GQ-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリンと示される。
【0079】
親単鎖インスリン分子の非限定的な例は、
B27位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B29位のアミノ酸残基がKであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B18位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B28位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B3位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B10位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B22位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
A8位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
A9位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
A22位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
A23位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
A15位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がQであるか;
B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がKであるか;
B27位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
B29位のアミノ酸残基がKであるか;
B18位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
B28位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
B3位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
B10位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
B22位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
A8位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
A9位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
A22位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
A23位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;
A15位のアミノ酸残基がKであり、B29位のアミノ酸残基がAであるか;または
B29位のアミノ酸残基がAであり、A18位のアミノ酸残基がKである。
【0080】
本発明の親単鎖インスリンの例には以下が含まれる:
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B27K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B28K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-KGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VKLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLKSGQ-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGKGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSKGQ-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGK-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A8K-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A15K-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B20K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B21K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29S-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29S-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18K-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18K-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18K-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A21G-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A22G-A23K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B27K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B28K-B29A-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-KGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VKLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLKSGQ-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGKGQ-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSKGQ-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGK-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A8K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A15K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B3K-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B20K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B21K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29H-TGLGSGR-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29Q-TGLGSGR-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29A-TGLGSGR-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29S-TGLGSGR-A(1-21)-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B22K-B29S-TGLGSGR-A(1-21) ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A8K-A18Q-A21G ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29A-TGLGSGR-A(1-21)-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29H-TGLGSGR-A(1-21)-A22K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21K ヒトインスリン;
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A21G-A22K ヒトインスリン;および
B(1-29)-B29Q-TGLGSGR-A(1-21)-A18Q-A22G-A23K ヒトインスリン。
【0081】
親単鎖インスリンは、例えば米国特許第6500645号に開示されているように、周知の技術により、適切な宿主細胞中で問題とする単鎖インスリンをコードするDNA配列を発現することにより産生される。前記親単鎖インスリンは、直接的に、またはB鎖におけるN末端伸長を有する前駆体分子として発現される。このN末端伸長は、直接的に発現される生成物の収量を増大させる機能を有し、15アミノ酸残基長以下であってよい。前記N末端伸長は、培養ブロスから単離した後、インビトロで切断されるため、B1の隣に切断部位を有する。本発明において適した型のN末端伸長は、米国特許第5,395,922号および欧州特許第765,395A号に開示されている。
【0082】
親単鎖インスリンをコードするポリヌクレオチド配列は、例えば、Beaucage et al. (1981) Tetrahedron Letters 22:1859-1869に記載されているホスホアミド法またはMatthes et al. (1984) EMBO Journal 3:801-805に記載されている方法のように、確立された標準方法により合成的に調製されてよい。ホスホアミド法によると、オリゴヌクレオチドは、例えば自動DNA合成機で合成され、精製され、二重鎖にされ、ライゲートされ、合成DNA構築物が形成される。現在、DNA構築物を調製する好ましい方法は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)である。
【0083】
ポリヌクレオチド配列は、混合されたゲノム、cDNA、および合成的な起源であってよい。例えば、リーダーペプチドをコードするゲノムまたはcDNAの配列は、A鎖およびB鎖をコードするゲノムまたはcDNA配列と連結されてよく、その後、DNA配列は、周知の方法または好ましくは適切なオリゴヌクレオチドを用いたPCRによる望ましい配列の産生に従って、相同的組換えに対して望ましいアミノ酸配列をコードする合成的オリゴヌクレオチドを挿入することにより、ある部位において修飾されてよい。
【0084】
組換え方法は、典型的に、選択された微生物または宿主細胞中で複製することができ、本発明の親単鎖インスリンをコードするポリヌクレオチド配列を有するベクターを使用する。組換えベクターは、自己複製ベクター、すなわち染色体外の実体として存在するベクターであってよく、その複製は染色体複製から独立しており、例えば、プラスミド、染色体外の要素、ミニ染色体、または人工染色体である。ベクターは、自己複製を保証するための方法を含んでよい。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入される場合、ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体と一緒に複製されるものであってよい。さらに、宿主細胞のゲノムに導入されるべき全DNAを共同で含む単一のベクターもしくはプラスミド、または2以上のベクターもしくはプラスミド、あるいはトランスポゾンが使用されてよい。ベクターは、直線または閉じた環状のプラスミドであってよく、好ましくは、宿主細胞のゲノムへのベクターの安定な導入またはゲノムから独立した細胞中でのベクターの自己複製を可能にする要素が含まれる。
【0085】
組換え発現ベクターは、酵母中で複製することができる。ベクターが酵母中で複製することを可能にする配列の例は、酵母プラスミド2μm複製遺伝子REP 1-3および複製開始点である。
【0086】
ベクターは、形質転換細胞の容易な選択を可能にする1以上の選択可能なマーカーを含んでよい。選択可能なマーカーは遺伝子であり、その産物は、殺虫性またはウイルス耐性、重金属に対する耐性、栄養素要求株に対する原栄養性等を提供する。細菌性の選択可能なマーカーの例は、枯草菌(Bacillus subtilis)もしくはバチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)に由来するdal遺伝子、またはアンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、もしくはテトラサイクリン耐性のような抗生物質耐性を与えるマーカーである。糸状菌宿主細胞において使用される選択可能なマーカーには、amdS (アセトアミダーゼ)、argB (オルニチンカルバモイルトランスフェラーゼ)、pyrG (オロチジン-5’-リン酸 デカルボキシラーゼ)、およびtrpC (アントラニル酸シンターゼ)が含まれる。酵母宿主細胞に対して適切なマーカーは、ADE2、HIS3、LEU2、LYS2、MET3、TRP1、およびURA3である。酵母に対してよく適する選択可能なマーカーは、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pompe) TPI 遺伝子(Russell (1985) Gene 40:125-130)である。
【0087】
ベクターにおいて、ポリヌクレオチド配列は、適切なプロモーター配列に動作可能に結合する。プロモーターは、突然変異株、切断型、およびハイブリッドプロモーターを含む選択された宿主細胞中で転写活性を示すいずれの核酸配列であってよく、宿主細胞に対して相同性または異種性の細胞外もしくは細胞内ポリペプチドをコードする遺伝子から得られてよい。
【0088】
細菌性の宿主細胞中で転写を指示するための適切なプロモーターの例は、大腸菌ラックオペロン、ストレプトマイセス・コエリカラー(Streptomyces coelicolor)アガラーゼ遺伝子 (dagA)、枯草菌レバンスクラーゼ遺伝子(sacB)、バチルス・リケニホルミスα-アミラーゼ遺伝子(amyL)、バチルス・ステロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)マルトゲニックアミラーゼ遺伝子(amyM)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens) α-アミラーゼ遺伝子(amyQ)、およびバチルス・リケニホルミスペニシリナーゼ遺伝子(penP)から得られるプロモーターである。糸状菌宿主細胞中で転写を指示するための適切なプロモーターの例は、アスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)TAKAアミラーゼ、リゾムコール・ミーハエ(Rhizomucor miehei)アスパラギン酸プロテイナーゼ、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)中性α-アミラーゼ、およびアスペルギルス・ニガー酸安定α-アミラーゼである。酵母宿主において、有用なプロモーターは、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae) Ma1、TPI、ADH、またはPGKプロモーターである。
【0089】
本発明の親単鎖インスリンをコードするポリヌクレオチド配列は、典型的に、適切なターミネーターと動作可能に結合してもよい。酵母において、適切なターミネーターは、TPIターミネーターである(Alber et al. (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1:419-434)。
【0090】
本発明の親単鎖インスリン、プロモーター、およびターミネーターをそれぞれコードするポリヌクレオチドをライゲートするため、ならびに選択された宿主における複製のために必要な情報を含む適切なベクターへそれらを導入するために使用される方法は、当業者に周知である。ベクターは、最初に本発明の単鎖インスリンをコードする全DNA配列を含むDNA構築物を調製し、続いてこの断片を適切な発現ベクターに導入するか、または経時的に個々の要素(例えば、シグナル、プロペプチド、連結ペプチド、A鎖、およびB鎖)に対する遺伝情報を含むDNA断片を導入し、その後ライゲーションすることにより構築されてよいと解される。
【0091】
本発明の親単鎖インスリンをコードするポリヌクレオチド配列を含んでなるベクターが宿主細胞に導入されることにより、前記ベクターは、染色体統合(integrant)または自己複製染色体外ベクターとして維持される。「宿主細胞」という用語は、複製の間に生じる変異が原因で親細胞と同一でない親細胞の子孫を包含する。宿主細胞は、例えば原核生物のような単細胞微生物、または例えば真核生物のような非単細胞微生物であってよい。有用な単細胞細胞は、限定するものではないが、バチルス細胞、ストレプトマイセス細胞等のグラム陽性菌、または大腸菌、シュードモナス属等のグラム陰性菌のような細菌性細胞である。真核細胞は、哺乳類、昆虫、植物、または真菌の細胞であってよい。1つの実施形態において、前記宿主細胞は酵母細胞である。酵母菌は、培養において大量の本発明の単鎖インスリンを産生するいずれの適切な酵母菌であってよい。適切な酵母菌の例は、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、サッカロマイセス・ウバルム(Sacchoromyces uvarum)、クルイベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、ピチア・パストリス(Pichia pastoris)、ピチア・メタノリカ(Pichia methanolica)、ピチア・クルイベリ(Pichia kluyveri)、ヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)、カンジダ属、カンジダ・ユティリス(Candida utilis)、カンジダ・カカオイ(Candida cacaoi)、ジオトリカム属、およびジオトリカム・ファーメンタンス(Geotrichum fermentans)から選択される菌株である。
【0092】
酵母細胞の形質転換は、例えば、プロトプラスト形成により影響を受け、続いてそれ自体既知の方法で形質転換されてよい。細胞を培養するために使用される培地は、酵母菌の培養に適したいずれの通常の培地であってよい。分泌された単鎖インスリンは、正確に加工された形態で、培地中に有意な割合で存在すると思われるが、遠心分離、ろ過、イオン交換マトリックスもしくは逆相吸収マトリックスによるインスリン前駆体の捕捉により酵母菌を培地から分離し、硫酸アンモニウムのような塩により、上清もしくはろ液のタンパク質成分を沈殿させ、続いて、例えばイオン交換クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー等の種々のクロマトグラフィー手法により精製することを含んでなる通常の方法により培地から回収されてよい。
【医薬組成物】
【0093】
本発明のPEG化単鎖インスリンは、皮下、経口、または肺に投与されてよい。
【0094】
皮下投与に対して、本発明のPEG化単鎖インスリンは、既知のインスリン製剤に類似して構築される。さらに、皮下投与に対して、本発明のPEG化インスリンは、既知のインスリンの投与と同様に投与され、一般的に、医師はこの方法に精通している。
【0095】
本発明のPEG化単鎖インスリンは、循環しているインスリンのレベルを増大させるためおよび/または循環しているグルコースのレベルを低下させるために有効な量の吸入により投与されてよい。そのような投与は、糖尿病または高血糖のような障害の治療に効果的であり得る。インスリンの効果的な用量に到達させるために、約0.5 μg/kg〜約50 μg/kgより多い吸入量の本発明のPEG化単鎖インスリンを投与する必要がある。治療的に有効な量は、見識のある医師により決定され、インスリンレベル、血中グルコースレベル、患者の身体的な状態、患者の肺の状態等の因子を考慮に入れる。
【0096】
本発明によると、本発明のPEG化単鎖インスリンは、その遅い吸収を達成するために、吸入により送達されてよい。異なる吸入装置は、典型的に、同じ粒子サイズおよび同じ肺沈着のレベルで比較した場合、同じ薬物動態を与える。
【0097】
本発明によると、本発明のPEG化単鎖インスリンは、吸入による治療薬の投与についての分野で既知の種々の吸入装置のいずれにより送達されてよい。これらの装置には、計量(metered dose)吸入器、ネブライザー、乾燥粉末発生装置、スプレー等が含まれる。好ましくは、このPEG化単鎖インスリンは、乾燥粉末吸入器または噴霧器により送達される。本発明のPEG化単鎖インスリンを投与するための吸入装置のいくつかの望ましい特徴がある。例えば、吸入装置による送達は、好都合に、信頼でき、再現性があり、正確である。吸入装置は、例えば約10μmより小さい、例えば約1〜5μmの良い呼吸適正の小さな粒子またはエアロゾルを送達すべきである。本発明の粒子に適した商業的に入手可能な吸入装置のいくつかの特別な例は、ターボへラー(Turbohaler:商標)(アストラ)、ロタヘラー(Rotahaler:登録商標)(グラクソ)、ディスカス(Diskus:登録商標)(グラクソ)、スピロス(Spiros:商標)吸入器(Dura)、インへールセラピューティクス(Inhale Therapeutics)により販売されている装置, AERx (商標)(Aradigm)、ウルトラベント(Ultravent:登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)、アコーン(Acorn)II(登録商標)ネブライザー(マークエストメディカルプロダクツ)、ベントリン(Ventolin:登録商標)計量吸入器(グラクソ)、スピンへラー(Spinhaler:登録商標)粉末吸入器(Fisons)等である。
【0098】
当業者が本発明のPEG化単鎖インスリンの製剤を認識する場合、送達される製剤の量および単一用量の投与の持続時間は、使用される吸入装置の型に依存する。ネブライザーのような、いくつかのエアロゾル送達システムについて、投与の頻度およびシステムが活性化されるための時間の長さは、主に、エアロゾル中のPEG化単鎖インスリンの濃度に依存するであろう。例えば、投与間隔が短いほど、より高い濃度のネブライザー中のPEG化単鎖インスリンが使用される。計量吸入器のような装置は、より高い濃度のエアロゾルを産生することができ、望ましい量のPEG化単鎖インスリンを送達するために、より短い間隔で操作され得る。粉末吸入器のような装置は、与えられた薬剤の負荷が装置から排出されるまで活性薬剤を送達する。このタイプの吸入器において、与えられた粉末の量における本発明のインスリンPEG化単鎖インスリンの量は、単回投与で送達される量を決定する。
【0099】
吸入装置により送達される製剤中の本発明のPEG化単鎖インスリンの粒子サイズは、インスリンを肺に、好ましくはより低い気道または肺胞に入れる能力に関して重大な意味を持つ。好ましくは、本発明のPEG化単鎖インスリンは、送達されるPEG化単鎖インスリンの少なくとも約10%、好ましくは約10〜約20%、またはそれ以上が肺に沈着するように構築される。口で呼吸するヒトに対する肺への沈着の最大の効率は、約2μm〜約3μmの粒子サイズで得られることが既知である。粒子サイズが約5μm以上である場合、肺への沈着は実質的に減少する。約1μm未満の粒子サイズは肺への沈着の減少を引き起こし、治療的に有効となる十分な量の粒子を送達することが困難になる。それ故、吸入により送達されるPEG化単鎖インスリンは、好ましくは約10μm未満、より好ましくは約1μm〜約5μmの範囲の粒子サイズである。PEG化単鎖インスリンの製剤は、選択した吸入装置において望ましい粒子サイズを産生するように選択される。
【0100】
好都合に、乾燥粉末として投与するために、本発明のPEG化単鎖インスリンは、約10μm未満、好ましくは約1〜約5μmの粒子サイズを有する粒子形態に調製される。好ましい粒子サイズは、患者の肺の肺胞に送達するのに効果的である。好ましくは、乾燥粉末は、粒子の大半が望ましい範囲のサイズを有するように産生された粒子で大部分が構成される。好都合に、少なくとも約50%の乾燥粉末は、約10μm未満の直径を有する粒子で作られる。そのような製剤は、本発明のPEG化単鎖インスリンおよび他の望ましい成分を含有する溶液の噴霧乾燥、粉砕、または臨界点凝結により達成することができる。本発明において有用な粒子を産生するのに適した他の方法も、当該分野において既知である。
【0101】
粒子は、通常、容器中で乾燥粉末から分離され、その後キャリア気流を介して患者の肺へ運搬される。典型的に、現在の乾燥粉末吸入器において、固体を粉砕するための力はもっぱら患者の吸入により提供される。他の型の吸入器において、患者の吸入により生じる気流は、粒子を解凝集するインペラーモーターを活性化する。
【0102】
乾燥粉末吸入器から投与するための本発明のPEG化単鎖インスリンの製剤には、典型的に、誘導体を含有する細かく割られた乾燥粉末が含まれるが、前記粉末には、充填剤、キャリア、賦形剤、他の添加剤等も含まれてよい。例えば、特定の粉末吸入器から送達するために要求される粉末に希釈するため、製剤の加工を促進するため、都合のよい粉末の性質を製剤に与えるため、吸入装置からの粉末の撒布を促進するため、製剤を安定化するため(例えば、酸化防止剤または緩衝剤)、製剤に味を提供するために、添加剤は、PEG化単鎖インスリンの乾燥粉末製剤中に含まれてよい。好都合に、前記添加剤は、患者の気道に悪影響を及ぼさない。PEG化単鎖インスリンは、分子レベルで添加剤と混合されるか、または固体の製剤には、添加剤の粒子と混合されるかもしくは添加剤の粒子でコーティングされたPEG化単鎖インスリンの粒子が含まれてよい。典型的な添加剤には、例えば、ラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース(melezitose)、ラクチトール、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール、デンプン、もしくはそれらの混合物のような単糖類、二糖類、および多糖類、ならびに糖アルコールおよび他のポリオール;ソルビトール、ジホスファチジルコリン、またはレシチンのような界面活性剤等が含まれる。典型的に、充填剤のような添加剤は、上述した目的に対して効果的な量で存在し、多くの場合、製剤の約50重量%〜約90重量%である。インスリンアナログタンパク質のようなタンパク質製剤に対する分野において既知の添加剤が製剤中に含まれてもよい。
【0103】
本発明のPEG化単鎖インスリンが含まれるスプレーは、加圧下でノズルを介してPEG化単鎖インスリンの懸濁液または溶液を押し出すことにより産生され得る。ノズルのサイズおよび配置、適用される圧力、および液体を与える速度は、望ましい出力および粒子サイズを達成するために選択されてよい。エレクトロスプレーは、例えば、与えられるキャピラリーまたはノズルに関連して電場により産生されてよい。好都合に、噴霧器により送達されるインスリン接合体の粒子は、約10μm未満、好ましくは約1μm〜約5μmの範囲の粒子サイズを有する。
【0104】
噴霧器を用いて使用するのに適した本発明のPEG化単鎖インスリンの製剤は、典型的に、溶液1ml当り約1mg〜約20mgのPEG化単鎖インスリンの濃度で、PEG化単鎖インスリンの水溶液を含む。前記製剤には、賦形剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、界面活性剤、および好ましくは亜鉛のような薬剤が含まれてよい。前記製剤には、賦形剤、または緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質(bulk protein)、または炭水化物のようなPEG化単鎖インスリンの安定化のための薬剤が含まれてもよい。インスリン接合体の構築において有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等が含まれる。PEG化単鎖インスリンの製剤において有用な典型的な炭水化物には、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース等が含まれる。PEG化単鎖インスリン製剤には界面活性剤が含まれてもよく、エアロゾルの形成において溶液の微粒化により引き起こされるインスリン接合体の表面誘発性の凝集を減少または阻害する。種々の通常の界面活性剤が使用されてよく、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびアルコール、ならびにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルである。量は、一般的に、製剤の約0.001〜約4%の範囲である。
【0105】
本発明によるPEG化単鎖インスリンを含有する医薬組成物は、治療を必要とする患者に対して非経口的に投与されてもよい。非経口的な投与は、シリンジ、任意にペン様シリンジを用いて、皮下、筋肉内、または静脈内注射により行われてよい。あるいは、非経口的な投与は、注入ポンプを用いて行われてよい。
【0106】
本発明のPEG化単鎖インスリンの注射可能な組成物は、医薬産業の通常の技術を用いて調製されてよく、適切な成分を溶解および混合することにより望ましい最終生成物を与えることが含まれる。それ故、1つの方法によると、PEG化単鎖インスリンは、調製されるべき組成物の最終用量未満の量の水に溶解される。等張化剤、保存剤、および緩衝剤は必要な場合に加えられ、溶液のpH値は、必要な場合に、例えば塩酸のような酸または例えば水酸化ナトリウム水溶液のような塩基を用いて調節される。最終的に、溶液の容積は、成分の望ましい濃度を与えるために水で調節される。
【0107】
本発明のさらなる実施形態において、前記緩衝剤は、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸塩、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン、トリシン、リンゴ酸、スクシネート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、またはそれらの混合物からなる群より選択される。これらの特異的な緩衝剤のそれぞれは、本発明の代替の実施形態を構成する。
【0108】
本発明のさらなる実施形態において、前記製剤は、さらに、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、メチルp-ヒドロキシベンゾエート、プロピルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェノキシエタノール、ブチルp-ヒドロキシベンゾエート、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、およびチオメロサール、ブロノポール、安息香酸、イミドウレア、クロルヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、エチルp-ヒドロキシベンゾエート、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン (3p-クロロフェノキシプロパン-1,2-ジオール)、またはそれらの混合物からなる群より選択されてよい薬学的に許容可能な保存剤を含んでなる。本発明のさらなる実施形態において、前記保存剤は0.1 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、前記保存剤は0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、前記保存剤は5 mg/ml〜10 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、前記保存剤は10 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。これらの特異的な保存剤のそれぞれが、本発明の代替の実施形態を構成する。医薬組成物中における保存剤の使用は当業者に周知である。参考文献は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995である。
【0109】
本発明のさらなる実施形態において、前記製剤は等張化剤をさらに含んでなり、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖もしくは糖アルコール、アミノ酸(例えば、L-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、またはそれらの混合物からなる群より選択されてよい。例えば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、およびカルボキシメチルセルロース-Na等が含まれる単糖類、二糖類、もしくは多糖類、または水溶性グルカンのような糖が使用されてよい。1つの実施形態において、糖添加物はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも1の-OH基を有するC4〜C8炭化水素として定義され、例えば、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクシトール、ダルシトール、キシリトール、およびアラビトールが含まれる。1つの実施形態において、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖または糖アルコールは、単独または組み合わせて使用されてよい。糖または糖アルコールが液体製剤中に溶解可能であり、本発明の方法を用いて達成される安定化効果に負の影響を及ぼさない限り、使用される量に対する制限はない。1つの実施形態において、糖または糖アルコールの濃度は約1 mg/ml〜約150 mg/mlである。本発明のさらなる実施形態において、等張化剤は、1 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張化剤は1 mg/ml〜7 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張化剤は8 mg/ml〜24 mg/mlの濃度で存在する。本発明のさらなる実施形態において、等張化剤は25 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。これら特異的な等張化剤のそれぞれが、本発明の代替の実施形態を構成する。医薬組成物中における等張化剤の使用は、当業者に周知である。参考文献は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995である。
【0110】
典型的な等張化剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ジメチルスルホン、およびグリセロールであり、典型的な保存剤は、フェノール、m-クレゾール、メチル p-ヒドロキシベンゾエート、およびベンジルアルコールである。
【0111】
適切な緩衝剤の例は、酢酸ナトリウム、グリシルグリシン、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、およびリン酸ナトリウムである。
【0112】
本発明によるPEG化単鎖インスリンの鼻腔への投与のための組成物は、例えば、欧州特許第272097号において開示されているように調製されてよい。
【0113】
本発明のPEG化単鎖インスリンを含有する組成物は、インスリンに対して感受性がある状態の治療において使用され得る。それ故、それらは、1型糖尿病、2型糖尿病、ならびに例えば重篤なけがをした人および主要な手術を経験した人においてしばしば見られる高血糖の治療において使用され得る。患者に対する至適な用量レベルは、使用される特定のインスリン誘導体の効力、患者の年齢、体重、身体活性、および食事、他の薬剤との可能な組み合わせ、ならびに治療されるべき状態の重症度が含まれる種々の因子に依存する。本発明のPEG化単鎖インスリンの一日量は、既知のインスリン組成物に対してと同様に当業者により個々の患者に対して決定されることが勧められる。
【定義】
【0114】
ここで用いられる場合、インスリンは、CysA7とCysB7の間およびCysA20とCysB19の間にジスルフィド架橋を有し、且つCysA6とCysA11の間に内部のジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリン、ならびにウシインスリンを意味する。
【0115】
ここで用いられる場合、インスリンアナログは、天然インスリン中の少なくとも1のアミノ酸残基を欠失および/または置換することにより、および/または少なくとも1のアミノ酸残基を付加することにより、天然インスリン、例えばヒトインスリンの構造に形式的に由来する分子構造を有するポリペプチドを意味する。付加および/または置換されたアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基または他の天然アミノ酸残基または純粋な合成アミノ酸残基であってよい。
【0116】
インスリンアナログの例は、B鎖の28位におけるProがAsp、Lys、またはIleに変異したものである。もう1つの実施形態において、B29位のLysはPro、Arg、またはAlaに変異する。さらに、B27 ThrはArgまたはGluに変異してよい。また、A21位のAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr、またはVal、特に、Gly、Ala、Ser、またはThr、および好ましくはGlyに変異してよい。さらに、B3位のAsnは、Thr、Gln、Glu、またはAspに変異してよく、A18位のAsnはGlnに変異してよい。インスリンアナログのさらなる例は、欠失アナログdesB1インスリンおよびdesB30インスリン;およびB鎖がN末端伸長を有するインスリンアナログである。さらに、A鎖は、それぞれA22およびA23と示される1または2のアミノ酸残基によりそのC末端において伸長されてよい。A22またはA23は、本発明によりPEG化されてよい。A23におけるアミノ酸残基がPEG化される場合、A22位におけるアミノ酸は、CysおよびLys以外のアミノ酸残基であってよい。
【0117】
単鎖インスリンは、一般構造B-C-Aのポリペプチド配列であり、ここでのBは、ヒトBインスリン鎖またはそのアナログもしくは誘導体であり、Aは、ヒトインスリンA鎖またはアナログもしくは誘導体であり、Cは、B鎖におけるC末端アミノ酸残基とA1とを連結する3〜35アミノ酸残基のペプチド鎖である。B鎖がdesB30鎖である場合、連結ペプチドはB29とA1を連結してよい。単鎖インスリンは、CysA7とCysB7の間、CysA20とCysB19の間、およびCysA6とCysA11の間の内部ジスルフィド架橋である、ヒトインスリンの場合の正しい位置のジスルフィド架橋(3つ)を含んでよい。
【0118】
ヒトインスリンB鎖およびA鎖のB鎖およびA鎖のアナログは、ヒトインスリン分子に対してA鎖および/またはB鎖アミノ酸の1以上の変異、置換、欠失、および/または付加を有するインスリンB鎖およびA鎖である。
【0119】
ペプチドを指してここで用いられる場合、アナログという用語は、ペプチドの1以上のアミノ酸残基が他のアミノ酸残基で置換され、および/またはペプチドから1以上のアミノ酸残基が欠失し、および/または1以上のアミノ酸がペプチドに付加した、修飾されたアミノ酸を意味する。そのようなアミノ酸残基の付加または欠失は、ペプチドのN末端および/またはペプチドのC末端において起こり得る。1つの実施形態において、アナログは、天然ペプチドと比較して5未満の修飾(置換、欠失、付加)を含んでなる。もう1つの実施形態において、アナログは、天然ペプチドと比較して4未満の修飾(置換、欠失、付加)を含んでなる。もう1つの実施形態において、アナログは、天然ペプチドと比較して3未満の修飾(置換、欠失、付加)を含んでなる。もう1つの実施形態において、アナログは、天然ペプチドと比較して2未満の修飾(置換、欠失、付加)を含んでなる。もう1つの実施形態において、アナログは、天然ペプチドと比較して唯一の修飾(置換、欠失、付加)を含んでなる。
【0120】
desB30またはB(1-29)は、B30アミノ酸残基を欠いている天然インスリンB鎖またはそのアナログを意味し、A(1-21)は、天然インスリンA鎖またはそのアナログもしくは誘導体を意味する。アミノ酸残基は、3文字アミノ酸コードまたは1文字アミノ酸コードで示される。
【0121】
B1、A1等は、インスリンのB鎖における1位(N末端から数えて)およびインスリンのA鎖における1位(N末端から数えて)をそれぞれ意味する。
【0122】
速効型インスリンは通常または定型的なヒトインスリンよりも作用の開始が早いインスリンを意味する。
長時間作用型インスリンは、通常または定型的なヒトインスリンよりも作用持続時間が長いインスリンを意味する。
【0123】
連結ペプチドは、B鎖のC末端アミノ酸残基とA鎖のN末端アミノ酸残基を連結するペプチド鎖を意味する。
【0124】
基礎インスリンという用語は、ここで用いられる場合、8時間より長い、好ましくは少なくとも9時間の時間-作用を有するインスリンペプチドを意味する。好ましくは、基礎インスリンは少なくとも10時間の時間-作用を有する。前記基礎インスリンは、それ故、9〜15時間の範囲の時間-作用を有する。
【0125】
親インスリンは、本発明によるアミノ酸残基組成物において、修飾を有する単鎖インスリンペプチド主鎖を意味する。
【0126】
「PEG」またはポリエチレングリコールは、ここで用いられる場合、任意の水溶性ポリ(アルキレンオキシド)を意味する。表現PEGは、構造-CH2CH2O(CH2CH2O)nCH2CH2O-を包含し、ここでのnは2〜約600の整数である。一般に使用されるPEGは、エンドキャップドPEGであり、PEGの一方の末端はアルコキシのような相対的に不活性な基でキャップされ、他方の末端は、さらに修飾されてよいヒドロキシル基である。よく使用されるキャッピング基はメトキシであり、対応するエンドキャップドPEGは、よくmPEGと表される。抽象的なPEGが、mPEGの代わりによく使用される。
【0127】
本発明の特異的なPEG形態は、分枝、直鎖、分岐PEG等であり、PEG基は、典型的に多分散であり、約1.05未満の低い多分散指数を有する。
【0128】
与えられた分子量に対する本発明のPEG部分は、典型的に、ある範囲のエチレングリコール(またはエチレンオキシド)モノマーからなる。例えば、分子量2000のPEG部分は、典型的に、43±10のモノマーからなり、平均は約43のモノマーである。
【0129】
インスリン活性を有するPEG化単鎖インスリンは、適切な投与、例えば静脈内または皮下投与の後に、ラット、ウサギ、またはブタモデルであってよい適切な動物モデルにおいて測定した場合、哺乳類において血中グルコースを下げる能力を有するPEG化単鎖インスリンを意味する。
【0130】
高い物理的安定性は、フィブリル化の傾向がヒトインスリンの50%未満であることを意味する。フィブリル化は、与えられた条件においてフィブリル形成が開始されるまでの遅れ時間により表されてよい。
【0131】
インスリン受容体およびIGF-1受容体親和性を有するポリペプチドは、適切な結合試験において、インスリン受容体およびヒトIGF-1受容体と相互作用することができるポリペプチドである。そのような受容体試験は、当該分野において周知であり、さらに実施例で述べられている。本発明のPEG化単鎖インスリンはIGF-1受容体と結合しないか、または前記受容体に対する親和性が低い。より正確には、本発明のPEG化単鎖インスリンは、ヒトインスリンと比較して実質的に同じかより低いIGF-1受容体に対する親和性を有する。
【0132】
治療および治療するという用語は、ここで用いられる場合、疾患、障害、または状態と闘うことを目的とした患者の管理および看護を意味する。前記用語には、疾患、障害、もしくは状態の進行を遅延させること、症状および合併症を軽減または除去すること、および/または疾患、障害、もしくは状態を除去することが含まれるものである。治療されるべき患者は、好ましくは哺乳類、特にヒトである。
【0133】
疾患の治療という用語は、ここで用いられる場合、発達した疾患、状態、または障害を有する患者の管理および看護を意味する。治療の目的は、疾患、状態、または障害と闘うことである。治療には、疾患、状態、もしくは障害を除去するため、ならびに疾患、状態、もしくは障害に付随する症状または合併症を軽減するために、活性化合物を投与することが含まれる。
【0134】
疾患の予防という用語は、ここで用いられる場合、疾患の臨床的な発症の前の、疾患の発症のリスクにおける個々の管理および看護として定義される。予防の目的は、疾患、状態、または障害の発症と闘うことであり、症状もしくは合併症の発症を予防または遅延させるため、および関連する疾患、状態、もしくは障害の発生を予防または遅延させるために活性化合物を投与することが含まれる。
【0135】
有効量という用語は、ここで用いられる場合、治療していない場合と比較して有効となるための患者の治療に対して十分な用量を意味する。
【0136】
POTは、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe) トリオースリン酸塩イソメラーゼ遺伝子であり、TPI1は、S.セレビシエトリオースリン酸塩イソメラーゼ遺伝子である。
【0137】
リーダーは、プレペプチド(シグナルペプチド)およびプロペプチドからなるアミノ酸配列を意味する。
【0138】
シグナルペプチドという用語は、タンパク質の前駆物質形態上にN-末端配列として存在するプレペプチドを意味すると解される。シグナルペプチドの機能は、異種性タンパク質が小胞体に移行するのを促進することである。シグナルペプチドは、通常、この方法の過程で切断される。シグナルペプチドは、タンパク質を産生する酵母菌に対して異種性または相同性であってよい。本発明のDNA構築物と共に使用されてよい多くのシグナルペプチドには、酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチドまたは機能的アナログ(Egel-Mitani et al. (1990) YEAST 6:127-137およびUS 5,726,038)、ならびにMFα1遺伝子のα-因子シグナル(Thorner (1981) in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces cerevisiae, Strathern et al., eds., pp 143-180, Cold Spring Harbor Laboratory, NYおよびUS 4,870,00)が含まれる。
【0139】
プロペプチドという用語は、ポリペプチド配列を意味し、その機能は、発現したポリペプチドを小胞体からゴルジ装置へと向けさせること、さらに培地への放出のために分泌小胞へと向けさせることである(すなわち、ポリペプチドの細胞壁を横切るまたは少なくとも細胞膜を通した酵母細胞の細胞膜周辺腔への移出である)。プロペプチドは、酵母α-因子プロペプチドであってよく、米国特許第4,546,082号および4,870,008号を参照されたい。あるいは、プロペプチドは合成プロペプチド、すなわち天然には見られないプロペプチドであってよい。適切な合成プロペプチドは、米国特許第5,395,922; 5,795,746; 5,162,498、およびWO 98/32867に開示されているものである。プロペプチドは、好ましくは、Lys-Arg配列またはその機能的なアナログのように、C末端にエンドペプチダーゼプロセシングを含む。
【0140】
本明細書において、アミノ酸の3文字または1文字表示は、以下に示すようにその通常の方法で使用される。明示しない限り、ここで言及されるアミノ酸は、L-アミノ酸である。さらに、ペプチドのアミノ酸配列の左端および右端は、指定しない限り、それぞれN末端およびC末端である。
【表1】

【0141】
以下の略語は、明細書および実施例において使用される。
【0142】
Bzl = Bn:ベンジル
DIEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
tBu:tert-ブチル
Glu:グルタミン酸
TSTU:O-(N-スクシニミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート
THF:テトラヒドロフラン
EtOAc:エチルアセテート
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン(= DIEA)
HOAt:1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
NMP:N-メチルピロリジン-2-オン
TEA:トリエチルアミン
SA:シナピン酸
Su:1-スクシニミジル = 2,5-ジオキソ-ピロリジン-1-イル
TFA:トリフルオロ酢酸
DCM:ジクロロメタン
DMSO:ジメチルスルホキシド
RT:室温
mPEG-SPAは、mPEG-CH2CH2-CO-OSu (mPEG-プロピオン酸のN-ヒドロキシスクシニミジルエステル)であり;
mPEG-SBAは、mPEG-CH2CH2CH2-CO-OSu (mPEG-ブタン酸のN-ヒドロキシスクシニミジルエステル)であり;
mPEG-SMBは、mPEG-CH2CH2CH(CH3)-CO-OSu (mPEG-α-メチルブタン酸のN-ヒドロキシスクシニミジルエステルであり;
mPEGは、CH3O(CH2CH2O)nCH2CH2-O-であり、ここでのnは、例えばmPEG Mw 2.000、nが約43であるように、PEG部分全体を指す平均分子量を与えるのに十分な、2〜600の整数である。
【0143】
ここに示した刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献は、その全体ならびに各参考文献が個々に且つ特に明細書の一部として援用されることが示され、その全体がここに示されているのと同じ範囲で、本明細書の一部として援用される(法律により許容される最大限の範囲)。
【0144】
項目および副項目は、便宜上のためのみに使用され、本発明を限定するように解釈されるべきでない。
【0145】
本明細書中における例または例示的な言葉(「例えば」および「〜のような」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図しており、示さない限り本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中に言葉がないことは、本発明の実施に対して不可欠であるとして権利請求されない要素を指すと解されるべきである。
【0146】
特許書類の引用および援用は、ここでは便宜的にのみなされ、そのような特許書類の妥当性、特許性、および/または実施可能性の見解を示すものではない。
【0147】
本発明には、適用可能な法律により許容される場合、添付するクレームに列挙した内容の修飾および均等物が含まれる。
【実施例】
【0148】
一般的方法
以下の実施例および一般的方法において、明細書中に確認される中間化合物および最終生成物について言及する。あるいは、ここで開示されている他の反応または他の従来法は、本発明の対応化合物を調製するために使用可能である。全ての調製方法において、全ての出発物質は既知であるか、または既知の出発物質から容易に調製されてよい。全ての温度は、特に示さない限り摂氏温度で示され、収量について示す場合、全ての割合およびパーセンテージは重量により、溶媒および溶出液について示す場合、全ての割合は体積による。
【0149】
本発明の化合物は、当該分野において典型的である以下の1以上の方法を用いることにより精製され得る。これらの方法は、必要な場合、勾配、pH、塩、濃度、流れ、カラム等に関して修飾されてよい。不純物のプロフィール、問題とするインスリンの溶解性等のような因子に依存して、これらの修飾は、当業者により用意に認識され、且つなされる。
【0150】
酸性のHPLCまたは脱塩の後、化合物は、純粋な画分の凍結乾燥により分離される。
中性のHPLCまたはインイオン交換クロマトグラフィーの後、化合物は脱塩され、等電点pHにおいて沈殿させるか、または酸性のHPLCにより精製される。
【0151】
典型的な精製方法:
HPLCシステムは、以下のもので構成されるギルソン(Gilson)システムである:モデル 215 液体ハンドラー、モデル322-H2 ポンプ、およびモデル155 UV 検出器。検出は、典型的に、210 nmおよび280 nmである。
【0152】
Akta清浄器FPLCシステム(アマシャムバイオサイエンス社製)は、以下からなる:モデルP-900 ポンプ、モデルUV-900 UV検出器、モデルpH/C-900 pH、および導電率検出器、モデルFrac-950摩擦集電器。UV検出は、典型的に、214 nm、254 nm、および276 nmである。
【0153】
酸性HPLC:
カラム:Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleosil 300-7 C4
流れ:8 ml/分
緩衝液A:アセトニトリル中の0.1% TFA
緩衝液B:水中の0.1% TFA
勾配:0,0〜5.0分:10% A
5.00〜30.0分:10% A〜90% A
30.0〜35.0分:90% A
35.0〜40.0分:100% A。
【0154】
中性HPLC:
カラム:Phenomenex, Jupiter, C4 5μm 250×10,00 mm, 300Å
流れ:6 ml/分
緩衝液A:5 mMトリス(TRIS), 7,5 mM (NH4)2SO4, pH = 7,3, 20% CH3CN
緩衝液B:60% CH3CN, 40 % 水
勾配:0〜5分:10% B
5〜35分:10〜60% B
35〜39分:60% B
39〜40分:70% B
40〜43.5分:70% B。
【0155】
陰イオン交換クロマトグラフィー:
カラム:RessourceQ, 1 ml
流れ:6 ml/分
緩衝液A:0.09% NH4HCO3, 0.25% NH4OAc, 42.5% エタノール pH 8.4
緩衝液B:0.09% NH4HCO3, 2.5% NH4OAc, 42.5% エタノール pH 8.4
勾配:30カラム容積の間、100% A〜100% B。
【0156】
脱塩:
カラム:HiPrep 26/10
流れ:10 ml/分, 6カラム容積
緩衝液:10 mM NH4HCO3
【0157】
以下の分析用HPLCシステムを使用した:
方法1:
2つのウォーターズ(Waters) 510 HPLC ポンプ
ウォーターズ 2487 Dual λ 吸収検出器
ランタイム:30分
注入:25μl
緩衝液A:アセトニトリル中の0.1% TFA
緩衝液B:水中の0.1% TFA
流れ:1.5 ml/分
勾配:1〜17分: 25% B〜85% B, 17〜22分: 85% B, 22〜23分: 85% B〜25% B, 23〜30分 25% B, 30〜31分 25%B
流れ:0.15 ml/分
カラム:C4 5μ 150×4_60mm “フェノメネックス, ジュピター“
検出:UV 214nm。
【0158】
方法2:
2つのウォーターズ 510 HPLC ポンプ
ウォーターズ 2487 Dual λ 吸収検出器
ランタイム:30分
注入:25μl
緩衝液A:0.1% TFA, 10% CH3CN, 89.9% 水
緩衝液B:0.1% TFA, 80% CH3CN, 19.9% 水
流れ:1.5 ml/分
勾配:0〜17分: 20%〜90% B, 17〜21 分 90% B
カラム:C4 5μ 150×4_60mm “フェノメネックス, ジュピター”
検出:UV 214 nm。
【0159】
方法3:
2つのウォーターズ 510 HPLC ポンプ
ウォーターズ 486 チューナブル吸収検出器
ウォーターズ 717 オートサンプラー
カラム:C4 5μ 150×4_60mm “フェノメネックス, ジュピター“
注入:20 μl
緩衝液A:80% 0,0125 M トリス, 0,0187 M (NH4)2SO4 pH = 7, 20% CH3CN
緩衝液B:80% CH3CN, 20% 水
流れ:1.5 ml/分
勾配:0 分 5% B -> 20 分 55% B -> 22 分 80% B -> 24 分 80% B -> 25 分 5% B 32 分 5% B
検出:UV 214 nm。
【0160】
方法4:
2つのウォーターズ 510 HPLC ポンプ
ウォーターズ 2487 Dual λ 吸収検出器
カラム:C4 5μ 150×4_60mm “ フェノメネックス, ジュピター “
注入:20 μl
緩衝液A:80% 0,0125 M トリス, 0,0187 M (NH4)2SO4 pH = 7, 20% CH3CN
緩衝液B:80% CH3CN, 20% 水
流れ:1.5 ml/分
勾配:0分 10% B ->20分 50%B -> 22分 60% B -> 23分 10% B -> 30分 10% B -> 31分 10% B 流れ 0,15分
検出:214 nm。
【0161】
方法5:
ウォーターズ 2695 セパレージョンズモジュール(separations module)
ウォーターズ 996 フォトダイオードアレイ検出器
カラム:C4 5μ 150×4_60mm “ phenomenex, Jupiter “
注入:25 μl
緩衝液A:80% 0.01 M トリス, 0,015 M (NH4)2SO4 pH = 7.3; 20% CH3CN
緩衝液B:20% 水; 80% CH3CN
流れ:1.5 ml/分
勾配:1〜20分: 5〜50% B, 20〜22分: 50〜60% B, 22〜23分: 60〜5% B, 23〜30分 5〜0%B 30〜31分 0〜5%B, 流れ :0,15 ml/分
検出:214 nm。
【0162】
方法6:
ウォーターズ 2795 セパレーションズモジュール
ウォーターズ 2996 フォトダイオードアレイ検出器
ウォーターズ ミクロマス ZQ 4000 エレクトロスプレー質量分析器
LC-法:
カラム:Phenomenex, Jupiter 5μ C4 300Å 50×4,60 mm
緩衝液A:水中の0.1% TFA
緩衝液B:CH3CN
流れ:1 ml/分
勾配:0〜7.5分: 10〜90% B
7.5〜8.5分: 90〜10%B
8.5〜9.5分 10% B
9.5〜10.00分 10% B, 流れ: 0,1 ml/分
MS法:Mw: 500〜2000 ES+
コーン(Cone)電圧 60V
走査時間 1
インタースキャン(Interscan)遅延: 0.1。
【0163】
方法7:
Agilent 1100シリーズ
カラム:GraceVydac プロテイン C4, 5um 4,6×250mm (Cat# 214TP54)
緩衝液A:10 mM トリス, 15 mM (NH4)2SO4, 水中の20% CH3CN pH 7.3
緩衝液B:CH3CN中の20%水
流れ:1.5 ml/分
勾配: 1〜20分: 10% B〜50% B, 20〜22分: 50% B〜60% B, 22〜23分: 60% B〜10% B, 23〜30分 10% B 30〜31分 10%B, 流れ 0.15 ml/分
検出:214 nm。
【0164】
MALDI-TOF-MSスペクトルを、窒素レーザーおよび陽イオン検出を用いて直線モードで操作することにより、Bruker Autoflex II TOF/TOFで記録した。加速電圧: 20 kV。
【0165】
以下のリストにおいて、選択されたPEG化試薬は、活性化N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル(OSu)として挙げられている。明らかに、4-ニトロフェノキシのような他の活性エステルが使用されてよく、多くの他の活性エステルが当業者に既知である。PEG (またはmPEG)部分、CH3O-(CH2CH2O)n-は、Mw 40.000 Da以下のいずれかのサイズでよい。単鎖インスリンにおけるPEG-残基の構造/配列は、形式上、種々のPEG化試薬に由来する脱離基(例えば「-OSu」)を「NH-単鎖インスリン」で置換することにより得られ、前記単鎖インスリンは、リジン残基のε位もしくはB鎖のα-アミノ位(または両方)においてPEG化される:
mPEG-COCH2CH2CO-OSu
mPEG-COCH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH(CH3)CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH(CH3)CO-OSu
mPEG-CH2CH2NH-COCH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH2NH-COCH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2CH2NH-COCH2CH2CO-OSu
mPEG-CH2CH2NH-COCH2CH2CH2CO-OSu
mPEG-CO-(4-ニトロフェノキシ)。
【0166】
組換え法:
全ての発現プラスミドは、C-POT型であって、EP 171, 142に記載されているものと同様であり、S.セレビシエ(serevisiae)におけるプラスミドの選択および安定化を目的として、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)トリオースリン酸イソメラーゼ遺伝子(POT)を含有することにより特徴づけられる。前記プラスミドには、S.セレビシエトリオースリン酸イソメラーゼプロモーターおよびターミネーターも含まれる。これらの配列は、リーダーおよびインスリン産物の融合タンパク質をコードするEcoRI-XbaI断片の配列を除いた全ての配列として、プラスミドpKFN1003における対応する配列(WO 90/100075に記載されている)と類似である。異なる融合タンパク質を発現するために、pKFN1003のEcoRI-XbaI断片は、関心のあるリーダー-インスリン融合をコードするEcoRI-XbaI断片により単純に置換される。そのようなEcoRI-XbaI断片は、合成的なオリゴヌクレオチドおよび標準的な技術によるPCRを用いて合成されてよい。
【0167】
酵母形質転換体は、宿主株S.セレビシエ株 MT663(MATa/MATα pep4-3/pep4-3 HIS4/his4 tpi::LEU2/tpi::LEU2 Cir+)の形質転換により調製された。酵母株MT663は、出願WO 92/11378に関連して、Deutsche Sammlung von Mikroorganismen und Zellkulturenに寄託され、寄託番号DSM 6278が与えられた。
【0168】
MT 663は、YPGaL (1% バクト(Bacto) 酵母抽出物、2% バクトペプトン、2% ガラクトース、1% ラクテート)上で、600nmのO.D.が6.0まで培養した。100 mlの培養液を遠心分離により収集し、10 mlの水で洗浄し、再び遠心分離し、1.2 M ソルビトール、25 mM Na2EDTA pH = 8.0、および6.7 mg/mlジチオトレイトールを含有する10 mlの溶液中に再び懸濁した。懸濁液を30℃で15分間インキュベートし、遠心分離し、細胞を1.2 M ソルビトール、10 mM Na2EDTA, 0.1 M クエン酸ナトリウム, pH 0 5.8、および2 mg ノボチム(Novozym:登録商標)234を含有する溶液10ml中に再懸濁した。懸濁液を30℃で30分間インキュベートし、遠心分離により細胞を回収し、10 mlの1.2 M ソルビトールおよび10 mlのCAS (1.2 M ソルビトール, 10 mM CaCl2, 10 mM Tris HCl (トリス = トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン) pH = 7.5)で洗浄し、2 mlのCAS中に再懸濁した。形質転換のために、1 mlのCAS-懸濁細胞を約0.1 mgのプラスミドDNAと混合し、室温に15分間静置した。1 mlの(20% ポリエチレングリコール 4000, 10 mM CaCl2, 10 mM トリス HCl, pH = 7.5)を加え、混合物をさらに30分間室温で静置した。混合物を遠心分離し、ペレットを0.1 mlのSOS (1.2 M ソルビトール, 33% v/v YPD, 6.7 mM CaCl2)に再懸濁し、30℃で2時間インキュベートした。懸濁液を遠心分離し、ペレットを0.5 mlの1.2 M ソルビトールに再懸濁した。その後、6 mlの52℃のトップアガー(the SC medium of Sherman et al. (1982) Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory)らのSC培地であって、1.2 M ソルビトールおよび2.5% 寒天を含有する)を加え、懸濁液を同じように寒天凝固されたソルビトール含有培地を含むプレートの上層に注いだ。
【0169】
発現プラスミドで形質転換されたS.セレビシエ株MT663を、30℃で72時間、YPD中で培養した。
【0170】
例1
B(1-29)-B3Q-B29R-TGLGK(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)GQ-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン
【化1】

【0171】
B(1-29)-B3Q-B29R-TGLGKGQ-A(1-21)-A18Q-A21G ヒトインスリン(90 mg, 14 μmol)を、100 mM Na2CO3水溶液(1 ml)に溶解した。アセトニトリル(1 ml)中におけるmPEG-SPA (Nektar, Mw 2.000 Da) (28 mg; 14 μmol)の溶液を加え、さらに100 mM 水性 Na2CO3 (0.8 ml)を加えた。反応混合物(pH 10〜11)を室温で45分間、穏やかに撹拌し、その後、1M HCl水溶液を用いてpHを5.2に調節した。混合物を、Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleusil 300-7 C4 カラムを用いて、25%〜90%の緩衝液Bの直線勾配を用いて溶出し、分取HPLCにより精製した。緩衝液A:ミリQ水中の0.1% TFA、緩衝液B:アセトニトリル中の0.1% TFA。その後、画分をLC-MSおよびMALDI-TOFを用いて個々に分析した。純粋な生成物を含有する画分を集め、水で希釈し、凍結乾燥し、5mgの表題の物質を得た。さらなる物質は、純粋でない画分を精製することにより得ることができる(44 mg)。
【0172】
HPLC (方法 2): Rt = 10.25分, 100% 純度
MALDI-TOF-MS (マトリックス: シナピン酸 (SA)); m/z ≒8600
例2
B(1-29)-B22K(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)-B29A-A18Q-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン
【化2】

【0173】
B(1-29)-B22K-B29A-A18Q-VGLSSGQ-A(1-21) ヒトインスリン(70 mg, 11μmol)を100 mM Na2CO3水溶液(2.3 ml)に溶解した。アセトニトリル(1.1 ml)中のmPEG-SPA (Nektar, Mw 2.000 Da) (22 mg; 11 μmol)の溶液を加えた。反応混合物(pH 10〜11)を、室温で1時間、穏やかに撹拌し、その後、1M HCl水溶液を用いてpHを5.6に調節した。Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleusil 300-7 C4カラムを用い、20%〜90%の緩衝液Bの直線勾配を用いて溶出する分取HPLCにより、混合物を精製した。緩衝液A: ミリQ水中の0.1% TFA、緩衝液B: アセトニトリル中の0.1% TFA。その後、LC-MSおよびMALDI-TOFを用いて画分を個々に分析した。純粋な生成物を含有する画分を集め、水で希釈し、凍結乾燥し、表題の物質を13mg得た。
【0174】
HPLC (方法1): Rt = 9,76分, 99,9% 純度
HPLC (方法3): Rt = 10,34分, 99,6% 純度
MALDI-TOF-MS (SA): m/z ≒ 8300。
【0175】
例3
B(1-29)-B29K(Nε-3-(mPEG2000-イル-プロピオニル)-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン
【化3】

【0176】
B(1-29)-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン(400 mg, 63 μmol)を、0.1 M Na2CO3 (6 ml)に溶解し、アセトニトリル(6 ml)中のmPEG-SPA (Nektar, Mw 2.000 Da) (135 mg)の溶液を加え、数滴の1N水酸化ナトリウムを用いてpHを10.3に調節した。混合物を70分間穏やかに撹拌し、1N塩酸を用いてpHを5.3に調節した。減圧下、エバポレーションにより有機溶媒を除去し、残留物を凍結乾燥した。粗生成物を、水とアセトニトリルの混合物中に再溶解し、Macherey-Nagel SP 250/21 Nucleusil 300-7 C4 カラムを用い、20%〜80%の緩衝液Bの直線勾配を用いて溶出する分取HPLCを数回行うことにより精製した。緩衝液A: ミリQ水中の0.1% TFA、緩衝液B: アセトニトリル中の0.1% TFA。
【0177】
その後、LC-MSおよびMALDI-TOFを用いて画分を個々に分析した。純粋な生成物を含有する画分を集め、水で希釈し、凍結乾燥し、標題の物質を302 mg得た。
【0178】
HPLC (方法1) : Rt = 9.66分, 100% 純度
HPLC(方法3) : Rt = 10.03分, 97.2% 純度
MALDI-TOF-MS (SA); m/z ≒ 8600。
以下の例は、同様に調製した。
【0179】
例4
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A8K(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)-A18Q ヒトインスリン
【化4】

【0180】
MALDI-TOF-MS (マトリックス: SA): m/z = 8200〜8750
HPLC (方法1): Rt = 10.58分
HPLC (方法5): Rt = 9.83分。
【0181】
例5
B(1-29)-B29A-VK(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)LSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン
【化5】

【0182】
MALDI-TOF-MS (マトリックス: シアノ): m/z 8598の周囲に中心が位置している
HPLC (方法1): Rt = 8.94分
HPLC (方法5): Rt = 10.23分。
【0183】
例6
B(1-29)-B29A-VGLSSGQ-A(1-22)-A18Q-A22K(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル) ヒトインスリン
【化6】

【0184】
MALDI-TOF-MS (マトリックス:シアノ) m/z: 8159と9085との間
HPLC (方法1): Rt = 8.86分
HPLC (方法5): Rt = 9.56分
HPLC (方法6): Rt = 9.24分。
【0185】
例7
B(1-29)-B3K(Nε-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン
【化7】

【0186】
MALDI-TOF-MS (マトリックス: シアノ): m/z: 8532の周囲に中心が位置する
HPLC (方法1): Rt = 14.08分
HPLC (方法5): Rt = 8.11分
HPLC (方法6): Rt = 9.13分。
【0187】
例8
B(1-29)-B1(Nα-3-(mPEG2000-イル)プロピオニル)-B29A-VGLSSGQ-A(1-21)-A18Q ヒトインスリン
【化8】

【0188】
HPLC (方法1): Rt = 9.38分
HPLC (方法5): Rt = 8.47分。
【0189】
PEG化単鎖インスリンは、以下に示すように、ヒトインスリン受容体(IR)に対するヒトインスリンと比較した結合親和性を測定することにより、生物学的なインスリン活性を試験した。結果を以下の表に示す。
【表2】

【薬理学的方法】
【0190】
試験(I)
本発明のPEG化単鎖インスリンのインスリン受容体結合
本発明のPEG化単鎖インスリンのヒトインスリン受容体に対する親和性は、SPA試験(シンチレーションプロキシミティアッセイ:Scintillation Proximity Assay) マイクロタイタープレート抗体捕獲試験により測定される。SPA-PVT 抗体結合ビーズ、抗マウスの薬剤(アマシャムバイオサイエンス社製, カタログ番号 PRNQ0017)を、25 mlの結合緩衝液(100 mM HEPES pH 7.8; 100 mM 塩化ナトリウム, 10 mM MgSO4, 0.025% ツイーン-20)と混合する。単一のパッカードオプティプレート(パッカード 番号6005190)に対する試薬混合物は、2.4 μlの1:5000に希釈された精製された組換えヒトインスリン受容体-エキソン11、100μlの試薬混合物当り5000cpmに対応する一定量のA14 Tyr[125I]-ヒトインスリンの保存液、12 μlの1:1000に希釈されたF12抗体、3 mlのSPA-ビーズ、および全量12mlまでの結合緩衝液で構成される。全量100μlが加えられ、適切なサンプルで一連の希釈が作られる。100μlの試薬混合物が一連の希釈に加えられ、サンプルを穏やかに振とうしながら16時間インキュベートした。その後、1分間の遠心分離により層を分離し、トップカウンターでプレートをカウントした。結合性のデータは、グラフパッドプリズム2.01 (グラフパッドソフトウェア, サンディエゴ, CA)による非線形回帰アルゴリズムを用いることがふさわしい。
【0191】
試験(II)
あるいは、インスリン受容体結合性は、以下のようなhlRBHK膜試験において試験される:
[125I]-ヒトインスリンの膜結合型組換えヒトインスリン受容体アイソフォームA (hIR-A)に対する結合性
試薬:
125I-インスリン: ノボノルディスク A/S, モノ 125I-(Tyr A14) ヒトインスリン
ヒトインスリン: ノボノルディスク A/S,
ヒト血清アルブミン: Dade Behring, ORHA 194 C30, ロット 455077
プラスチック製品: パッカードオプティプレート(Packard OptiPlate:登録商標)-96, #6,005,290
シンチラント(Scintillant): アマシャムバイオサイエンス, WGA コート PVT ミクロスフェア, # RPNQ0001
細胞: 組換えヒトインスリン受容体アイソフォームA (hIR12-14)を発現しているBHK tk- ts13 細胞。
【0192】
膜結合型のインスリン受容体の発現: 10層の細胞工場からのBHK細胞を収集し、25 mlの氷冷した緩衝液(25 mM HEPES pH 7.4, 2.5 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 250 mg/l バシトラシン, 0.1 mM ぺファブロック(Pefablock))中でホモジナイズした。ホモジネートを41%スクロースクッション(sucrose cushions)上に注意深く重ね、4℃で、ベックマン(Beckman)SW28ローター中、75分間、95,000×gで、超遠心分離機により遠心分離した。形質膜をスクロースクッションの上層から回収し、緩衝液を用いて1:4に希釈し、ベックマンSW28ローター中、45分間、40,000×gで遠心分離した。ペレットを緩衝液(25 mM HEPES pH 7.4, 2.5 mM CaCl2, 1 mM MgCl2, 250 mg/l バシトラシン, 0.1 mM ペファブロック)に懸濁し、−80℃で保管した。
【0193】
膜結合性のインスリン受容体に結合している放射性リガンドは、96ウェルオプティプレート中で重複して行われる。膜タンパク質は、全量200mlの分析緩衝液(50 mM HEPES, 150 mM NaCl, 5 mM MgSO4, 0.01% トリトン X-100, 0.1% HSA, コンプリート(Complete:登録商標) EDTA-遊離プロテアーゼ阻害剤)中における50 pM [125I-TyrA14]-ヒトインスリンおよび増大させた濃度のヒトインスリンまたはインスリンアナログ(典型的に0.01〜300 nM)と共に、25℃で150分間インキュベートされる。この分析は、50μlのWGA-コートPVTミクロスフェアの懸濁液(20 mg/ml)の添加により終結する。5分間のわずかな撹拌の後、プレートを6分間、1500 RPMで遠心分離し、60分間の遅れの後、パッカードトップカウントNXTにおいてカウントすることにより結合放射活性が定量される。
結果は、IC50としてヒトインスリンに対して%で表される。
【0194】
試験(III)
PEG化単鎖インスリンのヒトインスリンに対する効力
I.V.大量瞬時投与によるSCIの血中グルコース低下効果を試験するために、ウィスター(Wister)ラットが使用される。SCIまたはヒトインスリンの投与の後、血中グルコースの濃度をモニターする。
【0195】
試験(IV)
PEG化単鎖インスリンのT50%のブタにおける測定
T50%は、外部γ-カウンターにより測定された場合に、試験されるA14 Tyr[125I]標識されたインスリンの誘導体の投与量の50%が注射部位から消失する時間である。
【0196】
実験動物の世話の原則は以下の通りである。薬物動態学的および薬力学的な研究に対して、特異的な病原体のないLYYD、糖尿病でないメスのブタ、デンマーク在来種の雑種、ヨークシャーおよびDurocが使用される(Holmenlund, Haarloev, Denmark)。前記ブタは意識があり、4〜5月齢であり、70〜95kgである。動物は、実験前の18時間、一晩絶食させる。
【0197】
125Iを有するTyrA14で標識されたインスリン誘導体の構築された製剤を、上述したようにブタにsc.で注入する(Ribel, U., Jorgensen, K, Brange, J, and Henriksen, U. The pig as a model for subcutaneous insulin absorption in man. Serrano-Rios, M and Lefebvre, P. J. 891-896. 1985. Amsterdam; New York; Oxford, Elsevier Science Publishers. 1985 (Conference Proceeding))。
【0198】
実験の始めに、60nmolの量のインスリン試験化合物および60nmolの量のインスリン(共にTyr A14において125Iで標識されている)を各ブタの頚の2つの別の部位に注射する。
【0199】
sc.投与の部位からの放射活性ラベルの消失は、通常の外部γ-カウンティング法の改良法を用いてモニターする(Ribel, U. Subcutaneous absorption of insulin analogues. Berger, M. and Gries, F. A. 70-77 (1993). Stuttgart; New York, Georg Thime Verlag (Conference Proceeding))。この改良法を用いることにより、数日間の皮下の蓄積からの放射活性の消失を、コードレスポータブル装置を用いて連続的に測定することが可能になる(Scancys Laboratorieteknik, Vaerlose, DK-3500, Denmark)。測定は1分間隔で行い、カウント値はバックグランド活性に対して補正される。
【0200】
試験(V)
ラットに対する肺送達
試験物質は、滴下注入法により肺へ投与する。要するに、オスのウィスターラット(約250g)は、約60mlのフェンタニル/デヒドロデンズペリドール/ドルミカムを6.6 ml/kg scの初回用量として投与することにより麻酔し、30分間隔で3回、3.3 ml/kg scの維持用量を投与する。麻酔の導入から10分後、尾静脈から基礎サンプルが得られ(t=−20分)、試験物質の投与の直前に基礎サンプルが得られた(t=0)。t=0において、試験物質を気管を通して1つの肺に投与する。丸みをおびた末端を有する特別なカニューレを、200μlの空気および試験物質(1 ml/kg)を含有するシリンジに取り付ける。開口部を介して、カニューレを気管に挿入し、分岐部(bifurcature)を通して主な気管支の1つに進める。挿入の間、気管内の位置を確認するために、頚を外部から触診する。シリンジの内容物を投与し、2秒休止する。その後、カニューレをゆっくり引き戻す。ラットは試験の間麻酔されたままであり(4時間までの血液サンプル)、実験の後安楽死させる。
【0201】
IGF-1受容体結合性
IGF-1受容体結合性は、インスリン受容体の代わりにIGF1受容体が使用されること、[125I]-ヒトインスリンの代わりに[125I]-ヒト IGF-1が使用されること、およびIGF-1受容体に対する特異性を有する抗体を使用することを除き、試験化合物のインスリン受容体結合性を試験するために使用されるのと同様のSPA試験(Scintillation Proximity Assay) マイクロタイタープレート抗体捕獲試験を用いて測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3〜35のアミノ酸残基を有する連結ペプチドにより連結された、ヒトインスリンまたはそのアナログのB鎖およびA鎖を含んでなる単鎖インスリンであって、単鎖インスリン分子中の少なくとも1のリジン残基および/またはB鎖N末端アミノ酸残基に結合した少なくとも1のPEG基を含んでなる単鎖インスリン。
【請求項2】
前記連結ペプチドは、5〜20、5〜18、5〜16、または5〜11のアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項3】
前記連結ペプチドは、5〜14、6〜10、6〜8、6〜7、7〜9、7〜10、または7〜8のアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項4】
同じまたは異なってよい4以下のPEG基を含んでなる、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項5】
同じまたは異なってよい1〜2のPEG基を含んでなる、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項6】
1つのPEG基を含んでなる、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項7】
前記PEG基が、B1; B2; B3; B4; B10; B20; B21; B22; B27; B28; B29; B30; A8; A9; A10; A14; A15; A18; A21; A22; A23の1以上の位置および連結ペプチドに位置するリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項8】
前記PEG基がB20、B21、またはB22位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項9】
前記PEG基がB27、B28、B29、またはB30位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項10】
前記PEG基がB1、B2、B3、またはB4位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項11】
前記PEG基がB10位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項12】
前記PEG基がA8、A9、またはA10位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項13】
前記PEG基がA14、A15、またはA18位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項14】
前記PEG基がA22またはA23位のリジン残基に結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項15】
前記PEG基が連結ペプチド中のリジン残基と結合している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項16】
A18位の天然アミノ酸残基がGln残基で置換されている、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項17】
A21位の天然アミノ酸残基がGly残基で置換されている、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項18】
B30位の天然アミノ酸残基が欠失している、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項19】
前記連結ペプチドが、TGLGSGQ (配列番号1); VGLSSGQ (配列番号2); VGLSSGK (配列番号3); TGLGSGR (配列番号4); TGLGKGQ (配列番号5); KGLSSGQ (配列番号6); VKLSSGQ (配列番号7); VGLKSGQ (配列番号8); TGLGKGQ (配列番号9)、およびVGLSKGQ (配列番号10)からなる群より選択される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の単鎖インスリン。
【請求項20】
800〜約1000; 850〜約950; 600〜約700; 約400〜約500; 約180〜約300; 約100〜約150; 約35〜約55; 約42〜約62; または約12〜約25の(OCH2CH2)サブユニットを含む1以上のPEG基を含んでなる、請求項1〜19のいずれか1項に記載の単鎖インスリン。
【請求項21】
前記PEG基が式CH3O(CH2CH2O)nCH2CH2-O-を有し、nは2〜約600の整数である、請求項1に記載の単鎖インスリン。
【請求項22】
生物学的な活性量の請求項1〜21のいずれか1項に記載のPEG化単鎖インスリンを含んでなる医薬製剤。
【請求項23】
請求項22に記載の医薬製剤の治療的な活性量を、治療を必要とする患者に投与することにより、哺乳動物の血中グルコースレベルを低下させる方法。
【請求項24】
肺投与である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
医薬としての、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単鎖インスリンの使用。
【請求項26】
糖尿病の治療のための医薬製剤を調製するための、請求項1〜21のいずれか1項に記載の単鎖インスリンの使用。

【公表番号】特表2008−533100(P2008−533100A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501326(P2008−501326)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060816
【国際公開番号】WO2006/097521
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】