説明

PMセンサの故障検出装置

【課題】本発明は、素子カバーの目詰まりやヒータによるセンサ素子の過剰加熱といったPMセンサの故障を、より好適に検出することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るPMセンサの故障検出装置は、PMセンサのセンサ素子の表面温度を検出する素子温度検出手段を備えており、センサ素子の周囲を排気が通過することで低下するセンサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量を該素子温度検出手段の検出値に基づいて算出する。そして、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、PMセンサの周囲を通過する排気の流量に対するセンサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量の割合に基づいて、PMセンサの故障を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気中の粒子状物質(Particulate Matter:以下、PMと称する)の量を検出するPMセンサの故障検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、内燃機関の排気中の酸素濃度等のガス成分濃度を検出するガス濃度検出装置が知られている(例えば、特許文献1)。従来技術のガス濃度検出装置は、内燃機関の排気通路中に配置され排気に晒されるセンサ素子を備えている。該センサ素子は素子カバーによって覆われている。該素子カバーは、複数の通気孔が形成された二重筒構造となっている。該素子カバーは、センサ素子を保護する機能と、センサ素子に接触する排気の流れを安定させる機能とを有している。
【0003】
また、近年では、内燃機関の排気中のPM量を検出するために用いるPMセンサが開発されている。該PMセンサも、上述したガス濃度検出装置と同様、内燃機関の排気通路中に配置され排気に晒されるセンサ素子と、該センサ素子を覆う素子カバーとを備えた構造となっている。素子カバーに形成された通気孔を通って排気と共にPMが素子カバー内に流入し、該PMがセンサ素子に付着し堆積する。そして、PMセンサは、センサ素子におけるPM堆積量、又は該PM堆積量の単位時間当たりの変化量に基づいて算出される排気中のPM量に応じた信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−177005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PMセンサにおいては、素子カバーの通気孔に排気中のPMが付着することで、該通気孔が閉塞され、目詰まりが生じる場合がある。素子カバーの目詰まりが生じると、素子カバー内にPMが流入し難くなる。そのため、PMセンサによって排気中のPM量を正確に検出することが困難となる。
【0006】
また、PMセンサにおいて、センサ素子に堆積したPM量が過剰となると、その検出感度が低下する。そのため、PMセンサには、センサ素子を加熱するヒータが設けられている。そして、センサ素子におけるPM堆積量がある程度の量に達すると、該ヒータによってセンサ素子を加熱することで、堆積したPMを酸化させて除去する。ところが、該ヒータに異常が生じると、該ヒータによってセンサ素子を過剰に加熱する場合がある。
【0007】
本発明は、上記のような、素子カバーの目詰まりやヒータによるセンサ素子の過剰加熱といったPMセンサの故障を、より好適に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るPMセンサの故障検出装置は、PMセンサのセンサ素子の表面温度を検出する素子温度検出手段を備えており、センサ素子の周囲を排気が通過することで低下するセンサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量を該素子温度検出手段の検出値に基づいて算出する。そして、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、PMセンサの周囲を通過する排気の流量に対するセンサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量の割合に基づいて、PMセンサの故障を検出する。
【0009】
より詳しくは、本発明に係るPMセンサの故障検出装置は、
内燃機関の排気通路中に配置され排気に晒されるセンサ素子と、
前記センサ素子を覆うカバーであって、排気が流通する通気孔を有する素子カバーと、
前記センサ素子を加熱するヒータと、
を有するPMセンサの故障を検出する故障検出装置であって、
前記センサ素子の表面温度を検出する素子温度検出手段と、
前記センサ素子の周囲を排気が通過することで低下する前記センサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量である素子温度低下量を、前記素子温度検出手段によって検出される前記センサ素子の表面温度に基づいて算出する素子温度低下量算出手段と、
前記PMセンサの周囲を通過する排気の流量を取得する排気流量取得手段と、
前記ヒータによって前記センサ素子を加熱した時の、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、所定の判定値よりも小さいときに、前記PMセンサが故障していると判定する判定手段と、
を備えている。
【0010】
素子カバーの目詰まりが生じた場合、該素子カバー内を流通する排気の流量が正常時に比べて減少する。そのため、素子カバーの目詰まりが生じると、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、PMセンサの周囲を通過する排気の流量に対する素子温度低下量の割合が、正常時よりも低下する。
【0011】
また、ヒータによるセンサ素子の過剰加熱が生じた場合、センサ素子の表面温度は低下し難くなる。そのため、ヒータによるセンサ素子の過剰加熱が生じた場合も、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、PMセンサの周囲を通過する排気の流量に対する素子温度低下量の割合が、正常時よりも低下する。
【0012】
そこで、本発明に係る判定手段は、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、所定の判定値よりも小さいときは、PMセンサが故障していると判定する。ここで、所定の判定値とは、PMセンサが正常であると判断できる、PMセンサの周囲を通過する排気の流量に対する素子温度低下量の割合の下限値である。
【0013】
本発明によれば、素子カバーの目詰まりやヒータによるセンサ素子の過剰加熱といったPMセンサの故障が生じた場合に、該故障を高精度で検出することができる。
【0014】
本発明では、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、前記所定の閾値よりも小さいときにおいて、排気流量取得手段によって取得される排気の流量の変化量に対する温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の変化量の割合が、正常時よりも小さいときは、判定手段によって、素子カバーの目詰まりが生じていると判定してもよい。
【0015】
また、本発明では、ヒータによってセンサ素子を加熱した時の、排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、前記所定の判定値よりも小さいときにおいて、排気流量取得手段によって取得される排気の流量の変化量に対する素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の変化量の割合が、正常時と略同等のときは、判定手段によって、ヒータによるセンサ素子の過剰加熱が生じていると判定してもよい。
【0016】
上記によれば、素子カバーの目詰まりとヒータによるセンサ素子の過剰加熱とを区別して検出することができる。
【0017】
また、本発明においては、排気流量取得手段によって取得される排気の流量が所定流量以上のときに、判定手段による故障判定を実行してもよい。ここで、所定流量とは、素子カバーの目詰まりが生じた場合とヒータによるセンサ素子の過剰加熱が生じた場合とで比較したときに、センサ素子を加熱している時の素子温度低下量の正常時との差異が、素子カバーの目詰まりが生じた場合の方がより大きくなる排気の流量であってもよい。
【0018】
上記によれば、素子カバーの目詰まりとヒータによるセンサ素子の過剰加熱とをより正確に区別して検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、素子カバーの目詰まりやヒータによるセンサ素子の過剰加熱といったPMセンサの故障をより好適に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。
【図2】実施例に係るPMセンサの概略構成を示す図である。
【図3】実施例に係るPMセンサのセンサ素子の概略構成を示す図である。
【図4】実施例に係る、センサ素子を加熱した時の排気流量Qgasと素子温度低下量QTsとの関係を示す図である。
【図5】実施例に係るPMセンサの故障検出処理のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0022】
<実施例>
[内燃機関の吸排気系の概略構成]
図1は、本実施例に係る内燃機関の吸排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は車両駆動用のディーゼルエンジンである。ただし、本発明に係る内燃機関は、ディーゼルエンジンに限られるものではなく、ガソリンエンジンであってもよい。
【0023】
内燃機関1には吸気通路2及び排気通路3が接続されている。吸気通路2には、エアフローメータ20及びスロットル弁4が上流側から順に設けられている。エアフローメータ20は内燃機関1の吸入空気量を検出する。スロットル弁4は、吸気通路2の流路断面積を変更することで、該吸気通路2を流通する吸気の流量を調節する。
【0024】
排気通路3にはパティキュレートフィルタ6が設けられている。パティキュレートフィルタ6は排気中のPMを捕集する。パティキュレートフィルタ6より上流側の排気通路3には前段触媒として酸化触媒5が設けられている。パティキュレートフィルタ6より下流側の排気通路3にはPMセンサ7が設けられている。PMセンサ7の構成についての詳細は後述する。
【0025】
内燃機関1には電子制御ユニット(ECU)10が併設されている。該ECU10は内燃機関1の運転状態等を制御するユニットである。ECU10には、エアフローメータ20及びPMセンサ7の他、クランク角センサ21及びアクセル開度センサ22が電気的に
接続されている。クランク角センサ21は、内燃機関1のクランク角を検出する。アクセル開度センサ22は、内燃機関1を搭載した車両のアクセル開度を検出する。各センサの出力信号がECU10に入力される。ECU10は、クランク角センサ21の出力値に基づいて内燃機関1の機関回転速度を導出し、アクセル開度センサ22の出力値に基づいて内燃機関1の機関負荷を導出する。
【0026】
[PMセンサの概略構成]
図2及び3はPMセンサ7の概略構成を示す図である。PMセンサ7は、ハウジング11、センサ素子8、及び素子カバー9等を備えている。ハウジング11は、複数の部品により構成されており、全体として段付きの円筒状に形成されている。ハウジング11の内側には、ロッド状の素子支持部12が挿入されている。素子支持部12は、絶縁性のセラミックや樹脂等によって形成されている。素子支持部12の先端側はハウジング11から軸方向に突出している。
【0027】
素子支持部12の先端側にはセンサ素子8が設けられている。センサ素子8は排気通路3内に配置されており、排気に晒された状態となっている。また、ハウジング11の先端側には、センサ素子8を覆う素子カバー9が設けられている。素子カバー9は二重筒構造となっている。素子カバー9の側壁には、その内部と外部とを連通する貫通孔である通気孔9aが複数形成されている。該通気孔9aを通って排気が素子カバー9内に流入し、また、素子カバー9内に流入した排気が該通気孔9aを通って外部(排気通路内)に流出する。該素子カバー9によってセンサ素子8を覆うことで、センサ素子8を保護することができ、また、センサ素子8の周囲における排気の流れを安定させることができる。
【0028】
図3に示すように、センサ素子8は、互いに噛み合うように配置された一対の櫛歯型電極8a,8bを有している。素子カバー9の通気孔9aを通って該素子カバー9内に流入した排気中のPMが、電極8a,8b間に付着し、徐々に堆積する。電極8a,8b間におけるPM堆積量が増加すると、該電極8a,8b間の電気抵抗値が低下する。PMセンサ7は、電極8a,8b間の電気抵抗値に基づいて、センサ素子8に堆積したPM量を検知し、該検知したPM量に対応する電気信号を出力する。尚、電極8a,8b間におけるPM堆積量が変化すれば、該電極8a,8b間を流れる電流値等の電気抵抗値以外の電気的特性値も変化する。そのため、PMセンサ7は、電気抵抗以外の電気的特性値に基づいて、センサ素子8に堆積したPM量を検知してもよい。
【0029】
また、センサ素子8には、該センサ素子8を加熱する電気ヒータ14が内蔵されている。該電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱することで、該センサ素子8に堆積したPMを酸化させて除去することができる。さらに、センサ素子8には、該センサ素子8の表面温度を検出する素子温度検出部15が設けられている。
【0030】
PMセンサ7は複数の配線13を介してECU10に電気的に接続されており、PMセンサ7の出力信号がECU10に入力される。ECU10は、PMセンサ7の出力信号の単位時間当たりの変化量に基づいて、排気通路3を流れる排気中のPM量を算出する。また、素子温度検出部15の出力信号もECU10に入力される。
【0031】
電気ヒータ14はECU10によって制御される。例えば、センサ素子8におけるPM堆積量がある程度の量に達した場合、ECU10は、電気ヒータ14に通電することで、センサ素子8を加熱し、センサ素子8に堆積したPMの除去するPM除去処理を実行する。これによって、PMセンサ7の感度を回復させることができる。
【0032】
[PMセンサの故障検出]
PMセンサ7においては、通気孔9aがPMによって閉塞される素子カバー9の目詰ま
りや、PM除去処理を実行した際の電気ヒータ14の異常によるセンサ素子8の過剰加熱といった故障が生じる場合がある。本実施例においては、電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱した際に、これらの故障を検出すべくPMセンサの故障検出処理を実行する。
【0033】
本実施例に係るPMセンサの故障検出処理では、エアフローメータ20によって検出される内燃機関1の吸入空気量及び内燃機関1の機関回転速度等に基づいて、PMセンサ7の周囲を通過する排気の流量(以下、単に排気流量と称する場合もある)を算出する。また、センサ素子8の周囲を排気が通過することで低下するセンサ素子8の表面温度の単位時間当たりの低下量である素子温度低下量を、電気ヒータ14によってセンサ素子8に与えられる熱量及び素子温度検出部15によって検出されるセンサ素子8の表面温度に基づいて算出する。そして、排気流量と素子温度低下量とに基づいてPMセンサの故障を検出する。
【0034】
図4は、本実施例に係る排気流量Qgasと素子温度低下量QTsとの関係を示す図である。図4において、実線L1はPMセンサ7が正常である場合の両者の関係を示しており、破線L2は素子カバー9の目詰まりが生じた場合の両者の関係を示しており、一点鎖線L3は電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱が生じた場合の両者の関係を示している。尚、図4において、横軸は排気流量Qgasを表しており、縦軸は素子温度低下量QTsを表している。
【0035】
素子カバー9の目詰まりが生じた場合、該素子カバー9内を流通する排気の流量、即ちセンサ素子8の周囲を通過する排気の流量が、正常時に比べて減少する。これにより、センサ素子8の表面から排気によって持ち去られる熱量が減少するため、センサ素子8の表面温度が低下し難くなる。また、電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱が生じた場合、センサ素子8に与えられる熱量が増加する。そのため、この場合も、センサ素子8の表面温度が低下し難くなる。従って、これらの故障が生じた場合、図4に示すように、電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱した時の排気流量に対する素子温度低下量の割合が正常時よりも低下する。
【0036】
さらに、素子カバー9の目詰まりが生じた場合は、排気流量が増加しても、センサ素子8の周囲を通過する排気の流量が増加し難い。つまり、排気流量の増加量に対するセンサ素子8の周囲を通過する排気の流量の増加量の割合が小さくなる。そのため、素子カバー9の目詰まりが生じた場合、電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱した時における、排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合が正常時よりも小さくなる。
【0037】
一方、電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱が生じた場合であっても、素子カバー9の目詰まりが生じていなければ、排気流量の増加量に対するセンサ素子8の周囲を通過する排気の流量の増加量の割合は、正常時と同等である。そのため、この場合は、電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱した時における、排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合は正常時と略同等となる。
【0038】
つまり、PMセンサ7の故障が素子カバー9の目詰まりである場合は、図4のL2に示すように、排気流量の変化に対する素子温度低下量の変化特性にオフセット異常が生じ、PMセンサ7の故障が電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱である場合は、図4のL3に示すように、排気流量の変化に対する素子温度低下量の変化特性にゲイン異常が生じる。
【0039】
そこで、本実施例に係るPMセンサの故障検出処理では、電気ヒータ14によってセンサ素子8を加熱した時に、排気流量に対する素子温度低下量の割合を算出すると共に、排
気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合を算出する。そして、これらの値に基づいて、PMセンサ7の故障が生じているか否かを判別し、さらに、素子カバー9の目詰まりと電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱とを区別して検出する。
【0040】
[PMセンサの故障検出処理のフロー]
図5は、本実施例に係るPMセンサの故障検出処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、ECU10に予め記憶されており、ECU10によって繰り返し実行される。
【0041】
本フローでは、先ずステップS101において、排気流量Qgasが算出される。ECU10には、内燃機関1の吸入空気量及び内燃機関1の機関回転速度等のパラメータと排気流量Qgasとの関係がマップ又は関数として予め記憶されている。ステップS101では、該マップ又は関数を用いて排気流量Qgasが算出される。
【0042】
次に、ステップS102において、排気流量Qgasが所定流量Qgas0以上であるか否かが判別される。ここで、所定流量Qgas0とは、センサ素子8を加熱している時の素子温度低下量の正常時との差異が、電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱が生じた場合よりも素子カバー9の目詰まりが生じた場合の方がより大きくなる排気流量である。該所定流量Qgas0は、実験等に基づいて求められ、ECU10に予め記憶されている。ステップS102において、否定判定された場合、本フローの実行が一旦終了され、肯定判定された場合、ステップS103以降の処理が実行される。
【0043】
ステップS103においては、電気ヒータ14への通電が実行される。つまり、電気ヒータ14によるセンサ素子8の加熱が行われる。次に、ステップ104において、電気ヒータ14によってセンサ素子8に与えられる熱量及び素子温度検出部15によって検出されるセンサ素子8の表面温度に基づいて素子温度低下量QTsが算出される。ECU10には、電気ヒータ14によってセンサ素子8に与えられる熱量及びセンサ素子8の表面温度と素子温度低下量QTsとの関係がマップ又は関数として予め記憶されている。ステップS104では、該マップ又は関数を用いて素子温度低下量QTsが算出される。
【0044】
次に、ステップS105において、排気流量に対する素子温度低下量の割合QTs/Qgasが算出される。次に、ステップS106において、排気流量に対する素子温度低下量の割合QTs/Qgasが所定の判定値よりも小さいか否かが判別される。ここで、所定の判定値とは、PMセンサが正常であると判断できる排気流量に対する素子温度低下量の割合の下限値である。該所定の判定値は、実験等に基づいて求められ、ECU10に予め記憶されている。
【0045】
ステップS106において否定判定された場合、即ち排気流量に対する素子温度低下量の割合QTs/Qgasが所定の判定値以上である場合、ステップS111において、PMセンサ7は正常であると判定され、本フローの実行が一旦終了される。一方、ステップS106において肯定判定された場合、次にステップS107の処理が実行される。
【0046】
ステップS107においては、排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合ΔQTs/ΔQasが算出される。次に、ステップS108において、排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合ΔQTs/ΔQgasが、PMセンサ7が正常である時の値と略同等であるか否かが判別される。PMセンサ7が正常である時における排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合は、実験等に基づいて求められ、ECU10に予め記憶されている。
【0047】
ステップS108において肯定判定された場合、ステップS109において、電気ヒー
タ14に異常が発生することで、該電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱が生じていると判定される。一方、ステップS108において否定判定された場合、即ち排気流量の変化量に対する素子温度低下量の変化量の割合ΔQTs/ΔQgasが、PMセンサ7が正常である時の値よりも小さい場合は、ステップS110において、素子カバー9の目詰まりが生じていると判定される。
【0048】
上記フローによれば、PMセンサ7の故障を高精度で検出できる。さらに、素子カバー9の目詰まりと電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱とを区別して検出することができる。
【0049】
また、上記フローのように、排気流量Qgasが所定流量Qgas0以上の場合にのみPMセンサの故障検出を行うことで、素子カバー9の目詰まりと電気ヒータ14によるセンサ素子8の過剰加熱とをより正確に区別して検出することが可能となる。
【0050】
尚、上記フローでは、PMセンサの故障検出を行うために、ステップS103において電気ヒータ14への通電を実行し、センサ素子8の加熱を開始するようにした。しかしながら、センサ素子8に堆積したPMの除去するPM除去処理の実行時に、PMセンサの故障検出を行ってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1・・・内燃機関
2・・・吸気通路
3・・・排気通路
7・・・PMセンサ
8・・・センサ素子
8a,8b・・電極
9・・・素子カバー
9a・・通気孔
10・・ECU
14・・電気ヒータ
15・・素子温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路中に配置され排気に晒されるセンサ素子と、
前記センサ素子を覆うカバーであって、排気が流通する通気孔を有する素子カバーと、
前記センサ素子を加熱するヒータと、
を有するPMセンサの故障を検出する故障検出装置であって、
前記センサ素子の表面温度を検出する素子温度検出手段と、
前記センサ素子の周囲を排気が通過することで低下する前記センサ素子の表面温度の単位時間当たりの低下量である素子温度低下量を、前記素子温度検出手段によって検出される前記センサ素子の表面温度に基づいて算出する素子温度低下量算出手段と、
前記PMセンサの周囲を通過する排気の流量を取得する排気流量取得手段と、
前記ヒータによって前記センサ素子を加熱した時の、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、所定の判定値よりも小さいときに、前記PMセンサが故障していると判定する判定手段と、
を備えたPMセンサの故障検出装置。
【請求項2】
前記判定手段が、
前記ヒータによって前記センサ素子を加熱した時の、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、前記所定の判定値よりも小さいときにおいて、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量の変化量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の変化量の割合が、正常時よりも小さいときは、前記素子カバーの目詰まりが生じていると判定する請求項1に記載のPMセンサ故障検出装置。
【請求項3】
前記判定手段が、
前記ヒータによって前記センサ素子を加熱した時の、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の割合が、前記所定の判定値よりも小さいときにおいて、前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量の変化量に対する前記素子温度低下量算出手段によって算出される素子温度低下量の変化量の割合が、正常時と略同等のときは、前記ヒータによる前記センサ素子の過剰加熱が生じていると判定する請求項1又は2に記載のPMセンサ故障検出装置。
【請求項4】
前記排気流量取得手段によって取得される排気の流量が所定流量以上のときに、前記判定手段による故障判定を実行する請求項1から3のいずれか一項に記載のPMセンサ故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−159438(P2012−159438A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20170(P2011−20170)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】