説明

PPARデルタモジュレーターとしての1,3,4−オキサジアゾール−2−オン、および、それらの使用

本発明は、1,3,4−オキサジアザロン、および、それらの製薬上許容できる塩、それらの立体異性体、互換変異体または溶媒和物に関するものである。本発明の化合物は、PPARデルタのモジュレーターであるため、特に脱髄疾患、ならびに、脂肪酸代謝およびグルコース利用の障害の治療のための薬剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核ホルモン受容体が介在する病気を治療するためにPPARデルタ受容体を調節することにおいて有用な、選択的PPARデルタリガンド受容体結合剤として作用する新規の化合物、および、医薬製剤に関する。本発明のPPARデルタリガンド受容体結合剤は、PPARデルタ受容体のアゴニストまたはアンタゴニストとして有用である。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核内受容体スーパーファミリーのサブファミリーで構成される。4種の密接に関連したアイソフォームが同定され、クローニングされており、これらは一般的に、PPARアルファ、PPARガンマ−1、PPARガンマ−2、および、PPARデルタとして知られている。各受容体サブタイプは、特徴的なDNA結合ドメイン(DBD)、および、リガンド結合ドメイン(LBD)を有し、これらはいずれもリガンドで活性化された遺伝子表現に必要である。PPARは、レチノイドX受容体とのヘテロ二量体として結合する。J.BergerおよびD.E.Miller,Ann.Rev.Med.,2002年,53,409〜435を参照。
【0003】
PPARデルタ(また、PPARベータとして知られている)は、広範囲の哺乳動物組織で表現されるが、この受容体によって調節されるそれらの生物学的機能または完全な遺伝子アレイに関する情報は、ほとんど明確になっていない。しかしながら、近年、アゴニストは、脂質代謝異常のような状態および所定の外皮の状態を治療するのに有用であり得る一方で、アンタゴニストは、骨粗鬆症または結腸直腸癌を治療するのに有用であり得ることが見出された(D.Sternbach,in Annual Reports in Medicinal Chemistry,第38巻,A.M.Doherty編,エルゼビア・アカデミックプレス(Elsevier Academic Press),2003年,71〜80頁)。
【0004】
PPARデルタは、CNSで著しく表現されるようであり;しかしながら、その機能の多くが、なおわからないままである。しかしながら、PPARデルタは、げっ歯類の乏突起膠細胞(CNSの主要な脂質を生産する細胞)で表現されたという発見は、極めて興味深い(J.Granneman等,J.Neurosci.Res.,1998年,51,563〜573)。その上、PPARデルタ選択的アゴニストが、マウス培養物において乏突起膠細胞のミエリン遺伝子表現とミエリン鞘の直径を著しく増加させることが見出されたこともわかっている(I.Saluja等,Glia,2001年,33,194〜204)。従って、PPARデルタ活性化因子は、脱髄疾患、および、髄鞘形成不全疾患の治療に有用である可能性がある。
【0005】
脱髄性の状態は、ミエリン(多くの神経線維を覆う脂質とタンパク質からなる複数の密な層)の損失の兆候が見られる。これらの層は、中枢神経系(CNS)中の乏突起膠細胞、および、末梢神経系(PNS)中のシュヴァン細胞によって提供される。脱髄性の状態を有する患者において、髄鞘脱落は回復不能の場合が多い;これは通常、軸索の変性を伴うか、または、それに続いて軸索の変性が起こり、これは、細胞変性に起因することが多い。
【0006】
髄鞘脱落は、ニューロンの損傷、または、ミエリンそのものへの損傷(これらは、異常な免疫反応、局所損傷、虚血、代謝性疾患、毒物またはウイルス感染のいずれかによっても生じる)の結果として起こる可能性がある(PrineasおよびMcDonald,
Demyelinating Diseases.In Greenfield's Neuropathology,6.sup.th ed.(Edward Arnold:ニューヨーク,1997年)813〜811、BeersおよびBerkow編,The
Merck Manual of Diagnosis and Therapy,17.sup.th ed.(ホワイトハウスステーション,ニュージャージー州:メルク・リサーチ・ラボラトリーズ(Merck Research Laboratories),1999年)1299,1437,1473〜76,1483)。
【0007】
中枢の髄鞘脱落(CNSの髄鞘脱落)が数種の状態で起こるが、原因が不明であることが多く、これは、原発性脱髄疾患として知られている。これらのなかでも、多発性硬化症(MS)が最も普及している。その他の原発性脱髄疾患としては、副腎白質ジストロトフィー(ALD)、副腎脊髄神経障害、AIDS−空胞性脊髄症、HTLV関連脊髄症、レーバー遺伝性視神経萎縮、進行性多巣性白質脳病(PML)、亜急性硬化性全脳炎、ギラン・バレー症候群、および、熱帯性痙性不全対麻痺が挙げられる。加えて、髄鞘脱落がCNSで起こる急性の症状があり、例えば、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、および、急性ウイルス脳炎である。その上、急性横断性脊髄炎、原因不明の急性脊髄離断が1またはそれ以上の隣接する胸分節における灰白質と白質の両方に影響を与える症候群もまた、髄鞘脱落を起こす場合がある。さらに、ミエリンを形成するグリア細胞が損傷を受ける障害(脊髄損傷、神経障害および神経損傷など)もである。
【0008】
また、選択的PPARデルタモジュレーターは、その他の病態の治療または予防に有用な可能性もあり、例えば、Joel Berger等,Annu.Rev.Med.2002,53,409〜435;Timothy Wilson等.J.Med.Chem.,2000,Vol.43,No.4,527〜550;Steven Kliewer等,Recent Prog Horm Res.2001;56:239〜63;Jean−Charles Fruchart,Bart StaelsおよびPatrick Duriez:PPARS,Metabolic Disease and Arteriosclerosis,Pharmacological Research,Vol.44,No.5,345〜52;2001;Sander Kersten,Beatrice Desvergne&Walter Wahli:Roles of PPARs in health and disease,Nature,vol 405,2000年5月25日;421〜4;Ines Pineda Torra,Giulia Chinetti,Caroline Duval,Jean−Charles FruchartおよびBart Staels:Peroxisome proliferator−activated receptors:from transcriptional control to clinical practice,Curr Opin Lipidol 12:2001,245〜254)を参照。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PPARデルタモジュレーターとして作用する化合物は、インスリン抵抗性を伴う脂肪酸代謝障害やグルコース利用障害の治療および/または予防に特に適切である可能性がある。
【0010】
糖尿病、特にII型糖尿病は、それに関連する続発症の予防を含む。この点について、特定の形態は、高血糖症、インスリン抵抗性の改善、耐糖能の改善、膵臓β細胞の保護、大血管疾患および微小血管疾患の予防である。
【0011】
異常脂質血症とそれらの続発症、例えばアテローム性動脈硬化症、冠動脈心疾患、脳血管疾患など、特に以下の因子の1またはそれ以上を特徴とするもの(ただし、これらに制限されないが):高い血漿トリグリセリド濃度、食後の高い血漿トリグリセリド濃度、低いHDLコレステロール濃度、低いApoAリポタンパク質濃度、高いLDLコレステロール濃度、小さくて高密度のLDLコレステロール粒子、高いApoBリポタンパク質濃度である。
【0012】
代謝症候群に関連する可能性がある様々なその他の状態は、例えば:肥満症(過剰体重)、例えば中心性肥満、血栓症、凝固亢進の、および、プロトロンビンの状態(動脈および静脈の)、高血圧、心不全、例えば(ただし、これらに制限されないが)、心筋梗塞の後の、高血圧性心疾患、または、心筋症である。
【0013】
例えば炎症反応または細胞の分化が、関与する可能性があるその他の障害または状態は、以下の通りである:アテローム性動脈硬化症、例えば(ただし、これらに制限されないが)、冠状動脈硬化症(狭心症または心筋梗塞など)、卒中、血管再狭窄、または、再閉塞、慢性炎症性腸疾患、例えばクローン病、および、潰瘍性大腸炎、膵臓炎、その他の炎症性の状態、網膜疾患、脂肪細胞腫瘍、脂肪腫性の癌腫、例えば脂肪肉腫、充実性腫瘍および新生物、例えば(ただし、これらに制限されないが)、消化管、肝臓、胆管および膵臓の癌腫、内分泌腺腫瘍、肺、腎臓および尿路、生殖管、前立腺癌腫の癌腫など、急性および慢性骨髄増殖性疾患、および、リンパ腫での血管新生、神経変性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、紅斑落屑性の皮膚疾患、例えば乾癬、尋常性座瘡。
【0014】
PPARデルタで調節されるその他の皮膚疾患および皮膚病変は、以下の通りである:湿疹、および、神経皮膚炎、皮膚炎、例えば脂漏性皮膚炎、または、光線過敏性皮膚炎、角膜炎、および、角化症、例えば脂漏性角化症、老人性角化症、日光性角化症、光で誘導された角化症、または、毛包性角化症のケロイド、および、ケロイドの予防、疣贅、例えばコンジローマ(condylomata)または尖圭コンジロームなど、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)感染、例えば性病の乳頭腫(papillomata)、ウイルス性疣贅、例えば伝染性軟属腫、白斑症による丘疹状の皮膚疾患、例えば扁平苔癬、皮膚癌、例えば基底細胞癌腫、黒色腫、または、皮膚T細胞リンパ腫、局所的な良性の表皮性腫瘍、例えば角皮症、表皮母斑、および、凍瘡。
【0015】
PPARデルタで調節される可能性がある様々なその他の状態としては、シンドロームX、多嚢胞卵巣症候群(PCOS)、喘息の変形性関節症、紅斑性狼瘡(LE)、または、炎症性のリウマチ障害、例えばリウマチ様関節炎、血管炎、衰弱(悪液質)、痛風の虚血/再潅流症候群、および、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、式I:
【化1】

で示される化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩に関するものであり、
式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、前記フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または、−(CH2n−Y−(CH2n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択され;
ただし、Zが−O(CH2n−、または、−SO2(CH2n−であり、アリールがフェニルである場合、R2は、フェニル以外である。
【0017】
本発明はまた、このような調節が必要な被検体において、PPARデルタの活性を選択的に調節する化合物を投与することによってPPARデルタを調節するための、式Iの医薬組成物、および、前記化合物および組成物を用いる方法にも関する。
【0018】
本発明のその他の形態において、PPARデルタリガンド結合活性で調節することができる疾患を有する哺乳動物に、治療上有効な量の式I:
【化2】

で示される化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩を投与することを含む、哺乳動物において、PPARデルタリガンド結合活性で調節することができる疾患を治療する方法が開示され、
式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、前記フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または、−(CH2n−Y−(CH2
n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される。
【0019】
発明の詳細な説明
本明細書で用いられる用語は、以下の意味を有する:
本明細書で用いられる表現「C1-6アルキル」は、メチルおよびエチル基、および、直鎖または分岐鎖プロピル、ブチル、ペンチルおよびヘキシル基を含む。具体的なアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、および、tert−ブチルである。派生の表現、例えば「C1-6アルコキシ」、「C1-6アルコキシC1-6アルキル」、「ヒドロキシC1-6アルキル」、「C1-6アルキルカルボニル」、「C1-6アルコキシカルボニルC1-6アルキル」、「C1-6アルコキシカルボニル」、「アミノC1-6アルキル」、「C1-6アルキルカルバモイルC1-6アルキル」、「C1-6ジアルキルカルバモイルC1-6アルキル」、「モノ−、または、ジ−C1-6アルキルアミノC1-6アルキル」、「アミノC1-6アルキルカルボニル」、「ジフェニルC1-6アルキル」、「アリールC1-6アルキル」、「アリールカルボニルC1-6アルキル」、および、「アリールオキシC1-6アルキル」は、それに従って解釈されるものとする。
【0020】
本明細書で用いられる表現「C2-6アルケニル」は、エテニル、および、直鎖または分岐鎖プロペニル、ブテニル、ペンテニルおよびヘキセニル基を含む。同様に、表現「C2-6アルキニル」は、エチニル、および、プロピニル、および、直鎖または分岐鎖ブチニル、ペンチニルおよびヘキシニル基を含む。
【0021】
本明細書で用いられるように、用語「C1-4アシルオキシ」は、酸素原子に結合したアシルラジカルを意味し、いくつかの例としては、これらに限定されないが、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブタノイルオキシ、イソ−ブタノイルオキシ、sec−ブタノイルオキシ、t−ブタノイルオキシなどが挙げられる。
【0022】
本明細書で用いられる「アリール」は、炭素環の芳香環系を示し、例えばフェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、ビフェニレニルなどである。アリールはまた、上記で列挙された炭素環の芳香族系の部分的に水素化された誘導体も含むものとする。このような部分的に水素化された誘導体の非限定的な例は、1,2,3,4−テトラヒドロナフチル、1,4−ジヒドロナフチルなどである。
【0023】
本明細書で用いられる「アリールオキシ」は、基−O−アリール(ここにおいて、アリールは、上記で定義された通りである)を示す。
【0024】
本明細書で用いられる「ヘテロアリール」(そのままで、または、あらゆる組み合わせで、例えば「ヘテロアリールオキシ」または「ヘテロアリールアルキル」)は、1またはそれ以上の環が、N、OまたはSからなる群より選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含む5〜10員環の芳香環系であり、例えば、これらに限定されないが、ピロール、ピラゾール、フラン、チオフェン、キノリン、イソキノリン、キナゾリニル、ピリジン、ピリミジン、オキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、テトラゾール、トリアゾール、イミダゾール、または、ベンゾイミダゾールが挙げられる。
【0025】
本明細書で用いられる「複素環式またはヘテロシクリル」(そのままで、または、あらゆる組み合わせで、例えば「ヘテロシクリルアルキル」)は、1またはそれ以上の環が、N、OまたはSからなる群より選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含む、飽和の、または、部分的に不飽和の4〜10員環であり;例えば、ただしこれらに限定されないが、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、テトラヒドロピラン、または、イミダゾリジンが挙げられる。
【0026】
本明細書で用いられる表現「C1-6ペルフルオロアルキル」は、前記アルキル基中の全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることを意味する。説明に役立つ例としては、トリフルオロメチル、および、ペンタフルオロエチル、および、直鎖または分岐鎖ヘプタフルオロプロピル、ノナフルオロブチル、ウンデカフルオロペンチルおよびトリデカフルオロヘキシル基が挙げられる。派生の表現、「C1-6ペルフルオロアルコキシ」、は、それに従って解釈されるものとする。
【0027】
本明細書で用いられる表現「C3-8シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、および、シクロオクチルを意味する。
【0028】
本明細書で用いられる表現「C3-8シクロアルキルC1-6アルキル」は、本明細書で定義されたようなC3-8シクロアルキルが、さらに本明細書で定義されたようなC1-6アルキルに結合していることを意味する。代表例としては、シクロプロピルメチル、1−シクロブチルエチル、2−シクロペンチルプロピル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘプチルエチル、および、2−シクロオクチルブチルなどが挙げられる。
本明細書で用いられる「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、および、ヨードを意味する。
【0029】
本明細書で用いられるように、本明細書における「C1-6アルキルスルホニル」は、基−S(=O)21-6アルキル(ここにおいて、C1-6アルキルは、上記で定義された通りである)を示す。代表例としては、これらに限定されないが、メチルスルホニル、エチルスルホニル、n−プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソ−ブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、n−ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert−ペンチルスルホニル、n−ヘキシルスルホニル、イソヘキシルスルホニルなどが挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられる「アリールスルホニル」は、基−S(=O)2アリール(ここにおいて、アリールは、上記で定義された通りである)を示す。
本明細書で用いられる「ヘテロアリールスルホニル」は、基−S(=O)2ヘテロアリール(ここにおいて、ヘテロアリールは、上記で定義された通りである)を示す。
【0031】
表現「立体異性体」は、空間において原子の方位のみが異なるそれぞれの分子の全ての異性体に用いられる一般用語である。典型的には、立体異性体は、通常、少なくとも1つの不斉中心により形成される鏡像異性体(エナチオマー)を含む。本発明に係る化合物が2またはそれ以上の不斉中心を有する場合、それらはさらに、ジアステレオ異性体としても存在する可能性があり、さらに、所定の個々の分子が、幾何異性体(シス/トランス)として存在する可能性もある。当然ながら、全てのこのような異性体、および、それらのあらゆる比率の混合物は、本発明の範囲に包含される。
【0032】
「置換された」は、独立して、C1-6アルキル、C1-6ペルフルオロアルキル、ヒドロキシ、−CO2H、エステル、アミド、C1−C6アルコキシ、C1−C6ペルフルオロアルコキシ、−NH2、Cl、Br、I、F、−NH−低級アルキル、および、−N(低級アルキル)2からなる群より選択される1〜2個の置換基で置換されていることを意味する。
【0033】
本発明の化合物および塩は、エノールおよびイミン型、ならびに、ケトおよびエナミン型、ならびに、幾何異性体などの数種の互変異性型、さらにはそれらの混合物で存在する可能性がある。このような互変異性型は全て、本発明の範囲に含まれる。互変異性体は、溶液中で互変異型の群の混合物として存在する。固体の状態では、通常、1種の互変異性体が優勢である。1種の互変異性体が説明されているとしても、本発明は、本発明の化合物の全ての互変異性体を含む。
【0034】
本明細書で用いられるように用語「モジュレーター」は、生物活性またはプロセスの機能的な特性(例えば、酵素活性、または、受容体への結合)を、強化する(例えば、「アゴニスト」活性)、または、阻害する(例えば、「アンタゴニスト」活性)のいずれかの能力を有する化学物質を意味する;このような強化または阻害は、特定の事象(例えばシグナル伝達経路の活性化または抑制)の出現を条件とする場合があり、および/または、特に細胞型を明らかにする場合もあり、さらに、測定可能な生物学的な変化が生じる場合もある。
本明細書で用いられるように、「患者」は、例えばラット、マウス、イヌ、ネコ、モルモットおよび霊長類のような温血動物を意味し、例えばヒトである。
【0035】
本明細書で用いられるように、表現「製薬上許容できるキャリアー」は、非毒性の溶媒、分散剤、賦形剤、アジュバント、または、その他の材料を意味し、これらは、医薬組成物、すなわち患者に投与できる投薬形態が形成できるようにするために本発明の化合物と混合される。このようなキャリアーの一例は、製薬上許容できる油状物質であり、典型的には、非経口投与に用いられる。
【0036】
本明細書で用いられる用語「製薬上許容できる塩」は、本発明の化合物の塩が医薬製剤で用いることができることを意味する。しかしながら、その他の塩も、本発明に係る化合物、または、それらの製薬上許容できる塩の製剤において有用な場合がある。本発明の化合物の適切な製薬上許容できる塩としては、酸付加塩が挙げられ、これは例えば、本発明に係る化合物の溶液と、製薬上許容できる酸の溶液とを混合することによって形成してもよく、このような製薬上許容できる酸は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、メタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フマル酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、酢酸、サリチル酸、ケイ皮酸、2−フェノキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、安息香酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、炭酸、または、リン酸である。また、上記酸の金属塩(例えばオルトリン酸一水素ナトリウム、および、硫酸水素カリウム)を形成してもよい。また、このようにして形成された塩は、一酸または二酸の塩のいずれかで存在する可能性があり、さらに、水化物として存在してもよいし、または、実質的に無水でもよい。その上、本発明の化合物に酸性成分が含まれる場合、適切なそれらの製薬上許容できる塩は、アルカリ金属塩、例えばナトリウムまたはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム、または、マグネシウム塩;および、適切な有機配位子で形成された塩(例えば第四アンモニウム塩)も挙げられる。
本明細書で用いられる用語「治療上有効な量」は、本化合物の、上記の障害または状態の治療に有効な量を意味する。
【0037】
本発明はまた、本発明に係る化合物の1種またはそれ以上を、製薬上許容できるキャリアーと共に含む医薬組成物を提供する。好ましくは、これらの組成物は、1回投与形態であり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、粉末、顆粒、滅菌された非経口用の溶液または懸濁液、メーターで量られたエアロゾル、または、液状スプレー、ドロップ、アンプル、自動インジェクター装置、または、坐剤であり;これらは、経口、非経口の、鼻腔内、舌下または直腸内投与のため、または、吸入法または通気法による投与のためのものである。あるいは、本組成物は、週1回、または、月1回の投与に適した形態で存在していてもよく;例えば、本活性化合物の不溶性塩(例えばデカン酸塩)が、筋肉内注射のためのデポ製剤を提供するのに適している場合がある。上記活性成分を含む侵食性のポリマーが考慮される。錠剤のような固形組成物を製造するために、主要な活性成分は、製薬用キャリアー、例えば従来の錠剤を形成する成分、例えばコーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、または、ゴム類、および、その他の製薬用の希釈剤、例えば水と混合され、本発明の化合物またはそれらの製薬上許容できる塩の均一な混合物を含む固形の予備処方組成物を形成することができる。これらの予備処方組成物が均一であると述べられる場合、上記活性成分が本組成物中に均一に分散されており、従って、本組成物を、さらに細かく等しく有効な1回投与量形態(例えば錠剤、丸剤およびカプセル)に容易に分割できることを意味する。
【0038】
次に、この固形の予備処方組成物を、上述のタイプの本発明の活性成分を0.1〜約500mg含む1回投与量にさらに細かく分割する。風味をつけた1回投与量は、上記活性成分を1〜100mg、例えば1、2、5、10、25、50または100mg含む。新規の組成物の錠剤または丸剤は、コーティングしてもよいし、または別の方法で、持続性の作用の利点を提供する投薬形態が提供されるように配合してもよい。例えば、錠剤または丸剤は、内部の用量の成分と外部の用量の成分とで構成されていてもよく、この場合、後者が、前者を覆う外被の形態である。2種の成分は、腸溶性の層で分離することができ、この層は、胃での崩壊に耐えるように作用し、内部の成分を十二指腸に無傷で到達させる、または、それらの放出を遅らせることができる。このような腸溶性の層またはコーティングには、多種多様な材料を用いることができ、このような材料としては、多数のポリマー酸、および、ポリマー酸と、セラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料との混合物が挙げられる。
【0039】
経口投与のための、または、注射による本発明の新規の組成物を包含することができる液体の形態としては、水溶液、適切には風味を付けたシロップ、水性または油性懸濁液、および、食用油(例えば綿実油、ゴマ油、ヤシ油または落花生油)、同様に、エリキシル、および、類似の製薬用の基材を用いた風味を付けた乳濁液が挙げられる。水性懸濁液のための適切な分散剤または懸濁化剤としては、合成ゴムおよび天然ゴム、例えばトラガカント、アラビアゴム、アルギン酸塩、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、または、ゼラチンが挙げられる。
【0040】
本明細書で説明されているような様々な病態の治療において、適切な用量のレベルは、1日あたり約0.01〜250mg/kg、好ましくは1日あたり約0.05〜100mg/kg、具体的には1日あたり約0.05〜20mg/kgである。本化合物は、1日あ
たり1〜4回の処方計画に従って投与してもよい。
【0041】
実施例とそれに続く製造で用いられるように、そこで用いられる用語は、以下で示す意味を有するものとする:「kg」は、キログラムを意味し、「g」は、グラムを意味し、
「mg」は、ミリグラムを意味し、「g」は、マイクログラムを意味し、「pg」は、ピコグラムを意味し、「mol」は、モルを意味し、「mmol」は、ミリモルを意味し、「nmole」は、ナノモルを意味し、「L」は、リットルを意味し、「mL」または「ml」は、ミリリットルを意味し、「μL」は、マイクロリットルを意味し、「℃」は、セルシウス度を意味し、「Rf」は、保持因子を意味し、「mp」または「m.p.」は、融点を意味し、「dec」は、分解を意味し、「bp」または「b.p.」は、沸点を意味し、「mmHg」は、水銀ミリメートルの圧力を意味し、「cm」は、センチメートルを意味し、「nm」は、ナノメートルを意味し、「[α]20D」は、1デシメートルのセルで得られた20℃でのナトリウムD線の比旋光度を意味し、「c」は、濃度g/mLを意味し、「THF」は、テトラヒドロフランを意味し、「DMF」は、ジメチルホルムアミドを意味し、「NMP」は、1−メチル−2−ピロリジノンを意味し、「ブライン」は、塩化ナトリウムの飽和水溶液を意味し、「M」は、モル濃度を意味し、「mM」は、ミリモル濃度を意味し、「M」は、マイクロモル濃度を意味し、「nM」は、ナノモル濃度を意味し、「TLC」は、薄層クロマトグラフィーを意味し、「HPLC」は、高速液体クロマトグラフィーを意味し、「HRMS」は、高分解能マススペクトルを意味し、「CIMS」は、化学イオン化マススペクトロメトリーを意味し、「ESI」は、エレクトロスプレーイオン化マススペクトロメトリーを意味し、「tR」は、保持時間を意味し、「lb」は、ポンドを意味し、「gal」は、ガロンを意味し、「L.O.D.」は、乾燥減量を意味し、「μCi」は、マイクロキュリーを意味し、「i.p.」は、腹腔内を意味し、「i.v.」は、静脈内を意味する。
【0042】
本発明の一形態において、式I:
【化3】

で示される一般構造を有する新規の化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩が開示され、
式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、前記フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または、−(CH2n−Y−(CH2n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択され;
ただし、Zが−O(CH2n−、または、−SO2(CH2n−であり、アリールがフェニルである場合、R2は、フェニル以外である。
【0043】
この実施形態のさらなる形態において、アリールがフェニルであり、XがOまたはSである化合物が開示される。
この実施形態のその他の形態において、XがOである化合物が開示される。
【0044】
この実施形態の典型的な化合物は、5−(4−{2−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−エトキシ}−フェニル)−3H−[1,3,4]オキサジアゾール−2−オンである。
【0045】
本発明のその他の実施形態において、有効量の式Iで示される化合物、および、製薬上許容できるキャリアーを含む医薬組成物が開示される。
本発明のその他の実施形態において、哺乳動物において、PPARデルタリガンド結合活性で調節することができる疾患を治療する方法が開示され、 本方法は、前記疾患を有する前記哺乳動物に、治療上有効な量の式Iで示される化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩を投与することを含む。
【0046】
【化4】

式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、前記フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または、−(CH2n−Y−(CH2n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル;ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される。
【0047】
本発明のこの方法のこの実施形態のさらなる形態において、アリールがフェニルである化合物が開示される。
本発明のこの方法のこの実施形態のその他の形態において、アリールがフェニルであり、R2がフェニルである化合物が開示される。
【0048】
本発明のこの方法のこの実施形態のさらなる形態において、アリールがフェニルであり、Zが−O(CH2n−であり、R2がフェニルである化合物が開示される。
本発明のこの方法のこの実施形態のさらにその他の形態において、アリールがフェニルであり、Zが−O(CH2n−であり、XがOまたはSであり、R2がフェニルである化合物が開示される。
【0049】
本発明のこの方法のこの実施形態のその他の形態において、アリールがフェニルであり、Zが−O(CH2n−であり、XがOまたはSであり、R1がC1-アルキルであり、R2がフェニルである化合物が開示される。
本発明のこの方法のこの実施形態のさらなる形態において、XがOである化合物が開示される。
本発明のこの方法のさらにその他の形態において、XがSである化合物が開示される。
【0050】
この実施形態のさらなる形態において、前記病気は、多発性硬化症、シャルコー−マリー−ツース病、ペリツェウス−メルツバッハー病、脳脊髄炎、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロトフィー、ギラン・バレー症候群、および、ミエリンを形成するグリア細胞が損傷を受ける障害(脊髄損傷、神経障害および神経損傷など)からなる群より選択される脱髄疾患である方法が開示される。
【0051】
この実施形態のその他の形態において、脱髄疾患は、多発性硬化症である方法が開示される。
本発明のさらにその他の形態において、前記病気は、肥満症、高トリグリセリド血症、高脂血症、低アルファリポタンパク血症、高コレステロール血症、異脂肪血症、シンドロームX、II型糖尿病、ならびに、ニューロパシー、腎症、網膜疾患、および、白内障、インスリン過剰血症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、高血圧、冠動脈心疾患、末梢血管疾患、または、うっ血性心不全からなる群より選択されるそれらの合併症からなる群より選択される方法が開示される。
【0052】
本明細書で開示された化合物は、以下のスキームの手法に従って合成することができ、ここにおいて、アリール、X、ZおよびR置換基は、特に他の規定がない限り、上記で式(I)に関して特定された通りである。必要に応じて、以下の合成スキームにおいて、本発明に記載の化合物に存在する反応性の官能基は、適切な保護基で保護されていてもよい。このような保護基は、合成の後の段階で除去してもよい。反応性の官能基を保護する手法、それに続いて除去する手法は、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,ワイリー・アンド・サンズ(Wiley and Sons),1991で見出すことが可能である。
【0053】
スキームAは、適切なイミダゾール、オキサゾールまたはチアゾール、式Iで示される化合物に関する中間体(ここにおいて、Xは、O、SまたはNR3である)の合成を示す。このような複素環は、化学文献において既知の方法を用いて製造することができる(総論として、Katritzky,A.R.;Rees,C.W.編.Comprehensive Heterocyclic Chemstry ,第5巻;Pergamon Press(1984);Katritzky,A.R.;Rees,C.W.;Scriven,E.F.V.編.Comprehensive Heterocyclic Chemstry II;第3&4巻,Pergamon Press(1996)を参照)。具体的には、前記オキサゾール、イミダゾールおよびチアゾールは、約40℃〜150℃の範囲の温度で、適切なαハロ−ケトン1を、アミド、アミジンまたはチオアミド(一般式2)とそれぞれ融合させて中間体複素環3を得ることによって製造することができる。
【0054】
【化5】

【0055】
スキームBに、式Iで示される化合物(Zが−O(CH2n−である)の一般的な合成を示す。それに従って、工程B1において、適切に置換されたカルボン酸エステル4(スキームAで説明されているように合成することができる)は、当業界周知の方法でアルコール5に還元される。例えば、この還元は、不活性溶媒中で、水素化アルミニウム(例えば水素化リチウムアルミニウムまたは水素化ジイソブチルアルミニウム)によって実行されてもよい。工程B2において、化合物5中のアルコール官能基は、脱離基に変換されて、化合物6を生成することもでき、ここにおいて、Lgは、脱離基(例えばハロゲン、または、スルホン酸エステル、例えばメシラートまたはトシラート)である。このような脱離基への変換は、トリフェニルホスフィンの存在下でアルコールと、例えばN−ブロモスクシンイミドのような試薬とを反応させて脱離基が臭化物の化合物を得て達成することができ、または、塩化チオニルと反応させて脱離基が塩化物である化合物を得て達成することもできる。スルホン酸エステルが望ましい場合、適切な塩基の存在下で化合物5と適切な塩化スルホニルとを反応させれば、望ましいスルホン酸エステルが生成すると予想される。例えば、不活性溶媒中で、有機塩基(例えばトリエチルアミンまたはピリジン)の存在下で、化合物5と塩化メタンスルホニルとを反応させれば、脱離基がOSO2CH3の化合物6が得られると予想される。
【0056】
工程B3において、適切に置換されたヒドロキシアリールエステル7は、複素環6と反応し、脱離基を除去して、カップリングされたエステル8が生成する。この除去反応は、当業界周知の条件下で行なわれる。典型的には、この反応は、塩基(例えば水素化ナトリウムなど)の存在下で、又は他の有機塩基(例えばアルカリカーボネート、または、アルカリ水酸化物)中で、不活性溶媒中で行われる。この反応温度は、重要ではないが、0℃〜不活性溶媒の還流温度である。
【0057】
次に、工程B4において、化合物8は、ヒドラジンそのままで、または、適切な有機溶媒中のヒドラジンのいずれかで、高温で処理され、酸ヒドラジド9が生成する。典型的には、この反応は、50℃〜有機溶媒の還流温度の温度で行われる。
【0058】
工程B5において、酸ヒドラジド9の目的の1,3,4−オキサジアゾール−2−オン10への環化は、有機塩基(例えばピリジン)の存在下で、化合物9をクロロホルメートで処理し、続いて、密封した試験管中で、適切な有機溶媒(例えばアセトニトリル)中で、強いヒンダードアミン塩基(例えば1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU))とで高められた温度で処理することによって達成される。典型的には、この反応は、100℃〜200℃で行うことができる。また、1,3,4−オキサジアゾール−2−オンは、化合物9とホスゲンとを反応させて合成してもよい。Stempel,A.等.,J.Org.Chem.1955,20,412を参照。
【0059】
工程B6において、カップリングされたエステル8のそれ以外の合成を説明する。それに従って、不活性溶媒(例えばTHFまたはジクロロメタン)中で、トリアリールまたはトリアルキルホスフィン、例えばトリフェニルホスフィン、または、トリ−n−ブチルホスフィン、および、アゾジカルボン酸ジエチルの存在下で、アルコール5とヒドロキシアリールエステル8とを反応させ、カップリングされたエステル8を得ることができる。典型的には、この反応は、室温〜不活性溶媒の還流温度の温度で行われる。
【0060】
【化6】

【0061】
スキームCは、式Iで示される化合物(Zが−(CH2n−Y−(CH2n−である)の合成を説明する。このスキームは、アリールに結合したアルキレン鎖におけるnが1または2を示す化合物を合成するのに最も有用である。工程C1において、化合物5(Y=O)は、スキームB、工程B2で説明されているようにして化合物6に変換される(ここにおいて、Lgは、クロロまたはブロモである)。次に、Treau,M.等.Heterocycles,2001,55(9),1727〜1735に記載の条件と類似した条件下で、化合物6と、チオ尿素、化合物11とを反応させ、チオール5aが生成する。
【0062】
化合物6が、第一アミン12と反応する場合、アミノアルキル複素環5bが生成する。このアミンによる脱離基の除去は、当業者には周知である。典型的には、この除去反応は、極性有機溶媒中で、酸スカベンジャーとして作用する有機塩基の存在下で行われる。この除去反応は、重要ではないが、周囲温度〜溶媒の還流温度で行われる。
【0063】
工程C3において、化合物5、5aおよび5bは、化合物13と反応して、カップリングされたアリールエステル14(Yは、O、S、または、NR3である)を得ることができる。それに従って、化合物5(Y=O)および5a(Y=S)と、13とが反応して脱離基が除去される場合、この反応は、典型的には、強塩基(例えば水素化ナトリウム)の存在下で、極性非プロトン性溶媒(例えばDMF、または、DMSO)中で、約0℃〜約150℃の温度で行われると予想される。化合物5b(Y=NR3)と、14とが反応する場合、工程C2で第一アミンに関して述べられた条件と同一な条件が用いられる。
【0064】
化合物14からの望ましい1,3,4−オキサジアゾール−2−オン16の合成は、スキームB、工程B4およびB5で正確に説明されているように、2つの工程(C4およびC5)で達成される。
【0065】
【化7】

【0066】
スキームDにおいて、式Iで示される化合物(Zが−(CH2n−Y−(CH2n−である)への代わりのアプローチを示す。このスキームは、アリールに結合したアルキレン鎖中のnが3〜5を示す化合物を合成するのに最も有用である。
【0067】
工程D1において、末端のアルデヒド化合物17(スキームAで説明されている方法で合成することができる)は、2工程反応の連続反応で末端のアセチレン19に変換される。それに従って、17と、ブロモメチレントリフェニルホスホラン(第一の工程)と、カリウムt−BuOKとの反応によって、中間体ブロモオレフィン(示さず)が生成し、その後これを、2当量のt−BuOK(第二の工程)で処理して、アセチレン19を形成する。この変換のための反応の連鎖は、Pianetti,P.,Tet.Letters,1986,48,5853〜5856で説明されている。また、Corey,E.J.,等.J.Am.Chem.Soc.,1969,91,4318〜4320も参照。あるいは、工程D2で示されるように、タイプ19の中間体は、求核剤(例えば18)(ここにおいて、末端のアセチレンが導入される)を用いた中間体(例えば6)(スキームCを参照)からの脱離基の除去によって製造することができる。
【0068】
工程D3において、アセチレン系中間体19とヨウ化アリール20との薗頭(Sonogashira)カップリングは、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)、ヨウ化第一銅、および、適切な有機塩基の存在下で、不活性溶媒中で行われ、カップリングされた末端のアセチレン21を得ることができる。次に、アセチレン21の還元は、工程D4で、化合物21の接触水素化によって達成することができ、飽和エステル14が生成する。典型的には、この還元は、30〜300p.s.i.の圧力で、水素とともに不活性有機溶媒中の触媒(例えばパラジウムを担持した活性炭、または、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I))を使用することによって達成することができる。この還元は、室温〜175℃の温度で行うことができる。
【0069】
化合物14からの望ましい1,3,4−オキサジアゾール−2−オン16の合成は、正確にスキームB、工程B4およびB5で説明されているように、2工程(D5およびD6)で達成される。
【0070】
【化8】

【0071】
スキームEは、式Iで示される化合物(Zが−(CH2nNR3(CH2n−である)の具体的な合成を説明する。このアプローチにおいて、リンカーZは、アルデヒドのアミンでの還元的アミノ化によって構築されている。例えば、工程E1において、極性溶媒(
通常、アルコールまたはアルコールTHF混合物)中での、5bのアルデヒド(ここにおいて、Y=NR3)(例えば4−ホルミル−安息香酸メチルエステル(n=1)化合物22)での処理、続いて、還元剤(例えばナトリウムトリアセトキシ−水素化ホウ素)での処理によって、必要な中間体14a(n=1)が提供される。
【0072】
同様に、工程E2でのアルデヒド(例えば17a)を、アミン、例えば4−アミノアルキル安息香酸メチルエステル(n=1)、化合物23で処理することにより、14aが提供される(ここにおいて、−(CH2nNR3については、nが1であり、R3がHである)。工程E3およびE4における化合物14aは、スキームB、工程B4およびB5で説明されているように、1,3,4,−オキサジアゾール−2−オン16aに変換される。
【0073】
より一般的には、適切なアミン(R’OOC−アリール−(CH2nNHR3)は、それに対応するニトリルまたはニトロ化合物から接触水素化によって製造され、または、アセチレン系アミン、および、ヨウ化アリールまたは臭化アリールから薗頭カップリング、続いてスキームDで説明されているように接触水素化によって製造される。
【0074】
【化9】

【0075】
スキームFは、式Iで示される化合物(Zが−SO2(CH2n−である)の合成を説明する。工程F1において、アリール塩化スルホニル24の亜硫酸ナトリウム水溶液での処理により、スルフィン酸25が提供される。工程F2の場合と同様に、極性溶媒(例えばDMF、アセトニトリル、または、エタノール)中で、塩基(例えばDBU、ピリジン、ナトリウムメトキシド、または、水酸化ナトリウム)の存在下で、25と中間体(例えば6)とを反応させることによって、中間体26が提供される。中間体26は、スキームB、工程B4およびB5で説明されているように、工程F3およびF4、それに対応する
1,3,4−オキサジアゾール−2−オン28に変換される。
【0076】
【化10】

【0077】
スキームGは、式Iで示される化合物(Zが−O(CH2nCO−である)の合成を説明する。このスキームでは、nが1の場合を説明する。開始の2−アシル複素環29は、それに対応するカルボン酸(スキームAで説明されている方法で製造された)から、適切なグリニャール試薬の添加によって中間体N−メトキシN−メチルカルボキサミドに合成することができる(Khlestkin,V.K.等.;Current Organic
Chemistry,2003,7(10),967〜993、および、Singh,J.等.,Journal fur Praktische Chemie,2000,342,340〜347)。中間体N−メトキシ−N−メチルカルボキサミドの製剤は、最も都合のよい形態としては、ペプチドカップリング試薬(例えばEDC、DCC、DMPU)、および、第三アミン塩基(例えばジイソプロピルエチルアミン、または、トリエチルアミン)の存在下での、上記酸とN−メトキシ−N−メチルヒドロキシルアミン塩酸塩との反応によって行われる。
【0078】
従って、工程G1で示されるように、進行中に、29は臭素化され、ブロモケトン30が生成する。この臭素化は、周知の方法、例えば、酢酸中の29と臭化ピリジニウム(過臭化物)との反応、または、不活性有機溶媒(例えばジクロロメタン)中の29とBr2との反応によって達成することができる。工程G2において、得られたブロモケトン30は、スキームB(工程B3)に記載の条件下でアリールヒドロキシエステル7と反応し、カップリングされたエステル31を得ることができる。31のケトン官能性は、工程G3で示されるように、当業界周知の方法によってケタール32として保護される。次に、化合物32は、工程G4〜G5で、スキームB(B4およびB5)で説明されているような標準的な手順によって、1,3,4−オキサジアゾール−2−オンケタール34に変換される。最終的に、工程G6において、34におけるケタール官能性は、例えばTHF−メタノール−水中の鉱酸で、または、当業界既知のその他の方法で切断され、目的の構造35を得ることができる。
【0079】
当業者には当然であると思われるが、上記のスキームGの手法を用いて、化合物35についてnが2〜5である類似体を、より大きいブロモアルカノイル置換基(Br(CH2nCO−、ここにおいて、nは2〜5である)を有するブロモケトン、化合物30で開始させて合成することができる。
【0080】
【化11】

【0081】
スキームHは、式Iで示される化合物(Zが−(CH2nCO−である)の製剤方法を説明する。工程H1において、適切なメトキシカルボニルで置換された複素環36を、溶媒(例えばTHF、または、DME)中で、−78℃〜室温の範囲の温度で、t−ブチルアセタートのリチウムエノラート(2当量)で処理し、ケトアセタート中間体37を提供することができる。工程H2において、不活性溶媒中で、−10℃〜室温の温度での、37の塩基(例えば水素化ナトリウム)での処理、続いて得られたアニオンの求電子性物質(例えば13)でのアルキル化によって、さらに進んだ中間体ケトジエステル38が得られる。脱炭酸反応は工程H3に示され、まず、不活性溶媒(例えばジクロロメタン)中で38をTFAで処理し、続いて70℃〜150℃の温度で加熱分解して、中間体ケトエステル39を提供することによって達成することができる。39におけるケトンの官能性は、当業界周知の方法によって、工程H4で示されるように、ケタール40として保護される。次に、化合物40は、スキームB(B4およびB5)で説明されているような標準的な手順によって、工程H5〜H6で1,3,4−オキサジアゾール−2−オンケタール42に変換される。最終的に、工程H7において、42におけるケタールの官能性は、スキームG、工程G6で上述したように切断され、望ましい1,3,4−オキサジアゾール−2−オン、化合物43を得ることができる。
【0082】
【化12】

【0083】
生物学的な実施例:本発明の化合物の生物学的な特性を確認するために、以下の試験プロトコールを用いた。以下の実施例は、本発明をさらに説明するために示される。しかしながら、これらは、どのような形でも本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0084】
細胞ベースのPPARデルタ−GAL4分析におけるEC50値の決定
原理
アゴニストの様式でヒトPPARデルタに結合し、それらを活性化する物質の効力は、安定してトランスフェクションされたHEK細胞系(HEK=ヒト胎児腎臓)(本明細書においてPPARデルタレポーター細胞系と称する)を用いて解析された。PPARデルタレポーター細胞系は、2つの遺伝学的要素、ルシフェラーゼレポーター要素(pデルタM−GAL4−Luc−Zeo)、および、PPARデルタリガンドに依存してルシフェラーゼレポーター要素の表現を仲介するPPARデルタ融合タンパク質(GR−GAL4−ヒトPPARデルタ−LBD)を含む。安定して、かつ構成的に表現された融合タンパク質GR−GAL4−ヒトPPARデルタ−LBDは、PPARデルタレポーター細胞系の細胞核中で、GAL4タンパク質部分を介して、細胞系のゲノムに安定して統合されているルシフェラーゼレポーター要素のGAL4のDNA結合モチーフの5’上流に結合する。本分析で脂肪酸を枯渇させたウシ胎仔血清(cs−FCS)が用いられた場合、PPARデルタリガンドの非存在下では、ルシフェラーゼレポーター遺伝子はほんのわずかしか表現しない。PPARデルタリガンドは、PPARデルタ融合タンパク質に結合し、活性化し、および、それによって、ルシフェラーゼレポーター遺伝子の表現を刺激する。形成されるルシフェラーゼは、適切な基質を介した化学発光によって検出することができる。
【0085】
PPARデルタレポーター細胞系の構築
安定なPPARデルタレポーター細胞系の生産は、ルシフェラーゼレポーター要素で安定してトランスフェクションされた安定なHEK−細胞クローンに基づく。この工程はすでに、「PPARアルファレポーター細胞系の構築」の章で述べられている。第二の工程において、PPARデルタ融合タンパク質(GR−GAL4−ヒトPPARデルタ−LBD)を、この細胞のクローンに安定して導入した。この目的のために、糖質コルチコイド受容体のN末端の76個のアミノ酸をコードするcDNA(登録番号P04150)を、酵母転写因子GAL4(登録番号P04386)のアミノ酸1〜147をコードするcDNA断片に連結させた。ヒトPPARデルタ受容体(アミノ酸S139−Y441;登録番号L07592)のリガンド−結合ドメインのcDNAを、このGR−GAL4コンストラクトの3’末端でクローニングした。この方法で製造された融合コンストラクト(GR−GAL4−ヒトPPARデルタ−LBD)を、サイトメガロウイルスプロモーターにより構成的に表現させるために、プラスミドpcDNA3(インビトロジェン(Invitrogen))に再度クローニングした。このプラスミドを制限エンドヌクレアーゼで直線状にした、および、ルシフェラーゼレポーター要素を含む上述した細胞クローンに安定してトランスフェクションさせた。このようにして得られた、ルシフェラーゼレポーター要素を含み、PPARデルタ融合タンパク質(GR−GAL4−ヒトPPARデルタ−LBD)を構成的に表現するPPARデルタレポーター細胞系を、ゼオシン(0.5mg/ml)とG418(0.5mg/ml)を用いた選択によって単離した。
【0086】
分析法、および、評価
PPARデルタアゴニストの活性は、以下で説明される3日間の分析で決定された:
1日目
PPARデルタレポーター細胞系を培養し、以下の添加物:10%cs−FCS(ウシ胎仔血清;#SH−30068.03、ハイクローン(HyClone))、0.5mg/mlゼオシン(#R250−01、インビトロジェン)、0.5mg/mlのG418(#10131−027、インビトロジェン)、1%ペニシリン−ストレプトマイシン溶液(#15140−122、インビトロジェン)、および、2mMのL−グルタミン(#25030−024、インビトロジェン)と混合したDMEM(#41965−039、インビトロジェン)中80%の密集度にした。培養は、細胞培養インキュベーター中の標準的な細胞培養瓶(#353112、ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson))で、37℃で、5%CO2の存在下で行われた。80%密集度の細胞をPBS15ml(#14190−094、インビトロジェン)で1回洗浄し、トリプシン溶液3ml(#25300−054、インビトロジェン)で、37℃で2分間処理し、上述のDMEM5ml中に取り上げ、細胞計数器で計数した。500,000細胞/mlに希釈した後、35,000個の細胞を、透明プラスチックベースの96ウェルのマイクロタイタープレート(#3610、コーニング・コースター(Corning Costar))の各ウェルに180μLでシーディングした。このプレートを、細胞培養インキュベーター中で、37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。
【0087】
2日目
試験されるPPARデルタアゴニストを、濃度10mMのDMSOに溶解させた。このストック溶液を、5%cs−FCS(#SH−30068.03、ハイクローン)、2mMのL−グルタミン(#25030−024、インビトロジェン)、および、上述した抗生物質(ゼオシン、G418、ペニシリン、および、ストレプトマイシン)と混合したDMEM(#41965−039、インビトロジェン)に希釈した。
【0088】
試験物質を、10μM〜100pMの範囲の11種の異なる濃度で試験した。より有力な化合物を、1μM〜10pM、または、100nM〜1pMの濃度範囲で試験した。
【0089】
1日目にシーディングしたPPARデルタレポーター細胞系の培地を吸引によって完全に除去し(またはそうでなくてもよい)、培地で希釈した試験物質を、細胞に即座に添加した。物質の希釈および添加はロボット(ベックマンFX(Beckman FX))によって行われた。培地で希釈した試験物質の最終容量は、96ウェルのマイクロタイタープレートのウェル1つあたり100μlとした。この分析におけるDMSO濃度は、溶媒の細胞傷害効果を防ぐために0.1%v/v未満とした。
【0090】
それぞれ個々のプレートにおいてこの分析が機能していることを実証するために、各プレートに、同様に11種の異なる濃度に希釈された標準PPARデルタアゴニストを入れた。分析プレートを、インキュベーターで、37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。
【0091】
あるいは、試験物質の10×最終濃度(20μL)を、平板培養した細胞を含む180μLに直接添加した。試験物質を、この分析プレートの構成で、8種の異なる濃度で、三連で試験した。
【0092】
3日目
PPARデルタレポーター細胞を、インキュベーターから取り出された試験物質で処理し、培地を吸引して除いた。96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェルにブライトGlo(Bright Glo)試薬(プロメガ(Promega)製)50μlをピペッティングして細胞を溶解させた。室温で、暗所で10分間インキュベートした後に、マイクロタイタープレートを、ルミノメーター(トリラックス(Trilux)、ワラック((Wallac)製))で測定した。マイクロタイタープレートの各ウェルの測定時間は1秒とした。
【0093】
評価
ルミノメーターからの生データを、マイクロソフトエクセル(Microsoft Excel)のファイルに移した。PPARアゴニストの用量−作用のプロット、および、EC50値を、XL.Fitプログラムを製造元(IDBS)が説明している通りにして用いて計算した。
【0094】
1nM以上、10μM未満の範囲のPPARデルタEC50値を、本願の実施例のPPARモジュレーターに関して測定した。式Iで示される本発明の化合物は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することが可能である。以下、部分アゴニストまたはアンタゴニスト活性を決定するための分析を説明する。
【0095】
PPARデルタ受容体における部分アゴニストまたはアンタゴニストの有効性の決定
この分析では、化合物が、PPARデルタ受容体において部分アゴニストまたはアンタゴニストとして作用するかどうかを決定した。
分析プレートの平板培養および回収は、上記の1日目および3日目で説明した通りである。
【0096】
2日目
部分アゴニストまたはアンタゴニスト、および、既知の選択的アゴニストを、10%cs−FCS(#SH−30068.03、ハイクローン)、2mMのL−グルタミン(#25030−024、インビトロジェン)、および、上述した抗生物質(ゼオシン、G418、ペニシリン、および、ストレプトマイシン)と混合したDMEM(#41965−039、インビトロジェン)で、望ましい最終濃度の20倍に希釈した。この細胞を含む分析プレートに、部分アゴニストまたはアンタゴニスト(10マイクロリットル)を添加した。分析プレートを、インキュベーターで、37℃、5%CO2で、30分間インキュベートした。次に、部分アゴニストまたはアンタゴニストをプレインキュベートした後、20倍の既知の選択的アゴニスト(10マイクロリットル)を添加した。分析プレートを、インキュベーターで、37℃、5%CO2で、24時間インキュベートした。既知の選択的アゴニストEC50に対する作用を、それぞれの部分アゴニストまたはアンタゴニスト濃度について測定した。
【0097】
SPA PPARデルタ−LBD結合分析
ストック溶液
1Mトリス(pH=8.0またはpH=7.6)(ジーン・メディシン・ストック・ルーム(Gene Medicine Stock Room))
2M KCl(N2140において粉末)
トゥイーン(Tween)20
100mM DTT
13.9μMのGW2331(熱いEtOH中)
10mMのGW2331(冷たいDMSO中)
PPAR−アルファ(様々な濃度)
例えば:.884μg/μl
【0098】
洗浄緩衝液:(4℃で保存。緩衝液は1週間有効)
10mMトリス(pH=7.6または8) 10ml
50mM KCl 25ml
0.05%トゥイーン20 0.5ml
ミリポア(Millipore)水 964.5
チェックpH=7.6
【0099】
結合緩衝液:(そのつど新しい結合緩衝液を準備した)
洗浄緩衝液 50ml
10mMのDTT 5.5ml
【0100】
1プレートのための反応試薬の製造:
グルタチオンでコートしたSPAビーズ
それぞれSPAビーズのボトルには、ビーズ500mgが含まれていた;
SPAビーズ500mgを洗浄緩衝液5ml中で再生させた(2〜3週間有効と予想される);
4℃で保存した。
【0101】
結合緩衝液で希釈したSPAビーズを作製した
上記で再生したSPAビーズ1mlを、結合緩衝液60mlに添加した;
上記の希釈したビーズ20μlを96−ウェルプレートの各ウェルに添加した。
上記で各プレートについて希釈したビーズ2mlを使用した(無効な体積は含まれていない)。
3H GW−2331と、GST−PPARデルタ−LBDを、3.0ml/プレートの量で(無効な体積含む)、13.9μM、40nM/ウェルとした(1つの96−ウェルプレートあたり、無効な体積なし)
3H−GW2331の特異的な活性が、1mci/ml(アマシャム(Amersham)製)の場合、3H GW−2331(17μl)を、結合緩衝液(=.08μM)3.0mlに希釈した。
タンパク質濃度が1mg/mLである場合、タンパク質21μlを、結合緩衝液3.0mlに添加した。
【0102】
要約すると:1つの96−ウェルプレート:結合緩衝液(3000μL)+3H−GW2331(17μL)+GST−PPAR−デルタ(21μL)(1mg/ml)である。
【0103】
コントロールプレート
96−ウェルのマザープレート(2つのコントロールプレート用)
カラム#1
ウェルE〜Hに、冷GW2331(10mM)5μlを添加した。
ウェルA〜Hに、DMSO45μLを添加した。
【0104】
カラム#12(3倍希釈)
ウェルAに、冷GW2331(10mM)10μLを添加した。
次に、ウェルAに、DMSO90μlを添加し、この溶液をよく混合した。
ウェルB〜Hに、DMSO20μlを添加する。
ウェルA〜Bから溶液10μlを分取し、よく混合し、
次に、B〜Cから溶液10μlを分取し、よく混合し、
次に、C〜Dから溶液10μlを分取し、よく混合し、
最終的に、F〜Hから10μlを分取した。
【0105】
コントロールプレート(8つの反応プレート用)
コントロールプレートは、マザープレートの1:10希釈であった。希釈緩衝液は、洗浄緩衝液とした。
【0106】
サンプルプレート
新しいCPCライブラリープレートに、DMSO90μlを添加した。
DMSO希釈液を10μl分取し、それを、サンプルプレート中で洗浄緩衝液90μlに添加した。
【0107】
反応プレート
反応プレートの各ウェルに、GST−PPAR−デルタと共に、SPAビーズ20μl、および、3H−GW2331(30μl)を添加した。
サンプルプレートの各ウェルからの化合物5μlを、反応プレートのカラム2〜11に添加した。
コントロールプレートのカラム1とカラム12からの化合物5μlを、反応プレートのカラム1とカラム12に添加した。
【0108】
96−ウェルSPAプロトコール
反応プレートを20分間〜2時間平衡化させた。
プレートを密封し、その後、マイクロベータ(Microbeta)カウンター(ワラック)で計数した。
IC50を計算した。
【0109】
SPAのPPARデルタ−LBD結合分析において、1nM以上、10μM未満の範囲のIC50値を、本願における実施例のPPARモジュレーターに関して測定した。式Iで示される本発明の化合物は、アゴニストまたはアンタゴニストとして作用することが可能である。
【0110】
ラット/マウス希突起膠細胞培養
細胞の調製
1.一次ラット希突起膠細胞の前駆細胞を、新生児(出生後2〜3日)ラット、または、マウスの新皮質から得て、さらに、小グリア細胞を除去した後に、元々McCarthyおよびde Vellis(1980年)で説明されている技術の改変法を用いて、星状細胞の単分子層から機械的に分離することによって高濃度化した。
2.新生児のラットの脳から髄膜を除去し、組織を機械的に解離させた。細胞をT75フラスコで平板培養し、細胞にDMEM/F12+10%FBSを与えた。
3.星状細胞が敷き詰められた層で成長した乏突起膠細胞を、はじめの調製日から14日後に、シェイキング・オフ(shaking−off)法で回収した。懸濁液を遠心分離し、細胞ペレットを、以下の成長因子:血小板由来成長因子−AA(PDGF)、および、線維芽細胞増殖因子−2(FGF)が追加された血清非含有培地(SFM;DMEM、以下を含む:25μg/mlトランスフェリング(transferring)、30nMトリヨードチロニン、20nMヒドロコルチゾン、20nMプロゲステロン、10nMビオチン、1×微量元素、30nMセレン、1μg/mlプトレシン、0.1%BSA、5U/mlペンストレップ(PenStrep)、10μg/mlインスリン)に再懸濁した。
4.細胞をPDLでコーティングされた培養皿で平板培養し、37℃で、6〜7%CO2で、インキュベートした。
5.培地成分を48時間ごとに置き換え、細胞を元の状態に維持した。
【0111】
スクリーニング分析のために細胞数を増加させるための前駆細胞の継代
1.培養物が密集してきたら、培養物をPBSでリンスし、トリプシンを添加し、37℃で〜2〜3分間インキュベートした。
2.この細胞懸濁液を中和し、900gで5分間遠心分離した。
3.細胞ペレットをSFM+PDGF/FGFに再懸濁した。
4.細胞に新しい成長因子を48時間ごとに与え、前駆細胞に迅速に分割させるために高濃度を維持した。
5.実験分析の前に、細胞をたかだか4〜5回継代させた。
6.希突起膠細胞の前駆細胞が関与する実験は全て、これらの条件下で継続的に維持された細胞を用いて行われた。全ての細胞の95%超が、A2B5免疫陽性でり、さらに、2’3’−環状ヌクレオチド3’−ホスホジエステラーゼII mRNAを表現した。
7.成熟した乏突起膠細胞を生成させるために、平板培養してから24時間後に、前駆細胞をSFM(IGF−I含有または非含有)に切り替え、実験分析の7日前に、これらの条件下で成長させた。
8.あるいは、高濃度化されたラットの中枢のグリア−4(Glia−4,CG4)前駆細胞系を用いて、B−104神経芽細胞腫細胞系由来の30%調整培地が追加された基礎培地(DMEM、以下を含む;2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、ビオチン(40nM)、インスリン(1μM)、および、N1)中で維持してもよい。分化を誘導するために、CG4細胞の培地を、1%ウシ胎仔血清(2日間後に除去した)、および、インスリン(500nM)を含む基礎培地に切り替えた。A2B5、および、MBP免疫反応性を用いて、未成熟の培養物および成熟した培養物それぞれにおいて、95%を超えて高濃度化されたことを確認した。
【0112】
ラット/マウス培養物の化合物での処理
1.細胞を10,000〜15,000細胞/ウェルで24ウェルのPDLでコーティングされたプレートに置き、細胞をマイトジェン(10ng/ml)の存在下で一晩培養した。
2.マイトジェンの存在下で:
a.次の日、古い培地を除去し、新しい培地(マイトジェン含有)中で化合物を添加した。
b.化合物の用量反応の評価は、6種の異なる濃度(10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、および、0.1nM)で行われた;
c.各化合物濃度に対して3連のウェルで実験した。
3.マイトジェンの非存在下で:
a.次の日、古い培地を除去し、新しい培地(マイトジェン非含有)中で化合物を添加した。
b.化合物の用量反応の評価は、6種の異なる濃度(10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、および、0.1nM)で行われた;
c.各化合物濃度に対して3連のウェルで実験した。
4.実験分析で使用する7日前に、処理した細胞を培養した。
【0113】
ヒト希突起膠細胞培養
細胞の調製
1.ヒトニューロスフェア(E19.5−E22ヒト胎児皮質から回収された)を、前駆培地:PDGF、および、FGFが追加されたDMEM/F12(100μg/mlトランスフェリング、30nMトリヨードチロニン、20nMヒドロコルチゾン、20nMプロゲステロン、10nMビオチン、1×微量元素、30nMセレン、60μMプトレシン、0.1%BSA、5U/mlペンストレップ、25μg/mlインスリン)で2週間培養した。
2.20U/mlパパインを37℃で30〜50分間用いてニューロスフェアを解離した。
3.細胞を、50,000〜100,000細胞/ウェルの密度で、PDLでコーティングされた培養皿で、PDGF/FGFを含む前駆培地中で平板培養し、37℃、5〜6%CO2でインキュベートした。
4.48時間ごとに培地と成長因子を補充した。
【0114】
ヒト培養物の化合物での処理
1.平板培養の24〜48時間後に、古い培地を除去し、新しい培地(マイトジェン含有)に化合物を添加した。
2.化合物の用量反応の評価は、3〜6種の異なる濃度(10μM、1μM、100nM、10nM、1nM、および、0.1nM)で行われた。
3.各化合物濃度に対して3連のウェルで実験した。
5.実験分析で使用する7日前に、処理した細胞を培養した。
【0115】
ラット/マウス/ヒト希突起膠細胞に特異的な免疫染色
化合物と接触させた後、希突起膠細胞に特異的な抗体を用いて、希突起膠細胞の分化を加速/促進する化合物の能力を評価した(例えば、O4、O1またはミエリン塩基性タンパク質の免疫反応性は、化合物で治療した培養物から未処理の培養物までの時間にわたった)。
1.細胞を、ポリ−D−リシンで処理した4−ウェルのチャンバースライドで、5×10
3〜20×103細胞/ウェルで平板培養し、上述のようにして成長させた。PDGFおよびFGF非含有でのインビトロでの毎日の測定に従って、細胞の分化の程度が高まるにつれて希突起膠細胞群を連続的に染色した。
2.37℃で30分間の生染色を用いて、希突起膠細胞の段階に特異的な細胞表面マーカー(例えばA2B5、O4、および、O1など)の表現を検出した。
3.その後、細胞を、4%パラホルムアルデヒドで、室温で10分間で固定した。
4.固定染色手法を用いて、希突起膠細胞の段階に特異的な細胞表面マーカー(例えばミエリン塩基性タンパク質、MBPなど)の表現を検出した。
5.PBSでリンスした。
6.1×PBSで希釈した0.1%トリトン/0.01%NaAzを室温で10分間、浸透させた。
【0116】
7.抗体希釈緩衝液(0.1%トリトン−X100、および、1%IgG非含有ウシ血清アルブミン;抗体を希釈するのにも用いた)中の5〜10%ヤギ血清で、室温で15分間ブロックした。
8.抗体希釈緩衝液で希釈した一次抗体を添加した。
9.穏やかに揺らしながら、4℃で一晩インキュベートした。
10.次の日、PBSで1×5分間、続いて3×15分間(それぞれ室温で)リンスした。
11.適切な二次抗体と共に、室温で45分間インキュベートした。
12.細胞核を、4,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を用いて、室温で15分間染色した。
13.PBSで数回リンスし、蛍光顕微鏡を用いて評価した。
14.以下の条件を、長時間かけて、さらに異なる化合物用量で比較した:PDGF/FGF単独、SFM単独、SFM−IGF1単独、PDGF/FGFと化合物、SFMと化合物。
【0117】
ラット/マウス/ヒトのブロモデオキシウリジン(BrdU)免疫染色
化合物が細胞増殖を促進しないことを確認するために行われた
1.希突起膠細胞の前駆細胞を10μMのBrdUで20時間標識し、次に、70%エタノール、または、4%パラホルムアルデヒドのいずれかで固定した。
2.PBSでの洗浄を3回はさんで、ビオチン化したマウス抗BrdU、および、ストレプトアビジン−ペルオキシダーゼで連続的に細胞をインキュベートした。
3.DABを用いてBrdU免疫反応性の比色的な可視化を行ない、総細胞数をカウンターを用いて評価した(染色はヘマトキシリン)。
4.2回の独立した観察でBrdU免疫陽性細胞を計数した。
【0118】
ラット/マウス/ヒト培養物の画像解析:蛍光顕微鏡を用いて、化合物と接触させた後の希突起膠細胞の分化の程度を定量した。この分析により、選択的アゴニストが、乏突起膠細胞の分化を加速/促進することが示された。
1.手動での細胞の計数:各実験条件あたり4ヶ所のフィールドをランダムに選択し、各フィールドで500〜600個の細胞を計数した。DAPI陽性細胞(総細胞数)細胞に対するMBP(またはO4)免疫陽性細胞(ミエリン鞘を有する、または有さない成熟したプロセスで生産された細胞)のパーセンテージを、コントロールと薬物で処理した群とで比較した。
2.自動の細胞の計数:蛍光顕微鏡を用いて、化合物と接触させた後の希突起膠細胞の分化の程度を定量した。6ヶ所のフィールド/ウェルをランダムに選択して、総個体群(〜8〜15×103細胞を計数した/ウェル)のうちの分化している乏突起膠細胞の数を評価した。免疫蛍光法の画像は、ツァイス・アキシオカムHRc(Zeiss AxioCam HRc)を備えたツァイス・アキシオビジン(Zeiss AxioVision
)デジタルイメージングシステムを用いて、上記顕微鏡に冷却したCCDカメラを連結して得た。全ての顕微鏡のイメージングパラメーターは、細胞の免疫蛍光強度の解析のための画像が得られるように設定された。全ての細胞(DAPIで核染色された)に対するMBP陽性(分化した)細胞のパーセンテージを、コントロールと薬物で処理した群とで比較した。このイメージング条件下では、細胞の自己蛍光は検出できなかった。
3.ヒト希突起膠細胞の分化の分析:O4免疫陽性細胞/ウェルを手動で総数した(二極、および、多極)。
【0119】
ラット/マウス/ヒトの定量ポリメラーゼ連鎖反応(PCR):化合物で誘導されたPPARデルタ経路の活性化、および、希突起膠細胞の成熟の程度を評価するために行なわれた(mRNAレベルの変化)。
1.トリゾール(TriZol)試薬を用いてトータルRNAを、培養した乏突起膠細胞から抽出した。
2.その後、mRNAをRNアーゼ非含有DNアーゼで処理し、再度精製し、次に、RT反応(クロンテック(Clontech)のPCRキットのためのアドバンテージRT(Advantage RT))を用いてcDNAテンプレートに変換した。
3.SybrグリーンPCRマスターミックス(Sybr Green PCR Master Mix)を用いてPPARデルタ経路の構成要素の転写表現を定量した。
4.18SリボゾームRNAプライマー/プローブミックス(186bpの産物生成物)をTaqman2XPCRマスターミックスに懸濁し、これを、インターナルコントロールとして用いた。
5.定量PCRは、リアルタイムTaqmanTM技術(Gibson等、1996年)を用いて、モデル7700配列検出システム(アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)、フォスターシティー、カリフォルニア州)を用いて行なった。
6.配列検出システムソフトウェア・バージョン1.91を用いて結果を解析した。
【0120】
ラットELISA分析:化合物で誘導されたPPARデルタ経路の活性化、および、希突起膠細胞の成熟の程度を評価するために行われた(タンパク質レベルの変化)。
1.プレートをPBSで洗浄し、次に、氷上で維持した。氷冷した溶解緩衝液(トリス50mM、pH7.4、MgCl2 2mM、EDTA1mM、β−メルカプトエタノール5mM、ノニデット(Nonidet)P−40 1%、プロテアーゼ阻害剤カクテル(ロシュ(Roche)):1錠/50ml)200μlを各ウェルに添加した。
2.ピペットを上下させて用いることによって細胞を溶解させ、2000rpmで、4℃で5分間プレートを回転させた。上清をすぐ使用できるようにした。
3.標準コントロールおよびサンプル50μlをウェルにピペットで入れた。
4.MBP分析緩衝液50μlを各ウェルに添加した。
5.回転式マイクロプレート振盪機で、500〜700rpmで撹拌してウェルを室温で2時間インキュベートした。
6.MBP抗体−ビオチン結合体100μlを各ウェルに添加した。
7.ウェルを、回転式マイクロプレート振盪機で500〜700rpmで撹拌して室温で1時間インキュベートした。
【0121】
8.洗浄溶液でウェルを5回洗浄した。吸収材上でプレートを逆転させ水気を切って乾燥させた。
9.ストレプトアビジン−酵素結合体の濃縮物を、MBP ELISA分析緩衝液で1:50に希釈した。(分析で使用する直前に希釈しなければならない)。
10.ストレプトアビジン−酵素結合体の溶液100μlを各ウェルに添加した。
11.回転式マイクロプレート振盪機で、500〜700rpmで撹拌してウェルを室温で30分間インキュベートした。
12.洗浄溶液でウェルを5回洗浄した。吸収材上でプレートを逆転させ水気を切って乾燥させた。
13.TMBクロモゲン溶液100μlを各ウェルに添加した。
14.回転式マイクロプレート振盪機で、500〜700rpmで撹拌してウェルを室温で10〜20分間インキュベートした。直射日光に触れないようにした。
15.停止溶液100μlを各ウェルに添加した。
450nMに設定されたマイクロプレートリーダーを用いて、30分間以内にウェル中の溶液の吸光度を読み取った。
【0122】
インビボでのコンセプトモデルの証明
病巣の損傷:(化合物がミエリンの無傷な状態を保護するかどうか、または、再ミエリン化の速度を促進/強化するかどうかを評価するために用いられた)。
1.7週齢のラットに自由に餌と水を摂取させ、実験で使用する前に最低4日間順応させた。
2.外科手術の前に、各動物の重さを量った。次に、ケタミン(100mg/ml)とキシラジン(20mg/ml)とを1.8:1の比率で併用してラットを麻酔した。外科手術の前に、ラットの腹腔内に0.15ml/180g体重の麻酔剤の溶液を注射した。IACUCガイドラインに従って、外科手術のために無菌状態で動物を準備した。全ての外科機器をオートクレーブした。毛を耳の間で挟み、この領域をベタダインでこすり、滅菌生理食塩水で洗い、最後に予め包装された滅菌アルコール綿棒で拭いた。
3.外科手術のために、ラットを、頭部を安定して固定されるように設計された小動物用の定位機器にその腹面を置いた。SDラットの頭蓋の位置がフラットになるように示されているため、切歯のバーは、常に−3.9mmに設定された。
4.耳の間の頭蓋を覆う皮膚(予め毛を剃った)に切開術を施した。
5.骨の小さい領域(直径0.75mm)に、以下の座標:ラムダからAP−1.8、ML−3.1に穴を開けた。
【0123】
6.骨を除去し、ラットの右の尾側の小脳脚、DV−7.1mmに、ハミルトン(Hamilton)μl注射器および注射針によって2μlのエチジウムブロマイド、リゾレシチンまたはSIN−1を2分かけて注射した。あるいは、脊髄、脳梁または皮質に注射した。
7.さらに2分間、注射針をそこに留置した。
8.注射針を引き抜いた後、切開部を縫合した。
9.各ラットの後肢に、ブプレノルフィン0.003mgを筋肉内注射した。
10.ラットを意識が回復するまで暖かい棚に置いた。意識が回復したら、それらを飼育ケージに戻した。ラットが互いの縫合糸を引っ張り合うと予想されるため、1ケージあたりのラット数は、2匹以下とした。
11.マウスを用いて、類似の手法も行なわれた。
【0124】
ラットの実験的アレルギー性脳脊髄炎(ラットEAE)病気モデル
実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)は、感染しやすい動物で、脊髄ホモジネート全体、または、成分(ミエリン塩基性タンパク質)のいずれかで感作させた後に発症する神経系のT細胞介在の自己免疫疾患である。EAEげっ歯類モデルは、MS患者で観察された脳および脊髄の炎症を研究するのに適したツールである。齧歯類において、脊髄全体または脊髄の成分(例えばミエリン塩基性タンパク質)を注射すると、Tリンパ球の活性化に基づく自己免疫反応が誘導される。典型的には、臨床疾患は、接触させた後の8〜10日目ごろに顕著になり、これは、軽度の歩行困難や尾の緊張減退から、完全麻痺や死に至る広範囲の行動異常として観察される。典型的には、体重減少が起こる。生き延びた動物において、自発的な回復が起こるが、多くの運動機能の回復のばらつきを伴う。種、アレルゲンおよび用いられる方法論に応じて、EAEモデルで試験される動物は、単一の(急性EAE)、または、数種の(慢性の再発性EAE)の攻撃を受ける可能性がある。数種の治療パラダイムを用いてもよい:選択された薬物または治療の投与は、免疫化の前、非症状出現期中、または、臨床疾患中のいずれでもよい。
【0125】
動物
雌ルイス(Lewis)ラット、160〜220g(チャールス・リバー(Charles River))
【0126】
抗原
モルモット脊髄全体(ハーラン・バイオサイエンス(Harlan Biosciences))、
完全フロイントアジュバントH37Ra[1mg/mlマイコバクテリウム結核H37Ra](ディフコ(Difco))。
【0127】
追加抗原
マイコバクテリウム結核(ディフコ(Difco))、
ボルデテラ・ペルツッシス(Bordetella Pertussis)[加熱死菌](ディフコ(Difco))。
【0128】
抗原の製造:(動物約720匹用の)
1.凍結させたモルモット脊髄を5グラム量った。
2.丸底の遠心管中で、脊髄5gを0.9%食塩水(1g/ml)5mlに添加した。
3.氷上で、ティッシュ−テック(Tissue−tech)を用いて、組織が完全に破壊されるまで(約5分間)ホモジナイズした。
4.マイコバクテリウム結核(20mg/ml完全フロイントアジュバントH37Ra)200mgが追加された完全フロイントアジュバントH37Ra(10ml)を添加した。
5.18ゲージのエマルジョンニードルを備えた10ml注射器に吸引させることによって、遠心管からホモジネート/アジュバントを抽出した。
6.2つの30mlガラス製注射器の間で、材料が注射針を通過させることが継続しにくくなるまで乳化した。(約5分間{油相と水相とは分離しないようにしなければならない})。
7.即座に使用するか、または、必要になるまで氷上で維持した(30分間を超えない)(凍結させない)。
【0129】
プロトコール
1.雌ルイスラット(チャールス・リバー)に自由に餌と水を摂取させ、実験で使用する前に最低3日間順応させた。
2.まず、体重160および220グラムのラットで、5%イソフルラン(アーラン(Aerrane)、フォートドッジ)、30%O2、70%N2Oで2〜5分間誘導した。
3.次に、ラットを、循環水で加熱する毛布(ゲイマー(Gaymar))上で(背面を上にして)、麻酔ガスの自発呼吸のためのノーズコーン中に置いた。イソフルランを2%に減少させた。
4.抗原または生理食塩水のいずれかの2回の皮下注射(各0.1ml)を、後肢の腹側表面に与えた。
5.ノーズコーンから動物を離し、重さを量り、番号を付けた。
6.ラットを麻酔から覚醒させ、それぞれのケージに入れた。
7.動物を、EAE誘導の兆候に関して毎日観察した(以下の基準を参照)。
【0130】
ステージ:0 正常
ステージ:1 異常なゲート、および、尾の緊張減退
ステージ:2 後肢の片方または両方の軽度だが明確な衰弱
ステージ:3 後肢の片方または両方の重度の衰弱、または、軽度の運動失調
ステージ:4 重度の対不全麻痺、および、最小の後肢の動き
ステージ:5 後肢の動きなし、および、対麻痺
ステージ:6 自発的な動きがない瀕死状態、および、呼吸機能の障害。前肢の関与の程度の増加、および、尿および便失禁が起こる場合もある
ステージ:7 死亡。
【0131】
免疫化の10日後に治療を開始した。このモデルにおける疾患の症状は、典型的には、接触の10〜11日後に現れるため、このタイムポイントが、MSの急性発症の初期のフェーズを示すと考えることができる。これは、このようにして治療開始を遅らせることで、従来用いられてきた接触時または接触の前に薬物が投与されるプロトコールよりも厳密に、臨床症状を模擬していると判断されている(Teitelbaum D.等,Proc Natl Acad Sci USA 1999年;96:3842〜3847、および、Brod S.A.等,Ann Neurol 2000年;47:127〜131)。
【0132】
以下の本明細書で用いられる化合物の実施例によって本発明をさらに説明するが、これらは説明のために提供されるのであって、本発明の範囲を限定するものではまったくない。
【0133】
合成例
一般的な市販の試薬と溶媒を入手時のまま用いた。1H NMRスペクトルを、バリアン(Varian)のマーキュリー・プラス(MercuryPlus)−300(300MHz)、または、バリアンのユニティ・イノーヴァ(Unity Inova)(400MHz)スペクトロメーター(指定通りに)で記録した。プロトンの化学シフトは、内部標準テトラメチルシラン(0.0ppm)に対する相対値(δppm)で報告した。MS(LC−MS)データは、マイクロマス(Micromass)のLCT飛行時間型マススペクトロメーターを用いて、エレクトロスプレーイオン化、および、5分間のデータ捕捉時間(m/z100〜1000)で得た。LC(LC−MS)は、ハイパーシル(Hypersil)C18カラム(4.6×50mm、3.5μ)((A)H2O中の0.1%TFA、および、(B)ACN中の0.1%TFAの移動相を使用、濃度勾配は、5%〜100%Bを3分間かけて、続いて(B)100%を2分間)を用いて行われた。あるいは、エレクトロスプレー源を備えたプラットフォームLC−MSを、HP1100LCシステムと共に、インラインHP1100DAD検出、および、セデックス(SEDEXELS)検出を用いた2.0ml/分、200μL/分のESI源へのスプリットで稼働させて用いてもよい。ルナ(Luna)C18(2)カラム(30×4.6mm、3μ)が用いられた(濃度勾配は、4.5分間かけて5%〜95%B、移動相は、(B)H2O中の0.1%ギ酸、および、ACN中の0.1%ギ酸)。HPLC精製は、バリアンのプロスター(ProStar)システムで、逆相C18カラムを用いて行った(直線状の濃度勾配は、0.1%トリフルオロ酢酸を含むACN/H2Oを用いた)。マイクロ波合成はパーソナル・ケミストリー・スミスクリエーター(Personal Chemistry Smithcreator)マイクロ波反応システムを用いて、2または5mLの反応装置容器を用いて行われた。
【0134】
実施例1
【化13】

中間体:[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−酢酸エチルエステル
4−トリフルオロメチル−ベンゼン−チオアミド(1.845g、9mmol)のエタノール(15mL、200プルーフ)の溶液に、エチル−4−ブロモ−3−オキソ−ペンタノエート(2.07g、9mmol)を添加した。この溶液を密封し、溶液をパーソナル・ケミストリーTM高周波レンジで170℃に温め、この温度で20分間撹拌した。得られた溶液を室温に冷却し、減圧下で濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(ヘプタン中の30%酢酸エチル/10%ジクロロメタンで溶出)、表題の化合物を白色の固体として得た(1.4g)。
MS (ESI) m/z 330 (M+H); H1 NMR (CDCl3) δ 1.87 (bs, 1H), 2.49 (s, 3H), 4.86 (s, 2H), 7.67 (d, J=8Hz, 2H), 8.02 (d, J=8Hz, 2H)。
【0135】
実施例2
【化14】

中間体:4−(2−ヒドロキシ−エチル)−5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)チアゾール
水素化リチウムアルミニウム溶液(5.3mL、1MTHF溶液)を冷却し(0℃)、[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−酢酸エチルエステル(実施例1、1.4g、4.25mmol)のTHF(15mL)溶液を添加した。添加が完了したら、冷却槽を取り外し、2時間撹拌した。この溶液を5℃に冷却し、次に、水(0.2mL)、続いて NaOH溶液(0.2mL、5M水溶液)、および、水(0.2mL)を滴下して添加した。得られた混合物を酢酸エチルで希釈し、次に、セライトのパッドでろ過した。固体をジクロロメタンで洗浄し、次に、合わせたろ液を減圧下で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(ヘプタン中の30%酢酸エチル40%ジクロロメタンで溶出)、表題の化合物を黄色の固体として得た(0.879g)実施例1の化合物を出発原料として用いて、表題の化合物を得た。
MS (ESI) m/z 288 (M+H); H1 NMR (CDCl3) δ 2.44 (s, 3H), 2.91 (t, J=7Hz, 2H), 3.62 (t, J=6Hz,1H), 4.01 (dt, J=7, 6Hz, 2H), 7.66 (d, J=8Hz, 2H), 7.96 (d, J=8Hz, 2H)。
【0136】
実施例3
【化15】

中間体:4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イルエトキシ]−安息香酸メチルエステル
4−(2−ヒドロキシ−エチル)−5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)チアゾール(実施例3、288mg、1.0mmol)のTHF(3mL)の溶液に、4−ヒドロキシ−安息香酸メチルエステル(167mg、1.1mmol)、続いてトリフェニルホスフィン(288mg、1.1mmol)を添加した。この溶液に、アゾジカルボン酸ジエチル(174μL、1.1mmol)を滴下して添加した。添加が完了したら、得られた赤い溶液を20分間撹拌した。減圧下で濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィーで精製し(ヘプタン中の15%酢酸エチル/15%ジクロロメタンで溶出)、表題の化合物を白色の固体として得た。(410mg)。
MS (ESI) m/z 422 (M+H); H1 NMR (DMSO) δ 2.51 (s, 3H), 3.19 (t, J=7Hz, 2H), 3.80
(s, 3H), 4.40 (t, J=7Hz, 2H), 7.05 (d, J=9Hz, 2H), 7.83 (d, J=8Hz, 2H), 7.88 (d, J=8Hz, 2H) 8.05 (d, J=8Hz, 2H)。
【0137】
実施例4
【化16】

中間体:4−{2−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−エトキシ}−安息香酸ヒドラジド
メタノール(3mL)中の4−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イルエトキシ]−安息香酸メチルエステル(実施例4、410mg、1mmol)の懸濁液に、無水ヒドラジン(0.32ml、10mmol)を添加した。得られた混合物を60℃に温め、この温度で66時間撹拌した。得られた溶液を室温に冷却し、3滴の水を添加した。沈殿物ろ過し、エーテルで洗浄し、表題の化合物を得た(279mg)。
MS (ESI) m/z 422 (M+H); H1 NMR (DMSO) δ 2.51 (s, 3H), 3.17 (t, J=7Hz, 2H), 4.36
(t, J=7Hz, 2H), 4.38 (bs, 2H), 6.98 (d, J=9Hz, 2H), 7.77 (d, J=9Hz, 2H), 7.83 (d, J=8Hz, 2H) 8.06 (d, J=8Hz, 2H) 9.58 (bs, 1H)。
【0138】
実施例5
【化17】

5−(4−{2−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−エトキシ}−フェニル)−3H−[1,3,4]オキサジアゾール−2−オン
ジクロロメタン(4mL)中の4−{2−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−エトキシ}−安息香酸ヒドラジド(実施例4、276mg、0.65mmol)の懸濁液に、ピリジン(104μL、1.3mmol)、続いてクロロギ酸フェニル(0.88μL、0.71mmol)を添加した。得られた混合物を、全ての出発原料が消費されるまで(TLC分析により)室温で撹拌した。この混合物を酢酸エチルで希釈し、水、続いてブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。残留物をアセトニトリル(5mL)に溶解させた。この混合物に、DBU(106μL、0.71mmol)を添加した。得られた溶液を密封し;それをパーソナル・ケミストリーTM高周波レンジで170℃に温め、この温度で120分間撹拌した。反応液を室温に冷却し、酢酸エチルで希釈し、1MのHCl溶液(または飽和NaH2PO4溶液)で洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濃縮した。得られた残留物をジクロロメタンで数回粉砕し、表題の化合物を黄褐色の固体として得た(137mg)。(密封した試験管中で、140℃で、酢酸エチルから再結晶化した)。
MS (ESI) m/z 448 (M+H); H1 NMR (DMSO) δ 2.51 (s, 3H), 3.19 (t, J=7Hz, 2H), 4.40
(t, J=7Hz, 2H), 7.10 (d, J=8Hz, 2H), 7.70 (d, J=8Hz, 2H), 7.83 (d, J=8Hz, 2H) 8.05 (d, J=8Hz, 2H) 12.41 (bs, 1H)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】

[式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、該フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または−(CH2n−Y−(CH2n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択され;
ただし、Zが−O(CH2n−、または、−SO2(CH2n−であり、アリールがフェニルである場合、R2は、フェニル以外である]
で表わされる化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩。
【請求項2】
アリールは、フェニルであり;そして、
Xは、OまたはSである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xは、Oである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
5−(4−{2−[5−メチル−2−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−チアゾール−4−イル]−エトキシ}−フェニル)−3H−[1,3,4]オキサジアゾール−2−オンである化合物。
【請求項5】
有効量の請求項1に記載の化合物、および、製薬上許容できるキャリアーを含む医薬組成物。
【請求項6】
哺乳動物において、PPARデルタリガンド結合活性で調節することができる疾患を治療する方法であって、該疾患を有する該哺乳動物に、治療上有効な量の式I:
【化2】

[式中、
アリールは、フェニルまたはピリジニルであり、ここにおいて、該フェニルまたはピリジニルは、場合により、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニル、
からなる群より選択される1またはそれ以上の置換基で置換されており;
Zは、−O(CH2n−、−SO2(CH2n−、−(CH2n−Y−(CH2n−、−(CH2n−CO−、−O(CH2n−CO−、または、−(CH2n−Y−(CH2n−CO−であり、ここにおいて、Yは、NR3、OまたはSであり、R3は、H、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、C1-6アルキルC3-8シクロアルキル、および、ベンジルからなる群より選択され、nは、独立して、1〜5の整数であり;
Xは、NR3、OまたはSであり、ここにおいて、R3は、上記で定義された通りであり;
1は、H、ハロゲン、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、ニトロ、シアノ、および、C1-6アルキルアミノであり;そして、
2は、置換された、または、非置換のフェニル、ピリジニルまたはチエニルであり、ここにおいて、該置換基は、ハロゲン、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C1-6アルコキシ、C1-6ペルフルオロアルキル、C1-6アルキルチオ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-4アシルオキシ、ニトロ、シアノ、C1-6アルキルスルホニル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、および、C1-6アルコキシカルボニルからなる群より選択される]、で表わされる化合物、または、それらの立体異性体、互変異性体もしくは溶媒和物、または、それらの製薬上許容できる塩を投与することを含む、上記方法。
【請求項7】
アリールは、フェニルである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
アリールは、フェニルであり;そして、
2は、フェニルである、
請求項6に記載の方法。
【請求項9】
アリールは、フェニルであり;
Zは、−O(CH2n−であり;そして
2は、フェニルである、
請求項6に記載の方法。
【請求項10】
アリールは、フェニルであり;
Zは、−O(CH2n−であり;
Xは、OまたはSであり;そして、
2は、フェニルである、
請求項6に記載の方法。
【請求項11】
アリールは、フェニルであり;
Zは、−O(CH2n−であり;
Xは、OまたはSであり;
1は、C1-6アルキルであり;そして、
2は、フェニルである、
請求項6に記載の方法。
【請求項12】
Xは、Oである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
Xは、Sである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
病気は、多発性硬化症、シャルコー−マリー−ツース病、ペリツェウス−メルツバッハー病、脳脊髄炎、視神経脊髄炎、副腎白質ジストロトフィー、ギラン・バレー症候群、および、脊髄損傷、神経障害および神経損傷を含むミエリンを形成するグリア細胞が損傷を受ける障害からなる群より選択される脱髄疾患である、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
脱髄疾患は、多発性硬化症である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
病気は、肥満症、高トリグリセリド血症、高脂血症、低アルファリポタンパク血症、高コレステロール血症、異脂肪血症、シンドロームX、II型糖尿病、ならびに、ニューロパシー、腎症、網膜疾患および白内障、インスリン過剰血症、耐糖能異常、インスリン抵抗性、アテローム性動脈硬化症、高血圧、冠動脈心疾患、末梢血管疾患、または、うっ血性心不全からなる群より選択されるそれらの合併症からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2007−531764(P2007−531764A)
【公表日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506541(P2007−506541)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2005/010855
【国際公開番号】WO2005/097763
【国際公開日】平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願人】(500137976)アベンティス・ファーマスーティカルズ・インコーポレイテツド (76)
【Fターム(参考)】