説明

PSA方式高純度水素製造方法

【課題】本発明は、製品水素の損失を低減するとともに、改質ガスから高い回収率で高純度水素を回収可能なPSA方式高純度水素製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】第1のPSA装置2と、第2のPSA装置3と、高純度水素(製品水素)Cを一時貯蔵するバッファタンク4と、第2のPSA装置3から排出されるオフガスD中の水素を吸蔵放出するための水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5a、5b、5cとを備え、CO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに第1のPSA装置2の各PSA吸着塔2a、2b、2cの昇圧用ガスとして、水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素を用い、(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス及び第2のPSA装置3の各PSA吸着塔3a、3b、3cの昇圧用ガスとして、バッファタンク4内の高純度水素(製品水素)Cと水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池等に用いる高純度水素を効率良く製造する圧力スウィング吸着(以下、「PSA」という)方式高純度水素製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化防止対策ともあいまって、エネルギの原油依存体質からの脱却が世界的規模で重要課題となっており、環境保全に対する取組みが先行する欧州の先進国はもとより、米国や日本をはじめとするアジア諸国においても、水素ガスをエネルギ源とする燃料電池の実用化に向けての取組みが活発化している。
【0003】
燃料電池の燃料として使用される水素ガスの製造方法についても多くの研究が進められているが、現時点で最も安価で実現性の高い製造方法は、原料として天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノール、ジメチルエーテルなどを使用し、これらを改質して水素ガスを製造する方法である。このような原料を改質して水素ガスを製造する方法、例えば天然ガスを改質して水素を製造するプロセスでは、通常水蒸気改質法が最もよく用いられている。天然ガスの主成分はメタン(CH)であり、水蒸気改質法において以下のような2段階の反応で水素が生成する。
【0004】
(1)改質反応
CH+HO → CO+3H
(2)変成反応
CO+HO → CO+H
【0005】
上記のような反応が理想的に進行すれば、生成物はHとCOのみであるが、実際にはメタンのコーキングによる炭素の生成防止の観点より、過剰の水蒸気を用いるために、改質反応、変性反応後のガス(以下、「改質ガス」と呼ぶ。)中には水素(H)と合わせて水蒸気(HO)や未反応メタン(CH)、一酸化炭素(CO)、および二酸化炭素(CO)が含まれることになる。通常、燃料電池自動車用の燃料水素としては5N(99.999容積%(以下、「容積%」を単に「%」と表す。))程度以上の水素純度が求められ、特にCOについては、固体高分子形燃料電池の電極用触媒に用いられる白金(Pt)の被毒劣化防止の観点から10ppm以下の濃度に下げる必要があり、燃料電池の耐久性を考えた場合、さらに0.2ppm以下程度まで濃度を低減する必要があるとされている。
【0006】
改質ガスから上記のような高純度水素を製造する方法として、2段階のPSAを用いて高い回収率で水素を回収できるPSA方式高純度水素製造方法が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。この特許文献1に開示された技術においては、1段目及び2段目の各PSA吸着塔における吸着剤の再生用洗浄ガス並びに各PSA吸着塔の昇圧用ガスとして、2段目のPSA吸着塔で得られた高純度水素(製品水素)の一部を用いることを基本としている。また、2段目のPSA吸着塔から排出されるオフガスを1段目のPSA吸着塔における吸着剤の再生用洗浄ガスとして用いる技術も開示されている。
【0007】
また、PSAを用いた純水素製造装置において、オフガスを触媒燃焼器やこの触媒燃焼器の下流に設けられた改質器の昇温に用いる技術も開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−015910号公報
【特許文献2】特開2004−352511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示されたPSA方式高純度水素製造方法では、1段目及び2段目の各PSA吸着塔における吸着剤の再生用洗浄ガス並びに各PSA吸着塔の昇圧用ガスとして精製した高純度水素を消費するため、製品水素の損失が多い。また、2段目のPSA吸着塔から排出されるオフガスを1段目のPSA吸着塔における吸着剤の再生用洗浄ガスとして用いることで、上記製品水素の損失が多少軽減する。しかし、この2段目のPSA吸着塔から排出されるオフガス中にも水素がまだ含まれ、この水素が1段目のPSA吸着塔からオフガスとしてそのまま排出されてしまい、高純度水素の回収率の向上を妨げるという問題点があった。
【0010】
また、特許文献2に開示された純水素製造装置におけるオフガスの活用の仕方では、基本的に高純度水素の回収率の向上には繋がらない。
【0011】
本発明の目的は、製品水素の損失を低減するとともに、改質ガスから高い回収率で高純度水素を回収可能なPSA方式高純度水素製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
改質用原料を改質して水素リッチな改質ガスを得る改質工程と、所定圧力に昇圧された前記改質ガスをCO吸着剤が充填された第1のPSA吸着塔に通じてCOを吸着除去しCO除去ガスを得るCO吸着ステップと前記CO吸着剤を再生するCO吸着剤再生ステップと前記第1のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第1の昇圧ステップとを有した第1の除去工程と、前記CO吸着ステップで得られたCO除去ガスをCO以外の不要ガス吸着剤が充填された第2のPSA吸着塔に通じてCO以外の不要ガスを吸着除去し高純度水素を得るCO以外の不要ガス吸着ステップと前記CO以外の不要ガス吸着剤を再生するCO以外の不要ガス吸着剤再生ステップと前記第2のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第2の昇圧ステップとを有した第2の除去工程と、前記第2の除去工程で得られた高純度水素を前記第2のPSA吸着塔の後段に設けられたバッファタンクに一時貯蔵する一時貯蔵工程と、前記第2のPSA吸着塔から排出されるオフガスを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンクに通じて所定温度かつ所定圧力下で前記オフガス中の水素を前記水素吸蔵合金に吸蔵させる水素吸蔵ステップとこの水素吸蔵ステップ後に所定のタイミングで前記水素吸蔵合金に吸蔵された水素を所定温度かつ所定圧力下で前記水素貯蔵タンク内に放出する水素放出ステップとを有した水素吸蔵放出工程と、を備え、
前記CO吸着剤再生ステップ並びに前記第1の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンクに一時貯蔵された高純度水素(以下、「バッファタンク内の高純度水素」という)及び前記水素貯蔵タンクに放出された水素(以下、「水素貯蔵タンク内の水素」という)の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
前記CO以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに前記第2の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記CO以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いることを特徴とするPSA方式高純度水素製造方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記第1のPSA吸着塔内に、前記所定圧力に昇圧された改質ガス中の水蒸気(以下、「HO」という)を吸着除去するためのHO吸着剤がさらに充填されたことにより、
前記第1の除去工程が、COとともにHOを吸着除去し(CO及びHO)除去ガスを得る(CO及びHO)吸着ステップと、CO吸着剤及びHO吸着剤を再生するCO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップと、前記第1のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第1の昇圧ステップとを有した構成となり、
前記第2の除去工程が、前記(CO及びHO)吸着ステップで得られた(CO及びHO)除去ガスを(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤が充填された第2のPSA吸着塔に通じて(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去し高純度水素を得る(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップと、前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤を再生する(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップと、前記第2のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第2の昇圧ステップとを有した構成となり、
前記CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ並びに前記第1の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに前記第2の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、
前記改質工程が、以下の(a)〜(e)のいずれかの工程である。
(a)改質用原料を水蒸気で改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(b)改質用原料を水蒸気で改質した後に変成させて水素リッチな改質ガスを得る工程
(c)炭化水素含有燃料を部分酸化により改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(d)炭化水素含有燃料を部分酸化により改質させると同時に水蒸気で改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(e)炭化水素含有燃料を水蒸気で改質した後にセラミックフィルタ等の粗製分離膜を流通させて水素濃度を高めて水素リッチな改質ガスを得る工程
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、
前記第1のPSA吸着塔、第2のPSA吸着塔及び水素貯蔵タンクは、それぞれ3つ以上備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、
前記水素放出ステップにおいて、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を水素貯蔵タンク内に放出するための所定温度かつ所定圧力を得るために、前記改質工程で発生する熱が用いられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るPSA方式高純度水素製造方法によれば、
第1のPSA吸着塔を用いた第1の除去工程と、この第1の除去工程の下流側に設けられた第2のPSA吸着塔を用いた第2の除去工程と、前記第2の除去工程で得られた高純度水素(製品水素)を前記第2のPSA吸着塔の後段に設けられたバッファタンクに一時貯蔵する一時貯蔵工程と、前記第2のPSA吸着塔から排出されるオフガスを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンクに通じて所定温度かつ所定圧力下で前記オフガス中の水素を前記水素吸蔵合金に吸蔵させる水素吸蔵ステップと、この水素吸蔵ステップ後に所定のタイミングで前記水素吸蔵合金に吸蔵された水素を所定温度かつ所定圧力下で前記水素貯蔵タンク内に放出する水素放出ステップとを有した水素吸蔵放出工程とを備え、
前記第1の除去工程におけるCO吸着剤再生ステップ並びに第1の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
前記第2の除去工程におけるCO以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに第2の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記CO以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いるため、
製品水素の損失を低減するとともに、改質ガスから高い回収率で高純度水素を回収可能なPSA方式高純度水素製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るPSA方式高純度水素製造装置の構成の概要を模式的に説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は本発明の一実施形態に係るPSA方式高純度水素製造装置の構成の概要を模式的に説明する説明図である。
【0021】
図1において、1は改質用原料Aを改質して水素リッチな改質ガスBを得る改質装置、2は所定圧力としての高圧{例えば、0.9MPaG(ゲージ圧)}に昇圧された改質ガスBからCOとともにHOを吸着除去し(CO及びHO)除去ガスを得る第1のPSA装置、3は第1のPSA装置2の後段に設けられ、前記(CO及びHO)除去ガスから(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去し高純度水素(製品水素)Cを得る第2のPSA装置、4は第2のPSA装置3の後段に設けられ、前記第2のPSA装置3で得られた高純度水素(製品水素)Cを一時貯蔵するバッファタンク、5は第2のPSA装置3から排出されるオフガスD中の水素を吸蔵放出するための水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク(5a、5b、5c)から構成される水素貯蔵部である。
【0022】
また、第1のPSA装置2は、3つの第1のPSA吸着塔2a、2b、2cを有し、各第1のPSA吸着塔2a、2b、2cにはCO吸着剤及びHO吸着剤が充填されている。このCO吸着剤として、例えばアルミナに塩化銅(I)が担持されたものが用いられ、HO吸着剤としては、活性アルミナが用いられる。なお、CO吸着剤とHO吸着剤は、第1のPSA吸着塔(2a、2b、2c)内において、それぞれCO吸着剤を下流側に、HO吸着剤を上流側に設置するのが好ましい。
【0023】
また、第2のPSA装置3は、3つの第2のPSA吸着塔3a、3b、3cを有し、各第2のPSA吸着塔3a、3b、3cには(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤が充填されている。この(CO及びHO)以外の不要ガス(すなわち、CO、CH)吸着剤として、例えば活性炭が用いられる。
【0024】
また、水素貯蔵部5は、3つの水素貯蔵タンク5a、5b、5cを有し、各水素貯蔵タンク5a、5b、5cには水素吸蔵合金が充填されている。この水素吸蔵合金として、例えばAB5系水素吸蔵合金が用いられる。
【0025】
ライン101は改質ガスBの導入ラインである。ライン101と各第1のPSA吸着塔2a、2b、2cとはそれぞれ弁PU−1A、弁PU−1B、弁PU−1Cを介して接続されている。
【0026】
ライン102は第1のPSA吸着塔2a、2b、2c内を減圧するために用いるラインで、均圧(後述の均圧ステップ参照)の終了した各第1のPSA吸着塔2a、2b、2cの圧力をさらに常圧付近(例えば、0.1MPaG)まで減圧する(後述の第1減圧ステップ参照)ために使用される。ライン102は弁V16、弁PU−3A、弁PU−3B、弁PU−3Cを介して第1のPSA吸着塔2a、2b、2cとそれぞれ接続されている。ライン102の排気ガスはオフガスEとして排気される。
【0027】
ライン103は常圧付近までの減圧(第1減圧ステップ)が終了した各第1のPSA吸着塔2a、2b、2cをさらに大気圧以下(例えば、−0.05MPaG以下)の負圧まで減圧(後述の第2減圧ステップ参照)するラインであり、真空ポンプ6と第1のPSA吸着塔2a、2b、2cとがそれぞれ弁V17、弁PU−3A、弁PU−3B、弁PU−3Cを介して接続されている。ライン103の真空ポンプの排気ガスはオフガスEとして排気される。
【0028】
ライン104は各第1のPSA吸着塔2a、2b、2cにて改質ガスBより(CO及びHO)を除去して得た(CO及びHO)除去ガスを回収し、第2のPSA吸着塔3a、3b、3cへ導入するラインであり、第1のPSA吸着塔2a、2b、2cとはそれぞれ弁PU−2A、弁PU−2B、弁PU−2Cを介して接続され、第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとは弁V10、弁PV−1A、弁PV−1B、弁PV−1Cを介して接続されている。
【0029】
ライン105は第2のPSA吸着塔3a、3b、3cにて(CO及びHO)以外の不要ガスを除去して得た高純度水素の回収ラインであり、第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとはそれぞれ弁PV−2A、弁PV−2B、弁PV−2Cを介して接続されており、回収した高純度水素はバッファタンク4に一時的に貯蔵される。
【0030】
ライン106は均圧(後述の第2のPSA吸着塔3a、3b、3cにおける均圧ステップ参照)を行うためのラインであり、後述する(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップの終了した第2のPSA吸着塔と後述する(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップの終了した第2のPSA吸着塔との間でガスの均圧を行うために用いられる。具体的には弁PV−4A、弁PV−4B、弁PV−4Cのうち、均圧を行う2つの塔に接続された弁2個を開放し、他の弁を閉じることにより2つの第2のPSA吸着塔の均圧が可能となる。
【0031】
ライン107は第2のPSA吸着塔3a、3b、3c内を減圧するために用いるラインで、均圧(後述の均圧ステップ参照)の終了した各第2のPSA吸着塔3a、3b、3cの圧力をさらに常圧付近(例えば、0.1MPaG)まで減圧する(後述の第1減圧ステップ参照)ために使用される。ライン107は弁PV−3A、弁PV−3B、弁PV−3Cを介して第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとそれぞれ接続されるとともに、弁V14を介してオフガスDを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5a、5b、5cへ導入し、オフガスD中の水素を所定温度(例えば、20℃)かつ所定圧力(例えば、0.1MPaG)下で水素吸蔵合金に吸蔵させるためのラインでもある。ライン107と水素貯蔵タンク5a、5b、5cとは弁V14、弁PW−1A、弁PW−1B、弁PW−1Cを介して接続されている。
【0032】
ライン108は常圧付近までの減圧(第1減圧ステップ)が終了した各第2のPSA吸着塔3a、3b、3cをさらに大気圧以下(例えば、−0.05MPaG以下)の負圧まで減圧(後述の第2減圧ステップ参照)するラインであり、真空ポンプ7と第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとがそれぞれ弁V15、弁PV−3A、弁PV−3B、弁PV−3Cを介して接続されるとともに、真空ポンプ7の排気ガスをオフガスDとして水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5a、5b、5cへ導入し、オフガスD中の水素を所定温度(例えば、20℃)かつ所定圧力(例えば、−0.05MPaG以下)下で水素吸蔵合金に吸蔵させるためのラインでもある。また、真空ポンプ7と水素貯蔵タンク5a、5b、5cとは弁PW−1A、弁PW−1B、弁PW−1Cを介して接続されている。
【0033】
ライン109は水素吸蔵合金に吸蔵された水素を所定温度(例えば、200℃)かつ所定圧力(例えば、0.9MPaG)下で水素貯蔵タンク5a、5b、5c内に放出した水素で後述する第1のPSA吸着塔2a、2b、2cのCO吸着剤及びHO吸着剤を再生するための再生ステップ用並びに後述する第1のPSA吸着塔2a、2b、2c内の各圧力を所定圧力(例えば、0.9MPa)に昇圧する第1の昇圧ステップ用に供給するラインである。ライン109と水素貯蔵タンク5a、5b、5cとは弁V18、弁PW−2A、弁PW−2B、弁PW−2Cを介して接続されている。また、ライン109と第1のPSA吸着塔2a、2b、2cとはそれぞれ弁PU−4A、弁PU−4B、弁PU−4Cを介して接続されている。
【0034】
ライン110は上述した水素貯蔵タンク5a、5b、5c内に放出した水素を後述する第2のPSA吸着塔3a、3b、3cの(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ用及び後述する第2のPSA吸着塔3a、3b、3c内の圧力を所定圧力(例えば、0.9MPaG)に昇圧する第2の昇圧ステップ用に供給するラインである。第2のPSA吸着塔3a、3b、3cの(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ用及び後述する第2のPSA吸着塔3a、3b、3c内の圧力を所定圧力(例えば、0.9MPaG)に昇圧する第2の昇圧ステップ用には、前述したライン110を経由して供給される水素とともにバッファタンク4内に一時貯蔵された高純度水素も弁V12を経由して供給される。ライン110と水素貯蔵タンク5a、5b、5cとは弁V19、弁PW−2A、弁PW−2B、弁PW−2Cを介して接続されている。また、ライン110と第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとは、弁V13を経由してそれぞれ弁PV−5A、弁PV−5B、弁PV−5Cを介して接続されている。また、バッファタンク4と第2のPSA吸着塔3a、3b、3cとは、弁V12を経由してそれぞれ弁PV−5A、弁PV−5B、弁PV−5Cを介して接続されている。
【0035】
最初に、改質工程について、説明する。
【0036】
(改質工程)
本発明の改質工程には、例えば通常用いられる水蒸気改質器と変成器との組合せからなる改質装置1を用いればよい。改質器にて天然ガス等の炭化水素を含有する改質用原料Aを水蒸気で改質してHおよびCOを主成分とするガスとした後、変成器にてこのガスにさらに水蒸気を添加して変成しHを主成分とする(水素リッチな)改質ガスBを生成する。この改質ガスB中には、Hの他、少量のCO、CH、HOなどとともに、0.9%程度のCOが残留している。なお、改質工程の後工程であるCOとともにHOを吸着除去する後述の第1の除去工程および(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去する後述の第2の除去工程においては低温ほど吸着反応が促進されるため、改質装置1と第1のPSA装置2との間のライン101には高温の改質ガスBを冷却するための熱交換器(図示せず)を設けるのが望ましい。
【0037】
次に、改質工程の後工程である第1の除去工程における(CO及びHO)吸着除去、CO吸着剤及びHO吸着剤再生並びに第1のPSA吸着塔内の昇圧の各操作手順を具体的に説明する。なお、以下においては第1のPSA吸着塔2aの操作手順のみについて説明するが、運転は下記表1のタイムテーブルに示すように、第1のPSA吸着塔2a、2b、2cの3塔を用いてサイクリックに行う。
【0038】
1)[(CO及びHO)吸着ステップ]:上記所定圧力(0.9MPaG)に昇圧された改質ガスBを第1のPSA吸着塔2aに導入し、CO及びHOをそれぞれCO吸着剤及びHO吸着剤により除去し、(CO及びHO)除去ガスを回収し、さらに前記(CO及びHO)除去ガスを第2のPSA吸着塔3aへ導入する(弁PU−3A、弁PU−4A:閉、弁PU−1A、弁PU−2A、弁V10:開)。
【0039】
2)[均圧ステップ]:上記(CO及びHO)吸着ステップを終了し、第1のPSA吸着塔2aのガスの一部をCO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップの終了した第1のPSA吸着塔2cに移送する。ここで、例えば、第1のPSA吸着塔2aを0.9MPaGで(CO及びHO)吸着操作を行った場合、第1のPSA吸着塔2aのCO吸着剤及びHO吸着剤は減圧下で再生するため、本ステップで第1のPSA吸着塔2a、2cの内圧はいずれも約0.4MPaGとなる(弁V18、PU−1A、PU−2A、PU−3A、PU−1C、PU−2C、PU−3C:閉、PU−4A、PU−4C:開)。また、この均圧ステップの間に、水素貯蔵タンク5c内の水素以外の不要ガスをオフガスEとして排気し(弁V18、V19、PW−2A、PW−2B、PW−1C:閉、弁V20、PW-2C:開)、その後に水素吸蔵合金に吸蔵された水素を上記所定温度かつ所定圧力下で水素貯蔵タンク5c内に放出し(水素放出ステップ)、次の水素供給に備える。
【0040】
3)[第1減圧ステップ]:均圧ステップの終了した第1のPSA吸着塔2aの内圧を常圧付近(例えば、0.1MPaG)まで減圧する(弁PU−1A、PU−2A、PU−4A:閉、弁V16、PU−3A:開)。
【0041】
4)[第2減圧ステップ]:常圧付近の圧力まで減圧した第1のPSA吸着塔2aをさらに真空ポンプ6を用いて負圧(例えば、−0.05MPaG以下)まで減圧する(弁PU−1A、PU−2A、PU−4A:閉、弁V17、PU−3A:開)。
【0042】
5)[CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ]:第1のPSA吸着塔2aを減圧した状態で水素貯蔵タンク5c内の水素を第1のPSA吸着塔2a内のCO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガスとして流し、CO吸着剤及びHO吸着剤を再生する(弁V10、PU−1A、PU−2A、PW−2A、PW−2B、PW−1C:閉、弁V17、PU−3A、PU−4A、V18、PW−2C:開)。
【0043】
6)[均圧ステップ]:CO吸着剤及びHO吸着剤の再生が終了した第1のPSA吸着塔2aに(CO及びHO)吸着ステップの終了した第1のPSA吸着塔2b内のガスの一部を移送する(弁V18、PU−1A、PU−2A、PU−3A、PU−1B、PU−2B、PU−3B:閉、弁PU−4A、PU−4B:開)。また、この均圧ステップの間に、水素貯蔵タンク5a内の水素以外の不要ガスをオフガスEとして排気し(弁V18、V19、PW−1A、PW−1B、PW−2B、PW−1C、PW-2C:閉、弁V20、PW−2A:開)、その後に水素吸蔵合金に吸蔵された水素を上記所定温度かつ所定圧力下で水素貯蔵タンク5a内に放出し(水素放出ステップ)、次の水素供給に備える。
【0044】
7)[第1の昇圧ステップ]:第1のPSA吸着塔2a内に水素貯蔵タンク5a内の水素を昇圧用ガスとして供給し、第1のPSA吸着塔2a内の圧力を(CO及びHO)吸着を行なうための上記所定圧力まで昇圧する(弁V10、PU−1A、PU−2A、PU−3A、PW−1A、PW−2B、PW−2C:閉、弁V18、PU−4A、PW−2A:開)。
【0045】
8)上記1)から7)の操作ステップを繰り返し、(CO及びHO)吸着除去、CO吸着剤及びHO吸着剤再生並びに第1のPSA吸着塔内の昇圧を繰り返す。
【0046】
【表1】



【0047】
次に、上記第1の除去工程の後工程である第2の除去工程における(CO及びHO)以外の不要ガス吸着除去、(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生及び第2のPSA吸着塔内の昇圧の各操作手順を具体的に説明する。なお、以下においては第2のPSA吸着塔3aの操作手順のみについて説明するが、運転は下記表2のタイムテーブルに示すように、第2のPSA吸着塔3a、3b、3cの3塔を用いてサイクリックに行う。
【0048】
11)[(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップ]:上記第1の除去工程で得られた(CO及びHO)除去ガスを第2のPSA吸着塔3aへ導入し、(CO及びHO)以外の不要ガスを(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤により除去し、高純度水素を回収し、さらに前記高純度水素をバッファタンク4内に一時貯蔵するとともに製品水素Cを得る(弁PV−3A、弁PV−4A、PV−5A:閉、弁V10、PV−1A、弁PV−2A:開)。
【0049】
12)[均圧ステップ]:上記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップを終了し、第2のPSA吸着塔3aのガスの一部を(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップの終了した第2のPSA吸着塔3cに移送する。ここで、例えば、第2のPSA吸着塔3aを0.9MPaGで(CO及びHO)以外の不要ガス吸着操作を行った場合、第2のPSA吸着塔3aの(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤は減圧下で再生するため、本ステップで第2のPSA吸着塔3a、3cの内圧はいずれも約0.4MPaGとなる(弁V11、PV−1A、PV−2A、PV−3A、PV−5A、PV−1C、PV−2C、PV−3C、PV−5C:閉、PV−4A、PV−4C:開)。また、この均圧ステップの間に、水素貯蔵タンク5c内の水素以外の不要ガスをオフガスEとして排気し(弁V18、V19、PW−2A、PW−2B、PW−1C:閉、弁V20、PW-2C:開)、その後に水素吸蔵合金に吸蔵された水素を上記所定温度かつ所定圧力下で水素貯蔵タンク5c内に放出し(水素放出ステップ)、次の水素供給に備える。
【0050】
13)[第1減圧ステップ]:均圧ステップの終了した第2のPSA吸着塔3aの内圧を常圧付近(例えば、0.1MPaG)まで減圧するとともに、オフガスDを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5aへ導入し、オフガスD中の水素を所定温度(例えば、20℃)かつ所定圧力(例えば、0.1MPaG)下で水素吸蔵合金に吸蔵させ(水素吸蔵ステップ)る(弁PV−1A、PV−2A、PV−4A、PV−5A、PW−2A、PW−1B、PW−2B、PW−1C、PW-2C:閉、弁V14、PV−3A、PW−1A:開)。
【0051】
14)[第2減圧ステップ]:常圧付近の圧力まで減圧した第2のPSA吸着塔3aをさらに真空ポンプ7を用いて負圧(例えば、−0.05MPaG以下)まで減圧するとともに、オフガスDを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5aへ導入し、オフガスD中の水素を所定温度(例えば、20℃)かつ所定圧力(例えば、0.1MPaG)下で水素吸蔵合金に吸蔵させ(水素吸蔵ステップ)る(弁PV−1A、PV−2A、PV−4A、PV−5A、PW−2A、PW−1B、PW−2B、PW−1C、PW-2C:閉、弁V15、PV−3A、PW−1A:開)。
【0052】
15)[(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ]:第2のPSA吸着塔3aを減圧した状態でバッファタンク4内の高純度水素及び水素貯蔵タンク5c内の水素を第2のPSA吸着塔3a内の(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガスとして流し、(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤を再生するとともに、オフガスDを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンク5aへ導入し、オフガスD中の水素を上記所定温度かつ所定圧力下で水素吸蔵合金に吸蔵させ(水素吸蔵ステップ)る(弁V18、V20、PV−1A、PV−2A、PV−4A、PW−2A、PW−1B、PW−2B、PW−1C:閉、弁V12、V13、V15、V19、PV−5A、PV−3A、PW−1A、PW-2C:開)。
【0053】
16)[均圧ステップ]:(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生が終了した第2のPSA吸着塔3aに(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップの終了した第2のPSA吸着塔3b内のガスの一部を移送する(弁V11、PV−1A、PV−2A、PV−3A、PV−5A、PV−1B、PV−2B、PV−3B、PV−5B:閉、弁PV−4A、PV−4B:開)。また、この均圧ステップの間に、水素貯蔵タンク5a内の水素以外の不要ガスをオフガスEとして排気し(弁V18、V19、PW−1A、PW−1B、PW−2B、PW-1C、PW-2C:閉、弁V20、PW−2A:開)、その後に水素吸蔵合金に吸蔵された水素を上記所定温度かつ所定圧力下で水素貯蔵タンク5a内に放出し(水素放出ステップ)、次の水素供給に備える。
【0054】
17)[第2の昇圧ステップ]:第2のPSA吸着塔3a内にバッファタンク4内の高純度水素及び水素貯蔵タンク5a内の水素を昇圧用ガスとして供給し、第2のPSA吸着塔3a内の圧力を(CO及びHO)以外の不要ガス吸着を行なうための上記所定圧力まで昇圧する(弁V18、V20、PV−1A、PV−2A、PV−3A、PV−4A、PW−1A、PW−1B、PW−2B、PW−1C、PW−2C:閉、弁V12、V13、V19、PV−5A、PW−2A:開)。
【0055】
18)上記11)から17)の操作ステップを繰り返し、(CO及びHO)以外の不要ガス吸着除去、(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生及び第2のPSA吸着塔内の昇圧を繰り返す。
【0056】
【表2】

【0057】
本実施形態では、CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ並びに第1の昇圧ステップを有した第1の除去工程において、いずれかの水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素をCO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに第2の昇圧ステップを有した第2の除去工程において、バッファタンク4内の高純度水素及びいずれかの水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素を(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いる例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0058】
すなわち、本発明の技術思想を満足させるためには、
CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ並びに第1の昇圧ステップを有した第1の除去工程において、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに第2の昇圧ステップを有した第2の除去工程において、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いればよい。これにより、少なくともオフガスD中の水素が活用され、製品水素の損失を低減させるとともに、改質ガスから高い回収率で高純度水素を回収できる。
【0059】
ただし、本実施形態のような構成を採用することにより、上記第1の除去工程では前記バッファタンク内の高純度水素(すなわち、製品水素)を使用する必要がなく、かつ、上記第2の除去工程では前記バッファタンク内の高純度水素(すなわち、製品水素)の使用量を低減できるため、製品水素の損失をさらに低減させ、改質ガスからより高い回収率で高純度水素を回収するのに好適である。
【0060】
また、本実施形態においては、第1の除去工程において、COとともにHOを吸着除去し、第2の除去工程において、(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1の除去工程において、COを吸着除去し、第2の除去工程において、CO以外の不要ガスを吸着除去する構成であっても構わない。ただし、本実施形態のような構成(すなわち、第1の除去工程において、COとともにHOを吸着除去する構成)を採用することにより、水素貯蔵タンクに充填された水素吸蔵合金の劣化がさらに抑えられるため、製品水素の損失を低減させながら、高純度水素を長期間に亘って高い回収率で得られる。
なお、上述した第1の除去工程における「COとともにHOを吸着除去」とは、COとHOを吸着除去できる吸着工程を経るという趣旨であり、必ずしもCOとHOをそれぞれ完全に除去することに限定されるものではない。また、上述した第2の除去工程における「(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去」とは、この不要ガスを吸着除去できる吸着工程を経るという趣旨であり、必ずしも前記不要ガスを完全に除去することに限定されるものではない。また、上述した第1の除去工程における「COを吸着除去」とは、COを吸着除去できる吸着工程を経るという趣旨であり、必ずしもCOを完全に除去することに限定されるものではない。また、上述した第2の除去工程における「CO以外の不要ガスを吸着除去」とは、この不要ガスを吸着除去できる吸着工程を経るという趣旨であり、必ずしも前記不要ガスを完全に除去することに限定されるものではない。
【0061】
また、本実施形態においては、第1のPSA装置2、第2のPSA装置3のそれぞれにおいて、3塔を有する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第1のPSA装置2、第2のPSA装置3のそれぞれにおいて、2塔または4塔以上の構成でもよい。ただし、2塔で構成する場合は、均圧操作ができず、高圧化したガスの圧力エネルギを有効に回収できないので、3塔以上で構成するのが推奨される。また、本実施形態においては、水素貯蔵部5に関しても3つの水素貯蔵タンクを有する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくとも複数の水素貯蔵タンクを有すればよい。
【0062】
なお、本実施形態においては、第2の除去工程における第1減圧ステップ、第2減圧ステップ及び(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップのいずれのステップにおいてもオフガスDを水素貯蔵タンク5aへ導入する例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、少なくとも(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップにおけるオフガスDを水素貯蔵タンク5aへ導入する構成であればよい。また、本実施形態においては、CO吸着剤として、アルミナにハロゲン化銅(I)としての塩化銅(I)が担持された材料を用いた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、CO吸着剤としては、シリカ、アルミナ、活性炭、グラファイトおよびポリスチレン系樹脂よりなる群から選択される1種以上の担体に、ハロゲン化銅(I)および/もしくはハロゲン化銅(II)を担持させた材料、またはこの材料を還元処理したものが好適に用いられる。ただし、本実施形態で用いたアルミナ担体に塩化銅(I)を担持した材料はCOに対する選択性が高く推奨される。
【0063】
(実施例)
本発明の効果を確認するため、図1に示すPSA方式高純度水素製造装置(上記本実施形態に同じ)を用いて水素精製実験(高純度水素製造実験)を行った。改質用原料Aはメタノールであり、このメタノールを改質装置1で改質した改質ガスBの組成は、H:70.3%、HO:6.2%、CO:0.9%、CO:22.5%、CH:0.1%である。また、第1、第2の除去工程における操作手順は、上述した本実施形態に同じである(すなわち、上記表1、表2に従う)。
<上記表1における各ステップの時間>
・(CO及びHO)吸着ステップ:5分
・均圧ステップ:10秒
・第1減圧ステップ:50秒
・第2減圧ステップ:3分
・CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ:1分
・均圧ステップ:10秒
・第1の昇圧ステップ:4分50秒
<上記表2における各ステップの時間>
・(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップ:5分
・均圧ステップ:10秒
・第1減圧ステップ:50秒
・第2減圧ステップ:3分
・(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ:1分
・均圧ステップ:10秒
・第2の昇圧ステップ:4分50秒
<使用吸着剤>
・HO吸着剤:活性アルミナ(ユニオン昭和製:品番D−201)
・CO吸着剤:アルミナに塩化銅(I)を担持(当社と関西熱化学の共同開発品)
・(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤:活性炭(日本エンバイロケミカル製: 品番G2X)
<使用水素吸蔵合金>
・AB5系水素吸蔵合金
【0064】
(比較例)
比較例が、上記実施例に対して異なるのは、何よりも水素貯蔵部5を有さない点にある。また、比較例においては、第1の除去工程におけるCO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガスとして第2のPSA装置3のオフガスDを用い、第1のPSA装置2の各PSA吸着塔の昇圧用ガスとしてバッファタンク4内の高純度水素(製品水素)Cのみを用い、さらに第2の除去工程における(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス及び第2のPSA装置3の各PSA吸着塔の昇圧用ガスとして共にバッファタンク4内の高純度水素(製品水素)Cのみを用いる点が、上記実施例と異なる。但し、第1、第2の除去工程の運転タイムテーブルは、基本的に上記表1及び表2に同じである。また、ここに記載した条件以外は、原則として上記実施例に同じである。
【0065】
(実験結果)
実施例、比較例における高純度水素(99.999%)の回収率は、それぞれ90.5%、80.2%であった。このように実施例の回収率が比較例の回収率に比べて10.3%も向上したのは、オフガスD中の水素が有効に活用されたことに起因する。特に、本実施例においては、第1のPSA装置2の各PSA吸着塔2a、2b、2cの昇圧用ガスとして、バッファタンク4内の高純度水素(製品水素)Cを用いることなく、オフガスD中から抽出した水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素が活用されたこと、並びに、第2の除去工程における(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス及び第2のPSA装置3の各PSA吸着塔3a、3b、3cの昇圧用ガスとして、オフガスD中から抽出した水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素も活用されたことにより、バッファタンク4内の高純度水素(製品水素)Cの使用量が大幅に低減したことの作用効果によるところ大である。
【0066】
但し、第1の除去工程におけるCO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに第1のPSA吸着塔2a、2b、2cの昇圧用ガスとして、バッファタンク4内の高純度水素及び水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素の内の少なくとも水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素を用い、第2の除去工程におけるCO以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス及び第2のPSA装置3の各PSA吸着塔3a、3b、3cの昇圧用ガスとして、バッファタンク4内の高純度水素及び水素貯蔵タンク5a、5b、5c内の水素の内の少なくともバッファタンク4内の高純度水素を用いる構成を採用した場合であれば、上記実施例のような作用効果にまでは到達しないまでも、本発明の作用効果は奏する(すなわち、製品水素の損失を低減させるとともに、改質ガスから高い回収率で高純度水素を回収できる。)。
【符号の説明】
【0067】
1:改質装置
2:第1のPSA装置
2a、2b、2c:第1のPSA吸着塔
3:第2のPSA装置
3a、3b、3c:第2のPSA吸着塔
4:バッファタンク
5:水素貯蔵部
5a、5b、5c:水素貯蔵タンク
A:改質用原料
B:改質ガス
C:高純度水素(製品水素)
D、E:オフガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質用原料を改質して水素リッチな改質ガスを得る改質工程と、所定圧力に昇圧された前記改質ガスをCO吸着剤が充填された第1のPSA吸着塔に通じてCOを吸着除去しCO除去ガスを得るCO吸着ステップと前記CO吸着剤を再生するCO吸着剤再生ステップと前記第1のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第1の昇圧ステップとを有した第1の除去工程と、前記CO吸着ステップで得られたCO除去ガスをCO以外の不要ガス吸着剤が充填された第2のPSA吸着塔に通じてCO以外の不要ガスを吸着除去し高純度水素を得るCO以外の不要ガス吸着ステップと前記CO以外の不要ガス吸着剤を再生するCO以外の不要ガス吸着剤再生ステップと前記第2のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第2の昇圧ステップとを有した第2の除去工程と、前記第2の除去工程で得られた高純度水素を前記第2のPSA吸着塔の後段に設けられたバッファタンクに一時貯蔵する一時貯蔵工程と、前記第2のPSA吸着塔から排出されるオフガスを水素吸蔵合金が充填された水素貯蔵タンクに通じて所定温度かつ所定圧力下で前記オフガス中の水素を前記水素吸蔵合金に吸蔵させる水素吸蔵ステップとこの水素吸蔵ステップ後に所定のタイミングで前記水素吸蔵合金に吸蔵された水素を所定温度かつ所定圧力下で前記水素貯蔵タンク内に放出する水素放出ステップとを有した水素吸蔵放出工程と、を備え、
前記CO吸着剤再生ステップ並びに前記第1の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンクに一時貯蔵された高純度水素(以下、「バッファタンク内の高純度水素」という)及び前記水素貯蔵タンクに放出された水素(以下、「水素貯蔵タンク内の水素」という)の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
前記CO以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに前記第2の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記CO以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いることを特徴とするPSA方式高純度水素製造方法。
【請求項2】
前記第1のPSA吸着塔内に、前記所定圧力に昇圧された改質ガス中の水蒸気(以下、「HO」という)を吸着除去するためのHO吸着剤がさらに充填されたことにより、
前記第1の除去工程が、COとともにHOを吸着除去し(CO及びHO)除去ガスを得る(CO及びHO)吸着ステップと、CO吸着剤及びHO吸着剤を再生するCO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップと、前記第1のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第1の昇圧ステップとを有した構成となり、
前記第2の除去工程が、前記(CO及びHO)吸着ステップで得られた(CO及びHO)除去ガスを(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤が充填された第2のPSA吸着塔に通じて(CO及びHO)以外の不要ガスを吸着除去し高純度水素を得る(CO及びHO)以外の不要ガス吸着ステップと、前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤を再生する(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップと、前記第2のPSA吸着塔内の圧力を所定圧力に昇圧する第2の昇圧ステップとを有した構成となり、
前記CO吸着剤及びHO吸着剤再生ステップ並びに前記第1の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記水素貯蔵タンク内の水素を前記CO吸着剤及びHO吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第1のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用い、
前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤再生ステップ並びに前記第2の昇圧ステップにおいて、前記バッファタンク内の高純度水素及び前記水素貯蔵タンク内の水素の内の少なくとも前記バッファタンク内の高純度水素を前記(CO及びHO)以外の不要ガス吸着剤の再生用洗浄ガス並びに前記第2のPSA吸着塔の昇圧用ガスとして用いることを特徴とする請求項1に記載のPSA方式高純度水素製造方法。
【請求項3】
前記改質工程が、以下の(a)〜(e)のいずれかの工程である請求項1または2に記載のPSA方式高純度水素製造方法。
(a)改質用原料を水蒸気で改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(b)改質用原料を水蒸気で改質した後に変成させて水素リッチな改質ガスを得る工程
(c)炭化水素含有燃料を部分酸化により改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(d)炭化水素含有燃料を部分酸化により改質させると同時に水蒸気で改質して水素リッチな改質ガスを得る工程
(e)炭化水素含有燃料を水蒸気で改質した後にセラミックフィルタ等の粗製分離膜を流通させて水素濃度を高めて水素リッチな改質ガスを得る工程
【請求項4】
前記第1のPSA吸着塔、第2のPSA吸着塔及び水素貯蔵タンクは、それぞれ3つ以上備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のPSA方式高純度水素製造方法。
【請求項5】
前記水素放出ステップにおいて、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を水素貯蔵タンク内に放出するための所定温度かつ所定圧力を得るために、前記改質工程で発生する熱が用いられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のPSA方式高純度水素製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171851(P2012−171851A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38075(P2011−38075)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】