説明

PTFE層および製造方法

【課題】PTFE層および製造方法を提供する。
【解決手段】変化された特性の横帯域(60、62)を有する単一の連続したPTFE層を説明する。横帯域の具体例のうちの幾つかはノードおよび微小繊維ミクロ構造を僅かに有しているか或は有していないPTFE材料を有してもよい。PTFE層を製造する方法は、層の制御可能な浸透性および多孔性を他の特性に加えて見込んでいる。特性はPTFE層の1つの横帯域からPTFE層の第2横帯域まで変化してもよい。幾つかの実施形態では、PTFE層は血管内移植片または他の医療装置におけるバリア層として作用してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はPTFE層および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管移植片のような種々の種類の体内装置の製造のために、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)層が使用されてきた。このような血管移植片は疾患のある或は損傷された身体内腔を交換したり、補強したり、或はバイパス置き換えしたりするために使用されてもよい。「発泡」PTFE層を製造する1つの従来の方法がゴアによる米国特許第3,953,566号に記載されている。ここに記載の方法では、PTFE樹脂と潤滑剤とを組み合わせることによりPTFEペーストが形成される。PTFEペーストは押出し成形されてもよい。潤滑剤を押出し成形されたペーストから除去した後、PTFE製品を延伸して多孔性の高い強度のPTFE製品を生じる。発泡PTFE層は微小繊維により相互連結されたノードを有する多孔性の連続気泡ミクロ構造により特徴付けられている。
【0003】
このような発泡方法は、PTFE層の厚さに著しくは影響しないながら、多孔性を高め、密度を高め、且つミクロ構造における隣接ノード間のノード間距離を増大することによりPTFE層の体積を増大する。このように、従来の方法は、PTFE層の厚さの無視可能な減少をもたらすだけでありながら、PTFE層を発泡し、且つ多孔性および浸透性を与える。薄いPTFE層、特に低い流体浸透性を有する薄いPTFE層が必要とされる状況では、従来のPTFE層は発泡PTFE層の多孔性および高い浸透性の性質に起因して大いに不満足である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、必要とされてきたものは改良PTFE層と、PTFE層を製造するための改良方法とである。詳細には、(流体(ガス、液体またはそれらの両方)に対する制御可能な浸透性を有する薄いPTFE層を有することが望ましい。また、著しい再コイル巻きまたは跳ね戻りなしにこのようなPTFE層の機械的操りまたは歪を許容するように高い程度の従順性および柔軟性を有することが望ましいこともある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態はPTFE層およびフィルムと、PTFE層およびフィルムを製造する方法とを提供する。本発明の実施形態はPTFEのようなフルオロポリマーの1つまたはそれ以上の層を有してもよい。PTFE層の具体例は著しいノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していない少なくとも一部を有してもよい。
【0006】
1つの実施形態では、PTFEを処理する方法は、PTFE層を用意することと、PTFE層の少なくとも一部に延伸剤を所定のパターンで選択的に塗布することと、PTFE層を延伸して延伸することとを有している。他の実施形態では、PTFEを処理する方法は、延伸剤含有量を有するPTFE層を用意することと、所定のパターンにおけるPTFE層の少なくとも1つの横帯域から延伸剤を選択的に除去することと、PTFE層を延伸することとを有している。PTFEを処理する方法の更に他の実施形態では、PTFE層を用意する。層の表面の少なくとも1つの横帯域に、これが延伸剤で飽和されるまで、延伸剤を所定のパターンで塗布する。次に、PTFE層の横帯域が延伸剤で飽和されている間にPTFE層を延伸する。
【0007】
他の実施形態では、PTFE層は、PTFE層を用意し、PTFE層の少なくとも1つの横帯域に延伸剤を所定のパターンで選択的に塗布し、PTFE層を延伸することにより製造される層を有している。他の実施形態では、PTFE層は、延伸剤含有量レベルを有するPTFE層を用意し、所定のパターンにおけるPTFE層の部分の少なくとも1つの横帯域から延伸剤を選択的に除去し、PTFEを延伸することにより製造される層を有している。他の実施形態では、PTFE層は、PTFE層を用意し、層の表面の少なくとも1つの横帯域に、これが延伸剤で飽和されるまで、延伸剤を所定のパターンで塗布し、 PTFE層の横帯域が延伸剤で飽和されている間にPTFE層を延伸することにより製造される層を有している。
【0008】
多層式血管移植片の実施形態は、血管移植片の内側の内腔を構成する外面および内面を有する第1管状ボディを有している。外面および内面を有する第2管状ボディが第1管状ボディの外面に結合されている。第1管状ボディおよび第2管状ボディのうちの少なくとも一方は、実質的に低い多孔性および低い流体浸透性とを有していて、認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していない第1横帯域と、流体浸透性であり且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第2横帯域とを有しているPTFE層を有している。
【0009】
他の実施形態では、管状構造体はPTFE層を有しており、このPTFE層は、流体浸透性であり且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第1横帯域と、高密度領域を有する独立気泡ミクロ構造を備えている第2横帯域とを有しており、高密度領域の粒子境界部が隣接した高密度領域の粒子広開部に直接連結されており、独立気泡ミクロ構造は認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していない。他の実施形態では、血管内移植片はPTFE層を有しており、このPTFE層は、第2横帯域に隣接して液体浸透性の第1横帯域を有しており、この第2横帯域は、粒子境界部が隣接した高密度領域の粒子境界部に直接連結されている独立気泡ミクロ構造を有しており、且つノードおよび微小繊維ミクロ構造を実質的に有していない。他の実施形態では、PTFE層は、実質的に低い多孔性と、低い流体浸透性とを有していて、認識可能なノードおよび微小繊維構造を有しておらず、且つ著しい再コイル巻きまたは跳ね戻りなしにこのようなPTFE層の機械的操りまたは歪を許容するように高い程度の従順性および柔軟性を有している第1横帯域を有している。また、このPTFE層は、流体浸透性であり、且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第2横帯域を有している。
実施形態のこれらの特徴は添付の模範的な図面と関連して行なわれる下記の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施形態は、一般に、薄いPTFE層、PTFEフィルム、2つまたはそれ以上のPTFE層を有する複合フィルム、およびこれらのPTFE層、フィルムおよび複合フィルムを製造する方法に関する。幾つかの特定の実施形態は。発泡PTFE層では一般てきであるように、著しい微小繊維およびノード構造体を有していないミクロ構造で低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない薄いPTFE層に向けられている。このような薄いPTFE層の幾つかの実施形態では、著しい再コイル巻きまたは跳ね戻りなしにこのようなPTFE層の機械的操りまたは歪を許容するように高い程度の従順性および柔軟性を有することが望ましいこともある。このようなPTFE層は血管内移植片または他の医療装置の構成のために製造され且つ使用されてもよい。幾つかの用途では、PTFEフィルムの実施形態は複合フィルムを形成するために相互に固着される1つまたはそれ以上の別個のPTFE層を有してもよい。ここで使用される場合、語「複合フィルム」は一般に、互いに接触している表面を有しており、そして幾つかの実施形態においては、容易には分離されないように互いに固着されてもよい1つまたはそれ以上のPTFE層よりなるシートを指している。ここにおけるPTFE複合フィルムのうちのいくつかにおいて使用される個々のPTFE層は、同じまたは異なる特性を有する他の層との組合わせで前述された薄さおよび低い流体浸透性特性を有してもよい。幾つかのPTFE層の実施形態は低い浸透性を有しており、他のPTFE層の実施形態は流体浸透性を有していなく、或いは実質的に有していない。低い流体浸透性を有しているPTFE層は、幾つかの実施形態では、ガーレイ数または「ガーレイ秒」としてのガーレイ試験の結果に基づいて流体浸透性を比較することにより発泡PTFEの標準層の浸透性から区別されてもよい。ガーレイ秒は、所定量、代表的には、25cc、100ccまたは300ccの空気が12.4cmの水柱のような標準圧力下で物質またはフィルムの1平方インチを流通するのに必要な時間を測定することにより定められる。かかる試験はガーレイプレシジョンインストルメント(トロイ、ニューヨーク)により製造されているガーレイデンソメーターで実施されてもよい。発泡PTFEの標準の多孔性の流体浸透性層が、使用された空気の量が約100ccである場合、約15秒未満、特に約10秒未満のガーレイ数を有することがある。対照的に、低い流体浸透性を有するここに論述されるPTFE層の実施形態は、試験で100ccの空気を使用する場合、約1500秒より大きいガーレイ数を有することがある。流体浸透性を有していないか或いは実質的に有していないここに論述されるPTFE層の実施形態は、約12時間、または本質的に無限であるか、或いは測定可能な流体浸透性を示さない測定するには高すぎるガーレイ数までを有することがある。流体浸透性を実質的に有していないPTFE層の実施形態は大きい空気100ccで約1×106秒よりガーレイ数を有することがある。認識可能なノードまたは微小繊維ミクロ構造を有していないここに論述される方法の実施形態により処理された延伸PTFE層は初期に流体浸透性を実質的に有していない。しかしながら、かかるPTFE層の実施形態は、その後に、膨らまし可能な血管内移植片の製造のような製造方法中に延伸されてもよく、この方法中、PTFE層はより流体浸透性になり、前述のように低い浸透性のレベルを達成し得る。
【0011】
図1ないし図8は、水系液体のような特定の流体に対して低い流体浸透性を有するか、或いは流体浸透性を実質的に有していない薄い延伸されたPTFE層を形成するためのPTFE材料の処理を示している。このような実施形態は患者の身体流体のような水系流体または他の流体を排除することが望ましい場合に有用であることがある。ここに記載の幾つかのPTFE層の実施形態は空気および他のガスに対して実質的に不浸透性であってもよい。このように、延伸されたPTFE層の実施形態は、米国特許第3,953,566号においてゴアにより教示されているように従来の意味で「発泡」されていない。例えば、延伸されたPTFE層は、延伸中に実質的に薄くされてもよく、それに対して、従来の「発泡」方法は、代表的には、発泡された材料の厚さをいくらか不変化のままにするが、層の平面における層の発泡に対処するために高い多孔性および浸透性とともに別個のノードおよび微小繊維ミクロ構造を発生させる。
【0012】
図1を参照して説明すると、細かいPTFE樹脂粉末を液状潤滑剤のような押出し剤と配合してPTFE配合物10を形成する。(3Mコーポレーション、オジモントコーポレーション、ダイキンコーポレーション、デュポンおよびICIコーポレーションから入手できる)より低い押出し比の高分子量の細粉末凝固分散樹脂のような様々な異なるPTFE樹脂を使用してもよい。これらの樹脂に使用されるPTFE分子は、代表的には、約2000万から約5000万またはそれ以上の平均分子量を有している。選択自由として、最終のPTFE層の特性を変化させるために、粉状または液状色顔料または他の樹脂添加剤のような添加剤をOTFE樹脂および潤滑剤に添加してもよい。例えば、PTFE層の接合性を改良するために(パーフルオロプロピルビニルエーテル変性PTFE)のような)フッ素化コポリマーを添加してもよい。添加剤は代表的にはPTFE樹脂の質量の2%未満である質量量で与えられるが、所望の結果を生じる任意の量で与えられてもよい。添加剤は、PTFE樹脂全体にわたる添加剤の均一な混合を確保するように潤滑剤が添加される前にPTFE樹脂と化合されてもよい。
【0013】
様々な異なる種類の押出し剤および延伸剤または潤滑剤をPTFE粉末樹脂と配合してもよい。TFE粉末樹脂と混合されてもよい潤滑剤の幾つかの例としては、限定されないが、エキソンモービルコーポレーションによりすべて製造されているISOPAR(登録商標)H、ISOPAR(登録商標)KおよびISOPAR(登録商標)Mのようなイソパラフィン潤滑剤がある。更なる潤滑剤としては、ミネラルスピリット、ナフサ、MEK、トルエン、イソプロピルアルコールのようなアルコール、およびPTFE樹脂を飽和することが可能である任意の他の化学薬品がある。また、幾つかの潤滑剤の具体例については、2つまたはそれ以上の潤滑剤を一緒に混合してもよい。PTFE樹脂に添加される潤滑剤の量は使用される潤滑剤の種類ならびに最終のPTFE層の所望の特性に応じて変化してもよい。しかしながら、代表的には、幾つかの配合物の具体例についての潤滑剤のパーセント質量は配合物質量の約15%から約25%」まで、詳細には、配合物質量の約17%から約22%まで、より詳細には、配合物質量の約18%から約20%まで変化してもよい。
【0014】
実質的に均一なPTFE配合物が形成されるまで、PTFE樹脂および潤滑剤を混合してもよい。PTFE樹脂および潤滑剤の配合は、代表的には、代表的に約12.78℃(55°F)から約24.44℃(76°F)までであるPTFE樹脂のガラス転移温度より低い温度で実施される。PTFE樹脂の配合は細かいPTFE粒子の煎断を減少させるように約10℃(50°F)より低い温度、特定的には、約4.44℃(40°F)から10℃(約50°F)までの温度で実施されてもよい。混合されると、PTFE配合物は、潤滑剤がOTFE樹脂粒子を通して吸収するのを確保する時間、ほぼ37.77℃(100°F)より高い温度、代表的には、約43.33℃(110°F)から約48.89℃(120°F)までの温度で貯蔵されてもよい。貯蔵時間は代表的には、約6時間より長くてもよく、また使用される樹脂および潤滑剤に応じて変化してもよい。
【0015】
配合されたPTFE樹脂および潤滑剤10が適当に調整されたら、配合物10を図1に示されるラム押出器12に装入してもよい。ラム押出器12はバーレル13およびピストン14を有しており、このピストン14は、バーレル13の室内で摺動し、且つバーレル13の円筒形内面に対するシールを形成するように構成されている。ピストン14の遠位端部と、押出器12の出力端部18にシールされた押出器ダイ16との間で押出器12の室に配合物10を装入する。また、ラム押出器12はバーレル13の出力端部18のまわりに配置された加熱要素18を有しており、これらの加熱要素18は押出器12の出力端部18を一様に加熱するように構成されている。幾つかの方法では、配合されたPTFE樹脂10を室に装填する前に、押出器12の出力端部18を加熱する。ラム押出器12の具体例はフィリップスサイエンティフィックコーポレーションの3インチの竪型油圧ラム押出器を含んでもよい。
【0016】
PTFE樹脂配合物を装填したら、ピストン14を矢印21で示されるように押出器12の出力端部18に向けて前進させ、それにより室の圧力を増大し、且つPTFE配合物10をダイ16のオリフィス22を通して押出して押出物24を形成する。押出物24はリボンまたはテープの形態であってもよく、このリボンまたはテープは、次いで図1の巻取りスプールに隣接している矢印で示されるような巻取りスプール26に巻かれる。ラム押出方法は配合物10の機械的加工を表しており、そして煎断力および圧力を配合物10に導入する。配合物のこの加工の結果、押出物リボンまたはテープ24の形態のより粘着性の材料が生じる。
【0017】
処理条件は、PTFE押出物リボン24から蒸発される潤滑剤の量を最小にするように選択されてもよい。例えば、PTFE配合物10はガラス転移温度より高い、代表的には約32.22℃(90°F)より高い温度で押出されてもよい。PTFE押出物リボン24は一般に十分に濃密化された非多孔性であり、代表的には、ダイ16からの押出し時に留まる潤滑剤の元の量のほぼ100%を有している。ダイ16は管状構成のような他の構成を有する押出物24を生じるように構成されてもよい。また、幾つかの方法では、PTFE配合物10は押出器に装入される前にプレフォームビレットを形成するために処理されてもよい。また、選択自由として、押出器12の領域における静電気を減少させるために、脱イオン化エアカーテンが使用されてもよい。1つの例では、ラム押出器12は直径が約2.54cm(1インチ)ないし15.24cm(6インチ)の横方向内径を持つ室を備えているバーレル13を有している。ダイ16の具体例は、約2.54cm(1インチ)ないし約60.96cm(24インチ)の幅と、約0.051cm(0.020インチ)ないし約10.16cm(0.040インチ)、詳細には、約0.0635cm(0.025インチ)ないし約0.089cm(0.035インチ)の厚さとを有する押出物リボンまたはテープ24を生じるように構成されたオリフィス22を有してもよい。
【0018】
押出後、含水PTFE押出物リボン24は、図2に示されるようにその厚さを減少させてPTFE層28とするために、矢印27で示されるように、第1方向または機械方向にカレンダー仕上げされてもよい。カレンダー仕上げ方法中、PTFE押出物リボン24およびカレンダー仕上げされたPTFE層28の幅はほとんど変化しなく、PTFE押出物リボン24は機械方向に長くされる。1つの実施形態では、PTFE押出物リボン24およびカレンダー仕上げされたPTFE層28は幅が約15.24cm(6インチ)ないし25.4cm(10インチ)であってもよい。カレンダー仕上げ方法はPTFEリボン24を長くし且つその幅を減少させてスプール32により巻き取られるPTFE層28を形成する。カレンダー仕上げ中、PTFE押出物リボン24は調整可能な加熱ロール30間でカレンダー仕上げされてPTFEリボン24を機械的に圧縮し、且つその厚さを減少させる。このように、カレンダー仕上げはまた、配合物10の第2の機械的加工を成し遂げる。カレンダー仕上げ方法のための適当な設備としては、IMCコーポレーション(バーミンハム、アルバマ)により製造されている注文製の30.48cm(12インチ)の竪型カレンダー機械がある。
【0019】
押出し後に長い時間、PTFE押出物リボン24を貯蔵することが可能であることもあるが、PTFE押出物リボン24における潤滑剤は貯蔵期間中にリボン24から蒸発する。このように、或る場合には、PTFE押出物リボン24における潤滑剤のレベルを良好に制御するように押出し後にほとんどすぐにPTFE押出物リボン24をカレンダー仕上げすることが望ましいことがある。幾つかの実施形態では、PTFEリボン24はカレンダー仕上げのすぐ前に約15%ないし25%の潤滑剤の含有量を有する。
【0020】
カレンダー仕上げ速度およびローラの位置決めによっては、PTFEリボン24は任意の適当な厚さのPTFE層28を生じるようにカレンダー仕上げされてもよい。PTFE押出物リボン24の厚さ対カレンダー仕上げされたPTFE層28の厚さの比であるカレンダー仕上げ方法の具体例の減少比は約3:1と約7:1との間、特定的には、約7.5:1と約15:1との間であってもよい。1つの特定の実施形態では、約0.0762cm(0.030インチ)の厚さを有するOTFE押出物リボン24の場合、カレンダー仕上げはリボンの厚さを約0.00254cm(0.001インチ)ないし約0.0152cm(0.006インチ)まで、特定的には、約0.00508cm(0.002インチ)から約0.01016cm(0.004インチ)まで減少させてもよい。或る場合には、PTFEリボン24は、その最終延伸により、最終のPTFE層28が所望の厚さを有するように、最終の所望の厚さより僅かに厚い厚さを有するPTFE層28までカレンダー仕上げされてもよい。
【0021】
カレンダー仕上げ温度および処理パラメータは、カレンダー仕上げ方法後、カレンダー仕上げされたPTFE層28がまだ著しい量の残留潤滑剤を有するように、選択されてもよい。この実施形態では、調整可能なローラ30はカレンダー仕上げ方法中、約37.78℃(100°F)と約93.33℃(200°F)との間、特定的には、約48.89℃(120°F)と約71.11℃(160°F)との間の温度まで加熱されてもよい。カレンダー仕上げ後、残留量の潤滑剤はPTFE層28に残り、これは、代表的には、約10重量%から約22重量%、特定的には、約15重量%ないし約20重量%の潤滑剤が残ってもよい。
【0022】
PTFEリボン24がカレンダー仕上げされてOTFE層28を生じたら、次いで、PTFE層28を薄くしたり、適当なミクロ構造を発生させたり、PTFEを機械的加工したりするために、PTFE層28を(クロス機械方向とも呼ばれる)横方向に、(機械方向とも呼ばれる)長さ方向に、これらの方向の両方に、或は任意の他の適当な方向または組合せ方向に機械的に延伸してもよい。なお、この明細書は、PTFE層を横方向に延伸させ、次いで長さ方向に延伸させ、次いで濃密化する方法を説明しているが、これらの工程が行われる順序を変更してもよい。例えば、PTFE層を初めに長さ方向に延伸させ、次いで横方向に延伸させてもよい。選択自由として、次いで、このような層を後述のように濃密化してもよい。図3および図4に示される横方向延伸方法では、カレンダー仕上げされたPTFE層28を機械的に延伸させて延伸されたPTFE層36を生じるためにテンター伸ばし機械34を使用してもよい。適当なテンター伸ばし機械34の1つの具体例としては、ゲスナーインダストリーズ(コンコルド、ノースカロライナ)により製造されているT-6の10馬力駆動ユニットを有する幅152.4cm(60インチ)および長さ853.4cm(28フィート)のテンターがある。
【0023】
幾つかの実施形態では、所望の厚さ、多孔性、浸透性ならびに機械特性を生じるために、PTFE層28の温度、延伸比および材料潤滑剤含有量のような方法パラメータをPTFE層の延伸方法の前および間に制御してもよい。このように、幾つかの実施形態では、選択自由として、図3および図4に示されるように、延伸剤または潤滑剤40を延伸方法中にカレンダー仕上げされたPTFE層28に塗布えてもよい。PTFE層28の延伸方法の前または間にPTFE層28への延伸剤の塗布は延伸されたPTFE層36の潤滑剤含有量を制御するために使用されてもよい。この技術は、薄さ、低い多孔性および低いまたは実質的に無の流体浸透性のような特性を延伸されたPTFE層36に与えるために使用されてもよい。この方法の実施形態によれば、幾つかの用途に特に有用であることがある顕著な再コイル巻きまたは跳ね戻りなしにこのようなPTFE層の機械的操りまたは歪を許容するように高い程度の従順性および柔軟性を有することができる。高い密度の液体浸透可能およびガス浸透可能なPTFE層28を望むなら、このPTFE層28は、延伸中、その厚さ全体にわたって1つまたはそれ以上の延伸剤40で飽和されてもよい。より多孔性のPTFE層28を望むなら、より少ない量の延伸剤40をPTFEに塗布する。PTFE層28の延伸は、幾つかの実施形態では、約26.66℃(80°F)ないし37.78℃(100°F)、特定的には、約29.44℃(85°F)ないし約35℃(95°F)の温度で行なわれてもよい。
【0024】
延伸剤40はPTFE配合物を形成するために使用された同じ潤滑剤であってもよいし、或は異なる潤滑剤でも、潤滑剤の組合せでもよい。幾つかの実施形態では、延伸剤は延伸方法中にPTFE層28を飽和させるのに十分な量でPTFE層28に塗布されてもよい。延伸剤は延伸方法中に様々な方法によりPTFE層28の上面38のような表面に塗布されてもよい。例えば、延伸剤40は、例えばスプレー機構42によるような方法により層全体28にわたって或はPTFE層28の選定部分においてのみPTFE層28の上面38に噴霧されてもよい。延伸剤40はPTFE層28がスプール32から巻き戻し且つスプレー機構42の下の押しついた後にPTFE層28に塗布される。延伸剤40は代表的には約12.44℃(70°F)ないし約57.2℃(135°F)、特定的には、約40.55℃(105°F)ないし約51.66℃(125°F)、より特定的には、43.33℃(110°F)ないし約48.89℃(120°F)の温度でPTFE層28の一方または両方の側にわたって、或はPTFE層28の一方の側のみに、或はPTFE層28の選定部分にのみ一様に塗布される。
【0025】
低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していないPTFE層を望むなら、このPTFE層28は所望の厚さが達成されるまで十分に飽和されながら1つまたはそれ以上の方向に延伸されてもよい。なお、PTFE層28が延伸されると、その結果の延伸されたPTFE層28が延伸剤40を吸収する能力が増大する。このように、PTFE層28および延伸されたPTFE層36の飽和状態を維持することが望ましいなら、PTFE層36の飽和状態および潤滑剤40の温度(43.33℃(110°F)ないし約48.89℃(120°F))の効果を或る時間、維持するために、延伸剤を多数回或は大きい領域にわたって添加することが必要であることもある。このように、延伸剤40は延伸方法の開始前に、或は延伸方法中の任意の時点で添加されてもよい。延伸方法中に延伸剤40をPTFE層に塗布する方法は、PTFE層への延伸剤40の塗布前に、延伸方法中に認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造の形成を見込んでいるが、それでも、延伸剤40が塗布されて延伸が継続すると、PTFE層を薄くすることが生じる。
【0026】
図4は、PTFE層28が横方向に延伸されているときに、延伸剤40がスプレー機構42によりPTFE層28の上面38に塗布されていることを示している。飽和された延伸の具体例では、PTFE層28の上面38に延伸剤を溜めるように十分な延伸剤を塗布することが必要であることがある。このような場合、溜められた延伸剤はPTFE層28の上面38に隣接した滑らかな接触縁部46を有する掬い取り部材44によりPTFE層28の上面38にわたって広げられてもよい。掬い取り部材44は、スプレー機構42により塗布された延伸剤40が掬い取り部材44に流れ込み、そして掬い取り部材44に対する延伸剤40およびPTFE層28の動作により広げられるように、PTFE層28の機械方向にスプレー機構からずれてスプレー機構40に隣接して配置されている。掬い取り部材44は、設備の所望の構成、使用される延伸剤の種類ならびに他の要因に応じて、PTFE層28の上面38に接触していてもよいし、或は上面38のわずかに情報に配置されてもよい。幾つか或はすべてが滑らかな接触縁部または変更例として溝付き/パターン化接触縁部を有する多数の掬い取り部材が使用されてもよい。
【0027】
ここに論述する方法の実施形態は、PTFE層28の厚さを減少させて約0.000127cm(0.00005インチ)までだが、代表的には約0.000127cm(0.00005インチ)および0.0127cm(0.005インチ)からの任意の厚さの延伸されたPTFE層36とするのに有用であることもある。代表的な横方向延伸比は約3:1から約20:1までであってもよい。1つの実施形態では、約7.62cm(3インチ)ないし15.24cm(6インチ)の幅を有するカレンダー仕上げされたPTFE層28は図3および図4に示されるように横方向に延伸されて約50.8cm(20インチ)ないし152.4cm(60インチ)の幅を有する延伸されたPTFE層36としてもよい。これは約3:1ないし12:1の延伸比を表している。他の実施形態では、8.89cm(3.5インチ)ないし11.43cm(4.5インチ)の幅を有するカレンダー仕上げされたPTFE層28は図3および図4に示されるように横方向に延伸されて約50.8cm(20インチ)ないし152.4cm(60インチ)の幅を有する延伸されたPTFE層36としてもよい。これは約7.8:1ないし13:1の延伸比を表している。
【0028】
前述のように、PTFE層36の厚さ、多孔性、平均孔径および流体浸透性は延伸前または中に層36に塗布される延伸剤40の量および温度より影響されることがある。また、PTFE層の温度、PTFE層に塗布される延伸剤の種類および延伸比もまた、PTFE層36の厚さ、多孔性、平均孔径および流体浸透性に影響することがある。特定の用途に適しているPTFE層を生じるために、これらのパラメータを調整することによりこれらの特性を最適化されることができる。例えば、PTFE層36を衣類の湿分バリアとして使用するなら、これらのパラメータは約6ミクロン未満の平均孔径を生じるように調整されてもよい。変更例として、PTFE層36を組織内成長から利点を得る血管内移植片に使用するなら、平均孔径は6.0ミクロンより大きいように調整される。他の実施形態では、PTFE層36が血管内移植片に使用するためのバリア層である場合、平均孔径はもっと小さくてもよく、例えば、約0.01ミクロンと約5.0ミクロンとの間であってもよい。また、延伸されたPTFE層36の具体例は溶融性および変形可能であり、且つ異なる特性を有する他のPTFE層と容易に融着されるか或いはそれに固着されてもよい。PTFE層の延伸後の任意の時点で、延伸されたPTFE層36はそのミクロ構造を非晶質に固定するように焼結されてもよい。焼結は、後述の血管内移植片などのために使用されるもののような多層複合フィルムを形成するために延伸されたPTFE層36を他のPTFE層と組合せて行われてもよい。
【0029】
選択自由として、延伸されたPTFE層は図3、図4、図5および図6に示されるように第2延伸方法を受けてもよく、その場合、延伸されたPTFE層36は2回延伸されたPTFE層46へ形成される。また、前述のように、ここに論述される方法の実施形態が第1の横方向延伸、次いで長さ方向または機械方向の延伸に向けられるが、延伸方向の順序を逆にしてもよいし、延伸方向および部材の他の組合せもまた意図されることを気づくことは重要である。例えば、PTFE層28はいずれの横方向延伸もなしに機械方向または長さ方向に2回延伸されてもよい。PTFE層28はまず長さ方向または機械方向に、次いで横方向に延伸されてもよい。また、PTFE層28は3回またはそれ以上延伸されてもよい。ここに論述される速度、延伸比、温度、潤滑剤のパラメータなどのうちの幾つかまたはすべてが前述のものと同じか或いは同様でもよいが、必ずしも代表的にそうである必要がない。しかも、これらのパラメータは代表的には延伸工程が行われる順序にかかわらず、これらの種々の延伸工程のうちのいずれかについて同じではない。
【0030】
この選択自由の第2延伸方法はPTFE層36を更に他の機械加工を施す。図5および図6に示される第2延伸方法は機械方向に行なわれているが、この第2延伸方法は横方向のような任意の他の適当な方向に行なわれてもよい。2回延伸されたPTFE層46は第2延伸方法を受けた後にスプール48に巻かれる。選択自由として、延伸されたPTFE36が2回目に延伸されているときに、追加の延伸剤40を延伸されたPTFE36の表面に塗布してもよい。より高い多孔性および流体浸透性を望むなら、2回目の延伸は、その間に潤滑剤を添加することなしに乾燥状態にある延伸された層36に対して行なわれてもよい。延伸されたPTFE36は追加の潤滑剤の添加なしで残留潤滑剤を有しているなら、第2延伸方法は微小繊維により連結された著しいノードを有するミクロ構造を発生させる。第2延伸方法は、幾つかの実施形態では、約29.4℃(85°F)ないし約35℃(95°F)の温度で行なわれてもよい。2回目の延伸のための延伸比は最高約20:1、特定的には、約6:1ないし約10:1であってもよい。
【0031】
PTFE層28が2つまたはそれ以上の方向に延伸されるなら、2つの方向、例えば、機械方向および軸外方向または横方向における延伸比は異なる延伸比を有してもよいし、或は同じ延伸比を有してもよい。例えば、PTFE層28が機械方向(例えば、第1方向)に延伸されているとき、延伸比は、代表的には、1秒あたり約2パーセントから約100パーセントまで、特定的には、1秒あたり約4パーセントから約20パーセントまで、より特定的には、1秒あたり約5パーセントから約10パーセントまでの範囲にある。対照的に、延伸がクロス機械方向または横方向に行なわれているとき、延伸比は1秒あたり約1パーセントから約300パーセントまで、特定的には、1秒あたり約10パーセントから約100パーセントまで、より特定的には、1秒あたり約15パーセントから約25パーセントまでの範囲にあってもよい。
【0032】
異なる方向における延伸が同じ温度で行なわれてもよいし、或は異なる温度で行なわれてもよい。例えば、機械方向における延伸は一般に約300℃(572°F)より低い温度で行なわれ、幾つかの実施形態では、約115℃(239°F)より低い温度で行なわれる。対照的に、横方向における延伸は、代表的には、ガラス転移温度より高い温度、通常、約26.7℃(80°F)から37.8℃(100°F)までの温度で行なわれる。もっと低い温度でのPTFE層28の延伸は延伸剤の蒸発を減少させ、且つ処理中、より長い時間、PTFE層28に延伸剤を保持する。
【0033】
選択自由として、延伸されたPTFE層36または2回延伸されたPTFE層46は更に薄くし且つ材料を濃密化するためにカレンダー仕上げされてもよい。2回延伸されたPTFE層46は図7および図8にカレンダー仕上げされているものとして示されている。この例では、2回延伸されたPTFE層46はスプール48から巻き戻され、カレンダーロール50、52に通され、濃密化層54へ形成され、次いでスプール54に巻き取られる。カレンダー機械は図2に示され且つ以上で論述したものと同じ機械であってもより、或は異なる機械であってもよい。PTFE層46のこの最終のカレンダー仕上げまたは濃密化は、一般に、孔のような認識可能なミクロ構造特徴を有しておらず、且つ低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない非常に濃密化されたPTFE層54を生じる。PTFE層を圧縮する方法および延伸する方法は、両方とも、PTFE層の薄化および薄化方法から生じるミクロ構造を制御するために使用されてもよい。また、濃密化されたPTFE層54は前述の延伸されたPTFE層36、46の従順性および柔軟性の機械特性を欠いてもよい。ローラ50、52は約0.000127cm(0.00005インチ)ないし約0.0127cm(0.005インチ)の厚さを有するPTFE層54を生じるために任意の適当な分離距離を有するように調整されてもよい。また、ローラ50、52はカレンダー仕上げ方法中に加熱されてもよく、代表的な温度は約32.2℃(90°F)から約121.1℃(250°F)まで、特定的には、約48.9℃(120°F)から約71.1℃(160°F)まで、より特定的には、約54.4℃(130°F)から約65.6℃(150°F)までである。
【0034】
下記の例は延伸されたPTFE層36を製造する特定の方法を述べている。この実施形態では、1000グラムの樹脂がイソパラフィン系潤滑剤、特定的にはISOPAR(登録商標)Mと約15%から約25%までの潤滑剤対PTFE化合物の質量比で配合される。PTFE樹脂および潤滑剤の配合は約13.9℃(57°F)と約23.9℃(75°F)との間のPTFE樹脂のガラス転移温度より十分に低い10℃(50°F)より低い温度で行なわれる。
【0035】
PTFE配合物10を、ビレットへ形成し、そして潤滑剤が実質的に樹脂を通って浸透されて吸収されるようにするために6時間またはそれ以上の時間、約40.6℃(105°F)ないし約51.7℃(125°F)の温度で貯蔵してもよい。その後、PTFE配合物10を図1に示されるように押出器12に装入する。次いで、PTFE配合物10を樹脂のガラス転移温度より高い温度で押出器12のダイ16のオリフィス22からペースト押出してもよい。1つの実施形態では、ペーストを約26.7℃(80°F)から約48.9℃(120°F)までの温度で押出す。減少比、例えば、押出し前のPTFE配合物10の横断面積対押出し後のPTFE押出物24の横断面積の比は約10:1から約400:1までであってもよいし、特定的には、約80:1から約120:1まででもよい。押出器12は横型押出器でもよいし、或は竪型押出器でもよい。押出ダイ16のオリフィス22は押出されたPTFEリボン24の最終の横断面構成を定める。押出ダイ16のオリフィス22の形状または構成は管状、正方形、矩形または任意の他の適当な輪郭であってもよい。PTFE配合物(樹脂および潤滑剤)をビレットへ予備形成することが望ましいことがある。
【0036】
次いで、PTFE押出物リボン24を約37.8℃(100°F)から71.1℃(160°F)までの温度で図2に示されるようにカレンダー仕上げしてPTFEリボン24の厚さを減少させ且つPTFE層またはフィルム28を形成する。カレンダー仕上げ時の温度はカレンダー機械のローラ30の温度を制御することにより制御されてもよい。PTFE層は約0.00254cm(0.001インチ)ないし0.0152cm(0.006インチ)まで、特定的には、0.00508cm(0.002インチ)ないし0.0762cm(0.003インチ)までの厚さまでカレンダー仕上げされてもよい。カレンダー仕上げの終了時、カレンダー仕上げされたPTFE層28は約10重量%ないし約20重量%の潤滑剤含有量を有してもよい。
【0037】
再び図3および図4を参照して説明すると、カレンダー仕上げ後、カレンダー仕上げされたPTFE層28の一方の側または両側に指定温度でイソパラフィン系延伸剤40を噴霧して、PTFEフィルムまたは層28がその厚さを通して溢れて十分に飽和されるようにする。次いで。飽和されたカレンダー仕上げ済みPTFE層をテンター伸ばし機械34によりカレンダー仕上げ方向に対して実質的に直角である方法に延伸してPTFE層28の厚さを減少させ且つ延伸されたPTFE層36を形成する。延伸されたPTFE層36は約0.000127cm(0.00005インチ)ないし0.0127cm(0.005インチ)の厚さを有してもよく、特定的には、延伸されたPTFE層36は約0.000508cm(0.0002インチ)ないし約0.00508cm(0.002インチ)の厚さを有してもよい。PTFE層28は、代表的には、ガラス転移温度より高い上昇温度、特定的には、約約26.66℃(80°F)ないし37.78℃(100°F)、より特定的には、約29.44℃(85°F)から約35℃(95°F)までの温度でテンター伸ばしされるか或は延伸される。
【0038】
延伸剤40による湿式テンター伸ばしにより、延伸されたPTFE層36にかなりの多孔性および流体浸透性を生じることなしにPTFE28を薄くすることができる。延伸されたPTFE層36は多孔性を有するが、その多孔性および孔径は、代表的には、流体に対して浸透性であるのに十分に大きくなく、しばしば、流体浸透性を実質的に有さないように十分に小さい。また、延伸されたPTFE層の具体例36は従来のノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していないが、その代わり、隣接したノードの境界部が互いに直接連結されている独立気泡ミクロ構造を有している。流体不浸透性の延伸されたPTFEフィルムまたは層36は、代表的には、約0.5g/cm3から約1.5g/cm3までの密度を有してもよいが、幾つかの実施形態では、もっと大きい或はもっと小さい密度を有してもよい。また、前述のPTFE層を処理する方法のすべてに関して、これらの方法により生じられたPTFE層のうちのいずれかがPTFE層のミクロ構造を実質的に固定するために前記方法における任意の時点で焼結されてもよい。代表的な焼結方法は数分間、特定的には、約2分ないし約5分間、約350℃ないし約380℃の温度にPTFE層をさらすことであってもよい。
【0039】
ここに論述される方法およびPTFE層の他の態様では、PTFE層28は延伸剤40により所定の水平方向または横方向の空間パターンで選択的に潤滑されてもよい。所定の水平方向の空間パターンは種々の横帯域または部分から形成されてもよく、これらの横帯域または部分は、各々、それら中および/または間に色々なレベルの延伸剤40の含有量または延伸剤40の含有量勾配を有してもよい。PTFE層の横方向帯域は、横方向、長さ方向、またはこれらの方向の間の任意の方向を含めて、PTFE層を横切って任意の方向に延びることができる。PTFE層の横帯域は延伸剤40の含有量の厚さ勾配から識別可能であり、それにより延伸剤40の含有量はPTFE層の厚さを通じて段階的に或は連続的に変化している。スプレー機構42によるPTFE層の表面への延伸剤40の選択的塗布はここに記載の方法を使用して或は他の従来の方法を使用して行われてもよい。PTFE層28の種々の横帯域内に収容される延伸剤40のレベルは約0重量パーセントの延伸剤含有量から延伸剤40の実質的飽和のレベルまで変化してもよい。
【0040】
延伸剤40の所定のパターンを有するPTFE層28は、より多くの延伸剤40を含有した延伸されたPTFE層36の横帯域が延伸中により低い浸透性(例えば、実質的に不浸透性)を有し、他方、延伸中により少ない延伸剤を含有した延伸されたPTFE層36の横帯域がより高い浸透性を有するように、少なくとも1つの方向に延伸されてもよい。また、代表的には、より多くの延伸剤40を含有した延伸された層36の横帯域は延伸方法中により少ない延伸剤を含有した横帯域に対して減少された厚さを有してもよい。幾つかの実施形態では、比較的高い流体浸透性を有する実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を生じるように、PTFE層の発泡を許容するのに十分な低い延伸剤含有量を有するPTFE層28の横帯域または領域に隣接して、延伸剤で実質的に飽和されているPTFE層28の横帯域または領域を有することが望ましいことがある。延伸は機械方向、この機械方向に対して実質的に横または直角である方向、あるいはそれらの方向の間の任意の方向に行なわれてもよい。変更例として、PTFE層を一点のまわりに放射方向に延伸することが可能であることがある。
【0041】
図8Aないし図8Dを参照して説明すると、PTFE層28は図8C(これはPTFE層28の一部を拡大図を示している)に示される模範的なチェッカー盤パターンのような所定のパターンでそれに塗布された延伸剤40を有してもよい。このチェッカー盤パターンは矩形の横帯域60を有しており、この横帯域60はその厚さ全体にわたって延伸剤で実質的に飽和され、且つPTFE層の表面に目に見える。また、チェッカー盤パターンは厚さ全体にわたって著しく低い延伸剤40の含有量を有している矩形の横帯域62を有している。延伸時、横帯域60、62はそれぞれ、図8Dに示されるように、延伸されたPTFE層36の横帯域64、66へ変態する。横帯域64、66は、図8Aおよび図8Bに示されるテンター伸ばし方法中にPTFE層28が横方向に発泡するので、帯域60、62の長さに対して横方向に伸ばされている。横帯域60ないし66は任意の方向に或は任意の形状または構成でPTFE層28の表面を横切って延びているPTFE層上の領域を表している。図8Cのチェッカー盤パターンは例示的な目的のみで示されている。一般に、延伸剤の含有量レベルはPTFE層28上または特定の横帯域内の任意の個所でPTFE層28の厚さ全体にわたって実質的に一定であってもよいが、望むなら、延伸剤の含有量レベルの勾配もまたPTFE層28の厚さを横切って存在してもよい。また、横帯域60、62は実質的に別個の延伸剤含有量レベルにより定められるものとして説明され且つ図8Cおよび図8Dに示されているが、横帯域の他の具体例は任意の所望の方向またはパターンで延伸剤含有量レベルの勾配を有するPTFE層28の領域を有することができる。
【0042】
図8Eないし図8Lは延伸方法の前および後に所定のパターンおよび量の延伸剤40をPTFE層に塗布する効果の熱の具体例を示しており、この場合、横帯域60は延伸剤40で実質的に飽和されており、横帯域62は比較的低いレベルの延伸剤を有する(或は延伸剤を実質的に有していない)。他の別の具体例において、図8Eおよび図8Fは、比較的高いまたは実質的に飽和された延伸剤40の含有量の円と、これらの円が延伸後にとってもよい楕円形形状とを示している。図8Gおよび図8Hは、他の例において、比較的高いまたは実質的に飽和された延伸剤40の含有量の矩形の気泡が延伸後に形状が正方形になるパターンを示している。図8Iおよび図8Jは延伸後に円形になる比較的高いまたは実質的に飽和された延伸剤40の含有量の楕円形パターンを示している。最後に、図8Kおよび図8Lは延伸中に楕円形の形状に延伸される目玉パターンを示している。
【0043】
前述のように、横帯域62の延伸剤40の含有量は、延伸時に横帯域62内のPTFE材料に対して標準の発泡が生じるように選択されてもよい。PTFEの標準の発泡は延伸後に横帯域62内に発泡PTFE(ePTFE)を生じることができ、この発泡PTFE(ePTFE)は、代表的には、SEMにより見たときに認識可能である実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している。横帯域60は、その中のPTFE層28の発泡により、横帯域66の材料より薄く且つより低い浸透性である横帯域64のPTFE材料を生じるように、延伸剤40で実質的に飽和されてもよい。幾つかの実施形態では、横帯域64のPTFE材料は実質的に不浸透性でもよいし、また独立気泡ミクロ構造を有してもよい。独立気泡ミクロ構造は複数の相互連結されたノードを有してもよいが、(図9に示されるもののような20000のSEM倍率で見たときに)ノード間に微小繊維が実質的に無い。
【0044】
他の言い方をすれば、図9の示される材料と同じか或は同様でもよい横帯域64の材料は20000の倍率でSEMにより見たときに認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造が無いことを示している。また、横帯域60、62の延伸剤含有量は、延伸されたPTFE層36の横帯域64、66が密度、厚さおよび/または多孔性に関して変化してもよいように選択されてもよい。
【0045】
延伸剤40は任意の所定の横方向空間パターンで且つそのパターンの横帯域内に任意の所望の量または濃度レベルで塗布されてもよい。幾つかの実施形態では、延伸剤40はコンピュータまたは手動制御により制御されてもよいスプレー機構42によりPTFE層28に選択的に塗布されてもよい。図8Aおよび図8Bに示されるスプレー機構42は、延伸剤40の所定のパターンがPTFE層28に塗布されてもよいようにかなりの空間解像度まで制御可能であるように構成されてもよい。幾つかの実施形態では、スプレー機構42はインクジェットプリンター装置に一般に使用されているもののようなインクジェットヘッドを有している。延伸剤40を塗布する他の具体例としては、限定されないが、滑らかであってもよいし、模様付きでもよいし、或は溝付きでもよい接触ローラがある。滑らかであってもよいし、模様付きでもよいし、或は溝付きでもよい選択自由な掬い取り部材またはブレードでは、液滴または蒸気塗布が使用されてもよい。液滴または蒸気噴霧によい供給された延伸剤を広げるために、滑らか、模様付き或は溝付きであるスクイージーが使用されてもよい。また、滑らか、模様付き或は溝付きであるスポンジが使用されてもよいし、ならびにパターンが配置された回転ドラムが使用されてもよい。延伸剤40を塗布するために、シルクスクリーン型の方法などが使用されてもよい。
【0046】
変化された流体浸透性ならびに他の特性の横帯域を有するPTFE層を生じる方法の他の実施形態では、延伸剤40の選択的な付加とは対照的に、所定のパターンにおけるPTFE層28からの延伸剤40の含有量の選択的除去または減少が使用されてもよい。このような方法では、飽和レベルまでの高いれネベルの延伸剤40の含有量を有すPTFE層28を生じることができ、次いで、所定の横空間パターンでの熱または他のエネルギーの選択的付加により延伸剤のうちの幾らかが除去される。熱の選択的な付加は延伸剤をPTFE28から選択的に蒸発させるか或は沸騰させる。このような実施形態では、LEDレーザーの列60などが図3および図4に示されるようにPTFE層28に隣接して配置されることができる。LEDレーザー列60は、その近くをPTFE層28が通るときにPTFE層28にレーザーエネルギーを加えるように手動で、コンピュータまたは任意の他の適当な手段により制御されることができる。このように、延伸剤40は、実質的に一様な延伸剤40の含有量レベルを有するPTFE層28を生じるように、図3および図4に示されるように、スプレー機構42および選択自由な掬い取り部材44によりPTFE層28に一様に付加される。PTFE層28がLEDレーザー列60に隣接して通るとき、この列の個々のLEDレーザーは、図8Cないし図8Lに示される横帯域のような横帯域のパターンを生じるように選択的に活性化される。レーザーエネルギーに加えて、空間的に制御されることができるエネルギーの任意の他の適当な形態を使用することもできる。例えば、PTFE層28からの延伸剤40の選択的除去または減少のために、無線周波数エネルギー、超音波絵寝る儀などを使用することができる。また、延伸剤をPTFE層から或はPTFE層に通して吹き込むためにガスを空気ジェットからPTFE層へ噴霧することにより延伸剤40をPTFE層から選択的に除去するために、空気または他のガスを特定温度、圧力および方向で分配する空気ジェットまたはノズルを使用してもよい。また、空気ジェットからの圧縮された或は高速度のガスの衝撃点から延伸剤を蒸発させ易くするために、このような空気ジェットから噴出されたガスを加熱することができる。
【0047】
前述のように、PTFE層36は認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有してもよいし、或は有していなくてもよい。延伸されたPTFE層36またはそれらの横帯域が認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している場合、延伸されたPTFE層36またはそれらの横帯域は単軸方向の微小繊維の配向、2軸方向の微小繊維の配向、または多軸方向の微小繊維の配向を有してもよい。多層PTFEフィルム内の延伸されたPTFE層36または2回延伸されたPTFE層46は、(もしあるなら)1つのPTFE内の微小繊維が隣接したPTFE層の微小繊維に対して平行あるか、垂直であるか、或は他の角度にあるように任意の構成で位置決めされてもよい。横帯域を有する延伸されたPTFE層は後述のステント移植片の実施形態のうちのいずれかに使用されてもよい。幾つかの実施形態では、不浸透性横帯域がステント移植片の他の領域における膨らまし可能なチャンネルおよび浸透性横帯域のまわりに或はそれらに隣接して配置されている延伸されたPTFE層を使用することが望ましいことがある。
【0048】
前述の種々の方法は様々な望ましい特性を有するPTFE層を生じるために使用されてもよい。図9ないし図13に示される走査電子顕微鏡(SEM)像は本発明の実施形態により製造されたPTFEフィルムまたは層のミクロ構造の異なる倍率を示している。PTFE層110は発泡PTFE層に一般に見られる従来のノードおよび微小繊維ミクロ構造が実質的に無い概ね独立気泡ミクロ構造112を有している。PTFEフィルム110の具体例は低い流体浸透性を有してもよいし、或は流体浸透性を有さなくてもよいし、実質的に有さなくてもよい。PTFE層110のうちの1つまたはそれ以上は液体またはガスのような流体がこの層を通って浸透したり或は逃げたりするのを防ぐためにバリア層として使用されてもよい。
【0049】
20000の倍率では、図9でわかるように、延伸されたPTFE層110のミクロ構造は、相互連結された高密度の領域114と、これらの高密度の領域114のうちの幾つかの間のポケットまたは孔116とを備えているポケット付き状の構造に似ている。PTFEフィルム110は、高密度領域の粒子境界部が隣接した高密度領域の粒子境界部に直接連結されている高密度領域114を連結している相互連結されたストランドを有する独立気泡ネットワーク構造を有するものと考えられてもよい。代表的に、20000のSEM倍率で見られるときに認識可能である実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有する従来の発泡PTFE(「ePTFE」)と違って、PTFE層110はePTFEの隣接したノードを相互連結する別個の平行な微小繊維を欠いており、且つ図9に示されるように、20000のSEM倍率で見られるときに認識可能なノードを有していない。PTFE層110の独立気泡ミクロ構造は、液体がPTFE層の一方の側から反対の側まで通るのを防ぐために「バリア層」として使用されてもよい低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない層をなしている。
【0050】
PTFEフィルムまたは層110は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していないが、それにもかかわらず、PTFE層110は多孔性を有している。PTFE層110は、代表的には、約20%から約80%まで、特定的に、約30%から約70%までの平均多孔性を有している。1つの実施形態では、PTFEフィルム110は約30%ないし約40%の多孔性を有している。他の実施形態では、PTFE層110は約60%ないし約70%の多孔性を有している。これらの図に示されているような多孔性はPTFEフィルム110の全体積にパーセントとしての中実のPTFE材料の体積を示しているものと意味される。PTFE層110における平均孔径は約20ミクロン未満、特定的に、約0.5ミクロン未満でもよい。1つの実施形態では、PTFE層110は約0.01μから約0.5ミクロンまでの平均孔径を有している。わかるように、組織の内部成長が望まれるなら、PTFEフィルム110は約6.0ミクロンより大きい平均孔径を有してもよい。後述のように、結果的に生じたPTFE層110の所望の特性によっては、方法の実施形態は連続状態のPTFEフィルム110の平均多孔性および平均孔径を10ミクロンないし50ミクロンから実質的に約0.1ミクロン未満まで変化させるように変更されてもよい。
【0051】
PTFE層110は約0.5g/cm3から約1.5g/cm3まで、特定的に、約0.6g/cm3から約1.5g/cm3までの密度を有してもよい。PTFEフィルム110の密度は代表的には十分に濃密化されたPTFE層の密度(例えば、2.1g/cm3)のための密度より低いが、望むなら、PTFE層110の密度は、それが十分に濃密化されたPTFE層に適合されるように、もっと高い密度レベルまで濃密化されてもよい。図9ないし図13は閉鎖ミクロ構造ネットワークを有し且つ液体およびガスに対して実質的に不浸透性であるPTFEフィルム110を示しており、PTFE層の他の具体例は他の適当な浸透性値および孔径を有するようにここに論述される方法を使用して製造されてもよい。
【0052】
PTFEフィルム110は約0.0127cm(0.005インチ)未満、特定的には、約0.000127cm(0.00005インチ)から約0.0127cm(0.005インチ)まで、より特定的には、約0.000254cm(0.0001インチ)から約0.00508cm(0.002インチ)までの平均厚さを有してもよい。ここに論述されている方法の実施形態はPTFE層の製造に向けられているが、論述されている方法が実質的に低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない他のフルオロポリマー系フィルムの製造に有用であることもあることはわかるべきである。このように、ここに論述されている方法はPTFE材料の処理に限定されない。例えば、テトラフルオロエチレンと他のモノマーとのコポリマーのような他のフルオロポリマー樹脂系材料の処理もまた意図されている。
【0053】
PTFE層およびPTFEフィルムは種々の方法で使用されてもよい。例えば、本発明のPTFE層およびPTFEフィルムは血管移植片、胸部移植片などのような補綴装置用に使用されてもよい。他の用途としては、管、保護衣類、断熱材、スポーツ設備、フィルター、膜、燃料電池、イオン交換バリア、ガスケットなどが挙げられる。これらの用途のうちの幾つかについては、前述の方法により製造されてもよいPTFE層の横帯域に関して、種々の特性を有するPTFE層を有することが望ましいことがある。詳細には、幾つかの用途は、1つの横帯域に高い浸透性を有し、且つ隣接した横帯域に低い浸透性を有するか或は浸透性を実質的に有していないPTFE層を必要とすることがある。変化された特性のより複雑なパターンを達成するために、組合わされた少なくとも2つのPTFE層を有するPTFEフィルムがPTFE層の横帯域の所定のパターンに重なってもよい。このように、後述の実施形態のうちのいずらかは、前述のような変化された特性の横帯域を有するPTFE層、延伸されたPTFE層またはPTFEフィルムを組み入れてもよい。
【0054】
図14を参照して説明すると、PTFE層110は、複合フィルム120を形成するために、少なくとも1つの追加の層118と、部分的に或は全体的に、組み合わされたり、接合されたり、他の方法で結合されたり、付着されるか或は取り付けられたりされてもよい。複合フィルム120の使用によっては、層118は複合フィルム120に所望の特性を与えるように層110の特性と組合わさる特性を有するように選択されてもよい。追加の層118としては、多孔性PTFE層、実質的に非多孔性のPTFE層、ガスまたは液体浸透性PTFE層、ガスまたは液体不浸透性層、ePTFE層、非発泡PTFE層、フルオロポリマー層、非フルオロポリマー層またはそれらの任意の組合せが挙げられる。1つの実施形態では、層118は従来のノードおよび微小繊維ミクロ構造を有する多孔性で流体浸透性の発泡PTFE層である。望むなら、選択自由として、1つまたはそれ以上の補強層(図示せず)が複合PTFEフィルム120に結合されてもよい。補強層は層110または118間に配置されてもよいし、或は補強層はPTFE層110、PTFE層118またはそれらの両方の露出表面に結合されてもよい。PTFE層110および層118は、当業界で公知な任意の適当な方法を使用して互いに部分的に或は全体的に、組み合わされたり、接合されたり、他の方法で結合されたり、付着されるか或は取り付けられたりされてもよい。例えば、これらの層110、118の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために接着剤を使用してもよい。変更例として、層110、118の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために熱融着、圧力接合、焼結などを使用してもよい。
【0055】
図15および図16はそれぞれ2つの複合管状構造体130、140の横方向横断面図である。管状構造体130、140は血管内移植片などの一部であってもよい。図15に示されるように、管状構造体130は内面134および外面136を備えている内側管状ボディ132を有している。この管状ボディ132は1つまたはそれ以上の流体浸透性PTFE層を備えてもよい。このような流体浸透性PTFE層は約10ガーレイ秒もマンのガーレイ測定値を有してもよい。更に、管状ボディ132は内面137および外面139を備えている外側管状ボディ138を備えている。外側管状ボディ138の内面137は内側管状ボディ132の外面136に結合されている。管状ボディ138は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない1つまたはそれ以上のPTFE層を備えてもよい。この構成では、管状ボディ132の内面134は管状構造体130の内腔135を構成しており、管状ボディ138の外面139は管状構造体130の外面139を構成している。管状ボディ138は当業界で公知な任意の適当な方法により管状ボディ132に部分的に或は全体的に組合わされたり、接合されたり、他の方法で結合されたり、付着されるか或は取り付けられたりされてもよい。例えば、管状ボディ138および管状ボディ132の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために接着剤を使用してもよい。変更例として、管状ボディ138および管状ボディ132の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために熱融着、圧力接合、焼結などまたはそれらの任意の組合せを使用してもよい。
【0056】
図16に示されるように、管状構造体140は内面144および外面146を備えている内側管状ボディ142を有している。管状ボディ142は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない1つまたはそれ以上のPTFE層を備えてもよい。更に、管状構造体140は内面147および外面149を備えている外側管状ボディ148を備えている。外側管状ボディ148の内面147は内側管状ボディ142の外面に結合されている。外側管状ボディ148は1つまたはそれ以上の流体浸透性PTFE層を備えてもよい。流体浸透性PTFE層の具体例は約10ガーレイ秒未満のガーレイ測定値を有してもよい。この構成では、内側管状ボディ142の内面144は管状構造体140の内腔145を構成しており、外側管状ボディ148の外面149は管状構造体140の外面149を構成している。管状ボディ148は当業界で公知な任意の適当な方法により管状ボディ142に部分的に或は全体的に組合わされたり、接合されたり、他の方法で結合されたり、付着されるか或は取り付けられたりされてもよい。例えば、管状ボディ148および管状ボディ132の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために接着剤を使用してもよい。変更例として、管状ボディ148および管状ボディ142の少なくとも一部を互いに選択的に接合するために熱融着、圧力接合、焼結などまたはそれらの任意の組合せを使用してもよい。
【0057】
管状構造体130または140はこれを通る流れの領域を構成してもよい内面の直径である内径IDを構成してもよい。外径ODは外側管状層138または148の外面139または149の直径である。内径IDおよび外径ODは任意の所望の直径であってもよい。血管内移植片に使用のためには、内径IDは代表的には約10mmから約40mmであり、外径ODは代表的には約12mmから約42mmまでである。管状層は任意の適当な厚さを有してもよいが、流体不浸透性のPTFE層138、142は約0.00127cm(0.0005インチ)から約0.0254cm(0.01インチ)まで、特定的には、約0.000508cm(0.0002インチ)から約0.00254cm(0.001インチ)までの厚さを有している。同様に、流体浸透性PTFE層132または148は任意の所望の厚さであってもよいが、代表的には、約0.000254cm(0.0001インチ)から約0.0254cm(0.01インチ)まで、特定的には、約0.000508cm(0.0002インチ)から約0.000254cm(0.001インチ)までの厚さを有している。わかるように、管状構造体130または140の厚さおよび直径は管状構造体の使用に応じて変化する。
【0058】
管状構造体130または140は従来の管状押出し方法により管として形成されてもよい。しかしながら、代表的には、管状構造体130または140は図14に示されるようなPTFE層110または118から形成されてもよく、これらの沿う110または118はそれらの端部が重ねられるか或は接合されるように形状形成マンドレル上で互いに折り重ねられる。他の変更例として、PTFE層110または118は管状構造体を形成するように形状形成マンドレルのまわりに螺旋形に巻かれてもよい。管状PTFE構造体を形成する幾つかの模範的な方法が、共に2001年12月20日に出願されたチョボトフ等の「血管内移植片部分を製造するための方法および装置」と称される共通に所有された同時出願中の米国特許出願第10/029,557号(これはUS20030116260A1号として公布されている)および「血管内移植片関節および製造方法」と称される米国特許出願第10/029,584号およびチョボトフ等の米国特許第6,776,604号(それらの完全な開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に記載されている。
【0059】
ここに論述されるフィルムおよび層は、単一の多孔性PTFE層118および低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない単一のPTFE層またはフィルム110に限定されない。複合フィルム120および管状構造体130または140は、(同じまたは異なるノードおよび微小繊維のサイズおよび配向、多孔性、孔径などを有する)複数の多孔性の流体浸透性PTFE層と、1つまたはそれ以上の非多孔性の濃密化OTFE層および/または低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない1つまたはそれ以上のOTFE層110とを有してもよい。例えば、低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していないPTFE層110は内側および外側の多孔性PTFEフィルムまたは層の間に配置されてもよい。内側および外側の多孔性PTFE層は変化している多孔性または同じ多孔性を有してもよい。このような実施形態では、PTFE層110は多孔性PTFE層に対して減少された厚さを有してもよい。しかしながら、他の実施形態では、PTFE層110は多孔性PTFE層と同じ厚さまたはそれより大きい厚さを有してもよい。図16および図16の別の実施形態では、管状構造体130または140は、共に低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない内側および外側の管状ボディを備えてもよい。
【0060】
図17を参照すると、膨らまし可能な血管内移植片50の形態である管状構造体が示されている。この用途の目的で、血管内移植片装置に関して、語「遠位」は、装置が身体通路内で展開されるとき、身体流体、代表的には血液の接近してくる流れに向けて配向される移植片の端部を表現している。従って、語「遠位」は近位端部と反対側の移植片の端部を表現している。移植片150は、近位端部151および遠位端部152を有しており、且つPTFEおよびePTFEのような材料を含めて、溶融可能な材料の1つまたはそれ以上の層で構成される概ね管状の構造体または移植片ボディ部分153を有している。管状構造体の内面は、内径を定めており、且つこれを通る流体の流れのための内腔表面として作用する。管状構造体の外面は、身体の内腔の弱められた部分内に身体内腔壁部に隣接して位置決めされるようになっている分離内腔(abluminal)表面を構成している。なお、図17は膨らまし可能な血管内移植片を示しているが、本発明の層およびフィルムは他の医療および非医療用途に加えて、膨らまし不可能な血管内移植片にも同様に使用されてもよい。
【0061】
膨らまし可能な近位カフ156が移植片ボディ部分153の遠位端部に或はその近くに配置されてもよく、膨らまし可能な遠位カフ157が移植片ボディ部分の遠位端部に或はその近くに配置されてもよい。移植片ボディ部分153はこれを通る血液のような流体の流れを閉じ込めるように構成されている長さ方向の内腔を形成する。移植片150は、任意の所望の長さおよび内径および外径を有するように製造されてもよいが、代表的には、長さが約5cmから約30cmまで、特定的には、約10cmから約30cmまでに及ぶ。望むなら、移植片150の近位端部151および/または遠位端部152にステント159を取付けてもよい。カフ156、157および移植片ボディ部分153の構成によっては、(例えば、血管または他の身体内腔により)拘束されていないときに、カフ156、157を膨らますことにより、これらのカフ156、157は概ね半円形の長さ方向横断面を有する概ね管状またはドーナツ形の形状を取ってもよい。しかしながら、膨らまし可能なカフ156、157は、これが展開される血管の形状に概ね一致するように設計されてもよい。カフ146,157は、十分に膨らまされると、約10mmから約45mmまで、特定的には約16mmから約42mmまでに及ぶ外径を有してもよい。
【0062】
少なくとも1つの膨らまし可能なチャンネル158が膨らまし可能な近位カフ156と選択自由な膨らまし可能な遠位カフ157との間でそれらと流体連通状態で配置されてもよい。図17の例における膨らまし可能なチャンネル158は螺旋形構成を有しており、そして膨らまし媒体を収容するために膨らまされると、移植片ボディ部分153に対する構造支持をもたらす。更に、膨らまし可能なチャンネル158は、これが傾斜された或は曲りくねった解剖学的構造内で展開されるとき、並びに移植片150が展開される大動脈および腸骨動脈のような身体通路の再モデリング中、管状構造体または移植片のねん転および捩れを防ぐ。膨らまし可能なチャンネル158は、近位および遠位カフ156、157と共に、ボディ153の長さにわたって膨らまし可能なネットワークを形成する。血管内移植片の所望の特性によっては、移植片の少なくとも1つの層はPTFE層またはフィルム110のような低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していないPTFE層であってもよい。PTFE層は膨らまし可能なチャンネル158を形成する層のうちの1つであってもよいし、或はPTFE層は膨らまし可能なチャンネル158およびカフ156、157を取囲んでもよいし、或はそれらの下にあってもよい。
【0063】
また、幾つかの実施形態については、横帯域を横切って変化された浸透性を有するPTFE層110を有し、それによりPTFE層110の横帯域の特性がそこにおけるPTFE層に機能に対応することが望ましいことがある。例えば、流体浸透性を実質的に有していないPTFE材料の単一のPTFE層を有する代わりに、層は膨らまし可能なチャンネル158およびカフ156、157に隣接するPTFE層110の部分に対応する流体浸透性を実質的に有していないPTFE材料の横帯域を有してもよい。このように、膨らまし可能なチャンネル158および膨らまし可能なカフ156、157は耐流体損失性に作成されることができ、移植片ボディは膨らまし可能なチャンネル158および膨らまし可能なカフ156、157に隣接してその流体浸透性の性質を保持する。この種類の構成はここに論述される移植片実施形態のいずれかに含まれることができる。
【0064】
移植片ボディ153は、膨らまし可能なカフ156、157および膨らまし可能なチャンネル158を間に形成するためにここに記載のように互いに選択的に融着されるか或は他の方法で付着される2つまたはそれ以上のPTFE層またはストリップ形成されてもよい。多層式移植片を製造する幾つかの方法の詳細な説明が、共同出願中の且つ共通に所有された米国特許出願第10/029,557号(これはUS20030116260A1として公布されている)、第10/029,584号、マーチの「膨らまし可能な内腔内移植片」と称される2002年6月14日に出願された米国特許出願第10/168,053号、およびチョボトフ等の米国特許第6,776,604号(それらの全体的な開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に記載されている。
【0065】
図18ないし図21は膨らまし可能なチャンネル158の異なる実施形態の横方向横断面図を示している。わかるように、図18ないし図21の実施形態は近位および遠位カフ156、157に適用可能であることもある。膨らまし可能なチャンネル158は内側層164と外側層166との間に生じられる膨らまし可能な空間を構成している。望むなら、膨らまし可能な空間162を膨らますために、膨らまし媒体167が空間162に送り込まれてもよい。膨らまし媒体167は、選択自由として、内側層164、外側層166またはそれらの両方における孔(図示せず)を通し制御方法で拡散されるか或はて他の方法で送られるように構成されてもよい治療剤168のような図18ないし図21に示されるような送込み可能剤168を有してもよい。図18ないし図21に示される実施形態は、層164または層166を通る送込み可能な剤168の優先的な拡散を行なうことが望ましいことがあるように、単に例示的なものである。また、両方の層164、166は送込み可能な剤168の著しい量の拡散を許容するように構成されてもよいが、2つの層のうちの一方は他方の層より大きい送込み可能な剤168に対する浸透性を有している。内層164および層166は単一の材料層のみを有するものとして示されているが、層の各々164または166が、流体浸透性PTFE、低い流体浸透性を有するPTFE、流体浸透性を実質的に有していないPTFEまたはそれらの任意の組合せの複合フィルムを形成するために1つまたはそれ以上の層を有してもよい。治療剤の送込みのための方法および装置のより完全な説明は、ワーリー等の2004年1月30日に出願された「膨らまし可能な多孔性移植片および薬剤供給方法」と称される同時出願中の共通所有の米国特許出願第10/769,532号(これはUS20050171593A1として公布されている)(その完全な開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に見られることができる。模範的名副卵子媒体の材料の説明は、アスカリ等の2005年4月1日に出願された「非分解性、低発泡性、水溶性で放射線不透過性のヒドロゲル」と称される同時出願中の共通所有の米国特許出願第11/097,467号(その完全な開示は出典を明示することにより本願明細書の開示の一部とされる)に見られることができる。
【0066】
図18に示される実施形態では、外側層166は、液体であってもよい治療剤168を外側層166を通して矢印169の方向に時間に経過にわたって拡散させるように流体に対して浸透性である。このような実施形態では、内側層164は、代表的には、低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していなく、従って、「バリア層」であると考えられることができる。内側の「バリア」層164は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していなく、且つ外側層166は流体浸透性であるので、治療剤は矢印169の方向に空間162から優先的に拡散する。1つ(またはそれ以上)の多孔性流体浸透性の外側PTFE層および低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない内側層164の使用は、液体浸透性の外側層166を通る治療剤の改良放出をもたらす。外側層166の少なくとも一部を横切る多孔性または孔径を変化させることにより、外側層166を通る治療剤168のより局部的送り込みさえも行なってもよい。
【0067】
図19に示される別の構成では、内側層164は、治療剤168を内側層164を通して管状構造体の内腔(例えば、図15および図16の内腔135、145)の中へ矢印169の方向に選択的に拡散させるために実質的に流体浸透性であってもよい。このような実施形態では、外側層166は、代表的には、流体浸透性を有していないか或は実質的に有していなく、「バリア層」として作用する。このように、治療剤は矢印169の方向に空間162から優先的に拡散する。多孔性の流体浸透性PTFE層および低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない外側層166の使用は流体浸透性内側層164を通る治療剤の改良放出をもたらす。内側層164の少なくとも一部を横切る浸透性および/または多孔性または孔径を変化させることにより、層164を通る治療剤168のより局部的送り込みさえも行なってもよい。
【0068】
図20に示されるように、膨らまし媒体167が膨らまし可能な空間162から逃げるのを防ぐことを望むなら、内側層164および外側層166の両方は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない「バリア」層よりなってもよい。このような実施形態では、内側および外側層164、166は低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない。このような実施形態では、膨らまし媒体167は代表的には治療剤を含有していない。図21を参照して説明すると、膨らまし可能なチャンネルは移植片の一部を構成する内側層164に融着されるか或は他の方法で付着される実質的に管状のチャンネル170であってもよい。治療剤の送込みを望むなら、管状のチャンネル170は液体浸透性であり、そして管状のチャンネル170における孔を通る治療剤168の拡散を許容する。しかしながら、膨らまし流体167が膨らまし可能な空間162から逃げるのを防ぐことを望む場合、管状チャンネル170はバリア層として作用し、そして低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を有していない少なくとも1つのPTFE層を備えてもよい。
【0069】
図22および図23を参照して説明すると、図示された夫々の移植片の実施形態150、180は膨らまし可能なチャンネル158を有しており、このチャンネル158は図17に示される膨らまし可能なチャンネル158の螺旋形構成とは対照的に円周構成を有する諸部分を有している。膨らまし可能なチャンネル158の諸部分の円周構成は、非常に傾斜された曲りくねった解剖学的構造がしばしば見られる胸部大動脈瘤(TAA)、腹部大動脈瘤(AAA)のような疾患身体通路を効果的に治療するための血管内移植片のために必要とされる耐ねん転性を与えるのに特に効果的であることがある。別の実施形態では、他のカフおよびチャンネルの構成が可能である。膨らまし可能なチャンネル158は図22および図23に示されるように周方向に構成されてもよい。
【0070】
図22の実質的に管状の移植片に加えて、図23に示されるような二股状の血管内移植片もまた意図されている。二股状の血管内移植片180は、たとえば、治療すべき動脈瘤が解剖学的二股分岐部の中へ延びているか、或いは二股分岐部に対して遠位の腸骨動脈のうちの一方または両方の中へさえ延びている腹部大動脈瘤の場合、血管内の二股分岐部のところの或いはその近くの疾患内腔を修復するために利用されてもよい。下記の説明において、前述の移植片の実施形態の種々の特徴は、別段詳細に述べないかぎり、二股状移植片80の実施形態に必要に応じて使用されてもよい。
【0071】
移植片180は、第1二股状部分182と、第2二股状部分184と、主ボディ部分186とを備えている。二股状部分182、184のサイズおよび角方向配向は移植片送り込み装置の要件および種々の臨床要求に対処するために変化してもよい。サイズおよび角方向配向は部分182、184間でさえ変化してもよい。例えば、各二股状部分または脚部は、選択自由として異なる長さを有するように図23に示されている。第1および第2二股状部分182、184は、一般に、患者の腸骨動脈の内径と適合可能である膨らまされた外径を有するように構成されている。また、第1および第2二股状部分182、184は幾つかの用途における湾曲され且つ曲りくねった解剖学的構造に良好に対処するために湾曲形状に形成されてもよい。主ボディ部分186および第1および第2二股状部分182、184は、一緒に、中を通る流体の流れを閉じ込めるように構成されている図22に内側内腔と同様な連続した二股状内腔を形成している。膨らまし可能なチャンネルの幾つかの望ましいサイズおよび間隔の完全な説明は、カリ等の2003年3月6日に出願された「耐ねん転性の血管内移植片」と称される共通に所有された同時出願中の米国特許出願第10/384,103号(これはUS20040176836A1号として公布されている)(その開示は出典を明示するために本願明細書の開示の一部とされる)に見られる。
【0072】
図示されないが、円周チャンネルおよび長さ方向チャンネルの代わりに、二股状移植片180が、図17に示される移植片の実施形態のもの(または所望の結果を達成するために他のチャンネル幾何形状)と同様な螺旋形の膨らまし可能なチャンネル158、または螺旋形および円周チャンネルの組合せを備えてもよいことはわかるべきである。螺旋形および円筒形チャンネル構成を有する血管内移植片の幾つかの実施形態の完全な説明は、同時出願中の共通に所有された米国特許出願第10/384,103号(これはUS200410176836A1号として公布されている)に見られる。液体不浸透性PTFEフィルムが使用されてもよい他の血管内移植片が、チョボトフの米国特許第6,395,019号、チョボトフの米国特許第6,132,457号、チョボトフの米国特許第6,331,191号、および2002年12月20日に出願されたチョボトフの「進歩された血管内移植片」と称される米国特許出願第10/327,711号、第10/168,053号(それらの完全な開示は出典を明示するために本願明細書の開示の一部とされる)に記載されている。
【0073】
わかるように、移植片180の膨らまし可能な部分は、選択自由として、層における孔からの剤の溶出による血管壁部または移植片の内腔の中への制御式薬剤送込み、プログラミングされた薬剤送込みまたはそれらの両方を配慮するように、特定のカフ、チャンネルまたはカフ/チャンネルセグメント内に、或はそれらの間に色々なレベルの流体浸透性および/または多孔性を有するように構成されてもよい。例えば、移植片180の任意の所望の部分が、低い流体浸透性を有するか、或いは流体浸透性を実質的に有していないPTFE層を有してもよい。このような構成は、薬剤送込み速度および移植片またはステント-移植片の他の特性(例えば、機械特性)がその装置のために意図されている特定の臨床的必要性および適応のために選択されることがある用途に有用である。また、流体浸透性および/または多孔性は特定のカフまたはチャンネル内で一様であってもよいが、任意の所定のチャンネルおよび/またはカフ間で異なってもよい。改良された薬剤の送込みに加えて、移植片の外面の可変の多孔性は移植片の中への組織内部成長を促進するために有利であることもある。組織内部成長を促進するようにより高い多孔性および/またはより大きい孔径を有するために身体の内腔と直接接触する移植片の諸部分を構成することが可能であることがある。特に、組織内部成長は移植片の近位および遠位端部に隣接して有利であることがある。
【0074】
以上の詳細な説明に関して、そこに使用された同様な参照数字は同じまたは同様な寸法、材料および構成を有し得る同様な要素を指している。実施形態の特定の形態を図示し且つ説明したが、本発明の実施形態の精神および範囲を逸脱することなしに種々の変更例を行なうことができることは明らかである。従って、本発明を前記詳細な説明により限定しようとするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】スプールに巻き取られているPTFEリボンを押出成形するラム押出器を示す図である。
【図2】図1のPTFEリボンのカレンダー仕上げ方法を示す図である。
【図3】延伸中にPTFE層に延伸剤が塗布されているテンター伸ばし方法を示す図である(図示の明確の目的で、テンター伸ばし機械の諸部分が図示されていない)。
【図4】延伸中にPTFE層に延伸剤が塗布されているテンター伸ばし方法を示す図である(図示の明確の目的で、テンター伸ばし機械の諸部分が図示されていない)。
【図5】図3および図4の延伸されたPTFE層の機械方向延伸方法を示す図である。
【図6】図3および図4の延伸されたPTFE層の機械方向延伸方法を示す図である。
【図7】延伸されたPTFE層に対して行なわれる最終のカレンダー仕上げまたは濃密化方法を示す図である。
【図8】延伸されたPTFE層に対して行なわれる最終のカレンダー仕上げまたは濃密化方法を示す図である。
【図8A】所望のパターンで層を横切って変化してもよい特性を有するPTFE層を生じるためにテンター伸ばし機械により機械方向に対して実質的に直角である方向に横方向延伸方法中に所定のパターンで延伸剤を塗布する方法を示す図である。
【図8B】テンター伸ばし機械の諸部分が図示の明確の目的で図示されていない図8Aの方法の側面図である。
【図8C】図8Aの包囲部分内に見られる所定パターンにある延伸剤を含有する図8AのPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8D】図8Aの包囲部分8D内に見られる変化された浸透性のパターンを有する図8Aの延伸されたPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8E】図8Aの包囲部分8C内に見られる所定パターンで延伸剤を含有する図8AのPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8F】図8Aの包囲部分8D内に見られる変化された浸透性のパターンを有する図8Aの延伸されたPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8G】図8Aの包囲部分8C内に見られる所定パターンで延伸剤を含有する図8AのPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8H】図8Aの包囲部分8D内に見られる変化された浸透性のパターンを有する図8Aの延伸されたPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8I】図8Aの包囲部分8D内に見られる所定のパターンで延伸剤を含有する図8AのPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8J】図8Aの包囲部分8D内に見られる変化された浸透性のパターンを有する図8Aの延伸されたPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8K】図8Aの包囲部分8C内に見られる所定パターンで延伸剤を含有する図8AのPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図8L】図8Aの包囲部分8D内に見られる変化された浸透性のパターンを有する図8Aの延伸されたPTFE層の一部の別の具体例の拡大図である。
【図9】20000の倍率におけるPTFE層の走査電子顕微鏡(SEM)像である。
【図10】14000の倍率における図9のPTFE層のSEM像である。
【図11】7000の倍率における図9のPTFE層のSEM像である。
【図12】3000の倍率における図9のPTFE層のSEM像である。
【図13】500の倍率における図9のPTFE層のSEM像である。
【図14】低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していないPTFE層と、多孔性PTFE層とを備えている複合PTFEフィルムを概略的に示す図である。
【図15】低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない外側層と、流体浸透性の内側層とを備えている簡単化過剰構造体を概略的に示す図である。
【図16】低い流体浸透性を有するか或は流体浸透性を実質的に有していない層と、流体浸透性の内側層とを備えている簡単化過剰構造体を概略的に示す図である。
【図17】膨らまし可能な導管のネットワークを有する血管内移植片の実施形態を示す図である。
【図18】図17の移植片の膨らまし可能な導管の横方向横断面図である。
【図19】図17の移植片の膨らまし可能な導管の横方向横断面図である。
【図20】図17の移植片の膨らまし可能な導管の横方向横断面図である。
【図21】管状の膨らまし可能な導管の具体例の横方向横断面図である。
【図22】膨らまし可能な血管内移植片の他の実施形態を示す立面図である。
【図23】膨らまし可能な二股状の血管内移植片の実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTFE層を用意することと、
延伸剤をPTFE層の少なくとも1つの横帯域に所定のパターンで選択的に塗布することと、
PTFE層を延伸することと、
を備えているPTFEを処理する方法。
【請求項2】
少なくとも1つの横帯域が延伸剤で湿っている間にPTFE層を延伸する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
PTFE層の延伸はPTFE層を約2:1ないし約20:1の延伸比だけPTFE層を延伸することよりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
PTFE層の延伸は機械方向における延伸よりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
層の延伸は層を機械方向に対して横の方向に延伸することよりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
PTFE層を圧縮し且つ濃密化するために、延伸されたPTFE層をカレンダー仕上げすることを更に備えている請求項1に記載の方法。
【請求項7】
延伸剤はイソパラフィンよりなる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
延伸剤はナフサ、ミネラルスピリット、アルコール、MEK、トルエンおよびアルコールよりなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
延伸剤の選択的塗布前のPTFE層の延伸剤含有量は約0重量パーセントないし約22重量パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
延伸されたPTFE層を2回目に延伸することを更に備えている請求項1に記載の方法。
【請求項11】
延伸剤含有量レベルを有するPTFE層を用意することと、
所定のパターンにおけるPTFE層の部分の少なくとも1つの横帯域から延伸剤を選択的に除去することと、
PTFE層を延伸することと、
を備えているPTFEを処理する方法。
【請求項12】
PTFE層の少なくとも一部が延伸剤で湿っている間にPTFE層を延伸する請求項11に記載方法。
【請求項13】
PTFE層の延伸はPTFE層を約2:1ないし約20:1の延伸比だけPTFE層を延伸することよりなる、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
PTFE層の延伸は機械方向における延伸よりなる、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
層の延伸は層を機械方向に対して横の方向に延伸することよりなる、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
PTFE層を圧縮し且つ濃密化するために、延伸されたPTFE層をカレンダー仕上げすることを更に備えている請求項11に記載の方法。
【請求項17】
延伸剤はイソパラフィンよりなる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
延伸剤はナフサ、ミネラルスピリット、アルコール、MEK、トルエンおよびアルコールよりなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
延伸剤の選択的除去の前に延伸剤をPTFE層に塗布することを更に備えている請求項11に記載の方法。
【請求項20】
延伸剤の選択的塗布前のPTFE層の延伸剤含有量は約3重量パーセントないし約22重量パーセントである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PTFE層への塗布後に、PTFE層に隣接して配置された掬い取り部材により延伸剤を広げることを更に備えている請求項19に記載の方法。
【請求項22】
延伸されたPTFE層を2回目に延伸することを更に備えている請求項11に記載の方法。
【請求項23】
PTFE層を用意することと、
層の表面の少なくとも1つの横帯域に、これが延伸剤で飽和されるまで、延伸剤を所定のパターンで塗布することと、
PTFE層の横帯域が延伸剤で飽和されている間にPTFE層を延伸することと、
を備えているPTFEを処理する方法。
【請求項24】
延伸されたPTFE層を2回目に延伸することを更に備えている請求項23に記載の方法。
【請求項25】
PTFE層を用意し、
PTFE層の少なくとも1つの横帯域に延伸剤を所定のパターンで選択的に塗布し、
PTFE層を延伸することにより
製造される層を備えているPTFE層。
【請求項26】
延伸剤含有量レベルを有するPTFE層を用意し、
所定のパターンにおけるPTFE層の部分の少なくとも1つの横帯域から延伸剤を選択的に除去し、
PTFEを延伸することにより、
製造される層よりなるPTFE層。
【請求項27】
PTFE層を用意し、
層の表面の少なくとも1つの横帯域に、これが延伸剤で飽和されるまで、延伸剤を所定のパターンで塗布し、
PTFE層の横帯域が延伸剤で飽和されている間にPTFE層を延伸することにより
製造される層よりなるPTFE層。
【請求項28】
多層式血管移植片であって、
血管移植片の内側の内腔を構成する外面および内面を有する第1管状ボディと、
外面および内面を有していて、第1管状ボディの外面に結合された第2管状ボディと、を備えており、
第1管状ボディおよび第2管状ボディのうちの少なくとも一方は、実質的に低い多孔性および低い流体浸透性を有していて、認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していない第1横帯域と、流体浸透性であり且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第2横帯域とを有しているPTFE層を備えている、多層式血管移植片。
【請求項29】
PTFE層を備えている管状構造体であって、PTFE層は、流体浸透性であり且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第1横帯域と、高密度領域を有する独立気泡ミクロ構造を備えている第2横帯域とを有しており、高密度領域の粒子境界部が隣接した高密度領域の粒子広開部に直接連結されており、独立気泡ミクロ構造は認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有していない、管状構造体。
【請求項30】
PTFE層を備えている血管内移植片であって、PTFE層は第2横帯域に隣接して液体浸透性の発泡PTFE層を有している第1横帯域を有しており、この第2横帯域は、(a)粒子境界部が隣接した高密度領域の粒子境界部に直接連結されている高密度領域を有する独立気泡ミクロ構造を有しており、かつ(b)ノードおよび微小繊維ミクロ構造を実質的に有していない、血管内移植片。
【請求項31】
少なくとも1つの膨らまし可能なチャンネルを有する膨らまし可能な血管内移植片よりなり、第2横帯域は膨らまし可能なチャンネルの一部に境界接触している、請求項30に記載の血管内移植片。
【請求項32】
実質的に低い多孔性と、低い流体浸透性とを有していて、認識可能なノードおよび微小繊維構造を有しておらず、且つ著しい再コイル巻きまたは跳ね戻りなしにこのようなPTFE層の機械的操りまたは歪を許容するように高い程度の従順性および柔軟性を有している第1横帯域と、
流体浸透性であり、且つ実質的なノードおよび微小繊維ミクロ構造を有している第2横帯域と、を備えている薄い連続PTFE層。
【請求項33】
PTFE層を用意することと、
PTFE層を延伸することと、
延伸工程中に延伸剤をPTFE層に塗布することと、
を備えているPTFE層を処理する方法。
【請求項34】
認識可能なノードおよび微小繊維ミクロ構造の形成はPTFE層への延伸剤の塗布の前に延伸工程中に生じる、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図8I】
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【図8J】
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【図8K】
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【図8L】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公表番号】特表2008−537914(P2008−537914A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−506493(P2008−506493)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/011682
【国際公開番号】WO2006/113082
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(506135084)トライヴァスキュラー2 インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】