説明

PTP用の包装シート

【課題】従来の積層構造に新しい層を追加する必要がなく、文字や絵柄等を上品かつ控えめに表示することができるPTP用の包装シートを提供する。
【解決手段】基材であるアルミニウム箔22と、その一方の面を覆う白色ベタ印刷層26を備える。白色ベタ印刷層26の表面を覆う耐熱コート層と、アルミニウム箔22の他方の面を覆うヒートシール層34を備える。アルミニウム箔22と白色ベタ印刷層26との間に、アルミニウム箔22の部分を覆う透明又は半透明の下地印刷層24を備える。下地印刷層24には、印刷層のない抜き部28を有し、アルミニウム箔22の一方の面には、抜き部28を通じて透過するアルミニウム箔22の地色と、下地印刷層24で覆った部分の白色ベタ印刷層26の白色との濃淡の差により、文字又は絵柄が表示される。白色ベタ印刷層26の表面の抜き部28と重ならない位置に、情報印刷層30を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、収容部が形成された容器シートに熱接着され、錠剤やカプセル等が入れられた収容部を閉鎖するPTP用の包装シートに関する。
【背景技術】
【0002】
PTP(press through package)は、図2に示すPTP10のように、樹脂製の容器シート12に形成された収容部12a内に小形の錠剤14等を入れ、包装シート16を容器シート12の平面部12bに貼りつけ、収容部12aの開口を閉鎖する包装形態である。この種の包装形態は、従来から薬用の錠剤やカプセル等の包装に広く用いられ、包装シート16には、錠剤等の商品名、成分と含量、識別番号等の文字、バーコード等の主要情報と、リサイクルマーク、企業名、装飾用の絵柄等の補助的情報が表示される。
【0003】
包装シート16の基材は、例えばアルミニウム箔が使用される。アルミニウム箔を用いた包装シート16は、開封するとき、収容部12a内の錠剤14を収容部12aの外側から包装シート16内面側へ強く押し当て、包装シート16を突き破って取り出すタイプのPTP10に適している。また、包装シート16を容器シート12に貼り付ける場合、包装シート16の一方の面に設けたヒートシール層を容器シート12の平面部12bに当接させ、包装シート16の他方の面に設けた耐熱コート層の側から加熱し、ヒートシール層を平面部12bに溶着させる方法が用いられる。
【0004】
従来、アルミニウム箔を基材とするPTP用の包装シートとして、特許文献1に開示されているように、アルミニウム箔の一方の面を覆う白着色層と、白着色層の表面に印刷されたバーコード部と、白着色層及びバーコード部を覆うオーバーコート層と、アルミニウム箔の他方の面を覆う熱接着層とを備えた包装用シートがある。この包装用シートは、バーコード部をオーバーコート層の側から確認することができ、バーコードリーダ等によって読み取られる。白着色層は、所定量の白色顔料を含み、バーコードリーダがバーコード部の内容を読み取りやすいように、バーコード部とのコントラストをはっきりさせる働きをする。また、同様の目的で、アルミニウム箔と白着色層との間に透明又は半透明の下地層を設ける構造も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−264757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、包装シート16の表示内容には、錠剤の商品名等の主要情報の他に、リサイクルマーク等の補助的情報が記載され、包装シート16の表面に表示される情報量が多くなる傾向があった。そのため、主要情報は目立つように表示し、補助的情報は控えめに表示することが求められる。情報表示に差を持たせる方法として、主要情報と補助的情報を表わす文字等の大きさに差を付けることが考えられるが、小さい表示は見にくいので、通常は色分けをする必要があった。色分けした情報表示を行う場合、特許文献1に開示された従来の包装用シート等では、着色が異なる複数の印刷層を設けるため、製造時の印刷工程数が増加し、コストアップの要因になるという問題があった。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたもので、印刷層の増加を抑えつつ、異なる表示形態で文字や絵柄等の多くの情報を表示することができるPTP用の包装シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、基材であるアルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の一方の面を覆う白色ベタ印刷層と、前記白色ベタ印刷層の表面を覆う耐熱コート層と、前記アルミニウム箔の他方の面を覆うヒートシール層とを備え、前記耐熱コート側の面が加熱されることによって前記ヒートシール層が相手方の容器シートに熱接着され、前記容器シートに形成された収容部の開口を閉鎖するPTP用の包装シートであって、前記アルミニウム箔と前記白色ベタ印刷層との間に、前記アルミニウム箔の部分を覆う透明又は半透明の下地印刷層が設けられ、前記下地印刷層には所定形状で印刷層のない抜き部が形成され、前記アルミニウム箔の一方の面には、前記抜き部を通じて透過する前記アルミニウム箔の地色と、前記下地印刷層で覆った部分の前記白色ベタ印刷層の白色との濃淡の差により、文字又は絵柄が表示されたPTP用の包装シートである。
【0009】
前記白色ベタ印刷層の表面の前記抜き部と重ならない位置に、情報印刷層が設けられている。また、前記下地印刷層の主剤は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂であり、前記白色ベタ印刷層は、主剤である塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン樹脂、又はエポキシ樹脂に、白色インキが配合されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
この発明のPTP用の包装シートは、下地印刷層のある白色ベタ印刷層部分は、白色がクリアになり、下地印刷層のない抜き部からは、アルミニウム箔22の地色が白色ベタ印刷層を通じて透過して見え、その濃淡の差によって文字や絵柄等が現れる。従って、特別な印刷層を設けることなく容易に表示を行うことができる。しかも、商品名等の主要情報は情報印刷層を用いて目立つようにクリアに表示し、それと対照的に、リサイクルマーク等の補助的情報は、目立たず正確に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明のPTP用の包装シートの一実施形態を示す断面図である。
【図2】PTPの基本構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明のPTP用の包装シートの一実施形態について、図1に基づいて説明する。この実施形態の包装シート20は、図2に示すPTP10における従来の包装用シート16に代えて使用される包装シートである。
【0013】
包装シート20は、図1に示すように、アルミニウム箔22が基材に用いられている。アルミニウム箔22は、容器シート12に収容された錠剤等の固形物14を取り出すときに破れやすいように、10〜30μm程度の厚さの硬質又は軟質のアルミニウム箔が使用されている。また、一般に、アルミニウム箔は、一方の面が光沢面(鏡面)で他方が艶消面(マット面)になっているタイプ、両面とも光沢面(鏡面)になっているタイプ、両面とも艶消面(マット面)になっているタイプの3タイプがあるが、このアルミニウム箔22は、一方の面が光沢面、他方の面が艶消面になっている。
【0014】
アルミニウム箔22の光沢面側は、透明又は半透明の下地印刷層24で広い部分が覆われている。下地印刷層24の主剤は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂であることが好ましく、後述する白色ベタ印刷層26の白色をクリアに見せる働きをする。下地印刷層24で覆わない抜き部28は、所定の文字や絵柄等の形状になっている。下地印刷層24は、例えば、抜き部28の形状を残して開口した印刷版等を用いて印刷することができる。
【0015】
下地印刷層24及び抜き部28は、白色ベタ印刷層26で覆われている。白色ベタ印刷層26は、印刷用の希釈剤であるメジウムと白色顔料を含むインキとを混合した液状の塗工樹脂をアルミニウム箔22表面に塗布し、乾燥させることによって形成することができる。メジウムは、例えば、主剤である塩化ビニル樹脂に分子架橋促進用のアミノ樹脂を配合した固形分を、適量のシンナー等の溶剤で希釈したものを用いる。メジウムの主剤に用いられる樹脂は、塩化ビニル樹脂に代えて塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン樹脂又はエポキシ樹脂を用いてもよく、後述する情報印刷層26の主剤として用いられる樹脂と同様のものを選択することが望ましい。白色顔料を含むインキは、メジウムの固形分と同様の組成に白色顔料となる酸化チタン等を配合した固形分を、適量のシンナー等の溶剤で希釈したものを用いる。
【0016】
白色ベタ印刷層26の表面には、抜き部28と重ならない位置に、錠剤等の商品名、成分と含量、識別番号等の文字、バーコード等の主要情報が表された情報印刷層30が設けられている。情報印刷層30は、主剤が白色ベタ印刷層26と同様の塩化ビニル樹脂で、そこに黒色、青色又は茶色等の着色顔料が配合されて成るインキをグラビア印刷方式等により印刷し、乾燥させることによって形成される。
【0017】
白色ベタ印刷層26及び情報印刷層30の表面は、耐熱コート層32で覆われている。耐熱コート層32は、包装シート20が容器シート12に熱接着される際に加熱されるので、例えば、190〜230℃のヒートシールバーで3kg/cm、2secの加圧を行って、表面状態に変色、炭化、粘り等の変化が生じない等の条件を満たす耐熱性が求められる。従って、耐熱コート層32は、エポキシ樹脂、ニトロセルロース、又はアクリル系樹脂を主剤とするコート剤が好適であり、情報印刷層30等の表示を視認できるように透明なものが用いられている。
【0018】
アルミニウム箔22の裏側の面は、ヒートシール層34で覆われている。ヒートシール層34は、包装シート20が容器シート12に熱接着される際、平面部12bに当接して溶着する層であり、容器シート12及びアルミニウム箔22に対して良好に接着可能な材料を選択する必要がある。良好な接着とは、140〜160℃のヒートシールバーを用いて2〜3kg/cm、1secの加圧を行って熱接着したとき、0.6〜1kg/m以上の剥離強度が得られることをいう。例えば、容器シート12の材質がポリ塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET樹脂)であれば、ヒートシール層30は、容器シート12と同一の樹脂又は特定の樹脂を混合したものを主剤とする樹脂コート剤を使用することが好ましい。
【0019】
ここでは、容器シート12及びヒートシール層34が透明であり、アルミニウム箔22の裏側の面にも装飾用の絵柄や文字等を表した情報印刷層36を設け、PTP10の容器シート12の側から視認できるようになっている。
【0020】
以上説明したように、この実施形態のPTP用の包装シート20は、下地印刷層24がある白色ベタ印刷層26部分は白色がクリアになる。また、下地印刷層24のない抜き部28からは、アルミニウム箔22の地色が白色ベタ印刷層26を通じて透過して見える。従って、その濃淡の差によって補助的情報である文字や絵柄等が現れ、特別な印刷層を設けることなく容易に表示を行うことができる。しかも、抜き部28の部分にアルミニウム箔22のメタリックな色調が適度な濃さで現れ、文字や絵柄等を目立たなく、上品に表示することができる。従って、例えば、商品名等の主要情報は、情報印刷層30を用いて目立つようにクリアに表示し、それと対照的に、リサイクルマーク等の補助的情報は、抜き部28を用いて控えめに表示にすることができる。
【0021】
なお、この発明の包装シートは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、耐熱コート層にマット剤を混合してもよい。マット剤は、耐熱コート層28の厚み(例えば、1.6〜2μm)よりも大きな粒径(例えば、2〜3μm)のシリカやバリウム等の粉末であって、主剤であるエポキシ樹脂等に対して、2〜5質量%程度の割合で配合するのが好ましい。これにより、耐熱コート層の表面からマット剤の一部が突出することによって微細な凹凸を形成し、照射光を及び反射光を散乱させ、情報印刷層26の視認性をさらに向上させることができる。また、抜き部から透過するアルミニウム箔の地色の見栄えもよくすることができる。
【0022】
また、白ベタ印刷層及び下地層の厚みは、抜き部で表示される文字や絵柄等の濃淡を調整するため、自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0023】
10 PTP
12 容器シート
20 包装用シート
22 アルミニウム箔
24 下地印刷層
26 白色ベタ印刷層
28 抜き部
30,36 情報印刷層
32 耐熱コート層
34 ヒートシール層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材であるアルミニウム箔と、前記アルミニウム箔の一方の面を覆う白色ベタ印刷層と、前記白色ベタ印刷層の表面を覆う耐熱コート層と、前記アルミニウム箔の他方の面を覆うヒートシール層とを備え、前記耐熱コート側の面が加熱されることによって前記ヒートシール層が相手方の容器シートに熱接着され、前記容器シートに形成された収容部の開口を閉鎖するPTP用の包装シートにおいて、
前記アルミニウム箔と前記白色ベタ印刷層との間に、前記アルミニウム箔の部分を覆う透明又は半透明の下地印刷層が設けられ、
前記下地印刷層には所定形状で印刷層のない抜き部が形成され、
前記アルミニウム箔の一方の面には、前記抜き部を通じて透過する前記アルミニウム箔の地色と、前記下地印刷層で覆った部分の前記白色ベタ印刷層の白色との濃淡の差により、文字又は絵柄が表示されたことを特徴とするPTP用の包装シート。
【請求項2】
前記白色ベタ印刷層の表面の前記抜き部と重ならない位置に、情報印刷層が設けられた請求項1記載のPTP用の包装シート。
【請求項3】
前記下地印刷層の主剤は、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂であり、
前記白色ベタ印刷層は、主剤である塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、変性ポリオレフィン樹脂又はエポキシ樹脂に、白色インキが配合されたものである請求項1又は2記載のPTP用の包装シート。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−28381(P2013−28381A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166606(P2011−166606)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(511069932)昭北ラミネート工業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】