説明

Rゲージ

【課題】狭隘場所でのホース又は、索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を容易に、且つ素早くしかも精度よく測定できるRゲージを提供することを目的とする。
【解決手段】車両等に搭載された機器類を作動させる作動媒体を内在するホース8又は索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を測定するRゲージ1において、半径の異なる複数の円弧線21、22…を同心的に配置した略三角形状で且つ、同一形状の透明なゲージ板2を層状に重層し、前記円弧線21、22…の中心位置Cを軸支して扇状に展開可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホース又は、索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を測定するRゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両等に搭載された機器類を作動させる作動媒体を内在するホース又は、索動ケーブルはその性能を十分に発揮するための条件として、それらの配索曲げR(曲率半径)を規定している。
配索場所が広い場合は配索曲げRを大きく出来るので問題ないが、配索場所が狭い場合に種々の不具合が発生する。
【0003】
例えば、内部を通る流体が液体の場合、配索曲げR(曲率半径)が規定の配索曲げRより小さいと流体の抵抗が大きくなり、且つホースの外側では大きな張力が作用し、内側では大きな圧縮力が作用するので、流体の圧力が繰返し変動することにより、耐久性の劣化が予想以上に進む等の不具合が生じる。
また、索動ケーブル等の場合、配索曲げR(曲率半径)が規定の配索曲げRより小さいと外筒と内部の索動ケーブルとが曲げR部で強く接触して、索動ケーブルの摩耗、抵抗による伝達力のむらが生じ、索動ケーブルとしての十分な機能を発揮できないことが生じる。
【0004】
そのため、設計段階では、目的、使用条件等を考慮してホース又は、索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を規定している。
ところが、車両等に組込まれたホース又は、索動ケーブルの配索状況の測定を行う場合、測定が容易で、且つ正確に測定できる測定ゲージが見当たらない。
先行技術として、実開昭51−41468号公報(特許文献1)が開示されている。この特許文献1の技術の場合、図4に示すように、ゲージ板01の一端部において互いに異なる半径のR面02を備えると共に、このR面02頂点を通る中心線上で夫々長さ方向の長孔03を備えている。04(図5参照)は一端部に鍔05を備えたピンで前記ゲージ板01のすべてにわたって、それらの長孔03に沿って摺動可能に嵌合されて、その鍔05と他端部に螺合されたナット06との間でゲージ板01のすべてを層状で一体的に締付け及び弛緩可能にしている。最外側となるゲージ板01の表面の長孔03に沿って、R面02の頂点からの距離を表す目盛り07が刻んである。08はピン04の鍔05に設けられた半径の目盛り07に対する目印である。
【0005】
測定方法は、各ゲージ板01の頂点のR面02で夫々測定する場合と、測定物が大きい場合には、図5に示すようにゲージ板01を扇型に展開させて、R面02の頂点がピン04を中心にした円軌跡R´を形成して、半径目盛り07から曲率半径を読取る技術が開示されている。
しかし、狭いところでは、多数のゲージ板01のR面02頂点をホースの湾曲に合わせていく場合に、次のゲージ板01の頂点を調整する際に、前に調整したゲージ板01が次のゲージ板01を調整移動する際に共ずれする可能性もあり、狭いところでの調整作業は実施しにくく、測定時間も長くなる不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭51−41468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は前記問題点に鑑み成されたもので、狭隘場所でのホース又は、索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を容易に、且つ素早くしかも精度よく測定できるRゲージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる目的を達成するもので、車両等に搭載された機器類を作動させる作動媒体を内在するホース又は索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を測定するRゲージにおいて、半径の異なる複数の円弧線を同心的に配置した略三角形状で且つ、同一形状の透明なゲージ板を層状に重層し、前記円弧の中心位置を軸支して扇状に展開可能としたことを特徴とする。
【0009】
かかる発明において、半径の異なる複数の円弧線を同心的に配置したので、1枚のゲージ板で複数の曲率半径を測定でき、ゲージ板を選定する煩わしさが無く、作業の効率化が可能となる。
また、ゲージ板を扇状に展開すれば、大きな(円弧の長い)対象物の測定が可能となり使用範囲(適用範囲)が広くなると共に、コンパクトに収納できるので、持ち運びも容易になる。
更に、透明なゲージ板なので、車両等のホース又は索動ケーブル類に直接接触させて測定できるので、測定精度が向上する。
【0010】
また、本願発明において好ましくは、前記軸支した部分の前記ゲージ板間に弾性部材を介装して、前記ゲージ板を扇状に展開可能にすると共に、展開位置に保持可能とするとよい。
【0011】
このような構成にすることにより、ゲージ板を展開し易くすると共に、展開したゲージ板が弾性体の弾性力によって展開状態を維持できるようにして、測定の容易性と正確性の向上を図ることができる。
【0012】
また、本願発明において好ましくは、前記複数の各円弧線には、該円弧線に沿って長さを測定する目盛りを配設するとよい。
(作用効果)
【0013】
このような構成にすることにより、配索の曲げRが計画通りの寸度になっていない場合等に配索物の長さを測定することにより、原因を把握する際の一助とすることができる。
【0014】
また、本願発明において好ましくは、前記中心位置は前記ゲージ板の面に対し、直角方向に貫通した貫通孔にボルトを挿通し、複数の前記ゲージ板を蝶ナットにて共締めするとよい。
【0015】
このような構成にすることにより、ゲージ板を扇状に展開又は収納する際、軸支されている中心位置を素手で締付け又は、弛緩可能な蝶ナットにて共締めするようにしたので、扇状への展開又は、収納が容易になると共に、扇状状態の維持が確実となり、測定の容易性と精度の向上を図ることができる効果を有している。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半径の異なる複数の円弧線を同心的に配置したので、1枚のゲージ板で複数の曲率半径を測定でき、ゲージ板を選定する煩わしさが無く、測定作業の効率化が可能となる。
また、同一形状の透明なゲージ板を層状に重層し、前記円弧の中心位置を軸支して扇状に展開可能としたので、ゲージ板を扇状に展開すれば、大きな(円弧の長い)対象物の測定が可能となり使用範囲(適用範囲)が広くなると共に、前記ゲージ板間に弾性部材を介装して弾性体の弾性力によって扇状への展開及び収納が容易になると共に、展開した扇状の状態を維持できるようになり、測定の容易性と精度の向上を図ることができると共に、コンパクトに収納でき、持ち運びも容易になる。
更に、透明なゲージ板なので、車両等のホース又は索動ケーブル類に直接接触させて測定できるので、測定が容易であると共に、測定精度が向上する効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】は本発明の実施形態にかかる(A)はゲージ板を収納した状態のRゲージの正面図、(B)は(A)の側面図を示す。
【図2】は本発明の実施形態にかかるゲージ板2枚を展開させた場合の正面図を示す。
【図3】は本発明の実施形態にかかるゲージ板3枚を展開させた場合の正面図を示す。
【図4】は従来技術によるRゲージの正面図を示す。
【図5】は従来技術によるRゲージを展開させた場合の正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。
但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0019】
図1(A)は本発明の実施形態にかかるRゲージ1のゲージ板2を収納した状態の正面図を示し、(B)は(A)の側面図を示す。
Rゲージ1は略三角形状で同一形状のゲージ板2を3枚(2−1、2−2、2−3)層状に重ね、3枚のゲージ板2を扇状に展開可能にボルト51と蝶ナット52にて軸支された軸支部5を有している。
略三角形状であるゲージ板2は、透明な樹脂材(ポリカーボネート等の硬質材が好適である。)で外周部の形状が円弧状に形成された略二等辺三角形、又は、扇形を成している。
【0020】
ゲージ板2は、前記円弧状の曲率半径の中心Cを中心にして、複数の曲率半径の円弧線(21、22…26)が同心的で且つ、ゲージ板2の周方向全域に亘って描かれている。
例えば、実施形態において、円弧線21のR100は曲率半径が100mm、円弧線22のR90は曲率半径が90mm、円弧線23のR80は曲率半径が80mm、円弧線24のR70は曲率半径が70mm、円弧線25のR60は曲率半径が60mm及び、円弧線25のR50は曲率半径が50mmとなっている。
【0021】
曲率半径の中心Cを含む軸支部5は各ゲージ板2間に弾力性を有したシート状の弾性部材54(材質としてはビニール、ゴム又は皿ばね等)が介装され、外側部は金属製の平ワッシャ53を介してボルト51と蝶ナット52とで締結している。
弾性部材54を皿ばねとした場合は、皿ばねの両側に平ワッシャ等を介装させて、ゲージ板2に皿ばねが直接接触しないようにする必要がある。これは、皿ばねの端縁によって、ポリカーボネート等が削られるのを防止する目的である。
また、蝶ナット52を使用したので、素手でボルト51の締付け及び弛緩が容易にできると共に、弾性部材54を介装しているので、蝶ナット52を強く締付けなくても、弾性部材54の弾性力によって、ゲージ板2の扇状状態への展開、展開状態の維持及び収納が容易にでき、締付けの程度によっては蝶ナット52の締付け及び弛緩を省くことができる。
尚、ボルト51と蝶ナット52で締付け及び弛緩が容易にできるので、弾性部材54を取外すことも可能である。この場合は、蝶ナット52の締付け及び弛緩を省くことはできない。
本実施形態では、軸支部5をボルト51及び蝶ナット52としたが、ボルト51及び蝶ナット52に替えてリベット等にすることも出来る。
この場合でも、リベットの締付け程度を調整する必要はあるが、各ゲージ板2間に弾性部材3を介装することによって、ゲージ板2の扇状への展開、展開状態の維持及び収納が容易にできる。
【0022】
また、各円弧線(21、22…26)には中心Cを中心にした二等辺三角形、又は、扇形の二等分線Nとの交点を中心にして左右〔図1(A)に基づく〕に10mm(L)単位で長さを測定する目盛りを振分けて付してある。10mm(L)単位の中間目盛りは補助目盛りで5mmになっている。
また、本実施形態ではゲージ板2が見難くなるので目盛りの数値は記載してないが、必要に応じて適宜付すと、長さの測定が容易となる。
従って、図1に示すようにR100の場合、各ゲージ板2−1、2−2、2−3共に、左端から1番目の目盛り27(図1参照)(各ゲージ板共通符号)、右端から1番目の目盛り28(各ゲージ板共通符号)、夫々は扇状端縁から円弧上同一長さの位置に目盛られている。
これによって、図2に示すように、ホース8の曲率半径が100mmの軸線Qに沿って、Mの範囲の長さを測定する場合、ゲージ板2−1の右端から1番目の目盛り28と、ゲージ板2−2の左端から1番目の目盛り27どうしを一致させた位置P1を、ホース8の測定したい範囲Mの中心位置に合わせる。
【0023】
ゲージ板2−1とゲージ板2−2とがP1を中心にして左右対称になる。この場合、ゲージ板2−3はゲージ板2−2と重層した状態になっている。
従って、合わせた位置P1の右側又は左側の何れか一方の長さSを読取り、2倍すると求める長さMになる。
また、測定場所が狭くて、図2の幅(扇状に展開した方向)を少し狭くしたい場合には、例えば、ゲージ板2−1の右端から3番目の目盛りと、ゲージ板2−2の左端から3番目の目盛りどうしを一致させた位置P1をホース8の測定したい範囲Mの中心位置に合わせれば同様に測定できる。
この場合、上述より幅(扇状に展開した方向)が円弧上において40mm狭くなる。
【0024】
更に、図3に示すように、ゲージ板2を3枚展開させた場合は、ゲージ板2−1の右端から1番目の目盛り28と、ゲージ板2−2の左端から1番目の目盛り27どうしを一致させた位置P2と、ゲージ板2−2の右端から1番目の目盛り28と、ゲージ板2−3の左端から1番目の目盛り27どうしを一致させた位置P3として、P2とP3の中間位置P4(ゲージ板2−2の二等分線Nになる)を、ホース8の測定したい範囲M´の中心位置に合わせ、合わせた位置P4の右側又は左側の何れか一方の長さS´を読取り、2倍すると求める長さM´になる。
これにより、長さの読取り時間を短縮できる効果を有すると共に、配索場所の広さに関係なくホース又は索動ケーブルの曲率半径及び、長さを容易に測定できる効果を有している。
ホース又は索動ケーブルの長さを測定するのは、曲率半径が規定通りになっていない場合に原因を把握する際の一助となる。
【0025】
本実施形態によると、透明な複数のゲージ板2を扇状に展開・収納が容易にできると共に、扇状に展開した状態を容易に維持できるので、狭い所でのホース又は索動ケーブルの曲率半径及び、長さを容易に測定できると共に、透明な材質に同心的な複数の円弧線が描かれているので、被測定物に接触させて直接曲率半径を読取ることができ、測定精度が高く且つ、早く容易にできる効果を有している。
また、ゲージ板2間に弾性部材3を介装したので、ゲージ板2の展開、展開状態の維持及び収納が弾性部材3の弾性力により操作が容易にできる効果を有している。
【産業上の利用可能性】
【0026】
車両等に搭載された機器類を作動させる作動媒体を内在するホース又は索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を測定して、規定の配索曲げRを維持することにより、機器類の確実な作動を確保すると共に、耐久性の向上を図る車両等に適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1 Rゲージ
2 ゲージ板
5 軸支部
8 ホース
21、22 円弧線
27 左端から1番目の目盛り
28 右端から1番目の目盛り
51 ボルト
52 蝶ナット
53 平ワッシャ
54 弾性部材
C 曲率半径の中心
M 測定範囲
N 二等分線
Q ホースの軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両等に搭載された機器類を作動させる作動媒体を内在するホース又は索動ケーブルの配索曲げR(曲率半径)を測定するRゲージにおいて、半径の異なる複数の円弧線を同心的に配置した略三角形状で且つ、同一形状の透明なゲージ板を層状に重層し、前記円弧の中心位置を軸支して扇状に展開可能としたことを特徴とするRゲージ。
【請求項2】
前記軸支した部分の前記ゲージ板間に弾性部材を介装して、前記ゲージ板を扇状に展開可能にすると共に、展開位置に保持可能としたことを特徴とする請求項1記載のRゲージ。
【請求項3】
前記複数の各円弧線には、該円弧線に沿って長さを測定する目盛りを配設したことを特徴とする請求項1記載のRゲージ。
【請求項4】
前記中心位置は前記ゲージ板の面に対し、直角方向に貫通した貫通孔にボルトを挿通し、複数の前記ゲージ板を蝶ナットにて共締めしたことを特徴とする請求項1記載のRゲージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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