RFタグリーダライタ
【課題】1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供する。
【解決手段】第1の放射素子および第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、第2の放射素子から、第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置10と、使用者の操作に応じて、第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタ100。
【解決手段】第1の放射素子および第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、第2の放射素子から、第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置10と、使用者の操作に応じて、第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタ100。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でRFタグと通信する、RFタグリーダライタおよびそのアンテナに関し、特に、不特定のRFタグとの一括的な通信および特定のRFタグとの選択的な通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)システムが注目され、例えば流通分野などにおいて導入が進んでいる。RFIDシステムは、ICチップとアンテナから成り、物品に付されるRFタグ(無線タグ、RFIDタグとも称される)と、該RFタグのICチップ内のメモリに記憶されている情報を非接触で読み取るとともに、該RFタグのICチップ内のメモリに情報を非接触で書込むRFタグリーダライタ(以下、単にリーダライタとも称す)とから構成される。
【0003】
RFIDシステムにおける処理としては、例えば、店舗などでの棚卸業務における、複数のRFタグからの一括での情報読取処理が挙げられる(以下、一括読取と称す)。このとき、リーダライタは、数mの距離が離れた範囲に電波を放射し、複数の商品にそれぞれ付された不特定のRFタグと通信を実行して、各RFタグに記憶されている情報を一括的に読み取る。また、RFIDシステムにおける他の処理としては、1つまたは複数の特定のRFタグに対する読み取り、および書込み処理が挙げられる(以下、選択読取、および選択書込みと称す。また、これらを総称して選択通信と称す)。このとき、リーダライタは、特定のRFタグから選択的に情報を読み取り、または該RFタグに対し、選択的に情報の書込みを実施する。
【0004】
ここで、店舗などにおいては、周辺にRFタグが付された商品が多数存在する環境での選択書込み処理等が行われる場合がある。そして、このような環境においては、周辺のRFタグとの間で誤って通信が行われた結果、使用者の所望するRFタグとは異なるRFタグに情報が書込まれるなどの事態が生じ得る。よって、従来において、使用者は、一括的読み取り用のリーダライタと、該一括読取用リーダライタよりも電波の送信出力が小さく、指向性の範囲も狭い選択通信用リーダライタとを、業務に応じて使い分ける必要があった。また、選択通信を行う場合には、使用者は、リーダライタのアンテナ装置周辺から、通信対象でないRFタグを遠ざけるなどの処置を講じる必要があった。
【0005】
そのため、周囲のRFタグとの一括通信(一括読取のほか、不特定のRFタグに対し、一括的に情報を書込む場合も含む)が可能であるとともに、選択通信を実施する場合にあっては使用者の所望する特定のRFタグと通信可能とするための技術が提案されている(例えば特許文献1)。具体的には、特許文献1では、リーダライタが備えるアンテナ装置において、一括通信用と選択通信用の、指向性の異なる2つのアンテナを備える構成とすることが提案されている。また、特許文献1では、通信の態様に応じて、アンテナの角度を調整して放射される電波の指向性を変化させるとともに、該アンテナ角度の変化に応じて電波の送信出力を変化させることも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術による場合でも、使用者はアンテナ装置周辺から通信対象でないRFタグを遠ざける必要があるが、例えば作業の迅速性が求められる場合には当該処置は必ずしもとれないことがある。また、UHF帯や2.4GHz帯などの電波方式が用いられている場合には、周辺の環境や信号の変動により、アンテナ装置から一定の距離を空けたとしても通信対象でないRFタグとの通信が行われることがあった。
【0007】
また、以上のような原因から読取や書込みに失敗した場合、使用者はその処理をやり直す必要があるが、誤って読取や書込みを行ったRFタグを特定するのは容易ではない。特に、書込みが行われる前のRFタグは、一般に製造メーカーで暫定で同じIDが付与されており、やり直し作業にはさらに手間が掛かる。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、第1の放射素子および第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、第2の放射素子から、第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置と、使用者の操作に応じて、第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタに関する。
【発明の効果】
【0010】
以上に詳述したように、本発明によれば、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において当該RFタグとより確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態のRFタグリーダライタの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のRFタグリーダライタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のRFタグリーダライタが有する無線部の回路構成図である。
【図4】第1の実施形態に係る複合アンテナ20の側面図である。
【図5】第1の実施形態に係る第1の放射素子14の概要を示す平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る第2の放射素子15の概要を示す平面図である。
【図7】第1の実施形態における、RFタグとの通信に係る処理フローを示すための図である。
【図8】第1の実施形態における、処理指定画面の例示図である。
【図9】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図10】第1の実施形態における、処理開始画面の例示図である。
【図11】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図12】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図13】第2の実施形態に係る、制限部材が装着されたアンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、RFタグから読取、またはRFタグに書込みされる情報として、識別IDを例に挙げて説明する。また、一括通信として、例えば棚卸などの業務で利用される一括読取を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態による、RFタグリーダライタ100の概要を示す斜視図である。第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10と、リーダライタ本体30とから構成されている。アンテナ装置10とリーダライタ本体30とは、同軸ケーブル40で接続されている。また、アンテナ装置10は、アンテナ筐体12と、筐体12内部に収容される、図4〜6に示す第1の放射素子14および第2の放射素子15を有する複合アンテナ20とを備える。リーダライタ100は、複合アンテナ20から放射される電波を介して、RFタグ(不図示)と通信を行う。
【0014】
このとき、第1の実施形態において、リーダライタ100は、送信出力を調整する(変化させる)ことにより、第1の放射素子14から、第1の放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できる。また、第2の放射素子15は、送信出力を調整することにより、第1の放射素子14よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できる。
【0015】
まず、リーダライタ本体30が備えるハードウェア構成について説明する。図2に示すように、リーダライタ本体30は、制御部31と、無線部33と、入力部35と、表示部37と、インターフェース部39と、を有する。また、バッテリおよびその充放電を制御する図1に示す電源部32により、各ハードウェアおよびアンテナ装置10へ電流が供給される。したがって、第1の実施形態のリーダライタ100は、携帯型リーダライタとして構成されている。
【0016】
制御部31は、使用者からの入力に基づき、RFタグとの通信や、ネットワークを通じてのPC(Personal Computer, 不図示)などの外部機器との通信など、後述する記憶部315に記憶されているプログラムを実行することにより、リーダライタ100における各種処理を行う役割を有している。例えば、後述するインターフェース部39を介してPCから取得されたり、使用者から後述する入力部35を介して入力された識別IDがアンテナ装置10から電波を介してRFタグに送出されるように、通信プロトコルに従って無線部33を制御する。また、制御部31は、以下に説明する記憶部311と、アンテナ切替制御部313と、送信出力制御部315と、とを有する。
【0017】
記憶部311は、取得した識別IDや、該識別IDを電波を介して送信したりするための通信プロトコル(例えば、ISO18000−6に準拠したRFタグの通信プロトコル)のほか、後述する送信出力制御部311が用いる、一括読取、選択読取、選択書込みのいずれかの処理の形態に対応した送信出力の大きさについての情報である、出力情報が記憶されている。
【0018】
アンテナ切替制御部313は、行われる処理に応じて、電波が放射される放射素子を、第1の放射素子14と第2の放射素子15の間で切り替える(言い換えれば、電波が放射される放射素子の選択を実施する)。具体的には、アンテナ切替制御部313は、一括読取が行われるときは第2の放射素子15から電波が放射されるよう、無線部33を制御する。また、アンテナ切替部313は、選択通信が行われるときは第1の放射素子14から電波が放射されるよう、無線部33を制御する。
【0019】
送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている送信出力情報に基づき、該送信出力が示す送信出力でアンテナ装置10から電波が放射されるように、後述する無線部33を制御する。
【0020】
ここで、第1の実施形態において、送信出力制御部315は、選択読取および選択書込みに係る出力情報(選択読取出力情報および選択書込み出力情報)に基づき後述する無線部33を制御するときは、第1の放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波をアンテナ装置10(具体的には第1の放射素子14)から放射させる。また、一括読取に係る一括読取出力情報に基づき無線部33を制御するとき、送信出力制御部311は、選択読取または選択書込みのときよりも大きい送信出力の電波を、アンテナ装置10(具体的には第2の放射素子15)から放射させる。
【0021】
なお、第1の実施形態においておける制御部31は、具体的には、リーダライタ本体30に実装されるCPU、RAM、ROMにより構成することができる。
【0022】
また、送信出力の好適な値は、一括読取や選択通信などの処理の態様のほか、RFタグの種類、処理を行う場所の通信環境(例えば、壁の材質、RFタグが載置されている棚の材質、RFタグが付された物品の材質、RFタグの密集度など)に応じて変化する。そのため、送信出力が各処理に対して予め設定されている場合には、第1の実施形態のように、1つの処理に対して複数の出力情報を記憶されていることが、より好適な送信出力の設定が可能となるため、好ましい。第1の実施形態においては、一括読取を例に挙げて説明すると、一括読取出力情報A、B,およびCの、異なる送信出力を示す3種類の出力情報が記憶されている。
【0023】
無線部33は、アンテナ装置10を介してRFタグと通信するための機能を備えているハードウェアである。無線部33の詳細な回路構成図を図3に示す。
【0024】
ここで、RFタグがバッテリを持たないパッシブタグの場合には、無線部33は、先ず、無変調キャリアをパワーアンプ331で増幅して、方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力し、RFタグを起動させる。RFタグにデータを送信する場合には、通信プロトコルに従い符号化した信号について振幅変調器333にて振幅変調を行った後にパワーアンプ331で増幅し、次いで方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力することにより、送信する。また、RFタグから信号を受信する時には、リーダライタ100から無変調キャリアを送信している状態で、RFタグがアンテナ端のインピーダンスを制御(バックスキャッタ)し、これによって反射状態が変わり、これをリーダライタ100のアンテナ装置で検出する。受信した電磁波信号は、方向性結合器332を介して直交復調され、同期クロック生成部I(334)およびQ(335)にて同期クロックを生成し、プリアンブル検出部I(336)およびQ(337)にて予め決められたプリアンブルを検出することによりデータの先頭を検出し、複合部I(338)およびQ(339)にて復号して受信データを得る。また、誤り検出符号によって、エラー検出部I(341)およびQ(342)にて誤りの有無を検出するようになっている。図3の場合には、直交復調の同相成分での復調と直交成分での復調のどちらかで誤りがなければ正しくデータを受信したと判定する構成である。また、制御部31の送信出力制御部315からの制御(具体的には、送信出力を設定するための送信出力設定信号の送出)により、パワーアンプ331にて送信出力が処理の形態に合わせて設定できるように構成されている。また、制御部31のアンテナ切替制御部313からの制御(具体的には、アンテナを切り替えるためのアンテナ切替信号の送出)により、アンテナ切替部345にて電波を放射する放射素子を第1の放射素子14または第2の放射素子15に設定している。
【0025】
入力部35は、該入力部35を用いて使用者がリーダライタ100に指示を入力するためのハードウェアであり、具体的には押下により指示の入力が可能なボタン(キー)や、タッチパッドなどで構成することができる。
【0026】
表示部(ディスプレイ)37は、使用者にRFタグとの通信結果を示したり、指示入力を促すために用いることができるハードウェアであり、具体的にはLCD(Liquid crystal display)等とすることができる。なお、表示部37をタッチパネルセンサを搭載したグラフィカルディスプレイとして構成し、入力部35と表示部37とを一体化させてもよい。
【0027】
インターフェース部39は、ネットワークを介し、識別IDが記憶されているPCなどの外部機器と通信を行うためのハードウェアである。
【0028】
次に、本実施形態のアンテナ装置10について説明する。
【0029】
図1に示すように、アンテナ装置10は、略矩形のアンテナ筐体12と、該アンテナ筐体12に収容される複合アンテナ20とを備える。なお、第1の実施形態においてはアンテナ筐体12には把持部材19が設けられており、使用者が携帯しながらリーダライタ100を使用する際に、アンテナ装置10を把持しやすいように構成されている。しかしながら、当該把持部19を設けない構成とすることも、もちろん可能である。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る、アンテナ筐体12内部に収納される、複合アンテナ20のY-Z平面における側面図である。複合アンテナ20は、第1の放射素子14と、第2の放射素子15と、地導体16と、第1の誘電体層17と、第2の誘電体層18とを有する。
【0031】
第1の放射素子14および第2の放射素子15は、それぞれが平面視にて略矩形の形状を有しているアルミニウムや銅などの導電性材料で構成された平板状放射素子であり、互いに略平行に配置されている。また、地導体16は、アルミニウムや銅などの導電性材料で構成され、第1の放射素子と第2の放射素子との間に配置されている。さらに、第1の誘電体層17は、第1の放射素子14と地導体16との間に配置され、第2の誘電体層18は、第2の放射素子15と地導体16との間に配置される。すなわち、複合アンテナ20は、第1のアンテナ素子14を有する第1のパッチアンテナと、第2の放射素子15を有する第2のパッチアンテナからなる。
【0032】
第1の実施形態においてアンテナ装置10が備える複合アンテナ20を以上のような構成とすることで、第1の放射素子と第2の放射素子とを一体化でき、また、地導体を共通化できるので、2つのパッチアンテナを備える他の構成とするよりも、アンテナ装置10を小型化および軽量化できる。
【0033】
ここで、第1の実施形態において、第1の誘電体層17は、第2の誘電体層18よりも大きな比誘電率を有しており、第2の放射素子15の外形は、第1の放射素子14の外形よりも大きな構成である。このように外形の大きさの異なる放射素子を備える構成とすることにより、第1の実施形態に係るアンテナ装置10にあっては、小さい方の放射素子から電波を放射させたときに、図4における破線にて示すように、アンテナ装置10から放射される電波をより近傍に集中させることができる。したがって、アンテナ装置10は、リーダライタ本体30の制御に基づき、第1の放射素子14から、該放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるので、第1の実施形態のリーダライタ100は、選択通信において、特定のRFタグとの通信をより確実に行うことができる。また、第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10が、アンテナ利得がより大きく、リーダライタ本体30の制御に基づきより広い範囲にRFタグとの通信可能な電波を放射できる第2の放射素子15を有することにより、選択通信とともに一括読取も行うことができる。
【0034】
なお、第1の実施形態において、第1および第2の誘電体層17、18の比誘電率や、第1および第2の放射素子14、15の外形の形状、大きさは特に限定されず、公知の方法に従い当業者が適宜設定できる。例えば、第1の誘電体層17の比誘電率(εr1)がおよそ4であり、第2の誘電体層18の比誘電率(εr2)をおよそ1であるとともに、第1および第2の放射素子14、15がそれぞれ正方形状の外形を有している場合を例に挙げて説明する。ここで、パッチアンテナは、一般に、略正方形状の放射素子を有するとき、その1辺の長さ(電気長)は、使用する無線周波数に対応する波長(λ)に基づいて、波長の半分(半波長分)の長さに設定される。したがって、第1の放射素子14の1辺の長さは、λ/2√εr1=λ/4(mm)で表される。一方、第2の放射素子14の1辺の長さは、第1の放射素子よりも大きいλ/2√εr2=λ/2(mm)で表される。
【0035】
第1の実施形態に係るアンテナ装置10は、以上のように第2の放射素子15が第1の放射素子14よりも大きな外形を有する構成に加えて、第1の放射素子14からは直線偏波が放射されるとともに、第2の放射素子15からは円偏波が放射されるよう構成を有している。具体的には図5に示すように、第1の放射素子においては、平面視における中心軸上の中央位置とは異なる位置に給電点42を設けられており、直線偏波が放射されるように構成されている。一方、第2の放射素子15については、図6に示すように分波器48と移相器49とが設けられ、2つの給電点44、46において位相差が90度となるように構成された2点給電式とすることにより、円偏波が放射されるように構成されている。なお、図5、図6における給電点42、44および46には、同軸ケーブル40を介して、アンテナ装置本体30から送られた電流が供給される。これにより、第1の実施形態のリーダライタ100は、一括読取と選択通信のいずれにおいても、より確実にRFタグと通信を行うことができる。
【0036】
このような作用効果が得られる点についてより具体的に説明する。一般にRFタグのアンテナは、直線偏波アンテナが用いられている。ここで、棚卸などの作業が行われる場合には、物品の並べられている方向が揃っておらず、したがって、RFタグもまた、ランダムな方向を向いている場合が多い。そのため、放射される電波を直線偏波とすると、RFタグのアンテナの偏波方向と第2の放射素子15の偏波方向とが直交する場合などは通信することができない。そのため、第2の放射素子15から放射される電波を円偏波とすることで、より多くのRFタグとの通信を可能とすることができる。
【0037】
一方、選択通信が行われる場合を想定すると、通信対象でないRFタグのアンテナは、それぞれランダムな方向を向いていることが多い。そのため、直線偏波を第1の放射素子1から放射させ、その電波の偏波方向と通信対象であるRFタグのアンテナのアンテナの偏波方向を合わせることにより、電波の偏波方向と直行する向きを向いている通信対象でないRFタグとは距離が近くとも通信が行われない。すなわち、第1の放射素子14から直線偏波を放射させることにより、通信対象でないRFタグとの誤通信が起こる可能性を小さくすることができる。
【0038】
なお、選択通信にあっては、以上の理由から、使用者が第1の放射素子14から放射される電波の偏波方向を容易に認識できることが、より確実な選択通信のために好ましい。
そのため、第1の実施形態においては、図1に示すように、第1の放射素子14から放射される電波の偏波方向を示す標識部13をアンテナ筐体12に設けている。これにより、使用者はRFタグのアンテナの偏波方向を、第1の放射素子から放射される電波の偏波方向に合わせることが容易となるので、通信対象であるRFタグとより確実に選択通信を行うことができる。
【0039】
次に、第1の実施形態のリーダライタ100による、一括読取、選択読取、または選択書込みに係る、RFタグとの通信の処理フローを、図7を用いて説明する。なお、以下の説明においては、各処理における送信出力の大きさ(すなわち、各処理において送信出力制御部311がいずれの出力情報に基づき送信出力を制御するか)、および選択通信の際に通信を実行することになっているRFタグの数については、リーダライタ本体30に予め設定されているものとする。
【0040】
まず、Act101において、制御部31は、実行する処理が一括読取、選択読取、または選択書込みのいずれであるかを示す処理指定情報を、使用者からの入力に基づき、取得する。具体的には、制御部31は、図8に示すような処理指定画面51を構成し、表示部37に表示させる。使用者は、表示部37に表示された処理指定画面51に基づき、所望する処理を入力部35を介して指定する。制御部31は、当該入力部35を介した使用者からの指定により、処理指定情報を取得する。
【0041】
次に、Act102において、制御部31は、取得した処理指定情報が一括読取を指定しているか、判定する。一括読取を指定している場合、Act103において、アンテナ切替制御部313は、第2の放射素子15から電波が放射されるように、無線部33を制御する(第2の放射素子15を選択)。次に、Act104において、制御部31の送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている一括読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0042】
次いで、Act105において、制御部31は、無線部33を制御して第2の放射素子15から一括読取に係る電波を放射させて一括読取を実施し、RFタグにて保持されている情報(識別ID)を取得する。そして、Act106において、制御部31は、処理が完了したことを通知する処理結果画面53(図9)を構成して表示部37に表示させ、Act101に戻る。なお、実行された処理が当該一括読取、および後述の選択読取である場合には、制御部31は、処理の完了とともに取得した識別IDを処理結果画面にて表示し、使用者に通知する。また、識別IDが取得できなかった場合は、図10に示した内容に代えて、RFタグとの通信に失敗したことを処理結果画面53にて表示して、使用者に通知する。
【0043】
一方、Act102において、処理指定情報が一括読取を指定していないと判定される場合、Act107に進み、アンテナ切替制御部313は、第1の放射素子14から電波が放射されるように、無線部33を制御する(第1の放射素子14を選択)。次に、Act108において、制御部31は、処理指定情報が選択読取を指定しているか、判定する。選択読取を指定している場合、Act109に進み、制御部31の送信出力設定部は、記憶部315に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0044】
次に、Act110において、制御部31は、RFタグの偏波方向を、第1の放射素子14の偏波方向と合わせることを使用者に促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act111に進み、制御部31は、読取開始に関する情報を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグの偏波方向を標識部13に従い第1の放射素子14の偏波方向と合わせ、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得し、Act112に進む。Act112において、制御部31は、無線部33を介して第1の放射素子14から選択読取に係る電波を放射させ、選択読取処理を実施し、RFタグに保持されている識別IDを取得する。そして、Act113において、制御部31は、処理完了の通知とともに取得した識別IDを通知する処理結果画面53を表示部37に表示させ(図9)、Act101に戻る。
【0045】
ここで、選択読取を実行した結果、使用者が予め設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグからの読取が行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が少ないときは図11に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が多いときは図12に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0046】
また、Act108において、処理指定情報が選択読取を指定しないと判定されるとき、制御部31は、処理指定情報が選択書込みを指定していると判定する。そして、Act114に進み、制御部31の送信出力設定部315は、記憶部311に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0047】
次に、Act115において、制御部31は、RFタグの偏波方向を、第1の放射素子14の偏波方向と合わせることを使用者に促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act116に進み、制御部31は、読取開始に関する指示を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグの偏波方向を標識部13に従い第1の放射素子14の偏波方向と合わせ、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得してAct117に進む。Act117において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択書込みに係る電波を放射させ、選択書込みを実施し、RFタグに識別IDを付与する。そして、制御部31は、書込みが完了したことをRFタグからのレスポンスに基づき確認し、読取処理の場合と同様に処理結果画面53を構成して表示部37に表示させる。
【0048】
ここで、選択書込みを実行した結果、処理指定情報指定の際に使用者が設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグに対し書込みが行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定した数よりも少ないRFタグに書込みが行われたときは図11に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定した数より多くのRFタグに書込みが行われたときには、図12に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0049】
以上、第1の実施形態のリーダライタ100は、第1の放射素子14と、第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子15とを備えることにより、使用者は、一括読取と、選択通信の両方の処理を行うことができる。また、第1の放射素子からは、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるので、
選択通信において、特定のRFタグとの通信をより確実に行うことができる。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、第1の放射素子14および第2の放射素子15をパッチアンテナの放射素子として構成している。第2の実施形態においては、第1の放射素子14を、第1の実施形態で示した放射素子よりもより小さいチップアンテナの放射素子とするとともに、第2の放射素子15をパッチアンテナの放射素子とすることができる。このとき、第1の放射素子14と第2の放射素子15とは同一のアンテナ筐体内に収納することができるほか、別々の筐体内に収納されるようにしてもよい。また、同一のアンテナ筐体内に配置される場合にも、第1の放射素子と第2の放射素子を略平行に配置してもよいほか、他の態様、例えば同一平面上に配置するようにしてもよい。
【0051】
第2の実施形態に係るアンテナ装置が備えるチップアンテナは、当業者が公知の構成を適宜採用することができるが、一般的に、一辺が数cm〜数mmの直方体状の形状を有している。すなわち、第1の放射素子14をパッチアンテナとしたときよりも、放射素子の物理的大きさを非常に小さくすることができる。そのため、送信出力の調整により、RFタグとの通信が可能である電波強度を有する電波の範囲もより小さくすることができるので、通信対象であるRFタグとのより確実な選択通信を提供できる。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態において、リーダライタ100は、第1の実施形態にて説明した構成に加えて、図13に示すようにアンテナ装置10に装着して用いる、制限部材60を備える。該制限部材60をアンテナ装置10に装着することにより、アンテナ筐体12の所定領域以外の領域からの電波の筐体外への放射を、所定領域からの電波の筐体外への放射よりも制限することができる。当該制限部材60は、例えば、図13に示すように、金属を材料として構成し、標識部13近傍に対応する位置に開口部62を設けた成型体とすることができる。また、他の態様とすることももちろん可能であり、例えば装着時にアンテナ筐体外面と対向する面が電波吸収処理(例えば電波吸収材の貼付)が施されたプラスチックを材料として構成し、標識部13が示す位置近傍に対応する位置のみ開口部を設けるか、未処理のプラスチックで構成する成型体とすることができる。
【0053】
第3の実施形態において、制限部材60は、アンテナ筐体12の外面から離脱させることにより、所定領域以外の領域からの筐体外への電波の放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である構成としている。しかしながらアンテナ装置10からの制限部材60の退避については、アンテナ筐体外面からの脱離に限定されず、他の態様とすることも可能である。例えば、制限部材60をヒンジを介してアンテナ筐体12に連結させ、電波放射を制限する位置から制限しない位置に移動可能とする構成としてもよい(本明細書において、退避とは、位置の移動も含む概念である)。
【0054】
(その他の実施形態)
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の実施形態とすることも可能である。
【0055】
例えば、第1の実施形態において、アンテナ装置10の第2の放射素子15について、2点給電方式を採用することにより円偏波が放射されるように構成しているが、これに限定されるものではなく、他の構成により円偏波が放射されるようにすることもできる。例えば、第2の放射素子15について、矩形における対角線上の2つの角を点対称に切り欠いた形状に形成することにより円偏波が放射されるようにしてもよい。
【0056】
また、第1の実施形態において、送信出力を制御するための出力情報は、リーダライタ本体30内のROMやRAMにより構成される記憶部311に記憶されている。しかしながら、これに限定されず、外部機器の記憶部に記憶され、必要に応じてインターフェース部39を介して制御部31が取得するようにしてもよい。
【0057】
さらに、第1の実施形態において、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)とリーダライタ本体30とは分離して構成されているが、2つの筐体(アンテナ筐体12と、リーダライタ本体30の筐体)が連結されたり、1つの筐体内部のそれぞれの区画に、パッチアンテナ14とリーダライタ本体30のハードウェアとが収納されたりするようにして、一体化されていてもよい。
【0058】
さらにまた、第1の実施形態においては、予め記憶されている出力情報に基づき送信出力を設定しているが、使用者が入力部35を介して送信出力を設定するようにしてもよい。
【0059】
さらにまた、第1の実施形態においては、制御部31は、使用者からの処理の指定についての入力に基づき、電波が放射されるアンテナを切り換えている。しかしながら、電波が放射されるアンテナの切換は他の態様とすることも、もちろん可能である。例えば、リーダライタ本体30において、第1の放射素子14または第2の放射素子への給電を回路的に切り換える切換スイッチを備えるようにしてもよい。
【0060】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0061】
10 アンテナ装置、12 アンテナ筐体、13 標識部、14 第1の放射素子、15 第2の放射素子、16 地導体、17 第1の誘電体層、18 第2の誘電体層、19保持部材、20複合アンテナ、30 リーダライタ本体、31 制御部、33 無線部、35 入力部、37 表示部、40 同軸ケーブル、42(44、46) 給電点、48 分波器、49移相器、60 制限部材、100 RFタグリーダライタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2007−110611号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でRFタグと通信する、RFタグリーダライタおよびそのアンテナに関し、特に、不特定のRFタグとの一括的な通信および特定のRFタグとの選択的な通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)システムが注目され、例えば流通分野などにおいて導入が進んでいる。RFIDシステムは、ICチップとアンテナから成り、物品に付されるRFタグ(無線タグ、RFIDタグとも称される)と、該RFタグのICチップ内のメモリに記憶されている情報を非接触で読み取るとともに、該RFタグのICチップ内のメモリに情報を非接触で書込むRFタグリーダライタ(以下、単にリーダライタとも称す)とから構成される。
【0003】
RFIDシステムにおける処理としては、例えば、店舗などでの棚卸業務における、複数のRFタグからの一括での情報読取処理が挙げられる(以下、一括読取と称す)。このとき、リーダライタは、数mの距離が離れた範囲に電波を放射し、複数の商品にそれぞれ付された不特定のRFタグと通信を実行して、各RFタグに記憶されている情報を一括的に読み取る。また、RFIDシステムにおける他の処理としては、1つまたは複数の特定のRFタグに対する読み取り、および書込み処理が挙げられる(以下、選択読取、および選択書込みと称す。また、これらを総称して選択通信と称す)。このとき、リーダライタは、特定のRFタグから選択的に情報を読み取り、または該RFタグに対し、選択的に情報の書込みを実施する。
【0004】
ここで、店舗などにおいては、周辺にRFタグが付された商品が多数存在する環境での選択書込み処理等が行われる場合がある。そして、このような環境においては、周辺のRFタグとの間で誤って通信が行われた結果、使用者の所望するRFタグとは異なるRFタグに情報が書込まれるなどの事態が生じ得る。よって、従来において、使用者は、一括的読み取り用のリーダライタと、該一括読取用リーダライタよりも電波の送信出力が小さく、指向性の範囲も狭い選択通信用リーダライタとを、業務に応じて使い分ける必要があった。また、選択通信を行う場合には、使用者は、リーダライタのアンテナ装置周辺から、通信対象でないRFタグを遠ざけるなどの処置を講じる必要があった。
【0005】
そのため、周囲のRFタグとの一括通信(一括読取のほか、不特定のRFタグに対し、一括的に情報を書込む場合も含む)が可能であるとともに、選択通信を実施する場合にあっては使用者の所望する特定のRFタグと通信可能とするための技術が提案されている(例えば特許文献1)。具体的には、特許文献1では、リーダライタが備えるアンテナ装置において、一括通信用と選択通信用の、指向性の異なる2つのアンテナを備える構成とすることが提案されている。また、特許文献1では、通信の態様に応じて、アンテナの角度を調整して放射される電波の指向性を変化させるとともに、該アンテナ角度の変化に応じて電波の送信出力を変化させることも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術による場合でも、使用者はアンテナ装置周辺から通信対象でないRFタグを遠ざける必要があるが、例えば作業の迅速性が求められる場合には当該処置は必ずしもとれないことがある。また、UHF帯や2.4GHz帯などの電波方式が用いられている場合には、周辺の環境や信号の変動により、アンテナ装置から一定の距離を空けたとしても通信対象でないRFタグとの通信が行われることがあった。
【0007】
また、以上のような原因から読取や書込みに失敗した場合、使用者はその処理をやり直す必要があるが、誤って読取や書込みを行ったRFタグを特定するのは容易ではない。特に、書込みが行われる前のRFタグは、一般に製造メーカーで暫定で同じIDが付与されており、やり直し作業にはさらに手間が掛かる。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、第1の放射素子および第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、第2の放射素子から、第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置と、使用者の操作に応じて、第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタに関する。
【発明の効果】
【0010】
以上に詳述したように、本発明によれば、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において当該RFタグとより確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態のRFタグリーダライタの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のRFタグリーダライタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のRFタグリーダライタが有する無線部の回路構成図である。
【図4】第1の実施形態に係る複合アンテナ20の側面図である。
【図5】第1の実施形態に係る第1の放射素子14の概要を示す平面図である。
【図6】第1の実施形態に係る第2の放射素子15の概要を示す平面図である。
【図7】第1の実施形態における、RFタグとの通信に係る処理フローを示すための図である。
【図8】第1の実施形態における、処理指定画面の例示図である。
【図9】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図10】第1の実施形態における、処理開始画面の例示図である。
【図11】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図12】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図13】第2の実施形態に係る、制限部材が装着されたアンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、RFタグから読取、またはRFタグに書込みされる情報として、識別IDを例に挙げて説明する。また、一括通信として、例えば棚卸などの業務で利用される一括読取を例に挙げて説明する。
【0013】
図1は、第1の実施形態による、RFタグリーダライタ100の概要を示す斜視図である。第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10と、リーダライタ本体30とから構成されている。アンテナ装置10とリーダライタ本体30とは、同軸ケーブル40で接続されている。また、アンテナ装置10は、アンテナ筐体12と、筐体12内部に収容される、図4〜6に示す第1の放射素子14および第2の放射素子15を有する複合アンテナ20とを備える。リーダライタ100は、複合アンテナ20から放射される電波を介して、RFタグ(不図示)と通信を行う。
【0014】
このとき、第1の実施形態において、リーダライタ100は、送信出力を調整する(変化させる)ことにより、第1の放射素子14から、第1の放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できる。また、第2の放射素子15は、送信出力を調整することにより、第1の放射素子14よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できる。
【0015】
まず、リーダライタ本体30が備えるハードウェア構成について説明する。図2に示すように、リーダライタ本体30は、制御部31と、無線部33と、入力部35と、表示部37と、インターフェース部39と、を有する。また、バッテリおよびその充放電を制御する図1に示す電源部32により、各ハードウェアおよびアンテナ装置10へ電流が供給される。したがって、第1の実施形態のリーダライタ100は、携帯型リーダライタとして構成されている。
【0016】
制御部31は、使用者からの入力に基づき、RFタグとの通信や、ネットワークを通じてのPC(Personal Computer, 不図示)などの外部機器との通信など、後述する記憶部315に記憶されているプログラムを実行することにより、リーダライタ100における各種処理を行う役割を有している。例えば、後述するインターフェース部39を介してPCから取得されたり、使用者から後述する入力部35を介して入力された識別IDがアンテナ装置10から電波を介してRFタグに送出されるように、通信プロトコルに従って無線部33を制御する。また、制御部31は、以下に説明する記憶部311と、アンテナ切替制御部313と、送信出力制御部315と、とを有する。
【0017】
記憶部311は、取得した識別IDや、該識別IDを電波を介して送信したりするための通信プロトコル(例えば、ISO18000−6に準拠したRFタグの通信プロトコル)のほか、後述する送信出力制御部311が用いる、一括読取、選択読取、選択書込みのいずれかの処理の形態に対応した送信出力の大きさについての情報である、出力情報が記憶されている。
【0018】
アンテナ切替制御部313は、行われる処理に応じて、電波が放射される放射素子を、第1の放射素子14と第2の放射素子15の間で切り替える(言い換えれば、電波が放射される放射素子の選択を実施する)。具体的には、アンテナ切替制御部313は、一括読取が行われるときは第2の放射素子15から電波が放射されるよう、無線部33を制御する。また、アンテナ切替部313は、選択通信が行われるときは第1の放射素子14から電波が放射されるよう、無線部33を制御する。
【0019】
送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている送信出力情報に基づき、該送信出力が示す送信出力でアンテナ装置10から電波が放射されるように、後述する無線部33を制御する。
【0020】
ここで、第1の実施形態において、送信出力制御部315は、選択読取および選択書込みに係る出力情報(選択読取出力情報および選択書込み出力情報)に基づき後述する無線部33を制御するときは、第1の放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波をアンテナ装置10(具体的には第1の放射素子14)から放射させる。また、一括読取に係る一括読取出力情報に基づき無線部33を制御するとき、送信出力制御部311は、選択読取または選択書込みのときよりも大きい送信出力の電波を、アンテナ装置10(具体的には第2の放射素子15)から放射させる。
【0021】
なお、第1の実施形態においておける制御部31は、具体的には、リーダライタ本体30に実装されるCPU、RAM、ROMにより構成することができる。
【0022】
また、送信出力の好適な値は、一括読取や選択通信などの処理の態様のほか、RFタグの種類、処理を行う場所の通信環境(例えば、壁の材質、RFタグが載置されている棚の材質、RFタグが付された物品の材質、RFタグの密集度など)に応じて変化する。そのため、送信出力が各処理に対して予め設定されている場合には、第1の実施形態のように、1つの処理に対して複数の出力情報を記憶されていることが、より好適な送信出力の設定が可能となるため、好ましい。第1の実施形態においては、一括読取を例に挙げて説明すると、一括読取出力情報A、B,およびCの、異なる送信出力を示す3種類の出力情報が記憶されている。
【0023】
無線部33は、アンテナ装置10を介してRFタグと通信するための機能を備えているハードウェアである。無線部33の詳細な回路構成図を図3に示す。
【0024】
ここで、RFタグがバッテリを持たないパッシブタグの場合には、無線部33は、先ず、無変調キャリアをパワーアンプ331で増幅して、方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力し、RFタグを起動させる。RFタグにデータを送信する場合には、通信プロトコルに従い符号化した信号について振幅変調器333にて振幅変調を行った後にパワーアンプ331で増幅し、次いで方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力することにより、送信する。また、RFタグから信号を受信する時には、リーダライタ100から無変調キャリアを送信している状態で、RFタグがアンテナ端のインピーダンスを制御(バックスキャッタ)し、これによって反射状態が変わり、これをリーダライタ100のアンテナ装置で検出する。受信した電磁波信号は、方向性結合器332を介して直交復調され、同期クロック生成部I(334)およびQ(335)にて同期クロックを生成し、プリアンブル検出部I(336)およびQ(337)にて予め決められたプリアンブルを検出することによりデータの先頭を検出し、複合部I(338)およびQ(339)にて復号して受信データを得る。また、誤り検出符号によって、エラー検出部I(341)およびQ(342)にて誤りの有無を検出するようになっている。図3の場合には、直交復調の同相成分での復調と直交成分での復調のどちらかで誤りがなければ正しくデータを受信したと判定する構成である。また、制御部31の送信出力制御部315からの制御(具体的には、送信出力を設定するための送信出力設定信号の送出)により、パワーアンプ331にて送信出力が処理の形態に合わせて設定できるように構成されている。また、制御部31のアンテナ切替制御部313からの制御(具体的には、アンテナを切り替えるためのアンテナ切替信号の送出)により、アンテナ切替部345にて電波を放射する放射素子を第1の放射素子14または第2の放射素子15に設定している。
【0025】
入力部35は、該入力部35を用いて使用者がリーダライタ100に指示を入力するためのハードウェアであり、具体的には押下により指示の入力が可能なボタン(キー)や、タッチパッドなどで構成することができる。
【0026】
表示部(ディスプレイ)37は、使用者にRFタグとの通信結果を示したり、指示入力を促すために用いることができるハードウェアであり、具体的にはLCD(Liquid crystal display)等とすることができる。なお、表示部37をタッチパネルセンサを搭載したグラフィカルディスプレイとして構成し、入力部35と表示部37とを一体化させてもよい。
【0027】
インターフェース部39は、ネットワークを介し、識別IDが記憶されているPCなどの外部機器と通信を行うためのハードウェアである。
【0028】
次に、本実施形態のアンテナ装置10について説明する。
【0029】
図1に示すように、アンテナ装置10は、略矩形のアンテナ筐体12と、該アンテナ筐体12に収容される複合アンテナ20とを備える。なお、第1の実施形態においてはアンテナ筐体12には把持部材19が設けられており、使用者が携帯しながらリーダライタ100を使用する際に、アンテナ装置10を把持しやすいように構成されている。しかしながら、当該把持部19を設けない構成とすることも、もちろん可能である。
【0030】
図4は、第1の実施形態に係る、アンテナ筐体12内部に収納される、複合アンテナ20のY-Z平面における側面図である。複合アンテナ20は、第1の放射素子14と、第2の放射素子15と、地導体16と、第1の誘電体層17と、第2の誘電体層18とを有する。
【0031】
第1の放射素子14および第2の放射素子15は、それぞれが平面視にて略矩形の形状を有しているアルミニウムや銅などの導電性材料で構成された平板状放射素子であり、互いに略平行に配置されている。また、地導体16は、アルミニウムや銅などの導電性材料で構成され、第1の放射素子と第2の放射素子との間に配置されている。さらに、第1の誘電体層17は、第1の放射素子14と地導体16との間に配置され、第2の誘電体層18は、第2の放射素子15と地導体16との間に配置される。すなわち、複合アンテナ20は、第1のアンテナ素子14を有する第1のパッチアンテナと、第2の放射素子15を有する第2のパッチアンテナからなる。
【0032】
第1の実施形態においてアンテナ装置10が備える複合アンテナ20を以上のような構成とすることで、第1の放射素子と第2の放射素子とを一体化でき、また、地導体を共通化できるので、2つのパッチアンテナを備える他の構成とするよりも、アンテナ装置10を小型化および軽量化できる。
【0033】
ここで、第1の実施形態において、第1の誘電体層17は、第2の誘電体層18よりも大きな比誘電率を有しており、第2の放射素子15の外形は、第1の放射素子14の外形よりも大きな構成である。このように外形の大きさの異なる放射素子を備える構成とすることにより、第1の実施形態に係るアンテナ装置10にあっては、小さい方の放射素子から電波を放射させたときに、図4における破線にて示すように、アンテナ装置10から放射される電波をより近傍に集中させることができる。したがって、アンテナ装置10は、リーダライタ本体30の制御に基づき、第1の放射素子14から、該放射素子14近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるので、第1の実施形態のリーダライタ100は、選択通信において、特定のRFタグとの通信をより確実に行うことができる。また、第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10が、アンテナ利得がより大きく、リーダライタ本体30の制御に基づきより広い範囲にRFタグとの通信可能な電波を放射できる第2の放射素子15を有することにより、選択通信とともに一括読取も行うことができる。
【0034】
なお、第1の実施形態において、第1および第2の誘電体層17、18の比誘電率や、第1および第2の放射素子14、15の外形の形状、大きさは特に限定されず、公知の方法に従い当業者が適宜設定できる。例えば、第1の誘電体層17の比誘電率(εr1)がおよそ4であり、第2の誘電体層18の比誘電率(εr2)をおよそ1であるとともに、第1および第2の放射素子14、15がそれぞれ正方形状の外形を有している場合を例に挙げて説明する。ここで、パッチアンテナは、一般に、略正方形状の放射素子を有するとき、その1辺の長さ(電気長)は、使用する無線周波数に対応する波長(λ)に基づいて、波長の半分(半波長分)の長さに設定される。したがって、第1の放射素子14の1辺の長さは、λ/2√εr1=λ/4(mm)で表される。一方、第2の放射素子14の1辺の長さは、第1の放射素子よりも大きいλ/2√εr2=λ/2(mm)で表される。
【0035】
第1の実施形態に係るアンテナ装置10は、以上のように第2の放射素子15が第1の放射素子14よりも大きな外形を有する構成に加えて、第1の放射素子14からは直線偏波が放射されるとともに、第2の放射素子15からは円偏波が放射されるよう構成を有している。具体的には図5に示すように、第1の放射素子においては、平面視における中心軸上の中央位置とは異なる位置に給電点42を設けられており、直線偏波が放射されるように構成されている。一方、第2の放射素子15については、図6に示すように分波器48と移相器49とが設けられ、2つの給電点44、46において位相差が90度となるように構成された2点給電式とすることにより、円偏波が放射されるように構成されている。なお、図5、図6における給電点42、44および46には、同軸ケーブル40を介して、アンテナ装置本体30から送られた電流が供給される。これにより、第1の実施形態のリーダライタ100は、一括読取と選択通信のいずれにおいても、より確実にRFタグと通信を行うことができる。
【0036】
このような作用効果が得られる点についてより具体的に説明する。一般にRFタグのアンテナは、直線偏波アンテナが用いられている。ここで、棚卸などの作業が行われる場合には、物品の並べられている方向が揃っておらず、したがって、RFタグもまた、ランダムな方向を向いている場合が多い。そのため、放射される電波を直線偏波とすると、RFタグのアンテナの偏波方向と第2の放射素子15の偏波方向とが直交する場合などは通信することができない。そのため、第2の放射素子15から放射される電波を円偏波とすることで、より多くのRFタグとの通信を可能とすることができる。
【0037】
一方、選択通信が行われる場合を想定すると、通信対象でないRFタグのアンテナは、それぞれランダムな方向を向いていることが多い。そのため、直線偏波を第1の放射素子1から放射させ、その電波の偏波方向と通信対象であるRFタグのアンテナのアンテナの偏波方向を合わせることにより、電波の偏波方向と直行する向きを向いている通信対象でないRFタグとは距離が近くとも通信が行われない。すなわち、第1の放射素子14から直線偏波を放射させることにより、通信対象でないRFタグとの誤通信が起こる可能性を小さくすることができる。
【0038】
なお、選択通信にあっては、以上の理由から、使用者が第1の放射素子14から放射される電波の偏波方向を容易に認識できることが、より確実な選択通信のために好ましい。
そのため、第1の実施形態においては、図1に示すように、第1の放射素子14から放射される電波の偏波方向を示す標識部13をアンテナ筐体12に設けている。これにより、使用者はRFタグのアンテナの偏波方向を、第1の放射素子から放射される電波の偏波方向に合わせることが容易となるので、通信対象であるRFタグとより確実に選択通信を行うことができる。
【0039】
次に、第1の実施形態のリーダライタ100による、一括読取、選択読取、または選択書込みに係る、RFタグとの通信の処理フローを、図7を用いて説明する。なお、以下の説明においては、各処理における送信出力の大きさ(すなわち、各処理において送信出力制御部311がいずれの出力情報に基づき送信出力を制御するか)、および選択通信の際に通信を実行することになっているRFタグの数については、リーダライタ本体30に予め設定されているものとする。
【0040】
まず、Act101において、制御部31は、実行する処理が一括読取、選択読取、または選択書込みのいずれであるかを示す処理指定情報を、使用者からの入力に基づき、取得する。具体的には、制御部31は、図8に示すような処理指定画面51を構成し、表示部37に表示させる。使用者は、表示部37に表示された処理指定画面51に基づき、所望する処理を入力部35を介して指定する。制御部31は、当該入力部35を介した使用者からの指定により、処理指定情報を取得する。
【0041】
次に、Act102において、制御部31は、取得した処理指定情報が一括読取を指定しているか、判定する。一括読取を指定している場合、Act103において、アンテナ切替制御部313は、第2の放射素子15から電波が放射されるように、無線部33を制御する(第2の放射素子15を選択)。次に、Act104において、制御部31の送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている一括読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0042】
次いで、Act105において、制御部31は、無線部33を制御して第2の放射素子15から一括読取に係る電波を放射させて一括読取を実施し、RFタグにて保持されている情報(識別ID)を取得する。そして、Act106において、制御部31は、処理が完了したことを通知する処理結果画面53(図9)を構成して表示部37に表示させ、Act101に戻る。なお、実行された処理が当該一括読取、および後述の選択読取である場合には、制御部31は、処理の完了とともに取得した識別IDを処理結果画面にて表示し、使用者に通知する。また、識別IDが取得できなかった場合は、図10に示した内容に代えて、RFタグとの通信に失敗したことを処理結果画面53にて表示して、使用者に通知する。
【0043】
一方、Act102において、処理指定情報が一括読取を指定していないと判定される場合、Act107に進み、アンテナ切替制御部313は、第1の放射素子14から電波が放射されるように、無線部33を制御する(第1の放射素子14を選択)。次に、Act108において、制御部31は、処理指定情報が選択読取を指定しているか、判定する。選択読取を指定している場合、Act109に進み、制御部31の送信出力設定部は、記憶部315に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0044】
次に、Act110において、制御部31は、RFタグの偏波方向を、第1の放射素子14の偏波方向と合わせることを使用者に促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act111に進み、制御部31は、読取開始に関する情報を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグの偏波方向を標識部13に従い第1の放射素子14の偏波方向と合わせ、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得し、Act112に進む。Act112において、制御部31は、無線部33を介して第1の放射素子14から選択読取に係る電波を放射させ、選択読取処理を実施し、RFタグに保持されている識別IDを取得する。そして、Act113において、制御部31は、処理完了の通知とともに取得した識別IDを通知する処理結果画面53を表示部37に表示させ(図9)、Act101に戻る。
【0045】
ここで、選択読取を実行した結果、使用者が予め設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグからの読取が行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が少ないときは図11に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が多いときは図12に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0046】
また、Act108において、処理指定情報が選択読取を指定しないと判定されるとき、制御部31は、処理指定情報が選択書込みを指定していると判定する。そして、Act114に進み、制御部31の送信出力設定部315は、記憶部311に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0047】
次に、Act115において、制御部31は、RFタグの偏波方向を、第1の放射素子14の偏波方向と合わせることを使用者に促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act116に進み、制御部31は、読取開始に関する指示を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグの偏波方向を標識部13に従い第1の放射素子14の偏波方向と合わせ、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得してAct117に進む。Act117において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択書込みに係る電波を放射させ、選択書込みを実施し、RFタグに識別IDを付与する。そして、制御部31は、書込みが完了したことをRFタグからのレスポンスに基づき確認し、読取処理の場合と同様に処理結果画面53を構成して表示部37に表示させる。
【0048】
ここで、選択書込みを実行した結果、処理指定情報指定の際に使用者が設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグに対し書込みが行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定した数よりも少ないRFタグに書込みが行われたときは図11に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定した数より多くのRFタグに書込みが行われたときには、図12に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0049】
以上、第1の実施形態のリーダライタ100は、第1の放射素子14と、第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子15とを備えることにより、使用者は、一括読取と、選択通信の両方の処理を行うことができる。また、第1の放射素子からは、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるので、
選択通信において、特定のRFタグとの通信をより確実に行うことができる。
【0050】
(第2の実施形態)
第1の実施形態においては、第1の放射素子14および第2の放射素子15をパッチアンテナの放射素子として構成している。第2の実施形態においては、第1の放射素子14を、第1の実施形態で示した放射素子よりもより小さいチップアンテナの放射素子とするとともに、第2の放射素子15をパッチアンテナの放射素子とすることができる。このとき、第1の放射素子14と第2の放射素子15とは同一のアンテナ筐体内に収納することができるほか、別々の筐体内に収納されるようにしてもよい。また、同一のアンテナ筐体内に配置される場合にも、第1の放射素子と第2の放射素子を略平行に配置してもよいほか、他の態様、例えば同一平面上に配置するようにしてもよい。
【0051】
第2の実施形態に係るアンテナ装置が備えるチップアンテナは、当業者が公知の構成を適宜採用することができるが、一般的に、一辺が数cm〜数mmの直方体状の形状を有している。すなわち、第1の放射素子14をパッチアンテナとしたときよりも、放射素子の物理的大きさを非常に小さくすることができる。そのため、送信出力の調整により、RFタグとの通信が可能である電波強度を有する電波の範囲もより小さくすることができるので、通信対象であるRFタグとのより確実な選択通信を提供できる。
【0052】
(第3の実施形態)
第3の実施形態において、リーダライタ100は、第1の実施形態にて説明した構成に加えて、図13に示すようにアンテナ装置10に装着して用いる、制限部材60を備える。該制限部材60をアンテナ装置10に装着することにより、アンテナ筐体12の所定領域以外の領域からの電波の筐体外への放射を、所定領域からの電波の筐体外への放射よりも制限することができる。当該制限部材60は、例えば、図13に示すように、金属を材料として構成し、標識部13近傍に対応する位置に開口部62を設けた成型体とすることができる。また、他の態様とすることももちろん可能であり、例えば装着時にアンテナ筐体外面と対向する面が電波吸収処理(例えば電波吸収材の貼付)が施されたプラスチックを材料として構成し、標識部13が示す位置近傍に対応する位置のみ開口部を設けるか、未処理のプラスチックで構成する成型体とすることができる。
【0053】
第3の実施形態において、制限部材60は、アンテナ筐体12の外面から離脱させることにより、所定領域以外の領域からの筐体外への電波の放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である構成としている。しかしながらアンテナ装置10からの制限部材60の退避については、アンテナ筐体外面からの脱離に限定されず、他の態様とすることも可能である。例えば、制限部材60をヒンジを介してアンテナ筐体12に連結させ、電波放射を制限する位置から制限しない位置に移動可能とする構成としてもよい(本明細書において、退避とは、位置の移動も含む概念である)。
【0054】
(その他の実施形態)
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の実施形態とすることも可能である。
【0055】
例えば、第1の実施形態において、アンテナ装置10の第2の放射素子15について、2点給電方式を採用することにより円偏波が放射されるように構成しているが、これに限定されるものではなく、他の構成により円偏波が放射されるようにすることもできる。例えば、第2の放射素子15について、矩形における対角線上の2つの角を点対称に切り欠いた形状に形成することにより円偏波が放射されるようにしてもよい。
【0056】
また、第1の実施形態において、送信出力を制御するための出力情報は、リーダライタ本体30内のROMやRAMにより構成される記憶部311に記憶されている。しかしながら、これに限定されず、外部機器の記憶部に記憶され、必要に応じてインターフェース部39を介して制御部31が取得するようにしてもよい。
【0057】
さらに、第1の実施形態において、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)とリーダライタ本体30とは分離して構成されているが、2つの筐体(アンテナ筐体12と、リーダライタ本体30の筐体)が連結されたり、1つの筐体内部のそれぞれの区画に、パッチアンテナ14とリーダライタ本体30のハードウェアとが収納されたりするようにして、一体化されていてもよい。
【0058】
さらにまた、第1の実施形態においては、予め記憶されている出力情報に基づき送信出力を設定しているが、使用者が入力部35を介して送信出力を設定するようにしてもよい。
【0059】
さらにまた、第1の実施形態においては、制御部31は、使用者からの処理の指定についての入力に基づき、電波が放射されるアンテナを切り換えている。しかしながら、電波が放射されるアンテナの切換は他の態様とすることも、もちろん可能である。例えば、リーダライタ本体30において、第1の放射素子14または第2の放射素子への給電を回路的に切り換える切換スイッチを備えるようにしてもよい。
【0060】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0061】
10 アンテナ装置、12 アンテナ筐体、13 標識部、14 第1の放射素子、15 第2の放射素子、16 地導体、17 第1の誘電体層、18 第2の誘電体層、19保持部材、20複合アンテナ、30 リーダライタ本体、31 制御部、33 無線部、35 入力部、37 表示部、40 同軸ケーブル、42(44、46) 給電点、48 分波器、49移相器、60 制限部材、100 RFタグリーダライタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開2007−110611号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の放射素子および前記第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、前記第2の放射素子から、前記第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置と、
使用者の操作に応じて、前記第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタ。
【請求項2】
請求項1に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第1の放射素子からは直線偏波が放射されるとともに、前記第2の放射素子からは円偏波が放射されるRFタグリーダライタ。
【請求項3】
請求項2に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第1の放射素子から放射される電波の偏波方向を示す標識部をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項4】
請求項1から3に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第2の放射素子は、パッチアンテナの平板状放射素子であるRFタグリーダライタ。
【請求項5】
請求項1から4に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第2の放射素子は、チップアンテナの放射素子であるRFタグリーダライタ。
【請求項6】
請求項1から3に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記アンテナ装置の前記第1の放射素子および前記第2の放射素子はパッチアンテナの平板状放射素子であり、
前記第1の放射素子と前記第2の放射素子とは略平行に配置され、
前記アンテナ装置は、
前記第1の放射素子と前記第2の放射素子との間に配置される地導体と、
前記第1の放射素子と前記地導体との間に配置される第1の誘電体層と、
前記第2の放射素子と前記地導体との間に配置される、前記第1の誘電体層より誘電率が大きい第2の誘電体層とをさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部をさらに備え、
前記出力制御部は、前記第1の放射素子から放射される電波の送信出力が、前記第2の放射素子から放射される電波の送信出力よりも大きくなるよう制御するRFタグリーダライタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のRFタグリーダライタにおいて、
少なくとも第1の放射素子を収容するアンテナ筐体と、
前記アンテナ筐体の一部の領域以外の領域を介した、前記第1のアンテナ素子近傍から前記アンテナ筐体外への電波の放射を、前記アンテナ筐体の一部の領域を介した前記第1のアンテナ近傍から前記アンテナ筐体外への電波の放射よりも制限するとともに、制限する位置から制限しない位置に退避可能である制限部材と、をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項1】
第1の放射素子および前記第1の放射素子よりも大きい第2の放射素子を有し、第1の放射素子から、該第1の放射素子近傍の領域に位置するRFタグとのみ通信可能とする強度分布の電波を放射できるとともに、前記第2の放射素子から、前記第1の放射素子よりも広い範囲に位置するRFタグとの通信を可能とする強度分布の電波を放射できるアンテナ装置と、
使用者の操作に応じて、前記第1および第2の放射素子のいずれによって電波を放射させるかを選択切換可能なアンテナ切換制御部と、を備えるRFタグリーダライタ。
【請求項2】
請求項1に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第1の放射素子からは直線偏波が放射されるとともに、前記第2の放射素子からは円偏波が放射されるRFタグリーダライタ。
【請求項3】
請求項2に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第1の放射素子から放射される電波の偏波方向を示す標識部をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項4】
請求項1から3に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第2の放射素子は、パッチアンテナの平板状放射素子であるRFタグリーダライタ。
【請求項5】
請求項1から4に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記第2の放射素子は、チップアンテナの放射素子であるRFタグリーダライタ。
【請求項6】
請求項1から3に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記アンテナ装置の前記第1の放射素子および前記第2の放射素子はパッチアンテナの平板状放射素子であり、
前記第1の放射素子と前記第2の放射素子とは略平行に配置され、
前記アンテナ装置は、
前記第1の放射素子と前記第2の放射素子との間に配置される地導体と、
前記第1の放射素子と前記地導体との間に配置される第1の誘電体層と、
前記第2の放射素子と前記地導体との間に配置される、前記第1の誘電体層より誘電率が大きい第2の誘電体層とをさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部をさらに備え、
前記出力制御部は、前記第1の放射素子から放射される電波の送信出力が、前記第2の放射素子から放射される電波の送信出力よりも大きくなるよう制御するRFタグリーダライタ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載のRFタグリーダライタにおいて、
少なくとも第1の放射素子を収容するアンテナ筐体と、
前記アンテナ筐体の一部の領域以外の領域を介した、前記第1のアンテナ素子近傍から前記アンテナ筐体外への電波の放射を、前記アンテナ筐体の一部の領域を介した前記第1のアンテナ近傍から前記アンテナ筐体外への電波の放射よりも制限するとともに、制限する位置から制限しない位置に退避可能である制限部材と、をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−66495(P2011−66495A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213087(P2009−213087)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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