説明

RFIDタグおよび該RFIDタグ製造方法ならびにRFIDタグ実装製品

【課題】フィルタエレメントのエンドプレート部に実装するのに好適な、取り付けスペースの問題、エンドプレート部の強度の低下などの問題を解消するとともに、簡単に実装できるRFIDタグおよびRFIDタグ実装製品ならびにRFIDタグ製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のRFIDタグ0101はRFIDインレット0102とこれを上下から挟む2枚の非発泡性(ウレタン)樹脂のシート0103(下側)、0104(上側)から構成される。RFIDインレット0102と非発泡性ウレタン樹脂シート0103、0104は、柔軟性のある接着剤により貼り合わせてある。このFIDタグ0101をエンドプレート部となる発泡性ウレタン樹脂中に埋め込んだ場合、該発泡性ウレタン樹脂とRFIDタグの非発泡性ウレタン樹脂の接着強度は同系等樹脂であるため強度の低下を大幅に低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification;無線周波数の電磁波を用いた非接触個別識別技術)タグおよび各種製品にRFIDタグを実装するためのRFIDタグ実装構造、ならびに該RFIDタグを実装したRFIDタグ実装製品に関するものである。
【0002】
本発明に係るRFIDタグは、例えばフィルタエレメント製品などに実装する場合に好適で、その場合、自動車エンジン用エアフィルタエレメントが完成した後に、RFIDタグを該フィルタエレメントの筐体部へ取り付け、該RFIDタグからの情報を高精度で読み取ることによって製品のトレース管理を行うことを可能としたものである。
【背景技術】
【0003】
一般にRFIDタグは、集積回路にIDコードもしくはそれと同等な識別情報(以下、単に識別情報という)およびその他の情報などを内蔵し、外部の通信装置に対して、送信、または送信と受信を行う(以下、送受信と呼ぶ)ことで、前記識別情報などを送出するものである。このRFIDタグの用途の一つとしては、製品のトレースシステムが知られており、このトレースシステムは、例えば製造工程または流通過程の必要時にRFIDタグと外部の通信装置が交信し、RFIDタグから得られたIDコード/日時データ/交信場所などの情報からRFIDタグが実装されている製品の製造履歴や流通履歴を追跡し、管理するものである。
【0004】
特に自動車部品の分野においては、製造工程での品質管理、流通過程での真贋判定、メンテナンス時の誤部品取り付け防止、市場での不良発生時のフィードバック、部品リサイクル履歴の管理など、前記トレースシステムを用いた製品の履歴を個別に管理することが望まれている。
【0005】
製品(部品を含む)の品質や流通を管理するためにRFIDタグを用いた発明としては、例えば、特開2005−242659号公報(特許文献1)、特開2006−3497号公報(特許文献2)、特開2005−172153号公報(特許文献3)、特開2005−56362号公報(特許文献4)、特開平6−106902号公報(特許文献5)、特開2005−222299号公報(特許文献6)などに開示されたものがある。以下、各公開公報に開示された発明の内容について記す。
【0006】
特開2005−242659号公報(特許文献1)には、自動車部品の一種であるタイヤホイールにRFIDタグを取り付ける場合の発明が開示されている。金属材料で構成されるタイヤホイールでは、金属部分の影響を避けてRFIDタグを取り付けることが重要であるが、ここに開示されている発明では、金属部分に凹部を設け、この凹部にRFIDタグを埋め込む構成を採用し、その下地に高透磁率磁性体を配置してRFIDタグを接着剤で固定することで、この問題に対処している。
【0007】
さらに、上記特開2006−3497号公報(特許文献2)には、金属部品に取り付けた状態でのRFIDタグの感度を低下させないための発明が開示されている。この発明では、製品からRFIDタグ部分を離間して(突出させて)取り付けるためのラベル技術が記載されている。
【0008】
さらに、上記特開2005−172153号公報(特許文献3)には、主として金属材料で構成されるベアリング製品にRFIDタグを取り付ける際、金属材料による交信性能への影響を避けるため、前記製品中の非金属材料部分へ埋め込む発明が記載されている。
【0009】
また、上記特開2005−56362号公報(特許文献4)には、RFIDタグの外力に対する保護を目的に厚さ0.3mm以上のウレタン膜を形成したRFIDタグの発明が記載されている。
【0010】
また、上記特開平6−106902号公報(特許文献5)には、金属と発泡ウレタンとの密着性を向上させるために、車輪形状金属部への塗装前に周状にウレタン樹脂を巻き付ける発明が記載されている。
【0011】
さらに、上記特開2005−222299号公報(特許文献6)には、材質中にRFIDタグの薄さに匹敵する空間を設け、該空間にRFIDタグを配置することで、外観上RFIDタグの存在を感知させないようにした発明が記載されている。
【0012】
【特許文献1】特開2005−242659号公報
【特許文献2】特開2006−3497号公報
【特許文献3】特開2005−172153号公報
【特許文献4】特開2005−56362号公報
【特許文献5】特開平6−106902号公報
【特許文献6】特開2005−222299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
大型自動車用エアフィルタエレメント(以下、エアフィルタエレメントという)は、円筒形状の多数の通気口が開けられた筒状補強体の内部に、前記筒状補強体と同心の概略円筒形状の濾過体円筒を収納し、筒状補強体の端部を発泡ウレタン樹脂にて閉塞したものである。筒状補強体の両端部の内、一方は完全に密閉し(密閉端)、もう一方は筒状補強体〜濾過体間を密閉、濾過体円筒の内側は開放する(開放端)(後述する図3、図4参照)。
【0014】
これにより、筒状補強体の通気口から吸入された空気は、濾過体により濾過され、濾過体円筒の内側から排気される。さらに、エアフィルタエレメントは、エアフィルタのケーシングに収納され、前記吸気が車外から取り込まれてくる配管と、前記排気がエンジン部へ導かれる配管とが取り付けられる。
【0015】
RFIDタグの取り付けを前記濾過体の内部にすると、万が一、部品の脱落が発生した場合、その部品がエンジンに取り込まれて重大な損傷を与える危険性があるため、RFIDタグの取り付けは、濾過体の外部に限定される。さらに、濾過体はエンジン吸気で引き起こされる脈動により激しく振動しているため、RFIDタグの取り付けには適していない。
【0016】
前記筒状補強体へRFIDタグを取り付ける場合には、筒状補強体を構成する金属材料からの、無線交信に対する悪影響を避けるための工夫が必要となる。
【0017】
また、密閉端のシールに対しては、常時吸気圧と大気圧の差が外力となって加わり、さらにはエンジンの脈動による逆方向の圧力も加わるため、RFIDタグの取り付けによっても、エンドプレートの強度を低下させない発明が求められていた。
【0018】
上述した特開2005−242659号公報(特許文献1)に記載の発明では、金属材料からの悪影響を避けるため、RFIDタグの下地に高透磁率磁性体を配置しているが、金属材料が薄板で構成されたエアフィルタエレメントでは、取り付け空間に余裕がなく、特殊な下地部品なしで金属部分の影響を避ける工夫が求められていた。
【0019】
また上記特開2006−3497号公報(特許文献2)には、RFIDタグ部分を離間して(突出させて)取り付けるためのラベルを用いた発明が記載されているが、エアフィルタエレメント外部がケーシングで囲われるため、取り付けスペースに厳しい制約があり、エアフィルタエレメント製品には適用できないという問題があった。
【0020】
さらに、上記特開2005−172153号公報(特許文献3)には、主として金属材料で構成される製品にRFIDタグを取り付ける際、金属材料による交信性能への影響を避けるため、前記製品中の非金属材料部分へ取り付ける発明が示されている。しかし、この発明は前記非金属材料部分に大きな外力が加わらないベアリング製品に対しては適用できるが、外力が常時加わるエアフィルタエレメントに対しては適用できないという問題があった。
【0021】
また、特開2005−56362号公報(特許文献4)には、柔軟性、弾力性、耐熱性の向上を目的として、RFIDタグをウレタン樹脂で包む発明が記載されている。しかし、この発明では、弾力性等の耐久性の向上を、コーティングされたウレタン樹脂だけで担うため、ウレタン樹脂層を厚くする必要があり、ウレタン樹脂を接着剤により張り合わせる等の手間がかかる工程が必要であるという問題があった。このため、コーティング等の簡便な工程で済む発明が求められていた。
【0022】
また、特開平6−106902号公報(特許文献5)には、金属と発泡ウレタンの密着性を向上させるために、車輪形状金属部への塗装前に周状にウレタン樹脂を巻き付ける発明が記載されている。しかし、周状に巻き付けることで密着性を増すこの発明はリング状製品への適用に限られ、RFIDタグ等には適用できないという問題があった。このため、RFIDタグ等の微細な製品に対しても適用できる発明が望まれていた。
【0023】
さらに、特開2005−222299号公報(特許文献6)には、材質中にRFIDタグタグの薄さに匹敵する空間を設け、該空間にRFIDタグを配置することで、外観上RFIDタグの存在を感知させない工夫が記載されている。しかし、この発明では圧縮の外力に対しては強度を保てるが、引っ張りの外力に対してはRFIDタグ用の空間を作る分だけ強度が低下してしまい、引っ張りと圧縮の両方の外力が発生するエアフィルタエレメントには適用できないという問題があった。
【0024】
本発明は、上記問題点に鑑み、特にエアフィルタエレメントのエンドプレート部に実装するのに好適な、取り付けスペースの問題、エンドプレート部の強度の低下などの問題を解消するとともに、簡単に実装できるRFIDタグおよびRFIDタグ実装製品ならびにRFIDタグ製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の如き構成を採用した。以下、請求項毎の構成を述べる。
a)請求項1記載の発明は、RFIDチップと該RFIDチップに電気的に接続されたアンテナが一体化されたRFIDインレットの表裏面が非発泡性樹脂で覆われてなることを特徴とするRFIDタグであり、請求項2記載の発明は、前記非発泡性樹脂が、当該RFIDタグが埋め込まれる発泡性樹脂と同系統の樹脂材料であることを特徴とするものである。ここで同系統とは、発泡性ウレタン樹脂−非発泡性ウレタン樹脂、発泡性ゴム−非発泡性ゴムなどをいう。
【0026】
b)請求項3に記載の発明は、上記の如きRFIDタグを実装したRFIDタグ実装製品であり、請求項4記載の発明は、RFIDタグ実装製品が、円筒形の筒側面に多数の吸気孔を開けた筒状補強体部と、該筒状補強体部の両端で内部の濾過体を保持して空気の流路を形成するエンドプレート部からなるフィルタエレメントであって、前記エンドプレート部に請求項1から3のいずれかに記載のRFIDタグが埋め込まれていることを特徴とするものである。
【0027】
c)請求項5記載の発明は、請求項1または2記載のRFIDタグを製造するRFIDタグ製造方法であって、RFIDインレット洗浄・脱脂処理を行う工程と、該RFIDインレットの表裏両面へ非発泡樹脂を塗布する工程と、エンドプレート部金型へ前記RFIDタグを投入する工程と、前記エンドプレート部金型へ樹脂を注入する工程と、前記エンドプレート部の樹脂を発泡する工程を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係るRFIDタグによれば、特別な取り付けスペースが不要で、エンドプレート部の強度の低下がなく、簡単に実装できるRFIDタグおよびRFIDタグ実装製品ならびにRFIDタグ製造方法が得られる。
【0029】
本発明によれば、特に、内燃機関用エアフィルタエレメントの発泡ウレタン樹脂によるエンドプレート部分の成型時に、非発泡ウレタン樹脂によるコーティングを行ったRFIDタグを埋め込んで成形することにより、発泡ウレタン樹脂によるエンドプレート部分の強度低下を引き起こすことなく、金属材料部分からの悪影響を避けて、エアフィルタエレメント〜ケーシング間の厳しい空間的制約を受けずに、離剤による取り付け不安定を招くことなく、安定的で高感度な交信が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
まず、図3および図4を用いて、本発明の対象製品(RFIDタグ実装製品)の一つである大型自動車用エアフィルタエレメント(以下、エアフィルタエレメント)について説明する。
【0031】
図3は、フィルタエレメント0301の概略構成を示す図である。
同図に示すように、本発明に係るフィルタエレメント0301は、円筒形の金属筒側面に多数の吸気孔を開けた筒状補強体0304と、該筒状補強体0304の両端(一端は図示せず)で、内部の濾過体を保持して空気の流路を形成するエンドプレート部0302からなる。
【0032】
エンドプレート部0302は、発泡性ウレタン樹脂などの、柔軟で軽量な樹脂が用いられる。
【0033】
図4は、フィルタエレメント0301の断面を示す図である。
同図に示すように、フィルタエレメント0301の筒状補強体0304には、多数の吸気孔が開いており、そこから吸気0403が流入するようになっている。筒状補強体0304の内部には濾過体0402が配置されているが、その上端は(円盤状)のエンドプレート部0302で密封され、下端は円環状のエンドプレート部0401で密閉されており、吸気0403は濾過体0402で濾過されて濾過体0402の内部に吸い込まれ、該濾過体0402の内部から清浄な空気として排気0404される。
【0034】
次に、RFIDタグの定義について述べる。
図8は、RFIDタグの核となるRFIDインレット0801を示す図である。
同図に示すように、RFIDチップ0802と、該RFIDチップ0802と接続されるアンテナ0803と、該RFIDチップおよび該アンテナを一体的に搭載する基材0804とを組み合わせたものをRFIDインレット(または単にインレットという)0801と呼び、このRFIDインレット0801に保護透明フィルムや取り付け用の接着剤などのユーティリティを付したものをRFIDタグと呼び、このRFIDタグが取り付けられた製品をRFIDタグ実装製品と呼ぶ。
【0035】
図4中、濾過体0402の内部では、万が一、RFIDタグなどの部品の脱落が発生した場合、該部品がエンジンに取り込まれて重大な損傷を与える危険性があるため、RFIDタグの取り付けは、濾過体0402の外部に限定される。さらに、濾過体0402は、エンジン吸気で引き起こされる脈動により激しく振動しているため、RFIDタグの取り付けには好ましくない。
【0036】
前記筒状補強体へRFIDタグを取り付ける場合には、金属材料からの、無線交信に対する悪影響を避けるための工夫が必要となるが、フィルタエレメント0301はさらにケーシング(図示せず))に納められるため、筒状補強体部分の外部(金属円筒部分とケーシングとの間)には寸法的な余裕がない。このため、RFIDタグの取り付け位置は、フィルタエレメントのエンドプレート部0302あるいは0401に限定されることがわかる。
【0037】
この場合、フィルタエレメントのエンドプレート部にRFIDタグを埋め込むことができればよい。さらに、エンドプレート部の発泡ウレタン樹脂による形成時にRFIDタグを埋め込むことができれば、RFIDタグ付きフィルタエレメントの製造工程が短縮可能となる。
【0038】
しかし、本願発明者らによって実施された試作では、フィルタエレメントのエンドプレート部の形成時にRFIDタグを埋め込むと、エンドプレート部の強度が低下してしまい、フィルタエレメントの吸排気およびエンジンからの脈動による圧力と振動によって、エンドプレート部が破断してしまうという問題が生じることが明らかとなった。
【0039】
これは、埋め込まれたRFIDタグの表面部分において強度が弱い不連続領域が発生し、この不連続領域へ応力集中が発生して、エンドプレート部の強度を低下させることが原因であると、試作品の破断状況から推測された。
【0040】
本発明は、上記状況に対処するためになされたものである。以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明に係るRFIDタグ0101を示す図である。
同図に示すように、本発明に係るRFIDタグ0101は、中心部のRFIDインレット0102と、このRFIDインレット0102を上下から挟む2枚の非発泡性ウレタン樹脂のシート0103(下側)、0104(上側)から構成される。
【0041】
RFIDインレット0102と非発泡性ウレタン樹脂シート0103、0104は、硬化後も柔軟性と強度に優れたゴム系接着剤により貼り合わせてある。なお、図1では、RFIDインレット0101に非発泡性ウレタン樹脂シート0103、0104を貼り付けているが、RFIDタグ0101に非発泡性ウレタン樹脂を直接塗布して乾燥・硬化させたものであってもよい。
【0042】
図2は、本発明に係るRFIDタグ0101を埋め込んで形成されたエンドプレート部0302の部分断面図を示す図である。
【0043】
次に、図5および図6を用いて、本発明に係るRFIDタグ0101をシール部0302に埋め込んだ場合に、エンドプレート部0302の強度が低下しない原理・機構について説明する。
【0044】
図5は、非発泡ウレタン樹脂を塗布していないRFIDインレット0102を、エンドプレート部0302を形成する発泡ウレタン樹脂0501中に埋め込んだ場合の、境界面の状況を模式的に示した拡大断面図である。
【0045】
同図に示すように、RFIDインレット0102と発泡ウレタン樹脂0501との接着構造0504は、発砲ウレタン樹脂0501中の気泡0502同士が接する気泡隔壁0503部分がRFIDインレット0102に接する箇所に形成されている。発泡ウレタン樹脂0501は、大部分の体積を気泡が占めるので、気泡隔壁0503の体積は小さく、結果として上記接着構造0504におけるRFIDインレット0102と気泡隔壁0503の接触面積も小さなものとなる。
【0046】
一般に、接着構造の強度は以下の式で表される。
(接着強度)=(単位面積あたりの接着力)×(接着面積)
【0047】
図5の場合は、
(発泡ウレタン樹脂〜RFIDインレット間の接着強度)
=(発泡ウレタン樹脂〜RFIDインレット間の接着力)×(発泡ウレタン樹脂〜インレット間の接着面積)
となる。
【0048】
従って、図5の場合、発泡ウレタン樹脂0501〜RFIDインレット0102間の接着面積(=RFIDインレット0102と気泡隔壁0503の接触面積)の小さいことが接着強度の低下をもたらしていることがわかる。
【0049】
図6は、RFIDインレット0102に非発泡ウレタン樹脂0601を塗布して形成したRFIDタグ0101を、発泡ウレタン樹脂0501中に埋め込んだ場合の、境界面の状況を模式的に示した拡大断面図である。
【0050】
RFIDタグ0101と発泡ウレタン樹脂0501との接着構造0604は、発泡ウレタン樹脂0501中の気泡0502同士が接する気泡隔壁0503部分がRFIDタグ0101に塗布された非発泡ウレタン樹脂0601に接する箇所に形成されている。
【0051】
同じウレタン樹脂である非発泡ウレタン樹脂と発泡ウレタン樹脂とでは、馴染みが良好であるために、気泡隔壁は非発泡ウレタン樹脂上で広がり、結果としてRFIDタグ0101と発泡ウレタン樹脂0501が形成する接着構造では、接着面積が、前記図5の場合と比較して以下の関係となる。
【0052】
(図6に示す発泡ウレタン樹脂〜RFIDタグ間の接着面積)>(図5に示す発泡ウレタン樹脂〜RFIDインレット間の接着面積)
従って、図6の場合の発泡ウレタン樹脂〜RFIDタグ間の接着強度は、図5の場合の発泡ウレタン樹脂〜RFIDインレット間の接着強度より大きくなり、エンドプレート部にRFIDタグを埋め込んだことによる強度の低下を大幅に低減することができる。
【0053】
図6の場合、RFIDタグ0101内部に、RFIDインレット0102と非発泡ウレタン樹脂0601との間の接着構造0605ができている。しかし、非発泡ウレタン樹脂〜RFIDインレット間の場合は、接着面積が非常に大きく、接着強度の低下は問題とはならない。
【0054】
以上の原理・機構により、発泡ウレタン樹脂0501に埋め込まれたRFIDタグ0101(RFIDインレット0102に非発泡ウレタン樹脂0601が塗布されている)の表面部分において強度が弱い不連続領域が発生するのを防ぎ、エンドプレート部の強度の低下を大幅に低減することができる。
【0055】
なお、本発明によるRFIDタグの構造は、上記説明に用いた内燃機関用エアフィルタエレメントに適用を限られるものではなく、冷蔵庫のドアパッキンの発泡ゴムやマットレスのスポンジように、発泡性の樹脂を用いる製品内部にRFIDタグを組み込んで成形する場合全般に適用することができる。
【0056】
図15は、リサイクルタイヤに適用した場合を示す図である。同図に示すように、自動車用などのタイヤ1501を再生する場合に、タイヤ1501の一部に取り外し可能なRFIDタグ1502を取り付けておくことにより再生品のトレースを行うことができる。また、この考えは、その他再生して再利用を図る可能性のあるあらゆる製品に適用できる。
【0057】
図7は、本発明に係るRFIDタグの製造方法の一例(RFIDタグを埋め込んだエンドプレート部の製造の手順)を説明するためのフロー図である。
同図に示すように、本発明に係るRFIDタグを埋め込んだエンドプレート部は、非発泡ウレタン樹脂との接着性をよくするためのRFIDインレット洗浄・脱脂処理(ステップST0702)と、RFIDインレットの表裏両面への非発泡ウレタン樹脂塗布(ステップST0703)と、非発泡ウレタン樹脂の乾燥(ステップST0704)と、エンドプレート部金型へRFIDタグ投入(ステップST0705)、エンドプレート部金型へウレタン樹脂注入(ステップST0706)と、エンドプレート部ウレタン樹脂発泡処理(ステップ0707)の各工程を経て完成(ステップST0708)される。なお、前記ステップST0704の工程は、一般には非発泡性の材料の固化工程であるので、熱可塑性の材料を用いる場合には、前記ステップST0704は冷却行程になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
前述の実施形態においては、自動車用、特に大型自動車用のエアフィルタエレメントを例にとって説明したが、本発明に係るRFIDタグ実装製品は自動車部品用に限られるものではなく、発泡樹脂の成型時に剥離剤が用いられる製品、例えば、エアコンや掃除機等の家電品の部品のトレースシステムへも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係るRFIDタグの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す実施形態によるRFIDタグを実装した製品(エンドプレート部)の部分断面図である。
【図3】フィルタエレメントの外観を示す斜視図である。
【図4】フィルタエレメントの概略断面図である。
【図5】従来のRFIDタグ(RFIDインレット自体)とエンドプレート部との接着構造を説明する拡大断面図である。
【図6】本発明におけるRFIDタグとエンドプレート部との接着構造を説明する拡大断面図である。
【図7】本発明に係るRFIDタグを埋め込んだエンドプレート部を製造するプロセスを示すフロー図である。
【図8】RFIDインレットの概略構成を示す正面図である。
【図9】本発明に係るRFIDタグを再生タイヤに適用した状況を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
0101:RFIDタグ
0102:RFIDインレット
0103,0104:非発泡性ウレタン樹脂シート
0301:フィルタエレメント
0302:エンドプレート部
0304:筒状補強体
0401:エンドプレート部
0402:濾過体
0403:吸気
0404:排気
0501:発泡ウレタン樹脂
0502:発泡ウレタン中の気泡
0503:気泡隔壁
0504:RFIDインレット〜発泡ウレタン樹脂間の接着構造
0601:非発泡ウレタン樹脂
0604:RFIDタグ〜発泡ウレタン樹脂間接着構造
0605:RFIDインレット〜非発泡ウレタン樹脂間の接着構造
0801:RFIDインレット
0802:RFIDチップ
0803:アンテナ
0804:基材
1501:再生タイヤ
1502:RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDチップと該RFIDチップに電気的に接続されたアンテナが一体化されたRFIDインレットの表裏面が非発泡性樹脂で覆われてなることを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記非発泡性樹脂は、当該RFIDタグが埋め込まれる発泡性樹脂と同系統の樹脂材料であることを特徴とする請求項1記載のRFIDタグ。
【請求項3】
請求項1または2のいずれかに記載のRFIDタグを実装したことを特徴とするRFIDタグ実装製品。
【請求項4】
請求項3記載のRFIDタグ実装製品において、
当該RFIDタグ実装製品が、筒状の濾過部および前記濾過部の両端面を閉塞するエンドプレート部からなるフィルタエレメントであって、前記エンドプレート部に請求項1から3のいずれかに記載のRFIDタグが埋め込まれていることを特徴とするRFIDタグ実装製品。
【請求項5】
請求項1または2記載のRFIDタグを製造するRFIDタグ製造方法であって、
RFIDインレットの洗浄・脱脂処理を行う工程と、該RFIDインレットの表裏両面へ非発泡樹脂を塗布する工程と、エンドプレート部金型へ前記RFIDタグを投入する工程と、前記エンドプレート部金型へ樹脂を注入する工程と、前記エンドプレート部の樹脂を発泡する工程を有することを特徴とするRFIDタグ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−83793(P2008−83793A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260597(P2006−260597)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000152985)株式会社日立情報システムズ (409)
【出願人】(000222163)東洋エレメント工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】