説明

RFIDタグの製造方法

【課題】安価で高い生産性を実現できるとともに、安定した通信特性を得ることが可能なRFIDタグの生産方法を提供することを目的とする。
【解決手段】無線通信用のICチップと、前記ICチップと電気的に接続された第1のアンテナと、前記第1のアンテナと少なくとも一部分が絶縁層を介して重複して形成された第2のアンテナとを有するRFIDタグの製造方法であって、長尺の絶縁層の一方の面に複数個の前記第1のアンテナを個別に分離して形成し、前記絶縁層の他方の面に複数個分の前記第2のアンテナを一体化して形成したアンテナテープを形成する工程と、複数個のICチップを前記アンテナテープの第1のアンテナ上の所定の位置に搭載し、電気的に接続したRFIDタグテープを形成する工程と、前記RFIDタグテープを個別のRFIDタグに分離する工程と、を有することを特徴とするRFIDタグの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信特性に優れたRFID(Radio Frequency Identification)タグの安価で生産性に優れた製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFIDタグを用いる非接触式個体識別システムは、物のライフサイクル全体を管理するシステムとして、製造、物流、販売、セキュリティ管理、リサイクル等の多くの業態で注目されている。特にUHF波やマイクロ波を用いる電波方式のICタグは、ICチップに外部アンテナを取り付けた構造で数メートルの通信距離が可能であるという特徴によって注目されており、現在、大量の商品の物流管理や製造物履歴管理等を目的にシステムの構築が進められている。
【0003】
RFIDタグはその用途と運用方法によって様々なアンテナ設計がなされている。ICチップを電気的に接続したアンテナと、高周波電流の静電結合効果によって絶縁層を介して形成された他金属体を補助的なアンテナとして使用する手法は、通信距離を長くしたり、複数個のRFIDタグが密接した状態での電波干渉を低減する効果等がある。補助アンテナの形状は目的に応じて設計されるが、いずれの場合もICチップを接続したアンテナと補助アンテナが絶縁層を介して一部分が重複することで静電結合効果を得るため、アンテナ同士の位置合わせが必要となる。
【0004】
RFIDタグを用いた非接触式個体識別システムで大量の商品の物流及び物品管理を実現するためには、商品の1つ1つにRFIDタグを取り付ける必要がある。補助アンテナを用いて密接したRFIDタグの電波干渉を抑える用途としては、大量な紙文書やファイル類、CDやDVDといった電子記録媒体等の管理が考えられ、使用されるRFIDタグは安価でかつ高い生産性が求められる。
【0005】
そのためにはICチップを接続したアンテナと補助アンテナを、テープ状の絶縁層の表裏面に予め形成しておく方法が考えられている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−117165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術では、各々のアンテナの重複する面積が変化すると、RFIDの通信特性もそれに伴い変化してしまうので、安定した通信特性を得るために、精度の高い位置合わせや、一方のアンテナパターンを大きくしておき、位置ズレの影響を抑制することが必要であった。図5に、ICチップ1を接続したアンテナ9と補助アンテナ10がずれて、重複する面積が小さくなる場合の例と、図6に、補助アンテナ10を大きくし、位置ズレの影響を抑制する場合の例を平面図で示す。
【0008】
上記のような補助アンテナを用いたRFIDタグにおいて、安定した通信特性を得るためには、図5に示す従来例では、絶縁層の表裏面の位置合わせに長い時間を要する問題があり、図6に示す従来例では、アンテナを狭いピッチで形成することができない問題があり、安価で生産性の高いRFIDタグの生産が困難であった。
【0009】
本発明は前記に鑑みてなされたものであり、安価で高い生産性を実現できるとともに、安定した通信特性を得ることが可能なRFIDタグの生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に関する。
1. 無線通信用のICチップと、前記ICチップと電気的に接続された第1のアンテナと、前記第1のアンテナと少なくとも一部分が絶縁層を介して重複して形成された第2のアンテナとを有するRFIDタグの製造方法であって、長尺の絶縁層の一方の面に複数個の前記第1のアンテナを個別に分離して形成し、前記絶縁層の他方の面に複数個分の前記第2のアンテナを一体化して形成したアンテナテープを形成する工程と、複数個のICチップを前記アンテナテープの第1のアンテナ上の所定の位置に搭載し、電気的に接続したRFIDタグテープを形成する工程と、前記RFIDタグテープを個別のRFIDタグに分離する工程と、を有することを特徴とするRFIDタグの製造方法。
2. 上記1に記載のRFIDタグの製造方法であって、前記第2のアンテナがアンテナテープの長手方向と同じ向きの2本の帯状に形成されていることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
3. 上記1または2に記載のRFIDタグの製造方法であって、前記ICチップの動作周波数が、850MHzから2.45GHzの範囲であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
4. 上記1から3の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、前記第1のアンテナがダイポール型アンテナであることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
5. 上記1から4の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、前記第1のアンテナのアンテナテープの長手方向における配列ピッチが5mm以下であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
6. 上記1から5の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、前記第1のアンテナの長さが30mm以下であり、前記第2のアンテナの長さが60mm以下であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るRFIDタグの製造方法は、第1のアンテナと第2のアンテナの位置合わせが容易にできることから、安価で生産性が高く、また、第1のアンテナと第2のアンテナの重複面積が一定にできることから、双方のアンテナ間の静電結合に影響される通信特性を安定化することが可能なRFIDタグを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のRFIDタグの長尺状態であるRFIDタグテープを示す平面図である。
【図2】A−A’に沿った断面図である。
【図3】ICチップ搭載部近傍を拡大した断面図である。
【図4】本発明のRFIDタグの個片状態を示す平面図である。
【図5】従来のRFIDタグの長尺状態であるRFIDタグテープを示す一例である。
【図6】従来のRFIDタグの長尺状態であるRFIDタグテープを示す一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0014】
本発明のRFIDタグの製造方法は、まず、個別に分離した第1のアンテナと、複数個分を一体化した第2のアンテナとを形成した長尺のアンテナテープにICチップを搭載し、電気的な接合を行う。本発明において、第1のアンテナとは、ICチップを接続したアンテナをいい、第2のアンテナとは、第1のアンテナと絶縁層を介して設けられ、ICチップを接続しない、いわゆる補助アンテナとなるものをいう。長尺とは、フィルム状の基材等において、縦・横何れか一方の方向が、他方に比べて2倍以上長いことをいい、例えば、巻き芯に巻き取られるテープのように、巻き取り方向が、幅方向に比べて長くなるものが挙げられる。アンテナテープとは、絶縁層の一方の面に第1のアンテナを、他方の面に第2のアンテナを形成して、巻き芯に巻き取られるようなテープ状としたものであって、ICチップを搭載する前のものをいう。
【0015】
図1に、アンテナテープ6にICチップ1を搭載したRFIDタグテープ7の平面概略図を、図2に、図1のA−A’に沿った断面概略図を示す。ICチップ1を搭載する第1のアンテナ2を絶縁層4の上面に、絶縁層4の下面に絶縁層4の長手方向(即ち、アンテナテープ6の長手方向)に沿って2本の帯状に形成された第2のアンテナ3を形成している。第1のアンテナ2は、個々のRFIDタグ毎に個別に形成し、第2のアンテナは複数個のRFIDタグに対し、一体化して形成する。帯状に形成された2本の第2のアンテナ3の間には、間隙G3が設けられている。ここで、RFIDタグテープ7とは、アンテナテープ6の所定位置にICチップ1を搭載した後の状態のものをいい、即ち、個別のRFIDタグに分離して個片状態とする前のものであって、個片のRFIDタグが連続して繋がった長尺状態のものをいう。
【0016】
第1のアンテナ2と第2のアンテナ3は、図2のH1、H2の部分で絶縁層4を介して重複しており、高周波で無線通信を行う際に双方のアンテナ2、3間に静電結合が発生することによって、第2のアンテナ3が第1のアンテナ2の補助アンテナとして機能する。
【0017】
図3に、ICチップ1搭載部近傍の構造の一例を、断面概略図にて示す。ICチップ1には複数の外部電極1Aが設けられており、それぞれの外部電極1Aが、第1のアンテナ2の所定の位置に、フリップチップ構造で電気的に接続されている。ICチップ1と第1のアンテナ2及び絶縁層4の間には、封止樹脂5を充填し、ICチップ1と第1のアンテナ2及び絶縁層4との接合強度を高めている。なお、ICチップ1と第1のアンテナ2の電気的接続はフリップチップ構造に限定されるものではないが、RFIDタグを薄くできる点で好ましい。
【0018】
以上の説明のように形成した長尺のRFIDタグテープ7において、図1のB−B’、C−C’のように第1のアンテナの間隙部Iを切断し、個々のRFIDタグ8に分離した後の形状を図4に示す。個々のRFIDタグ8への分離は、例えば、アンテナテープ6を所定の長さだけ巻き出す毎に、切断刃等を用いて切断することにより行なうことができる。本発明に係るRFIDタグ8の製造方法は、個別に分離した第1のアンテナ2と、複数個分を一体化した第2のアンテナ3とを形成した長尺のアンテナテープ6にICチップ1を搭載し、電気的な接合を行ってRFIDタグテープ7を形成した後で、個別のRFIDタグ8に分離切断することで、第1のアンテナ2と第2のアンテナ3の位置合わせが容易にでき、また、第1のアンテナ2と第2のアンテナ3の重複面積が一定にできることから双方のアンテナ2、3間の静電結合に影響される通信特性を安定化することができ、すなわち、安価で生産性が高く、通信特性に優れたRFIDタグ8を実現することができる。
【0019】
ICチップの動作周波数については、本発明において得られるRFIDタグが静電結合効果を利用するものであることから、850MHzから2.45GHzの範囲のマイクロ波帯であることが好適である。
【0020】
第1のアンテナ構造については、直線的なダイポール型であることが好適である。直線的なダイポール型アンテナを使用することによって、アンテナテープの長手方向における配列ピッチを狭めることができる。例えば、0.5mm角程度のICチップを用い、第1のアンテナの幅を3mm程度にすることによって、配列ピッチを5mm以下にすることが可能であり、本発明の効果である安価で生産性の高いRFIDの製造に好適である。第1のアンテナの幅を1.5mm程度にすれば、配列ピッチを3mm以下にすることも可能であり、さらに好適である。
【0021】
第1のアンテナ及び第2のアンテナの長さについては、例えばICチップの動作周波数を2.45GHzとした場合に、第1のアンテナの長さを30mm以下、第2のアンテナの長さを60mm以下とすると、本発明によって得られるRFIDタグの単独での通信特性が、一般的な半波長ダイポールアンテナの場合と比較して大差なく、かつ、複数のRFIDタグが密接した状態で一般的に生じるタグ間での相互干渉による通信特性の低下を抑制できることから、好適である。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の好適な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
まず、絶縁フィルムである厚さ25μmのポリエチレンナフタレート(PEN)に接着剤を用いて、表面に厚さ20μmの硬質アルミニウム箔、裏面に厚さ30μmの硬質アルミニウム箔を貼り合わせた長尺の基材を用意した。
【0024】
次に、表裏面のアルミニウム箔面に、グラビア印刷でエッチングレジストを形成した後、塩化第二鉄水溶液にてエッチングを行い、表面にはICチップ搭載部にT字型の整合回路を有する第1のアンテナを、裏面には長尺の基材の幅方向(長手方向と直角方向)における中央の領域に間隙を有するように2本の帯状の第2のアンテナを形成した。
【0025】
第1及び第2のアンテナの詳細寸法を図1及び図2を用いて説明する。本実施例では第1のアンテナ2の幅Dを1.5mm、長さEを25mm、配列ピッチFを2.4mmとした。また、第2のアンテナ3の各々の帯状アンテナの長さG1、G2を16mm、間隙G3を13mm、第2のアンテナ3の全体長さGを45mmとした。第1のアンテナ2と第2のアンテナ3の各々の重複長さH1、H2は6mm、アンテナテープ6の全体幅は70mmである。
【0026】
次に、動作周波数2.45GHzのRFID用ICチップ(ミューチップ、株式会社ルネサステクノロジ製、ミューチップは株式会社日立製作所の登録商標)の外部端子となるAuバンプを、第1のアンテナのT字型の整合回路部の所定の位置にフリップチップ構造にて位置合わせし、超音波を印加して接合を行った。ICチップと第1のアンテナの空隙には封止樹脂(RC091、日立化成工業株式会社製)を充填し、120℃、2時間の条件で加熱硬化した。以上の工程により約40mのアンテナテープに16,000個のICチップを搭載し、RFIDタグテープを形成した後、紙芯に巻いた。
【0027】
次に、紙芯に巻かれたRFIDタグテープを少しずつ巻き出し、第1のアンテナの間隙部を切断刃で順に切断し、長辺70mm、短辺2.4mmのRFIDタグを16,000個得た。
【0028】
本実施例で説明したRFIDタグは、小型の第1のアンテナと静電結合効果によって補助的なアンテナの機能を持つ第2のアンテナを備えているため、複数個が約3mm間隔に密接した状態でもRFIDタグの電波干渉を抑えることができる。第1のアンテナと第2のアンテナの重複部分の面積が一定に保てることで、通信特性のバラツキが小さく、短辺の長さが2.4mmと細くすることができたことで、安価で高い生産性を実現することができた。
【0029】
本実施例で作製したRFIDタグは、紙文書やファイル類、CDやDVDといった電子記録媒体等の管理に使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1:ICチップ
1A:外部電極
2:第1のアンテナ
3:第2のアンテナ
4:絶縁層
5:封止樹脂
6:アンテナテープ
7:RFIDタグテープ
8:RFIDタグ
9:ICチップを搭載したアンテナ
10:補助アンテナ
D:第1のアンテナの幅
E:第1のアンテナの長さ
F:第1のアンテナの配列ピッチ
G:第2のアンテナの長さ
G1、G2:帯状の第2のアンテナの長さ
G3:帯状の第2のアンテナの間隙
H1、H2:第1のアンテナと第2のアンテナの重複長さ
I:第1のアンテナの間隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信用のICチップと、前記ICチップと電気的に接続された第1のアンテナと、前記第1のアンテナと少なくとも一部分が絶縁層を介して重複して形成された第2のアンテナとを有するRFIDタグの製造方法であって、
長尺の絶縁層の一方の面に複数個の前記第1のアンテナを個別に分離して形成し、前記絶縁層の他方の面に複数個分の前記第2のアンテナを一体化して形成したアンテナテープを形成する工程と、
複数個のICチップを前記アンテナテープの第1のアンテナ上の所定の位置に搭載し、電気的に接続したRFIDタグテープを形成する工程と、
前記RFIDタグテープを個別のRFIDタグに分離する工程と、
を有することを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDタグの製造方法であって、
前記第2のアンテナがアンテナテープの長手方向と同じ向きの2本の帯状に形成されていることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRFIDタグの製造方法であって、
前記ICチップの動作周波数が、850MHzから2.45GHzの範囲であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、
前記第1のアンテナがダイポール型アンテナであることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、
前記第1のアンテナのアンテナテープの長手方向における配列ピッチが5mm以下であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のRFIDタグの製造方法であって、
前記第1のアンテナの長さが30mm以下であり、前記第2のアンテナの長さが60mm以下であることを特徴とするRFIDタグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−103060(P2011−103060A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257677(P2009−257677)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】